JP5708059B2 - インクセットおよび記録物 - Google Patents

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Description

本発明は、インクセットおよび記録物に関するものである。
従来から、光沢感のある外観を呈する装飾品の製造方法として、金属めっきや、金属箔を用いた箔押し印刷、金属箔を用いた熱転写等が用いられてきた。
しかし、これらの方法では、微細なパターンを形成することや、曲面部への適用が困難であるといった問題があった。
他方、顔料または染料を含む組成物による記録媒体への記録方法として、インクジェット法による記録方法が用いられている。インクジェット法では、微細なパターンの形成や、曲面部への記録にも好適に適用できるという点で優れている。また、近年、インクジェット法において、耐擦性、耐水性、耐溶剤性等を特に優れたものとするため等に、紫外線を照射すると硬化する組成物(紫外線硬化型インクジェット用インク)が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、紫外線硬化型インクジェット用インクでは、顔料や染料の代わりに、金属粉末を適用しようとした場合、当該金属が本来有している光沢感(高い輝度、明度)等の特性を十分に発揮させることができないという問題点があり、また、金属粉末を用いたインクを付与した部分でのコントラスト比を十分に高めることができなかった。
特開2009−57548号公報
本発明の目的は、光沢感、コントラスト比に優れたパターン(印刷部)の形成に好適に用いることのできるインクセットを提供すること、また、光沢感、コントラスト比に優れたパターンを有する記録物を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のインクセットは、インクジェット方式により吐出される紫外線硬化型インクジェット用インクを複数種備えるインクセットであって、
前記紫外線硬化型インクジェット用インクとして、鱗片状の金属粉末を含む第1のインクと、それ単独で無彩色の印刷部の形成に用いることのできる第2のインクとを備えることを特徴とする。
これにより、光沢感、コントラスト比に優れたパターン(印刷部)の形成に好適に用いることのできるインクセットを提供することができる。
本発明のインクセットでは、前記第2のインクとして、無彩色の顔料としての黒色顔料を含むインクを備えることが好ましい。
これにより、当該第2のインクを用いて形成される印刷部の明度、輝度を特に低いものとすることができ、その結果、インクセット全体として、コントラスト比の高い印刷部をより好適に形成することができる。
本発明のインクセットでは、前記黒色顔料は、カーボンブラックで構成されたものであることが好ましい。
これにより、当該第2のインクを用いて形成される印刷部の明度、輝度をさらに低いものとすることができ、その結果、インクセット全体として、コントラスト比の高い印刷部をさらに好適に形成することができる。
本発明のインクセットでは、前記第2のインクとして、無彩色の顔料としての白色顔料を含むインクを備えることが好ましい。
これにより、コントラスト比の高い印刷部をより好適に形成することができる。
本発明のインクセットでは、前記白色顔料は、酸化チタンで構成されたものであることが好ましい。
これにより、コントラスト比の高い印刷部をさらに好適に形成することができる。
本発明のインクセットでは、前記第1のインクとして、Fe−Si−Al合金で構成された前記金属粉末を含むインクを備えることが好ましい。
これにより、第1のインクを用いて形成される印刷部の明度、輝度を特に高いものとすることができ、その結果、インクセット全体として、コントラスト比の高い印刷部をより好適に形成することができる。また、形成される印刷部の耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、第1のインクの保存安定性、吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
本発明のインクセットでは、前記Fe−Si−Al合金は、Feを主成分とし、8.2wt%以上11.2wt%以下のSi、および、4.0wt%以上7.0wt%以下のAlを含むものであることが好ましい。
これにより、第1のインクを用いて形成される印刷部の明度、輝度をさらに高いものとすることができ、その結果、インクセット全体として、コントラスト比の高い印刷部をさらに好適に形成することができる。また、形成される印刷部の耐擦性をさらに優れたものとすることができる。また、第1のインクの保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。
本発明のインクセットでは、前記Fe−Si−Al合金は、Fe、SiおよびAl以外の成分の含有率の和が、2.0wt%以下のものであることが好ましい。
これにより、第1のインクを用いて形成される印刷部の明度、輝度を特にさらにものとすることができ、その結果、インクセット全体として、コントラスト比の高い印刷部をさらに好適に形成することができる。また、形成される印刷部の耐擦性をさらに優れたものとすることができる。また、第1のインクの保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。
本発明のインクセットでは、前記第1のインクとして、Alで構成された前記金属粉末を含むインクを備えることが好ましい。
これにより、第1のインクを用いて形成される印刷部の明度、輝度を非常に高いものとすることができ、その結果、インクセット全体として、コントラスト比の高い印刷部をより好適に形成することができる。
本発明のインクセットでは、前記金属粉末は、水アトマイズ法により製造されたものを、鱗片化することにより得られたものであることが好ましい。
これにより、第1のインクを用いて形成される印刷部の明度、輝度をさらに高いものとすることができ、その結果、インクセット全体として、コントラスト比の高い印刷部をさらに好適に形成することができる。また、形成される印刷部の耐擦性をさらに優れたものとすることができる。また、第1のインクの保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。
本発明のインクセットでは、前記金属粉末の平均粒径は、500nm以上2.0μm以下であることが好ましい。
これにより、第1のインクを用いて形成される印刷部の明度、輝度をさらに高いものとすることができ、その結果、インクセット全体として、コントラスト比の高い印刷部をさらに好適に形成することができる。また、形成される印刷部の耐擦性をさらに優れたものとすることができる。また、第1のインクの保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。
本発明のインクセットでは、前記第1のインクは、紫外線の照射により重合する重合性化合物として、フェノキシエチルアクリレートを含むものであることが好ましい。
