以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による電力伝送システムの全体構成図である。図1を参照して、この電力伝送システムは、車両100と、送電装置200とを備える。車両100は、受電部110と、整流回路120と、蓄電装置130と、動力生成装置140と、焦電センサ150A,150Bと、車両ECU(Electronic Control Unit)170とを含む。送電装置200は、高周波電源220と、送電部230とを含む。
車両100の受電部110は、送電装置200の送電部230から送出される電力を非接触で受電して整流回路120へ出力する。この実施の形態1では、地中または地表に送電部230が設けられ、受電部110は、車両後方において車体下部に設けられる。なお、受電部110の配設箇所はこれに限定されるものではなく、地中または地表に送電部230が設けられる場合に、受電部110は、車両前方や中央において車体下部に設けてもよい。
なお、一例として、受電部110は、コイルおよびキャパシタを含む共振回路によって構成される。受電部110の具体的な構成については、送電装置200の送電部230とともに後ほど説明する。
整流回路120は、受電部110から受ける交流電力を直流電力に変換し、その変換された直流電力を蓄電装置130へ出力することによって蓄電装置130を充電する。蓄電装置130は、再充電可能な直流電源であり、たとえばリチウムイオンやニッケル水素などの二次電池によって構成される。蓄電装置130は、整流回路120から出力される電力を蓄えるほか、動力生成装置140によって発電される電力も蓄える。そして、蓄電装置130は、その蓄えられた電力を動力生成装置140へ供給する。なお、蓄電装置130として大容量のキャパシタも採用可能である。
動力生成装置140は、蓄電装置130に蓄えられる電力を用いて車両100の走行駆動力を発生する。特に図示しないが、動力生成装置140は、たとえば、蓄電装置130から電力を受けるインバータ、インバータによって駆動されるモータ、モータによって駆動される駆動輪等を含む。なお、動力生成装置140は、蓄電装置130を充電するための発電機と、その発電機を駆動可能なエンジンを含んでもよい。
焦電センサ150A,150Bは、異物(図示せず)から放出される赤外線を検知することによって、受電部110と送電装置200の送電部230との間の異物を検出するためのセンサである。なお、異物とは、焦電センサ150A,150Bの検出範囲に本来存在しないものであり、ここでは、受電部110と送電装置200の送電部230との間に存在する動物等が想定される。
焦電センサ150A,150Bは、この実施の形態1では、受電部110が車両後方に設けられることに対応して、車両最後方の車体下部に設置される。さらに、車両100を後方から見た図2に示されるように、焦電センサ150Aは、受電部110よりも左側に配設され、焦電センサ150Bは、受電部110よりも右側に配設される。そして、焦電センサ150Aの検知範囲と、焦電センサ150Bの検知範囲とを組合わせることによって、異物を検出する範囲が規定され、車両後方から車両下部へ侵入する異物が検知される。この点については、後ほど詳しく説明する。
再び図1を参照して、車両ECU170は、蓄電装置130から充電状態(SOC:State Of Charge)に関する充電情報を受け、その充電情報に基づいて送電装置200による蓄電装置130の充電を制御する。また、車両ECU170は、焦電センサ150A
,150Bの検知信号に基づいて以下の処理を実行する。すなわち、車両ECU170は、焦電センサ150A,150Bの双方において異物が検知された場合には、すなわち焦電センサ150A,150Bの検知範囲が重複する領域において異物が検知された場合には、受電部110による受電を停止するための制御を実行する。具体的には、車両ECU170は、図示しない通信手段によって、送電装置200から車両100への送電を停止するための送電停止指令を送電装置200へ送信する。
一方、焦電センサ150A,150Bのいずれかにおいて異物が検知された場合には、すなわち焦電センサ150A,150Bの検知範囲が重複しない領域において異物が検知された場合には、車両ECU170は、異物が検知された旨を利用者に通知する。なお、この通知には、表示を用いてもよいし、音声により行なってもよい。
送電装置200においては、高周波電源220は、たとえば系統電源210から電力を受けて高周波の交流電力を生成する。送電部230は、高周波電源220から高周波の交流電力の供給を受け、車両100の受電部110へ非接触で電力を伝送する。一例として、送電部230は、コイルおよびキャパシタを含む共振回路によって構成される。なお、送電部230の具体的な構成についても、車両100の受電部110とともに後ほど説明する。
図3は、焦電センサ150A,150Bによる異物の検知範囲を説明するための図である。この図3は、車両100の後方から車両100の下部を見たときの検知範囲を示している。
図3を参照して、点線D1,D2は、それぞれ焦電センサ150A,150Bによる異物の検知範囲を示す。領域L1は、地表面において、焦電センサ150Aの検知範囲と、焦電センサ150Bの検知範囲とが重複する領域である。領域L2は、地表面において、焦電センサ150Aのみが検知可能な領域である。領域L3は、地表面において、焦電センサ150Bのみが検知可能な範囲である。
車両ECU170は、アンプ402,404と、コンパレータ406,408と、制御部410とを含む。アンプ402,404は、それぞれ焦電センサ150A,150Bからの出力信号を増幅する。コンパレータ406,408は、それぞれアンプ402,404から受ける信号のレベルが所定のしきい値を超えると、制御部410へ出力される信号を活性化する。制御部410は、コンパレータ406,408の出力信号のいずれかが活性化されると、異物が検知された旨を利用者に通知するための所定の処理を実行する。また、制御部410は、コンパレータ406,408の出力信号の双方が活性化されると、受電部110による受電を停止するための所定の処理を実行する。
(焦電センサの回路構成)
図4は、図1に示した焦電センサ150A(150B)の検出回路の構成を示した図である。なお、この図4に示される回路構成は一例であって、検出回路の構成は図4の構成に限定されるものではない。
図4を参照して、焦電センサ150A(150B)は、焦電素子20と、抵抗素子30と、検出部70とを含む。焦電素子20は、温度変化によって分極電荷の状態が変化する焦電体によって構成され、いわゆる焦電効果によって赤外線を検知する。焦電素子20に赤外線が照射されることにより焦電素子20の温度が変化すると、焦電素子20における分極電荷の状態が変化し、それに応じて焦電素子20の出力が変化する。また、焦電素子20に照射されていた赤外線が遮断されるときも、分極電荷の状態が元の状態に戻ろうとして変化し、それに応じて焦電素子20の出力が変化する。このような焦電素子20の出
力変化を検出することによって、検知範囲に対する異物の侵入/退出を検出することができる。
抵抗素子30は、焦電素子20の両端子間に接続される。抵抗素子30は、焦電素子20の出力を検出するために設けられる。すなわち、焦電素子20から放出される電荷量に応じて抵抗素子30に生じる電圧を検出部70により検出することによって、焦電素子20の出力が検出される。
検出部70は、トランジスタ82と、抵抗素子84と、電源ノード86と、電圧センサ88とを含む。トランジスタ82は、電源ノード86と抵抗素子84との間に接続され、トランジスタ82のゲート端子に焦電素子20が接続される。抵抗素子84は、トランジスタ82と接地ノードとの間に接続される。電圧センサ88は、抵抗素子84の両端子間に生じる電圧Vを検出する。この焦電センサ150A(150B)では、この電圧Vの検出値に基づいて異物(図示せず)が検知される。
なお、特に図示しないが、焦電センサ150A(150B)の検出回路について、トランジスタ82および抵抗素子84を設けることなく、抵抗素子30の電圧を直接検出することによって焦電素子20の出力を検出してもよい。また、焦電素子20の両端の電位差をオペアンプを用いて検出することによって焦電素子20の出力を検出してもよい。なお、図4のようにトランジスタ82を用いたり、オペアンプを用いることによって熱雑音を小さくすることができ、その結果、S/N比を向上させることができる。
(電力伝送システムの回路構成)
図5は、図1に示した電力伝送システムにおいて非接触電力伝送を実現する電気回路図である。なお、この図5に示される回路構成は一例であって、非接触電力伝送を実現するための構成が図5の構成に限定されるものではない。
図5を参照して、車両100の受電部110は、二次コイル340と、キャパシタ350とを含む。二次コイル340は、キャパシタ350とともに共振回路を形成し、送電装置200の送電部230から送出される電力を非接触で受電する。整流回路120は、二次コイル340によって受電された交流電力を整流して蓄電装置130へ出力する。なお、特に図示しないが、二次コイル340およびキャパシタ350によって閉ループを形成し、二次コイル340により受電された交流電力を電磁誘導により二次コイル340から取出して整流回路120へ出力するコイルを別途設けてもよい。
一方、送電装置200において、送電部230は、一次コイル330と、キャパシタ335とを含む。一次コイル330は、キャパシタ335とともに共振回路を形成し、高周波電源220から供給される交流電力を受電部110へ非接触で送電する。なお、特に図示しないが、一次コイル330およびキャパシタ335によって閉ループを形成し、高周波電源220から出力される交流電力を電磁誘導により一次コイル330へ供給するコイルを別途設けてもよい。
なお、キャパシタ335,350は、共振回路の固有周波数を調整するために設けられるものであり、一次コイル330および二次コイル340の浮遊容量を利用して所望の固有周波数が得られる場合には、キャパシタ335,350を設けない構成としてもよい。
