以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
<この発明の第1の適用対象例>
図1は、この発明の第1の適用対象例であるSRAMの一般的な構成例を示すブロック図である。図1において、SRAMセルアレイ100は、各々1ビットの情報を記憶するメモリセルを行列状に配列した回路である。制御回路900は、外部から与えられる各種の制御信号に応じて、所望のメモリセルに対するライトアクセスやリードアクセスを行うための各種の内部制御信号を発生する回路である。SRAMには、大別して非同期SRAMと同期SRAMがある。非同期SRAMの場合、制御回路900には、例えばチップイネーブル信号CEB、出力イネーブル信号OEB、ライトイネーブル信号WEBが与えられる。この場合、制御回路900は、ライトイネーブル信号WEBおよびチップイネーブル信号CEBの両方がアクティブレベル(この例ではLレベル)になるのに応じて、ライトアクセスを実行するための内部制御信号を発生する。また、制御回路900は、出力イネーブル信号OEBおよびチップイネーブル信号CEBの両方がアクティブレベル(この例ではLレベル)になるのに応じて、リードアクセスを実行するための内部制御信号を発生する。同期SRAMの場合、同期タイミングを指示するクロックCLKが制御回路900に与えられる。制御回路900は、このクロックCLKに基づいて、ライトアクセスやリードアクセスのための各種内部制御信号を発生する。
入出力バッファ500は、入力バッファとしての機能と出力バッファとしての機能を併有する16ビット幅の入出力回路である。入出力バッファ500は、ライトアクセス時には、制御回路900による制御の下、入力バッファとして機能し、データ入出力端子I/O0〜I/O15を介して入力される16ビットの書込データを書込回路600に供給する。また、入出力バッファ500は、リードアクセス時には、制御回路900による制御の下、出力バッファとして機能し、センスアンプ400から出力される16ビットの読出データをデータ入出力端子I/O0〜I/O15から出力する。
カラムゲート700は、書込回路600およびセンスアンプ400と、SRAMセルアレイ100との間に介在する複数のスイッチの集合体であり、SRAMセルアレイ100内の任意のアドレスに対応した16個のメモリセルと書込回路600およびセンスアンプ400との相互接続をする役割を果たす。
書込回路600は、ライトアクセス時に、カラムゲート700を介して接続されたSRAMセルアレイ100内の16ビット分のメモリセルに対し、入出力バッファ500を介して与えられる16ビットの書込データを各々書き込む回路である。センスアンプ400は、リードアクセス時に、カラムゲート700を介して接続されたSRAMセルアレイ100内の16ビット分のメモリセルからデータを各々読み出し、入出力バッファ500に出力する回路である。
アドレス入力回路800には、ライトアクセス時およびリードアクセス時、アクセス先である16個のメモリセルのアドレスを特定する24ビットのアドレスデータA0〜A23が与えられる。アドレス入力回路800は、ライトアクセスまたはリードアクセスが行われるとき、制御回路900による制御の下、アクセス対象のメモリセルを特定するアドレスデータA0〜A23を保持する。
アドレス入力回路800から出力されるアドレスデータA0〜A23は、行アドレスデータ(上位ビットデータ)と列アドレスデータ(下位ビットデータ)とに分離され、行アドレスデータはロウデコーダ200に、列アドレスデータはカラムデコーダ300に供給される。ロウデコーダ200は、SRAMセルアレイ100を構成する各メモリセルのうち行アドレスにより指定された行に属する各メモリセルを選択する。カラムデコーダ300は、SRAMセルアレイ100においてロウデコーダ200により選択された行に属する各メモリセルのうち列アドレスにより指定された列に属するメモリセルをカラムゲート700に選択させ、書込回路600およびセンスアンプ400に接続させる回路である。
図2は、図1に示すSRAMの詳細な内部構成を例示する回路図である。なお、この図2では、図面が煩雑になるのを防止するため、図1に示すSRAMセルアレイ100の全てのメモリセルではなく、図1に示されるデータ入出力端子I/O0〜I/O15を介して入出力される16ビットのデータのうちの第0ビットの格納先となる範囲のメモリセル行列Mmn−0(Mmn−0におけるインデックス“0”は第0ビット〜第15ビットの中の第0ビットを指す)のみが図示されている。また、図2では、図面が煩雑になるのを防止するため、カラムゲート700を構成する全スイッチのうち、図示されたメモリセル行列Mmn−0と書込回路600およびセンスアンプ400の間に介在するスイッチのみが図示されている。
図2に示すように、第0ビットの記憶エリアとして用いられるメモリセル行列Mmn−0は、m+1行、n+1列のメモリセルMij(i=0〜m、j=0〜n)により構成されている。メモリセル行列Mmn−0では、列毎に、当該列に属するm+1個のメモリセルMij(i=0〜m)の並び方向に沿って1対のビット線BITjおよびBITjBが配線されており、行毎に、当該行に属するn+1個のメモリセルMij(j=0〜n)にの並び方向に沿ってワード線が配線されている。
図1におけるロウデコーダ200は、図2に示すm+1個の行選択回路200−i(i=0〜m)により構成されている。この行選択回路200−i(i=0〜m)の各々は、メモリセル行列Mmn−0の各行のワード線に接続されている。行選択回路200−i(i=0〜m)の各々は、行アドレスが示す行番号i’と当該行選択回路200−iに対応付けられた行の番号iとが一致するときにアクティブレベル(Lレベル)を出力するNANDゲート201と、このNANDゲート201の出力信号をレベル反転した行選択電圧WLiをワード線に出力するインバータ202とを有する。これらの行選択回路200−i(i=0〜m)の働きにより、各行に対応した行選択電圧WLi(i=0〜m)のうち行アドレスが示す行番号i’に対応した行選択電圧WLi’のみがHレベルとされ、他の行選択電圧WLi(i≠i’)はLレベルとされる。これがロウデコーダ200によって行われる行選択の動作である。
カラムゲート700は、メモリセル行列Mmn−0に対応したスイッチ群として、n+1対のスイッチ対CGjおよびCGjB(j=0〜n)を有している。このn+1対のスイッチ対CGjおよびCGjB(j=0〜n)は、nチャネルのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor;金属酸化膜半導体構造の電界効果トランジスタ。以下、単にトランジスタという。)により各々構成されている。スイッチ対CGjおよびCGjB(j=0〜n)の各一端は、メモリセル行列Mmn−0の各列に対応したビット線対BITjおよびBITjB(j=0〜n)に各々接続されており、各他端は第0ビットに対応したグローバルビット線対DLおよびDLBに各々共通接続されている。
図1におけるカラムデコーダ300は、図2に示すn+1個の列選択回路300−j(j=0〜n)により構成されている。この列選択回路300−j(j=0〜n)は、メモリセル行列Mmn−0の各列に各々対応付けられており、スイッチ対(トランジスタ対)CGjおよびCGjB(j=0〜n)の各ゲートに列選択電圧COLj(j=0〜n)を各々供給する。列選択回路300−j(j=0〜n)の各々は、列アドレスが示す列番号j’と当該列選択回路300−jに対応付けられた列の番号jとが一致するときにアクティブレベル(Lレベル)を出力するNANDゲート301と、このNANDゲート301の出力信号をレベル反転し、列選択電圧COLjとしてスイッチ対CGjおよびCGjBの両ゲートに出力するインバータ302とを有する。これらの列選択回路300−j(j=0〜n)の働きにより、スイッチ対(トランジスタ対)CGjおよびCGjB(j=0〜n)のうち列アドレスが示す列番号j’に対応したスイッチ対(トランジスタ対)CGj’およびCGj’BのみがONとなり、他のスイッチ対(トランジスタ対)CGjおよびCGjB(j≠j’)はOFFとなる。従って、列アドレスが示す列番号j’に対応した列のビット線対BITj’およびBITj’Bのみがスイッチ対(トランジスタ対)CGj’およびCGj’Bを介してグローバルビット線対DLおよびDLBに接続される。
ライトアクセス時には、書込回路600がこのようにしてグローバルビット線対DLおよびDLBに接続されたビット線対BITj’およびBITj’Bを介し、同ビット線対BITj’およびBITj’Bに接続されたm+1個のメモリセルのうち行アドレスに基づいて選択された1個のメモリセルに対して書込データ(ここでは第0ビット)を書き込む。また、リードアクセス時には、センスアンプ400が、このようにしてグローバルビット線対DLおよびDLBに接続されたビット線対BITj’およびBITj’Bを介し、同ビット線対BITj’およびBITj’Bに接続されたm+1個のメモリセルのうち行アドレスに基づいて選択された1個のメモリセルからデータ(ここでは第0ビット)を読み出し、入出力バッファ500に出力する。
以上、第0ビットの記憶に関連した部分の構成のみを説明したが、他の第1〜第15ビットの記憶に関連した部分の構成も同様である。
図3はSRAMセルアレイ100における1個のメモリセルの具体的な構成例を示す回路図である。この図3において、BLおよびBLBは、図2におけるビット線対BITjおよびBITjB(j=0〜n)の中のいずれかのビット線対であり、WLは図2における行選択電圧WLi(i=0〜m)の中のいずれかの行選択電圧である。
