関連出願に対する相互参照
本出願は2010年7月7日付けで出願した米国仮出願番号61/362,175の利点を請求するものである。
本開示はニトリルの製造方法に関する。より詳細には、本開示は、1,3−ブタジエンのヒドロシアン化で生じさせる3−ペンテンニトリルおよびアジポニトリルの化学的収率を向上させる目的で好ましくない反応生成物の蓄積が制限されるように改良した多反応ゾーン方法に関する。
アジポニトリル(ADN)は、フィルム、繊維および成形品の成形で用いるに有用なナイロンポリアミドを産業的に製造しようとする時に商業的に重要な多目的中間体である。ADNの製造は1,3−ブタジエン(BD)にヒドロシアン化を様々な燐含有配位子を含有して成る遷移金属錯体の存在下で受けさせることで実施可能である。例えば、ゼロ価のニッケルと単座燐含有配位子を含有して成る触媒は従来技術の中に充分に文書化されており、例えば特許文献1、2、3および4および非特許文献1などを参照のこと。また、ゼロ価のニッケルと特定の多座ホスファイト配位子を含有して成る触媒を用いることでエチレン系不飽和化合物のヒドロシアン化を改善することも開示されており、例えば特許文献5、6、7、8、9、10および11を参照のこと。
3−ペンテンニトリル(3PN)は、以下:
に例示する如き一連の反応を通して生じ得る。
本明細書で用いる省略形に従い、BDは1,3−ブタジエンであり、HC≡Nはシアン化水素でありそして2M3BNは2−メチル−3−ブテンニトリルである。BDのヒドロシアン化によって3PNを生じさせる時の化学的収率を向上させる方法は、特許文献12に開示されているように、触媒を用いて2M3BNから3PNを生じさせる異性化(前記式2)をNiL4錯体の存在下で起こさせることを包含する。BDのヒドロシアン化と2M3BNの異性化の共生成物には4−ペンテンニトリル(4PN)、2−ペンテンニトリル(2PN)、2−メチル−2−ブテンニトリル(2M2BN)および2−メチルグルタロニトリル(MGN)が含まれ得る。
以下の式3および4に例示するように、3PNおよび2M3BNのヒドロシアン化を様
々な燐含有配位子を含有して成る遷移金属錯体の存在下で起こさせるとジニトリル、例えばADN、MGNおよびエチルスクシノニトリル(ESN)などが生じ得る。式4は、また、2M3BNの異性化がルイス酸助触媒(これはペンテンニトリルのヒドロシアン化反応ゾーンから運ばれてくる可能性がある)の存在下で好ましくなく起ると2M2BNが生じ得ることも示している。
活性オレフィン、例えば共役オレフィン(例えば1,3−ブタジエン)のヒドロシアン化はルイス酸助触媒を用いなくても有効な速度で進行し得る。しかしながら、不活性オレフィン、例えば3PNなどのヒドロシアン化の場合には、直鎖ニトリル、例えばADNなどの製造で産業的に有効な速度および収率を得ようとするには少なくとも1種のルイス酸助触媒が必要である。例えば、燐含有配位子を含有して成るニッケル触媒を用いて非共役エチレン系不飽和化合物のヒドロシアン化を起こさせる時にルイス酸触媒を用いることが特許文献13、14および15に開示されている。
ADNをBDとHC≡Nから生じさせるための一体式工程は、BDのヒドロシアン化、3PNを生じさせるための2M3BNの異性化およびADNおよび他のジニトリルを生じさせるためのペンテンニトリル(3PNを包含)のヒドロシアン化を含んで成り得る。一体式工程は例えば特許文献16に開示されている。
特許文献17に開示されている方法は、一座と二座の配位子の混合物で生じさせた触媒を回収しかつそのようにして回収した触媒をヒドロシアン化および/または異性化段階で再使用することができるようにすることを目的としたジニトリル製造方法である。
ADNの一体式製造方法が特許文献18に開示されている。1番目の工程段階は、BDにヒドロシアン化を少なくとも1種のゼロ価ニッケル触媒を用いて受けさせることで3PNを生じさせることを包含する。その一体式方法の2番目の工程段階は、ADNを生じさせるための3PNのヒドロシアン化を少なくとも1種のゼロ価ニッケル触媒および少なくとも1種のルイス酸を用いて起こさせることを伴う。この一体式方法では、その工程段階の1つの段階で用いたゼロ価ニッケル触媒の少なくとも一方をもう一方の工程段階に移動させる。
1番目の反応ゾーン(Z1)内で生じる反応生成物にはC8H13C≡N化合物が含まれる。そのようなC8H13C≡N化合物は1,3−ブタジエンの二量化およびそのよう
な二量体のヒドロシアン化で生じ得る。そのようなC8H13C≡N化合物が3PNとHCNの反応でアジポニトリルを生じさせるための反応ゾーンの中に入り込むと、そのようなC8H13C≡N化合物はHCNと反応して好ましくないC8H14(C≡N)2化合物をもたらす可能性がある。
本明細書の以下に示す開示で得る改良によって、BDとHC≡Nから生じさせる3PNおよび/またはADNの化学的収率および/または選択率をより高くする。更に、個々の反応段階で生じる副生成物を抑制する改良も行う。そのような副生成物には少なくとも4−ビニル−1−シクロヘキセン、2−メチル−2−ブテンニトリル、化学式C8H13C≡Nで表されるモノニトリル化合物および式C8H14(C≡N)2で表されるジニトリル化合物が含まれ得る。
米国特許第3,496,215号
米国特許第3,631,191号
米国特許第3,655,723号
米国特許第3,766,237号
米国特許第5,512,696号
米国特許第5,821,378号
米国特許第5,959,135号
米国特許第5,981,772号
米国特許第6,020,516号
米国特許第6,127,567号
米国特許第6,812,352号
米国特許第3,536,748号
米国特許第3,496,217号
米国特許第4,874,884号
米国特許第5,688,986号
米国特許出願2009/0099386 A1
米国特許公開番号2007/0260086
米国特許公開番号2008/0221351
Tolman、C.A.、McKinney、R.J.、Seidel、W.C.、Druliner、J.D.およびStevens、W.R.、Advances in Catalysis、1985、33巻、1−46頁
アジポニトリル製造工程で起こさせる1,3−ブタジエンのヒドロシアン化で用いる触媒を特別な方法で精製することによって反応副生成物、例えばC9モノニトリルなどの蓄積量を低くする。前記触媒を液体/液体抽出処理で精製しそして再利用する。
ペンテンニトリルの製造を2段階を包含する工程で実施する。1番目の段階[即ち段階(a)]で、1,3−ブタジエンとシアン化水素の反応を1番目の反応ゾーン(Z1)内でゼロ価ニッケル(Nio)と1番目の燐含有配位子を含有して成る1番目の触媒の存在下で起こさせることで3−ペンテンニトリル(3PN)と2−メチル−3−ブテンニトリル(2M3BN)を含有して成る反応槽流出物を生じさせる。2番目の段階[即ち段階(b)]で、1番目の段階で生じさせた2M3BNの少なくとも一部に異性化を2番目の反応ゾーン(Z2)内でゼロ価ニッケル(Nio)と2番目の燐含有配位子を含有して成る2番目の触媒の存在下で受けさせることで3PNを含有して成る反応生成物を生じさせる。
3PNを含有して成る流出物流れを前記2番目の反応ゾーン(Z2)から回収してもよい。3PNの回収をまた前記1番目の反応ゾーン(Z1)で得た反応生成物に蒸留を受けさせることで実施することも可能である。その回収した3PNとHCNの接触を3番目の反応段階[即ち段階(c)]で3番目の反応ゾーン(Z3)内でゼロ価ニッケル(Nio)と3番目の燐含有配位子を含有して成る3番目の触媒の存在下で起こさせてもよい。3番目の反応ゾーン(Z3)内の反応をルイス酸助触媒の存在下で起こさせる。
反応ゾーンに導入した触媒は反応体および生成物と一緒に反応ゾーンの中に流れ込み、そこを通った後にそこから出る。また、反応ゾーンの中に導入する如何なるルイス酸助触媒も反応体、生成物および触媒の流れと一緒に前記反応ゾーンの中を通って流れる。前記1番目の反応ゾーンの中を流れる触媒を本明細書ではまた1番目の触媒とも呼ぶ。この1番目の触媒はゼロ価ニッケルと1番目の燐含有配位子を含有して成る。前記2番目の反応ゾーンの中を流れる触媒を本明細書ではまた2番目の触媒とも呼ぶ。この2番目の触媒はゼロ価ニッケルと2番目の燐含有配位子を含有して成る。
前記1番目の反応ゾーンには実質的にルイス酸助触媒を入れない。前記3番目の反応ゾーン(Z3)の中を通って流れるように導入したルイス酸助触媒が前記1番目の反応ゾーン(Z1)の中に流れ込むことがないように、その再循環させる触媒の流れを制御する。
段階(a)の反応生成物には3−ペンテンニトリル(3PN)および2−メチル−3−ブテンニトリル(2M3BN)に加えて更にジニトリルも含まれている。そのようなジニトリルにはアジポニトリル(ADN)およびメチルグルタロニトリル(MGN)が含まれる。アジポニトリル(ADN)は3−ペンテンニトリル(3PN)とHCNの反応で生じ得る。メチルグルタロニトリル(MGN)は2−メチル−3−ブテンニトリル(2M3BN)とHCNの反応で生じ得る。
1番目の反応ゾーン(Z1)内でMGNが生じると2M3BNを回収しそして異性化で3PNを生じさせることができるようになる前にそれが変化してしまう点で特に問題にな
る。3PNを回収してHCNと反応させることでADNを生じさせる工程では、1モルのMGNが1番目の反応ゾーン(Z1)内で生じると結果として2モルのHCNと1モルのBDの損失(損失が起こらなければADNに変化するであろう)が起こってしまう。従って、MGNが1番目の反応ゾーン(Z1)内で望ましくなく生じると結果としてADNの収率(反応したHCNとBDのモルを基準にした)が望ましくなく低下してしまう。
触媒が前記1番目および2番目の反応ゾーンの中を通って流れるにつれて、その触媒のゼロ価ニッケルの含有量が低下しかつ触媒分解副生成物が生じる可能性がある。そのような触媒分解副生成物には酸化を受けた形態のニッケル、酸化を受けた形態の配位子および加水分解を受けた形態の配位子が含まれる。
前記1番目の反応ゾーンから生成物と一緒に流れ出る触媒の少なくとも一部または前記2番目の反応ゾーンから生成物と一緒に流れ出る触媒の少なくとも一部または前記1番目および2番目の反応ゾーンの両方から生成物と一緒に流れ出る触媒の少なくとも一部を濃縮した後に前記1番目の反応ゾーンまたは2番目の反応ゾーンまたは前記1番目と2番目両方の反応ゾーンに再循環させる。前記1番目の反応ゾーンから流れ出る触媒の濃縮は1つ以上の蒸留段階で実施可能である。同様に、前記2番目の反応ゾーンから流れ出る触媒の濃縮も1つ以上の蒸留段階で実施可能である。
1つの態様では、前記1番目の反応ゾーンから生成物と一緒に流れ出る触媒の少なくとも一部を濃縮した後に1番目の反応ゾーンに再循環させる。別の態様では、前記2番目の反応ゾーンから生成物と一緒に流れ出る触媒の少なくとも一部を濃縮した後に1番目の反応ゾーンに再循環させる。別の態様では、前記1番目と2番目両方の反応ゾーンから生成物と一緒に流れ出る触媒の少なくとも一部を濃縮した後に1番目の反応ゾーンに再循環させる。別の態様では、前記1番目の反応ゾーンから生成物と一緒に流れ出る触媒の少なくとも一部を濃縮した後に2番目の反応ゾーンに再循環させる。別の態様では、前記2番目の反応ゾーンから生成物と一緒に流れ出る触媒の少なくとも一部を濃縮した後に2番目の反応ゾーンに再循環させる。別の態様では、前記1番目と2番目両方の反応ゾーンから生成物と一緒に流れ出る触媒の少なくとも一部を濃縮した後に1番目の反応ゾーンに再循環させる。別の態様では、前記1番目と2番目両方の反応ゾーンから生成物と一緒に流れ出る触媒の少なくとも一部を濃縮した後に1番目と2番目両方の反応ゾーンに再循環させる。
触媒の濃縮を特に触媒の濃縮で用いるカラムのカラム下部で実施する。前記1番目の反応ゾーン(Z1)内で生じたか或はこの1番目の反応ゾーン(Z1)に再循環させたジニトリルもまた触媒の濃縮で用いるカラムのカラム下部で濃縮することになる。触媒はそのようなジニトリルの濃度が高い溶液中では熱に安定でない傾向がある(モノニトリル、例えば3PNおよび2M3BNなどの濃度が高い触媒溶液とは対照的に)。ジニトリルの生成または蓄積量が過度に高くなると当該触媒のニッケル/配位子錯体の熱安定性が低くなる可能性があることでカラム下部(この中でニッケル/配位子錯体が最も高い温度にさらされる)の中で分解を起こして遊離配位子および錯体を形成してないニッケルが放出される可能性がある。ニッケルは配位子と錯体を形成していないと不溶になることで高温表面、例えば交換管およびカラム壁などに固着する可能性があり、それによって多くの問題が生じ、そのような問題には、活性触媒の損失および処理能力の損失、最終的に生産を停止する必要性が含まれる。
触媒の精製または再生を行う目的で個別の液体/液体抽出段階を少なくとも2つ、場合により3つ用いる。前記1番目の反応ゾーンから出た濃触媒の少なくとも一部に精製を触媒分解副生成物および反応副生成物を1番目の液体/液体抽出段階で除去することで受けさせる。個別の液体/液体抽出段階を用いて前記3番目の反応ゾーンから出た来た生成物
を処理する。前記1番目の液体/液体抽出段階から出た来た精製された触媒を前記1番目の反応ゾーンに再循環させる。場合により、前記1番目の触媒と2番目の触媒が同じ場合、この精製された触媒の一部を前記2番目の反応ゾーンに再循環させてもよい。場合により、3個の個別の液体/液体抽出セクションを各触媒毎に用いる。本明細書で用いる如き用語“抽出セクション”および“抽出ゾーン”は液体−液体抽出工程の成分の計量、仕込み、混合、保持、分離および再循環を行うための装置および工程段階を指す。3個の個別の抽出セクションまたはゾーンを用いる任意選択に従い、1番目の触媒の一部に抽出を1番目の液体/液体抽出ゾーン内で受けさせ、2番目の触媒の一部に抽出を2番目の液体/液体抽出ゾーン内で受けさせ、そして3番目の触媒の少なくとも一部、例えば全部に抽出を3番目の液体/液体抽出ゾーン内で受けさせる。これらの3ゾーンには専用の抽出装置が備わっていることから異なるゾーン内の装置を共用しない。
前記1番目の液体/液体抽出段階は、触媒再循環流れの一部、1番目の抽出用溶媒流れおよびジニトリル再循環流れ(アジポニトリル(ADN)が入っている)を1番目の液体/液体抽出ゾーンに導入することを含んで成る。この1番目の液体/液体抽出段階に更に前記1番目の液体/液体抽出ゾーン内の液体を1番目の溶媒相と1番目のラフィネート相に分離させることも含める。その1番目の溶媒相には抽出用溶媒および触媒が入っている。前記1番目のラフィネート相にはアジポニトリル(ADN)、メチルグルタロニトリル(MGN)、沸点がアジポニトリル(ADN)より高い化合物および沸点がメチルグルタロニトリル(MGN)より低い化合物が入っている。
前記1番目の液体/液体抽出段階で得た1番目の溶媒相に由来する触媒を前記1番目の反応ゾーンに再循環させる。場合により、前記1番目と2番目の燐含有配位子が同じ場合、この精製された触媒の一部を前記2番目の反応ゾーンに再循環させることも可能である。
前記1番目のラフィネート相に蒸留を1つ以上の蒸留段階で受けさせることでアジポニトリル(ADN)およびメチルグルタロニトリル(MGN)を沸点がアジポニトリル(ADN)より高い化合物および沸点がメチルグルタロニトリル(MGN)より低い化合物から分離することで1番目の精製ジニトリル流れを得る。その1番目の精製ジニトリル流れにさらなる蒸留を受けさせることでメチルグルタロニトリル(MGN)を前記1番目の精製ジニトリル流れから除去することでアジポニトリルが豊富に存在する2番目の精製ジニトリル流れを得る。その2番目の精製ジニトリル流れの少なくとも一部を前記1番目の液体/液体抽出段階にジニトリル再循環流れとして再循環させる。
前記1番目の触媒の精製で用いる1番目の液体/液体抽出段階では、前記3番目の触媒が前記1番目の抽出用溶媒と接触しないようにする。
ルイス酸助触媒を前記3番目の反応ゾーン(Z3)内に存在させるとアジポニトリル(ADN)が生じる3−ペンテンニトリル(3PN)とHCNの反応が助長される。しかしながら、ルイス酸助触媒が前記1番目の反応ゾーン(Z1)に存在するとアジポニトリル(ADN)が生じる3−ペンテンニトリル(3PN)とHCNの反応およびメチルグルタロニトリル(MGN)が生じる2−メチル−3−ブテンニトリルとHCNの反応の両方が助長されてしまう。ルイス酸が前記1番目の反応ゾーン(Z1)の中に入り込むとしても、前記1番目の反応ゾーン(Z1)の中のルイス酸助触媒の量がMGNの生成量が当該ルイス酸助触媒が存在しない時に生じるMGNの量に比べて増加する度合が10%のみ、例えば5%のみである量より少なくなるようにすべきである。前記1番目の反応ゾーン内のNiの原子当量とルイス酸のモルの比率が正常な工程操作中、例えば3−ペンテンニトリルを製造している時間の少なくとも50%の間、例えばその時間の少なくとも95%の間、10:1未満になるようにしてもよい。
前記3番目の反応ゾーン(Z3)に入れるルイス酸助触媒が示す沸点はアジポニトリルのそれよりも高い。段階(c)で3番目の反応ゾーン(Z3)の中を流れる反応生成物、3番目の触媒およびルイス酸助触媒が抽出ゾーン内で抽出用溶媒と接触することで、前記3番目の触媒を含有して成る溶媒相および段階(c)で生じたアジポニトリル生成物を含有して成るラフィネート相がもたらされる。そのラフィネート相にはまたアジポニトリルではない化合物、例えば(1)沸点がアジポニトリルより高い化合物および(2)沸点がアジポニトリルより低い化合物なども入っている。そのラフィネート相に蒸留を1つ以上の蒸留段階で受けさせることで精製されたアジポニトリル生成物流れを回収しかつアジポニトリルではない化合物を前記ラフィネート相から除去する。例えば、当該ルイス酸助触媒は大部分がラフィネート相に分配される傾向があるが、また、前記助触媒が少なくとも少量ではあるが溶媒相に分配される可能性もある。化合物をその2相の間で分配することは米国特許第3,773,809号の中で考察されている。前記ラフィネート相に入っているルイス酸助触媒の全部がアジポニトリル生成物の回収で用いる蒸留段階で除去されるようにしてもよい。分離を助長する必要性に応じて、その回収したアジポニトリル生成物を用いてジニトリルを前記1番目の触媒のための抽出ゾーンに供給してもよい。前記1番目の触媒の再生で用いる抽出ゾーンは、前記3番目の触媒の再生で用いる抽出ゾーンとは異なる。これらの抽出ゾーン内で用いる抽出用溶媒の組成は同じまたは異なってもよい。これらのゾーンから出るラフィネート相に蒸留を同じまたは異なる蒸留装置内で受けさせてもよい。
ゼロ価ニッケルを前記液体/液体抽出段階で精製した1番目の触媒に添加してもよいが、それを添加する時期は、前記触媒を前記1番目の液体/液体抽出段階で精製した後であるがその精製した1番目の触媒を再循環させる前である。本開示の目的で、反応ゾーンの中を通して流す触媒を同じまたは異なる反応ゾーンの中に送り込む時にそれが再循環されることは理解されるであろう。精製された触媒に処理をOstermaierの米国特許第4,416,825号に教示されているように受けさせることでそれのニッケル含有量を高くしてもよい。また、補給用配位子も例えば触媒精製段階の後などに必要に応じて添加することも可能である。
1つの態様では、工程段階中に起こる触媒の劣化または好ましくない除去によって失われたゼロ価ニッケルを補給する目的で添加するゼロ価ニッケルの全部を当該触媒が前記1番目の液体/液体抽出ゾーンの中を通った後の精製された1番目の触媒に添加してもよい。
そのようにして濃縮された1番目の触媒の少なくとも一部を液体/液体抽出段階で精製することなく前記1番目の反応ゾーンに直接再循環させることも可能である。そのような態様では、パージ流れを再循環させる触媒流れから取り出してもよい。そのパージ流れを前記1番目の液体/液体抽出段階に向けてもよく、その中で触媒に精製または再生を受けさせる。
前記1番目と2番目の触媒の配位子が同じでありかつ前記1番目と2番目の触媒の両方を前記1番目と2番目の反応ゾーンの中に通して流す場合、前記1番目と2番目の触媒を前記1番目の反応ゾーンまたは2番目の反応ゾーンまたは前記1番目と2番目両方の反応ゾーンに再循環させてもよいが、3番目の反応ゾーンには再循環させない。3番目の触媒を3番目の反応ゾーンに再循環させてもよいが、1番目の反応ゾーンには再循環させない。いくつかの態様では、3番目の触媒を2番目の反応ゾーンに再循環させてもよいが、1番目の反応ゾーンには再循環させない。
前記3番目の反応ゾーン内で用いるルイス酸助触媒の例には、塩化亜鉛およびトリフェ
ニルホウ素が含まれる。
前記1番目の反応ゾーン(Z1)の中を通して流す1番目の触媒の1番目の燐含有配位子は、例えば単座燐含有配位子であってもよい。2番目の反応ゾーン(Z2)の中を通して流す2番目の触媒の2番目の燐含有配位子は、例えば単座または二座燐含有配位子であってもよい。3PNとHCNを反応させるための3番目の反応ゾーン(Z3)に通して流す3番目の触媒の3番目の燐含有配位子は、例えば二座燐含有配位子であってもよい。前記1番目の燐含有配位子と2番目の燐含有配位子は同じまたは異なってもよい。前記2番目の燐含有配位子と3番目の燐含有配位子は同じまたは異なってもよい。前記1番目の燐含有配位子の例は式
P(OR2)(OR3)(OR4) (I)
[式中、R2、R3およびR4は同じまたは異なり、アリール基、例えばフェニルおよびトリル基などであり、ここで、前記アリールまたはフェニル基は各々場合により4個以下のアルキル基で置換されていてもよく、各アルキル基の炭素原子数は1−4である]
で表される単座配位子である。この1番目の燐含有配位子の特別な例はトリス(トリル)ホスファイト(TTP)および修飾形態のTTP(本明細書では“MTTP”と呼ぶ)である。MTTPではTTP中のトリル基の少なくとも1個がフェニル基に置き換わっている。TTPの製造はPCl3と1種以上のクレゾール異性体(これらは最終生成物中のトリル基の源である)を反応させることで実施可能である。MTTPの製造はPCl3をフェノール(これは最終生成物中のフェニル基の源である)と1種以上のクレゾール異性体の混合物と反応させることで実施可能である。TTPおよびMTTPは両方とも典型的に化合物の混合物を構成している。
アジポニトリルはナイロン−6,6の合成で用いるに有用な前駆体の製造で使用可能である。例えば、アジポニトリルをヘキサメチレンジアミンに変化させることができ、それをナイロン−6,6の製造で用いることができる。本発明に従い、本明細書に記述する如きアジポニトリルを生じさせる工程に続いてそのようにして得たアジポニトリルに水添を受けさせてヘキサメチレンジアミンを得ることを含んで成るヘキサメチレンジアミン製造方法を提供する。また、本明細書に記述する如きアジポニトリルを生じさせる工程に続いてそのようにして得たアジポニトリルに水添を受けさせることでヘキサメチレンジアミンを得た後にそのヘキサメチレンジアミンをアジピン酸と反応させてナイロン−6,6を得ることを含んで成るナイロン−6,6製造方法も提供する。
図1は、3−ペンテンニトリルを製造するための一体式工程を示す図であり、この工程は、1,3−ブタジエンにヒドロシアン化を受けさせ、2−メチル−3−ペンテンニトリルに異性化を受けさせそして3−ペンテンニトリルにヒドロシアン化を受けさせる段階を含んで成る。
図2は、図1に示した分離セクション1000または分離セクション2000の一例を示す図である。
図3は、図1に示したアジポニトリル精製セクション3000の一例を示す図である。
図4は、図1に示した分離セクション125の一例を示す図である。
図5は、図1に示した分離セクション225の一例を示す図である。
図6は、1,3−ブタジエンとシアン化水素を反応させる1番目の反応ゾーン(Z1)の流出物からペンテンニトリル、触媒および反応副生成物を分離する目的で使用可能な蒸留装置を示す図である。
発明の詳細な説明
以下の詳細な説明に例示の目的で数多くの詳細を含めるが、通常の当業者は、以下の詳細の数多くの変形および代替形は本明細書に開示する態様の範囲内であることを理解するであろう。
従って、以下の態様は請求するいずれかの発明に対する普遍性を全く失わせることなくかつそれに対して制限を課すことなく示すものである。本開示をより詳細に説明する前に、本開示は多様であり得ることから本開示を記述する個々の態様に限定するものでないと理解されるべきである。また、本明細書で用いる用語は単に個々の態様を説明する目的で用いるものであり、限定を意図するものでないことも理解されるべきである、と言うのは、本開示の範囲を限定するのは添付請求項のみであるからである。
本明細書で用いる特定の省略形および定義には下記が含まれる:
ADN=アジポニトリル、BD=1,3−ブタジエン、c2PN=シス−2−ペンテンニトリル、c3PN=シス−3−ペンテンニトリル、C8H13C≡N=化学式C8H13C≡Nで表されるジオレフィン系非環式およびモノオレフィン系環式モノニトリル化合物、C8H14(C≡N)2=化学式C8H14(C≡N)2で表されるモノオレフィン系非環式および脂肪族環式ジニトリル化合物、ジニトリル1種または2種以上=特に限定しない限りADN、MGNおよびESN、ESN=エチルスクシノニトリル、HC≡NまたはHCN=シアン化水素(即ちシアン化水素酸)、2M2BN=2−メチル−2−ブテンニトリル[特に限定しない限り(E)−2M2BNおよび(Z)−2M2BN異性体の両方を包含]、2M3BN=2−メチル−3−ブテンニトリル、(E)−2M2BN=(E)−2−メチル−2−ブテンニトリル、(Z)−2M2BN=(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル、MGN=2−メチルグルタロニトリル、有機モノニトリル=ニトリル基を1個含有する有機化合物、例えばペンテンニトリルなど、有機ジニトリル=ニトリル基を2個含有する有機化合物、例えばADNなど、ペンテンニトリル1種または2種以上=特に限定しない限り4PN、3PN、2PN、2M3BNおよび2M2BN異性体、2PN=2−ペンテンニトリル(特に限定しない限りc2PNおよびt2PN異性体の両方を包含)、3PN=3−ペンテンニトリル(特に限定しない限りc3PNおよびt3PNの両方を包含)、4PN=4−ペンテンニトリル、ppm=特に明記しない限り重量で表す百万部当たりの部数、t2PN=トランス−2−ペンテンニトリル、t3PN=トランス−3−ペンテンニトリル、VN=バレロニトリル。
本明細書で用いる如き化合物の沸点(BP)は、高純度の形態の化合物が大気圧下で沸騰する時の温度を指す。挙げる沸点は、化学文献に由来する少なくとも1つの信頼できる源に挙げられている化合物が示す沸点の温度である。
本明細書で用いる如き用語“蒸留装置”および“蒸留カラム”を互換的に用い、これらの用語は両方ともが一般に蒸留段階を実施するための装置を指す。本開示の目的で、フラッシャーは蒸留カラムであると見なす。
ニトリル、例えば3PNおよびADNなどを製造する方法を本明細書に記述する。1つの態様では、3PNを最終生成物として回収する。別の態様では、ADNを製造するための一体式工程に供給する供給材料として3PNを用いる。
3PNを製造する工程は、例えばアジポニトリル(ADN)を製造するための一体式工程の1番目の段階として、1,3−ブタジエン(BD)とシアン化水素(HC≡N)を1
番目の反応ゾーン(Z1)内で1番目の触媒の存在下で反応させることを伴い得る。この反応は3−ペンテンニトリル(3PN)と2−メチル−3−ブテンニトリル(2M3BN)を含有して成る反応生成物がもたらされるに充分な反応条件下で実施可能である。その2M3BNに異性化を2番目の反応ゾーン(Z2)内で2番目の触媒を存在させて3PNを含有して成る反応生成物がもたらされるに充分な異性化条件下で受けさせてもよい。その3PNを1番目の反応ゾーン(Z1)および2番目の反応ゾーン(Z2)両方の流出物から回収してもよい。一体式工程の2番目の段階で、その回収した3PNとHC≡Nの反応を3番目の反応ゾーン(Z3)内で3番目の触媒を存在させて起こさせてもよい。その2番目の段階の反応をADNを含有して成る反応生成物がもたらされるに充分な反応条件下で起こさせてもよい。そのADNを回収してもよい。一体式工程では1番目と2番目の段階の共局所性は必要でない。
3つの反応ゾーン全部で同じ触媒を用いてもよい。同じ触媒を3つの反応ゾーン全部で用いると投資および稼働コストが低くなる可能性がある。しかしながら、単一の触媒を3つの反応ゾーン(Z1、Z2およびZ3)の全部の中で移動させるか或は共用することは、いずれか1つまたは3つの反応ゾーンの全部に入れる単一の触媒によってそのような工程が性能に関して制限される可能性がある点で不利になる。また、そのような単一の触媒が必要な分離段階中に示す物性によっても欠点が生じる可能性がある。例えば、生成物分離トレイン中の特定地点に位置させたリボイラーの温度によって熱に安定でない触媒が分解を起こす可能性がある。個々の反応ゾーン用の触媒を選択しかつ反応ゾーンおよび/または段階の間で起こる触媒の移動を制限することによって、達成される3PNおよびADN生成物の品質およびBDおよびHC≡Nを基にした化学的収率が高くなる可能性がある。
個々の反応段階用の触媒を選択しかつ反応段階の間の触媒の移動を制限すると反応副生成物の生成の制御が容易になる。そのような副生成物には少なくとも下記が含まれる:4−ビニル−1−シクロヘキセン、2−メチル−2−ブテンニトリルおよび化学式C8H13C≡Nで表されるモノニトリル化合物。本明細書に開示するように、触媒成分を個別に処理しそしてそれらが工程段階の間で一緒に混ざり合わないようにすると、生じた後の反応副生成物が1つの工程段階から別の工程段階に流れ込む度合を管理する機会が得られる。例えば、3PNを生じさせるための1番目の工程段階(例えばZ1およびZ2内)から出る触媒流れに入っている反応副生成物がADNを生じさせるための2番目工程段階(Z3内で実施)に移動する度合およびそれの逆も制御することができる。
図1の概説
代表的なアジポニトリル製造工程のより詳細な説明を図1を参照して行うが、図1は、そのような工程の簡略化した図式図を示すものである。図1に示す1番目の反応ゾーン(Z1)で、1,3−ブタジエンとシアン化水素を含有して成る混合物を1番目の触媒、例えばゼロ価Niと1番目の燐含有配位子を含有して成る1番目の触媒(総称的に1番目の触媒系と呼ぶ)の存在下で接触させることで、実質的に3−ペンテンニトリル(3PN)と2−メチル−3−ブテンニトリル(2M3BN)を含有して成る反応生成物を生じさせる。
図1に示すように、1,3−ブタジエン反応体を1番目の反応ゾーン(Z1)にライン100に通して送り込み、シアン化水素反応体を前記1番目の反応ゾーン(Z1)にライン120に通して送り込みそして触媒を前記1番目の反応ゾーン(Z1)にライン140に通して送り込む。反応生成物流れを前記1番目の反応ゾーン(Z1)からライン122に通して取り出す。ライン122の中の反応生成物流れには生成物、副生成物、未反応の反応体および触媒が入っており、それは前記1番目の反応ゾーン(Z1)の中を通って流れたものである。この反応生成物流れ122を分離セクション125に導入することで、
とりわけ濃触媒流れ140および2−メチル−3−ブテンニトリル(2M3BN)含有生成物流れ200を得る。前記分離セクション125には1個以上の蒸留カラムが備わっていてもよい。分離セクション125の一例を図4に示す。また、分離セクション125内で未反応のシアン化水素および1,3−ブタジエンも反応生成物および触媒から分離することができる。未反応の1,3−ブタジエンを前記1番目の反応ゾーン(Z1)に図1には示していないラインに通して再循環させてもよい。また、3−ペンテンニトリル(3PN)含有流れを分離セクション125から図1には示していないラインに通して取り出すことも可能である。分離セクション125の中で反応生成物から分離した触媒の少なくとも一部を前記1番目の反応ゾーン(Z1)にライン140に通して再循環させてもよい。
前記1番目の反応ゾーン(Z1)内で起こさせた反応に続いて、2M3BNの実質的異性化を2番目の反応ゾーン(Z2)内で異性化用触媒の存在下で起こさせることで実質的に3PNを含有して成る反応生成物を生じさせる。そのような異性化用触媒を本明細書ではまた2番目の触媒とも呼ぶ。この異性化用触媒は前記1番目の反応ゾーン(Z1)に導入した触媒と同じであってもよい。場合により、この異性化用触媒は前記1番目の反応ゾーン(Z1)に導入した触媒とは異なる触媒であってもよい。
図1に示すように、2M3BNを含有して成る供給材料を2番目の反応ゾーン(Z2)にライン200に通して導入する。触媒を前記2番目の反応ゾーン(Z2)にライン240に通して導入する。前記2番目の反応ゾーン(Z2)から出る流出物流れ222には触媒および3PN生成物が入っている。この流出物流れ222を分離セクション225に送ることで、とりわけ、3PN生成物流れ300および濃触媒流れ240を得る。分離セクション225には1つ以上の蒸留装置が備わっていてもよい。図5に、そのような分離セクション225の一例を示す。
