JP5711280B2 - 食品の酵素漂白における使用向け新規酵素 - Google Patents

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Description

発明の詳細な説明
本発明は、白色度の向上した食品を調製するための方法における使用に好適な新規酵素、食品の少なくとも一部の白色度を向上させるための酵素の使用、酵素が使用される食品を調製するための方法及び得られる食品に関する。
ある種類の食品、例えば、乳製品、例えばチーズ、乳清、バター、及び粉乳において、及び穀粉原料製品、例えばパン及び麺類においては、食品の少なくとも一部は白色が望ましいものと見なされる。
しかしながら、かかる食品の原材料又は中間製品は色素を含むことがあり、それによって食品が淡白色〜黄色になり得る。かかる色素の例はカロテノイド(カロテン及びキサントフィル)及びフラボンである。
例えば精白パンにおいては、白い内相が望ましい特性と見なされる。カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、リパーゼ及び/又はリポキシゲナーゼなどの酵素を使用することによって、より白い内相が得られ得る(例えば、P.ゲリナス(P.Gelinas)らによる「Oxido−reductases and Lipases as Dough−Bleaching Agent」、Cereal Chem、75(6)、810〜814頁(1998年)を参照)。以上の酵素は全て、内相に対し漂白効果を有する。現在、製パン業では主に、リポキシゲナーゼを含有する酵素活性大豆粉が使用される。大豆粉中のリポキシゲナーゼは小麦粉色素の漂白能を有し、これはフリーラジカル及び脂肪酸の酸化中にリポキシゲナーゼにより形成される他の活性酸素種の作用の結果である。この反応は共酸化と呼ばれる。大豆粉には、3種のリポキシゲナーゼ、L1、L2及びL3が存在し、L2及びL3が最良の漂白活性を有する(W.グロシュ(W.Grosch)、G.ラスカウイ(G.Laskawy)及びF.ウェバー(F.Weber)、J.アグリック(J.Agric)、Food Chem 24(1976年)、456頁)。大豆粉はリポキシゲナーゼのみならず漂白効果に必要な脂肪酸も含有し、結果として漂白効果の改善をもたらす。
リポキシゲナーゼ源としての大豆の使用に関連する難点は、今日ほとんどの大豆が遺伝子操作(GMO)されているという現実である。世界的に顧客は非GMO由来パン改良添加剤を好むため、大豆リポキシゲナーゼの代替品の必要性は高い。大豆由来リポキシゲナーゼL2及びL3以外の既知の酵素は、大豆由来リポキシゲナーゼほど良好には機能しないという難点を有する。実際には、所望の白色度を得るため、これらの酵素は補因子又は他の酵素と組み合わされて所望の水準の内相の白色度を達成することとなる。ペルオキシダーゼは、不飽和化合物、例えば不飽和脂肪酸の酸化を酸素分子によって非酵素的に触媒する。(C.E.エリクソン(C.E.Eriksson)ら JAOS48(1971年)442頁)。これらの酸化脂肪酸はラジカルを生成し、おそらくはこれが小麦粉色素と反応して、リポキシゲナーゼ反応産物と同様の方法で製品の有色度をより低くする。
本発明の目的は、食品の少なくとも一部の白色度の向上した食品の調製に好適な新規酵素を提供することである。
意外なことに、本発明に係る漂白酵素は、色素を結果として白色度の向上をもたらす形態に直接的に変換する能力を有することが発見された。これらの酵素は色素に対し様々な方法で直接的な漂白効果を及ぼすことができる。例えば、これらは色素中の不飽和結合を例えば水素化を介して飽和させることにより色素を直接的に変換でき、又はこれらは色素を直接的に開裂して分解産物を形成することができる。直接的という用語は、これらの酵素が色素に対し基質それ自体として作用することを意味する。変換を達成するための補因子の使用は特に排除されるものではない。
さらには、本発明に係る漂白ポリペプチドは、色素を直接的に開裂する能力を有する(いわゆる開裂酵素である)ことが発見された。本発明に係る好適な開裂酵素は、カロテノイド(カロテン及びキサントフィル)及びフラボンの開裂能を有する酵素である。カロテノイドは2つの異なる方法、中央及びエキセントリックで開裂され得る。カロテノイドの中央開裂は結果としてレチノイド(C20化合物)の形成をもたらす。エキセントリック開裂は、例えばアブシジン酸などの、より多様な化合物群を生じ得る。カロテノイドの中央開裂能を有する酵素は、例えば欧州特許出願公開第1031623A号明細書及びJ.リンティッヒ(J.Lintig)及びK.フォークト(K.Vogt)(2000年)J.Biol.Chem.275、11915頁に記載されるとおり、例えばβ−カロテン15,15’−モノオキシゲナーゼ(EC1.14.99.36)である。この酵素は以前はβ−カロテン15,15’−ジオキシゲナーゼ=EC1.13.11.21として知られていた。
中央開裂能を有する酵素の使用のさらなる利点は、レチノイドの形成である。レチノイドは視覚における必須成分である。β−カロテンは2個のレチナール分子に開裂される。このレチナールは、ビタミンAとしても知られるレチノールに改変され得る。カロテノイドのエキセントリック開裂能を有する酵素の例は、9−シス−エポキシカロテノイドジオキシゲナーゼ(例えば、X.チン(X.Qin)及びJ.A.D.ジバルト(J.A.D.Zeevaart)(1999年)、Proc.Nat.Acad.Science、96、15354頁)及びβ−カロテン9’,10’−ジオキシゲナーゼ(例えば、キーファー(Kiefer)ら(2001年)、J.Biol.Chem.287、14110頁)である。
本目的は、本発明に記載されるとおりの新規酵素により達成される。
第1の態様において、本発明は、漂白活性と
1)配列番号08〜12のいずれか1つに従う単離ポリペプチド又はその任意の機能的等価物、
2)配列番号01〜07のいずれか1つに従うポリヌクレオチド又はその任意の機能的等価物又は前記ポリヌクレオチドを含んでなるベクター又はその任意の機能的等価物を然るべき宿主細胞、例えばアスペルギルス・ニガー中で発現させることにより得られる単離ポリペプチド、及び
3)配列番号13〜17の少なくとも1つを含んでなるポリペプチド
からなる群より選択される1つ又は複数の特性とを有する単離ポリペプチドに関する。
用語「漂白活性を有するポリペプチド」は本所及び以下ではβ−カロテン分解能を有するポリペプチド又は食品の漂白能を有するポリペプチドとして定義される。β−カロテン分解は、例えば本特許出願の「材料及び方法」の節に開示されるとおりの方法の少なくとも1つ、例えばZornに従う方法又はAzizに従う方法により計測され得る。好ましくは、本発明に係るポリペプチドはAziz及びZornの双方のアッセイにおいて漂白活性を示す。食品の漂白能は、調査されるポリペプチドがその調製に使用される製品Aの白色度を、調査されるポリペプチドがその製品中に使用されなかった点において唯一製品Aと異なる製品Bの白色度と、例えば視覚的に、又は既知の反射計測によって比較することにより測定され得、調査されるポリペプチドが漂白活性を有する場合には、製品Aのb値は製品Bのb値と比べ0により近くなるであろう。
さらにより好ましくは、本発明に係るポリペプチドはZornに従い測定されるときβ−カロテン分解能を有するとともにこれは反射計測によってb値の計測により測定されるとき食品の漂白能を有する。最も好ましくは、本発明に係るポリペプチドは、例えばパンの内相など、漂白される食品が一様でない表面構造を有し、ひいては反射計測法が信頼性に欠ける場合に、Zornに従い測定されるときβ−カロテン分解能を有する。
好ましい実施形態において、本発明は精製されたポリペプチドを提供する。本発明に係るポリペプチドは本発明に係るポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドを含む。特に、配列番号08〜12に従うポリペプチド又はその任意の機能的等価物が好ましい。
本発明に係るポリペプチドを含んでなる融合タンパク質もまた本発明の範囲内である。本発明はまた、本発明に係るポリペプチドの作製方法も提供する。
誤解を避けるため、配列番号01〜07は、配列番号01、配列番号02、配列番号03、配列番号04、配列番号05、配列番号06、及び配列番号07を含むDNA配列群を参照し、配列番号08〜12は、配列番号08、配列番号09、配列番号10、配列番号11及び配列番号12を含むタンパク質配列群を参照し、及び配列番号13〜18は、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16及び配列番号17を含むタンパク質配列群を参照するものとする。さらに、配列番号08〜12を有するポリペプチドについては、用語カロアーゼ01、カロアーゼ02、カロアーゼ03、カロアーゼ04、カロアーゼ05(群全体として「カロアーゼ01−05」と称される)がそれぞれ使用される。
第2の態様において、本発明は、好ましくは高度にストリンジェントな条件下で配列番号01〜07のいずれか1つに従う配列とハイブリダイズされるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを提供する。結果的に、本発明は、配列番号01〜07に従う配列と約55%、好ましくは65%、より好ましくは70%、さらにより好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%相同な核酸を提供する。
より好ましい実施形態において本発明は、真菌類、好ましくは糸状菌類、特にホウライタケ属が好ましく、例えばニオイヒメホウライタケから得られる単離ポリヌクレオチドを提供する。
一実施形態において、本発明は、配列番号08〜12に示されるとおりのアミノ酸又はその任意の機能的等価物を伴うポリペプチドをコードする核酸配列を含んでなる単離ポリヌクレオチドを提供する。
さらに好ましい実施形態において、本発明は、配列番号08〜12に従うポリペプチド又はその任意の機能的等価物の少なくとも1つの機能ドメインをコードする単離ポリヌクレオチドを提供する。
好ましい実施形態において、本発明は、配列番号01〜07に従う漂白酵素遺伝子を提供する。別の好ましい実施形態において、本発明は、そのアミノ酸配列が配列番号08〜12に示される漂白酵素又はその任意のポリペプチドの変異体又は断片をコードするポリヌクレオチドを提供する。
さらに好ましい実施形態において、本発明は、本発明に係るポリペプチドをコードするコード配列を含んでなるポリヌクレオチドを提供し、好ましくは配列番号01〜07のポリヌクレオチド配列である。
第3の態様において、本発明はまた、本発明に係るポリヌクレオチド配列及び本発明に従いDNAを増幅又は検出するために使用され得るプライマー、プローブ及び断片を含んでなるベクターにも関する。
好ましい実施形態において、提供されるベクターでは、本発明に係るポリヌクレオチド配列が、細菌類又は糸状菌類、好ましくはホウライタケ属、例えばニオイヒメホウライタケ、アスペルギルス(Aspergillus)属、例えばA・ニガー又はA・オリゼ(A.oryzae)などの好適な宿主細胞中におけるコードされたアミノ酸配列の発現に好適な調節配列と機能的に連結される。本発明はまた、本発明に係るポリヌクレオチド及びベクターを調製するための方法も提供する。
第4の態様において、本発明はまた、本発明に係る非相同又は相同ポリヌクレオチドを含有する、組換え産生された宿主細胞にも関する。
