JP5718022B2 - 更生タイヤ - Google Patents
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Description
ところで、リトレッド時のバフ研磨後の形状を表すバフラインとして、新品時のタイヤの踏面ラインKと同じ曲率のバフラインを設定した場合には、ショルダー部の最外層ベルトとバフラインが交差しやすいため、ベルト露出による台タイヤのリジェクト率が高くなる。そこで、バフラインとしては、タイヤ幅方向断面で見たときに、タイヤセンター部のベルトのうちの最外層のベルトのタイヤ径方向1mm〜5mm外側の位置から、最外層のベルトよりも1mm〜5mmタイヤ径方向に離れた箇所を通るようにタイヤ幅方向に延長する曲線で、かつ、単一Rを有する曲線とするのが一般的である。
一方、台タイヤに貼付けられるプレキュアトレッドとしては、一般に、厚みが均一なものが用いられている。このため、バフラインがバフラインAである場合には、図6の一点鎖線に示すリトレッド踏面ラインのR(踏面R)が新品時のタイヤの踏面ラインKの曲率よりも大きくなり、ショルダー部の偏摩耗が発生する。また、図6に示す、ケースラインLからトレッド端部までの距離であるトレッド端部ゲージCが大きくなるため、発熱耐久性の悪化が見込まれる。
逆に、バフラインがバフラインBである場合には、図7の一点鎖線に示すリトレッド踏面の踏面Rが新品時のタイヤの踏面ラインKの曲率よりも小さくなるので、タイヤセンター部に偏摩耗が発生する。なお、バフラインがバフラインBである場合には、トレッド端部ゲージC’は小さくなるので、発熱耐久性が悪化することはない。
すなわち、バフラインがバフラインAであるタイヤでは、R=Kにした場合、R>Kである場合よりも、発熱が抑制されて発熱耐久性が改善されるとともに、転がり抵抗が小さくなるが、ショルダー部の偏摩耗の抑制が十分でないため棄却ライフが短くなるといった問題点があった。一方、バフラインがバフラインBであるのタイヤでは、R=Kにした場合、R<Kである場合よりも、タイヤセンター部での偏摩耗は抑制され棄却ライフは向上するものの、発熱の抑制が十分でなく、その結果、発熱耐久性が悪化するとともに、転がり抵抗が大きくなってしまっていた。
このように、クッションゴム部材の厚さをタイヤ幅方向で変化させるとともに、クッションゴム部材の動的弾性率(E’)及び損失正接(tanδ)を調整することで、バフラインがバフラインAであるタイヤにおいては、トレッドの発熱を抑制しつつ、ショルダー部の偏摩耗を抑制して棄却ライフを向上させることができる。また、バフラインがバフラインBであるタイヤにおいては、タイヤセンター部の偏摩耗を抑制して棄却ライフを保持しつつ、発熱耐久性の向上と転がり抵抗の低減とを実現することができる。
なお、厚さが異なる2つのクッションゴム部材と、動的弾性率(E’)及び損失正接(tanδ)のいずれか一方または両方が異なっている2つのクッションゴム部材とはかならずしも一致しなくてもよい。
また、クッションゴム部材の厚さは一定であってもよいし、タイヤ幅方向に変化していてもよい。クッションゴム部材はタイヤ幅方向の寸法が短いので、タイヤ幅方向に厚さが変化していても、タイヤ幅方向で厚さの異なるクッションゴムより製造が容易である。また、クッションゴム部材の厚さを一定にすれば、クッションゴムの貼付けが容易であるだけなく、製造が更に容易になる。更に、タイヤ幅方向で厚さの異なるクッションゴムを作製するための設備も必要ないので、生産性が向上する。
これにより、クッションゴム部材間の境界部分での特性差を均してクッションゴムの特性をタイヤ幅方向でなだらかに変化させることができるので、不要な発熱や偏摩耗の発生を抑制することができる。
図1は、本発明の実施の形態1に係る更生タイヤ1の構成を示す断面図で、同図において、10は台タイヤ、20はプレキュアトレッド、30はクッションゴムである。
台タイヤ10は、ビード部11に配置された1対のビードコア11Cにトロイド状をなして跨るカーカスプライ12と、このカーカスプライ12のタイヤ径方向外側に配置された複数のベルト13a〜13cから成るベルト層13とを備えている。ベルト13a〜13cは、スチールコードもしくは有機繊維を撚ったコードが、赤道方向に対して20°〜70°の角度で交錯するように配置されている。クッションゴム30側に位置するベルト13cが最外層ベルトである。
