一般的に、油圧ショベル等の建設機械は、履帯等を有して走行する走行体と、この走行体の上方に旋回フレームを介して連結され、左右方向に旋回する旋回体と、この旋回体の前方に設けられ、各アクチュエータを有して掘削等の作業を行うフロント作業機とを備えている。また、建設機械は、旋回体内に配設されたエンジンと、このエンジンによって駆動されるポンプ、例えば油圧ポンプと、エンジンから排出される排気ガスを外部へ放出する尾管とを備えている。
具体的には、旋回体は、上述のエンジンを内包するエンジンルームと、このエンジンルームの前方に配置され、作業者が乗車するキャブと、エンジンルームの後方に配置されたカウンタウェイトと、エンジンルームの上部に設けられ、上部の外装を形成する車体カバーと、エンジンルーム内に配置され、エンジンから排出された排気ガスを処理する後処理装置とを有している。
この後処理装置とエンジンはエンジンルーム内において排気管によって接続されており、上述の尾管は車体カバーに挿通されて基端側が後処理装置に接続されている。従って、エンジンから排出された排気ガスは、排気管によって後処理装置へ導かれ、後処理装置内において排気ガス中に含まれる有害な物質、例えば粒子状のパティキュレートマター(PM)が処理された後に尾管から旋回体の外部へ放出される。
尾管は、排気ガスが放出されている間、すなわちエンジンが動作している間は内部を流通する暖かい排気ガスによって暖められるので、尾管の温度が高くなっているが、エンジンが停止してから時間が経過すると、尾管は外気によって冷却される。このとき、大気中の水蒸気が尾管に冷却されることにより、尾管の内壁に大気中の水蒸気が凝縮して水滴が生成される。また、エンジンから排出される排気ガスには上述のパティキュレートマターの他に水蒸気が含まれているので、エンジンから排出された排気ガスが後処理装置から尾管内へ導かれると、尾管の温度が低い場合に排気ガス中の水蒸気が尾管に冷却されることにより、大気中の水蒸気と同様に尾管の内壁に排気ガス中の水蒸気が凝縮して水滴が生成される。特に、冬場や夜間あるいは朝方には外気の温度が低くなり易いので、尾管の内壁への水滴の発生が顕著となる。
ここで、エンジンから排出される排気ガスには水蒸気の他に多くの煤等が含まれているので、排気ガスが尾管に案内されて外部へ放出される際に尾管の壁面に煤等が付着する。従って、尾管の壁面には煤等が堆積しているので、尾管の内壁に生成された水滴は多くの煤等を含んで黒色化している。そして、尾管の内壁に生成されて黒色化した水滴は、尾管に案内される排気ガスによって押し出され、尾管の先端部分から外部へ吹き飛ばされる。これにより、黒色化した煤等を含む水滴が旋回体の外部へ飛散し、旋回体の車体カバー及びカウンタウェイトを汚すことが問題となっていた。
そこで、尾管の内壁に生成された水滴が旋回体の外部へ飛散することを抑える装置の従来技術の1つとして、エンジンのマフラから最後端までの排気管部分を構成するテールパイプ、すなわち尾管の先端部内周面に一端部外周面が圧入され、その上流側に位置する他端部外周面が尾管の先端部内周面との間に環状の隙間部を有する略筒状の取付部材を設けると共に、隙間部に吸水性かつ耐熱性を有する材料からなる環状の水滴保持部材を装着したエンジンのテールパイプの構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、上述した特許文献1に開示された従来技術のエンジンのテールパイプの構造では、略筒状の上記取付部材を尾管内に設けることにより、この取付部材の端部外周面と尾管の先端部内周面との間に形成された環状の隙間部に水滴保持部材を装着するようにしているので、これらの取付部材と水滴保持部材の分だけ尾管の部品点数が増加したり、あるいは取付部材と水滴保持部材を尾管に追加することに伴って尾管の形状が複雑化する。これにより、尾管の製作コストが増大したり、あるいは尾管の製作に時間がかかるので、尾管の製作効率が低下することが問題となっている。
