JP5714592B2 - エポキシ化合成ゴムを含有するゴム組成物、およびそれを含有するタイヤトレッド - Google Patents
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Description
転がり抵抗性とグリップ性の組み合わせた改善は、依然としてタイヤデザイナーの絶えざる関係である。
例えば、米国特許第7371791号明細書、同第6220323号明細書、欧州特許第0644235号明細書または同第1577341号明細書に記載されているように、使用特性の一部、特に濡れた地面に対するグリップ性能、転がり抵抗および耐摩耗性を改善するためにタイヤトレッドにエポキシ化天然ゴム(ENR)エラストマーを用いることが知られている。
米国特許出願公開第2006/128868号明細書からも、ツールに対する加工を容易にするために、すなわち、補強充填剤としてシリカを含有する組成物の生の加工性を改善するために、イソプレンおよび1,3-ブタジエンのホモポリマーおよびイソプレンおよび1,3-ブタジエンとスチレンと、必要により他の合成ジエンエラストマーとのブレンドとしてのコポリマーより選ばれる合成ジエンエラストマーをベースとする、タイヤトレッドの製造に用いられるエクステンダー油をおそらく含有するゴム組成物において、2つの種類の官能基、一方ではアミンまたはアミド、もう一方ではエポキシ官能基を含む種々の官能基、言い換えればESRより選ばれる1つ以上の官能基によって官能基化されるエラストマーを用いることが知られている。
さらに、タイヤ用ゴム組成物は、既知のように、未キュア状態の前記組成物の生の加工性、さらにキュア状態での使用特性の一部、例えば、タイヤトレッドの場合、濡れた地面上でのグリップあるいは耐摩耗性や耐カット性を改善するために、ある種のジエンエラストマーの調製または合成に用いられる可塑剤を含む。
本発明の他の本題は、タイヤまたはタイヤ用の半仕上げ製品、特にタイヤトレッドの製造のためのこの補強されたゴム組成物の使用である。
本発明の他の本題は、濡れた地面上でのグリップの改善を得るためにタイヤトレッドが新タイヤの製造を意図するにしても、中古タイヤの再生を意図するにしても、タイヤまたはタイヤ用の半仕上げ製品、特にタイヤトレッドの製造のためのこの補強されたゴム組成物の使用である。
本発明の他の本題は、これらが本発明の組成物を完全にまたは部分的に含む場合のタイヤ用の半仕上げ製品およびタイヤ自体である
本発明の他の本題は、タイヤの濡れた地面上でのグリップを改善するかまたは濡れた地面上でのグリップとタイヤの転がり抵抗双方を改善するための方法である。
語句“ベースとする”組成物は、用いられる種々の成分の混合物および/または反応生成物を含む組成物を意味すると理解されなければならず、これらのベース成分の一部は、組成物の製造のさまざまな相の間に、特にその架橋または加硫の間に、少なくとも部分的に、相互に反応することができるかまたは相互に反応することを意図する。
本説明において、特にことわらない限り、示されるすべてのパーセント(%)は質量%である。さらに、語句“aとbの間”によって示される値の範囲は、aよりも多くbよりも少ない値の範囲を表し(すなわち限度aとbを除く)、語句“aからbまで”によって示される値の範囲は、aからbまでの値の範囲を表す(すなわち厳密な限度aとbを含む)。
それ故、本発明のゴム組成物は、少なくとも、エポキシ官能基含量が7%から25%までの範囲にあるエポキシ化合成ゴム(ESR)を含むエラストマーマトリックス、補強充填剤の少なくとも50質量%が無機充填剤から構成される補強充填剤、および極性液体可塑剤からなる可塑剤をベースとする。
本発明に関連して用いられるゴム組成物は、少なくとも1つのエポキシ化合成ジエンゴム(ESRと略記される)を含む第1の本質的特徴を有する。本発明の用語“ESR”は、エポキシ化合成ジエンゴムまたはいくつかのエポキシ化合成ジエンゴムの混合物を意味すると理解されなければならない。
語句“ジエンエラストマー”は、本発明によればジエンモノマーから少なくとも部分的に得られる合成エラストマーを意味すると理解されなければならない。より詳しくは、語句“ジエンエラストマー”は、炭素原子4〜12個を有する共役ジエンモノマーの重合によって得られるホモポリマー、または1つ以上の共役ジエンと相互にまたは炭素原子8から20個までを有する1つ以上のビニル芳香族化合物との共重合によって得られるコポリマーを意味すると理解される。コポリマーの場合、これらは、20%から99質量%までのジエン単位と、1%から80重量%までのビニル芳香族単位を含有する。
