センサ感圧素子のせん断変形によるせん断応力測定を行う場合、接触圧力による影響が避けられず、正確なせん断応力の測定の障害となるという問題があった。加えて、従来のせん断応力測定センサは、固体のせん断歪量からせん断応力へ変換する機構であるため、厚みおよび剛性があり、生体内のせん断応力および接触圧力を直接測定することへの適用は困難であるという問題があった。
そこで、本発明の目的は、上記問題を解決するためになされたものであり、せん断応力および接触圧力を直接同時測定するに際し、接触圧力による影響を排除したせん断応力の測定ができるセンサ装置等を提供することにある。
本発明の第2の目的は、生体内のせん断応力および接触圧力を直接同時測定することへ適用可能なセンサ装置等を提供することにある。
この発明のセンサ装置は、接触圧力及びせん断応力を測定するセンサ装置であって、該センサ装置は、ブリッジ回路の対向する2辺に各々配置された接触圧力を測定する接触圧力測定部と、別の対向する2辺に各々配置されたせん断応力を測定するせん断応力測定部とを備えた4ゲージ法ブリッジ回路を構成し、接触圧力およびせん断応力が無印加状態における4辺の電気抵抗は等しいものであり、前記センサ装置に接触圧力及びせん断応力が印加され、前記接触圧力測定部では接触圧力による電気抵抗変化のみが生じ、前記せん断応力測定部では接触圧力による電気抵抗変化及びせん断応力による電気抵抗変化が生じた場合、前記4ゲージ法ブリッジ回路の出力電圧には接触圧力による影響が排除されているという測定原理に基づき、該4ゲージ法ブリッジ回路の出力電圧とせん断応力との関係を求めておき、該関係により該4ゲージ法ブリッジ回路の出力電圧から該せん断応力測定部におけるせん断応力を求めることを特徴とする。
この発明のセンサ装置は、接触圧力及びせん断応力を測定するセンサ装置であって、該センサ装置は、接触圧力を測定する方形電極とせん断応力を測定する櫛型電極とが一端で接続された形状の電極と該電極に点対称な形状の電極とを対向させた片面側電極と、2つの櫛型電極が1端で接続された形状の電極と該電極に点対称な形状の電極とを対向させた対面側電極と、櫛型電極の櫛部分を揃わせて対面させた前記片面側電極と前記対面側電極との間に挟み込まれた導電性で薄膜状の圧力変換素子とを備え、接触圧力を測定する接触圧力測定部は対面させた前記片面側電極の方形電極と前記圧力変換素子と前記対面側電極の櫛型電極とにより構成し、せん断応力を測定するせん断応力測定部は櫛部分を揃わせて対面させた前記片面側電極の櫛型電極と前記圧力変換素子と前記対面側電極の櫛型電極とにより構成し、ブリッジ回路の対向する2辺に前記接触圧力測定部が各々配置され、別の対向する2辺に前記せん断応力測定部が各々配置されて4ゲージ法ブリッジ回路を構成し、接触圧力およびせん断応力が無印加状態における4辺の電気抵抗は等しいものであり、前記センサ装置に接触圧力及びせん断応力が印加された場合、前記4ゲージ法ブリッジ回路の出力電圧には接触圧力による影響が排除されているという測定原理に基づき、該4ゲージ法ブリッジ回路の出力電圧とせん断応力との関係を求めておき、該関係により該4ゲージ法ブリッジ回路の出力電圧から該せん断応力測定部におけるせん断応力を求めることを特徴とする。
ここで、この発明のセンサ装置において、前記センサ装置に接触圧力及びせん断応力が印加された場合、前記4ゲージ法ブリッジ回路への入力電圧を切った状態で測定された前記接触圧力測定部における電気抵抗と印加された接触圧力との関係を求めておき、該関係により該接触圧力測定部における電気抵抗から接触圧力を求めることができる。
ここで、この発明のセンサ装置において、前記センサ装置に接触圧力及びせん断応力が印加された場合、前記4ゲージ法ブリッジ回路への入力電圧を印加した状態で測定された前記接触圧力測定部における電圧により電気抵抗を得るという測定原理に基づき、該電気抵抗と印加された接触圧力との関係を求めておき、該関係により該接触圧力測定部における電気抵抗から接触圧力を求めることができる。
この発明のセンサ装置は、接触圧力及びせん断応力を測定するセンサ装置であって、該センサ装置は、ブリッジ回路の隣接する2辺に各々配置された接触圧力を測定する接触圧力測定部及びせん断応力を測定するせん断応力測定部と、他の隣接する2辺に各々配置された固定抵抗とを備えた2ゲージ法ブリッジ回路を構成し、接触圧力およびせん断応力が無印加状態における4辺の電気抵抗は等しいものであり、前記センサ装置に接触圧力及びせん断応力が印加され、前記接触圧力測定部では接触圧力による電気抵抗変化のみが生じ、前記せん断応力測定部では接触圧力による電気抵抗変化及びせん断応力による電気抵抗変化が生じた場合、前記2ゲージ法ブリッジ回路の出力電圧には接触圧力による影響が排除されているという測定原理に基づき、該2ゲージ法ブリッジ回路の出力電圧とせん断応力との関係を求めておき、該関係により該2ゲージ法ブリッジ回路の出力電圧から該せん断応力測定部におけるせん断応力を求めることを特徴とする。
この発明のセンサ装置は、接触圧力及びせん断応力を測定するセンサ装置であって、該センサ装置は、接触圧力を測定する方形電極と2次元平面の一次元方向を向いたせん断応力を測定する線状電極とが接続された形状の片面側電極と、前記片面側電極の方形電極に対応する線状電極と前記片面側電極の線状電極に対応する線状電極とを有する対面側電極と、前記片面側電極の線状電極と該線状電極に対応する前記対面側電極の線状電極とを揃わせて対面させた状態で、該片面側電極と該対面側電極との間に挟み込まれた導電性で薄膜状の圧力変換素子とを備え、接触圧力を測定する接触圧力測定部は対面させた前記片面側電極の方形電極と前記圧力変換素子と該方形電極に対応する前記対面側電極の線状電極とにより構成し、せん断応力を測定するせん断応力測定部は線部分を揃わせて対面させた前記片面側電極の線状電極と前記圧力変換素子と該線状電極に対応する前記対面側電極の線状電極とにより構成し、ブリッジ回路の隣接する2辺に前記接触圧力測定部及び前記せん断応力測定部が各々配置され、別の隣接する2辺に固定抵抗が各々配置されて2ゲージ法ブリッジ回路を構成し、接触圧力およびせん断応力が無印加状態における4辺の電気抵抗は等しいものであり、前記センサ装置に接触圧力及びせん断応力が印加された場合、前記2ゲージ法ブリッジ回路の出力電圧には接触圧力による影響が排除されているという測定原理に基づき、該2ゲージ法ブリッジ回路の出力電圧とせん断応力との関係を求めておき、該関係により該2ゲージ法ブリッジ回路の出力電圧から該せん断応力測定部におけるせん断応力を求めることを特徴とする。
この発明のセンサ装置は、前記片面側電極の線状電極の向きが2次元平面の一次元方向を向いた請求項6記載のセンサ装置と、前記片面側電極の線状電極の向きが2次元平面の別の一次元方向を向いた請求項6記載のセンサ装置とを、各2ゲージ法ブリッジ回路の電源を共通にして重ね合わせたことを特徴とする。
ここで、この発明のセンサ装置において、前記センサ装置に接触圧力及びせん断応力が印加された場合、前記接触圧力測定部に隣接する辺に配置された固定抵抗の電圧は該接触圧力測定部の抵抗の変化の影響を受けるという測定原理に基づき、該固定抵抗の電圧と印加された接触圧力との関係を求めておき、該関係により該固定抵抗の電圧から接触圧力を求めることができる。
ここで、この発明のセンサ装置において、該センサ装置を構成する各電極は銅薄膜を貼り付けられたポリイミドフィルムをエッチング処理することにより作製することができる。
この発明の分布測定装置は、本発明のセンサ装置を複数個接続して所定の配置を行ったことを特徴とする接触圧力及びせん断応力の分布測定装置である。
本発明のセンサ装置では、接触圧力およびせん断応力の変換素子(圧力変換素子)として、電解重合により作製した厚さ約20μmのポリピロール薄膜を用い、電極材として銅張ポリイミドフィルム(銅厚35μm)を用いた。センサ装置の電極は銅薄膜の貼り付けられたポリイミドフィルムの銅薄膜をウェットエッチング処理による加工を行って銅箔電極の形状を作製した。このため、従来のせん断応力センサにはない薄さとしなやかさとを有している。この電極で薄膜状の上記変換素子を挟み込むことによりセンサ装置とした。この結果、本発明のセンサ装置によれば、センサ装置全体が薄く且つしなやかであり、生体内のせん断応力および接触圧力を直接測定することへの適用が可能というという効果がある。
本発明のセンサ装置によれば、4ゲージ法ブリッジ回路の抵抗変化量の関係に基づき、せん断応力測定部における抵抗変化量ΔRaから接触圧力の影響による抵抗変化量ΔRbを差し引きした出力を得ることによって、接触圧力による影響を排除したせん断応力の測定を可能としたという効果がある。センサ装置は、4ゲージ法ブリッジ回路の対向する2つの抵抗の位置に各々配置された接触圧力測定部と、別の対向する2つの抵抗の位置に各々配置されたせん断応力測定部とを備えており、接触圧力およびせん断応力が無印加状態における2つの接触圧力測定部の電気抵抗と2つのせん断応力測定部の電気抵抗とは等しいものになるように設計する。ここで、センサ装置に接触圧力およびせん断応力が印加され、接触圧力測定部では接触圧力による電気抵抗変化ΔRpのみが生じ、せん断応力測定部では接触圧力による電気抵抗変化ΔRpおよびせん断応力による電気抵抗変化ΔRτが生じた場合、4ゲージ法ブリッジ回路(に対応させたセンサ装置)の出力電圧eには接触圧力による影響が排除されているという測定原理に基づき、4ゲージ法ブリッジ回路の出力電圧eと規定のせん断応力との関係(キャリブレーションカーブ)を求めておき、該関係により4ゲージ法ブリッジ回路の出力電圧eを測定することにより、せん断応力を得ることができるという効果がある。