また、従来技術のエンジンのテールパイプの構造では、上述したように水滴保持部材の一端部外周面が尾管の先端部内周面に圧入されているので、エンジンが動作する度に水滴保持部材が尾管内を流通する高温の排気ガスにさらされたり、あるいは排気ガスに暖められた尾管から熱が伝達されることによって熱影響を受けることになる。さらに、排気ガスに含まれる煤等が水滴保持部材の表面に付着することにより、押し出された水滴が水滴保持部材に吸収され難くなる。従って、水滴保持部材が長期に渡って使用された場合には、水滴保持部材が劣化して耐熱性と吸水性が悪化するので、水滴保持部材を新しいものと交換する等のメンテナンス作業を行わなければならず、水滴保持部材の交換作業が煩雑になることが懸念されている。
また、尾管の内壁に取付部材によって水滴保持部材を配設しても、エンジンから排出される排気ガスの流量が多ければ、水滴が水滴保持部材に捕捉されずに排気ガスの勢いでそのまま尾管から旋回体の外部へ吹き飛ばされる虞がある。この場合には、水滴保持部材の効果が十分に発揮されず、黒色化した水滴が車体カバー及びカウンタウェイトに飛散することにより、車体カバー及びカウンタウェイトを汚すことになるので、汚れた車体カバー及びカウンタウェイトを清掃する必要がある。
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、尾管に追加部品を設けなくても尾管の内壁に生成された水滴が旋回体の外部へ飛散することを抑えることができる建設機械の制御装置を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明の建設機械の制御装置は、旋回体内に配設されたエンジンと、このエンジンによって駆動されるポンプと、前記エンジンから排出される排気ガスを外部へ放出する尾管とを備えた建設機械に設けられ、前記尾管に水蒸気が凝縮して水滴が生成される状態であるかどうかを判断する凝縮水生成判断手段と、この凝縮水生成判断手段によって前記尾管に水蒸気が凝縮して水滴が生成される状態であると判断された場合に、前記エンジンから排出される排気ガスの流量を抑制する制御を行う流量抑制手段とを備え、前記流量抑制手段は、前記ポンプのトルクを抑制する制御を行うことを特徴としている。
このように構成した本発明は、凝縮水生成判断手段によって尾管に水蒸気が凝縮して水滴が生成される状態であると判断された場合に、流量抑制手段によってエンジンから排出される排気ガスの流量が抑制されるので、大気中の水蒸気が尾管に冷却されることによって水蒸気が凝縮して水滴が尾管の内壁に生成しても、生成された水滴が排気ガスによって押し出され難くなる。また、流量抑制手段によってエンジンから排出される排気ガスの流量が少なくなるので、排気ガスが尾管内を流通する際に排気ガスに含まれる水蒸気が凝縮して尾管の内壁に生成される水滴の量を減少させることができる。
そして、流量抑制手段によってエンジンから排出される排気ガスの流量が抑制されている間に、尾管が内部を流通する排気ガスによって暖められることにより、生成された水滴は尾管と排気ガスの熱によって蒸発し、再び水蒸気となって排気ガスと共に旋回体の外部へ放出される。これにより、尾管の内壁に生成された水滴が煤等を含んで旋回体の外部へ飛散することを抑制することができる。このように、凝縮水生成判断手段の判断に基づいて流量抑制手段が排気ガスの排出量を制御することによって、尾管に追加部品を設けなくても尾管の内壁に生成された水滴が旋回体の外部へ飛散することを抑えることができる。さらに、本発明は、例えばエンジンの始動開始直後の尾管が冷えている状態において流量抑制手段によってポンプのトルクを所定の範囲内に抑制することにより、エンジンの始動開始直後でもエンジンから排出される排気ガスの排出量を大幅に低減させることができ、エンジンから噴出された排気ガスによって尾管の水滴が吹き飛ばされることを抑えることができる。そして、エンジンが動作してから尾管が内部を流通する排気ガスによって暖められ、尾管に水滴が生成されなくなった場合には、ポンプのトルクを所定の範囲内に抑制された状態から徐々に復帰させることができるので、復帰させる際に建設機械に備えられた他の機器に与える影響を軽減することができる。
