本発明の実施の形態を説明する前に、その背景となる技術について説明する。
(光学素子の構成)
図1は、本発明の背景技術に係る光学素子である透光部材1の構成を示す平面図、図2は、その正面図および図3はその底面図である。
図1から図3に示すように、透光部材1は、外形が円形であって、光散乱粒子として粒子径が数μmの球状かつ透光性のシリコーン粒子(図示省略)が含有された透明のポリメチルメタクリレート(以下、「PMMA」と略記する。)樹脂成形体である。透光部材1は、中央に配置される平面円形状の第1の導光部2(導光部の一部)と、その周りに配置されるドーナツ状の第2の導光部3(導光部の一部)とを有する。第1の導光部2は、その第1の導光部2に光を入射する入射部11(図3,図4参照)と、入射部11へ入射した光を反射する入射部11とは反対側の面に配置される反射面12とを有している。
この反射面12の中央は、中心点13となり、その中心点13は、透光部材1の中心であり、第1の導光部2の中心であり、かつ第2の導光部3の中心となる。この透光部材1は、入射部11に入射した光を反射面12に導き反射面12によって反射した光を第2の導光部3に導いている。第1の導光部2と第2の導光部3とは、2材成形によって一体化され、透光部材1は見た目上、完全な1部品として形成されている。なお、以下では、図2の上側を透光部材1の上面といい、下側を透光部材1の下面という。
図1に示す第1の導光部2の外形の半径(R1)は11mmであり、第2の導光部3の外形の半径(R2)は80mmである。したがって、透光部材1のうち、第1の導光部2が占める面積は、(πR12/πR22)で求められ、約1.89%である。
図2に示すように、透光部材1の第2の導光部3の上面が平面であり、また第2の導光部3の下面が透光部材1の端部5から透光部材1の中心である第1の導光部2に向かって徐々に厚みを増す形状となっている。そして、透光部材1の端部15側の下端面には第2の導光部3に導光された光を上面側に全反射する反射部16がリング状に形成されている。この反射部16は、中心点13を中心として同心円状に設置されている。また、第1の導光部2は、その下面側に円筒状のLED保持部17を有している。
図3に示すように、透光部材1の中央部に円形の第1の導光部2が配置され、その第1の導光部2の下面側にリング状のLED保持部17が配置されている。また、第2の導光部3の端部15の下面側の全周に沿ってリング状の反射部16が各点において同一形状となるように形成されている。
図4は、図1のA−A断面図である。LED保持部17は、下面側に突出した円筒状の形状をしている。LED保持部17は、第1の導光部2の一部を形成しているが、第2の導光部3の下面側に配置し、第2の導光部3の一部として形成しても良い。LED保持部17の内周面17aは、入射部11の平面に対し垂直に下面側に延びている。一方、LED保持部17の内周面17aは、入射部11の平面に対し垂直に下面側に延びている。一方、LED保持部17の外周面17bは、内周面17aに対し、鋭角の角度αを持つように形成される。これは、後述する光源からの光がこのLED保持部17に入射した場合、その入射光を反射させ第1の導光部2や第2の導光部3に導くようにする。
図5は、図4の断面図における透光部材1の反射面12の周辺部分の詳細を示す拡大図である。反射面12のうち、最も下側へ凹んだ部分は、中心点13となっている。また、図5に示す透光部材1には、光散乱粒子21が含有されている。この光散乱粒子21は、1〜10μmの粒径のシリコーン粒子となっており、第2の導光部3よりも第1の導光部2に高密度に含有されている。具体的には、第1の導光部2の光散乱粒子21の含有率は0.1重量%であり、第2の導光部3の光散乱粒子21の含有率は0.06重量%である。なお、第1の導光部2に含有されている光散乱粒子21は、散乱パラメータをτ、第1の導光部2の厚みをTとしたとき、τとTの積が0.1以上50以下の範囲内とされている。
なお、この構成では、LED保持部17にも光散乱粒子21が入っており、その含有量は第1の導光部2と同じとなっている。しかし、LED保持部17には、光散乱粒子21を入れないようにしたり第2の導光部3と同じ含有率としてもよい。また、図5では光散乱粒子21は分散配置されている。
以下、光散乱粒子21について説明する。この光散乱粒子21は、体積的に一様な散乱能が与えられた導光体であり、散乱微粒子としての球形粒子を多数含んでいる。第1の導光部2または第2の導光部3の内部に光が入射すると、その光は散乱微粒子によって散乱することになる。
