JP5696656B2 - 電極の製造方法、及び非水電解質二次電池に備えられる正極 - Google Patents
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Description
より具体的には、図4に示すように、従来の電極製造工程S200は、主に、溶媒中に粉末状の活物質や導電材や結着材などを投入し、ペースト状に練り上げて(調製して)活物質ペーストを形成する混練工程S201と、シート状の集電体の表面に前記活物質ペーストを塗工した後、該活物質ペーストを乾燥させて活物質層を形成する塗工・乾燥工程S202と、前記集電体及び活物質層を加圧するプレス工程S203と、活物質層が形成された集電体を所定の幅寸法に切断するスリット工程とS204とを有していた。
そして近年、混練工程S201において用いられる溶媒については、従来から多く用いられてきた有機溶剤に比べて、産業廃棄物の発生量が少なく、環境負荷が低減されることから、水系溶媒(例えば、蒸留水など)が用いられることが多い。
このような状況下において、例えばリチウムイオン二次電池の正極を形成する場合、正極活物質を含有する活物質ペーストの調製時に、該正極活物質中のリチウムイオンが溶媒中に溶出し、集電体の表面上に酸化アルミニウムの被膜を形成することから、非水電解質
二次電池の内部抵抗の増加を引き起こしやすかった。
具体的には、水よりも比重の大きい非水溶剤からなるバリア層を電極集電体(集電体)の表面上に形成し、少なくとも電極活物質(正極活物質)と水系溶媒とを混合してなる水性ペースト(活物質ペースト)を、前記バリア層の表面上に塗布した後、前記バリア層を形成している前記非水溶剤を蒸発させることを特徴とする、二次電池(非水電解質二次電池)用の電極製造方法に関する技術が、前記「特許文献1」に開示されている。
このような、前記「特許文献1」に示される技術によれば、集電体の表面上に、酸化アルミニウムの被膜の形成は見られず、非水電解質二次電池の内部抵抗の増加を抑制することができる。
しかし、前記ペースト成形方法における、溶媒の存在や、該溶媒を乾燥させるためのエネルギーは無駄であると考えられるため、このような無駄を省いた電極の製造方法として、近年、「粉体成形法」が知られている。
より具体的には、図5に示すように、従来の粉体成形法による電極製造工程S300は、主に、シート状の集電体351の表面に、予めバインダー水溶液352を塗布する塗工工程S301と、集電体351に塗布されたバインダー水溶液352の液面上に、粉末状の正極活物質361や結着材(バインダー)362や導電材363などを含む造粒粒子360を供給する供給工程S302と、集電体351及び造粒粒子360を、一体的に加熱しつつ、該集電体351の厚み方向に圧縮する加熱・圧縮工程S303とを有していた。
即ち、本発明における電極の製造方法、及び当該製造方法によって製造される、非水電解質二次電池に備えられる正極によれば、非水電解質二次電池に内装されるとともに、シート状の集電体の表面上において、活物質、バインダー、導電材が含まれた造粒粒子によって活物質層が形成される電極を製造する際において、集電体に対する活物質層の十分な剥離強度が確保できるとともに、前記集電体表面に腐食が発生することがなく非水電解質二次電池の内部抵抗の増加を防止することができる。
先ず始めに、後述する電極製造工程S100(図1を参照)によって製造された電極を備える、非水電解質二次電池の全体構成について説明する。
本実施形態における非水電解質二次電池は、リチウムイオン二次電池であって、例えば、円筒型電池や角型電池として構成される。
より具体的には、非水電解質二次電池は、シート状の正極、負極、及びセパレータなどからなる電極体や、該電極体を収納する電池ケースなどを有している。
なお、前記電解液としては、非水電解液が用いられる。
正極は、アルミ箔などによって形成されるシート状の正極集電体(以下、特に負極集電体と区別する必要がない場合には、適宜単に「集電体」と記載する)や、該正極集電体の表面に形成される正極活物質層などによって構成される。また、本実施形態における正極集電体においては、正極活物質層が形成される側の表面上に、ホットメルトバインダー層が形成される。
そして、このようなホットメルトバインダー層を介して、正極集電体と正極活物質層とは、堅固に固着されている。
前記正極造粒粒子は、粉末状の正極活物質や結着材(バインダー)や導電材などの電極材料を、混合して造粒することによって形成される。
