JP5696879B2 - コンクリート打ち継ぎ構造およびコンクリート打ち継ぎ方法 - Google Patents
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Description
そのような傾向は既存躯体のコンクリート強度が充分ではない場合に顕著であって、その場合には充分なせん断力伝達効果が得られないから、特に建設年代の古いRC造建物では充分な耐震補強効果が得られないことも懸念される。
また、特許文献1に示される構造では、既存躯体と新設躯体との間のせん断力伝達がアンカー(あと施工アンカー)とせん断抵抗部材によりなされるだけなので、せん断力伝達効果が必ずしも充分に得られないことも想定される。
これは、既存のRC造建物の耐震補強に際して、既存躯体1の表面に耐震要素としての新設躯体2(たとえば耐震壁、柱、梁、ブレースなど。図1は鎖線で示す)を増し打ちして、その新設躯体2を既存躯体1に対してせん断力伝達可能に一体化させる場合の適用例である。
これにより、既存躯体1と新設躯体2とがあと施工アンカー3を介して接合されるばかりでなく、新設躯体2を形成する際にそのコンクリートが(c-1)、(c-2)に示すようにアンカー孔4aおよびコッター孔4b内に自ずと充填されて既存躯体1と新設躯体2との間にシアコッター6が形成し、そのシアコッター6を介して充分なるせん断力伝達効果が得られる。
そして、そのうえで(c)に示すようにアンカー孔4aにコンクリートが充填されてシアコッター6が形成されることにより、あと施工アンカー3に作用するせん断力はシアコッター6から補強鋼板4、接着剤5による接着層を介して既存躯体1に伝達されるから、それらの全体で優れたせん断力伝達効果が得られ、それにより本実施形態では既存躯体1が低強度であっても優れた補強効果が得られる。
すなわち、既存躯体1のせん断強度fs1、既存躯体1のコンクリート圧縮強度σB1、新設躯体2のせん断強度fs2、新設躯体2のコンクリート圧縮強度σB2とし、補強鋼板4の全面積A、アンカー孔4aとコッター孔4bの孔面積の総和をA2、それらの孔面積を除いた部分の面積A1(A1=A−A2)とすると、既存躯体1から接着剤5による接着層および補強鋼板4を介して伝達されるせん断力と、補強鋼板4から新設躯体2にシアコッター6を介して伝達されるせん断力との間には、
fs1・A1≒fs2・A2
なる関係があるから、これから、
A1/A2=fs2/fs1=√(σB2/σB1)
なる関係が成り立ち、その関係に基づいてアンカー孔4aとコッター孔4bの孔面積の総和A2を設定すれば良い。
A1/A2=√(28/14)≒1.4 ∴A2≒A1/1.4=(A-A2)/1.4 ∴A2≒A/2.4≒0.417A
つまり、補強鋼板4全体の面積Aに対するアンカー孔4aおよびコッター孔4bの孔面積の総和A2を補強鋼板4全体の面積Aの約40%程度、つまり補強鋼板4の開口率を約40%程度とすれば良いことになる。
しかし、アンカー孔4aの径寸法をあまり小さくするとその内部へのあと施工アンカー3の打ち込み作業が著しく困難になるし、また、既存躯体1に埋設されている既存鉄筋に対してあと施工アンカー3が干渉してその打ち込みが困難になる場合も想定されることから、それらの点を考慮すれば、アンカー孔4aの寸法は既存鉄筋の径寸法も考慮してそれよりも大きく設定することが好ましい。
図中の符号7は既存躯体1中に直交状態で配筋されている2方向の既存鉄筋(たとえば柱の場合には主筋とフープ筋、梁の場合には主筋とスタラップ、壁や床の場合には格子状の壁筋や床筋など)であり、補強鋼板4を既存躯体1の表面に接着した段階ではアンカー孔4aの位置がそれら既存鉄筋7の位置に重なることが想定される。
