JP5714933B2 - 冷菓の製造方法 - Google Patents
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Description
このような冷菓の主要な原料の一つが、牛乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、粉乳、クリーム、バター等の乳原料である。このうち、牛乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、クリーム等は、比較的少ない加熱工程数を経て加工されるため、生乳のフレッシュな風味をある程度保持している。しかしながら、これらの乳原料は、カサが大きく、また保存性も低いため、流通コスト及び保存コストがかかるという問題がある。このような理由から、これらの乳原料を用いた商品は、必然的に高価とならざるを得ない。
一方、上記の乳原料のうち、粉乳やバターは、牛乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、クリームに比べて、比較的多い加熱工程数を経て加工されるため、乳固形分の変性による好ましくない風味(加熱臭)が発現しやすいが、一方で、加熱によって乳のコクが増加することもある。また、カサが小さく、また保存性も高いため、流通コスト及び保存コストを抑えることができる。このような利点から、これらの乳原料は、比較的安価な商品を製造する際に汎用されている。
特に、乳を用いた嗜好品の分野、さらには冷菓の分野では、粉乳やバター等の比較的安価な原料を用いて美味しい製品を製造する技術が強く望まれている。
さらに好ましくは、本発明は、前記加熱臭を低減しながら、一方で粉乳やバターの好ましい香りは生かし、よりフレッシュな風味とコクを併せ持つ冷菓を提供することを課題とする。
さらに好ましくは、本発明は、前記加熱臭を低減しながら、一方で粉乳やバターの好ましい香りは生かし、よりフレッシュな風味とコクを両立する技術を提供することを課題とする。
粉乳やバターに乳発酵物を混合することで、粉乳やバターに特有の加熱臭を低減することができ、従来の同様の乳原料を用いた冷菓に比して、フレッシュな風味の冷菓を製造することができる。
前記乳発酵物を、このような量で混合することにより、粉乳やバターに特有の加熱臭を低減しながら、一方で粉乳やバターの好ましい香りは生かし、フレッシュな風味とコクを併せ持つ、生乳に近い風味の冷菓を製造することができる。また、このような乳酸酸度の範囲とすることで、乳タンパク質の分離を抑制し、保形性に優れた冷菓を製造することができる。
前記乳発酵物を、このような量で混合することにより、粉乳やバターに特有の加熱臭を効果的に低減しながら、一方で粉乳やバターの好ましい香りは生かし、フレッシュな風味とコクを併せ持つ、生乳に近い風味の冷菓を製造することができる。
このような冷菓は、乳脂肪分及び無脂乳固形分を含み、比較的安価な粉乳やバターを主乳原料としているにもかかわらず、従来の同様の乳原料からなる冷菓に比して、加熱臭が低減され、フレッシュな風味を有している。
このような冷菓ミックスを用いることにより、比較的安価な粉乳やバターを主乳原料とする乳脂肪分及び無脂乳固形分を含む冷菓であって、従来の同様の乳原料からなる冷菓に比して加熱臭が低減され、フレッシュな風味を有しているものを、簡便に製造することができる。
前記乳発酵物を、このような量で混合することにより、粉乳やバターに特有の加熱臭を効果的に低減しながら、一方で粉乳やバターの好ましい香りは生かすことができる。
また、好ましい形態によれば、粉乳やバターに特有の加熱臭を効果的に低減しながら、一方で粉乳やバターの好ましい香りは生かし、フレッシュな風味とコクを併せ持つ、生乳に近い風味の冷菓を製造することができる。
また、好ましい形態では、加熱臭が低減されつつ、一方で粉乳やバターの好ましい香りは生きており、フレッシュな風味とコクを併せ持つ、生乳に近い風味である。
また、好ましい形態によれば、加熱臭を効果的に低減しながら、一方で粉乳やバターの好ましい香りは生かし、フレッシュな風味とコクを併せ持つ、生乳に近い風味の冷菓を製造するのに好適な冷菓ミックスを製造することができる。
また、好ましい形態では、フレッシュな風味とコクを併せ持つ、生乳に近い風味の冷菓を安価に製造するのに好適である。
