JP5698329B1 - ボールねじの熱変位補正装置 - Google Patents

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【課題】熱によるボールねじの長さの変化およびベースの長さの変化から生じる位置決め精度の低下を排除し、工作機械等の加工精度を向上させること。【解決手段】ボールねじ12により駆動される移動体3を、ボールねじ12の一端を回転可能かつ軸方向移動可能に支持する手段によりベース26上に配置し、ボールねじの一端の変位を検出する変位検出器24とベースの温度を検出する温度検出器27を取り付け、これらにより測定した値にから、ボールねじのみかけの熱変位量でなく、真の熱変位量を算出して、正確な位置制御を可能にした。【選択図】図1

Description

本発明は、工作機械および産業機械等の位置決め装置に使用されるボールねじの熱変位を補正する装置に関するものである。
ボールねじを使用して移動体の位置決めを行う機械、例えば、工作機械において、ナットや支持ベアリングとの間で発生する熱がボールねじやベースに伝わり、また、室温の変化によりボールねじの長さとベースの長さが変化する。特に、機械の始動時より所定の時間、例えば90分ぐらいまでは、ボールねじの長さおよびベースの長さの変化が大きく、移動体の位置決め精度が悪くなり、これにより加工精度等が低下し、不良品を出す不具合があった。
特開H2-243248 特開2001-138178 特開2007-21721
そこで、ボールねじの熱変位を補正する装置が、上記特許文献1および特許文献2において開示されている。特許文献1および特許文献2においては、ボールねじの自由端側に変位検出器を取付け、変位検出器が検出する変位量を、そのまま、ボールねじの熱変位量と見做して、すなわち、ボールねじのみかけの熱変位量を測定して、ボールねじの熱変位補正装置を構成していた。しかし、ボールねじの固定端を基準にして、温度変化により、ボールねじの長さだけでなく、変位検出器を取付けているベースの長さも変化する。そのため、高精度なボールねじの熱変位補正ができず、位置決め精度の低下を招いていた。また、変位検出器として広く用いられる渦電流式変位センサでは、温度変化により、センサ感度が変化して、高精度なボールねじの熱変位補正装置を構成することが困難であった。
本発明の目的は、上記従来装置の欠点を伴わずに、変位検出器および温度検出器の出力に基づいて、ボールねじの真の熱変位量を算出し、熱によるボールねじの長さの変化から生じる位置決め精度の低下をなくし、加工精度等を向上することにある。
図1は、ボールねじ送り装置の概略図である。また、図2は、ボールねじ自由端と変位検出器の位置関係を示す拡大図である。図1及び図2において、ボールねじ送り装置の運転開始時でのボールねじの温度とベースの温度とが環境温度に一致している状態(以下、
基準温度時と言う)における位置関係を実線で、ボールねじ送り装置の稼働により温度が上昇した状態における位置関係を破線で示している。図1と図2を用いて、解決すべき課題を明らかにし、その課題を解決する手段について、以下に説明する。ボールねじ送り装置は、ベース26と、前記ベースに摺動可能に支持された移動体3と、前記移動体に固定されたナット11と、前記ナットに係合したボールねじ12と、前記ボールねじの一端を回転可能かつ軸方向移動不能に支持する固定ベアリング13と、他端を回転可能かつ軸方向移動可能に支持する自由ベアリング20と、前記ボールねじに連結されたサーボモータ18と、前記サーボモータを回転駆動するサーボモータ駆動装置4から構成される。
ボールねじ送り装置の運転開始時でのボールねじの温度とベースの温度とが環境温度に一致している状態(以下、基準温度時と言う)における、ボールねじを固定している固定ベアリング(ボールねじ固定端)の位置から自由ベアリング側のボールねじの端(ボールねじ自由端)までの長さをA(以下、ボールねじ初期長さと言う)とし、ベースの長さをB(以下、ベース初期長さと言う)とする。ボールねじ自由端に近接して、変位検出器24をベース上に取付け、その取付け位置からボールねじ固定端の位置までの長さを、ベースの長さを基準にして、αBとする。αは、変位検出器24の取付け位置からボールねじ固定端の位置までの長さとベースの長さの割合を表しているが、ここでは、ベース熱膨張寄与率と呼ぶ。ボールねじ自由端から変位検出器24の検出面までの距離をXとすれば、