別の実施形態において、本発明は組換え宿主細胞を提供し、ここでは本発明に係るペルオキシダーゼの発現が有意に増加するか、又はペルオキシダーゼの活性が増加する。
別の実施形態において本発明は、本発明に係る非相同又は相同DNAを含有する組換え産生された宿主細胞を提供するとともに、ここで宿主細胞は本発明に係る機能性ペルオキシダーゼの産生能を有し、好ましくは本発明に係るペルオキシダーゼの過剰発現能を有する細胞、例えば本発明に係る遺伝子のコピー数の増加を含んでなるアスペルギルス株である。
第5の態様において、本発明はまた、好ましくは本明細書に記載されるとおりの、任意の工業プロセスにおける本発明に係る漂白ポリペプチドの使用にも関する。
[本発明に係るポリペプチド]
本発明は、配列番号08〜12のいずれか1つに従うアミノ酸配列、ならびに配列番号01〜07のポリヌクレオチドを然るべき宿主中で発現することにより得られるアミノ酸配列を有する単離ポリペプチドを提供する。また、上記のポリペプチドの機能的等価物を含んでなるペプチド又はポリペプチドも本発明の範囲内に含まれる。上記のポリペプチドはまとめて用語「本発明に係るポリペプチド」に含まれる。
用語「ペプチド」及び「オリゴペプチド」は本所及び以下では同義語と見なされる(一般的に認識されるとおり)とともに各用語は、文脈上ペプチジル結合により結合される少なくとも2個のアミノ酸の鎖を示すことが要求されるとき、同義的に使用され得る。単語「ポリペプチド」は本明細書では8個以上のアミノ酸残基を含有する鎖に使用される。本明細書の全てのオリゴペプチド及びポリペプチドの式又は配列は、左から右に、及びアミノ末端からカルボキシ末端の方向に記載される。本明細書で使用されるアミノ酸の1文字コードは当該技術分野において一般的に知られているとともにサムブルック(Sambrook)ら(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク州、1989年)に参照され得る。
「単離された」ポリペプチド又はタンパク質は、その天然環境から取り出されたポリペプチド又はタンパク質を意図する。例えば、宿主細胞中で発現する組換え産生されたポリペプチド及びタンパク質は、任意の好適な技術、例えば、スミス(Smith)及びジョンソン(Johnson)、Gene 67:31〜40頁(1988年)に開示される一段階精製法により実質的に精製されている天然又は組換えポリペプチドであるため、本発明の目的上単離されていると見なされる。
本発明に係るカロアーゼ01−05漂白酵素、又はその機能的等価物は、組換え細胞培養物から、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーを含む周知の方法により回収及び精製され得る。最も好ましくは、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)が精製に用いられる。
本発明のポリペプチドは、自然に精製された産物、化学合成法による産物、及び組換え技術により、例えば、細菌、酵母、高等植物、昆虫及び哺乳動物細胞を含む、原核生物又は真核生物宿主から産生される産物を含む。組換え産生手順において用いられる宿主に応じて、本発明のポリペプチドはグリコシル化されてもよく、又は非グリコシル化であってもよい。加えて、本発明のポリペプチドはまた、ある場合には宿主介在プロセスの結果として、初期修飾されたメチオニン残基を含み得る。
[機能的等価物]
用語「機能的等価物」及び「機能変異体」は本明細書では同義的に使用される。カロアーゼ01−05DNAの機能的等価物は、本明細書に定義されるとおりのカロアーゼ01−05ニオイヒメホウライタケ漂白酵素の少なくとも1個と少なくとも同等又はより良好な漂白活性を呈するポリペプチドをコードする単離されたDNA断片である。本発明に係るカロアーゼ01−05ポリペプチドの機能的等価物は、本明細書に定義されるとおりのカロアーゼ01−05ニオイヒメホウライタケ漂白酵素の少なくとも1つと少なくとも同等又はより良好な漂白活性を呈するポリペプチドである。
タンパク質又はポリペプチドの機能的等価物は、配列番号08〜12のいずれか1つの1個又は複数のアミノ酸の保存的置換のみ、又はその任意の非必須アミノ酸の置換、挿入又は欠失を含み得る。従って、非必須アミノ酸は、生物学的機能を実質的に変化させることなく配列番号08〜12のいずれか1つにおいて変更し得る残基である。例えば、本発明のカロアーゼ01−05タンパク質間で保存されるアミノ酸残基は、特に変化を受け入れにくいと予想される。さらには、本発明に係るカロアーゼ01−05タンパク質間で保存されるアミノ酸及び他のペルオキシダーゼが変化を受け入れやすいとは思われない。
用語「保存的置換」は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基と置き換えられるような置換を意味することを意図している。これらのファミリーは当該技術分野において周知であるとともに、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン及びヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を伴うアミノ酸が挙げられる。
核酸の機能的等価物は典型的には、サイレント突然変異又はコードされたポリペプチドの生物学的機能を変化させない突然変異を含み得る。従って、本発明は、特定の生物活性に必須でないアミノ酸残基の変更を含むカロアーゼ01−05タンパク質をコードする核酸分子を提供する。アミノ酸配列が配列番号08〜12のいずれの1つとも異なる、かかるカロアーゼ01−05タンパク質は、少なくとも1種の生物活性をさらに保持する。一実施形態において、単離核酸分子はタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含んでなり、ここでタンパク質は、配列番号08〜12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と実質的に少なくとも約55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上相同なアミノ酸配列を含んでなる。
例えば、表現型上サイレントなアミノ酸置換を生じさせるための方法に関する指針がボウイ・J.U.(Bowie,J.U.)ら、Science 247:1306〜1310頁(1990年)に提供され、ここで著者は、アミノ酸配列の変化に対する許容度を研究するうえで2つの手法があることを指摘している。第1の方法は、進化の過程に依存し、ここで突然変異は自然選択により受け入れられるか、拒絶されるかのいずれかである。第2の手法は遺伝子工学を使用してクローニングされた遺伝子の特異的な位置でアミノ酸変化を導入するとともに機能性を保持する配列を選択又はスクリーニングして同定する。著者が述べるとおり、これらの研究は、タンパク質が驚くほどアミノ酸置換を許容することを明らかにしている。著者はさらに、タンパク質の特定の位置でどの変化が許容的である可能性が高いかについて指摘する。例えば、最も内部のアミノ酸残基が非極性側鎖を必要とする一方、表面側鎖の特徴は一般的にほとんど保存されない。他のかかる表現型上サイレントな置換は、ボウイ(Bowie)ら、上記、及び当該文献中に引用される参考文献に記載される。
配列番号08〜12のいずれか1つに従うタンパク質と相同なカロアーゼ01−05タンパク質をコードする単離核酸分子が、1つ又は複数のヌクレオチド置換、付加又は欠失を配列番号01〜07に従うコードヌクレオチド配列に導入することにより作成されることで、1つ又は複数のアミノ酸置換、欠失又は挿入がコードされたタンパク質に導入され得る。かかる突然変異は、部位特異的突然変異誘発及びPCR介在性突然変異誘発などの標準的な技術により導入されてもよい。
用語「機能的等価物」はまた、ニオイヒメホウライタケカロアーゼ01−05タンパク質のオルソログも包含する。ニオイヒメホウライタケカロアーゼ01−05タンパク質のオルソログは、他の株又は種から単離され得るとともに類似又は同一の生物活性を有するタンパク質である。かかるオルソログは、配列番号08〜12のいずれか1つと実質的に相同なアミノ酸配列を含んでなるものとして容易に同定され得る。
本明細書に定義されるとおり、用語「実質的に相同」が参照する第1のアミノ酸又はヌクレオチド配列は、第2のアミノ酸又はヌクレオチド配列と同一又は等価な(例えば、類似した側鎖を伴う)アミノ酸又はヌクレオチドを十分に、又は最小数含有し、これにより第1及び第2のアミノ酸又はヌクレオチド配列は共通ドメインを有する。例えば、約55%、好ましくは65%、より好ましくは70%、さらにより好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%もしくはそれ以上の同一性を有する共通ドメインを含有するアミノ酸又はヌクレオチド配列が、本明細書において十分に同一であるとして定義される。
また、他のカロアーゼ01−05ファミリーメンバー、従って配列番号01〜07と異なるヌクレオチド配列を有するものをコードする核酸も、本発明の範囲内である。さらに、異なる種由来の、従って配列番号01〜07と異なるヌクレオチド配列を有するカロアーゼ01−05タンパク質をコードする核酸が本発明の範囲内である。
変異体(例えば、天然対立遺伝子変異体)に相当する核酸分子及び本発明のカロアーゼ01−05DNAの相同体は、本明細書に開示されるカロアーゼ01−05核酸とのそれらの相同性に基づき、本明細書に開示されるDNA又はその好適な断片を使用して、好ましくは高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で標準的なハイブリダイゼーション技術に従うハイブリダイゼーションプローブとして単離され得る。
カロアーゼ01−05配列の天然対立遺伝子変異体に加え、当業者は、突然変異により配列番号01〜07のヌクレオチド配列に変化が導入されることにより、カロアーゼ01−05タンパク質の機能を実質的に変質させることなく、カロアーゼ01−05タンパク質のアミノ酸配列に変化がもたらされ得ることを認識するであろう。
本発明の別の態様において、改良型カロアーゼ01−05タンパク質が提供される。改良型カロアーゼ01−05タンパク質は、少なくとも1種の生物活性が改良されるタンパク質である。かかるタンパク質は、飽和突然変異誘発などにより、カロアーゼ01−05コード配列の全部又は一部にわたり無作為に突然変異を導入することにより得られ得るとともに、結果として得られる変異体は組換え発現させたうえ生物活性についてスクリーニングされ得る。例えば、当該技術分野では、ペルオキシダーゼの酵素活性を計測するための標準アッセイが提供されているとともに、ひいては改良型タンパク質が容易に選択され得る。
好ましい実施形態においてカロアーゼ01−05タンパク質は、それぞれ配列番号08〜12のいずれか1つに従うアミノ酸配列を有する。別の実施形態において、カロアーゼ01−05ポリペプチドは、それぞれ配列番号08〜12に従うアミノ酸配列と実質的に相同であるとともにそれぞれ配列番号08〜12に従うポリペプチドの少なくとも1種の生物活性を保持し、さらには自然変動又は上述されるとおりの突然変異誘発に起因してアミノ酸配列が異なる。
さらに好ましい実施形態において、カロアーゼ01−05タンパク質は、好ましくは高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号01〜07に従う核酸とハイブリダイズ可能な単離核酸断片によりコードされるアミノ酸配列を有する。
