JP5699383B2 - 太陽電池モジュール - Google Patents
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Description
図1は、本発明の一実施形態である太陽電池モジュール1について、その層構成の一例を示す断面図である。太陽電池モジュール1は、入射光の受光面側から、透明前面基板2、前面封止材層3、太陽電池素子4、背面封止材層5、及び裏面保護シート6が順に積層されている。
これら第1封止材シート及び第2封止材シート(以下、両者を併せて、「封止材シート」とも言う。)は、以下に詳細を説明する封止材組成物を、通常の熱可塑性樹脂において通常用いられる成形法、即ち、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形、回転成形等の各種成形法により成型加工して、シート状又はフィルム状としたものである。尚、本発明におけるシート状とはフィルム状も含む意味であり両者に差はない。以下、第1封止材シート、第2封止材シートのそれぞれについて順次詳細を説明する。
前面封止材層3として用いる第1封止材シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、架橋剤を必須成分として含有し、更に必要に応じて架橋助剤及びその他の成分を含有する第1封止材組成物からなる。第1封止材シートは、この第1封止材組成物を上述の成型法によって成膜し、成形後に架橋処理を行って適度な架橋を進行させることによって得ることができる。製膜温度は90℃から120℃とすればよい。
(EVA)
第1封止材シートの材料である第1封止材組成物の主剤樹脂として用いるEVAは、従来公知のものを使用でき特に限定されず、太陽電池モジュール1として一体化された時点でのゲル分率を、60%以上、好ましくは、80%以上とすることができるものであればよい。又、そのような高架橋度のものとするために、酢酸ビニル含有量(VA含量)が24質量%以上35質量%以下であることが好ましい。
第1封止材組成物は、架橋剤を含有する。架橋剤は公知のものが使用でき特に限定されず、例えば公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン等のヒドロパーオキサイド類;ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、t‐ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐パーオキシ)ヘキシン‐3等のジアルキルパーオキサイド類;ビス‐3,5,5‐トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、o‐メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4‐ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシピバレート、t‐ブチルパーオキシオクトエート、t‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、ジ‐t‐ブチルパーオキシフタレート、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン‐3、t‐ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート等のパーオキシエステル類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等の有機過酸化物、又は、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジクミルパーオキサイド、といったシラノール縮合触媒等を挙げることができる。これらは1種類でも2種以上を組み合わせてもよい。具体的には、太陽電池モジュール作製の真空加熱ラミネーション工程におけるファストキュア法(真空加熱ラミネーションのみで封止材を高架橋させ、約150から160℃で30分から1時間静置し封止材を後架橋させるキュア工程を省略する方法)への適応の点からt‐ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(TBEC)が好ましく用いられる。
第1封止材組成物は、更に架橋助剤を含有してもよい。炭素−炭素二重結合及び/又はエポキシ基を有する多官能モノマー好ましく用いることができ、より好ましくは多官能モノマーの官能基がアリル基、(メタ)アクリレート基、ビニル基を用いることができる。これによって適度な架橋反応を促進させる。
第1封止材組成物に、ラジカル重合開始剤となる上記の架橋剤と、それをクエンチするラジカル吸収剤とを併用することにより、架橋の程度を調整してゲル分率を更に細かく調整してもよい。このようなラジカル吸収剤としては、ヒンダードフェノール系等の酸化防止剤や、ヒンダードアミン系の耐候安定化等が例示できる。架橋温度付近でのラジカル吸収能力が高い、ヒンダードフェノール系のラジカル吸収剤が好ましい。ラジカル吸収剤の含有量は、第1封止材組成物中に0.01質量%以上3質量%以下含まれることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下の範囲である。この範囲内であれば適度に架橋反応を抑制できる。
