JP5697822B2 - 壁面材の張替方法及び壁体 - Google Patents

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Description

本発明は、壁面材の張替方法、及びその張替方法により壁面材が張り替えられた壁体に関するものである。
例えば、枠組壁工法により構築される建物としてスチールハウスが知られており、そのスチールハウスにおいて、壁体は、上下一対のランナとそのランナ間に設けられる複数のスタッドとからなる枠体を有し、その枠体を挟んで両側に壁面材がビス固定される構成となっている(壁体については、例えば特許文献1参照)。この場合、スチールハウスでは壁体が耐力壁として使用され、例えば壁体の屋内側面に突き当てるようにして天井面材が固定されている。
特開2002−285660号公報
ここで、スチールハウス等の建物の壁体においては、地震等の揺れにより壁面材が損傷したり、何かをぶつけることで壁面材が損傷したりすることが考えられる。この場合、壁面材の張替に際しては、一般に壁体の上端部から下端部にかけて壁面材が一体で張り替えられる。これは、壁体において上下の両ランナの間には下地材がなく、張替後の壁体の強度を考えると、壁面材の全面張替が望ましいと考えられるからである。この場合、壁面材の張替作業が大がかりになり、作業の繁雑化を招くことが懸念される。
また、壁体の屋内側面に天井面材が突き当てられて固定されている場合には、その天井面材を取り外す作業をした後に、壁面材の張替が行われることになり、その張替作業が極めて煩雑なものとなってしまう。
なお、スチールハウスの耐力壁として使用される場合以外でも、上記のとおり上下一対のランナとそのランナ間に設けられる複数のスタッドとからなる枠体を有し、その枠体を挟んで両側に壁面材が固定される枠体については、壁面材の張替時において上記同様の不都合が生じると考えられる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、壁面材の張替作業の簡易化を図ることができる壁面材の張替方法及び壁体を提供することを主たる目的とするものである。
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。
第1の発明の壁面材の張替方法は、
建物の壁体として、上下一対となる上枠ランナ及び下枠ランナと、それら両ランナの間に所定間隔で設けられる複数のスタッドとからなる枠体を有し、該枠体を挟んで両側に壁面材が固定されてなる構造を有し、その壁体について前記壁面材の一部を張り替える張替方法であって、
張替対象となる前記壁面材を、前記複数のスタッドのうち一のスタッドから他のスタッドに至るまでの範囲で切除する第1工程と、
その後、前記壁面材を切除した部位において、隣り合うスタッドに対して両端をそれぞれ固定した状態で下地横架材を取り付ける第2工程と、
その後、前記壁面材を切除した部位において、前記下地横架材に対して張替用壁面材を固定する第3工程と、
を有することを特徴とする。
上記張替方法によれば、例えば壁面材の一部が損傷した場合に、その壁面材の全面を張り替えなくてもよく、一部修復で対処できる。かかる場合、下地横架材は、その両端がそれぞれスタッドに固定されており、壁面材を張り替えた部分において壁体としての強度が担保されるものとなっている。また、必要箇所のみでの張替が可能となるため、張替作業の簡易化も実現できる。
第2の発明では、
前記第2工程は、
前記第1工程での前記壁面材の切除により露出された前記スタッドに対して、隣り合うスタッド同士の間から支持具を取り付ける工程と、
該取り付けた支持具に、前記スタッドと前記下地横架材との壁面材張替側の側面部が面一となるように前記下地横架材を取り付ける工程と、
を含むことを特徴とする。
上記張替方法によれば、先に支持具を取り付けた状態で、その支持具に対して下地横架材を取り付けるため、その取付作業を容易化できる。支持具は、隣り合うスタッド同士の間から取り付けられるものであり、壁面材が切除された状態では、その支持具の取付も容易に実施できる。また、支持具に対して下地横架材が取り付けられた状態では、スタッドと下地横架材との壁面材張替側の側面部が面一となるため、張り替えられない壁面材(非張替部分)と、新たに張り替えられた張替用壁面材とで段差が生じることがなく、仕上がりが良好なものとなる。
