JP5710670B2 - 金属表面と接合した高分子材料との間の接着性を向上するために銅合金の表面を処理する溶液および方法 - Google Patents

金属表面と接合した高分子材料との間の接着性を向上するために銅合金の表面を処理する溶液および方法 Download PDF

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Description

本発明は、処理後の銅表面と高分子材料との間に強固な接着が形成されるように、銅合金表面を処理する溶液および方法に関する。上記溶液は、Si、Ni、Fe、Zr、P、Snの群より選択される合金元素を含有する銅合金からなるリードフレームの表面の処理に好適に適用される。
リードフレームの製造もプリント基板の製造も同様に、種々の工程が実施され、銅表面は有機基体に強固に接合しなければならない。ある場合には、形成される接合に要求される接着性は、長時間にわたって確実でなければならない。他の場合には、強固な接合はほんの短時間だけ、すなわちワークピースを生産する際に高分子材料が銅または銅合金表面に滞在する間だけ、存在しなければならない。
接着性を向上する最も容易な方法は、接合を形成する前に銅表面をエッチングして粗化することである。プリント基板の製造においてマイクロエッチング溶液が長いこと使用されている。該溶液は、例えば過酸化水素またはペルオキソ二硫酸ナトリウムの硫酸溶液を含有する。
US3,645,772には、別の方法が記載されている。銅表面を処理するための溶液は、例えば5−アミノテトラゾールを含有する。
リードフレーム中に封止材料(molding compound)(高分子材料)で封止する場合には、長期間の安定性が特に要求される。
プリント基板を前処理するための種々の方法が開発されている。一般には、積層前に、銅表面上に酸化物層を形成する。ブラウンまたはブラックオキサイドプロセスとして知られるこの工程では、酸化物を生成するために非常にアグレッシブな反応条件が使用される。この方法の欠点は、高分子材料に対する接着性の向上に用いられる酸化物層が、酸および特に塩酸処理溶液に対して非常に耐性があるわけではないことである。従ってそれらは、基板中のスルーホールをメッキするための後続の工程において攻撃される。接着結合は排除され、攻撃点において層剥離が起こる(ピンクリング:ブラックオキサイド層上への外部からの可視的な攻撃は、プリント基板のホールのすぐ近くにおける当初のブラックオキサイド層の脱色を伴う。
上記の問題は、積層の前に酸化物層の表面を還元することにより解決される。還元されたブラックオキサイドは、スルーホールのメッキに使用される薬品に対して、通常のブラックオキサイドよりも安定である。しかしながら、この付加的な還元工程は、コスト的に大ごとである。さらに、還元に使用される薬品は、空気による酸化に対する耐性が非常に高いわけではなく、浴の使用寿命および補充薬品の保存寿命は限られている。JP A 08097559において、かかる問題を解決するための試みがなされている。アミノチアゾールおよび/またはアミノベンゾチアゾール化合物を含有する水溶液で銅酸化物層を処理することにより、保護層を有する還元された銅酸化物層が得られる。しかしながら、還元試薬が高額であり、酸化に対する耐性が弱く、層の酸に対する感受性が完全に除去されるわけではないとの問題がある。
接着性を促進する他のオプションは、アゾール化合物の水性またはアルコール性の溶液により銅表面を処理することである。かかる方法は、例えばWO96/19097にて提案されている。銅表面は、0.1〜20重量%の過酸化水素、無機酸(例えば硫酸)、有機防食剤(例えばベンゾトリゾール)および湿潤剤を含有する溶液で処理される。過酸化水素は、銅表面をエッチングし、マイクロラフな表面を形成する。
US 5,869,130には、高分子材料の金属表面に対する接着性を向上するために、酸化剤、酸、防食剤、ハロゲン化物イオン源および任意的に水溶性高分子を含有する組成物により、金属表面を処理する方法が記載されている。