第1封止材組成物には、更にその他の成分を含有させることができる。例えば、第1封止材シートに耐候性を付与するための耐候性マスターバッチ、各種フィラー、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の成分が例示される。これらの含有量は、その粒子形状、密度等により異なるものではあるが、それぞれ太陽電池モジュール用封止材組成物中に0.001質量%以上5質量%以下の範囲内であることが好ましい。これらの添加剤を含むことにより、太陽電池モジュール用封止材組成物に対して、長期に亘って安定した機械強度や、黄変やひび割れ等の防止効果等を付与することができる。
背面封止材層5として用いる第2封止材シートは、低密度ポリエチレン系樹脂を主剤樹脂とし、更に必要に応じて、架橋剤、架橋助剤、その他の成分とを含有する第2封止材組成物からなる。第2封止材シートは、この第2封止材組成物を上述した通り、通常の熱可塑性樹脂において通常用いられる成形法によって成形することによって得ることができる。
(低密度ポリエチレン)
第2封止材シートの材料である第2封止材組成物の主剤樹脂としては、密度が0.940以下の低密度ポリエチレン(LDPE)、好ましくは直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いる。直鎖低密度ポリエチレンはエチレンとα−オレフィンとの共重合体であり、本発明においては、その密度が0.940g/cm3以下の範囲内、好ましくは0.900g/cm3以下の範囲内、より好ましくは0.870〜0.890g/cm3の範囲である。
第2封止材組成物には、必要に応じて架橋剤を含有させることにより、第2封止材シートを架橋済みの封止材シートとしてもよい。この場合、架橋剤は第1封止材組成物と同様のものが使用でき特に限定されない。具体的には、各種の有機過酸化物、アゾ化合物、シラノール縮合触媒等を挙げることができる。これらは1種類でも2種以上を組み合わせてもよい。
第2封止材シートを架橋済みの封止材シートとする場合には、第2封止材組成物に架橋助剤を含有させてもよい。架橋助剤としては、多官能ビニル系モノマー及び/又は多官能エポキシ系モノマーを好ましく用いることができ、これによって適度な架橋反応を促進させてゲル分率を90%以下とするとともに、この架橋助剤が直鎖低密度ポリエチレンの結晶性を低下させ透明性を維持する。これによって第2封止材シートをより透明性と低温柔軟性に優れる封止材シートとすることができる。
第2封止材シートを架橋済みの封止材シートとする場合には、ラジカル重合開始剤となる上記の架橋助剤と、それをクエンチするラジカル吸収剤とを併用することにより、架橋の程度を調整してゲル分率を更に細かく調整することができる。具体的なラジカル吸収剤としては、第1封止材組成物に用いることのできるものと同じものを同じ含有量範囲で用いることができる。その範囲内であれば適度に架橋反応を抑制できる。
第2封止材組成物には、耐候性マスターバッチ等、その他の成分を含有させることができる。第2封止材組成物に用いることができるその他の成分の種類、含有量及び、それらの成分による作用効果については、第1封止材組成物の場合と同様である。尚、耐候性マスターバッチについては、適宜作製して使用してもよいし、市販品を使用してもよい。耐候性マスターバッチに使用される樹脂としては、本発明に用いる直鎖低密度ポリエチレンでもよく、その他の樹脂であってもよい。
太陽電池モジュール1は、例えば、上記の透明前面基板2、第1封止材シートからなる前面封止材層3、太陽電池素子4、第2封止材シートからなる背面封止材層5、及び裏面保護シート6からなる部材を順次積層してから真空吸引等により一体化し、その後、ラミネーション法等の成形法により、上記の部材を一体成形体として加熱圧着成形して製造することができる。
第1封止材シートの実施例及び第2封止材シートの比較例として、下記の通りそれぞれ酢酸ビニル含量等の異なるEVAを主剤樹脂とする封止材シートを形成し、それぞれ封止材シートEVA1〜2とした。
EVA(酢酸ビニル含量28%、三井デュポンポリケミカル製、商品名EVAFLEX/EV250グレード)の100質量部に対して、架橋剤(アルケマ吉富株式会社製、商品名TBEC)1.0質量部、架橋助剤(サートマー社製、商品名:SR350)1.0質量部、酸化防止剤(BASFジャパン株式会社製、商品名Irganox1076)0.5質量部、UV吸収剤(ケミプロ化成株式会社製、商品名KEMISORB12)0.3質量部、耐候安定剤(BASFジャパン株式会社製、商品名Tinuvin770)0.1質量部を配合した封止材組成物を、φ30mm押出し機、200mm幅のTダイスを有するフィルム成形機を用いて、押出し温度90℃、引き取り速度1.1m/minで成形して、厚さ400μmの封止材シートEVA1を作製した。ゲル分率は0%であった。