そのため、仮にアンカー孔4aの径寸法が既存鉄筋7の径と同等程度ないしそれ以下であると、そのアンカー孔4aが既存鉄筋7の直上に重なった場合にはそこにあと施工アンカー3を打ち込むことが不可能であるから、その場合には予め既存鉄筋7の位置を正確に把握したうえで、アンカー孔4aの位置が既存鉄筋7の位置に重ならないようにアンカー孔4aの位置決めあるいは補強鋼板4の位置決めを高精度で行う必要があるが、そのような作業は非常に困難であり面倒である。
但し、アンカー孔4aの径を徒らに大きくすることは補強鋼板4を接着することによる補強効果が低下してしまうから、アンカー孔4aの大きさは既存鉄筋7の位置を回避してあと施工アンカー3を打ち込めるようにその位置を調整可能な範囲内で必要最小限に留めるべきである。
具体的には、既存鉄筋7の径d1、あと施工アンカー3の径d2とした場合、アンカー孔4aの必要最小限の径Dは図中に示しているように
D≧d1+2d2
として設定すれば良い。
これにより、アンカー孔4aが既存鉄筋7に対して様々な位置関係で重なったとしてもそのアンカー孔4aの範囲内であと施工アンカー3の打ち込み位置を調整可能であり、それにより既存鉄筋7の位置を回避してあと施工アンカー3を支障なく打ち込むことが可能である。
この場合、長孔として形成するアンカー孔4aの長さ方向が、直交状態で交差している2方向の既存鉄筋7のいずれか一方と同方向であると、そのアンカー孔4aと既存鉄筋7とが完全に重なってしまってあと施工アンカー3の打ち込みが不可能になることが想定されることから、アンカー孔4aとしての長孔の長さ方向を図5に示すように2方向の既存鉄筋7の双方に対して斜めに交差させることを前提として、そのアンカー孔4aの最小長さ寸法を既存鉄筋7の径寸法に基づいて適切に設定することにより、そのアンカー孔4aを通して打ち込むべきあと施工アンカー3が両方向の既存鉄筋7と干渉してしまうことを有効に防止することができる。
L≧(√2)d1+(1+(√2))d2≒1.4d1+2.4d2
として設定すれば良い。これにより、アンカー孔4aが2方向の既存鉄筋7に対してどのような位置関係で重なったとしても、そのアンカー孔4a内においてあと施工アンカー3を打ち込むことが可能である。
但し、上記実施形態のようにアンカー孔4aとコッター孔4bを個別に形成することに代えて、あと施工アンカー3の所要本数が多いような場合においては、必要に応じてコッター孔4bの一部あるいは全てにアンカー孔4aを兼用させることも考えられ、その場合には一部あるいは全てのコッター孔4bにもあと施工アンカー3を挿通し得るようにその大きさを設定しておけば良い。
2 新設躯体
3 あと施工アンカー
4 補強鋼板
4a アンカー孔
4b コッター孔
5 接着剤
6 シアコッター
7 既存鉄筋
Claims (6)
- 既存のRC造建物の耐震補強に際して、既存躯体の表面に耐震要素としての新設躯体を増し打ちして該新設躯体を前記既存躯体に対してせん断力伝達可能に一体化させるためのコンクリート打ち継ぎ構造であって、
多数のコッター孔とあと施工アンカーを緩挿可能な寸法のアンカー孔を形成した補強鋼板を前記既存躯体の表面に接着し、前記アンカー孔を通して前記既存躯体に対して前記あと施工アンカーを打ち込んだうえで前記既存躯体の表面にコンクリートを打設して前記新設躯体を形成することにより、前記コンクリートを前記アンカー孔内および前記コッター孔内に充填せしめて前記既存躯体と前記新設躯体との間にシアコッターを形成してなり、
前記補強鋼板の全面積から前記コッター孔および前記アンカー孔の孔面積の総和を除いた部分の面積と前記コッター孔および前記アンカー孔の孔面積の総和との比を、前記新設躯体のコンクリート圧縮強度と前記既存躯体のコンクリート圧縮強度との比の平方根と同じ値に設定してなることを特徴とするコンクリート打ち継ぎ構造。 - 請求項1記載のコンクリート打ち継ぎ構造であって、