US 6,562,149 B1には、後に有機基体と強固に接合させるべく、銅表面を前処理するための方法および溶液が記載されている。この溶液は、特に、積層多層プリント基板の強固な接合およびプリント基板の銅表面に対するレジストの強固な接合のために使用される。該溶液は、(a)過酸化水素;(b)少なくとも一種の酸;(c)少なくとも一つの窒素原子を含有し、且つ複素環に硫黄、セレンまたはテルル原子のいずれも含まない5員複素環化合物;および(d)スルフィン酸、セレニン酸、テルリン酸、複素環中に少なくとも一つの硫黄、セレンおよび/またはテルル原子を含む複素環化合物ならびにスルホニウム塩、セレノニウム塩およびテルロニウム塩よりなる群から選択される少なくとも一種の接着性化合物を含有する。
しかしながら、プリント基板の製造と比較して、リードフレームに一般的に用いられる金属基体は、ある種の比較的低含量の合金元素を含む銅合金であり、機械的および電気的な要求性能の達成が必要となる。
しかし、ある合金は、部分的に攻撃されるにすぎないか、あるいは反応速度が遅い。このことにより、粗度が不十分となり、あるいは合金表面に不溶性の残滓または汚れが生成する。どちらのケースも、この工程により、最適の接着性向上は達成されない。
米国特許第6,162,366は、塩化第二鉄およびCuの防食剤を含有するエッチャントを準備する工程、および該エッチャントによりCu層およびNi層を含む多層金属構造のエッチングを行う工程を含む、エッチング方法に関する。
US 2005/0067378 A1は、第一の主表面を有するパターン化されていない金属層を準備する工程;該第一の主表面をマイクロ粗化してマイクロ粗化された表面を形成する工程;および該金属層をエッチングして外金属総中に配線パターンを形成する工程を含み、前記マイクロ粗化工程がエッチングに先立って行われる、誘電性材料の金属層に対する接着性を向上する方法に関する。この方法の一態様によると、マイクロ粗化は(a)第二銅イオン源、(b)酸解離定数(pKa)が5以下の有機酸、(c)ハロゲン化物イオン源および(d)水を含有する水性組成物を塗布することにより行われる。
EP1 331 287 A2は、a)酸化物交換組成物の少なくとも一種の成分の量を十分に変えて、モディファイされた酸化物交換組成物が金属表面と接触したときに金属表面上に赤茶色から黒色の酸化物フィルムを形成しないように、モディファイされた酸化物交換組成物を調製する工程;およびb)金属表面を該モディファイされた酸化物交換組成物と接触し、該金属表面をマイクロ粗化する工程を含む、金属基体の表面を処理する方法に関する。この組成物は、例えば硫酸、過酸化水素(50%)、ベンゾトリアゾール、Carbowax(登録商標) MPEG 2000、塩化ナトリウムおよび水を含有する。
EP 1 031 644 A1は、チアゾール−およびチオカルバミド−系の試薬の酸化エッチャント溶液への使用に関する。チアゾール−およびチオカルバミド−系化合物に加えて、エッチャント溶液はさらにプロトン源、酸化剤、ハロゲンイオン源およびアゾール化合物を含有する。
従って本発明は、上記問題点に基づいて、従来技術の欠点を克服し、銅合金表面と高分子材料表面との間に強固な接合を形成することができ、同時に広い範囲の銅合金組成に好適な処理溶液および工程を提供するものである。この工程は単純であり、使い易く、そして安価であるベきである。該溶液による処理は、問題を孕まない材料の接合(汚れ、前処理溶液の分解などがない)を形成することも重要である。従って、使用される処理溶液は、特にリードフレームの製造に好適である。
上記問題は、請求項1に記載の溶液および請求項11に記載の処理方法によって解決される。
本発明の溶液は、銅合金表面を処理してプラスチック材料との間に強固な接合を形成しうるようにするためのものであり、
a)酸化剤
b)少なくとも一種の酸
c)少なくとも一種の接着性向上性化合物
d)100mg/Lを超える量のフッ化物イオン
e)5〜40mg/Lの量の塩化物イオン
を含有する。
接着性向上性化合物は、酸性、好ましくは硫酸溶液に十分に溶解するものから選択される。
本発明の方法は、銅合金表面を溶液と接触させることにより実施される。
上記溶液は、銅合金表面を処理し、次いで処理後の銅合金表面に第二の金属層を堆積し、最後にその上に高分子材料を接合するためにも好適である。第二の金属層は、例えばハンダ可能な層を形成するNi−Pd−AuまたはAgの堆積であることができる。
請求項1の処理溶液による銅合金表面の粗化によって、第二の金属層に対する高分子材料の接着性は、実施例4に見られるように同様に顕著に向上する。
