JP5703934B2 - 冷鍛高周波焼入れ用鋼、冷鍛高周波焼入れ用棒鋼、自動車足回り部品および自動車用ハブ - Google Patents

冷鍛高周波焼入れ用鋼、冷鍛高周波焼入れ用棒鋼、自動車足回り部品および自動車用ハブ Download PDF

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Description

本発明は、冷間鍛造後に高周波焼入れを実施して使用する鋼(以下、「冷鍛高周波焼入れ用鋼」という。)に関する。
ハブ等の自動車の足回り部品は、走行中に繰り返し曲げの応力を受けるため、400MPaを超える高い曲げ疲労強度を必要とする。そのため上記部品の素材には、一般に、0.4%程度のCに加えて、Mn、Cr、Vなどの合金元素を含む中炭素合金鋼鋼材が使用される。
通常、上記の鋼材は熱間鍛造後に切削によって所定の形状に加工されるが、所望の部品形状に切削加工する際の切削量が大きいので製造コストが高い。
そこで近年、切削コストを低減するために、所望の最終部品形状に近い「ニアネットシェイプ」化が可能な冷間鍛造による部品成形が検討されている。
しかし、上記の中炭素合金鋼鋼材は、冷間鍛造性に乏しい。すなわち、冷間での変形抵抗が大きく、冷間鍛造に供しても荷重が高くなりすぎて所望の形状まで成形することができなかったり、冷間鍛造時に割れなどが起こることがある。
冷間鍛造を可能にするには、被処理材の変形抵抗を低くすること、具体的には、冷間鍛造前の硬さをビッカース硬さ(以下、「HV」という。)で170以下とすることが肝要である。しかしながら、HVで170以下の場合、冷間鍛造ままの状態では、最終部品に400MPaを超える高い曲げ疲労強度を具備させることができない。
冷間鍛造前の硬さがHVで170以下である場合、最終部品に400MPaを超える高い曲げ疲労強度を具備させるためには、最終部品の表層硬さを高めること、具体的には、HVで250を超える硬さを最終部品の表層に付与できる熱処理を実施することが有効である。
一般には、浸炭焼入れ、焼入れ−焼戻し等の熱処理を施すことによって、最終部品の表層硬さをHVで250を超える硬さにすることができる。しかしながら、これらの熱処理は高温で長時間加熱する処理である。このため、エネルギーコストが嵩むばかりか、熱処理ひずみの発生を伴うので、切削する量が増加して切削コストの上昇を招くことにもなる。さらに、曲げ疲労強度を具備させる必要のない部位の硬さまで高めることになって、無駄も大きい。
一方、高周波焼入れは、急速短時間で加熱して焼入れする熱処理であり、かつ、部品の所望の部位、すなわち高い曲げ疲労強度が求められる部位だけを硬化させることが可能な処理であり、熱処理後のひずみによっていたずらに切削量を増加させず、高い曲げ疲労強度が求められない部位は冷間鍛造ままであるため、冷間鍛造により成形された部品に適した熱処理である。
したがって、ハブ等の自動車の足回り部品の素材として、冷間鍛造時の変形抵抗が小さく、かつ、冷間鍛造後に高周波焼入れを実施することで400MPaを超える曲げ疲労強度が得られる鋼に対する要求が大きくなっている。
特許文献1に、質量%で、C:0.45〜0.60%、Si:0.01〜0.25%、Mn:0.10〜2.0%、P:0.030%以下、S:0.035%以下、Cu:0.3%以下、Ni:0.4%以下、Cr:1.0%以下、Mo:0.5%以下、B:0.0005〜0.005%、Ti:0.005〜0.05%およびsol.Al:0.005〜0.05%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、鍛造素材の直径をD(mm)としたとき〔0.87×C(%)+0.64×Mn(%)+0.50×Cr(%)+0.85×Mo(%))×40/D≧1〕の式を満たす成分組成である「冷鍛性に優れた高周波焼入用鋼」が開示されている。
