第1実施形態
図1は、本発明を適用可能な基板処理システムの電気的構成を模式的に示すブロック図である。図2は、本発明を適用可能な基板処理システムの機械的構成を模式的に示す平面図である。図2および後述する図面では、鉛直方向をZ軸とするXYZ直交座標軸が適宜示される。また、以下では、各座標軸の矢印方向を正方向と適宜称するとともに、各座標軸の矢印と逆方向を負方向と適宜称する。
この基板処理システム1は、基板搬送方向であるX軸方向(図2)に直列に並ぶ印刷機100、2台の実装機200およびリフロー炉300を、ホストコンピューター400(図1)により統括的に制御する概略構成を備える。ホストコンピューター400は、演算処理を司るCPU(Central Processing Unit)401の他、各種情報を記憶するメモリー402を備える。また、ホストコンピューター400は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリー等の記録媒体410にアクセスして、この記録媒体410からプログラム420を読み出すドライバー(図示省略)を備える。そして、ホストコンピューター400は、こうして読み出したプログラム420に従って、各基板処理装置100、200、300の各制御部110、210、310に適宜指令を出す。これに対して、各制御部110、210、310は、この指令に従って、対応する基板処理装置100、200、300の各部の動作を制御して、所定の処理を実行する。また、ホストコンピューター400は、作業者に対して情報を適宜表示するディスプレイ430の他、キーボードやマウス等の入力機器440を具備している。
図2に示すように、基板処理システム1は、各基板処理装置100、200、300に対して基板Sを順次搬送する2つの基板搬送系Cb、Cfを並列に配置した構成を具備している。詳述すると、基板処理装置100、200、300それぞれは、一対のコンベア2から成るレーン4f、4bを2本並列に配置したデュアルレーン構造を備えている。これら2本のレーン4f、4bそれぞれは、X軸負方向の装置外部から受け取った基板SをX軸正方向に搬送して装置内の処理位置にまで移動させた後、当該処理位置で処理を受けた基板SをX軸正方向に搬送して装置外部へと搬出する。また、基板処理装置100、200、300間での基板Sの受け渡しを行うために、基板処理装置100、200、300間にも、2本のレーン4f、4bが並列配置されている。これら2本のレーン4f、4bそれぞれは、X軸正方向の上流側装置のレーン4f、4bから受け取った基板を、X軸正方向の下流側装置のレーン4f、4bへ受け渡すものである。こうして、X軸方向に直線状に並ぶ複数のレーン4fにより基板搬送系Cfが構成されるとともに、X軸方向に直線状に並ぶ複数のレーン4bにより基板搬送系Cbが構成されている。
このように、基板処理システム1では、2つの基板搬送系Cf、Cbが並列に配置されて、Y軸方向に並んでいる。これら基板搬送系Cf、Cbのそれぞれに対しては、例えば特開2007−088023号公報等に記載の基板供給機が複数の基板Sを順次供給し、基板搬送系Cf、Cbそれぞれは順次供給される基板Sを搬送する。そして、基板搬送系Cf、Cbに沿って並ぶ印刷機100、2台の実装機200およびリフロー炉300それぞれが、各基板搬送系Cf、Cbにより順次搬送される基板Sに対して所定の処理を実行する。
具体的には、印刷機100は、例えば特開2011−15122号公報に記載されているような構成を具備しており、各レーン4f、4bが所定の処理位置に搬送してきた基板Sに対して、半田ペーストを印刷するものである。また、実装機200は後述するように、各レーン4f、4bが所定の処理位置に搬送してきた印刷済みの基板Sに対して、部品を実装するものである。また、リフロー炉300は、各レーン4f、4bが所定の処理位置に搬送してきた部品実装済みの基板Sに対して、リフローを行うものである。
続いて、実装機200の構成について詳述する。図3は、実装機の概略構成を模式的に示す平面図である。同図に示すように、実装機200では、4本のコンベア2が互いに平行な状態でY軸方向に並んでいる。そして、Y軸正方向側の2本のコンベア2がレーン4bを構成するとともに、Y軸負方向側の2本のコンベア2がレーン4fを構成する。これら4本のコンベア2のうち、両外側の2つのコンベア2は固定された固定コンベアである一方、真ん中の2つのコンベア2はY軸方向に移動自在に構成された可動コンベアである。したがって、可動コンベア2をY軸方向に適宜移動させることで、レーン4f、4bを構成する2本のコンベア2のY軸方向への間隔を調整することができる。つまり、レーン4f、4bのそれぞれは、基板SのY軸方向への幅に応じて間隔が調整された2本のコンベア2によって、基板SのY軸方向の両端部を支持することができる。そして、これらレーン4f、4bそれぞれは、装置外部から受け取った基板Sを所定の処理位置Pf、Pbにまで搬送するとともに、当該処理位置Pf、Pbで後述のヘッドユニット5f、5bにより部品実装を受けた基板Sを装置外部へと搬出する。なお、図3に示すように、基板Sが部品実装を受ける各処理位置Pf、Pbは、Y軸方向に互いに隣接している。
これらレーン4f、4bのY軸方向の両側それぞれには、部品供給部6が2つずつ配置されている。各部品供給部6には、複数のテープフィーダー61が装着されている。テープフィーダー61のそれぞれでは、電子部品を一定ピッチで収納・保持したテープを巻き回したリール(図示省略)が取り付けられており、各テープフィーダー61による電子部品の供給が可能となっている。その結果、後述するヘッドユニット5f、5bによる電子部品のピックアップが可能となっている。
実装機200では、2つのレーン4f、4bに対応して2つのヘッドユニット5f、5bが設けられている。各ヘッドユニット5f、5bは、図示を省略する移動機構によってXY平面内を移動自在であるとともに、X軸方向に並ぶ3本の実装ヘッド51を保持している。この実装ヘッド51は、部品を吸着する吸着ノズル(図示省略)をその下端に取り付けたものである。そして、ヘッドユニット5f、5bは、吸着ノズルによってテープフィーダー61から部品をピックアップすると、処理位置Pf、Pbにある基板Sの上方にまで移動して、当該部品を基板Sに実装する。具体的には、ヘッドユニット5fは、図3下側のテープフィーダー61からピックアップした部品をレーン4fが処理位置Pfに搬送してきた基板Sに実装するとともに、ヘッドユニット5bは、図3下側のテープフィーダー61からピックアップした部品をレーン4bが処理位置Pbに搬送してきた基板Sに実装する。
