JP5700611B1 - 地中埋設杭撤去方法、及び地中埋設杭撤去装置 - Google Patents

地中埋設杭撤去方法、及び地中埋設杭撤去装置 Download PDF

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Abstract

【課題】地中に埋設された柱状改良杭を低コストで且つ確実に撤去する技術を提供する。【解決手段】破砕ビット13が装着されたスクリュー11を用いて、地中に埋設された筋材又は線材を含まない柱状改良杭Pを撤去する地中埋設杭撤去方法であって、スクリュー11は、筒状のケーシング12の内部に上下移動及び回転可能に収容され、スクリュー11を柱状改良杭Pの上方位置にセットする位置決め工程と、スクリュー11を回転させながらケーシング12とともに下降させることにより、破砕ビット13で柱状改良杭Pを破砕しながら地中を掘削する掘削工程と、スクリュー11の基端側11Bから圧縮空気を注入して先端側11Aから噴射させることにより、地中に存在する柱状改良杭Pの破砕物pをケーシング12の上部から排出する排出工程と、を包含する。【選択図】図2

Description

本発明は、地中に埋設された筋材又は線材を含まない柱状改良杭を撤去する地中埋設杭撤去方法、及び地中埋設杭撤去装置に関する。
住宅等の建物を建築する場合、その地盤の強度が不十分であることが判明すると、地盤を安定させるための地盤改良工事が行われることがある。例えば、「柱状改良工法」と呼ばれる地盤改良工事が知られている。柱状改良工法は、地盤を掘削してセメントスラリーを注入し、その状態で攪拌を行ってセメントスラリーと地盤に含まれる土壌とを混合し、その混合物を固化させて地中に柱状の杭を形成する工法である。この杭は柱状改良杭と呼ばれ、軟弱な地盤の上に建築された建物を安定化させるように機能するものである。柱状改良工法は、軟弱層が地表面から続いている場合に有効な工法であり、比較的小型の機械を用いて施工することができるため、近年、一般住宅向けの地盤改良工事において施工実績が増加している。
地盤の深層部が軟弱である場合には、「スラリー系機械攪拌式深層混合処理工法」と呼ばれる地盤改良工事が行われる。スラリー系機械攪拌式深層混合処理工法は、地盤を掘削しながら、セメントスラリーの注入及び攪拌機による攪拌を行い、掘削が所定の深度に到達したら、攪拌機を上下に反復移動させることで、深層部でのセメントスラリーと土壌との混合性を高めたものであり、これも柱状改良工法の一種である。スラリー系機械攪拌式深層混合処理工法では、攪拌機の攪拌速度、並びに上下移動速度(掘削速度及び引き揚げ速度)を管理することにより、高品質の柱状改良杭を形成することができる。
このように、柱状改良工法によって地中に形成される柱状改良杭は、基本的にはセメントスラリーと土壌との混合物から構成される中実の柱状体であり、鉄骨等の筋材やピアノ線等の線材が含まれないコンクリートを主成分としたシンプルな構造物となる。
ところで、土地を売却する場合、その土地に建築されている建物を解体し、整地することが求められることがある。ところが、上記のような地盤改良工事を施工した土地では、地中に柱状改良杭が残存しているため、地表面を更地にしただけでは不十分であり、柱状改良杭を撤去しなければ土地の評価額が低くなることがある。そこで、地中に杭等が埋設されている場合には、これらを完全に撤去する等して土地をほぼ元の状態に回復させることが望まれている。
地中に埋設された杭を撤去する技術として、例えば、杭に振動を与えて周辺地盤との摩擦を低減することにより、杭を引き抜き易くする工法があった(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1によれば、地中に突き刺さっている既設杭を引き抜くために、チャック装置を備えた振動杭打機が使用される。この工法では、既設杭をチャック装置の中心に位置させた状態で振動杭打機を地盤の所定位置まで貫入し、チャック装置で既設孔を保持した状態で振動杭打機を上昇させる。これにより、既設杭は地中から撤去される。
地中に埋設された杭を撤去する他の技術として、杭が埋設されている地盤に存在する地下水を利用し、杭が打設されている地層を緩ませた状態で杭を引き抜く工法があった(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2によれば、既設杭の内部に詰まった土砂等の充填物を既設杭の下端まで掘削し、土砂等を地下水とともに排出することにより、既設杭下端でボイリング現象を誘発させる。これにより、既設杭を支持している地盤に緩みが発生し、この状態で既設杭を一旦下方に貫入させた後、上方に引き揚げると、既設杭は地中から撤去される。