本発明のプロセスに使用し得る適切な共役ジエンは、特に、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジ(C1-C5)アルキル-1,3-ブタジエン、例えば、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエンまたは2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン、フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン等である。
適切なビニル芳香族化合物は、特に、スチレン、オルト-、メタ-およびパラ-メチルスチレン、市販の“ビニルトルエン”混合物、パラ(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン等である。
まとめると、本発明の組成物のジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(“BR”と略記される)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる高度に不飽和のジエンエラストマーの群より選ばれる。そのコポリマーは、より好ましくは、ブタジエン-スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン-ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン-スチレンコポリマー(SIR)およびイソプレン-ブタジエン-スチレンコポリマー(SBIR)、より詳しくはこれら中でも、SBR、SIRおよびSBIRからなる群より選ばれる。
エポキシ化合成ジエン系ゴム(ESR)は、それ自体既知のように、合成ジエンエラストマーのエポキシ化によって、例えば、クロロヒドリンまたはブロモヒドリンをベースとするプロセスまたは過酸化水素、アルキルヒドロペルオキシドまたは過酸(例えば、過酢酸または過ギ酸)をベースとするプロセスによって得ることができる。
目標とする技術的効果を得るために、ESRのエポキシ化度(モル%)は、7%から25%に及ぶ範囲にある。エポキシ化度が7%未満である場合、目標とする技術的効果(濡れた地面上でのグリップの改善)は不充分である危険を冒す; 25%よりも大きいと、目標とする技術的効果は確実に改善されるが、40℃におけるtan(δ)が増大する。すなわち、転がり抵抗が不利になる。これらの理由により、ESRのエポキシ化度は、7%から25%に及ぶ範囲になければならない。それは、好ましくは7%から15%に及ぶ範囲にある。実際に、この範囲で、濡れた地面上でのグリップの改善だけでなく、ヒステリシス特性の非常に予想外の改善、したがって転がり抵抗の低下も見られることが可能である。
本発明に関連して用いられるゴム組成物は、好ましくは40phrよりも多いESRを含む; より好ましくは、ESR含量は、50から100phrに及ぶ範囲、特に70から100phrに及ぶ範囲にある。
ESRゴムは、本発明によれば、本発明のいくつかのエポキシ化合成ジエンゴムの混合物から構成され得る。
上記のESRゴムは、タイヤカバーに通例用いられかつ官能基化剤、カップリング剤または星状分岐剤を用いて、それ自体既知の方法で、必要によりカップリングされ及び/又は星状分枝され及び/又は官能基化されてもよい、天然ゴムおよび合成ジエンエラストマー、およびこれらのエラストマーの混合物より選ばれる1つ以上の他のジエンエラストマーと組み合わせることができる。
少なくとも1つの他のジエンエラストマーとのブレンドの場合、エラストマーマトリックス中のESRの質量画分は、主画分であり、好ましくは、マトリックスの全質量の50質量%以上である。本発明の主質量画分は、ブレンドの最大質量画分を意味する。
本発明の組成物中の追加の前記エラストマー(1つ以上)の割合がより少ない場合に本発明のゴム組成物の特性の改善がより大きくなることは留意される。
本発明のゴム組成物は、また、補強充填剤を含み、補強充填剤の少なくとも50質量%は無機充填剤から構成される。
用語“補強無機充填剤”は、本特許出願において、定義により、それ自体単独で、中間のカップリング剤以外の手段を含まずに、タイヤの製造を意図とするゴム組成物を補強することができる、言い換えれば、その補強役割において、慣用のタイヤグレードカーボンブラックを置き換えることができる、カーボンブラックとは対照的に“白色充填剤”、“透明充填剤”、実際に“非ブラック充填剤”とさえも知られる、その色またはその由来(天然または合成)が何であれ、無機または鉱物充填剤を意味するとして理解されなければならない; その充填剤は、一般的には、既知のように、その表面のヒドロキシル(-OH)基の存在に特徴を有する。