従って、カロアーゼ01−05タンパク質は、配列番号08〜12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と、少なくとも約55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上相同なアミノ酸配列を含んでなるとともに配列番号08〜12のいずれか1つに従うポリペプチドの少なくとも1種の機能的活性を保持するタンパク質である。
本発明の別の態様において、本ポリペプチドは配列番号13〜17に示される配列の少なくとも1つを含んでなる。好ましくは、本発明に係るポリペプチドは配列番号13〜17に示される配列の少なくとも2つを含んでなる。最も好ましくは、本ポリペプチドは配列番号13〜17に示される配列の全てを含んでなる。
本発明に係るタンパク質の機能的等価物はまた、例えば、本発明のタンパク質の変異体、例えば切断変異体の組み合わせライブラリをペルオキシダーゼ活性についてスクリーニングすることによっても同定され得る。一実施形態において、変異体の多様化ライブラリは核酸レベルでの組み合わせ突然変異誘発により生成される。変異体の多様化ライブラリは、例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列に酵素的にライゲートすることにより産生され、これにより有望なタンパク質配列の縮重セットが個別のポリペプチドとして、又は代替的により大きな融合タンパク質のセットとして(例えば、ファージディスプレイ用)発現可能となり得る。本発明のポリペプチドの有望な変異体のライブラリを縮重オリゴヌクレオチド配列から産生するために、様々な方法が使用され得る。縮重オリゴヌクレオチドを合成するための方法は当該技術分野において周知である(例えば、ナラング(Narang)(1983年)Tetrahedron 39:3頁;イタクラ(Itakura)ら(1984年)Annu.Rev.Biochem.53:323頁;イタクラ(Itakura)ら(1984年)Science 198:1056頁;イケ(Ike)ら(1983年)Nucleic Acid Res.11:477頁を参照のこと)。
加えて、本発明のポリペプチドのコード配列の断片のライブラリが使用され多様なポリペプチド集団が生成されることで、続く変異体の選択がスクリーニングされ得る。例えば、コード配列断片のライブラリは、ニッキングが1分子につき約1回のみ生じる条件下で当該コード配列の二重鎖PCR断片をヌクレアーゼにより処置し、二重鎖DNAを変性させ、DNAを再生して異なるニッキング産物由来のセンス/アンチセンス対を含み得る二重鎖DNAを形成し、再編成された二重鎖からS1ヌクレアーゼで処置することにより一本鎖部分を取り出し、及び結果として得られる断片ライブラリを発現ベクターにライゲートすることにより生成され得る。この方法により、様々な大きさの当該タンパク質のN末端及び内部断片をコードする発現ライブラリが導き出され得る。
切断体の点突然変異により作製される組み合わせライブラリの遺伝子産物をスクリーニングするための、及び選択的な特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリをスクリーニングするためのいくつかの技術が当該技術分野において周知である。大規模な遺伝子ライブラリのスクリーニング向けの、ハイスループット解析に適した最も広範に使用されている技術は典型的には、遺伝子ライブラリを複製可能な発現ベクターにクローニングするステップ、結果として得られるベクターのライブラリで然るべき細胞を形質転換するステップ、及び所望の活性の検出により産物の検出された遺伝子をコードするベクターの単離が促進される条件下で組み合わせ遺伝子を発現するステップを含む。ライブラリにおける機能的変異の頻度を高める技術である、再帰的アンサンブル突然変異誘発(REM)がスクリーニングアッセイと組み合わせて使用されることにより、本発明のタンパク質の変異体が同定され得る(アーキン(Arkin)及びユルバン(Yourvan)(1992年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7811−7815頁;デルグレーブ(Delgrave)ら(1993年)Protein Engineering 6(3):327〜331頁)。
カロアーゼ01についての配列番号01又は02、カロアーゼ02についての配列番号03又は04、カロアーゼ03についての配列番号05、カロアーゼ04についての配列番号06及びカロアーゼ05についての配列番号07にそれぞれ示されるカロアーゼ01−05遺伝子配列に加え、カロアーゼタンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらし得るDNA配列多型が所与の集団中に存在し得ることは、当業者には明らかであろう。かかる遺伝子多型は異なる集団由来の細胞中又は自然の対立遺伝子変異に起因する集団内に存在し得る。対立遺伝子変異体はまた、機能的等価物も含み得る。
本発明に係るポリヌクレオチドの断片はまた、機能的ポリペプチドをコードしないポリヌクレオチドを含んでなってもよい。かかるポリヌクレオチドはPCR反応用のプローブ又はプライマーとして機能し得る。
本発明に係る核酸は、それらのコードするポリペプチドが機能的か非機能的かに関わらず、ハイブリダイゼーションプローブ又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーとして使用され得る。カロアーゼ01−05活性を有するポリペプチドをコードしない本発明の核酸分子の使用には、とりわけ、(1)カロアーゼ01−05タンパク質をコードする遺伝子、又はその対立遺伝子変異体の、cDNAライブラリ、例えばニオイヒメホウライタケ以外の生物からの単離、(2)ベルマ(Verma)ら「Human Chromosomes:a Manual of Basic Techniques」、Pergamon Press、ニューヨーク(New York)(1988年)に記載されるとおりの、カロアーゼ01−05遺伝子の正確な染色体位置を提供するための分裂中期染色体スプレッドとのインサイチュハイブリダイゼーション(例えばFISH)、(3)特異的組織及び/又は細胞中でのカロアーゼ01−05mRNAの発現を検出するためのノーザンブロット分析、及び4)診断ツールとして使用して所与の生物学的(例えば、組織)試料中でカロアーゼ01−05プローブとハイブリダイズ可能な核酸の存在を分析できるプローブ及びプライマーが含まれる。
カロアーゼ01−05遺伝子の機能的等価物を得る方法もまた本発明に包含される。かかる方法は、配列番号08〜12のいずれか1つに従う配列の全部もしくは一部又はその任意の変異体をコードする単離核酸を含む標識プローブを得るステップ、核酸断片ライブラリを標識プローブにより、ライブラリ中の核酸断片とのプローブのハイブリダイゼーションを可能にする条件下でスクリーニングすることにより核酸二重鎖を形成するステップ、及び任意の標識二重鎖中で完全長遺伝子配列を核酸断片から調製してカロアーゼ01−05遺伝子に関連する遺伝子を得るステップを伴う。
一実施形態において、本発明のカロアーゼ01−05核酸は、それぞれカロアーゼ01についての配列番号01又は02、カロアーゼ02についての配列番号03又は04、カロアーゼ03についての配列番号05、カロアーゼ04についての配列番号06及びカロアーゼ05についての配列番号07に示される核酸配列又はその任意の相補体と、少なくとも55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上相同である。
別の好ましい実施形態において本発明のカロアーゼ01−05ポリペプチドは、それぞれ配列番号08〜12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と、少なくとも55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上相同である。
[ポリヌクレオチド]
本発明は、配列番号08〜12に従うアミノ酸配列又はその任意の機能的等価物を有する、カロアーゼ01−05と仮称される漂白酵素(ペルオキシダーゼ)をコードするポリヌクレオチドを提供する。カロアーゼ01−05をコードする遺伝子の配列は、ニオイヒメホウライタケから得られるcDNAを増幅することにより決定された。カロアーゼ01及びカロアーゼ02をそれぞれコードする配列番号02及び配列番号04を有する配列は、取り上げられる遺伝子の最適化バージョンであり、コドン最適化が行われている。コドン最適化は当業者に周知の方法に従い使用され得るとともに特に宿主細胞中での遺伝子の発現の改良に好適である。本発明は、カロアーゼ01−05ペルオキシダーゼをコードする遺伝子を含んでなるポリヌクレオチド配列を提供する。従って、本発明は、配列番号01〜07に従うヌクレオチド配列又はその任意の機能的等価物を含んでなる単離ポリヌクレオチドに関する。ニオイヒメホウライタケの配列番号01〜07が漂白活性を有するという発見は、特に配列は既知の漂白酵素との相同性が極めて低いことから、極めて驚くべきものであった。
より詳細には、本発明は、ストリンジェントな条件下で、好ましくは高度にストリンジェントな条件下で、配列番号01〜07に従うポリヌクレオチドとハイブリダイズ可能な単離ポリヌクレオチドに関する。有利には、かかるポリヌクレオチドは、真菌類、好ましくは糸状菌類、特にニオイヒメホウライタケから得られ得る。より具体的には、本発明は、配列番号01〜07に従うヌクレオチド配列を有する単離ポリヌクレオチドに関する。
本所及び以下で使用されるとき、用語「遺伝子」及び「組換え遺伝子」は、染色体DNAから単離され得る核酸分子を参照し、これはタンパク質、例えばニオイヒメホウライタケ漂白酵素をコードするオープンリーディングフレームを含む。遺伝子は、コード配列、非コード配列、イントロン及び調節配列を含み得る。さらに、遺伝子は本明細書に定義されるとおりの単離核酸分子を参照する。
配列番号01〜07のヌクレオチド配列を有する核酸分子又はその機能的等価物などの本発明の核酸分子は、標準的な分子生物学的技術及び本明細書に提供される配列情報を使用して単離され得る。例えば、配列番号01〜07の核酸配列の全部又は一部をハイブリダイゼーションプローブとして使用することにより、標準的なハイブリダイゼーション及びクローン技術を使用して(例えば、サムブルック・J.(Sambrook,J.)、フリッチ・E.F.(Fritsh,E.F.)、及びマニアチス・T.(Maniatis,T.)「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク州、1989年に記載されるとおり)本発明に係る核酸分子が単離され得る。
さらに、配列番号01〜07の全部又は一部を包含する核酸分子は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって配列番号01〜07に含まれる配列情報に基づき設計される合成オリゴヌクレオチドプライマーを使用して単離され得る。
本発明の核酸は、cDNA、mRNA又は代替的にゲノムDNAを鋳型として、及び然るべきオリゴヌクレオチドプライマーを使用して標準的なPCR増幅技術に従い増幅され得る。そのように増幅される核酸は然るべきベクターにクローニングされ得るとともにDNA配列解析により特性化され得る。
さらには、本発明に係るヌクレオチド配列に対応する、又はそれとハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドが標準的な合成技術により、例えば自動DNA合成機を使用して調製され得る。
