JP5712155B2 - エンジンのギヤ伝動装置 - Google Patents
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Description
この種のエンジンのギヤ伝動装置によれば、簡単な構造でアイドルギヤを枢軸に強固に取り付けることができる利点がある。
抜け止め板の外周縁部の外径を、この外周縁部の受け止め面に受け止めさせるアイドルギヤの被受け止め面の外径と同じにしているため、ギヤケース内で浮遊するオイルミストを、受け止め面の潤滑に利用することができず、抜け止め板の受け止め面の潤滑性能が十分に得られない場合がある。
図1(B)に例示するように、シリンダブロック(1)から枢軸(2)を突出させ、枢軸(2)の基端側に受座(3)を設け、枢軸(2)にアイドルギヤ(4)を嵌め、枢軸(2)の突出端面(5)に抜け止め板(6)を取り付け、受座(3)と抜け止め板(6)の外周縁部(7)との間にアイドルギヤ(4)を挟んで、アイドルギヤ(4)を枢軸(2)に取り付けた、エンジンのギヤ伝動装置において、
図1(B)に例示するように、抜け止め板(6)の外周縁部(7)の外径を、この外周縁部(7)の受け止め面(8)に受け止めさせるアイドルギヤ(4)の被受け止め面(10)の外径よりも大きくし、抜け止め板(6)の外周縁部(7)のうち、受け止め面(8)から径方向外側に伸びるはみ出し面(8a)をギヤケース内(4a)で露出させ、
図1(B)に例示するように、抜け止め板(6)として、外周縁部(7)の片面(7a)にダレ(9)が生じる板金の打ち抜き加工品を用いるに当たり、
抜け止め板(6)の外周縁部(7)の外径を、アイドルギヤ(4)の被受け止め面(10)の外径よりも大きくすることにより、ダレ(9)の位置をアイドルギヤ(4)の被受け止め面(10)よりも径方向外側に偏倚させ、
図2(A)(B)に例示するように、抜け止め板(6)の表側面(6a)と裏側面(6b)の両方にオイル保持凹部(15)を設け、枢軸(6)の突出端面(5)に抜け止め板(6)の表側面(6a)と裏側面(6b)のどちらを向けて抜け止め板(6)を取り付けても、受け止め面(8)となった面にオイル保持凹部(15)が設けられているようにした、ことを特徴とするエンジンのギヤ伝動装置。
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 抜け止め板の受け止め面の潤滑性を高めることができる。
図1(B)に例示するように、抜け止め板(6)の外周縁部(7)の外径を、この外周縁部(7)の受け止め面(8)に受け止めさせるアイドルギヤ(4)の被受け止め面(10)の外径よりも大きくし、抜け止め板(6)の外周縁部(7)のうち、受け止め面(8)から径方向外側に伸びるはみ出し面(8a)をギヤケース内(4a)で露出させたので、ギヤケース内(4a)で浮遊するオイルミストを、はみ出し面(8a)に付着させ、凝縮させることができ、はみ出し面(8a)から受け止め面(8)と被受け止め面(10)との隙間の外周に接近してきた凝縮オイルを、この隙間に浸透させることにより、抜け止め板(6)の受け止め面(8)の潤滑性を高めることができる。
図1(B)に例示するように、抜け止め板(6)として、外周縁部(7)の片面(7a)にダレ(9)が生じる板金の打ち抜き加工品を用いるに当たり、図1(B)に例示するように、抜け止め板(6)の外周縁部(7)の外径を、アイドルギヤ(4)の被受け止め面(10)の外径よりも大きくすることにより、ダレ(9)の位置をアイドルギヤ(4)の被受け止め面(10)よりも径方向外側に偏倚させたので、枢軸(2)への抜け止め板(6)の取り付け時に、枢軸(2)の突出端面(5)に抜け止め板(6)を表側面(6a)と裏側面(6b)のどちらを向けて取り付けても、ダレ(9)のある外周縁部(7)の片面(7a)がアイドルギヤ(4)の受け止め面(8)になる不具合を避けることができ、抜け止め板(6)の取り付け時に抜け止め板(6)の向きを確認する必要がなくなり、抜け止め板(6)の取り付け作業が簡単になる。
なお、ダレ(9)のある外周縁部(7)の片面(7a)がアイドルギヤ(4)の受け止め面(8)になると、受け止め面積が小さいため、面圧が異常に大きくなり、抜け止め板(6)が短時間で磨耗する不具合がある。
《効果》抜け止め板の磨耗を低減することができる。
