JP5711460B2 - 締結構造 - Google Patents

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本発明は、土台の上面に柱を据え付ける際に用いる締結構造に関する。
在来工法とも呼ばれる木造軸組工法は、柱や梁などの棒状の木材を組み合わせて建物の骨格を構築するもので、住宅などの建築方法として広く普及している。この工法は、建物の強度を確保するため、隣接する部材同士を強固に締結する必要があり、古くから部材にホゾや仕口を設けるなどの対策が講じられている。ただしホゾを加工することで断面欠損が生じるため、強度が低下する恐れがあるほか、加工精度が悪いと現地で調整作業が必要になるなど、幾つかの課題があり、最近では各種金物を使用して部材同士を締結することも多い。
締結金物を使用して柱を土台に据え付ける際の構成例を図6に示す。部材同士を締結する締結金物は、目的に応じて様々な種類が存在しているが、この図のものは、金属板をコの字状に折り曲げた二枚の羽板に円断面のシャフトを溶接した形状であり、シャフトは、土台の上面に加工された固定孔に差し込まれ、さらに土台の側面に打ち込まれたドリフトピンによって、シャフトと土台が一体化する。また羽板は、柱の下部に加工された二列のスリットに差し込まれ、さらに柱の側面に打ち込まれたドリフトピンによって、羽板と柱が一体化する。このように、締結金物とドリフトピンを介して土台と柱を一体化することで、地震などによる外力が作用した場合でも、柱が土台から離脱することはない。
土台に柱を据え付ける技術は、これまでにも様々な形態が開発されており、その例として以下の特許文献が挙げられる。文献1は、柱を高強度に固定することを目的としており、基礎と柱の間に固定金物を介在させている。固定金物は、土台の上面に載置されるベースプレートと、柱の下面に接触する支持プレートが、直立板を介して固定されている。また柱には、支持プレートから直立する取付プレートが差し込まれており、ドリフトピンによって柱と取付プレートが固定されている。次に文献2は、土台を挟んで基礎と柱を接合する際の施工性の改善を目的としており、基礎の上面に固定される下側接合具と、土台の中に差し込まれる上側接合具が、ネジによって着脱自在な構造になっており、現地での施工性に優れている。なお上側接合具の棒状接合部が柱の中に差し込まれており、ドリフトピンによって双方が一体化されている。
特開2002−115339号公報 特開2003−213799号公報
図6のように、締結金物を介して土台と柱を一体化する方法は、強度に優れ且つ現地での作業時間も短縮できるなど様々な利点がある。ただし図6に示す締結金物のほか、先の特許文献に開示された技術は、いずれも柱の側面にドリフトピンを打ち込んでおり、必然的にドリフトピンを打ち込むためのピン孔を柱に加工する必要がある。このピン孔は、建物が完成した際、壁やクロスなどで覆い隠され、室内から視認できないのが普通である。しかし和室については、伝統的に柱をそのまま見せることが多く、施工上の都合でピン孔やドリフトピンが室内から視認できる場合がある。
和室は自然な雰囲気を醸し出すため、木材や土壁や畳など天然由来のものが多数使用されており、本来ならば木目しか見えないはずの柱にドリフトピンが見えていると、居住者や来訪者に違和感を与える恐れがある。この点を解決するため、ドリフトピンを柱の内部に押し込んだ上、ピン孔の入り口に木材を詰め込むなどの対策を講じる場合がある。しかし詰め込まれた木材は、色彩や木目が周囲と微妙に異なることが多く、ピン孔の存在を完全に消し去ることは困難である。
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、土台の上面に柱を据え付ける際に用い、柱の側面にドリフトピンを打ち込む必要がなく、美感の向上に寄与する締結構造の提供を目的としている。
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、土台と柱との境界に挟み込まれる円盤状のプレートと、該プレートから下方に突出して土台上面の固定孔に差し込まれる下部シャフトと、前記プレートから上方に突出して柱下面の位置決め穴に差し込まれる上部シャフトと、からなる締結金物を用い、該締結金物と前記柱は、前記プレートから真上に向けて差し込むコーチスクリューで一体化し、前記下部シャフトには、土台の側面に打ち込まれるドリフトピンを挿通するための横孔を備えており、且つ前記プレートには、前記両シャフトを取り囲むように、前記コーチスクリューを挿通するための係止孔を複数配置し、前記プレートは、前記柱下面または前記土台上面をくり抜いた抜き穴に埋め込み、且つ該プレートの厚さと該抜き穴の深さを一致させたことを特徴とする締結構造である。