図3に示すように、メモリセルは、PチャネルトランジスタP1およびP2と、NチャネルトランジスタN1、N2、Ta1およびTa2とを有している。ここで、PチャネルトランジスタP1およびNチャネルトランジスタN1は、高電位側電源VDDおよび低電位側電源VSS間に直列に介挿されており、CMOSインバータを構成している。PチャネルトランジスタP2およびNチャネルトランジスタN2も、高電位側電源VDDおよび低電位側電源VSS間に直列に介挿されており、CMOSインバータを構成している。これらのCMOSインバータは、互いに相手の出力信号を各々に対する入力信号としており、フリップフロップを構成している。NチャネルトランジスタTa1は、ビット線BLとPチャネルトランジスタP1およびNチャネルトランジスタN1の両ドレインの接続点との間に介挿されている。また、NチャネルトランジスタTa2は、ビット線BLBとPチャネルトランジスタP2およびNチャネルトランジスタN2の両ドレインの接続点との間に介挿されている。これらのNチャネルトランジスタTa1およびTa2は、ライトアクセス時およびリードアクセス時に、ワード線を介してゲートにHレベルの行選択電圧WLが与えられることによりONとなり、ビット線BLとビット線BLBをトランジスタP1およびN1の共通接続点とトランジスタP2およびN2の共通接続点に各々接続するトランスファゲートとして働く。
このメモリセルに対するライトアクセスは、次のようにして行われる。
(1)図1および図2に示すカラムデコーダ300が当該メモリセルの属する列に対応したビット線対をカラムゲート700を介して書込回路600に接続する。
(2)図1および図2に示す書込回路600が、書込データ“1”/“0”に応じた正逆2相のビット信号を、カラムゲート700を介して接続されたビット線対BLおよびBLBに出力する。さらに詳述すると、書込回路600は、書込データが“1”である場合は、Hレベルの正相ビット信号をビット線BLに、Lレベルの逆相ビット信号をビット線BLBに出力し、書込データが“0”である場合は、Lレベルの正相ビット信号をビット線BLに、Hレベルの逆相ビット信号をビット線BLBに出力する。
(3)図1および図2に示すロウデコーダ200が当該メモルセルに対する行選択電圧WLをHレベルとし、その後、Lレベルに戻す。これにより、トランジスタP1およびN1の両ドレインの接続点の電位がビット線BLの電位となるとともに、トランジスタP2およびN2の両ドレインの接続点の電位がビット線BLBの電位となり、その後、この状態が当該メモリセルにおいて維持される。
一方、メモリセルに対するリードアクセスは、次のようにして行われる。
(1)図1および図2に示すカラムデコーダ300が当該メモリセルの属する列に対応したビット線対をカラムゲート700を介してグローバルビット線対DLおよびDLBに接続する。
(2)図示しないプリチャージ回路が、グローバルビット線対DLおよびDLBと、カラムゲート700を介してグローバルビット線対DLおよびDLBに接続されたビット線対BLおよびBLBにプリチャージ電位を与える。
(3)図1および図2に示すロウデコーダ200が当該メモルセルに対する行選択電圧WLをHレベルとし、当該メモリセルのトランジスタTa1およびTa2をONにする。ここで、当該メモリセルが“1”を記憶している場合には、トランジスタN1がOFF、トランジスタN2がONとなっているため、ビット線BLBおよびグローバルビット線DLBの電位がプリチャージ電位から低下する。一方、当該メモリセルが“0”を記憶している場合には、トランジスタN1がON、トランジスタN2がOFFとなっているため、ビット線BLおよびグローバルビット線DLの電位がプリチャージ電位から低下する。
(4)図1および図2に示すセンスアンプ400が、グローバルビット線DLおよびDLB間の電位差を差動増幅することにより、当該メモリセルの記憶データに対応した信号Doutを出力する。
以上説明したメモリセルに対するアクセス動作には、メモリセルを構成する各トランジスタのパラメータまたは電気的特性、具体的には各トランジスタの閾値電圧Vt、相互コンダクタンスgm、モビリティμ、あるいはベータ値βのばらつきが影響を与える。また、トランジスタTa1、Ta2は、ソースおよびドレインの両方が固定されていないので、これらのトランジスタのバックゲートバイアス特性のばらつきがメモリセルに対するアクセスの動作に影響を与える。
以上が本発明の第1の適用対象例であるSRAMの詳細である。以下説明する第1〜第4実施形態は、本発明をこのようなSRAMに適用した実施形態である。
<第1実施形態>
SRAMの各部の特性のうちトランジスタの特性ばらつき(プロセスパラメータの変動に起因した特性ばらつき)の影響を受けやすい特性として、メモリセルのSNMがある。本実施形態では、このSNMに着目する。
図4は、SNMの測定方法の一例を示す図である。また、図5(a)〜(d)は、SNMの測定結果を例示するものである。この図5(a)〜(d)において、横軸はトランジスタP1およびN1の共通接続点の電圧V0を示し、縦軸はトランジスタP2およびN2の共通接続点の電圧V1を示す。
図4に例示する測定方法では、図3に示すメモリセルにおいて、SRAMの高電位側電源電圧VDDを1.0V、PチャネルトランジスタP1およびP2が属するNウェルの電圧を1.0V、低電位側電源電圧VSSを0V、NチャネルトランジスタN1、N2が属するPウェルの電圧を0V、ワード線WLに対する行選択電圧を電源電圧VDDと同じ電圧、トランスファゲートとしてのNチャネルトランジスタTa1、Ta2が属するPウェルの電圧を0Vとし、測定1および2を行う。ここで、測定1では、ビット線BLを開放状態とし、ビット線BLBを電源電圧VDDと同じ電圧に固定し、トランジスタP1およびN1の両ドレインの接続点の電圧V0を0VからVDD(図4の例では1.0V)まで上昇させたときのトランジスタP2およびN2の共通接続点の電圧V1の変化を観測する。図5(a)〜(d)における破線は、この測定1において得られた電圧V0の変化に応じた電圧V1の変化の様子を示すものである。また、測定2では、ビット線BLBを開放状態とし、ビット線BLを電源電圧VDDと同じ電圧に固定し、トランジスタP2およびN2の両ドレインの接続点の電圧V1を0VからVDD(図4の例では1.0V)まで上昇させたときのトランジスタP1およびN1の共通接続点の電圧V0の変化を観測する。図5(a)および(c)における実線は、この測定2において得られた電圧V1の変化に応じた電圧V0の変化の様子を示すものである。
図5(a)〜(d)において破線の曲線および実線の曲線は各々バタフライ曲線と呼ばれる。これらの2本のバタフライ曲線は、途中で互いに交差して、上下および左右の位置関係が入れ替わる。そして、図5(a)〜(d)の各々には、破線のバタフライ曲線と実線のバタフライ曲線との間に挟まれた2つの領域内に各々収まる2個の正方形が描かれているが、この正方形の大きさがSNMの大きさである。さらに詳述すると、破線のバタフライ曲線が右上、実線のバタフライ曲線が左下となる領域における両バタフライ曲線間の正方形は、トランジスタP1およびN1の両ドレインの接続点の電圧V0を上昇させるようなノイズが発生するとき、メモリセルの記憶内容を反転させないノイズレベルの許容値を示すSNM(以下、便宜上、第1のSNMという)である。また、実線のバタフライ曲線が右上、破線のバタフライ曲線が左下となる領域における両バタフライ曲線間の正方形は、トランジスタP2およびN2の両ドレインの接続点の電圧V1を上昇させるようなノイズが発生するとき、メモリセルの記憶内容を反転させないノイズレベルの許容値を示すSNM(以下、便宜上、第2のSNMという)である。
図5(a)および(c)は、SRAMの電源電圧VDDを1.0VとしたときのSNM特性を各々例示している。図5(a)に示す例では、メモリセルを構成する各トランジスタのベータ値βや閾値電圧Vtのバランスが取れており、第1のSNMおよび第2のSNMが同程度であり、かつ、いずれも十分な大きさとなっている。従って、このメモリセルでは、安定したライトアクセスおよびリードアクセスが可能である。
ところが、バタフライ曲線は、トランジスタP1、N1、P2、N2の各々のベータ値のバランスや閾値電圧のバランスに左右される。例えば図5(a)において、トランジスタP2のベータ値βpとトランジスタN2のベータ値βnとのベータレシオβp/βnが高くなると、破線のバタフライ曲線は右上方向に張り出す。逆にこのベータレシオβp/βnが低くなると、破線のバタフライ曲線は、左下方向に退行する。また、トランジスタN2と閾値電圧Vtnが増加して、トランジスタP2の閾値電圧Vtpが減少すると、破線のバタフライ曲線が急激に立ち下がる電圧V0が高くなる。逆にトランジスタN2と閾値電圧Vtnが減少して、トランジスタP2の閾値電圧Vtpが増加すると、破線のバタフライ曲線が急激に立ち下がる電圧V0は低くなる。
また、電圧V0を0VからVDDまで上昇させる過程において、トランジスタN2がONするとき、このトランジスタN2にトランジスタTa2を介して電流が流れ込むため、電圧V1はVSSレベル(0V)まで下がり切らず、VSSレベルから浮く。仮にトランジスタTa2を介して流れ込む電流が一定である場合、このときの電圧V1のVSSレベルからの浮きは、トランジスタN2の閾値電圧Vtnが高いほど、あるいはトランジスタN2のベータ値βnが低いほど大きくなる。