入力電圧Eの作用下で、初期抵抗Rからせん断応力によりΔRτ、接触圧力によりΔRpの抵抗変化を生じた場合、接触圧力による抵抗変化ΔRpは後述する式14のようになる。式14の右辺はすべて既知、または測定可能であるため、ブリッジ回路の出力電圧e、接触圧力測定部での電圧epが得られれば接触圧力による抵抗変化ΔRpを得ることができる。つまり、本発明のセンサ装置によれば、接触圧力とせん断応力とのより同時な測定ができるという効果がある。
本発明の別のセンサ装置によれば、4ゲージ法ブリッジ回路の隣接する2辺に接触圧力測定部(抵抗値Rp)およびせん断応力測定部(抵抗値Rτ)が各々配置され、別の隣接する2辺に固定抵抗(抵抗値R2およびR3)が各々配置された構成の2ゲージ法ブリッジ回路に対応させることができる。2ゲージ法ブリッジ回路においても4ゲージ法ブリッジ回路と同様に、接触圧力による電気抵抗変化ΔRpを差し引いたせん断応力による電気抵抗変化ΔRτのみの出力を実現することができる。当該センサ装置に接触圧力およびせん断応力が印加された場合、2ゲージ法ブリッジ回路の出力電圧eには接触圧力による影響が排除されているという測定原理に基づき、2ゲージ法ブリッジ回路の出力電圧eとせん断応力との関係(キャリブレーションカーブ)を求めておき、この関係により2ゲージ法ブリッジ回路の出力電圧eからせん断応力測定部におけるせん断応力を求めることができるという効果がある。接触圧力は、固定抵抗の電圧Vを測定することにより得ることができる。接触圧力と電圧Vとの関係を予め測定しておくことにより、電圧Vを測定すれば当該関係より接触圧力を得ることができるという効果がある。
本発明のさらに別のセンサ装置によれば、入力電圧Eが共通となるようにして2ゲージ法ブリッジ回路をx、y方向の各せん断応力測定用に2つ用いる。1つのセンサ装置内には2つの2ゲージ法ブリッジ回路の各抵抗を含む。独立した2つの2ゲージ法ブリッジ回路が存在する1つのセンサ装置を用いることにより、2ゲージ法ブリッジ回路で2次元(xy)方向のせん断応力を測定することができるという効果がある。
本発明の分布測定装置によれば、上記2次元(xy)方向のせん断応力を測定するセンサ装置を複数個接続して四辺形状に配置(所定の配置)することにより、接触圧力およびせん断応力の分布を測定することができるという効果がある。
まず、本発明の概要について説明する。本発明のセンサ装置では、接触圧力およびせん断応力の変換素子(圧力変換素子)として、電解重合により作製した厚さ約20μmのポリピロール薄膜を用いた。ポリピロール薄膜は導電性の高分子材料であり、作用圧力に応じて厚さ方向の電気抵抗が変化する特性を有している。より詳しくは、作用圧力が加わるのに応じて導電率が上がるという性質を有している。本発明のセンサ装置では、電極材として銅張ポリイミドフィルム(銅厚35μm)を用いた。より詳しくは、センサ装置の電極は銅薄膜の貼り付けられたポリイミドフィルムの銅薄膜をウェットエッチング処理による加工を行うことにより、銅箔電極の形状となるように作製した。このため、従来のせん断応力センサにはない薄さとしなやかさとを有している。この電極で薄膜状の上記変換素子を挟み込むことによりセンサ装置とした。この結果、センサ装置全体が薄く且つしなやかであり、生体内のせん断応力および接触圧力を直接測定することへの適用が可能となった。
本発明のセンサ装置の測定原理によれば、ホイートストンブリッジ回路の抵抗変化量の関係により、せん断応力の測定部における抵抗変化量から接触圧力の影響による抵抗変化量を差し引きした出力を得ることによって、接触圧力による影響を排除したせん断応力の測定を可能とした。以下では、まず本発明のセンサ装置と測定原理とについて詳述し、続いて実験とその結果とについて述べる。以下、各実施例について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例1のセンサ装置における片面側電極10の電極パターンを示す。図1に示されるように、片面側電極10はせん断応力を測定する櫛型電極11aと接触圧力を測定する方形電極12aとが一端Bで接続された形状の第1電極と、第1電極に点対称な形状(櫛型電極11bと方形電極12bとが一端Aで接続された形状)の第2電極とを対向させた配置となっている。測定領域のサイズは11×11mm2とし、方形電極12a、12bのサイズは各々4.5×4.5mm2とし、櫛型電極11a、11bのサイズは各々4×4mm2とした。しかし、これらのサイズは一例であって、本発明のセンサ装置のサイズはこれらのサイズに限定されるものではない。
図2は、本発明の実施例1のセンサ装置における対面側電極20の電極パターンを示す。図2に示されるように、対面側電極20は2つの櫛型電極21aおよび21bが1端Dで接続された形状の第3電極と、第3電極に点対称な形状(2つの櫛型電極2cおよび21dが1端Cで接続された形状)の第4電極とを対向させた配置となっている。櫛型電極21a等のサイズは上記11a等と同様である。
本発明のセンサ装置は、櫛型電極11aと21aとの櫛部分(同様に、櫛型電極11bと21dとの櫛部分)を揃わせて対面させた片面側電極10と対面側電極20との間に、導電性で薄膜状の上記圧力変換素子を挟み込むことにより構成されている。図3(A)は、本発明の実施例1におけるセンサ装置におけるせん断応力測定部30を示す。図3(A)で図1および図2と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。図3(A)で、符号11a−1、11a−2、11a−3は、図1に示した片面側電極10における櫛型電極11aの各櫛を示し、符号21a−1、21a−2、21a−3は、図2に示した対面側電極20における櫛型電極21aの各櫛を示し、符号50は圧力変換素子を示す。図3(A)に示されるように、せん断応力測定部30は片面側電極10における櫛型電極11aと対面側電極20における櫛形電極21aとの櫛部分を揃わせて対面させ、両電極の間に圧力変換素子50を挟み込むことにより構成されている。図3(A)では片面側電極10の第1電極と対面側電極20の第3電極とにより構成されるせん断応力測定部30について示したが、片面側電極10の第2電極と対面側電極20の第4電極とにより構成されるせん断応力測定部30’についても同様に示すことができるため、説明は省略する。図3(A)に示される櫛形電極11a等は銅薄膜の貼り付けられたポリイミドフィルム(圧力変換素子50)の銅薄膜(銅厚35μm)をウェットエッチング処理による加工を行って銅箔電極の形状を作製した。
図3(A)に示されるように、せん断応力測定部30に対してせん断応力τが働くと、図3(B)に示されるようにせん断変形が生じる。図3(B)は図3(A)に示されるせん断応力測定部30の垂直方向断面図であり、図3(A)と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。図3(B)に示されるように、せん断応力測定部30では、せん断応力τによる圧力変換素子50のせん断変形により、片面側電極10における櫛形電極11a−1と対面側電極20における櫛形電極21a−1との間の距離が増加し、この結果、せん断応力測定部30の電気抵抗が増加する。
図4(A)は、本発明の実施例1のセンサ装置における接触圧力測定部40を示す。図4(A)で図1、図2および図3(A)と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。図4(A)で、符号12aは図1に示した片面側電極10における方形電極12aを示し、符号21c−1、21c−2、21c−3は、図2に示した対面側電極20における櫛型電極21cの各櫛を示す。図4(A)に示されるように、接触圧力測定部40は片面側電極10における方形電極12aと対面側電極20における櫛形電極21cとを対面させ、両電極の間に圧力変換素子50を挟み込むことにより構成されている。図4(A)では片面側電極10の第1電極と対面側電極20の第4電極とにより構成される接触圧力測定部40について示したが、片面側電極10の第2電極と対面側電極20の第3電極とにより構成される接触圧力測定部40’についても同様に示すことができるため、説明は省略する。