図2(A)(B)に例示するように、抜け止め板(6)の表側面(6a)と裏側面(6b)の両方にオイル保持凹部(15)を設け、枢軸(6)の突出端面(5)に抜け止め板(6)の表側面(6a)と裏側面(6b)のどちらを向けて抜け止め板(6)を取り付けても、受け止め面(8)となった面にオイル保持凹部(15)が設けられているようにしたので、抜け止め板(6)の取り付けの向きに拘わらず、アイドルギヤ(4)の受け止め面(8)の潤滑性を高め、抜け止め板(6)の磨耗を低減することができる。
(請求項2に係る発明)
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 アイドルギヤの受け止め面の潤滑性が高い。
オイル保持溝(26)のV字の角度θが60°を下回り、深さDが0.05mmを下回ると、オイル保持溝(26)のオイル保持量が不十分になり、アイドルギヤ(4)の受け止め面(8)の潤滑性が不十分になる。オイル保持溝(26)のV字の角度θが120°を上回り、深さDが0.2mmを上回ると、オイル保持溝(26)の開口面積が大きくなり過ぎ、アイドルギヤ(4)とその受け止め面(8)の接触面積が小さくなり過ぎて、面圧が上がり、抜け止め板(6)の外周縁部(7)が磨耗しやすい。隣合うオイル保持溝(26)(26)の最深部(27)(27)間の距離、すなわち隣合うオイル保持溝(26)(26)の離間距離Wが0.5mmを下回ると、隣合うオイル保持溝(26)(26)が接近し過ぎ、アイドルギヤ(4)とその受け止め面(8)の接触面積が小さくなり過ぎて、面圧が上がり、抜け止め板(6)の外周縁部(7)が磨耗しやすい。隣合うオイル保持溝(26)(26)の離間距離Wが1.5mmを上回ると、隣合うオイル保持溝(26)(26)が離れすぎ、オイル保持溝(26)の本数が少なくなり、オイル保持溝(26)のオイル保持量が不十分になり、アイドルギヤ(4)の受け止め面(8)の潤滑性が不十分になる。
これに対し、本発明では、オイル保持凹部(15)は、抜け止め板(6)の受け止め面(8)に格子状に設けた断面V字形のオイル保持溝(26)で、V字の角度θが60°〜120°、深さDが0.05mm〜0.2mm、隣合うオイル保持溝(26)(26)の最深部(27)(27)間の距離が0.5mm〜1.5mmであるため、アイドルギヤ(4)の受け止め面(8)の潤滑性が高い。
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 抜け止め板の取り付け作業が簡単になる。
図1(B)に例示するように、抜け止め板(6)を枢軸(2)の中心軸線(13)に沿う一本のネジ具(14)で枢軸(2)に取り付け、枢軸(2)の中心軸線(13)から抜け止め板(6)の径方向に偏倚した突起(11)と嵌合穴(12)との嵌合により、抜け止め板(6)を廻り止めしたので、抜け止め板(6)を複数のネジ具で枢軸(2)に取り付ける場合に比べ、抜け止め板(6)の取り付け作業が簡単になる。
図1(B)に例示するように、抜け止め板(6)を枢軸(2)の中心軸線(13)に沿う一本のネジ具(14)で枢軸(2)に取り付け、枢軸(2)の中心軸線(13)から抜け止め板(6)の径方向に偏倚した突起(11)と嵌合穴(12)との嵌合により、抜け止め板(6)を廻り止めしたので、アイドルギヤ(4)の回転による抜け止め板(6)の連れ廻りが起こらず、これに起因するネジ具(14)の緩みを防止することができる。
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 適正方向照合用突起の成型が容易になる。
図1(B)に例示するように、突起(11)はハーフピアス加工で抜け止め板(6)から突出させたので、抜け止め板(6)の打ち抜き加工と同時にハーフピアス加工で突起(11)を成型することができ、突起(11)の成型が容易になる。
このアイドルギヤ(4)は、クランクギヤ(図外)から動弁カムギヤ(図外)や燃焼噴射カムギヤ(図外)を駆動する調時伝動ギヤトレイン(図外)の構成要素として用いるものであり、調時伝動ギヤトレインはシリンダブロック(1)に取り付けた調時伝動ギヤケース(図外)に収容している。
なお、ダレとは、板金の打ち抜き加工時に、ダイ穴の周囲に沿って板金がパンチによって押し込まれたときに、板金の打ち抜き加工品の片面の外周縁部に発生するテーパ状または円弧状の押し込み面である。
ハーフピアス加工とは、穴があかない程度に板金にパンチを押し込んで、反対側から突起を押し出すプレス加工法である。