なお、リチウム遷移金属複合酸化物は、その電気抵抗が低く、リチウムイオンの拡散性能に優れ、高い充放電効率と、良好な充放電サイクル特性とが得られることから、本件の正極活物質として好ましい材料である。
このように、正極造粒粒子に含まれる結着材(バインダー)は、前述したホットメルトバインダー層を構成するホットメルトバインダーとは異なる成分によって構成される。
負極は、銅箔などによって形成されるシート状の負極集電体(以下、特に正極集電体と区別する必要がない場合は、適宜単に「集電体」と記載する)や、該負極集電体の表面に形成される負極活物質層などによって構成される。また、本実施形態における負極集電体においては、負極活物質層が形成される側の表面上に、ホットメルトバインダー層が形成される。
なおホットメルトバインダー層の構成については、前述した正極の場合と同様であるため、説明を省略する。
前記負極造粒粒子は、粉末状の負極活物質や結着材(バインダー)などの電極材料を、混合して造粒することによって形成される。
なお前記結着材(バインダー)の構成については、前述した正極の場合と同様であるため、説明を省略する。
その中でも、リチウムイオンの充放電に伴い、電圧変化の比較的大きい炭素材料を用いることがより好ましく、結晶性の高い天然黒鉛や人造黒鉛などからなる炭素材料を用いることがより好ましい。
セパレータは、積層される正極と負極とを電気的に絶縁するとともに、非水電解質を保持するためのものである。
セパレータを構成する材料としては、例えば、多孔性合成樹脂膜、特にポリエレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)などの多孔膜が挙げられる。
非水電解液は非水溶媒及び溶質から構成される。
前記非水溶媒としては、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートやジメチルカーボネートやエチルメチルカーボネートなどのカーボネート類を用いるのが好ましいが、これらに限定されるものではない。また、非水溶媒は、一種類のものを単独で用いることも可能であるが、二種類以上のものを組み合わせて用いるほうがより好ましい。
一方、前記溶質としては、LiPF6などのリチウム塩が用いられる。
次に、本発明に係る電極の製造方法を具現化する、電極製造工程S100の構成について、図1を用いて説明する。
なお、以下の説明においては便宜上、図1における矢印Aの方向を、集電体51の搬送方向と規定して記述する。また、図1においては、図面上の上下方向を集電体51の上下方向と規定して記述する。
さらに、本実施形態における電極製造工程S100は、製造される電極50の種類が、正極或いは負極の何れであっても、略同等な構成を有するため、以下の説明においては、主に正極の電極を製造する場合について記述し、負極の電極を製造する場合についての記述は省略する。
前記塗工工程S101は、シート状の集電体51の表面に、液状のホットメルトバインダー水溶液52を塗工するための工程である。
前記塗工ローラ11は、丸棒状部材の外周面にワイヤー部材11aを螺旋状に巻回して構成されている。
本実施形態においては、塗工ローラ11の全長と、集電体51の幅方向(集電体51の長手方向に対する直交方向、且つ厚み方向に対する直交方向。以下同じ。)の寸法とが、略同程となるように構成されている。
そして、本実施形態においては、前記繰出し装置によって、ロール状に巻回された集電体51が、自身の長手方向に向かって繰出された後、水平方向(図1における矢印Aの方向)に搬送されて、塗工工程S101、及び後述する乾燥工程S102、供給工程S103、加熱・圧縮工程S104と順に通過するようになっている。
この際、前記ワイヤー部材11aの互いに隣接する部分間に形成される間隙には、液状のホットメルトバインダー水溶液52が、表面張力により常に保持されている。
その結果、集電体51の上面には液状のホットメルトバインダー水溶液52が、均一に塗工されるのである。
乾燥工程S102は、前記塗工工程S101の終了後に行われる工程であって、集電体51の表面に塗工されたホットメルトバインダー水溶液52を乾燥させて、ホットメルトバインダー層52Aを形成するための工程である。