触媒を1番目の反応ゾーン(Z1)および2番目の反応ゾーン(Z2)に供給するための触媒再循環システムを図1に示す。このような触媒再循環システムには更に再循環させる前の触媒の少なくとも一部を精製するためのシステムも備わっている。
触媒を前記1番目の反応ゾーン(Z1)に供給するための触媒再循環システムでは、ライン140に入っている濃触媒流れの一部を分かれさせて触媒パージ流れ126を生じさせる。
パージ流れ126に入っている触媒の形態は不純物、例えば反応副生成物および触媒分解副生成物などが入っている溶液の形態である。パージ流れ126に入っている触媒を液体/液体抽出ゾーン150に送り込むことで前記触媒に少なくともある程度の精製または再生を受けさせる。その触媒は副生成物が触媒溶液から少なくともある程度除去される点で精製または再生を受ける。
非極性溶媒、例えばアルカンなどを前記液体/液体抽出ゾーン150にライン130に通して送り込む。また、そのような非極性溶媒と混和しない極性溶媒も前記液体/液体抽出ゾーン150にライン500に通して送り込む。
1つの態様では、触媒パージ流れ126と極性溶媒をライン500の中で混合しておいた後にその一緒になった流れを抽出ゾーン150に仕込む。図1にパージ流れ126と再循環流れ500を個別に抽出ゾーン150に加えるように図式的に示してはいるが、好適には触媒パージ流れ126と極性溶媒をライン500の中で混合しておいた後に一緒になった流れを抽出ゾーン150に仕込むと理解されるべきである。
抽出ゾーン150の中では、非極性溶媒と触媒が入っている非極性相および極性溶媒と
例えば反応副生成物と触媒分解生成物が入っている極性相(例えばラフィネート)が生じる。その非極性相を抽出ゾーン150からライン134によって取り出して蒸留装置155に送り込む。前記極性相を抽出ゾーン150からライン510によって取り出して分離セクション1000に送り込む。
分離セクション1000の一例を図2により詳細に記述する。分離セクション1000には集合的に一連のカラム(K1、K2、K3およびK4)が備わっていてもよく、それらによって特定の反応副生成物および特定の触媒分解生成物を極性溶媒から除去する。K4のカラム下部から極性溶媒を取り出して、それを抽出ゾーン150にライン500によって戻す。
非極性溶媒を蒸留装置155内の蒸留によって回収した後に抽出ゾーン150にライン130によって戻す。抽出ゾーン150、ライン134、蒸留装置155およびライン130が集合的に非極性溶媒を抽出ゾーン150に再循環させるための回収用ループを構成している。抽出ゾーン150、ライン510、分離セクション1000およびライン500が集合的に極性溶媒を抽出ゾーン150に再循環させるための回収用ループを構成している。追加的非極性溶媒および極性溶媒を抽出ゾーン150に図1に示していないラインによって導入することも可能である。そのような追加的溶媒は開始用として添加可能でありかつ液体/液体抽出段階中に失われた溶媒の補給用として添加可能である。
蒸留カラム155のカラム下部にはある程度精製された触媒が入っている。この触媒は触媒分解生成物および/または反応副生成物の少なくとも一部が触媒含有溶液から分離されている意味である程度精製または再生を受けている。このようにある程度精製された触媒を蒸留カラム155からライン156に通して取り出して1番目の反応ゾーン(Z1)に向かう再循環のためのいずれかの地点に導入してもよい。図1では、ある程度精製された触媒を蒸留カラム155からライン156に通して取り出した後に1番目の反応ゾーン(Z1)に再循環させる目的で触媒再循環ライン140に導入するためにライン146の中に移動させる。図1では、流れ146が取り出し流れ126の下流に導入されるように示しているが、場合によりこの流れを取り出し流れ126の上流に導入することも可能である。また、場合により、流れ146を1番目の反応ゾーン(Z1)に関連した触媒含有流れのいずれかに加えることも可能である。場合により、ライン156に入っているそのある程度精製された触媒流れの少なくとも一部を2番目の反応ゾーン(Z2)に再循環させてもよい。図1では、ライン156に入っているある程度精製された触媒流れを2番目の反応ゾーン(Z2)に再循環させる目的で触媒再循環ライン240に導入するためのライン246の中に移動させてもよい。しかしながら、ある程度精製された1番目の触媒を2番目の反応ゾーン(Z2)に向かわせる目的で図1に示していない他のルートを用いることも可能であることは理解されるであろう。
そのある程度精製された1番目の触媒の流れ(これを実質的に1番目の反応ゾーン(Z1)または場合により2番目の反応ゾーン(Z2)に戻す)に追加的ゼロ価Niおよび/または追加的燐含有配位子を供給することも可能である。図1では、追加的ゼロ価Niおよび/または追加的燐含有配位子をライン145によって供給してもよい。また、図1に示すように、ある程度精製された1番目の触媒の流れ(これを実質的に2番目の反応ゾーン(Z2)に送り込む)に追加的ゼロ価Niおよび/または燐含有配位子をライン245によって供給することも可能である。しかしながら、補給用触媒を図1には示していない異なるルートによって加えることも可能であることは理解されるであろう。例えば、補給用触媒流れ145を1番目の反応ゾーンの触媒ループの他のセクションにか或は例えば1番目の反応ゾーン(Z1)に直接仕込むことも可能である。
図1に示す特別な態様では、触媒を2番目の反応ゾーン(Z2)に供給するための2番
目の触媒回収システムを2番目の反応ゾーン(Z2)に装備する。この2番目の触媒再循環システムでは、ライン240に入っている濃触媒流れの一部を分かれさせて触媒パージ流れ226を生じさせる。この触媒パージ流れ226を液体/液体抽出ゾーン250に送り込む。非極性溶媒、例えばアルカンなどを前記液体/液体抽出ゾーン250にライン230に通して送り込む。また、前記非極性溶媒と混和しない極性溶媒も前記液体/液体抽出ゾーン250にライン700に通して送り込む。図1に示していない給源に由来するジニトリルを抽出ゾーン250に所望の相分離および抽出を達成する必要に応じて加えることも可能である。
1つの態様では、ライン700の中で触媒パージ流れ226と極性溶媒を混合しておいた後にその一緒になった流れを抽出ゾーン250に仕込む。図1には、パージ流れ226と再循環流れ700を個別に抽出ゾーン250に加えるように図式的に示しているが、好適にはライン700の中で触媒パージ流れ226と極性溶媒を混合した後にその一緒になった流れを抽出ゾーン250に仕込むと理解されるべきである。
1つの態様では、3番目の反応ゾーン(Z3)から出て来た精製されたジニトリル生成物流れの一部を抽出ゾーン250に送り込む供給材料として用いてもよい。例えば、側流(示していない)をライン500から取り出して抽出ゾーン250に導入してもよい。抽出ゾーン250の中で非極性溶媒と触媒が入っている非極性相および例えば極性溶媒と反応副生成物と特定の触媒分解生成物などが入っている極性相(例えばラフィネート)が生じる。その非極性相を抽出ゾーン250からライン234によって取り出して蒸留装置255に送る。前記極性相を抽出ゾーン250からライン710によって取り出して分離セクション2000に送る。分離セクション2000を図2により詳細に記述する。
分離セクション2000には集合的に一連のカラム(K1、K2、K3およびK4)が備わっており、それらによって特定の反応副生成物および触媒分解生成物を分離する。K4のカラム下部から極性溶媒を取り出して、それを抽出ゾーン250にライン700によって戻す。相分離の必要に応じてアジポニトリルの形態の追加的極性溶媒を3番目の反応ゾーン(Z3)内で生じたアジポニトリルから図1に示していないラインに通して供給してもよい。
非極性溶媒を蒸留装置255内の蒸留で回収した後、抽出ゾーン250にライン230によって戻す。抽出ゾーン250、ライン234、蒸留カラム255およびライン230が集合的に非極性溶媒を抽出ゾーン250に再循環させるための回収用ループを構成している。抽出ゾーン250、ライン710、分離セクション2000およびライン700が集合的に極性溶媒を抽出ゾーン250に再循環させるための回収用ループを構成している。
蒸留カラム255のカラム下部にはある程度精製された触媒が入っている。この触媒は触媒分解生成物および/または反応副生成物の少なくともいくらかが前記触媒が入っている溶液から分離されている意味である程度精製または再生を受けている。このある程度精製された触媒を蒸留装置255からライン248に通して取り出して、2番目の反応ゾーン(Z2)に再循環させるための触媒再循環ライン240に導入してもよい。場合により、側流をライン248から取り出してライン247に向かわせてもよく、この側流を、例えばライン247から取り出した側流をライン146またはライン140に導入することなどで、1番目の反応ゾーン(Z1)に送り込む触媒供給材料として用いることも可能である。いずれかのある程度精製された触媒の流れ(これを実質的に2番目の反応ゾーン(Z2)に送り込む)に追加的ゼロ価Niおよび/または燐含有配位子を例えばライン245などによって供給することも可能である。図1には示していないが、場合によりライン245をライン246またはライン248(ライン240の代わりに)に直接向かわせて
もよい。補給用触媒を導入する他の方法も当該技術分野で公知でありかつ使用可能である。
図1には示していないが、1番目の反応ゾーン(Z1)と2番目の反応ゾーン(Z2)に単一の触媒回収システムを共用させることも可能である。1番目と2番目の燐含有配位子が同じ時には共用触媒回収システムが好ましい可能性がある。そのような共用システムでは、下記の機構をなくすか或は休止させてもよい:ライン226、230、234、247、248、700および710、抽出ゾーン250、蒸留装置255および分離セクション2000。パージ流れをライン226によって取り出す代わりに、パージ流れをライン227によって取り出してライン126に導入するか或は抽出ゾーン150に直接導入することも可能である。そのような共用触媒回収システムでは、2番目の反応ゾーン(Z2)に入るいずれかのある程度精製された触媒流れを図1に示す配置に従ってライン246および240に通すことになるであろう。
ライン300に入っている3PN生成物を3番目の反応ゾーン(Z3)に導入し、その中で3PNをHCNと反応させる。また分離セクション125から出て来た3PNも前記3番目の反応ゾーン(Z3)に図1に示していないライン1つ以上に通して導入することも可能である。HCN反応体供給材料を前記3番目の反応ゾーン(Z3)にライン220に通して導入する。3番目の触媒(例えばゼロ価Niと3番目の燐含有配位子を含有して成る)(総称的に3番目の触媒系)およびルイス酸助触媒を前記3番目の反応ゾーン(Z3)にライン340に通して導入する。3PNとHCNが前記3番目の反応ゾーン(Z3)の中で反応することでアジポニトリルを含有する反応生成物がもたらされる。反応生成物流れを前記3番目の反応ゾーン(Z3)からライン400によって取り出す。この反応生成物流れには例えばアジポニトリル、触媒、助触媒および未反応の反応体が入っている。場合により、この反応生成物流れを分離セクション(図1には示していない)に通すことで未反応の反応体を除去しておいた後に触媒をアジポニトリル生成物から分離することも可能である。
ライン400に入っている生成物流れに由来する触媒およびアジポニトリル生成物を液体/液体抽出ゾーン370の中に送り込む。非極性溶媒、例えばアルカンなどを前記液体/液体抽出ゾーン370にライン330に通して送り込む。前記液体/液体抽出ゾーン370に導入する非極性溶媒の組成は前記液体/液体抽出ゾーン150に導入する非極性溶媒のそれと同じまたは異なってもよい。ライン330から来る非極性溶媒とライン400から来るアジポニトリル生成物が一緒になって混和しない成分の抽出剤系を構成する。抽出ゾーン370の中で非極性溶媒と触媒が入っている非極性相およびアジポニトリルと助触媒と触媒分解生成物が入っている極性相(例えばラフィネート)が生じる。
前記非極性相を抽出ゾーン370からライン334によって取り出して蒸留装置375に送り込む。アジポニトリルが入っている前記極性相を抽出ゾーン370からライン600によって取り出してアジポニトリル精製セクション3000に送り込む。アジポニトリル精製セクション3000を図3により詳細に記述する。
アジポニトリル精製セクション3000には集合的に一連のカラム(K'1、K'2、K'3およびK'4)が備わっていてもよく、それらによって不純物、例えば反応副生成物および触媒分解生成物などの分離を行う。K'4のカラム下部に精製されたアジポニトリル生成物が生じ、それをライン660で回収する。場合により、その精製されたアジポニトリル生成物の一部を抽出ゾーン150または抽出ゾーン250に戻す(図1に示していないラインによって)ことでこれらの抽出ゾーンの中で起こさせる相分離を助長することも可能である。
非極性溶媒を蒸留装置375内の蒸留で回収して抽出ゾーン370にライン330によって戻す。抽出ゾーン370、ライン334、蒸留装置375およびライン330が集合的に非極性溶媒を抽出ゾーン370に再循環させるための回収用ループを構成している。蒸留カラム375のカラム下部にある程度精製された触媒が入っている。このある程度精製された触媒を蒸留カラム375からライン340に通して取り出して、触媒を3番目の反応ゾーン(Z3)に再循環させてもよい。ライン340に入っているそのある程度精製された3番目の触媒の流れ(これを実質的に3番目の反応ゾーン(Z3)に戻す)に補給量の追加的ゼロ価Niおよび/または3番目の燐含有配位子を助触媒と一緒に供給してもよい。図1では、補給量の追加的ゼロ価Niおよび/または3番目の燐含有配位子および/または助触媒をライン345によって加えてもよい。しかしながら、補給用触媒および助触媒を導入する他の方法も存在することは理解されるであろう。例えば、再循環させる触媒流れ340の全部または一部を触媒反応槽に仕込むことでそれのニッケル含有量を高くしてもよくかつ触媒反応槽から出る流出物を適切な地点に導入することも可能である。
図2の概説
図2に蒸留トレインを示し、これは図1に示す分離セクション1000または分離セクション2000として使用可能である。図2では、ライン515が図1のライン510またはライン710のいずれかを表す。ライン515によってラフィネート流れを抽出ゾーン150または抽出ゾーン250のいずれかから分離セクション1000または分離セクション2000に移動させる(図1に示すように)。ライン515に入っているラフィネート流れは最初に蒸留カラムK1に送り込まれて、その中で抽出用溶媒がラフィネート流れに含まれている高沸点成分から分離される。特に、抽出用溶媒、例えばシクロヘキサンなどを蒸留カラムK1からライン525に通して取り出しそしてラフィネート流れに含まれていた高沸点成分を蒸留カラムK1からライン520に通して取り出す。
次に、ライン520に入っているその溶媒が除去された流れを蒸留カラムK2に送り込んで、その中でペンテンニトリルをラフィネート流れに残存する高沸点成分から分離する。特に、ペンテンニトリル、例えば3PNおよびいくらか存在する2M3BNを蒸留カラムK2からライン550に通して取り出しそしてラフィネート流れに含まれていた高沸点成分を蒸留カラムK2からライン530に通して取り出す。
次に、ライン530に入っているそのペンテンニトリルが除去された流れを蒸留カラムK3に送り込み、その中でジニトリルを前記ラフィネート流れに残存する高沸点成分から分離する。特に、ジニトリル、例えばADNおよびMGNなどを蒸留カラムK3からライン535に通して取り出しそして前記ラフィネート流れに含まれていた高沸点成分を蒸留カラムK3からライン540に通して取り出す。ライン540に入っているそのような高沸点成分には例えば触媒分解生成物などが含まれ得る。
次に、ライン535に入っているジニトリルが豊富な流れを蒸留カラムK4に送り込み、その中でアジポニトリルを低沸点ジニトリル、例えばMGNなどから分離する。特に、MGNを蒸留カラムK4からライン420に通して取り出す。また、ライン420に入っているMGN含有流れにはC8H13C≡N化合物およびフェノール化合物も入っている可能性がある。アジポニトリルが豊富な流れを蒸留カラムK4からライン560に通して取り出す。図2では、ライン560が図1のライン500またはライン700のいずれかを表す。図1に示したように、ライン500に入っているアジポニトリルが豊富な流れを液体/液体抽出ゾーン150に再循環させそしてライン700に入っているアジポニトリルが豊富な流れを液体/液体抽出ゾーン250に再循環させる。
図3の概説
図3に蒸留トレインを示すが、これは図1に示したアジポニトリル精製セクション30
00として使用可能である。ライン600によってラフィネート流れを抽出ゾーン370から蒸留カラムK'1に移動させ、その中で抽出用溶媒をラフィネート流れに含まれている高沸点成分から分離する。特に、抽出用溶媒、例えばシクロヘキサンなどを蒸留カラムK'1からライン625に通して取り出しそして前記ラフィネート流れに含まれていた高沸点成分を蒸留カラムK'1からライン620に通して取り出す。
次に、ライン620に入っている溶媒が除去された流れを蒸留カラムK'2に送り込んで、その中でペンテンニトリルを前記ラフィネート流れに残存する高沸点成分から分離する。特に、ペンテンニトリル、例えば3PNおよびいくらか存在する2M3BNを蒸留カラムK'2からライン650に通して取り出しそして前記ラフィネート流れに含まれていた高沸点成分を蒸留カラムK'2からライン630に通して取り出す。
次に、ライン630に入っているペンテンニトリルが除去された流れを蒸留カラムK'3に送り込んで、その中でジニトリルを前記ラフィネート流れに残存する高沸点成分から分離する。特に、ジニトリル、例えばADNおよびMGNなどを蒸留カラムK'3からライン635に通して取り出しそして前記ラフィネート流れに含まれていた高沸点成分を蒸留カラムK'3からライン640に通して取り出す。ライン640に入っているそのような高沸点成分には例えば触媒分解生成物などが含まれ得る。
次に、ライン635に入っているジニトリルが豊富な流れを蒸留カラムK'4に送り込んで、その中でアジポニトリルを低沸点ジニトリル、例えばMGNなどから分離する。特に、MGNを蒸留カラムK'4からライン650に通して取り出しそして精製されたアジポニトリル流れを蒸留カラムK'4からライン660に通して取り出す。
図4の概説
図4は、蒸留トレインの一例を示す図式図であり、これは図1に示した分離セクション125として使用可能である。3PN、2M3BN、少なくとも1種の触媒およびBDが入っている流れ122を蒸留の目的で装置810に移動させる。この装置の中で流れ122に蒸留を受けさせることでBDが豊富な流れ812およびBDが除去された流れ813を得るが、それには3PN、2M3BNおよび少なくとも1種の触媒が入っている。そのBDが豊富な流れ812を1番目の反応ゾーン(Z1)に再循環させてもよい。
次に、そのBDが除去された流れ813(これには3PN、2M3BNおよび少なくとも1種の触媒が入っている)をさらなる蒸留の目的で別の装置820に移動させる。この装置の中で流れ813に蒸留を受けさせることでBDが豊富に存在する上部生成物流れ824、3PNおよび2M3BNが入っている流れ825、および少なくとも1種の触媒が豊富に存在する釜残生成物流れ140を得る。また、BDが豊富に存在する流れ824も1番目の反応ゾーン(Z1)に再循環させてもよい。装置820にジニトリルが余分に入り込むと、触媒が熱で分解することでニッケルと配位子が解離する結果としてニッケルが高温表面、例えば交換器の管およびリボイラーの壁表面に固着する可能性があるか、或はニッケル固体が例えばカラム下部などで沈澱を起こすきっかけになる可能性がある。
3PNおよび2M3BNが入っている流れ825を少なくともある程度であるが別の蒸留装置830に移動させる。この装置内で、流れ825の蒸留を実施することで2M3BNが豊富な流れ200と2M3BNが除去された流れ838(3PNが入っている)を得る。Decio Heringer Coutinho(ダラスにあるテキサス大学)による博士論文の“Nylon Intermediates Refining”章(2001年12月)に記述されているように、流れ200を蒸留装置の上部領域で得ることができる一方で流れ838を蒸留装置の下部領域で得ることができる。
図4に、前記1番目の反応ゾーン(Z1)から出て来た流出物を蒸留するための1つの蒸留システムを例示する。しかしながら、同じまたは本質的に同じ結果を達成する目的で他の蒸留システムを設計して運転することは当該技術分野の技術の範囲内であることは理解されるであろう。例えば、触媒が示す熱安定性に応じて、蒸留装置810と蒸留装置820を組み合わせて単一の蒸留装置にすることも可能であり、その中でBNが豊富な流れを上部流れとして取り出し、PNが豊富な流れを測流として取り出しそして触媒が豊富な流れを下部流れとして取り出す。
図5の概説
図5は、蒸留トレインの一例を示す図式図であり、これは図1に示した分離セクション225として使用可能である。2番目の反応ゾーン内で得た流れ222としての異性化反応流出液に蒸留を受けさせることで触媒と生成物を回収する。図5に示していない蒸留段階として、軽質沸騰物を最初に流れ222から除去してもよい。低沸騰物はペンテンニトリルより低い温度で沸騰する化合物である。軽質沸騰物の例にはブタン、ブタジエンおよびシクロヘキサンが含まれる。ペンテンニトリルと同じ温度またはそれ以上の温度で沸騰する化合物(流れ222に入っている)を蒸留装置940に導入する。ペンテンニトリルが豊富な流れ942(3PN、2M3BNおよび(Z)−2M2BNが入っている)を蒸留装置940から得ることができる。流れ942はまた他のペンテンニトリル(4PN、(E)−2M2BNまたはこれらの組み合わせから選択)および場合により実験式C8H12で表される二量化BD化合物、例えばVCHおよびエチリデンシクロヘキセン異性体なども入っている可能性がある。ペンテンニトリルが除去された流れ240(少なくとも1種の触媒が豊富に存在する)を釜残生成物として得ることができる。
米国特許第3,852,329号に“好ましくない生成物、例えば2−メチル−2−ブテンニトリルになることによる損失を低下させる”方法が記述されている。流れ942を蒸留する目的は低沸点(Z)−2M2BN異性体の少なくとも一部を3PNおよび2M3BN反応生成物混合物から除去することにある。
流れ942(3PN、2M3BNおよび(Z)−2M2BNが入っている)に蒸留を蒸留装置950内で受けさせる。流れ954を塔頂生成物として得るが、これには(Z)−2M2BNが豊富に存在する。流れ955(3PNおよび2M3BNが入っている)を釜残生成物として得るが、(Z)−2M2BNが除去されている。(Z)−2M2BNが“豊富”および“除去されている”は流れ942に入っているそれの濃度に関する。
流れ954にはまた他のペンテンニトリルも入っている可能性があり、それは2M3BN、(E)−2M2BNおよび場合により実験式C8H12で表される二量化BD化合物、例えばVCHおよびエチリデンシクロヘキセン異性体などを包含する群より選択される。流れ955にはまた他のペンテンニトリルも入っている可能性があり、それは4PN、2PNおよび(E)−2M2BNを包含する群より選択される。
1つの態様では、そのような蒸留を二量化BD化合物が流れ954の中に豊富に存在しかつ流れ955では除去されているような様式で実施するが、両方とも流れ942に入っている二量化BD化合物の濃度に関する。別の態様では、二量化BD化合物が2M3BNと共沸することによって前記化合物が流れ954の中に豊富に存在するようにする。別の態様では、流れ954に入っている2M3BNの量が流れ954の総質量を基準にして1重量%以上、例えば5重量%以上、例えば10重量%以上になるようにする。
流れ955(3PNおよび2M3BNが入っている)を少なくともある程度であるが蒸留装置960に移動させてもよい。この装置の中で、流れ955の蒸留を実施することで2M3BNが豊富な流れ967と2M3BNが除去された流れ300(3PNが入ってい
る)を得る。Decio Heringer Coutinho(ダラスにあるテキサス大学)による博士論文の“Nylon Intermediates Refining”章(2001年12月)に記述されているように、流れ967を蒸留装置の上部領域で得ることができる一方、流れ300を蒸留装置の下部領域で得ることができる。
図5に、2番目の反応ゾーン(Z2)から出て来た流出物を蒸留するための1つの蒸留システムを例示する。しかしながら、同じまたは本質的に同じ結果を達成する目的で他の蒸留システムを設計して運転することは当該技術分野の技術の範囲内であることは理解されるであろう。例えば、上述したように、低沸騰物を除去する蒸留段階をそのシステムに挿入することも可能である。また、1番目の反応ゾーンから出て来た流出物の蒸留で用いる装置と共用することも可能である。例えば、2番目の反応ゾーン(Z2)から出て来た流出物の蒸留で得た流れ(3PNおよび2M3BNが入っている)を1番目の反応ゾーン(Z1)から出て来た流出物の蒸留で用いる蒸留装置、例えば蒸留装置830などに送り込むことで3PNが豊富な流れと2M3BNが豊富な流れを得ることも可能である。
図6の概説
図6に、上部流れ出口、下部流れ出口および側流れ出口が備わっている蒸留カラムの機構を例示する。ペンテンニトリルが豊富に存在する流れを上部流れ出口から取り出す。触媒が豊富に存在する流れを下部流れ出口から取り出す。この蒸留カラムは147から295℃の範囲で沸騰する液体(これを側流れ出口から取り出す)の収集が最適になるように設計しかつ運転可能である。
図6では、供給材料を蒸留カラム850の中に流れ852によって導入する。流れ852に入っている供給材料には(1)ペンテンニトリル(3−ペンテンニトリルおよび2−メチル−3−ブテンニトリルを包含)、(2)アジポニトリル、(3)沸点が3−ペンテンニトリルの沸点とアジポニトリルの沸点の範囲の化合物、および(4)沸点がアジポニトリルより高い化合物が入っている。
3−ペンテンニトリルが示す沸点は147℃である。他のペンテンニトリルが示す沸点は147℃未満である。アジポニトリルが示す沸点は295℃である。沸点が147から295℃の範囲の化合物を本明細書ではまた“中間沸騰物”とも呼ぶ。供給材料流れ852に存在する可能性のある中間沸騰物にはフェノール、クレゾール、C8H13C≡N化合物、メチルグルタロニトリル(MGN)およびt−ブチルカテコール(TBC)から成る群より選択される1種以上の化合物が含まれる。
アジポニトリルより高い沸点を有する化合物(供給材料流れ852に入っている)には触媒および触媒分解副生成物が含まれる。蒸留カラム850に流れ852によって導入する供給材料流れは、1番目の反応ゾーン(Z1)から出て来た反応流出物に蒸留をブタジエンが豊富な流れとブタジエンが除去された流れが生じるに充分な条件下で受けさせることで得ることができる。そのブタジエンが除去された流れを蒸留カラム850に流れ852によって送り込んでもよい。
分離段階が少なくとも1つ、例えば少なくとも2つ含まれている精留セクションを供給材料入り口と上部流れ出口の間に装備する。図6では、供給材料入り口の位置を流れ852が蒸留カラム850に入り込む位置として示す。また、上部流れ出口の位置も流れ856が蒸留カラム850から出る位置として示す。また、パッキングセクション854も蒸留カラム850の中の供給材料流れ852が蒸留カラム850の中の入り込む位置の上に装備する。流れ856には供給材料流れ852に入っているペンテンニトリルの濃度を基準にしてペンテンニトリルが豊富に存在する。
化合物を蒸留カラム850の下部流れ出口から流れ858によって取り出す。流れ858には供給材料流れ852に入っている触媒の濃度を基準にして触媒が豊富に存在する。流れ858をポンプ860によって流れ862に送り込む。触媒が入っている流れ862の一部を1番目の反応ゾーン(Z1)に再循環させてもよく、そして流れ862の一部をパージ流れとして取り出してもよく、それに精製を後で例えば液体/液体抽出ゾーン内などで受けさせる。流れ862の一部を側流864として取り出し、それを次に熱交換器866内で加熱する。次に、その加熱された流れ868を蒸留カラム850の下方部分に戻す。流れ858、ポンプ860、流れ862、側流864、熱交換器866、流れ868およびカラム下部を含んで成るループが蒸気を供給するためのリボイラーセクションを構成しており、その蒸気は蒸留カラム850の中を上方に向かって流れる。この蒸気にはペンテンニトリルの蒸気およびアジポニトリルの蒸気が含まれている。
このリボイラーセクションの上方および供給材料が流れ852から入り込む地点の上方に液体収集装置870を装備する。この液体収集装置870はチムニートレーであってもよい。この液体収集装置870には開口部が少なくとも1個備わっており、それによって、カラムの中を上方に向かって流れる蒸気が装置の中を通ることができる。しかしながら、この液体収集装置870は液体がカラムの中を下降するようにその中を通ることを可能にするものではない。例えば、液体収集装置870に液体を集めるためのトレーセクションを設けてもよい。従って、カラムの中の液体収集装置870より上の地点から下降する液体は集められる。
液体収集装置870の中で集められた液体を蒸留カラムから流れ872によって取り出す。この流れ872はポンプ874によって流れ876に送られる。その流れ8764に入っているその集められた液体の一部を側流878として取り出す。流れ876として集められた液体の一部を熱交換器880内で加熱する。次に、その加熱された流れ882を蒸留カラムに液体収集装置870より上の地点で戻す。流れ872、ポンプ874、流れ876、熱交換器880、流れ882および液体収集装置870を含んで成るループがその集められた液体を加熱するためのリボイラーセクションを構成する。このリボイラーセクションをその集められた液体に入っているペンテンニトリル(これは蒸発する)のパーセントの方がその集められた液体に入っているアジポニトリル(これは蒸発する)のパーセントより高くなるような様式で操作する。熱交換器880によって供給する熱は、前記リボイラーループの中を通る液体の収集および再循環を行っている間に失われる熱を熱を過剰に供給することなく回復させるに充分であり得る。熱交換器880はトリムヒーターであると見なすことができる。
側流れの流れ872から集められた液体を加熱するためのリボイラーから液体が戻る地点の回りに配置したポンプを図6に流れ882が蒸留カラム850に入り込む地点として示す。液体が戻る地点の回りに配置したこのポンプより上の蒸留カラムセクションはカラム850のペンテンニトリルフラッシャーセクションであると見なすことができる。このペンテンニトリルフラッシャーセクションにはトレーもしくはパッキングの形態の分離段階が1つ以上含まれていてもよい。これらの分離段階を図6ではパッキング854によって例示する。ペンテンニトリルフラッシャーから出て来る塔頂流れにはペンテンニトリルが豊富に存在し、通常は凝縮させてフラッシャーに還流させる必要はない。
蒸留カラム850を触媒が豊富な流れ(流れ862として取り出す)が含有するペンテンニトリルの量(3−ペンテンニトリルと2−メチル−3−ブテンニトリルの合計を包含)が少なくとも5重量%になるような様式で操作してもよい。蒸留カラム850の操作を更にアジポニトリルおよび中間沸騰物(例えばMGN、C8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾールを包含)が液体収集装置870に集められるような様式で実施することも可能である。その集められた液体を流れ878として取り出す。この流れ878を
抽出ゾーンに直接または間接的(例えば触媒パージ流れの中に)のいずれかで送り込んでもよい。このようにすると、抽出ゾーンに送り込まれた後に再利用触媒から分離される中間沸騰物の量が増加する。別の任意選択として、流れ878に入っている化合物を蒸留工程で分離して回収することも可能である。
低、中間および高沸騰物
1,3−ブテンニトリルをシアン化水素と反応させると3−ペンテンニトリルと2−メチル−3−ブテンニトリルの両方が生じる。2−メチル−3−ブテンニトリルの記載されている沸点は125℃であり、シス−2−ペンテンニトリルの記載されている沸点は127−128℃でありそしてトランス−3−ペンテンニトリルの記載されている沸点は144−147℃である。アジポニトリルを生じさせる一体式工程では、3−ペンテンニトリルをシアン化水素と反応させることでアジポニトリルを生じさせる。アジポニトリルの記載されている沸点は295℃である。