これにより、第1のインクの保存安定性を優れたものとしつつ、インクジェット法による吐出後の第1のインクの反応性を特に優れたものとし、記録物の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、形成されるパターンの耐擦性等を特に優れたものとすることができる。
本発明のインクセットでは、前記第1のインクは、前記重合性化合物として、前記フェノキシエチルアクリレートに加え、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、および、4−ヒドロキシブチルアクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種を含むものであることが好ましい。
これにより、第1のインクの保存安定性を特に優れたものとしつつ、インクジェット法による吐出後の第1のインクの反応性を特に優れたものとし、記録物の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、形成されるパターンの耐擦性等をさらに優れたものとすることができる。
本発明のインクセットでは、前記第1のインクは、紫外線の照射により重合する重合性化合物として、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレートおよび/またはアミノアクリレートを含むものであることが好ましい。
これにより、第1のインクの保存安定性をより優れたものとしつつ、形成されるパターンの耐擦性等をさらに優れたものとすることができる。
本発明の記録物は、鱗片状の金属粉末を含む紫外線硬化型インクジェット用インクとしての第1のインク、および、それ単独で無彩色の印刷部の形成に用いることのできる紫外線硬化型インクジェット用インクとしての第2のインクを、インクジェット方式により記録媒体上に付与し、紫外線を照射することにより製造されたこと特徴とする。
これにより、光沢感、コントラスト比に優れたパターンを有する記録物を提供することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[インクセット]
ところで、従来から、光沢感のある外観を呈する装飾品の製造方法として、金属めっきや、金属箔を用いた箔押し印刷、金属箔を用いた熱転写等が用いられてきた。
しかし、これらの方法では、微細なパターンを形成することや、曲面部への適用が困難であるといった問題があった。また、箔押し印刷では、オンデマンド性が低く、多品種生産への対応が困難であるという問題があった。
他方、顔料または染料を含む組成物による記録媒体への記録方法として、インクジェット法による記録方法が用いられている。インクジェット法では、微細なパターンの形成や、曲面部への記録にも好適に適用できるという点で優れている。また、近年、インクジェット法において、耐擦性、耐水性、耐溶剤性等を特に優れたものとするため等に、紫外線を照射すると硬化する組成物(紫外線硬化型インクジェット用インク)が用いられている。
しかしながら、紫外線硬化型インクジェット用インクでは、顔料や染料の代わりに、金属粉末を適用しようとした場合、当該金属が本来有している光沢感(高い輝度、明度)等の特性を十分に発揮させることができないという問題点があり、また、金属粉末を用いたインクを付与した部分でのコントラスト比を十分に高めることができなかった。
そこで、発明者は、上記のような問題を解決する目的で鋭意研究を行った結果、本発明に至った。すなわち、本発明のインクセットは、インクジェット方式により吐出される紫外線硬化型インクジェット用インク(インク)を複数種備えるものであって、紫外線硬化型インクジェット用インクとして、鱗片状の金属粉末を含む第1のインクと、それ単独で無彩色の印刷部の形成に用いることのできる第2のインクとを備えるものである。
このように、鱗片状の金属粉末を含む紫外線硬化型インクジェット用インクとしての第1のインクとともに、それ単独で無彩色の印刷部の形成に用いることのできる第2のインクを備えることにより、光沢感、コントラスト比に優れたパターン(印刷部)を好適に形成することができる。
《第1のインク》
本発明のインクセットを構成する第1のインクは、インクジェット方式により吐出されるものであり、鱗片状の金属粉末と、紫外線の照射により重合する重合性化合物とを含むものである。
<金属粉末>
上述したように、本発明のインクセットを構成する第1のインクは、鱗片状の金属粉末を含むものである。
金属粉末が鱗片形状を有するものであることにより、インクジェット法により第1のインクが付与される記録媒体上で、当該金属粉末の主面が記録媒体の表面形状に沿うように、金属粉末を配置することができる。その結果、金属粉末を構成する金属材料が本来有している光沢感等を、得られる記録物においても十分に発揮させることができる。これに対し、金属粉末が鱗片状以外の形状である場合には、金属粉末は、記録媒体上で、入射した光を乱反射してしまうこととなり、記録物の光沢感を十分に優れたものとすることができない。
本発明において、鱗片状とは、平板状、湾曲板状等のように、所定の角度から観察した際(平面視した際)の面積が、当該観察方向と直交する角度から観察した際の面積よりも大きい形状のことをいい、特に、投影面積が最大となる方向から観察した際(平面視した際)の面積S[μm]と、当該観察方向と直交する方向のうち観察した際の面積が最大となる方向から観察した際の面積S[μm]に対する比率(S/S)が、好ましくは2以上であり、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは8以上である。この値としては、例えば、任意の10個の粒子について観察を行い、これらの粒子についての算出される値の平均値を採用することができる。
金属粉末は、金属材料を含む材料で構成されたものであればよいが、Fe−Si−Al合金で構成されたものであるのが好ましい。これにより、第1のインクを用いて形成される印刷部の明度、輝度を特に高いものとすることができ、その結果、インクセット全体として、コントラスト比の高い印刷部をより好適に形成することができる。また、形成される印刷部の耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、第1のインクの保存安定性、吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
金属粉末がFe−Si−Al合金で構成されたものである場合、当該Fe−Si−Al合金は、FeとSiとAlとを含む組成を有するものであればよいが、Feを主成分とし、8.2wt%以上11.2wt%以下のSi、および、4.0wt%以上7.0wt%以下のAlを含むものであるのが好ましい。これにより、第1のインクを用いて形成される印刷部の明度、輝度をさらに高いものとすることができ、その結果、インクセット全体として、コントラスト比の高い印刷部をさらに好適に形成することができる。また、形成される印刷部の耐擦性をさらに優れたものとすることができる。また、第1のインクの保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。