特許文献2に、質量%で、C:0.001〜0.07%未満、Si:3.0%以下、Mn:0.01〜4.0%、Cr:5.0%以下、P:0.2%以下、S:0.35%以下、Al:0.0001〜2.0%、N:0.03%以下を含有し、さらにMo:1.5%以下(0%含む)およびNi:4.5%以下(0%含む)のうちから1種または2種を含有し、必要に応じてさらに、(i)Cu、(ii)BおよびTi、(iii)Ti、(iv)NbおよびVのうちの1種または2種、(v)Mg、Te、Ca、ZrおよびREMのうちの1種または2種以上、の5グループのうちから選ばれる1または2以上のグループの元素(群)を含有し、残部が鉄と不可避不純物からなり、上記元素のうちで、特定の元素の含有量によって表記される式を用いて求められるDi値が60以上である「鍛造性に優れた鍛造用鋼」が開示されている。
特許文献3に、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.02〜0.2%、Mn:0.2〜0.6%、P:0.02%以下(0%を含まない)、S:0.002〜0.05%、Cu:0.01〜0.2%、Ni:0.01〜0.2%、Cr:0.05〜0.5%、Al:0.020〜0.070%、B:0.0020〜0.0050%、N:0.0010〜0.0050%、O:0.0100%以下(0%を含まない)、固溶B:0.0004〜0.0010%、および0.5≦B/N≦1.7[ただし、Bは鋼中B量(%)、Nは鋼中N量(%)]を満たし、必要に応じてさらに、Bi:0.005〜0.05%を含有し、残部:鉄および不可避不純物からなることを特徴とする「高周波焼入れ性と冷間鍛造性に優れた軟磁性鋼材」が開示されている。
特開2001−226738号公報 特開2009−108398号公報 特開2009−84645号公報
上記の特許文献1で開示された鋼は、冷間鍛造後の高周波焼入れにより所望の表層硬さを得ることができる。しかしながら、高周波焼入れによって所望の硬さを得るため、C含有量が高いので、素材となる鋼の硬さが熱間圧延を始めとする熱間加工のままでは高くなる。したがって、良好な冷間鍛造性を得るために、冷間鍛造前に焼入れ焼戻しによる炭化物の球状化処理を施す必要がある。
特許文献2で開示された鋼は、Cの含有量が少ないので変形抵抗が低く、冷間鍛造が可能である。しかしながら、高い曲げ疲労強度を得るために鍛造後に浸炭を実施することを前提としている。したがって、Cr、Mo、Al等の元素を多量に含有させる必要があるので、高周波焼入れに適した成分系ではない。
特許文献3で開示された技術の場合、NをBNとして固定することによって良好な、冷間鍛造性および磁気特性を確保し、かつ特定量の固溶Bを確保することで高周波焼入れ性を高めている。このため、含有させたBのすべてが焼入れ性の向上に効果を発揮するというものではないので、特に変形抵抗を小さくするために、C含有量を0.10%未満に低減させた場合には、高周波焼入れ後に高い曲げ疲労強度を得られない場合がある。
本発明は上記現状に鑑みてなされたもので、その目的は、熱間圧延を始めとする熱間加工ままの状態での硬さ、つまり冷間鍛造前の硬さがHVで170以下であるために冷間鍛造時の変形抵抗が低く、しかも、冷間鍛造後に高周波焼入れを施すことによってHVで250を超える表層硬さが確保できるために400MPaを超える高い曲げ疲労強度が得られる、ハブ等の自動車の足回り部品の素材として好適な、冷鍛高周波焼入れ用鋼を提供することにある。
本発明者は、前記した課題について、すなわち、熱間加工ままの状態で冷間鍛造する時の変形抵抗の低下、および冷間鍛造後に高周波焼入れを実施することにより所望の表面硬さを確保させることについて、調査・検討を重ねた。
その結果、下記(a)〜(g)の知見を得た。
(a)熱間圧延を始めとする熱間加工ままの状態で冷間鍛造時の変形抵抗を低下させるには、C含有量を0.10質量%未満とすることが有効である。
(b)また、熱間圧延を始めとする熱間加工ままの状態で冷間鍛造時の変形抵抗を低下させるには、固溶Nによる冷間鍛造による加工中の動的ひずみ時効の影響を低減させることも有効である。
(c)上記(b)の効果を得るためには、固溶Nを窒化物として固定するTiを含有させることが有効である。