つまり、集電体51の表面に塗工された液状のホットメルトバインダー水溶液52が加熱されることで、ホットメルトバインダー水溶液52に含まれる水分が蒸発して、ホットメルトバインダー水溶液52が乾燥し、その結果、集電体51の表面上にホットメルトバインダー層52Aが形成されるのである。
供給工程S103は、前記乾燥工程S102の終了後に行われる工程であって、集電体51に形成されたホットメルトバインダー層52Aの表面上に、正極活物質61や結着材(バインダー)62や導電材63などを含む造粒粒子60を供給するための工程である。
前記フィーダー装置31は、供給工程S103の中途部、且つ搬送される集電体51の上方において、排出口31aを下方に向けつつ配設される。
そして、フィーダー装置31のタンク31b内に投入された、粉末状の正極活物質61や結着材(バインダー)62や導電材63は、該タンク31b内にて十分に攪拌されて造粒され、造粒粒子60となって、排出口31aから下方へ排出されるようになっている。
その結果、集電体51におけるホットメルトバインダー層52Aの上面には、造粒粒子60が均一に供給(積層)されるのである。
加熱・圧縮工程S104は、前記供給工程S103の終了後に行われる工程であって、集電体51、ホットメルトバインダー層52A、及び造粒粒子60を、一体的に加熱しつつ、前記集電体51の厚み方向に圧縮するための工程である。
前記加圧ローラ41は丸棒部材によって形成され、その全長は、集電体51の幅方向の寸法と略同程度となっている。
そして、加圧ローラ41は、水平方向に搬送される集電体51の上方側(即ち、集電体51の表面において、ホットメルトバインダー層52A及び造粒粒子60が設けられる側)において、軸心方向が前記集電体51の搬送方向と直交方向、且つ前記集電体51の幅方向と平行方向となるようにして配設されるとともに、前記軸心を中心にして回転可能に軸支される。
そして、バックアップローラ42は、水平方向に搬送される集電体51の下方側(即ち、集電体51を間に挟み、前記加圧ローラ41と上下方向に対向する側)において、軸心方向が前記集電体51の搬送方向と直交方向、且つ前記集電体51の幅方向と平行方向となるようにして配設されるとともに、前記軸心を中心にして回転可能に軸支される。
つまり、これらの加圧ローラ41及びバックアップローラ42によって、集電体51、ホットメルトバインダー層52A、及び造粒粒子60は、一体的に加熱されつつ、前記集電体51の厚み方向に圧縮されることとなる。
そして、加熱・圧縮工程S104の下流側には、既知の巻取り装置(図示せず)が配設されており、該巻取り装置によって、前記集電体51、即ち完成した電極50は、再びロール状に巻回されるのである。
次に、本実施形態における電極製造工程S100によって製造された電極の有効性を検証するために、本発明者が行った検証実験について、図1乃至図3を用いて説明する。
先ず始めに、本発明者は、以下に示す条件に基づき電極製造工程S100を行い、サンプルとしての電極(正極)50を製造した。
また、これに伴い、本発明者は、本件サンプル電極を備える非水電解質二次電池(以下、「本件サンプル電池」と記載する)を製造し、該本件サンプル電池の電池抵抗(単位[mΩ])を測定した。
具体的には、第一の電極(以下、「第一比較サンプル電極」と記載する)としては、ペースト状に調製された活物質ペーストを集電体の表面に塗工する、従来型の製造方法によって、電極を製造することとした。
また、第二の電極(以下、「第二比較サンプル電極」と記載する)としては、集電体の表面にホットメルトバインダー層を形成することなく、電極材料となる造粒粒子を直接積層することによって、電極を製造することとした。
さらに、第三の電極(以下、「第三比較サンプル電極」と記載する)としては、集電体の表面に、水系溶媒を含むバインダー溶液を予め塗布した後(バインダープレコートした後)、バインダー溶液を乾燥することなく、電極材料となる造粒粒子を連続的に積層することによって、電極を製造することとした。
図3は、縦軸に剥離強度(単位[N/m])を表し、横軸に測定対象である各々の電極の種類を表すこととして、これら両者の関係を、棒グラフによって表したグラフである。
このように、第二比較サンプル電極の剥離強度が極端に低い値となるのは、次の理由に基づくものと考えられる。
即ち、電極材料として造粒粒子を用いて電極を製造する場合、例え造粒粒子内に十分な結着材(バインダー)が含まれていたとしても、当該結着材(バインダー)は造粒粒子内にて均等に分配されているのであり、当該結着材(バインダー)によって、造粒粒子から形成される活物質層と集電体との間に十分な剥離強度を形成することが困難であるためと考えられる。