地中に埋設された杭を撤去する別の技術として、杭を細かく切断した状態で繰り返し地上に排出する工法があった(例えば、特許文献3を参照)。特許文献3によれば、既設杭の軸心近傍を掘削して貫通孔を形成し、この貫通孔の内部にガイドレールを敷設し、当該ガイドレールに既設杭を切断するための切断手段、及び切断片を地上に搬送するための排出手段を走行させている。既設杭は、切断手段による切断、及び排出手段による切断片の搬送が繰り返されることにより、地中から順次撤去される。
特開平6−146282号公報 特開2000−352053号公報 特開平7−216886号公報
上述の特許文献1〜3に記載される技術は、工場やビル等の比較的大規模な建築物に使用されることが多い既設杭を対象とした工法であり、近年、施工実績が増加している一般住宅向けの地盤改良工事等において用いられる柱状改良杭を想定したものではない。このため、特許文献1〜3の既設杭の撤去工法をそのまま柱状改良杭の撤去に転用すると、様々な問題が発生することが予想される。
特許文献1の工法は、既設杭を撤去するために振動杭打機を使用しているが、一般住宅等に使用される柱状改良杭は、筋材又は線材を含まないため、既設杭と比べると脆く砕け易いものとなっている。そのため、振動杭打機を用いて柱状改良杭に振動を与えると、柱状改良杭が地中で破断し、地上に引き揚げることができなくなる虞がある。また、振動杭打機は大掛かりな装置構成となるため、日本の一般的な住宅地では、装置や機材の搬入自体が難しいケースが多いと予想される。
特許文献2の工法は、それほど大掛かりな装置構成とはならないが、大量の地下水が土砂とともに地表に噴出するため、杭を引き揚げた後に泥水処理が必要となる。また、地下水が存在する地盤でなければ実施できないため、日本の一般的な住宅地において適用できるケースは限られている。
特許文献3の工法は、既設杭に形成した貫通孔内部にガイドレール等の構造物を設置することから、径が大きい杭を対象とするものである。一般住宅等に使用される柱状改良杭は、通常、既設杭より径が小さいため、同様の工法を適用することは困難である。また、装置構成が複雑になるため、施工に多大なコストを要するという問題もある。
このように、地中に埋設された既設杭を撤去する技術は種々が知られているが、地中に埋設された柱状改良杭を撤去するための技術については、柱状改良杭の歴史が比較的浅いこともあって、有効な工法は未だ開発されていないのが現状である。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、特に、近年、一般住宅等に使用されるようになってきた筋材又は線材を含まない柱状改良杭を対象とし、地中に埋設された柱状改良杭を低コストで且つ確実に撤去する技術を確立することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明に係る地中埋設杭撤去方法の特徴構成は、
破砕ビットが装着されたスクリューを用いて、地中に埋設された筋材又は線材を含まない柱状改良杭を撤去する地中埋設杭撤去方法であって、
前記スクリューは、筒状のケーシングの内部に上下移動及び回転可能に収容され、
前記スクリューを前記柱状改良杭の上方位置にセットする位置決め工程と、
前記スクリューを回転させながら前記ケーシングとともに下降させることにより、前記破砕ビットで前記柱状改良杭を破砕しながら地中を掘削し、前記破砕ビットを、前記ケーシングの下端より下方位置において、前記ケーシングの直径より大きい回転径で回転させる掘削工程と、
前記スクリューの基端側から圧縮空気を注入して先端側から噴射させることにより、地中に存在する前記柱状改良杭の破砕物を前記ケーシングの上部から排出する排出工程と、
を包含することにある。
上述のとおり、一般住宅向けの地盤改良工事において施工される柱状改良杭は、比較的新しい技術であるため、建物を解体して柱状改良杭が埋設されている土地を整地するというケースはまだそれほど多くはない。従って、地中に埋設されている柱状改良杭の撤去技術は、これから本格的に検討されていく技術であり、既設杭の撤去方法とは異なる新たな技術開発が望まれている。
そこで、本発明者らは、筋材又は線材を含まない柱状改良杭は、従来公知の既存杭と比較して脆く砕け易いという性質に着目し、鋭意研究の結果、柱状改良杭を対象とした新たな撤去工法を開発するに至った。