3−ペンテンニトリルとアジポニトリルを上述した工程で生じさせると、また、反応副生成物および触媒分解副生成物も生じる可能性がある。また、未反応反応体もペンテンニトリルとアジポニトリルを生じさせる目的で用いる反応ゾーンから出る流出物に入って飛沫同伴してくる可能性がある。
反応ゾーンから出る来る流出物に入っている特定の化合物を本明細書では低、中間または高沸騰物と呼ぶ。
本明細書で用いる如き用語“低沸騰物”は、2−メチル−3−ブテンニトリルの記載されている沸点、即ち125℃より低い沸点を示す化合物を指す。そのような低沸騰物の例には、1−ブテン、1,3ブタジエン、トランス−2−ブテン、シアン化水素およびシクロヘキサンが含まれる。1−ブテンの記載されている沸点は−6.3℃である。1,3−ブタジエンの記載されている沸点は−4.5℃である。トランス−2−ブタジエンの記載されている沸点は1℃であるシアン化水素の記載されている沸点は25.7℃である。シクロヘキサンの記載されている沸点は80.7℃である。(Z)−2M2BNの記載されている沸点は121.6℃である。
沸点が147℃から295℃の範囲の化合物を本明細書では中間沸騰物と呼ぶ。3−ペンテンニトリルの記載されている沸点はほぼ147℃であり得る。295℃はアジポニトリルに関して記載されている沸点である。中間沸騰物である化合物の例には、C9モノニトリル、フェノール、クレゾール、TBC、MGNおよびESNが含まれる。C9モノニトリルには、沸点が147から295℃の幅広い範囲の化合物が含まれる。フェノールおよびクレゾールの記載されている沸点は180から210℃の範囲である。t−ブチルカテコール(TBC)の記載されている沸点は285℃である。メチルグルタロニトリル、特に2−メチルグルタロニトリル(MGN)の記載されている沸点は269−271℃である。2−エチルスクシノニトリル(ESN)の記載されている沸点は264℃である。
高沸騰物の記載されている沸点はアジポニトリルの沸点、即ち295℃より高い。高沸騰物の例にはTTPまたはMTTP、燐含有配位子の分解生成物、Ni(CN)2、ZnCl2およびトリフェニルホウ素が含まれる。
反応ゾーンであるZ1、Z2およびZ3から出る来る流出物には、低沸騰物、中間沸騰物および高沸騰物が入っている。所望生成物、例えば3−ペンテンニトリルおよびアジポニトリルなどに精製をそのような所望生成物の溶液から不純物(これらは低沸騰物、中間沸騰物および高沸騰物である)を除去する必要がある点で受けさせる必要がある。また、再利用すべき触媒にも精製もしくは再生を特定の反応副生成物および触媒分解副生成物を
流れ(触媒の溶液を包含)から除去することで受けさせる必要がある。
1番目の反応ゾーン(Z1)内で生じる反応副生成物にはC8H13C≡N化合物が含まれる。このようなC8H13C≡N化合物は1,3−ブタジエンの二量化およびそのような二量体のヒドロシアン化で生じ得る。C8H13C≡N化合物を触媒から分離することができるが、その分離を1番目の反応ゾーン(Z1)または2番目の反応ゾーン(Z2)または1番目の反応ゾーン(Z1)と2番目の反応ゾーン(Z2)の両方に由来する触媒の精製で用いる抽出ゾーン内で実施する。C8H13C≡N化合物が通常に示す沸点は一般に150℃から295℃の範囲である。
1番目の反応ゾーン(Z1)から出る来る反応生成物には式
[式中、R1はHまたは炭素原子数が1から4のアルキル基であり、そしてnは0から4であるが、但し式(II)で表されるフェノール化合物がアルキル基を2個以上有する場合にはこれらのアルキル基が同じまたは異なってもよいことを条件とする]で表されるフェノール化合物が1種以上入っている可能性がある。そのようなフェノール化合物の例にはフェノールおよびクレゾールが含まれる。特に、クレゾールをTTP配位子の製造で用いそしてフェノールとクレゾールの両方をMTTP配位子の製造で用いる。従って、1番目の燐含有配位子がTTPの場合にはクレゾールが不純物として存在する可能性があり、そして1番目の燐含有配位子がMTTPの場合にはフェノールとクレゾールの両方が不純物として存在する可能性がある。また、クレゾールはTTP配位子の好ましくない加水分解によって1番目の反応ゾーン(Z1)内または抽出ゾーンの別の上流地点でも生じる可能性がある。その上、また、フェノールとクレゾールの両方がMTTP配位子の好ましくない加水分解によって1番目の反応ゾーン(Z1)内または抽出ゾーンの別の上流地点でも生じる可能性がある。そのようなフェノールおよびクレゾール不純物のおおよその沸点は180℃から210℃の範囲内である。3番目の反応ゾーン(Z3)の中に入り込む式(II)で表されるフェノール化合物の量を制限すると、3番目の触媒、特に3番目の燐含有配位子が起こす分解の度合を低下させることができる。
抽出ゾーンの上流で行う蒸留段階では、沸点が例えば150℃未満の化合物、例えば3PNおよび2M3BNなどを高沸点の触媒含有流れから分離する。t−ブチルカテコール、C8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾールの沸点は150℃以上であることから、それらは触媒と一緒に抽出ゾーンの上流の蒸留トレインの中を通り得る。しかしながら、もしt−ブチルカテコール、C8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾールが有意な量で存在すると、そのような化合物は抽出ゾーンのラフィネート相の中に取り込まれる。抽出ゾーンに送り込むべきジニトリル再循環流れを生じさせる目的で用いる蒸留トレイン内でそのようなラフィネート相に入っているC8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾールをジニトリルから分離することができる。
触媒精製
1,3−ブタジエンにヒドロシアン化を受けさせる目的で用いる触媒の特別な精製方法をアジポニトリル製造工程で用いることで、触媒分解生成物および反応副生成物の蓄積量を低下させることができる。その触媒に精製を液体/液体抽出処理で受けさせることができる。特に、1番目と3番目の触媒を精製する時に個別の抽出ゾーンを用いることができる。図1ではこれらのゾーンを抽出ゾーン150および抽出ゾーン370で示す。
補給用触媒の添加
1番目の反応ゾーン(Z1)内で反応を起こさせている過程ばかりでなく反応槽流出物を後で処理している間、例えば蒸留を行っている間に、1番目の触媒の一部が分解を起こすか失われる可能性がある。触媒が分解するか或は失われると触媒を補給する必要がある。図1に示すように、触媒が分解によって失われると、抽出処理後に触媒を補給する。図1では、当該触媒が抽出ゾーン150の中を通った後に補給用触媒を触媒再循環流れ146にライン145によって添加する。しかしながら、抽出ゾーン150の中を通った触媒に補給用触媒を供給しそして反応装置に別の場所で再び導入することも可能であることは理解されるであろう。
C8H13C≡N化合物の除去
1番目の反応ゾーン(Z1)内で1,3−ブタジエンとHCNの反応を起こさせている時に生じる反応副生成物にはC8H13C≡N化合物が含まれる。そのC8H13C≡N化合物は1,3−ブタジエンの二量化およびその二量体のヒドロシアン化で生じ得る。そのようなC8H13C≡N化合物が3PNとHCNの反応でアジポニトリルを製造するための反応ゾーンの中に入り込むと、そのC8H13C≡N化合物がHCNと反応することで好ましくないC8H14(C≡N)2化合物が生じ得る。そのようなC8H13C≡N化合物を除去する方法を以下に考察する。
C8H13C≡N化合物を1番目の触媒から液体/液体抽出ゾーン内で分離する。図1では、この分離を抽出ゾーン150内で実施する。ラフィネート流れの中に入り込んだC8H13C≡N化合物を次に蒸留で除去することができる。図2では、C8H13C≡N化合物をカラムK4内でアジポニトリルから流れ420によって除去する。
分離セクション1000および2000の中にライン510および710のそれぞれを通って入るラフィネート流れに入っている有意な量のC9モノニトリルはライン420の中にMGNと一緒に送り込まれる。
ペンテンニトリルをC9モノニトリルから取り出す目的で用いる蒸留段階でC9モノニトリルをペンテンニトリルから完全に分離するのは不可能である。従って、蒸留によってラフィネート相の高沸点成分から取り出したペンテンニトリルにはC9モノニトリルがいくらか入っている可能性がある。ラフィネート相に含まれる高沸点成分から取り出したペンテンニトリルに処理を受けさせることでC9モノニトリルを除去してもよい。ラフィネート相に含まれる高沸点成分から取り出したペンテンニトリルを用いて1番目の反応ゾーン(Z1)、2番目の反応ゾーン(Z2)または1番目の反応ゾーン(Z1)と2番目の反応ゾーン(Z2)の両方に再循環させる補給用触媒を生じさせることができる。
段階(a)の1番目の反応ゾーンから出て来た流出物に蒸留を単一の蒸留カラム内で受けさせることで2M3BNが豊富な流れおよび3−ペンテンニトリルとC9モノニトリルの両方が豊富に存在する流れを生じさせることができる。3−ペンテンニトリルとC9モノニトリルが豊富な流れに蒸留を受けさせることで3−ペンテンニトリルをC9モノニトリルから分離することができる。
段階(a)の1番目の反応ゾーンから出て来た流出物に蒸留を単一の蒸留カラム内で受
けさせることで(i)2M3BNが豊富な流れ、(ii)3−ペンテンニトリルが豊富な流れおよび(iii)C9モノニトリルが豊富な流れを生じさせることも可能である。2M3BNが豊富な流れを上部流れとして取り出してもよく、3−ペンテンニトリルが豊富な流れを側流れとして取り出してもよくそしてC9モノニトリルが豊富な流れを下部流れとして取り出してもよい。
本明細書の文脈において、C9モノニトリルは一般に炭素原子の数が全体で9(C9)の脂肪族モノニトリル化合物であると定義する。炭素−炭素二重結合を持つC9モノニトリルが更にシアン化水素と反応するとC10ジニトリル、例えばC8H14(C≡N)2などが生じ得る。理論で範囲を限定するものでないが、C9モノニトリルは化学式C8H13C≡Nで表されるジオレフィン系非環式C9モノニトリル化合物および化学式C8H13C≡Nで表されるモノオレフィン系環式C9モノニトリル化合物の様々な異性体であると理論付けする。化学式C8H13C≡Nで表される化合物は2個の1,3−ブタジエン分子と1個のシアン化水素分子が化合することで生じ得る。
工程サンプルに入っている炭素数が5のペンテンニトリル異性体(1,3−ブタジエンのヒドロシアン化および2−メチル−3−ブテンニトリルの異性化で生じる)および炭素数が6のジニトリル(ペンテンニトリルのヒドロシアン化で生じる)の量を量化するガスクロ(GC)方法を用いてまたC9モノニトリル化合物の量化を行うことも可能である。用いるGCカラムに応じて、C9モノニトリルはGCピークとして3−ペンテンニトリルが示すピークとアジポニトリルが示すピークの間の保持時間を伴って現れる可能性があり、1つの実測値は、そのようなC9モノニトリルが所定条件下で示した沸点が同じ条件下で3−ペンテンニトリルが示した沸点とアジポニトリルが示した沸点の中間に位置することと一致している。次に、GC/電子衝突イオン化方法を用いた質量分析を用い、m/e(質量/電荷比)=135[C8H13C≡N]+、134[C8H13C≡NマイナスH]+、120[C8H13C≡NマイナスCH3]+、106[C8H13C≡NマイナスC2H5]+、95[C8H13C≡NマイナスCH2C≡N]+、94[C8H13C≡NマイナスC3H5]+および81[C8H13C≡NマイナスC2H4C≡N]+から成る群より選択される1個以上の正イオンの実測値を用いることで、それらのピークの中のどれがC9モノニトリルのピークであるかを同定することができ、それによって工程サンプルに入っているC9モノニトリルの量をGC分析で量化することができる。
燐含有配位子のニッケル錯体とルイス酸の存在下でアジポニトリルを生じさせる3−ペンテンニトリルのヒドロシアン化を行っている時に、GC分析により、炭素−炭素二重結合を持つ特定のC9モノニトリル化合物もまたヒドロシアン化を受けて総炭素原子数が10(C10)の脂肪族ジニトリル化合物が生じ得るといった証拠がもたらされる。理論で範囲を限定するものでないが、これらのC10モノニトリルは化学式C8H14(C≡N)2で表されるモノオレフィン系非環式C10ジニトリル化合物および化学式C8H14(C≡N)2で表される環式C10モノニトリル化合物の様々な異性体であると考えている。
C10ジニトリルはGCピークとしてGC内部標準として用いる1,6−ジシアノヘキサン[炭素数が8のジニトリル]が示す保持時間の前後の保持時間を伴って現れる。次に、GC/電子衝突イオン化方法を用いた質量分析を用い、m/e(質量/電荷比)=162[C8H14(C≡N)2]+、161[C8H14(C≡N)2マイナスH]+、147[C8H14(C≡N)2マイナスCH3]+、135[C8H14(C≡N)2マイナスC2H3]+または[C8H14(C≡N)2マイナスHC≡N]+、134[C8H14(C≡N)2マイナスC2H4]+、122[C8H14(C≡N)2マイナスCH2C≡N]+、121[C8H14(C≡N)2マイナスC3H5]+、120[C8H14(C≡N)2マイナスC3H6]+、119[C8H14(C≡N)2マイナス
C3H7]+および105[C8H14(C≡N)2マイナスC4H9]+から成る群より選択される1個以上の正イオンの実測値を用いることで、それらのピークの中のどれがC10ジニトリルのピークであるかを同定することができ、それによって工程サンプルに入っているC10ジニトリルの量をGC分析で量化することができる。
t−ブチルカテコールの除去
t−ブチルカテコール(TBC)は重合禁止剤であり、これは1,3−ブタジエン、特に貯蔵中の1,3−ブタジエンの重合を抑制する。1,3−ブタジエンの商業源にはしばしば1,3−ブタジエンの重合を抑制する目的でTBCが少量入っている。
TBCは特定の燐含有配位子、例えば単座ホスファイト配位子および二座ホスファイト配位子などと反応し得る。ヒドロシアン化用触媒には燐含有配位子が入っている可能性があり、それはTBCと反応し得る。
ヨーロッパ特許公開番号1 344 770に、ホスファイト、ホスホナイトおよびホスフィナイト配位子を含有して成るヒドロシアン化用触媒がTBCと反応することに関する問題が記述されている。そのような問題は二座配位子を用いた時に顕著である、と言うのは、そのような配位子は少量用いられかつ高価である傾向があるからである。EP 1
344 770にTBCを様々な技術で除去することが記述されており、そのような技術には、蒸発または液状の1,3−ブタジエンを吸収剤の床、例えばアルミナなどの上に通すことが含まれる。
TBCを1番目の触媒から液体/液体抽出ゾーン内で分離することができる。図1では、この分離を抽出ゾーン150内で実施する。次に、ラフィネート流れの中に入って来たTBCを蒸留で除去することができる。図2では、TBCをメチルグルタロニトリルと一緒にアジポニトリルからカラムK4内で流れ420によって除去する。しかしながら、TBCはメチルグルタロニトリルが示す沸騰温度とアジポニトリルが示す沸騰温度の範囲の温度で沸騰する傾向があることでTBCを蒸留で除去するのは困難であり得ることから、ライン515内のラフィネート流れに入っているt−ブチルカテコールの少なくとも一部をジニトリル回収用ループに数回通すことでそれを除去する必要がある。例えば、t−ブチルカテコールを抽出ゾーン150の中にライン500内のジニトリルが豊富な流れと一緒に送り込んでもよい。しかしながら、t−ブチルカテコールは比較的極性が高い、例えばシクロヘキサンに比べて極性が高いことから、それは抽出ゾーン150の中で分離してラフィネート相の中に入り込む傾向がある。このようにして、t−ブチルカテコールが下流に流れて例えば図1に示す3番目の反応ゾーン(Z3)に入り込むのが防止される。MGNの沸点は269℃から271℃の範囲内であり、t−ブチルカテコールの沸点は285℃でありそしてアジポニトリルの沸点は295℃である。従って、カラムK4内の蒸留条件を制御することによって、ラフィネート流れにいくらか入っているt−ブチルカテコールの少なくとも一部をMGNと一緒にライン420に入った状態で除去することができる。
フェノール化合物の除去
フェノール化合物、例えばフェノールおよびクレゾールなどはBDとHCNの反応または2M3BNの異性化で用いる触媒に入っている触媒不純物として存在する可能性がある。フェノール化合物は燐含有配位子の加水分解で生じ得る。フェノール化合物は3PNとHCNの反応で用いる触媒に入っている配位子と反応し得る。そのようにフェノール化合物が触媒の配位子と反応すると結果として3PNとHCNの反応の収率または効率が低下する可能性がある。
フェノール化合物を3PNとHCNの反応で用いる反応ゾーンから出る反応流れから上
流で除去する。
フェノール化合物を1番目の触媒から液体/液体抽出ゾーン内で分離する。図1では、この分離を抽出ゾーン150内で実施する。次に、ラフィネート流れの中に入り込んだフェノール化合物を蒸留で除去することができる。図2では、フェノール化合物をアジポニトリルからカラムK4内で流れ420によって除去する。
1番目の燐含有配位子、2番目の燐含有配位子および3番目の燐含有配位子は、フェノール化合物、例えばフェノールまたはクレゾールなどと反応し得る配位子であり得る。そのような反応性配位子はホスファイト配位子またはホスホナイト配位子またはホスフィナイト配位子であり得る。
フェノール化合物は1番目の燐含有配位子の源に存在する不純物であり得る。例えば、TTP(即ちトリス(トリル)ホスファイト)またはMTTPの製造は式(II)で表される少なくとも1種のフェノール化合物とPCl3の反応で実施可能である。フェノール化合物が1番目の燐含有配位子の源に入っている不純物であると、フェノール化合物が段階(a)に前記1番目の燐含有配位子と一緒に送り込まれてしまう。
フェノール化合物は加水分解反応で生じる可能性があり、それによって触媒の劣化が起こる。触媒に入っている特定の燐含有配位子、例えばホスファイト配位子またはホスホナイト配位子またはホスフィナイト配位子などが水と反応するとフェノール化合物が生じる。例えば、TTP(即ちトリス(トリル)ホスファイト)が水と反応するとクレゾールが生じそしてMTTPが水と反応するとフェノールとクレゾールの混合物が生じる。フェノール化合物および燐含有配位子の分解生成物は3番目の反応ゾーンの上流で起こる加水分解反応によって生じ得る。例えば、このような加水分解反応は1番目の反応ゾーン内または1番目の反応ゾーンの下流、例えば蒸留カラム内などで起こり得る。また、燐含有配位子分解生成物は3番目の反応ゾーンの上流で起こる酸化反応または酸化反応と加水分解反応の両方でも生じ得る。
水または他のプロトン性化合物、例えばt−ブチルカテコールなどがパージ流れを取り出す地点より上流の装置内に存在するするとフェノール化合物が1番目の燐含有配位子の加水分解またはそれとプロトン性化合物の反応で生じ得る。フェノール化合物が生じると、それらは触媒再循環流れ140および触媒パージ流れ126の中に存在する可能性がある。また、1番目の反応ゾーン(Z1)の中に1番目の燐含有配位子と一緒に入り込んだフェノール化合物は触媒再循環流れ140および触媒パージ流れ126の中にも存在する可能性がある。式(II)で表されるフェノール化合物の少なくとも一部は抽出ゾーン150内で特定の反応副生成物および特定の触媒分解生成物、例えば1番目の触媒の酸化で生じるそれらなどと一緒に抽出されてラフィネート相の中に入り込むであろう。
燐含有配位子分解生成物の除去
ヒドロシアン化用触媒が燐含有配位子を含有すると、その配位子が加水分解または酸化反応の結果として分解を起こす可能性がある。そのような加水分解または酸化反応によって好ましくない不純物が生じる。燐含有配位子の加水分解および酸化生成物が米国特許第3,773,809号の中で考察されている。
燐含有配位子の分解生成物を3PNとHCNの反応で用いる反応ゾーンから出る反応流れから上流で除去する。
燐含有配位子の分解生成物を1番目の触媒から液体/液体抽出ゾーン内で分離する。図1では、この分離を抽出ゾーン150内で実施する。次に、ラフィネート流れの中に入り
込んだ燐含有配位子分解生成物を蒸留で除去することができる。図2では、燐含有配位子の分解生成物をジニトリルからカラムK3内で流れ640によって除去する。
メチルグルタロニトリル(MGN)の除去
1,3−ブタジエンをシアン化水素と反応させて3−ペンテンニトリル(これはモノニトリル化合物である)を生じさせる時、また、ジニトリル化合物も少量生じる可能性があり、それにはアジポニトリル(ADN)およびメチルグルタロニトリル(MGN)が含まれる。メチルグルタロニトリルが蓄積すると触媒の精製および再循環、触媒/配位子の安定性および触媒が蒸留カラムのリボイラー内で示す熱安定性に関連した問題の原因になり得る。
メチルグルタロニトリル(MGN)の蓄積を1,3−ブタジエンとシアン化水素の反応で生じたMGNを除去する特別な方法を用いて最小限にする。
MGNを1番目の触媒から液体/液体抽出ゾーン内で分離する。図1では、この分離を抽出ゾーン150内で実施する。次に、ラフィネート流れの中に入り込んだMGNを蒸留で除去することができる。図2では、MGNをアジポニトリルからカラムK4内で流れ420によって除去する。
ルイス酸が1番目の反応ゾーン(Z1)の中に入り込まないようにする方法
ペンテンニトリル、例えば3−ペンテンニトリルおよび2−メチル−3−ブテンニトリルなどは1,3−ブテンニトリルとシアン化水素の反応を触媒の存在下で起こさせている時に生じる。しかしながら、この反応では、また、ジニトリル、例えばアジポニトリルおよびメチルグルタロニトリルなども副生成物として生じる。ルイス酸助触媒をそのようにBDとHCNを反応させている時に存在させると、ジニトリル(メチルグルタロニトリルを包含)の生成量が増加する。好ましくないメチルグルタロニトリルが1,3−ブタジエンとHCNを反応させている過程で生じると、価値のある1,3−ブタジエン反応体(さもなければ望まれるアジポニトリルに変化するであろう)が事実上失われてしまう。
3−ペンテンニトリルおよび2−メチル−3−ブテンニトリルを触媒から分離しそして蒸留で回収することができる。その分離した触媒を再利用してもよい。しかしながら、ジニトリルを触媒から分離するのはより困難であることからそれが触媒再循環流れの中に蓄積する傾向がある。1,3−ブタジエンにヒドロシアン化を受けさせるための反応槽の中にジニトリルが蓄積すると有効反応槽体積が小さくなることで、反応効率に悪影響が生じる可能性がある。また、濃触媒組成物、例えば特定の蒸留カラム下部に存在する組成物などにジニトリルが蓄積すると触媒の分解または沈澱の原因になり得る。
ルイス酸が1,3−ブタジエンとシアン化水素を反応させるための反応ゾーンの中に流れ込む度合を制限することによって、結果として起こるジニトリルの好ましくない生成および触媒再循環流れの中で起こるジニトリルの好ましくない蓄積を最小限にする。更に、メチルグルタロニトリルを触媒再循環流れから除去することによって、結果として触媒再循環流れの中で起こる好ましくないジニトリルの蓄積を最小限にすることができる。
1番目の反応ゾーンZ1の中で起こさせる1,3−ブタジエンのヒドロシアン化
図1に示すように、1,3−ブタジエン(BD)を含有する原料を1番目の反応ゾーン(Z1)に例えばライン100によって送り込み、シアン化水素供給材料を前記1番目の反応ゾーン(Z1)に例えばライン120によって送り込みそして1番目の触媒を前記1番目の反応ゾーン(Z1)に例えばライン140によって送り込んでもよい。
1,3−ブタジエン原料
1,3−ブタジエン原料の1,3−ブタジエン含有量は原料の総重量を基準にして少な
くとも98重量%、好適には少なくとも99重量%、より好適には少なくとも99.5重量%であり得る。1つの態様では、そのような原料の1,3−ブタジエン含有量を原料の総重量を基準にして99.5から99.9重量%にするる。その原料の残りは残りの濃度の好ましくない不純物、例えばブタン、ブテン、1,2−ブタジエンおよびアセチレン、例えばプロピンなどであり得る。その原料にはまたt−ブチルカテコール(TBC)、例えば、4−t−ブチルカテコールなども入っている可能性がある。そのTBCの少なくとも95%は4−t−ブチルカテコールの形態で存在し得る。場合により、その原料に存在するTBCの一部を1,3−ブタジエンを1番目の反応段階に仕込む前に除去しておくことも可能である。そのBD含有供給材料に入っているアセチレンの量は全体で100ppm未満であり得る。
HCN供給材料
1番目の反応ゾーン(Z1)および3番目の反応ゾーン(Z3)に送り込むHC≡N供給材料は、Andrussow工程の生成物であり得、それをオレフィンヒドロシアン化反応ゾーンに入れる前にそれに蒸留による乾燥を受けさせておくことで水の量を約250ppm未満、例えば水の量を125ppm未満、例えば水の量を80ppm未満にしておく。しかしながら、HCN供給材料には通常は水が少なくともいくらか含まれているであろう。非常に乾燥しているHCNは不安定であり、この理由で、完全に無水のHCNを供給するのは好ましくない可能性がある。従って、HCN供給材料の水含有量を少なくとも10ppm、例えば少なくとも25ppm、例えば少なくとも50ppmにしてもよい。
そのようなシアン化水素(HC≡N)には好適には一酸化炭素も酸素もアンモニアも実質的に含まれていない。このようなHC≡Nを蒸気、液体またはこれらの混合物として1番目の反応ゾーン(Z1)および3番目の反応ゾーン(Z3)に導入してもよい。例えばヨーロッパ特許公開番号1 344 770を参照のこと。別法として、シアノヒドリンをHC≡Nの源として用いることも可能であり、例えば米国特許第3,655,723号を参照のこと。
1番目の反応ゾーン(Z1)内の装備
HC≡N供給材料、BD含有供給材料および触媒組成物を反応ゾーン内で接触させるが、その反応ゾーンは当業者に公知の適切ないずれかの装置内であってもよい。1つ以上の通常の装置を用いて反応ゾーン、例えば連続撹拌型タンク反応槽、ループ型バブルカラム反応槽、気体循環型反応槽、バブルカラム反応槽、管状反応槽またはこれらの組み合わせを生じさせてもよく、場合により反応熱の少なくとも一部を除去するための装置を伴わせてもよい。
1番目の反応ゾーン(Z1)内の反応条件
非酸化で無水の環境にすると当該触媒の酸化による失活が遅れる。従って、通常は無水の不活性な雰囲気、例えば窒素などを用いるが、触媒の一部が酸化および加水分解によって失われることを犠牲にするならば空気も使用可能である。
1,3−ブタジエン(BD)のヒドロシアン化を好適には酸素もアセチレンも水も実質的に含有しないBDを用いて実施する。BDを蒸気、液体またはこれらの混合物としてヒドロシアン化反応ゾーンに導入してもよく、例えばヨーロッパ特許公開番号1 344 770を参照のこと。BDを触媒と接触させる前にそれに入っているt−ブチルカテコールを少なくともある程度除去しておいてもよい。
BDのヒドロシアン化反応の温度を典型的には約−25℃から約200℃の範囲内、例えば約0℃から約150℃の範囲内に維持する。一般に、この反応の圧力をBDおよびHC≡Nが液状の反応混合物に溶解している触媒と接触した状態に維持されるに充分な圧力
にすべきであり、そのような圧力は少なくともある程度であるが反応混合物に存在する未反応のBDの量の関数である。この開示する方法をこの反応段階の圧力の上限で制限するものでないが、実用の目的で、その圧力を一般に約15psiaから約300psia(約1.03バールから約20.7バール)の範囲にしてもよい。
BDとHC≡Nの全体的供給モル比を約1:1から約100:1の範囲内、例えば約1:1から約2:1の範囲内にしてもよい。BDを反応ゾーン内に過剰に存在させるとBDのヒドロシアン化反応中に生じるジニトリルの量が少なくなる可能性がある。
HC≡NとBDを反応させる時のHC≡Nと触媒の供給モル比を約5:1から約100,000:1の範囲内、例えば約100:1から約5,000:1の範囲内にしてもよい。
1番目の触媒に単座配位子を含有させる態様では、HC≡NとBDを反応させるための触媒に入っている単座配位子とニッケルのモル比を約4:1から約50:1、例えば約4:1から約30:1、例えば約4:1から約15:1にしてもよい。
BDのヒドロシアン化反応ゾーン内の滞留時間は典型的にBD、HC≡Nまたはこれらの組み合わせの特定度合の変換率を得る必要性で決まる。BDのヒドロシアン化反応ゾーンに物理的反応槽を1基以上含めてもよい。例えば、BDのヒドロシアン化ゾーンに1基以上の栓流反応槽を1基以上の連続撹拌型タンク反応槽と組み合わせる組み合わせを含めてもよい。連続撹拌型タンク反応槽が示す混合特徴を実質的にもたらす反応槽を用いる場合の“滞留時間”は、その組み合わせた供給材料がこの反応段階に要する1基の反応槽の容積を押しのけるのに要する時間である。反応体から生成物への変換は滞留時間に加えてまた触媒の濃度および反応温度の影響も受け得る。一般に、滞留時間は約0.1時間から約15時間の範囲内、例えば約1時間から約10時間の範囲内であろう。HC≡Nの変換率は例えば99%以上であり得る。一般に、BDヒドロシアン化反応ゾーン内でBDが示す変換率を99%未満、例えば全体として80から95%の範囲、例えば全体として90%にしてもよい。HCNをヒドロシアン化反応ゾーンの中に段階的に添加することを利用してもよい。
1番目の反応ゾーン(Z1)から出る反応槽流出物の蒸留
BDヒドロシアン化反応ゾーンから出て来た反応生成物混合物(BD、3PN、2M3BNおよび触媒が入っている)に蒸留を1つ以上の蒸留装置内で受けさせることでBDが豊富な流れ、ペンテンニトリルが豊富な流れ(3PNおよび2M3BNが入っている)および触媒が豊富な流れ(触媒が入っている)を回収してもよい。そのBDが豊富な流れおよび触媒が豊富な流れをBDヒドロシアン化反応に再循環させてもよい。前記ペンテンニトリルが豊富な流れにさらなる蒸留を受けさせることで2M3BNが豊富な流れおよび2M3BNが除去された流れ(3PNが入っている)を得ることができる。
BDヒドロシアン化工程から出て来た2M3BNが豊富な流れは2M3BN異性化工程に送り込む2M3BN供給材料であり得る。図1および4では、この2M3BNが豊富な流れを流れ200で表す。前記2M3BNが除去された流れ(3PNが入っている)を3番目の反応ゾーン(Z3)に送り込む3PN供給材料として用いてもよい。2M3BNが除去された流れ(3PNが入っている)を図4では流れ838として表す。
上述したように、1,3−ブタジエンとシアン化水素の反応を1番目の触媒を存在させて1番目の反応ゾーン(Z1)内で起こさせると1番目の反応流出物(流れ122)が生じ、それには1,3−ブタジエン、3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリルおよび1番目の触媒が入っている。この反応流出物に入っているそれらの成分に分離
を1つ以上の蒸留段階で少なくともある程度受けさせてもよく、それらを図1では分離セクション125で図式的に示す。分離セクション125の一例を図4により詳細に示す。特に、これらの蒸留段階を1つ以上の蒸留カラム内で起こさせることで下記を得ることができる:
1)少なくとも1種の1,3−ブタジエンが豊富な流れ812および824、
2)1番目の2−メチル−3−ブテンニトリルが豊富な流れ200、
3)1番目の3−ペンテンニトリルが豊富な流れ838、および
4)1番目の触媒が豊富な流れ140。
これらの流れには個々の成分がこれらの成分の濃度が1番目の反応ゾーン(Z1)から出て来た流出物(ライン122内)のそれよりも高い点で豊富に存在する。例えば、1番目の触媒が豊富な流れ140の触媒の濃度はライン122内の流出物流れのそれよりも高い。前記1番目の2−メチル−3−ブテンニトリルが豊富な流れ200および1番目の3−ペンテンニトリルが豊富な流れ838の各々に含まれる燐含有配位子の量は重量で表して全体で500ppm未満、例えば燐含有配位子の量は重量で表して350ppm未満、例えば燐含有配位子の量は重量で表して200ppm未満であり得る。1番目の反応ゾーン(Z1)から出て来た流出物にジニトリルが過剰量で存在すると、触媒が熱で分解を起こす可能性があり、それが、1番目の触媒が豊富な流れ140を得る目的で用いる蒸留装置のカラム下部の中でニッケル/配位子錯体が解離を起こす原因になる。