なお、高周波電源220と送電部230との間に整合器240を設けてもよい(図1では図示せず)。そして、一例として、整合器240は、可変コンデンサ310,315と、コイル320とを含む。整合器240は、可変コンデンサ310,315の容量を変化させることによってインピーダンスを変更することができる。この整合器240において
インピーダンスを変更することによって、送電装置200のインピーダンスを車両100のインピーダンスと整合させることができる(インピーダンスマッチング)。なお、高周波電源220がインピーダンスの整合機能を有してもよく、その場合には、整合器240を省略することも可能である。
以下に、送電装置200の送電部230から車両100の受電部110への非接触電力伝送について説明する。この電力伝送システムにおいては、送電部230の固有周波数と、受電部110の固有周波数との差は、送電部230の固有周波数または受電部110の固有周波数の±10%以下である。このような範囲に送電部230および受電部110の固有周波数を設定することで電力伝送効率を高めることができる。一方、上記の固有周波数の差が±10%よりも大きくなると、電力伝送効率が10%よりも小さくなり、電力伝送時間が長くなるなどの弊害が生じる。
なお、送電部230(受電部110)の固有周波数とは、一次コイル330およびキャパシタ335(二次コイル340およびキャパシタ350)によって構成される電気回路(共振回路)が自由振動する場合の振動周波数を意味する。なお、送電部230(受電部110)の共振周波数とは、一次コイル330およびキャパシタ335(二次コイル340およびキャパシタ350)によって構成される電気回路(共振回路)において、制動力または電気抵抗を零としたときの固有周波数を意味する。
図6および図7を用いて、固有周波数の差と電力伝送効率との関係とを解析したシミュレーション結果について説明する。図6は、電力伝送システムのシミュレーションモデルを示す図である。また、図7は、送電部および受電部の固有周波数のズレと電力伝送効率との関係を示す図である。
図6を参照して、電力伝送システム389は、送電部390と、受電部391とを備える。送電部390は、第1コイル392と、第2コイル393とを含む。第2コイル393は、共振コイル394と、共振コイル394に設けられたキャパシタ395とを含む。受電部391は、第3コイル396と、第4コイル397とを備える。第3コイル396は、共振コイル399とこの共振コイル399に接続されたキャパシタ398とを含む。
共振コイル394のインダクタンスをインダクタンスLtとし、キャパシタ395のキャパシタンスをキャパシタンスC1とする。また、共振コイル399のインダクタンスをインダクタンスLrとし、キャパシタ398のキャパシタンスをキャパシタンスC2とする。このように各パラメータを設定すると、第2コイル393の固有周波数f1は、下記の式(1)によって示され、第3コイル396の固有周波数f2は、下記の式(2)によって示される。
f1=1/{2π(Lt×C1)1/2}・・・(1)
f2=1/{2π(Lr×C2)1/2}・・・(2)
ここで、インダクタンスLrおよびキャパシタンスC1,C2を固定して、インダクタンスLtのみを変化させた場合において、第2コイル393および第3コイル396の固有周波数のズレと電力伝送効率との関係を図7に示す。なお、このシミュレーションにおいては、共振コイル394および共振コイル399の相対的な位置関係は固定とし、さらに、第2コイル393に供給される電流の周波数は一定である。
図7に示すグラフのうち、横軸は固有周波数のズレ(%)を示し、縦軸は一定周波数での電力伝送効率(%)を示す。固有周波数のズレ(%)は、下記の式(3)によって示される。
(固有周波数のズレ)={(f1−f2)/f2}×100(%)・・・(3)
図7からも明らかなように、固有周波数のズレ(%)が0%の場合には、電力伝送効率は100%近くとなる。固有周波数のズレ(%)が±5%の場合には、電力伝送効率は40%程度となる。固有周波数のズレ(%)が±10%の場合には、電力伝送効率は10%程度となる。固有周波数のズレ(%)が±15%の場合には、電力伝送効率は5%程度となる。すなわち、固有周波数のズレ(%)の絶対値(固有周波数の差)が、第3コイル396の固有周波数の10%以下の範囲となるように第2コイル393および第3コイル396の固有周波数を設定することで、電力伝送効率を実用的なレベルに高めることができることがわかる。さらに、固有周波数のズレ(%)の絶対値が第3コイル396の固有周波数の5%以下となるように第2コイル393および第3コイル396の固有周波数を設定すると、電力伝送効率をさらに高めることができるのでより好ましい。なお、シミュレーションソフトしては、電磁界解析ソフトウェア(JMAG(登録商標):株式会社JSOL製)を採用している。
再び図5を参照して、送電装置200の送電部230および車両100の受電部110は、送電部230と受電部110との間に形成される磁界および電界の少なくとも一方を通じて、非接触で電力を授受する。送電部230と受電部110との間に形成される磁界および/または電界は、特定の周波数で振動する。そして、送電部230と受電部110とを電磁界によって共振(共鳴)させることで、送電部230から受電部110へ電力が伝送される。
ここで、送電部230の周囲に形成される特定の周波数の磁界について説明する。「特定の周波数の磁界」は、典型的には、電力伝送効率と送電部230に供給される電流の周波数と関連性を有する。そこで、まず、電力伝送効率と、送電部230に供給される電流の周波数との関係について説明する。送電部230から受電部110に電力を伝送するときの電力伝送効率は、送電部230および受電部110間の距離などの様々な要因よって変化する。たとえば、送電部230および受電部110の固有周波数(共振周波数)をf0とし、送電部230に供給される電流の周波数をf3とし、送電部230および受電部110の間のエアギャップをエアギャップAGとする。
図8は、固有周波数f0を固定した状態で、エアギャップAGを変化させたときの電力伝送効率と、送電部230に供給される電流の周波数f3との関係を示すグラフである。図8を参照して、横軸は、送電部230に供給される電流の周波数f3を示し、縦軸は、電力伝送効率(%)を示す。効率曲線L1は、エアギャップAGが小さいときの電力伝送効率と、送電部230に供給される電流の周波数f3との関係を模式的に示す。この効率曲線L1に示すように、エアギャップAGが小さい場合には、電力伝送効率のピークは周波数f4,f5(f4<f5)において生じる。エアギャップAGを大きくすると、電力伝送効率が高くなるときの2つのピークは、互いに近づくように変化する。そして、効率曲線L2に示すように、エアギャップAGを所定距離よりも大きくすると、電力伝送効率のピークは1つとなり、送電部230に供給される電流の周波数が周波数f6のときに電力伝送効率がピークとなる。エアギャップAGを効率曲線L2の状態よりもさらに大きくすると、効率曲線L3に示すように電力伝送効率のピークが小さくなる。
たとえば、電力伝送効率の向上を図るため手法として次のような手法が考えられる。第1の手法としては、エアギャップAGにあわせて、送電部230に供給される電流の周波数を一定として、キャパシタ335,350のキャパシタンスを変化させることで、送電部230と受電部110との間での電力伝送効率の特性を変化させる手法が考えられる。具体的には、送電部230に供給される電流の周波数を一定とした状態で、電力伝送効率がピークとなるように、キャパシタ335,350のキャパシタンスを調整する。この手法では、エアギャップAGの大きさに関係なく、送電部230および受電部110に流れ
る電流の周波数は一定である。なお、電力伝送効率の特性を変化させる手法としては、送電装置200の整合器240を利用する手法や、車両100において整流回路120と蓄電装置130との間に設けられるコンバータを利用する手法などを採用することも可能である。
また、第2の手法としては、エアギャップAGの大きさに基づいて、送電部230に供給される電流の周波数を調整する手法である。たとえば、電力伝送特性が効率曲線L1となる場合には、周波数f4またはf5の電流を送電部230に供給する。周波数特性が効率曲線L2,L3となる場合には、周波数f6の電流を送電部230に供給する。この場合においては、エアギャップAGの大きさに合わせて送電部230および受電部110に流れる電流の周波数を変化させることになる。
第1の手法では、送電部230を流れる電流の周波数は、固定された一定の周波数となり、第2の手法では、送電部230を流れる周波数は、エアギャップAGによって適宜変化する周波数となる。第1の手法や第2の手法などによって、電力伝送効率が高くなるように設定された特定の周波数の電流が送電部230に供給される。送電部230に特定の周波数の電流が流れることで、送電部230の周囲には、特定の周波数で振動する磁界(電磁界)が形成される。受電部110は、受電部110と送電部230との間に形成され、かつ特定の周波数で振動する磁界を通じて送電部230から電力を受電している。したがって、「特定の周波数で振動する磁界」とは、必ずしも固定された周波数の磁界とは限らない。なお、上記の例では、エアギャップAGに着目して、送電部230に供給される電流の周波数を設定するようにしているが、電力伝送効率は、送電部230および受電部110の水平方向のずれ等のように他の要因によっても変化するものであり、当該他の要因に基づいて、送電部230に供給される電流の周波数を調整する場合がある。
なお、上記では、送電部230および受電部110にコイル(たとえばヘリカルコイル)を採用したが、コイルに代えて、メアンダラインなどのアンテナなどを採用してもよい。メアンダラインなどのアンテナなどを採用した場合には、送電部230に特定の周波数の電流が流れることで、特定の周波数の電界が送電部230の周囲に形成される。そして、この電界を通して、送電部230と受電部110との間で電力伝送が行なわれる。