また、ヘッドユニット5f、5bそれぞれには、カメラ52が取り付けられている。このカメラ52は、基板S上のバッドマークMbやフィデューシャルマークMfを撮像するためのものである。つまり、基板Sが処理位置Pf、Pbに搬送されてくると、ヘッドユニット5f、5bのそれぞれは部品実装に先立って、部品実装対象となる基板Sの上方へ移動して、当該基板Sの各マークMb、Mfの上方にカメラ52を位置させる。そして、この状態で、カメラ52が各マークMb、Mfを撮像する。なお、各マークMb、Mfの撮像結果は、実装機200が備える制御部210(図1)によって処理される。具体的には、この制御部210は、バッドマークMbの撮像結果に基づいて基板Sの良否を判定して、当該基板への部品実装を実行するか否かを判断するとともに、フィデューシャルマークMfの撮像結果に基づいてヘッドユニット5f、5bと基板Sとの相対位置関係を割り出し、部品実装時におけるヘッドユニット5f、5bの位置を制御する。
ちなみに、上述の部品実装処理やマーク撮像処理に際しては、各基板Sはそれぞれの処理位置Pf、Pbに、図示を省略する固定手段によって固定されている。つまり、処理位置Pf、Pbに搬送されてきた各基板Sは、固定手段によって位置固定された状態で、部品実装処理やマーク撮像処理を受ける。そして、これらの処理が完了すると、基板Sは位置固定が解かれて、処理位置Pf、Pbから装置外部に向けて搬送される。
このように、実装機200では、2つのヘッドユニット5f、5bそれぞれが、Y軸方向に隣接して並ぶ基板Sに対して、マークMb、Mfの撮像や部品実装等の一連の処理を並行して行う。ただし、2つのヘッドユニット5f、5bが基板Sへの一連の処理を並行して行う構成では、ヘッドユニット5f、5bが接近して、相互に干渉してしまうおそれがある。そこで、実装機200の制御部210は、ヘッドユニット5f、5bが相互干渉する可能性のある領域に排他領域を設定し、当該排他領域に2つのヘッドユニット5f、5bが同時進入することを禁止している。つまり、制御部210は、ヘッドユニット5f、5bのうち一方が排他領域に進入している間は他方を排他領域から退避させることで、ヘッドユニット5f、5bの干渉を回避している。
しかしながら、このようなヘッドユニット5f、5bの退避動作は、スループットの低下の要因となる。しかも、基板搬送系Cf、Cbに供給される基板Sの品種は一品種とは限らず、複数品種の基板Sが基板搬送系Cf、Cbに供給されうる。このような場合、基板搬送系Cf、Cbが搬送する基板Sの品種に応じて、ヘッドユニット5f、5bの処理内容が異なり、ヘッドユニット5f、5bの移動経路も変わる。したがって、ヘッドユニット5f、5bが退避動作を行う必要があるか否かは、各ヘッドユニット5f、5bが処理を行う基板Sそれぞれの品種に影響されることとなる。よって、異なる品種を含む複数の基板Sを各基板搬送系Cf、Cbに供給する場合、各基板搬送系Cf、Cbへの基板Sの供給順序が不適切であると、各ヘッドユニット5f、5bの退避動作が多発して、スループットが低下するおそれがあった。そこで、この実施形態では、基板搬送系Cf、Cbそれぞれに基板Sを供給する順序を適切化している。
図4は、基板供給順序の決定フローを示すフローチャートである。図5は、図4の基板供給順序の決定フローのサブルーチンを示すフローチャートである。また、図6は、図4および図5のフローチャートで参照される情報を表として示す図である。図4および図5に示すフローチャートは記録媒体410にプログラム420として記録されており、ホストコンピューター400が記録媒体410からプログラム420を読み出して図4、図5に示すフローチャートを実行する。以下では、7品種A〜G(図6)の基板Sを基板処理システム1で生産する場合を例示して説明する。
基板供給順序決定フローが開始されると、ステップS10で、各基板処理装置100、200、300の制約に関する情報が取得される。この情報は、各基板処理装置100、200、300が処理可能な基板Sの品種を示す情報であり、基板処理装置100、200、300の制御部110、210、310に記憶されている。そこで、ホストコンピューター400は、この情報を各制御部110、210、310から取得する。また、ステップS11では、このように取得された情報に基づいて、処理を実行可能な基板搬送系Cf、Cbを基板品種A〜G毎に判断する。その結果、図6の表に示す例では、品種Dの基板Sは、基板搬送系Cfでの生産が不可であり、基板搬送系Cbでのみ生産が可能であると判断される。また、その他の品種の基板Sは、基板搬送系Cf、Cbのいずれでも生産可能と判断されている。
続くステップS12では、基板品種A〜G毎の生産枚数、各基板品種A〜G毎のサイクルタイム、および段取り時間に関する情報が取得される。これらの情報は、作業者によって入力機器440を介してホストコンピューター400に予め入力されてメモリー402に記憶されており、ステップS12において、ホストコンピューター400がメモリー402からこれらの情報を読み出す。ちなみに、サイクルタイムとは、1枚の基板Sを基板処理システム1によって生産するのに要する予想時間である。図6の表に示す例では、基板品種A〜Gの基板Sを、基板搬送系Cf、Cbそれぞれで生産した場合のサイクルタイムが記載されている。また、段取り時間とは、基板品種の変更のために作業者が実行する、印刷機100のマスクの交換や、実装機200の部品供給部6の部品交換に要する予想時間である。図6の表に示す例では、段取り時間は一律900[秒]に設定されている。この際、複数の基板品種に対応する部品を予め部品供給部6にセットしておけば、基板品種が変わる度に部品供給部6に部品をセットし直す必要が無くなり、実装機200の部品供給部6の部品交換に要する時間を短縮あるいは省略することができる。
次のステップS13では、ホストコンピューター400は、トータル予想生産時間が各基板搬送系Cf、Cbで平準化するように、各基板搬送系Cf、Cbで生産する基板品種を割り当てる。ここで、トータル予想生産時間は、各基板搬送系Cf、Cbがそれぞれに割り当てられた基板品種の基板Sを全て生産し終えるのに要する時間である。図6の表に示す例を用いて、ステップS13での動作を具体的に説明すると次のとおりである。
つまり、基板Sのサイクルタイムに当該基板Sの生産枚数を乗じた値が基板品種A〜G毎に基板搬送系Cf、Cbそれぞれについて求められて、基板品種毎の予想生産時間としてメモリー402に記憶される。そして、このメモリー402に記憶された値に基づいて、基板搬送系Cf、Cbそれぞれについて、割り当てられた各基板品種の予想生産時間の合計と段取り時間の合計とを合算したトータル予想生産時間が算出される。詳しくは、基板搬送系Cf、Cbそれぞれに割り当てる基板品種を変えながら、基板搬送系Cf、Cbそれぞれでのトータル予想生産時間が算出されて、基板搬送系Cf、Cbの間でトータル予想生産時間の差が最小となる基板品種の割り当てが求められる。