なお、スタッドに対して下地横架材を取り付ける構成としては、スタッドの壁面材張替側の側面部(溝形綱よりなるスタッドの場合、そのフランジ外側面)に、帯板材よりなる下地横架材を直接取り付ける構成が考えられる。ただしこの場合、帯板材の板厚や固定用ビスの存在等を考えると、非張替部分の壁面材と張替用壁面材とで段差が生じるおそれがある。これに対し、上記張替方法によれば、非張替部分の壁面材と張替用壁面材とで段差が生じず、仕上がりが良好なものとなる。
第3の発明では、
前記スタッド及び前記下地横架材は溝形鋼よりなり、
前記第2工程は、
前記支持具としてのアングル材を、その一辺部が前記スタッドのウエブ部分に当接し、他辺部が隣り合うスタッド同士の間の中央部側に延びる状態で、前記スタッドに固定する工程と、
前記アングル材の他辺部に、前記下地横架材を取り付ける工程と、
を含むことを特徴とする。
上記張替方法によれば、アングル材と溝形鋼との結合により、下地横架材を容易に取り付けることができ、ひいては壁面材の張替を簡易に実施できる。また、下地横架材として溝形鋼を用いることにより、張替用壁面材が下地横架材に対してビス等により固定される際に張替用壁面材が奥側に押圧されても、その張替用壁面材の撓みを抑制できる。
溝形鋼を下地横架材として用いる場合、ウエブ面が水平面となる向きで下地横架材を取り付け、フランジ外側面を張替用壁面材の取付面にするとよい。この場合、下地横架材は、スタッドとウエブ幅が同じ溝形鋼を用いるとよい。又は、ウエブ面が鉛直面となる向きで下地横架材を取り付け、ウエブ外側面を張替用壁面材の取付面にするとよい。
第4の発明では、
前記第2工程では、前記スタッドの壁面材張替側の側面部において、上下方向に見て片側一部分を、切除されずに残った前記壁面材に重なる部分、残り部分を、新たに前記張替用壁面材を重ね合わせる部分となるように前記下地横架材を取り付けることを特徴とする。
上記張替方法によれば、壁面材の非切除部分と切除部分との境界部に設けられる下地横架材を、切除されないまま残る壁面材(非張替部分)と、新たに張り替えられた張替用壁面材との固定支持相手として共用できる。これにより、壁面材の非切除部分と切除部分との境界部において下地横架材を過多に追加することなく、所望の強度で壁面材を固定することができる。
第5の発明では、
前記第1工程では、前記スタッドの壁面材張替側の側面部において、横方向に見て片側一部分を、前記壁面材を非切除とする領域、残り部分を、前記壁面材を切除する領域とし、該切除する領域について前記壁面材を切除することを特徴とする。
上記張替方法によれば、壁面材の非切除部分と切除部分との境界部のスタッドを、切除されないまま残る壁面材(非張替部分)と、新たに張り替えられた張替用壁面材との固定支持相手として共用できる。これにより、壁面材の非切除部分と切除部分との境界部においてスタッドを追加することなく、所望の強度で壁面材を固定することができる。
第6の発明では、
前記壁体は、枠組壁工法で構築される建物の外壁部に耐力壁として用いられるものであり、
該建物において、前記壁体の屋内側の壁面には、該壁面に対して交差する向きで天井面材が固定されており、
前記壁面材において前記天井面材の固定位置よりも下方で、前記壁面材の張替を行うことを特徴とする。
枠組壁工法で構築される建物では、天井面材の端部が固定されている方の壁面材(すなわち内壁側の壁面材)について破損が生じた場合に、その壁面材を全面張替にすると、その張替作業に多大な負荷が生じるが、上記張替方法によれば、その張替作業の負荷が大幅に軽減できる。つまり、壁面材の張替に際し、天井面材の取り外し作業が不要となるため、作業性が大いに向上する。
第7の発明では、
前記壁体は、前記複数のスタッドとして、前記壁面材の周縁部に配置される第1スタッドと、周縁部以外に配置される第2スタッドとを有し、前記第1スタッドに対して前記壁面材をビス固定する固定間隔は、前記第2スタッドに対して前記壁面材をビス固定する固定間隔よりも小さくなっており、
前記第3工程において、前記張替用壁面材を前記スタッド及び前記下地横架材に固定する場合に、前記第1スタッドに対して前記壁面材をビス固定する固定間隔と同じ固定間隔で、前記張替用壁面材をビス固定することを特徴とする。
壁体において耐力壁としての強度を確保するには、壁面材の周縁部に配置される第1スタッドは比較的狭い間隔でビス固定され、それに対して周縁部以外に配置される第2スタッドのビス固定は比較的広い間隔でよい。これを鑑み、壁面材の一部を張り替える場合には、第1スタッドに対して壁面材をビス固定する固定間隔と同じ固定間隔で、スタッド及び下地横架材に対して張替用壁面材をビス固定する。これにより、壁面材の一部張替が行われた壁体について耐力壁としての強度を維持できる。