この電力伝送システムにおいては、電磁界の「静電磁界」が支配的な近接場(エバネッセント場)を利用することで、送電および受電効率の向上が図られている。
図9は、電流源または磁流源からの距離と電磁界の強度との関係を示した図である。図9を参照して、電磁界は3つの成分から成る。曲線k1は、波源からの距離に反比例した成分であり、「輻射電磁界」と称される。曲線k2は、波源からの距離の2乗に反比例した成分であり、「誘導電磁界」と称される。また、曲線k3は、波源からの距離の3乗に反比例した成分であり、「静電磁界」と称される。なお、電磁界の波長を「λ」とすると、「輻射電磁界」と「誘導電磁界」と「静電磁界」との強さが略等しくなる距離は、λ/2πと表わすことができる。
「静電磁界」は、波源からの距離とともに急激に電磁波の強度が減少する領域であり、この実施の形態に係る電力伝送システムでは、この「静電磁界」が支配的な近接場(エバネッセント場)を利用してエネルギー(電力)の伝送が行なわれる。すなわち、「静電磁界」が支配的な近接場において、近接する固有周波数を有する送電部230および受電部110(たとえば一対のコイル)を共鳴させることにより、送電部230から他方の受電部110へエネルギー(電力)を伝送する。この「静電磁界」は遠方にエネルギーを伝播しないので、遠方までエネルギーを伝播する「輻射電磁界」によってエネルギー(電力)を伝送する電磁波に比べて、共鳴法は、より少ないエネルギー損失で送電することができ
る。
このように、この電力伝送システムにおいては、送電部230と受電部110とを電磁界によって共振(共鳴)させることで、送電部230と受電部110との間で非接触で電力が伝送される。送電部230と受電部110との間に形成されるこのような電磁場は、たとえば、近接場共振(共鳴)結合場という場合がある。送電部230と受電部110との結合係数κは、たとえば、0.3以下程度であり、好ましくは、0.1以下である。当然のことながら、結合係数κが0.1〜0.3程度の範囲も採用することができる。結合係数κは、このような値に限定されるものでなく、電力伝送が良好となる種々の値をとり得る。
なお、電力伝送における、上記のような送電部230と受電部110との結合を、たとえば、「磁気共鳴結合」、「磁界(磁場)共鳴結合」、「磁場共振(共鳴)結合」、「近接場共振(共鳴)結合」、「電磁界(電磁場)共振結合」、「電界(電場)共振結合」等という。「電磁界(電磁場)共振結合」は、「磁気共鳴結合」、「磁界(磁場)共鳴結合」、「電界(電場)共振結合」のいずれも含む結合を意味する。
送電部230と受電部110とが上記のようにコイルによって形成される場合には、送電部230と受電部110とは、主に磁界(磁場)によって結合し、「磁気共鳴結合」または「磁界(磁場)共鳴結合」が形成される。なお、上記のように、送電部230と受電部110とにメアンダライン等のアンテナを採用することも可能であり、この場合には、送電部230と受電部110とは、主に電界(電場)によって結合し、「電界(電場)共鳴結合」が形成される。
以上のように、この実施の形態1においては、焦電センサ150A,150Bの検知範囲を組合わせることによって、異物を検出する範囲が規定される。そして、検知範囲が重複する領域L1(図3)において異物が検知された場合には、送電装置200から車両100への電力伝送が停止される。検知範囲が重複しない領域L2,L3(図3)において異物が検知された場合には、電力伝送の停止は行なわずに、異物が検知された旨が利用者に通知される。したがって、この実施の形態1によれば、送電装置200と車両100との間の異物を検出する際の誤検出および検出漏れを抑制するとともに、送電装置200から車両100への電力伝送を不必要に停止するのを抑制することができる。
[変形例]
上記の実施の形態1では、車両最後方の車体下部に焦電センサ150A,150Bを設置することにより、車両後方から車両下部へ侵入する異物を焦電センサ150A,150Bにより検知するものとしたが、焦電センサを車両側方(左右いずれか、または左右双方)に設置することにより、車両側方から車両下部へ侵入する異物も検知可能である。
図10は、焦電センサの他の配置例を示した図である。図10を参照して、この変形例では、車両左側の車体下部に焦電センサ150C,150Dが設置される。さらに、焦電センサ150Cは、受電部110よりも前方に配設され、焦電センサ150Dは、受電部110よりも後方に配設される。そして、焦電センサ150Cの検知範囲と、焦電センサ150Dの検知範囲とを組合わせることによって、異物を検出する範囲が規定され、車両左側から車両下部へ侵入する異物が検知される。
なお、特に図示しないが、焦電センサを車両右側の車体下部に設置することによって、車両右側から車両下部へ侵入する異物も検知可能である。また、焦電センサを車両前方の車体下部に設置することによって、車両前方から車両下部へ侵入する異物も検知可能である。このように、検知範囲が組合わされた複数の焦電センサを車両前方および後方ならび
に左方および右方の各々に設置することによって、全方位からの異物の侵入を検知することができる。
[実施の形態2]
実施の形態1およびその変形例では、2つの焦電センサの検知範囲を組合わせることによって、異物を検出する範囲が規定されるものとした。この実施の形態2では、可動式の焦電センサが設けられ、焦電センサの位置を移動することによって複数の検知範囲が形成される。そして、作動状態が異なる複数の検知範囲を組合わせることによって、異物を検出する範囲が規定される。
この実施の形態2における電力伝送システムの構成(電力伝送に関する送電装置および車両の構成)は、実施の形態1と同じである。
図11は、実施の形態2における焦電センサの配置を説明するための図である。なお、この図11は、実施の形態1における焦電センサの配置を示した図2に対応するものである。図11を参照して、車両100は、図1,2に示した実施の形態1の構成において、焦電センサ150A,150Bに代えて焦電センサ150Eを含み、車両ECU170に代えて車両ECU170Aを含む。
焦電センサ150Eは、実施の形態1における焦電センサ150A,150Bと同様に、受電部110が車両後方に設けられることに対応して車両最後方の車体下部に設置される。そして、焦電センサ150Eは、可動式であり、たとえば案内レール等を用いて車両の左右方向に移動可能である。具体的には、焦電センサ150Eは、受電部110よりも左側の位置と、受電部110よりも右側の位置とを行き来することができる。そして、焦電センサ150Eが左端のときの検知範囲と、焦電センサ150Eが右端のときの検知範囲とを組合わせることによって、異物を検出する範囲が規定され、車両後方から車両下部へ侵入する異物が検知される。
図12は、実施の形態2における焦電センサ150Eの検知範囲を説明するための図である。なお、この図12は、実施の形態1における検知範囲を示した図3に対応するものであり、車両の後方から車両の下部を見たときの検知範囲を示している。
図12を参照して、点線D1は、焦電センサ150Eが左端にあるときの焦電センサ150Eの検知範囲を示し、点線D2は、焦電センサ150Eが右端にある場合の焦電センサ150Eの検知範囲を示す。そして、領域L1は、地表面において、焦電センサ150Eが左端にあるときの検知範囲と、焦電センサ150Eが右端にあるときの検知範囲とが重複する領域である。領域L2は、地表面において、焦電センサ150Eが左端にあるときのみに検知可能な領域である。領域L3は、地表面において、焦電センサ150Eが右端にあるときのみに検知可能な領域である。
車両ECU170Aは、アンプ412と、コンパレータ414と、制御部416とを含む。アンプ412は、焦電センサ150Eからの出力信号を増幅する。コンパレータ414は、アンプ412から受ける信号のレベルが所定のしきい値を超えると、制御部416へ出力される信号を活性化する。制御部416は、焦電センサ150Eの作動を制御する。具体的には、焦電センサ150Eによる異物検知の実行中、制御部416は、予め定められた時間間隔で焦電センサ150Eを左端と右端との間で繰り返し移動させる。
そして、制御部416は、コンパレータ414の出力信号が活性化されると、異物が検知された旨を利用者に通知するための所定の処理を実行する。ここで、焦電センサ150Eが左端にあるときにも右端にあるときにもコンパレータ414の出力信号が活性化され
る場合には、制御部416は、領域L1に異物が侵入したものと判断して、受電部110による受電を停止するための所定の制御を実行する。
以上のように、この実施の形態2においては、焦電センサ150Eを可動式とし、焦電センサ150Eを作動させることによって複数の検知範囲が構成される。したがって、この実施の形態2によれば、実施の形態1よりも少ない焦電センサで実施の形態1と同様の機能および効果を実現することができる。
なお、実施の形態1の変形例と同様に、この実施の形態2においても、可動式の焦電センサを車両前方や車両側方にもさらに設けてもよい。これにより、車両前方や車両側方から車両下部へ侵入する異物も検知することができる。
[実施の形態3]
再び図3を参照して、実施の形態1では、領域L2,L3において同時に異物が検知された場合、領域L1に異物が侵入したものと誤検知される。なお、このような誤検知は、実施の形態2でも起こり得る。そこで、この実施の形態3では、領域L1を検知範囲とする焦電センサがさらに設けられる。
この実施の形態3における電力伝送システムの構成(電力伝送に関する送電装置および車両の構成)も、実施の形態1と同じである。
図13,14は、実施の形態3における焦電センサの配置を示した図である。なお、この図13,14は、実施の形態1における焦電センサの配置を示した図2,1にそれぞれ対応するものである。図13,14を参照して、車両100は、図1,2に示した実施の形態1の構成において、焦電センサ150Fをさらに含み、車両ECU170に代えて車両ECU170Bを含む。