蒸留工程を用いることで、3−ペンテンニトリルと2−メチル−3−ブテンニトリルの混合物を少なくとも1種の燐含有配位子から少なくともある程度分離することができる。例えば、供給材料入り口と上部流れ出口と下部流れ出口が備わっている蒸留装置を用いることでそのような分離を助長することができる。燐含有配位子流れ、例えば流れ813(3PN、2M3BNおよび燐含有配位子を含有する少なくとも1種の触媒が入っている)などを1番目の蒸留装置の供給段階に供給材料入り口に通して流れ込ませてもよい。この蒸留装置にはストリッピングセクション、精留セクションまたは両方が備わっていてもよい。供給材料入り口と上部流れ出口の間に分離段階を少なくとも1段階存在させてもよい。ペンテンニトリルが豊富な流れ(3−ペンテンニトリルおよび2−メチル−3−ブテンニトリルが入っている)を上部流れ出口から取り出してもよい。この流れに入っている少なくとも1種の燐含有配位子の量は蒸留カラムに送り込んだ燐含有配位子流れのそれに比べて少なくなっている。ペンテンニトリルが除去された流れを下部流れ出口から取り出してもよい。このペンテンニトリルが除去された流れには燐含有配位子が蒸留カラムに送り込んだ燐含有配位子流れのそれに比べて豊富に存在する。1番目の蒸留装置をペンテンニトリルが除去された流れに入っているペンテンニトリルの量(3−ペンテンニトリルと2−メチル−3−ブテンニトリルの合計を包含)が少なくとも5重量%になるように操作してもよい。
そのペンテンニトリルが豊富な流れ(3−ペンテンニトリルおよび2−メチル−3−ブテンニトリルが入っている)を2番目の蒸留装置内で蒸留することで2−メチル−3−ブテンニトリルが豊富な流れを上部生成物として得ると共に2−メチル−3−ブテンニトリルが除去された流れ(即ち3−ペンテンニトリルが豊富な流れ)を釜残生成物として得ることができる。
前記1番目の3−ペンテンニトリルが豊富な流れには2−メチル−3−ブテンニトリルが少量入っている可能性がある。このような少量の2−メチル−3−ブテンニトリルを3−ペンテンニトリルから1つ以上の蒸留カラム内で分離することができ、その中で2−メチル−3−ブテンニトリルを上部生成物として回収しかつ3−ペンテンニトリルを釜残生成物として回収する。例えば、2つ以上の3−ペンテンニトリルが豊富な流れを一緒にして単一もしくは共用の蒸留カラム内で蒸留するか或はこれらの流れを個別の蒸留カラム内
で蒸留することも可能である。そのような蒸留で回収した2−メチル−3−ブテンニトリルを2番目の反応ゾーン(Z2)に供給材料として送り込んでもよくかつそのような蒸留で回収した3−ペンテンニトリルを3番目の反応ゾーン(Z3)に供給材料として送り込んでもよい。
中間沸騰物の除去を最適にする目的でZ1から出て来た流出物の蒸留
中間沸騰物、例えばMGN、C8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾールなどを反応系から除去する時、1番目の反応ゾーン(Z1)から出て来た反応生成物の流れの蒸留を特別な様式で実施することで除去を助長することができる。例えば、未反応の1,3−ブタジエンおよびシアン化水素を1番目の反応ゾーン(Z1)から出て来た反応生成物流れから除去した後、ペンテンニトリル、ゼロ価ニッケルおよび1番目の燐含有配位子が入っている流れを供給材料入り口と上部流れ出口と下部流れ出口が備わっている蒸留カラムに送り込んでもよい。その蒸留カラムにストリッピングセクション、精留セクションまたは両方を装備してもよい。分離段階を少なくとも1段含有して成る精留セクションを供給材料入り口と上部流れ出口の間に設ける。ペンテンニトリルが豊富な流れを上部流れ出口から取り出す。触媒が豊富な流れを下部流れ出口から取り出す。その蒸留カラムを触媒が豊富な流れがペンテンニトリル(3−ペンテンニトリルと2−メチル−3−ブテンニトリルの合計を包含)を少なくとも5重量%含有するような様式で操作する。このようにすると、中間沸騰物が触媒が豊富な流れの中に入り込む傾向がある。次に、これらの化合物を少なくともある程度ではあるが反応系から除去することができるが、これは、この上に記述した如きラフィネート処理工程によってラフィネートに出入りする抽出過程で可能になる。
1番目の反応ゾーン(Z1)から出て来た反応生成物流れ(1,3−ブタジエンおよびシアン化水素がなくなっている)を蒸留する前記工程の改良では、前記蒸留カラムに更に側流れ出口も設ける。分離段階を少なくとも2段含有して成る精留セクションを供給材料入り口と上部流れ出口の間に設ける。ペンテンニトリルが豊富な流れを上部流れ出口から取り出す。触媒が豊富な流れを下部入り口から取り出す。この蒸留カラムに更に液体収集装置、例えばチムニートレーなどを装備するが、それを精留セクションの中に位置させる。その精留セクションの液体収集装置の中に入っている液体を供給材料段階と上部流れ出口の間の場所で集める。その集められた液体の少なくとも一部を取り出すことで側流れの流れを得る。この蒸留カラムを触媒が豊富な流れがペンテンニトリル(3−ペンテンニトリルと2−メチル−3−ブテンニトリルの合計を包含)を少なくとも5重量%含有するような様式で操作してもよい。また、前記蒸留カラムをジニトリルおよび中間沸騰物、例えばMGN、C8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾールなどが前記カラムから側流れ出口を通って出る傾向があるように操作することも可能である。次に、その側流れから出て来た流れを抽出システムに直接または間接的に送り込んでもよい。別の態様では、前記側流れから出て来た流れを蒸留カラムに送ることでフェノール、クレゾールおよびC8H13C≡N化合物を選択的に除去する。このようにして、C8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾールの少なくとも一部を再利用触媒から分離する。
1番目の触媒の再利用および精製
1番目の触媒が豊富な流れを分離セクション125からライン140に通して流す。ライン140に入っている前記触媒が豊富な流れの一部を取り出すことで1番目の触媒パージ流れを生じさせて、それをライン126に通して流す。このパージ流れには1番目の触媒、触媒分解生成物および反応副生成物が入っている。ライン126に入っている前記1番目の触媒パージに由来する1番目の触媒の少なくとも一部を液体−液体抽出が備わっている1番目の触媒再生ゾーンに送り込むことで触媒分解生成物および反応副生成物を前記1番目の触媒から少なくともある程度分離する。
流れ140に入っている1番目の触媒の少なくとも80%、好適には少なくとも90%、例えば93から96%、少なくとも99%、少なくとも99.9%、実質的に全部を再利用する。1番目の触媒再循環流れ140の一部をパージ流れ126として取り出すことで精製と回収を実施する。この開示する方法の態様として、取り出し、精製し、回収しそして場合によりニッケル含有量を高くする処理を受けさせる循環している触媒の最低限量をその循環している触媒の2、5、10、15および20重量%から選択する。他の態様では、取り出し、精製し、回収しそして場合によりニッケル含有量を高くする処理を受けさせる循環している触媒の量を100、75、50、25重量%未満にしてもよい。次に、その精製して回収した触媒を1番目(Z1)または2番目(Z2)いずれかの反応ゾーンに戻す。
1番目と3番目の触媒に適用する如き精製段階を隔離することで、1番目の触媒と3番目の触媒が1番目(Z1)および2番目(Z2)の反応ゾーンおよびまた3番目(Z3)反応ゾーン内で混ざり合うことを回避する(少なくとも本明細書の上に記述するように僅少度合にまで低くする)。
触媒再生ゾーンで実施する工程は下記の段階を含んで成り得る:
1)ジニトリルが入っているジニトリル流れおよび抽出用溶媒が入っている抽出用溶媒
流れを抽出ゾーンに導入し、
2)前記抽出ゾーン内で触媒パージと前記抽出用溶媒流れに由来する抽出用溶媒と前記
ジニトリル流れに由来するジニトリルを接触させることで前記抽出ゾーン内に抽出
相とラフィネート相を包含する少なくとも2つの混和しない液相を得、
3)前記抽出相から抽出用溶媒と触媒が入っている抽出流れを取り出し、
4)前記ラフィネート相からジニトリルと触媒分解生成物と反応副生成物が入っている
ラフィネート流れを取り出し、
5)前記抽出流れに蒸留を受けさせることで少なくとも1種の抽出用溶媒が豊富な流れ
と抽出用溶媒が除去された流れ(即ち触媒が豊富な流れ)(これには分離された触
媒が入っている)を得、そして
6)場合により、前記ラフィネート相に1段階以上の蒸留を受けさせることで触媒分解
生成物を除去しかつそのような触媒分解生成物が除去されたジニトリル流れを生じ
させる。触媒分解生成物が示す沸点はアジポニトリルのそれよりも低いか或は高い
可能性があり、従って、通常の技術者は、留出させるべき成分が示す蒸気−液体平
衡データを取得することによって、そのような任意の蒸留段階を構築することがで
きるであろう。
触媒の精製または再生を実施する結果として触媒分解生成物を除去する。そのような触媒分解生成物には、例えば1種以上の燐含有配位子の加水分解生成物、例えばフェノールおよび置換フェノールなど、1種以上の燐含有配位子の酸化生成物、例えばホスファイト配位子の酸化で生じるホスフェートなど、Ni(C≡N)2、配位子の加水分解生成物およびニッケル金属の中の1種以上が含まれ得る。
触媒の精製または再生を実施するとまた結果として反応副生成物も除去される。そのような反応副生成物の例には、C8H13C≡N化合物、2−メチル−2−ブテンニトリル、2−ペンテンニトリル、2−メチルグルタロニトリルおよびエチルスクシノニトリルが含まれる。
1番目の抽出ゾーン
1番目の抽出ゾーンを図1に示す。触媒パージ流れ126を液体/液体抽出ゾーン150に送り込む。非極性溶媒、例えばアルカンなどを前記液体/液体抽出ゾーン150にライン130に通して送り込む。また、極性溶媒(これは前記非極性溶媒に混和しない)も
前記液体/液体抽出ゾーン150にライン500に通して送り込む。抽出ゾーン150にライン500に通して導入する極性溶媒にはアジポニトリルが入っている。触媒パージ流れ126には1番目の反応ゾーン(Z1)内で生じた反応副生成物および触媒分解副生成物が入っている。抽出ゾーン150内では、非極性溶媒および触媒が入っている非極性相と極性溶媒および例えば反応副生成物および触媒分解生成物などが入っている極性相(例えばラフィネート)が生じる。その非極性相を抽出ゾーン150からライン134によって取り出して蒸留カラム155に送る。前記極性相を抽出ゾーン150からライン510によって取り出して分離セクション1000に送る。
前記抽出ゾーンに供給する抽出用溶媒は、直鎖脂肪族、分枝脂肪族、非置換脂環式およびアルキル−置換脂環式炭化水素から成る群より選択した少なくとも1種の炭化水素化合物であってもよい。そのような抽出用溶媒は1気圧下で30℃から135℃の範囲、例えば60℃から100℃の範囲で沸騰し得る。前記抽出ゾーンに送り込むジニトリル供給材料は主にアジポニトリルで構成されていてもよい。前記ジニトリル流れを前記液体/液体抽出ゾーンに再循環させる前にそれからMGNおよびESNを少なくともある程度除去しておいてもよい。
前記抽出ゾーンに含める抽出段階は複数であってもよい。触媒パージ流れおよび場合により側流れの流れ(中間沸騰物が入っている)を前記抽出ゾーンの異なる抽出段階に仕込んでもよい。そのような側流れの流れは、触媒を含有するペンテンニトリルを蒸留してペンテンニトリルが豊富な流れを上部流れとして得かつ触媒が豊富な流れを下部流れとして得る時に生じ得る。触媒パージ流れおよび側流れの流れには両方ともジニトリルおよび中間沸騰物、例えばC8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾールなどが入っている可能性がある。前記抽出ゾーン内で抽出相とラフィネート相が向流様式で流れるようにしてもよい。上述した側流れの流れ(中間沸騰物が入っている)を多段階抽出ゾーンおよび抽出段階の1番目の段階よりも近い抽出段階(ラフィネート相を取り出す)に仕込んでもよい。抽出用溶媒を前記抽出ゾーンの同じ抽出段階(ラフィネート相を抽出ゾーンから取り出してラフィネート流れを得る)に仕込んでもよい。前記触媒が豊富な流れを前記抽出ゾーンの同じ抽出段階(抽出相を抽出ゾーンから取り出して抽出流れを得る)に仕込んでもよい。多段階抽出ゾーンでは、また、前記触媒が豊富な流れの一部も前記抽出ゾーンの同じ抽出段階(ラフィネート相を抽出ゾーンから取り出してラフィネート流れを得る)に仕込んでもよい。
また、補給用触媒反応槽に由来する補給用触媒が入っている流れも前記抽出ゾーンの下流の触媒ループに導入してもよい。多段階抽出ゾーン(例えば抽出段階を少なくとも3、例えば少なくとも4、例えば少なくとも5段含有する)内では、当該触媒の補給用ホスファイト配位子を触媒パージ流れを仕込む段階の近くに導入してもよい。
抽出相とラフィネート相を生じさせる抽出ゾーンでは、モノニトリル化合物の総モル量をジニトリル化合物の総モル量で割ったモル比がそのような相分離を達成するに充分なモル比であるようにすべきである。例えば、このモル比を0から0.5、例えば0.005から0.5、例えば0.01から0.25、例えば0.05から0.20、例えば0.05および0.15、例えば0.1および0.5などにしてもよい。前記抽出ゾーンに入っているモノニトリルには4−ペンテンニトリル、3−ペンテンニトリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、2−メチル−2−ブテンニトリルおよびバレロニトリルが含まれ得る。前記抽出ゾーンに入っているジニトリルにはアジポニトリル、2−メチルグルタロニトリルおよびエチルスクシノニトリルが含まれ得る。触媒が抽出されて抽出用溶媒相に適切に入り込むようにする目的で、前記抽出ゾーンに流れ込む触媒が豊富な流れの流量および前記抽出ゾーンから流れ出る抽出用溶媒相の流量を調節すべきである。また、前記抽出ゾーンの中に流れ込む触媒が豊富な流れの流量および前記抽出ゾー
ンの中に流れ込む抽出用溶媒の流量も調節べきである。例えば、前記抽出ゾーンに流れ込む抽出用溶媒の質量流量を前記抽出ゾーンに接触の目的で送り込むジニトリルと触媒供給材料の質量流量の合計で割った比率が約2未満、例えば1.5未満、例えば1.2未満になるようにしてもよい。更に、前記抽出ゾーンから取り出すラフィネート流れの流量および前記抽出ゾーンの中に流れ込む触媒流れの流量も調節すべきである。例えば、前記抽出ゾーンから取り出すラフィネート流れの質量流量をペンテンニトリルが除去された流れ(前記抽出ゾーンに接触の目的で流れ込ませる)の質量流量で割った比率が約0.9以上になるようにしてもよい。Walterの米国特許第3,773,809号に適切な液体/液体抽出工程の一例が教示されている。
前記抽出ゾーン内の温度を相分離および触媒抽出が助長されるように25℃から135℃、例えば25℃から90℃、例えば50℃から75℃にしてもよい。前記抽出ゾーン内のモノニトリル(例えば触媒が豊富な流れを一緒にした)およびジニトリルの流れの濃度が重量で表して総モノニトリルの2−20%、例えば5−15%の範囲になるようにしてもよく、例えばモノニトリル成分を計算する時、2−ペンテンニトリル、3−ペンテンニトリル、4−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、2−メチル−2−ブテンニトリルおよびバレロニトリルを包含するモノニトリル化合物の重量の合計として計算を行う。
抽出用溶媒の再利用
非極性溶媒を蒸留で回収して抽出ゾーンに再循環させることで、触媒の精製(即ち再生)を行ってもよい。例えば図1に示すように、非極性溶媒を蒸留カラム155内の蒸留によって回収した後に抽出ゾーン150にライン130によって戻してもよい。抽出ゾーン150、ライン134、蒸留カラム155およびライン130が集合的に非極性溶媒を抽出ゾーン150に再循環させるための回収用ループを構成している。抽出ゾーン150、ライン510、分離セクション1000およびライン500が集合的に極性溶媒を抽出ゾーン150に再循環させるための回収用ループを構成している。
前記抽出流れに蒸留を少なくとも1基の蒸留カラム内で1psiaから22psia(0.07バールから1.5バール)の圧力下でベース温度を約160℃未満、例えば約150℃未満、例えば約140℃未満にして受けさせてもよい。そのベース温度をある程度ではあるが触媒組成物の熱安定性が維持されるように選択する。
1番目の反応ゾーン(Z1)から出て来たラフィネートの蒸留
前記抽出ゾーンから出て来たラフィネート流れに蒸留を1基以上の蒸留カラム内で受けさせることでジニトリルを前記ラフィネート流れに入っている他の成分、例えば抽出用溶媒、ペンテンニトリル、反応副生成物および触媒分解生成物などから分離してもよい。次に、前記ラフィネート流れに入っている他の成分から分離したジニトリルを抽出ゾーンに再循環さてもよい。
上述した如きラフィネート相の蒸留を図2に示す。
前記抽出用溶媒の大部分が抽出ゾーン内で分離されて溶媒相の中に入り込むが、抽出用溶媒がいくらか抽出されてラフィネート相にも入り込む。従って、このラフィネート流れには抽出用溶媒がいくらか入っている。このラフィネート流れには更に少なくとも1種のペンテンニトリル(典型的にはペンテンニトリルの混合物)、t−ブチルカテコール、C8H13C≡N化合物、フェノール、クレゾールおよびジニトリル(アジポニトリル(ADN)およびメチルグルタロニトリル(MGN)を包含)の中の1種以上も入っている可能性がある。前記ラフィネート流れの蒸留を行う1番目の蒸留段階として、沸点がペンテンニトリルより低い抽出用溶媒が前記ラフィネート流れに入っている他の高沸点成分から
分離されることで、抽出用溶媒が除去されたラフィネート流れを得ることができる。そのような抽出用溶媒が示す沸点は例えば30から135℃、例えば60から100℃であり得る。そのような抽出用溶媒の一例はシクロヘキサンであり、これの沸点(BP)は81℃である。
前記ラフィネート流れの蒸留を行う2番目の蒸留段階では、ペンテンニトリルを前記ラフィネート流れに入っている他の高沸点成分から除去することで、ペンテンニトリルが除去されたラフィネート流れを得ることができる。そのペンテンニトリルが除去されたラフィネート流れに入っているペンテンニトリル(4−ペンテンニトリル、3−ペンテンニトリルおよび2−ペンテンニトリルの合計を包含)の量は重量で表して例えば全体で少なくとも0.01%、例えば少なくとも0.07%、例えば少なくとも0.1%、例えば1%未満であり得る。この2番目の蒸留段階で塔頂流れとして取り出すことが可能なペンテンニトリルの例には、2−メチル−3−ブテンニトリル、トランス−3−ペンテンニトリル、シス−3−ペンテンニトリル、トランス−2−ペンテンニトリルおよびシス−2−ペンテンニトリルが含まれる。そのようにして取り出したペンテンニトリルが示すおおよその沸点は120℃から150℃の範囲内であり得る。前記カラムを中間沸騰物、例えばC9モノニトリルなどの大部分がペンテンニトリルが除去された流れの中に入ったままであるに充分な条件下で操作してもよい。このような条件には、少なくともいくらかのペンテンニトリルがそのペンテンニトリル除去された流れの中に入り込むように前記カラムを操作することが含まれ得る。
上述した2番目の蒸留段階で得たそのペンテンニトリルが除去されたラフィネート流れを少なくとも3番目の蒸留段階に導入してもよい。この3番目の蒸留段階では、沸点がジニトリルより高い組成物を例えばt−ブチルカテコール、C8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾール(存在するならば)などの如き化合物およびジニトリルから下部流れとして分離する。そのような釜残生成物の沸点は例えば少なくとも300℃であり得る。対照的に、上述した2番目の蒸留段階で得たそのペンテンニトリルが除去されたラフィネート流れに入っている大部分のジニトリルは260℃から300℃のおおよその範囲内の沸点を示す傾向があるであろう。
ラフィネート流れの蒸留を行う3番目の蒸留段階を1基以上の蒸留カラム内で行ってもよい。この3番目の蒸留段階で単一の蒸留カラムを用いる例として、沸点が例えば250℃未満の化合物を塔頂流れとして取り出し、沸点が例えば260℃から300℃の化合物を蒸留カラムから側流れとして取り出し、そして沸点が例えば300℃以上の化合物を下部流れとして取り出す。3番目の蒸留段階のこの例では、塔頂流れにC8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾールなどの如き化合物が入っている可能性があり、側流れにt−ブチルカテコールおよびジニトリルなどの如き化合物が入っている可能性がありそして下部流れに触媒分解生成物などの如き化合物が入っている可能性があり、それには例えばNi(CN)2およびオルガノホスファイト配位子の酸化で生じたオルガノホスフェートが含まれる。例えば、トリス(トリル)ホスフェートはトリス(トリル)ホスファイトの酸化副生成物である。
このような分離をまた2基の蒸留カラム内で実施することも可能である。2基の蒸留カラムを3番目の蒸留段階で用いる場合、1番目の蒸留カラムを沸点が300℃以上の化合物が入っている下部流れが生じそしてジニトリルおよび例えばC8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾールなどが入っている塔頂流れが生じるように操作してもよい。次に、その塔頂流れを2番目の蒸留カラムに送ることでジニトリルを下部流れとして生じさせそしてC8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾールが入っている塔頂流れを生じさせてもよい。
前記3番目の蒸留段階から出て来たジニトリル流れにメチルグルタロニトリル(MGN)、特に2−メチルグルタロニトリル(2−MGN)が入っている場合、この流れにさらなる蒸留を受けさせて前記流れからMGNを除去することで、アジポニトリルが豊富に存在する流れを生じさせて、それを抽出ゾーンに再循環させてもよい。2−MGNが示すおおよその沸点は269℃から271℃である一方、アジポニトリルが示すおおよその沸点は295℃である。t−ブチルカテコール、特に4−t−ブチルカテコールが示す沸点は285℃である。また、ラフィネート流れを処理するための上述した3番目の蒸留段階の塔頂溜分点をMGNがC8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾールと一緒に側流れが備わっている単一蒸留カラムの場合には塔頂流れとしてか或は2基のカラムを用いる場合には2番目の蒸留カラムの塔頂流れとして取り出されるように調整してもよい。MGNをアジポニトリルから除去するとMGNの好ましくない蓄積が防止される。MGNを除去するとまたC8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾールを触媒再循環流れおよび全体の反応系から除去することも助長される。MGNを除去すると更にいくらか存在する2−エチルスクシノニトリル、ADNおよびMGNの異性体の除去も助長される。2−エチルスクシノニトリルが示す沸点は264℃である。ジニトリル流れにいくらか存在するt−ブチルカテコールの少なくとも一部もMGNと一緒に除去され得る。前記蒸留カラムから回収したMGN含有流れにさらなる精製を不純物、例えばフェノール、クレゾールおよびTBCなどを除去することで受けさせてもよい。精製されたMGNは商業的に販売可能である。MGNは溶媒/中間体として繊維産業で用いるに有用である。
前記抽出ゾーンから出て来たラフィネート流れを精製されたアジポニトリル流れ(これを後で抽出ゾーンに再循環させる)に変えるための個々の蒸留段階をこの上に記述してきたが、他の蒸留段階も可能であることは理解されるであろう。そのような段階の設計および操作は当該技術分野の通常の技術の範囲内である。前記ラフィネートに入っているアジポニトリルから取り出した化合物の流れを処分するか、更に精製するか、別の反応工程で用いるか、或は反応系全体の中の適切な地点に再循環させてもよい。
上述した3番目の蒸留段階で得た釜残(触媒分解生成物が入っている)をワイプトフィルム(wiped film)蒸発装置(WFE)に送り込むことでそのような釜残に入っているアジポニトリルを回収してもよい。また、アジポニトリル回収セクション3000でワイプトフィルム蒸発装置を用いることで触媒分解生成物からアジポニトリルを回収することも可能である。分離セクション1000および分離セクション2000から得た触媒分解生成物をアジポニトリル回収セクション3000内のワイプトフィルム蒸発装置に送り込むことで、ジニトリルから分離した濃触媒分解生成物の全部に入っているアジポニトリルを前記セクション内で回収することができる。
1番目の反応ゾーン(Z1)への再利用触媒の導入
触媒を非極性溶媒を触媒から蒸留するための蒸留装置に通した後、その精製された(即ち再生された)触媒を1番目の反応ゾーンに再循環させてもよい。1番目と2番目の触媒が同じ燐含有配位子を含有して成る場合、その精製(即ち再生された)2番目の触媒の少なくとも一部を1番目の反応ゾーンに再循環させてもよい。例えば図1を参照して、蒸留カラム155から出て来たカラム釜残にはある程度精製された触媒が入っている。このある程度精製された触媒を蒸留カラム155からライン156および146に通して取り出して、1番目の反応ゾーン(Z1)に再循環させるための触媒再循環ライン140に導入してもよい。場合により、側流をライン246から取り出してライン200または240に送り込んでもよく、そしてこの側流を2番目の反応ゾーン(Z2)に送り込む触媒供給材料として用いてもよい。1番目の触媒のある程度精製された流れ(これを後で2番目の反応ゾーン(Z2)に供給する)に例えば追加的ゼロ価Niなどおよび/または1番目の燐含有配位子をライン245によって供給してもよい。図1には示していないが、場合により、ライン245をライン240の代わりにライン246またはライン248に直接向
かわせることも可能である。
カラム155から出て来たライン156に入っているカラム釜残の組成物に入っているゼロ価Niは例えば1−2重量%であり、燐含有配位子は70−90重量%であり、抽出ゾーン150で用いた非極性溶媒、例えばシクロヘキサンなどは4重量%未満であり、ペンテンニトリルは10重量%未満でありそしてジニトリルは10重量%未満であり得る。
2番目の反応ゾーン(Z2)内で起こさせる2−メチル−3−ブテンニトリルの異性化
図1に示すように、2−メチル−3−ブテンニトリル(2M3BN))含有原料を2番目の反応ゾーン(Z2)に例えばライン222によって送り込んでもよくそして2番目の触媒を前記2番目の反応ゾーン(Z2)に例えばライン240によって送り込んでもよい。
2番目の反応ゾーン(Z2)内で、1番目の2−メチル−3−ブテンニトリルが豊富な流れの少なくとも一部の反応をゼロ価のニッケルと少なくとも1種の燐含有配位子を含有して成る2番目の触媒の存在下で起こさせる。図1では、この1番目の2−メチル−3−ブテンニトリルが豊富な流れを分離セクション125から2番目の反応ゾーン(Z2)にライン200によって送り込む。図1には上述した1番目の3−ペンテンニトリルが豊富な流れおよび1,3−ブタジエンが豊富な流れを分離セクション125から取り出すためのラインを示していない。この1番目の3−ペンテンニトリルが豊富な流れを例えば2番目の反応ゾーン(Z2)を迂回させて3番目の反応ゾーン(Z3)または供給ライン、例えば図1に示したライン300などに直接送り込むことで3番目の反応ゾーン(Z3)に導入することも可能である。上述したように、その1,3−ブタジエンが豊富な流れを1番目の反応ゾーン(Z1)に再循環させて戻すことも可能である。
2−メチル−3−ブテンニトリル供給材料
2番目の反応ゾーン(Z2)に送り込む2−メチル−3−ブテンニトリル供給材料を本明細書の上に記述した蒸留段階で得る。この供給材料に入っている2M3BNの量は少なくとも30重量%であってもよい。また、この供給材料に入っている2M3BN以外のペンテンニトリルの量は70重量%未満であってもよくかつ1番目の燐含有配位子の量は1重量%未満、例えば0.1重量%未満であってもよい。
2番目の反応ゾーン(Z2)内の装備
2M3BN含有供給材料と触媒組成物を反応ゾーン内で接触させるが、その反応ゾーンは当業者に公知の適切ないずれかの装置内であってもよい。1つ以上の通常の装置を用いて反応ゾーン、例えば連続撹拌型タンク反応槽、ループ型バブルカラム反応槽、気体循環型反応槽、バブルカラム反応槽、管状反応槽またはこれらの組み合わせを生じさせてもよく、場合により反応熱の少なくとも一部を除去するための装置を伴わせてもよい。
2番目の反応ゾーン(Z2)内の反応条件
異性化反応段階で用いる2M3BNと触媒の供給モル比を一般に1:1以上、通常は約5:1から20,000:1の範囲内、例えば約100:1から約5,000:1にする。
単座配位子を用いる場合、異性化反応で用いる触媒に入っている単座配位子とゼロ価ニッケルのモル比を約1:1から約50:1、例えば約1:1から約30:1にしてもよい。二座配位子を用いる場合、異性化反応で用いる触媒に入っている二座配位子とゼロ価ニッケルのモル比を1:1から10:1、例えば1:1から5:1にしてもよい。
異性化反応用反応ゾーン内の滞留時間を約0.1時間から約15時間、例えば約1時間から約10時間にしてもよい。
2M3BNから3PNを生じさせる異性化では、その反応の温度を約0℃から約200℃の範囲内、例えば約50℃から約165℃の範囲内に維持してもよい。再び、本発明をこの反応段階の圧力の上限で限定するものでないが、実用上の目的で、その圧力を一般に約15psiaから約300psia(約1.03バールから約20.7バール)の範囲にする。
2番目の反応ゾーン(Z2)から出て来た反応槽流出物の蒸留
2M3BN異性化反応ゾーンか出て来た反応生成物混合物には特定の軽質沸騰物、3PN、2M3BN、(Z)−2M2BNおよび触媒が入っている可能性がある。その軽質沸騰物の少なくともいくらかを1番目の蒸留段階で除去してもよい。次に、軽質沸騰物が除去された流れに蒸留を1つ以上の蒸留装置内で受けさせることで(Z)−2M2BNが豊富な流れ、(Z)−2M2BNが除去された流れ(3PNおよび2M3BNが入っている)および触媒が豊富な流れ(触媒が入っている)を回収してもよい。前記触媒が豊富な流れの少なくとも一部を2M3BN異性化反応に再循環させてもよい。
前記(Z)−2M2BNが除去された流れにさらなる蒸留を受けさせることで2M3BNが豊富な流れおよび2M3BNが除去された流れ(3PNが入っている)を得てもよい。BDヒドロシアン化工程で得た2M3BNが豊富な流れを2M3BN異性化工程に送り込む2M3BN供給材料にすることも可能である。
2番目の反応ゾーン(Z2)から出て来た流出物には3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリルおよび2番目の触媒が入っている。図1では、その2番目の反応ゾーン(Z2)から出て来た流出物をライン222に通す。その反応流出物に含まれているそのような成分を1つ以上の蒸留段階で少なくともある程度分離してもよいが、それを図1中では分離セクション225で図式的に示す。分離セクション225の一例を図5により詳細に示す。特に、これらの蒸留段階を1つ以上の蒸留カラム内で実施することで下記を生じさせることができる:
1)2番目の2−メチル−3−ブテンニトリルが豊富な流れ967、
2)2番目の3−ペンテンニトリルが豊富な流れ222、および
3)2番目の触媒が豊富な流れ240。
前記2番目の2−メチル−3−ブテンニトリルが豊富な流れおよび2番目の3−ペンテンニトリルが豊富な流れの各々に含まれている燐含有配位子の量は重量で表して全体で500ppm未満であり得る。例えば、前記2番目の3−ペンテンニトリルが豊富な流れに含まれている燐含有配位子の量は300ppm未満、例えば100ppm未満であり得る。
前記2番目の3−ペンテンニトリルが豊富な流れに含まれている2−メチル−3−ブテンニトリルの量は少量であり得る。そのような少量の2−メチル−3−ブテンニトリルを3−ペンテンニトリルから1つ以上の蒸留カラムで分離してもよく、それによって2−メチル−3−ブテンニトリルを上部生成物として回収しそして3−ペンテンニトリルを釜残生成物として回収する。例えば、前記1番目と2番目の3−ペンテンニトリルが豊富な流れを一緒にした後、単一もしくは共用蒸留カラム内で蒸留してもよいか、或はそれらの流れを個別の蒸留カラム内で蒸留してもよい。そのような蒸留で回収した2−メチル−3−ブテンニトリルを2番目の反応ゾーン(Z2)に供給材料として送り込んでもよくそしてそのような蒸留で回収した3−ペンテンニトリルを3番目の反応ゾーン(Z3)に供給材料として送り込んでもよい。