このように破線のバタフライ曲線は、トランジスタP2、N2の閾値電圧やベータ値の変化の影響を受ける。一方、実線のバタフライ曲線は、主にトランジスタP1、N1のベータ値のバランス、閾値電圧のバランスの変化の影響を受ける。このようにバタフライ曲線が各トランジスタの閾値電圧やベータ値の変化の影響を受けるため、第1および第2のSNMも、各トランジスタの閾値電圧やベータ値の変化の影響を受けることとなる。
図5(c)に示す例では、メモリセルを構成する各トランジスタの閾値電圧Vtまたはベータ値間にアンバランスが生じており、第1のSNMは十分な大きさがあるが、第2のSNMがやや小さくなっている。
このようにメモリセルを構成する各トランジスタの特性(具体的には閾値電圧VTやベータ値)がばらつくと、これに起因して第1および第2のSNMの各々の大きさにばらつきが生じる。しかしながら、SRAMの電源電圧VDDが1.0Vと高い場合には、メモリセルを構成する各トランジスタの特性ばらつきの第1および第2のSNMへの影響の度合いは比較的小さい。このため、第1および第2のSNMの両方が十分な大きさとなるように、メモリセルを構成する各トランジスタの特性ばらつきを抑えることは比較的容易である。
ところが、SRAMの電源電圧VDDが小さくなると、メモリセルを構成する各トランジスタの特性ばらつきの第1および第2のSNMに対する影響の度合いが大きくなる。図5(b)および(d)はその例を示すものである。この図5(b)および(d)の例では、SRAMの電源電圧VDDを0.5Vとしている。図5(b)に示す例では、電源電圧VDDが0.5Vであるため、第1および第2のSNMはかなり小さなものとなるが、メモリセルを構成する各トランジスタの特性のバランスが取れているため、第1および第2のSNMは、正常なライトアクセスおよびリードアクセスを可能ならしめる大きさとなっている。ところが、図5(d)に示す例では、メモリセルを構成する各トランジスタの特性に微妙なアンバランスがあり、その影響により第2のSNMが殆どなくなっている。このように動作マージンが不足した状態ではライトアクセスおよびリードアクセスに支障が生じる。
このようにSRAMの電源電圧VDDが小さくなると、トランジスタの特性ばらつきのSNMへの影響の度合いが大きくなり、トランジスタの特性の理想状態からの微妙なずれにより、十分な大きさの第1のSNMおよび第2のSNMが得られなくなり、動作不良が発生し易くなる。本実施形態はこの点を利用するものである。
図6は本実施形態によるプロセス評価用半導体集積回路の一例であるSRAMの構成を示す回路図である。図2と比較すれば明らかなように、本実施形態によるSRAMでは、メモリセルに電源電圧を供給する給電系統と、メモリセル以外の回路に電源電圧を供給する給電系統とが分離されており、メモリセルに供給する電源電圧を他の回路に対する電源電圧と独立に制御可能な構成となっている。
図6における電源端子VDD(C)およびVSS(C)は、各々メモリセル専用の電源端子(ボンディングパッド)である。SRAMセルアレイ100を構成する全てのメモリセルのPチャネルトランジスタP1およびP2の各ソースは電源端子VDD(C)に接続され、全てのメモリセルのNチャネルトランジスタN1およびN2の各ソースは電源端子VSS(C)に接続されている。
また、図6における電源端子VDDおよびVSSは、SRAMにおけるメモリセル以外の回路のための電源端子である。図1における制御回路900、アドレス入力回路800、ロウデコーダ200、カラムデコーダ300、書込回路600、センスアンプ400、入出力バッファ500等、メモリセル以外の回路は、この電源端子VDDおよびVSSを介して電源電圧の供給を受ける。従って、各メモリセルにおいて、ワード線WLに与えられる行選択電圧は、電源端子VDDに与えられる電圧VDDと同じ電圧値または電源端子VSSに与えられる電圧VSSと同じ電圧値となる。また、ライトアクセス時にビット線BLおよびBLBに与えられる各電圧は、電源端子VDDに与えられる電圧VDDと同じ電圧値または電源端子VSSに与えられる電圧VSSと同じ電圧値となる。また、リードアクセス時にビット線BLおよびBLBに与えられるプリチャージ電圧は、電源端子VDDに与えられる電圧VDDと同じ電圧値となる。
本実施形態では、このようなSRAMを例えば次のようにしてプロセス評価に使用する。まず、メモリセル以外の回路のための電源端子VDDを例えば電位1.0Vに固定するとともに、メモリセル専用の電源端子VSS(C)とメモリセル以外の回路のための電源端子VSSの電位を0Vに固定し、メモリセル専用の電源端子VDD(C)およびVSS(C)間に与える可変の電源電圧を通常の電圧値(例えば1.0V)から所定電圧ずつ段階的に低下させ(すなわち、電源端子VDD(C)の電位を段階的に低下させ)、各電源電圧において、SRAMセルアレイ100を構成する全メモリセルに対するテストデータの書き込みと全メモリセルからのテストデータの読み出しを行い、SRAMセルアレイ100における各メモリセルに対するライトアクセスおよびリードアクセスが正常に行われるか否かを判定する(第1の測定)。
次に、メモリセル以外の回路のための電源端子VSSを例えば電位0Vに固定するとともに、メモリセル専用の電源端子VDD(C)とメモリセル以外の回路のための電源端子VDDの電位を例えば電位1.0Vに固定し、メモリセル専用の電源端子VDD(C)およびVSS(C)間に与える可変の電源電圧を通常の電圧値(例えば1.0V)から所定電圧ずつ段階的に低下させ(すなわち、電源端子VSS(C)の電位を段階的に上昇させ)、各電源電圧において、SRAMセルアレイ100を構成する全メモリセルに対するテストデータの書き込みと全メモリセルからのテストデータの読み出しを行い、SRAMセルアレイ100における各メモリセルに対するライトアクセスおよびリードアクセスが正常に行われるか否かを確認する(第2の測定)。
これらの第1および第2の測定において、メモリセル以外の回路のための電源電圧VDD−VSSを変化させないのは、メモリセルを他の回路から切り離して評価するため、すなわち、メモリセルへのライトアクセスのための制御信号やリードアクセスのための制御信号は十分なレベルのものを発生させ、メモリセル自体の特性不良以外の原因によりライトアクセスやリードアクセスが失敗に終わることがないようにするためである。
ここで、SRAMセルアレイ100を構成するメモリセルは、膨大な数に上り、SRAMのチップの広範囲に分布している。従って、チップ内の各メモリセルのトランジスタは比較的大きな特性ばらつきを持ち、この各メモリセルのトランジスタの特性ばらつきに起因して、各メモリセルの第1および第2のSNMにもばらつきが生じる。そして、電源端子VDD(C)およびVSS(C)間に与える電源電圧を小さくしてゆくと、トランジスタの特性ばらつきの第1および第2のSNMへの影響の度合いが大きくなるため、SRAMセルアレイ100を構成する全メモリセルの中に、第1または第2のSNMが不足して、上述の第1の測定または第2の測定のいずれかにおいて正常なライトアクセスまたはリードアクセスが行われないメモリセルが発生し始める。
このように電源電圧を低下させたときに正常なライトアクセスまたはリードアクセスが行われなくなるメモリセルと、電源電圧を低下させても正常なライトアクセスおよびリードアクセスが行われるメモリセルとを特定し、両メモリセルの各トランジスタの詳細な特性(閾値電圧、駆動能力等)を測定するのである。このような測定を行うことで、正常で安定なSRAMの動作を得る上での阻害要因となるトランジスタの特性を特定することができる。
従って、本実施形態によれば、メモリセルに与える電源電圧のみを変えてプロセス評価用半導体集積回路の測定を行い、その結果をプロセス条件の調整に活用し、目標品質を満たすSRAMや他の半導体集積回路を高歩留まりで製造することができるように半導体製造プロセスのプロセス条件を最適化することができる。
なお、以上説明した実施形態では、メモリセルとメモリセル以外の他の回路とで、高電位側電源端子をVDD(C)とVDDに、低電位側電源端子をVSS(C)とVSSに分離したが、高電位側電源端子および低電位側電源端子の一方のみをメモリセルとメモリセル以外の他の回路とで分離し、高電位側電源端子および低電位側電源端子の他方については、メモリセルとメモリセル以外の他の回路とで共用にしてもよい。また、このようにメモリセル専用の電源端子を設ける代わりに、外部からの制御信号によって出力電圧値を制御可能な降圧回路をSRAMチップ内に設け、電源端子VDDおよびVSS間の電源電圧をこの降圧回路により降圧した電源電圧をメモリセルに与えるようにしてもよい。
<第2実施形態>
SRAMにおいて、センスアンプ400は、トランジスタの特性ばらつきの影響を受けやすい回路である。そして、このセンスアンプ400の動作点を変えると、トランジスタの特性ばらつきのセンスアンプ400の動作への影響の度合いを変えることができる。本実施形態は、この点を利用したプロセス評価用半導体集積回路を提供するものである。
図7(a)は本実施形態におけるSRAMのセンスアンプの構成例を示す回路図である。このセンスアンプは、1段目アンプ410と、イコライジングスイッチ420と、2段目アンプ430と、イコライジングスイッチ440と、負荷回路413および414とにより構成されている。
図7(a)において、グローバルビット線対DLおよびDLBは、上記第1実施形態において説明したように、リードアクセス時に、カラムゲート700およびビット線対BLおよびBLB(図2、図3参照)を介してアクセス対象であるメモリセルのトランジスタTa1およびTa2(図3参照)に接続される。