また、本図に示すように、本件サンプル電極の剥離強度の測定値はs3[N/m](s3>s2)であり、前記第三比較サンプル電極の剥離強度の測定値と比べて、更に大きな測定値を得る結果となった。
このような結果から、電極材料として造粒粒子を用いて電極を製造する場合、電極体の表面に、予めバインダー溶液、或いはホットメルトバインダー層を設けることによって、集電体と、造粒粒子から形成される活物質層との間に、十分な剥離強度を形成することが可能であることが確認された。
このように、本件サンプル電池に比べて、第三比較サンプル電池の方が、高い電池抵抗を示したのは、次の理由に基づくものと考えられる。
即ち、第三比較サンプル電池に備えられる第三比較サンプル電極においては、電極体の表面に、アルカリ腐食がバインダー溶液中の水系溶媒によって引き起こされ、これにより、前記第三比較サンプル電極の抵抗値が上昇し、第三比較サンプル電池の電池抵抗が上昇したと考えられる。
一方、本件サンプル電池が備える本件サンプル電極を製造する際には、集電体の表面に塗工したホットメルトバインダー水溶液を乾燥させてホットメルトバインダー層を形成した後に、電極材料としての造粒粒子を供給するようにしているので、電極体の表面に、ホットメルトバインダー水溶液が含有する水分による腐食が発生することがない。
よって、造粒粒子60によって形成される正極活物質層60Aと、集電体51とは、ホットメルトバインダー層52A、及び造粒粒子60に含まれる結着材(バインダー)62によって確実に密着されることとなり、十分な剥離強度を得ることができるのである。
よって、正極活物質層60Aに含まれる正極活物質61と集電体51とが接触して、正極活物質61と集電体51との間の導電パスを確保することができ、製造された電極を備える非水電解質二次電池については、充放電が可能なのである。
そして、前述した図3によって示される検証実験の結果からも明らかなように、加熱・圧縮工程S104において、ホットメルトバインダー層52Aは十分に軟化・溶融され、正極活物質層60Aと集電体51との十分な剥離強度が確保されるのである。
51 集電体
52 ホットメルトバインダー水溶液
52A ホットメルトバインダー層
60 造粒粒子
60A 正極活物質層
61 活物質層(正極活物質)
62 結着材(バインダー)
S101 塗工工程
S102 乾燥工程
S103 供給工程
S104 加熱・圧縮工程
Claims (4)
- シート状の集電体の表面に、液状のホットメルトバインダー水溶液を塗工する塗工工程と、
該塗工工程の終了後に行われ、前記ホットメルトバインダー水溶液を乾燥させてホットメルトバインダー層を形成する乾燥工程と、
該乾燥工程の終了後に行われ、前記ホットメルトバインダー層の表面に、少なくとも活物質及びバインダーを含む造粒粒子を供給する供給工程と、
該供給工程の終了後に行われ、前記集電体、ホットメルトバインダー層、及び造粒粒子を、加熱しながら前記集電体の厚み方向に圧縮する加熱・圧縮工程と、
を備える、
ことを特徴とする電極の製造方法。 - 前記電極は、
非水電解質二次電池に備えられる正極であって、
前記集電体の表面上に、前記ホットメルトバインダー層、及び前記造粒粒子からなる活物質層を順に備え、
前記集電体は、アルミニウム、又はアルミニウムを主成分とする合金からなり、
前記造粒粒子に含まれる前記活物質は正極活物質からなる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電極の製造方法。 - 前記造粒粒子に含まれる前記バインダーと、前記ホットメルトバインダーとは成分内容が異なる、
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の電極の製造方法。 - 非水電解質二次電池に備えられる正極であって、
集電体の表面上に、ホットメルトバインダー層、及び正極活物質層を順に備え、
前記正極活物質層は、正極活物質、バインダー、及び導電材を造粒して構成される造粒粒子から形成され、
前記造粒粒子に含まれる前記バインダーと、前記ホットメルトバインダー層を構成するホットメルトバインダーとは成分内容が異なる、
ことを特徴とする、非水電解質二次電池に備えられる正極。
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