また、本発明に係る建設機械の制御装置は、前記発明において、前記エンジンの冷却水を冷却する熱交換器を備え、前記凝縮水生成判断手段は、前記エンジンが停止してから始動するまでの時間、前記エンジンの冷却水の温度、外気の温度、及び前記エンジンから排出される排気ガスの温度のうち少なくとも一つに基づいて判断することを特徴としている。
このように構成した本発明は、凝縮水生成判断手段における尾管に水蒸気が凝縮して水滴が生成される状態であるかどうかを判断する判断基準として、エンジンが停止してから始動するまでの時間、エンジンの冷却水の温度、外気の温度、及びエンジンから排出される排気ガスの温度のうち少なくとも一つを基礎とすることにより、尾管に水蒸気が凝縮して水滴が生成される状態であるかどうかを的確に判断することができる。これにより、凝縮水生成判断手段における高い信頼性を確保することができる。
また、本発明に係る建設機械の制御装置は、前記発明において、前記凝縮水生成判断手段は、前記エンジンが停止したときから時間を計測する時間計測手段を有し、この時間計測手段によって計測された時間が所定の時間を経過したとき、前記尾管に水蒸気が凝縮して水滴が生成される状態であると判断し、前記時間計測手段によって計測された時間が所定の時間を経過していないとき、前記尾管に水蒸気が凝縮して水滴が生成される状態でないと判断することを特徴としている。
このように構成した本発明は、エンジンが動作している間はエンジンから排出される排気ガスが尾管から旋回体の外部へ放出され続けることにより、尾管が暖かくなっているが、エンジンが停止したときから所定の時間が経過した場合には、尾管が外気に冷却されて冷たくなっているので、尾管に水蒸気が凝縮して水滴が生成され易くなっている。一方、エンジンが停止したときから所定の時間が経過していない場合には、排気ガスによって暖められた尾管の熱が残っており、尾管が保温されているので、尾管に水蒸気が凝縮して水滴が生成され難くなっている。従って、凝縮水生成判断手段が、時間計測手段によってエンジンが停止したときから時間を計測し、計測された時間と所定の時間とを比較するだけで尾管に水滴が生成される状態であるかどうかを迅速に判断することができる。
また、本発明に係る建設機械の制御装置は、前記発明において、前記凝縮水生成判断手段は、温度を計測する温度計測手段を有し、この温度計測手段によって計測された前記エンジンの冷却水の温度が所定の温度未満であるとき、前記尾管に水蒸気が凝縮して水滴が生成される状態であると判断し、前記温度計測手段によって計測された前記エンジンの冷却水の温度が所定の温度以上であるとき、前記尾管に水蒸気が凝縮して水滴が生成される状態でないと判断することを特徴としている。
このように構成した本発明は、エンジンが動作している間、すなわちエンジンから排出される排気ガスが尾管から旋回体の外部へ放出され続けている間は、エンジンが発熱することによってエンジンを冷却する冷却水の温度が上昇する。そして、エンジンが停止した場合には、エンジンが発熱しなくなるので、エンジンの熱が放熱されてエンジンの冷却水の温度が徐々に低下する。このとき、エンジンが停止したことによってエンジンから排気ガスが排出されなくなるので、排気ガスによって尾管が暖められず、尾管が外気によって冷却されて冷たくなる。従って、エンジンの冷却水の温度が所定の温度未満の場合には、尾管の温度も低くなっているので、尾管に水蒸気が凝縮して水滴が生成され易くなっている。一方、エンジンの冷却水の温度が所定の温度以上の場合には、尾管が外気によって十分に冷却されておらず、尾管の温度が高くなっているので、尾管に水蒸気が凝縮して水滴が生成され難くなっている。そのため、凝縮水生成判断手段が、温度計測手段によってエンジンの冷却水の温度を計測し、計測された温度と所定の温度とを比較することにより、尾管に水滴が生成される状態であるかどうかを容易に判断することができる。
