JP5715095B2 - 電子機器用筐体及び電子機器 - Google Patents

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Description

本発明は、マグネシウム−リチウム合金を用いてプレス加工により成形される電子機器用筐体及び電子機器に関する。
従来から、モバイルノートパソコン等の電子機器では、薄型で軽量の製品が強く要望されている。これに伴い、製品を構成する筐体の薄肉化や軽量化が要求されている。また、筐体の意匠性および剛性を確保する観点から、筐体の素材としてはマグネシウム(比重約1.8)のような比重の低い軽金属が活用されてきている。例えば、特許文献1には、マグネシウム合金に対して絞り等のプレス加工を施すことにより器状に成形される筐体の外装部品に関する発明が開示されている。
また、特許文献2には、ハードディスクドライブ装置のトップカバー(筐体)に関する発明が開示されている。このトップカバーは、マグネシウム合金板をプレス加工によって深絞りを行うことで成形される。また、このトップカバーは、その側壁外周縁に垂直に成形されるフランジ(鍔)形状を有する。
特開2011−156587号公報 特開2003−170227号公報
ところで、近年、モバイルノートパソコン等の電子機器では、筐体の薄肉化や軽量化に加え、製品自体の小型化や高性能化の要請に伴い、内蔵部品の小型化・高密度化(高搭載効率)が図られている。
また、最近、マグネシウムよりも比重が低い、マグネシウム−リチウム合金(例えば、LA141合金においては比重1.34)が上市された。これを持ち運び用途の電子機器の筐体に用いることができれば、さらなる軽量化を図ることができる。
しかし、このマグネシウム−リチウム合金をノートパソコン等の電子機器の筐体に採用すべくプレス加工を行う場合、特許文献1に記載のマグネシウム合金を用いたプレス加工では起こり得なかった以下の問題が治験された。
ノートパソコン等の電子機器の筐体の表面には、筐体をノートパソコン本体に取付けるためのネジを挿入するためのネジ孔や本体の滑り止めのゴムパッドを納めるための凹み等が形成される。これらネジ孔や凹みの形状をプレス加工により成形する場合、筐体の表面の意匠性を考慮する必要がある。
意匠性の観点からネジ孔についてはネジが表面からはみ出さないようにネジ頭分の高さ及び直径を確保し、ネジ頭の内側の傾斜とフィットする傾斜部を有するバンプ形状の凹みを設ける必要がある。このバンプ形状の凹みは、筐体の表面(フランジ)とバンプ形状の傾斜部との境界の曲げ部と、傾斜部と凹みの上面部との境界の曲げ部の2箇所の曲げ部を有する。このとき上記意匠性の観点から、この2箇所の曲げ部の曲率半径を極力小さくすることが望ましい。
しかし、マグネシウム−リチウム合金を用いてプレス加工により上記ネジ孔や凹み等が筐体の表面から筐体内側に向かって形成されていく場合、元々平面な板状の合金が上記2箇所の曲げ部を境界として引き伸ばされていくことになる。このとき、上記2箇所の曲げ部の曲率半径が小さすぎると、薄肉化や凹みの深さ(高さ)並びに傾斜部の傾斜具合とも相俟って、上記2箇所の曲げ部が引き伸ばされ、表面の肌理が粗くなるハダアレという現象や割れ(クラック)が発生するという問題がある。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、さらなる軽量化のために採用したマグネシウム−リチウム合金を用いてプレス加工により筐体の表面上に凹みを成形した場合に、その凹みを形成する曲げ部にハダアレや割れが生じることがない電子機器用筐体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記実情に鑑みて鋭意開発を行い、上記目的を達成させる本発明を完成させた。本発明によれば、下記の態様が提供される。
マグネシウム−リチウム合金がプレス加工された結果形成される1以上の面部からなるバンプ形状を有する電子機器用筐体であって、
バンプ形状は、マグネシウム−リチウム合金がプレス加工される前の基準面からプレス加工により筐体内側方向に押し込まれて基準面からずれて配置される新たな面部が基準面に取り囲まれた形状であり、
1以上の面部の板厚t(mm)が0.4≦t≦2.0であり、
バンプ形状を形成する1以上の屈曲部における曲率半径R(mm)がt≦Rであることを特徴とする電子機器用筐体。
本発明によれば、筐体のさらなる軽量化を図るとともに、筐体の表面上に成形される凹みを形成する曲げ部のハダアレや割れを防ぐことが可能となる。