ここで、光散乱粒子21の理論的な基礎を与えるMie散乱理論について説明する。Mie拡散理論は、一様な屈折率を有する媒体(マトリックス)中に該媒体と異なる屈折率を有する球形粒子(散乱微粒子)が存在するケースについてマックスウェルの電磁方程式の解を求めたものである。光散乱粒子21に相当する散乱微粒子によって散乱した散乱光の角度に依存した強度分布I(Α、Θ)は下記(1)式で表される。Αは、散乱微粒子の光学的大きさを示すサイズパラメータであり、マトリックス中での光の波長λで規格化された球形粒子(散乱微粒子)の半径rに相当する量である。角度Θは散乱角で、入射光の進行方向と同一方向をΘ=180°にとる。
また、(1)式中のi1、i2は(4)式で表される。そして、(2)〜(4)式中の下添字ν付のaおよびbは(5)式で表される。上添字1および下添字νを付したP(cosΘ)は、Legendreの多項式、下添字ν付のa、bは1次、2次のRecatti−Bessel関数Ψ*、ζ*(ただし、「*」は下添字νを意味する。)とその導関数とからなる。mはマトリックスを基準にした散乱微粒子の相対屈折率で、m=nscatter/nmatrixである。
図6は、上記(1)〜(5)式に基づいて、単一真球粒子による強度分布I(Α、Θ)を示すグラフである。この図6では、原点Gの位置に散乱微粒子としての真球粒子があり、下方から入射光が入射した場合の散乱光強度の角度分布I(Α、Θ)を示している。そして、原点Gから各曲線S1〜S3までの距離が、それぞれの散乱角方向の散乱光強度である。曲線S1はΑが1.7であるときの散乱光強度、曲線S2はΑが11.5であるときの散乱光強度、曲線S3はΑが69.2であるときの散乱光強度を示している。なお、図6においては、散乱光強度を対数目盛で示している。このため、図6では僅かな強度差として見える部分が、実際には非常に大きな差となる。
この図6に示すように、サイズパラメータΑが大きくなればなるほど(ある波長λで考えた場合は真球粒子の粒径が大きくなればなるほど)、上方(照射方向の前方)に対して指向性高く光が散乱されていることがわかる。また、実際のところ、散乱光強度の角度分布I(Α、Θ)は、入射光波長λを固定すれば、散乱子の半径rと、媒体および散乱微粒子の相対屈折率mとをパラメータとして制御することができる。
このような、単一真球粒子がN個含まれる光散乱導光体に光を入射させると、光は真球粒子により散乱される。散乱光は光散乱導光体中を進み、他の真球粒子により再度散乱される。ある程度以上の体積濃度で粒子を添加した場合には、このような散乱が逐次的に複数回行われた後、光が光散乱導光体から出射する。このような散乱光がさらに散乱されるような現象を多重散乱現象と呼ぶ。このような多重散乱においては、透明ポリマーでの光線追跡法による解析は容易ではない。しかし、モンテカルロ法により光の挙動を追跡し、その特性を解析することはできる。それによると、入射光が無偏光の場合、散乱角の累積分布関数F(Θ)は下記の(6)式で表される。
ここで(6)式中のI(Θ)は、(1)式で表されるサイズパラメータΑの真球粒子の散乱強度である。強度Ioの光が光散乱導光体に入射し、距離yを透過した後、光の強度が散乱によりIに減衰したとすると、これらの関係は下記の(7)式で表される。
この(7)式中のτは濁度と呼ばれ(上述の散乱パラメータと同義)、媒体の散乱係数に相当するものであり、下記の(8)式のように粒子数Nに比例する。なお、(8)式中、σsは散乱断面積である。
(7)式から長さLの光散乱導光体を散乱せずに透過する確率Pt(L)は下記の(9)式で表される。
反対に光路長Lまでに散乱される確率P
s(L)は下記の(10)式で表される。
これらの式からわかるように、濁度τを変えることにより、光散乱導光体内での多重散乱の度合いを制御することができる。
以上の関係式により、散乱微粒子のサイズパラメータΑと濁度τとの少なくとも1つをパラメータとして、光散乱導光体内での多重散乱を制御可能であり、出射面における出射光強度と散乱角も適正に設定可能である。
図7は、図4の断面図における透光部材1の第2の導光部3の部分を主に示す拡大概要図である。第2の導光部3はその下面に、中心点13を中心とする同心円上に断面鋸歯状のプリズム部22を備えている。このプリズム部22は、この実施の形態では合計225個の鋸歯23が形成されている。なお、図7では簡易化のため合計25個のみの鋸歯23が示されている。プリズム部22は、第2の導光部3の下面側へと導光された光を上面側へと方向転換する。中心点13から近い側の鋸歯23の突起角度θは、中心点13から遠い側の鋸歯23の突起角度θよりも小さくなっている。
