JP5688704B2 - アルミニウム合金部品の恒温鍛造成型方法及びアルミニウム合金部品の恒温鍛造成型装置 - Google Patents
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Description
金型を加熱しない熱間鍛造法では、加工中に急速に素材温度が下がり、成型性が低下するため、欠陥が発生し易く、形状自在性に欠け、切削工程などの後加工が必要となり、量産性に欠け、用途が限定されるという問題点があった。
また、恒温鍛造法では、強度や品質を向上させることができるが、大型プレス機を用いて加工速度を極端に遅くして加工する方法であるため、大量生産品や小型部品の製造には不向きであり、航空機の機体や脚などのような大型の少量部品の生産にしか採用されておらず、量産品に適用できないという問題点があった。
特に、自動車、鉄道車両、航空機等の部品製造において、近年の燃費規制、排ガス規制などの環境問題への対応から、車体や機体の重量の軽量化が求められ、一部の部品がアルミニウム合金化されているが、強度、品質確保の面から、軽量合金への転換は進んでおらず、高速加工が可能で量産性に優れた恒温鍛造技術の確立が強く望まれていた。
また、電力機器、住宅関連設備などの各種金属製部品についても、搬送性、取扱い性、耐久性などを向上させるため、軽量化、高強度化が可能な製造技術の開発が望まれていた。
一方、アルミニウム合金等の金属を再結晶温度以下で加熱、加圧することにより、結晶粒を微細化し、強度を向上させる金属材料の製造方法が提案されている。
例えば、(特許文献1)には、「アルミニウム若しくはアルミニウム合金製の塊状アルミニウム材を再結晶温度以下に加熱し、この再結晶温度以下に加熱した塊状アルミニウム材をx軸方向,y軸方向及びz軸方向から繰り返し温間鍛造することで塊状アルミニウム材中の結晶粒を超微細結晶粒とすることを特徴とする超微細結晶粒を有するアルミニウム及びアルミニウム合金材の製造方法。」が開示されている。
また、(特許文献2)には、「可塑性金属材料を再結晶温度未満の温度で金型の間に挟み、金属材料を間歇的に少しずつ搬送しながら金型で瞬時に大きな繰り返し荷重を加えて圧下加工する工程を備えることを特徴とする微細結晶粒金属材料の製造方法。」が開示されている。
(1)(特許文献1)では、x軸,y軸,z軸の各軸方向から繰り返し鍛造を行うが、各鍛造毎に試料を90°回転させ、毎回523Kに1.2ksの再加熱を行う必要があるので、工程が複雑で加工に時間を要し、量産性に欠けるという課題を有していた。
また、所望の形状を得るためには、切削や研磨などの様々な後加工を施す必要があり、省資源性に欠けるという課題を有していた。
また、各鍛造毎に再加熱を行うことにより、試料の温度が上昇と低下を繰り返し、加熱温度がばらつき易く、結晶粒の均一性に欠け、剛性や靭性のばらつきが生じて歩留まりが低下し易く、品質の安定性、量産性に欠けるという課題を有していた。
(2)(特許文献2)は、金属材料を間歇的に少しずつ搬送しながら金型で瞬時に大きな繰り返し荷重を加えて圧下加工するものであり、圧下加工後、必要により熱処理を施すと共に、その後の圧延において、材料の厚さを調整したり、表面状態を仕上げたり、用途に合わせた断面形状に加工したりする必要があり、加工工程が複雑で加工に時間を要し、量産性に欠けるという課題を有していた。
(3)(特許文献1)、(特許文献2)は、いずれも素材の加熱温度を再結晶温度未満とすることにより、結晶粒の微細化を図るための金属材料の製造方法であるが、具体的な加熱方法や加熱温度の測定及び管理方法或いはそれらを実現するための装置の構成や構造については記載も示唆もされていなかった。