また、本発明に係る建設機械の制御装置は、前記発明において、前記流量抑制手段は、さらに前記エンジンの回転数を抑制する制御を行うことを特徴としている。
このように構成した本発明は、例えばエンジンの始動開始直後の尾管が冷えている状態において流量抑制手段によってエンジンの回転数を所定の範囲内に抑制することにより、エンジンの始動開始直後でもエンジンから排出される排気ガスの排出量を大幅に低減させることができ、エンジンから噴出された排気ガスによって尾管の水滴が吹き飛ばされることを抑えることができる。そして、エンジンが動作してから尾管が内部を流通する排気ガスによって暖められ、尾管に水滴が生成されなくなった場合には、エンジンの回転数を所定の範囲内に抑制された状態から徐々に復帰させることができるので、復帰させる際に建設機械に備えられた他の機器に与える影響を軽減することができる。
本発明の建設機械の制御装置によれば、尾管に水蒸気が凝縮して水滴が生成される状態であっても、凝縮水生成判断手段に基づく流量抑制手段の制御によって尾管内を流通する排気ガスの流量が減少するので、尾管の内壁に生成された水滴が排気ガスによって押し出され難くなると共に、排気ガスに含まれる水蒸気の凝縮を抑えることができる。そして、尾管が内部を流通する排気ガスによって暖められることにより、生成された水滴は尾管と排気ガスの熱によって蒸発し、再び水蒸気となって排気ガスと共に旋回体の外部へ放出されるので、尾管の内壁に生成された水滴が煤等を含んで旋回体の外部へ飛散することを抑えることができる。このように、尾管に追加部品を設けなくても尾管の内壁に生成された水滴が旋回体の外部へ飛散することを抑えることができ、従来よりも尾管の製作効率を高めると共に、メンテナンス作業にかかる作業者の負担を軽減することができる。
以下、本発明に係る建設機械の制御装置を実施するための形態を図に基づいて説明する。
本発明に係る建設機械の制御装置の実施形態は、例えば図1に示すように油圧ショベル1に設けられる。この油圧ショベル1は、走行体2と、この走行体2の上側に配置され、旋回フレーム3aを有する旋回体3と、この旋回体3の前方に取り付けられて上下方向に回動するフロント作業機4とを備えている。また、旋回体3は、前方にキャブ7を備え、後方にカウンタウェイト6を備え、また、これらキャブ7及びカウンタウェイト6の間にエンジンルーム5と、このエンジンルーム5の上部に設けられ、外装を形成する車体カバー15とを備えている。
また、旋回体3は、図2に示すようにエンジンルーム5内に配設されたエンジン5aと、このエンジン5aによって駆動されるポンプ、例えば可変容量型の油圧ポンプ14とを有している。この可変容量型の油圧ポンプ14は、その傾転角が変更されて吐出流量、吸収トルクが制御されるものである。
さらに、旋回体3は、図2に示すようにエンジン5aから排出される排気ガスを外部へ放出する尾管13と、エンジンルーム5内に配置され、エンジン5aから排出された排気ガスを処理する後処理装置12とを有している。この後処理装置12とエンジン5aはエンジンルーム5内において排気管22によって接続されており、図1に示すように尾管13は車体カバー15に挿通されて基端側が後処理装置12に接続されている。従って、エンジン5aから排出された排気ガスは、排気管22によって後処理装置12へ導かれ、後処理装置12内において排気ガス中に含まれる有害な物質、例えば粒子状のパティキュレートマター(PM)が処理された後に尾管13から旋回体3の外部へ放出される。