上記のように、Fe−Si−Al合金中において、Feは、主成分(合金の構成元素中最大の含有率を有するもの)であるのが好ましいが、特に、Fe−Si−Al合金中におけるFeの含有率は、80.0wt%以上87.8wt%以下であるのが好ましく、81.3wt%以上86.8wt%以下であるのがより好ましく、82.5wt%以上85.8wt%以下であるのがさらに好ましい。これにより、上述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
また、上記のように、Fe−Si−Al合金中におけるSiの含有率は、8.2wt%以上11.2wt%以下であるのが好ましいが、8.7wt%以上10.7wt%以下であるのがより好ましく、9.2wt%以上10.2wt%以下であるのがさらに好ましい。これにより、上述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
また、上記のように、Fe−Si−Al合金中におけるAlの含有率は、4.0wt%以上7.0wt%以下であるのが好ましいが、4.5wt%以上6.5wt%以下であるのがより好ましく5.0wt%以上6.0wt%以下であるのがさらに好ましい。これにより、上述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
Fe−Si−Al合金は、Fe、SiおよびAl以外の成分を含むものであってもよいが、Fe、SiおよびAl以外の成分の含有率の和が、2.0wt%以下のものであるのが好ましく、1.0wt%以下のものであるのがより好ましく、0.6wt%以下のものであるのがさらに好ましい。これにより、第1のインクを用いて形成される印刷部の明度、輝度を特にさらにものとすることができ、その結果、インクセット全体として、コントラスト比の高い印刷部をさらに好適に形成することができる。また、形成される印刷部の耐擦性をさらに優れたものとすることができる。また、第1のインクの保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。
また、金属粉末は、Alで構成されたものであってもよい。これにより、第1のインクを用いて形成される印刷部の明度、輝度を非常に高いものとすることができ、その結果、インクセット全体として、コントラスト比の高い印刷部をより好適に形成することができる
また、金属粉末は、いかなる方法で製造されたものであってもよく、例えば、インゴット等を粉砕することにより得られた粗大粉末を所望の粒径まで粉砕する粉砕法、蒸着等の気相成膜法等によりフィルム上に形成した金属膜を前記フィルムから剥離・粉砕させる方法(特に、液体中において剥離・粉砕を行い、前記液体中に分散させる方法)、化学的な造粒法等の方法により製造することができるが、本発明において、金属粉末は、水アトマイズ法により製造されたものを、鱗片化することにより得られたものであるのが好ましい。
水アトマイズ法では、高温溶解した金属を水中にアトマイズして作ることから、水アトマイズ法により製造された粒子は、その表面が酸化膜化しており、化学的安定性の高いものとなり、水やモノマーとの反応性が低いものとなる。そして、このような性質は、ビーズを用いて鱗片化した後にも保持されることとなる。その結果、第1のインクを用いて形成される印刷部の明度、輝度をさらに高いものとすることができ、その結果、インクセット全体として、コントラスト比の高い印刷部をさらに好適に形成することができる。また、形成される印刷部の耐擦性をさらに優れたものとすることができる。また、第1のインクの保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。
金属粉末の平均粒径は、500nm以上2.0μm以下であるのが好ましく、800nm以上1.8μm以下であるのがより好ましい。これにより、第1のインクを用いて形成される印刷部の明度、輝度をさらに高いものとすることができ、その結果、インクセット全体として、コントラスト比の高い印刷部をさらに好適に形成することができる。また、形成される印刷部の耐擦性をさらに優れたものとすることができる。また、第1のインクの保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。なお、本発明において、平均粒径とは、個数基準の平均粒径のことを指し、投影面積が最大となる方向から観察した際の面積Sと同一の面積を有する真円の直径の平均値のことを指す。
<重合性化合物>
第1のインクは、紫外線の照射により重合し、硬化する成分である重合性化合物を含むものである。このような成分を含むことにより、インクセットを用いて製造される記録物の耐擦性、耐水性、耐溶剤性等を優れたものとすることができる。重合性化合物は、液状をなすものであり、第1のインクにおいて、金属粉末を分散する分散媒として機能するものであるのが好ましい。これにより、別途、記録物の製造過程において除去される(蒸発する)分散媒を用いる必要がなく、記録物の製造においても、分散媒を除去する工程を設ける必要がないため、記録物の生産性を特に優れたものとすることができる。また、分散媒として一般に有機溶媒として用いられているものを使用する必要がないため、揮発性有機化合物(VOC)の問題の発生を防止することができる。また、重合性化合物を含むことにより、様々な記録媒体(基材)に対する、インクセットを用いて形成される印刷部の密着性を優れたものとすることができる。すなわち、重合性化合物を含むことにより、第1のインクは、メディア対応性に優れたものとなる。
重合性化合物としては、紫外線の照射により重合する成分であればよく、例えば、各種モノマー、各種オリゴマー(ダイマー、トリマー等を含む)等を用いることができるが、第1のインクは、重合性化合物として、少なくともモノマー成分を含むものであるのが好ましい。モノマーは、オリゴマー成分等に比べて、一般に、低粘度の成分であるため、第1のインクの吐出安定性を特に優れたものとする上で有利である。