本発明の請求項1に記載のアルミニウム合金部品の恒温鍛造成型方法は、上金型と下金型を加熱する金型加熱工程と、前記上金型及び/又は前記下金型の温度を測定監視する金型温度監視工程と、前記金型温度監視工程で測定される前記温度に基づいて金型内部の表面温度を加工温度に収束させ維持するように前記金型加熱工程における加熱温度を調整する加熱温度調整工程と、溶体化されたアルミニウム合金を100℃以上で前記アルミニウム合金の再結晶温度以下に加熱する素材加熱工程と、前記素材加熱工程で加熱された前記アルミニウム合金を前記加熱温度調整工程で前記加工温度に温度調整された金型内に投入して前記アルミニウム合金の再結晶温度以下で製品形状に鍛造成型する一軸の鍛造成型工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)上金型と下金型を加熱する金型加熱工程と、上金型及び/又は下金型の温度を測定監視する金型温度監視工程と、金型温度監視工程で測定される温度に基づいて金型内部の表面温度を加工温度に収束させ維持するように金型加熱工程における加熱温度を調整する加熱温度調整工程を有することにより、金型内部及び金型内のアルミニウム合金の温度を所定の加工温度に保持することができるので、後工程の鍛造成型工程における製造条件を略一定に保つことができ、ばらつきの少ない高品質で均一性に優れた鍛造成型部品を製造することができ、品質の信頼性、量産性に優れる。
(2)予め素材加熱工程で加熱されたアルミニウム合金を加熱温度調整工程で加工温度に温度調整された金型内に投入してアルミニウム合金の再結晶温度以下で製品形状に鍛造成型する一軸の鍛造成型工程を有するので、アルミニウム合金が冷えることがなく、加工圧力を低減して高速加工することができ、量産性に優れる。また、冬季や夏季を問わず、効率よく略一定の条件で成型を行うことができ、生産の効率性、安定性に優れる。
(3)溶体化されたアルミニウム合金を100℃以上でアルミニウム合金の再結晶温度以下に加熱する素材加熱工程と、素材加熱工程で加熱されたアルミニウム合金を加熱温度調整工程で加工温度に温度調整された金型内に投入してアルミニウム合金の再結晶温度以下で製品形状に鍛造成型する一軸の鍛造成型工程を有することにより、従来の冷間鍛造において別々に行われていた結晶粒微細化と析出硬化を同時に行わせることができ、鍛造成型工程後に、別途、熱処理などを行うことなく、高強度、高靭性で高品質な鍛造成型部品を製造することができ、しかも製品の最終形状に近い形状に成型することができるので、切削などの後加工が不要で、加工工数を大幅に低減することができると共に、材料歩留まりを向上させることができ、量産性、省資源性に優れる。
金型温度監視工程では、上金型及び/又は下金型で設定した任意の位置で金型の温度を測定監視することができるが、設定した測定位置での温度と、金型の内部の表面温度(金型内表面温度)との関係を予め求めておくことにより、金型の内部(内表面)温度が所定の加工温度となるように、金型加熱工程における加熱温度を設定することができる。よって、金型の形状や加熱温度などに応じて、適宜、温度の測定位置やその数を選択することができ、金型温度監視工程では必ずしも金型の内部(内表面)温度を直接、測定する必要がなく、金型の外部(外表面)や金型の外表面から穿設した挿通孔の内部で熱電対などを用いて簡便かつ確実に金型の温度を測定することができる。
再結晶温度はアルミニウム合金の種類やその組成によって異なるが、250℃〜300℃程度である。
この構成により、請求項1の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)金型温度監視工程で測定される金型の温度に基づいて、鍛造成型工程における加工速度を調整する加工速度調整工程を有するので、鍛造成型工程での加工速度が速くなり過ぎることによってアルミニウム合金の温度が所定の加工温度よりも高くなることを防止でき、製造条件の均一性に優れる。
鍛造成型工程における加工速度が100mm/sより遅くなるにつれ、量産性が低下する傾向があり、500mm/sより速くなるにつれ、アルミニウム合金の温度が上昇し易くなり、所定の加工温度を維持することが困難になって、品質にばらつきが発生し易くなる傾向があり、いずれも好ましくない。
尚、加工速度調整工程では、金型温度監視工程で測定される温度に基づいて、鍛造成型工程における加工速度を調整するが、金型温度監視工程で測定される温度と、金型内部の表面温度との関係が予め分かっているので、金型内部におけるアルミニウム合金の実際の温度に適した加工速度で鍛造成型工程を行うことができる。