好ましい実施形態において、本発明の単離核酸分子は、配列番号01〜07に示されるヌクレオチド配列を含んでなる。このDNAは、配列番号08〜12にそれぞれ従うニオイヒメホウライタケカロアーゼ01−05ポリペプチドをコードする配列を含んでなる。
別の好ましい実施形態において、本発明の単離核酸分子は、配列番号01〜07に示されるヌクレオチド配列の相補体又はそれらのヌクレオチド配列の機能的等価物である核酸分子を含んでなる。
別のヌクレオチド配列と相補的な核酸分子は、他のヌクレオチド配列と十分に相補的であるため他のヌクレオチド配列とハイブリダイズでき、それにより安定な二重鎖を形成する核酸分子である。
本発明の一態様は、本発明のポリペプチド又は生物学的に活性な断片又はドメインなどのその機能的等価物をコードする単離核酸分子、ならびにハイブリダイゼーションプローブとして使用され、核酸分子の増幅又は突然変異用のPCRプライマーとして使用するのに好適な本発明のポリペプチドをコードする核酸分子及びかかる核酸分子の断片を同定するのに十分な核酸分子に関する。
「単離ポリヌクレオチド」又は「単離核酸」は、由来する生物体の天然ゲノム中では直ちに連続する(一方は5’末端上で、及び一方は3’末端上で)コード配列の双方と直ちに連続しないDNA又はRNAである。従って、一実施形態において、単離核酸は、コード配列に直ちに連続する5’非コード(例えば、プロモーター)配列の一部又は全部を含む。それゆえ本用語は、例えば、ベクター、自己複製プラスミド又はウイルス、又は原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれる組換えDNA、又は別個の分子(例えば、PCR又は制限エンドヌクレアーゼ処置により産生されるcDNA又はゲノムDNA断片)として他の配列と無関係に存在するものを含む。これはまた、実質的に細胞物質、ウイルス性物質、又は培養培地(組換えDNA技術により産生される場合)、又は化学的前駆体又は他の化学物質(化学的に合成される場合)のない追加的なポリペプチドをコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも含む。さらに、「単離核酸断片」は、断片として天然ではなく、自然状態では存在しないであろう核酸断片である。
本明細書で使用されるとき、用語「ポリヌクレオチド」又は「核酸分子」は、DNA分子(例えば、cDNA又はゲノムDNA)及びRNA分子(例えば、mRNA)及びヌクレオチド類似体を使用して生成されるDNA又はRNAの類似体を含むことが意図される。核酸分子は一本鎖又は二本鎖であり得るが、好ましくは二本鎖DNAである。核酸は、オリゴヌクレオチド類似体又は誘導体(例えば、イノシン又はホスホロチオエートヌクレオチド)を使用して合成されてもよい。かかるオリゴヌクレオチドは、例えば、変質した塩基対合能力又は増加したヌクレアーゼ耐性を有する核酸を調製するために使用され得る。
本発明の別の実施形態は、カロアーゼ01−05核酸分子に対するアンチセンスである単離核酸分子、例えば、カロアーゼ01−05核酸分子のコード鎖をそれぞれ提供する。本明細書に記載される核酸分子の相補鎖もまた本発明の範囲内に含まれる。
[配列決定エラー]
本明細書に提供されるとおりの配列情報は、誤って同定される塩基の包含要件に関してそれほど狭義に解釈されるべきではない。本明細書に開示される特異的配列は完全な遺伝子を真菌類、特にニオイヒメホウライタケから単離するために容易に使用され得、ひいてはさらなる配列解析に容易に供され、それにより配列決定エラーを同定し得る。
別段に指示されない限り、本明細書においてはDNA分子の配列決定により決定される全てのヌクレオチド配列が自動DNAシークエンサーを使用して決定されたとともに、本明細書で決定されるDNA分子によりコードされるポリペプチドの全てのアミノ酸配列が上記のとおり決定されたDNA配列の翻訳により予測された。それゆえ、この自動化手法により決定される任意のDNA配列について当該技術分野において周知のとおり、本明細書で決定される任意のヌクレオチド配列はいくらかのエラーを含み得る。自動化により決定されるヌクレオチド配列は、配列決定されたDNA分子の実際のヌクレオチド配列と典型的には少なくとも約90%同一であり、より典型的には少なくとも約95%から少なくとも約99.9%同一である。実際の配列は、当該技術分野において周知の手動DNA配列決定法を含む他の手法によってより正確に決定され得る。同様に当該技術分野において周知のとおり、実際の配列と比較される決定されたヌクレオチド配列中の単一の挿入又は欠失は、ヌクレオチド配列の翻訳においてフレームシフトを引き起こすであろうため、決定されたヌクレオチド配列によりコードされる予測されたアミノ酸配列は配列決定されたDNA分子により実際にコードされるアミノ酸配列と完全に異なり、かかる挿入点又は欠失点が始端となるであろう。
当業者は、そのような誤って同定された塩基を同定する能力を有するとともにかかるエラーをどのように修正するかについて知っている。
[核酸断片、プローブ及びプライマー]
本発明に係る核酸分子は、配列番号01〜07に示される核酸配列の部分又は断片のみを含んでなってもよく、例えばその断片はプローブ又はプライマーとして使用され得るか、又はカロアーゼ01−05タンパク質の一部をコードする断片であり得る。カロアーゼ01−05遺伝子及びcDNAのクローニングから決定されるヌクレオチド配列は、他のカロアーゼ01−05ファミリーメンバー、ならびに他の種由来のカロアーゼ01−05相同体の同定及び/又はクローニングにおける使用向けに設計されるプローブ及びプライマーの生成を可能にする。プローブ/プライマーは典型的には、好ましくは高度にストリンジェントな条件下で、配列番号01〜07に示されるヌクレオチド配列又はその任意の機能的等価物の、少なくとも約12又は15個、好ましくは約18又は20個、好ましくは約22又は25個、より好ましくは約30、35、40、45、50、55、60、65、又は75個もしくはそれ以上連続するヌクレオチドとハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域を典型的に含んでなる、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを含んでなる。
カロアーゼ01−05ヌクレオチド配列に基づくプローブは、例えば他の生物体内で同一又は相同のタンパク質をコードする転写産物又はゲノムカロアーゼ01−05配列を検出するために使用され得る。好ましい実施形態において、プローブはさらにそれに結合する標識群を含んでなり、例えば標識群は、放射性同位体、蛍光化合物、酵素、又は酵素補因子であり得る。かかるプローブはまた、カロアーゼ01−05タンパク質を発現する細胞を同定するための診断テストキットの一部としても使用され得る。
[同一性及び相同性]
用語「相同性」又は「パーセント同一性」は本明細書において同義的に使用される。本発明の目的上、本明細書の定義では、2本のアミノ酸配列又は2本の核酸配列のパーセント同一性を決定するため、配列は最適比較用に整列される(例えば、第2のアミノ又は核酸配列との最適アラインメントのため第1のアミノ酸の配列又は核酸配列中にギャップが導入され得る)。次に対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基又はヌクレオチドが比較される。第1の配列内の位置が第2の配列内の対応する位置と同一のアミノ酸残基又はヌクレオチドにより占有される場合、分子は当該位置において同一である。2本の配列間のパーセント同一性は、配列により共有される同一位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一位置の数/位置の総数(すなわち、重複位置)×100)。好ましくは、2本の配列は同じ長さである。
当業者は、2本の配列間の相同性を決定するため数種の異なるコンピュータプログラムが利用可能であるという事実を承知しているであろう。例えば、2本の配列間の配列の比較及びパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。好ましい実施形態において、2本のアミノ酸配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.accelrys.com/solutions/bioinformatician/で入手可能)のGAPプログラムに組み込まれているニードルマン(Needleman)及びウンシュ(Wunsch)(J.Mol.Biol.(48):444−453頁(1970年))のアルゴリズムを使用して決定され、いずれもBlossom62行列又はPAM250行列、及びギャップ加重について16、14、12、10、8、6、又は4を、及び長さ加重について1、2、3、4、5、又は6を使用する。当業者は、これらの種々のパラメータの全てがいくらか異なる結果を与え得るが、2本の配列の全体的なパーセンテージ同一性は異なるアルゴリズムを使用してもそれほど変化しないことを理解するであろう。
さらに別の実施形態において、2本のヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを使用して決定され、NWSgapdna.CMP行列、及びギャップ加重について40、50、60、70、又は80を、及び長さ加重について1、2、3、4、5、又は6を使用する。別の実施形態において、2本のアミノ酸又はヌクレオチド配列のパーセント同一性は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)(http://vega.igh.cnrs.fr/bin/align−guess.cgiで入手可能)に組み込まれているE.メイヤーズ(E.Meyers)及びW.ミラー(W.Miller)(CABIOS、4:ll−17頁(1989年)のアルゴリズムを使用して決定され、PAM120加重残基表、ギャップ長ペナルティは12及びギャップペナルティは4を使用する。
本発明の核酸及びタンパク質配列はさらに、公開データベースに対し検索を実行して、例えば、他のファミリーメンバー又は関連配列を同定するための、「問い合わせ配列」として使用され得る。かかる検索は、アルチュール(Altschul)ら、(1990年)J.Mol.Biol.215:403〜10頁のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実行され得る。BLASTヌクレオチド検索がNBLASTプログラムにより、スコア=100、ワード長=12で実行されることにより本発明のカロアーゼ01−05核酸分子と相同なヌクレオチド配列が得られ得る。BLASTタンパク質検索がXBLASTプログラムにより、スコア=50、ワード長=3で実行されることにより本発明のカロアーゼ01−05タンパク質分子と相同なアミノ酸配列が得られ得る。比較用のギャップ付きアラインメントを得るため、アルチュール(Altschul)ら、(1997年)Nucleic Acids Res.25(17):3389〜3402頁に記載されるとおり、ギャップ付きBLASTが利用され得る。BLAST及びギャップ付きBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメータが使用され得る。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/を参照されたい。