前記2番目の3−ペンテンニトリルが豊富な流れには更に(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルも入っている可能性がありそしてその2番目の3−ペンテンニトリルが豊富な流れに蒸留を受けさせることで(Z)−2−メチル−3−ブテンニトリルが豊富な流れ(2−メチル−3−ブテンニトリルおよび(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルに加えてこの上に記述した如き他の低沸騰物が入っている)を上部生成物として得そして(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルが除去された流れ(3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリルおよび蒸留条件に応じて(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルがいくらか入っている)を釜残生成物として得ることができる。
前記2番目の反応ゾーン(Z2)から出て来た流出物の蒸留を行う少なくとも1つの蒸留システムはこの上に記述したシステムである。しかしながら、同じまたは本質的に同じ結果を達成する目的で他の蒸留システムを設計して運転することは当該技術分野の技術の範囲内であることは理解されるであろう。例えば、2番目の反応ゾーン(Z2)から出て来た流出物の蒸留で得た流れ(3PNおよび2M3BNが入っている)を1番目の反応ゾーン(Z1)から出て来た流出物の蒸留で用いる蒸留装置、例えば蒸留装置830などに送り込むことで3PNが豊富な流れと2M3BNが豊富な流れを得ることも可能である。
前記2番目の3−ペンテンニトリルが豊富な流れの少なくとも一部を用いて触媒溶液を調製してもよい。特に、前記2番目の3−ペンテンニトリルが豊富な流れの少なくとも一部を触媒反応ゾーンに送り込んで、その中でニッケル金属を燐含有配位子と反応させることで触媒とペンテンニトリルが入っている触媒溶液を生じさせる。この触媒溶液の一部を2番目の反応ゾーン(Z2)に送り込んでもよい。前記1番目と2番目の触媒が同じ燐含有配位子を含有して成る場合、その触媒の一部を1番目の反応ゾーン(Z1)に送り込んでもよい。
2番目の触媒の再利用および精製
2番目の触媒が豊富な流れを分離セクション225からライン240に通して流す。ライン240に入っている前記触媒が豊富な流れの一部を取り出して2番目の触媒パージ流れを生じさせて、それをライン226に通して流してもよい。このパージ流れには2番目の触媒、触媒分解生成物および反応副生成物が入っている。ライン226に入っている前記2番目の触媒パージ流れに由来する2番目の触媒の少なくとも一部を液体−液体抽出が備わっている2番目の触媒再生ゾーンに送り込むことで、分離した1番目の触媒から触媒分解生成物および反応副生成物を少なくともある程度分離してもよい。図1には示さなかった任意選択に従い、ライン226に入っている2番目の触媒パージの少なくとも一部を1番目の触媒再生ゾーンに送り込むことも可能である。そのような任意選択の場合、2番目の触媒再生ゾーンを省いてもよい。
流れ240に入っている2番目の触媒の少なくとも10%、例えば少なくとも50%、例えば75%、例えば80%から90%を再循環させ、そしてパージ流れ226に入っている残りの量を取り出して精製と回収を行う。1つの態様では、循環している触媒の20から60重量%を取り出し、精製し、回収した後、場合により処理を行ってニッケル含有量を高くしてもよい。次に、その精製して回収した触媒を1番目(Z1)または2番目(Z2)いずれかの反応ゾーンに戻す。この2番目の触媒が示す活性に応じて、この開示する方法の1つの態様に2番目の触媒を2番目の反応ゾーン(Z2)に仕込むことを含めて、それの再利用を行わない。
触媒再生ゾーン内で実施する工程に下記の段階を含めてもよい:
1)ジニトリルの流れ(ジニトリルが入っている)および抽出用溶媒の流れ(抽出用溶
媒が入っている)を抽出ゾーンに導入し、
2)触媒パージと前記抽出用溶媒流れに由来する抽出用溶媒と前記ジニトリル流れに由
来するジニトリルを抽出ゾーン内で接触させることで前記抽出ゾーン内で抽出相と
ラフィネート相を包含する少なくとも2つの混和しない液相を得、
3)前記抽出相から抽出流れ(抽出用溶媒および触媒が入っている)を取り出し、
4)前記ラフィネート相からラフィネート流れ(ジニトリル、触媒分解生成物および反
応副生成物が入っている)を取り出し、
5)前記抽出流れに蒸留を受けさせることで少なくとも1種の抽出用溶媒が豊富な流れ
および抽出用溶媒が除去された流れ(即ち触媒が豊富な流れ)(分離された触媒が
入っている)を得、そして
6)場合により、前記ラフィネート相に蒸留を1つ以上の段階で受けさせることでパー
ジ触媒分解生成物を生じさせかつそのような触媒分解生成物が除去されたジニトリ
ル流れを生じさせる。触媒分解生成物が示す沸点はアジポニトリルのそれより低い
か或は高い可能性があり、従って、通常の技術者は、留出させるべき成分が示す蒸
気−液体平衡データを取得することによって、そのような任意の蒸留段階を構築す
ることができるであろう。
触媒の精製または再生を実施する結果として触媒分解生成物を除去する。そのような触媒分解生成物には、例えば1種以上の燐含有配位子の加水分解生成物、例えばフェノールおよび置換フェノールなど、1種以上の燐含有配位子の酸化生成物、例えばホスファイト配位子の酸化で生じるホスフェートなど、Ni(C≡N)2、配位子の加水分解生成物およびニッケル金属が含まれ得る。
触媒の精製または再生を実施するとまた結果として反応副生成物も除去される。そのような反応副生成物の例には、C8H13C≡N化合物、2−メチル−2−ブテンニトリル、2−ペンテンニトリル、2−メチルグルタロニトリルおよびエチルスクシノニトリルが含まれる。
2番目抽出ゾーン
2番目の抽出ゾーンを図1に示す。触媒パージ流れ226を液体/液体抽出ゾーン250に送り込む。非極性溶媒、例えばアルカンなどを前記液体/液体抽出ゾーン250にライン230に通して送り込む。また、前記非極性溶媒と混和しない極性溶媒も前記液体/液体抽出ゾーン250にライン700によって送り込む。抽出ゾーン250にライン700に通して導入する極性溶媒には1番目の反応ゾーン(Z1)内で生じた反応副生成物および触媒分解副生成物が入っている。抽出ゾーン250内では、非極性溶媒および触媒が入っている非極性相と極性溶媒および例えば反応副生成物および触媒分解生成物などが入っている極性相(例えばラフィネート)が生じる。その非極性相を抽出ゾーン250からライン234によって取り出して蒸留カラム255に送る。前記極性相を抽出ゾーン250からライン710によって取り出して分離セクション2000に送る。
前記抽出ゾーンに供給する抽出用溶媒は、直鎖脂肪族、分枝脂肪族、非置換脂環式およびアルキル−置換脂環式炭化水素から成る群より選択した少なくとも1種の炭化水素化合物であってもよい。そのような抽出用溶媒は1気圧下で30℃から135℃の範囲、例えば60℃から100℃の範囲で沸騰し得る。前記抽出ゾーンに送り込むジニトリル供給材料は主にアジポニトリルで構成されていてもよい。前記ジニトリル流れを前記液体/液体抽出ゾーンに再循環させる前にそれからMGNおよびESNを除去しておいてもよい。しかしながら、MGNおよびESNを除去したとしても、それでもMGNおよびESNが少量存在する可能性がある、と言うのは、アジポニトリルのそのような異性体をそのようなラフィネート流れの処理で用いる蒸留工程で完全に除去するのは不可能であるからである。
前記抽出ゾーンに含める抽出段階は複数であってもよい。触媒パージ流れおよび場合により側流れの流れ(中間沸騰物が入っている)を前記抽出ゾーンの異なる抽出段階に仕込んでもよい。そのような側流れの流れは、触媒を含有するペンテンニトリルを蒸留してペンテンニトリルが豊富な流れを上部流れとして得かつ触媒が豊富な流れを下部流れとして得る時に生じ得る。触媒パージ流れおよび側流れの流れには両方ともジニトリルおよび中間沸騰物、例えばC8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾールなどが入っている可能性がある。前記抽出ゾーン内で抽出相とラフィネート相が向流様式で流れるようにしてもよい。上述した側流れの流れ(中間沸騰物が入っている)を多段階抽出ゾーンおよび抽出段階の1番目の段階よりも近い抽出段階(ラフィネート相を取り出す)に仕込んでもよい。抽出用溶媒を前記抽出ゾーンの同じ抽出段階(ラフィネート相を抽出ゾーンから取り出してラフィネート流れを得る)に仕込んでもよい。前記触媒が豊富な流れを前記抽出ゾーンの同じ抽出段階(抽出相を抽出ゾーンから取り出して抽出流れを得る)に仕込んでもよい。多段階抽出ゾーンでは、また、前記触媒が豊富な流れの一部も前記抽出ゾーンの同じ抽出段階(ラフィネート相を抽出ゾーンから取り出してラフィネート流れを得る)に仕込んでもよい。
また、補給用配位子が入っている流れも前記抽出ゾーンに導入してもよい。
抽出相とラフィネート相を生じさせる抽出ゾーンでは、モノニトリル化合物の総モル量をジニトリル化合物の総モル量で割ったモル比がそのような相分離を達成するに充分なモル比であるようにすべきである。例えば、この比率を0から0.5、例えば0.005から0.5、例えば0.01から0.25、例えば0.05から0.20、例えば0.05および0.15、例えば0.1および0.5などにしてもよい。前記抽出ゾーンに入っているモノニトリルには4−ペンテンニトリル、3−ペンテンニトリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、2−メチル−2−ブテンニトリルおよびバレロニトリルが含まれ得る。前記抽出ゾーンに入っているジニトリルにはアジポニトリル、2−メチルグルタロニトリルおよびエチルスクシノニトリルが含まれ得る。触媒が抽出されて抽出用溶媒相に適切に入り込むようにする目的で、前記抽出ゾーンに流れ込む触媒が豊富な流れの流量および前記抽出ゾーンから流れ出る抽出用溶媒相の流量を調節すべきである。前記抽出ゾーンに仕込む抽出用溶媒と触媒の比率をこの上で抽出ゾーン150で記述した比率と実質的に同じにする。ジニトリルが所定圧力で示す沸点は3−ペンテンニトリルが示す沸点よりも高い可能性がある。そのようなジニトリル化合物の例にはアジポニトリル、2−メチルグルタロニトリル、エチルスクシノニトリルおよびこれらのジニトリルの混合物が含まれる。相分離および触媒抽出を助長するために前記抽出ゾーン内の温度を例えば25℃から135℃、例えば25℃から90℃、例えば50℃から75℃にしてもよい。前記抽出ゾーン内のモノニトリルの濃度(例えば触媒が豊富な流れとジニトリルの流れを一緒にすることによる)を重量で表して総モノニトリルの2−20%、例えば5−15%にしてもよく、ここでは、このモノニトリル成分の計算を例えば2−ペンテンニトリル、3−ペンテンニトリル、4−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、2−メチル−2−ブテンニトリルおよびバレロニトリルを包含するモノニトリル化合物の重量の合計として実施する。
抽出用溶媒の再利用
非極性溶媒を蒸留で回収した後、触媒を精製(即ち再生)させるための抽出ゾーンに再循環させてもよい。例えば図1に示すように、非極性溶媒を蒸留カラム255内の蒸留で回収した後、抽出ゾーン250にライン230に通して戻してもよい。抽出ゾーン250、ライン234、蒸留カラム255およびライン230が集合的に非極性溶媒を抽出ゾーン250に再循環させるための回収用ループを構成している。抽出ゾーン250、ライン710、分離セクション2000およびライン700が集合的に極性溶媒を抽出ゾーン150に再循環させるための回収用ループを構成している。
前記抽出流れに蒸留を少なくとも1基の蒸留カラム内で1psiaから22psia(0.07バールから1.5バール)の圧力下でベース温度を約160℃未満、例えば約150℃未満、例えば約140℃未満、例えば約130℃未満、または例えば約120℃未満にして受けさせてもよい。そのベース温度をある程度ではあるが触媒組成物の熱安定性が維持されるように選択する。
2番目の反応ゾーン(Z2)から出て来たラフィネートの蒸留
前記抽出ゾーンから出て来たラフィネート流れに蒸留を1基以上の蒸留カラム内で受けさせることでジニトリルを前記ラフィネート流れに入っている他の成分、例えば抽出用溶媒、ペンテンニトリル、反応副生成物および触媒分解生成物などから分離してもよい。次に、前記ラフィネート流れに入っている他の成分から分離したジニトリルを抽出ゾーンに再循環さてもよい。
上述した如きラフィネート相の蒸留を図2に示す。
前記抽出用溶媒の大部分が抽出ゾーン内で分離されて溶媒相の中に入り込むが、抽出用溶媒がいくらか抽出されてラフィネート相にも入り込む。従って、このラフィネート流れには抽出用溶媒がいくらか入っている。このラフィネート流れには更に少なくとも1種のペンテンニトリル(典型的にはペンテンニトリルの混合物)、t−ブチルカテコール、C8H13C≡N化合物、フェノール、クレゾールおよびジニトリル(アジポニトリル(ADN)およびメチルグルタロニトリル(MGN)を包含)の中の1種以上も入っている可能性がある。前記ラフィネート流れの蒸留を行う1番目の蒸留段階として、沸点がペンテンニトリルより低い抽出用溶媒が前記ラフィネート流れに入っている他の高沸点成分から分離されることで、抽出用溶媒が除去されたラフィネート流れを得ることができる。そのような抽出用溶媒が示す沸点は例えば30から135℃、例えば60から100℃であり得る。そのような抽出用溶媒の一例はシクロヘキサンであり、これの沸点(BP)は81℃である。
前記ラフィネート流れの蒸留を行う2番目の蒸留段階では、ペンテンニトリルを前記ラフィネート流れに入っている他の高沸点成分から除去することで、ペンテンニトリルが除去されたラフィネート流れを得ることができる。そのペンテンニトリルが除去されたラフィネート流れに入っているペンテンニトリル(4−ペンテンニトリル、3−ペンテンニトリルおよび2−ペンテンニトリルの合計を包含)の量は重量で表して例えば全体で少なくとも0.01%、例えば少なくとも0.07%、例えば少なくとも0.1%、例えば1%未満であり得る。この2番目の蒸留段階で塔頂流れとして取り出すことが可能なペンテンニトリルの例には、2−メチル−3−ブテンニトリル、トランス−3−ペンテンニトリル、シス−3−ペンテンニトリル、トランス−2−ペンテンニトリルおよびシス−2−ペンテンニトリルが含まれる。そのようにして取り出したペンテンニトリルが示すおおよその沸点は120℃から150℃の範囲内であり得る。
上述した2番目の蒸留段階で得たそのペンテンニトリルが除去されたラフィネート流れを少なくとも3番目の蒸留段階に導入してもよい。この3番目の蒸留段階では、沸点がジニトリルより高い組成物を例えばt−ブチルカテコール、C8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾール(存在するならば)などの如き化合物およびジニトリルから下部流れとして分離する。そのような釜残生成物の沸点は例えば少なくとも300℃であり得る。対照的に、上述した2番目の蒸留段階で得たそのペンテンニトリルが除去されたラフィネート流れに入っている大部分のジニトリルは260℃から300℃のおおよその範囲内の沸点を示す傾向があるであろう。
ラフィネート流れの蒸留を行う3番目の蒸留段階を1基以上の蒸留カラム内で行ってもよい。この3番目の蒸留段階で単一の蒸留カラムを用いる例として、沸点が例えば250℃未満の化合物を塔頂流れとして取り出し、沸点が例えば260℃から300℃の化合物を蒸留カラムから側流れとして取り出し、そして沸点が例えば300℃以上の化合物を下部流れとして取り出す。3番目の蒸留段階のこの例では、塔頂流れにC8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾールなどの如き化合物が入っている可能性があり、側流れにt−ブチルカテコールおよびジニトリルなどの如き化合物が入っている可能性がありそして下部流れに触媒分解生成物などの如き化合物が入っている可能性があり、それには例えばNi(CN)2およびオルガノホスファイト配位子の酸化で生じたオルガノホスフェートが含まれる。例えば、トリス(トリル)ホスフェートはトリス(トリル)ホスファイトの酸化副生成物である。
このような分離をまた2基の蒸留カラム内で実施することも可能である。2基の蒸留カラムを3番目の蒸留段階で用いる場合、1番目の蒸留カラムを沸点が300℃以上の化合物が入っている下部流れが生じそしてジニトリルおよび例えばC8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾールなどが入っている塔頂流れが生じるように操作してもよい。次に、その塔頂流れを2番目の蒸留カラムに送ることでジニトリルを下部流れとして生じさせそして低沸騰物、例えばC8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾールが入っている塔頂流れを生じさせてもよい。
前記3番目の蒸留段階から出て来たジニトリル流れにメチルグルタロニトリル(MGN)、特に2−メチルグルタロニトリル(2−MGN)が入っている場合、この流れにさらなる蒸留を受けさせて前記流れからMGNを除去することで、本質的に高純度のアジポニトリル流れを生じさせて、それを抽出ゾーンに再循環させてもよい。2−MGNが示すおおよその沸点は269℃から271℃である一方、アジポニトリルが示すおおよその沸点は295℃である。t−ブチルカテコール、特に4−t−ブチルカテコールが示す沸点は285℃である。また、ラフィネート流れを処理するための上述した3番目の蒸留段階の塔頂溜分点をMGNがC8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾールと一緒に側流れが備わっている単一蒸留カラムの場合には塔頂流れとしてか或は2基のカラムを用いる場合には2番目の蒸留カラムの塔頂流れとして取り出されるように調整してもよい。MGNをアジポニトリルから除去するとMGNの好ましくない蓄積が防止される。MGNを除去するとまたC8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾールを触媒再循環流れおよび全体の反応系から除去することも助長される。MGNを除去すると更にいくらか存在する2−エチルスクシノニトリル、ADNおよびMGNの異性体の除去も助長される。2−エチルスクシノニトリルが示す沸点は264℃である。ジニトリル流れにいくらか存在するt−ブチルカテコールの少なくとも一部もMGNと一緒に除去され得る。
前記抽出ゾーンから出て来たラフィネート流れを精製されたアジポニトリル流れ(これを後で抽出ゾーンに再循環させる)に変えるための個々の蒸留段階をこの上に記述してきたが、他の蒸留段階も可能であることは理解されるであろう。そのような段階の設計および操作は当該技術分野の通常の技術の範囲内である。前記ラフィネートに入っているアジポニトリルから取り出した化合物の流れを処分するか、更に精製するか、別の反応工程で用いるか、或は反応系全体の中の適切な地点に再循環させてもよい。
上述した3番目の蒸留段階で得た釜残(触媒分解生成物が入っている)をワイプトフィルム蒸発装置(WFE)に送り込むことでそのような釜残に入っているアジポニトリルを回収してもよい。また、アジポニトリル回収セクション3000でワイプトフィルム蒸発装置を用いることで触媒分解生成物からアジポニトリルを回収することも可能である。分離セクション1000および分離セクション2000から得た触媒分解生成物をアジポニトリル回収セクション3000内の単一のワイプトフィルム蒸発装置に送り込むことで、
ジニトリルから分離した濃触媒分解生成物の全部に入っているアジポニトリルを前記セクション内で回収することができる。
2番目の反応ゾーン(Z2)への再利用触媒の導入
触媒を非極性溶媒を触媒から蒸留するための蒸留装置に通した後、その精製された(即ち再生された)2番目の触媒を2番目の反応ゾーンに再循環させてもよい。1番目と2番目の触媒が同じ燐含有配位子を含有して成る場合、その精製(即ち再生された)2番目の触媒の少なくとも一部を1番目の反応ゾーンに再循環させてもよい。前記2番目と3番目の触媒が同じ燐含有配位子を含有して成る場合、その精製(即ち再生された)2番目の触媒の少なくとも一部を3番目の反応ゾーンに再循環させてもよい。例えば図1を参照して、蒸留カラム255から出て来たカラム釜残にはある程度精製された触媒が入っている。このある程度精製された触媒を蒸留カラム255からライン248に通して取り出して、2番目の反応ゾーン(Z2)に再循環させるための触媒再循環ライン240に導入してもよい。場合により、1番目と2番目の触媒が同じ燐含有配位子を含有して成る場合、側流をライン248から取り出してライン247に送り込んでもよく、そしてこの側流を1番目の反応ゾーン(Z1)に送り込む触媒供給材料として用いてもよい。2番目の触媒のある程度精製された流れのいずれか(これを後で1番目の反応ゾーン(Z1)に供給する)に追加的ゼロ価Niなどおよび/または1番目の燐含有配位子をライン145によって供給してもよい。図1には示していないが、場合により、ライン145をライン146の代わりにライン140に直接向かわせることも可能である。2番目の反応ゾーン(Z2)と3番目の反応ゾーン(Z3)に触媒を共用する態様では、前記2番目の反応ゾーン(Z2)に補給する補給用触媒を前記3番目の反応ゾーン(Z3)の触媒再循環流れから回収してもよい。この態様は本図に示していない。
3番目の反応ゾーンZ3内で起こさせる3−ペンテンニトリルのヒドロシアン化
図1に示すように、3−ペンテンニトリル(3PN)含有原料を3番目の反応ゾーン(Z3)に例えばライン300によって送り込み、シアン化水素供給材料を前記3番目の反応ゾーン(Z3)に例えばライン220によって送り込みそして3番目の触媒を前記3番目の反応ゾーン(Z3)に例えばライン340によって送り込んでもよい。また、前記触媒供給材料にルイス酸助触媒も含有させる。
1番目の3−ペンテンニトリル流れを前記1番目の反応ゾーン(Z1)から出て来た流出物の蒸留で得る。2番目の3−ペンテンニトリル流れを前記2番目の反応ゾーン(Z2)から出て来た流出物の蒸留で得る。3番目の反応ゾーン(Z3)内で前記1番目の3−ペンテンニトリルが豊富な流れおよび2番目の3−ペンテンニトリルが豊富な流れの少なくとも一部とシアン化水素の反応を3番目の触媒(ゼロ価ニッケルと少なくとも1種の燐含有配位子を含有して成る)および少なくとも1種の助触媒の存在下で起こさせる。図1では、前記2番目の3−ペンテンニトリルが豊富な流れを分離セクション225から3番目の反応ゾーン(Z3)にライン300に通して送り込む。図1には上述した2番目2−メチル−3−ブテンニトリルが豊富な流れおよび2番目1,3−ブタジエンが豊富な流れを分離セクション225から取り出すためのラインを示していない。その2番目2−メチル−3−ブテンニトリルが豊富な流れを例えば2番目の反応ゾーン(Z2)に再循環させて戻してもよい。
3−ペンテンニトリル原料
3番目の反応ゾーン(Z3)に送り込む3−ペンテンニトリル供給材料は本明細書の上に記述した蒸留段階で得ものである。この供給材料の3PN含有量は少なくとも95重量%であってもよい。また、この供給材料に入っている3PN以外のペンテンニトリルの含有量は5重量%未満であってもよくかつ1番目の燐含有配位子の含有量は0.1重量%未満であってもよい。
前記3PN供給材料に入っているC9モノニトリルの含有量は5000ppm未満、例えばC9モノニトリルの含有量は2000ppm未満、例えばC9モノニトリルの含有量は1000ppm未満、例えばC9モノニトリルの含有量は600ppm未満であってもよい。
HCN供給材料
1番目の反応ゾーン(Z1)と3番目の反応ゾーン(Z3)に送り込むHC≡N供給材料はAndrussow工程の生成物であってもよく、それをオレフィンヒドロシアン化反応ゾーンに送り込む前にそれに蒸留による乾燥を受けさせることで水含有量を約250ppm未満、例えば水含有量を125ppm未満、例えば水含有量を80ppm未満にしておく。しかしながら、HCN供給材料には通常水が少なくともいくらか入っているであろう。非常に無水のHCNは不安定であるが、無水のHCNを用いる方が好適である。従って、HCN供給材料の水含有量を少なくとも10ppm、例えば少なくとも25ppm、例えば少なくとも50ppmにしてもよい。
シアン化水素(HC≡N)には好適には一酸化炭素も酸素もアンモニアも実質的に入っていない。このHC≡Nを1番目の反応ゾーン(Z1)と3番目の反応ゾーン(Z3)に蒸気、液体またはこれらの混合物として導入してもよく、例えばヨーロッパ特許公開番号1 344 770を参照のこと。別法として、シアノヒドリンをHC≡N源として用いることも可能であり、例えば米国特許第3,655,723号を参照のこと。
3番目の反応ゾーン(Z3)内の装備
HC≡N供給材料と3PN含有供給材料と触媒組成物の接触を反応ゾーン内で起こさせるが、その反応ゾーンは当業者に公知の適切ないずれかの装置内であってもよい。1つ以上の通常の装置を用いて反応ゾーン、例えば連続撹拌型タンク反応槽、ループ型バブルカラム反応槽、気体循環型反応槽、バブルカラム反応槽、管状反応槽またはこれらの組み合わせを生じさせてもよく、場合により反応熱の少なくとも一部を除去するための装置を伴わせてもよい。
3番目の反応ゾーン(Z3)内の反応条件
3PNのヒドロシアン化はHC≡Nと3PNを蒸気、液体またはこれらの混合物として反応させることで実施可能である。別法として、シアノヒドリンをHC≡N源として用いることも可能である。
3−ペンテンニトリルを生じさせる段階と3−ペンテンニトリルをシアン化水素と反応させる段階を同じ場所または施設で行う必要はない。例えば、2番目の反応ゾーンと3番目の反応ゾーンを互いに少なくとも500メートルの距離離してもよい。この3番目の反応ゾーンは前記1番目の反応ゾーンおよび2番目の反応ゾーンから個別に独立して操作可能である。
3PNヒドロシアン化反応では、ジニトリルの生成量を向上させる目的で助触媒を供給する。当該技術分野で公知のように、助触媒は所望のADNをもたらす触媒活性と選択性の両方に影響を与える。用いる助触媒には、原子番号が13、21−32、39−50および57−80の金属、例えば亜鉛などの塩および式BR'3[式中、R'は炭素原子数が18以下のアルキルまたはアリール基である]で表される化合物、例えばトリフェニルホウ素、即ち(C6H5)3Bなどが含まれる。前記金属塩のアニオンにはハライド、例えばクロライドなど、スルフェート、ホスフェートおよび低級脂肪族カルボキシレートが含まれる。有用な助触媒は当該技術分野でルイス酸として一般に知られている。当該触媒中の助触媒とニッケルのモル比を3−ペンテンニトリルのヒドロシアン化が助長されるに充
分なモル比にするが、1つの態様においてルイス酸助触媒がZnCl2の場合には1:20から50:1、例えば0.2:1から2:1の範囲内にしてもよい。
3PNヒドロシアン化工程では、BDヒドロシアン化工程から出て来て2M3BNを除去しておいた流れ、2M3BN異性化工程から出て来て2M3BNを除去しておいた流れまたはこれらの組み合わせが有用な供給材料流れである。3PNヒドロシアン化反応の温度を約0℃から約150℃の範囲内、例えば約25℃から約80℃の範囲内に維持してもよい。反応の圧力を一般に液状の反応混合物に溶解している触媒とHC≡Nが接触した状態のままであるに充分にすべきである。そのような圧力は、少なくともある程度ではあるが、反応混合物中に存在する未反応HC≡Nの量の関数である。この反応段階に適した圧力の上限を所定の圧力に限定するものでないが、実用の目的でその圧力を一般に約15psiaから約300psia(約1.03バールから約20.7バール)の範囲にする。
3PNとHC≡Nの全体的供給モル比を1:1から100:1の範囲内、例えば1:1から約5:1の範囲内にしてもよい。
3PNとHC≡Nを反応させる時のHC≡Nと触媒のモル比を10:1から5000:1の範囲内、例えば100:1から3000:1、例えば300:1から2000:1の範囲内にしてもよい。
3PNとHC≡Nを反応させる時に用いる燐含有配位子は好適には二座配位子である。3PNヒドロシアン化段階で用いる触媒中の二座配位子とニッケルのモル比を1:1から10:1、例えば1:1から5:1、例えば1:1から3:1にしてもよい。
この反応段階の3PNヒドロシアン化反応ゾーン内の滞留時間は典型的にペンテンニトリル、HC≡Nまたはこれらの組み合わせの特定の変換度を得る必要性で決まる。滞留時間に加えてまた触媒の濃度および反応の温度も反応体から生成物への変換に影響を与えるであろう。一般に、滞留時間を約0.1時間から約30時間の範囲内、例えば約1時間から約20時間の範囲内にする。HC≡Nの変換率は99%以上になり得る。
3番目の反応ゾーン(Z3)から出て来た反応流出物の処理
3番目の反応ゾーン(Z3)から出て来た流出物にはアジポニトリル、3番目の触媒、触媒助触媒および触媒分解生成物が入っている。図1では、3番目の反応ゾーン(Z3)から出て来たその反応流出物をライン400に通して液体/液体抽出ゾーン370に送り込む。1段階以上の蒸留段階(示していない)を前記3番目の反応ゾーン(Z3)と液体/液体抽出ゾーン370の間に含めることで未反応3−ペンテンニトリルを包含する低沸点成分を除去することができる。抽出用溶媒を抽出ゾーン370にライン330に通して送り込む。抽出ゾーン370内に抽出相とラフィネート相が生じる。その抽出相には抽出用溶媒と3番目の触媒が入っているおり、そしてラフィネート相にはアジポニトリル、触媒分解生成物および助触媒が入っている。その抽出相をライン334に通して蒸留カラム375に送り込み、その中で抽出用溶媒を触媒から分離する。蒸留カラム375から出て来た抽出用溶媒をライン330に通して抽出ゾーン370に再循環させて戻す。触媒流れを蒸留カラム375から取り出して3番目の反応ゾーン(Z3)に再循環させて戻す。ラフィネート相を抽出ゾーン370から取り出してライン600に通してアジポニトリル精製セクション3000に送り込む。精製されたアジポニトリル生成物流れをライン660によって回収する。
3PNヒドロシアン化反応ゾーンから出て来た反応生成物混合物(ペンテンニトリル、例えば3PN、2PNおよび(E)−2M2BNなど、ジニトリル、例えばADNおよびMGNなど、触媒、触媒分解生成物および助触媒が入っている)と非極性炭化水素抽出用
溶媒の接触を抽出ゾーン内で米国特許第3,773,809号および6,936,171号に記述されている方法に従って起こさせてもよい。抽出流れ(触媒および抽出用溶媒が入っている)およびラフィネート流れ(抽出用溶媒、ペンテンニトリル、ジニトリル、触媒分解生成物および助触媒が入っている)を前記抽出ゾーンから取り出す。前記抽出流れを蒸留装置に仕込んでもよい。
前記抽出流れに蒸留を受けさせることで1番目の抽出用溶媒が豊富な流れおよび触媒が豊富な流れ(回収した触媒が入っている)を得る。その触媒が豊富な流れ(燐含有配位子のニッケル錯体が入っている)を再循環させて3PNおよびHC≡Nとの接触を助触媒の存在下で起こさせることでADNを生じさせてもよい。
前記ラフィネート流れに蒸留を1つ以上の蒸留カラム内で受けさせることで2番目の抽出用溶媒が豊富な流れ、ペンテンニトリルが豊富な流れ(3PNが入っている)、ジニトリルが豊富な流れ、ジニトリルが除去された流れ(触媒分解生成物および助触媒が入っている)、MGNが豊富な流れおよびMGNが除去された流れ(回収したADNが入っている)を得ることができる。
前記1番目と2番目の抽出用溶媒が豊富な流れから得た抽出用溶媒を抽出ゾーン内で再使用することも可能である。前記ペンテンニトリルが豊富な流れから得たペンテンニトリルを1番目、2番目または3番目の触媒を調製する時の溶媒源として用いることも可能である。また、3PNを前記ペンテンニトリルが豊富な流れから分離することも可能であり、それと触媒とHC≡Nの接触を助触媒の存在下で起こさせることでADNを生じさせることも可能であるが、但しその3PNにC8H13C≡N化合物もフェノールまたはクレゾールの如き化合物(これらは3PNとHC≡Nを反応させるための触媒で用いる燐含有配位子と反応し得る)も実質的に入っていないことを条件とする。
前記抽出流れに蒸留を少なくとも1基の蒸留カラム内で圧力を1psiaから22psia(0.07バールから1.5バール)にしかつベース温度を約150℃未満、例えば約140℃未満、例えば約130℃未満または例えば約120℃未満にして受けさせてもよい。そのベース温度をある程度ではあるが触媒組成物の熱安定性が維持されるように選択する。