鋸歯23の突起角度θを具体的に説明する。中心点13から最も近い側の5mmの幅に存在する25個の鋸歯23の突起角度θは、50°である。次に中心点13から近い側の5mmの幅に存在する25個の鋸歯23の突起角度θは、55°である。次に中心点13から近い側の5mmの幅に存在する25個の鋸歯23の突起角度θは、60°である。次に中心点13から近い側の5mmの幅に存在する25個の鋸歯23の突起角度θは、65°である。次に中心点13から近い側の10mmの幅に存在する50個の鋸歯23の突起角度θは、70°である。中心点13から最も遠い側の15mmの幅に存在する75個の鋸歯23の突起角度θは、75°である。
このようにプリズム部22を5つのグループの鋸歯23に分けて、そのグループ毎に中心点13から端部15に向かうに従って徐々に突起角度θと入射角δを大きくしている。すなわち、プリズム部22は、第2の導光部3に導光される平行光が入射側(中心部13側)の鋸歯23の反射面24に入射する入射角δよりもそこから離れた離隔位置(端部15側)の鋸歯23の反射面24に入射する入射角δが大きくされている。また、プリズム部22は、第2の導光部3に導光される光の入射側の鋸歯23の突起角度θよりもそこから離れた離隔位置の鋸歯23の突起角度θが大きくされている。なお、各個別の鋸歯23の突起角度θは、外周に行くほど徐々に大きくしてもよい。なお、隣接する鋸歯23の配置間隔Hは0.2mmである。また、鋸歯23は、中心点13を対称点とした点対称配置となっている。
また、図7において、鋸歯23の突起頂部を径方向に結ぶ線Lと第2の導光部3上面とがなす交差角βは6.5°とされている。各鋸歯23の中心点13側の面と線Lとの角度γは、90°とされているが、角度γを90°より大きい角度としてもよい。そうすることによって、透光部材1を金型で成形する際に透光部材1を金型から取り外し易くなる。なお、中心点13から最も遠い側の鋸歯23に隣接した端部15側の下面には、反射部16が設置されている。この反射部16の面と第2の導光部3の上面とがなす角θ1は、30°とされている。
(発光装置の構成)
図8は、図4に示す透光部材1に、発光部材であるチップ形のLED30を装着した発光装置40の構成を示す図である。透光部材1の入射部11とLED保持部17で囲まれた部分にはLED30が配置されている。LED30の下端部31は円盤状の形状をしており、その外周面32がLED保持部17の内周面17aと対向している。下端部31の外周面32とLED保持部17の内周面17aとは、図示を省略する固定部材によって固定されている。その固定によって、LED30がLED保持部17に固定されている。なお、LED30は、中心点13と対応する位置に配置される。
(反射面12における光の反射の状況)
図9には、LED30から発せられた光が入射部11に入射し透光部材1内に入り、反射面12で反射して第2の導光部3へと導光される経路を破線で示している。LED30から発せられた光が、入射部11から第1の導光部2へ入るとき、光は中心点13側へ若干屈折し、その後、反射面12に到達する。反射面12では、透光部材1の材質であるPMMAと空気との境界面が形成されている。光の屈折率の高い媒質(PMMA)から低い媒質(空気)へと向かう光は、その境界面(反射面12)に対しての入射角θ2が全反射臨界角(41.84°)以上の角度で反射面12に照射されると、その境界面を透過せず全反射する。ここで、入射角θ2は、反射面12に入射光が突き当たる点における法線と入射光がなす角となる。反射面12は、この全反射をする条件を満たすようにし、かつ反射後の光が第2の導光部3の上面に対し平行となるように形成されている。このため、LED30からの光の殆どは反射面12で全反射し、平行光となり第2の導光部3へと導光される。
なお、図9に示す反射面12の断面曲線の中心点13の部分は、光源となるLED30から真っ直ぐ上に行く光に対し、入射角と反射角の合計が90°となる面を有している。すなわち、中心点13部分の入射角θ2は45°とされており(入射角と反射角の合計である「θt1=90°」)、反射面12に対する反射点における接線は、第2の導光部3の上面に対し45°で交差するものとなる。また、反射面12の曲線が第2の導光部3の上面である平面とつながる部分の入射角と反射角の合計であるθt2は、「θt2=90°+θc」である(ここで、θcは全反射臨界角で、41.84°となる)。この両点を結ぶ曲線F(x)は非球面の一種となる放物線曲線であり、その微分F’(x)は、「tan(90−θt / 2)」である。
また、透光部材1には、光散乱粒子21が含有されている。そのため、LED30から第1の導光部2へ入射した光が反射面12まで到達するまでの過程、および反射面12から第2の導光部3へと導光される過程で光が散乱する。しかし、光散乱粒子21は、透光部材1内の光の大部分を減衰させることなく多重散乱させるものである。そのため、入射光の一部は第1の導光部2の反射面12を通過し上面側に出射する。しかし、光散乱粒子21の大きさを上述したMie散乱理論に基づいて入射光の進行方向へ光が散乱する割合を大きくするものとしているため、光の多くは光散乱粒子21が無い場合の経路と略同じとなる。すなわち、入射部11に入射した光の多くは第1の導光部2から図9に示す矢示付き破線に沿って略平行光として第2の導光部3へと光が進行していく。