[ハイブリダイゼーション]
本明細書で使用されるとき、用語「ハイブリダイズする」はハイブリダイゼーション及び洗浄についての条件を記載することが意図され、その条件下では互いに少なくとも約55%、少なくとも約40%、少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約85%〜90%、より好ましくは少なくとも95%相同なヌクレオチド配列が典型的には互いにハイブリダイズされたまま残る。
かかるハイブリダイゼーション条件の好ましい非限定的な例は、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃でのハイブリダイゼーションに続き、1×SSC、0.1%SDS中、50℃、好ましくは55℃、好ましくは60℃及びさらにより好ましくは65℃での1回又は複数回の洗浄である。
高度にストリンジェントな条件としては、例えば、68℃で5×SSC/5×デンハルト溶液/1.0%SDS中でのハイブリダイゼーション及び0.2×SSC/0.1%SDS中、室温での洗浄が挙げられる。あるいは、洗浄は42℃で実施されてもよい。
当業者は、どの条件がストリンジェント及び高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に該当するかは周知であろう。かかる条件に関するさらなる指針は、例えば、サムブルック(Sambrook)ら、1989年、「Molecular Cloning,A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク州;及びオースベル(Ausubel)ら(編)、1995年、「Current Protocols in Molecular Biology」、(John Wiley & Sons、ニューヨーク州)など、当該技術分野において容易に入手可能である。
当然ながら、ポリA配列(mRNAの3’末端ポリ(A)トラクトなど)、又はT(又はU)残基の相補的伸長部とのみハイブリダイズするポリヌクレオチドは、本発明の核酸の一部と特異的にハイブリダイズするために使用される本発明のポリヌクレオチドには含まれないであろうが、これはかかるポリヌクレオチドがポリ(A)伸長部又はその相補体(例えば、実質的に任意の二本鎖cDNAクローン)を含む任意の核酸分子とハイブリダイズするであろうためである。
[他の生物体からの完全長DNAの入手]
典型的な手法においては、他の生物体、例えば糸状菌類、特にホウライタケ属菌種から構築されるcDNAライブラリがスクリーニングされ得る。
例えば、ホウライタケ株は相同なカロアーゼ01−05ポリヌクレオチドについてノーザンブロット分析によりスクリーニングされ得る。本発明に係るポリヌクレオチドと相同な転写産物が検出されると、当業者に周知の標準的技術を利用して、然るべき株から単離されるRNAからcDNAライブラリが構築され得る。あるいは、本発明に係るカロアーゼ01−05ポリヌクレオチドとハイブリダイズ可能なプローブを使用して、全ゲノムDNAライブラリがスクリーニングされ得る。
相同な遺伝子配列は、例えば、本明細書に教示されるとおりのヌクレオチド配列に基づき設計される2個の縮重オリゴヌクレオチドプライマープールを使用してPCRを実施することにより単離され得る。
反応用鋳型は、本発明に係るポリヌクレオチドを発現することが既知の、又は疑わしい株から調製されるmRNAの逆転写により得られるcDNAであり得る。PCR産物がサブクローニング及び配列決定されることで増幅された配列は新規カロアーゼ01−05核酸配列、又はそれらの機能的等価物の配列に相当することが保証され得る。
次にPCR断片が使用され完全長cDNAクローンが様々な周知の方法により単離され得る。例えば、増幅断片が標識されるとともに使用され、バクテリオファージ又はコスミドcDNAライブラリがスクリーニングされ得る。あるいは、標識された断片が使用され、ゲノムライブラリがスクリーニングされ得る。
PCR技術はまた、完全長cDNA配列を他の生物体から単離するためにも使用され得る。例えば、RNAは標準的手順に従い然るべき細胞又は組織源から単離され得る。逆転写反応が、初回の鎖合成のプライミング用増幅断片の5’最末端に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを使用してRNA上で実施され得る。
結果として得られるRNA/DNAハイブリッドは次に、標準的な末端トランスフェラーゼ反応を使用して「テール付き」にされ得(例えば、グアニンにより)、ハイブリッドはRNアーゼHで消化され得、及び次に第2の鎖合成が予備刺激され得る(例えば、ポリCプライマーにより)。従って、増幅断片の上流のcDNA配列は容易に単離され得る。有用なクローニング戦略のレビューについては、例えば、サムブルック(Sambrook)ら、上記;及びオースベル(Ausubel)ら、上記を参照されたい。
[ベクター]
本発明の別の態様は、カロアーゼ01−05タンパク質又はそれらの機能的等価物をコードする核酸を含有するベクター、好ましくは発現ベクターに関する。本明細書で使用されるとき、用語「ベクター」は、それが連結している別の核酸の輸送能を有する核酸分子を参照する。ある種類のベクターは「プラスミド」であり、これは追加的なDNAセグメントがライゲートされ得る環状二重鎖DNAループを参照する。別の種類のベクターはウイルスベクターであり、ここでは追加的なDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲートされ得る。特定のベクターはそれが導入される宿主細胞内での自己複製能を有する(例えば、細菌性複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれるとともに、それにより宿主ゲノムと共に複製される。そのうえ、特定のベクターはそれらが操作可能に連結される遺伝子の発現の誘導能を有する。本明細書においてかかるベクターは「発現ベクター」と称される。一般的に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターはプラスミドの形態であることが多い。用語「プラスミド」及び「ベクター」が本明細書において同義的に使用され得るのは、プラスミドが最も一般的に使用されるベクターの形態であるためである。しかしながら、本発明は、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)などの、等価な機能を供する他の形態の発現ベクターを含むことも意図される。
本発明の組換え発現ベクターは、本発明の核酸を宿主細胞中での核酸の発現に好適な形態で含んでなり、これは組換え発現ベクターが、発現に使用される宿主細胞に基づき選択される、発現される核酸配列に操作可能に連結される1本又は複数の調節配列を含むことを意味する。組換え発現ベクターの範囲内で、「操作可能に連結される」は、当該ヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現(例えば、インビトロ転写/翻訳系内での、又はベクターが宿主細胞中に導入される場合には宿主細胞内での)を可能にするような方法で調節配列に連結されることを意味するように意図される。用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサー及び他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。かかる調節配列は、例えば、ゲーデル(Goeddel)、「Gene Expression Technology:Methods in Enzymology」185、Academic Press、サン・ディエゴ(San Diego)、カリフォルニア州(1990年)に記載される。調節配列としては、多くの種類の宿主細胞内でヌクレオチド配列の構成的発現を誘導するもの、及び特定の宿主細胞内でのみヌクレオチド配列の発現を誘導するもの(例えば組織特異的調節配列)が挙げられる。当業者には、発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル等の要因に依存し得ることが理解されるであろう。本発明の発現ベクターが宿主細胞に導入されることにより、本明細書に記載されるとおりの核酸(例えばカロアーゼ01−05タンパク質、カロアーゼ01−05タンパク質の変異型、それらの断片、変異体又は機能的等価物、融合タンパク質等)によりコードされるタンパク質又はペプチドが産生され得る。
本発明の組換え発現ベクターは、カロアーゼ01−05タンパク質の原核生物又は真核生物細胞中での発現用に設計され得る。例えば、カロアーゼ01−05タンパク質は真菌細胞、大腸菌(E.coli)などの細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用して)、酵母細胞又は哺乳動物細胞内で発現し得る。好適な宿主細胞が、ゲーデル(Goeddel)、「Gene Expression Technology:Methods in Enzymology」185、Academic Press、サン・ディエゴ、カリフォルニア州(1990年)においてさらに考察されている。あるいは、組換え発現ベクターは、例えばT7プロモーター調節配列及びT7ポリメラーゼを使用してインビトロで転写及び翻訳され得る。
本発明において有用な発現ベクターとしては、染色体由来、エピソーム由来及びウイルス由来ベクター、例えば、細菌プラスミド、バクテリオファージ、酵母エピソーム、酵母染色体要素、ウイルス、例えばバキュロウイルス、パポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス及びレトロウイルスなどに由来するベクター、及びそれらの組み合わせに由来するベクター、例えば、コスミド及びファージミドなど、プラスミド及びバクテリオファージ遺伝要素に由来するものなどが挙げられる。
DNAインサートは、いくつか例を挙げれば、λファージPLプロモーター、大腸菌lac、trp及びtacプロモーター、SV40初期及び後期プロモーター及びレトロウイルスLTRのプロモーターなどの、然るべきプロモーターに操作可能に連結されるべきである。他の好適なプロモーターは当業者に周知であろう。特定の実施形態において、プロモーターは、原核生物又は糸状菌類中でのペルオキシダーゼの高い発現レベルの誘導能を有することが好ましい。かかるプロモーターは当該技術分野において周知である。発現コンストラクトは転写開始、終結のための部位を、及び、転写領域において、翻訳のためのリボソーム結合部位を含み得る。コンストラクトにより発現する成熟転写産物のコード部分は、始端に翻訳開始AUGを、及び翻訳されるポリペプチドの末端に適切に位置する終止コドンを含むであろう。
ベクターDNAは、従来の形質転換又はトランスフェクション技術を介して原核生物又は真核生物細胞に導入され得る。本明細書で使用されるとき、用語「形質転換」及び「トランスフェクション」は、リン酸カルシウム又は塩化カルシウム共沈殿、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、形質導入、感染、リポフェクション、陽イオン性脂質媒介トランスフェクション又は電気穿孔を含む、外来核酸(例えば、DNA)を宿主細胞に導入するための当該技術分野で認知されている様々な技術を参照することが意図される。宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトするための好適な方法は、サムブルック(Sambrook)ら(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク州、1989年)、デイビス(Davis)ら、「Basic Methods in Molecular Biology」(1986年)及び他の実験マニュアルに見られる。