図4(A)に示されるように接触圧力測定部40に対して接触圧力Pが働くと、図4(B)に示されるように、点線で示される櫛形電極21c−1が実線で示される櫛形電極21c−1へと押されて圧力変換素子50の変形が生じる。図4(B)は図4(A)に示される接触圧力測定部40の垂直方向断面図であり、図4(A)と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。接触圧力測定部40では、片面側電極10における方形電極12aと対面側電極20における櫛形電極21c−1との間の圧力変換素子50における圧力Pにより変化した抵抗値を測定し、その抵抗値に対応した圧力を導出することで接触圧力測定とする。この時、せん断応力により圧力変換素子50(感圧素子)はせん断変形を生じるが、電極間距離は変化しないため、せん断応力の影響による抵抗変化は生じない。これにより、せん断応力の影響を受けない接触圧力測定を可能とする。図4(A)に示される方形電極12a等も櫛形電極11a等と同様に、銅薄膜の貼り付けられたポリイミドフィルム(圧力変換素子50)の銅薄膜(銅厚35μm)をウェットエッチング処理による加工を行って銅箔電極の形状を作製した。図1に示される片面側電極10の電極パターンおよび図2に示される対面側電極20の電極パターンも同様である。
次に、本発明のセンサ装置における測定原理について説明する。図5は、標準的な4ゲージ法ブリッジ回路60を示す。図5に示される点A、B、CおよびDは図1および図2に示される点A、B、CおよびDと同じである。図5に示されるように、4辺の各ゲージの抵抗値はR1ないしR4であり、入力電圧Eは点Cと点Dとの間に印加され、出力電圧eは点Aと点Bとの間から取るものとする。ここで、4ゲージ法ブリッジ回路60の4辺に接続した各ゲージがひずみを受けて各抵抗値が微小変化ΔR1、ΔR2、ΔR3、ΔR4したとすると、出力電圧eもΔe変化する。最初に4ゲージ法ブリッジ回路60が平衡していたとすると、ひずみによる出力電圧はΔe=eとおけるから、以下の式1のようになる。
ここで、各ゲージの初期抵抗値がすべて等しい(R1=R2=R3=R4)とすると、式1の最初の係数は1/4となるため、式2のようになる。
次に、センサ装置の各電気抵抗について考察する。図6は、センサ装置70の各電気抵抗の状態を示す。図6で図1、図2および図5と同じ符号を付した個所は同じ要素または点を示すため、説明は省略する。図6に示されるセンサ装置70は、図1に示した片面側電極10と図2に示した対面側電極20との間に、図3(A)、(B)および図4(A)、(B)に示したように圧力変換素子50を挟み込みんだ状態を示す。図6で、符号Raはせん断応力測定部30の電気抵抗とせん断応力測定部30’の電気抵抗とを示し、符号Rbは接触圧力測定部40の電気抵抗と接触圧力測定部40’の電気抵抗とを示す。
図6に示されるセンサ装置70で、入力電圧Eは対面側電極20の第3電極側の1端Dと第4電極側の1端Cとの間に印加し、出力電圧eは片面側電極10の第1電極側の1端Bと第2電極側の1端Aとの間から得ることにする。あるいは、入力電圧は片面側電極10の第1電極側の1端Bと第2電極側の1端Aとの間に印加し、出力電圧は対面側電極20の第3電極側の1端Dと第4電極側の1端Cとの間から得ることにしてもよい。以上により、4ゲージ法ブリッジ回路60の対向する2つの抵抗R2およびR4の位置に接触圧力測定部40と40’とが各々配置され、別の対向する2つの抵抗R1およびR3の位置にせん断応力測定部30と30’とが各々配置され、接触圧力およびせん断応力が無印加状態における2つの接触圧力測定部40および40’の電気抵抗Rbと2つのせん断応力測定部30および30’の電気抵抗Raとがすべて等しい4ゲージ法ブリッジ回路(Ra=Rb)を構成することができる。言い換えれば、センサ装置70の各電気抵抗について、接触圧力とせん断応力とは接触圧力およびせん断応力が無印加状態での4つの電気抵抗は等しいため、センサ装置70の各電気抵抗へ図5に示される4ゲージ法ブリッジ回路60の構成を取り入れることができる。
以上説明した標準的な4ゲージ法ブリッジ回路60とセンサ装置70との間の各電気抵抗の対応に基づき、式2に対応する式3を以下に示す。式3は式2で抵抗R1=R3=Raとし、R2=R4=Rbとしたものである。式3で、センサ電極の接触面積がそれぞれ等しいことから接触圧力およびせん断応力が無印加状態でのRaとRbとは等しくなるため、分母をRa=Rbとすると式4になる。櫛形電極(せん断応力測定部30等)での抵抗Raはせん断応力による抵抗変化ΔRτと接触圧力による抵抗変化ΔRpとを生じ、方形電極(接触圧力測定部40等)での電気抵抗Rbは接触圧力による抵抗変化ΔRpのみを生じる。従って、式4は式5となり、最終的に式6が得られる。式6に示されるように、接触圧力による電気抵抗変化ΔRpを差し引いたせん断応力による電気抵抗変化ΔRτのみの出力を実現することができる。
以上説明した本発明の測定原理によれば、4ゲージ法ブリッジ回路60の抵抗変化量の関係(式2)に基づき、せん断応力測定部30等における抵抗変化量ΔRaから接触圧力の影響による抵抗変化量ΔRbを差し引きした出力(式4から式6)を得ることができるため、接触圧力による影響を排除したせん断応力の測定を可能とした。従って、予め4ゲージ法ブリッジ回路60の出力電圧eと規定のせん断応力との関係(キャリブレーションカーブ)を得ておくことにより、4ゲージ法ブリッジ回路60の出力電圧eを測定すれば当該関係からせん断応力を得ることができる。纏めると、センサ装置70は、4ゲージ法ブリッジ回路60の対向する2つの抵抗R2およびR4の位置に各々配置された接触圧力測定部40および40’と、別の対向する2つの抵抗R1およびR3の位置に各々配置されたせん断応力測定部30および30’とを備えており、接触圧力およびせん断応力が無印加状態における2つの接触圧力測定部40および40’の電気抵抗R2、R4と2つのせん断応力測定部30および30’の電気抵抗R1、R3とは等しい(R1=R2=R3=R4)ものになるように設計する。ここで、センサ装置70に接触圧力およびせん断応力が印加され、接触圧力測定部40等では接触圧力による電気抵抗変化ΔRpのみが生じ、せん断応力測定部30等では接触圧力による電気抵抗変化ΔRpおよびせん断応力による電気抵抗変化ΔRτが生じた場合、式6を根拠として4ゲージ法ブリッジ回路60(対応させたセンサ装置70)の出力電圧eからせん断応力を求めることができる。
次に、接触圧力の測定について説明する。図7は、本発明の実施例1における接触圧力の測定を説明するための回路図を示す。図7で図6と同じ符号を付した個所は同じ要素または点を示すため、説明は省略する。なお、電圧計82は実施例2で用いる。図7に示されるように、せん断応力の測定では点AB間の出力電圧eを電圧計81で測定するが、接触圧力の測定の場合、一旦入力電圧Eの電源を切り点BC間の抵抗(または点AD間の抵抗)、即ち1個の方形電極間(接触圧力測定部40等)の抵抗(R+ΔRp)を別の電気回路で測定する。方形電極12a等とその対面側電極21c等間において、電極間距離は圧力変換素子50のせん断変形に影響されず接触圧力の大きさによる膜厚方向の変化のみとなるため、接触圧力のみによる電気抵抗変化を測定することができる。この抵抗変化と規定の接触圧力との関係(キャリブレーションカーブ)を予め得ておくことにより、方形電極間(接触圧力測定部40等)の抵抗を測定すれば当該関係から接触応力を得ることができる。以上により、接触圧力とせん断応力との(ほぼ)同時な測定を可能とした。
4ゲージ法ブリッジ回路の実験(実験1〜3).
せん断応力に対する本発明のセンサ装置70の構造の有効性と、接触圧力およびせん断応力を同時に測定できるセンサ装置70の有効性とを検討するために、作製したセンサ装置70に対して接触圧力およびせん断応力の負荷実験を行った。図8は、実験を行うために作製した較正装置90を示す。図8に示されるように、較正装置90は接触圧力用のアクチュエータ91(1台)と、せん断応力用のアクチュエータ92および93(2台)とにより、X−Yステージ94に接触圧力およびせん断応力を作用させる構造となっている。アクチュエータ91、92および93の先端には圧縮型ロードセル95をそれぞれ設置している。
センサ装置70の特性を調べる実験としてまず、(実験1)センサ装置70に接触圧力を5kPa刻みで40kPaまで作用させ、接触圧力の変化に伴う方形電極間(接触圧力測定部40等)の電気抵抗値変化を測定した。次に、(実験2)センサに入力電圧E=0.5Vを印加し、3種類の接触圧力を作用させた状態で横方向から40kPaまでのせん断応力を作用させた時の出力電圧eを測定した。さらに、(実験3)40kPaの接触圧力を負荷し、その後40kPaのせん断応力を連続的に負荷した時の接触圧力とせん断応力との測定を行った。
結果および考察.
実験1.
図9は、試作したセンサ装置70に接触圧力を作用させた際の接触圧力と電気抵抗値との関係を示すグラフである。図9で横軸は印加した接触圧力(kPa)、縦軸は電気抵抗値(MΩ)である。図9に示されるように、接触圧力が大きくなるにつれ、方形電極間(接触圧力測定部40等)の電気抵抗値が低下している。負荷(黒菱形で示す0から40kPa)および除荷(白四角で示す40から0kPa)のどちらの場合も同じ変化を生じることがわかった。これは、圧力変換素子(ポリピロール薄膜)50が有する作用圧力が加わるのに応じて導電率が上がるという性質を示している。以上より、予め図9に示されるような方形電極間(接触圧力測定部40等)の電気抵抗値の変化と規定の接触圧力との関係(キャリブレーションカーブ)を予め得ておくことにより、方形電極間(接触圧力測定部40等)の抵抗を測定すれば図9に示される関係から接触応力を得ることができる。
実験2.