ここで、光散乱粒子21は、上述したようにLED30から照射された光の一部を反射面12を通過させ外部に出射する光を発生させる。すなわち、LED30から照射された光の一部は、第1の導光部2から上面側に出射する。
(第2の導光部3における光の屈折および反射の状況)
上述のように第2の導光部3へと導光された光は、プリズム部22及び反射部16によって、第2の導光部3の上面側へと方向転換される。プリズム部22の鋸歯23の頂点を結ぶ直線L(図7参照)は、第2の導光部3へと導光された光の光路と交差角βを有するように形成されている。そのため、導光された平行光はプリズム部22に照射される。
プリズム部22に照射された光は、第2の導光部3の上面側へと方向転換される。その方向転換の方向は、突起角度θが透光部材1の外周側ほど大きくなっているため、透光部材1の外周側ほど出射角θ3が小さくなる。すなわち、透光部材1を光源として見た場合、光源が指向性を持たず、広角範囲を照らす光源となる(図7参照)。第2の導光部3を進行する光は光散乱粒子21で一部が散乱されるため、プリズム部22に照射された光の一部は、最初に衝突する鋸歯23を透過してしまうこともあるが、その透過した光の多くは隣接する鋸歯23に照射され、その鋸歯23によって第2の導光部3の上面側へと方向転換される。なお、図7に示す矢示付き破線は、光散乱粒子21が存在しない場合または光が光散乱粒子21に衝突しなかった場合に方向転換される光の経路を示している。
このように方向転換された光は、鋸歯23の突起角度θが上述のように第2の導光部3のうちLED30側から第2の導光部3の端部15に向かうに従って大きくなっていることに起因して、上述したようにLED30から離れるに従って出射角θ3が小さくなるように第2の導光部3の上面から出射する。
また、反射部16に導光された光は、その反射部16によって反射され第2の導光部3の上面側に導光され、上面から出射する。LED30は光の指向性が強く、中心点13方向の光が強く、中心点13から離れる方向の光は弱くなる。そのため、図7において反射面12の下部領域(中心点13の近くの領域)や中部領域(中心点13から少し離れた領域)から導光される光の光量が多く、反射面12の上部領域(第2の導光部3に近い領域)に向かうに従ってその領域から導光される光の光量が少なくなる。このことから、反射面12の下部領域や中部領域に導光された光を主に方向転換するプリズム部22は、LED30が照射する光の殆どを方向転換し、残りの光は反射部16が方向転換する。これによって第2の導光部3を進行する光の殆どを上面側から出射させる。
ここで、第2の導光部3にも光散乱粒子21が含有されている。そのため、反射面12から第2の導光部3へ入射し進行する光は、その進行過程で、またプリズム部22から第2の導光部3の上側へと光照射される過程で光が複雑に散乱する。しかし、光散乱粒子21は、第2の導光部3内の光の多くを入射方向と同一方向へ散乱させる多重散乱させるものである。そのため、多くの光はその進行方向が整ったものとなり、図7に示す破線に沿って光が照射されていく。しかし、散乱光の一部は、図7による破線の経路と異なる経路をとり、上面から出射される。すなわち、第2の導光部3には高密度に光散乱粒子21が含有されているため、透光部材1の上面からの光の照射はLEDや裸電球の光等とは異なり、ぼやけた感じの照射状態となる。また、LED30という点光源に近い光源の光が第1の導光部2と第2の導光部3によって面光源に変換されるため、単位面積当たりの照射光量は少なくなる。
以上説明した背景技術における透光部材1および発光装置40は、反射面12を備えた第1の導光部2を有している。そのため、入射部11に入射した光の多くは第1の導光部2から図9に示す矢示付き破線に沿って略平行光として第2の導光部3へと光が進行していきつつも適度に他の方向へと光を散乱させる。そのため、グレアおよび暗部の発生を抑制して面発光に適する構成とすることができる。
すなわち以下のことが言える。透光部材1および発光装置40は、LED30の上部へ直線的に出射する光の殆どをそのまま通過させずに全反射させ、また、反射鏡で中心の光を遮ることがない。また、LED30からの強い光の一部を散乱させ反射面12を通過させており、反射面12も光源の一部となる。また、第2の導光部3は、入射してきた光の多くを反射面12を通過する光と同一面側に出射する。そのため、透光部材1および発光装置40は、面発光に適していると共に極端に眩しくなる部分の発生を抑制できる。さらには、透光部材1および発光装置40は、入射してきた光の殆どを上面側に出射させることが可能であるため、光効率が良いものとなる。