本発明の好ましい態様は、従属項2〜10に記載されている。
例えば接着性向上性化合物は、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾール、テトラゾール、プリンおよびこれらの混合物よりなる群から選択されるものを使用することができる。これらの化合物は、銅合金表面と反応して保護錯体層を形成する。
好ましいテトラゾール化合物は、5−アミノテトラゾールおよび5−フェニルテトラゾールである。好ましいイミダゾール化合物は、ベンゾイミダゾールであることができる。5−アミノテトラゾール、5−フェニルテトラゾール、ベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾールおよびエチルベンゾトリアゾールが、処理溶液中で好適な溶解性を示し、入手がし易いことから好ましい化合物である
好ましい組み合わせは、窒素原子含有複素環化合物としてのベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、5−アミノテトラゾールおよび5−フェニルテトラゾールと、複素環化合物としてのアミノチオフェンカルボン酸、そのエステルおよびアミド、アミノチアゾールならびに置換アミノチアゾールとの組み合わせである。
金属表面と高分子材料との間の接合の長期間の安定性を向上するために、
窒素原子を含有し、且つ複素環に硫黄、セレンまたはテルル原子のいずれも含まない5員複素環化合物の少なくとも一種と、
スルフィン酸、セレン酸、テルル酸、複素環中に少なくとも一つの硫黄、セレンおよび/またはテルル原子を含む複素環化合物ならびにスルホニウム塩、セレノニウム塩およびテルロニウム塩、ただしこれらスルホニウム塩、セレノニウム塩およびテルロニウム塩は、一般式Aの化合物である;
Figure 0005710670
ここで、AはS、SeまたはTeであり、R、RおよびRはアルキル、置換アルキル、アルケニル、フェニル、置換フェニル、ベンジル、シクロアルキルおよび置換シクロアルキルであり、R、RおよびRは同じであっても相違していてもよく、そしてXは無機もしくは有機酸のアニオンまたは水酸化物イオンであり、ただし成分b)の酸は、成分d)のスルフィン酸、セレン酸またはテルル酸と同一であることはない、
よりなる群から選択される少なくとも一種の接着性促進性化合物
との混合物が適用される。
好ましいスルフィン酸は、化学式Bで表される;
Figure 0005710670
ここで、R、RおよびRは水素、アルキル、置換アルキル、フェニル、置換フェニルおよびR−(CO)−、ただしRは水素、アルキル、置換アルキル、フェニルまたは置換フェニルである、よりなる群から選択され、R、RおよびRは同じであっても相違していてもよい。
上記溶液は、ホルムアミジンスルフィン酸を含有していることが好ましい。好ましい芳香族スルフィン酸は、ベンゼンスルフィン酸、トルエンスルフィン酸、クロロベンゼンスルフィン酸、ニトロベンゼンスルフィン酸およびカルボキシベンゼンスルフィン酸である。
その他の好ましい接着性促進性の複素環化合物は、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾールおよびチアトリアゾールである。
好ましいチオフェンは、化学式Cの化合物である。
Figure 0005710670
ここで、R、R、R10、R11は水素、アルキル、置換アルキル、フェニル、置換フェニル、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニルおよびR12−CONH−、ただし、R12は水素、アルキル、置換アルキル、フェニルまたは置換フェニルである、よりなる群から選択され、R、R、R10およびR11は同じであっても相違していてもよく、チオフェン環上に縮合する炭素環または複素環の一部となっていてもよい。
特に好ましいチオフェンは、アミノチオフェンカルボン酸、そのエステルおよびアミドである。例えば3−アミノチオフェン−2−カルボン酸メチルエステルを有利に使用することができる。
好ましいチアゾールは、化学式Dの化合物である。
Figure 0005710670