なお、張り替えられないままとなる元の壁面材において切除端部となる部分も、第1スタッドに対して壁面材をビス固定する固定間隔と同じ固定間隔で、ビスの打ち直しが行われるとよい。
上記の各張替方法により壁面材が張り替えられた壁体(第8の発明)は、張替後の強度や仕上がりの点で良好なものとなる。
壁体の構成を示す図であり、(a)は壁体の正面図、(b)は壁体の横断面図。 リップ付き溝形鋼の断面図。 建物の天井付近の構成を示す断面図。 壁面材張替の各工程を説明するための壁体の正面図。 (a)は図4(b)のA−A線断面図、(b)は図4(c)のB−B線断面図、(c)は図4(d)のC−C線断面図。 下地横架材の取付構造を示す斜視図。 下地材追加工程での壁断面図。 下地横架材の取付構造を示す斜視図。 壁面材張替の各工程を説明するための壁体の正面図。 壁面材張替の各工程を説明するための壁体の正面図。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、建物として枠組壁工法により構築されたスチールハウスにおいて、耐力壁として使用される壁体(外壁パネル)に本発明を具体化している。図1は、壁体10の構成を示す図であり、(a)は壁体10の正面図、(b)は壁体10の横断面図である。なお、図1(a)では、壁面材の上部を切除した状態を示している。また、(b)では便宜上、鋼材の厚みを省略して示すとともに、実際には当接して接合される部分についても若干離間させて示している(後述の図3等も同様)。
図1に示すように、壁体10は、枠体(壁体の骨格)11として、上下一対となる上枠ランナ12及び下枠ランナ13と、それら両ランナ12,13の間に所定間隔で設けられる複数のスタッド14とを有し、該枠体11を挟んで両側に壁面材15,16がそれぞれ固定されている。上下の各ランナ12,13は、リップ無し溝形鋼よりなり、いずれも溝部が上下方向内側を向くように配置されている。また、複数のスタッド14は、リップ付き溝形鋼よりなり、その上端部及び下端部が各ランナ12,13の溝内に挿し入れられた状態で、上下の両ランナ12,13に架け渡されるようにして互いに平行に配置されている。各スタッド14は、溝部がいずれも同じ方向となる向きで設けられている。スタッド14の設置間隔(図のL1)は建物の建築モジュールを基準として定められるとよく、本実施形態では尺モジュールを基準とし、例えばL1=450mmとして各スタッド14が設けられている。
スタッド14を構成するリップ付き溝形鋼について説明すると、図2に示すようにリップ付き溝形鋼はウエブ18aとフランジ18bとリップ18cとを有している。そのサイズについて限定はないが、具体的数値を例示すると、ウエブ18aの長さL2=89mm、フランジ18bの長さL3=45mm、リップ18cの長さL4=12mmとなっている。
図1の説明に戻り、壁面材15,16は、そのうち屋内側となる壁面材15が石膏ボード等の内壁材により構成され、屋外側となる壁面材16が窯業系サイディングボード等の外壁材により構成されている。壁面材15,16は、縦寸法を上枠ランナ12から下枠ランナ13までと同じ長さとし、横寸法L5をスタッド設置間隔のn倍(nは2以上の整数)とするサイズの板材15a,16aからなり、これらの板材15a,16aを枠体11に対して複数張り合わせて構成されている。各板材15a,16aのサイズは、例えば縦寸法が2630mmであり、横寸法L5が900mm(=L1×2)である。なお、外壁側と内壁側とで板材15a,16aのサイズ(例えば横寸法)を相違させることも可能である。
板材15aは、枠体11に対して所定間隔での所定箇所のビス止めにより固定されており、そのビス止めの間隔は、板材15aの周縁部となる位置とそれ以外とで異なるものとなっている。図中、符号Vs(黒丸部分)がビス止め位置を示す。本実施形態では、板材15aの周縁部となる位置でのビス止め間隔(固定間隔)L6は150mm、それ以外でのビス止め間隔(固定間隔)L7は300mmとなっている。つまり、上下の各ランナ12,13に対しては150mm間隔で板材15aがビス止めされている。また、各スタッド14のうち板材15aの横縁部が固定されるスタッド(図の14A)に対しては150mm間隔で板材15aがビス止めされ、左右方向に見て板材15aの中間部が固定されるスタッド(図の14B)に対しては300mm間隔で板材15aがビス止めされるようになっている。なお、スタッド14Aが第1スタッドに相当し、スタッド14Bが第2スタッドに相当する。