EVA(酢酸ビニル含量33%、三井デュポンポリケミカル製、商品名EVAFLEX/EV150グレード)の100質量部に対して、上記EVA1の封止材組成物と同じ架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、UV吸収剤、耐候安定剤を、上記EVA1の封止材組成物と同じ配合比(質量部)で配合した封止材組成物を、EVA1と同一条件で成形して、厚さ400μmの封止材シートEVA2を作製した。ゲル分率は0%であった。
シラン変性透明樹脂2:密度0.881g/cm3であり、190℃でのMFRが2g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M−LLDPE)98質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.1質量部とを混合し、200℃で溶融、混練し、密度0.884g/cm3、190℃でのMFRが1.8g/10分であるシラン変性透明樹脂(以下「S2」と言う。)を得た。
耐候性マスターバッチ2:密度0.880g/cm3のチーグラー直鎖状低密度ポリエチレンを粉砕したパウダー100質量部に対して、ベンゾフェノール系紫外線吸収剤3.8質量部とヒンダードアミン系光安定化剤5質量部と、リン系熱安定化剤0.5質量部とを混合して溶融、加工し、ペレット化したマスターバッチを得た。
架橋剤コンパウンド樹脂:密度0.880g/cm3、190℃でのMFRが3.1g/10分のM−LLDPEペレット100質量部に対して、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン0.1質量部を含浸させコンパウンドペレットを得た。
S2:20質量部、耐候性マスターバッチ2:5質量部、架橋剤コンパウンド樹脂:80質量部を配合した組成物を、封止材シートLLDPE1と同一の条件で成形して、厚さ400μmの封止材シートLLDPE2を作製した。封止材シートLLDPE2のポリスチレン換算重量平均分子量は218,000g/mol、ゲル分率は0%であった。
上記の封止材シートEVA1〜2及び封止材シートLLDPE2〜4をそれぞれ第1封止材シート或いは、第2封止材シートとして用いて、実施例、比較例の太陽電池モジュール評価用試料を下記表1に示す構成で作成した。
<熱ラミネート条件> (a)真空引き:5.0分
(b)加圧(0kPa〜100kPa):1.5分
(c)圧力保持(100kPa):15.0分
(d)温度150℃
(太陽電池素子)
A:多結晶シリコン基板を用いて作製する結晶シリコン太陽電池素子。集電のための電極が採光面側に配置されているもの。(Q−CELLS社製、セルQ6LTT−200/1520 156mm)
B:バックコンタクト型の太陽電池素子。太陽電池素子の表面には電極がなく、裏面にP型電極とN型電極が設けられている。裏面のP型電極とN型電極は、それぞれ櫛状に形成されており、それぞれが互い違いに櫛目の間に入り込んでいる。隣接する太陽電池セルの裏面にあるP型電極とN型電極とが接続され、封止材に封止されたもの。
C:薄膜系の太陽電池素子。n型透明導電膜窓層、n型高抵抗バッファ層、p型CIS系光吸収層、金属裏面電極層、ガラス基板からなるガラス基板を除くデバイス厚さ3μm程度の薄膜発電素子が形成されたもの。
実施例及び比較例の封止材層評価用試料について、分子量、ゲル分率、ヘーズ値(JIS K7136)、について測定した。その結果を表2に示す。尚、それぞれの試験条件は以下の通りである。
測定機種:Wataers製GPC/V2000、
カラム:Shodex AT−G+AT−806MS×2本
溶離液:o−ジクロロベンゼン(0.3%BHT入り)
温度:カラム及びインジェクター 145℃
濃度:約1.0g/L
流速1.0ml/min
溶解性:完全溶解
検出器:示差屈折計(RI)
実施例及び比較例の封止材層評価用試料を用いて各実施例、比較例の背面封止材層について、水蒸気バリア性、絶縁性を測定した。その結果を表3に示す。尚、それぞれの試験条件は以下の通りである。
40℃、90%RH、単位g/m2・d、測定器:MOCON水蒸気透過率測定装置PERMATRAN−W
実施例及び比較例の太陽電池モジュール評価用試料を用いて、太陽電池素子の反りから発生するマイクロクラックについて測定した。その結果を表4に示す。尚、試験条件は以下の通りである。
2 透明前面基板
3 前面封止材層
4 太陽電池素子
5 背面封止材層
6 裏面保護シート
Claims (1)
- 太陽電池素子と、
前記太陽電池素子の受光面側に配置される第1封止材シートと、
前記太陽電池素子の裏面側に配置される第2封止材シートと、を備え、
前記第1封止材シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂であり、
前記第2封止材シートは、密度0.900g/cm3以下であり、ゲル分率が0%であって、且つ、ゲル分率が前記第1封止材シートのゲル分率より小さいポリエチレン系樹脂であって、
前記第2封止材シートのJIS−K7129 B法により、40℃、90%RH、の条件下で測定した水蒸気バリア性が2.11g/m2・d以下であることを特徴とする太陽電池モジュール。
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