哺乳動物細胞の安定的なトランスフェクションについて、使用される発現ベクター及びトランスフェクション技術によっては、細胞の小さな画分のみがそれらのゲノムに外来DNAを組み込み得ることが知られている。これらの組み込み体を同定及び選択するため、一般的に選択可能なマーカー(例えば、抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子が当該遺伝子とともに宿主細胞に導入される。好ましい選択可能なマーカーとしては、G418、ハイグロマイシン及びメトトレキサートなどの薬剤に耐性を与えるものが挙げられる。選択可能なマーカーをコードする核酸はカロアーゼ01−05タンパク質をコードするものと同じベクター上の宿主細胞に導入され得るか、又は別個のベクターに導入され得る。導入された核酸を安定的にトランスフェクトされる細胞は薬剤選択により同定され得る(例えば、導入された選択可能なマーカー遺伝子を有する細胞は生存するであろう一方、他の細胞は死滅する)。
原核生物中でのタンパク質の発現は、融合又は非融合タンパク質のいずれの発現も誘導する構成的又は誘導性プロモーターを含むベクターを伴い大腸菌中で行われることが多い。融合ベクターはそこでコードされるタンパク質、例えば組換えタンパク質のアミノ末端に数多くのアミノ酸を付加する。かかる融合ベクターは典型的には3つの目的を果たす:1)組換えタンパク質の発現を増加させる、2)組換えタンパク質の溶解度を上昇させる、及び3)親和性精製においてリガンドとして作用することにより組換えタンパク質の精製を補助する。多くの場合、融合発現ベクターにおいては、タンパク質分解切断部位が融合部分と組換えタンパク質との接合部に導入されることにより融合タンパク質の精製後の、組換えタンパク質の融合部分からの分離が可能となる。かかる酵素、及びそれらの同種認識配列としては、因子Xa、トロンビン及びエンテロキナーゼが挙げられる。
指摘されるとおり、発現ベクターは好ましくは選択可能なマーカーを含む。かかるマーカーとしては、真核生物細胞培養物についてはジヒドロ葉酸レダクターゼ又はネオマイシン耐性及び大腸菌及び他の細菌中の培養物についてはテトラサイクリン又はアンピシリン耐性が挙げられる。然るべき宿主の代表例としては、大腸菌、ストレプトマイセス属(Streptomyces)及びネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)などの細菌細胞、酵母などの真菌細胞;ショウジョウバエ(Drosophila)S2及びスポドプテラ(Spodoptera)Sf9などの昆虫細胞、CHO、COS及びBowesメラノーマなどの動物細胞、及び植物細胞が挙げられる。上述の宿主細胞についての然るべき培養の培地及び条件は当該技術分野において周知である。
細菌における使用に好ましいベクターには、キアゲン(Qiagen)から入手可能なpQE70、pQE60及びPQE−9、ストラタジーン(Stratagene)から入手可能なpBSベクター、ファージスクリプトベクター、ブルースクリプトベクター、pNH8A、pNH16A、pNH18A、pNH46A、及びファーマシア(Pharmacia)から入手可能なptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5がある。好ましい真核生物のベクターには、ストラタジーンから入手可能なPWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pZT1及びpSG、及びファーマシアから入手可能なpSVK3、pBPV、pMSG及びpSVLがある。他の好適なベクターは当業者には直ちに明らかであろう。
本発明において使用するための既知の細菌プロモーターとしては、大腸菌lacI及びlacZプロモーター、T3及びT7プロモーター、gptプロモーター、λPR、PLプロモーター及びtrpプロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、初期及び後期SV40プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(「RSV」)のものなど、レトロウイルスLTRのプロモーター、及びマウスメタロチオネイン−Iプロモーターなどのメタロチオネインプロモーターが挙げられる。
本発明のポリペプチドをコードするDNAのより高等な真核生物による転写は、エンハンサー配列をベクターに挿入することにより増加し得る。エンハンサーは、DNAのシス作用要素であり、通常約10〜300bpが所与の宿主細胞型においてプロモーターの転写活性を増加させるよう作用する。エンハンサーの例としては、bp100〜270における複製起点の後期側に位置するSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。
翻訳されたタンパク質の小胞体内腔、細胞膜周辺腔又は細胞外環境への分泌について、然るべき分泌シグナルが発現ポリペプチドに組み込まれ得る。シグナルはポリペプチドにとって内在的であってもよく、又は異種シグナルであってもよい。
ポリペプチドは、融合タンパク質などの改変された形態で発現し得るとともに、分泌シグナルのみならず、追加的な非相同機能領域も含み得る。従って、例えば、追加的なアミノ酸の領域において、特別に変化したアミノ酸がポリペプチドのN末端に付加されることにより、精製中又はそれに続く出荷及び保管中の宿主細胞内における安定性及び持続性が改善され得る。また、ペプチド部分がポリペプチドに付加されることにより、精製が促進され得る。
[宿主細胞]
別の実施形態において、本発明は、細胞、例えば、本発明により包含される核酸を含有する形質転換宿主細胞又は組換え宿主細胞を特徴とする。「形質転換細胞」又は「組換え細胞」は、組換えDNA技術によってその細胞に(又はその祖先に)本発明に係る核酸が導入された細胞である。例えば、細菌、真菌類、酵母など、原核生物及び真核生物の双方の細胞が含まれる。
好適な宿主細胞の例は、ミクロシスティス(Microcystis)属、ムラサキシメジ(Lepista)属、例えばハタシメジ(L.irina)、チャダイゴケ(Cyathus)属、例えばハゲチャダイゴケ(C.pallidus)、マンネンタケ(Ganoderma)属、例えばコフキサルノコシカケ(G.applanatum)、ヤニタケ(Ischnoderma)属、例えばI.ベンゾイナム(I.benzoinum)、ホウライタケ属、例えばニオイヒメホウライタケ、シロアミタケ(Trametes)属、例えばカワラタケ(T.versicolor)のシロアミタケ(T.suaveolens)、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、例えばC.ラウレンチイ(C.laurentii)、ヒポミケス(Hypomyces)属、例えばH.オドラツス(H.odoratus)又はファフィア(Phaffia)属、例えばP.ロドジマ(P.rhodozyma)、ファネロキエート(Phanerochaete)属、例えばP.クリソスポリウム(P.chrysosporium)、レンチヌラ(Lentinula)属、例えばシイタケ(L.edodes)、ヒトヨタケ(Coprinus)属、例えばウシグソヒトヨタケ(C.cinereus)、キカイガラタケ(Gloeophyllum)属、例えばキチリメンタケ(G.trabeum)、オフィオストマ(Ophiostoma)属、例えばO.ピリフェラム(O.piliferum)、アスペルギルス属、例えばA.ニガー、A・オリゼ、A.ニデュラン(A.nidulans)、サーモミセス(Thermomyces)属、例えばT.ラヌギノーサ(T.lanuginosa)、スポロトリカム(Sporotrichum)属、例えばS.サーモフィル(S.thermophile)、アウレオバシジウム(Aureobasidium)属、例えばA.プルランス((A.pullulans)、アモルホーテカ(Amorphotheca)属、例えばA.レシナエ(A.resinae)、ロイコスポリジウム(Leucosporidium)属、例えばL.スコチイ(L.scottii)、クスダマカビ(Cunninghamella)属、例えばC.エレガンス(C.elegans)である。
特に好ましくは、特にアスペルギルス属−例えばアスペルギルス・オリゼ又はアスペルギルス・ニガー−及びホウライタケ属−例えばニオイヒメホウライタケ−といった糸状菌類由来の細胞又はピキア(Pichia)属、−例えばピキア・パストリス(Pichia Pastoris)−などの酵母由来の細胞又は細菌由来の細胞である。
挿入された配列の発現を調節する、又は遺伝子産物を特異的な所望の様式で修飾及び処理する宿主細胞が選択され得る。タンパク質産物のかかる修飾(例えばグリコシル化)及びプロセシング(例えば切断)はタンパク質の最適な機能性を促進し得る。
様々な宿主細胞は、翻訳後プロセシングならびにタンパク質及び遺伝子産物の修飾についての特性及び特異的機序を有する。分子生物学及び/又は微生物学の当業者によく知られている然るべき細胞系又は宿主系が選択されることにより、発現させる外来タンパク質の所望の及び妥当な修飾及びプロセシングを確実なものとし得る。この目的上、一次転写産物の適正なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化、及びリン酸化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞が使用され得る。かかる宿主細胞は当該技術分野において周知である。
宿主細胞としてはまた、限定はされないが、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3、WI38などの哺乳動物細胞系、及び脈絡叢細胞系が挙げられる。所望であれば、本発明に係るポリペプチドは安定的にトランスフェクトされた細胞系により産生され得る。哺乳動物細胞の安定的なトランスフェクションに好適な数多くのベクターが一般に利用可能であり、かかる細胞系を構築するための方法もまた、例えば、オースベル(Ausubel)ら(上記)において公知である。
[本発明に係るポリペプチドの工業プロセスにおける使用]
本発明の別の態様は、本発明に係るポリペプチド又はその機能的等価物(これ以降、漂白酵素と称される)の、例えば洗剤、酵素ストーンウォッシュ加工又は食品製造、例えばパン製品又は乳製品などの工業プロセスにおける使用を含んでなる。
本発明に係るポリペプチドは酵素調製物として使用されてもよく、又は前記酵素の産生能を有する微生物によりインサイチュで産生されてもよい。酵素調製物は様々な供給源、例えば植物、動物及び微生物に由来し得る。好ましくは酵素調製物は微生物に由来し、これは微生物によって工業規模で制御された方式により酵素を得ることが可能となるためである。微生物に由来する酵素調製物は選択された微生物株の古典的発酵処理により、又は本発明に係るポリペプチドを過剰発現する微生物の発酵により得られ得る。微生物は、細菌、真菌又は酵母であってもよい。非古典的発酵のための宿主細胞として好適な微生物の例については、宿主細胞に関する上記の一節が参照される。