本構成の地中埋設杭撤去方法によれば、地中に埋設されている柱状改良杭は、スクリューに装着された破砕ビットで破砕された後、スクリューの基端側から注入し、先端側から噴射される圧縮空気の力により、スクリューを収容しているケーシングの上部から地上に排出される。つまり、既設杭を撤去する場合では必要であった杭の引き抜き作業が本発明では不要となる。本発明は、脆く砕け易い柱状改良杭を無理やり引き抜くのではなく、敢えて地中で破砕してしまうことで、地中から撤去し易くするという全く新しい技術思想に基づいてなされたものである。破砕した柱状改良杭の破片は、筋材又は線材を含まないことから軽量であるため、圧縮空気の力によって地上に排出することが可能となる。また、破砕物の搬送に圧縮空気を利用しているため、掘削現場が水でぬかるんだり、薬剤で汚染されたりすることがない。従って、土地を回復させるにあたり、地盤の損傷や汚染を最小限に抑制することができる。
さらに、本構成の地中埋設杭撤去方法によれば、破砕ビットによる破砕範囲がケーシングの直径を確実に含むため、地盤の掘削時にケーシングをスムーズに下降させることができ、その結果、ケーシングの内部への破砕物の収容を確実に行うことができる。また、柱状改良杭を破砕する際に、例えば、柱状改良杭が若干傾いてケーシングの枠から外れそうになっても破砕ビットで確実に破砕することができるので、掘削作業を中断することなく、連続運転が可能となる。
本発明の地中埋設杭撤去方法において、
前記ケーシングを地中に残存させた状態で、前記スクリューを前記ケーシングから引き抜く引抜工程と、
前記スクリューが引き抜かれた前記ケーシングの内部に土壌を充填する充填工程と、
前記土壌を地中に残存させた状態で、前記ケーシングを地上に引き揚げる引揚工程と、
をさらに包含することが好ましい。
本構成の地中埋設杭撤去方法によれば、破砕した柱状改良杭の破片を圧縮空気によって地上に搬送(撤去)すると、ケーシング内が空洞になるため、スクリューを引き抜いてケーシングの内部に土壌を充填し、その後ケーシングを地上に引き揚げるだけで、掘削によって形成した穴を土壌で埋めることができる。これにより、土地をほぼ元の状態に回復させることができ、整地が完了する。
本発明の地中埋設杭撤去方法において、
前記位置決め工程において、前記ケーシングは、上面視で前記柱状改良杭を包囲するように配置されることが好ましい。
本構成の地中埋設杭撤去方法によれば、柱状改良杭を破砕しながら地中を掘削する前に、上面視で破砕対象の柱状改良杭を包囲するようにケーシングを配置することで、柱状改良杭の破砕物を確実にケーシングの内部に収容することができる。その結果、柱状改良杭をほぼ全て撤去することが可能となり、埋設異物が排除された評価額の高い土地に仕上げることができる。
本発明の地中埋設杭撤去方法において、
前記排出工程において、前記圧縮空気の注入量は、前記柱状改良杭の破砕物の排出量に応じて調整されることが好ましい。
本構成の地中埋設杭撤去方法によれば、圧縮空気の注入量と、柱状改良杭の破砕物の排出量とのバランスを見ながら、柱状改良杭の撤去作業を連続的に行うことができる。
本発明の地中埋設杭撤去方法において、
前記掘削工程と前記排出工程とを同期させることが好ましい。
本構成の地中埋設杭撤去方法によれば、掘削工程と排出工程とを同期させることで、柱状改良杭の破砕物が地中に過剰に滞留したり、柱状改良杭の破砕物が地上に一気に排出されたりすることなく、安定した定常状態で柱状改良杭の撤去作業を連続的に行うことができる。
本発明の地中埋設杭撤去方法において、
前記掘削工程と前記排出工程とを交互に反復させることが好ましい。
本構成の地中埋設杭撤去方法によれば、掘削工程と排出工程とを交互に反復させることで、夫々の作業を独立して行うことができる。従って、一人のオペレーターでも余裕を持って柱状改良杭の撤去作業を進めることができる。
上記課題を解決するための本発明に係る地中埋設杭撤去装置の特徴構成は、
地中に埋設された筋材又は線材を含まない柱状改良杭を撤去する地中埋設杭撤去装置であって、
破砕ビットが装着されたスクリューと、
前記スクリューを上下移動及び回転可能に収容する筒状のケーシングと、
前記スクリューを前記柱状改良杭の上方位置にセットする位置決め手段と、
前記スクリューの基端側に接続され、当該スクリューの先端側から圧縮空気を噴射させる圧縮空気源と、
前記ケーシングの上部に装着され、前記破砕ビットによって破砕された前記柱状改良杭の破砕物を排出する排出手段と、
を備え
前記破砕ビットは、前記ケーシングの下端より下方位置において、前記ケーシングの直径より大きい回転径で回転することにある。
本構成の地中埋設杭撤去装置によれば、上述した本発明の地中埋設杭撤去方法と同様の優れた作用効果を奏する。
すなわち、本発明では、既設杭を撤去する場合では必要であった杭の引き抜き作業が不要となり、しかも、脆く砕け易い柱状改良杭を地中から容易に撤去することができる。また、破砕物の搬送に圧縮空気を利用しているため、掘削現場が水でぬかるんだり、薬剤で汚染されたりすることがなく、土地を回復させるにあたり、地盤の損傷や汚染を最小限に抑制することができる。