(d)C含有量を低減させた上で、冷間鍛造後の高周波焼入れにより所望の硬さを得るためには、Cの代わりに焼入れ性を高める元素を含有させるのがよい。C以外の焼入れ性を高める元素としては、Si、Al、Mn、Cr、Ni、Mo、VおよびBが挙げられるが、急速短時間加熱される高周波焼入れの場合には、その含有量を高めた場合にかえって焼入れ性の低下を招く元素がある。
(e)SiおよびAlはいずれも、含有量が増加するとA3変態点が上昇する。したがって含有量が高くなると、急速加熱である高周波焼入れを実施する際にオーステナイトの単相組織を得にくくなるため、かえって焼入れ性を低下させてしまう。
(f)Crは、炭化物生成能が高く、またセメンタイトへの固溶量が大きいため、セメンタイトを安定化させる作用を有する。したがって、Crの含有量が高くなると急速加熱である高周波焼入れを実施する際にCの固溶量が低下し、かえって焼入れ性を低下させてしまう。
(g)Bの焼入れ性向上効果を確保するためには、Nを固定するために十分な量のTiを含有させるのがよい。ただし、Tiの含有量が高すぎるとTiの炭化物が析出するため、かえって焼入れ性が低下してしまう。このため、Tiの含有量を適正な範囲とすることが肝要である。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)および(2)に示す冷鍛高周波焼入れ用鋼、下記の(3)に示す冷鍛高周波焼入れ用棒鋼、下記の(4)に示す自動車足回り部品および下記の(5)に示す自動車用ハブにある。
(1)質量%で、C:0.005%以上で0.10%未満、Si:0.30%以下、Mn:0.20〜1.20%、P:0.040%以下、S:0.050%以下、Al:0.050%以下、B:0.0002〜0.0050%、Ti:0.010〜0.080%およびN:0.0080%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、さらに下記の式(1)で表されるfn1が0を超える化学組成を有することを特徴とする冷鍛高周波焼入れ用鋼(ただし、鋼管用鋼を除く)
fn1=Ti−3.4N・・・(1)
上記式(1)中のTiおよびNは、それぞれの元素の質量%での鋼中含有量を表す。
(2)Feの一部に代えて、Cu:0.20%以下、Ni:0.20%以下、Cr:0.20%以下、Mo:0.20%以下およびV:0.20%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする上記(1)に記載の冷鍛高周波焼入れ用鋼。
(3)上記(1)または(2)に記載の化学組成を有することを特徴とする冷鍛高周波焼入れ用棒鋼。
(4)上記(3)に記載の冷鍛高周波焼入れ用棒鋼を用いることを特徴とする自動車足回り部品。
(5)上記(1)または(2)に記載の化学組成を有することを特徴とする自動車用ハブ。
なお、残部としての「Feおよび不純物」における「不純物」とは、鉄鋼材料を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入するものを指す。
本発明の冷鍛高周波焼入れ用鋼は、熱間圧延を始めとする熱間加工ままの状態で冷間鍛造が可能であり、しかも、冷間鍛造後に高周波焼入れを施すことによって高い曲げ疲労強度を確保することができる。したがって、ハブ等の自動車の足回り部品の素材として用いるのに好適である。
実施例で用いた切欠き付き小野式回転曲げ疲労試験片の形状を示す図である。図中の寸法の単位は「mm」である。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
C:0.005%以上で0.10%未満
Cは、鋼の高周波焼入れ後の表層硬さを高める効果を有する。その効果を十分に確保するには、Cを0.005%以上含有させる必要がある。一方、Cは冷間鍛造素材の硬さを増加させ、その結果、冷間鍛造時の変形抵抗を大きくする原因となる。このため、上限を設け、Cの含有量を0.005%以上で0.10%未満とした。Cの含有量は、0.01%以上とすることが好ましく、また0.09%以下とすることが好ましい。