こうして、ステップS13で、基板搬送系Cf、Cbそれぞれへの基板品種の割り当てが決まると、この割り当てられた品種の基板Sを基板搬送系Cf、Cbそれぞれへ供給する順番を決定するために、ステップS14〜S19が実行される。以下では、ステップS13において、基板搬送系Cfに基板品種B、C、E、Gが割り当てられるとともに、基板搬送系Cbに基板品種A、D、Fが割り当てられたとして、説明を行う。
ステップS14では、基板搬送系Cfへの基板搬送順序と基板搬送系Cbへの基板搬送順序の複数(n個)の組み合わせC(1)、C(2)、…、C(n)が生成される。これについて図7を用いて具体的に説明すると次のとおりである。ここで、図7は、各基板搬送系への基板搬送順序の組み合わせを説明する図であり、図4のステップS14で求められる複数の組み合わせのうちの1つを例示したものである。具体的には、図7では、基板搬送系Cfへ基板品種E、B、C、Gの順で基板Sを搬送するとともに、基板搬送系Cbへ基板品種A、D、Fの順で基板Sを搬送する組み合わせが例示されており、また、基板品種の切換時に行われる段取り作業も加味して示されている。ステップS14では、図7に示すような基板搬送系Cf、Cbそれぞれへ基板Sを供給する順序を、同じ基板搬送系に割り当てられた異なる基板品種の間で相互に入れ換えて(例えば、基板搬送系Cfに割り当てられた基板品種E、Bの搬送順序を入れ換える等して)、複数の組み合わせが形成される。そして、ステップS14では、こうして形成される全ての組み合わせC(i)が求められる。ここで「i」は1〜nの正の整数とする。
そして、ステップS15において、「i」に「1」が代入された後に、ステップS16に進む。このステップS16では、組み合わせC(i)が示す順序で基板Sを搬送した場合に、ヘッドユニット5f、5bの退避動作が発生する基板品種のペアの数が求められる。具体的には、ステップS16では、ヘッドユニット5f、5bが一連の処理(マーク認識処理、部品実装処理)を並行して基板Sに行うと、ヘッドユニット5f、5bの退避動作が発生するか否かが、基板品種のペア毎に判断される。かかる動作について、図8を参照しつつ説明する。ここで、図8は、ヘッドユニットの退避動作を説明するために、実装機の構成を部分的に示した平面図である。
ステップS16では、まず、各ヘッドユニット5f、5bが相手のヘッドユニット5b、5f側に最も接近するラインV1、V2が求められる。詳述すると、基板Sへの一連の処理を実行する間にY軸正方向に最も寄ったヘッドユニット5fのY軸正方向側面53fを通ってY軸方向に垂直なラインV1が求められる。また、基板Sへの一連の処理を実行する間にY軸負方向に最も寄ったヘッドユニット5bのY軸負方向側面53bを通ってY軸方向に垂直なラインV2が求められる。さらに、これらラインV1、V2からY軸正・負方向にそれぞれマージン距離mg1、mg2だけ離れてY軸方向に垂直なラインU1、U2が求められる。つまり、このラインU1、U2は、ヘッドユニット5f、5bの移動範囲にマージンmg1、mg2を加味した範囲(マージン付き移動範囲)の境界を示すものである。
そして、ラインU1がラインU2よりもヘッドユニット5b側にある場合(換言すれば、ラインU2がラインU1よりもヘッドユニット5f側にある場合)には、ヘッドユニット5f、5bのマージン付き移動範囲が互いに重複して、ヘッドユニット5f、5bの干渉が発生するおそれがある。したがって、この場合は、マージン付き移動範囲が互いに重複する範囲、すなわちラインU1、U2の間の範囲に対するヘッドユニット5f、5bの同時進入を禁止する必要がある。そこで、このラインU1、U2の間が排他領域Reとして設定されて、ヘッドユニット5f、5bが排他領域Reから退避する退避動作が発生すると判断される。一方、ラインU1がラインU2よりもヘッドユニット5f側にある場合(換言すれば、ラインU2がラインU1よりもヘッドユニット5b側にある場合)には、ヘッドユニット5f、5bのマージン付き移動範囲は互いに重複しないため、ヘッドユニット5f、5bが排他領域Reから退避する退避動作は発生しないと判断される。
そして、上述のような退避動作の発生の有無は、ヘッドユニット5f、5bから一連の処理が並行して行われる基板品種のペア毎に判断される。例えば、図7で示した組み合わせの示す順序で基板Sを搬送した場合には、図9の表に示すような判断結果が得られる。ここで、図9は、ヘッドユニットの退避動作の発生の有無を基板品種のペア毎に判断した結果の一例を表として示す図である。図7で示した組み合わせの示す順序で基板Sを搬送した場合に、一連の処理が並行して行われる基板品種のペアは、品種Eと品種A(ペア1)、品種Bと品種D(ペア2)、品種Cと品種D(ペア3)、品種Fと品種G(ペア4)の4つある。図9では、これら4つのペア1〜4それぞれについて、ヘッドユニット5f、5bによる退避動作の発生の有無を求めたところ、2つのペア(ペア1、ペア4)について退避動作が発生すると判断された結果が示されている。
ちなみに、この実施形態では、2つの実装機200が存在するが、注目するペアを構成する基板Sに処理を行った場合にいずれの実装機200においてもヘッドユニット5f、5bの退避動作が発生しないと判断される場合に、当該ペアについては退避動作が発生しないと判断される。したがって、いずれか1つの実装機200においてヘッドユニット5f、5bの退避動作が発生すると判断される場合には、当該ペアについては退避動作が発生すると判断される。
このように、ステップS16では、組み合わせC(i)の示す順序で基板Sを搬送した場合に、ヘッドユニット5f、5bから一連の処理が並行して行われる基板品種のペア毎に、ヘッドユニット5f、5bの退避動作の発生の有無が判断される。こうして、ヘッドユニット5f、5bの退避動作が発生する基板品種のペア数が求められる。続くステップS17では、ステップS16で求めたペア数が「0」か否かが判断され、「0」の場合(ステップS17で「YES」の場合)は、ステップS21に進むとともに、「0」で無い場合(ステップS17で「NO」の場合)は、ステップS18に進む。
ステップS18では、ステップS16でペア数を求めた組み合わせC(i)と、この組み合わせC(i)のペア数とが対応付けられて、メモリー402に記憶される。続く、ステップS19では、変数「i」が「1」だけインクリメントされて、ステップS20に進む。そして、ステップS20では、変数「i」が組み合わせC(i)の総数「n」より大きいか否かが判断され、大きい場合(ステップS20で「YES」の場合)はステップS21に進む。一方、大きく無い場合(ステップS20で「NO」の場合)は、ステップS16に進んで、上述と同様にして、組み合わせC(i)が示す順序で基板Sを搬送した場合に、ヘッドユニット5f、5bの退避動作が発生する基板品種のペアの数が求められる。