本発明の地中埋設杭撤去装置において、
前記スクリューを前記ケーシングに対して相対移動させる移動手段と、
前記ケーシングの内部に土壌を充填する充填手段と、
前記ケーシングを引き揚げる引揚手段と、
をさらに備えることが好ましい。
本構成の地中埋設杭撤去装置によれば、上述した本発明の地中埋設杭撤去方法と同様の優れた作用効果を奏する。
すなわち、本発明では、掘削によって形成した穴を土壌で埋めることで、土地をほぼ元の状態に回復させることができる。
図1は、本発明の地中埋設杭撤去装置の構成を概略的に示した説明図である。 図2は、本発明の地中埋設杭撤去方法を実施する手順を示した工程説明図である。 図3は、地中埋設杭撤去方法を実施するにあたり、オーガーと柱状改良杭との適切な位置関係を示した説明図である。
以下、本発明に係る実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
〔柱状改良杭〕
初めに、本発明の地中埋設杭撤去方法、及び地中埋設杭撤去装置において施工対象となる柱状改良杭について説明する。柱状改良杭は、前述したように、柱状改良工法やスラリー系機械攪拌式深層混合処理工法等の地盤改良工事を施工する場合において、地中に形成される筋材や線材を含まない中実の柱状体である。柱状改良杭の構成成分は、主に、セメントと土壌との混合物である。地盤改良工事を行うにあたっては、先ず、セメントスラリーが調合される。セメントスラリーの配合は、水/セメント比(重量比)として、50/50〜90/10、好ましくは60/40〜80/20、より好ましくは70/30に調整される。セメントスラリーに混合される土壌は、通常は地盤改良工事を行う地盤に存在する土壌(すなわち、掘削土)である。セメントスラリーと土壌との混合比率は、施工する地盤の状態(掘削土の種類、粒度、硬度、粘度、含水量等)を考慮し、施工後の柱状改良杭を含む改良地盤が、後述の許容鉛直支持力度を満たすように調整される。
柱状改良杭は、地盤の掘削穴の内部に形成されるため、通常は円柱形状である。柱状改良杭のサイズは、掘削穴のサイズ、すなわち掘削条件によって決まる。柱状改良杭のサイズは、通常、直径が400〜1000mm、好ましくは500〜800mm、より好ましくは500〜600mmに設定され、高さが1〜10mに設定される。また、一般的な住宅地における地盤改良工事の場合、一回の工事において、10〜80本程度の柱状改良杭が住宅の基礎下方の地中に形成される。
柱状改良杭は、安全性等の観点から一定の基準を満たすことが要求される。例えば、柱状改良杭を施工した改良地盤の指標として、許容鉛直支持力度が定められている。許容鉛直支持力度とは、地盤がせん断破壊するときの鉛直方向の極限支持力を所定の安全率で割った数値である。長期的に見た場合、改良地盤の許容鉛直支持力度は、20kN/m以上を達成することが望ましいとされている。また、柱状改良杭そのものの強度は、一軸圧縮試験において、600kN/m以上を達成することが望ましいとされている。
〔地中埋設杭撤去装置〕
地盤改良工事によって形成した柱状改良杭を撤去する必要が生じた場合、地中埋設杭撤去装置が用いられる。本発明では、掘削機能を備えた工事用重機を地中埋設杭撤去装置に利用している。図1は、本発明の地中埋設杭撤去装置100の構成を概略的に示した説明図である。地中埋設杭撤去装置100は、オーガー10、車両20、及びコンプレッサー30を備えている。
オーガー10は、回転しながら地盤Gを掘削するスクリュー11と、スクリュー11を収容するケーシング12とを備えている。オーガー10は金属製のため、通常はケーシング12の外側から内部のスクリュー11を目視することはできないが、図1では説明容易化のため、ケーシング12の内部を透過させた状態で示してある。ここで、スクリュー11のうち、地盤Gを掘削する側(下側)を先端側11Aとし、その反対の上側を基端側11Bと規定する。スクリュー11は、回転軸Xに沿って延在するスクリューロッド11aと、スクリューロッド11aの周囲に螺旋状に形成される回転翼11bとを備えている。スクリューロッド11aの内部には回転軸Xに沿って中空部11cが形成されている。従って、スクリュー11は、回転軸Xの方向に沿って、基端側11Bからスクリューロッド11a内の中空部11cを介して先端側11Aまで通じる管状構造となっている。スクリュー11は、先端側11Aに柱状改良杭Pを破砕するための破砕ビット13が装着され、基端側11B付近にオーガー中空チャック部分14が設けられる。オーガー10を駆動してスクリュー11を回転させると、破砕ビット13及び回転翼11bによる地盤Gの掘削が進行し、スクリュー11の進行方向(掘削方向)に柱状改良杭Pが存在すると、破砕ビット13により破砕される。オーガー10の駆動中、スクリューロッド11a内の中空部11cは、コンプレッサー30から供給された圧縮空気によって高圧に維持されている。このため、スクリュー11は、地盤Gの掘削土や柱状改良杭Pの破砕物によって閉塞されることはなく、掘削作業を継続することができる。