上述した如きラフィネート相の蒸留を図3に示す。
前記抽出用溶媒の大部分が抽出ゾーン内で分離されて溶媒相の中に入り込むが、抽出用溶媒がいくらか抽出されてラフィネート相にも入り込み、これを分かれさせて図3に示す蒸留カラムK'1にライン600に通して送り込む。従って、前記ラフィネート流れには抽出用溶媒がいくらか入っている。このラフィネート流れ600には更に少なくとも1種のペンテンニトリル(典型的にはペンテンニトリルの混合物)、中間沸騰物およびジニトリル(アジポニトリル(ADN)およびメチルグルタロニトリル(MGN)を包含)の中の1種以上も入っている可能性がある。前記ラフィネート流れの蒸留を行う1番目の蒸留段階として、沸点がペンテンニトリルより低い抽出用溶媒(図3では流れ625を通して取り出す)が前記ラフィネート流れに入っている他の高沸点成分から分離されることで、抽出用溶媒が除去されたラフィネート流れを得ることができ、これをカラムK'1からライン620に通して取り出す。ライン625に通して取り出した抽出用溶媒が示す沸点は例えば30から135℃、例えば60から100℃であり得る。そのような抽出用溶媒の一例はシクロヘキサンであり、これの沸点(BP)は81℃である。
前記ラフィネート流れの蒸留を行う2番目の蒸留段階では、ペンテンニトリルを前記ラフィネート流れに入っている他の高沸点成分から除去することで、ペンテンニトリルが除
去されたラフィネート流れを得ることができる。図3では、抽出用溶媒が除去された流れ620に蒸留を蒸留カラムK'2内で受けさせることでそのペンテンニトリルが除去されたラフィネート流れ630を得る。そのペンテンニトリルが除去されたラフィネート流れ630に入っているペンテンニトリル(4−ペンテンニトリル、3−ペンテンニトリルおよび2−ペンテンニトリルの合計を包含)の量は重量で表して例えば全体で少なくとも0.01%であり得る。この2番目の蒸留段階で塔頂流れ650として取り出すことが可能なペンテンニトリルの例には、2−メチル−3−ブテンニトリル、トランス−3−ペンテンニトリル、シス−3−ペンテンニトリル、トランス−2−ペンテンニトリルおよびシス−2−ペンテンニトリルが含まれる。このペンテンニトリルが除去されたラフィネート流れに入っているペンテンニトリル(4−ペンテンニトリル、3−ペンテンニトリルおよび2−ペンテンニトリルの合計を包含)の量は重量で表して例えば全体で少なくとも0.01%、例えば0.07%、例えば0.1%、例えば1%未満であり得る。そのようにして取り出したペンテンニトリルが示すおおよその沸点は120℃から150℃の範囲内であり得る。
上述した2番目の蒸留段階で得たそのペンテンニトリルが除去されたラフィネート流れ630を少なくとも3番目の蒸留段階に導入してもよい。図3では、この3番目の蒸留段階をカラムK'3で実施する。この3番目の蒸留段階では、沸点がジニトリルより高い組成物をジニトリルおよびいくらか存在する共沸騰物、例えば中間沸騰物などから下部流れ640として分離する。流れ640に入っているそのような釜残生成物が示す沸点は例えば少なくとも300℃であり得る。対照的に、上述した2番目の蒸留段階で得たそのペンテンニトリルが除去されたラフィネート流れ630に入っている大部分のジニトリルは260℃から300℃のおおよその範囲内の沸点を示す傾向があるであろう。これらのジニトリルおよび中間沸騰物は塔頂流れとして流れ635によって取り出される傾向がある。
図3では、次に、流れ635を蒸留カラムK'4に送り込むことでアジポニトリルを下部流れ660として生じさせかつ塔頂流れ650(MGNおよび中間沸騰物が入っている)を生じさせることができる。
カラムK'3から出て来た流れ640(触媒分解生成物が入っている)をワイプトフィルム蒸発装置(WFE)に送り込むことでそのような釜残に入っていたアジポニトリルを回収してもよい。また、図2に示すカラムK3から出て来た触媒分解副生成物が入っている1つ以上の流れも場合により前記ワイプトフィルム蒸発装置に送り込んでもよい。
抽出ゾーンから出て来たラフィネート流れを精製されたアジポニトリル流れに変化させることに関して個々の蒸留段階をこの上に記述してきたが、他の蒸留段階も可能であることは理解されるであろう。そのような段階を設計して実施することは当該技術分野の通常の技術の範囲内である。ラフィネートに入っているアジポニトリルから除去した化合物の流れを処分するか、更に精製するか、別の反応工程で用いるか、或は反応系全体の中の適切な地点に再循環させてもよい。
アジポニトリル(ADN)の収率および純度
1,3−ブタジエンを基にしたアジポニトリルの化学的収率は60%以上、例えば85%以上または90%以上であり得、そしてシアン化水素を基にしたアジポニトリルの化学的収率は60%以上、例えば85%以上または90%以上であり得る。
3番目の反応ゾーン(Z3)に入り込むC9モノニトリルの量を制限することによって、その3番目の反応ゾーン内で生じる式C8H14(C≡N)2で表されるジニトリルの量を制限することができる。例えば、3番目(Z3)の反応ゾーンから出て来た反応生成物は実質的にアジポニトリル(ADN)含有ジニトリル生成物を含有して成り得、それに
入っている化学式C8H14(C≡N)2で表されるジニトリル(DDN)の量は5000ppm未満、好適には2000ppm未満、最も好適には500ppm未満である。
任意の共用触媒再生ゾーン
触媒分解生成物および反応副生成物を除去することで触媒に精製をある程度受けさせる本明細書に記述するゾーンを本明細書では精製ゾーンまたは再生ゾーンと呼ぶ。1番目と2番目の触媒の燐含有配位子が同じ場合、1番目と2番目の触媒再生ゾーンを液体−液体抽出を包含する共用触媒再生ゾーンとして一緒にしてもよい(一緒に混ざり合わせてもよい)。この任意選択に、更に、分離した触媒から触媒分解生成物および反応副生成物を少なくともある程度分離する目的で、共用触媒再生ゾーンに1番目の触媒パージで得た1番目の触媒の少なくとも一部を送り込むか、2番目の触媒パージで得た2番目の触媒の少なくとも一部を送り込むか或はこれらの組み合わせを送り込むことも含める。
共用触媒再生ゾーンから分離した触媒の少なくとも一部と1,3−ブタジエンとシアン化水素の接触を1番目の反応ゾーン(Z1)内で起こさせることで1番目の反応流出物を生じさせてもよい。
共用触媒再生ゾーンから分離した触媒の少なくとも一部と2−メチル−3−ブテンニトリルの接触を2番目(Z2)反応ゾーン内で起こさせることで2番目の反応流出物を生じさせてもよい。
共用触媒再生ゾーンから出て来た触媒を1,3−ブタジエンとシアン化水素の両方に前記1番目の反応ゾーン(Z1)内で接触させそして2−メチル−3−ブテンニトリルと2番目の反応ゾーン(Z2)内で接触させることも可能である。
1番目と2番目の触媒の配位子が異なる場合には一般に1番目と2番目の触媒のためのこの任意の共用触媒再生ゾーンを用いない。
1番目、2番目および3番目の触媒
本明細書で用いる如き用語“触媒”には、これの意味の範囲内に、触媒前駆体組成物も含まれる。この意味は、ゼロ価ニッケルがある時点で少なくとも1種の燐含有配位子と結合することを示している。更に、ヒドロシアン化中に追加的反応も起こり、例えば初期の触媒組成物とエチレン系不飽和化合物の錯体形成などが起こる。本明細書で用いる如き用語“触媒”にはまたこれの意味の範囲内に再利用触媒、即ちゼロ価ニッケルと少なくとも1種の燐含有配位子を含有して成るが、本発明の工程で用いられたか、本工程に戻されるか或は戻される可能性がありかつ再び使用可能であるか或は繰り返し使用可能である触媒も含まれる。そのような触媒に適した溶媒には、本工程で用いるに有用な抽出用溶媒、例えば極性溶媒、例えばニトリル、例えばペンテンニトリル、例えば3−ペンテンニトリルなどおよび非極性溶媒、例えば脂肪族炭化水素、例えばシクロヘキサンなどが含まれる。
1番目、2番目および3番目の触媒は各々がゼロ価ニッケルと燐含有配位子を含有して成る。これらの触媒は同じまたは異なってもよい。場合により、1番目、2番目および3番目の触媒が全部異なってもよい。場合により、1番目と2番目の触媒が同じで3番目の触媒が異なってもよい。場合により、2番目と3番目の触媒が同じで1番目の触媒が異なってもよい。場合により、1番目と2番目の触媒が同じまたは異なる単座配位子を含有して成っていてもよくそして3番目の触媒が二座配位子を含有して成っていてもよい。場合により、1番目の触媒が単座配位子を含有して成っていてもよくそして2番目の触媒と3番目の触媒が同じまたは異なる二座配位子を含有して成っていてもよい。
1,3−ブタジエンとシアン化水素を反応させることによるアジポニトリルの化学的収
率を、1番目の触媒と2番目の触媒と3番目の触媒が燐含有配位子に関して同じでありかつ同じ触媒を1番目、2番目および3番目の反応ゾーンに流す時に達成可能な収率よりも高くすることができる。
BDとHC≡Nを反応させるための1番目の触媒は、例えばゼロ価Niと少なくとも1種の単座燐含有配位子を含有して成り得る。また、3PNとHC≡Nを反応させるための3番目の触媒を1番目(Z1)および2番目(Z2)の反応ゾーンから隔離してもよい。その上、1番目と3番目の触媒を精製する段階も好適には隔離し、少なくとも1番目と3番目の触媒の混合物が反応ゾーンに入り込まないような度合で隔離する。
3番目の触媒を1番目(Z1)および2番目(Z2)のゾーンから隔離していてもよいが、この隔離を、3番目の触媒を1番目(Z1)および2番目(Z2)の反応ゾーンに再循環させて戻さない(直接的にも間接的にも)か或は実際に2番目(Z2)の反応ゾーンの上流の如何なる場所にもそれに入り込む流れにも戻さないことで行うことができる。
1番目と2番目の触媒の配位子が単座配位子でありそして3番目の触媒の配位子が二座配位子の場合、その3番目の触媒を1番目および2番目の反応ゾーンから隔離してもよい。3番目の触媒を1番目(Z1)および2番目(Z2)の反応ゾーンから隔離することによって、1番目または2番目のいずれかの反応ゾーンに入り込んだ3番目の触媒中の燐含有多座配位子の濃度が100ppm以下、例えば50ppm以下、例えば10ppm以下、例えば5ppm以下、例えば1ppm以下、例えば実質的にゼロになるようにすることができる。
3番目の反応ゾーン(Z3)に送り込む供給流れ300に1番目の触媒が少量(例えば痕跡量)存在する可能性はあるが、その1番目の触媒を好適には意図的に3番目(Z3)の反応ゾーンには導入しない。このように、好適な態様では、蒸留カラム155から出て来たライン156に入っている1番目の触媒の精製された流れを1番目の反応ゾーン(Z1)(ライン146によって)および場合により2番目の反応ゾーン(Z2)(ライン246によって)の少なくとも一方に再循環させるが、ライン156に入っている前記流れのいずれも3番目の反応ゾーン(Z3)には送り込まない。一般に、1番目の触媒の少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%、例えば少なくとも99.9%、適切には実質的に全部を前記1番目の反応ゾーン(Z1)と2番目の反応ゾーン(Z2)の少なくとも一方に再循環させそして/または3番目の反応ゾーン(Z3)に入り込む1番目の触媒の量が10%未満、例えば5%未満、例えば1%未満、例えば0.1%未満、適切にはゼロになるようにする。
それにも拘らず、本発明は1番目の触媒のいくらかが下流に流れて3番目の反応ゾーン(Z3)に入り込んでも許容されるが、本明細書に示す工程の説明から理解されるであろうように、通常は、ライン156に入っている1番目の触媒の精製された流れを蒸留カラム155から3番目の反応ゾーン(Z3)に送り込むルート以外のルートを用いることでそれを達成する。例えば、一体式工程全体を休止して1番目の触媒を3番目の反応ゾーン(Z3)から除去する必要がないほどの装置不調または担当者の過失の結果として、3番目の反応ゾーン(Z3)に1番目の触媒がいくらか偶然に入り込むこともあり得る。
1番目の触媒の配位子が単座配位子でありそして3番目の触媒の配位子が二座配位子の場合、3番目の反応ゾーン(Z3)内の1番目の触媒の燐含有単座配位子の濃度が500ppm以下、好適には100ppm以下、好適には50ppm以下、好適には10ppm以下、好適には5ppm以下、好適には1ppm以下、好適には実質的にゼロであるようにしてもよい。
ニッケル金属と少なくとも1種の遊離燐含有配位子の反応は米国特許第3,903,120号、4,385,007号、4,416,825号、米国特許出願公開番号20040176622およびPCT特許出願公開番号1995011077(引用することによって本明細書に組み入れられる)に教示されている。
少なくとも1種の燐含有配位子を含有して成る触媒組成物に一酸化炭素、酸素および水の少なくとも1種が実質的に存在しないようにすることができかつそれらから分離させて維持することができる。このような触媒組成物を当該技術分野で良く知られた技術に従って前以て生じさせておいてもよい或はインシトゥで生じさせることも可能である。例えば、単座もしくは二座ホスファイト配位子をオルガノホスファイト配位子によって容易に追い出される配位子を有するゼロ価ニッケル化合物、例えばNi(COD)2、Ni[P(O−o−C6H4CH3)3]3およびNi[P(O−o−C6H4CH3)3]2(C2H4)など(これらは全部当該技術分野で良く知られている)と接触させることでそのような触媒組成物を生じさせることができ、ここで、1,5−シクロオクタジエン(COD)、トリス(オルソ−トリル)ホスファイト[P(O−o−C6H4CH3)3]およびエチレン(C2H4)がその容易に追い出される配位子であり、かつ小文字の“o”はオルソを表す。また、米国特許第3,903,120号に記述されているように、ハロゲン化触媒と化合させる場合には、元素状のニッケル、好適にはニッケル粉末もゼロ価ニッケルの適切な源である。
別法として、二価ニッケル化合物を還元剤と組み合わせることで、単座もしくは二座ホスファイト配位子の存在下で反応させる時の反応でゼロ価ニッケル源として働かせることも可能である。適切な二価ニッケル化合物には、式NiZ2[式中、Zはハライド、カルボキシレートまたはアセチルアセトネートである]で表される化合物が含まれる。適切な還元剤には、金属のホウ水素化物、金属のアルミニウム水素化物、金属アルキル、Li、Na、K、Zn、FeまたはH2および当該技術分野で公知の電気化学手段が含まれる。例えば、米国特許第6,893,996号(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)を参照のこと。触媒組成物中の二座ホスファイト配位子は理論的に所定時間でニッケルに配位し得る量より過剰な量で存在し得る。
二価ニッケル化合物を還元剤と反応させると、ルイス酸が副生成物として生じる可能性がある。例えば、NiCl2とゼロ価Znを配位子の存在下で反応させるとゼロ価NiとZnCl2(これはルイス酸である)を含有して成る触媒が生じる。そのような反応生成物を3番目の反応ゾーン(Z3)に送り込む触媒とルイス酸の両方の供給材料として用いることも可能である。しかしながら、この反応生成物に適切な精製段階を受けさせることで、その触媒を1番目の反応ゾーン(Z1)に送り込む供給材料として用いる前にルイス酸を除去しておくべきである。そのような精製段階は液体/液体抽出および蒸留を伴い得る。ゼロ価Niを二価のNiの代わりに1番目の触媒のニッケル給源として用いる方が好適である。
1番目、2番目または3番目の触媒として使用可能な触媒を生じさせるに適した方法が国際出願番号PCT/US10/60381、国際出願番号PCT/US10/60388、INVISTA代理人整理番号PI2440およびINVISTA代理人整理番号PI2775に記述されている。
その触媒組成物をヒドロシアン化反応混合物に反応性を示さずかつ混和しない溶媒に溶解させてもよい。適切な溶媒には、例えば炭素原子数が1から10の脂肪族および芳香族炭化水素およびニトリル溶媒、例えばアセトニトリルなどが含まれる。別法として、3PN、異性体ペンテンニトリルの混合物、異性体メチルブテンニトリルの混合物、異性体ペンテンニトリルの混合物および異性体メチルブテンニトリルまたは先行する反応活動で得
た反応生成物を用いて前記触媒組成物を溶解させることも可能である。
本明細書の上で考察したように、触媒に再生を液体/液体抽出に続く蒸留で抽出用溶媒を除去することで受けさせてもよい。その濃ニッケル錯体(ゼロ価ニッケルと少なくとも1種の燐含有配位子を含有して成る)の少なくとも一部を1番目の(Z1)反応ゾーン内で1,3−ブタジエンおよびシアン化水素と接触させて1番目の反応流出物を生じさせそして2番目(Z2)反応ゾーン内で2−メチル−3−ブテンニトリルと接触させて2番目の反応流出物を生じさせるか或はそれらの組み合わせを行う前に、そのような蒸留段階で回収した触媒に入っているニッケル錯体の濃度を高くしておくことも可能である。抽出用溶媒が除去された流れの少なくとも一部とニッケル金属をオルガノニトリル溶媒中で接触させることでニッケル錯体の濃度を高くすることができる。
燐含有配位子
本発明の方法で用いる触媒は、ゼロ価ニッケルおよび少なくとも1種の燐含有(P含有)配位子、例えばホスファイト、ホスホナイト、ホスフィナイト、ホスフィンおよび混合P含有配位子などまたはそのような員の組み合わせを含有する。
そのようなP含有配位子がゼロ価ニッケル含有錯体としてニッケルと化学的に結合していて、その錯体と結合していない遊離のP含有配位子は単座もしくは多座、例えば二座または三座であり得る。用語“二座”は当該技術分野で良く知られていて、配位子の両方の燐原子が単一の金属原子と結合していてもよいことを意味する。用語“三座”は、配位子上の3個の燐原子が単一の金属原子と結合していてもよいことを意味する。用語“二座”および“三座”はまた当該技術分野でキレート配位子としても知られる。
本明細書で用いる如き用語“混合P含有配位子”は、ホスファイト−ホスホナイト、ホスファイト−ホスフィナイト、ホスファイト−ホスフィン、ホスホナイト−ホスフィナイト、ホスホナイト−ホスフィンおよびホスフィナイト−ホスフィンまたはそのような員の組み合わせから成る群より選択される少なくとも1種の組み合わせを含有して成るP含有配位子を意味する。
1番目の触媒、2番目の触媒および3番目の触媒から成る群より選択される触媒の中の少なくとも1つは少なくとも1種の燐含有配位子に関して異なっていてもよい。
1番目の触媒に適切な燐含有配位子を式I、式III、式IV、式IVaまたはこれらの組み合わせで表される化合物から成る群より選択する。2番目の触媒に適切な燐含有配位子を式I、式III、式IV、式IVaまたはこれらの組み合わせで表される化合物から成る群より選択する。3番目の触媒に適切な燐含有配位子を式I、式III、式IV、式IVaまたはこれらの組み合わせで表される化合物から成る群より選択する。式IIIは構造
[式中、
X11、X12、X13、X21、X22、X23は独立して酸素または単結合を表し、R11、R12は独立して同一もしくは異なる単一もしくは橋状有機基を表し、
R21、R22は独立して同一もしくは異なる単一もしくは橋状有機基を表し、そして
Yは橋渡し基を表す]
を有する。
好適な態様におけるX11、X12、X13、X21、X22、X23は各々酸素であり得る。そのような場合、橋渡し基Yがホスファイト基と結合している。別の好適な態様におけるX11およびX12は各々が酸素でX13が単結合であってもよいか、或はX11およびX13の各々が酸素でX12が単結合であってもよく、その結果として、X11、X12およびX13で取り囲まれている燐原子がホスホナイトの中心原子である。そのような場合、X21、X22およびX23の各々が酸素であるか、或はX21およびX22の各々が酸素でX23が単結合であるか、或はX21およびX23の各々が酸素でX22が単結合であるか、或はX23が酸素でX21およびX22の各々が単結合であるか、或はX21が酸素でX22およびX23の各々が単結合であるか、或はX21、X22およびX23の各々が単結合であってもよく、その結果として、X21、X22およびX23で取り囲まれている燐原子がホスファイト、ホスホナイト、ホスフィナイトまたはホスフィン、好適にはホスホナイトの中心原子であり得る。別の好適な態様におけるX13は酸素でX11およびX12の各々が単結合であってもよいか、或はX11が酸素でX12およびX13の各々が単結合であってもよく、その結果として、X11、X12およびX13で取り囲まれている燐原子がホスホナイトの中心原子である。そのような場合、X21、X22およびX23の各々が酸素であるか、或はX23が酸素でX21およびX22の各々が単結合であるか、或はX21が酸素でX22およびX23の各々が単結合であるか、或はX21、X22およびX23の各々が単結合であってもよく、その結果として、X21、X22およびX23で取り囲まれている燐原子はホスファイト、ホスフィナイトまたはホスフィン、好適にはホスフィナイトの中心原子であり得る。別の好適な態様におけるX11、X12およびX13は各々が単結合であってもよく、その結果として、X11、X12およびX13で取り囲まれている燐原子はホスフィンの中心原子である。そのような場合、X21、X22およびX23の各々が酸素であるか、或はX21、X22およびX23の各々が単結合であってもよく、その結果として、X21、X22およびX23で取り囲まれている燐原子はホスファイトまたはホスフィン、好適にはホスフィンの中心原子であり得る。橋渡し基Yは好適にはアリール基であり、これは例えばC1−C4−アルキル、ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素など、ハロゲン置換アルキル、例えばトリフルオロメチルなど、アリール、例えばフェニルなどで置換されているか或は置換されておらず、好適には芳香系中の炭素原子数が6から20の基、特にピロカテコール、ビス(フェノール)またはビス(ナフトール)である。R11およびR12基は各々独立して同一もしくは異なる有機基であってもよい。有利なR11およびR12基はアリール基、好適には炭素原子数が6から10のアリール基であり、これは置換されていなくてもよいか或は一置換もしくは多置換されていてもよく、特にC1−C4−アルキル、ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素など、ハロゲン置換アルキル、例えばトリフルオロメチルなど、アリール、例えばフェニルなど、または非置換アリール基で置換されていてもよい。R21およびR22基は各々独立して同一もしくは異なる有機基であってもよい。有利なR21およびR22基はアリール基、好適には炭素原子数が6から10のアリール基であり、これは置換されていなくてもよいか或は一置換もしくは多置換されていてもよく、特にC1−C4−アルキル、ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素など、ハロゲン置換アルキル、例えばトリフルオロメチルなど、アリール、例えばフェニルなど、または非置換アリール基で置換されていてもよい。R11およびR12基は各々個別であるか或は橋渡しされていてもよい。R21およびR22基も各々が個別であるか或は橋渡しされていてもよい。R11、R12、R21およびR22基は各々個別であってもよいか、2つが橋渡しされていて2つが個別であってもよいか、或は4つ全部が橋渡しされていてもよい(記述
した様式で)。
式IVは構造
[式中、
X1、X2、X3は独立して酸素または単結合を表し、そして
R1、R2およびR3は各々独立して同一もしくは異なる有機基である]
を有する。R1、R2およびR3は各々独立してアルキル基、好適には炭素原子数が1から10のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチルなど、アリール基、例えばフェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、1−ナフチル、2−ナフチルなど、またはヒドロカルビル、好適には炭素原子数が1から20のヒドロカルビル、例えば1,1'−ビフェノール、1,1'−ビナフトールなどである。R1、R2およびR3基は一緒に直接結合していてもよい、即ち単独で中心の燐原子を通して結合していなくてもよい。R1、R2およびR3基が一緒に直接結合していていないのが好適である。好適な態様におけるR1、R2およびR3基はフェニル、o−トリル、m−トリルおよびp−トリルから成る群より選択した基である。特に好適な態様では、R1、R2およびR3基の中でフェニル基である数は最大で2であるべきである。別の好適な態様では、R1、R2およびR3基の中でo−トリル基である数は最大で2であるべきである。使用可能な特に好適な化合物は以下の式(IVa):
[式中、w、x、y、zは各々自然数であり、そして下記の条件が当てはまる:w+x+y+z=3およびw、z<=2]
で表される化合物である。
そのような化合物(IIa)の例は(o−トリル−O−)3P、(p−トリル−O−)(フェニル−O−)2P、(m−トリル−O−)(フェニル−O−)2P、(o−トリル−O−)(フェニル−O−)2P、(p−トリル−O−)2(フェニル−O−)P、(m−トリル−O−)2(フェニル−O−)P、(o−トリル−O−)2(フェニル−O−)P、(m−トリル−O−)(p−トリル−O−)(フェニル−O−)P、(o−トリル−O−)(p−トリル−O−)(フェニル−O−)P、(o−トリル−O−)(m−トリル−O−)(フェニル−O−)P、(p−トリル−O−)3P、(m−トリル−O−)(p−トリル−O−)2P、(o−トリル−O−)(p−トリル−O−)2P、(m−トリル−O−)2(p−トリル−O−)P、(o−トリル−O−)2(p−トリル−O−)P、(o−トリル−O−)(m−トリル−O−)(p−トリル−O−)P、(m−トリル−O−)3P、(o−トリル−O−)(m−トリル−O−)2P、(o−トリル−O−)2(m−トリル−O−)Pまたはこのような化合物の混合物である。
本方法で用いるに有用な二座ホスファイト配位子の例は以下に示す式V:
で表される配位子である。
本方法で用いるに有用な二座ホスファイト配位子のさらなる例には、以下に示す式VIからIX:
[各式中、R17はメチル、エチルまたはイソ−プロピルから成る群より選択され、そしてR18およびR19は独立してHまたはメチルから選択される]
で表される化合物が含まれる。
本方法で用いるに有用な二座ホスファイト配位子の追加的例には、式XおよびXI:
[式中、
同様な参照文字は全部更に明確に限定しない限り同じ意味を有し、
R41およびR45は独立してC1からC5ヒドロカルビルから成る群より選択され、そしてR42、R43、R44、R46、R47およびR48は各々独立してHおよびC1からC4ヒドロカルビルから成る群より選択される]
で表される群の員から選択される配位子が含まれる。
例えば、そのような二座ホスファイト配位子は、
R41がメチル、エチル、イソプロピルまたはシクロペンチルであり、
R42がHまたはメチルであり、
R43がHまたはC1からC4ヒドロカルビルであり、
R44がHまたはメチルであり、
R45がメチル、エチルまたはイソプロピルであり、そして
R46、R47およびR48が独立してHおよびC1からC4ヒドロカルビルから成る群より選択される、
式Xおよび式XIで表される群の員から選択可能である。
追加的例として、そのような二座ホスファイト配位子は、
R41、R44およびR45がメチルであり、
R42、R46、R47およびR48がHであり、そして
R43がC1からC4ヒドロカルビルであるか、
或は
R41がイソプロピルであり、
R42がHであり、
R43がC1からC4ヒドロカルビルであり、
R44がHまたはメチルであり、
R45がメチルまたはエチルであり、
R46およびR48がHまたはメチルであり、そして
R47がH、メチルまたはt−ブチルである、
式Xで表される群の員から選択可能であるか、
或は二座ホスファイト配位子は、
R41がイソプロピルまたはシクロペンチルであり、
R45がメチルまたはイソプロピルであり、そして
R46、R47およびR48がHである、
式XIで表される群の員から選択可能である。
更に別の例として、二座ホスファイト配位子はR41がイソプロピルであり、R42、R46およびR48がHでありそしてR43、R44、R45およびR47がメチルである式Xで表され得る。
式VからXIは三次元分子の二次元表示であることと化学結合の回りの回転が分子内で起こり得ることで示した配置とは異なる配置がもたらされる可能性があることは認識されるであろう。例えば、式VからXIで表されるビフェニル、オクタヒドロビナフチルおよびまたはビナフチル橋渡し基の2位と2'位の間に位置する炭素−炭素結合の回りの回転のそれぞれによって各式の2個の燐原子が互いにより近づく可能性がありかつホスファイト配位子がニッケルと二座様式で結合することが可能になり得る。用語“二座”は当該技術分野で良く知られていて配位子の両方の燐原子が単一のニッケル原子と結合していることを意味する。
1番目の触媒のための少なくとも1種の燐含有配位子は、例えば式IV[ここで、式IVはこの上に示した構造を有する]で表される化合物から成る群より選択可能である。
2番目の触媒のための少なくとも1種の燐含有配位子は、例えば式IIIおよびIV[ここで、式IIIおよびIVはこの上に示した構造を有する]で表される化合物から成る群より選択可能である。
3番目の触媒のための少なくとも1種の燐含有配位子は、式III[ここで、式IIIはこの上に示した構造を有する]で表される化合物から成る群より選択可能である。
ルイス酸助触媒
3番目の反応ゾーン(Z3)内で3−ペンテンニトリルにヒドロシアン化を受けさせてアジポニトリルを生じさせる目的で実施する反応を好適にはこの反応を助長させる助触媒の存在下で行う。この助触媒はルイス酸、例えば無機化合物、有機金属化合物またはこれらの組み合わせであってもよく、その中のルイス酸のカチオンをスカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、カドミウム、レニウム、ランタン、エルビウム、イッテルビウム、サマリウム、タンタルおよび錫から成る群より選択する。しかしながら、1番目の反応ゾーン(Z1)内で1,3−ブタジエンにヒドロシアン化を受けさせる時に実施する反応および2番目の反応ゾーン(Z2)内で2−メチル−3−ブテンニトリルに異性化を受けさせる時の反応を好適にはそのような助触媒を存在させないでか或は実質的に存在させないで実施する。実質的に存在させないといった表現は助触媒が測定可能な量でいくらか存在することは許容されるが但しその助触媒の量が1番目の反応ゾーン(Z1)および2番目の反応ゾーン(Z2)内で起こさせる反応の選択性にも収率にも有意な影響を与えないほどであることを条件とすることは理解されるであろう。
ジニトリルが1番目の反応ゾーン内で起こる3PNまたは2M3BNとHCNの反応で生じ得る。ルイス酸はジニトリルが1番目の反応ゾーン内で生じるのを助長する能力を有する。好適にはルイス酸が1番目の反応ゾーンに検出可能な量で入り込まないようにする。しかしながら、ルイス酸が検出可能な量で1番目の反応ゾーンに入り込む可能性はあるが、但しジニトリルの生成量が最小限であることを条件とする。例えば、ルイス酸が検出可能性な量で1番目の反応ゾーンに入り込む可能性はあるが、但し増加する度合がルイス
酸が1番目の反応ゾーン内に全く入り込まなかった時に生じるジニトリルの量の5重量%以内であることを条件とする。
ルイス酸が装置不調または担当者の過失の結果として1番目の反応ゾーンに偶然に入り込む可能性がある。しかしながら、3−ペンテンニトリルを生じさせる過程の少なくとも95%の間の1番目の反応ゾーン内のNiの原子当量とルイス酸のモルの比率が10:1未満ならば3−ペンテンニトリルの連続した生成が維持され得る。
1番目および2番目の反応ゾーン内で生じた3−ペンテンニトリルを前記1番目および2番目の反応ゾーンの下流に位置する3番目の反応ゾーン内でシアン化水素と反応させることでアジポニトリルを包含するジニトリルを生じさせることができる。触媒およびルイス酸助触媒が3番目の反応ゾーンの中に反応体および生成物と一緒に流れ込む可能性がある。好適には、3番目の反応ゾーンから流れ出るルイス酸助触媒のいずれも1番目の反応ゾーンに流れ出まないようにする。しかしながら、ルイス酸助触媒の一部が3番目の反応ゾーンから1番目の反応ゾーンに流れ込む可能性はあるが、但しこの上で考察したように1番目の反応でジニトリルが好ましくなく生じる度合が最小限であることを条件とする。
蒸留装置
本明細書に記述する蒸留段階は当業者に公知の適切ないずれかの装置内で実施可能である。この蒸留で用いるに適した通常の装置の例には、シーブトレーカラム、バブルトレーカラム、規則的パッキングが備わっているカラム、不規則に詰め込まれたカラムまたは1段階蒸発器、例えば流下膜式蒸発器、薄膜蒸発器、フラッシュ蒸留蒸発器、多相らせんコイル蒸発器、自然循環蒸発器または強制循環フラッシュ蒸発器が含まれる。この蒸留は1つ以上の装置内で実施可能である。