補強無機充填剤が供給される物理的状態は、それが粉末でも、ミクロビーズでも、顆粒でも、ボールでもまたは他の適切な高密度化の形でも、重要でない。もちろん、語句“補強無機充填剤”は、また、特に、後述される高度に分散可能なシリカ質および/またはアルミナの充填剤の、種々の補強無機充填剤の混合物を意味すると理解される。
用いられる補強無機充填剤は、特にそれがシリカである場合には、好ましくは45と400m2/gの間、より好ましくは60と300m2/gの間のBET表面積を有する。
この補強無機充填剤とのブレンドとして、カーボンブラックのような有機充填剤を用いることが可能である。
カーボンブラックとして、タイヤに通例用いられているすべてのカーボンブラック、特にHAF、ISAFおよびSAFのタイプのブラック(“タイヤグレード”ブラック)が適切である。より詳しくは、100、200または300シリーズ(ASTMグレード)、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347およびN375ブラックの補強カーボンブラック、あるいは目標とされる用途によっては、より高級シリーズ(例えば、N660、N683またはN772)のブラックが挙げられる。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形でイソプレンエラストマーにすでに組み入れられていてもよい(例えば、国際公開第97/36724号パンフレットまたは同第99/16600号パンフレットを参照のこと)。
好ましくは、全補強充填剤(補強無機充填剤、例えばシリカおよび/または有機充填剤、たとえばカーボンブラック)の含量は、50以上、より好ましくは50と150phrの間である(これらの限界を含む)。最適は既知のように目標とされる個々の用途によって異なる: 例えば、自転車タイヤに関して予想される補強レベルは、もちろん、持続した方法で高速で走行できるタイヤ、例えば、オートバイタイヤ、乗用車用のタイヤまたは多用車用のタイヤ、例えば、重量車に関して必要とされるものより低い。
本発明の一好適実施態様によれば、50から150phrまで(これらの限界を含む)、好ましくは50から130phrの間の無機充填剤、特にシリカ、および必要により有機充填剤、例えばカーボンブラックを含む補強充填剤が使われる; カーボンブラックは、それが存在する場合、好ましくは20phr以下、より好ましくは10phr未満(例えば0.1と10phrの間)の含量で用いられる。
補強無機充填剤をジエンエラストマーにカップリングするために、既知のように、無機充填剤(その粒子の表面)とジエンエラストマーの間に、化学的および/または物理的性質の満足な結合を与えることを意図した少なくとも二官能性カップリング剤(または結合剤)、特に二官能性オルガノシランまたはポリオルガノシロキサンが使われる。
特に、例えば、国際公開第03/002648号パンフレット(または米国特許出願公開第2005/016651号明細書)や国際公開第03/002649号パンフレット(または米国特許出願公開第2005/016650号明細書)に記載されている、個々の構造によっては“対称”または“非対称”と呼ばれるシランポリスルフィドが使われる。
下記の一般式(I)に対応する対称シランポリスルフィドは、以下の定義が特に適切であるが、これに限定されない:
(I) Z - A - Sx - A - Z、式中:
- xは、2から8まで(好ましくは2から5まで)の整数であり;
- A記号は、同じかまたは異なり、二価の炭化水素系基(好ましくは、C1-C18アルキレン基またはC6-C12アリーレン基、より詳しくはC1-C10アルキレン、特にC1-C4アルキレン、特にプロピレン)であり;
- Z記号は、同じかまたは異なり、下記の3つの式の1つに対応する:
- 置換または無置換R1基は、相互に同一であるかまたは異なり、C1-C18アルキル、C5-C18シクロアルキルまたはC6-C18アリール基(好ましくはC1-C6アルキル基、シクロヘキシル基またはフェニル基、特にC1-C4アルキル基、より詳しくはメチルおよび/またはエチル)を示し;
- 置換または無置換R2基は、相互に同一であるかまたは異なり、C1-C18アルコキシル基またはC5-C18シクロアルコキシル基(好ましくはC1-C8アルコキシルおよびC5-C8シクロアルコキシルより選ばれる基、より好ましくはC1-C4アルコキシルより選ばれる基、特にメトキシルおよびエトキシルより選ばれる基)を示す。