また、尾管13の開口部はカウンタウェイト6側へ折り曲がるようにして向けられており、尾管13から放出された排気ガスは車体後方へ排出されるようになっている。さらに、後処理装置12は、例えば図示しないマフラと一体型となっており、エンジン5aの動作中に発生する騒音を消音するようになっている。
また、本発明の第1実施形態では、旋回体3は、図示されないが、燃料を貯蔵する燃料タンクと、この燃料タンクに隣接して配置され、油圧ポンプ14によってフロント作業機4の各アクチュエータに供給する作動油を貯蔵する作動油タンクと、エンジン5a等のエンジンルーム5内の機器の冷却を行う熱交換器とを有している。さらに、旋回体3は、図2に示すようにエンジン5aの駆動力によって回転し、熱交換器に対する冷却風を生起させるファン21を有している。上述の熱交換器は、例えばエンジン5aの冷却水を冷却するラジエータと、作動油を冷却するオイルクーラと、エンジン5aの吸気を冷却するインタクーラとを有している。
本発明の実施形態は、図2に示すように旋回体3内に設置された機器の動作を制御する車体コントローラ20を備えている。この車体コントローラ20は、エンジン5aの回転数や燃料噴射量等の制御を行うエンジンコントローラ16と、油圧ポンプ14の斜板の傾転角の指示値を変化させて油圧ポンプ14の吐出油量を増減し、油圧ポンプ14のトルクを制御するポンプコントローラ19とを有している。
ここで、尾管13は車体カバー15から旋回体3外へ突出して外気に触れているので、油圧ショベル1の作業が行われた後にエンジン5aが停止してから所定の時間が経過すると、尾管13が外気によって冷却される。このとき、図3に示すように大気中の水蒸気が尾管13に冷却されることにより、尾管13の内壁に大気中の水蒸気が凝縮して水滴23が生成される。また、尾管13が冷えた状態において、エンジン5aから排出された排気ガスが後処理装置12から矢印Aに示すように尾管13内へ導かれても、排気ガス中に含まれる水蒸気が尾管13によって冷却されて、尾管13の内壁に排気ガス中の水蒸気が凝縮して水滴23が生成される。
特に、尾管13の折れ曲がった湾曲部13aの内壁の上面部分には、排気ガスが衝突して排気ガス中の水蒸気が冷却されやすいので、水滴23の発生は他の部分よりも顕著となる。そして、尾管13の内壁に生成された水滴23は、矢印Aに示すように尾管13に流入した排気ガスに押し出されることにより、矢印Bに示すように尾管13の内壁に沿って尾管13の先端側へ移動する。このとき、尾管13の内壁には排気ガスに含まれる煤等が付着しているので、尾管13の先端側に移動した水滴23は、尾管13の内壁に付着した煤等によって黒色化され、その後排気ガスと共に旋回体3の外部へ放出される虞がある。
そこで、本発明の実施形態では、車体コントローラ20は、尾管13に水蒸気が凝縮して水滴23が生成される状態であるかどうかを判断する凝縮水生成判断手段17と、この凝縮水生成判断手段17によって尾管13に水蒸気が凝縮して水滴23が生成される状態であると判断された場合に、エンジン5aから排出される排気ガスの流量を抑制する制御を行う流量抑制手段18とを備えている。
また、本発明の実施形態では、凝縮水生成判断手段17は、エンジン5aが停止してから始動するまでの時間、エンジン5aの冷却水の温度、外気の温度、及びエンジン5aから排出される排気ガスの温度のうち少なくとも一つ、例えばエンジン5aが停止してから始動するまでの時間に基づいて判断するようにしている。具体的には、凝縮水生成判断手段17は、例えばエンジン5aが停止したときから時間を計測する時間計測手段を有し、この時間計測手段によって計測された時間が所定の時間を経過したとき、尾管13に水蒸気が凝縮して水滴23が生成される状態であると判断し、時間計測手段によって計測された時間が所定の時間を経過していないとき、尾管13に水蒸気が凝縮して水滴23が生成される状態でないと判断するようになっている。上述の時間計測手段は、例えば凝縮水生成判断手段17に設けられた第1のタイマから成っている。