蒸留装置は蒸留カラムを少なくとも1個含有して成る。触媒が蒸留液に入って飛沫同伴することがなくかつ適切な分離が生じるように構造化されたパッキングセクションを蒸留カラムへの供給場所の上に装備してもよい。
以下の実施例で本発明および本発明の使用可能性を立証する。本実施例を事実上例示として見なしかつ制限として見なさない。
実施例1−共用触媒回収システムおよび反応ゾーンZ1、Z2およびZ3内に二座配位子
この実施例1では、1,3−ブタジエンにヒドロシアン化を受けさせるための1番目の反応ゾーン(Z1)、混合ペンテンニトリルに異性化を受けさせてその混合物中の3−ペンテンニトリルを多くするための2番目の反応ゾーン(Z2)および3−ペンテンニトリルにヒドロシアン化を受けさせてアジポニトリルを生じさせるための3番目の反応ゾーン(Z3)の各々に共用の単一の触媒精製装置を用いて1,3−ブタジエンのヒドロシアン化でアジポニトリルを製造する2段階工程の操作を記述する。本実施例では、その示す反応ゾーン(Z1、Z2またはZ3)に加えてそれに関連した触媒取り扱い装置(これには触媒を分離、精製および再利用するばかりでなく新鮮な補給用触媒を添加するための工程装置が含まれ得る)を包含させる目的で用語“触媒ループ”を用いる。
1,3−ブタジエンおよびシアン化水素を図1に示す如き1番目の反応ゾーン(Z1)に仕込んで、その中で、その混合物をゼロ価Niとホスファイト含有配位子を含有して成る1番目の触媒(総称的に触媒系)の存在下で接触させることで実質的に3−ペンテンニトリル(3PN)と2−メチル−3−ブテンニトリル(2M3BN)を含有して成る反応生成物を生じさせる。この実施例1に示す触媒系は本明細書に開示する如き式IIIで表される二座ホスファイト配位子を含有して成る。
図1に示すように、1,3−ブタジエン反応体を1番目の反応ゾーン(Z1)にライン100に通して送り込み、シアン化水素反応体を前記1番目の反応ゾーン(Z1)にライン120に通して送り込みそして触媒を前記1番目の反応ゾーン(Z1)にライン140に通して送り込む。反応生成物流れを前記1番目の反応ゾーン(Z1)からライン122に通して取り出す。ライン122に入っている反応生成物流れには生成物、副生成物、未反応反応体および触媒が入っており、これは前記1番目の反応ゾーン(Z1)の中を通って流れたものである。この反応生成物流れ122を分離セクション125に導入することで、とりわけ濃触媒流れ140および生成物流れ200(2−メチル−3−ブテンニトリル(2M3BN)が入っている)を得る。この分離セクション125には図4に示すように1個以上の蒸留カラムが備わっている。未反応シアン化水素および1,3−ブタジエンもまた分離セクション125内で反応生成物および触媒から分離され得るが、HCNは一般に通常の装置操作中に反応して消失する。未反応1,3−ブタジエンを1番目の反応ゾーン(Z1)に図1には示していないラインによって再循環させる。また、3−ペンテンニトリル(3PN)が入っている流れも分離セクション125から図1には示していないラインに通して取り出す。分離セクション125の中で反応生成物から分離された触媒の少なくとも一部を1番目の反応ゾーン(Z1)にライン140に通して再循環させる。
1番目の反応ゾーン(Z1)内で起こさせた反応の後、2M3BNの実質的異性化を2番目の反応ゾーン(Z2)内で異性化用触媒を存在させて起こさせることで実質的に3PNを含有して成る反応生成物を生じさせる。この実施例1に示す異性化用触媒は、前記1番目の反応ゾーン(Z1)に導入した触媒組成物と同じである。
図1に示すように、2M3BNを含有する供給材料を2番目の反応ゾーン(Z2)にライン200に通して導入する。触媒を前記2番目の反応ゾーン(Z2)にライン240に通して導入する。この2番目の反応ゾーン(Z2)から出て来た流出物流れ222には触媒と3PN生成物が入っている。その流出物流れ222を分離セクション225に送り込むことでとりわけ3PN生成物流れ300および濃触媒流れ240を得る。分離セクション225には図5に示す如き一連の蒸留カラムが備わっている。
触媒を1番目の反応ゾーン(Z1)、2番目の反応ゾーン(Z2)および3番目の反応ゾーン(Z3)に供給するための触媒再循環システムを図1に示す。この実施例に示す触媒再循環システムは図1に示したそれとは異なる。特に、この実施例1に示す3つの反応ゾーンの全部に単一の触媒精製および再生システムを共用する。
触媒を1番目の反応ゾーン(Z1)に供給するための触媒再循環システムでは、ライン140に入っている濃触媒流れの一部を分かれさせて触媒パージ流れ126を生じさせる。この触媒パージ流れ126を流れ226と混合した後に流れ400と一緒に抽出ゾーン370に送り込む。次に、その再生触媒流れ340をZ1およびZ2にそれぞれ流れ140および240として戻す。
この実施例1では、1番目の反応ゾーン(Z1)および2番目の反応ゾーン(Z2)に専用の孤立した触媒回収システムを設けていない。それらにこの上に記述したように3番目の反応ゾーン(Z3)のための触媒回収システムを共用する。1番目の反応ゾーン(Z1)および2番目の反応ゾーン(Z2)から取り出した触媒パージ流れを一緒にして図1に示す如き抽出ゾーン370に仕込む。
この実施例1では、共用液体−液体抽出ゾーン370に再循環させた触媒および触媒精製および回収段階によって3番目の反応ゾーン(Z3)に由来するルイス酸が反応ゾーンZ1およびZ2に運び込まれる。
実施例1操作パラメーターおよび結果
1番目の反応ゾーン(Z1)内のニッケル用量を約500ppm(重量)(総供給材料を基準)に維持する。配位子用量を二座配位子:ニッケルのモル比が約3:1になるように調節する。
ブタジエンカラム(1番目の反応ゾーンの後方に位置する1番目の蒸留カラム)内の釜(リボイラーのプロセス側)の操作温度が約125℃を越えると触媒の損失が起こることが観察される。本発明の範囲を理論の記述で限定するものでないが、触媒に含まれる二座配位子成分の損失は熱分解によるものであると考えている。配位子インベントリーを維持する目的で、ブタジエンカラムの釜(1番目の反応ゾーンの後方に位置する1番目のカラム)を125℃に調節する。その結果として最初はペンテンニトリルが豊富な釜残生成物に入っている未反応ブタジエンの濃度が許容されないほど高くなる。この問題を解決する試みとして、ブタジエンカラムを真空操作に関して上方に調節しそして冷蔵装置を装備することで塔頂物の凝縮を起こさせる。大気から入り込む酸素を検出するための追加的監視装置を装備することで、酸素の存在下で起こる1,3−ブタジエンの制御不能な重合の危険性を軽減する。
この工程を連続運転条件下で実施すると、触媒に残存するルイス酸の濃度が高くなる。その触媒に含まれるルイス酸の物理的状態は危機的であるようには見えず、溶液の状態の触媒または飛沫同伴によって存在している可能性がある。そのルイス酸の存在は1番目の反応ゾーン(Z1)内で起こる1,3−ブタジエンからMGNへの変換が高くなったことと相互に関係していると思われる。このように最初に1,3−ブタジエンがMGNに変化すると結果としてADNの収率が失われる。
実施例2−隔離触媒回収システム
この実施例2では隔離触媒回収システムを例示する。特に、この実施例2では3個の個別の触媒回収システムを用いた工程を例示するが、ここでは、反応ゾーンZ1、Z2およびZ3の各々にニッケルとこの上に示した式IIIで表される構造を有する二座ホスファイト含有配位子を含有する触媒を入れる。
この実施例2では、図1に示すように、1,3−ブタジエン反応体を1番目の反応ゾーン(Z1)にライン100に通して送り込み、シアン化水素反応体を前記1番目の反応ゾーン(Z1)にライン120に通して送り込みそして触媒を前記1番目の反応ゾーン(Z1)にライン140に通して送り込む。反応生成物流れを前記1番目の反応ゾーン(Z1)からライン122に通して取り出す。ライン122に入っている反応生成物流れには生成物、副生成物、未反応反応体および触媒が入っており、これは前記1番目の反応ゾーン(Z1)の中を通って流れたものである。この反応生成物流れ122を分離セクション125に導入することで、とりわけ濃触媒流れ140および生成物流れ200(2−メチル−3−ブテンニトリル(2M3BN)が入っている)を得る。この分離セクション125に蒸留カラムを1個以上装備してもよい。分離セクション125の一例を図4に示す。未反応シアン化水素および1,3−ブタジエンもまた分離セクション125内で反応生成物および触媒から分離され得る。未反応1,3−ブタジエンを1番目の反応ゾーン(Z1)に図1には示していないラインに通して再循環させてもよい。また、3−ペンテンニトリル(3PN)が入っている流れも分離セクション125から図1には示していないラインに通して取り出してもよい。分離セクション125の中で反応生成物から分離された触媒の少なくとも一部を1番目の反応ゾーン(Z1)にライン140に通して再循環させてもよい。
1番目の反応ゾーン(Z1)内で起こさせた反応の後、2M3BNの実質的異性化を2番目の反応ゾーン(Z2)内で異性化用触媒を存在させて起こさせることで実質的に3P
Nを含有して成る反応生成物を生じさせる。この異性化用触媒を本明細書ではまた2番目の触媒とも呼ぶ。この異性化用触媒は前記1番目の反応ゾーン(Z1)に導入した触媒と同じであってもよい。場合により、この異性化用触媒は前記1番目の反応ゾーン(Z1)に導入した触媒と異なっていてもよい。
図1に示すように、2M3BNを含有する供給材料を2番目の反応ゾーン(Z2)にライン200に通して導入する。触媒を前記2番目の反応ゾーン(Z2)にライン240に通して導入する。この2番目の反応ゾーン(Z2)から出て来た流出物流れ222には触媒と3PN生成物が入っている。その流出物流れ222を分離セクション225に送り込むことでとりわけ3PN生成物流れ300および濃触媒流れ240を得る。分離セクション225に蒸留装置を1つ以上装備してもよい。図5にそのような分離セクション225の一例を示す。
触媒を1番目の反応ゾーン(Z1)および2番目の反応ゾーン(Z2)に供給するための触媒再循環システムを図1に示す。これらの触媒再循環システムに、更に、触媒を再循環させる前にそれの少なくとも一部を精製するためのさらなる装置も含める。
触媒を1番目の反応ゾーン(Z1)に供給するための触媒再循環システムでは、ライン140に入っている濃触媒流れの一部を分かれさせて触媒パージ流れ126を生じさせる。
パージ流れ126に入っている触媒の形態は不純物、例えば反応副生成物および触媒分解副生成物などが入っている溶液の形態である。パージ流れ126に入っている触媒を液体/液体抽出ゾーン150に送り込むことでその触媒に精製または再生を少なくともある程度受けさせる。その触媒は少なくともいくらかの副生成物が触媒溶液から除去されている点で精製または再生を受けている。
非極性溶媒、例えばアルカンなどを液体/液体抽出ゾーン150にライン130に通して送り込む。また、極性溶媒(これは前記非極性溶媒と混和しない)も前記液体/液体抽出ゾーン150にライン500に通して送り込む。抽出ゾーン150内で非極性相(非極性溶媒および触媒が入っている)および極性相(例えばラフィネート)(極性溶媒および例えば反応副生成物および触媒分解生成物が入っている)が生じる。その非極性相を抽出ゾーン150からライン134によって取り出して蒸留装置155に送る。前記極性相を抽出ゾーン150からライン510によって取り出して分離セクション1000に送る。
分離セクション1000の一例を図2により詳細に記述する。分離セクション1000には集合的に一連のカラム(K1、K2、K3およびK4)が備わっていてもよく、それによって、特定の反応副生成物および特定の触媒分解生成物を前記極性溶媒から除去する。K4のカラム下部から極性溶媒を得て、それを抽出ゾーン150にライン500によって戻す。
非極性溶媒を蒸留装置155内の蒸留で回収して抽出ゾーン150にライン130によって戻す。抽出ゾーン150、ライン134、蒸留装置155およびライン130が集合的に非極性溶媒を抽出ゾーン150に再循環させるための回収用ループを構成している。抽出ゾーン150、ライン510、分離セクション1000およびライン500が集合的に極性溶媒を抽出ゾーン150に再循環させるための回収用ループを構成している。追加的非極性溶媒および極性溶媒を抽出ゾーン150に図1に示していないラインによって導入することも可能である。そのような追加的溶媒は開始用として添加可能でありかつ液体/液体抽出段階中に失われた溶媒の補給用として添加可能である。
蒸留カラム155のカラム下部にはある程度精製された触媒が入っている。この触媒は触媒分解生成物および/または反応副生成物が触媒含有溶液から少なくともいくらか分離されている意味である程度精製または再生を受けている。このようにある程度精製された触媒を蒸留カラム155からライン156に通して取り出して1番目の反応ゾーン(Z1)に向かう再循環のためのいずれかの地点に導入してもよい。図1では、ある程度精製された触媒を蒸留カラム155からライン156に通して取り出した後に1番目の反応ゾーン(Z1)に再循環させる目的で触媒再循環ライン140に導入するためのライン146の中に移動させる。図1では、流れ146が取り出し流れ126の下流に導入されるように示しているが、場合によりこの流れを取り出し流れ126の上流に導入することも可能である。また、場合により、流れ146を1番目の反応ゾーン(Z1)に関連した触媒含有流れのいずれかに加えることも可能である。
そのある程度精製された1番目の触媒の流れ(これを後で1番目の反応ゾーン(Z1)に戻す)に追加的ゼロ価Niおよび/または追加的燐含有配位子を供給することも可能である。図1では、追加的ゼロ価Niおよび/または追加的燐含有配位子をライン145によって供給してもよい。また、図1に示すように、ある程度精製された1番目の触媒の流れ(これを後で1番目の反応ゾーン(Z1)に送り込む)に追加的ゼロ価Niおよび/または燐含有配位子をライン145によって供給することも可能である。しかしながら、補給用触媒を図1には示していない異なるルートによって加えることも可能であることは理解されるであろう。例えば、補給用触媒流れ145を1番目の反応ゾーンの触媒ループの他のセクションにか或は例えば1番目の反応ゾーン(Z1)に直接仕込むことも可能である。
この実施例2では、2番目の反応ゾーン(Z2)に触媒を2番目の反応ゾーン(Z2)に供給するための2番目の触媒回収システムを装備する。この2番目の触媒再循環システムでは、ライン240に入っている濃触媒流れの一部を分かれさせて触媒パージ流れ226を生じさせる。この触媒パージ流れ226を液体/液体抽出ゾーン250に送り込む。非極性溶媒、例えばアルカンなどを前記液体/液体抽出ゾーン250にライン230に通して送り込む。また、前記非極性溶媒と混和しない極性溶媒も前記液体/液体抽出ゾーン250にライン700に通して送り込む。図1に示していない給源に由来するジニトリルを抽出ゾーン250に所望の相分離および抽出を達成する必要に応じて加えることも可能である。例えば、3番目の反応ゾーン(Z3)から出て来て精製を受けさせたジニトリル生成物流れの一部を用いることも可能である。例えば、側流(示していない)をライン500から取り出して抽出ゾーン250に導入してもよい。抽出ゾーン250の中で非極性溶媒および触媒が入っている非極性相と例えば極性溶媒および反応副生成物および特定の触媒分解生成物などが入っている極性相(例えばラフィネート)が生じる。その非極性相を抽出ゾーン250からライン234によって取り出して蒸留装置255に送る。前記極性相を抽出ゾーン250からライン710によって取り出して分離セクション2000に送る。分離セクション2000を図2により詳細に記述する。
分離セクション2000には集合的に一連のカラム(K1、K2、K3およびK4)が備わっており、それらによって特定の反応副生成物および触媒分解生成物を分離する。K4のカラム下部から極性溶媒を取り出して、それを抽出ゾーン250にライン700によって戻す。相分離の必要に応じてアジポニトリルの形態の追加的極性溶媒を3番目の反応ゾーン(Z3)内で生じたアジポニトリルから図1に示していないラインに通して取り出してもよい。
非極性溶媒を蒸留装置255内の蒸留で回収した後、抽出ゾーン250にライン230によって戻す。抽出ゾーン250、ライン234、蒸留カラム255およびライン230が集合的に非極性溶媒を抽出ゾーン250に再循環させるための回収用ループを構成して
いる。抽出ゾーン250、ライン710、分離セクション2000およびライン700が集合的に極性溶媒を抽出ゾーン250に再循環させるための回収用ループを構成している。
蒸留カラム255のカラム下部にはある程度精製された触媒が入っている。この触媒は触媒分解生成物および/または反応副生成物の少なくともいくらかが前記触媒が入っている溶液から分離されている意味である程度精製または再生を受けている。このある程度精製された触媒を蒸留装置255からライン248に通して取り出して、2番目の反応ゾーン(Z2)に再循環させるための触媒再循環ライン240に導入してもよい。いずれかのある程度精製された触媒の流れ(これを後で2番目の反応ゾーン(Z2)に送り込む)に追加的ゼロ価Niおよび/または燐含有配位子を例えばライン245などによって供給することも可能である。図1には示していないが、場合によりライン245をライン246またはライン248(ライン240の代わりに)に直接向かわせてもよい。補給用触媒を導入する他の方法も当該技術分野で公知でありかつ使用可能である。
ライン300に入っている3PN生成物を3番目の反応ゾーン(Z3)に導入し、その中で3PNをHCNと反応させる。また分離セクション125から出て来た3PNも前記3番目の反応ゾーン(Z3)に図1に示していないライン1つ以上に通して導入することも可能である。HCN反応体供給材料を前記3番目の反応ゾーン(Z3)にライン220に通して導入する。3番目の触媒(場合によりゼロ価Niと二座ホスファイト含有配位子を含有して成る)(総称的に3番目の触媒系)およびルイス酸助触媒を前記3番目の反応ゾーン(Z3)にライン340に通して導入する。3PNとHCNが前記3番目の反応ゾーン(Z3)の中で反応することでアジポニトリルを含有する反応生成物がもたらされる。反応生成物流れを前記3番目の反応ゾーン(Z3)からライン400によって取り出す。この反応生成物流れには例えばアジポニトリル、触媒、助触媒および未反応の反応体が入っている。場合により、この反応生成物流れを分離セクション(図1には示していない)に通すことで未反応の反応体を除去しておいた後に触媒をアジポニトリル生成物から分離することも可能である。
ライン400に入っている生成物流れに由来する触媒およびアジポニトリル生成物を液体/液体抽出ゾーン370の中に送り込む。非極性溶媒、例えばアルカンなどを前記液体/液体抽出ゾーン370にライン330に通して送り込む。前記液体/液体抽出ゾーン370に導入する非極性溶媒の組成は前記液体/液体抽出ゾーン150に導入する非極性溶媒のそれと同じまたは異なってもよい。ライン330から来る非極性溶媒とライン400から来るアジポニトリル生成物が一緒になって混和しない成分の抽出剤系を構成する。抽出ゾーン370の中で非極性溶媒および触媒が入っている非極性相とアジポニトリルおよび助触媒および触媒分解生成物が入っている極性相(例えばラフィネート)が生じる。
前記非極性相を抽出ゾーン370からライン334によって取り出して蒸留装置375に送り込む。アジポニトリルが入っている前記極性相を抽出ゾーン370からライン600によって取り出してアジポニトリル精製セクション3000に送り込む。アジポニトリル精製セクション3000を図3により詳細に記述する。
アジポニトリル精製セクション3000には集合的に一連のカラム(K'1、K'2、K'3およびK'4)が備わっていてもよく、それらによって不純物、例えば反応副生成物および触媒分解生成物などの分離を行う。K'4のカラム下部に精製されたアジポニトリル生成物が生じ、それをライン660で回収する。場合により、その精製されたアジポニトリル生成物の一部を抽出ゾーン150または抽出ゾーン250に戻す(図1に示していないラインによって)ことでこれらの抽出ゾーンの中で起こさせる相分離を助長することも可能である。
非極性溶媒を蒸留装置375内の蒸留で回収して抽出ゾーン370にライン330によって戻す。抽出ゾーン370、ライン334、蒸留装置375およびライン330は集合的に非極性溶媒を抽出ゾーン370に再循環させるための回収用ループを構成している。蒸留カラム375のカラム下部にある程度精製された触媒が反応。このある程度精製された触媒を蒸留カラム375からライン340に通して取り出して、触媒を3番目の反応ゾーン(Z3)に再循環させてもよい。ライン340に入っているそのある程度精製された3番目の触媒の流れ(これを後で3番目の反応ゾーン(Z3)に戻す)に補給量の追加的ゼロ価Niおよび/または3番目の燐含有配位子を助触媒と一緒に供給してもよい。図1では、補給量の追加的ゼロ価Niおよび/または3番目の燐含有配位子および/または助触媒をライン345によって加える。しかしながら、補給用触媒および助触媒を導入する他の方法も存在することは理解されるであろう。例えば、再循環させる触媒流れ340の全部または一部を触媒反応槽に仕込むことでそれのニッケル含有量を高くしてもよくかつ触媒反応槽から出た流出物を適切な地点に導入することも可能である。
図2に蒸留トレインを示し、これは図1に示す分離セクション1000または分離セクション2000として使用可能である。図2では、ライン515が図1のライン510またはライン710のいずれかを表す。ライン515によってラフィネート流れを抽出ゾーン150または抽出ゾーン250のいずれかから分離セクション1000または分離セクション2000に移動させる(図1に示すように)。ライン515に入っているラフィネート流れは最初に蒸留カラムK1に送り込まれて、その中で抽出用溶媒がラフィネート流れに含まれている高沸点成分から分離される。特に、抽出用溶媒、例えばシクロヘキサンなどを蒸留カラムK1からライン525に通して取り出しそしてラフィネート流れに入っていた高沸点成分を蒸留カラムK1からライン520に通して取り出す。
次に、ライン520に入っているその溶媒が除去された流れを蒸留カラムK2に送り込んで、その中でペンテンニトリルをラフィネート流れに残存する高沸点成分から分離する。特に、ペンテンニトリル、例えば3PNおよび2M3BNなどを蒸留カラムK2からライン550に通して取り出しそしてラフィネート流れに入っていた高沸点成分を蒸留カラムK2からライン530に通して取り出す。
次に、ライン530に入っているそのペンテンニトリルが除去された流れを蒸留カラムK3に送り込み、その中でジニトリルを前記ラフィネート流れに残存する高沸点成分から分離する。特に、ジニトリル、例えばADNおよびMGNなどを蒸留カラムK3からライン535に通して取り出しそして前記ラフィネート流れに入っていた高沸点成分を蒸留カラムK3からライン540に通して取り出す。ライン540に入っているそのような高沸点成分には例えば触媒分解生成物などが含まれ得る。
次に、ライン535に入っているジニトリルが豊富な流れを蒸留カラムK4に送り込み、その中でアジポニトリルを低沸点ジニトリル、例えばMGNなどから分離する。特に、MGNを蒸留カラムK4からライン420に通して取り出す。また、ライン420に入っているMGN含有流れにはC8H13C≡N化合物およびフェノール化合物も入っている。アジポニトリルが豊富な流れを蒸留カラムK4からライン560に通して取り出す。図2では、ライン560が図1のライン500またはライン700のいずれかを表す。図1に示したように、ライン500に入っているアジポニトリルが豊富な流れを液体/液体抽出ゾーン150に再循環させそしてライン700に入っているアジポニトリルが豊富な流れを液体/液体抽出ゾーン250に再循環させる。
図3に蒸留トレインを示すが、これは図1に示したアジポニトリル精製セクション3000として使用可能である。ライン600によってラフィネート流れを抽出ゾーン370
から蒸留カラムK'1に移動させ、その中で抽出用溶媒をラフィネート流れに入っている高沸点成分から分離する。特に、抽出用溶媒、例えばシクロヘキサンなどを蒸留カラムK'1からライン625に通して取り出しそして前記ラフィネート流れに入っていた高沸点成分を蒸留カラムK'1からライン620に通して取り出す。
次に、ライン620に入っている溶媒が除去された流れを蒸留カラムK'2に送り込んで、その中でペンテンニトリルを前記ラフィネート流れに残存する高沸点成分から分離する。特に、ペンテンニトリル、例えば3PNおよび2M3BNなどを蒸留カラムK'2からライン650に通して取り出しそして前記ラフィネート流れに入っていた高沸点成分を蒸留カラムK'2からライン630に通して取り出す。
次に、ライン630に入っているペンテンニトリルが除去された流れを蒸留カラムK'3に送り込んで、その中でジニトリルを前記ラフィネート流れに残存する高沸点成分から分離する。特に、ジニトリル、例えばADNおよびMGNなどを蒸留カラムK'3からライン635に通して取り出しそして前記ラフィネート流れに入っていた高沸点成分を蒸留カラムK'4からライン640に通して取り出す。ライン640に入っているそのような高沸点成分には例えば触媒分解生成物などが含まれ得る。
次に、ライン635に入っているジニトリルが豊富な流れを蒸留カラムK'4に送り込んで、その中でアジポニトリルを低沸点ジニトリル、例えばMGNなどから分離する。特に、MGNが豊富な流れを蒸留カラムK'4からライン650に通して取り出しそして精製されたアジポニトリル流れを蒸留カラムK'4からライン660に通して取り出す。
図4は、蒸留トレインの一例を示す図式図であり、これは図1に示した分離セクション125として使用可能である。3PN、2M3BN、少なくとも1種の触媒およびBDが入っている流れ122を蒸留の目的で装置810に移動させる。この装置の中で流れ122に蒸留を受けさせることでBDが豊富な流れ812およびBDが除去された流れ813を得るが、それには3PN、2M3BNおよび少なくとも1種の触媒が入っている。そのBDが豊富な流れ812を1番目の反応ゾーン(Z1)に再循環させてもよい。
次に、そのBDが除去された流れ813(これには3PN、2M3BNおよび少なくとも1種の触媒が入っている)をさらなる蒸留の目的で別の装置820に移動させる。この装置の中で流れ813に蒸留を受けさせることでBDが豊富に存在する上部生成物流れ824、3PNおよび2M3BNが入っている流れ825、および少なくとも1種の触媒が豊富に存在する釜残生成物流れ140を得る。また、BDが豊富に存在する流れ824も1番目の反応ゾーン(Z1)に再循環させてもよい。もし例えば装置810または820にジニトリルが過剰に存在すると、その触媒は熱にあまり安定でない可能性があることから、ニッケルが高温表面、例えば交換器の管およびリボイラーの壁に固着する可能性がある。或は、それがニッケル固体が例えばカラム下部などで沈澱を起こすきっかけになる可能性がある。ジニトリルが過剰に存在するとまた最大操作温度が制限される可能性もあることで、工程をより緊密に制御、特に温度を制御する必要が生じ得る。
3PNおよび2M3BNが入っている流れ825を少なくともある程度であるが別の蒸留装置830に移動させる。この装置内で、流れ825の蒸留を実施することで2M3BNが豊富な流れ200と2M3BNが除去された流れ838(3PNが入っている)を得る。流れ200を蒸留装置の上部領域で得ることができる一方で流れ838を蒸留装置の下部領域で得ることができる。
図4に、前記1番目の反応ゾーン(Z1)から出て来た流出物を蒸留するための1つの蒸留システムを例示する。しかしながら、同じまたは本質的に同じ結果を達成する目的で
他の蒸留システムを設計して運転することは当該技術分野の技術の範囲内であることは理解されるであろう。例えば、触媒が示す熱安定性に応じて、蒸留装置810と蒸留装置820を組み合わせて単一の蒸留装置にすることも可能であり、その中でBNが豊富な流れを上部流れとして取り出し、PNが豊富な流れを測流として取り出しそして触媒が豊富な流れを下部流れとして取り出す。
図5は、蒸留トレインの一例を示す図式図であり、これは図1に示した分離セクション225として使用可能である。2番目の反応ゾーン内で得た流れ222に入っている異性化反応流出液に蒸留を受けさせることで触媒と生成物を回収する。流れ222を蒸留装置940に導入する。ペンテンニトリルが豊富な流れ942(3PN、2M3BNおよび(Z)−2M2BNが入っている)を蒸留装置940から得ることができる。流れ942にはまた他のペンテンニトリル(4PN、(E)−2M2BNまたはこれらの組み合わせから選択)および場合により実験式C8H12で表される二量化BD化合物、例えばVCHおよびエチリデンシクロヘキセン異性体なども入っている可能性がある。ペンテンニトリルが除去された流れ240(少なくとも1種の触媒が豊富に存在する)を釜残生成物として得ることができる。
流れ942に蒸留を受けさせることで低沸点の(Z)−2M2BN異性体の少なくとも一部を3PNおよび2M3BN反応生成物混合物から除去してもよい。
流れ942(3PN、2M3BNおよび(Z)−2M2BNが入っている)に蒸留を蒸留装置950内で受けさせる。流れ954を塔頂生成物として得るが、これには(Z)−2M2BNが豊富に存在する。流れ955(3PNおよび2M3BNが入っている)を釜残生成物として得るが、(Z)−2M2BNが除去されている。(Z)−2M2BNが“豊富”および“除去されている”は流れ942に入っているそれの濃度に関する。
流れ954にはまた他のペンテンニトリルも入っている可能性があり、それは2M3BN、(E)−2M2BNおよび場合により実験式C8H12で表される二量化BD化合物、例えばVCHおよびエチリデンシクロヘキセン異性体などを包含する群より選択される。流れ955にはまた他のペンテンニトリルも入っている可能性があり、それは4PN、2PNおよび(E)−2M2BNを包含する群より選択される。
そのような蒸留を場合により二量化BD化合物が流れ954の中に豊富に存在しかつ流れ955には除去されているような様式で実施することも可能であるが、両方とも流れ942に入っている二量化BD化合物の濃度に関する。場合により、二量化BD化合物が2M3BNと共沸することによって前記化合物が流れ954の中に豊富に存在するようにしてもよい。この上に記述した操作の結果として、流れ954に入っている2M3BNの量が流れ954の総質量を基準にして1重量%以上、例えば5重量%以上、例えば10重量%以上になるようにする。
流れ955(3PNおよび2M3BNが入っている)を少なくともある程度であるが蒸留装置960に移動させてもよい。この装置の中で、流れ955の蒸留を実施することで2M3BNが豊富な流れ967と2M3BNが除去された流れ300(3PNが入っている)を得る。流れ967を蒸留装置の上部領域で得ることができる一方、流れ300を蒸留装置の下部領域で得ることができる。
図5に、2番目の反応ゾーン(Z2)から出て来た流出物を蒸留するための1つの蒸留システムを例示する。しかしながら、同じまたは本質的に同じ結果を達成する目的で他の蒸留システムを設計して運転することは当該技術分野の技術の範囲内であることは理解されるであろう。例えば、上述したように、低沸騰物を除去する蒸留段階をそのシステムに
挿入することも可能である。また、1番目の反応ゾーンから出て来た流出物の蒸留で用いる装置と共用することも可能である。例えば、2番目の反応ゾーン(Z2)から出て来た流出物の蒸留で得た流れ(3PNおよび2M3BNが入っている)を1番目の反応ゾーン(Z1)から出て来た流出物の蒸留で用いる蒸留装置、例えば蒸留装置830などに送り込むことで3PNが豊富な流れと2M3BNが豊富な流れを得ることも可能である。
実施例1と実施例2の比較−1番目(Z1)および2番目(Z2)の反応ゾーン内の触媒に入っているルイス酸
実施例1では、1番目(Z1)および2番目(Z2)のゾーンの触媒に残存しているルイス酸の濃度が高い。この触媒に入っているルイス酸の物理的状態は危機的であるようには見えず、溶液の状態の触媒または飛沫同伴によって存在している可能性がある。そのルイス酸の存在は1番目の反応ゾーン(Z1)内で起こる1,3−ブタジエンからMGNへの変換率が高くなったことと相互に関係していることが観察される。このように最初に1,3−ブタジエンがMGNに変化すると結果としてADNの収率が失われる。
実施例3−隔離触媒回収システム.