こうして、ペア数が「0」となる組み合わせC(i)が見つかるまで、ステップS16〜S20のループを繰り返し実行して、見つかった場合はステップS21に進む。また、ペア数が「0」となる組み合わせC(i)が見つからない場合は、全ての組み合わせC(1)、C(2)、…、C(n)についてペア数を求めた後にステップS21に進む。
ステップS21では、ステップS16〜S20で求めた結果に基づいて、複数の組み合わせC(i)の中から基板搬送系Cf、Cbに基板Sを供給する順序を選定するために、図5のサブルーチンが実行される。続いて、このサブルーチンについて説明する。ステップS31では、ペア数が「0」となる組み合わせC(i)が存在したか否かが判断される。そして、ペア数が「0」となる組み合わせC(i)が存在する場合(ステップS31で「YES」の場合)は、ペア数が「0」となる組み合わせC(i)が示す順序で基板搬送系Cf、Cbに基板Sを供給すると決定し(ステップS32)、ステップS34へと進む。一方、ペア数が「0」となる組み合わせC(i)が存在しない場合(ステップS31で「NO」の場合)は、ペア数が最小となる組み合わせC(i)が示す順序で基板搬送系Cf、Cbに基板Sを供給すると決定し(ステップS33)、ステップS34へと進む。
そして、ステップS34では、ステップS32あるいはステップS33で決定された基板供給順序がホストコンピューター400のディスプレイ430に表示される。したがって、作業者は、ディスプレイ430の表示結果に基づいて、決定された基板供給順序で基板Sが搬送されるように適切に段取りを行うことができる。
以上に説明したように、この実施形態では、基板Sを順次搬送する基板搬送系Cf、Cbが並列に配置されるとともに、これら基板搬送系Cf、Cbにより搬送される基板Sへ部品実装処理を行うヘッドユニット5f、5bが備えられている。この際、ヘッドユニット5f、5bのそれぞれは、処理対象の基板Sの品種に応じた処理を行うために、処理対象の基板Sの品種に応じた経路を移動しつつ基板Sへの処理を実行する。したがって、状況によっては、ヘッドユニット5f、5bの相互干渉を回避する必要が発生する。そこで、相互干渉を回避するためにヘッドユニット5f、5bの同時進入が禁止された排他領域Reに、ヘッドユニット5f、5bのうち一方が進入している間は他方が排他領域Reから退避する。こうして、ヘッドユニット5f、5bの干渉の回避が図られている。ただし、このようなヘッドユニット5f、5bの退避動作が多発すると、スループットの低下が引き起こされるおそれがある。
そこで、この実施形態では、ヘッドユニット5f、5bの退避動作の発生を抑えるべく、基板搬送系Cf、Cbへの基板Sの搬送順序を次のようにして適切化している。まず、異なる品種を含む複数の基板Sの基板搬送系Cfへの搬送順序と、異なる品種を含む複数の基板の基板搬送系Cbへの搬送順序との組み合わせC(i)が複数生成される。つまり、基板搬送系Cf、Cbへの基板Sの搬送順序の候補として、これら複数の組み合わせC(i)が生成される。続いて、組み合わせC(i)が示す順序で基板搬送系Cf、Cbそれぞれに基板Sを搬送した場合に、ヘッドユニット5f、5bの排他領域Reからの退避動作が発生するか否かが判断される。そして、こうして退避動作の発生の有無を判断した結果に基づいて、複数の組み合わせC(i)の中から、基板搬送系Cf、Cbに基板Sを搬送する順序が選定される。このように、この実施形態では、候補としての複数の組み合わせC(i)を生成するとともに、ヘッドユニット5f、5bの排他領域Reからの退避動作が発生するか否かをこの組み合わせC(i)について判断する。そして、この判断結果に基づいて、基板搬送系Cf、Cbに基板Sを搬送する順序が選定され、これによって各基板搬送系Cf、Cbへの基板Sの搬送順序が適切化される。したがって、ヘッドユニット5f、5bの退避動作の発生を抑制することが可能となり、スループットの向上を図ることができる。
また、この実施形態では、退避動作が発生しないと判断される組み合わせC(i)がある場合は、退避動作が発生しないと判断される組み合わせC(i)が、基板搬送系Cf、Cbに基板Sを搬送する順序として選定される。これによって、ヘッドユニット5f、5bの退避動作の発生を抑制してスループットの向上を図ることが、より効果的に実現可能となる。
また、この実施形態では、退避動作が発生しないと判断される組み合わせC(i)が無い場合は、ヘッドユニット5f、5bが処理を行うにあたって退避動作が発生すると判断される基板Sの品種のペアの数が各組み合わせC(i)について求められる。そして、こうして各組み合わせC(i)についてペア数を求めた結果に基づいて、複数の組み合わせC(i)の中から、ヘッドユニット5f、5bに基板Sを搬送する順序が選定される。つまり、ヘッドユニット5f、5bが処理を行うにあたって退避動作が発生する基板Sの品種のペアの数は、ヘッドユニット5f、5bの退避動作の発生回数と相関がある。したがって、このペア数を求めた結果に基づいて、基板搬送系Cf、Cbに基板Sを搬送する順序を選定することで、退避動作が発生しないと判断される組み合わせが無い場合であっても、ヘッドユニット5f、5bの退避動作の発生を抑制してスループットの向上を図ることができる。
さらに、この実施形態では、ペア数を求めた各組み合わせC(i)のうち、ペア数が最小となる組み合わせC(i)が、ヘッドユニット5f、5bに基板Sを搬送する順序として選定される。これによって、ヘッドユニット5f、5bの退避動作の発生を抑制してスループットの向上を図ることが、より効果的に実現可能となっている。
また、この実施形態では、基板搬送系Cf、Cbに基板Sを供給する順序として決定した組み合わせC(i)を表示するディスプレイ430を備えている。このようなディスプレイ430を備えることで、作業者は選定された組み合わせC(i)を確認して、段取り作業を適切に実行することが可能となっている。
ところで、図3に示したように、一対のコンベア2から成るレーン4f、4bを2つ並列に配置したデュアルレーン構造において、レーン4f、4bが隣接する部分に配置されたコンベア2を可動コンベア2とした構成では、各レーン4f、4bに搬送される基板Sの幅が大きいと、レーン4f、4bの可動コンベア2が近接することとなり、その結果、レーン4f、4bに搬送される基板Sの間隔が狭くなる。そのため、ヘッドユニット5f、5bの退避動作が多発する傾向にある。一方、この実施形態では、本発明が適用されているため、デュアルレーン構造において、レーン4f、4bが隣接する部分に配置されたコンベア2を可動コンベア2とした構成にもかかわらず、ヘッドユニット5f、5bの退避動作の発生を抑制してスループットの向上が可能となっている。