枢軸(2)への抜け止め板(6)の取り付けは、枢軸(6)の突出端面(5)に抜け止め板(6)の表側面(6a)と裏側面(6b)のどちらを向けて取り付けてもよく、どちらも受け止め面(8)となりうるため、オイル保持凹部(15)は、抜け止め板(6)の表側面(6a)と裏側面(6b)の両方に設ける。
すなわち、抜け止め板(6)の表側面(6a)と裏側面(6b)の両方にオイル保持凹部(15)を設け、枢軸(6)の突出端面(5)に抜け止め板(6)の表側面(6a)と裏側面(6b)のどちらを向けて抜け止め板(6)を取り付けても、受け止め面(8)となった面にオイル保持凹部(15)が設けられているようにした。
オイル保持凹部(15)は、抜け止め板(6)の受け止め面(8)に格子状に設けた断面V字形のオイル保持溝(26)であり、オイル保持溝(26)の最適寸法範囲は、V字の角度θが60°〜120°、深さDが0.05mm〜0.2mm、隣合うオイル保持溝(26)(26)の離間距離Wが0.5mm〜1.5mmである。隣合うオイル保持溝(26)(26)のオイル保持溝の離間距離Wは、隣合うオイル保持溝(26)(26)の最深部(27)(27)間の距離を計測したものである。
オイル保持凹部(15)は、オイル保持溝(26)に限らず、ショットピーニング加工によるディンプル状の窪みであってもよい。
(2) 枢軸
(3) 受座
(4) アイドルギヤ
(4a) ギヤケース内
(5) 突出端面
(6) 抜け止め板
(7) 外周縁部
(7a) 片面
(8) 受け止め面
(8a) はみ出し面
(9) ダレ
(10) 被受け止め面
(11) 突起
(12) 嵌合穴
(13) 中心軸線
(14) ネジ具
(15) オイル保持凹部
Claims (4)
- シリンダブロック(1)から枢軸(2)を突出させ、枢軸(2)の基端側に受座(3)を設け、枢軸(2)にアイドルギヤ(4)を嵌め、枢軸(2)の突出端面(5)に抜け止め板(6)を取り付け、受座(3)と抜け止め板(6)の外周縁部(7)との間にアイドルギヤ(4)を挟んで、アイドルギヤ(4)を枢軸(2)に取り付けた、エンジンのギヤ伝動装置において、
抜け止め板(6)の外周縁部(7)の外径を、この外周縁部(7)の受け止め面(8)に受け止めさせるアイドルギヤ(4)の被受け止め面(10)の外径よりも大きくし、抜け止め板(6)の外周縁部(7)のうち、受け止め面(8)から径方向外側に伸びるはみ出し面(8a)をギヤケース内(4a)で露出させ、
抜け止め板(6)として、外周縁部(7)の片面(7a)にダレ(9)が生じる板金の打ち抜き加工品を用いるに当たり、
抜け止め板(6)の外周縁部(7)の外径を、アイドルギヤ(4)の被受け止め面(10)の外径よりも大きくすることにより、ダレ(9)の位置をアイドルギヤ(4)の被受け止め面(10)よりも径方向外側に偏倚させ、
抜け止め板(6)の表側面(6a)と裏側面(6b)の両方にオイル保持凹部(15)を設け、枢軸(6)の突出端面(5)に抜け止め板(6)の表側面(6a)と裏側面(6b)のどちらを向けて抜け止め板(6)を取り付けても、受け止め面(8)となった面にオイル保持凹部(15)が設けられているようにした、ことを特徴とするエンジンのギヤ伝動装置。 - 請求項1に記載したエンジンのギヤ伝動装置において、
オイル保持凹部(15)は、抜け止め板(6)の受け止め面(8)に格子状に設けた断面V字形のオイル保持溝(26)で、V字の角度θが60°〜120°、深さDが0.05mm〜0.2mm、隣合うオイル保持溝(26)(26)の最深部(27)(27)間の距離が0.5mm〜1.5mmである、ことを特徴とするエンジンのギヤ伝動装置。 - 請求項1または請求項2に記載したエンジンのギヤ伝動装置において、
抜け止め板(6)を枢軸(2)の中心軸線(13)に沿う一本のネジ具(14)で枢軸(2)に取り付け、枢軸(2)の中心軸線(13)から抜け止め板(6)の径方向に偏倚した突起(11)と嵌合穴(12)との嵌合により、抜け止め板(6)を廻り止めした、ことを特徴とするエンジンのギヤ伝動装置。 - 請求項3に記載したエンジンのギヤ伝動装置において、
突起(11)はハーフピアス加工で抜け止め板(6)から突出させた、ことを特徴とするエンジンのギヤ伝動装置。
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