こうして板材15aの周縁部となる位置では比較的狭い間隔でビス固定され、それに対して周縁部以外ではビス固定が比較的広い間隔となっているため、ビス固定の箇所を必要最小限としつつも、壁体10において耐力壁としての強度を確保できるものとなっている。
ここで特に、板材15aの横縁部では、その横縁部が固定されるスタッド14Aに対して板材15aがスタッド14Aのフランジの約半分の領域で重ね合わされ、その重ね部分でビス止めが行われている。つまり、板材15aの横縁部が固定されるスタッド14Aは、同一のフランジに左右2つの板材15aが固定されるようになっており、フランジを横に二分した各領域に左右2つの板材15aがそれぞれビス止めされている。
なお、屋外側の板材16aも同様にビス止めにより枠体11に対して固定されている。ただし、板材15a,16aの材質の違い等に応じて、各板材15a,16aのビス止めの間隔が各々個別に設定されるようになっていてもよい。
枠体11に対して板材15a,16aが上記のごとく固定されることで、壁体10について耐力壁としての要求強度が満たされるものとなっている。
また、図3は、建物の天井付近の構成を示す断面図である。建物において、外壁パネルとしての壁体10の屋内側面、すなわち壁面材15の屋内側面には、溝形鋼(長尺材)よりなる野縁受けランナ21が水平方向に延びる向きで固定されており、その野縁受けランナ21に交差(直交)する向きで長尺材からなる野縁22が固定されている。また、野縁22の下面側には天井面材23が固定されている。この場合、建物の施工に際しては、壁体10が先行して設置され、その後、壁体10の屋内側面(すなわち壁面材15の屋内側面)に突き当てるようにして天井面材23が固定される。つまり、いわゆる壁勝ちの構造となっている。
ところで、上記構成の壁体10を有する建物において、地震等による変形荷重が壁体10に作用したり、壁体10の内壁面に物がぶつかったりすると、壁面材15(例えば内壁側の石膏ボード)の一部が破損することが考えられる。本実施形態では、壁面材15の一部が破損した場合に、その破損箇所について壁面材の張替を好適に実施できる張替方法を提案する。
この張替方法は概要として、
(1)壁面材15において張替対象となる板材15aを、隣り合う2つスタッド14の一方から他方に至るまでの範囲で切除する壁面材切除工程(第1工程)と、
(2)その後、壁面材15を切除した部位において、隣り合うスタッドに対して両端をそれぞれ固定した状態で下地横架材を取り付ける下地材追加工程(第2工程)と、
(3)その後、壁面材15を切除した部位において、下地材に対して張替用壁面材を固定する張替工程(第3工程)と、
を有するものとなっており、これら各工程について以下に詳しく説明する。図4は、上記の各工程を説明するための壁体10の正面図である。また、図5(a)は図4(b)のA−A線断面図、図5(b)は図4(c)のB−B線断面図、図5(c)は図4(d)のC−C線断面図である。
(1)壁面材切除工程
図4(a)に示すように、板材15a(壁面材15)の一部(図の×部)が破損した場合、その破損部分を含む領域(図のハッチング領域)を切除位置として定め、その領域についてカッタ等の切除器具を用いて板材15aを切除する。図4(b)において、Sが板材15aを切り抜いた領域であり、本例では、上下方向に見て中間位置となる部分を切除部分としている。この板材15aの切除は、壁体10を建物に取り付けたままの状態で行われる。つまり、上述のとおり壁体10には屋内面側に天井面材23が取り付けられているが、その天井面材23を取り付けた状態のまま、天井下方部分で板材15aの一部切除が行われる。この場合、板材15aは、隣り合う2つスタッド14の一方から他方に至るまでの範囲で切除されるようになっており、その隣り合う両スタッド14のフランジ(壁面材張替側の側面部)において、横方向に見て片側一部分を、板材15aを非切除とする領域、残り部分を、板材15aを切除する領域として、該切除する領域について板材15aが切除される。
詳しくは、図5(a)に示すように、板材15aの一部を切除した状態では、その切除部分(S領域)に隣接する境界端部において板材15aの端縁部が、スタッド14のフランジの約半分に重なった状態となっており、そのフランジの残り半分は板材15aが重ならない露出部分となっている(図のZ)。
(2)下地材追加工程