図10は、センサ装置70に30、50、90kPaの接触圧力を作用させ40kPaまでのせん断応力を作用させた時のせん断応力と出力電圧との関係を示すグラフである。図10で横軸は印加したせん断応力(kPa)、縦軸は出力電圧e(mV)である。図10に示されるように、接触圧力を30(白菱形)、50(バツ印)、90(白三角)kPaと変化させても、せん断応力に対する出力電圧eの関係は変化しなかった。せん断応力が作用し感圧素子である圧力変換素子50が面方向に変形することにより、電極間の距離が増加する。このため、式6の電気抵抗変化ΔRτが大きくなり、図10に示されるように出力電圧eが増大する。以上より、式6の正しさが検証された。この結果、図10に示される4ゲージ法ブリッジ回路60の出力電圧eと規定のせん断応力との関係(キャリブレーションカーブ)から、4ゲージ法ブリッジ回路60の出力電圧eを測定することにより、せん断応力を得ることができる。
実験3.
図11は、接触圧力とせん断応力とを連続的に作用させたときの測定結果を示すグラフである。図11で横軸は経過時間(秒)、縦軸は接触圧力/せん断応力(kPa)である。図11に示されるように、0−100秒で接触圧力(黒菱形)の印加が測定でき、150−300秒でせん断応力(白四角)の負荷・除荷が測定できていることがわかる。これらは同時に得られた値であり、接触圧力とせん断応力とを同時に測定することができた。
以上より、本発明の実施例1によれば、本発明のセンサ装置70では、接触圧力およびせん断応力の変換素子(圧力変換素子)として、電解重合により作製した厚さ約20μmのポリピロール薄膜を用い、電極材として銅張ポリイミドフィルム(銅厚35μm)を用いた。センサ装置70の電極は銅薄膜の貼り付けられたポリイミドフィルムの銅薄膜をウェットエッチング処理による加工を行って銅箔電極の形状を作製した。このため、従来のせん断応力センサにはない薄さとしなやかさとを有している。この電極で薄膜状の上記変換素子を挟み込むことによりセンサ装置とした。この結果、センサ装置全体が薄く且つしなやかであり、生体内のせん断応力および接触圧力を直接測定することへの適用が可能となった。
せん断応力測定部30は片面側電極10における櫛型電極11aと対面側電極20における櫛形電極21aとの櫛部分を揃わせて対面させ、両電極の間に上記圧力変換素子50を挟み込むことにより構成されている。接触圧力測定部40は片面側電極10における方形電極12aと対面側電極20における櫛形電極21cとを対面させ、両電極の間に圧力変換素子50を挟み込むことにより構成されている。接触圧力測定部40では、片面側電極10における方形電極12aと対面側電極20における櫛形電極21c−1との間の圧力変換素子50における圧力Pにより変化した抵抗値を測定し、その抵抗値に対応した圧力を導出することで接触圧力測定とする。この時、せん断応力により圧力変換素子50(感圧素子)はせん断変形を生じるが、電極間距離は変化しないためせん断応力の影響による抵抗変化は生じない。これにより、せん断応力の影響を受けない接触圧力測定を可能とする。
本発明の測定原理によれば、4ゲージ法ブリッジ回路60の抵抗変化量の関係(式2)に基づき、せん断応力測定部30等における抵抗変化量ΔRaから接触圧力の影響による抵抗変化量ΔRbを差し引きした出力(式4から式6)を得ることによって、接触圧力による影響を排除したせん断応力の測定を可能とした。センサ装置70は、4ゲージ法ブリッジ回路60の対向する2つの抵抗R2およびR4の位置に各々配置された接触圧力測定部40および40’と、別の対向する2つの抵抗R1およびR3の位置に各々配置されたせん断応力測定部30および30’とを備えており、接触圧力およびせん断応力が無印加状態における2つの接触圧力測定部40および40’の電気抵抗R2、R4と2つのせん断応力測定部30および30’の電気抵抗R1、R3とは等しい(R1=R2=R3=R4)ものになるように設計する。ここで、センサ装置70に接触圧力およびせん断応力が印加され、接触圧力測定部40等では接触圧力による電気抵抗変化ΔRpのみが生じ、せん断応力測定部30等では接触圧力による電気抵抗変化ΔRpおよびせん断応力による電気抵抗変化ΔRτが生じた場合、4ゲージ法ブリッジ回路60(対応させたセンサ装置70)の出力電圧Eに基づき、式6によりせん断応力測定部30等におけるせん断応力による電気抵抗変化ΔRτを取得することができる。この電気抵抗変化ΔRτによりせん断応力を求めることができる。以上により、せん断応力および接触圧力を直接測定するに際し、接触圧力による影響を排除したせん断応力の測定ができるセンサ装置を提供することができた。この結果、図10に示される4ゲージ法ブリッジ回路60の出力電圧eと規定のせん断応力との関係(キャリブレーションカーブ)から、4ゲージ法ブリッジ回路60の出力電圧eを測定することにより、せん断応力を得ることができる。
接触圧力の測定の場合、一旦入力電圧Eの電源を切り点BC間の抵抗(または点AD間の抵抗)、即ち1個の方形電極間(接触圧力測定部40等)の抵抗(R+ΔRp)を別の電気回路で測定する。方形電極12a等とその対面側電極21c等間において、電極間距離は圧力変換素子50のせん断変形に影響されず接触圧力の大きさによる膜厚方向の変化のみとなるため、接触圧力のみによる電気抵抗変化を測定することができ、この抵抗変化と接触圧力との関係から接触圧力を求める。以上により、接触圧力とせん断応力との(ほぼ)同時な測定を可能とした。以上より、予め図9に示されるような方形電極間(接触圧力測定部40等)の電気抵抗値の変化と規定の接触圧力との関係(キャリブレーションカーブ)を予め得ておくことにより、方形電極間(接触圧力測定部40等)の抵抗を測定すれば図9に示される関係から接触応力を得ることができる。
実施例2では、実施例1よりさらに接触圧力とせん断応力との同時測定ができる接触圧力の測定方法について説明する。せん断応力の測定に関しては実施例1と同様であるため、説明は省略する。発明者は接触圧力の測定に関して鋭意検討を重ねた結果、図7に示されるブリッジ回路70の出力電圧e、接触圧力測定部40等での電圧epおよび入力電圧Eが判れば、実施例1のように一旦入力電圧Eの電源を切ることなく、接触圧力による抵抗変化を測定できるという知見を得ることができた。
入力電圧Eの作用下で、初期抵抗Rからせん断応力によりΔRτ、接触圧力によりΔRpの抵抗変化を生じた場合、出力電圧eは上述した式6で表され、接触圧力測定部40等での電圧epは以下のようになる。図7に示される接触圧力測定部40等の電圧epは、接触圧力測定部40等に流れる電流をi、接触圧力測定部40等の抵抗をRPとすると、オームの法則から、式7となる。
このときの電流iは式8となる。
ここで、Rτはせん断応力測定部30等での抵抗である。従って式7は式9となる。
抵抗Rτ、Rpは、接触圧力およびせん断応力が作用すると、各々式10、11のようになる。
ここで、Rはせん断応力および接触圧力の作用していない状態での抵抗値、ΔRτはせん断応力による抵抗変化量、ΔRpは接触圧力による抵抗変化量である。式9へ式10および11を代入すると、式12が得られる。
ここで、式6のΔRτを、式13のように変形し、
式13を式12に代入すると、式14の関係が得られる。
式14の右辺はすべて既知、または測定可能であるため、ブリッジ回路の出力電圧e、接触圧力測定部40等での電圧epが得られれば接触圧力による抵抗変化ΔRpを得ることができる。図12は、上述した実施例2の方法による接触圧力測定の例を示すグラフである。図12で、横軸は接触圧力(kPa)、縦軸は抵抗値(Ω)である。図12に示されるように、3種類のせん断応力(原図では青菱形が10kPa、赤四角が30kPa、緑三角が40kPa)の作用下で接触圧力を作用させた時の抵抗変化ΔRpを求めたところ、せん断応力の大小によらず接触圧力による抵抗変化ΔRpが得られ、この方法による接触圧力測定の有効性を示すことができた。従って、予め図12に示されるような方形電極間(接触圧力測定部40等)の電気抵抗値の変化と規定の接触圧力との関係(キャリブレーションカーブ)を予め得ておくことにより、方形電極間(接触圧力測定部40等)の抵抗を測定すれば図9に示される関係から接触圧力を得ることができる。
以上より、本発明の実施例2によれば、入力電圧Eの作用下で、初期抵抗Rからせん断応力によりΔRτ、接触圧力によりΔRpの抵抗変化を生じた場合、出力電圧eは上述した式6で表され、接触圧力測定部40等での電圧epは式12で表される。結果的に、接触圧力による抵抗変化ΔRpは式14のようになる。式14の右辺はすべて既知、または測定可能であるため、ブリッジ回路の出力電圧e、接触圧力測定部40等での電圧epが得られれば接触圧力による抵抗変化ΔRpを得ることができる。つまり、実施例1のように一旦入力電圧Eの電源を切ることなく、接触圧力による抵抗変化を測定できることがわかった。実施例2の計測方法の方が一旦入力電圧Eの電源を切ることがないため、接触圧力とせん断応力とのより同時な測定ができる。