Si:0.30%以下
Siは、A3点を上昇させるため、含有量が高くなると急速加熱である高周波焼入れを実施する際にオーステナイトの単相組織を得にくくなって、焼入れ性を低下させてしまう。このため、上限を設け、Siの含有量を0.30%以下とした。Siの含有量は、0.25%以下とすることが好ましい。Siの含有量は低ければ低いほど望ましいが、過度に低減させることはコスト上昇を招くので、0.01%程度が工業的な量産におけるSi含有量の下限になる。
Mn:0.20〜1.20%
Mnは、焼入れ性向上により高周波焼入れ後の表層硬さを高める作用がある。この効果を得るためには、Mnの含有量を0.20%以上とする必要がある。一方、Mnはフェライトを固溶強化し、冷間鍛造時の変形抵抗を大きし、変形能を低下させる原因となる。このため、上限を設け、Mnの含有量を0.20〜1.20%とした。Mnの含有量は、0.50%以上とすることが好ましく、また1.10%以下とすることが好ましい。
P:0.040%以下
Pは、鋼中に不純物として含まれる元素である。その含有量が0.040%を超えると、結晶粒界に偏析して母材の靱性を低下させる。したがって、Pの含有量を0.040%以下とした。なお、Pの含有量は0.030%以下とすることが好ましい。不純物であるPの含有量は低ければ低いほど望ましい。
S:0.050%以下
Sは、鋼中に不純物として含まれる元素である。また、積極的に含有させればMnと結合してMnSを形成し、被削性を向上させる効果を有する。しかしながら、Sの含有量が多くなって、特に0.050%を超えると、冷間加工時のクラックの発生原因となり冷間鍛造性を低下させる。したがって、Sの含有量を0.050%以下とした。冷間鍛造性を重視する場合には、Sの含有量は0.020%以下とすることが望ましく、低ければ低いほど望ましい。一方、被削性を重視する場合には、0.020%を超える量のSを積極的に含有させることが望ましい。
Al:0.050%以下
Alは、A3点を上昇させるため、含有量が高くなると急速加熱を伴う高周波焼入れでは焼入れ性を低下させてしまう。したがって、上限を設け、Alの含有量を0.050%以下とした。Alの含有量は、0.010%以下とすることが好ましい。Alの含有量は低ければ低いほど望ましいが、過度に低減させることはコスト上昇を招くので、0.001%程度が工業的な量産におけるAl含有量の下限になる。
B:0.0002〜0.0050%
Bは、本発明において、焼入れ性を高める非常に重要な元素である。この効果を得るには、Bを0.0002%以上含有させる必要がある。一方、Bの含有量が0.0050%を超えると、焼入れ性向上効果が飽和するばかりでなく、コストが高くなる。このため、上限を設け、Bの含有量を0.0002〜0.0050%とした。Bの含有量は、0.0005%以上とすることが好ましく、また0.0030%以下とすることが好ましい。
Ti:0.010〜0.080%
Tiは、Nと結合してTiNを形成することにより、固溶Nによる冷間加工中の動的ひずみ時効を低下させるとともに、焼入れ性に効くBがNと結合することを防ぐ効果がある。このような効果を得るためには、Tiは0.010%以上含有させる必要がある。本発明においては冷間鍛造時の変形抵抗を低くするために、C含有量を0.10%未満としているが、Tiを過剰に含有させると有効なCがTi炭化物となってしまうため、上限を設け、Tiの含有量を0.010〜0.080%とした。Tiの含有量は、0.020%以上とすることが好ましく、また0.050%以下とすることが好ましい。
N:0.0080%以下
Nは、固溶Nとして冷間鍛造時に動的ひずみ時効を生じさせ、変形抵抗を大きくするため、低減するほどよい。そのため、Nの含有量に上限を設けて0.0080%以下とした。Nの含有量は低ければ低いほど望ましいが、過度に低減させることはコスト上昇を招くので、0.0020%程度が工業的な量産におけるN含有量の下限になる。
fn1:0を超える