焦電センサ150Fも、焦電センサ150A,150Bと同様に、異物(図示せず)から放出される赤外線を検知することによって、受電部110と送電部230との間の異物を検出するためのセンサである。焦電センサ150Fも、焦電センサ150A,150Bとともに車両最後方の車体下部に設置され、図13に示すように、車両100の左右方向について略中央に配設される。
なお、図14では、焦電センサ150Fの方が焦電センサ150A,150Bよりも車両後方側に設置されているが、必ずしもこのような配置に限定されるものではなく、たとえば焦電センサ150A,150B,150Fを車両左右方向に並設してもよい。
車両ECU170Bは、焦電センサ150A,150B,150Fの検知信号を受ける。そして、車両ECU170Bは、焦電センサ150A,150Bのいずれかから異物の検知信号を受けたとき、異物が検知された旨を利用者に通知する。なお、この通知は、表示によって行なわれてもよいし、音声によって行なわれてもよい。
また、車両ECU170Bは、焦電センサ150A,150B,150Fの検知信号に基づいて以下の処理を実行する。すなわち、車両ECU170Bは、焦電センサ150A,150Bの双方において異物が検知された場合に、焦電センサ150Fでも異物が検知されたときは、受電部110による受電を停止するための制御を実行する。一方、焦電センサ150A,150Bの双方において異物が検知されても、焦電センサ150Fにより異物が検知されないときは、車両ECU170Bは、異物が検知された旨を利用者に通知する。また、焦電センサ150A,150Bのいずれかにおいて異物が検知されたときも、車両ECU170Bは、異物が検知された旨を利用者に通知する。
なお、車両ECU170Bのその他の機能は、実施の形態1における車両ECU170と同じである。なお、送電装置200の構成については、実施の形態1で説明したとおりである。
図15は、実施の形態3における焦電センサ150A,150B,150Fの検知範囲を説明するための図である。なお、この図15は、実施の形態1における検知範囲を示した図3に対応するものであり、車両の後方から車両の下部を見たときの検知範囲を示している。
図15を参照して、点線D1,D2は、それぞれ焦電センサ150A,150Bの検知範囲を示す。点線D3は、焦電センサ150Fの検知範囲を示す。焦電センサ150A,150Bの検知範囲によって領域L1〜L3が特定される。そして、そして、焦電センサ150Fの検知範囲は、領域L1を含む。これにより、領域L1に異物が侵入したことを確実に検知することができる。
車両ECU170Bは、アンプ402,404,405と、コンパレータ406,408,409と、制御部418とを含む。アンプ405は、焦電センサ150Fからの出力信号を増幅する。コンパレータ409は、アンプ405から受ける信号のレベルが所定のしきい値を超えると、制御部418へ出力される信号を活性化する。制御部418は、コンパレータ406,408の出力信号のいずれかが活性化されると、異物が検知された旨を利用者に通知するための所定の処理を実行する。また、制御部418は、コンパレータ406,408の出力信号の双方が活性化され、かつ、コンパレータ409の出力信号が活性化されていないときも、異物が検知された旨を利用者に通知するための処理を実行する。一方、制御部418は、コンパレータ406,408,409の出力信号の全てが活性化されると、受電部110による受電を停止するための所定の処理を実行する。
以上のように、この実施の形態3においては、領域L1を検知範囲とする焦電センサ150Fがさらに設けられるので、領域L2,L3において同時に異物が検知された場合の誤検知を抑制することができる。
なお、特に図示しないが、可動式の焦電センサを用いた実施の形態2においても、領域L1を検知範囲とする焦電センサをさらに設けることによって、同様の誤検知を抑制することができる。
[実施の形態4]
上記の各実施の形態で説明した検知範囲によって送電領域を取り囲むことで、送電領域への異物の侵入を確実に検知することができる。
この実施の形態4における電力伝送システムの構成(電力伝送に関する送電装置および車両の構成)も、実施の形態1と同じである。
図16は、実施の形態4における異物の検知範囲を示した平面図である。図16を参照して、焦電センサ150G〜150Lは、車両100と送電装置200との間の空間に検知範囲L4〜L6を形成するように、車体下部に設置される。具体的には、実施の形態1において焦電センサ150A,150Bにより異物の検知範囲が形成されるのと同様に、焦電センサ150G,150Hにより検知範囲L4が形成される。また、焦電センサ150I,150Jにより検知範囲L5が形成され、焦電センサ150K,150Lにより検知範囲L6が形成される。そして、送電装置200から車両100への電力伝送時に検知範囲L4〜L6が送電領域を取り囲むように、焦電センサ150G〜150Lが車体下部
において受電部110の周囲に設置される。
なお、特に図示しないが、複数の焦電センサによって送電領域の周囲に形成される検知範囲の形状は、図16に示したような三角形に限定されるものではなく、四角形以上の多角形であってもよい。たとえば、8つの焦電センサを受電部110の周囲に配置することによって、送電領域の周囲に四角形の検知領域を形成することができる。
以上のように、この実施の形態4においては、送電装置200から車両100への電力伝送時に送電領域を取り囲むように複数の検知範囲が形成される。したがって、この実施の形態4によれば、送電装置200から車両100への電力伝送時に送電領域への異物の侵入を確実に検知することができる。
[実施の形態5]
この実施の形態5では、上記の実施の形態4において、隣接して配設される焦電センサ(たとえば焦電センサ150G,150I)が可動式の焦電センサ1つで構成される。
この実施の形態5における電力伝送システムの構成(電力伝送に関する送電装置および車両の構成)も、実施の形態1と同じである。
図17は、実施の形態5における異物の検知範囲を示した平面図である。なお、この図17は、実施の形態4において説明した図16に対応するものである。図17を参照して、焦電センサ150M〜150Pは、車両100と送電装置200との間の空間に検知範囲L4〜L6を形成するように、車体下部に設置される。
具体的には、焦電センサ150Mは、焦電センサ150Nとともに領域L4を形成し、さらに焦電センサ150Pとともに領域L5を形成するように、回動可能に構成される。焦電センサ150Nは、焦電センサ150Mとともに領域L4を形成し、さらに焦電センサ150Pとともに領域L6を形成するように、回動可能に構成される。焦電センサ150Pは、焦電センサ150Mとともに領域L5を形成し、さらに焦電センサ150Nとともに領域L6を形成するように、回動可能に構成される。
そして、実施の形態1において焦電センサ150A,150Bにより異物の検知範囲が形成されるのと同様に、焦電センサ150M,150Nにより検知範囲L4が形成される。また、焦電センサ150M,150Pにより検知範囲L5が形成され、焦電センサ150N,150Pにより検知範囲L6が形成される。そして、送電装置200から車両100への電力伝送時に検知範囲L4〜L6が送電領域を取り囲むように、焦電センサ150M〜150Pが車体下部において受電部110の周囲に設置される。
なお、特に図示しないが、この実施の形態5においても、可動式の複数の焦電センサによって送電領域の周囲に形成される検知範囲の形状は、図17に示したような三角形に限定されるものではなく、四角形以上の多角形であってもよい。たとえば、4つの可動式の焦電センサを受電部110の周囲に配置することによって、送電領域の周囲に四角形の検知領域を形成することができる。
以上のように、この実施の形態5によれば、実施の形態4よりも少ない数の焦電センサで、送電領域への異物の侵入を確実に検知することができる。
[実施の形態6]
この実施の形態6では、複数の検知範囲を組合わせることによって、送電装置200から車両100への電力伝送時に送電領域の周囲に多段階の検知領域が形成される。これに
より、異物検知およびそれに応じた処理が多段階に実施される。
この実施の形態6における電力伝送システムの構成(電力伝送に関する送電装置および車両の構成)も、実施の形態1と同じである。
図18は、実施の形態6における異物の検知範囲を示した平面図である。図18を参照して、検知範囲L7,L8は、それぞれ車両100の車体下部に設置された焦電センサ150Q,150R(図示せず)の検知範囲を示す。検知範囲L7,L8は、受電部110直下の領域の周囲に形成され、検知範囲L8の方が検知範囲L7よりも広い。領域A1は、検知範囲L7,L8が重複する領域であり、領域A1の外側に形成される領域A2は、検知範囲L8のみを検知範囲とする領域である。
なお、焦電センサ150Q,150Rは、たとえば受電部110に近接して車体下部に配設される。なお、焦電センサ150Q,150Rを1つの焦電センサで構成し、入光レンズを切替える等して複数の検知範囲L7,L8を形成してもよい。
この実施の形態6では、検知範囲L8において異物が検知され、検知範囲L7では異物が検知されない場合、領域A2に異物が侵入したものと検知される。この場合、異物が検知された旨が利用者に通知される。一方、検知範囲L7,L8の双方において異物が検知された場合、領域A1に異物が侵入したものと検知される。この場合は、送電装置200から車両100への電力伝送が停止される。
図19は、実施の形態6における異物検出回路の構成図である。図19を参照して、この検出回路は、焦電センサ150Q,150Rと、アンプ422,424と、コンパレータ426,428と、制御部430と、表示部432とを含む。