図13(A)は、本発明の実施例3のセンサ装置における片面側電極100の電極パターンを示す。図13(A)に示されるように、片面側電極100は2次元(xy)平面の一次元(y)方向を向いたせん断応力を測定する線状電極110と、接触圧力を測定する方形電極120とが点D’で接続された形状となっている。図13(B)は、本発明の実施例3のセンサ装置における対面側電極200の電極パターンを示す。対面側電極200は線状電極110に対応する線状電極210と方形電極120に対応する線状電極220とを有している。図13(B)に示されるように、線状電極210は点線楕円Kで示される部分がy方向を向いた形状であり、端子B’を有している。線状電極220は点線楕円Lで示される部分がx方向を向いた形状であり、端子A’を有している。図13(A)に示されるように方形電極120のサイズは9.0×9.0mm2とし、線状電極110のサイズは10mmとした。図13(B)の4つの鉤マークで示されるように測定領域のサイズは22×22mm2とした。しかし、これらのサイズは一例であって、本発明のセンサ装置のサイズはこれらのサイズに限定されるものではない。
実施例3のセンサ装置も実施例1と同様に、片面側電極100の線状電極110と対面側電極200の(線状電極110に対応する)線状電極210とを線を揃わせて対面させた状態で、片面側電極100と対面側電極200との間に、導電性で薄膜状の圧力変換素子50を挟み込むことにより構成されている。線を揃わせた対面は、より詳しくは点線楕円Jで示される部分と点線楕円Kで示される部分とを揃わせるように行う。図13(A)に示される片面側電極100と図13(B)に示される対面側電極200とは点線Nについて鏡像の関係となるように表されている。図13(A)および(B)中の+マーク(M1、M2、M3、M6)および鉤棒状マーク(M4、M5)は片面側電極100と対面側電極200とを圧力変換素子50を挟んで重ね合わせる際の位置合わせマーカーであり、電極ではない。
図14は、片面側電極100の線状電極110と対面側電極200の(線状電極110に対応する)線状電極210とを線を揃わせて対面させた状態を示す。図14で図13(A)および(B)と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。図14では理解の便宜のために、対面側電極200は点線で示す。図14に示されるように、片面側電極100の線状電極110と対面側電極200の線状電極210とは、点線円Jで示される部分と点線円Kで示される部分とが揃うように対面させ(重ねわせ)ている。せん断応力を測定するせん断応力測定部300は線部分(点線円Jで示される部分と点線円Kで示される部分)を揃わせて対面させた片面側電極100の線状電極110と、圧力変換素子50と、対面側電極200の(線状電極110に対応する)線状電極210とにより構成されている。接触圧力を測定する接触圧力測定部400は対面させた片面側電極100の方形電極120と、圧力変換素子50と、対面側電極200の(方形電極120に対応する)線状電極220(点線円Lで示される部分)により構成されている。
図15(A)は、図3(B)と同様に、せん断応力測定部300の垂直方向断面図を示す。図15(A)で図13(A)および(B)と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。図15(A)に示されるように、せん断応力測定部300に対してx方向のせん断応力τが働くと、x方向のせん断変形が生じる。ここでy方向は図15(A)上で紙面奥方向である。せん断応力測定部300では、せん断応力τによる圧力変換素子50のせん断変形により、片面側電極100における線状電極110と対面側電極200における線状電極210との間の距離が増加し、この結果、せん断応力測定部300の電気抵抗が増加する。図15(A)に示される線状電極110、210等は、実施例1と同様に、銅薄膜の貼り付けられたポリイミドフィルム(圧力変換素子50)の銅薄膜(銅厚35μm)をウェットエッチング処理による加工を行って銅箔電極の形状を作製した。
図15(B)は、図4(B)と同様に、接触圧力測定部400の垂直方向断面図を示す。図15(B)で図13(A)および(B)と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。図15(B)に示されるように接触圧力測定部400に対して接触圧力Pが働くと、点線で示される線状電極220が実線で示される線状電極220へと押されて圧力変換素子50が圧縮され、圧力変換素子50の電気抵抗値が減少する。図15(B)に示される方形電極120等も線状電極110等と同様に、銅薄膜の貼り付けられたポリイミドフィルム(圧力変換素子50)の銅薄膜(銅厚35μm)をウェットエッチング処理による加工を行って銅箔電極の形状を作製した。図13(A)に示される片面側電極100の電極パターンおよび図13(B)に示される対面側電極200の電極パターンも同様である。
次に、実施例3のセンサ装置における測定原理について説明する。図16は、標準的な2ゲージ法ブリッジ回路65を示す。図16に示される点A’、B’およびD’は図13(A)および(B)に示される点A’、B’およびD’と同じである。2ゲージ法ブリッジ回路65は実施例1の4ゲージ法ブリッジ回路60(図5参照)における抵抗値R1をせん断応力測定部300の抵抗値Rτとし、抵抗値R4を接触圧力測定部400の抵抗値RPとし、抵抗値R2およびR3を固定抵抗とした回路に相当する。即ち、2ゲージ法ブリッジ回路65は、4ゲージ法ブリッジ回路60の隣接する2辺に接触圧力測定部300(抵抗値Rp)およびせん断応力測定部400(抵抗値Rτ)が各々配置され、別の隣接する2辺に固定抵抗(抵抗値R2およびR3)が各々配置された構成となっている。2ゲージ法ブリッジ回路65の接触圧力およびせん断応力が無印加状態における4辺の電気抵抗が等しくなる(R1=R2=R3=R4=R)ように平衡をとる。図16に示されるように、入力電圧Eは点C’と点D’との間に印加され、出力電圧eは点A’と点B’との間から取るものとする。ここで、2ゲージ法ブリッジ回路65の2辺(接触圧力測定部400およびせん断応力測定部300)に接続した各ゲージがひずみを受けて各抵抗値が微小変化ΔR1、ΔR4したとすると、実施例1で説明した式2においてΔR2およびΔR3を0とした式15が成り立つ。
図17は、基板上に配置した固定抵抗R2、R3とセンサ部分75とによる2ゲージ法ブリッジ回路65の回路図を示す。図17で図16と同じ符号を付した個所は同じ要素または点を示すため、説明は省略する。図17の点線内に示されるセンサ部分(センサ装置)75は、図13(A)に示した片面側電極100と図13(B)に示した対面側電極200との間に、図15(A)および(B)に示されるように圧力変換素子50を挟み込みんだ状態となっている。図17に示される2ゲージ法ブリッジ回路65で、センサ装置75に含まれるのは抵抗R1(=Rτ)およびR4(=Rp)だけであり、固定抵抗R2およびR3は基板上に配置し、センサ装置75の抵抗R1およびR4と各々接続してある。入力電圧Eは点C’とD’との間に印加し、出力電圧eは点A’とB’との間から得ることにする。あるいは、入力電圧は点A’とB’との間に印加し、出力電圧は点C’とD’との間から得ることにしてもよい。以上により、実施例1と同様に考えて2ゲージ法ブリッジ回路65を構成することができる。
センサ装置75では、実施例1と同様に、線状電極(せん断応力測定部300)での抵抗R1はせん断応力による抵抗変化ΔRτと接触圧力による抵抗変化ΔRpとを生じ、方形電極(接触圧力測定部400)での電気抵抗R4は接触圧力による抵抗変化ΔRpのみを生じる。上述したようにR1=R4=Rであるため、式15は式16となる。式16に示されるように、接触圧力による電気抵抗変化ΔRpを差し引いたせん断応力による電気抵抗変化ΔRτのみの出力を実現することができる。つまり、センサ装置75に接触圧力およびせん断応力が印加された場合、2ゲージ法ブリッジ回路65の出力電圧eには接触圧力による影響が排除されているという測定原理に基づき、2ゲージ法ブリッジ回路65の出力電圧eとせん断応力との関係を求めておき、この関係により2ゲージ法ブリッジ回路65の出力電圧eからせん断応力測定部300におけるせん断応力を求めることができる。
接触圧力は、図17の固定抵抗R3の電圧Vを測定することにより得ることができる。固定抵抗R3(抵抗値=R)の電位(A’C’間の電圧)Vは、R4つまり接触圧力測定部400の抵抗RP(=R+ΔRp)の影響を受けて、式17のように変化する。
接触圧力が増大すると、圧力変換素子50の性質より導電率が増大するため、ΔRpは逆に減少し、ΔRpは負の値をとる。この結果、式17で示される電圧Vは増大する。そこで、接触圧力と電圧Vとの関係を予め測定しておくことにより、電圧Vを測定すれば当該関係より接触圧力を得ることができる。