本発明で用いる締結金物は、柱を土台に据え付けるために使用され、プレートと下部シャフトと上部シャフトで構成される。プレートは、土台の上面と柱の下面との間に挟み込まれる金属板であり、柱の断面よりも小さい円盤状である。
下部シャフトは、プレートの下面中央から突出する円断面の金属棒であり、土台の上面に加工された固定孔に差し込まれる。固定孔は、土台の製材段階で柱の据え付け位置に加工され、その直径は下部シャフトと同じであり、しかも下部シャフトの全体を差し込めるだけの長さが必要である。また固定孔に差し込まれた下部シャフトは、ドリフトピンによって土台と一体化される。そのため下部シャフトの側周面には、ドリフトピンを挿通するための横孔が形成してあり、土台にも横孔と同心となる位置にあらかじめピン孔を加工しておく。
上部シャフトは、プレートの上面中央から突出する円断面の金属棒であり、柱の下面に加工された位置決め穴に差し込まれる。位置決め穴も、柱の製材段階で加工され、その直径は上部シャフトと同じであり、しかも上部シャフトの全体を差し込めるだけの長さが必要である。なお上部シャフトは、単に位置決め穴に差し込まれるだけであり、柱の引き抜きを防止する機能は備えていない。
下部シャフトと上部シャフトは、構造上、同心に揃える必要はなく、また直径が異なっていても構わない。しかし実際の製品はコスト等を考慮して、プレートの中心に一本のシャフトを突き刺した上、シャフトとプレートを溶接で一体化するのが普通で、プレートを境として一方の側が上部シャフトになり、もう一方の側が下部シャフトになる。なお下部シャフトには横孔が形成されているため、溶接の際はプレートとシャフトの位相を確認する必要がある。
コーチスクリューは、締結金物と柱を一体化するために使用され、プレートから柱の下面に向けてねじ込まれる。したがってプレートには、コーチスクリューを挿通するための係止孔が形成してある。当然ながら係止孔は、コーチスクリューのネジ部分だけが通過できる内径で、頭部は挿通できない。なお本発明で使用するコーチスクリューは、作業性を考慮して、ネジ部分の外径が最大でも12mm程度を想定しており、一本だけでは強度を確保できない恐れがあり、係止孔は、等間隔で複数を形成する。実際の製品では、係止孔をできるだけ多数形成して、想定される引き抜き荷重に応じて使用するコーチスクリューの本数を調整する。そのほか、コーチスクリューの頭部をプレート内に収容するため、原則として係止孔の下面側には座グリ穴を設ける。
柱を据え付ける際は、まず柱の下面の位置決め穴に上部シャフトを差し込み、次に、プレートの係止孔から柱に向けてコーチスクリューをねじ込んで、プレートを柱の下面に密着させる。その後、土台の上面の固定孔に下部シャフトを差し込み、プレートを土台の上面に載置した後、土台の側面のピン孔にドリフトピンを打ち込み、土台と締結金物を一体化する。なおドリフトピンを打ち込むため、当然ながら土台のピン孔と下部シャフトの横孔は、同心に揃うよう配慮を要する。
このように、締結金物とドリフトピンとコーチスクリューを介して土台と柱を一体化することで、柱の側面には、ドリフトピンを打ち込むためのピン孔を加工する必要がない。そのため本発明を利用して和室に配置される柱を据え付けると、柱の側面には木目だけが露出して、美感に優れている。
なおプレートは円盤状として、さらに土台の上面または柱の下面に抜き穴を加工して、その中にプレート全体を埋め込む。その結果、プレートの側面は、施工後も外気と接触しないため、結露が発生することもなく、土台や柱の腐食を防止できる。
請求項1記載の発明のように、土台に差し込まれる下部シャフトと、柱に差し込まれる上部シャフトと、コーチスクリューを挿通する係止孔を有するプレートと、からなる締結金物を用いて、土台と柱を締結することで、ドリフトピンを打ち込むためのピン孔を柱の側面に加工する必要がない。したがって、この締結金物を和室の柱の据え付けに使用すると、柱の側面には穴やピンなどの異物が一切存在せず、室内から柱を見た場合、木目だけが視認可能で、美感を損ねることなく自然な雰囲気を醸し出し、居住者や来訪者の満足度を高めることができる。またプレートを円盤状として土台や柱に埋め込むことで、結露が発生することもなく、土台や柱の腐食を防止できる。