第2実施形態
次に、第2実施形態について説明を行う。なお、第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、図4のステップS21の組み合わせの選定フローにあるので、以下では主としてこの差異部分について説明を行ない、共通部分については説明を適宜省略する。ただし、第1実施形態と共通する構成を備えることで、第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が奏されることは言うまでも無い。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、図4に示すステップS16〜S20で求めた結果に基づいて基板供給順序を決定するために、ステップS21で基板供給順序が選定される。ただし、第2実施形態のステップS21では、図10に示すフローが実行される。ここで、図10は、図4のステップS21の組み合わせの選定フローの変形例を示すフローチャートである。なお、図10に示すフローチャートは記録媒体410にプログラム420として記録されており、ホストコンピューター400が記録媒体410からプログラム420を読み出して図10に示すフローチャートを実行する。
図10に示すように、ステップS41では、ステップS16〜S20で求めた結果から、ペア数が「0」となる組み合わせC(i)が存在したか否かが判断される。そして、ペア数が「0」となる組み合わせC(i)が存在する場合(ステップS41で「YES」の場合)は、ペア数が「0」となる組み合わせC(i)が示す順序で基板搬送系Cf、Cbに基板Sを供給すると決定し(ステップS42)、ステップS46へ進む。一方、ペア数が「0」となる組み合わせC(i)が存在しない場合(ステップS41で「NO」の場合)は、ステップS43に進んで、ペア数が最小となる組み合わせC(i)が複数存在するか否かが判断される。
ペア数が最小となる組み合わせC(i)が1つのみである場合(ステップS43で「NO」の場合)は、ペア数が最小となるこの組み合わせC(i)が示す順序で基板搬送系Cf、Cbに基板Sを供給すると決定し(ステップS44)、ステップS46へ進む。一方、ペア数が最小となる組み合わせC(i)が複数ある場合(ステップS43で「YES」の場合)は、排他領域Reと基板Sとの重複度合いに基づいて、ペア数が最小となる複数の組み合わせC(i)から基板供給順序を決定する(ステップS45)。この動作について、図8および図11を参照しつつ説明する。なお、図11は、排他領域と基板との重複度合いに基づいて基板供給順序を決定するにあたって参照される情報を表として示した図である。
ステップS45では、排他領域Reと基板Sとの重複領域Ro1、Ro2(図8)のサイズが求められる。なお、重複領域Ro1、Ro2のサイズとは、重複領域Ro1、Ro2のY軸方向への幅、X軸方向への長さ、および面積を含む概念であるが、ここでは、重複領域Ro1、Ro2のサイズとして重複領域Ro1、Ro2の幅L1、L2が求められる。図11を用いて具体的に説明すると次のとおりである。
図11の例では、ペア数が最小(2個)となる組み合わせとして2つの組み合わせC(k)、C(l)が存在する。ステップS45では、一方の組み合わせC(k)について、ペアを構成する2品種の基板Sそれぞれと排他領域Reとの重複領域Ro1、Ro2の幅L1、L2がペア毎に求められて、これらの幅の合算値(=65[mm])が算出される。同様にして、他方の組み合わせC(k)についても、ペアを構成する2品種の基板Sと排他領域Reとの重複領域Ro1、Ro2の幅L1、L2とがペア毎に求められて、合算される(ちなみに、合算値は90[mm]となっている)。そして、こうして求まる重複幅L1、L2の合算値が最小となる組み合わせC(k)
が示す順序で基板搬送系Cf、Cbに基板Sを供給すると決定し(ステップS45)、ステップS46に進む。
ステップS46では、ステップS42、ステップS44あるいはステップS45で決定された基板供給順序がホストコンピューター400のディスプレイ430に表示される。したがって、作業者は、ディスプレイ430の表示結果に基づいて、決定された基板供給順序で基板Sが搬送されるように適切に段取りを行うことができる。
以上に説明したように、第2実施形態においても、基板搬送系Cfへの基板Sの搬送順序と基板搬送系Cbへの基板Sの搬送順序との組み合わせC(i)が複数生成される。そして、組み合わせC(i)が示す順序で基板搬送系Cf、Cbそれぞれに基板Sを搬送した場合に、ヘッドユニット5f、5bの排他領域Reからの退避動作が発生するか否かを判断した結果に基づいて、複数の組み合わせC(i)の中から、基板搬送系Cf、Cbに基板Sを搬送する順序が選定される。これによって各基板搬送系Cf、Cbへの基板Sの搬送順序が適切化されて、ヘッドユニット5f、5bの退避動作の発生を抑制することが可能となり、スループットの向上を図ることができる。
また、この実施形態では、ペアの数が最小となる組み合わせが複数ある場合は、ペアを形成する基板Sと排他領域Reとの重複範囲のサイズに基づいて、ペアの数が最小となる組み合わせから、基板搬送系Cf、Cbに基板Sを搬送する順序を選定している。
具体的には、ペアの数が最小となる組み合わせC(k)、C(l)のうち、重複範囲Ro1、Ro2の幅L1、L2をペアについて求めて合算した値が最小となる組み合わせC(k)が、基板搬送系Cf、Cbに基板Sを搬送する順序として選定される。これによって、ヘッドユニット5f、5bの退避動作の発生を抑制してスループットの向上を図ることが、より適切に実現可能となる。
ちなみに、上記実施形態では、重複範囲Ro1、Ro2のサイズとして、重複範囲Ro1、Ro2の幅が求められていた。しかしながら、重複範囲Ro1、Ro2のサイズとして、重複範囲Ro1、Ro2の面積を求めてもよい。具体的には、ペアの数が最小となる組み合わせC(k)、C(l)のうち、重複範囲Ro1、Ro2の面積をペアについて求めて合算した値が最小となる組み合わせC(k)を、基板搬送系Cf、Cbに基板Sを搬送する順序として選定しても良い。これによっても、ヘッドユニット5f、5bの退避動作の発生を抑制してスループットの向上を図ることが、より適切に実現可能となる。
第3実施形態