本発明の実施形態のマグネシウム−リチウム筐体としての携帯型電子計算機1に用いられるボトムケース10の概略斜視図である。 本発明の実施形態のボトムケース10の底面から見たネジ孔の凹部11の概略拡大図である。 本発明の実施形態の凹部11の断面図である。 本発明の実施形態のボトムケースにおいて屈曲部の曲率半径が許容範囲外であるときに発生するハダアレ現象を示す画像図である。 本発明の実施形態のボトムケースにおいて屈曲部の曲率半径の許容範囲内外における電子部品等の搭載可否を示す模式図である。
本発明の実施形態のマグネシウム−リチウム合金筐体について、以下、図面を参照して説明する。例えば、図1に示すように、ノート型の携帯電子端末1の底側に本発明の実施形態のボトムケース10が用いられている。本実施形態のボトムケース10の素材としては、比重の低いマグネシウム−リチウム合金を使用する。マグネシウム−リチウム合金の配合による種類については特に制限はなく、いわゆるLZ91やLA141などの名称で定義される何れの種類の合金を適用することができる。なお、筐体の軽量化および剛性を高める観点からは、とりわけ比重の低いLA141を使用することが好ましい。
本実施形態のボトムケース10に用いるマグネシウム−リチウム合金は、リチウムと、アルミニウムと、マグネシウムとをそれぞれ所定質量%含有した合金原料溶融物を冷却固化して得られた合金鋳塊を、圧延、鍛造、押出し、引抜き等の公知の方法で行う塑性工程と、塑性工程でひずみが付加された合金を再結晶化する焼きなまし工程と、表面酸化物層やリチウム偏析層の除去等を行う表面処理工程を経て得ることができる。
本実施形態のボトムケース10は、上記のマグネシウム−リチウム合金に絞り等のプレス加工を施して角形の箱状に成形されることにより得ることができる。なお、本実施形態においては、筐体の薄肉化の観点からボトムケース10の板厚t(mm)を0.4≦t≦2.0とする。
本実施形態のボトムケース10におけるバンプ形状について、図1から図3を用いて説明する。図2は、図1に示したボトムケース10のバンプ形状を拡大して底面から見た概略図である。また、図3は、図2に示したバンプ形状をその中心を通るように垂直方向に切断したA−A’断面を示したものである。本実施形態において、バンプ形状を、プレス加工される前のマグネシウム−リチウム合金圧延板の面を基準面とした場合、該基準面からプレス加工により筐体の内側方向に押し込まれて形成される新たな面が基準面からずれて配置され、その新たな面が基準面に取り囲まれた形状と定義する。
本実施形態においてバンプ形状とは、図1に示すようなボトムケース10を携帯電子端末1に取り付けるためのネジ孔11hを有する凹み部11や、その他のボトムケース10に形成される凹みのことをいう。その他の凹みとは、例えば本体の滑り止め防止のためのゴムパッドを嵌め込むための凹みなど、およそ底面に形成される凹み全般をいう。なお、上述したバンプ形状の定義から、上述した凹み部は、角を有する凹み形状に限定されず、角の無い丸みを帯びたドーム形状なども含まれるものであってよい。
図2及び図3に示すように、凹み部11は、新たな面部としての凹み上面部11a及び凹み肩部11bとで構成される。凹み上面部11aとは凹み部11の凹み側(筐体内部側)に押し込まれる平面のことをいい、凹み肩部11bとは凹み上面部11aと基準面としての底面部10a(フランジ)との間で段差を形成する所定角度の傾斜を有する段部のことをいう。
本実施形態の凹み部11においては、凹みを形成するための屈曲部として、屈曲部11c(第2の屈曲部)及び屈曲部11d(第1の屈曲部)が存在する。屈曲部11cは凹み上面部11aと凹み肩部11bとの間に形成される屈曲部であり、屈曲部11dは凹み肩部11bと底面部10aとの間に形成される屈曲部である。
本実施形態においては、ボトムケース10の板厚tと、屈曲部11c及び屈曲部11dそれぞれの曲率半径Rと、凹み部11の高さHとの関係が以下の各式を満たすようにボトムケース10を成形する。
t≦R・・・(1)
0<H≦R+4・・・(2)
本実施形態においては、屈曲部11cや11dにおける曲率半径Rを上記(1)式における下限値t以下とした場合、成形時、屈曲部11cや11dにおいて材料の伸びが不均一に生じることにより表面の肌理が粗くなるハダアレという現象や、局所的に肉厚が小さくなりクラック(割れ)が発生するため、実用に供する電子機器用筐体を得ることができない。図4(a)にハダアレが発生した筐体表面の画像を示し、図4(b)にハダアレのない筐体表面の画像を示す。