1段目アンプ410は、リードアクセス時に、グローバルビット線対DLおよびDLBに接続されたアクセス対象のメモリセルのトランジスタTa1およびTa2がONになったときに、グローバルビット線DLおよびDLB間に発生する電位差を差動増幅するアンプである。この例において、1段目アンプ410は、第1の差動増幅器411と、第2の差動増幅器412とにより構成されている。第1の差動増幅回路411および第2の差動増幅回路412は、各々の差動トランジスタペアの共通ソースと低電位側電源線との間に2個のNチャネルトランジスタを有している。これらのうち一方のNチャネルトランジスタのゲートにはイネーブル信号EN1が与えられる。また、他方のNチャネルトランジスタは、所定の大きさの正のバイアス電圧BIASがゲートに与えられ、常時ONとなっている。第1の差動増幅回路411は、イネーブル信号EN1がHレベルである期間だけ活性化され、グローバルビット線DLの電位V(DL)とグローバルビット線DLBの電位V(DLB)との電位差V(DL)−V(DLB)を差動増幅し、差動増幅の結果である信号をセンス線SENに出力する。また、第2の差動増幅回路412は、イネーブル信号EN1がHレベルである期間だけ活性化され、グローバルビット線DLBの電位V(DLB)とグローバルビット線DLの電位V(DL)との電位差V(DLB)−V(DL)を差動増幅し、差動増幅の結果である信号をセンス線SENBに出力する。
イコライジングスイッチ420は、イコライジング信号EQ1Bがゲートに与えられるPチャネルトランジスタとイコライジング信号EQ1がゲートに与えられるNチャネルトランジスタとを並列接続したトランスファゲートであり、グローバルビット線DLおよびDLB間に介挿されている。ここで、イコライジング信号EQ1Bは、イコライジング信号EQ1をレベル反転した信号である。
2段目アンプ430は、フリップフロップ431と、Nチャネルトランジスタ432および433とを有する。ここで、フリップフロップ431は、各々の相手方の出力信号を各々に対する入力信号とする2個のCMOSインバータ431aおよび431bと、これら2個のCMOSインバータにおける2個のNチャネルトランジスタのソースと低電位側電源VSSとの間に介挿されたNチャネルトランジスタ431cとにより構成されている。ここで、CMOSインバータ431aの出力端子およびCMOSインバータ431bの入力端子は出力ビット線OUTに接続され、CMOSインバータ431bの出力端子およびCMOSインバータ431aの入力端子は出力ビット線OUTBに接続されている。また、Nチャネルトランジスタ431cのゲートにはイネーブル信号EN2が与えられる。Nチャネルトランジスタ432は、ゲートに与えられるイネーブル信号EN2BがHレベルである期間だけONとなってセンス線SENBを出力ビット線OUTに接続するトランジスタである。Nチャネルトランジスタ433は、ゲートに与えられるイネーブル信号EN2BがHレベルである期間だけONとなってセンス線SENを出力ビット線OUTBに接続するトランジスタである。ここで、イネーブル信号EN2Bは、イネーブル信号EN2をレベル反転した信号である。
イコライジングスイッチ440は、イコライジング信号EQ2Bがゲートに与えられるPチャネルトランジスタとイコライジング信号EQ2がゲートに与えられるNチャネルトランジスタとを並列接続したトランスファゲートであり、センス線SENおよびSENB間に介挿されている。ここで、イコライジング信号EQ2Bは、イコライジング信号EQ2をレベル反転した信号である。
図7(b)は負荷回路413および414の各々の構成例を示す回路図である。この負荷回路413および414は、4個のPチャネルトランジスタを図示のように並列接続してなる同一構成の回路であり、高電位側電源VDDとグローバルビット線DL(DLB)との間に介挿されている。ここで、負荷回路413(414)を構成する4個のPチャネルトランジスタの各ゲートには、プリチャージ信号Pre、負荷調整信号T1B、T2B、T3Bが各々与えられる。プリチャージ信号Preは、グローバルビット線DL(DLB)およびこれに接続されるビット線BL(BLB)のプリチャージを行う際にLレベルとされる信号である。このプリチャージ信号Preがゲートに与えられるPチャネルトランジスタは、プリチャージ回路を構成している。負荷調整信号T1B、T2B、T3Bは、各々が与えられる各Pチャネルトランジスタをグローバルビット線DL(DLB)およびビット線BL(BLB)に接続されたメモリセルの負荷とする場合にLレベル、負荷としない場合にHレベルとされる信号である。
図8はリードアクセス時における各部の信号波形を示す波形図である。リードアクセスの際には、それに先立って、負荷回路413(414)の中の各1個のPチャネルトランジスタに対するプリチャージ信号PreがLレベルとされ、当該Pチャネルトランジスタを介してグローバルビット線DL(DLB)およびこれに接続されたビット線BL(BLB)に電源電圧VDDがプリチャージされる。また、このプリチャージが行われる時点において、イコライジング信号EQ1およびEQ2はHレベル(イコライジング信号EQ1BおよびEQ2BはLレベル)とされ、グローバルビット線DLおよびDLBはイコライジングスイッチ420により短絡され、センス線SENおよびSENBはイコライジングスイッチ440により短絡される。また、このプリチャージが行われる時点において、イネーブル信号EN1およびEN2はLレベル(イネーブル信号EN1BおよびEN2BはHレベル)であり、第1および第2の差動増幅器411および412とフリップフロップ431は不活性状態、センス線SENBと出力ビット線OUTとの間およびセンス線SENと出力ビット線OUTBとの間は短絡状態である。
その後、プリチャージ信号Preが解除される(Hレベルとされる)とともに、アクセス対象であるメモリセルに対する行選択電圧WLが立ち上げられる。これによりアクセス対象であるメモリセルのトランジスタTa1およびTa2がONとなり、同メモリセルのNチャネルトランジスタN1およびN2の各ドレインがビット線BLおよびBLB(図3参照)を介してグローバルビット線DLおよびDLBに各々接続される。
そして、プリチャージ信号Preの解除から少し遅れて、イコライジング信号EQ1が解除され(イコライジング信号EQ1がLレベル、イコライジング信号EQ1BがHレベルとされ)、イコライジングスイッチ420がOFFとされる。このとき、上述したメモリセルのNチャネルトランジスタN1およびN2のうちグローバルビット線DLに接続されたNチャネルトランジスタN1がONである場合には、グローバルビット線DLの電位が低下を開始する。一方、グローバルビット線DLBに接続されたNチャネルトランジスタN2がONである場合には、グローバルビット線DLBの電位が低下を開始する。
次にイコライジング信号EQ1の解除から所定時間t1だけ遅れて、イネーブル信号EN1がHレベルに立ち上げられ、1段目アンプ410の第1および第2の差動増幅器411および412が活性化される。この時点において、ビット線DLおよびDLB間に十分な電位差(通常は100mV程度)があると、第1および第2の差動増幅器411および412によりグローバルビット線DLおよびDLB間の電位差の差動増幅が正常に行われる。
次にイネーブル信号EN1の立ち上げから少し遅れて、イコライジング信号EQ2が解除され(イコライジング信号EQ2がLレベル、イコライジング信号EQ2BがHレベルとされ)、イコライジングスイッチ440がOFFとされる。これにより第1および第2の差動増幅器411および412によるセンス線SENおよびSENBの駆動が行われ、センス線SENおよびSENB間に電位差が生じ、この電位差が増加し始める。これに伴って、Nチャネルトランジスタ432を介してセンス線SENBと短絡された出力ビット線OUTと、Nチャネルトランジスタ433を介してセンス線SENと短絡された出力ビット線OUTBとの間にも電位差が生じ、この電位差が増加し始める。
次にイコライジング信号EQ2の解除から所定時間t2だけ遅れて、イネーブル信号EN2がHレベルに立ち上げられ(イネーブル信号EN2BがLレベルに立ち下げられ)、フリップフロップ431が活性化されるとともに、出力ビット線OUTおよびOUTBがセンス線SENBおよびSENから各々切り離される。このとき出力ビット線OUTおよびOUTB間には十分な電位差(通常は300mV程度)が生じているので、この電位差を増大させる正帰還がフリップフロップ431の2個のCMOSインバータ431aおよび431b間で行われ、出力ビット線OUTおよびOUTBの一方がHレベル(=VDD)、他方がLレベル(=VSS)となる。このようにフリップフロップ431は、イネーブル信号EN2により活性化されることにより、出力ビット線OUTおよびOUTB間に生じた電位差を十分なレベルに増幅して保持する。
以上がSRAMにおける正常なリードアクセスの動作である。本実施形態によるプロセス評価用半導体集積回路の特徴は、センスアンプがこのような正常なリードアクセスを行うことを妨げ、正常なリードアクセスの困難度を高める回路を設けた点にある。さらに詳述すると、本実施形態の第1の特徴は、リードアクセス時にビット線DLおよびDLBに接続する負荷の重さを調整する機能を備えた負荷回路413および414にある。