上記の式(I)に対応するアルコキシシランポリスルフィドの混合物、特に市販の通常の混合物の場合には、“x”指数の平均値は、好ましくは2と5の間、より好ましくは4の近くの小数である。しかしながら、本発明は、例えば、アルコキシシランジスルフィド(x = 2)で有利には行うこともできる。
より詳しくは、シランポリスルフィドの例として、ビス((C1-C4)アルコキシル(C1-C4)アルキルシリル(C1-C4)アルキル)ポリスルフィド(特に、ジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド)、例えば、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)またはビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドが挙げられる。特に、これらの化合物の中で、TESPTと略記されるビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S]2またはTESPDと略記されるビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2が使われる。また、好適な例として、国際公開第02/083782号パンフレット(または米国特許出願公開第2004/132880号明細書)に記載されているように、ビス(モノ(C1-C4)アルコキシルジ(C1-C4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド(特にジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド)、より詳しくはビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドが挙げられる。
他のシランスルフィドの例として、例えば、米国特許第6 849 754号明細書、国際公開第99/09036号パンフレット、同第2006/023815号パンフレット、同第2007/098080号パンフレットに記載されている、例えば、少なくとも1つのチオール(-SH)官能基(メルカプトシランとして知られる)および/または少なくとも1つのブロックされたチオール官能基をもつシランが挙げられる。
もちろん、特に上述した国際公開第2006/125534号パンフレットに記載されている、前に記載されたカップリング剤の混合物も使用し得る。
保護エラストマー層において、シリカのような無機充填剤によって補強される場合、カップリング剤の含量は、好ましくは4から15phrまで、より好ましくは4から12phrまでの範囲にある。
他の種類、特に有機質の補強充填剤が、本項に記載される補強無機充填剤に等価な充填剤として用いられることを当業者は理解するであろう。但し、この補強充填剤が無機層、例えばシリカで覆われているか、あるいはその表面に官能部位、特にヒドロキシル部位を含み、充填剤とエラストマーの間の結合を形成するためにカップリング剤の使用を必要とする。
語句“液体可塑剤”は、既知のように、20℃で液体である、“低Tg可塑剤”と呼ばれる、すなわち、定義により、-20℃よりも低い、好ましくは-40℃よりも低いTgを有する可塑剤を意味すると理解される。液体可塑剤は、好ましくは非芳香族性または非常に弱い芳香族性であり、2つの種類: 極性可塑剤と無極性可塑剤に分けることができる。
これらの無極性可塑剤の中で、ナフテン油、特に水素化ナフテン油、パラフィン油、MES(軽度抽出溶媒和物)油、HPD(水素化パラフィン蒸留)油またはTDAE(留出芳香族抽出物処理)油およびこれらの化合物の混合物を挙げることができる。
極性可塑剤の中で、エステルおよびエーテル可塑剤、ホスフェートおよびスルホネート可塑剤およびこれらの化合物の混合物を挙げることができる。ホスフェート、トリメリテート、ピロメリテート、フタレート、1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート、アジパペート、アゼレート、セバケート、グリセロールトリエステルおよびこれらの化合物の混合物によって形成される群より選ばれる化合物が特に好ましい。グリセロールトリエステルの中で、グリセロールトリオレエート、より詳しくはオレフィンヒマワリ油が好まれる。
したがって、本発明の一好適態様によれば、極性液体可塑剤からなる可塑剤は、より詳しくはグリセロールトリエステル、例えばオレフィンヒマワリ油を含む。
本発明の一実施態様によれば、可塑剤は、極性液体可塑剤の他に、上記の無極性液体可塑剤を含むことができる。