ここで、R13、R14、R15は水素、アルキル、置換アルキル、フェニル、置換フェニル、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニルおよびR16−CONH−、ただし、R16は水素、アルキル、置換アルキル、フェニルまたは置換フェニルである、よりなる群から選択され、R13、R14およびR15は同じであっても相違していてもよく、チアゾール環上に縮合する炭素環または複素環の一部となっていてもよい。
特に好ましいチアゾールは、アミノチアゾールおよび置換アミノチアゾールである。
その他の好ましいチアジアゾール接着性促進性化合物は、アミノチアジアゾールおよび置換アミノチアジアゾールよりなる群から選択される。
さらに、好ましいスルホニウム塩は、トリメチルスルホニウム、トリフェニルスルホニウム、メチオニンアルキルスルホニウムおよびメチオニンベンジルスルホニウムの塩である。
窒素原子を含有し、且つ複素環中に硫黄、セレンまたはテルル原子を含まない5員複素環化合物は、単環および縮合環であることができる。上記化合物は、酸性溶液に実質的に可溶である限り、例えば環化した(anellated)ベンゼン、ナフタレンまたはピリミジン環を含むことができる。上記溶液は、トリアゾール、テトラゾール、イミダゾール、ピラゾールおよびプリンまたはこれらの誘導体を含有することが好ましい。
上記溶液は、特に化学式E1のトリアゾールを含有することが好ましい。
Figure 0005710670
ここで、R17、R18は、水素、アルキル、置換アルキル、アミノ、フェニル、置換フェニルおよびカルボキシアルキルよりなる群から選択され、R17およびR18は同じであっても相違していてもよく、トリアゾール環上に縮合する炭素環または複素環の一部となっていてもよい。
ベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、エチルベンゾトリアゾールおよびジメチルベンゾトリアゾールが特に好ましい。
さらに、上記溶液は、化学式E2のテトラゾールを含有することができる。
Figure 0005710670
ここで、R19は、水素、アルキル、置換アルキル、ハロゲン化アルキル、アミノ、フェニル、置換フェニル、ベンジル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニルおよびR20−CONH、ただし、R20は水素、アルキル、置換アルキル、フェニルまたは置換フェニルである、よりなる群から選択される。
好ましいテトラゾール化合物は、5−アミノテトラゾールおよび5−フェニルテトラゾールである。好ましいイミダゾール化合物としては、ベンゾイミダゾール、5−アミノテトラゾール、5−フェニルテトラゾール、ベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾールおよびエチルベンゾトリアゾールが、処理溶液中における良好な溶解性および入手容易性から好ましい。
好ましい組み合わせは、窒素原子含有複素環化合物としてベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、5−アミノテトラゾールおよび5−フェニルテトラゾールと、複素環化合物としてアミノチオフェンカルボン酸、そのエステルおよびアミド、アミノチアゾールおよび置換アミノチアゾールとの組み合わせである。
本発明の方法は、銅合金表面を処理して高分子材料と強固な接合を可能にする極めて容易な方法である。基本的には一段階の工程を要する。すなわち、銅または銅合金の表面を本発明の溶液で処理することにより、高分子材料との接合を可能とするものである。その接着力は、長期間経過後も減少しない。
本発明の溶液の有利な効果は驚くべきものである。すなわち、塩化物および臭化物は50mg/Lと比較的少量であり、エッチング溶液の機能はすでに強度に減殺されているからである。銅表面を処理するためのかかる溶液の利用は先行技術(US 5,869,130)に記載されているが、本発明の目的である銅合金の表面をエッチングするには適していない。