重合性化合物としてのモノマーとしては、例えば、イソボニルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、PO変性ノニルフェノールアクリレート、EO変性ノニルフェノールアクリレート、EO変性2エチルヘキシルアクリレート、EO変性ノニルフェノールアクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、EO変性フェノールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、EO変性フェノールアクリレート、EO変性クレゾールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1.9−ノナンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、1.6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコール200ジアクリレート、ポリエチレングリコール300ジアクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピパレートジアクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレート、ポリエチレングリコール600ジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1.9−ノナンジオールジアクリレート、1.6−ヘキサンジオールジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、PO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、グリセリンPO付加トリアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル等が挙げられる。中でも、4−ヒドロキシブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルが好ましい。
特に、第1のインクは、重合性化合物として、フェノキシエチルアクリレートを含むものであるのが好ましい。これにより、第1のインクの保存安定性を優れたものとしつつ、インクジェット法による吐出後の第1のインクの反応性を特に優れたものとし、記録物の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、形成されるパターンの耐擦性等を特に優れたものとすることができる。
また、第1のインクは、重合性化合物として、フェノキシエチルアクリレートに加え、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、および、4−ヒドロキシブチルアクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種を含むものであるのが好ましい。これにより、第1のインクの保存安定性を特に優れたものとしつつ、インクジェット法による吐出後の第1のインクの反応性を特に優れたものとし、記録物の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、形成されるパターンの耐擦性等をさらに優れたものとすることができる。
また、第1のインクは、重合性化合物として、モノマー以外に、オリゴマーを含むものであってもよい。特に多官能のオリゴマーを含むものであるのが好ましい。これにより、第1のインクの保存安定性を優れたものとしつつ、形成されるパターンの耐擦性等を特に優れたものとすることができる。なお、本発明では、重合性化合物の中でも、分子の骨格中に繰り返し構造を有し、分子量が600以上のものをオリゴマーと呼ぶ。オリゴマーとしては、繰り返し構造がウレタンであるウレタンオリゴマー、繰り返し構造がエポキシであるエポキシオリゴマー等が好ましく用いられる。
また、第1のインクは、重合性化合物として、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレートおよび/またはアミノアクリレートを含むのが好ましい。これにより、第1のインクの保存安定性をより優れたものとしつつ、形成されるパターンの耐擦性等をさらに優れたものとすることができる。
<その他の成分>
第1のインクは、上述した以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、光重合開始剤、スリップ剤(レベリング剤)、分散剤、重合促進剤、重合禁止剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、着色剤、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、増感剤(増感色素)等が挙げられる。
光重合開始剤は、紫外線照射によってラジカルやカチオン等の活性種を発生し、上記重合性化合物の重合反応を開始させるものであれば特に制限されない。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができるが、光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。光重合開始剤を用いる場合、当該光重合開始剤は、紫外線領域に吸収ピークを有していることが好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物等)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アルキルアミン化合物等が挙げられる。
これらの中でも、重合性化合物への溶解性および硬化性の観点から、アシルホスフィンオキサイド化合物およびチオキサントン化合物から選択される少なくとも1種が好ましく、アシルホスフィンオキサイド化合物およびチオキサントン化合物を併用することがより好ましい。
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、およびビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が挙げられ、これらのうちから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
第1のインク中における光重合開始剤の含有量は、0.5wt%以上10wt%以下であるのが好ましい。光重合開始剤の含有量が前記範囲であると、紫外線硬化速度が十分大きく、且つ、光重合開始剤の溶け残りや光重合開始剤に由来する着色がほとんどない。
第1のインクがスリップ剤を含むものであると、レベリング作用により記録物の表面が平滑になり、耐擦性が向上する。
スリップ剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤を用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンまたはポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが好ましい。
第1のインクが分散剤を含むものであると、金属粉末の分散性を優れたものとすることができ、第1のインクの保存安定性、吐出安定性を特に優れたものとすることができる。分散剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマーおよびコポリマー、アクリル系ポリマーおよびコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、第1のインクは、記録物の製造工程において除去される(蒸発する)有機溶剤を含まないものであるのが好ましい。これにより、揮発性有機化合物(VOC)の問題の発生を効果的に防止することができる。