炭化水素系樹脂は、脂肪族または芳香族あるいは脂肪族/芳香族タイプ、すなわち、脂肪族および/または芳香族モノマーであり得る。これらは、天然でも合成でもよく、石油に基づいても(その場合には、石油樹脂の名前としても知られる)、基づかなくてもよい。
一例として、炭化水素系可塑化樹脂は、シクロペンタジエン(CPDと略記される)またはジシクロペンタジエン(DCPDと略記される)ホモポリマーまたはコポリマー樹脂、テルペンホモポリマーまたはコポリマー樹脂、テルペン-フェノールホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C5留分ホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C9留分ホモポリマーまたはコポリマー樹脂およびこれらの樹脂の混合物より選ばれる。特に、テルペンタイプの上記の炭化水素系可塑化樹脂の中で、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテンまたはポリリモネンホモポリマーまたはコポリマー樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、混合物として、単独でまたは液体可塑剤、例えば、MESまたはTDAEのような油と組み合わせて使用し得る。特に、テルペンタイプの炭化水素系可塑化樹脂の中で、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテンまたはポリリモネンホモポリマーまたはコポリマー樹脂が挙げられる。
可塑剤の含量は、好ましくは5から70phrまでの範囲にある。示された最小限度よりも少ないと、目標とされる技術的効果が不充分であることになり、最大限度より多いと、配合ツールに対する未キュア状態の組成物の粘着が、ある場合において、工業的見地から容認できなくなることがある。これらの理由により、可塑剤の含量は、より好ましくは10から40phrまで、特に15から35phrまでの範囲にある。
本発明のゴム組成物は、また、カップリング剤に加えて、カップリングアクチベータ、無機充填剤を覆うための物質、またはより一般的には、既知の方法で、ゴムマトリックス中の充填剤の分散および組成物の粘度の低下の改善によって未キュア状態で加工の容易さを改善することができる加工助剤を含有することができ、これらの物質または助剤は、例えば、加水分解性シラン、例えば、アルキルアルコキシシラン、ポリオール、ポリエーテル、第一級、第二級または第三級アミン、またはヒドロキシル化または加水分解性ポリオルガノシロキサンである。
本発明に関連して用いられるゴム組成物は、当業者に周知の2つの逐次調製相を用いて適切なミキサー内で製造することができる: 高温、110℃と190℃の間、好ましくは130℃と180℃の間の最高温度までの熱機械的加工または混練(“非生産”相と呼ばれる)の第1の相、続いて、より低い温度まで、典型的には110℃よりも低い、例えば、40℃と100℃の間の機械的加工(“生産”相と呼ばれる)の第2の相、最終相のその間に架橋系が組み入れられる。
- ESRジエンエラストマーに、第1の段階で(“非生産”段階と呼ばれる)、少なくとも1つの補強充てん剤および極性液体可塑剤を含む少なくとも1つの可塑剤を組み入れ、110℃と190℃の間の最高温度に達するまで、すべて熱機械的に混練される段階(例えば1つ以上の工程で);
- 合わせた混合物を100℃よりも低い温度に冷却する段階;
- 続いて、第2の段階で(“生産”段階と呼ばれる)架橋系を組み入れる段階;
- すべてを110℃よりも低い最高温度まで混練する段階。
一例として、非生産相は、第1の工程において、すべての必要なベース成分(ESRおよび任意の選択できる他のジエンエラストマー、可塑剤、補強充填剤およびカップリング剤)を)が適切なミキサー、例えば標準内部ミキサーに導入され、続いて、第2の工程において、例えば、1〜2分間の混練した後、架橋系を除いて、他の添加剤、選択できる追加の充填剤-被覆剤または加工助剤が導入される単一の熱機械的段階において行われる。この非生産相における合計混練時間は、好ましくは1分と15分の間である。
次に、このようにして得られた混合物を冷却した後、架橋系を低温(例えば、40℃と100℃の間)に維持された、外部ミキサー、例えば開放型ロール機に組み入れる。次に、合わせた混合物は、数分間、例えば2と15分の間混合される(生産相)。
次に、このようにして得られた最終組成物は、例えば、シートまたはスラブの形に、特に実験室確認のために、カレンダー加工されるか、あるいは、例えば、トレッドを製造するために用いられるゴムプロファイルド構成要素を形成するために、押出される。