本発明による締結構造を示す斜視図である。 図1に示す土台と柱を一体化した状態の斜視図である。 図2の状態の平面図と中央部の縦断面図である。 プレートが円盤状である締結金物の構成とその使用例を示す斜視図である。 図4に示す土台と柱を一体化した状態の斜視図と、その中央部の縦断面図である。 柱を土台に据え付ける際に用いる一般的な締結金物の形状例を示す斜視図である。
図1は、本発明による締結構造を示している。締結金物11は、柱33を土台32に据え付けるために使用され、正方形状のプレート12の中心に円断面のシャフトが串刺しされた形状で、プレート12から上方に突出する側を上部シャフト14、下方に突出する側を下部シャフト13と称するものとする。なおプレート12は、柱33の横断面と同じ大きさであり、柱33を据え付けた状態において、プレート12が柱33の側面から飛び出すことはない。
土台32には、下部シャフト13を差し込むための固定孔37があけられている。固定孔37は、設計図に基づいて柱33の据え付け位置に加工され、土台32の下面まで貫通しており、その直径は下部シャフト13と等しい。したがって差し込みの際は、締結金物11をカナヅチなどでたたけばよく、再度の削り込みは不要で、作業時間が長引くことはない。さらに下部シャフト13と土台32は、ドリフトピン21を介して一体化される。下部シャフト13には、ドリフトピン21を挿通するための横孔16が上下に二個形成され、対する土台32の側面には、固定孔37と交差して反対面に到達するピン孔36が、所定の位置に二個加工されている。なお下部シャフト13を土台32に差し込んだ後、ドリフトピン21を打ち込む際は、ピン孔36と横孔16を同心に揃えておく。ピン孔36については、打ち込まれたドリフトピン21が摩擦だけで保持可能な内径にする必要がある。
柱33の下面中央には、上部シャフト14を差し込むための位置決め穴38があけられている。位置決め穴38は、上部シャフト14の全体を差し込み可能な深さが確保され、その直径は上部シャフト14と等しい。したがって下部シャフト13と同様、差し込み作業が長引くことはない。なお上部シャフト14は柱33に差し込まれるだけであり、そのままの状態では、柱33は容易に引き抜き可能である。
締結金物11と柱33は、コーチスクリュー22で一体化される。コーチスクリュー22は一般の木ネジよりも大きめのもので、ネジ部分の外径が6mmから16mm程度のものが広く普及しており、通常は下孔を加工することなくねじ込みができる。本発明では柱33の引き抜けを防止するため、ネジ部分の外径が10mm程度のものを複数本使用する必要があり、プレート12には、コーチスクリュー22のネジ部分を挿通可能な係止孔17を等間隔で六個形成してある。さらにプレート12の下面側には、コーチスクリュー22の頭部を収容するため、係止孔17の内径を拡大した座グリ穴18を形成している(図右上の上下反転させた締結金物11を参照)。そのほかコーチスクリュー22は、原則として全ての係止孔17に差し込むが、荷重条件が緩い柱33の場合、一部の差し込みを省略してもよい。
本発明で用いる締結金物11は、柱33と基礎コンクリート31を直接一体化することはできない。ただし土台32は、アンカーボルト25を介して基礎コンクリート31と一体化しており、柱33が基礎コンクリート31から離脱することはない。アンカーボルト25は、基礎コンクリート31の上面から突出して土台32の中を貫通しており、その先端に大径のワッシャ27を差し込んでナット26を締め上げると、土台32は基礎コンクリート31と一体化する。
図2は、図1に示す土台32と柱33を一体化した状態である。土台32の上面にはプレート12が載置され、また下部シャフト13にはドリフトピン21が打ち込まれており、締結金物11は土台32と一体化している。さらに上部シャフト14は、柱33の位置決め穴38に差し込まれており、またプレート12から柱33に向けてコーチスクリュー22がねじ込まれており、締結金物11は柱33とも一体化している。このように、土台32の上面にはプレート12の側面が見えているものの、柱33の側面には、ピンなどを打ち込む必要がなく、木目だけが視認できる状態となり、柱33を和室に用いた場合でも、自然な雰囲気を損ねることがない。なお施工の際は、まずプレート12を柱33の下面に接触させてコーチスクリュー22をねじ込み、その後、下部シャフト13を土台32に差し込んでドリフトピン21を打ち込む。