焦電センサ150Q,150Rは、それぞれ検知範囲L7,L8(図18)を有する。アンプ422,424は、それぞれ焦電センサ150Q,150Rからの出力信号を増幅する。コンパレータ426,428は、それぞれアンプ422,424から受ける信号のレベルが所定のしきい値を超えると、制御部430へ出力される信号を活性化する。制御部430は、コンパレータ426,428の出力信号に基づいて、後述の異物検出処理を実行する。なお、この制御部430は、車両ECUによって構成される。表示部432は、制御部430による異物検出の結果を利用者に向けて表示する。
図20は、図19に示した制御部430により実行される異物検出処理の手順を説明するためのフローチャートである。なお、このフローチャートは、車両ECUに予め格納されたプログラムを所定周期で実行することによって実現される。あるいは、一部のステップについては、専用のハードウェア(電子回路)を構築して処理を実現することも可能である。
図20を参照して、車両100の受電部110が送電装置200の送電部230の上方に位置するように車両100の駐車が行なわれると、制御部430は、充電開始要求があったか否かを判定する(ステップS10)。なお、この充電開始要求は、利用者が入力してもよいし、車両100の駐車が完了すると自動的に充電開始要求が発行されるようにしてもよい。充電開始要求がないときは(ステップSS10においてNO)、制御部430は、以降の一連の処理を実行することなくステップS90へ処理を移行する。
ステップS10において充電開始要求があったと判定されると(ステップS10においてYES)、制御部430は、焦電センサ150Q,150Rを起動する(ステップS15)。次いで、制御部430は、図示されない通信手段を用いて送電装置200へ送電開
始指令を送信し、これにより送電装置200から車両100への送電が開始される(ステップS20)。そして、制御部430は、送電中であれば送電を継続させ、送電が停止していれば送電を再開させる(ステップS25)。
次いで、制御部430は、送電装置200から車両100への送電が終了したか否かを判定する(ステップS30)。なお、この送電終了は、利用者による指示であってもよい、蓄電装置130の満充電に伴なうものであってもよい。送電が終了していれば(ステップS30においてYES)、制御部430は、以降の一連の処理を実行することなくステップS95へ処理を移行する。
ステップS30において送電が終了していないと判定されると(ステップS30においてNO)、制御部430は、検知範囲L8(図18)のみで異物が検知されたか否かを判定する(ステップS35)。検知範囲L8のみで異物が検知されたと判定されると(ステップS35においてYES)、制御部430は、利用者に対して警告1(警告度低)を報知する(ステップS40)。すなわち、検知範囲L8のみで異物が検知されたこの段階では、受電部110による受電を停止させることまではせずに、異物が検知された旨が利用者に報知される。
次いで、制御部430は、検知範囲L8のみで異物が検知されたか否かを判定する(ステップS45)。そして、検知範囲L8のみで異物が検知されたと判定されると(ステップS45においてYES)、制御部430は、検知モードを「状態1」に設定する。すなわち、この「状態1」は、領域A2(図18)において異物が検知された状態である。その後、制御部430は、ステップS40へ処理を移行する。
ステップS35またはS45において、検知範囲L8のみでの異物検知ではないと判定されると(ステップS35またはS45においてNO)、制御部430は、検知範囲L7,L8の双方で異物が検知されているか否かを判定する(ステップS55)。検知範囲L7,L8の双方で異物が検知されていないときは(ステップS55においてNO)、制御部430は、検知モードを「状態2」に設定する(ステップS60)。すなわち、この「状態2」は、領域A2から異物が退出したか、あるいは領域A2に異物が留まっている状態(静止状態)である。その後、制御部430は、ステップS25へ処理を移行する。
ステップS55において検知範囲L7,L8の双方で異物が検知されたと判定されると(ステップS55においてYES)、制御部430は、利用者に対して警告2(警告度高)を報知する。そして、制御部430は、図示されない通信手段を用いて送電装置200へ送電停止指令を送信する。これにより、送電装置200から車両100への送電が停止される(ステップS65)。
次いで、制御部430は、検知範囲L7,L8の双方で異物が検知されたか否かを判定する(ステップS70)。検知範囲L7,L8の双方で異物が検知された場合には(ステップS70においてYES)、制御部430は、検知モードを「状態3」に設定する(ステップS75)。すなわち、この「状態3」は、領域A1(図18)において異物が検知された状態である。その後、制御部430は、ステップS65へ処理を移行する。
ステップS70において検知範囲L7,L8の双方で異物が検知されていないときは(ステップS70においてNO)、制御部430は、検知範囲L8のみで異物が検知されたか否かを判定する(ステップS80)。検知範囲L8のみで異物が検知されたと判定されると(ステップS80においてYES)、制御部430は、ステップS50へ処理を移行し、検知モードが「状態1」に設定される。
一方、ステップS80において検知範囲L8のみでの異物検知ではないと判定されると(ステップS80においてNO)、制御部430は、検知モードを「状態4」に設定する。すなわち、この「状態4」は、領域A1に異物が留まっている状態(静止状態)である。その後、制御部430は、ステップS65へ処理を移行する。
このように、この実施の形態6では、検知範囲L8のみで異物が検知された場合には、利用者に対して警告1(警告度低)が報知される(ステップS40)。一方、検知範囲L7,L8の双方で異物が検知されると、利用者に対して警告2(警告度高)が報知されるとともに、送電装置200から車両100への送電が停止される(ステップS65)。
図21は、実施の形態6において異物の侵入および退出を判定するためのフローチャートである。なお、このフローチャートの処理は、図20に示した処理とは別に動作する。図21を参照して、制御部430は、検知モードが未定の状態から状態1に変化したか否かを判定する(ステップS110)。検知モードが状態未定から状態1に変化したと判定されると(ステップS110においてYES)、制御部430は、検知範囲L8に異物が侵入したものと判定する(ステップS115)。
次いで、制御部430は、検知モードが状態1から状態3に変化したか否かを判定する(ステップS120)。検知モードが状態1から状態3に変化したと判定されると(ステップS120においてYES)、制御部430は、検知範囲L7に異物が侵入したものと判定する(ステップS125)。
次いで、制御部430は、検知モードが状態3から状態1に変化したか否かを判定する(ステップS130)。検知モードが状態3から状態1に変化したと判定されると(ステップS130においてYES)、制御部430は、検知範囲L7から異物が退出したものと判定する(ステップS135)。
さらに次いで、制御部430は、検知モードが状態1から状態未定に変化したか否かを判定する(ステップS140)。そして、検知モードが状態1から状態未定に変化したと判定されると(ステップS140においてYES)、制御部430は、検知範囲L8からも異物が退出したものと判定する(ステップS145)。
なお、特に図示しないが、検知範囲L8に異物が侵入したと判定され、予め定められた時間が経過しても検知範囲L8からの異物の退出が確認されない場合には、送電装置200から車両100への電力伝送を停止させてもよい。
以上のように、この実施の形態6においては、検知範囲L7,L8を組合わせることによって、2段階の検知領域が形成される。そして、検知範囲L7,L8が重複する領域A1において異物が検知された場合には、送電装置200から車両100への電力伝送が停止される。検知範囲L7,L8が重複しない領域A2において異物が検知された場合には、電力伝送の停止は行なわずに、異物が検知された旨が利用者に通知される。したがって、この実施の形態6によれば、送電装置200と車両100との間の異物を検出する際の誤検出および検出漏れを抑制するとともに、送電装置200から車両100への電力伝送を不必要に停止するのを抑制することができる。
また、この実施の形態6においては、異物の検知モードが設定され、その変化に応じて異物の侵入/退出が判定される。したがって、この実施の形態6によれば、異物の侵入と退出とを区別して検知することができる。
また、この実施の形態6においては、異物の侵入が検知されると、警報が出力され、さ
らに送電装置200から車両100への電力伝送も停止され得る。また、異物の退出が検知されると、警報出力が停止され、電力伝送が再開される。したがって、この実施の形態6によれば、異物の検知状態に応じて、警報出力/停止、および電力伝送の停止/再開が自動で実施される。
[変形例]
上記の実施の形態6において、図18に示した検知範囲に代えて、図22に示すように、受電部110直下の領域の周囲に段階的な検知範囲L9,L10を形成してもよい。そして、外側の検知範囲L9において異物が検知された場合には、その旨を利用者に報知し、内側の検知範囲L10において異物が検知された場合には、送電装置200から車両100への電力伝送を停止させるようにしてもよい。
なお、各検知範囲L9,L10の生成方法については、実施の形態4や実施の形態5において説明した手法を用いることができる。また、各検知範囲L9,L10の形状は、図22に示したような四角形に限定されるものではなく、三角形や、五角形以上の多角形であってもよい。
また、各検知範囲は、必ずしも繋がっている必要はなく、図23に示すように、たとえば車輪180R,180L等を利用して検知範囲L11〜L14を形成してもよい。なお、図23において、検知範囲L11,L12は外側の検知範囲を構成し、検知範囲L13,L14は内側の検知範囲を構成する。そして、検知範囲L11,L12の少なくとも一方において異物が検知された場合には、異物が検知された旨を利用者に報知し、検知範囲L13,L14の少なくとも一方において異物が検知された場合には、送電装置200から車両100への電力伝送を停止させるようにしてもよい。