また、第1の導光部2に入射した光は、一部は反射面12を通過し第1の導光部2からの面光源となり、残りの光は略平行光となって第2の導光部3に入射し、その後第2の導光部3の上面側から出射し、第2の導光部3からの面光源となるため、発光装置40の照射ロスを抑制できる。また、仮に略平行光とならずに第2の導光部3に入射された光が第2の導光部3の上面に照射されても、そこで全反射するため、光は拡散せず、より発光装置40の照射ロスを抑制できる。さらに、第2の導光部3の上面で全反射した光は、その後、プリズム部22にて発光装置40の設計意図にそった方向に反射されるため、より発光装置40の照射ロスを抑制できる。
また、光散乱粒子21の含有率は、第2の導光部3よりも第1の導光部2の方を高くしているため、第1の導光部2に入射した光が反射面12を透過し易くなり、透光部材1全体の光照射分布を略均一にできる。多重散乱の程度は、散乱パラメータτにより制御できるため、反射面12を通過する光と第2の導光部3の上面から出射する光の輝度が一定になるように適度に調整することができる。図10、図11、図12、図13は、第2の導光部3の光散乱粒子21の含有率を一定(0.06重量%)にし、第1の導光部2の光散乱粒子21の含有率を変更した場合の発光装置40の明るさの分布を示している。第1の導光部2と第2の導光部3の光散乱粒子21の含有率を変更する方法は、予め光散乱粒子21の含有率の異なる第1の導光部2と第2の導光部3を成形しておき、両者を2材成形し一体化するものである。
図10には、第1の導光部2に光散乱粒子21を含有させない(含有率0%)発光装置40の明るさの分布を示している。図10に示すように、第1の導光部2よりも第2の導光部3の方が明るくなっていることがわかる。ここで第1の導光部2からも明るさが確認できるのは、光源となるLED30が点光源でないため、全反射せず反射面12を通過する光が存在するためである。なお、図10、図11、図12、図13の横軸は、中心点13の位置を「0」とした場合のその中心点13からの距離である。第1の導光部2は、直径が22mmであり、第2の導光部3は、直径が160mmである。
図11は、第1の導光部2に光散乱粒子21の含有率を0.03重量%と、第2の導光部3の光散乱粒子21の含有率(0.06重量%)よりも1/2に少なくした場合の発光装置40の明るさの分布を示している。第1の導光部2よりも若干第2の導光部3の方が明るくなっていることがわかる。これは、光散乱粒子21による散乱の結果、反射面12を通過する光が増加するため、第1の導光部2の明るさが増え、その結果、第2の導光部3に入る光が減少するためである。
図12は、第1の導光部2に光散乱粒子21の含有率を0.1重量%と、第2の導光部3の光散乱粒子21の含有率(0.06重量%)よりも若干多くした場合の発光装置40の明るさの分布を示している。これは、上述した実施の形態に係る発光装置40である。第1の導光部2と第2の導光部3の明るさが概ね平準化されていることがわかる。これは、第1の導光部2の光散乱粒子21がさらに増加した結果、反射面12を通過する光が更に増加し、一方、第2の導光部3に入る光が更に減少したものである。
図13は、第1の導光部2に光散乱粒子21の含有率を0.3重量%と、第2の導光部3の光散乱粒子21の含有率(0.06重量%)の5倍多くした場合の発光装置40の明るさの分布を示している。第1の導光部2の方が第2の導光部3よりもその明るさが明るくなっていることがわかる。
なお、図14には、板厚が10mmのPMMA板に粒径7.3μmの光散乱粒子21を含有させる濃度を変化させた場合の光の拡散角と光の透過率の関係を示している。ここで、拡散角とは、散乱されて拡がった光が、その中心照度の半値になる角度を全角表示で表した角度である。図14に示すように、光散乱粒子21の含有率が0.06重量%のときは、殆ど拡散せず、しかも透過率は98%程度となる。この図14を利用して透光部材1の明るさや出射方向を種々設定できる。
また、光散乱粒子21は、散乱パラメータをτ(1/τは平均自由行程でその単位はcm)、第1の導光部2の厚みをT(単位はcm)としたとき、τとTの積が0.1以上50以下の範囲内とされている。τとTの積が0.1未満になると、光線の平均自由行程が長くなり板厚Tの距離内で散乱される光線量が少なくなり、第1の導光部2の反射面12から適切な光線を外部に出射させることができなくなる。一方、τとTの積が50を超えると、光線の平均自由行程が短くなり、板厚Tの距離内で多重散乱される光量が多くなり、図14に示すように、後方散乱が大きくなり前方への光の透過率が下がってしまう。つまり入射部11に入射し第1の導光部2から図9に矢示付き破線に沿って第2の導光部3へと光を進行させる光量効率が低下してしまう。