第1のインクの室温(20℃)での粘度は、20mPa・s以下であるのが好ましく、3mPa・s以上15mPa・s以下であるのがより好ましい。これにより、インクジェット法による液滴吐出を好適に行うことができる。
なお、本発明のインクセットは、第2のインクとともに、少なくとも1種の第1のインクを備えるものであればよいが、複数種の第1のインクを備えるものであってもよい。
《第2のインク》
本発明のインクセットを構成する第2のインクは、インクジェット方式により吐出されるものであり、それ単独で無彩色の印刷部の形成に用いることのできるものであり、紫外線の照射により重合する重合性化合物を含むものである。
本発明のインクセットは、少なくとも1種の第2のインクを備えるものであればよいが、含有する顔料の種類が異なる複数種の第2のインクを備えるものであるのが好ましい。これにより、インクセットを用いて、コントラスト比の高い印刷部をより好適に形成することができる。
<着色剤>
第2のインクは、それ単独で無彩色の印刷部の形成に用いることのできるものであり、通常、無彩色の着色剤を含有するものである。
このような着色剤としては、例えば、黒色顔料、灰色顔料、白色顔料等の無彩色顔料や、黒色染料、灰色染料、白色染料等の無彩色染料を好適に用いることができる。
特に、インクセットは、第2のインクとして、無彩色の顔料としての黒色顔料を含むインクを備えるものであるのが好ましい。これにより、当該第2のインクを用いて形成される印刷部の明度、輝度を特に低いものとすることができ、その結果、インクセット全体として、コントラスト比の高い印刷部をより好適に形成することができる。
黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、鉄黒、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅クロムブラック、銅クロムマンガンブラック等を用いることができるが、黒色顔料は、カーボンブラックで構成されたものであるであるのが好ましい。これにより、当該第2のインクを用いて形成される印刷部の明度、輝度をさらに低いものとすることができ、その結果、インクセット全体として、コントラスト比の高い印刷部をさらに好適に形成することができる。
また、インクセットは、第2のインクとして、無彩色の顔料としての白色顔料を含むインクを備えるものであるのが好ましい。これにより、コントラスト比の高い印刷部をより好適に形成することができる。
白色顔料としては、例えば、酸化チタン、鉛白、亜鉛華、リトポン、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、カオリン、雲母、硫酸バリウム、アルミナ、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、グロスホワイトや、白色プラスチックピグメント等の有機物を主体とした合成顔料等を用いることができるが、白色顔料は、酸化チタンで構成されたものであるであるのが好ましい。これにより、コントラスト比の高い印刷部をさらに好適に形成することができる。
なお、本発明においては、第2のインクは、それ単独で無彩色を呈する着色剤を含有するものに限定されず、例えば、複数種の有彩色の着色剤を含有するものであり、第2のインク全体として、無彩色を呈するもの(無彩色の印刷部の形成に用いることのできるもの)であってもよい。
<重合性化合物>
第2のインクは、紫外線の照射により重合し、硬化する成分である重合性化合物を含むものである。
第2のインクを構成する重合性化合物としては、第1のインクの構成材料として説明したもの(重合性化合物)を好適に用いることができ、第2のインクは、特に、第1のインクを構成する重合性化合物と同一の化合物を含むものであるのが好ましい。これにより、上述したのと同様の効果が得られるとともに、例えば、記録媒体上で第1のインクと第2のインクとを重ね打ちした場合においては、第1のインクと第2のインクとを好適に混色させることができ、より自然な色を表現することができ、さらに、第1のインクによる印刷部と、第2のインクによる印刷部との密着性を特に優れたものとすることができ、記録物の信頼性を特に高いものとすることができる。
<その他の成分>
第2のインクは、上述した以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、第1のインクの構成材料として説明したもの(その他の成分)を好適に用いることができる。このような成分を用いることにより、上述したの同様の効果が得られる。
また、第2のインクは、記録物の製造工程において除去される(蒸発する)有機溶剤を含まないものであるのが好ましい。これにより、揮発性有機化合物(VOC)の問題の発生を効果的に防止することができる。
第2のインクの室温(20℃)での粘度は、20mPa・s以下であるのが好ましく、3mPa・s以上15mPa・s以下であるのがより好ましい。これにより、インクジェット法による液滴吐出を好適に行うことができる。
《その他のインク》
本発明のインクセットは、上述した第1のインク、第2のインクを備えるものであればよいが、これらに加えて、さらに、その他のインクを備えるものであってもよい。
このようなインクとしては、それ単独で有彩色の印刷部の形成に用いることのできるインク(有彩色インク)や、着色剤および金属粉末を含まない無色インク(クリアインク)等が挙げられる。特に、無色インクは、例えば、記録媒体の上述した第1のインクおよび/または第2のインクが付与された部位の上に付与することにより、印刷部の耐久性(耐擦性等)を特に優れたものとすることができたり、また、記録媒体の上述した第1のインクおよび/または第2のインクが付与されるべき部位に、予め付与しておくことにより、記録物の外観に悪影響を及ぼすことなく、記録媒体と、第1のインクおよび/または第2のインクによる印刷部との密着性等のさらなる向上等を図ることができる。
[記録物]
次に、本発明の記録物について説明する。
本発明の記録物は、上述したようなインクセットを用いて製造されたものである。言い換えると、本発明の記録物は、鱗片状の金属粉末を含む紫外線硬化型インクジェット用インクとしての第1のインク、および、それ単独で無彩色の印刷部の形成に用いることのできる紫外線硬化型インクジェット用インクとしての第2のインクを、インクジェット方式により記録媒体上に付与し、紫外線を照射することにより製造されたものである。このような記録物は、光沢感、コントラスト比に優れたパターンを有するものとすることができる。