ケーシング12は、スクリュー11の外径より大きい内径を有する筒状部材であり、本来は掘削中の地盤Gの崩壊を防止するためのものであるが、本発明においては、掘削土及び破砕物の散乱を防止する役割も担っている。ケーシング12に収容されるスクリュー11は、撤去対象となる柱状改良杭Pに合わせて交換可能である。そのため、スクリュー11は、種々のサイズのものが準備されている。典型的な一般住宅用の柱状改良杭を対象とする場合、スクリュー11のサイズは、外径400〜1000mm、長さ1000〜10000mmに設定される。ケーシング12は、内部に収容するスクリュー11が干渉しないように設定され、例えば、前述したサイズのスクリュー11を収容する場合、内径が405〜1050mm、長さが1000〜10000mm程度に設定される。このように、ケーシング12のサイズ(内径)は、スクリュー11のサイズ(外径)より1〜5%程度大きくなるように構成することが好適である。なお、スクリュー11及びケーシング12として、さらに長いサイズのものを要する場合は、既存のスクリュー11及びケーシング12を複数用意し、これらを縦に結合して使用することも可能である。スクリュー11は、ケーシング12の内部に収容された状態で、ケーシング12に対して相対的に上下移動及び回転動作をすることができる。ケーシング12の上部には、破砕ビット13によって破砕された柱状改良杭Pの破砕物を地上に排出するための排出部15が装着される。排出部15は、ボルト等の締結部材によりケーシング12に着脱可能に構成される。排出部15は、ケーシング12に被せられる管体15aと、柱状改良杭Pの破砕物が排出される開口部15bとを有している。管体15aの上端には、ケーシング12から排出部15に押し上げられてきた柱状改良杭Pの破砕物が上方に飛び出さないように、スクリューロッド11aの周囲を封止するキャップを設けることができる。開口部15bは、ケーシング12から排出部15に押し上げられてきた柱状改良杭Pの破砕物が、ケーシング12の内部に後戻りしないように、側方に向かって開口している。柱状改良杭Pの破砕物の排出工程については、後述の「地中埋設杭撤去方法」のところで詳しく説明する。
車両20は、オーガー10を地盤Gに対して鉛直方向に立てた状態で支持しながら、オーガー10を掘削地点まで移動させる重機である。つまり、車両20は、オーガー10を柱状改良杭Pが埋設されている地点の上方位置にセットする位置決め手段となる。オーガー10の昇降動作(上下移動)は、車両20に設けられた昇降機21によって行われる。昇降機21には、通称「だっこちゃん」と呼ばれる把持アーム22が設けられており、図1では、オーガー10のオーガー中空チャック部分14の近傍が把持アーム22で把持されている。昇降機21は、オーガー10を上下移動させるものであるが、ここで、スクリュー11をケーシング12に対してフリー状態(完全に相対移動可能な状態)にして昇降機21を上昇させると、把持アーム22に把持されているオーガー中空チャック部分14が上方に移動し、これにより、スクリュー11をケーシング12の内部から引き抜くことができる。このように、昇降機21は、スクリュー11をケーシング12に対して相対移動させる移動手段となる。また、昇降機21の把持アーム22は、ケーシング12の側面を把持することも可能である。この場合、昇降機21を上昇させると、ケーシング12のみを上方に移動させることができる。従って、昇降機21は、ケーシング12を引き揚げる引揚手段としての機能も有する。