Tiは、Nと優先的に結合し、BNの生成を抑えてBによる焼入れ性向上効果を発揮させる作用がある。このような効果を得るためには、化学量論的に、鋼中に含まれるN量とTi量について、式(1)、つまり、
fn1=Ti−3.4N・・・(1)
で表されるfn1が0を超える必要がある。ただし、式(1)中のTiおよびNは、それぞれの元素の質量%での鋼中含有量を意味する。
なお、fn1の値は、Ti含有量が上限の0.080%の場合の0.080に近い値であってもよい。
本発明の冷鍛高周波焼入れ用鋼の一つは、上記元素のほか、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有するものである。
本発明の冷鍛高周波焼入れ用鋼の化学組成の他の一つは、Feの一部に代えて、Cu、Ni、Cr、MoおよびVのうちの1種以上の元素を含有するものである。
以下、任意元素である上記Cu、Ni、Cr、MoおよびVの作用効果と、含有量の限定理由について説明する。
Cu:0.20%以下
Cuは、鋼の焼入れ性を向上させる効果を有するため、この効果を得るためにCuを含有させてもよい。しかし、その含有量が多くなって、特に0.20%を超えると、曲げ疲労強度の低下を招く。したがって、含有させる場合のCuの含有量を0.20%以下とした。なお、含有させる場合のCuの量は0.15%以下とすることが好ましい。
一方、前記したCuの効果を安定して得るためには、含有させる場合のCuの量は0.05%以上とすることが好ましい。
Ni:0.20%以下
Niは、鋼の焼入れ性を向上させる効果を有するため、この効果を得るためにNiを含有させてもよい。しかし、その含有量が多くなって、特に0.20%を超えると、高周波焼入れ時に焼き割れを生じる場合がある。したがって、含有させる場合のNiの含有量を0.20%以下とした。なお、含有させる場合のNiの量は0.15%以下とすることが好ましい。
一方、前記したNiの効果を安定して得るためには、含有させる場合のNiの量は0.05%以上とすることが好ましい。
Cr:0.20%以下
Crも鋼の焼入れ性を向上させる効果を有するため、この効果を得るためにCrを含有させてもよい。しかし、Crは炭化物を形成しやすい元素であるため、その含有量が多くなって、特に0.20%を超えると、高周波焼入れ時にかえって焼入れ性を低下させてしまう。したがって、含有させる場合のCrの含有量を0.20%以下とした。なお、含有させる場合のCrの量は0.15%以下とすることが好ましい。
一方、前記したCrの効果を安定して得るためには、含有させる場合のCrの量は0.05%以上とすることが好ましい。
Mo:0.20%以下
Moは、鋼の焼入れ性を向上させる効果を有するため、この効果を得るためにMoを含有させてもよい。しかし、Moは炭化物を形成しやすい元素であるため、その含有量が多くなって、特に0.20%を超えると、高周波焼入れ時にかえって焼入れ性を低下させてしまう。したがって、含有させる場合のMoの含有量を0.20%以下とした。なお、含有させる場合のMoの量は0.15%以下とすることが好ましい。
一方、前記したMoの効果を安定して得るためには、含有させる場合のMoの量は0.05%以上とすることが好ましい。
V:0.20%以下
Vも鋼の焼入れ性を向上させる効果を有するため、この効果を得るためにVを含有させてもよい。しかし、Vは炭化物を作りやすい元素であるため、その含有量が多くなって、特に0.20%を超えると、高周波焼入れ時にかえって焼入れ性を低下させてしまう。したがって、含有させる場合のVの含有量を0.20%以下とした。なお、含有させる場合のVの量は0.15%以下とすることが好ましい。
一方、前記したVの効果を安定して得るためには、含有させる場合のVの量は0.05%以上とすることが好ましい。
なお、本発明の冷鍛高周波焼入れ用鋼は、例えば、転炉および二次精錬にて所望の成分に調整し、連続鋳造により鋳片とする製造工程によって得ることができる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する鋼1〜15を真空溶解炉を用いて溶解した後、鋳造してインゴットを得た。