また、好ましい形態によれば、粉乳やバターの加熱臭を低減しつつ、一方で粉乳やバターの好ましい香りは生かし、フレッシュな風味とコクを両立することができる。
本発明において、「乳原料」とは、乳由来の原料であって、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年12月27日厚生省令第52号)」(以下、「乳等省令」と記載する。)で定義される乳及び乳製品を含む。
乳原料の選択は、製造しようとする冷菓の乳脂肪分、及び無脂乳固形分を考慮して決定することができる。乳原料を2種以上組み合わせる場合の好ましい組み合わせとしては、粉乳から選ばれる1種又は2種以上とバターの組み合わせが挙げられる。中でも脱脂粉乳とバターの組み合わせ、全粉乳と脱脂粉乳とバターの組み合わせが好ましく挙げられる。これらの原料を用いることで、後に詳述する乳発酵物の混合による効果を存分に得ることができる。またこれらの原料は、冷菓の乳原料として普及しているため、使用し易い。
本発明においては、脱脂粉乳及びバターを主乳原料とする形態が好ましい。このような形態では、後に詳述する、乳発酵物の混合による効果が存分に発揮され得る。
冷菓の乳脂肪分は、好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。乳脂肪分の上限は特に制限されないが、通常は15質量%程度である。後述する実施例に示すように、本発明は、特に乳脂肪分が5〜10質量%程度の冷菓の製造に好適である。
また、冷菓の無脂乳固形分は、好ましくは6質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上、より好ましくは9質量%以上である。
また、乳脂肪分と無脂乳固形分の合計である乳固形分は、好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは9質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。
すなわち、本発明の製造方法により製造される冷菓は、通常、乳等省令で定義されるラクトアイス、アイスミルク、又はアイスクリームに分類され、好ましくは、アイスミルク、又はアイスクリームに分類される。乳固形分、乳脂肪分、無脂乳固形分の測定は、乳等省令の「乳等の成分規格の試験法」に従って行うことができる。
冷菓における乳固形分、特に乳脂肪分を、後述する粉乳及びバターから選ばれる乳原料を主として構成した冷菓は、これが口の中で溶けていく過程で、粉乳やバターに特有の加熱臭が感じられやすい。従って冷菓の乳固形分が上記一定割合以上であって、さらには乳脂肪分が上記一定割合以上である場合には、後に詳述する乳発酵物の混合による効果を、十分に得ることができる。
前記乳発酵物を、このような量で混合することにより、粉乳やバターに特有の加熱臭を低減しながら、一方で粉乳やバターの好ましい香りは生かし、フレッシュな風味とコクを併せ持つ、生乳に近い風味の冷菓を製造することができる。特に、冷菓ミックスの乳酸酸度が0.02〜0.06%、好ましくは0.025〜0.045%の間にある場合には、当該効果が顕著である。また、このような乳酸酸度の範囲とすることで、乳タンパク質の分離を抑制し、保形性に優れた冷菓を製造することができる。
上述した乳酸酸度の測定は、乳等省令の「乳等の成分規格の試験法」に従って行うことができる。
例えば、上述した乳酸酸度が1.0〜2.5%、好ましくは1.0〜2.0%、さらに好ましくは1.0〜1.5%の乳発酵物を用いる場合には、乳酸発酵物を冷菓ミックスに対し、1〜4質量%程度を目安として混合することができる。
また、冷菓ミックスの調製においては、上述した乳発酵物を混合することを除いて、常法に従うことができる。すなわち、均質化、殺菌、冷却、エージング等の各種工程を適宜行うことができる。
冷菓ミックスの形態としては、そのまま凍結することにより冷菓を製造することができるストレートタイプのほか、水で希釈した後、これを凍結することにより冷菓を製造することができる濃縮タイプ、又は乾燥タイプ等が挙げられる。
この発明において、乳原料や乳発酵物の好ましい形態や、乳発酵物の混合量の好ましい範囲は、本発明の冷菓の製造方法についての説明がそのままあてはまる。
この製造方法により製造される冷菓ミックスは、上述した冷菓を製造するのに、好適である。