本発明の地中埋設杭撤去装置100は、柱状改良杭Pの破砕物を圧縮空気の力で地上まで搬送するものである。そのため、圧縮空気源として、コンプレッサー30を備えている。コンプレッサー30は、破砕ビット13の先端に圧縮空気を供給するように、スクリュー11の基端側11Bに接続される。スクリュー11の基端側11Bに注入された圧縮空気は、スクリューロッド11a内の中空部11cを通過し、スクリュー11の先端側11Aから破砕ビット13の周囲に噴射される。これにより、地中が高圧状態となり、柱状改良杭Pの破砕物はケーシング12の内部を通って上方に搬送される。そして、柱状改良杭Pの破砕物は、ケーシング12の上部に設けられた排出部15から地上に排出される。コンプレッサー30から吐出される圧縮空気は、コンプレッサー30の出力制御や、コンプレッサー30のバルブ31の調節により、適切な空気圧および吐出量に調整される。柱状改良杭Pの破砕物の搬送及び排出をスムーズに行うためには、コンプレッサー30から吐出される圧縮空気を、空気圧0.6MPa以上、吐出量5m/分以上に維持することが好ましい。なお、圧縮空気源として、コンプレッサー30の代わりに高圧の空気ボンベ(図示せず)を使用し、空気ボンベから噴射される圧縮空気によって柱状改良杭Pの破砕物を搬送及び排出することも可能である。
〔地中埋設杭撤去方法〕
図2は、本発明の地中埋設杭撤去方法を実施する手順を示した工程説明図である。図3は、地中埋設杭撤去方法を実施するにあたり、オーガー10と柱状改良杭Pとの適切な位置関係を示した説明図である。ここで、図3は、地表面側からオーガー10を見たものであるが、柱状改良杭Pとの位置関係を分かり易くするため、地中に埋設されている柱状改良杭Pの輪郭を破線で示してある。また、図2及び図3においては、説明簡略化のため、図1に示していた車両20については記載を省略してある。
本発明の地中埋設杭撤去方法では、図2に示す(a)位置決め工程、(b)掘削工程、及び(c)排出工程が実施され、さらに、(d)引抜工程、(e)充填工程、及び(f)引揚工程が実施される。その結果、図2(g)に示すように、整地作業が完了する。以下、地中埋設杭撤去方法の各工程について、詳細に説明する。
図2(a)の位置決め工程では、スクリュー11を柱状改良杭Pの上方位置にセットする。地中の柱状改良杭Pの位置については、予め事前調査や建物の設計図面等から正確に把握しておくことが好ましい。次に、車両20を操縦して地盤Gの掘削地点まで移動し、車両20に取り付けられているオーガー10を撤去対象の柱状改良杭Pの上方に正確に配置する。すなわち、図3に示すように、スクリュー11のスクリューロッド11aの回転軸Xを柱状改良杭Pの中心に合わせる。このとき、スクリュー11を収容しているケーシング12が、上面視で柱状改良杭Pを包囲するように配置することが好ましい。図3のように、ケーシング12が破砕対象の柱状改良杭Pを完全に取り囲むようにオーガー10をセットし、この状態で地盤Gの掘削を行うと、柱状改良杭Pの破砕物は確実にケーシング12の内部に収容されることになる。従って、柱状改良杭Pは、破砕物の状態でほぼ全てを回収することができる。
図2(b)の掘削工程では、オーガー10を駆動してスクリュー11を回転させる。この状態でオーガー10を把持している昇降機21を下降させると、スクリュー11はケーシング12とともに下降し、スクリュー11の先端側11Aに装着されている破砕ビット13が地表面に接触して地盤Gの掘削が開始される。そして、このまま昇降機21の下降を続けると、破砕ビット13はケーシング12の下端より下方位置にあるため、破砕ビット13はケーシング12よりも先に柱状改良杭Pの埋設位置に到達することになる。そして、柱状改良杭Pは、破砕ビット13により細かく破砕されて破砕物pとなる。地中に生成した破砕物pは、破砕ビット13に続いて下降してきたケーシング12の内部(内側)に収容される。掘削工程においては、破砕ビット13の回転径をケーシング12の直径より大きくしておくことが好ましい。この場合、破砕ビット13による破砕範囲がケーシング12の直径を確実に含むため、地盤Gの掘削時にケーシング12をスムーズに下降させることができ、その結果、ケーシング12の内部に破砕物pを確実に収容することができる。また、柱状改良杭Pを破砕する際に、例えば、柱状改良杭Pが若干傾いてケーシング12の枠から外れそうになることがあっても、破砕ビット13は確実に柱状改良杭Pを破砕することができるため、掘削作業を中断することなく、連続運転が可能となる。破砕ビット13の回転径の拡大は、図3に示すように、破砕ビット13はスクリュー11に対して枢軸13aで回動可能に軸支されているため、スクリュー11を回転させるだけで自動的に行うことができる。すなわち、スクリュー11を白矢印の方向である正方向(掘削方向)に回転させると、破砕ビット13は、掘削土の抵抗を受けて枢軸13aを中心に回動することにより先端がケーシング12の枠外に突出し、実線で示した開状態となる。これにより、破砕ビット13の回転径が拡大する。一方、スクリュー11を逆方向に回転させると、破砕ビット13は内側に押し込まれてケーシング12の枠内に後退するように回動し、これにより、破砕ビット13は破線で示した閉状態となって、回転径が縮小する。