なお、本発明の実施形態では、凝縮水生成判断手段17は、後述する流量抑制手段18によってエンジン始動時から排気ガスの流量が抑制されている間の時間を計測する第2のタイマを有し、この第2のタイマによって計測された時間が所定の時間を経過したとき、尾管13に水蒸気が凝縮して水滴23が生成される状態でないと判断するようになっている。また、流量抑制手段18は、第2のタイマによって計測された時間が所定の時間を経過し、凝縮水生成判断手段17によって尾管13に水蒸気が凝縮して水滴23が生成される状態でないと判断された場合に、排気ガスの流量の抑制制御を停止する不図示の流量抑制停止手段を有している。
上述した流量抑制手段18は、エンジン5aの回転数及び油圧ポンプ14のトルクのうち少なくとも一方、または両方を抑制する制御を行うようになっている。ここで、エンジン5aの回転数と油圧ポンプ14のトルクとの関係、およびそれらと排気ガス流量との関係は、図4に示すようになっており、エンジン回転数およびポンプトルクが上昇するに従って、排気ガス流量が増加する関係を有している。そのため、流量抑制手段18は、通常稼動状態aにおける所定のエンジン回転数、ポンプトルクに対し、排気ガスの流量抑制制御が必要な場合は、ポンプトルクのみ低下させた流量抑制稼動状態b、エンジン回転数のみ低下させた流量抑制稼動状態c、ポンプトルクおよびエンジン回転数の両方を抑制させた流量抑制稼動状態dのいずれかの稼動状態となるようにエンジンおよびポンプを制御して排気ガスの流量を抑制する。
ここで、抑制された排気ガス流量Qbcは、尾管13に水滴23が生成された状態においても排出される排気ガスによって水滴23が外部に排出されない流量であり、この流量Qbcに基づいてエンジン回転数Nc、ポンプトルクTbの設定値を予め実験等により求めておくものである。
本発明の実施形態では、流量抑制手段18は、凝縮水生成判断手段17によって尾管13に水蒸気が凝縮して水滴23が生成される状態であると判断された場合に、エンジンコントローラ16によってエンジン5aの回転数を通常稼動時よりも小さいNcに制限する制御を行なうと共に、ポンプコントローラ19によって油圧ポンプ14のトルクを通常稼動時よりも小さいTbに制限する制御を行うようになっている。そしてその後、凝縮水生成判断手段17によって尾管13に水滴23が生成されない状態であると判断された場合に、エンジン5aの回転数及び油圧ポンプ14のトルクをNc、Tb以上の通常稼動時の設定値に徐々に復帰させる制御を行うようになっている。
次に、本発明の実施形態の動作を図5のフローチャートに基づいて説明する。
本発明の実施形態では、図5に示すようにエンジン5aが始動すると、凝縮水生成判断手段17は、第1のタイマでエンジン5aが停止したときから時間を計測し、第1のタイマによって計測された時間と所定の時間とを比較することにより、尾管13に水蒸気が凝縮して水滴23が生成される状態であるかどうかを判断する(S1)。そして、第1のタイマによって計測された時間が所定の時間を経過し、凝縮水生成判断手段17によって尾管13に水蒸気が凝縮して水滴23が生成される状態であると判断された場合には、流量抑制手段18がエンジン5aの回転数をNcに抑制すると共に、油圧ポンプ14のトルクをTbに抑制する制御を行い、エンジン5aから排出される排気ガスの流量をQbcに抑制する(S2)。