この発明において、乳原料や乳発酵物の好ましい形態は、本発明の冷菓の製造方法についての説明があてはまる。また、乳発酵物の添加量の好ましい範囲は、前記乳原料の乳固形分や乳脂肪分を基準に考えることができ、本発明の冷菓の製造方法において説明した好ましい範囲を採用することができる。
アイスミルクの風味に対する乳発酵物の添加の効果を見るため、以下の試験を行った。
表1に示す配合のアイスミルクA(実施例)、及びアイスミルクB(比較例)を、以下のように製造した。乳発酵物は、脱脂粉乳水溶液に乳酸菌(ラクトバチルス属菌及びストレプトコッカス属菌)スターターを添加し、発酵させた後、加熱殺菌したものを用いた(乳発酵物1)。乳発酵物1の乳酸酸度は1.0〜1.5%の範囲であった。なお、何れのアイスミルクも無脂乳固形分、乳脂肪分、植物性脂肪分、糖分は同じとなるように、原料の配合を調節した。
まず、表1に示す原料を混合溶解し、均質化した。これを殺菌し冷却して、エージングした後冷菓ミックスを調製した。続いて、冷菓ミックスをアイスクリームフリーザーで凍結させながらカップに充填し、カップ入りアイスミルクA及びアイスミルクBを製造した。図1は、アイスミルクAの製造方法の工程図である。
併せて、表1に冷菓ミックスの乳酸酸度を示した。冷菓ミックスの乳酸酸度は、乳発酵物の乳酸酸度と乳発酵物の混合量から算出した。また、乳酸酸度(%)を乳固形分(質量%)で除した値、及び乳酸酸度(%)を乳脂肪分(質量%)で除した値も表1に示した。
なお、以降の表中の含有割合を示す“%”は、全て質量による表示である。
製造したアイスミルクA及びアイスミルクBを6人の専門パネラーに試食してもらい、下記の質問に回答してもらった。
(1)乳原料の加熱臭(加工臭、劣化臭)を感じるのはどちらですか。
(2)生乳のフレッシュ感があるのはどちらですか。
(3)乳のコクを感じるのはどちらですか。
また、6人のうち4人の専門パネラーが、アイスミルクA(実施例)は、アイスミルクB(比較例)に比べて乳のコクを感じると回答した。これより、乳発酵物を添加しても、バターや粉乳が有するコクを生かすことができることが分かった。
試験例1で製造した乳発酵物を含むアイスミルクが、比較的高級な原料を用いて製造したアイスミルクの風味にどれだけ近いか検討するため、以下の試験を行った。
表2に示す配合で、比較的高級な原料であるクリームと脱脂濃縮乳を用いたアイスミルクC(対照例)を製造した。試験例1と同様に、6人の専門パネラーにより、アイスミルクCとアイスミルクA(実施例)とを比較してもらった。なお、アイスミルクCの無脂乳固形分、乳脂肪分、植物性脂肪分、糖分は、アイスミルクAと同じになるように、原料の配合を調節した。
なお、アイスミルクB(比較例)とアイスミルクC(対照例)の比較も同様に行ったが、6人全員がアイスミルクC(対照例)の方が、加熱臭を感じない、生乳のフレッシュ感がある、乳のコクを感じると回答した。
乳発酵物の混合による効果が、乳脂肪分を含有しない冷菓において得られるかを見るため、以下の試験を行った。
表3に示す配合の2種のラクトアイスD及びラクトアイスE(何れも参考例)を、上述したアイスミルクと同様の方法で製造し、試験例1と同様に、6人の専門パネラーにより比較してもらった。なお、何れのラクトアイスも無脂乳固形分、植物性脂肪分、糖分は同じとなるように、原料の配合を調節した。
乳発酵物の添加の効果が、乳脂肪分を少量含有する冷菓において得られるかを見るため、以下の試験を行った。
表4に示す配合の2種のラクトアイスF(実施例)及びラクトアイスG(比較例)を、上述したアイスミルクと同様の方法で製造し、試験例1と同様に、6人の専門パネラーにより比較してもらった。なお、何れのラクトアイスも無脂乳固形分、乳脂肪分、植物性脂肪分、糖分は同じとなるように、原料の配合を調節した。
乳発酵物の添加の効果が、乳脂肪分を多量に含有する冷菓において得られるかを見るため、以下の試験を行った。
表5に示す配合の2種のアイスクリームH(実施例)及びアイスクリームI(比較例)を、上述したアイスミルクと同様の方法で製造し、試験例1と同様に、6人の専門パネラーにより比較してもらった。なお、何れのアイスクリームも無脂乳固形分、乳脂肪分、糖分は同じとなるように、原料の配合を調節した。