・・・式(1)
となる。
ボールねじ送り装置の稼働により温度が上昇して、ボールねじ固定端からボールねじ自由端までの長さがA+ΔAとなり、ベースの温度がΔTだけ上昇して、ベースの長さがB+ΔBになり、ボールねじ自由端から変位検出器24の検出面までの距離がX+ΔXになった場合を考える(この状態を、図1と図2中の破線で示す)。この場合、
・・・式(2)
が成立する。式(1)を式(2)に代入すると、
・・・式(3)
となる。一方、ベースの熱膨張係数をβとすれば、
・・・式(4)
の関係式が成り立つ。式(4)を式(3)に代入すれば、
・・・式(5)
が得られる。式(5)がボールねじの真の熱変位量を与える。
従来技術では、ベースの温度上昇を考慮していない、すなわち、式(5)でΔT=0として、ボールねじのみかけの熱変位量(ΔA=−ΔX)を測定して、ボールねじの熱変位を補正していた。
請求項1のボールねじの熱変位補正装置は、ボールねじのみかけ長さの変化を測定する変位検出器と、ベースの温度を測定する温度検出器とを備えており、また、変位検出器および温度検出器の出力に基づいてボールねじの真の熱変位量を算出するボールねじ熱変位算出手段を備えており、前記ボールねじ熱変位算出手段が、算出した真の熱変位量に対応して、前記サーボモータのロータリエンコーダから出力される回転パルス信号を補正し、補正した回転パルス信号により前記サーボモータ駆動装置を制御するようにしたことを特徴としている。この構成によれば、真の熱変位量に基づいて、回転パルス信号をリアルタイムで補正することが可能となる。
請求項2のボールねじの熱変位補正装置は、請求項1において、前記ボールねじ熱変位算出手段は、式(5)より、ボールねじの真の熱変化量を算出することを特徴としている。したがって、従来のボールねじのみかけの熱変位量に基づいて補正するボールねじ熱変位補正装置に比べて、より高精度で安定したボールねじ熱変位補正装置を提供することができ、さらに、前記ボールねじ熱変位算出手段が、算出した真の熱変位量に対応して、前記サーボモータのロータリエンコーダから出力される回転パルス信号を補正し、補正した回転パルス信号により前記サーボモータ駆動装置を制御するようにしたことを特徴としている。この構成によれば、真の熱変位量に基づいて、回転パルス信号をリアルタイムで補正することが可能となる。
以上説明したとおり、本発明のボールねじの熱変位測定装置は、ボールねじのみかけの熱変位量を測定して補正するのではなく、ベースの熱変位をも考慮に入れた、ボールねじの真の熱変位量を算出して位置制御するので、ボールねじとベースの温度が大きく変化しても高精度に位置決めでき、さらに、前記ボールねじ熱変位算出手段が、算出した真の熱変位量に対応して、前記サーボモータのロータリエンコーダから出力される回転パルス信号を補正し、補正した回転パルス信号により前記サーボモータ駆動装置を制御するようにしたことを特徴としている。この構成によれば、真の熱変位量に基づいて、回転パルス信号をリアルタイムで補正することが可能となる。
この発明の実施の形態を、図を参照して説明する。図3は、この発明の一実施の形態に係るボールねじ送り装置の概略図とボールねじ熱変位補正のブロック図である。図3において、移動体3はナット11を固定している。ナット11は、ボールねじ12を係合している。ボールねじ12の一端は、一対のベアリング13が挿入され、リングナット14にて、軸方向移動できないように規制されている。またベアリング13は、その外輪に当接するリング15にてスラスト支持ブロック16に固定され、これにより、ボールねじ12は回転可能かつ軸方向の移動が規制されている。ボールねじ12はカップリング17にてサーボモータ18と連結されている。サーボモータ18には、ロータリエンコーダ19が連結されている。
サーボモータ駆動装置4は、位置制御手段5と、ロータリエンコーダ19と、サーボモータ18と、に結線されている。サーボモータ駆動装置4は、ロータリエンコーダ19とサーボモータ18とでサーボループを構成し、位置指令に基づく位置制御手段5からの位置制御信号に従い、ロータリエンコーダ19からの出力信号に対応してサーボモータ18を駆動する。