図4(c)に示すように、板材15aの切除部分(S領域)においてその切除部分に上下に隣接する板材15aの境界端部に、隣り合う両スタッド14に対して両端をそれぞれ固定した状態で下地横架材25を取り付ける。なお、図6は、下地横架材25の取付構造を示す斜視図であり、これは図4(c)におけるY部の構造に相当する。
詳しくは、図5(b)及び図6に示すように、板材15aの切除により露出された左右の各スタッド14に対して、隣り合うスタッド同士の間からビス等により支持具26を取り付けるとともに、該取り付けた各支持具26に、スタッド14と下地横架材25との壁面材張替側の側面部(フランジ外側面)が面一となるように下地横架材25を取り付ける。この場合、図6に示すように、支持具26は、鋼板をL字状に折り曲げてなるアングル材であり、該アングル材の一方の板部26a(一辺部)がスタッド14のウエブにビス等により固定される。また、他方の板部26b(他辺部)は、板面を水平方向とした状態で、隣り合う両スタッド14の相手側に延びており、その板部26bに下地横架材25がビス等により固定される。図6中の一点鎖線は、スタッド14及び下地横架材25の各フランジ外側面において板材15aの端部位置を示す境界線である。なお、支持具26をスタッド14や下地横架材25に結合する手法としては、接着剤等、他の結合手法を用いることも可能である。
隣り合う2つのスタッド14は、溝部がいずれも同じ方向となる向きで設けられており、それゆえに、左右一対の支持具26のうち一方は、スタッド14のウエブの溝側面(内側面)に取り付けられ、他方は、スタッド14のウエブの反溝側面(外側面)に取り付けられている。
下地横架材25は、スタッド14と同サイズのリップ付き溝形鋼(少なくともウエブ幅が同じ溝形鋼)であり、ウエブが水平面、フランジが鉛直面となるようにして取り付けられる。このとき、スタッド14のウエブ幅が同一であるため、スタッド14のフランジ外側面と下地横架材25のフランジ外側面とは面一となっている。
(3)張替工程
図4(d)に示すように、板材15aを切除した部位において、スタッド14及び下地横架材25に対して張替用壁面材である新たな張替板材28をビス等により固定する。張替板材28は、板材15aと同じ石膏ボート等からなり、未張替部分の板材15aに対して隙間無く配される。
詳しくは、図5(c)に示すように、隣り合う両スタッド14と下地横架材25とのそれぞれに重ね合わすようにして張替板材28が配置され、そのスタッド14と下地横架材25とに対してビス等により張替板材28が固定される。このとき、ビスの固定間隔L8は、板材15aの周縁部での固定間隔L6(図1参照)と同じ間隔であり、例えば150mm間隔でビス固定される。これは、張替板材28の下地横架材25に対する固定部分だけでなく、スタッド14に対する固定部分も同様であり、固定間隔L6(図1参照)と同じ間隔L8でビス固定される。つまり、張替板材28の四辺の周縁部は、全てスタッド14か下地横架材25に対向しており、その対向部分にて固定間隔L6と同じ間隔L8でビス固定が行われるようになっている。ただし、固定間隔L8は、固定間隔L6よりも小さくてもよい。
切除されずに残る板材15a(非切除の板材15a)においてその切除端部となる部分も、ビス固定間隔が、板材15aの周縁部での固定間隔L6(図1参照)と同じ間隔であるとよい。つまり、図4(d)において、張替板材28に上下及び左右に隣接する板材15aの切除端部位置では、板材15aが、固定間隔L6と同じ間隔でスタッド14及び下地横架材25に対してビス固定されるようになっている。なお、板材15aの中間部を固定しているスタッド14(図の14B)に関しては、元々固定間隔L7でビス固定されているが(図1参照)、このビスが外され、新たにそれよりも狭い間隔でビス固定されるようになっている。
ちなみに、詳細は記載しないが、上記の張替作業に際し、内壁面の化粧クロスは適宜剥がし取られるとともに、壁面材15の張替後に再貼り付けされる。上記の張替方法は壁面材16の張替にも適用できる。
板材15a(壁面材15)の張替が実施される場合としては、上記のように地震時等に板材15aが破損した場合や物がぶつかって板材15aが破損した場合以外に、屋内の湿り気(例えば洗濯機背後の水濡れ)により板材15aが腐食したり、水害時の水没により汚損が生じたりした場合も考えられる。かかる場合にも、上記の張替方法を適用できる。また、破損時等の補修目的以外に、住人等が意図的に壁面材の張替を行う場合にも、上記の張替方法を適用できる。