本発明は、未キュア状態(すなわちキュアリング前)とキュア状態(すなわち、架橋または加硫の後)双方での上記のゴム組成物、タイヤおよびタイヤトレッドに関する。
本発明の上述した特徴等は、例示として示されるとともに限定を意味しない、本発明のいくつかの例示的実施態様の下記の説明を読み取る際により良く理解されるであろう。
I-用いられる測定および試験
I.1-動的特性
動的特性は、規格ASTM D 5992-96に従って、粘度アナライザー(Metravib VA4000)により測定する。単純な交互正弦剪断応力に10Hzの周波数で供した加硫組成物の試料(厚さ4mmと400mm2の断面積を有する円筒状試験片)の応答を、0.7MPaの一定応力において温度スウィープで記録する; 0℃で観察されるtan(δ)の値と40℃で観察されるtan(δ)の値を記録する。
当業者に周知なように、0℃でのtan(δ)の値が濡れた地面上でのグリップに対する可能性を表すことが思い出される: 0℃でのtan(δ)が高いほど、グリップは良好である。40℃でのtan(δ)の値は、材料のヒステリシス、したがって、転がり抵抗を表す: 40℃でのtan(δ)が小さいほど、転がり抵抗が小さい。
II.1-組成物の調製
以下の試験は、以下の方法で行われる: 充填剤(シリカとカーボンブラック)の2/3、シリカの存在下のカップリング剤およびESRを、0分に、約3リットル(最終充填割合: 約70容積%)の内部ミキサーに導入し、その最初の容器温度は約70℃である。次に、95℃の温度に達するまで、50 rpmの混練羽根の速度により1段で熱機械的加工(非生産相)を行う。165℃の最大“低下”温度に達するように、全体で約5分間続く熱機械的加工を続けつつ、95℃の温度に達したときに、充填剤の残りの1/3、可塑剤、さらにいくつかの促進剤が用いられる場合には1つの促進剤を含む種々の他の成分を、一方では、加硫系を、もう一方では、ZnOを除いて添加する。
このようにして得られた混合物を回収し、冷却し、硫黄およびスルフェンアミド型促進剤を50℃でミキサー(ホモフィニッシャ)に組み入れ、合わせた混合物は適切な時間(例えば、5と12分の間)混合される(生産相)。
このようにして得られた組成物は、引き続き、ある特性の測定のために、スラブ(2〜3mmの厚さ)またはゴムの薄いシートの形にカレンダー加工されるか、またはトレッドの形で押出される。
試験は、濡れた地面上でのグリップおよび転がり抵抗に関して、対照組成物と比較して本発明の組成物によって示される改善を証明する。
これを行うために、SBRエラストマーマトリックスをベースとする7つのゴム組成物を、前述のように調製した。8つがESRのエポキシ化度が異なるESR(B〜Gで示される)であり1つが非エポキシ化SBR(対照はAで示される)である。
組成物の詳細を表1にまとめる。
(1) 40%のスチレンを有するSBR溶液、-30℃のTgを有する(s-SBR)。
(2) 40%のスチレンと種々のエポキシ官能基含量を有するSBR溶液;
(3) “Zeosil 1165 MP”Rhodia製、“HD」タイプ(BETおよびCTAB: 約160m2/g);
(4) TESPTカップリング剤(“Si69”Degussa製);
(5) N234カーボンブラック(ASTMグレード);
(6) グリセロールトリオレエート(85質量%のオレイン酸を有するヒマワリ油、“lubrirob Tod 1880”Novance製);
(7) C32STオゾンワックス;
(8) N-1,3-ジメチルブチル-N-フェニル-パラ-フェニレンジアミン(Santoflex 6-PPD、Flexsys製);
(9) ジフェニルグアニジン(“Perkacit DPG”Flexsys製);
(10) 酸化亜鉛(工業グレード - Umicore);
(11) ステアリン(“Pristerene”Uniquema製);
(12) N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(Santocure CBS、Flexsys製)。
濡れた地面上でのグリップの改善は、一定の転がり抵抗で非常に顕著に改善され、当業者がtan(δ)レベルの0.02の改善をタイヤ性能レベルの本当の改善であるとみなすことを知っている。
本発明に従ってエポキシ化されるSBRをベースとする組成物は、ESRのエポキシ化度が7%から25%までの範囲にある場合に予想外にかなり改善される動的特性を示すことがわかる:
- 0℃におけるtan(δ)の値が対照組成物Aのそれより著しく高い、濡れた地面上でのグリップ改善の認識された指標である; および