この構成により、請求項1又は2の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)金型温度監視工程で測定される温度が、上金型及び/又は下金型の内部の表面近側部の温度であることにより、上金型や下金型の内部表面温度とほぼ等しい温度を測定することができると共に、熱電対などの温度センサ(金型温度測定部)を金型で保護してアルミニウム合金との接触を防止することができ、温度測定の確実性、温度管理の信頼性に優れる。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)下金型用誘導加熱コイルや上金型用誘導加熱コイルが下金型や上金型の外周に配設されるので、下金型や上金型との着脱が容易で、簡便に下金型や上金型の交換作業を行うことができ、メンテナンス性、取扱い性に優れる。
(2)上金型及び/又は下金型の温度を測定する金型温度測定部を有するので、簡便かつ確実に上金型や下金型の必要な温度を測定することができ、温度測定の確実性に優れる。
(3)金型温度測定部で測定される温度に基づいて上金型及び下金型の内部表面温度を加工温度に収束させ維持するように調整する温度調整部を有することにより、金型内部及び金型内のアルミニウム合金の温度を加工温度に保持することができるので、鍛造成型時の製造条件を略一定に保つことができ、ばらつきの少ない高品質で均一性に優れた鍛造成型部品を製造することができ、品質の信頼性、量産性に優れる。
(4)予め加熱されたアルミニウム合金を温度調整された上金型と下金型で挟持してアルミニウム合金の再結晶温度以下に加熱しながら一方向のみから製品形状に加圧し鍛造成形が終了したらノックアウトピンによって金型から製品を取出す加圧部を有することにより、アルミニウム合金を所望の加工温度に加熱しながら加圧することができるので、加工圧力を低減して高速加工することができ、量産性に優れる。また、加工圧力を低減でき、省力性に優れると共に、加圧部をコンパクト化することができ、省スペース性に優れる。
温度調整部では、金型温度測定部で測定される金型の所定の位置における温度に基づいて、下金型用誘導加熱コイル及び上金型用誘導加熱コイルに電力を供給する電源の出力を調整することにより、上金型及び下金型の内部表面温度が設定温度に収束するように、温度調整を行う。複数の金型温度測定部を備えた場合、各々の金型温度測定部で検出した温度から金型全体の温度分布を知ることができ、斑無く確実かつ効率的に金型の加熱を行うことができ、加熱の均一性、温度制御の信頼性に優れる。
この構成により、請求項4の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)下受けベースと下金型との接触面及び/又は上受けベースと上金型との接触面に形成された表面凹部を有することにより、下受けベースや上受けベースと下金型や上金型との接触面積を低減できると共に、表面凹部に空気層を形成することができ、下金型や上金型から下受けベースや上受けベースへの熱伝達を抑え、下金型や上金型の温度低下を防ぐことができ、金型加熱の効率性、省エネルギー性に優れる。
表面凹部は、円形状や多角形状等の任意の横断面形状を有する複数の凹部を配置して形成してもよいし、環状に形成された複数の凹条溝を同心円上に配置して形成してもよい。
表面凹部の深さは、10mm以内の深さに形成することが好ましい。表面凹部の深さが、10mmより深くなるにつれ、加工性が低下すると共に、強度が不足して耐久性が低下し易くなる傾向があるためである。
この構成により、請求項4又は5の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)上金型及び/又は下金型の外周に環装された保温リングを有することにより、上金型や下金型の外周面からの放熱を防止することができ、金型加熱の効率性、省エネルギー性に優れる。
この構成により、請求項4乃至6の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)保温リングと上金型及び/又は下金型との接触面に形成された側面凹部を有することにより、保温リングと上金型や下金型との接触面積を低減できると共に、側面凹部に空気層を形成することができ、上金型や下金型から保温リングへの熱伝達を抑え、上金型や下金型の温度低下を効果的に防ぐことができ、金型加熱の効率性、省エネルギー性を向上させることができる。