ボールねじ12の他端は、ベアリング20が挿入され、サークリップ21により、ボールねじ12に対し軸方向に規制されている。またベアリング20は、支持ブロック22に挿入されている。ベアリング20は、軸方向の移動が可能なように支持ブロック22の内孔に嵌合している。よって、ボールねじ12の長さが熱により変化すると、ボールねじ12は、軸方向の移動を規制しているスラスト支持ブロック16を起点とし、軸方向の移動を許容している支持ブロック22に向かって伸びる。ボールねじ支持ブロック22には、プレート23を介して、非接触式の変位検出器24が取付けてある。基準とする温度において、変位検出器24の検出面とボールねじ12の他端との距離は、式(1)で規定するXである。
変位検出器24は、渦電流式変位検出器、静電容量式変位検出器、レーザー式変位検出器、あるいは、他の方式のものであっても良い。変位検出器24は、検出した変位量に対応したアナログ信号、あるいは、ディジタル信号を出力する。変位検出器24は、その検出変位が温度変動の影響を受け難いもの、すなわち、変位検出の温度依存性が小さいものが好ましい。あるいは、変位検出器24は、その内部にIC温度センサなどの温度検出素子を組込み、変位検出の温度依存性を補償したものであっても良い。
温度検出器27は、熱電対、サーミスタ、IC温度センサ、あるいは、他の温度検出素子を用いて構成するものであっても良い。温度検出器は、検出した温度に対応したアナログ信号、あるいは、ディジタル信号で出力する。温度検出器27は、ベース26に取り付けてある。その取り付け位置は、スラスト支持ブロック16と支持ブロック22との間が好ましい。しかし、変位検出の温度依存性を補償するためと、ベースの温度を検出するために、IC温度センサなどの温度検出素子を変位検出器24の中に組み込んだものを、式(1)で規定する距離Xの位置に取付けても良い。この場合、変位検出器24の変位検出の温度依存性と、ベースの熱膨張の補正とが1個の温度検出素子で行うことができるメリットがある。
ベースの温度分布が不均一であると想定されるならば、温度検出器27は、1個に限らず、複数個、すなわち、総数でn個をスラスト支持ブロック16と支持ブロック22との間に取付けても良い。
この場合、i番目の温度検出器が検出する温度変化がΔTiであり、その温度検出器が相応するベースの領域長さがαiBiであるとすると、ボールねじの真の熱変位量は、式(5)に代えて、次式を用いる。
・・・式(6)
熱変位算出手段6は、変位検出器24および温度検出器27の出力信号に基づいて、式(5)あるいは式(6)により、ボールねじ真の熱変位量をディジタル値として算出し、その算出結果を、アナログ信号あるいはディジタル信号に変換して、位置制御手段5に出力するものである。熱変位算出手段6は、CPUと、RAMと、ROMと、を備えた、さらには、汎用ディジタル入出力ポート(GPIO)、通信ポート(SCI、I2C、CAN、USB、イーサネットなど)、A/D変換器、D/A変換器などのペリフェラルICをワンチップ化した、マイコンで構成するのが好ましい。また、熱変位算出手段6は、個別ICを組み合せて構成しても良い。変位検出器24および温度検出器27からの出力がアナログ信号の場合は、熱変位算出手段6のA/D変換器を介して、ディジタル値に変換する。一方、変位検出器24および温度検出器27からの出力がディジタル信号の場合は、GPIOあるいは通信ポートを介して、ディジタル値に変換する。
熱変位算出手段6は、変位検出器24および温度検出器27からの出力信号に基づいて、式(5)あるいは式(6)により真のボールねじ熱変位量をディジタル値として算出し、その算出結果によりロータリエンコーダ19からの出力を補正して、補正したロータリエンコーダサーボモータ駆動装置4に出力するものである。
熱変位算出手段6は、CPUと、RAMと、ROMと、を備えた、さらには、汎用ディジタル入出力ポート(GPIO)、通信ポート(SCI、I2C、CAN、USB、イーサネットなど)、A/D変換器などのペリフェラルICをワンチップ化した、マイコンで構成するのが好ましい。また、熱変位算出手段6は、個別ICを組み合せて構成しても良い。