[実施の形態7]
実施の形態6では、2段階の異物検知を行なうものとしたが、この実施の形態7では、3段階の異物検知が行なわれる。
この実施の形態7における電力伝送システムの構成(電力伝送に関する送電装置および車両の構成)も、実施の形態1と同じである。
図24は、実施の形態7における異物の検知範囲を示した平面図である。図24を参照して、検知範囲L15,L16,L17は、それぞれ車両100の車体下部に設置された焦電センサ150S,150T,150U(図示せず)の検知範囲を示す。検知範囲L15,L16,L17は、受電部110直下の領域の周囲に形成され、検知範囲L17,L16,L15の順に検知範囲が広い。領域A3は、検知範囲L15,L16,L17が重複する領域である。領域A3の外側に形成される領域A4は、検知範囲L15,L16が重複する領域である。領域A4のさらに外側に形成される領域A5は、検知範囲L17のみを検知範囲とする領域である。
なお、焦電センサ150S,150T,150Uは、たとえば受電部110に近接して車体下部に配設される。なお、焦電センサ150S,150T,150Uを1つの焦電センサで構成し、入光レンズを切替える等して複数の検知範囲L15,L16,L17を形成してもよい。
この実施の形態7では、検知範囲L17において異物が検知され、検知範囲L15,L16では異物が検知されない場合、領域A5に異物が侵入したものと検知される。この場合、異物が検知された旨が利用者に通知される。また、検知範囲L16,L17において異物が検知され、検知範囲L15では異物が検知されない場合、領域A4に異物が侵入し
たものと検知される。この場合は、異物が検知された旨が利用者に通知されるとともに、送電装置200から車両100への伝送電力を低減させる低出力制御が実施される。さらに、検知範囲L15,L16,L17の全てにおいて異物が検知された場合、領域A3に異物が侵入したものと検知される。この場合は、送電装置200から車両100への電力伝送が停止される。
図25は、実施の形態7における異物検出回路の構成図である。図25を参照して、この検出回路は、焦電センサ150S,150T,150Uと、アンプ434,436,438と、コンパレータ440,442,444と、制御部446と、表示部448とを含む。
焦電センサ150S,150T,150Uは、それぞれ検知範囲L15,L16,L17(図24)を有する。アンプ434,436,438は、それぞれ焦電センサ150S,150T,150Uからの出力信号を増幅する。コンパレータ440,442,444は、それぞれアンプ434,436,438から受ける信号のレベルが所定のしきい値を超えると、制御部446へ出力される信号を活性化する。
制御部446は、コンパレータ440,442,444の出力信号に基づいて、後述の異物検出処理を実行する。なお、この制御部446は、車両ECUによって構成される。表示部448は、制御部446による異物検出の結果を利用者に向けて表示する。
図26,27は、図25に示した制御部446により実行される異物検出処理の手順を説明するためのフローチャートである。なお、このフローチャートも、車両ECUに予め格納されたプログラムを所定周期で実行することによって実現される。あるいは、一部のステップについては、専用のハードウェア(電子回路)を構築して処理を実現することも可能である。
図26を参照して、このフローチャートは、図20に示したフローチャートにおいて、ステップS35,S45,S55に代えてステップS37,S47,S57を含み、ステップS65以降の処理に代えてステップS67以降の処理を含む。
すなわち、ステップS30において送電が終了していないと判定されると(ステップS30においてNO)、制御部446は、検知範囲L17(図24)のみで異物が検知されたか否かを判定する(ステップS37)。検知範囲L17のみで異物が検知されたと判定されると(ステップS37においてYES)、ステップS40へ処理が移行され、利用者に対して警告1(警告度低)が報知される。すなわち、検知範囲L17のみで異物が検知されたこの段階では、異物が検知された旨が利用者に報知される。
次いで、制御部446は、検知範囲L17のみで異物が検知されたか否かを判定する(ステップS47)。そして、検知範囲L17のみで異物が検知されたと判定されると(ステップS47においてYES)、ステップS50へ処理が移行され、検知モードが「状態1」に設定される。この「状態1」は、領域A5(図24)において異物が検知された状態である。
ステップS37またはS47において、検知範囲L17のみでの異物検知ではないと判定されると(ステップS37またはS47においてNO)、制御部446は、検知範囲L16,L17において異物が検知されているか否かを判定する(ステップS57)。なお、ここでは、検知範囲L16,L17の双方で異物が検知され、検知範囲L15では異物が検知されていない状態であるか否かが判定される。そして、検知範囲L16,L17において異物が検知されていないときは(ステップS57においてNO)、ステップS60
へ処理が移行され、検知モードが「状態2」に設定される。なお、この「状態2」は、領域A5から領域A5の外側へ異物が退出したか、または領域A5に異物が留まっている状態(静止状態)である。
ステップS57において検知範囲L16,L17において異物が検知されたと判定されると(ステップS57においてYES)、制御部446は、利用者に対して警告2(警告度中)を報知する。さらに、制御部446は、送電装置200の出力電力を低減させるための低出力指令を図示されない通信手段を用いて送電装置へ送信し、これにより低出力制御が実施される(ステップS67)。
次いで、制御部446は、検知範囲L16,L17において異物が検知されたか否かを判定する(ステップS72)。なお、ここでも、検知範囲L16,L17の双方で異物が検知され、検知範囲L15では異物が検知されていない状態であるか否かが判定される。そして、検知範囲L16,L17において異物が検知されたと判定されると(ステップS72においてYES)、制御部446は、検知モードを「状態3」に設定する(ステップS75)。すなわち、この「状態3」は、領域A4(図24)において異物が検知された状態である。その後、制御部446は、ステップS67へ処理を移行する。
ステップS72において検知範囲L16,L17で異物が検知されていないときは(ステップS72においてNO)、制御部446は、検知範囲L17のみで異物が検知されたか否かを判定する(ステップS82)。検知範囲L17のみで異物が検知されたと判定されると(ステップS82においてYES)、制御部446は、ステップS50へ処理を移行し、検知モードが「状態1」に設定される。
一方、ステップS82において検知範囲L17のみでの異物検知ではないと判定されると(ステップS82においてNO)、制御部446は、図27に示されるステップS210へ処理を移行する。
図27を参照して、制御部446は、検知範囲L15,L16,L17の全てで異物が検知されたか否かを判定する(ステップS210)。検知範囲L15,L16,L17の全てで異物が検知されていないときは(ステップS210においてNO)、制御部446は、検知モードを「状態4」に設定する(ステップS60)。この「状態4」は、領域A4(図24)に異物が留まっている状態(静止状態)である。その後、制御部446は、図26に示したステップS67へ処理を移行する。
ステップS210において検知範囲L15,L16,L17の全てで異物が検知されたと判定されると(ステップS210においてYES)、制御部446は、利用者に対して警告3(警告度高)を報知する。さらに、制御部446は、図示されない通信手段を用いて送電装置200へ送電停止指令を送信する。これにより、送電装置200から車両100への送電が停止される(ステップS220)。
次いで、制御部446は、検知範囲L15,L16,L17の全てで異物が検知されたか否かを判定する(ステップS225)。検知範囲L15,L16,L17の全てで異物が検知されていれば(ステップS225においてYES)、制御部446は、検知モードを「状態5」に設定する(ステップS230)。すなわち、この「状態5」は、領域A3(図24)において異物が検知された状態である。その後、制御部446は、ステップS220へ処理を移行する。
ステップS225において検知範囲L15,L16,L17の全てで異物が検知されていないと判定されると(ステップS225においてNO)、制御部446は、検知範囲L
16,L17において異物が検知されているか否かを判定する(ステップS235)。なお、ここでも、検知範囲L16,L17の双方で異物が検知され、検知範囲L15では異物が検知されていない状態であるか否かが判定される。
検知範囲L16,L17において異物が検知されていないときは(ステップS235においてNO)、制御部446は、検知モードを「状態6」に設定する(ステップS240)。この「状態6」は、領域A3(図24)に異物が留まった状態(静止状態)である。その後、制御部446は、ステップS220へ処理を移行する。
一方、検知範囲L16,L17において異物が検知されていないときは(ステップS235においてYES)、制御部446は、図26に示したステップS75へ処理を移動し、検知モードが「状態3」に設定される。
このように、この実施の形態7では、検知範囲L17のみで異物が検知された場合には、利用者に対して警告1(警告度低)が報知される(ステップS40)。また、検知範囲L16,L17において異物が検知される場合には、利用者に対して警告2(警告度中)が報知されるとともに、送電装置200の出力電力を低減させる低出力制御が実施される(ステップS67)。さらに、検知範囲L15,L16,L17の全てで異物が検知される場合には、利用者に対して警告3(警告度高)が報知されるとともに、送電装置200から車両100への送電が停止される(ステップS220)。