- 一方、40℃におけるtan(δ)の値が実質的に不変であるかまたは対照組成物Aに相対して同時に改善され、当業者には、不変ヒステリシス、したがって不変転がり抵抗と同じことを表している。
この表からの結果を比較することによって、タイヤトレッドにおけるエポキシ化ジエンエラストマーと極性可塑化用オイルの組み合わせの使用が転がり抵抗を損なうことなく濡れた地面上でのグリップを最大にすることおよび濡れた地面上でのグリップと転がり抵抗に対する特性の改善された妥協を得ることを可能にすると結論することができる。
PIエラストマーのマトリックスをベースとする3つのゴム組成物を前述のように調製した、本発明の2つ(IとJで示される)と本発明でない1(以下にHで示される対照)。
本発明の組成物IおよびJは、100phrのESRを含み、ESRの異なるエポキシ化度が異なる。対照組成物Hは、100phrの非官能基化PIと可塑剤を含む。
組成物の配合詳細を表3にまとめる。
(1) 40%の3,4-IRを有するポリイソプレン、-36℃のTgを有する;
(2) 40%の3,4-IRを有するポリイソプレン、種々のエポキシ官能基含量を有する;
(3) シリカ:“Zeosil 1165 MP“Rhodia製“HD“タイプ(BETおよびCTAB: 約160m2/g);
(4) TESPTカップリング剤(“Si69」Degussa製);
(5) N234カーボンブラック(ASTMグレード);
(6) グリセロールトリオレエート(85質量%のオレイン酸を有するヒマワリ油、“lubrirob Tod 1880”Novance製);
(7) C32STオゾンワックス;
(8) N-1,3-ジメチルブチル-N-フェニル-パラ-フェニレンジアミン(Santoflex 6-PPD、Flexsys製);
(9) ジフェニルグアニジン(“Perkacit DPG“Flexsys製);
(10) 酸化亜鉛(工業グレード - Umicore);
(11) ステアリン(“Pristerene“Uniquema製);
(12) N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(Santocure CBS Flexsys製)。
さらに、これらの試験の結果は、極性合成ゴム、例えば、エポキシ化SBRまたはPIと極性液体可塑剤との組み合わせ使用が、0℃でのtan(δ)の増加を最大するのに有益でありかつその組成物を用いて製造されたタイヤトレッドの濡れた地面上でのグリップおよび転がり抵抗に有利な特性の改善された妥協を得ることを可能にすることを示している。
Claims (10)
- 少なくとも、エポキシ官能基含量が7%から25%までの範囲にあるエポキシ化合成ゴム(ESR)を含むエラストマーマトリックス、無機充填剤を少なくとも50%の質量画分で含む補強充填剤および極性液体可塑剤を含む可塑剤をベースとするゴム組成物。
- ESRが、-10℃と-60℃の間のTgを有することを特徴とする、請求項1に記載のゴム組成物。
- ESRが、-20℃から-40℃までのTgを有することを特徴とする、請求項2に記載のゴム組成物。
- エラストマーマトリックスが、主なエラストマーとしてESRゴムを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
- ESRが、ブタジエン-スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン-スチレンコポリマー(SIR)およびイソプレン-ブタジエン-スチレンコポリマー(SBIR)または合成ポリイソプレンより選ばれるコポリマーであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
- 可塑剤が、極性液体可塑剤によって構成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴム組成物。
- 極性可塑剤が、オレインヒマワリ油であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のゴム組成物。
- 補強無機充填剤の量が、50と150phrの間である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のゴム組成物。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載のゴム組成物を含むタイヤトレッド。
- 請求項9に記載のトレッドを含む、タイヤ。
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