次に、第3実施形態について説明を行う。なお、第3実施形態が第1実施形態と異なる点は、図4のステップS21の組み合わせの選定フローにあるので、以下では主としてこの差異部分について説明を行ない、共通部分については説明を適宜省略する。ただし、第1実施形態と共通する構成を備えることで、第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が奏されることは言うまでも無い。
第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、図4に示すステップS16〜S20で求めた結果に基づいて基板供給順序を決定するために、ステップS21で基板供給順序が選定される。ただし、第3実施形態のステップS21では、図12に示すフローが実行される。ここで、図12は、図4のステップS21の組み合わせの選定フローの別の変形例を示すフローチャートである。なお、図12に示すフローチャートは記録媒体410にプログラム420として記録されており、ホストコンピューター400が記録媒体410からプログラム420を読み出して図12に示すフローチャートを実行する。
図12に示すように、ステップS51では、ステップS16〜S20で求めた結果から、ペア数が「0」となる組み合わせC(i)が存在したか否かが判断される。そして、ペア数が「0」となる組み合わせC(i)が存在する場合(ステップS51で「YES」の場合)は、ペア数が「0」となる組み合わせC(i)が示す順序で基板搬送系Cf、Cbに基板Sを供給すると決定し(ステップS52)、ステップS56へ進む。一方、ペア数が「0」となる組み合わせC(i)が存在しない場合(ステップS51で「NO」の場合)は、ステップS53に進んで、ペア数が最小となる組み合わせC(i)が複数存在するか否かが判断される。
ペア数が最小となる組み合わせC(i)が1つのみである場合(ステップS53で「NO」の場合)は、ペア数が最小となるこの組み合わせC(i)が示す順序で基板搬送系Cf、Cbに基板Sを供給すると決定し(ステップS54)、ステップS56へ進む。一方、ペア数が最小となる組み合わせC(i)が複数ある場合(ステップS53で「YES」の場合)は、排他領域Reでの処理回数に基づいて(換言すれば、基板Sの排他領域Reにおける部位に対してヘッドユニット5f、5bが処理を行う回数に基づいて)、ペア数が最小となる複数の組み合わせC(i)から基板供給順序を決定する(ステップS55)。この動作について、図8および図13を参照しつつ説明する。なお、図13は、排他領域での処理回数に基づいて基板供給順序を決定するにあたって参照される情報を表として示した図である。
ステップS55では、ヘッドユニット5f、5bが排他領域Reに進入した状態で基板Sに処理を行う回数が、ペア数が最小となる複数の組み合わせC(i)それぞれについて求められる。ここで、ヘッドユニット5f、5bが基板Sに行う処理には、部品実装処理以外にマークMf、Mbの撮像処理が含まれる。図13の例では、ペア数が最小(2個)となる組み合わせとして2つの組み合わせC(k)、C(l)が存在する。したがって、ステップS55では、排他領域Reでの処理回数をペア毎に算出したものの合算値を、組み合わせC(k)、C(l)それぞれについて求める(図13の例では、組み合わせC(k)の合算値は35回で、組み合わせClk)の合算値は50回となっている)。そして、排他領域Reでの処理回数の合算値が最小となる組み合わせC(k) が示す順序で基板搬送系Cf、Cbに基板Sを供給すると決定し(ステップS55)、ステップS56に進む。
ステップS56では、ステップS52、ステップS54あるいはステップS55で決定された基板供給順序がホストコンピューター400のディスプレイ430に表示される。したがって、作業者は、ディスプレイ430の表示結果に基づいて、決定された基板供給順序で基板Sが搬送されるように適切に段取りを行うことができる。
以上に説明したように、第3実施形態においても、基板搬送系Cfへの基板Sの搬送順序と基板搬送系Cbへの基板Sの搬送順序との組み合わせC(i)が複数生成される。そして、組み合わせC(i)が示す順序で基板搬送系Cf、Cbそれぞれに基板Sを搬送した場合に、ヘッドユニット5f、5bの排他領域Reからの退避動作が発生するか否かを判断した結果に基づいて、複数の組み合わせC(i)の中から、基板搬送系Cf、Cbに基板Sを搬送する順序が選定される。これによって各基板搬送系Cf、Cbへの基板Sの搬送順序が適切化されて、ヘッドユニット5f、5bの退避動作の発生を抑制することが可能となり、スループットの向上を図ることができる。
また、この実施形態では、ペアの数が最小となる組み合わせC(k)、C(l)のうち、排他領域Reで処理が実行される回数が最小となる組み合わせC(k)を、基板搬送系Cf、Cbに基板Sを搬送する順序としている。これによって、ヘッドユニット5f、5bの退避動作の発生を抑制してスループットの向上を図ることが、より適切に実現可能となっている。
第4実施形態
次に、第4実施形態について説明を行う。なお、第4実施形態が第1実施形態と異なる点は基板供給順の決定フローにあるので、以下では主としてこの差異部分について説明を行ない、共通部分については説明を適宜省略する。ただし、第1実施形態と共通する構成を備えることで、第4実施形態においても第1実施形態と同様の効果が奏されることは言うまでも無い。
図14は、基板供給順序の決定フローの変形例を示すフローチャートである。なお、図14に示すフローチャートは記録媒体410にプログラム420として記録されており、ホストコンピューター400が記録媒体410からプログラム420を読み出して図14に示すフローチャートを実行する。図14のステップS60〜S65は、上述した図4のステップS10〜S15と同様であるので説明を省略する。第4実施形態では、ステップS60〜S65を実行した後に、ステップS66において、組み合わせC(i)で基板Sを搬送した場合に、ヘッドユニット5f、5bの退避動作が発生する時間が予測される。この動作について、図15を用いて説明する。
図15は、ヘッドユニットの退避動作が発生する時間を予測する動作の説明図である。図15では、横軸に時間軸が示されるとともに、縦軸にヘッドユニット5f、5bのY軸方向への位置が示されている。ここで、ヘッドユニット5f、5bの位置とは、ヘッドユニット5f、5bのY軸正・負方向側の側面53f、53b(図8)の位置とする。