側面凹部は、円形状や多角形状などの複数の凹部を配置して形成してもよいし、周面に沿って環状に形成された凹条溝を高さ方向に複数列、配置して形成してもよい。
保温リングに形成する側面凹部の深さは、10mm以内に形成することが好ましい。側面凹部の深さが、10mmより深くなるにつれ、加工性が低下すると共に、強度が不足して耐久性が低下し易くなる傾向があるためである。
請求項1に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)金型温度監視工程と加熱温度調整工程により、金型内部及び金型内の金属素材の温度を加工温度に保持することができ、後工程の鍛造成型工程においてアルミニウム合金が冷えることがなく、加工圧力を低減して高速加工することができ、冬季や夏季を問わず、製造条件を略一定に保ち、効率よく成型を行うことができ、ばらつきの少ない高品質で均一性に優れた鍛造成型部品を製造することができる品質の信頼性、量産性、生産の効率性、安定性に優れたアルミニウム合金部品の恒温鍛造成型方法を提供することができる。
(2)一度溶体化されたアルミニウム合金を素材加熱工程において、100℃以上好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上でアルミニウム合金の再結晶温度以下に加熱した上で、加熱温度調整工程で加工温度に温度調整された金型内に投入し、アルミニウム合金の再結晶温度以下で製品形状に鍛造成型する一軸の鍛造成型工程を行うことにより、結晶粒微細化と析出硬化を同時に発現させ、高強度、高靭性で高品質な鍛造成型部品を製造することができ、従来のように、鍛造成型工程後に、別途、熱処理などを行う必要がなく、さらに製品の最終形状に近い形状に成型することができ、切削などの後加工も不要で、加工工数を大幅に低減することができると共に、材料歩留まりを向上させることができる量産性、省資源性に優れたアルミニウム合金部品の恒温鍛造成型方法を提供することができる。
(1)鍛造成型工程の加工速度調整工程において、金型温度監視工程で測定される金型の温度に基づいて加工速度を適正に調整することができ、鍛造成型工程での加工速度が速くなり過ぎることによってアルミニウム合金の温度が所定の加工温度よりも高くなることを確実に防止できる製造条件の均一性に優れたアルミニウム合金部品の恒温鍛造成型方法を提供することができる。
(1)熱電対などの温度センサ(金型温度測定部)がアルミニウム合金と接触することを確実に防止しつつ、上金型や下金型の内部表面温度とほぼ等しい金型内部の表面近側部の温度を測定することができる温度測定の確実性、温度管理の信頼性に優れたアルミニウム合金部品の恒温鍛造成型方法を提供することができる。
(1)金型温度測定部でされる温度に基づいて、温度調整部で金型内部及び金型内のアルミニウム合金の温度を設定した加工温度に保持することができ、鍛造成型時の製造条件を略一定に保ち、ばらつきの少ない高品質で均一性に優れた鍛造成型部品を製造することができる品質の信頼性、量産性に優れたアルミニウム合金部品の恒温鍛造成型装置を提供することができる。
(2)設定した加工温度に維持された上金型と下金型でアルミニウム合金を挟持してアルミニウム合金の再結晶温度以下で略一定の加工温度に加熱しながら、加圧部で加圧することにより、加工圧力を低減して高速加工することができ、量産性、省力性に優れ、加圧部をコンパクト化することができ、省スペース性に優れたアルミニウム合金部品の恒温鍛造成型装置を提供することができる。
(1)下受けベースと下金型との接触面及び/又は上受けベースと上金型との接触面に表面凹部を形成することにより、下受けベースや上受けベースと下金型や上金型との接触面積を低減できると共に、表面凹部に空気層を形成することができ、下金型や上金型から下受けベースや上受けベースへの熱伝達を抑え、下金型や上金型の温度低下を防ぐことができる金型加熱の効率性、省エネルギー性に優れたアルミニウム合金部品の恒温鍛造成型装置を提供することができる。