次に、凝縮水生成判断手段17は、第2のタイマで流量抑制手段18によって排気ガスの流量がQbcに抑制されたときからの時間を計測し、第2のタイマによって計測された時間と予め設定された所定の時間とを比較することにより、手順S2において流量抑制手段18によって排気ガスの流量が抑制された後に尾管13に水蒸気が凝縮して水滴23が生成される状態であるかどうかを判断する(S3)。なお、所定の時間は、生成された水滴23の蒸発状態を考慮して実験等により予め定めるものである。
そして、第2のタイマによって計測された時間が所定の時間を経過し、凝縮水生成判断手段17によって尾管13に生成された水滴23が蒸発したとみなされる状態(水滴が生成される状態でない)と判断された場合には、流量抑制手段18は、流量抑制停止手段によって排気ガスの流量の抑制制御を停止し、エンジン5aの回転数及び油圧ポンプ14のトルクをNc,Tbにそれぞれ抑制された状態から徐々に通常状態に復帰させる制御を行い(S4)、本発明の第1実施形態の動作を終了する。
一方、手順S1において第1のタイマによって計測された時間が所定の時間を経過しておらず、凝縮水生成判断手段17によって尾管13に水滴23が生成される状態でないと判断された場合には、流量抑制手段18による排気ガスの流量を抑制する制御を行わずに通常稼働を実施し(S5)、本発明の第1実施形態の動作を終了する。
このように構成した本発明の実施形態によれば、手順S1において凝縮水生成判断手段17によって尾管13に水滴23が生成される状態であると判断された場合には、手順S2において流量抑制手段18がエンジン5aの回転数をNcに抑制すると共に、油圧ポンプ14のトルクをTbに抑制する制御を行うことにより、エンジン5aから排出される排気ガスの流量が、水滴23を尾管13から排出することがない流量Qbcに抑制されるので、大気中の水蒸気が尾管13に冷却されることによって水蒸気が凝縮して尾管13の内壁に水滴23が生成しても、生成された水滴23が排気ガスによって外部に放出されることがない。また、流量抑制手段18によって排気ガスの流量抑制制御が行なわれているときには、エンジン5aから排出される排気ガスの流量が通常稼働時の流量よりも少なくなるので、排気ガス中に含まれる水蒸気によって尾管13の内壁に生成される水滴23も減少させることができる。
そして、流量抑制手段18によってエンジン5aから排出される排気ガスの流量が抑制されている間、すなわち手順S3において第2のタイマによって計測される所定の時間内に、尾管13が内部を流通する排気ガスによって暖められることにより、生成された水滴23は尾管13と排気ガスの熱によって蒸発し、尾管12の外部へ放出される。これにより、尾管13の内壁に生成された水滴23が煤等を含んで旋回体3の外部へ飛散することを抑制することができる。このように、凝縮水生成判断手段17の判断に基づいて流量抑制手段18が排気ガスの排出量を制御することによって、尾管13に追加部品を設けなくても尾管13の内壁に生成された水滴23が旋回体3の外部へ飛散することを抑えることができ、尾管13の製作効率を高めると共に、メンテナンス作業にかかる作業者の負担を軽減することができる。
また、本発明の実施形態は、凝縮水生成判断手段17は、手順S1において尾管13に水滴23が生成される状態であるかどうかを判断する基準として、エンジン5aが停止してから始動するまでの時間、すなわち第1のタイマによって計測される時間が所定時間を経過しているかどうかを基礎とすることにより、尾管13に水滴23が生成される状態であるかどうかを的確に判断することができる。これにより、凝縮水生成判断手段17における高い信頼性を確保することができる。