以上より、本発明の実施例3によれば、片面側電極100は2次元(xy)平面の一次元(y)方向を向いたせん断応力を測定する線状電極110と、接触圧力を測定する方形電極120とが点D’で接続された形状となっている。対面側電極200は2つの線状電極210および220を有している。図13(B)に示されるように、線状電極210は点線楕円Kで示される部分がy方向を向いた形状であり、端子B’を有している。線状電極220は点線楕円Lで示される部分がx方向を向いた形状であり、端子A’を有している。実施例3のセンサ装置も実施例1と同様に、片面側電極100の線状電極110と対面側電極200の(線状電極110に対応する)線状電極210とを線を揃わせて対面させた状態で、片面側電極100と対面側電極200との間に、導電性で薄膜状の圧力変換素子50を挟み込むことにより構成されている。せん断応力を測定するせん断応力測定部300は線部分(点線円Jで示される部分と点線円Kで示される部分)を揃わせて対面させた片面側電極100の線状電極110と、圧力変換素子50と、対面側電極200の(線状電極110に対応する)線状電極210とにより構成されている。接触圧力を測定する接触圧力測定部400は対面させた片面側電極100の方形電極120と、圧力変換素子50と、対面側電極200の(方形電極120に対応する)線状電極220(点線円Lで示される部分)により構成されている。せん断応力測定部300に対してx方向のせん断応力τが働くと、x方向のせん断変形が生じる。せん断応力測定部300では、せん断応力τによる圧力変換素子50のせん断変形により、片面側電極100における線状電極110と対面側電極200における線状電極210との間の距離が増加し、この結果、せん断応力測定部300の電気抵抗が増加する。接触圧力測定部400に対して接触圧力Pが働くと、圧力変換素子50が圧縮され、圧力変換素子50の電気抵抗値が減少する。2ゲージ法ブリッジ回路65は、4ゲージ法ブリッジ回路60の隣接する2辺に接触圧力測定部300(抵抗値Rp)およびせん断応力測定部400(抵抗値Rτ)が各々配置され、別の隣接する2辺に固定抵抗(抵抗値R2およびR3)が各々配置された構成となっている。2ゲージ法ブリッジ回路65の接触圧力およびせん断応力が無印加状態における4辺の電気抵抗が等しくなる(R1=R2=R3=R4=R)ように平衡をとる。2ゲージ法ブリッジ回路65の2辺(接触圧力測定部300およびせん断応力測定部400)に接続した各ゲージがひずみを受けて各抵抗値が微小変化ΔR1、ΔR4したとすると、実施例1で説明した式2においてΔR2およびΔR3を0とした式15が成り立つ。センサ装置75では、実施例1と同様に、線状電極(せん断応力測定部300)での抵抗R1はせん断応力による抵抗変化ΔRτと接触圧力による抵抗変化ΔRpとを生じ、方形電極(接触圧力測定部400)での電気抵抗R4は接触圧力による抵抗変化ΔRpのみを生じる。上述したようにR1=R4=Rであるため、式15は式16となる。式16に示されるように、接触圧力による電気抵抗変化ΔRpを差し引いたせん断応力による電気抵抗変化ΔRτのみの出力を実現することができる。つまり、センサ装置75に接触圧力およびせん断応力が印加された場合、2ゲージ法ブリッジ回路65の出力電圧eには接触圧力による影響が排除されているという測定原理に基づき、2ゲージ法ブリッジ回路65の出力電圧eとせん断応力との関係を求めておき、この関係により2ゲージ法ブリッジ回路65の出力電圧eからせん断応力測定部300におけるせん断応力を求めることができる。接触圧力は、図17の固定抵抗R3の電圧Vを測定することにより得ることができる。固定抵抗R3(抵抗値=R)の電位(A’C’間の電圧)Vは、R4つまり接触圧力測定部400の抵抗RP(=R+ΔRp)の影響を受けて、式17のように変化する。接触圧力が増大すると、圧力変換素子50の性質より導電率が増大するため、ΔRpは逆に減少し、ΔRpは負の値をとる。この結果、式17で示される電圧Vは増大する。そこで、接触圧力と電圧Vとの関係を予め測定しておくことにより、電圧Vを測定すれば当該関係より接触圧力を得ることができる。
図18(A)は、本発明の実施例4のセンサ装置における片面側電極150および対面側電極250の電極パターンを示す。図18(A)に示されるように、俯瞰すると、片面側電極150は2次元(xy)平面の一次元(y)方向を向いたせん断応力を測定する線状電極110xと接触圧力を測定する方形電極120xとが点Dxで接続され、さらに、2次元(xy)平面の別の一次元(x)方向を向いたせん断応力を測定する線状電極110yと接触圧力を測定する方形電極120yとが点Dyで接続された形状となっている。実際の回路は線状電極110xおよび方形電極120xと線状電極110yおよび方形電極120yとが重なって構成されているが、詳細については後述する。図18(B)は、本発明の実施例4のセンサ装置における対面側電極250の電極パターンを示す。対面側電極250は、線状電極110xに対応する線状電極262と、線状電極110yに対応する線状電極263と、方形電極120xに対応する線状電極261と、方形電極120yに対応する線状電極260とを有している。図18(B)に示されるように、線状電極260および261は各々点線楕円L1およびL2で示される部分がy方向を向いた形状であり各々、端子AyおよびAxを有している。線状電極262は点線楕円Kxで示される部分がy方向を向いた形状であり端子Bxを有しており、線状電極263は点線楕円Kyで示される部分がx方向を向いた形状であり端子Byを有している。図18(A)に示されるように方形電極120のサイズは12.0×12.0mm2とし、線状電極110x(および110y)のサイズは11mmとした。図18(B)の4つの鉤マークに示されるように測定領域のサイズは22×22mm2とした。しかし、これらのサイズは一例であって、本発明のセンサ装置のサイズはこれらのサイズに限定されるものではない。
実施例4のセンサ装置も実施例3等と同様に、片面側電極150の線状電極110xと対面側電極250の(線状電極110xに対応する)線状電極262とを線を揃わせて対面させ、片面側電極150の線状電極110yと対面側電極250の(線状電極110yに対応する)線状電極263とを線を揃わせて対面させた状態で、片面側電極150と対面側電極250との間に、導電性で薄膜状の圧力変換素子50を挟み込むことにより構成されている。線を揃わせた対面は、より詳しくは点線楕円Jxで示される部分と点線楕円Kxで示される部分とを揃わせ、点線楕円Jyで示される部分と点線楕円Kyで示される部分とを揃わせるように行う。図18(A)に示される片面側電極150と図18(B)に示される対面側電極250とは点線Nについて鏡像の関係となるように表されている。図18(A)および(B)中の+マーク(M11、M12、M13、M14、M15、M16)は片面側電極150と対面側電極250とを圧力変換素子50を挟んで重ね合わせる際の位置合わせマーカーであり、電極ではない。
図19は、上述したように片面側電極150の線状電極110y等と対面側電極250の一つの線状電極263等とを線を揃わせて対面させた状態を俯瞰的に示す。図19で図18(A)および(B)と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。図19では理解の便宜のために、対面側電極250は点線で示す。図19に示されるように、片面側電極150の線状電極110xと対面側電極250の線状電極262とは、点線円Jxで示される部分と点線円Kxで示される部分とが揃うように対面させ(重ねわせ)ている。さらに、片面側電極150の線状電極110yと対面側電極250の線状電極263とは、点線円Jyで示される部分と点線円Kyで示される部分とが揃うように対面させ(重ねわせ)ている。x方向のせん断応力を測定するせん断応力測定部350xは線部分(点線円Jxで示される部分と点線円Kxで示される部分)を揃わせて対面させた片面側電極150の線状電極110xと、圧力変換素子50と、対面側電極250の(線状電極110xに対応する)線状電極262とにより構成されている。y方向のせん断応力を測定するせん断応力測定部350yは線部分(点線円Jyで示される部分と点線円Kyで示される部分)を揃わせて対面させた片面側電極150の線状電極110yと、圧力変換素子50と、対面側電極250の(線状電極110yに対応する)線状電極263とにより構成されている。接触圧力を測定する接触圧力測定部450xは、対面させた片面側電極150の方形電極120xと、圧力変換素子50と、対面側電極250の方形電極120xに対応する線状電極261(点線楕円L2で示される部分)とにより構成されている。接触圧力を測定する接触圧力測定部450yは、対面させた片面側電極150の方形電極120yと、圧力変換素子50と、対面側電極250の(方形電極120yに対応する)線状電極260(点線円L1で示される部分)とにより構成されている。
せん断応力測定部350xの垂直方向断面図は図15(A)と同様であり、せん断応力測定部350xに対してx方向のせん断応力τが働くと、x方向のせん断変形が生じる。せん断応力測定部350yの垂直方向断面図も図15(A)と同様に考えることができ、せん断応力測定部350yに対してy方向のせん断応力τが働くと、y方向のせん断変形が生じる。他は実施例3と同様であるため、説明は省略する。
接触圧力測定部450x、450yの垂直方向断面図は図15(B)と同様であり、接触圧力測定部450x、450yに対して接触圧力Pが働くと、圧力変換素子50が圧縮され、圧力変換素子50の電気抵抗値が減少する。他は実施例3と同様であるため、説明は省略する。
実施例4のセンサ装置における測定原理は実施例3と同様であり、図16に示される標準的な2ゲージ法ブリッジ回路65をx、y方向の各せん断応力測定用に2つ用いる。図20は、x方向のせん断応力測定用の2ゲージ法ブリッジ回路65xを示す。図20に示されるように、2ゲージ法ブリッジ回路65xでは図16の点A’、B’およびD’は図18(A)および(B)に示される点Ax、Bx、Dxとなり、図16の抵抗値R1(=Rτ)、R4(=Rp)、R2およびR3は各々R1x(=Rτx)、R4x(=Rpx)、R2xおよびR3xとなる。実施例3と同様に、2ゲージ法ブリッジ回路65xの接触圧力およびせん断応力が無印加状態における4辺の電気抵抗が等しくなる(R1x=R2x=R3x=R4x=R)ように平衡をとる。2ゲージ法ブリッジ回路65xでは、入力電圧Eは点Cxと点Dxとの間に印加され、出力電圧exは点Axと点Bxとの間から取る。