下地横架材の取付方法(下地材追加工程)としては、別の手法も考えられる。それを図7及び図8により説明する。図7は、下地材追加工程での壁断面図であり、これは図4(c)のB−B線断面図に相当する(ただし、図4(c)において下地横架材25を下地横架材31に置き換えられたい)。また、図8は、下地横架材31の取付構造を示す斜視図であり、これは図4(c)におけるY部の構造に相当する(ただし、溝開口の向きは逆)。
下地材追加工程において、図7及び図8に示すように、板材15aの切除により露出された左右の各スタッド14に対して、隣り合うスタッド同士の間からビス等により支持具32を取り付けるとともに、該取り付けた各支持具32に、スタッド14と下地横架材31との壁面材張替側の側面部が面一となるように下地横架材31を取り付ける。この場合、図8に示すように、支持具32は、鋼板をL字状に折り曲げてなるアングル材であり、該アングル材の一方の板部32a(一辺部)がスタッド14のウエブにビス等により固定される。また、他方の板部32b(他辺部)は、板面を鉛直方向とした状態で、隣り合う両スタッド14の相手側に延びており、その板部32bに下地横架材31がビス等により固定される。
隣り合う2つのスタッド14は、溝部がいずれも同じ方向となる向きで設けられており、それゆえに、左右一対の支持具32のうち一方は、スタッド14のウエブの反溝側面(外側面)に取り付けられ、他方は、スタッド14のリップの外側面に取り付けられている。下地横架材31は、スタッド14と同サイズのリップ付き溝形鋼であり、ウエブが鉛直面となるようにして取り付けられる。ただし、図8の構成では、下地横架材31として溝形鋼のサイズは任意である。なお、図8中の一点鎖線は、スタッド14のフランジ外側面及び下地横架材31のウエブ外側面において板材15aの端部位置を示す境界線である。
図7,図8に示す下地横架材31の取付構造では、下地横架材31と支持具32とが壁厚み方向に見て重なる構成になるため、支持具32は、下地横架材31の板厚分だけ壁厚み方向内側に後退する状態でスタッド14のウエブに固定される。また、支持具32は、その一部が、切除されずに残る板材15aの一部(上端部及び下端部)に対して壁厚み方向に重なるため、板材15aと支持具32との間に下地横架材31を挿し入れるには、下地横架材31のフランジが邪魔になる。そこで、下地横架材31のフランジ(例えば図8の場所では上側フランジ)には、干渉回避のための切欠部31aが設けられている。この切欠部31aによれば、板材15aと支持具32との間に下地横架材31を挿し入れる際に、その下地横架材31を、図8のごとく板材境界部に跨るように配置できる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
図4乃至図8を用いて詳細に説明した壁面材の張替方法によれば、例えば板材15a(壁面材15)の一部が損傷した場合に、その板材15aの全面を張り替えなくてもよく、一部修復で対処できる。かかる場合、下地横架材25は、その両端がそれぞれスタッド14に固定されており、板材15aを張り替えた部分において壁体10としての強度が担保されるものとなっている。また、必要箇所のみでの張替が可能となるため、張替作業の簡易化も実現できる。
その壁面材の張替に際し、板材15aの切除により露出したスタッド14に対して、隣り合うスタッド同士の間から支持具26を取り付け、その支持具26に、スタッド14と下地横架材25との壁面材張替側の側面部(溝形綱のフランジ外側面)が面一となるように下地横架材25を取り付けるようにした。この場合、先に支持具26を取り付けた状態で、その支持具26に対して下地横架材25を取り付けるため、その取付作業を容易化できる。また、スタッド14と下地横架材25との壁面材張替側の側面部が面一となるため、張り替えられない板材15a(非張替部分)と、張替板材28とで段差が生じることがなく、仕上がりが良好なものとなる。
支持具26としてのアングル材を用い、その支持具26に対して下地横架材25を取り付けるようにした。この張替方法によれば、アングル材と溝形鋼との結合により、下地横架材25を容易に取り付けることができ、ひいては壁面材の張替を簡易に実施できる。また、下地横架材25として溝形鋼を用いることにより、張替板材28が下地横架材25に対してビス等により固定される際に張替板材28が奥側に押圧されても、その張替板材28の撓みを抑制できる。