プレキュアトレッド20は、タイヤ踏面側に図示しない周方向溝ラグ溝により区画される所定のトレッドパターンが形成された、厚みが幅方向に均一なゴム部材で、帯状のゴム部材を加硫成形して得られる。
クッションゴム30は、互いに厚さの異なる複数のクッションゴム部材31,32,33を備え、台タイヤ10とプレキュアトレッド20との間に介挿される。
以下、タイヤ幅方向中央に位置するクッションゴム部材をクッションゴム部材31とし、タイヤ幅方向端部に位置するクッションゴム部材をクッションゴム部材32とし、クッションゴム部材31とクッションゴム部材32との間に位置するクッションゴム部材をクッションゴム部材33とする。クッションゴム部材31とクッションゴム部材33とを中央側クッションゴム部材、クッションゴム部材32を端部側クッションゴム部材という。
本例では、同図の太い実線で示す更生タイヤ1の踏面(以下、リトレッド踏面)が新品時のタイヤの踏面ラインKと一致するように、各クッションゴム部材31〜33の厚さを決定している。
図1に示す本例の更生タイヤ1は、台タイヤ10のバフラインがバフラインAであるので、タイヤ幅方向中央に位置するクッションゴム部材31の厚さt1をタイヤ幅方向端部に位置するクッションゴム部材32の厚さt2よりも厚く設定している。なお、クッションゴム部材33の厚さt3は、クッションゴム部材31の厚さt1よりも薄く、クッションゴム部材32の厚さt2よりも厚い(t1>t3>t2)。これにより、トレッド端部でのバフラインAと新品時のタイヤの踏面ラインKとの距離a’とタイヤセンター部でのバフラインAと新品時のタイヤの踏面ラインKとの距離b’とが等しくなるので、厚みが均一なプレキュアトレッドを用いた場合、更生タイヤの踏面Rの曲率と新品時のタイヤの踏面ラインKの曲率とを同じにすることができる。
本例では、更に、端部側クッションゴム部材であるクッションゴム部材32に用いられるゴム(ゴム2)の動的弾性率E’2及び損失正接tanδ2を、中央側クッションゴム部材であるクッションゴム部材31,33に用いられるゴム(ゴム1)の動的弾性率E’1及び損失正接tanδ1よりも小さくなるように、クッションゴム部材31〜33を構成するゴムを選定した。
以下、クッションゴム部材31〜33に用いられるゴムの動的弾性率E’及び損失正接tanδを、クッションゴム部材31〜33の動的弾性率E’及び損失正接tanδという。
また、本例に用いられるクッションゴム部材31〜33の厚さはそれぞれ一定なので、従来のような、タイヤ幅方向で厚さの異なるクッションゴムよりは、製造が容易である。また、特別な設備も必要ない。
前記実施の形態1では、バフラインがバフラインAである更生タイヤ1について説明したが、図2に示すように、バフラインがバフラインBである更生タイヤ2についても、クッションゴム40を、実施の形態1と同様に、タイヤ幅方に方向に配列された複数のクッションゴム部材41〜43から構成するとともに、更生タイヤ2のリトレッド踏面が新品時のタイヤの踏面ラインKと一致するように、各クッションゴム部材41〜43の厚さを決定し、更に、各クッションゴム部材41〜43の動的弾性率(E’)及び損失正接(tanδ)を調整すれば、トレッドの発熱を抑制しつつ、棄却ライフを向上させることができる。
そこで、本例の更生タイヤ2では、タイヤ幅方向中央に位置するクッションゴム部材41の厚さt1をタイヤ幅方向端部に位置するクッションゴム部材42の厚さt2よりも薄くしている。また、クッションゴム部材41とクッションゴム部材42との間に位置するクッションゴム部材43の厚さをt3とすると、厚さt3は、クッションゴム部材41の厚さt1よりも厚く、クッションゴム部材42の厚さt2よりも薄い(t1<t3<t2)。
また、端部側クッションゴム部材であるクッションゴム部材42の動的弾性率E’2及び損失正接tanδ2は、中央側クッションゴム部材であるクッションゴム部材41,43の動的弾性率E’1及び損失正接tanδ1よりも小さくなるように、クッションゴム部材41〜43を構成するゴムを選定している。
したがって、本発明の更生タイヤ2では、リトレッド踏面を新品時のタイヤの踏面ラインKと一致させることでは十分に抑制できなかったタイヤセンター部の発熱を確実に抑制できるので、トレッドの発熱を抑制しつつ、棄却ライフを向上させることができる。