(1)上金型及び/又は下金型の外周に保温リングを環装することにより、上金型や下金型の外周面からの放熱を防止することができる金型加熱の効率性、省エネルギー性に優れたアルミニウム合金部品の恒温鍛造成型装置を提供することができる。
(1)保温リングと上金型及び/又は下金型との接触面に側面凹部を形成することにより、保温リングと上金型や下金型との接触面積を低減できると共に、側面凹部に空気層を形成することができ、上金型や下金型から保温リングへの熱伝達を抑え、上金型や下金型の温度低下を効果的に防ぐことができ、金型加熱の効率性、省エネルギー性を向上させることができる量産性に優れたアルミニウム合金部品の恒温鍛造成型装置を提供することができる。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1の恒温鍛造成型方法に用いる恒温鍛造成型装置の構成を示す要部断面模式図である。
図1中、1は実施の形態1の恒温鍛造成型装置、2は恒温鍛造成型装置1の下型ベース、3は下型ベース2の上面側に配設された恒温鍛造成型装置1の下受けベース、4は下受けベース3の上面に固定リング4aにより固設された下金型、4bは下金型4の外周に固設された保温リング、4cは下金型4の外周面から内周面側に向かって穿設された熱電対挿通孔、5は下金型4の外周に配設された恒温鍛造成型装置1の下金型用誘導加熱コイル、5aは下金型4の外周と下金型用誘導加熱コイル5との間の要所に配設された緩衝材、6は下型ベース2に対向配置された恒温鍛造成型装置1の上部ベース、7は上部ベース6の下面側に配設された恒温鍛造成型装置1の上受けベース、8は上受けベース7の下面に固定リング8aにより固設された上金型、8bは上金型8の外周に固設された保温リング、8cは上金型8の外周面から内周面側に向かって穿設された熱電対挿通孔、9は上金型8の外周に配設された恒温鍛造成型装置1の上金型用誘導加熱コイル、9aは上金型8の外周と上金型用誘導加熱コイル9との間の要所に配設された緩衝材、10は高周波ケーブル10aによって下金型用誘導加熱コイル5及び上金型用誘導加熱コイル9に接続され電力を供給する電源、11a,11bは熱電対挿通孔4c,8cに挿通される熱電対により下金型4及び上金型8の内部の表面近側部の温度を測定する恒温鍛造成型装置1の金型温度測定部としての金型内部温度測定部、12は金型内部温度測定部11a,11bで測定される温度に基づいて下金型4及び上金型8の内部表面温度を設定されたアルミニウム合金20の加工温度に収束させ維持するように電源10の出力を調整する温度調整部、13は予め加熱されたアルミニウム合金20を加工温度に温度調整された下金型4と上金型8で挟持して加圧する恒温鍛造成型装置1の加圧部、13aは加圧部13のポンチ、13bは加圧部13のノックアウトピンである。
図2は実施の形態1の恒温鍛造成型装置の下受けベースの模式斜視図である。
図2中、3Aは下受けベース3における下金型4との接触面に横断面形状が円形状や多角形状等の複数の凹部3aを配置して形成された表面凹部、3bは加圧部13のポンチ13aを挿通させるための貫通孔である。
本実施の形態では、下受けベース3を高強度で衝撃に強く、熱伝導率の低いステンレス等の金属で形成した。耐久性に優れると共に、下金型4の熱が下受けベース3に吸収されて温度が低下することを防止でき、金型加熱の効率性を高めることができるためである。
また、下金型4との接触面に形成する表面凹部3A(凹部3a)の深さは、10mm以内の深さに形成した。表面凹部3Aの深さが、10mmより深くなるにつれ、加工性が低下すると共に、強度が不足して耐久性が低下し易くなる傾向があることがわかったためである。この表面凹部3A(凹部3a)により、下受けベース3と下金型4との接触面積を低減すると共に、表面凹部3Aに空気層を形成し、下金型4から下受けベース3への熱伝達を抑え、下金型4の温度低下を防ぐことができた。
図3(a)は実施の形態1の恒温鍛造成型装置の下受けベースの変形例を示す模式斜視図であり、図3(b)は実施の形態1の恒温鍛造成型装置の下受けベースの変形例を示す模式断面図である。