負荷回路413および414に与える負荷調整信号T1B、T2B、T3Bを全てHレベルとした場合、プリチャージ信号Preおよびイコライジング信号EQ1の解除後、グローバルビット線DLおよびDLBに接続されたON状態のトランジスタは1個もない。従って、アクセス対象であるメモリセルにおいて例えばNチャネルトランジスタN1がONである場合、このNチャネルトランジスタN1の負荷はビット線BLおよびグローバルビット線DLの浮遊容量のみである。従って、イコライジング信号EQ1の解除後、グローバルビット線DLの電位は大きな勾配で低下してゆき、イネーブル信号EN1の立ち上がり時においてグローバルビット線DLおよびDLB間の電位差は、第1および第2の差動増幅器411および412を正常に動作させるに足る十分な大きさとなる。
しかし、例えば負荷調整信号T1BをLレベルとした場合には、プリチャージ信号Preおよびイコライジング信号EQ1の解除後、負荷回路413の中の1個のPチャネルトランジスタがグローバルビット線DLに、負荷回路414の中の1個のPチャネルトランジスタがグローバルビット線DLBに接続された状態となる。従って、アクセス対象であるメモリセルにおいて例えばNチャネルトランジスタN1がONである場合、このNチャネルトランジスタN1に対して負荷回路413の中の1個のPチャネルトランジスタのドレイン電流が流れ込むため、その分だけグローバルビット線DLおよびビット線BLの充電電荷の放電に使用可能なNチャネルトランジスタN1の駆動能力が減る。従って、イコライジング信号EQ1の解除後のグローバルビット線DLの電位の勾配が減り、イネーブル信号EN1の立ち上がり時においてグローバルビット線DLおよびDLB間の電位差は、負荷調整信号T1B、T2B、T3Bの全てがHレベルである場合に比べて小さくなる。
さらに、例えば負荷調整信号T1Bに加えて負荷調整信号T2BをもLレベルとした場合には、負荷回路413の中の2個のPチャネルトランジスタがグローバルビット線DLに、負荷回路414の中の2個のPチャネルトランジスタがグローバルビット線DLBに接続される。従って、イコライジング信号EQ1の解除後のグローバルビット線DLまたはDLBの電位の勾配がさらに減り、イネーブル信号EN1の立ち上がり時においてグローバルビット線DLおよびDLB間の電位差は、負荷調整信号T1BのみがLレベルである場合に比べてさらに小さくなる。そして、負荷調整信号T1B、T2B、T3Bの全てをLレベルとした場合には、イネーブル信号EN1の立ち上がり時におけるグローバルビット線DLおよびDLB間の電位差は、負荷調整信号T1B、T2BがLレベルである場合に比べてさらに小さくなるのである。
このようにグローバルビット線DLおよびDLBに接続する負荷回路413および414内のPチャネルトランジスタの個数を増やしてゆくと、リードアクセス時にアクセス対象であるメモリセルのNチャネルトランジスタN1またはN2の負担が増え、SRAMセルアレイ100(図1参照)の中にNチャネルトランジスタN1またはN2の駆動能力が低いメモリセルが存在する場合には、そのメモリセルに対するリードアクセスが失敗に終わる可能性が高くなる。
そこで、本実施形態では、負荷調整信号T1B、T2B、T3Bを各種設定することにより、メモリセルに対する負荷を段階的に増やし、各負荷条件において、SRAMセルアレイ100の各メモリセルに対するリードアクセスが正常に行われるか否かを調べる測定を行う。このような測定を行うことにより、負荷が軽い状態では見つけることができない一部のメモリセルの駆動能力不足を見つけることができる。また、そのような駆動能力の不足しているメモリセルを見つけ、そのメモリセルを構成しているトランジスタの特性を測定し、その結果をプロセス条件の調整に活用し、目標品質を満たすSRAMや他の半導体集積回路を高歩留まりで製造することができるように半導体製造プロセスのプロセス条件を最適化することができる。
本実施形態の第2の特徴は、リードアクセスのための内部制御信号の発生タイミングを可変制御するタイミング制御手段をSRAMに設けたこと、より具体的にはイコライジング信号EQ1の解除からイネーブル信号EN1の立ち上げまでのインターバル時間t1を調整する機能を設けた点にある。このインターバル時間t1が短いと、アクセス対象であるメモリセルのNチャネルトランジスタN1またはN2の駆動能力が低い場合に、イネーブル信号EN1の立ち上がり時にグローバルビット線DLおよびDLB間に十分な電位差が発生せず、リードアクセスが失敗に終わる可能性が高まる。そこで、本実施形態では、インターバル時間t1を例えば段階的に短くしつつ、各インターバル時間t1の条件において、SRAMセルアレイ100の各メモリセルに対するリードアクセスが正常に行われるか否かを調べる測定を行う。このような測定を行うことにより、インターバル時間t1が長い状態では見つけることができない一部のメモリセルの駆動能力不足を見つけることができる。
また、インターバル時間t1を短くした場合、メモリセルの微妙な駆動能力不足だけでなく、ビット線BLおよびBLBの配線抵抗のばらつきの検知が容易になる。さらに詳述すると、SRAMのチップ内において、センスアンプから近い位置にあるメモリセルとセンスアンプとの間のビット線の配線抵抗は小さいが、センスアンプから遠い位置にあるメモリセルとセンスアンプとの間のビット線の配線抵抗は大きい。また、ビット線の配線幅にもばらつきがあり、ビット線の配線幅が広いと配線抵抗は低くなり、配線幅が狭いと配線抵抗は高くなる。このようにビット線の配線抵抗がばらつきを持つ場合において、インターバル時間t1を短くすると、高い配線抵抗を介してセンスアンプに接続されたメモリセルからデータ読み出しを行う場合に、イネーブル信号EN1の立ち上がり時にグローバルビット線DLおよびDLB間に十分な電位差が発生せず、リードアクセスが失敗に終わる可能性が高まる。従って、インターバル時間t1を短くしてメモリセルからのデータ読み出しを行うことにより、ビット線の配線抵抗のばらつきの調査が容易になる。
本実施形態の第3の特徴は、リードアクセスのための内部制御信号の発生タイミングを可変制御するための他のタイミング制御手段をSRAMに設けたこと、より具体的にはイコライジング信号EQ2の解除からイネーブル信号EN2の立ち上げまでのインターバル時間t2を調整する機能を設けた点にある。このインターバル時間t2が短いと、例えば差動増幅器411または412の駆動能力が低い場合に、イネーブル信号EN2の立ち上がり時にセンス線SENおよびSENB間に十分な電位差が発生せず、リードアクセスが失敗に終わる可能性が高まる。そこで、本実施形態では、インターバル時間t2を例えば段階的に短くしつつ、各インターバル時間t2の条件において、SRAMセルアレイ100の各メモリセルに対するリードアクセスが正常に行われるか否かを調べる測定を行う。このような測定を行うことにより、インターバル時間t2が長い状態では見つけることができないリードアクセス不良を見つけることができる。
次に、これらの第1〜第3の特徴を実現するための回路構成例を説明する。本実施形態では、ライトアクセスやリードアクセスのための内部制御信号を発生するための制御回路(上記第1実施形態における制御回路900に相当するもの)として、図9に示す制御回路900aを設ける。この例において、制御回路900aは、同期SRAMの制御回路であり、同期タイミングを指示するためのクロックCLKが与えられる。また、この制御回路900aには、複数ビットからなるモード指定信号MODEと、遅延時間信号T1およびT2が与えられる。本実施形態では、モード指定信号MODEの各ビットの設定により次のモードのいずれかが指定される。
(1)ノーマルモード
このノーマルモードは、SRAMの通常の動作モードである。このノーマルモードでは、負荷調整信号T1B、T2B、T3Bは全て非アクティブレベル(この例ではHレベル)とされる。また、図8に示すインターバル時間t1およびt2は、安定して正常なリードアクセスを可能にする標準的な長さに固定される。
(2)負荷可変モード
この負荷可変モードは、負荷調整信号T1B、T2B、T3Bの少なくとも1つがアクティブレベル(この例ではLレベル)とされる。さらに詳述すると、負荷可変モードは、負荷調整信号T1Bのみがアクティブレベルとされる第1のモードと、負荷調整信号T1BおよびT2Bがアクティブレベルとされる第2のモードと、負荷調整信号T1B、T2B、T3Bの全てがアクティブレベルとされる第3のモードとに分かれている。動作モードを第1〜第3のモードのいずれにするかは、モード信号MODEの各ビットの値により定まる。
なお、図7(b)に示す負荷回路413(414)において、負荷調整信号T1B、T2B、T3Bの与えられる各トランジスタのサイズが異なる場合(すなわち、負荷としての重みが異なる場合)には、モード信号MODEの各ビットの設定により、負荷調整信号T1B、T2B、T3Bの信号値を下記のように変化させてもよい。下記の例において、負荷調整信号T1B、T2B、T3Bの与えられる各トランジスタの負荷としての重みは各々1、2、4となっている。
<負荷可変モードを構成する各モード>
T1B T2B T3B 総合的な負荷の重み
L H H 1
H L H 2
L L H 3
H H L 4
L H L 5
H L L 6
L L L 7
(3)内部タイミング可変モード
この内部タイミング可変モードは、図8に示すインターバル時間t1およびt2を変化させるモードである。さらに詳述すると、モード指定信号MODEにより内部タイミング可変モードが指定された状態において、制御回路900aは、インターバル時間t1を遅延時間信号T1により指定される長さとし、インターバル時間t2を遅延時間信号T2により指定される長さとする。
(4)外部タイミング入力モード