これに対して、フッ化物の添加はこれら合金上への徹底的な攻撃を増大し、銅合金表面を所望の粗度状態とする。特にSiを含有する合金は、最も効果的に処理され、表面上のSi汚ればかりかエッチング溶液それ自体のSi汚れも除去する。フッ化物の添加を欠くと、不溶の残滓が生成し、低接着性および外観の不均一を結果し、リードフレームの製造においては許容されないこととなる。さらに、合金元素は、処理溶液の安定性を損なうことがよくある。例えば溶解した鉄は、過酸化水素の分解を触媒する。塩化物および臭化物は処理溶液の分解速度を減じないのに対して、フッ化物の添加は驚くべきことにかかる分解を防止する。
電気工業において無鉛ハンダが適用された結果、リードフレームの合金表面の特性は益々重要になった。無鉛ハンダは、電気部品を高温にする。ハンダ温度が高いために、「ポップコーン効果」が起こる危険が増大した。この効果は、装置中に湿気が侵入し、処理後の工程における加熱により水が爆発的に蒸発するときに起こり、高分子材料と金属表面との接合を破壊する。この効果は、電子装置を破壊する。高分子材料が金属基体に良好に接着していると、「ポップコーン効果」の起こる危険は最も小さくなる。
本発明の溶液を適用して得られる良好な接着の結果、高分子材料/金属表面の接合内に湿気が侵入することはない。
フッ化物イオンの量は、さらに金属表面のエッチング速度に影響する。フッ素物イオンの濃度がある範囲に増加すると、エッチング速度が増大する。フッ化ナトリウム濃度が2.5g/Lである実施例1の溶液を適用すると、1.0μm/minのエッチング速度となる。フッ化ナトリウムを5.0g/L含有する溶液のエッチング速度は、1.6μm/minに増加する。これ以降は、フッ化物イオンの濃度がさらに増大しても、エッチング速度に顕著には影響しない。所定の金属についてのフッ化物イオンの最適値は、その組成に依存し、標準測定法(standard measurement method)により個別に決定することができる。
上述した通り、本発明の溶液は、さらに塩化物イオンを5〜40mg/Lの量で含有する。塩化物イオンは、本発明の溶液が適用される表面の粗度に有益な効果のあることが分かった。塩化物イオンの濃度が15〜25mg/Lの範囲にあるときに、特に良好な結果が得られる。
本発明において、合金基体と高分子材料との間の接着は、N/mmの値で定量的に測定される。
Dage 4000装置により、試験片への接触面積10mm、シェア速度0.2mm/sにて、キュアして硬化後の「モールドタブレット(mold tablets)」を押すことにより、ピール強度を測定した。試験は20℃にて行った。
リードフレームの製造において重要であり、広く使用されているSi含有合金は、C7025である。CuおよびNiのほかに、1.2%以下のSiを含有する。
本発明に特に好適に用いられる他の合金はC194である。これは、97%のCu,2.3%のFeおよび0.1%のMnを含有する。上述のC7025合金と同様に、C194はリードフレームの製造に用いられる。
銅合金の表面は、処理が効果的であるように、先ず洗浄されるベきである。公知の洗浄液のどれもを使用することができる。通常は、湿潤剤および時として(トリエタノールアミンの如き)錯化剤を含有する水性溶液が用いられる。
洗浄後、リンスされた銅合金表面は、いわゆる予備浸漬溶液との接触に供することができる。予備接触溶液は、好ましくは0.1〜10g/L、特に0.5〜2g/Lの濃度で水に溶解された5員複素環化合物のうちの一種を含有する。この処理は、後の処理工程における接着性促進層の形成を容易とする。特に、接着性促進層の形成におけるいかなる遅れも避けられる。接着性促進層は、表面が本発明の溶液と接触したときに、直接に形成が開始する。
次いで表面は、事前のリンスはせずに、本発明の溶液により処理される。
酸化剤によるマイクロエッチングは、過酸化水素と、銅合金表面に微細な粗化をもたらす酸との組み合わせが好ましい。これにより、表面積が増大するので、その後の銅合金表面の高分子材料への接着性もまた増大する。処理中の表面の変色は、薄い酸化銅層に起因する。本発明の溶液における酸としては、無機酸が好ましく、特に硫酸が好ましい。もちろん、他の酸も使用することができる。
処理は、20〜60℃において行われることが好ましい。処理時間は、好ましくは10〜600秒である。温度が高いほど、溶液は速く機能する。従って、処理時間は、非常に短くともよい。実際的な観点からは、反応のよりよい制御の面から平均温度を35〜45℃とすることが好ましい。平均処理時間は20〜90秒である。さらに、溶液中のある成分は高温と相容れないため、上限温度の設定を必須としてもよい。すなわち、湿潤剤は高温において溶解困難である。