また、下地横架材25をスタッド14に取り付ける際に、その下地横架材25において上下方向に見て片側一部分を、切除されずに残った板材15aに重なる部分、残り部分を、新たに張替板材28を重ね合わせる部分とした。これにより、板材15aの非切除部分と切除部分との境界部に設けられる下地横架材25を、非切除の板材15aと張替板材28との固定支持相手として共用できる。これにより、非切除部分と切除部分との境界部において下地横架材25を過多に追加することなく、所望の強度で各板材を固定することができる。
また、板材15aの一部を切除する際に、スタッド14のフランジ外側面において水平横方向に見て片側一部分を、板材15aを非切除とする領域、残り部分を、板材15aを切除する領域とし、該切除する領域について板材15aを切除するようにした。これにより、板材15aの非切除部分と切除部分との境界部のスタッド14(例えば図4(d)のスタッド14B)を、非切除の板材15aと張替板材28との固定支持相手として共用できる。これにより、板材15aの非切除部分と切除部分との境界部においてスタッド14を追加することなく、所望の強度で各板材を固定することができる。
上記張替方法では、壁体10において天井面材23の固定位置よりも下方で、板材15a(壁面材15)の張替を実施できる。天井面材23の端部が固定されている内壁側の板材15aについて破損が生じた場合に、板材15aを全面張替にすると、その張替作業に多大な負荷が生じるが、上記張替方法によれば、その張替作業の負荷が大幅に軽減できる。つまり、板材15a(壁面材15)の張替に際し、天井面材23の取り外し作業が不要となるため、作業性が大いに向上する。
張替板材28においてスタッド14及び下地横架材25に対してビス固定される部位について、板材15aの周縁部のスタッド14(第1スタッド)に対して板材15aをビス固定する固定間隔と同じ固定間隔で、ビス固定を行うとともに、板材15aにおいて非切除部分と切除部分との境界部となる部位についても、板材15aの周縁部のスタッド14(第1スタッド)に対して板材15aをビス固定する固定間隔と同じ固定間隔で、ビス固定を行うようにした。これにより、板材15a(壁面材15)の一部張替が行われた壁体10について耐力壁としての強度を維持できる。
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
・上記実施形態では、板材15aを一部切除する部位を上下方向に見て壁体10の中間部とした例を説明したが(図4参照)、これを変更してもよい。例えば、図9に示すように、上下方向に見て壁体10の中間位置から下端部までの範囲で板材15aを切除するようにしてもよい。この場合、図9(a)、(b)に示すように、下枠ランナ13への固定部分を含めて板材15aが切除され、同(c)に示すように、切除領域Sの上側にのみ新たに下地横架材25が追加される。そして、左右の固定相手をスタッド14とし、上下の固定相手を下枠ランナ13及び下地横架材25として新たな張替板材28がビス固定される(図9の(d))。
また、3つのスタッド14に跨るようにして板材15aを切除することも可能である。すなわち、破損位置が水平方向に複数存在している場合、又は板材中央のスタッド14を跨って破損が生じている場合、図10(a)、(b)に示すように、3つのスタッド14に跨るようにして板材15aが切除され、同(c)に示すように、隣り合うスタッド同士の間に各2個ずつの下地横架材25が追加される。そして、スタッド14及び各下地横架材25に対して張替板材28がビス固定される(図10の(d))。
・壁体が、窓開口を有する壁体であってもよい。例えば、窓付き壁体では、窓開口の位置に合わせて、上下方向に見て中間位置にランナが設けられるとともに、上下の両ランナ間にスタッドが設けられ、さらに窓開口を避けるようにしてコ字状又はロ字状に形成された壁面材が固定されている。この場合、壁面材において窓開口の角部に相当する部位が入隅部となっており、地震等の揺れが生じると、その入隅部でクラック(裂け目)が生じやすくなる。この点、上述した壁面材の張替方法によれば、地震等の揺れにより壁面材にクラックが生じても、容易に壁面材の張替を実施できる。
・上記実施形態では、下地横架材としてリップ付溝形鋼を用いたが、これ以外にリップ無し溝形鋼を用いたり、角形鋼を用いたり、L型鋼を用いたり、帯鋼板を用いたりすることも可能である。
・上記実施形態では、建物の外壁パネルとして用いられる壁体に本発明を具体化したが、これ以外に、建物の間仕切壁として用いられる壁体に本発明を具体化することも可能である。すなわち、本発明を、建物の非構造体である壁体に適用してもよい。