図28は、実施の形態7において異物の侵入および退出を判定するためのフローチャートである。なお、このフローチャートの処理は、図26,27に示した処理とは別に動作する。図28を参照して、制御部446は、検知モードが未定から状態1に変化したか否かを判定する(ステップS305)。検知モードが状態未定から状態1に変化したと判定されると(ステップS305においてYES)、制御部446は、検知範囲L17に異物が侵入したものと判定する(ステップS310)。
次いで、制御部446は、検知モードが状態1から状態3に変化したか否かを判定する(ステップS315)。検知モードが状態1から状態3に変化したと判定されると(ステップS315においてYES)、制御部446は、検知範囲L16に異物が侵入したものと判定する(ステップS320)。
次いで、制御部446は、検知モードが状態3から状態5に変化したか否かを判定する(ステップS325)。検知モードが状態3から状態5に変化したと判定されると(ステップS325においてYES)、制御部446は、検知範囲L15に異物が侵入したものと判定する(ステップS330)。
次いで、制御部446は、検知モードが状態5から状態3に変化したか否かを判定する(ステップS335)。検知モードが状態5から状態3に変化したと判定されると(ステップS335においてYES)、制御部446は、検知範囲L15から検知範囲L16へ異物が退出したものと判定する(ステップS340)。
次いで、制御部446は、検知モードが状態3から状態1に変化したか否かを判定する(ステップS345)。検知モードが状態3から状態1に変化したと判定されると(ステップS345においてYES)、制御部446は、検知範囲L16から検知範囲L17へ異物が退出したものと判定する(ステップS350)。
さらに次いで、制御部446は、検知モードが状態1から状態未定に変化したか否かを判定する(ステップS355)。そして、検知モードが状態1から状態未定に変化したと
判定されると(ステップS355においてYES)、制御部446は、検知範囲L17からも異物が退出したものと判定する(ステップS360)。
なお、特に図示しないが、検知範囲L17やL16に異物が侵入したと判定され、予め定められた時間が経過しても検知範囲L17やL16からの異物の退出が確認されない場合には、送電装置200から車両100への電力伝送を停止させてもよい。
以上のように、この実施の形態7においては、検知範囲L15,L16,L17を組合わせることによって、3段階の検知領域が形成される。検知範囲が重複しない領域A5において異物が検知された場合には、異物が検知された旨のみが利用者に通知される。検知範囲L16,L17が重複する領域A4において異物が検知された場合には、送電装置200から車両100への伝送電力を低減させる低出力制御が実施される。検知範囲L15,L16,L17が重複する領域A3において異物が検知された場合には、送電装置200から車両100への電力伝送が停止される。したがって、この実施の形態7によれば、異物の検出状態に応じて、低出力制御を含むより詳細な電力制御を実現できる。
また、この実施の形態7においても、異物の侵入と退出とを区別して検知することができる。さらに、異物の検知状態に応じて、警報出力/停止、および電力伝送の停止/再開を自動で実施可能である。
[実施の形態8]
この実施の形態8では、焦電センサが可動式のものによって構成される。そして、焦電センサの作動に伴なって、焦電センサの故障診断、および入光部(レンズ)の清掃が実施される。
図29は、実施の形態8における異物検出装置の構成を示した図である。なお、ここでは、上記の実施の形態1における車両100に搭載される各焦電センサにこの異物検出装置が適用される場合が代表的に示されるが、この異物検出装置は、他の実施の形態についても適用され得るし、上記の各実施の形態とは別に単独で使用される場合にも適用され得る。
図29を参照して、異物検出装置は、焦電センサ150と、ヒータ506と、清掃部508とを含む。焦電センサ150は、車両100の車体下部に設けられ、焦電センサ150の使用時には点線で示されるようにセンサ部が露出するように構成されている。焦電センサ150は、焦電素子20と、入光部502と、駆動部504とを含む。入光部502は、赤外線を透過する光学レンズである。焦電素子20は、入光部502を介して外部から赤外線を受ける。駆動部504は、焦電センサ150の使用時には焦電センサ150を露出させ(点線)、焦電センサ150の非使用時には焦電センサ150を格納するように(実線)、焦電センサ150を駆動する。駆動部504は、たとえばモータによって構成される。
ヒータ506は、焦電センサ150の格納時に入光部502に対向する位置において車両100に設置され、車両ECU170からの指令に従って通電される。清掃部508は、焦電センサ150の入光部502を清掃するためのものである。清掃部508は、焦電センサ150が作動するときに、焦電センサ150の動作を阻害することなく入光部502を清掃可能な部材によって構成され、たとえば、焦電センサ150の動作時に入光部502に接触するように配置されたゴム製部材等によって構成される。
車両ECU170は、送電装置200から車両100への電力伝送時に、異物検出装置を用いた異物検知を行なう。また、車両ECU170は、異物検出装置を用いた異物検知
時における焦電センサ150の作動を制御する。さらに、車両ECU170は、ヒータ506を用いた焦電センサ150の故障診断を実施する。なお、車両ECU170のその他の構成は、実施の形態1と同じである。
この異物検出装置においては、可動式の焦電センサ150が作動する際に、焦電センサ150の故障診断および入光部502の清掃が実施される。すなわち、焦電センサ150が格納された状態でヒータ506が通電され、その後、焦電センサ150を露出させたときの焦電センサ150の出力変化によって故障診断が実施される。また、焦電センサ150を格納状態と露出状態との間で作動させるときに、清掃部508によって入光部502が清掃される。
図30は、実施の形態8における焦電センサ150の故障診断の処理手順を説明するためのフローチャートである。図30を参照して、送電装置200から車両100への送電が要求されると、車両ECU170は、焦電センサ150を起動する(ステップS410)。焦電センサ150が起動されると、車両ECU170は、ヒータ506の通電を開始する(ステップS420)。
ヒータ506の通電が所定時間行なわれると(ステップS430においてYES)、車両ECU170は、焦電センサ150を露出させる(ステップS440)。そして、車両ECU170は、焦電センサ150の露出動作に伴なって、焦電センサ150の出力信号が検出されたか否かを判定する(ステップS450)。なお、焦電センサ150は、焦電素子20に入力される赤外線量が変化したときに信号を出力する。
焦電センサ150の出力信号が検出された場合には(ステップS450においてYES)、車両ECU170は、焦電センサ150は故障していないものと判断する(ステップS460)。一方、ステップS450において焦電センサ150の出力信号が検出されないときは(ステップS450においてNO)、車両ECU170は、焦電センサ150が故障しているものと判断する(ステップS470)。その後、車両ECU170は、ヒータ506の通電を停止する(ステップS480)。
以上のように、この実施の形態8においては、焦電センサ150が可動式のものによって構成され、その作動に伴なって、焦電センサ150の故障診断、および入光部502(レンズ)の清掃が実施される。したがって、この実施の形態8によれば、異物の検知精度の低下を抑制することができる。
また、この実施の形態8においては、焦電センサ150の使用時には焦電センサ150を露出させ、焦電センサ150の非使用時には焦電センサ150が格納される。したがって、この実施の形態8によれば、焦電センサ150の入光部502(レンズ)が破損したり汚れたりするのを抑制することができる。
なお、上記において、清掃部508は、必ずしも必須の構成ではない。しかしながら、焦電センサ150は、車体下部に設けられるために汚れやすいので、清掃部508を設けることが好ましい。
[実施の形態9]
上記の実施の形態8では、焦電センサ150の故障診断のためにヒータ506が設けられたが、この実施の形態9では、ヒータ506を必要としない構成が示される。
図31は、実施の形態9における異物検出装置の構成を示した図である。図31を参照して、この異物検出装置は、図29に示した実施の形態8における異物検出装置の構成に
おいて、ヒータ506に代えて、放熱板510と、排気管512と、伝熱部材514とを含む。
放熱板510は、焦電センサ150の格納時に入光部502に対向する位置において車両100に設置される。伝熱部材514は、金属等の高伝熱性部材によって構成され、排気管512の熱を放熱板510に伝える。排気管512は、図示されないエンジンの排気から熱を受ける。
車両ECU170は、送電装置200を備えた駐車スペースに車両100が駐車され、エンジンが停止すると、異物検出装置を用いた異物検知を開始する。また、車両ECU170は、異物検知時における焦電センサ150の作動を制御する。その際、車両ECU170は、焦電センサ150の故障診断を実施する。なお、車両ECU170のその他の構成は、実施の形態1と同じである。
この異物検出装置においては、送電装置200を備えた駐車スペースに車両100が駐車され、エンジンが停止すると、異物検出装置を用いた異物検知に先立って異物検出装置の故障診断が実施される。ここで、上記の実施の形態8では、故障診断用に別途設けられたヒータの熱を用いて診断が実施されるところ、実施の形態9では、エンジン停止後の排気管の余熱がヒータの代わりに用いられる。これにより、ヒータを設けることなく、異物検出装置の異常診断を実施することができる。