この外部タイミング入力モードは、外部から与えられる各信号をイネーブル信号EN1およびEN2として各々出力するモードである。さらに詳述すると、モード指定信号MODEにより外部タイミング入力モードが指定された状態において、制御回路900aは、遅延時間信号T1の特定ビットの信号をイネーブル信号EN1として出力し、遅延時間信号T2の特定ビットの信号をイネーブル信号EN2として出力する。従って、この外部タイミング入力モードでは、外部から与える遅延時間信号T1の特定ビットの信号の立ち上がりエッジのタイミングを調整することにより図8に示すインターバル時間t1を任意に調整することができる。また、外部から与える遅延時間信号T2の特定ビットの信号の立ち上がりエッジのタイミングを調整することにより図8に示すインターバル時間t2を任意に調整することができる。
図10は、制御回路900aにおいて、内部タイミング可変モードおよび外部タイミング入力モードを実現するための回路の構成例を示すものである。この例において、遅延部901は、クロックCLKを所定時間だけ遅延させて図8に示すプリチャージ信号Preとして出力する回路である。また、遅延部902は、プリチャージ信号Preを所定時間だけ遅延させて図8に示すイコライジング信号EQ1として出力する回路である。また、遅延部903は、遅延時間可変の回路であり、モード指定信号MODEにより内部タイミング可変モードが指定された状態では、イコライジング信号EQ1を遅延時間信号T1により指定されたインターバル時間t1だけ遅延させ、図8に示すイネーブル信号EN1として出力する。また、遅延部903は、モード指定信号MODEにより外部タイミング入力モードが指定された状態では、遅延時間信号T1の特定ビットの信号をイネーブル信号EN1として出力する。遅延部904は、イネーブル信号EN1を所定時間だけ遅延させて図8に示すイコライジング信号EQ2として出力する回路である。また、遅延部905は、遅延時間可変の回路であり、モード指定信号MODEにより内部タイミング可変モードが指定された状態では、イコライジング信号EQ2を遅延時間信号T2により指定されたインターバル時間t2だけ遅延させ、図8に示すイネーブル信号EN2として出力する。また、遅延部905は、モード指定信号MODEにより外部タイミング入力モードが指定された状態では、遅延時間信号T2の特定ビットの信号をイネーブル信号EN2として出力する。
遅延部903および905としては、例えば複数のインバータを有し、遅延回路として機能させるインバータの段数を遅延時間信号T1またはT2に応じて切り換える構成のものが考えられる。
<第3実施形態>
本実施形態は、前掲図1および図2のSRAMの構成において、行選択電圧WLを発生するロウデコーダ200の出力段回路(図2におけるインバータ202)に対する電源電圧の給電系統を他の回路のための電源電圧の給電系統と分離したものである。さらに詳述すると、本実施形態では、ロウデコーダ200の出力段回路に対する電源端子VDD(C)およびVSS(C)を他の回路のための電源端子VDDおよびVSSとは別にし、電源端子VDD(C)およびVSS(C)に与える電源電圧を可変にすることにより、行選択電圧を任意に調整することができるようにしたものである。ここで、出力段回路(図2におけるインバータ202)は、レベルシフタとすることが好ましい。
本実施形態では、例えば電源端子VDD(C)の電源電圧、すなわち、行選択電圧のHレベル(=VDD(C))を段階的に変化させつつ、各メモリセルに対するライトアクセスおよびリードアクセスを行う。ここで、SRAMセルアレイ100を構成する各メモリセルの中にトランジスタTa1またはTa2(図3参照)の閾値電圧が高く、あるいは相互コンダクタンスgmが小さくて、駆動能力の不足したものがある場合、行選択電圧のHレベルの電圧値を下げてゆくと、そのようなメモリセルに対するライトアクセスやリードアクセスが失敗する可能性が高くなる。そこで、そのようなライトアクセスやリードアクセスが失敗に終わったメモリセルとそうでないメモリセルを特定し、両メモリセルのトランジスタの特性を測定して比較するのである。本実施形態においても上記第1実施形態および第2実施形態と同様な効果が得られる。
なお、このように行選択電圧を出力する回路に対して供給する電圧をSRAM外部から供給する代わりに、チップ内に電源電圧を降圧する降圧回路または電源電圧を昇圧する昇圧回路を設け、これらにより降圧または昇圧された電源電圧を行選択電圧を出力する回路に供給してもよい。
<第4実施形態>
本実施形態は、前掲図7のSRAMの構成において、ビット線DLおよびDLBのプリチャージを行う回路の電源電圧の給電系統を他の回路のための電源電圧の給電系統と分離したものである。さらに詳述すると、本実施形態では、プリチャージ電圧を発生する回路に対する電源端子VDD(C)をそれ以外の他の回路のための電源端子VDDとは別にし、電源端子VDD(C)に与える電源電圧を可変にすることにより、プリチャージ電圧を任意に調整することができるようにしたものである。
本実施形態では、例えばプリチャージ電圧を段階的に変化させつつ、各メモリセルに対するリードアクセスを行う。ここで、SRAMセルアレイ100を構成する各メモリセルの中にトランジスタN1またはN2(図3参照)の駆動能力の不足したものがある場合、プリチャージ電圧の電圧値を下げてゆくと、そのようなメモリセルに対するリードアクセス時に、プリチャージおよびビット線対のイコライジングの解除後にビット線DLおよびDLB間に十分な電位差が発生せず、リードアクセスが失敗する可能性が高くなる。そこで、そのようなリードアクセスが失敗に終わったメモリセルとそうでないメモリセルを特定し、両メモリセルのトランジスタの特性を測定して比較するのである。本実施形態においても上記第1〜第3実施形態と同様な効果が得られる。
なお、このようにプリチャージ電圧を出力する回路に対して供給する電圧をSRAM外部から供給する代わりに、チップ内に電源電圧を降圧する降圧回路または電源電圧を昇圧する昇圧回路を設け、これらにより降圧または昇圧された電源電圧をプリチャージ電圧を出力する回路に供給してもよい。
<この発明の第2の適用対象例>
図11は、この発明の第2の適用対象例であるマスクROMの構成例を例示する回路図である。この図11に示すマスクROMは、16ビット幅のマスクROMであり、16ビットの読み出しデータDout0〜Dout15を出力するためのセンスアンプ400’−0〜400’−15を備えている。また、このマスクROMは、第0ビット〜第15ビットの各データを各々記憶した16個のデータ記憶エリア100’−0〜100’−15を各々備えている。ここで、第0ビットの記憶エリアは、m+1行、n+1列のメモリセルM’ij−0(i=0〜m、j=0〜n)により構成されている。そして、メモリセル行列M’ij−0(i=0〜m、j=0〜n)では、列毎に、当該列に属するm+1個のメモリセルM’ij−0(i=0〜m)の並び方向に沿って1本のビット線BITj−0が配線されており、行毎に、当該行に属するn+1個のメモリセルM’ij−0(j=0〜n)の並び方向に沿ってワード線が配線されている。そして、各メモリセルM’ij−0は、1個のNチャネルトランジスタにより構成されており、第i行第j列のメモリセルM’ij−0であるNチャネルトランジスタは、そのソースが低電位側電源VSSに接続され、そのゲートが第i行のワード線に接続されている。また、第i行第j列のメモリセルM’ij−0であるNチャネルトランジスタのドレインは、そのメモリセルの記憶内容が“0”であるか“1”であるかにより状態が異なり、ビット線BITj−0に接続されるか、あるいは開放状態となっている。以上、第0ビットに対応したデータ記憶エリア100’−0について説明したが、第1〜第15ビットに対応したデータ記憶エリア100’−1〜100’−15についても同様である。
上述したSRAMの例と同様、m+1個の行選択回路200−i(i=0〜m)は行アドレスをデコードするロウデコーダを構成しており、n+1個の列選択回路300−j(j=0〜n)は列アドレスをデコードするカラムデコーダを構成している。そして、行選択回路200−i(i=0〜m)の各々は、メモリセル行列M’mn−0〜M’mn−15の各行のワード線に接続されている。これらの行選択回路200−i(i=0〜m)の働きにより、各行に対する行選択電圧WLi(i=0〜m)のうち行アドレスが示す行番号i’に対応した行選択電圧WLi’のみがHレベルとされ、他の行選択電圧WL−i(i≠i’)はLレベルとされる。これがロウデコーダによって行われる行選択の動作である。
カラムゲート700’は、第0ビットのデータを記憶するメモリセル行列M’ij−0(i=0〜m、j=0〜n)に対応したスイッチ群として、n+1対のスイッチCGj−0(j=0〜n)を有している。このn+1個のスイッチCGj−0(j=0〜n)は、Nチャネルトランジスタにより各々構成されている。ここで、スイッチCGj−0(j=0〜n)の各一端は、メモリセル行列M’ij−0(i=0〜m、j=0〜n)の各列jに対応したビット線BITj−0(j=0〜n)に各々接続されており、各他端は第0ビットに対応したグローバルビット線DL0に各々共通接続されている。また、カラムゲート700’は、第1〜第15ビットのデータを記憶する各メモリセル行列M’ij−1(i=0〜m、j=0〜n)〜M’ij−15(i=0〜m、j=0〜n)に対応した各スイッチ群を有している。それらのスイッチ群の構成もメモリセル行列M’ij−0(i=0〜m、j=0〜n)に対応したスイッチ群と同様である。