上述したように、本発明のインクセットを構成する第1のインクおよび第2のインクは、重合性化合物を含むものであり、記録媒体に対する密着性に優れるものである。このため、本発明のインクセットを構成する第1のインクおよび第2のインクにより形成される印刷部は記録媒体に対する密着性に優れたものとすることができる。したがって、記録媒体は、いかなるものであってもよく、吸収性または非吸収性のいずれを用いてもよく、例えば、紙(普通紙、インクジェット用専用紙等)、プラスチック材料、金属、セラミックス、木材、貝殻、綿、ポリエステル、ウール等の天然繊維・合成繊維、不織布等を用いることができる。
本発明の記録物は、いかなる用途のものであってもよく、例えば、装飾品やそれ以外に適用されるものであってもよい。本発明の記録物の具体例としては、コンソールリッド、スイッチベース、センタークラスタ、インテリアパネル、エンブレム、センターコンソール、メーター銘板等の車両用内装品、各種電子機器の操作部(キースイッチ類)、装飾性を発揮する装飾部、指標、ロゴ等の表示物等が挙げられる。
液滴吐出方式(インクジェット法の方式)としては、ピエゾ方式や、インクを加熱して発生した泡(バブル)によりインクを吐出させる方式等を用いることができるが、インクの構成成分の変質のし難さ等の観点から、ピエゾ方式が好ましい。
インクジェット法によるインク(インクセットを構成するインク)の吐出は、公知の液滴吐出装置を用いて行うことができる。
インクジェット法により吐出された第1のインクおよび第2のインクは、紫外線の照射により硬化する。
紫外線源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線発光ダイオード(UV−LED)、紫外線レーザダイオード(UV−LD)等を用いることができる。中でも、小型、高寿命、高効率、低コストの観点から、紫外線発光ダイオード(UV−LED)および紫外線レーザダイオード(UV−LD)が好ましい。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]インクセットの製造
(実施例1)
<第1のインクの製造>
まず、Fe−Si−Al合金の溶湯を用いて、水アトマイズ法により、球形状をなし、平均粒径が9.2μmの金属粉末を製造した(粉末製造工程)。製造された金属粉末は、Fe:84.9wt%、Si:9.9wt%、Al:5.2wt%の組成を有するものであった。
次に、上記のようにして得られた略球形状の金属粉末を、ジルコニアビーズ(直径:5mm)を用いた遊星ボールミルにより、鱗片形状に異形化(鱗片化)した(鱗片化工程)。本工程は、フェノキシエチルアクリレート中で行った。
次に、鱗片化工程で得られた混合物を、超音波分散機に導入し、微細処理を行い、さらにその後、5μmメンブレンフィルターにて濾過を行い、ジルコニアビーズを除去するとともに、金属粉末の粗大粒子をカットして、平均粒子径D50が0.8μmの分散体を得た。
次に、鱗片化した金属粉末を分離し、その後、フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、光重合開始剤としてのIrgacure819(チバ・ジャパン社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure TPO(ACETO社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure DETX(Lambson社製)、レベリング剤としてのUV−3500(ビックケミー社製)、および、重合禁止剤としてのp−メトキシフェノールと混合することにより、第1のインクを得た。
<第2のインクの製造>
黒色顔料としてのカーボンブラック(平均粒径:150μm)を用意し、これを、フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、光重合開始剤としてのIrgacure819(チバ・ジャパン社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure TPO(ACETO社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure DETX(Lambson社製)、レベリング剤としてのUV−3500(ビックケミー社製)、および、重合禁止剤としてのp−メトキシフェノールと混合することにより、第2のインクとしての黒色顔料インクを得た。
また、黒色顔料としてのカーボンブラックの代わりに、白色顔料としての二酸化チタン(平均粒径:250μm)を用いるとともに、各成分の配合比率を変更した以外は、上述した、黒色顔料インクと同様にして、第2のインクとしての白色顔料インクを製造した。
以上のようにして、3種のインク(第1のインクと、2種の第2のインクと、黒色インク)からなるインクセットを得た。
(実施例2〜11)
第1のインクの調製に用いる原料の種類・比率を変更することにより、第1のインクの組成が表1に示すようなものとなるようにし、さらに、第2のインクの種類、第2のインクを構成する着色剤の種類を表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にしてインクセットを製造した。
(比較例1)
金属粉末として、鱗片化処理を施していない球形状の粉末を用いた以外は、前記実施例1と同様にして第1のインクを製造し、インクセットを得た。
(比較例2)
第1のインクを備えておらず、2種のインク(2種の第2のインク)からなるものとした以外は、前記実施例1と同様にしてインクセットを得た。
(比較例3)
本比較例では、前記実施例1と同様にして、第1のインクを製造したが、第2のインクは製造しなかった。
(比較例4)
前記実施例1と同様にして得られた鱗片状の金属粉末と、1,2−ヘキサンジオールと、トリメチロールプロパンと、サーフィノール465(日信化学工業社製)と、トリエタノールアミンと、グリセリンと、ポリフロー401(日信化学工業社製)と、イオン交換水とを混合することにより、第1のインクを製造した以外は、前記実施例1と同様にしてインクセットを得た。すなわち、本比較例に係る第1のインクは、紫外線の照射により硬化する重合性化合物を含まないものである。