変形例における下受けベース3’が実施の形態1における下受けベース3と異なる点は、環状に形成された複数の凹条溝3cを同心円上に配置して表面凹部3Bが形成されている点である。これにより、下受けベース3と同様の作用を得ることができる。
尚、上受けベース7は、下受けベース3と上下対称に配置されるだけで、下受けベース3と同様に形成されるので、説明を省略する。
図4は実施の形態1の恒温鍛造成型装置の下金型用誘導加熱コイルの取付け構造を示す要部模式平面図である。
図4中、5bは下金型4に下金型用誘導加熱コイル5を螺子止めによって固定するコイル取付け部である。
コイル取付け部5bで下金型用誘導加熱コイル5を固定する際に、下金型4の外周と下金型用誘導加熱コイル5との間に絶縁性及び耐熱性を有する緩衝材5aを配設することにより、下金型用誘導加熱コイル5と下金型4との間に確実に隙間を形成することができ、両者が接触してショートが発生することを防止できる。本実施の形態では、緩衝材5aとして、耐熱樹脂を用いたが、緩衝材5aは、下金型用誘導加熱コイル5による加熱に耐えるだけの耐熱性を有していればよい。
尚、上金型用誘導加熱コイル9は、下金型用誘導加熱コイル5と同様に固定されるので、説明を省略する。
まず、図1において、金型加熱工程により、下金型用誘導加熱コイル5と上金型用誘導加熱コイル9で、下金型4と上金型8を加熱する。
下金型4と上金型8の加熱が開始されると、金型温度監視工程により、金型内部温度測定部11a,11bで下金型4及び上金型8の内部の表面近側部の温度を測定監視する。
次いで、加熱温度調整工程により、金型温度監視工程で測定される温度に基づいて金型の内部表面温度を加工温度に収束させ維持するように温度調整部12で電源10の出力を調整し、金型加熱工程における加熱温度を調整する。
尚、製品部分(金属素材20)と接する金型内部表面温度を最適なものとするため、金型内部温度測定部11a,11bの位置を設定し、加熱温度調整工程による加熱温度の調整を行っている。従って、金型内部温度測定部11a,11bの位置や数は本実施の形態に限定されるものではなく、下金型4や上金型8の形状、大きさ、設定温度などに応じて、適宜、選択することができる。
鍛造成型が終了したら、ノックアウトピン13bによって金型から製品を取り出す。
以下、金型温度監視工程により下金型4及び上金型8の各部の温度を測定監視し、加熱温度調整工程で下金型4及び上金型8の金型内部表面温度を加工温度に保持しながら、鍛造成型工程を繰り返す。
例えば、アルミニウム合金20としてA6061を加工する場合、アルミニウム合金20と下金型4及び上金型8の内部(内表面)の温度(加工温度)が100℃〜300℃程度となるように、加熱温度調整工程で温度調整を行った。
尚、金型温度監視工程で測定される温度に基づいて、鍛造成型工程における加工速度を調整する加工速度調整工程を有する場合、鍛造成型工程での加工速度が速くなり過ぎることによってアルミニウム合金20の温度が所定の加工温度よりも高くなることを防止でき、製造条件の均一性に優れる。
また、加圧部13は、温度調整部12からの電気信号により、加圧回数を制御することもできる。
(1)上金型と下金型を加熱する金型加熱工程と、上金型及び/又は下金型の温度を測定監視する金型温度監視工程と、金型温度監視工程で測定される温度に基づいて金型内部の表面温度を加工温度に収束させ維持するように金型加熱工程における加熱温度を調整する加熱温度調整工程を有することにより、金型内部及び金型内のアルミニウム合金の温度を所定の加工温度に保持することができるので、後工程の鍛造成型工程における製造条件を略一定に保つことができ、ばらつきの少ない高品質で均一性に優れた鍛造成型部品を製造することができ、品質の信頼性、量産性に優れる。
(2)予め素材加熱工程で加熱されたアルミニウム合金を加熱温度調整工程で加工温度に温度調整された金型内に投入してアルミニウム合金の再結晶温度以下で製品形状に鍛造成型する一軸の鍛造成型工程を有するので、アルミニウム合金が冷えることがなく、加工圧力を低減して高速加工することができ、量産性に優れる。また、冬季や夏季を問わず、効率よく略一定の条件で成型を行うことができ、生産の効率性、安定性に優れる。