また、プリズム部22は、中心点13に近い側の鋸歯23の突起角度θは、中心点13から遠い側の鋸歯23の突起角度θよりも小さい。そのため、中心点13から遠い側では、LED30から離れる方向への光の照射ができ、広角に光を照射することが可能となる。よって、発光装置40は、広い範囲を照明できる照明装置としての用途に適するものとなる。また、広角に光を照射することにより、発光装置40を薄型化できる。また、広角に光を照射することにより、発光装置40をモジュール化して多数配置する場合にそのモジュールの数を少なくでき、コスト削減ができる。
なお、照明装置40が広角に光を照射することができていることは、図10、図11、図12、図13において、透光部材1から距離が離れた位置も明るくなっていることから明らかである。
また、この突起角度θは、適宜変更することができるため、発光装置40等の用途によって発光の仕方を変更することができる。発光の仕方を上述のように広角の照射としたり、ダウンライトのように狭角の照射とすることもできる。ここで、各鋸歯23の突起頂部を径方向に結ぶ線Lと第2の導光部3の上面側の平面との交差角βが2°から10°となる場合には、突起角度θは、45°から75°の間で設定することが好ましい。
また、第2の導光部3のうちLED30から離れた位置の端部15の下部には、導光された光を上面側へと反射させる反射部16が形成されているため、プリズム部22だけでは光の方向転換ができない分の光があった場合にもその光を上面側に方向転換することができる。
光学素子(透光部材1)や発光装置40は、光が導光される板状の導光部(第1の導光部2および第2の導光部3)を備え、第2の導光部3はその一方の面に導光された光を方向転換させる断面形状が複数の鋸歯23からなるプリズム部22を有し、プリズム部22は、第2の導光部3に導光される平行光が入射側の鋸歯の反射面24に入射する入射角δよりもそこから離れた離隔位置の鋸歯23の反射面24に入射する入射角δが大きくされている。しかし、第2の導光部3に導光される光は平行光に限られない。また、プリズム部22は、第1の導光部2と第2の導光部3の境界または第1の導光部2の一部に配置されていても良い。また、板状の導光部としては、第2の導光部3のみとしても良い。
また、光学素子(透光部材1)は、光が導光される板状の導光部(第1の導光部2および第2の導光部3)を備え、第2の導光部3はその一方の面に導光された光を方向転換させる断面形状が複数の鋸歯23からなるプリズム部22を有し、プリズム部22は、第2の導光部3に導光される光の入射側の鋸歯23の突起角度θよりもそこから離れた離隔位置の鋸歯23の突起角度θが大きくされている。ここで、プリズム部22は、第1の導光部2と第2の導光部3の境界または第1の導光部2の一部に配置されていても良い。
また、鋸歯23の反射面24に光が入射する入射角δまたは、鋸歯23の突起角度θは、入射側から離隔位置へ向かって徐々に大きくされていることが好ましい。しかし、離隔位置よりも入射側の方の入射角δまたは鋸歯23の突起角度θが大きくなる鋸歯23が一部混在していても良い。ここで、徐々に大きくとは、上述の実施の形態のように、グループ間で徐々に大きくするような場合や、グループ間ではなく1つ1つの鋸歯23についての入射角δや突起角度θを異ならせ徐々に大きくする場合の両者を含むものとする。また、グループ間の場合、2グループとしたり、4グループとしたり、7グループとすることができる。
また、プリズム部22の第2の導光部3の入射側から離隔した端部15側には、導光部に導光された光をプリズム部22が方向転換させる側と同じ側へと反射させる反射部16を備えていることが好ましい。しかし、この反射部16は必須の構成要素ではないため、省略しても良い。また、プリズム部22を端部15まで伸ばすようにしても良い。
また、導光部(第1の導光部2および第2の導光部3)は透光性樹脂であり、導光部には光散乱粒子21が含有され、光散乱粒子21は、その粒径が1〜10μmの透光性のシリコーン粒子であることが好ましい。しかし、導光部には光散乱粒子21を含有させないようにしても良い。