前記各実施例および比較例について、インクセットを構成する第1のインクの組成等を、表1にまとめて示した。なお、表中、フェノキシエチルアクリレートを「PEA」、アクリル酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルを「VEEA」、トリプロピレングリコールジアクリレートを「TPGDA」、ジプロピレングリコールジアクリレートを「DPGDA」、N−ビニルカプロラクタムを「VC」、ベンジルメタクリレートを「BM」、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレートを「DMTCDDA」、アミノアクリレートを「AA」、ウレタンアクリレートを「UA」、Irgacure 819(チバ・ジャパン社製)を「ic819」、Speedcure TPO(ACETO社製)を「scTPO」、Speedcure DETX(Lambson社製)を「scDETX」、UV−3500(ビックケミー社製)を「UV3500」、p−メトキシフェノールを「pMP」、4−ヒドロキシブチルアクリレートを「HBA」、1,2−ヘキサンジオールを「1,2HD」、トリメチロールプロパンを「TMP」、サーフィノール465(日信化学工業社製)を「S465」、トリエタノールアミンを「TEA」、グリセリンを「GL」、ポリフロー401(日信化学工業社製)を「PF401」、カーボンブラックを「CB」、二酸化チタンを「TiO」、鉄黒を「Fe」、亜鉛華を「ZnO」で示した。また、各第1のインク中に含まれるそれぞれ任意の10個の金属粒子について観察を行い、投影面積が最大となる方向から観察した際(平面視した際)の面積S[μm]と、当該観察方向と直交する方向のうち観察した際の面積が最大となる方向から観察した際の面積S[μm]に対する比率(S/S)を求め、これらの平均値を、表1にあわせて示した。また、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定された前記各実施例のインクセットを構成する各インクの20℃における粘度は、いずれも、3mPa・s以上15mPa・s以下の範囲内の値であった。
Figure 0005708059
[2]液滴吐出の安定性評価(吐出安定性評価)
前記各実施例および各比較例のインクセット(比較例3については、1種の第1のインク)を用いて、下記に示すような試験による評価を行った。
まず、チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した液滴吐出装置および前記各実施例および各比較例のインクセットを用意し、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、25℃、55%RHの環境下で、各色のインクについて、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、2000000発(2000000滴)の液滴の連続吐出を行った。その後、液滴吐出装置の運転を停止し、液滴吐出装置の流路に各インクが充填された状態で、25℃、55%RHの環境下に、120時間放置した。
その後、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、25℃、55%RHの環境下で、3000000発(3000000滴)の液滴の連続吐出を行った。上記120時間放置した後の、液滴吐出ヘッドの中央部付近の指定したノズルから吐出された3000000発の液滴について、着弾した各液滴の中心位置の中心狙い位置からのズレ量dの平均値を求め、以下の5段階の基準に従い、評価した。この値が小さいほど飛行曲がりの発生が効果的に防止されていると言える。
A:ズレ量dの平均値が0.09μm未満。
B:ズレ量dの平均値が0.09μm以上0.15μm未満。
C:ズレ量dの平均値が0.15μm以上0.18μm未満。
D:ズレ量dの平均値が0.18μm以上0.22μm未満。
E:ズレ量dの平均値が0.22μm以上。
[3]第1のインクの保存安定性評価(長期安定性評価)
前記各実施例および各比較例のインクセットを構成する第1のインクについて、40℃の環境下に、30日間放置した後、目視による観察を行い、以下の5段階の基準に従い、評価した。
A:金属粉末の凝集・沈降が全く認められない。
B:金属粉末の凝集・沈降がほとんど認められない。
C:金属粉末の凝集・沈降がわずかに認められる。
D:金属粉末の凝集・沈降がはっきりと認められる。
E:金属粉末の凝集・沈降が顕著に認められる。
[4]硬化性
前記各実施例および各比較例のインクセットを構成する各インクについて、エプソン製インクジェットプリンター;PM800Cへ導入し、基材として三菱樹脂(株)製、ダイアホイル G440E(厚さ38μm)を用いて、インク量wet 9g/mにて、ベタ印刷を行い、印刷後、ただちにLED−UVランプ;フォセオン社製 RX firefly(ギャップ6mm 1000mW/cm)を用いて紫外線の照射を行い、インクが硬化したか否かを確認し、以下の5段階の基準に従い、評価した。硬化したか否かは、綿棒にて表面をこすって、未硬化のインクが付着しないか否かで判断した。なお、下記A〜Eの照射量に該当するかどうかは、ランプを何秒照射したかによって算出できる。
A:100mJ/cm未満の紫外線照射量にて硬化した。
B:100mJ/cm以上200mJ/cm未満の紫外線照射量にて硬化した。
C:200mJ/cm以上500mJ/cm未満の紫外線照射量にて硬化した。
D:500mJ/cm以上1000mJ/cm未満の紫外線照射量にて硬化した。
E:1000mJ/cm以上の紫外線照射量にて硬化する。もしくはまったく硬化 しない。
[5]記録物の製造
各実施例および各比較例のインクセットを用いて、それぞれ、以下のようにして、記録物としてのインテリアパネルを製造した。
まず、製造直後のインクセットをインクジェット装置に投入した。
その後、ポリカーボネート(旭硝子社製、カーボグラス ポリッシュ 2mm厚)を用いて成形した曲面部を有する基材(記録媒体)上に、インクセットを構成する各インクを吐出した。このとき、各インクを単独で着弾させた領域と、各インクの混色比率を順次変更した領域とを形成することにより、明度、輝度の異なる領域を多数形成した。
その後、365nm、380nm、395nmの波長に極大値を有するスペクトルの紫外線を照射を、照射強度180mW/cmを20秒間照射し、基材上のインクを硬化させ、記録物としてのインテリアパネルを得た。
上記のような方法を用いて、各実施例および各比較例のインクセットを用いて、それぞれ、10個のインテリアパネル(記録物)を製造した。
また、基材として、ポリエチレンテレフタレート(三菱樹脂社製 ダイヤホイル G440E 38μm厚)を用いて成形したもの、低密度ポリエチレン(三井化学東セロ社製 T.U.X(L−LDPE) HC−E #80)を用いて成形したもの、2軸延伸ポリプロピレン(三井化学東セロ社製 OP U−1 #60)を用いて成形したもの、硬質塩化ビニル(アクリサンデー社製 サンデーシート(透明)0.5mm厚)を用いて成形したものを用いた以外は、上記と同様にして、各実施例および各比較例のインクセットを用いて、それぞれ、10個ずつのインテリアパネル(記録物)を製造した。
[6]記録物の評価
上記のようにして得られた各記録物について、以下のような評価を行った。
[6.1]記録物の外観評価
前記各実施例および比較例で製造した各記録物を目視により観察し、以下の7段階の基準に従い、評価した。
A:金属光沢を呈する複数の領域間でのコントラスト比が極めて大きく、金属光沢
を呈する色を極めて多い階調で表現することができている。
B:金属光沢を呈する複数の領域間でのコントラスト比が非常に大きく、金属光沢
を呈する色を非常に多い階調で表現することができている。
C:金属光沢を呈する複数の領域間でのコントラスト比が大きく、金属光沢を呈す