そこで、クッションゴム部材31〜33及びクッションゴム部材41〜43の厚さをタイヤ幅方向に変化させるようにすれば、ゴムの厚さ、動的弾性率E’、損失正接tanδをタイヤ幅方向でなだらかに変化させることができるので、不要な発熱や偏摩耗の発生を抑制することができる。クッションゴム部材31〜33及びクッションゴム部材41〜43はタイヤ幅方向の寸法が短いので、一枚のクッションゴムの厚さをタイヤ幅方向に変化させる場合に比較して製造が容易である。
あるいは、図3に示すように、更生タイヤ2のクッションゴム40とプレキュアトレッド20の間に、厚さがタイヤ幅方向で均一である均し用クッションゴム50を介挿させるようにしてもよい。これにより、クッションゴム部材間の境界部分での特性差を均してクッションゴム40の特性をタイヤ幅方向でなだらかに変化させることができるので、不要な発熱や偏摩耗の発生を抑制でき、棄却ライフを更に向上させることができる。この場合、クッションゴム部材31〜33及びクッションゴム部材41〜43の厚さはそれぞれ一定なので、製造が更に容易になるだけでなく、特別な設備も必要ない。
なお、図1に示した更生タイヤ1についても同様である。
また、前記実施の形態1,2では、タイヤ幅方向中央側に位置するクッションゴム部材(クッションゴム部材31,33、または、クッションゴム部材41,43)の厚さを、タイヤ幅方向端部に位置するクッションゴム部材(クッションゴム部材32またはクッションゴム部材42)の厚さと異なる厚さとしたが、厚さを同じにして、動的弾性率と損失正接tanδを変更しただけでも、クッションゴム部材のない更生タイヤもしくは厚さの同じクッションゴム部材を使用した更生タイヤに比較して、発熱や偏摩耗を小さくできるので、棄却ライフを向上させることができる。
また、クッションゴムの厚さのみをタイヤ幅方向に変化させた更生タイヤ(従来例1-1,1-2,2-1,2-2)と、クッションゴムの厚さが均一な更生タイヤ(参考例1-1,1-2,2-1,2-2)の発熱と耐久性とを調べた結果も併せて記した。
図4は、図1に示したバフラインがバフラインAである更生タイヤの仕様と試験結果を示す表で、図5は、図2に示したバフラインがバフラインBである更生タイヤの仕様と試験結果を示す表である。
なお、図4及び図5において、ゴム1は中央側クッションゴム部材であるクッションゴム部材31,33及びクッションゴム部材41,43を構成するゴムで、ゴム2は端部側クッションゴム部材であるクッションゴム部材32及びクッションゴム部材42を構成するゴムである。
図4において、
従来例1-1,1-2は、クッションゴムの厚さのみをタイヤ幅方向に変化させた更生タイヤで、従来例1-1のクッションゴムの特性はプレキュアトレッドのゴムと同じである。従来例1-2のクッションゴムの特性は、従来例1-1のクッションゴムの動的弾性率E’のみが小さいゴムを用いたものである。
実施例1-1は、中央側クッションゴム部材であるゴム1の動的弾性率E’と損失正接tanδとを従来例1-1のクッションゴムよりも小さくしたものである。
実施例1-2は、端部側クッションゴム部材であるゴム2の動的弾性率E’と損失正接tanδとを従来例1-1のクッションゴムよりも小さくしたものである。
実施例1-3は、ゴム1及びゴム2の動的弾性率E’と損失正接tanδとを従来例1-1のクッションゴムよりも小さくしたもので、ゴム2の動的弾性率E’と損失正接tanδの方が、ゴム1の動的弾性率E’と損失正接tanδよりも小さい。
なお、バフラインがバフラインAである従来例1-1,1-2、及び、実施例1-1〜1-3では、ゴム1の厚さはゴム2の厚さよりも厚い。
また、参考例1-1及び参考例1-2は、一定厚みのクッションゴムを用いた更生タイヤで、クッションゴムの特性は、それぞれ、従来例1-1及び従来例1-2と同じである。
従来例2-1,2-2は、クッションゴムの厚さのみをタイヤ幅方向に変化させた更生タイヤで、従来例2-1のクッションゴムの特性はプレキュアトレッドのゴムと同じである。従来例2-2のクッションゴムの特性は、従来例2-1のクッションゴムの動的弾性率E’のみが小さいゴムを用いたものである。
実施例2-1は、中央側クッションゴム部材であるゴム1の動的弾性率E’と損失正接tanδとを従来例2-1のクッションゴムよりも小さくしたものである。