(3)溶体化されたアルミニウム合金を100℃以上好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上で、アルミニウム合金の再結晶温度以下に加熱する素材加熱工程と、素材加熱工程で加熱されたアルミニウム合金を加熱温度調整工程で加工温度に温度調整された金型内に投入してアルミニウム合金の再結晶温度以下で製品形状に鍛造成型する一軸の鍛造成型工程を有することにより、従来の冷間鍛造において別々に行われていた結晶粒微細化と析出硬化を同時に行わせることができ、鍛造成型工程後に、別途、熱処理などを行うことなく、高強度、高靭性で高品質な鍛造成型部品を製造することができ、しかも製品の最終形状に近い形状に成型することができるので、切削などの後加工が不要で、加工工数を大幅に低減することができると共に、材料歩留まりを向上させることができ、量産性、省資源性に優れる。
(4)金型温度監視工程で測定される温度が、上金型及び下金型の内部の表面近側部の温度であることにより、上金型や下金型の内部表面温度とほぼ等しい温度を測定することができると共に、熱電対を用いた金型温内部度測定部を金型で保護してアルミニウム合金との接触を防止することができ、温度測定の確実性、温度管理の信頼性に優れる。
(1)下金型用誘導加熱コイルや上金型用誘導加熱コイルが下金型や上金型の外周に配設されるので、下金型や上金型との着脱が容易で、簡便に下金型や上金型の交換作業を行うことができ、メンテナンス性、取扱い性に優れる。
(2)上金型及び下金型の内部の表面近側部の温度を測定する金型内部温度測定部や下金型及び上金型の外表面温度を測定する金型外表面温度測定部を有するので、簡便かつ確実に上金型や下金型の必要な温度を測定することができ、温度測定の確実性に優れる。
(3)金型温度測定部で測定される温度に基づいて上金型及び下金型の内部表面温度を加工温度に収束させ維持するように調整する温度調整部を有することにより、金型内部及び金型内のアルミニウム合金の温度を加工温度に保持することができるので、鍛造成型時の製造条件を略一定に保つことができ、ばらつきの少ない高品質で均一性に優れた鍛造成型部品を製造することができ、品質の信頼性、量産性に優れる。
(4)予め加熱されたアルミニウム合金を温度調整された上金型と下金型で挟持してアルミニウム合金の再結晶温度以下に加熱しながら一方向のみから製品形状に加圧し鍛造成形が終了したらノックアウトピンによって金型から製品を取出す加圧部を有することにより、アルミニウム合金を所望の加工温度に加熱しながら加圧することができるので、加工圧力を低減して高速加工することができ、量産性に優れる。また、加工圧力を低減でき、省力性に優れると共に、加圧部をコンパクト化することができ、省スペース性に優れる。
(5)下受けベースと下金型との接触面及び/又は上受けベースと上金型との接触面に形成された表面凹部を有することにより、下受けベースや上受けベースと下金型や上金型との接触面積を低減できると共に、表面凹部に空気層を形成することができ、下金型や上金型から下受けベースや上受けベースへの熱伝達を抑え、下金型や上金型の温度低下を防ぐことができ、金型加熱の効率性、省エネルギー性に優れる。
(6)上金型及び/又は下金型の外周に環装された保温リングを有することにより、上金型や下金型の外周面からの放熱を防止することができ、金型加熱の効率性、省エネルギー性に優れる。
実施の形態1で説明した恒温鍛造成型方法及び恒温鍛造成型装置により、恒温鍛造成型を行った。
アルミニウム合金(A6061−T6材)を溶体化処理(530℃で1時間加熱後水冷)したものを170℃(再結晶温度以下)に加熱して使用し、圧縮率50%〜70%で成形した。
また、アルミニウム合金と下金型及び上金型の内部表面温度は、100℃〜300℃程度となるように、加熱温度調整工程で温度調整を行った。
このようにして得られた成型品から試験片を採取し、JIS Z 2241「金属材料引張試験方法」に準拠して、0.2%耐力、引張強さ、伸びを測定した。
その結果、0.2%耐力は310〜320N/mm2、引張強さは330〜340N/mm2、伸びは13〜16%であった。
従来の鍛造加工品における0.2%耐力、引張強さ、伸びのJIS規格値は、それぞれ>245N/mm2、>265N/mm2、>10%であり、本実施例では、いずれもJIS規格値を大きく上回る結果となった。