列選択回路300−j(j=0〜n)は、メモリセル行列M’ij−0(i=0〜m、j=0〜n)〜M’ij−15(i=0〜m、j=0〜n)の各列jに各々対応付けられており、スイッチ(トランジスタ)CGj−0(j=0〜n)〜CGj−15(j=0〜n)の各ゲートに列選択電圧COLj(j=0〜n)を各々供給する。
センスアンプ400’−0〜400’−15は、グローバルビット線DL0〜DL15の各々を介してアクセス対象である各メモリセルに流れ込む電流の大きさを判定することによりデータ記憶エリア100’−0〜100’−15からの各読み出しデータを判定し、判定結果を読み出しデータDout0〜Dout15として各々出力する。
一般にマスクROMでは、最小寸法のトランジスタがメモリセルとして使用され、このメモリセルを許容限度の間隔で敷き詰めてデータ記憶エリア100’−0〜100’−15を構成する。このため、マスクROMは、大規模化が可能であり、膨大な個数のメモリセルをマスクROMに搭載可能である。従って、この発明によるプロセス評価用半導体集積回路として最適である。
以下説明する第5実施形態は、この発明をマスクROMに適用したプロセス評価用半導体集積回路の実施形態である。
<第5実施形態>
前掲図11のマスクROMにおいてセンスアンプ400’−0〜400’−15の読み出し動作が正常に行われるためには、ビット線に接続されたメモリセルのトランジスタの特性が正常でなければならない。しかし、このメモリセルを構成するトランジスタの特性には製造ばらつきの影響が現れる。図12はその例を示すものである。この図12において、メモリセルであるトランジスタに対するゲート電圧VCGを示し、縦軸は一定のドレイン−ソース間電圧を与えた場合における同トランジスタのドレイン電流Idを示している。ここで、特性3は標準的なトランジスタの特性を示し、特性1および5は閾値電圧Vthが異常を起こした場合の特性を示し、特性2および4は相互コンダクタンスgmが異常を起こした場合の特性を示している。
ここで、トランジスタの特性がこれらの特性1〜5のいずれの類型に当てはまるかを判断するためには、例えばトランジスタに対するゲート電圧を図12に示すVa、Vb、Vcと変化させ、各々の条件において、トランジスタに流れる電流Idを3種類の基準電流Id1、Id2、Id3と比較し、Idが0〜Id1の範囲、Id1〜Id2の範囲、Id2〜Id3の範囲、Id3を越える範囲のいずれに属するかをセンスアンプを用いて判定すればよい。
この判定の方法を具体例を挙げて説明する。トランジスタの特性が例えば特性3であったとする。この場合、センスアンプがアクセス対象のメモリセルであるトランジスタに流れるドレイン電流を各基準電流Id1〜Id3と比較判定する機能を備えているものとすると、ゲート電圧がVaであるときにはドレイン電流がId1よりも小さい旨の判定結果をセンスアンプが出力し、ゲート電圧がVbであるときにはドレイン電流がId1〜Id2の間にある旨の判定結果をセンスアンプが出力し、ゲート電圧がVcであるときにはドレイン電流がId3を越えている旨の判定結果をセンスアンプが出力する。このようにしてセンスアンプから出力される各判定結果に基づき、トランジスタの特性は特性3に該当すると判断することができるのである。
本実施形態は、センスアンプ400’−0〜400’−15にビット線を介してメモリセルに流れる電流と上記の複数種類の基準電流との比較判定を行わせるための第1の改良と、行選択回路200−i(i=0〜m)が出力する行選択電圧(すなわち、メモリセルのトランジスタに対するゲート電圧)を可変にするための第2の改良とを加えることにより、マスクROMを構成する膨大な数の各メモリセルについて、トランジスタの出力電流特性(ゲート電圧−ドレイン電流特性)が上記特性1〜5のいずれの類型に属するかの判定を可能にするものである。
まず、前者の第1の改良について説明する。図13は第1の改良の対象となるセンスアンプ(図11におけるセンスアンプ400’−0〜400’−15に相当)の一般的な構成例を示すものである。図13に示すように、センスアンプは、差動増幅器499を有している。
図13において、差動増幅器499の左側には、リードアクセス時にアクセス対象であるメモリセルM’ijに対する電流経路を形成する回路が図示されている。すなわち、高電位側電源VDDおよび低電位側電源VSS間に直列に介挿された負荷回路471、Nチャネルトランジスタ472、カラムゲート用のスイッチCGjおよびメモリセルM’ijからなる回路である。ここで、負荷回路471は、Pチャネルトランジスタからなるカレントミラー回路であり、メモリセルM’ijに流れるドレイン電流に依存した比較用電圧SAINを発生する。Nチャネルトランジスタ472は、所定のバイアス電圧BIAS1がゲートに与えられ、常時ONとなっている。
差動増幅器499の右側には基準電圧SAREFを発生する回路が図示されている。すなわち、高電位側電源VDDおよび低電位側電源VSS間に直列に介挿された負荷回路481、Nチャネルトランジスタ482、483およびREF回路484からなる回路である。ここで、Nチャネルトランジスタ482は、Nチャネルトランジスタ472と同じサイズのトランジスタであり、Nチャネルトランジスタ472と同様なゲート電圧BIAS1が与えられる。Nチャネルトランジスタ483は、カラムゲート用のスイッチCGjと同じサイズのNチャネルトランジスタであり、スイッチCGjに与えられる列選択電圧COLと同じレベルのゲート電圧COLREFが与えられる。REF回路484は、基準電流を発生する回路であり、メモリセルM’ijと同じサイズのNチャネルトランジスタにより構成されている。このREF回路484を構成するNチャネルトランジスタには、メモリセルM’ijのアクセス時にメモリセルM’ijに流れるドレイン電流とは異なる電流(例えば標準的なメモリセルM’ijに流れる電流の1/2の電流)が流れるように、行選択電圧WLと異なるレベルのゲート電圧WLREFが与えられる。負荷回路481は、Pチャネルトランジスタからなるカレントミラー回路であり、REF回路484に流れるドレイン電流(すなわち、基準電流)に依存した基準電圧SAREFを発生する。
差動増幅器499は、負荷回路471が発生する比較用電圧SAINと負荷回路481が発生する基準電圧SAREFとの差動増幅を行う。そして、差動増幅器499は、比較用電圧SAINが基準電圧SAREFよりも低い場合(すなわち、負荷回路471からメモリセルM’ij側に流れ込む電流が負荷回路481からREF回路484側に流れ込む基準電流よりも大きい場合)、出力信号OUTBをHレベルとする。また、差動増幅器499は、比較用電圧SAINが基準電圧SAREFよりも高い場合(すなわち、負荷回路471からメモリセルM’ij側に流れ込む電流が負荷回路481からREF回路484側に流れ込む基準電流よりも小さい場合)、出力信号OUTBをLレベルとする。この出力信号OUTBに基づき、図11に示す読み出しデータDout0〜Dout15に相当する信号が生成される。なお、差動増幅器499は、差動トランジスタペアの負荷回路を構成するNチャネルトランジスタ499aおよび499bのソース同士の接続点と低電位側電源VSSとの間にNチャネルトランジスタ499cを有しており、このNチャネルトランジスタ499cのゲートには所定のバイアス電圧BIAS2が与えられる。このNチャネルトランジスタ499cは、差動増幅器499が最適なゲインで比較用電圧SAINと基準電圧SAREFとの差動増幅を行うように差動増幅器499の動作点を調整する役割を果たしている。
本実施形態では、上記第1の改良を行うため、図13における負荷回路471として、図14に示す負荷回路450をマスクROMに設ける。この負荷回路450において、Pチャネルトランジスタ451〜454のドレインおよびゲートは、図13におけるNチャネルトランジスタ472のドレインと共通接続されており、この共通接続点が比較用電圧SAINを発生するノードとなっている。また、Pチャネルトランジスタ451〜454の各ソースと高電位側電源VDDとの間にはPチャネルトランジスタ455〜458が各々介挿されている。ここで、Pチャネルトランジスタ455〜458の各ゲートには、プリチャージ信号Pre、電流選択信号Id1B、Id2B、Id3Bが各々与えられる。これらのプリチャージ信号Pre、電流選択信号Id1B、Id2B、Id3Bは、図示しない制御回路がリードアクセスのために発生する内部制御信号である。本実施形態において、この制御回路は、マスクROMの外部から与えられるモード指定信号に従って電流選択信号Id1B、Id2B、Id3Bを発生する。
プリチャージ信号Preは、メモリセルM’ijに対するリードアクセスのために列選択電圧COLがHレベルとされた後、行選択電圧WLがHレベルとされる前に一定時間に亙ってLレベルとされる。このプリチャージ信号PreがLレベルとされる間、Pチャネルトランジスタ455および451がONとなり、グローバルビット線DLおよびビット線BITがプリチャージ電圧(電源電圧VDDの近傍の電圧)に充電される。このプリチャージが行われる間、電流選択信号Id1B、Id2B、Id3Bは制御回路によって全てHレベルとされる。
プリチャージ信号PreがHレベルとされ、行選択電圧WLがHレベルとされると、電流選択信号Id1B、Id2B、Id3Bのうちの1個がLレベルとされる。電流選択信号Id1B、Id2B、Id3BのいずれをLレベルとするかは制御回路に与えられるモード指定信号の内容に基づいて決定される。電流選択信号Id1BがLレベルとされた場合、Pチャネルトランジスタ456がONとなるので、Pチャネルトランジスタ452がカレントミラーとして機能する。また、電流選択信号Id2BがLレベルとされた場合、Pチャネルトランジスタ453がカレントミラーとして機能し、電流選択信号Id3BがLレベルとされた場合、Pチャネルトランジスタ454がカレントミラーとして機能する。カレントミラーとして働くPチャネルトランジスタ452、453、454の各トランジスタサイズの比は、図12に示す各基準電流の比Id1:Id2:Id3となっている。