図21は、y方向のせん断応力測定用の2ゲージ法ブリッジ回路65yを示す。図21に示されるように、2ゲージ法ブリッジ回路65yでは図16の点A’、B’およびD’は図18(A)および(B)に示される点Ay、By、Dyとなり、図16の抵抗値R1(=Rτ)、R4(=Rp)、R2およびR3は各々R1y(=Rτy)、R4y(=Rpy)、R2yおよびR3yとなる。実施例3と同様に、2ゲージ法ブリッジ回路65yの接触圧力およびせん断応力が無印加状態における4辺の電気抵抗が等しくなる(R1y=R2y=R3y=R4y=R)ように平衡をとる。2ゲージ法ブリッジ回路65yでは、入力電圧Eは点Cyと点Dyとの間に印加され、出力電圧eyは点Ayと点Byとの間から取る。即ち、2ゲージ法ブリッジ回路65xと2ゲージ法ブリッジ回路65yとにおいて、入力電圧Eは共通となるようにとる。各2ゲージ法ブリッジ回路65xおよび2ゲージ法ブリッジ回路65yの2辺(接触圧力測定部350x、350yおよびせん断応力測定部450x、450y)に接続した各ゲージがひずみを受けて各抵抗値が微小変化ΔR1x、ΔR4x、ΔR1y、ΔR4yしたとすると、実施例3で説明した式15が、各2ゲージ法ブリッジ回路65xおよび2ゲージ法ブリッジ回路65yにおいて成り立つ。
図22は、基板上に配置した固定抵抗R2x、R3xとセンサ部75xとによる2ゲージ法ブリッジ回路65xの回路図を示す。図22で図18(A)、(B)および図20と同じ符号を付した個所は同じ要素または点を示すため、説明は省略する。図22に示される2ゲージ法ブリッジ回路65xは、基本的には図17に示される2ゲージ法ブリッジ回路65と同じである。図17に示される2ゲージ法ブリッジ回路65では線状電極210と方形電極120とが点D’で図示されるように接続されていたが、図22に示される2ゲージ法ブリッジ回路65xでは線状電極262と方形電極120xとが点Dxで図示されるように(鉤状に)接続されている。これは、線状電極と方形電極との接続方法のバリエーションの違いであって、x方向のせん断応力を測定可能であれば他の接続方法を用いてもよい。図22に示されるセンサ装置75xにおいても、実施例3と同様に式16が成り立つ。但し、式16の出力電圧eはexとなり、ΔRτはΔRτxとなる。つまり、接触圧力Pによる電気抵抗変化ΔRpxを差し引いたせん断応力による電気抵抗変化ΔRτxのみの出力を実現することができる。実施例3と同様に、センサ装置75xに接触圧力およびせん断応力が印加された場合、2ゲージ法ブリッジ回路65xの出力電圧exには接触圧力による影響が排除されているという測定原理に基づき、2ゲージ法ブリッジ回路65xの出力電圧exとせん断応力との関係を求めておき、この関係により2ゲージ法ブリッジ回路65xの出力電圧exからせん断応力測定部350xにおけるせん断応力を求めることができる。
接触圧力も実施例3と同様に、図22の固定抵抗R3xの電圧Vxを測定することにより得ることができる。固定抵抗R3x(抵抗値=R)の電位(AxCx間の電圧)Vxは、R4xつまり接触圧力測定部450xの抵抗RPx(=R+ΔRpx)の影響を受けて、上述した式17のように変化する。但し、式17でVはVxとなり、RPはRPxとなる。実施例3と同様に、接触圧力が増大すると、圧力変換素子50の性質より導電率が増大するため、ΔRpxは逆に減少し、ΔRpxは負の値をとる。この結果、電圧Vxは増大する。そこで、接触圧力と電圧Vxとの関係を予め測定しておくことにより、電圧Vxを測定すれば当該関係より接触圧力を得ることができる。
図23は、基板上に配置した固定抵抗R2y、R3yとセンサ部75yとによる2ゲージ法ブリッジ回路65yの回路図を示す。図23で図18(A)、(B)および図21と同じ符号を付した個所は同じ要素または点を示すため、説明は省略する。図23に示される2ゲージ法ブリッジ回路65yは、y方向のせん断応力を測定するという点が異なるだけで基本的には図22に示される2ゲージ法ブリッジ回路65xと同じである。図23に示されるセンサ装置75yにおいても、実施例3と同様に式16が成り立つ。但し、式16の出力電圧eはeyとなり、ΔRτはΔRτyとなる。つまり、接触圧力Pによる電気抵抗変化ΔRpyを差し引いたせん断応力による電気抵抗変化ΔRτyのみの出力を実現することができる。実施例3と同様に、センサ装置75yに接触圧力およびせん断応力が印加された場合、2ゲージ法ブリッジ回路65yの出力電圧eyには接触圧力による影響が排除されているという測定原理に基づき、2ゲージ法ブリッジ回路65yの出力電圧eyとせん断応力との関係を求めておき、この関係により2ゲージ法ブリッジ回路65yの出力電圧eyからせん断応力測定部350yにおけるせん断応力を求めることができる。
接触圧力も実施例3と同様に、図23の固定抵抗R3yの電圧Vyを測定することにより得ることができる。固定抵抗R3y(抵抗値=R)の電位(AyCy間の電圧)Vyは、R4yつまり接触圧力測定部450yの抵抗RPy(=R+ΔRpy)の影響を受けて、上述した式17のように変化する。但し、式17でVはVyとなり、RPはRPyとなる。実施例3と同様に、接触圧力が増大すると、圧力変換素子50の性質より導電率が増大するため、ΔRpyは逆に減少し、ΔRpyは負の値をとる。この結果、電圧Vyは増大する。そこで、接触圧力と電圧Vyとの関係を予め測定しておくことにより、電圧Vyを測定すれば当該関係より接触圧力を得ることができる。
図24は、2ゲージ法ブリッジ回路65xと2ゲージ法ブリッジ回路65yとを入力電圧(電源)Eを共通にして重ね合わせた2ゲージ法ブリッジ回路65xyを示す。図24で図22および図23と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。図24に示されるように、センサ装置75xyは、片面側電極150等の線状電極110xの向きが2次元(xy)平面の一次元方向(y方向)を向いたセンサ装置75xと、片面側電極150等の線状電極110yの向きが2次元平面の別の一次元方向(x方向)を向いたセンサ装置75yとを、各2ゲージ法ブリッジ回路65xおよび65yの電源Eを共通にして重ね合わせたものと考えることができる。1つのセンサ装置75xy内には2つのセンサ装置75xおよび75yの各抵抗(R1x、R4x)、(R1y、R4y)を含む。2ゲージ法ブリッジ回路で2次元(xy)方向のせん断応力を測定する時は、独立した2つのセンサ装置75xおよび75yが存在する1つのセンサ装置75xyを用いることになる。但し、R4x(Rpx)とR4y(Rpy)とが全く等しいとみなすことができるならば、R4xとR3xとの直列回路またはR4yとR3yとの直列回路のどちらかを2つの2ゲージ法ブリッジ回路65x、65yに共通して用い、残りの方を省略することができる。
以上より、本発明の実施例4によれば、センサ装置は実施例3等と同様に、片面側電極150の線状電極110xと対面側電極250の一つの線状電極262とを線を揃わせて対面させ、片面側電極150の線状電極110yと対面側電極250の線状電極110yに対応する線状電極263とを線を揃わせて対面させた状態で、片面側電極150と対面側電極250との間に、導電性で薄膜状の圧力変換素子50を挟み込むことにより構成されている。x方向のせん断応力を測定するせん断応力測定部350xは線部分(点線円Jxで示される部分と点線円Kxで示される部分)を揃わせて対面させた片面側電極150の線状電極110xと、圧力変換素子50と、対面側電極250の(線状電極110xに対応する)線状電極262とにより構成されている。y方向のせん断応力を測定するせん断応力測定部350yは線部分(点線円Jyで示される部分と点線円Kyで示される部分)を揃わせて対面させた片面側電極150の線状電極110yと、圧力変換素子50と、対面側電極250の(線状電極110yに対応する)線状電極263とにより構成されている。接触圧力を測定する接触圧力測定部450xは、対面させた片面側電極150の方形電極120xと、圧力変換素子50と、対面側電極250の(方形電極120xに対応する)線状電極261(点線円L2で示される部分)とにより構成されている。接触圧力を測定する接触圧力測定部450yは、対面させた片面側電極150の方形電極120yと、圧力変換素子50と、対面側電極250の(方形電極120yに対応する)線状電極260(点線円L1で示される部分)とにより構成されている。せん断応力測定部350xに対してx方向のせん断応力τが働くと、x方向のせん断変形が生じる。せん断応力測定部350yに対してy方向のせん断応力τが働くと、y方向のせん断変形が生じる。接触圧力測定部450x、450yに対して接触圧力Pが働くと、圧力変換素子50が圧縮され、圧力変換素子50の電気抵抗値が減少する。