上記の鋼のうち、鋼1〜6は、本発明で規定される化学組成を満足する本発明例の鋼である。一方、鋼7〜15は、本発明で規定される化学組成の範囲を外れる比較例の鋼である。
Figure 0005703934
各インゴットを一旦室温まで冷却した後、1250℃に加熱し、仕上げ温度を1000℃以上として熱間鍛造して、直径50mmの丸棒に成形し、一旦室温まで冷却した後、さらに1200℃に加熱し、仕上げ温度を900℃以上として熱間圧延して、直径20mmの丸棒に成形した。なお、熱間鍛造および熱間圧延で成形した後は、いずれも大気中で放冷した。
各鋼について、上記のようにして得た直径20mm丸棒の一部を用いて、熱間圧延ままの状態での硬さと冷間鍛造性とを調査した。
具体的には、各鋼について、先ず、上記の直径20mmの丸棒を、いわゆる「横断」、すなわち、軸方向(長さ方向)に対して垂直に切断し、次いで、切断面が被検面になるように樹脂に埋め込んだ後、切断面が鏡面仕上となるように研磨して、HV測定用試験片とした。
得られたHV測定用試験片のR/2部(「R」は丸棒の半径を表す。)5点のHVを、JIS Z 2244(2009)に記載の「ビッカース硬さ試験−試験方法」に準拠して、試験力を9.8Nとしてビッカース硬さ試験機で測定し、その算術平均値を熱間圧延ままの状態での硬さとした。
なお、熱間圧延ままの状態での硬さの目標はHVで170以下である。
また、各鋼について、上記の直径20mmの丸棒の中心部から、直径が14mmで高さが28mmの冷間鍛造試験片を切り出し、高さが8.4mmになるまで(加工率では70%)冷間据込みによる鍛造試験を実施し、割れの有無を確認するとともに、変形抵抗を求めた。
なお、熱間圧延ままの状態での変形抵抗の目標は800MPa未満である。
さらに、各鋼について、前記のようにして得た直径20mm丸棒の残りの部分を用いて、通常の方法によって、冷間鍛造を模擬した冷間引抜き加工を施し、直径13mmの丸棒に仕上げた。
各鋼について、上記のようにして得た直径13mm丸棒の一部を用いて、高周波焼入れ性を調査した。
具体的には、各鋼について、上記の冷間引抜き加工して得た直径13mmの丸棒に対して、20kWの出力で1.6秒加熱した後水冷する、高周波焼入れ処理を施した。この処理を施した丸棒を「横断」し、次いで、切断面が被検面になるように樹脂に埋め込んだ後、切断面が鏡面仕上となるように研磨して、HV測定用試験片とした。
得られたHV測定用試験片の表面から0.5mm深さの位置について5点のHVを、前述したJIS Z 2244(2009)の「ビッカース硬さ試験−試験方法」に準拠して、試験力を9.8Nとしてビッカース硬さ試験機で測定し、その算術平均値を高周波焼入れ後の表層硬さとして、高周波焼入れ性を評価した。
なお、高周波焼入れ後の表層硬さの目標はHVで250を超えることである。
さらに、各鋼について、冷間引抜き加工して得た上記直径13mmの丸棒の残りの部分を用いて、高周波焼入れ後の曲げ疲労強度を調査した。
具体的には、各鋼について、先ず、上記の直径13mmの丸棒の中心部から、図1に示す形状の切欠き付き小野式回転曲げ疲労試験片を切り出した。
次いで、切欠き部に、上記20kWの出力で1.6秒加熱した後水冷する、高周波焼入れ処理を施して、大気中、室温、3000rpm、両振りの条件で小野式回転曲げ疲労試験に供し、曲げ疲労強度を求めた。
なお、繰返し数が107回において破断しない最大の強度を「曲げ疲労強度」とした。高周波焼入れ後の曲げ疲労強度の目標は400MPaを超えることである。
表2に、上記の各調査結果をまとめて示す。なお、試験番号7の変形抵抗欄における「−」は、冷間据込みによる鍛造試験によって割れが生じたため、正確な変形抵抗が測定できなかったことを示す。
Figure 0005703934
表2から、本発明で規定する化学組成条件を満たす鋼1〜6を用いた、本発明例の試験番号1〜6の場合、熱間圧延ままの状態において、硬さはHVで166以下、また、変形抵抗は781MPa以下であって、いずれも目標が達成されており、さらに、高周波焼入れ後についても、表層硬さはHVで332以上と大きく、また、曲げ疲労強度は471MPa以上であって、いずれも目標を達成できていることが明らかである。