ここで、簡単のため、例えばREF回路484の基準電流値が図12におけるId1であり、負荷回路450におけるPチャネルトランジスタ452のサイズが負荷回路481においてカレントミラーを構成しているPチャネルトランジスタのサイズと同じであるとする。
まず、メモリセルM’ijからの読み出し時、電流選択信号Id1BがLレベルにされたとする。このとき、負荷回路450のPチャネルトランジスタ452からメモリセルM’ijに流れ込む電流が負荷回路481からREF回路484に流れ込む基準電流Id1よりも小さい場合には、比較用電圧SAINは基準電圧SAREFよりも高くなり、差動増幅器499の出力信号OUTBはLレベルとなる。これに対し、前者のメモリセルM’ijに流れ込む電流が後者の基準電流Id1よりも大きい場合には、比較用電圧SAINは基準電圧SAREFよりも低くなり、差動増幅器499の出力信号OUTBはHレベルとなる。
次にメモリセルM’ijからの読み出し時、電流選択信号Id2BがLレベルにされたとする。この場合、負荷回路450では、Pチャネルトランジスタ452のId2/Id1倍のトランジスタサイズのPチャネルトランジスタ453がカレントミラーとして機能する。従って、負荷回路450からメモリセルM’ijに流れ込む電流が負荷回路481からREF回路484に流れ込む基準電流Id1のId2/Id1倍である基準電流Id2よりも小さい場合に、比較用電圧SAINは基準電圧SAREFよりも高くなり、差動増幅器499の出力信号OUTBはLレベルとなる。これに対し、前者の電流が後者の基準電流Id2よりも大きい場合には、比較用電圧SAINは基準電圧SAREFよりも低くなり、差動増幅器499の出力信号OUTBはHレベルとなる。
次にメモリセルM’ijからの読み出し時、電流選択信号Id3BがLレベルにされたとする。この場合、負荷回路450では、Pチャネルトランジスタ452のId3/Id1倍のトランジスタサイズのPチャネルトランジスタ454がカレントミラーとして機能する。従って、負荷回路450からメモリセルM’ijに流れ込む電流が基準電流Id3よりも小さい場合に、差動増幅器499の出力信号OUTBはLレベルとなり、前者の電流が後者の基準電流Id3よりも大きいと、差動増幅器499の出力信号OUTBはHレベルとなる。
以上のように図14に示す負荷回路450を用いることにより、図12に示す基準電流Id1〜Id3の各々とメモリセルM’ijに流れる電流との比較をセンスアンプに行わせ、第1の改良を実現することができる。
第1の改良の実現の態様としては、図15(a)(b)(c)に示す各態様も考えられる。図15(a)に示す態様では、図13に示すNチャネルトランジスタ483のソースのノードBITREFをボンディングパッドに繋ぎ、マスクROMの外部の定電流源をこのボンディングパッドに接続し、この外部の定電流源により負荷回路481に電流Id1、Id2、Id3のいずれかを流す。図15(b)に示す態様は、ボンディングパッドを介して外部の定電流源から供給される電流をマスクROM内に設けられたカレントミラー461を介してNチャネルトランジスタ483のソースのノードBITREFに導く構成である。図15(c)に示す態様は、図15(b)に示す態様において、外部の定電流源を用いる代わりに、マスクROM内部に3個の抵抗R1、R2、R3と3個のPチャネルトランジスタ462a、462b、462cとからなる定電流回路462を設け、この定電流回路から得られる定電流をカレントミラーを介してNチャネルトランジスタ483のソースのノードBITREFに導くようにしたものである。ここで、Pチャネルトランジスタ462a、462b、462cの各ソースは、所定電圧を発生する基準電圧源に接続されており、Pチャネルトランジスタ462a、462b、462cの各ドレインは、抵抗R1、R2、R3を各々介してカレントミラーに接続されている。そして、Pチャネルトランジスタ462a、462b、462cの各ゲートには電流選択信号Id1B、Id2B、Id3Bが与えられ、抵抗R1、R2、R3のいずれをカレントミラー461に電流を供給する定電流源とするかが切り換えられるようになっている。
いずれの態様においても、上記図14の実施形態と同様な効果が得られる。
次に第2の改良について説明する。本実施形態では、図11における行選択回路200−0〜200−mが第2の改良の対象となる。すなわち、本実施形態では、行選択回路200−1〜200−mの各々の構成を図16に示すものとする。この図16に示す1個の行選択回路200aは、NANDゲート201と、レベルシフタ210とにより構成されている。
NANDゲート201は、高電位側電源VDDおよび低電位側電源VSS間の電源電圧が与えられ、図示しないアドレス入力回路から与えられる行アドレスが当該行選択回路200aの対応付けられた行を示す場合に出力信号をアクティブレベル(VSS)とし、当該行を示さない場合は非アクティブレベル(VDD)とするゲートである。
レベルシフタ210は、Nチャネルトランジスタ211および212とPチャネルトランジスタ213および214とにより構成されている。ここで、Nチャネルトランジスタ211は、ソースが低電位側電源VSSに接続され、ゲートがNANDゲート201の出力端子に接続されている。Pチャネルトランジスタ213は、ドレインがNチャネルトランジスタ211のドレインに接続され、ソースがロウデコーダ用電源端子PAD(WL)に接続されている。このNチャネルトランジスタ211とPチャネルトランジスタ213のドレイン同士の接続点が行選択電圧WLを出力するノードとなっている。Nチャネルトランジスタ212は、NANDゲート201の出力端子とPチャネルトランジスタ213のゲートとの間に介挿されたトランスファゲートであり、ゲートには電源電圧VDDが与えられる。Pチャネルトランジスタ214は、ドレインがPチャネルトランジスタ213のゲートに接続され、ソースがロウデコーダ用電源端子PAD(WL)に接続され、ゲートには行選択電圧WLが与えられる。
このような構成において、NANDゲート201の出力信号が非アクティブレベル(VDD)であるとき、Nチャネルトランジスタ211がONとなることから、Pチャネルトランジスタ214がONとなり、Pチャネルトランジスタ213をOFFさせる。このため、行選択電圧WLは非アクティブレベル(VSS)となる。一方、NANDゲート201の出力信号がアクティブレベル(VSS)になると、Nチャネルトランジスタ211がOFF、Pチャネルトランジスタ213がONとなり、行選択電圧WLはアクティブレベル、すなわち、ロウデコーダ用電源端子PAD(WL)を介して与えられる電源電圧VWLのレベルとなる。そして、行選択電圧WLが電源電圧VWLとなることによりPチャネルトランジスタ214がOFFになる。
このように行選択回路200aでは、行選択電圧WLのアクティブレベルがロウデコーダ用電源端子PAD(WL)を介して外部から与えられる電源電圧VWLとなる。従って、この行選択回路200aを図11の行選択回路200−1〜200−mとして採用すれば、ロウデコーダ用電源端子PAD(WL)に与える電源電圧VWLを例えば図12のVa、Vb、Vcのように変化させつつ各メモリセルM’ijに対するリードアクセスを行うことで、各メモリセルM’ijに与える行選択電圧WL(メモリセルM’ijであるNチャネルトランジスタに対するゲート電圧)をVa、Vb、Vcのように変化させることができる。
そして、本実施形態によれば、以上説明した第1の改良および第2の改良をマスクROMに施すことにより、各メモリセルM’ijに与える行選択電圧WLをVa、Vb、Vcと変化させつつ、各メモリセルM’ijに対するリードアクセスを行い、各メモリセルM’ijに流れる電流を図12と基準電流Id1、Id2、Id3との比較をセンスアンプに行わせ、その比較結果を得ることができる。このような測定は、LSIテスタを利用して簡単に行うことができる。また、LSIテスタ側では、マスクROMのセンスアンプから得られる上記の比較結果に基づき、各メモリセルM’ijのゲート電圧−ドレイン電流特性が図12に例示する特性1〜特性5のいずれの類型に属するかを判別することが可能になる。このような判別処理は、簡単なプログラムをLSIテスタに実行させることにより実現可能である。このように本実施形態によれば、マスクROMを構成する膨大な数のメモリセルのゲート電圧−ドレイン電流特性の類型を短時間のうちに調べることができる。このようにマスクROMに搭載された膨大な数のトランジスタのゲート電圧−ドレイン電流特性が短時間のうちに得られるため、マスクROM等のLSIを安定した歩留まりで製造するための製造プロセス条件の変更等を迅速に行うことができる。
なお、本実施形態において、行選択電圧を出力する回路(レベルシフタ210)に対して供給する電圧をマスクROM外部から供給する代わりに、マスクROMのチップ内に電源電圧を降圧する降圧回路または電源電圧を昇圧する昇圧回路を設け、これらにより降圧または昇圧された電源電圧を行選択電圧を出力する回路に供給してもよい。
また、本実施形態では、基準電流Id1、Id2、Id3を切り換える手段と、行選択電圧を切り換える手段の両方をマスクROMに設けたが、一方のみを設けてもよい。