光学素子(透光部材1)は、光を入射する入射部11と、入射部11へ入射した光を反射面12に導く第1の導光部2と、第1の導光部2の光の入射側と反対側に設けられ入射した光のうち一直線状の軌跡をとる光を全反射させる反射面12と、反射した光を導光する第2の導光部3とを有し、第1の導光部2は、光を多重散乱し、反射面12を通過し外部に出射する光を発生させる光散乱粒子21を含有し、第2の導光部3は、入射してきた光の一部または全部を反射面12を通過する光と同一面側に出射している。しかし、光散乱粒子21は第2の導光部3にも含有させることとしても良い。また、入射部11は、第1の導光部2の下面側とLED保持部17とで形成されているが、第1の導光部2の下面側全体または下面側の一部のみとしてもよい。さらに、第2の導光部3が出射する光は反射面12を通過する光と同一面側に出射しているが、一部または全部の光を第2の導光部3の下面側から出射させたり、端部15の外周側へ出射させたりしても良い。
また、光学素子(透光部材1)は、導光された光を反射面12側と同一側の方向に方向転換させる断面鋸歯状のプリズム部22を第2の導光部3における反射面12側とは反対の側に備えている。このプリズム部22を第2の導光部3の上面側に設けてもよい。また、プリズム部22は鋸歯状とせず、直線Lのような直線状としたり曲線状としたりしてもよい。
また、光学素子(透光部材1)は、第2の導光部3には光散乱粒子21が含有され、光散乱粒子21の含有率は、第2の導光部3よりも第1の導光部2の方を高くしている。しかし、光散乱粒子21の含有率は、第2の導光部3よりも第1の導光部2を低くしたり、両者の含有率を等しくしても良い。また、第2の導光部3には光散乱粒子21を含有させないようにしても良い。
また、光学素子(透光部材1)における光散乱粒子21は、散乱パラメータをτ、第1の導光部の厚みをTとしたとき、τとTの積が0.1以上50以下の範囲内とされている。しかし、τとTの積は、それ以外の範囲、たとえば0.01、0.05、60、70、80等としても良い。
発光装置40は、入射部11に光を入射する発光部材(LED30)を備え、第1の導光部2は、光を多重散乱し、反射面12を通過し外部に出射する光を発生させる光散乱粒子21を含有し、第2の導光部3は、入射してきた光の一部または全部を反射面12を通過する光と同一面側に出射する。しかし、光散乱粒子21は第2の導光部3にも含有させることとしても良い。また、発光部材としては、光を直接入射部11に入射させる光源でなく、光源の光を導く導光体や光源の光を反射する反射部材としても良い。
また、発光装置40は、第2の導光部3は板状とされ、その板状の第2の導光部3の中心に平面形状で円形の第1の導光部2が配置されている。
また、発光装置40は、透光部材1は透光性樹脂であり、光散乱粒子21は、その粒径が1〜10μmの透光性のシリコーン粒子とされ、光散乱粒子21は、第2の導光部にも含有されている。しかし、光散乱粒子21は、透光部材1内の光を多重散乱するものであれば、その材質、形状、粒子径等を問わず、種々のものを用いることができる。ただし、光散乱粒子21は、光を図9に示す光の進行経路(矢示付き破線)に沿わせつつも適度に他の方向へと光を散乱させる意味で、粒径が1〜10μmの透光性のシリコーン粒子を用いることが好ましい。詳述すると、シリコーン粒子の粒径を1μm以上とすることで、角度分布の広がりを抑え後方散乱成分を少なくできる。すると、前方への光強度が小さくなって第2の導光部3に導光される光量が過度に低下するのをおさえることができ、第1の導光部2の反射面12を透過する光量が過度に多くなるのを抑制し易くなる。一方、シリコーン粒子の粒径を10μm以下とすることで、角度分布が狭くなり過ぎるのを抑制でき、第1の導光部2の反射面12を透過する光量を十分に確保できる。
また、透光部材1には、PMMA製のものを用いているが、その他のアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体で、透明性の高い非晶質の合成樹脂であるアクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート等の他の透光性樹脂やガラス等を材質としたものを用いることができる。また、第1の導光部2と第2の導光部3とは2材成形によって一体化させているが、当初から第1の導光部2と第2の導光部3とを一体成形して透光部材1を得ることとしても良い。
また、入射部11は、第1の導光部2の一部であり、かつ平面状とされているが、入射部11は、凸面状、曲面状、非球面状等としても良い。球面状や非球面状にする場合、その曲率を適宜変更させることができる。また、入射部11を第1の導光部2と別体に設けても良い。
また、発光部材はLED30に限定されず、有機エレクトロルミネッセンス(Organic Electro-Luminescence、OEL、有機EL)、無機エレクトロルミネッセンス(Inorganic Electro-Luminescence、IEL、無機EL)、レーザー光等の他の発光部材を用いることができる。さらに、LED30にはチップ型のものを用いているが、レンズ付きのLEDを用いることができる。