図3は、図2の状態の平面図と中央部の縦断面図である。土台32に加工された固定孔37は、上下面を貫通しており、ここに差し込まれる下部シャフト13は、ドリフトピン21が挿通されることを考慮して、土台32の高さとほぼ等しい長さとなっている。対する柱33の位置決め穴38に差し込まれる上部シャフト14は、柱33が水平方向に移動しないよう拘束できればよいため、やや短くなっており、位置決め穴38もこれに応じた深さとなっている。なおプレート12は、金属板を切り出して製造され、また下部シャフト13と上部シャフト14は一本の金属製の丸棒であり、この丸棒をプレート12に突き刺して双方を溶接で一体化している。
プレート12から柱33にねじ込まれるコーチスクリュー22は、その頭部がプレート12の座グリ穴18に収容されており、土台32とは接触していない。またコーチスクリュー22は、強度を確保するため六本使用され、これを差し込むための係止孔17が等間隔で形成してある。そのほか土台32は、アンカーボルト25を介して基礎コンクリート31の上面に固定されている。基礎コンクリート31の上面から突出するアンカーボルト25は、土台32に加工されたアンカー孔35に差し込まれており、その先端にナット26を螺合させている。なおナット26の締め付けによる土台32の変形を防止するため、ナット26と土台32の間にワッシャ27を介在させている。
図4は、プレート12が円盤状である締結金物11の構成とその使用例を示している。図1のプレート12は正方形状だが、本図のように円盤状とすることもある。プレート12を矩形状とすると、図2のように施工後も土台32と柱33との境界にプレート12の側面が露出して、温度変化で結露が発生することがある。そこで、プレート12を柱33の横断面よりも小さい円盤状として、柱33の下面にプレート12を収容する抜き穴39を加工すると、プレート12全体を柱33の中に埋め込むことができる。なお抜き穴39は、円断面以外の矩形断面でも構わないが、加工を考慮すると円断面が最適であり、またプレート12は、コーチスクリュー22を差し込むため、ある程度の面積が必要となり、抜き穴39とほぼ等しい直径としている。
図5は、図4に示す土台32と柱33を一体化した状態と、その中央部の縦断面である。このように、プレート12を含む締結金物11の全体は、土台32と柱33の中に埋め込まれており、結露の発生を防止している。この形態は抜き穴39を加工する手間が増えるものの、温度変化が激しい場所や、慢性的に湿度が高い場所で優れた効果を発揮して、建物の信頼性が向上する。なお抜き穴39の深さとプレート12の厚さを一致させることで、柱33に作用する垂直荷重の一部は、プレート12を介して土台32に伝達していく。
11 締結金物
12 プレート
13 下部シャフト
14 上部シャフト
16 横孔
17 係止孔
18 座グリ穴
21 ドリフトピン
22 コーチスクリュー
25 アンカーボルト
26 ナット
27 ワッシャ
31 基礎コンクリート
32 土台
33 柱
35 アンカー孔
36 ピン孔
37 固定孔
38 位置決め穴
39 抜き穴

Claims (1)

  1. 土台(32)と柱(33)との境界に挟み込まれる円盤状のプレート(12)と、該プレート(12)から下方に突出して土台(32)上面の固定孔(37)に差し込まれる下部シャフト(13)と、前記プレート(12)から上方に突出して柱(33)下面の位置決め穴(38)に差し込まれる上部シャフト(14)と、からなる締結金物(11)を用い、
    該締結金物(11)と前記柱(33)は、前記プレート(12)から真上に向けて差し込むコーチスクリュー(22)で一体化し、
    前記下部シャフト(13)には、土台(32)の側面に打ち込まれるドリフトピン(21)を挿通するための横孔(16)を備えており、且つ前記プレート(12)には、前記両シャフト(13、14)を取り囲むように、前記コーチスクリュー(22)を挿通するための係止孔(17)を複数配置し、
    前記プレート(12)は、前記柱(33)下面または前記土台(32)上面をくり抜いた抜き穴(39)に埋め込み、且つ該プレート(12)の厚さと該抜き穴(39)の深さを一致させたことを特徴とする締結構造。
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