・上記実施形態では、枠体として薄板軽量形鋼(溝形鋼)を用いたスチールハウス用の壁体に本発明を適用したが、これ以外に、木質系の枠組壁工法で構築された建物の壁体に本発明を適用することも可能である。この場合、壁体の枠体は、木質の角材により構成される。
10…壁体、11…枠体、12…上枠ランナ、13…下枠ランナ、14…スタッド、15,16…壁面材、15a,16a…板材、25…下地横架材、26…支持具(固定支持材)、28…張替板材(張替用壁面材)、31…下地横架材、32…支持具(固定支持材)。

Claims (8)

  1. 建物の壁体として、上下一対となる上枠ランナ及び下枠ランナと、それら両ランナの間に所定間隔で設けられる複数のスタッドとからなる枠体を有し、該枠体を挟んで両側に壁面材が固定されてなる構造を有し、その壁体について前記壁面材の一部を張り替える張替方法であって、
    張替対象となる前記壁面材を、前記複数のスタッドのうち一のスタッドから他のスタッドに至るまでの範囲で切除する第1工程と、
    その後、前記壁面材を切除した部位において、隣り合うスタッドに対して両端をそれぞれ固定した状態で下地横架材を取り付ける第2工程と、
    その後、前記壁面材を切除した部位において、前記下地横架材に対して張替用壁面材を固定する第3工程と、
    を有することを特徴とする壁面材の張替方法。
  2. 前記第2工程は、
    前記第1工程での前記壁面材の切除により露出された前記スタッドに対して、隣り合うスタッド同士の間から支持具を取り付ける工程と、
    該取り付けた支持具に、前記スタッドと前記下地横架材との壁面材張替側の側面部が面一となるように前記下地横架材を取り付ける工程と、
    を含むことを特徴とする請求項1に記載の壁面材の張替方法。
  3. 前記スタッド及び前記下地横架材は溝形鋼よりなり、
    前記第2工程は、
    前記支持具としてのアングル材を、その一辺部が前記スタッドのウエブ部分に当接し、他辺部が隣り合うスタッド同士の間の中央部側に延びる状態で、前記スタッドに固定する工程と、
    前記アングル材の他辺部に、前記下地横架材を取り付ける工程と、
    を含むことを特徴とする請求項2に記載の壁面材の張替方法。
  4. 前記第2工程では、前記スタッドの壁面材張替側の側面部において、上下方向に見て片側一部分を、切除されずに残った前記壁面材に重なる部分、残り部分を、新たに前記張替用壁面材を重ね合わせる部分となるように前記下地横架材を取り付けることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の壁面材の張替方法。
  5. 前記第1工程では、前記スタッドの壁面材張替側の側面部において、横方向に見て片側一部分を、前記壁面材を非切除とする領域、残り部分を、前記壁面材を切除する領域とし、該切除する領域について前記壁面材を切除することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の壁面材の張替方法。
  6. 前記壁体は、枠組壁工法で構築される建物の外壁部に耐力壁として用いられるものであり、
    該建物において、前記壁体の屋内側の壁面には、該壁面に対して交差する向きで天井面材が固定されており、
    前記壁面材において前記天井面材の固定位置よりも下方で、前記壁面材の張替を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の壁面材の張替方法。
  7. 前記壁体は、前記複数のスタッドとして、前記壁面材の周縁部に配置される第1スタッドと、周縁部以外に配置される第2スタッドとを有し、前記第1スタッドに対して前記壁面材をビス固定する固定間隔は、前記第2スタッドに対して前記壁面材をビス固定する固定間隔よりも小さくなっており、
    前記第3工程において、前記張替用壁面材を前記スタッド及び前記下地横架材に固定する場合に、前記第1スタッドに対して前記壁面材をビス固定する固定間隔と同じ固定間隔で、前記張替用壁面材をビス固定することを特徴とする請求項6に記載の壁面材の張替方法。
  8. 請求項1乃至7のいずれかに記載の壁面材の張替方法により前記壁面材が張り替えられた壁体。
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