酵素調製物はまた、他の好適な酵素、例えばオキシドレダクターゼ、アミラーゼ、脂肪分解酵素、加水分解酵素なども含んでなり得る。意外なことに、特にオキシドレダクターゼ、例えばヘキソースオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、マルトース酸化酵素又はグルコースオキシダーゼの組み合わせが本発明に係る漂白酵素の酵素活性に相乗効果を有することが発見された。オキシドレダクターゼは、微生物を含む種々の供給源から得られ得る。好ましくは真菌源由来、例えば糸状菌類由来のオキシドレダクターゼが使用される。好適なオキシドレダクターゼは、例えばアスペルギルス・ニガーなどのアスペルギルス種から得られるグルコースオキシダーゼである。従って本発明はまた、本発明に係るポリペプチドの新規酵素の、オキシドレダクターゼとの組み合わせにも関する。
この効果は、本発明に係る酵素調製物が使用される適用において、オキシドレダクターゼが活性となる基質が存在する場合にはさらに亢進される。これが存在しない場合、これはまた処理に添加され得るであろう。かかる基質の例は、ヘキソースオキシダーゼ又はグルコースオキシダーゼの使用時のグルコースの添加である。従って本発明はまた、本発明に係るポリペプチド及びオキシドレダクターゼならびにオキシドレダクターゼ用の基質を含んでなる酵素調製物を含んでなる新規組成物にも関する。
本発明はさらに、新規酵素の組み合わせ及び新規組成物の、以下に記載される本発明に係る食品の製造工程における使用に関する。
意外なことに、本発明に係るポリペプチド又はその機能的等価物が使用されることにより食品の少なくとも一部の白色度が向上することが発見された。好ましくは、本発明に係る漂白ポリペプチドは以下の食品製造工程において使用される。食品の中間形態が色素を含んでなる食品の製造工程は、少なくとも1種の本発明に係るポリペプチドを、前記酵素がその製造中に添加されない食品と比較して食品の少なくとも一部の白色度を向上させるうえで有効な量で添加するステップを含んでなる。
食品の中間形態は本明細書において、食品の最終形態を得る前の製造工程中に生じる任意の形態と定義される。中間形態は、使用される個々の原材料及び/又はそれらの混合物及び/又は添加剤を伴う混合物及び/又は加工助剤、又はそれに続くそれらの加工形態を含んでなり得る。
本発明に係るポリペプチドは有効量で添加される。当業者はこの有効量を、酵素投入量を変えることにより、及び最終食品の色素の分解及び/又は白色度の向上を計測することにより容易に決定できる。酵素がβ−カロテンの変換能を有する場合、酵素の有効量は、β分解単位(例えばAziz又はZorn単位−「材料及び方法」を参照)に関して表現され得る。
食品は、小麦粉などの植物源である少なくとも1種の原材料から作製され得る。小麦粉は、例えば、焼き上げたパンの内相の着色の原因となるカロテノイド(カロテン及びキサントフィル)及びフラボンなどの色素を含有することが知られている。あるいは、これらの色素は、例えば乳など、植物原材料以外の供給源に由来し得る。カロテノイドの例は、カロテン骨格を伴う、特にβ−カロテン又はカプサンチン骨格、より詳細にはα及びβ−カロテン、ルテイン、リコピン、アンテラキサンチン、カプサンチン、ゼアキサンチン、ビオラキサンチン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、ルテオキサンチン、ネオキサンチン、及びそれぞれのアポカロテノイドを伴うさらなる物質である。
本発明に係るプロセスに好ましい食品は、ベークドパン及び小麦粉及び/又は他の穀類原料の粉末から焼き上げた他の製品である。
例えば、ベークド食パンについて、中間形態としては、例えば小麦粉、それと他のパン成分との、例えば水、塩、酵母及びパン改良組成物などとの初期混合物、混合生地、練り生地、発酵生地及び部分的に焼いた生地が含まれる。酵素がβ−カロテンの変換能を有する場合、酵素は小麦粉及び/又は他の穀類原料の粉末に対し、又は他のパン成分との任意の初期混合物に対し、穀粉1kg当たり1〜5000Zorn単位、好ましくは穀粉1kg当たり5〜1000Zorn単位、より好ましくは穀粉1kg当たり10〜500Zorn単位及び最も好ましくは穀粉1kg当たり25〜250Zorn単位となるような量で添加される。酵素はまた、他の生地及び/又は当該技術分野において周知のパン改良加工助剤、例えば当該技術分野において周知の1種又は複数種の酵素(例えば、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、抗老化マルトジェニックα−アミラーゼなどのデンプン分解酵素、リパーゼ、ホスホリパーゼ、ガラクトリパーゼなどの脂肪分解酵素、グルコースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ラッカーゼ、ピラノースオキシダーゼ、炭水化物オキシダーゼなどの酸化酵素、キシラナーゼ、アラビノフラノシダーゼなどのヘミセルロース分解酵素、エンドグルカナーゼ(セルラーゼなど)、セロビオヒドロラーゼ、プロテアーゼなどのセルロース分解酵素及び/又は還元剤及び酸化剤(例えばアスコルビン酸、グルタチオン)、乳化剤(例えばDATEM)等の当該技術分野において周知の化学的加工助剤等とのパン改良剤混合物と共に、又はその一部として添加されてもよい。
一部の種類の麺類においては、白い製品が望ましいと見なされる。例えば、麺類について、中間形態としては、例えば小麦粉、水、塩、及び他の麺成分とのその初期混合物、混合生地及び、生麺、乾燥麺、茹で麺、蒸し麺及び/又は揚げ麺であり得る最終麺製品が含まれる。
食品はまた、乳製品であり得る。乳製品とは、乾燥固体ベースで少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、なおより好ましくは少なくとも70重量%又は最も好ましくは少なくとも80重量%の乳、好ましくはウシの乳由来成分を含有する製品を意味する。乳由来成分は、例えば脂肪、タンパク質、例えば乳清チーズカード及びカゼイン等である。乳、特にウシの乳は、カロテノイド、例えばβ−カロテンなどの着色化合物を天然で含有し得る。
白色は、例えばチーズ、バター油、粉乳又は乳清製品において重要な役割を果たす。例えばフェタ(Feta)、モツァレラ(Mozzarella)、リコッタ(Ricotta)及びブルーチーズ、例えばデンマークブルー(Danish Blue)、ロックフォール(Roquefort)又はゴルゴンゾーラ(Gorgonzola)などのチーズにおいて、白色は望ましいものと考えられる。ヤギ又はヒツジ由来の乳が少なくとも部分的にウシの乳に置き換えられるチーズにおいて、チーズの白色は、ウシの乳中に存在するβ−カロテンによって問題となり得る。
アナトー又はβ−カロテンのような一部のチーズ天然着色剤が食品用着色剤として使用される。しかしながら、この着色剤もまた、乳清中に存在し得る。この乳清が、例えば粉ミルクなどにさらに加工される場合、乳清製品の着色が望ましくないことがある。食品用ソフトチーズについて、中間製品としては、例えば乳、及びチーズカードが含まれる。
製品の白色度の計測は、視覚的に、又は反射計測、例えば走査により行われ得る。反射計測において色は3個のパラメータ、すなわちL値(黒=0〜白=100)、a値(緑=−60〜赤=+60)及びb値(青=−60〜黄=+60)により定量化される。カロテノイドの場合、製造された製品のb値は好ましくは可能な限り0に近く、好ましくは10〜0の間、より好ましくは5〜0の間、及びさらにより好ましくは1未満及び最も好ましくは0.5未満である。さらなる態様において、本発明は、これ以前に本明細書に記載されるとおりの本発明の方法により得られる食品を提供する。これらの食品は、中間製品における色素の変換能を有する1種又は複数種の酵素の添加を含まない製造工程により得られる食品との比較において、少なくとも一部分の有意な白色度の向上を特徴とする。
さらなる態様において、本発明は、色素の変換能を有することにより、食品、例えば小麦粉原料又は乳由来の製品を漂白する酵素の使用を提供する。意外なことに、これらの酵素が家庭用洗剤における染み除去剤として有利に使用され得ることが発見された。特に、本酵素は、着色の染み、例えば草の染み、コーヒー及び紅茶の染みを、綿織物及び合成繊維(例えばポリエステル)の双方から除去するうえで極めて有効であることが証明された。さらには、本酵素はまた、酵素ストーンブリーチ加工においても、例えばブルージーンズのインジゴ染料を所望のレベルに漂白することにより使用され得るであろう。
[材料及び方法]
[β−カロテンの変換の計測]
[Azizによるβ−カロテン分解の計測]
酵素活性は、A.ベン・アジズ(A.Ben Aziz)(1971年)、Phytochemistry 10、1445頁に従いβ−カロテン変換活性として測定され得る。本明細書において1酵素単位は、1分間当たりに1マイクログラムのβ−カロテンを変換する酵素の量として定義される(さらには、Aziz単位と称される)。
[Zornによるβ−カロテン分解の計測]
酵素活性はまた、ゾーン(Zorn)ら(2003年)、Appl.Microbiol.Biotechnol.62:331−336頁に従いβ−カロテン変換活性として測定され得る。本明細書において1酵素単位は、1分間当たりに1マイクロモルのβ−カロテンを変換する酵素の量として定義される(さらには、Zorn単位と称される)。アッセイは次のとおり行われる:試料を含有する1.5mlの酵素がキュベット中において27℃で5分間、予備インキュベートされた後、100μlのβ−カロテン原液(詳しくは以下を参照)が添加された。必要に応じて、濃縮された培養上清がpH5.5のクエン酸/リン酸緩衝液(この緩衝液は、43mlの0.1Mクエン酸を56mlの0.2MのNaPO溶液と混合することにより調製された)で希釈された。吸光度の低下が温度制御された細胞ホルダー内で分光光度計を使用して15分間にわたり450nm及び27℃でモニタされた。曲線の直線性が調べられ、及び酵素活性が曲線の直線部分から次式
酵素活性[mU/ml]=(ΔE×V)×10/(V×d×ε)
に従い計算された(式中、U=上記に定義される酵素活性単位、ΔE=1分間当たりの450nmでの吸光度の低下、V=キュベットの総容積(ml)、V=キュベット中の試料容積(ml)、ε=β−カロテンの吸光係数(95,000M−1・cm−1である)、d=キュベットの厚さ(cm)である)。
Aziz酵素単位は、Aziz単位をβ−カロテンの分子量=536.85で除することによりZorn単位に変換され得る。
[β−カロテン原液の調製]
β−カロテン原液は次のとおり調製される:5mgのβ−カロテン及び500mgのツイーン(Tween)80が50mLのジクロロメタン中に溶解された。ジクロロメタンはロータリーエバポレータ内で40℃及び800mbarで蒸発させた。ほぼ全てのジクロロメタンが蒸発したとき、30mlの水が添加され、及び残留ジクロロメタンがロータリーエバポレータ及び最後に窒素気流内で除去された。結果として得られた溶液がろ過され、目盛付きフラスコ内で50mlまで水で充填された。溶液は冷温で(冷蔵庫)保存される必要があり、数日間に限り安定である。
[食品の漂白]
内相又は生地からのカロテノイドの抽出後に、ゲリナス(Gelinas)、Cereal Chem.75、810−184頁(1998年)により指示されるとおり漂白度が測定された。ゲリナス(Gelinas)(1998年)により指示されるとおり、パンの内相からの総脂質抽出を介してカロテノイドが測定された。