実施例2-2は、端部側クッションゴム部材であるゴム2の動的弾性率E’と損失正接tanδとを従来例2-1のクッションゴムよりも小さくしたものである。
実施例2-3は、ゴム1及びゴム2の動的弾性率E’と損失正接tanδとを従来例2-1のクッションゴムよりも小さくしたもので、ゴム2の動的弾性率E’と損失正接tanδの方が、ゴム1の動的弾性率E’と損失正接tanδよりも小さい。
なお、バフラインがバフラインBである従来例2-1,2-2、及び、実施例2-1〜2-3では、ゴム1の厚さはゴム2の厚さよりも薄い。
また、参考例1-1及び参考例1-2は、一定厚みのクッションゴムを用いた更生タイヤで、クッションゴムの特性は、それぞれ、従来例2-1及び従来例2-2と同じである。
また、プレキュアトレッドのサイズは210mmである。プレキュアトレッドのゴム種は1種で、動的弾性率E’=2.0MPa、損失正接tanδ=0.15である。
ゴムの動的弾性率E’及び損失正接tanδの測定は、規定の寸法の試験片について、上島製作所(株)製スペクトロメータを用い、歪み1%、周波数50Hz、温度100℃の条件で測定し、プレキュアトレッドの値を100として規格化した。
タイヤの発熱は転がり抵抗を測定し、従来例1-1の値を100として規格化した。
耐久性は、試験タイヤを搭載した車両を高速(80km/h)で走行させ、タイヤの溝が3.2mmになるまでに走行できる期間(棄却ライフ)を従来例1-1の値を100として規格化した。
また、良品率は、外観検査及びベルトのセパレーション検査を行ったときの良品率で、従来例1-1の値を100として規格化した。
なお、バフラインがバフラインAである場合、従来例1-2のように、クッションゴムの動的弾性率E’のみを小さくしただけでは、棄却ライフは延びるものの、転がり抵抗が大きくなってしまい、棄却ライフの向上と発熱の抑制とを同時に向上させることができないことが確認された。
また、バフラインがバフラインBである場合、従来例2-2のように、クッションゴムの動的弾性率E’のみを小さくしただけでは、棄却ライフは延びるものの、実施例2-1〜2-3と比較してわかるように、転がり抵抗がほとんど改善されていないことが確認された。
また、参考例1-1,1-2では、転がり抵抗も大きく棄却ライフが短いだけでなく、良品率が小さい。一方、参考例2-1,2-2では、転がり抵抗は小さいものの、棄却ライフが短く、良品率が小さい。
12 カーカスプライ、13 ベルト層、13a〜13c ベルト、
20 プレキュアトレッド、30,40 クッションゴム、
31〜33,41〜43 クッションゴム部材、50 均し用クッションゴム。
Claims (2)
- 台タイヤに、クッションゴムを介して、前記台タイヤとは別個に加硫されたプレキュアトレッドを貼付けて製造される更生タイヤであって、
前記クッションゴムが、
タイヤ幅方向に配列された複数のクッションゴム部材から成り、
前記複数のクッションゴム部材は互いに厚さが異なる少なくとも2つのクッションゴム部材を有し、
前記台タイヤのバフ研磨後の形状であるバフラインと新品時のタイヤの踏面ラインとのトレッド端部における距離が、タイヤセンター部における距離よりも小さい場合には、前記クッションゴム部材のうちの、タイヤ幅方向端部に配置されたクッションゴム部材は、厚さがタイヤ幅方向中央部に配置されるクッションゴム部材の厚さよりも薄く、かつ、動的弾性率と損失正接とが、タイヤ幅方向中央部に配置されるクッションゴム部材の動的弾性率と損失正接よりも小さく、前記バフラインと新品時のタイヤの踏面ラインとのトレッド端部における距離が、タイヤセンター部における距離よりも大きい場合には、
前記クッションゴム部材のうちの、タイヤ幅方向端部に配置されたクッションゴム部材は、厚さがタイヤ幅方向中央部に配置されるクッションゴム部材の厚さよりも厚く、かつ、動的弾性率と損失正接とが、タイヤ幅方向中央部に配置されるクッションゴム部材の動的弾性率と損失正接よりも小さいことを特徴とする更生タイヤ。 - 前記クッションゴムとプレキュアトレッドとの間に、均し用クッションゴムが介挿されていることを特徴とする請求項1に記載の更生タイヤ。
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