前記アンカー孔を円形の丸孔として形成して、該アンカー孔の径寸法を、該アンカー孔を通して前記あと施工アンカーを前記既存躯体に打ち込む際に該既存躯体中に配筋されている既存鉄筋の埋設位置を回避して前記あと施工アンカーの打ち込み位置を確保し得る大きさに設定してなることを特徴とするコンクリート打ち継ぎ構造。 - 既存のRC造建物の耐震補強に際して、既存躯体の表面に耐震要素としての新設躯体を増し打ちして該新設躯体を前記既存躯体に対してせん断力伝達可能に一体化させるためのコンクリート打ち継ぎ構造であって、
多数のコッター孔とあと施工アンカーを緩挿可能な寸法のアンカー孔を形成した補強鋼板を前記既存躯体の表面に接着し、前記アンカー孔を通して前記既存躯体に対して前記あと施工アンカーを打ち込んだうえで前記既存躯体の表面にコンクリートを打設して前記新設躯体を形成することにより、前記コンクリートを前記アンカー孔内および前記コッター孔内に充填せしめて前記既存躯体と前記新設躯体との間にシアコッターを形成してなり、
前記アンカー孔を長孔として形成して、該アンカー孔の長さ方向を、前記既存躯体中に直交状態で配筋されている2方向の既存鉄筋の双方に対して斜めに交差する方向に設定し、かつ該アンカー孔の長さ寸法を、該アンカー孔を通して前記あと施工アンカーを前記既存躯体に打ち込む際に前記既存鉄筋の埋設位置を回避して前記あと施工アンカーの打ち込み位置を確保し得る長さに設定してなることを特徴とするコンクリート打ち継ぎ構造。 - 既存のRC造建物の耐震補強に際して、既存躯体の表面に耐震要素としての新設躯体を増し打ちして該新設躯体を前記既存躯体に対してせん断力伝達可能に一体化させるためのコンクリート打ち継ぎ方法であって、
多数のコッター孔とあと施工アンカーを緩挿可能な寸法のアンカー孔を形成した補強鋼板を前記既存躯体の表面に接着し、前記アンカー孔を通して前記既存躯体に対して前記あと施工アンカーを打ち込んだうえで前記既存躯体の表面にコンクリートを打設して前記新設躯体を形成することにより、前記コンクリートを前記アンカー孔内および前記コッター孔内に充填せしめて前記既存躯体と前記新設躯体との間にシアコッターを形成し、
前記補強鋼板の全面積から前記コッター孔および前記アンカー孔の孔面積の総和を除いた部分の面積と前記コッター孔および前記アンカー孔の孔面積の総和との比を、前記新設躯体のコンクリート圧縮強度と前記既存躯体のコンクリート圧縮強度との比の平方根と同じ値に設定することを特徴とするコンクリート打ち継ぎ方法。 - 請求項4記載のコンクリート打ち継ぎ方法であって、
前記アンカー孔を円形の丸孔として形成して、前記アンカー孔の径寸法を、該アンカー孔を通して前記あと施工アンカーを前記既存躯体に打ち込む際に該既存躯体中に配筋されている既存鉄筋の埋設位置を回避して前記あと施工アンカーの打ち込み位置を確保し得る大きさに設定することを特徴とするコンクリート打ち継ぎ方法。 - 既存のRC造建物の耐震補強に際して、既存躯体の表面に耐震要素としての新設躯体を増し打ちして該新設躯体を前記既存躯体に対してせん断力伝達可能に一体化させるためのコンクリート打ち継ぎ方法であって、
多数のコッター孔とあと施工アンカーを緩挿可能な寸法のアンカー孔を形成した補強鋼板を前記既存躯体の表面に接着し、前記アンカー孔を通して前記既存躯体に対して前記あと施工アンカーを打ち込んだうえで前記既存躯体の表面にコンクリートを打設して前記新設躯体を形成することにより、前記コンクリートを前記アンカー孔内および前記コッター孔内に充填せしめて前記既存躯体と前記新設躯体との間にシアコッターを形成し、
前記アンカー孔を長孔として形成して、該アンカー孔の長さ方向を前記既存躯体中に直交状態で配筋されている2方向の既存鉄筋の双方に対して斜めに交差する方向に設定し、かつ該アンカー孔の長さ寸法を、該アンカー孔を通して前記あと施工アンカーを前記既存躯体に打ち込む際に前記既存鉄筋の埋設位置を回避して前記あと施工アンカーの打ち込み位置を確保し得る長さに設定することを特徴とするコンクリート打ち継ぎ方法。
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