また、凹み部11の高さH(凹み上面部11aと底面部10aとの高低差)は、成形時に割れやハダアレを起こさないために上記(2)式の範囲内で設計することが望ましい。
さらに、底面部10aと凹み肩部11bとの傾斜角θ(°)が、0<θ≦60であることが望ましい。凹み肩部11bの傾斜角が上限とした60°を超える場合、成形時に角の伸びが材料に与えられるために割れやハダアレを起こし、実用に供する電子機器用筐体を得ることができない。また、かかる場合、ネジ内側のテーパの傾斜と合わずに凹み肩部11bと干渉し合い、ネジ頭が底面部10aからはみ出してしまうことになる。
上述した本実施形態のように、薄肉化のためボトムケース10の厚みを薄くした場合でも、ボトムケース10の凹み部11におけるハダアレや割れを防ぐことが可能となる。なお、上述したバンプ形状そのものについては、上述した各条件を満たすものであれば特に本実施形態の形状に限定されず、円形状のバンプや、角Rを有する四角形状等のバンプであってもよい。ただし、ドーム形状などの角がないバンプ形状の場合、上述した本実施形態のように複数の面部ではなく、1つの曲面が形成されることになる。またこの場合、曲面における傾斜角θは、曲面の任意の点に接線を引き、その接線と基準面とのなす角度となる。
なお、本実施形態では、M2.5のネジに対応するため、直径Dを5.5mmの寸法にしているが、上述した各条件式を満たせば、上記の寸法に限定されるものではない。
なお、ハダアレや割れを防ぐ観点において、上述した曲率半径Rの上限値について特に限定されるものではないが、その形状の周辺部に筐体内部の各種基板、液晶パネル及びバッテリー等の電子機器の機能性を発揮するためのコンポーネント、並びに各種電子部品やコード類等を実装するための容積を十分に確保するために、20.0mm以下とすることが望ましい。曲率半径Rが20.0mmを越えた場合、バンプ形状がなだらかなものとなりすぎ、上述した各種電気部品等を実装するための容積を確保することができなくなるからである。
例えば、図5(a)に示すように曲率半径Rを20.0mm以下とした場合、凹み部11の内側に搭載可能であった電子部品30やケーブル40が、図5(b)に示すように曲率半径Rが20.0mmを越えたボトムケース11では、凹み部110における曲率半径が緩やかなために凹み部11の内壁が筐体の内側に張り出すことで電子部品30やケーブル40を搭載するスペースが奪われ、本来の位置に搭載できなくなってしまう。
さらに、図5(b)に示すように、上記2つの屈曲部の曲率半径を大きくすることで、相対的に凹み部の深さが浅くなるため、ネジの頭が符号B分だけ底面からはみ出してしまい、筐体の意匠性を損ねてしまうことになる。この点においても、曲率半径Rの上限を20.0mmとすることが望ましい。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例について説明する。各実施例においては、マグネシウム−リチウム合金として、「サンマリア(株式会社三徳社製)」を使用した。また、成形条件としては、金型温度を室温から300℃までの範囲で調整を行い、サーボプレス等で実施するものとした。
なお、成形においては、縦約200mm、横約300mmのパーソナルコンピュータ用の筐体を想定したプレス試作品を作成して検証を行った。成形時の金型温度は100℃〜300℃としたが、そのいずれにおいても上述した各条件に合致するものとなった。
〔ハダアレ・割れの検証〕
各実施例において、ハダアレについては、プレス加工後の屈曲部を顕微鏡で拡大観察することで目視によりその有無を確認した。また、割れについても同様に目視によりその有無を確認した。その結果として、プレス性判定結果として、ハダアレも割れも発生しなかった場合を『良好』とし、何れかが発生した場合を『ハダアレ』又は『割れ』とし、ハダアレと割れが両方発生した場合を『ハダアレ・割れ』とした。
まず、上述した凹み部(バンプ形状)の各屈曲部において、筐体の板厚を0.4mmとし、凹み肩部の傾斜角を60°とした場合に、ハダアレと割れの検証を『屈曲部における曲率半径r』と『バンプ形状の高さH』をそれぞれ変更した実施例と比較例に分けて行った。その結果、以下の表1の通りとなった。
実施例1では、rを0.4mmとし、Hを4.4mmとした。また、実施例2では、rを0.5mmとし、Hを4.4mmとした。また、実施例3では、rを1.0mmとし、Hを4.4mmとした。また、実施例4では、rを10.0mmとし、Hを14.0mmとした。さらに、実施例5では、rを20.0mmとし、Hを24.0mmとした。その結果、上記の実施例1から5の何れにおいても、プレス性判定結果は『良好』であった。