熱変位算出手段6は、変位検出器24および温度検出器27からの出力がアナログ信号の場合熱変位算出手段6のA/D変換器を介して、ディジタル値に変換して入力する。一方、変位検出器24および温度検出器27からの出力がディジタル信号の場合は、GPIOあるいは通信ポートを介して、ディジタル値として入力する。
熱変位算出手段6は、式(5)あるいは式(6)中の比例定数である、熱膨張係数βと、ベースの長さB(Biも含む)と、ベース熱膨張寄与率α(αiも含む)とを、予め、ディジタル値として記憶している。熱変位算出手段6は、式(5)あるいは式(6)に基づいて、変位検出器24および温度検出器27から入力し変換したディジタル値からディジタル演算により、真の熱変位量をディジタル値として算出する。
熱変位算出手段6は、ロータリエンコーダ19がアブソリュート型あるいはインクリメンタル型いずれの場合も、ある時間間隔毎にボールねじの真の熱変位量を補正したアブソリュート値あるいはインクリメンタル値をサーボモータ駆動装置に出力する。前記の補正したアブソリュート値あるいはインクリメンタル値をサーボモータ駆動装置4に出力することは、前記マイコンを用いてソフトウェアで、あるいは、個別ICを組み合せたディジタル回路で実現しても良い。
位置制御手段5は、位置指令信号を入力して、サーボモータ駆動装置4に位置指令を行うものである。位置指令手段5は、汎用のPLC(Programmable Logic Controller)を用いて構成するか、あるいは、CPUと、RAMと、ROMと、を備えた、さらには、汎用ディジタル入出力ポート(GPIO)、通信ポート(SCI、I2C、CAN、USB、イーサネット(登録商標)など)などのペリフェラルICをワンチップ化した、マイコンで構成しても良い。
本発明に係るボールねじ送り装置の概略図である。 図1に示すボールねじ送り装置のボールねじ自由端面と変位検出器の位置関係を示す部分拡大図である。 本発明の実施形態におけるボールねじ熱変位補正装置のブロック図である。
3・・・移動体、4・・・サーボモータ駆動装置、 5・・・位置制御手段、 6・・・熱変位算出手段、
7・・・数値制御装置、11・・・ナット、
12・・・ボールネジ、
13・・・固定ベアリング、14・・・リングナット、15・・・リング、16・・・スラスト支持ブロック、17・・・カップリング、18・・・サーボモータ、19・・・ロータリエンコーダ、20・・・自由ベアリング、21・・・サークリップ、
22・・・支持ブロック
、23・・・プレート、24・・・変位検出器、 26・・・ベース、27・・・温度検出器

Claims (2)

  1. ベースと、前記ベースに摺動可能に支持された可動体と、前記可動体に固定されたナットと、前記ナットに係合したボールねじと、前記ボールねじの一端を回転可能かつ軸方向移動不能に支持すると共に、他端を回転可能かつ軸方向移動可能に支持する手段と、前記ボールねじに連結されたサーボモータと、前記サーボモータを回転駆動するサーボモータ駆動装置からなるボールねじ送り装置において、前記ボールねじのみかけ長さの変化を測定する変位検出器と、前記ベースの温度を測定する温度検出器と、前記変位検出器および前記温度検出器の出力に基づいて、前記ボールねじの真の熱変位量を算出するボールねじ熱変位算出手段と、前記ボールねじを回転駆動して位置制御する位置制御手段と、からなるボールねじの熱変位補正装置において、前記ボールねじ熱変位算出手段が、算出したボールねじの真の熱変位量に対応して、前記サーボモータのロータリエンコーダから出力される回転パルス信号を補正し、補正した回転パルス信号により前記サーボモータ駆動装置を制御するようにしたことを特徴とするボールねじの熱変位補正装置
  2. 請求項1において、前記ボールねじ熱変位算出手段は、前記変位検出器により出力されたみかけの熱変位の測定値(△Xとする)と、前記温度検出器により出力されたベースの温度の変化量(△Tとする)と、ベースの長さ(Bとする)と、ベースの熱膨張係数(βとする)と、ベースの幾何補正係数(αとする)と、から前記ボールねじの長さ(Aとする)の真の熱変位量(△Aとする)を、以下の式により、算出することを特徴とするボールねじの熱変位補正装置。
    ΔA=ΔX−αβBΔT
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