これに対して、本発明で規定する化学組成条件から外れる鋼7〜15を用いた、比較例の試験番号7〜15の場合、目標の全て(つまり、熱間圧延ままの状態において、硬さがHVで170以下、かつ変形抵抗が800MPa未満であり、高周波焼入れ後において、表層硬さがHVで250を超え、かつ曲げ疲労強度が400MPaを超えるという目標の全て)を、同時には達成できていないことが明らかである。
すなわち、試験番号7の場合は、鋼7のMnの含有量が本発明で規定する値を超えているため、熱間圧延ままの状態において、硬さがHVで217と高く、冷間据込みによる鍛造試験によって割れが生じた。
試験番号8〜10の場合、鋼8〜10はそれぞれ、Cr、MoおよびVの含有量が本発明で規定する値を超えているため、高周波焼入れ後の表層硬さがHVで250に満たず、曲げ疲労強度が400MPaに達していない。
試験番号11の場合、鋼11のBの含有量が本発明で規定する値に満たないため、高周波焼入れ後の表層硬さがHVで250に満たず、曲げ疲労強度が400MPaに達していない。
試験番号12の場合、鋼12のfn1の値が−0.017であって「fn1>0」の条件を満たさず、しかも、Tiの含有量が本発明で規定する値に満たないため、熱間圧延ままの状態において、変形抵抗が812MPaと高く、しかも、高周波焼入れ後の表層硬さがHVで250に満たず、曲げ疲労強度が400MPaに達していない。
試験番号13の場合は、鋼13のCの含有量が本発明で規定する値を超えているため、熱間圧延ままの状態において、硬さがHVで201と高く、変形抵抗が831MPaと大きい。
試験番号14の場合、鋼14の個々の元素の含有量は本発明で規定する範囲内であるものの、fn1の値が−0.008であって「fn1>0」の条件を満たさないため、高周波焼入れ後の表層硬さがHVで250に満たず、曲げ疲労強度が400MPaに達していない。
試験番号15の場合は、鋼15のSiの含有量が本発明で規定する値を超えているため、高周波焼入れ後の表層硬さがHVで250に満たず、曲げ疲労強度が400MPaに達していない。
本発明の冷鍛高周波焼入れ用鋼は、熱間圧延を始めとする熱間加工ままの状態で冷間鍛造が可能であり、しかも、冷間鍛造後に高周波焼入れを施すことによって高い曲げ疲労強度を確保することができる。したがって、ハブ等の自動車の足回り部品の素材として用いるのに好適である。

Claims (5)

  1. 量%で、C:0.005%以上で0.10%未満、Si:0.30%以下、Mn:0.20〜1.20%、P:0.040%以下、S:0.050%以下、Al:0.050%以下、B:0.0002〜0.0050%、Ti:0.010〜0.080%およびN:0.0080%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、さらに下記の式(1)で表されるfn1が0を超える化学組成を有することを特徴とする冷鍛高周波焼入れ用鋼(ただし、鋼管用鋼を除く)
    fn1=Ti−3.4N・・・(1)
    上記式(1)中のTiおよびNは、それぞれの元素の質量%での鋼中含有量を表す。
  2. Feの一部に代えて、Cu:0.20%以下、Ni:0.20%以下、Cr:0.20%以下、Mo:0.20%以下およびV:0.20%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の冷鍛高周波焼入れ用鋼。
  3. 請求項1または2に記載の化学組成を有することを特徴とする冷鍛高周波焼入れ用棒鋼。
  4. 請求項3に記載の冷鍛高周波焼入れ用棒鋼を用いることを特徴とする自動車足回り部品。
  5. 請求項1または2に記載の化学組成を有することを特徴とする自動車用ハブ。
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