また、本発明の実施形態は、エンジン5aが動作している間はエンジン5aから排出される排気ガスによって尾管13が暖められているが、第1のタイマによってエンジン5aが停止したときからの時間が所定の時間を経過している場合には、尾管13が外気に冷却されて冷たくなっていると考えられるので、水蒸気が凝縮して尾管13に水滴23が生成され易くなっている。一方、第1のタイマによって計測される時間が所定の時間を経過していない場合には、尾管13が冷え切っておらず未だ暖かい状態であると考えられるので、尾管13に水蒸気が凝縮して水滴23が生成され難くなっている。従って、凝縮水生成判断手段17が、手順S1において時間計測手段17によってエンジン5aが停止したときからの時間を計測し、第1のタイマによって計測された時間と所定の時間とを比較するだけで尾管13に水滴23が生成される状態であるかどうかを容易に判断することができる。
また、本発明の実施形態は、手順S1において凝縮水生成判断手段17によって尾管13に水滴23が生成される状態であると判断された場合に、手順S2において流量抑制手段18がエンジン5aの回転数及び油圧ポンプ14のトルクをNc、Tbにそれぞれ抑制することにより、エンジン5aの始動開始直後でもエンジン5aから排出される排気ガスの排出量を低減させることができ、エンジン5aから噴出された排気ガスによって尾管13の水滴23が吹き飛ばされることを抑えることができる。
そして、手順S3において第2のタイマによって計測された時間が所定の時間を経過し、凝縮水生成判断手段17によって尾管13に生成された水滴23が蒸発し、水滴23が生成される状態でないと判断された場合には、手順S4において流量抑制手段18の流量抑制停止手段によって排気ガスの流量の抑制を停止し、エンジン5aの回転数及び油圧ポンプ14のトルクを徐々に通常稼動時の状態に復帰させることができるので、復帰させる際に油圧ショベル1に備えられた他の機器に与える影響を軽減することができる。これにより、流量抑制手段18によってエンジン5aの回転数及び油圧ポンプ14のトルクが抑制された状態から復帰させる際にフロント作業機4の操作の安定性を高めることができる。
また、本発明の実施形態は、手順S2において流量抑制手段18は、エンジンコントローラ16によってエンジン5aの回転数をNcに抑制すると共に、ポンプコントローラ19によって油圧ポンプ14のトルクをTbに抑制する制御を行うようにしているので、仮にポンプコントローラ19の故障等によって油圧ポンプ14のトルクがTbに抑制されなかったとしてもエンジンコントローラ16が流量抑制手段18から指示を受けてエンジン5aの回転数をNcに抑制することができるので、エンジン5aから排出される排気ガスの流量を確実に抑えることができる。
なお、上記の実施の形態では、凝縮水生成判断手段17が、エンジン5aが停止してから始動するまでの時間に基づいて水滴の生成の有無を判断するようにしたが、凝縮水生成判断手段17が、エンジン5aの冷却水の温度、外気の温度、及びエンジン5aから排出される排気ガスの温度のうちエンジン5aの冷却水の温度及び外気の温度に基づいて判断するようにしても良い。
この場合、凝縮水生成判断手段17は、例えばエンジン5aの冷却水の温度を計測する第1の温度計測手段と、外気の温度を計測する第2の温度計測手段とを有し、第1の温度計測手段によって計測されたエンジン5aの冷却水の温度が所定の温度未満であるとき、尾管13に水蒸気が凝縮して水滴23が生成される状態であると判断し、第1の温度計測手段によって計測されたエンジン5aの冷却水の温度が所定の温度以上であるとき、尾管13に水蒸気が凝縮して水滴23が生成される状態でないと判断する。また、第2の温度計測手段によって計測された外気温度が、所定の温度未満であるとき、尾管13に水蒸気が凝縮して水滴23が生成される状態であると判断し、第2の温度計測手段によって計測された外気温度が所定の温度以上であるとき、尾管13に水蒸気が凝縮して水滴23が生成される状態でないと判断する。エンジン5aから排出される排気ガスの温度に基づいて判断する場合も同様である。