上記溶液中における好ましい濃度範囲は以下のとおりである;
硫酸、濃 10〜250g/L
過酸化水素、30重量% 1〜100g/L
接着性向上性化合物:
トリアゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾール、テトラゾールおよびこれらの混合物 0.5〜50g/L
プリン 0.5〜50g/L
その他の成分:
スルフィン酸、セレン酸および/またはテルル酸 0.05〜10g/L
接着性促進性複素環化合物 0.05〜20g/L
スルホニウム塩、セレノニウム塩および/またはテルロニウム塩 0.01〜10g/L
フッ化物イオン 0.2〜25g/L、より好ましくは1〜10g/L、最も好ましくは2〜5g/L
塩化物イオン 5〜40mg/L、好ましくは15〜25mg/L
本発明の溶液によって処理された後、銅表面はリンスされる。その後、例えばホットエアにより乾燥される。
銅または銅合金の表面を有するワークピース、例えばリードフレームは、通常の浸漬装置により処理することができる。
以下の実施例により、本発明をさらに明確にする。
実施例1
下記の成分を混合して水性溶液を調製した。
硫酸、96重量% 50mL
過酸化水素、30重量%水溶液 40mL
ベンゾトリアゾール 10g
ホルムアミジンスルフィン酸 0.5g
フッ化ナトリウム 5.0g
塩化ナトリウム 33mg
脱イオン水を加えて1Lとした。
上記溶液を40℃に加温し、Cu、Ni(2.2〜4.2%)、Si(0.25〜1.2%)ならびに少量のMgおよびZnを含有する銅合金表面(リードフレームC7025)を溶液中に60秒間浸漬した。処理後、合金を脱イオン水によりリンスし、最後に乾燥した。
その後、高分子材料として市販の封止樹脂(mold)(KMC−289、Shinetsu)を処理後の合金表面に塗布し、乾燥し、175℃の温度において硬化した。
リードフレームのピール強度を、ボタンシェア試験(button shear test)により測定した。接着性の値は18.5N/mmであった。RSAI(相対表面積増大)により表現される粗度は、44%±3%(絶対値)であった。
比較例2
フッ化ナトリウムを含有しない溶液を用いて実施例1を繰り返した。
リードフレームの表面には、指で擦ると容易に除去できる黒い汚れが見られた。このサンプルの接着性の値は、わずか9,1N/mmであった。粗度は、42%±3%(絶対値)であった。
比較例3
塩化ナトリウムを含有しない溶液を用いて実施例1を繰り返した。
リードフレームの表面に黒い汚れは見られなかったが、粗度は12%RSAIよりも低かった。ピール接着性の値は、常に5N/mmよりも低かった。
実施例4
下記の成分を混合して水性溶液を調製した。
硫酸、96重量% 50mL
過酸化水素、30重量%水溶液 40mL
ベンゾトリアゾール 10g
ホルムアミジンスルフィン酸 0.5g
フッ化ナトリウム 5.0g
塩化ナトリウム 33mg
脱イオン水を加えて1Lとした。
上記溶液を40℃に加温し、Cu、Ni(2.2〜4.2%)、Si(0.25〜1.2%)ならびに少量のMgおよびZnを含有する銅合金表面(リードフレームC7025)を溶液中に60秒間浸漬した。処理後、合金を脱イオン水によりリンスし、最後に乾燥した。
その後、処理後の銅合金表面に、市販のメタライゼーションプロセス(Atotech Deutschland GmbH)により、Ni−Pd−Au層を堆積した。
浸漬洗浄 50℃、3分
リンス
カソード脱脂 40℃、60秒
リンス
5%H2SO4
Nickel sulphamat HS 60℃、40秒(堆積Ni層の厚さ〜0,7μm)
リンス
Pallacor PPF 35℃、2秒(堆積Pd層の厚さ〜0,03μm)
リンス
Aurocor PPF 35℃、1秒(堆積Au層の厚さ〜0,005μm)
リンス、乾燥
最後に、処理後の合金表面に、高分子材料として市販の封止樹脂(KMC−289、Shinetsu)を塗布して乾燥し、150℃の温度で硬化した。
接着性の値は、実施例1における値よりもわずかに小さい値にまで達した。
比較例5
フッ化ナトリウムを含有しない溶液を用いて実施例4を繰り返した。