る色を多階調で表現することができている。
D:金属光沢を呈する複数の領域間でのコントラスト比がやや小さく、金属光沢を
呈する色の階調がやや少ない。
E:金属光沢を呈する複数の領域間でのコントラスト比が小さく、金属光沢を呈す
る色の階調が少ない。
F:金属光沢を呈する複数の領域間でのコントラスト比が非常に小さく、金属光沢
を呈する色の階調が非常に少ない。
G:金属光沢を呈する複数の領域間でのコントラスト比が極めて小さく、金属光沢
を呈する色の階調が極めて少ない。
[6.2]光沢度
前記各実施例および比較例で製造した各記録物のパターン形成部の第1のインク単独で形成された領域について、光沢度計(MINOLTA MULTI GLOSS 268)を用い、煽り角度60°での光沢度を測定し、以下の基準に従い評価した。
A:光沢度が300以上。
B:光沢度が200以上300未満。
C:光沢度が100以上200未満。
D:光沢度が60以上100未満。
E:光沢度が60未満。
[6.3]コントラスト比
前記各実施例および比較例で製造した各記録物のパターン形成部の第1のインク単独で形成された領域(第1の領域)、および、黒色の第2のインク単独で形成された領域(第2の領域)について、光沢度計(MINOLTA MULTI GLOSS 268)を用い、煽り角度60°での光沢度を測定し、得られた結果から、第1の領域における光沢度Mと、第2の領域における光沢度Bとの比率(M/B)を求め、以下の基準に従い評価した。
A:M/Bが10以上かつMが200以上。
B:M/Bが5以上10未満、または、M/Bが10以上かつMが200未満。
C:M/Bが3以上5未満かつMが100以上。
D:M/Bが3以上5未満かつMが60以上100未満。
E:M/Bが3以上5未満かつMが60未満。
F:M/Bが3未満。
[6.4]耐擦性
前記各実施例および比較例に係る記録物について、記録物の製造から48時間経過した時点で、サウザーランドラブテスターを用い、JIS K5701に準じて耐擦性試験を行い、上記[6.2]で述べたのと同様の方法により、耐擦性試験後の記録物のパターン形成部のうち第1のインク単独で形成された領域について、光沢度(煽り角度60°)を測定し、耐擦性試験前後での光沢度の低下率を求め、以下の基準に従い評価した。
A:光沢度の低下率が10%未満。
B:光沢度の低下率が10%以上20%未満。
C:光沢度の低下率が20%以上30%未満。
D:光沢度の低下率が30%以上。
これらの結果を表2に示す。なお、表2中、第1のインクを「I1」、黒色の第2のインクを「I2BK」、白色の第2のインクを「I2W」で示した。また、表2中、ポリカーボネート製の基材を用いて製造された記録物を「M1」、ポリエチレンテレフタレート製の基材を用いて製造された記録物を「M2」、低密度ポリエチレン製の基材を用いて製造された記録物を「M3」、2軸延伸ポリプロピレン製の基材を用いて製造された記録物を「M4」、硬質塩化ビニル製の基材を用いて製造された記録物を「M5」で示した。
Figure 0005708059
表2から明らかなように、本発明のインクセットは、光沢感、コントラスト比に優れたパターン(印刷部)の形成に好適に用いることができた。また、本発明のインクセットでは、金属色を含めた多様な色を好適に表現することができた。また、本発明のインクセットを構成するインクは、液滴の吐出安定性、保存安定性および硬化性に優れていた。また、本発明の記録物は、光沢感、コントラスト比に優れたパターン(印刷部)を有するものであった。これに対して、比較例では、満足な結果が得られなかった。

Claims (14)

  1. インクジェット方式により吐出される紫外線硬化型インクジェット用インクを複数種備えるインクセットであって、
    前記紫外線硬化型インクジェット用インクとして、鱗片状の金属粉末を含む第1のインクと、それ単独で無彩色の印刷部の形成に用いることのできる第2のインクを備え、
    前記第1のインクは、Fe−Si−Al合金で構成された前記金属粉末を含む
    ことを特徴とするインクセット。
  2. 前記第2のインクとして、無彩色の顔料としての黒色顔料を含むインクを備える請求項1に記載のインクセット。
  3. 前記黒色顔料は、カーボンブラックで構成されたものである請求項2に記載のインクセット。
  4. 前記第2のインクとして、無彩色の顔料としての白色顔料を含むインクを備える請求項1ないし3のいずれかに記載のインクセット。
  5. 前記白色顔料は、酸化チタンで構成されたものである請求項4に記載のインクセット。
  6. 前記Fe−Si−Al合金は、Feを主成分とし、8.2wt%以上11.2wt%以下のSi、および、4.0wt%以上7.0wt%以下のAlを含むものである請求項1ないし5のいずれかに記載のインクセット。
  7. 前記Fe−Si−Al合金は、Fe、SiおよびAl以外の成分の含有率の和が、2.0wt%以下のものである請求項に記載のインクセット。
  8. 前記第1のインクとして、Alで構成された前記金属粉末を含むインクを備える請求項1ないしのいずれかに記載のインクセット。
  9. 前記金属粉末は、水アトマイズ法により製造されたものを、鱗片化することにより得られたものである請求項1ないしのいずれかに記載のインクセット。
  10. 前記金属粉末の平均粒径は、500nm以上2.0μm以下である請求項1ないしのいずれかに記載のインクセット。
  11. 前記第1のインクは、紫外線の照射により重合する重合性化合物として、フェノキシエチルアクリレートを含むものである請求項1ないし10のいずれかに記載のインクセット。
  12. 前記第1のインクは、前記重合性化合物として、前記フェノキシエチルアクリレートに加え、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、および、4−ヒドロキシブチルアクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種を含むものである請求項11に記載のインクセット。
  13. 前記第1のインクは、紫外線の照射により重合する重合性化合物として、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレートおよび/またはアミノアクリレートを含むものである請求項1ないし12のいずれかに記載のインクセット。
  14. 鱗片状の金属粉末を含む紫外線硬化型インクジェット用インクとしての第1のインク、および、それ単独で無彩色の印刷部の形成に用いることのできる紫外線硬化型インクジェット用インクとしての第2のインクを、インクジェット方式により記録媒体上に付与し、紫外線を照射することにより製造されたこと特徴とする記録物であって、
    前記第1のインクは、Fe−Si−Al合金で構成された前記金属粉末を含む
    ことを特徴とする記録物。
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