以上の結果から、本実施例によれば、従来のような鍛造加工後の熱処理を行うことなく、それを超える機械的強度が得られることがわかった。また、従来の鍛造成形品では、強さとしなやかさを兼ね備えることは困難であったが、本実施例によれば、優れた強さとしなやかさを有する鍛造成形品を実現できることがわかった。これらの結果は、結晶の微細化と析出硬化が同時に行われるためと考えられる。
2 下型ベース
3,3’ 下受けベース
3a 凹部
3A,3B 表面凹部
3b 貫通孔
3c 凹条溝
4 下金型
4a,8a 固定リング
4b,8b 保温リング
4c,8c 熱電対挿通孔
5 下金型用誘導加熱コイル
5a,9a 緩衝材
5b コイル取付け部
6 上部ベース
7 上受けベース
8 上金型
9 上金型用誘導加熱コイル
10 電源
10a 高周波ケーブル
11a,11b 金型内部温度測定部
12 温度調整部
13 加圧部
13a ポンチ
13b ノックアウトピン
20 アルミニウム合金
Claims (7)
- 上金型と下金型を加熱する金型加熱工程と、前記上金型及び/又は前記下金型の温度を測定監視する金型温度監視工程と、前記金型温度監視工程で測定される前記温度に基づいて金型内部の表面温度を加工温度に収束させ維持するように前記金型加熱工程における加熱温度を調整する加熱温度調整工程と、溶体化されたアルミニウム合金を100℃以上で前記アルミニウム合金の再結晶温度以下に加熱する素材加熱工程と、前記素材加熱工程で加熱された前記アルミニウム合金を前記加熱温度調整工程で前記加工温度に温度調整された金型内に投入して前記アルミニウム合金の再結晶温度以下で製品形状に鍛造成型する一軸の鍛造成型工程と、を備えたことを特徴とするアルミニウム合金部品の恒温鍛造成型方法。
- 前記金型温度監視工程で測定される前記温度に基づいて、前記鍛造成型工程における加工速度を調整する加工速度調整工程を備えたことを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金部品の恒温鍛造成型方法。
- 前記金型温度監視工程で測定される前記温度が、前記上金型及び/又は前記下金型の内部の表面近側部の温度であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウム合金部品の恒温鍛造成型方法。
- 請求項1乃至3の内いずれか1項に記載のアルミニウム合金部品の恒温鍛造成型方法に用いるアルミニウム合金部品の恒温鍛造成型装置であって、
下金型と、前記下金型の外周に配設される下金型用誘導加熱コイルと、前記下金型に対向配置される上金型と、前記上金型の外周に配設される上金型用誘導加熱コイルと、前記上金型及び/又は前記下金型の温度を測定する金型温度測定部と、前記金型温度測定部で測定される前記温度に基づいて前記上金型及び前記下金型の内部表面温度を加工温度に収束させ維持するように調整する温度調整部と、予め溶体化され100℃以上で前記アルミニウム合金の再結晶温度以下に加熱された前記アルミニウム合金を前記加工温度に温度調整された前記上金型と前記下金型で挟持して前記アルミニウム合金の再結晶温度以下に加熱しながら一方向のみから製品形状に加圧し鍛造成形が終了したらノックアウトピンによって金型から製品を取出す加圧部と、を備えていることを特徴とするアルミニウム合金部品の恒温鍛造成型装置。 - 前記下金型が固設される下受けベースと前記下金型との接触面及び/又は前記上金型が固設される上受けベースと前記上金型との接触面に形成された表面凹部を備えていることを特徴とする請求項4に記載のアルミニウム合金部品の恒温鍛造成型装置。
- 前記上金型及び/又は前記下金型の外周に環装された保温リングを備えていることを特徴とする請求項4又は5に記載のアルミニウム合金部品の恒温鍛造成型装置。
- 前記保温リングと、前記上金型及び/又は前記下金型と、の接触面に形成された側面凹部を備えていることを特徴とする請求項4乃至6の内いずれか1項に記載のアルミニウム合金部品の恒温鍛造成型装置。
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