一方、比較例1では、rを0.2mmとし、Hを4.4mmとしたところ、『ハダアレ及び割れ』が検証された。また、比較例2では、rを0.3mmとし、Hを4.4mmとしたところ、『ハダアレ』が検証された。さらに、比較例3では、rを0.4mmとし、Hを5.0mmとしたところ、『割れ』が検証された。さらに、比較例4では、rを20.0mmとし、Hを26.0mmとしたところ、『割れ』が検証された。
次に、上述した凹み部(バンプ形状)の各屈曲部において、筐体の板厚を2.0mmとし、凹み肩部の傾斜角を60°とした場合に、ハダアレと割れの検証を『屈曲部における曲率半径r』と『バンプ形状の高さH』をそれぞれ変更した実施例と比較例に分けて行った。その結果、以下の表2の通りとなった。
実施例6では、rを2.0mmとし、Hを6.0mmとした。また、実施例7では、rを2.5mmとし、Hを4.4mmとした。また、実施例8では、rを3.0mmとし、Hを4.4mmとした。また、実施例9では、rを10.0mmとし、Hを14.0mmとした。さらに、実施例10では、rを20.0mmとし、Hを24.0mmとした。その結果、上記の実施例6から10の何れにおいても、プレス性判定結果は『良好』であった。
一方、比較例5では、rを1.0mmとし、Hを6.0mmとしたところ、『ハダアレ及び割れ』が検証された。また、比較例6では、rを1.5mmとし、Hを6.0mmとしたところ、『ハダアレ』が検証された。さらに、比較例7では、rを2.0mmとし、Hを8.0mmとしたところ、『割れ』が検証された。さらに、比較例8では、rを20.0mmとし、Hを26.0mmとしたところ、『割れ』が検証された。
上述の検証結果からも明らかなように、本発明の実施形態の上述した(1)式および(2)式、並びにバンプ形状の高さ及び凹み肩部の傾斜角の各条件を満たす場合に、筐体の各屈曲部において『ハダアレ』も『割れ』も発生しない良好な電子機器用筐体を得ることができる。
本発明は、上述したノートパソコンや、その他モバイル端末、スレート端末などの携帯型電子機器の筐体に限らず、白物家電、自動車、産業機械、玩具などの筐体にも適用できる。
1 携帯電子端末
10 ボトムケース
10a 底面部
10c、11c、11d 屈曲部
11 凹み部
11a 凹み上面部
11b 凹み肩部
11h 凹み孔部

Claims (8)

  1. マグネシウム−リチウム合金がプレス加工された結果形成される1以上の面部からなるバンプ形状を有する電子機器用筐体であって、
    前記バンプ形状は、マグネシウム−リチウム合金がプレス加工される前の基準面からプレス加工により筐体内側方向に押し込まれて前記基準面からずれて配置される新たな面部が前記基準面に取り囲まれた形状であり、
    前記1以上の面部の板厚t(mm)が0.4≦t≦2.0であり、
    前記バンプ形状を形成する1以上の屈曲部における曲率半径R(mm)がt≦Rであることを特徴とする電子機器用筐体。
  2. 前記1以上の屈曲部は、少なくとも前記基準面と前記新たな面部との境界に形成される第1の屈曲部であることを特徴とする請求項1記載の電子機器用筐体。
  3. 前記新たな面部上の任意の点に接線を引いたとき、該接線と前記基準面とのなす角θ(°)が0<θ≦60であることを特徴とする請求項1又は2記載の電子機器用筐体。
  4. 前記バンプ形状は、プレス加工によって筐体の内側に向かって押し込まれる凹み上面部と、一方の端部が前記凹み上面部の端部と連通し他方の端部が前記基準面の端部と連通して前記凹み上面部と前記基準面との段差を形成する凹み肩部とからなることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の電子機器用筐体。
  5. 前記1以上の屈曲部は、少なくとも前記凹み上面部と前記凹み肩部との境界に形成される第2の屈曲部であることを特徴とする請求項4記載の電子機器用筐体。
  6. 前記凹み上面部と前記基準面との高低差H(mm)が、0<H≦R+4であることを特徴とする請求項4又は5記載の電子機器用筐体。
  7. 前記マグネシウム−リチウム合金はLA141であることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の電子機器用筐体。
  8. 請求項1からの何れか1項に記載の電子機器用筐体を有する電子機器。
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