リードフレームの表面には汚れが見られたため、さらに後処理工程により洗浄することが必要であった。後処理工程には、Ni−Pd−Auのメタライゼーションに先んじて使用した5%HSOに代えて、50mL/Lの96%HSO、20g/Lのペルオキソ二硫酸ナトリウムおよび4g/Lのフッ化ナトリウムを使用した。その結果、接着性の値はほんのわずかであった。

Claims (13)

  1. a)酸化剤、
    b)少なくとも一種の酸
    c)トリアゾール、イミダゾール、テトラゾールおよびプリンよりなる群から選択される少なくとも一種の接着性向上性化合物
    を含有する、銅合金の表面を処理して高分子材料に対する接着性を向上するための溶液であって、前記溶液がさらに
    d)少なくとも100mg/Lの量のフッ化物イオン、
    e)5〜40mg/Lの量の塩化物イオン
    を含有することを特徴とする、前記溶液。
  2. トリアゾールが、下記化学構造E1:
    Figure 0005710670
    ここで、R17、R18は、水素、アルキル、置換アルキル、アミノ、フェニル、置換フェニルおよびカルボキシアルキルよりなる群から選択され、R17およびR18は同じであっても相違していてもよく、トリアゾール環上に縮合する炭素環または複素環の一部となっていてもよい、
    を有することを特徴とする、請求項1に記載の溶液。
  3. トリアゾールが、ベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、エチルベンゾトリアゾールおよびジメチルベンゾトリアゾールよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の溶液。
  4. テトラゾールが、下記化学構造(E2)
    Figure 0005710670
    ここで、R19は、水素、アルキル、置換アルキル、ハロゲン化アルキル、アミノ、フェニル、置換フェニル、ベンジル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニルおよびR20−CONH、ただし、R20は水素、アルキル、置換アルキル、フェニルまたは置換フェニルである、よりなる群から選択される、
    を有することを特徴とする、請求項1に記載の溶液。
  5. テトラゾールが、5−アミノテトラゾールおよび5−フェニルテトラゾールよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の溶液。
  6. フッ化物イオンの量が、少なくとも0.5g/Lである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の溶液。
  7. フッ化物イオンの量が、少なくとも2.0g/Lである、請求項6に記載の溶液。
  8. フッ化物イオンが、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウムおよびテトラフルオロホウ酸よりなる群から選択されるフッ化物イオン源に由来するものであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の溶液。
  9. 溶液中のb)成分の酸として硫酸が選択されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の溶液。
  10. 塩化物イオンの量が、15〜25mg/Lであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の溶液。
  11. 処理後の銅合金表面と高分子材料との間に強固な接着が形成されるように、銅表面を請求項1〜10のいずれか一項に記載の溶液と接触させる、銅合金表面を前処理する方法。
  12. 銅合金が、Si、Ni、Fe、Zr、P、SnおよびZnよりなる群から選択される少なくとも一種の合金元素を含有することを特徴とする、請求項11に記載の銅合金表面を前処理する方法。
  13. 銅合金表面がリードフレーム表面であり、銅合金層と封止用化合物との間に強固な接合を形成するために前処理がなされる、請求項12に記載の方法。
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