ステップS66では、組み合わせC(i)が示す順序で基板Sを基板搬送系Cf、Cbに搬送した場合に、ヘッドユニット5bがY軸方向への移動する軌跡(図15の一点鎖線)と、ヘッドユニット5fがY軸方向へ移動する軌跡(図15の二点鎖線)とが、シミュレーションによって求められる。なお、このシミュレーションでは、ヘッドユニット5f、5bの相互干渉を考慮すること無く、ヘッドユニット5f、5bそれぞれの軌跡が独立して求められる。その上で、ヘッドユニット5f、5bそれぞれの軌跡が交差する領域がある場合は、当該領域でのヘッドユニット5f、5bの相互干渉を避けるために、排他領域Reが設定されて、ヘッドユニット5f、5bの退避動作が発生すると判断される。そして、この退避動作の発生時間t1、t2の合計値が算出される。なお、この実施形態では2つの実装機200が存在するため、実装機200それぞれについて退避動作の発生時間が求められて、それらの合計値がトータルの退避動作時間の予測値として求められる。また、いずれの実装機200においても退避動作が発生しない場合は、トータルの退避動作時間の予測値は「0」と算出される。
そして、ステップS67では、ステップS66で求めた、組み合わせC(i)が示す順序で基板Sを搬送した場合のトータルの退避動作時間の予測値が、組み合わせC(i)と対応付けられてメモリー402に記憶される。続く、ステップS68では、変数「i」が「1」だけインクリメントされて、ステップS69に進む。そして、ステップS69では、変数「i」が組み合わせC(i)の総数「n」より大きいか否かが判断され、大きい場合(ステップS69で「YES」の場合)はステップS70に進む。一方、大きく無い場合(ステップS69で「NO」の場合)は、ステップS66に進んで、上述と同様にして、組み合わせC(i)が示す順序で基板Sを搬送した場合におけるトータルの退避動作時間の予測値が求められる。
こうして、全ての組み合わせC(1)、C(2)、…、C(n)についてトータルの退避動作時間の予測値を求めた後にステップS70に進む。そして、ステップS70では、トータルの退避動作時間が最小となる組み合わせC (i)が示す順序で基板搬送系Cf、Cbに基板Sを供給すると決定する。
その結果、いずれの実装機200においても退避動作が発生しない組み合わせC(i)が存在する場合は、トータルの退避動作時間「ゼロ」となる当該組み合わせC(i)が、基板搬送系Cf、Cbに基板Sを供給する順序に決定される。一方、いずれの実装機200においても退避動作が発生しない組み合わせC(i)が存在しない場合は、トータルの退避動作時間が最短となる組み合わせC(i)が、基板搬送系Cf、Cbに基板Sを供給する順序に決定される。このようにして、第4実施形態においても、組み合わせC(i)が示す順序で基板搬送系Cf、Cbそれぞれに基板Sを搬送した場合に、ヘッドユニット5f、5bの排他領域Reからの退避動作が発生するか否かが実質的に判断されている。そして、この判断結果に基づいて、基板搬送系Cf、Cbに基板Sを搬送する順序が選定されている。
続く、ステップS71では、ステップS70で決定された基板供給順序がホストコンピューター400のディスプレイ430に表示される。したがって、作業者は、ディスプレイ430の表示結果に基づいて、決定された基板供給順序で基板Sが搬送されるように適切に段取りを行うことができる。
以上説明したように、第4実施形態においても、基板搬送系Cfへの基板Sの搬送順序と基板搬送系Cbへの基板Sの搬送順序との組み合わせC(i)が複数生成される。そして、組み合わせC(i)が示す順序で基板搬送系Cf、Cbそれぞれに基板Sを搬送した場合に、ヘッドユニット5f、5bの排他領域Reからの退避動作が発生するか否かを判断した結果に基づいて、複数の組み合わせC(i)の中から、基板搬送系Cf、Cbに基板Sを搬送する順序が選定される。これによって各基板搬送系Cf、Cbへの基板Sの搬送順序が適切化されて、ヘッドユニット5f、5bの退避動作の発生を抑制することが可能となり、スループットの向上を図ることができる。
また、第4実施形態では、、退避動作が発生しないと判断される組み合わせC(i)が無い場合であっても、ヘッドユニット5f、5bそれぞれが排他領域Reから退避する時間の合計の予測値が各組み合わせC(i)について求められ、この予測値が最小となる組み合わせC(i)が、基板搬送系Cf、Cbに基板Sを搬送する順序として選定される。これによって、退避動作が発生しないと判断される組み合わせC(i)が無い場合であっても、ヘッドユニット5f、5bの退避動作の発生を抑制してスループットの向上を図ることができる。
また、第4実施形態では、ヘッドユニット5f、5bそれぞれの軌跡を求め、この結果に基づいて排他領域Reを設定している。このような構成では、、図15に示すように、排他領域Reは常に設定されるわけではなく、ヘッドユニット5f、5bが干渉するおそれがある時間t1、t2の間のみ設定される。さらには、排他領域Reの設定位置や設定範囲も動的に変化しうる。つまり、図15に示した例では、時間t1の間に設定される排他領域Reと、時間t2の間に設定される排他領域Reとは、Y軸方向における位置および範囲において異なっている。その結果、ヘッドユニット5f、5bの移動に応じて、排他領域Reを設定する時間、位置、範囲を適切に変更することができ、排他領域Reの設定を効率的に行うことが可能となっている。
第5実施形態
次に、第5実施形態について説明を行う。なお、第5実施形態は、ステップS66においてヘッドユニット5f、5bの移動軌跡を求めるシミュレーションの内容が異なる以外は、第4実施形態と同一である。したがって、以下では主としてこの差異部分について説明を行ない、共通部分については説明を適宜省略する。ただし、第4実施形態と共通する構成を備えることで、第5実施形態においても第4実施形態と同様の効果が奏されることは言うまでも無い。
図16は、ヘッドユニットの退避動作が発生する時間を予測する動作の変形例の説明図である。第5実施形態では、ステップS66において、組み合わせC(i)が示す順序で基板Sを基板搬送系Cf、Cbに搬送した場合に、ヘッドユニット5bがY軸方向への移動する軌跡(図16の二点鎖線)が求められる点は、第4実施形態と同様である。ただし、第5実施形態のステップS66では、ヘッドユニット5bがY軸方向への移動する軌跡(図16の一点鎖線)については、所定の閾値Ythよりもヘッドユニット5bがY軸負方向側へ侵入した範囲Ta〜Tdでのみ求められる。
つまり、排他領域Reが設定されて、ヘッドユニット5f、5bの退避動作が発生するには、ヘッドユニット5f、5bとが相互に近接して干渉のおそれがあることが条件となる。したがって、退避動作の発生の有無を判断するには、ヘッドユニット5bがヘッドユニット5f側に近接している範囲(ここでは、閾値YthよりY軸負方向側の範囲)におけるヘッドユニット5fの移動軌跡を調べれば足りる。そこで、第5実施形態では、当該範囲でのみヘッドユニット5fの移動軌跡を求めることとしている。そして、こうして求められたヘッドユニット5f、5bの移動軌跡に基づいて、第4実施形態と同様にして、基板搬送系Cf、Cbに基板Sを供給する順序が決定される。