図32は、実施の形態9における焦電センサ150の故障診断の処理手順を説明するためのフローチャートである。図32を参照して、車両ECU170は、車両100のエンジンの動作状態が運転から停止へ移行したか否かを判定する(ステップS510)。エンジンの動作状態が運転から停止へ移行していないと判定されると(ステップS510においてNO)、車両ECU170は、その後の一連の処理を実行することなくステップS595へ処理を移行する。
ステップS510においてエンジンが停止したものと判定されると(ステップS510においてYES)、車両ECU170は、焦電センサ150を起動する(ステップS520)。そして、所定時間の経過後(ステップS530においてYES)、車両ECU170は、焦電センサ150を露出させる(ステップS540)。なお、焦電センサ150が格納されている間に、焦電センサ150は、放熱板510から熱を受けている。
次いで、車両ECU170は、焦電センサ150の露出動作に伴なって、焦電センサ150の出力信号が検出されたか否かを判定する(ステップS550)。
焦電センサ150の出力信号が検出された場合には(ステップS550においてYES)、車両ECU170は、焦電センサ150は故障していないと判断する(ステップS560)。次いで、車両ECU170は、送電装置200からの車両100の充電が要求されたか否かを判定する(ステップS570)。
車両100の充電が要求されている場合には(ステップS570においてYES)、車両ECU170は、図示しない通信装置によって車両100へ送電開始指令を送信する。これにより、送電装置200から車両100への送電が開始される(ステップS580)。車両100への送電が要求されていない場合には(ステップS570においてNO)、車両ECU170は、焦電センサ150を格納させる(ステップS585)。
一方、ステップS550において焦電センサ150の出力信号が検出されないときは(ステップS550においてNO)、車両ECU170は、焦電センサ150が故障しているものと判断する(ステップS590)。その後、車両ECU170は、ステップS59
5へ処理を移行する。
以上のように、この実施の形態9によれば、異物検出装置の故障診断用にヒータを別途備えることなく、実施の形態8と同様の機能および効果を実現することができる。
[実施の形態10]
上記の実施の形態8,9では、焦電センサが作動することによってセンサ部の格納/露出を切替えるものとしたが、この実施の形態10では、実施の形態8と同様の故障診断を実施可能な他の構成が示される。
図33は、実施の形態10における異物検出装置の構成を示した図である。図33を参照して、異物検出装置は、焦電センサ150と、スライド板516と、駆動部518とを含む。
焦電センサ150は、車両100の車体下部に設けられ、車体下部に侵入した異物を検出する。この焦電センサ150は、センサ部の格納/露出のためには作動しない。一方、スライド板516は、駆動部518によって作動可能に構成され、スライド板516を作動することによって焦電センサ150を露出させることができる。ここで、スライド板516にはヒータが設けられ(図示せず)、車両ECU170からの指令に従ってヒータに通電される。たとえば、焦電センサ150と対向するスライド板516の面に電熱線等を設けることによって、スライド板516にヒータ機能を持たせることができる。
駆動部518は、焦電センサ150の使用時には焦電センサ150を露出させ(点線)、かつ、焦電センサ150の非使用時には焦電センサ150を格納するように(実線)、スライド板516を駆動する。
車両ECU170は、異物検出装置を用いた異物検知時にスライド板516の作動を制御する。また、車両ECU170は、スライド板516のヒータを用いた焦電センサ150の故障診断を実施する。なお、車両ECU170のその他の構成は、実施の形態1と同じである。
図34は、実施の形態10における焦電センサ150の故障診断の処理手順を説明するためのフローチャートである。図34を参照して、焦電センサ150が起動されると(ステップS610)、車両ECU170は、スライド板516を閉じた状態でスライド板516のヒータの通電を開始する(ステップS620)。
スライド板516のヒータの通電が所定時間行なわれると(ステップS630においてYES)、車両ECU170は、スライド板516を開状態とするように駆動部518を制御する(ステップS640)。そして、車両ECU170は、焦電センサ150の出力信号が検出されたか否かを判定する(ステップS650)。
焦電センサ150の出力信号が検出された場合には(ステップS650においてYES)、車両ECU170は、焦電センサ150は故障していないものと判断する(ステップS660)。その後、車両ECU170は、スライド板516のヒータの通電を停止する(ステップS690)。
一方、ステップS650において焦電センサ150の出力信号が検出されないときは(ステップS650においてNO)、車両ECU170は、焦電センサ150が故障しているものと判断する(ステップS670)。その後、車両ECU170は、スライド板516を閉状態とするように駆動部518を制御し(ステップS680)、その後ステップS
690へ処理を移行する。
以上のように、この実施の形態10によれば、スライド板516を可動部としたので、焦電センサ150自体を作動させる実施の形態8に比べて動作の信頼性を高めることができる。
なお、上記においては、焦電センサ150が車両100に固設されるものとしたが、焦電センサ150、スライド板516および駆動部518を一体的に構成して可動としてもよい。このような構成により、この実施の形態10における異物検出装置を実施の形態2のような可動式のものとして使用することも可能である。
[実施の形態11]
実施の形態10では、可動部のスライド板516にヒータ機能を設けるものとしたが、この実施の形態11では、スライド板にヒータを設けない構成が示される。
図35は、実施の形態11における異物検出装置の構成を示した図である。図35を参照して、この異物検出装置は、焦電センサ150と、スライド板517と、駆動部518,524と、ヒータ520と、反射板522とを含む。
焦電センサ150は、車両100の車体下部に設けられ、車体下部に侵入した異物を反射板522を介して検出する。反射板522は、駆動部524によって角度を変更可能に構成される。焦電センサ150により異物を検知する検知モードのとき、反射板522は、車体下部から入射する赤外線を焦電センサ150へ反射する角度に駆動される(点線)。一方、ヒータ520を用いた診断モードのときは、反射板522は、ヒータ520から出力される赤外線を焦電センサ150へ反射する角度に駆動される(実線)。
ヒータ520は、車両100に設置され、車両ECU170からの指令に従って通電される。スライド板517は、駆動部518によって作動可能に構成され、スライド板517を作動することによって焦電センサ150を露出させることができる。
図36は、実施の形態11における焦電センサ150の故障診断の処理手順を説明するためのフローチャートである。図36を参照して、焦電センサ150が起動されると(ステップS710)、車両ECU170は、反射板522が検知側(図35の点線)となるように駆動部524を制御する(ステップS720)。次いで、車両ECU170は、ヒータ520の通電を開始する(ステップS730)。
ヒータ520の通電が所定時間行なわれると(ステップS740においてYES)、車両ECU170は、反射板522がヒータ側(図35の実線)となるように駆動部524を制御する(ステップS750)。そして、車両ECU170は、焦電センサ150の出力信号が検出されたか否かを判定する(ステップS760)。
焦電センサ150の出力信号が検出された場合には(ステップS760においてYES)、車両ECU170は、焦電センサ150は故障していないものと判断する(ステップS770)。その後、車両ECU170は、ヒータ520の通電を停止し(ステップS780)、さらに、スライド板517を開状態とするように駆動部518を制御する(ステップS790)。さらに次いで、車両ECU170は、反射板522が検知側となるように駆動部524を制御する(ステップS800)。
一方、ステップS760において焦電センサ150の出力信号が検出されないときは(ステップS760においてNO)、車両ECU170は、焦電センサ150が故障してい
るものと判断する(ステップS810)。そして、車両ECU170は、ヒータ520の通電を停止し(ステップS820)、その後ステップS830へ処理を移行する。
以上のように、この実施の形態11によれば、スライド板517にヒータを設ける必要がないので、実施の形態10よりもさらに動作信頼性を高めることができる。
なお、特に図示しないが、ヒータ520に代えて、エンジンの排気管等の熱源に熱的に接続された放射板を設けてもよい。
なお、上記の各実施の形態においては、各焦電センサは車両100に設けられるものとしたが、各焦電センサは送電装置200側(たとえば、送電装置200を備えた駐車スペース)に設けてもよい。あるいは、車両100側と送電装置200側との双方に焦電センサを設けてもよい。たとえば、実施の形態3における焦電センサ150Fを送電装置200側に設けてもよい。
また、上記の各実施の形態では、送電装置200の送電部230と車両100の受電部110とを電磁界によって共振(共鳴)させることで、送電部230から受電部110へ非接触で電力が伝送されるものとしたが、電磁誘導により送電部230から受電部110へ非接触で電力を伝送してもよい。なお、送電部230と受電部110との間で電磁誘導により電力が伝送される場合には、送電部230と受電部110との結合係数κは、1.0に近い値となる。
また、上記の各実施の形態では、送電装置200から非接触で受電する受電装置が車両100である場合について説明したが、この発明の適用範囲は、必ずしも受電装置が車両に限定されるものではなく、車両以外の受電装置にも適用可能である。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。