また、透光部材1は、外形が円形であり、その中央部に円形でかつくぼんだ形状の反射面12を有し、反射面12の周囲に光を導光する円環状の第2の導光部3を有しているが、透光部材1の外形、反射面12の平面形状、第2の導光部3の形状等は、変更できる。たとえば、上述したように、第2の導光部3の形状を四角形状とすることで、透光部材1の外形を四角形状等とすることができる。このように、透光部材1の外形を四角形状とする利点は、複数の発光装置40の発光面を隙間無く並べることができる点であり、このように並べて使用する場合に、それらの発光面が均一に発光させ易くなることである。
また、透光部材1の反射面12は、図9に示すように断面形状部分の関係関数の微分が「tan(90−θt/2)」で与えられる曲面としているが、点光源として見た場合のLED30の光を全反射することが可能な形状であれば、断面形状が他の条件で与えられる曲線等で構成されるものであっても良い。また、反射面12は、非球面のような断面曲面となる構成ではなく、直線をつなぎ合わせた断面角形の形状としても良い。すなわち、反射した角光が第2の導光部3では略平行光としての光路が形成されなくても良い。
また、透光部材1の第2の導光部3は、図7における下面であって中心点13を中心とし同心円上に並べられた225個の鋸歯23からなるプリズム部22を備えており、鋸歯23は、中心点13に近い側の突起角度θが中心点13から遠い側の突起角度θよりも小さい。しかし、プリズム部22の配置位置、形状、数、突起角度θ等は変更することができる。たとえば、LED30の配置位置を中心とする同心円上に鋸歯23を設けた上で、第2の導光部3の端部15を切り取って透光部材1の外形を四角形状とすることができる。
また、反射部16は導光された光を全反射するものであるが、白色のインクが印刷処理がされていたり、アルミニウムや銀等のミラーコート等によって鏡面状等とすることができる。ただし反射部16は、導光された光を全反射する構成にした方が、その製造に際し印刷処理等の手間を要しないため好ましい。
また、上述の構成では、隣接する鋸歯23の配置間隔Hは0.2mmとしている。しかし、この配置間隔Hは0.1mm,0.3mm等に変更することができる。また、配置間隔Hは一定のものではなく、一つの透光部材1の中で異ならせても良い。
(本発明の実施の形態に係る光学素子および発光装置)
図15は本発明の実施の形態に係る透光部材を示す平面図である。以上の説明では、本発明の背景技術として、鋸歯23が、同心円状に設けられ、一端側のプリズム部22が同心円の中心に近い側のプリズム部22であり、他端側のプリズム部22が同心円の中心から離れている側のプリズム部22であるものとした。これに対して本発明では、透光部材の鋸歯が、同心円状ではなく、中心を共通にする四角形状等の多角形状に設けられる。図15に示す本発明の実施の形態では、透光部材1aの外形が四角形状であり、その四角形状に沿った四角線上に、鋸歯23aが形成される。
図16、図17は、図15に示す透光部材1aを使用した発光装置40を街路灯として用いた場合の使用状態の一例を示す図である。発光装置40の出射面側に支柱50の一端が取り付けられ、支柱50の他端は地面に埋め込められ、発光装置40が上から地面へ照射範囲W1を照射している。この照射範囲W1は発光装置40から放射状に道路51に沿って均一に広がっている。
この発光装置40の道路51の幅方向の照射範囲W2は、道路51の幅Yを完全に覆うように放射状に広がっている。その広がり方は、図17に示すように道路51側が広く、道路51から外れる側は狭い。これは図15の透光部材1aに配置された鋸歯23aの突起角度θを位置によって変えているためである。すなわち、図15の上方の鋸歯23a1の突起角度θを、下側の鋸歯23a2の突起角度θを小さくしている。このようにすることで、たとえば、道路と森林との境界にこの発光装置40の街路灯を設置する場合、道路側の照射範囲を広くする等、照射範囲を任意に制御できる。
この支柱50は、発光装置40の出射面のうち第1の導光部2に相当する部分を覆うように取り付けることが好ましい場合がある。たとえば、発光装置40が比較的不均一な発光分布を有する場合等(図10または図11参照)には、支柱50によって第1の導光部2に相当する比較的暗部となる部分を隠し、照光状態を均一となるようすることができる。
図15に示すプリズム部22は、中心を共通にする多角形を間隔をおいて並べる形状となっている。この場合に、透光部材1aについても、背景技術の第2の導光部3に相当する部分の外形を三角形状、四角形状等の多角形状としても良い。同様に、第1の導光部2に相当する部分の平面形状も、多角形状とすることができる。