このように、第5実施形態では、ヘッドユニット5bの移動軌跡を求める範囲が限定されている。その結果、ヘッドユニット5bの移動軌跡の算出に要する時間を短縮することができるといった利点がある。
その他
上述したとおり、この実施形態では、基板処理システム1が本発明の「基板処理システム」に相当し、実装機200が本発明の「基板処理装置」に相当し、プログラム420が本発明の「プログラム」に相当し、記録媒体410が本発明の「記録媒体」に相当している。また、基板搬送系Cf、Cbが本発明の「第1および第2搬送部」に相当し、ヘッドユニット5f、5bが本発明の「第1および第2機能部」に相当し、ヘッドユニット5f、5bから本発明の「基板処理機構」が構成され、ホストコンピューター400が本発明の「選定部」に相当し、ディスプレイ430が本発明の「表示部」に相当し、実装ヘッド51が本発明の「実装ヘッド」に相当し、カメラ52が本発明の「カメラ」に相当している。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、実装ヘッド51を装備したヘッドユニット5f、5bを備えた実装機200を本発明の「基板処理装置」として備えた基板処理システム1に対して本発明を適用した場合について説明した。しかしながら、本発明の「基板処理装置」の具体的構成はこれに限られない。そこで、基板処理装置は、例えば、実装ヘッド51に代えて、接着剤等を基板に塗布するディスペンサーをヘッドユニット5f、5bに装備したものや、基板を検査するための検査カメラをヘッドユニット5f、5bに装備したものであっても良い。または、基板処理装置は、一方のヘッドユニット5fに実装ヘッド51を装備し、他方のヘッドユニット5bにディスペンサーあるいは検査カメラを装備するものであっても良い。
また、排他領域Reの設定態様も、上述のものに限られず種々の変形が採用可能である。例えば、図8に示す例では、マージンmg1、mg2を設けて排他領域Reを設定していたが、マージンmg1、mg2を設ける必要は必ずしもない。
あるいは、図17に示すような態様で排他領域Reを設定することもできる。ここで、図17は、排他領域の設定態様の変形例を説明するために、実装機の構成を部分的に示した平面図である。図17の変形例においても、ヘッドユニット5bが相手のヘッドユニット5f側に最も接近するラインV2が求められる点では、図8の例と同様である。ただし、図17の変形例では、ヘッドユニット5fが相手のヘッドユニット5b側に最も接近するラインV1は求められず、その代わりに、ヘッドユニット5fの処理対象である基板SのY軸正方向の端部からY軸正方向にマージンmg3だけ離れてY軸方向に垂直なラインV3が求められる。そして、ラインV2、V3の間の範囲が排他領域Reとして設定される。
そして、このように設定された排他領域Reに基づいて、ヘッドユニット5f、5bの退避動作の有無を判断して、上述と同様に、基板搬送系Cf、Cbへの基板搬送順序を決定することができる。これによって各基板搬送系Cf、Cbへの基板Sの搬送順序が適切化されて、ヘッドユニット5f、5bの退避動作の発生を抑制することが可能となり、スループットの向上を図ることが可能となる。
また、図17の例において、ラインV3の取り方は、基板Sの端面からでなくても良い。そこで、例えば、ヘッドユニット5fの処理対象である基板Sを搬送するコンベア2の端面21からラインV3を取るように変形することもできる。
また、上記第2実施形態では、ペア数が最小となる組み合わせのうちから、重複範囲Ro1、Ro2の幅(あるいは面積)をペアについて求めて合算した値が最小となる組み合わせを、基板搬送系Cf、Cbに基板Sを搬送する順序として選定している。しかしながら、ペア数が最小であるか否かに拘わらず、全組み合わせのなかから、重複範囲Ro1、Ro2の幅(あるいは面積)をペアについて求めて合算した値が最小となる組み合わせを、基板搬送系Cf、Cbに基板Sを搬送する順序として選定しても良い。
また、上記第3実施形態では、ペア数が最小となる組み合わせのうちから、排他領域Reでの処理回数が最小となる組み合わせを、基板搬送系Cf、Cbに基板Sを搬送する順序として選定している。しかしながら、ペア数が最小であるか否かに拘わらず、全組み合わせのなかから、排他領域Reでの処理回数が最小となる組み合わせを、基板搬送系Cf、Cbに基板Sを搬送する順序として選定しても良い。
また、上記第4・第5実施形態では、ヘッドユニット5f、5bそれぞれの軌跡を求め、この結果に基づいて排他領域Reを設定している。この際における排他領域Reの設定態様については、上述したもの以外に種々の変形が可能である。具体的には、ヘッドユニット5f、5bそれぞれの軌跡を求めた結果から、ヘッドユニット5f、5bの間の距離を求めて、この距離が所定値未満となる時間、位置、範囲に対して排他領域Reを設定するように構成しても良い。この場合にも、ヘッドユニット5f、5bの移動に応じて、排他領域Reを設定する時間、位置、範囲を適切に変更することができ、排他領域Reの設定を効率的に行うことが可能となる。
また、上記実施形態では、同じ品種の基板Sをひとかたまりにして基板搬送系Cf、Cbに供給していた。しかしながら、同じ品種の基板Sを他品種の基板Sの前後に例えば半分ずつに分けて、基板搬送系Cf、Cbに供給する構成に対しても本発明を適用可能である。
また、基板処理システム1や実装機200等の具体的構成についても種々の変形が可能である。したがって、例を挙げれば、実装機200の個数や、実装機200を構成する部材の個数等も変更可能である。さらには、基板品種の数や、基板Sの形状やサイズ、基板SにおけるフィデューシャルマークMfやバッドマークMbの位置や個数ついても、種々の変形が採用可能である。
また、上記実施形態では、レーン4f、4bの幅W4を可変にするために、各レーン4f、4bが隣接する部分に配置されたコンベア2(Y軸方向に並ぶ4本のコンベア2のうち真ん中の2本のコンベア2)を可動に構成した。しかしながら、レーン4f、4bの幅W4を可変ための構成はこれに限られず、種々の変形が可能である。そこで、例えば、レーン4f、4bそれぞれのY軸正方向側(あるいはY軸負方向側)のコンベア2を可動に構成したり、あるいはレーン4f、4bを構成する4本のコンベア2を全て可動に構成したりしても良い。
また、上記実施形態では、基板搬送系Cf、Cbはいずれも同じ方向(X軸正方向)に向けて基板Sを搬送していた。しかしながら、例えば、基板搬送系Cf、Cbが互いに逆方向(一方がX軸正方向で、他方がX軸負方向)に基板Sを搬送する基板処理システム1に対しても本発明を適用可能である。