冷菓ミックスにおける、乳発酵物の好ましい混合量を検討するため、表6に示す配合のアイスミルクJ(実施例)を、上述したアイスミルクと同様の方法で製造した。試験例1と同様に、6人の専門パネラーにより、アイスミルクJとアイスミルクA(実施例、試験例1の表1参照)とを比較してもらった。なお、アイスミルクJの無脂乳固形分、乳脂肪分、植物性脂肪分、糖分は、アイスミルクAと同じになるように、原料の配合を調節した。
さらに、冷菓ミックスにおける乳酸酸度の好ましい範囲を検討するため、上記と異なる乳酸酸度の乳発酵物を用いて、表7に示す配合のアイスミルクK(実施例)を製造した。乳発酵物は、脱脂粉乳水溶液に乳酸菌(ラクトバチルス属菌及びストレプトコッカス属菌)スターターを添加し、発酵させた後、加熱殺菌したものを用いた(乳発酵物2)。乳発酵物2の乳酸酸度は2.0〜2.5%の範囲であった。試験例1と同様に、6人の専門パネラーにより、アイスミルクKとアイスミルクB(比較例、試験例1の表1参照)とを比較してもらった。なお、アイスミルクKの無脂乳固形分、乳脂肪分、植物性脂肪分、糖分は、アイスミルクBと同じになるように、原料の配合を調節した。
さらに、冷菓ミックスにおける乳酸酸度の好ましい範囲を検討するため、2種の乳発酵物(乳発酵物2、乳発酵物3)を用いて、表8に示す配合のアイスミルクL及びアイスミルクM(何れも実施例)を製造した。乳発酵物3は、脱脂粉乳水溶液に乳酸菌(ラクトバチルス属菌及びストレプトコッカス属菌)スターターを添加し、発酵させたもの(非殺菌)であった。乳発酵物3の乳酸酸度は2.5〜3.0%の範囲であった。
これらのアイスミルクの風味について、6人の専門パネラーに自由評価してもらった。
以上の結果から、冷菓ミックスの乳酸酸度が0.08〜0.11%となるような量で乳発酵物を混合した場合には、フレッシュ感や加熱臭の低減の効果は得られるものの、一方で乳のコクも多少低減することが分かった。上述した試験例の結果も併せて、乳のコクも生かしつつ加熱臭を低減するという目的においては、乳発酵物の混合量の上限としては、冷菓ミックスの乳酸酸度が、通常0.1%程度、好ましくは0.06%程度となるような量であることが分かった。
Claims (11)
- 粉乳及びバターからなる群から選ばれる1種又は2種以上を主乳原料とする、乳脂肪分及び無脂乳固形分を含む冷菓の製造方法であって、粉乳及びバターからなる群から選ばれる1種又は2種以上に乳発酵物を、冷菓ミックスの乳酸酸度が0.01〜0.1%となるように混合し冷菓ミックスを調製することを特徴とする、製造方法。
- 前記冷菓を構成する全ての乳原料に対し、粉乳及びバターからなる群から選ばれる1種又は2種以上が乳固形分換算で7割以上を占めることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
- 前記冷菓の乳脂肪分が2質量%以上である、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記冷菓の乳固形分が8質量%以上である、請求項1〜3の何れか一項に記載の製造方法。
- 前記乳発酵物を、冷菓ミックスの乳固形分に対する乳酸酸度が、0.1〜0.8%となるような量、混合することを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の製造方法。
- 請求項1〜5の何れか一項に記載の製造方法により製造される冷菓。
- 粉乳及びバターからなる群から選ばれる1種又は2種以上を主乳原料とする、乳脂肪分及び無脂乳固形分を含む冷菓ミックスの製造方法であって、粉乳及びバターからなる群から選ばれる1種又は2種以上に、乳発酵物を、冷菓ミックスの乳酸酸度が0.01〜0.1%となるような量、混合することを特徴とする、製造方法。
- 前記冷菓ミックスは、乳脂肪分が2質量%以上の冷菓を製造するためのものである、請求項7に記載の製造方法。
- 前記冷菓ミックスは、乳固形分が8質量%以上の冷菓を製造するためのものである、請求項7又は8に記載の製造方法。
- 前記乳発酵物を、冷菓ミックスの乳固形分に対する乳酸酸度が、0.1〜0.8%となるような量、混合することを特徴とする、請求項7〜9の何れか一項に記載の製造方法。
- 請求項7〜10の何れか一項に記載の製造方法により製造される冷菓ミックス。
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