食品の白色度は、視覚的ならびに反射計測の双方により測定され得る。目視検査は、漂白酵素が添加されている食品を漂白酵素が添加されていない対照と比較することにより実施され得る。反射計測は、カラースキャナ(ヒューレット・パッカード・スキャンジェットADF(Hewlett Packard Scanjet ADF))上で食品を走査することにより実施され得る。これらのデータは、プログラムLabSMART(LabSMART、LLC、Logan Utah、米国)を使用して分析され得る。
[実施例1]
[ニオイヒメホウライタケから得られるβ−カロテン変換酵素の培養及び活性の測定]
ニオイヒメホウライタケから得られるβ−カロテン変換酵素カロアーゼ1及びカロアーゼ2の培養及び活性の測定が、ゾーン(Zorn)ら(2003年)により記載されるとおり行われた。本明細書に、ニオイヒメホウライタケのカルチャーコレクションからの菌糸体(Centraal Bureau voor Schimmelcultures−Utrecht、オランダから寄託番号CBS137.83により入手可能)を使用して乳化β−カロテンを補給された寒天プレートが接種された。プレートのインキュベーションが24℃で14日間実施された。100mlの標準栄養液(SNL、これは30g/リットルのグルコース・HO;4.5g/リットルのアスパラギン・HO;1.5g/リットルのKHPO;0.5g/リットルのMgSO;3.0g/リットルの酵母抽出物;5mg/lのCuSO 5aq、80mg/lのFeC1 6aq、90mg/lのZnSO 7aq、30mg/lのMnSO 1aq及び40mg/lのEDTAを含有する1ml/リットルの滅菌微量元素溶液(滅菌前にpHは1NのNaOHで6.0に調整された)を含有する)を含有する300mlの振盪フラスコに菌糸体が接種され、及び150rpmの振盪インキュベータ内において24℃で7日間インキュベートされた。前培養物が微生物汚染の不在について調べられ、Ultra Turraxによりホモジナイズされ、及び主培養物を接種するために使用された(500mlの三角フラスコ中250mL)。2日目より毎日2mlの試料が取り出され、遠心分離により菌糸体が除去されたうえ分光光度アッセイにおいて活性が計測された。4日間の培養後、β分解活性は無細胞上清1リットル当たり約0.3Zorn単位であった。
[実施例2]
[ニオイヒメホウライタケから得られるβ−カロテン変換酵素カロアーゼ1及びカロアーゼ2の活性に対するHの効果]
10マイクロリットルの20mM過酸化水素(H)の効果が、上記に記載されるとおりのインビトロアッセイのβ−カロテン分解アッセイにおいて測定される。カロアーゼ1及びカロアーゼ2を含有するニオイヒメホウライタケの濃縮培養上清が使用された。β−カロテン分解活性はHの存在下で4.3から10.9mUに増加した。熱失活した酵素が使用されたときには、β−カロテン分解は一切観測されなかった。これは、Hがβ−カロテン分解酵素によりβ−カロテン分解活性を刺激することを明確に実証したものである。
[実施例3]
[ニオイヒメホウライタケから得られるカロアーゼ1及びカロアーゼ2の活性に対するアスペルギルス・ニガーグルコースオキシダーゼ(GOX)の効果]
50マイクロリットルのニオイヒメホウライタケの濃縮培養上清が1290マイクロリットルの50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)と混合された。160マイクロリットルの500mMグルコース溶液が添加され、及び混合物が5分間、セ氏27度で調整された。アスペルギルス・ニガーグルコースオキシダーゼはフルカ(Fluka)から入手された。0〜2マイクロリットルのグルコースオキシダーゼ原液(100U/ml、0〜200mUのGOXの活性に相当する)及び100マイクロリットルのβ−カロテン溶液(「材料及び方法」に記載されるとおりに調製)の添加により反応が開始された。450nmでの吸光度の低下が10分間、セ氏27度で記録された(表1)。
Figure 0005711280
第2の一連の実験においては、グルコースの濃度を変化させた一方、グルコースオキシダーゼ活性の量は一定に保たれた。従って、50マイクロリットルのニオイヒメホウライタケの濃縮培養上清が1434〜1290マイクロリットルの50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)と混合され、16〜160マイクロリットルの500mMグルコース溶液が添加された(表2)。混合物は5分間、セ氏27度に保たれたうえ、0〜1マイクロリットルのGOX(0又は100mUの活性に相当する)及び100マイクロリットルのβ−カロテン溶液の添加により反応が開始された。
Figure 0005711280
ブランク(50mMのグルコース、100mUのGOX、培養上清の添加なし)においてはβ−カロテンの分解は観測されなかった。
これらの実験から、グルコースの存在下におけるGOXの存在がニオイヒメホウライタケの濃縮上清によりβ−カロテン分解を強力に刺激することは明らかである。
[実施例4及び比較例A、B及びC]
[パプ製パン試験法]
標準的な製パン工程においてパップローフが、200gの小麦粉(160gの小麦粉(Kolibri(登録商標)−Meneba、オランダ)及び40グラムの小麦粉(Ibis(登録商標)−Meneba、オランダ)の混合物)、1.4gのFermipan(登録商標)ドライイースト(DSM Bakery Ingredients、Delft、オランダ)、4gの塩、50ppmのアスコルビン酸、4ppmの真菌α−アミラーゼBakezyme(登録商標)P500(DSM Food Specialties、Delft、オランダ)、60ppmの真菌ヘミセルラーゼBakezyme(登録商標)HS2000(DSM Food Specialties、Delft、オランダ)及び表3に示されるとおりの量のβ−カロテン分解酵素及び116mlの水から、ピンミキサー中で6分間、及び15秒間、調製された。生地温度は28℃であった。混合の直後、生地は150gずつ2個に分割され、丸められ、及び30℃のホイロ室内で45分間寝かされ、成形及び型詰めされた。30℃で70分間の最終ホイロの後、生地は225℃で20分間焼き上げられた。
密閉された箱内に室温で24時間保管された後、焼き上がったパンの内相の品質及び色がパン製造者により評価された;表4に示されるとおりカロテノイドの量がパン内相の抽出後に測定された。
Figure 0005711280
Figure 0005711280
表4から、本発明に係る漂白酵素を生地に添加することにより、カロテノイドが分解され、結果としてより白い内相をもたらすと結論づけられ得る。本発明に係る方法の有効性は大豆酵素リポキシゲナーゼ2の使用時より良好であるとともに、酵素活性大豆粉の使用時と少なくとも同等か、又はそれより良好である。
[実施例5]
[ミニチーズの調製]
シャキール−ウル−レーマン(Shakeel−Ur−Rehman)ら(「Protocol for the manufacture of miniature cheeses in Lait」、78(1998年)、607〜620頁)により記載されるとおり、小型チーズが製造された。ウシの生乳が30分間63℃で加熱することにより低温殺菌された。低温殺菌された乳は広口プラスチック製遠心分離ボトル(ボトル1本につき200mL)に移され、31℃に冷却された。続いて、0.72mlの出発培養物DS 5LT1(DSM Gist B.V.、Delft、オランダ)が遠心分離ボトル内の200mlの各低温殺菌乳に添加され、乳は20分間熟成された。次に、CaCl(熟成乳200mLにつき132μLの1mol・L−1溶液)が添加された後、凝固剤が添加された(1mlにつき0.04IMCU)。カロアーゼ01及びカロアーゼ02の使用が関わる実験の場合、この酵素は凝固剤と同時に添加される。
乳溶液を40〜50分間31℃で保置して凝塊を形成させた。凝塊は、型から1cmの間隔をとって伸張ワイヤのカッターにより手で切断された。2分間ヒーリングさせた後、10分間静かに攪拌する。その後、カード/乳清混合物を連続的に攪拌しながら温度を39℃まで30分間にわたり徐々に上昇させた。pHが6.2に達したとき、カード/乳清混合物は室温で60分間、1,700gで遠心分離された。乳清が排出され、カードは水槽中36℃で保置された。チーズは15分毎に逆さに返されpHを5.2〜5.3に低下させた後、室温で1,700g、20分間遠心分離された。さらなる乳清の排出後、チーズの漂白度が走査により測定された。漂白酵素カロアーゼ01及びカロアーゼ02を使用した結果、より白いチーズがもたらされた。

Claims (17)

  1. カロテノイドの開裂能、β−カロテン分解能又は食品の漂白能を有する単離ポリペプチドであって、
    a.配列番号09に記載の単離ポリペプチド、及び
    .配列番号09と少なくとも90%同一である単離ポリペプチ
  2. 配列番号09と少なくとも95%同一である、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
  3. 配列番号09と少なくとも97%同一である、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
  4. ニオイヒメホウライタケ(Marasmius scorodonius)から得られる請求項1〜のいずれか一項に記載の単離ポリペプチド。
  5. 前記ポリペプチドが使用されない食品と比較して、その中間形態が色素を含んでなる食品の少なくとも一部の白色度が向上する、使用であって、
    前記色素は、カロテノイドである、請求項1〜のいずれか一項に記載のポリペプチドの使用。
  6. その中間形態が色素を含んでなる食品を製造するための方法であって、請求項1〜のいずれか一項に記載の少なくとも1種のポリペプチドを、結果としてその製造中に前記ポリペプチドが添加されない食品と比較して結果として前記食品の少なくとも一部の白色度の向上をもたらす形態に前記色素を直接的に変換するうえで有効な量で添加するステップを含み、
    前記色素は、カロテノイドである、方法。
  7. 前記食品が穀粉から製造される、請求項に記載の方法。
  8. 前記穀粉が小麦粉である、請求項に記載の方法。
  9. 前記食品が乳製品である、請求項に記載の方法。
  10. 前記ポリペプチドが、微生物に由来するか、又は前記ポリペプチドの産生能を有する微生物によりインサイチュで産生されるポリペプチド調製物として添加される、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記ポリペプチドが、細菌、真菌又は酵母に由来するか、又はそれらによりインサイチュで産生されるポリペプチド調製物として添加される、請求項10に記載の方法。
  12. 前記真菌がホウライタケ属に属する、請求項11に記載の方法。
  13. 前記真菌がニオイヒメホウライタケに属する、請求項11又は12に記載の方法。
  14. 前記食品の製造中に追加的にオキシドレダクターゼが添加される、請求項6〜13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 請求項6〜14のいずれか一項に記載の方法により得られる食品。
  16. 色素を結果として食品の少なくとも一部の白色度の向上をもたらす形態に直接的に変換する請求項1〜のいずれか一項に記載のポリペプチドの使用。
  17. 洗剤のための、又は酵素ストーンブリーチ加工における請求項1〜のいずれか一項に記載のポリペプチドの使用。
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