図2(c)の排出工程では、コンプレッサー30を駆動し、スクリュー11に圧縮空気を供給する。スクリュー11の基端側11Bに注入された圧縮空気は、スクリューロッド11a内の中空部11cを通り、スクリュー11の先端側11Aから破砕ビット13の周囲に噴射される。これにより、地中が高圧状態となるため、地中に存在する柱状改良杭Pの破砕物pは、スクリュー11とケーシング12の内壁との間の空間を通って上方に押し上げられ、ケーシング12の上部に設けられた排出部15の開口部15bから地上に排出される。コンプレッサー30からスクリュー11への圧縮空気の注入量は、柱状改良杭Pの破砕物pの排出量に応じて適宜調整される。圧縮空気の注入量と、柱状改良杭Pの破砕物pの排出量とのバランスをとることで、柱状改良杭Pの撤去作業を連続的に行うことが可能となる。
図2(b)の掘削工程、及び図3(c)の排出工程は、実際には、並行して又は交互に実施される。掘削工程と排出工程とを並行して実施する場合、両工程を同期させることが好ましい。この場合、オーガー10を駆動してスクリュー11を回転させると同時に、コンプレッサー30からスクリュー11に圧縮空気を注入することで、両工程を同期させることができる。掘削工程と排出工程とを同期させると、柱状改良杭Pの破砕物pが地中に過剰に滞留したり、柱状改良杭Pの破砕物pが地上に一気に排出されたりすることなく、安定した定常状態で柱状改良杭Pの撤去作業を連続的に行うことが可能となる。掘削工程と排出工程とを交互に実施する場合は、夫々の作業を独立して行うことになるので、一人のオペレーターでも余裕を持って柱状改良杭Pの撤去作業を進めることができ、さらに、掘削工程と排出工程とを交互に反復実施することで、最終的に柱状改良杭Pを完全に撤去することが可能となる。このように、(a)位置決め工程、(b)掘削工程、及び(c)排出工程を実施することにより、地中に埋設された柱状改良杭Pは撤去される。そして、整地作業を完了するためには、引き続いて(d)引抜工程、(e)充填工程、及び(f)引揚工程を実施する。
図2(d)の引抜工程では、ケーシング12を地中に残存させた状態で、スクリュー11をケーシング12から引き抜く作業が行われる。スクリュー11の引き抜きは、スクリュー11をケーシング12に対してフリー状態(完全に相対移動可能な状態)にし、昇降機21を上昇させることにより行われる。スクリュー11が引き抜かれたケーシング12は、内部が空洞状態となる。
図2(e)の充填工程では、ケーシング12の内部(空洞)に新たな土壌Sが充填される。充填工程に使用される土壌Sは、土地をほぼ元の状態に回復させるという観点から、掘削を行った地盤を構成する土壌と同種の土壌が好ましいが、地盤の強度を確保できる土壌であれば、他の場所から持ち込んだ土壌であっても構わない。そのような土壌として、例えば、真砂、川砂、自然砕石、山ズリ等を使用することができる。充填工程は、土壌を効率よく扱うことができる充填手段、例えば、バックホー40を用いて行われる。バックホー40を用いて土壌Sの充填作業を行えば、複数の柱状改良杭Pの撤去作業を効率よく実施することができる。なお、ケーシング12の内径(すなわち、掘削穴の直径)が小さい場合は、バックホー40を用いるまでもなく、作業員が手作業により、ケーシング12の内部に土壌Sを充填するようにしても構わない。
図2(f)の引揚工程では、ケーシング12を地上に引き揚げる作業が行われる。ケーシング12の引き揚げは、例えば、昇降機21の把持アーム22をケーシング12の側面に装着し(図示省略)、この状態で昇降機21を上昇させて行われる。このとき、ケーシング12に振動を付与しながら引き揚げを行うと、ケーシング12の外面に接触している地盤Gとの摩擦が低減されるため、引き揚げ作業を容易に行うことができる。地中のケーシング12を引き揚げると、ケーシングSの内部に充填されていた土壌Sはそのまま地中に残存することになる。これにより、地盤Gの掘削により形成された穴の埋め戻しが完了する。
なお、(f)引揚工程において、ケーシング12を地中から引き揚げると、ケーシングSの体積(厚み分)に相当する筒状の空隙が瞬間的に地盤Gに発生し、埋め戻した土壌Sが外側に拡がって地盤Gに緩みや窪みが発生することがある。そこで、このような不具合を未然に防止するため、(e)充填工程において、周囲の地表面より若干高い位置まで土壌Sを過剰に充填することが好ましい。このような対策をしておくと、ケーシング12を地中から引き揚げた際、過剰に充填した土壌Sがケーシング12の体積減少分を補填し、地盤Gの緩みや窪みの発生を防止することができる。
本発明の地中埋設杭撤去方法によれば、(a)位置決め工程、(b)掘削工程、(c)排出工程、(d)引抜工程、(e)充填工程、及び(f)引揚工程を実施することにより、地中に埋設されていた柱状改良杭Pは土壌Sによって完全に置換され、土地は(g)のように、ほぼ元の状態に回復される。