実施例4のセンサ装置における測定原理は実施例3と同様であり、2ゲージ法ブリッジ回路65をx、y方向の各せん断応力測定用に2つ用いる。2ゲージ法ブリッジ回路65xの接触圧力およびせん断応力が無印加状態における4辺の電気抵抗が等しくなる(R1x=R2x=R3x=R4x=R)ように平衡をとる。2ゲージ法ブリッジ回路65xでは、入力電圧Eは点Cxと点Dxとの間に印加され、出力電圧exは点Axと点Bxとの間から取る。2ゲージ法ブリッジ回路65yの接触圧力およびせん断応力が無印加状態における4辺の電気抵抗が等しくなる(R1y=R2y=R3y=R4y=R)ように平衡をとる。2ゲージ法ブリッジ回路65yでは、入力電圧Eは点Cyと点Dyとの間に印加され、出力電圧eyは点Ayと点Byとの間から取る。即ち、2ゲージ法ブリッジ回路65xと2ゲージ法ブリッジ回路65yとにおいて、入力電圧Eは共通となるようにとる。各2ゲージ法ブリッジ回路65xおよび65yにおいても実施例3で説明した式15が成り立つ。センサ装置75xおよび75yにおいても、実施例3と同様に式16が成り立つ。接触圧力も実施例3と同様に、固定抵抗R3x、R3yの電圧Vx、Vyを測定することにより得ることができる。固定抵抗R3x、R3y(抵抗値=R)の電位Vx、Vyは、式17のように変化する。センサ装置75xyは、片面側電極150等の線状電極110xの向きが2次元(xy)平面の一次元方向(y方向)を向いたセンサ装置75xと、片面側電極150等の線状電極110yの向きが2次元平面の別の一次元方向(x方向)を向いたセンサ装置75yとを、各2ゲージ法ブリッジ回路65xおよび65yの電源Eを共通にして重ね合わせたものと考えることができる。1つのセンサ装置75xy内には2つのセンサ装置75xおよび75yの各抵抗(R1x、R4x)、(R1y、R4y)を含む。2ゲージ法ブリッジ回路で2次元(xy)方向のせん断応力を測定する時は、独立した2つのセンサ装置75xおよび75yが存在する1つのセンサ装置75xyを用いることになる。但し、R4x(Rpx)とR4y(Rpy)とが全く等しいとみなすことができるならば、R4xとR3xとの直列回路またはR4yとR3yとの直列回路のどちらかを2つの2ゲージ法ブリッジ回路65x、65yに共通して用い、残りの方を省略することができる。
図25(A)は、実施例4のセンサ装置75xyを複数個接続して所定の配置を行った接触圧力およびせん断応力の分布測定装置300における片面側電極170の電極パターンを示す。図25(A)に示されるように、4つのセンサ装置75xy1ないし75xy4が四辺形状に配置(所定の配置)されて接続されている。所定の配置として他の形状の配置を用いることができることは勿論であり、センサ装置75xyの個数も4個に限定されるものではない。センサ装置75xy1はx方向のせん断応力を測定する線状電極110x1と、y方向のせん断応力を測定する線状電極110y1と、接触圧力を測定する方形電極450x1および450y1とを有している。図面の都合上、他の電極の符号は省略するが、他のセンサ装置75xy2等も同様にx方向のせん断応力を測定する線状電極とy方向のせん断応力を測定する線状電極と接触圧力を測定する方形電極とを有している。
図25(B)は、分布測定装置300における対面側電極270の電極パターンを示す。図25(A)に示される片面側電極170と図25(B)に示される対面側電極270とは点線Nについて鏡像の関係となるように表されている。図25(B)に示されるように、対面側電極270はx方向のせん断応力を測定する線状電極110x1等に対応するy方向の線状電極と、y方向のせん断応力を測定する線状電極110y1等に対応するx方向の線状電極とを有している。さらに対面側電極270は接触圧力を測定する方形電極450x1等および450y1等に対応するy方向の線状電極を有している。線状電極部Rのみx方向の線状電極となっている理由は、接触圧力測定用の対面側電極はxy方向が測定に無関係であるため、x方向にすることで対面側電極の取り回し形状の複雑化を防ぐことを目的としたからである。接触圧力測定用の対面側電極はxy方向が測定に無関係であるという点は、図14の線状電極270がx方向であり、図19の線状電極260および261がy方向であることにも示されている。
以上より、本発明の実施例5によれば、実施例4のセンサ装置75xyを複数個接続して四辺形状に配置(所定の配置)することにより、接触圧力およびせん断応力の分布測定装置300を構成することができる。
2ゲージ法ブリッジ回路の実験(実験4〜10).
せん断応力に対する本発明のセンサ装置75xyの構造の有効性と、接触圧力およびせん断応力を同時に測定できるセンサ装置75xyの有効性とを検討するために、作製したセンサ装置75xyに対して接触圧力およびせん断応力の負荷実験を行った。本実験においても4ゲージ法ブリッジ回路の実験と同じ較正装置90を用いた。図26は、図8に示される較正装置90を用いてセンサ装置75xyに加えられる接触圧力およびせん断応力の方向を示す。図26で図8と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。
結果および考察.
実験4.
図27は、センサ装置75xyにアクチュエータ91による接触圧力を作用させた際の接触圧力と電圧との関係(キャリブレーションカーブ)を示すグラフである。図27で、横軸は接触圧力(kPa)、縦軸は上述した図22および図23における電圧Vx、Vy(V)である。図27に示されるように、x方向のせん断応力は0kPa(青菱形で示す。)、5kPa(赤四角で示す。)、10kPa(緑三角で示す。)と大きさを変化させたにもかかわらず、接触圧力の変化に応じて電圧Vx等が上昇している。
実験5.
図28は、センサ装置75xyにアクチュエータ92または93によるx方向のせん断応力を作用させた際のせん断応力と出力電圧eとの関係(キャリブレーションカーブ)を示すグラフである。図28で、横軸はx方向のせん断応力(kPa)、縦軸は出力電圧e(V)である。図28に示されるように、接触圧力は5kPa(青菱形で示す。)、10kPa(赤四角で示す。)、15kPa(緑三角で示す。)と大きさを変化させたにもかかわらず、x方向のせん断応力に対する出力電圧eの関係は変化しなかった。これにより、接触圧力の影響を排除したx方向のせん断応力の測定が可能であることがわかる。
実験6.
図29は、センサ装置75xyにアクチュエータ92または93によるy方向のせん断応力を作用させた際のせん断応力と出力電圧eとの関係(キャリブレーションカーブ)を示すグラフである。図29で、横軸はy方向のせん断応力(kPa)、縦軸は出力電圧e(V)である。図29に示されるように、接触圧力は5kPa(青菱形で示す。)、10kPa(赤四角で示す。)、15kPa(緑三角で示す。)と大きさを変化させたにもかかわらず、y方向のせん断応力に対する出力電圧eの関係は変化しなかった。これにより、接触圧力の影響を排除したy方向のせん断応力の測定が可能であることがわかる。
実験7.
図30は、センサ装置75xyにアクチュエータ92または93による正負のx方向のせん断応力を作用させた際のせん断応力と出力電圧eとの関係(キャリブレーションカーブ)を示すグラフである。図30で、横軸は正負のx方向のせん断応力(kPa)、縦軸は出力電圧e(V)であり、正方向のせん断応力は青菱形、負方向のせん断応力は赤四角で示す。図30に示されるように、正負のいずれの方向においてもほぼ同様の性質を示すことがわかる。
実験8.
実験7の結果から次のことが明らかである。すなわち、上下で揃わせる櫛形線状電極を初期の状態で、ちょうど揃ったところを基準としそこからわずかに平行にずらすことにより、図31(A)に示されるように、櫛形線状電極300と310との間隔が広がる方向xiに加え、狭まる方向xjもできるため、櫛形線状電極300および310の垂直方向に沿ったせん断方向の正負を図31(B)に示されるように検知することが可能である。
実験9.
図32は、センサ装置75xyにアクチュエータ91による接触圧力を負荷した状態でアクチュエータ92または93によるx、y方向のせん断応力を順次作用させたときの測定結果を示すグラフである。図32で、横軸は時間(秒)、縦軸は接触圧力(kPa)およびx、y方向のせん断応力(kPa)である。図32に示されるように、接触圧力(青菱形で示す。)、x方向せん断応力(赤四角で示す。)およびy方向せん断応力(緑三角で示す。)は、各々独立して測定できていることがわかる。
実験10.
図33(A)および(B)は、分布測定装置300の実験のために作製した実験装置400を示す。図33(A)に示されるように、分布測定装置300を軸430を介して2枚のアクリル板410と420とで挟み、下部のアクリル板420に力Fを加えて回旋させることにより、一様でないせん断応力τを分布測定装置300に負荷させることができる。図33(B)は分布測定装置300を軸430を介して2枚のアクリル板410と420とで挟み込んだ状態の断面図であり、図33(A)と同じ符号を付した個所は同じ要素を示すため、説明は省略する。
図34(A)は、分布測定装置300の4つの電極であり、電極1ないし4は各々図25(A)に示されるセンサ装置75xy1ないし75xy4に対応している。図34(B)は、実験装置400を用いてせん断応力τを分布測定装置300に印加しx方向のせん断応力を測定した結果を示すグラフである。図34(B)で,横軸は実験装置400の回旋に要した力F(N)、縦軸は測定されたx方向のせん断応力(kPa)である。図34(B)に示されるように、回旋の外側となる電極4(紫×で示す。)で大きなせん断応力が測定され、回旋の内側となる電極1(青菱形で示す。)で小さなせん断応力が測定された。電極2(赤四角で示す。)および電極3(緑三角で示す。)は、電極1と4との間の大きさのせん断応力が測定された。以上により、分布測定装置300に印加されたせん断応力の分布が測定できたことがわかる。