実施例3では、単座配位子がZ1/Z2触媒ループに入りそして二座配位子がZ3触媒ループに入ることでZ1とZ2の触媒ループが1番目の触媒回収セクションを共用しそしてZ3の触媒ループが専用の2番目の触媒回収システムを有するようにある程度隔離された触媒回収システムを例示する。この実施例3では、Z1/Z2触媒回収セクションとZ3触媒回収セクションを分けることで、Z1/Zの単座配位子がZ3の二座配位子に流れ込む度合を最小限にしかつZ3の二座配位子およびルイス酸がZ1/Z2の単座配位子に流れ込む度合を最小限にする。
この実施例3では、1番目の反応ゾーン(Z1)と2番目の反応ゾーン(Z2)が単一の触媒回収システム(図1には示していない)を共用する以外は実施例2を繰り返す。Z1とZ2の両方に単座ホスファイト配位子を含有して成る触媒を用いるこの実施例3の場合のように1番目と2番目のホスファイト含有配位子が同じ場合には共用触媒回収システムの方が好ましい可能性がある。そのような共用システムの場合には、下記の機構をなくすか或は休止させてもよい:ライン226、230、234、247、248、700および710、抽出ゾーン250、蒸留装置255および分離セクション2000。パージ流れをライン226によって取り出す代わりに、パージ流れをライン227によって取り出してライン126に導入するか或は抽出ゾーン150に直接導入してもよい。そのような共用触媒回収システムの場合には、2番目の反応ゾーン(Z2)に入り込むある程度精製された触媒流れはいずれも図1に示す配置に従ってライン246および240を通って流れるであろう。
実施例2と実施例3の比較
実施例2に比べて、単座配位子を代わりに用いていることに加えてZ1/Z2触媒回収セクションをZ3触媒回収セクションから隔離していることで、1番目の反応ゾーン(Z1)に1回通す毎に生じるC9モノニトリルの生成量が1,3−ブタジエン供給材料を基準にして約0.3%低くなる。このC9モノニトリルは3番目の反応ゾーン(Z3)内で容易にC10ジニトリル(またデセンジニトリルまたはDDNとも呼ぶ)に変化し、生じたままのADNの品質を低下させかつ結果として1,3−ブタジエンを基にしたADN収率の損失をもたらす。
実施例3ではまた1番目の反応ゾーン(Z1)を1回通す毎に生じるVCH(ビニルシクロヘキサン)の生成量も実施例2に比べて約0.5%低くなる。このことは望ましいことである、と言うのは、1,3−ブタジエンがVCHに変化(3−ペンテンニトリルにではなくそして次に更にアジポニトリルにではなく)することはADNの収率損失に相当す
るからである。
実施例3では、1番目の反応ゾーン(Z1)で生じる好ましくない副生成物、特に2−ペンテンニトリルを包含する副生成物の生成量が約1.0%低下する。このことは重要である、と言うのは、反応ゾーン(Z1)出口から出て来た2−ペンテンニトリルは3−ペンテンニトリルと実質的に反応することなく2番目の異性化反応ゾーン(Z2)に運ばれた後にADNを生じる反応を実質的に起こすことなく3番目のヒドロシアン化ゾーン(Z3)に運ばれるからである。このように1,3−ブタジエンが2−ペンテンニトリルに変化するとADNに関する収率損失になる。
単座ホスファイト配位子(二座ホスファイト配位子ではなく)を1番目と2番目の反応ゾーン(Z1およびZ2)内で用いると蒸留装置810内の最大温度を高くすることが可能になる。それによって真空操作を行う必要がなくなることで、ブタジエン回収段階の安全性および信頼性が向上する。
実施例4から7−TBCの除去
以下の実施例4から7では、TBCを1,3−ブタジエンから除去する方法を例示する。1番目の反応ゾーン(Z1)に送り込む1,3−ブタジエン供給材料からTBCを除去しておくとZ1に存在させるホスファイト配位子とTBCの反応によって生じる好ましくない副生成物の生成量が低下する。
実施例4
実施例4では、3種類の商業的1,3−ブタジエン供給材料を個別かつ逐次的に1番目の反応ゾーン(Z1)に仕込む。この3種類の商業的1,3−ブタジエン供給材料に入っているTBC(t−ブチルカテコール)の量は50、100および500ppmである。比較の目的で、TBC含有量が50ppmの供給材料を適切な吸着剤、例えば活性炭または活性アルミナなどに接触させることでTBCの実質的に全部を1,3−ブタジエン供給材料から抽出することで比較実施例4用の供給材料を生じさせたが、これのTBC含有量は約1ppm(重量)未満である。この実施例4では通常の当業者に公知の如き適切な如何なる吸着剤も使用可能である。
実施例5−1,3−ブタジエンの瞬間蒸発でTBCを除去
実施例5では、TBCを1,3−ブタジエン供給材料から除去するための2つの方法の中の1番目を例示する。
1,3−ブタジエンをフラッシュドラムにほぼ大気圧下で仕込む。このフラッシュドラムへの熱入力は1,3−ブタジエン供給材料のほぼ417.8kJ/kgである。TBCを釜残生成物として流出させる。次に、1,3−ブタジエンを冷却し、凝縮させた後、その精製された1,3−ブタジエンを1番目の反応ゾーン(Z1)に流れ込ませる。
実施例6−苛性洗浄でTBCを除去
1,3−ブタジエンに瞬間蒸発を受けさせた後、それを向流気体−液体接触装置の下方入り口に仕込む一方、NaOH水溶液を前記接触装置の上部に液体分配装置に通して仕込む。次に、その精製しておいた湿った状態の1,3−ブタジエン塔頂流れを多床モレキュラーシーブ乾燥装置(選択的吸着と再生が起こるように管と弁を平行に取り付けておいた)に仕込む。無水窒素または無水フレアガスを前記再生用モレキュラーシーブ床の中に逆方向に仕込む。その乾燥と苛性による洗浄を受けた1,3−ブタジエンが含有するTBCの量は約5ppm未満である。
実施例7−直接吸着によるTBCの除去
液状の1,3−ブタジエンをDiazの米国特許第4,547,619号に教示されているように活性炭吸着剤を入れておいた2個の吸着床の1番目に仕込む。実施例6のモレキュラーシーブ乾燥装置に関して記述したように、その活性炭吸着床に管と弁を平行に取り付けることで選択的吸着と再生が起こるようにする。必要に応じて、非酸化性ガス、例えば窒素または過熱蒸気を加熱するか或は吸着床の中に通すことで吸着剤床を選択的に再生させる。商業的に販売されている1,3−ブタジエンを前記吸着剤床に通す時の流量を調節することで精製された1,3−ブタジエン中間生成物流れのTBC含有量が約5ppm未満になるようにする。
実施例8−ビニルシクロヘキサン(VCH)の生成−通常の装置操作
実施例2および3を繰り返しそしてVCHの生成量を監視する。VCHは1番目の反応ゾーン(Z1)の好ましくない副生成物である。VCHは1,3−ブタジエンから生じる環式二量体生成物であり、従ってアジポニトリルの収率損失に相当する。通常の連続運転中に、実施例2の1番目の反応ゾーン(Z1)の粗反応生成物のVCH含有量を測定しそして実施例3の1番目の反応ゾーン(Z1)の粗反応生成物のVCH含有量と比較する。実施例2の粗ペンテンニトリル生成物流れに入っているVCH生成量は実施例3のそれより約1%高い。
実施例9−ビニルシクロヘキサン(VCH)の生成−開始および休止装置操作
装置開始および装置休止中に実施例8を繰り返す。装置開始および休止中には1,3−ブタジエンの再循環量を多くする、と言うのは、ある程度ではあるが、1回通す毎の変換率が低くなりかつまた装置の操作を安定化させることを意図するからである。VCH生成量は1番目の反応ゾーンの触媒と1,3−ブタジエンの接触時間の関数として増加し、実施例3(Z1およびZ2内に単座配位子、Z3内に二座配位子)の処理形態におけるVCH生成量は一貫して実施例2の形態(Z1、Z2およびZ3反応ゾーン全部の中に二座配位子)のそれよりも低い。
実施例10−C9モノニトリルの除去
この実施例10では、C9モノニトリルが一体式触媒回収/再生ループ内に蓄積することを例示する。実施例1を繰り返しそしてC9モノニトリルの濃度を1番目の反応ゾーン
(Z1)の出口の所で測定する。濃度は実験中に変動し、反応ゾーン流出物総量を基準にして約1000ppmから約10,000の範囲である。実施例1の一体式触媒精製システムを用いると、C9モノニトリルが触媒ループ内に蓄積する。触媒ループ内に蓄積するC9モノニトリルの濃度が増すにつれて、そのC9モノニトリルは少なくともある程度であるが3番目の反応ゾーン(Z3)に送り込む3−ペンテンニトリルが豊富な供給材料の中に移動し、その中でそれらは容易にDDNに変化することで、生じたままの粗ジニトリル生成物の品質が低下する。
実施例11−隔離触媒回収システムを用いたC9モノニトリルの除去
実施例3を繰り返す。
流れ126に入っているC9モノニトリルの濃度は1番目の反応ゾーン(Z1)から出て来た流出物のそれに比べて高い(それが豊富に存在する)。このC9モノニトリルは液体/液体抽出システム内でラフィネート相と抽出相の間で分配される。そのラフィネートをライン510および515に通して分離セクション1000の1番目のカラムK1に仕込む。C9モノニトリルはK1下部流れ520の中で濃縮され、それをカラムK2に仕込む。カラムK2をC9モノニトリルの大部分が前記カラムから下部流れ530として出て行くように操作し、それらはカラムK3に流れ込みそして535を通って出た後、420を通ってカラムK4を出る。
実施例12−C9モノニトリルをMGNと一緒に除去
実施例3を繰り返す。
この実施例12では、MGN、C9モノニトリル、フェノールおよびクレゾールを反応システムから除去することを例示し、それは最終的に抽出装置から出て来たラフィネート流れを処理する目的で用いる蒸留トレインを通るが、ここでは、1番目の反応ゾーン(Z1)から出て来た反応生成物流れを特別な様式で蒸留することでそれを容易にすることができる。例えば、図4に示すように、反応生成物流れ122から未反応の1,3−ブタジエンおよびシアン化水素を蒸留装置810によって除去した後、蒸留装置810から出て来た下部流れ(この実施例12では1,3−ブタジエンが実質的に存在しない)を蒸留装置820に送り込み、それを下部流れ140に入っているC9モノニトリルが濃縮されるように調節する。下部流れ140に入っているC9モノニトリルが濃縮されるように精留セクション内の段数を選択しかつ還流比を選択することによって蒸留装置820を調節する。蒸留装置820を触媒が豊富な流れに入っているペンテンニトリル(3−ペンテンニトリルと2−メチル−3−ブテンニトリルの合計を包含)が少なくとも5重量%になるような様式で操作する。このようにすると、MGN、C9モノニトリル、フェノールおよびクレゾールが触媒が豊富な流れの中に入り込む傾向がある。
次に、そのような化合物を下部流れ140から除去してもよく、従って、少なくともある程度ではあるが上述した如き液体/液体抽出工程によって反応系から除去してもよい。
蒸留装置820内の工程条件を下部流れ140に入っているペンテンニトリルの相対的濃度が高くなるように、従って塔頂流れ824に入っているC9モノニトリルの相対的濃度が低くなるように調整してもよい。それによって前記システムからのC9モノニトリルの除去が改善される傾向がある。
1番目の反応ゾーン(Z1)に関連した触媒回収システムから出て来たラフィネートに存在するC9モノニトリルの約90重量%がカラムK4の塔頂流れに入って除去される。蒸留装置820内の条件を、3番目の反応ゾーン(Z3)から出て来た生じたままのジニトリル流出物に関する純度要求に応じて、3番目の反応ゾーン(Z3)に送り込む仕込み
物中のC9モノニトリルの濃度が1500ppm未満、例えば1000ppm未満、500ppm未満または100ppm未満になるように調整する。
実施例13−C9モノニトリル除去の向上−チムニートレー側流れカラム
実施例12を繰り返す。
この実施例13では、図1に示した分離セクション125に装備する図4に示す蒸留装置820の下部トレーに特別なトレーおよびポンプ付近配置を用いるとC9モノニトリルの除去が向上することを例示する。
触媒を1番目の反応ゾーン(Z1)に再循環させることに付随した問題の1つは、1番目の反応ゾーン(Z1)内で生じるジニトリルが触媒再循環ループ内に蓄積する傾向があることにある。ペンテンニトリル分離カラム(ここでは蒸留装置820と呼ぶ)にチムニートレーを設置すると前記問題が少なくともある程度軽減される。
この実施例13では、図4に示す蒸留装置820にチムニートレーを取り付ける。
図4に示すこの蒸留装置820を図6にチムニートレーが蒸留装置850として取り付けられている状態で例示する。
このチムニートレー870を供給材料入り口852の直ぐ上の地点に位置させる。液体が前記チムニートレーの上に蓄積した後にライン872およびポンプ874によって排出され、ライン876によってトリムヒーター880(このトリムヒーターに送り込まれる供給材料の少なくとも一部を蒸発させるに充分な能力を有する)に入り込む。次に、その加熱された流れ882はチムニートレー870またはチムニートリム870の直ぐ上の蒸留装置850に沿った地点に戻る。
触媒が豊富な液体が蒸留装置850の下部に蓄積して、リボイラー866によって加熱される。ペンテンニトリル分離カラムのチムニートレー870の上部にトレーまたはパッキング854の形態の分離段階を1段以上含めてもよい。塔頂流れ856がある程度凝縮される可能性があり、そしてその液体が蒸留装置850の上部に還流する可能性がある。
ポンプ874の下流の側流れの流れ878にはC9モノニトリルおよびジニトリルが豊富に存在する。この実施例13の処理形態によって、前記1番目の反応ゾーン(Z1)に再循環して来る触媒流れに入っているC9モノニトリルおよびジニトリルの量が低下しかつC9モノニトリルおよびジニトリルが濃縮した流れがもたらされることで、そのような成分が3番目の反応ゾーン(Z3)の上流のプロセスからより有効に除去される。この実施例13のチムニートレー側流れの形態を操作することで、3番目の反応ゾーン(Z3)に流れ込むC9モノニトリルおよびジニトリルの量が少なくなる。
実施例14−実施例2と3におけるC9モノニトリル生成量の比較
実施例2および3を繰り返すことで、1番目の反応ゾーン(Z1)で生じるC9モノニトリルの総生成量を測定する。
実施例3では、単座配位子を含有して成る触媒を用いたことで1番目の反応ゾーン(Z1)からもたらされる混合ペンテンニトリル生成物のC9モノニトリル含有量は約500ppmである。実施例2では、二座配位子を含有して成る触媒を用いたことで1番目の反応ゾーン(Z1)からもたらされる混合ペンテンニトリル生成物のC9モノニトリル含有量は約1000から10000ppmまたはそれ以上である。
実施例15−専用の3−ペンテンニトリル蒸留
この実施例15では3番目の反応ゾーン(Z3)に送り込む供給材料に入っているC9モノニトリルの濃度を低くする別の任意選択を例示する。
3番目の反応ゾーン(Z3)に送り込む3−ペンテンニトリル供給材料に入っているC9モノニトリルの含有量を低くする1つの方法は、3−ペンテンニトリルが豊富に存在するする塔頂流れとC9モノニトリルが豊富に存在する下部流れが生じるように3−ペンテンニトリル供給材料流れを蒸留することで実施例2の操作を修飾した方法である。
1番目の反応ゾーン(Z1)から出て来た3−ペンテンニトリル生成物および場合により2番目の反応ゾーン(Z2)の異性化で生じたペンテンニトリル流出物(“イソメレート”)を塔頂冷却器と戻り配管(カラムの圧力および還流比を調整するための制御弁を1つ以上取り付けておいた)を装備した多段階蒸留カラムに仕込む。この多段階蒸留カラムにまた1つ以上のリボイラーおよび任意の中間段階加熱装置(カラムに入っている液体を蒸発させるために供給地点の下方に位置させた)も装備する。このカラムの操作を3−ペンテンニトリルが豊富に存在する塔頂流れおよびC9モノニトリルおよびジニトリル(MGNを包含)が豊富に存在する下部流れが生じるように制御する。2番目の反応ゾーン(Z2)から出て来た3−ペンテンニトリル流出物の本質的に全部を瞬間蒸発させ、冷却しそして凝縮させる目的でこのカラムに入力するエネルギーは、このような追加的蒸留段階を用いないで操作する実施例2および3に比較して、ADN処理の単位時間当たりの総エネルギー消費量を有意に高くする。
実施例16−中間沸騰物の除去の向上
この実施例16では実施例13を繰り返す。
実施例16では、図6に示す如き蒸留装置850から取り出した流れ878を選択的に処理することによって、反応装置から出て来て最終的に蒸留および液体/液体分離セクションを通る中間沸騰物、例えばMGN、C8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾールの除去を向上させることを例示する。
次に、この上に記述したラフィネート処理工程を用いて、ラフィネートの中に入り込みかつラフィネートから出て行く抽出処理を行うことで、そのような化合物を反応装置から少なくともある程度除去することができる。次に、側流れ878から出て来た流れを抽出セクションに直接または間接的に(例えば触媒パージ流れに)送り込んでもよい。このようにすると、抽出セクションに送り込まれて再循環触媒から分離されるMGN、C8H13C≡N化合物、フェノールおよびクレゾールの量を多くすることが達成される。場合により、流れ878を多段階抽出セクションにこの多段階抽出セクションの1番目の段階の後方で送り込むことでC9モノニトリル排除を更に向上させることができる。
実施例17−TBC副生成
この実施例17では、t−ブチルカテコール(TBC)がこの開示する方法で示す挙動を例示する。
t−ブチルカテコール(TBC)は重合禁止剤であり、1,3−ブタジエン、特に貯蔵中の1,3−ブタジエンが起こす重合を抑制する。1,3−ブタジエンの商業源にはしばしば1,3−ブタジエンの重合を抑制する目的でTBCが少量入っている。
TBCは単座ホスファイト配位子および二座ホスファイト配位子と反応する。
1,3−ブタジエン供給材料に入っているTBCは数多くの問題の引き金になる。TB
Cは1番目の反応ゾーン(Z1)内で配位子と反応を起こすことで、ニッケルと錯体を形成するTBC副生成物および触媒配位子と反応するTBC副生成物が生じる。そのようなニッケル含有錯体は1番目の触媒のニッケル−配位子錯体に比べて触媒活性が低いと思われる。1番目の反応ゾーン(Z1)内で起こるTBC反応の反応性TBC副生成物には更にフェノールおよびクレゾールの如き化合物も含まれ、それらは3番目の反応ゾーン(Z3)内で触媒配位子と更に反応する可能性がある。そのような反応性TBC副生成物と触媒配位子の反応が3番目の反応ゾーン(Z3)内で起こると新しいニッケル含有錯体が生じる点で同様な問題が引き起こされる。そのような新しく生じたニッケル含有錯体が示す触媒活性は3番目の触媒のニッケル−配位子錯体のそれよりも低い。以下に記述するように、反応性TBC副生成物の一部が液体/液体抽出セクションのラフィネート相に入り込まないようにすることでそれを工程から除去する。
実施例2および3を繰り返す。この上に記述した反応性TBC副生成物(例えばフェノールおよびクレゾール)を図2のK4カラムから塔頂物として除去する。このようにK4カラムによる除去は、ペンテンニトリル分離カラム(K2)の操作をペンテンニトリル分離カラムから出て来るTBC副生成物の大部分が塔頂に維持されるようにすることで可能になる。
実施例18−配位子加水分解生成物
実施例2を繰り返す。1番目、2番目および3番目の反応ゾーン(Z1、Z2およびZ3)内の触媒は二座ホスファイト配位子を含有する。
1番目の反応ゾーン(Z1)の触媒ループに入っている二座配位子の一部は水と反応して軽質の配位子加水分解生成物(LLHP)と重質の配位子加水分解生成物(HLHP)を生じる。前記触媒ループから取り出したパージを抽出システム内で接触させる。その抽出システムから出て来たラフィネート(極性)相を分離セクション1000に仕込む。LLHPを前記システムからK4の塔頂420によって除去しそしてHLHPを前記システムからK3から出て来るライン540によって除去する。
実施例19−配位子加水分解生成物の除去
実施例3を繰り返す。1番目と2番目の反応ゾーン(Z1およびZ2)内の触媒は単座ホスファイト配位子を含有しそして3番目の反応ゾーン(Z3)内の触媒は二座ホスファイト配位子を含有する。
前記1番目の反応ゾーン(Z1)の触媒ループ内の二座配位子の一部が水と反応して軽質の配位子加水分解生成物(LLHP)および重質の配位子加水分解生成物(HLHP)が生じる。その触媒ループから取り出したパージを抽出システム内で接触させる。
前記抽出システムから出て来たラフィネート(極性)相を分離セクション1000に仕込む。LLHPを前記システムからK4の塔頂420によって除去しそしてHLHPを前記システムからK3から出て来るライン540によって除去する。
実施例20−MGNを液体−液体抽出によって除去
実施例3を繰り返す。1番目の反応ゾーンの粗生成物には主にペンテンニトリルおよび未反応の1,3−ブタジエンが入っているが、またジニトリル(アジポニトリル(ADN)およびメチルグルタロニトリル(MGN)を包含)も少量入っている。
1番目の反応ゾーン(Z1)または2番目の反応ゾーン(Z2)または1番目と2番目の反応ゾーンの両方から流れ出た触媒を1つ以上の蒸留カラム内で濃縮した後に少なくとも1つの触媒再循環流れとして1番目の反応ゾーン(Z1)または2番目の反応ゾーン(
Z2)または1番目と2番目両方の反応ゾーン(Z1およびZ2)に再循環させる。
その触媒再循環流れの少なくとも一部を液体/液体抽出段階で抽出用溶媒と接触させることで溶媒相とラフィネート相を生じさせる。その溶媒相には抽出用溶媒と触媒が入っておりそしてラフィネート相にはジニトリル化合物(MGNを包含)、沸点がジニトリルより高い化合物および沸点がジニトリル化合物より低い化合物が入っている。次に、前記液体/液体抽出段階で得た溶媒相に由来する触媒を1番目の反応ゾーンまたは2番目の反応ゾーンまたは1番目と2番目両方の反応ゾーンに再循環させる。
実施例21−1番目および2番目の反応ゾーンを3番目の反応ゾーンのルイス酸から孤立
3番目の反応ゾーンZ3に由来するZnCl2(ルイス酸)を1番目の反応ゾーン(Z1)に戻して仕込む以外は実施例3を繰り返す。前記1番目の反応ゾーン(Z1)から出て来た粗生成物をジニトリル含有量に関して連続的に監視する。3番目の反応ゾーンに由来するルイス酸を1番目の反応ゾーンに1番目の反応ゾーンに仕込む総触媒を基準にした亜鉛の濃度が約100ppmになるように制御弁をある程度開けることで戻して仕込んでから数分後に前記制御弁を更に開放して1番目の反応ゾーンへの亜鉛仕込み量を多くして約500ppmにする。亜鉛の量が100ppmの時の粗生成物に入っているMGNの量は約0.5重量%である。ルイス酸仕込み量を500ppmにまで高くすると1番目の反応ゾーン(Z1)の粗生成物に含まれるMGN生成量が約1.0重量%まで高くなる。
実施例22−抽出用溶媒に入っている塩化亜鉛
実施例1を繰り返す。共用触媒抽出システムから出て来たシクロヘキサン抽出物にZnに関する分析をWalterの米国特許第3,778,809号に教示されているようにして受けさせる。
再利用触媒に入っているZnの量が約100ppmであることはMGNの収率が約0.8%であることと相互に関係している。再利用触媒に入っているZnの濃度を更に100ppm増加させるとMGNの収率が更に0.5%高くなって、全体で1.3%(重量)になる。
実施例23
この実施例23はブタジエンのダブルヒドロシアン化でアジポニトリルを製造する工程である。
この工程は、1番目の反応ゾーン内で1,3−ブタジエン(BD)とシアン化水素(HCN)を含有して成る混合物の反応をゼロ価Niと1番目の燐含有配位子を含有して成る1番目の触媒の存在下で起こさせることで3−ペンテンニトリル(3PN)と2−メチル−3−ブテンニトリル(2M3BN)を含有して成る反応生成物を生じさせる段階を包含する。
前記1番目の反応ゾーンで得た2M3BNの少なくとも一部に異性化を2番目の反応ゾーン内でゼロ価Niと2番目の燐含有配位子を含有して成る2番目の触媒の存在下で受けさせることで3PNを含有して成る反応生成物を生じさせる。
前記2番目(異性化)反応ゾーンで得た3PNとシアン化水素(HCN)を含有して成る混合物を3番目の反応ゾーンにゼロ価Niと3番目の燐含有配位子を含有して成る3番目の触媒の存在下およびルイス酸助触媒の存在下で仕込むことでアジポニトリルを含有して成る反応生成物を生じさせる。
触媒を前記1番目、2番目および3番目の反応ゾーンの中に反応体および生成物と一緒
に流す。
C9モノニトリルが前記1番目の反応ゾーン内で副生成物として生じる。
前記1番目の反応ゾーンから流れ出る1番目の触媒を1つ以上の蒸留段階で濃縮しそして少なくとも1つの触媒再循環流れとして前記1番目の反応ゾーンに再循環させる。
前記1番目の反応ゾーンに再循環させる前記触媒再循環流れの一部と抽出用溶媒の接触を液体/液体抽出段階で起こさせることで溶媒相とラフィネート相を生じさせる。その結果として生じた溶媒相に触媒が入っておりかつ前記ラフィネート相にはC9モノニトリルが豊富に存在する。
前記溶媒相に入っている触媒に対するC9モノニトリルの重量比の方が前記液体/液体抽出段階に導入した前記触媒再循環流れに入っている触媒に対するC9モノニトリルの重量比より低い。
前記液体/液体抽出段階で得た前記溶媒相に由来する触媒を前記1番目の反応ゾーンまたは前記2番目の反応ゾーンまたは前記1番目と2番目両方の反応ゾーンに再循環させる。
所望のモノニトリル、イソメラートおよびジニトリル生成物のそれぞれを各々の反応ゾーンから回収する。
実施例24
実施例23を繰り返す。
前記触媒再循環流れを液体/液体抽出段階に導入する前の前記流れにゼロ価ニッケルを添加しない。
所望のモノニトリル、イソメラートおよびジニトリル生成物のそれぞれを各々の反応ゾーンから回収する。
実施例25
実施例23を繰り返す。
本工程の前記液体/液体抽出段階に前記触媒再循環流れの一部、抽出用溶媒およびジニトリルを液体/液体抽出ゾーンに導入しそして前記液体/液体抽出ゾーン内の液体を分離させて触媒を含有して成る溶媒相とジニトリルおよびC9モノニトリルを含有して成るラフィネート相を生じさせることを含める。
所望のモノニトリル、イソメラートおよびジニトリル生成物のそれぞれを各々の反応ゾーンから回収する。
実施例26
実施例25を繰り返す。
前記液体/液体抽出ゾーンから出て来た前記溶媒相に蒸留を受けさせることで抽出用溶媒を除去しかつ抽出を受けた触媒流れを得て、それを前記1番目の反応ゾーンに再循環させる。
所望のモノニトリル、イソメラートおよびジニトリル生成物のそれぞれを各々の反応ゾーンから回収する。
実施例27
実施例25を繰り返す。
この実施例27では、前記ラフィネート相に抽出用溶媒、ペンテンニトリル、ジニトリル、触媒分解生成物およびC9モノニトリルが入っている。
前記ジニトリルを抽出用溶媒、ペンテンニトリル、触媒分解生成物およびC9モノニトリルから分離する。
その分離したジニトリルを前記液体/液体抽出段階に再循環させる。
所望のモノニトリル、イソメラートおよびジニトリル生成物のそれぞれを各々の反応ゾーンから回収する。
実施例28aから28e
実施例23から27を繰り返す。
この実施例28aから28eでは、前記2番目の反応ゾーン(Z2)から流出物流れを回収する。その流出物流れには3PNが入っており、それのC9モノニトリル含有量は5000ppm未満である。装置の操作をC9モノニトリルの含有量が2000ppm未満、例えばC9モノニトリルの含有量が1000ppm未満であるといった試行錯誤の妥当な量のみになるように調整する。
所望のモノニトリル、イソメラートおよびジニトリル生成物のそれぞれを各々の反応ゾーンから回収する。
実施例29
実施例27を繰り返す。
この実施例29では、前記3番目の反応ゾーンから得た反応生成物に入っている化学式C8H14(C≡N)2で表されるジニトリルの量が5000ppm未満になるようにする。装置の操作を化学式C8H14(C≡N)2で表されるジニトリルの含有量が2000ppm未満、例えば1000ppm未満であるといった試行錯誤の妥当な量のみになるように調整する。
所望のモノニトリル、イソメラートおよびジニトリル生成物のそれぞれを各々の反応ゾーンから回収する。
実施例30
実施例23を繰り返す。
前記1番目の反応ゾーンの中に流す前記触媒の前記1番目の燐含有配位子を単座燐含有配位子にする。
前記2番目の燐含有配位子を前記1番目の燐含有配位子と同じにする。
所望のモノニトリル、イソメラートおよびジニトリル生成物のそれぞれを各々の反応ゾ
ーンから回収する。
実施例31
前記3番目の燐含有配位子を二座燐含有配位子にする以外は実施例30を繰り返す。
所望のモノニトリル、イソメラートおよびジニトリル生成物のそれぞれを各々の反応ゾーンから回収する。
実施例32
実施例23を繰り返す。
段階(a)の1番目の反応ゾーンから出て来た流出物に蒸留を受けさせることで少なくとも3つの流れを生じさせる。
前記3つの流れの中の1番目に3−ペンテンニトリルが豊富に存在する。
前記3つの流れの中の2番目にC9モノニトリルが豊富に存在する。
前記3つの流れの中の3番目に触媒が豊富に存在する。
C9モノニトリルが豊富に存在する前記2番目の流れに処理を受けさせることでC9モノニトリルを除去する。
所望のモノニトリル、イソメラートおよびジニトリル生成物のそれぞれを各々の反応ゾーンから回収する。
実施例33
実施例32を繰り返す。
前記C9モノニトリルが豊富に存在する流れを液体/液体抽出段階に送り込んで溶媒相とラフィネート相を生じさせることで前記流れにC9モノニトリルを除去するための処理を受けさせる。
前記C9モノニトリルの少なくとも一部が前記ラフィネート相の中に入り込む。
所望のモノニトリル、イソメラートおよびジニトリル生成物のそれぞれを各々の反応ゾーンから回収する。
実施例34
実施例33の工程を繰り返す。
前記ラフィネート相に入っているC9モノニトリルの少なくとも一部を蒸留で除去する。
所望のモノニトリル、イソメラートおよびジニトリル生成物のそれぞれを各々の反応ゾーンから回収する。
実施例35
実施例32を繰り返す。
前記1番目の反応ゾーンから出て来た流出物に蒸留を受けさせることで2M3BNが豊富に存在する流れと3−ペンテンニトリルおよびC9モノニトリルが豊富に存在する流れを包含する流れを生じさせる。
3−ペンテンニトリルおよびC9モノニトリルが豊富に存在する前記流れに蒸留を受けさせることで前記3−ペンテンニトリルを前記C9モノニトリルから分離する。
所望のモノニトリル、イソメラートおよびジニトリル生成物のそれぞれを各々の反応ゾーンから回収する。
実施例36
実施例35を繰り返す。
前記1番目の反応ゾーンから出て来た流出物に蒸留を受けさせることで2M3BNが豊富に存在する流れ、3−ペンテンニトリルが豊富に存在する流れおよびC9モノニトリルが豊富に存在する流れを包含する流れを生じさせる。
2M3BNが豊富に存在する前記流れ、3−ペンテンニトリルが豊富に存在する前記流れおよびC9モノニトリルが豊富に存在する前記流れを単一の蒸留カラムから取り出す。2M3BNが豊富に存在する前記流れを上部流れとして取り出し、3−ペンテンニトリルが豊富に存在する前記流れを側流れとして取り出しそしてC9モノニトリルが豊富に存在する前記流れを下部流れとして取り出す。
所望のモノニトリル、イソメラートおよびジニトリル生成物のそれぞれを各々の反応ゾーンから回収する。
本明細書では比率、濃度、量および他の数値データを範囲形式で表すことがあり得ることを注目すべきである。そのような範囲形式は便利さおよび簡潔さの目的で用いるものであり、従って、その範囲の限界として明確に示した数値を包含するばかりでなくまたその範囲内に含まれる数値および小領域の各々をあたかも明確に示す如く個々の数値または小領域の全部も包含するとして柔軟な様式で解釈されるべきであると理解されるべきである。例示として、「約0.1%から約5%」の濃度範囲は明確に示した約0.1重量%から約5重量%の濃度を包含するばかりでなくまたその示した範囲内に入る個々の濃度(例えば1%、2%、3%および4%)および小領域(例えば0.5%、1.1%、2.2%、3.3%および4.4%)も包含すると解釈されるべきである。用語“約”はその修飾を受けさせる数値1種または2種以上の±1%、±2%、±3%、±4%、±5%、±6%、±7%、±8%、±9%または±10%を包含し得る。加うるに、語句「約‘x’から‘y’」は「約‘x’から約‘y’」を包含する。
本発明の例示態様を詳細に記述してきたが、本発明は他の異なる態様も可能であることと他の様々な修飾形が当業者に思い浮かぶと思われかつ当業者はそのような修飾を本発明の精神からも範囲から逸脱することなく容易に行うことができることは理解されるであろう。従って、本発明の請求の範囲を本明細書に示す実施例および説明に限定することを意図するものでなく、むしろ本請求項は本開示に存在する特許性のある新規性を有する特徴(本発明が関係する技術分野の技術者がそれの相当物であると取り扱うであろう特徴の全部を包含)の全部を包含すると解釈されるべきである。