以上のように、本発明の地中埋設杭撤去方法、及び地中埋設杭撤去装置は、脆く砕け易い柱状改良杭を無理やり引き抜くのではなく、敢えて地中で破砕し、破砕物を圧縮空気の力によって地上に排出するという全く新しい技術を採用するものである。この新技術によれば、掘削現場が水でぬかるんだり、薬剤で汚染されたりすることがないため、土地を回復させるにあたり、地盤の損傷や汚染を最小限に抑制することが可能となる。しかも、本発明は、低コストで且つ確実に地中埋設杭を撤去することができるため、特に、一般の住宅地の整地に適した工法となり得るものである。
本発明の地中埋設杭撤去方法、及び地中埋設杭撤去装置は、一般住宅向けの地盤改良工事において施工される柱状改良杭の撤去に利用可能であるが、筋材又は線材を含まない地中埋設物であれば、他の地中埋設物の撤去においても適用可能である。
10 オーガー
11 スクリュー
11a スクリューロッド
11b 回転翼
11c 中空部
11A スクリューの先端側
11B スクリューの基端側
12 ケーシング
13 破砕ビット
14 オーガー中空チャック部分
15 排出部(排出手段)
15a 管体
15b 開口部
20 車両(位置決め手段)
21 昇降機(移動手段、引揚手段)
22 把持アーム
30 コンプレッサー(圧縮空気源)
31 バルブ
40 バックホー(充填手段)
100 地中埋設杭撤去装置
G 地盤
P 柱状改良杭
p 破砕物
S 土壌
X 回転軸

Claims (8)

  1. 破砕ビットが装着されたスクリューを用いて、地中に埋設された筋材又は線材を含まない柱状改良杭を撤去する地中埋設杭撤去方法であって、
    前記スクリューは、筒状のケーシングの内部に上下移動及び回転可能に収容され、
    前記スクリューを前記柱状改良杭の上方位置にセットする位置決め工程と、
    前記スクリューを回転させながら前記ケーシングとともに下降させることにより、前記破砕ビットで前記柱状改良杭を破砕しながら地中を掘削し、前記破砕ビットを、前記ケーシングの下端より下方位置において、前記ケーシングの直径より大きい回転径で回転させる掘削工程と、
    前記スクリューの基端側から圧縮空気を注入して先端側から噴射させることにより、地中に存在する前記柱状改良杭の破砕物を前記ケーシングの上部から排出する排出工程と、
    を包含する地中埋設杭撤去方法。
  2. 前記ケーシングを地中に残存させた状態で、前記スクリューを前記ケーシングから引き抜く引抜工程と、
    前記スクリューが引き抜かれた前記ケーシングの内部に土壌を充填する充填工程と、
    前記土壌を地中に残存させた状態で、前記ケーシングを地上に引き揚げる引揚工程と、
    をさらに包含する請求項1に記載の地中埋設杭撤去方法。
  3. 前記位置決め工程において、前記ケーシングは、上面視で前記柱状改良杭を包囲するように配置される請求項1又は2に記載の地中埋設杭撤去方法。
  4. 前記排出工程において、前記圧縮空気の注入量は、前記柱状改良杭の破砕物の排出量に応じて調整される請求項1〜3の何れか一項に記載の地中埋設杭撤去方法。
  5. 前記掘削工程と前記排出工程とを同期させる請求項1〜4の何れか一項に記載の地中埋設杭撤去方法。
  6. 前記掘削工程と前記排出工程とを交互に反復させる請求項1〜4の何れか一項に記載の地中埋設杭撤去方法。
  7. 地中に埋設された筋材又は線材を含まない柱状改良杭を撤去する地中埋設杭撤去装置であって、
    破砕ビットが装着されたスクリューと、
    前記スクリューを上下移動及び回転可能に収容する筒状のケーシングと、
    前記スクリューを前記柱状改良杭の上方位置にセットする位置決め手段と、
    前記スクリューの基端側に接続され、当該スクリューの先端側から圧縮空気を噴射させる圧縮空気源と、
    前記ケーシングの上部に装着され、前記破砕ビットによって破砕された前記柱状改良杭の破砕物を排出する排出手段と、
    を備え
    前記破砕ビットは、前記ケーシングの下端より下方位置において、前記ケーシングの直径より大きい回転径で回転する地中埋設杭撤去装置。
  8. 前記スクリューを前記ケーシングに対して相対移動させる移動手段と、
    前記ケーシングの内部に土壌を充填する充填手段と、
    前記ケーシングを引き揚げる引揚手段と、
    をさらに備えた請求項7に記載の地中埋設杭撤去装置。
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