JP2016209895A - 恒温鍛造部品及び恒温鍛造部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】少なくとも一部に形成された扁平状結晶粒と微細再結晶粒が点在する複合組織を有することにより、アルミニウム合金製部品でありながら、従来の鋼製部品と同等以上の高強度、高靭性を実現できる高品質な恒温鍛造部品の提供。【解決手段】結晶粒の少なくとも一部に鍛造成形により押し潰されて長く伸びた扁平状結晶粒が形成され、(a)扁平状結晶粒の変形領域若しくは回復組織の領域又は(b)結晶粒の粒界領域の少なくともいずれか一方の領域に平均粒径が10nm〜1000nmの微細再結晶粒が点在する複合組織を有することにより、JISの規格値を上回る引張り強さと伸びを実現する。【選択図】図1
Description
本発明は、アルミニウム合金を高速で恒温鍛造することにより得られる、高強度、高靭性で高品質な恒温鍛造部品及びその製造方法に関する。
金属の強度、品質を向上させる手段として、従来から鍛造が知られている。
金型を加熱しない熱間鍛造法では、加工中に急速に素材温度が下がり、成型性が低下するため、欠陥が発生し易く、また、形状自在性に欠け、切削工程などの後加工が必要となり、量産性に欠けると共に、用途が限定されるという問題点があった。
また、従来の恒温鍛造法では、強度や品質を向上させることができるが、大型プレス機を用いて加工速度を極端に遅くして加工する方法であるため、大量生産品や小型部品の製造には不向きであり、航空機の機体や脚などのような大型の少量部品の生産にしか採用されておらず、量産品に適用できないという問題点があった。
特に、自動車、鉄道車両、航空機等の部品製造において、近年の燃費向上、排ガス規制などの環境問題への対応から、車体や機体の重量の軽量化が求められ、一部の部品がアルミニウム合金化されているが、強度、品質確保の面から、軽量合金への転換は進んでおらず、高強度、高靭性で高品質な恒温鍛造部品の実現と、高速加工が可能で量産性に優れた恒温鍛造部品の製造方法の確立が強く望まれていた。
金型を加熱しない熱間鍛造法では、加工中に急速に素材温度が下がり、成型性が低下するため、欠陥が発生し易く、また、形状自在性に欠け、切削工程などの後加工が必要となり、量産性に欠けると共に、用途が限定されるという問題点があった。
また、従来の恒温鍛造法では、強度や品質を向上させることができるが、大型プレス機を用いて加工速度を極端に遅くして加工する方法であるため、大量生産品や小型部品の製造には不向きであり、航空機の機体や脚などのような大型の少量部品の生産にしか採用されておらず、量産品に適用できないという問題点があった。
特に、自動車、鉄道車両、航空機等の部品製造において、近年の燃費向上、排ガス規制などの環境問題への対応から、車体や機体の重量の軽量化が求められ、一部の部品がアルミニウム合金化されているが、強度、品質確保の面から、軽量合金への転換は進んでおらず、高強度、高靭性で高品質な恒温鍛造部品の実現と、高速加工が可能で量産性に優れた恒温鍛造部品の製造方法の確立が強く望まれていた。
一方、アルミニウム合金等の金属を再結晶温度以下で加熱、加圧することにより、結晶粒を微細化し、強度を向上させる金属材料の製造方法が提案されている。
例えば、(特許文献1)には、「アルミニウム若しくはアルミニウム合金製の塊状アルミニウム材を再結晶温度以下に加熱し、この再結晶温度以下に加熱した塊状アルミニウム材をx軸方向,y軸方向及びz軸方向から繰り返し温間鍛造することで塊状アルミニウム材中の結晶粒を超微細結晶粒とすることを特徴とする超微細結晶粒を有するアルミニウム及びアルミニウム合金材の製造方法。」が開示されている。
しかし、(特許文献1)では、x軸,y軸,z軸の各軸方向から繰り返し鍛造を行うが、各鍛造毎に試料を90°回転させ、毎回523Kに再加熱を行う必要があるので、工程が複雑で加工に時間を要し、量産性に欠けるという問題点があった。
また、所望の形状を得るためには、切削や研磨などの様々な後加工を施す必要があり、省資源性、省力性に欠けるという問題点があった。
また、各鍛造毎に再加熱を行うことにより、試料の温度が上昇と低下を繰り返し、加熱温度がばらつき易く、結晶粒の均一性に欠けるため、剛性や靭性のばらつきが生じて歩留まりが低下し易く、品質の安定性、量産性に欠けるという問題点があった。
例えば、(特許文献1)には、「アルミニウム若しくはアルミニウム合金製の塊状アルミニウム材を再結晶温度以下に加熱し、この再結晶温度以下に加熱した塊状アルミニウム材をx軸方向,y軸方向及びz軸方向から繰り返し温間鍛造することで塊状アルミニウム材中の結晶粒を超微細結晶粒とすることを特徴とする超微細結晶粒を有するアルミニウム及びアルミニウム合金材の製造方法。」が開示されている。
しかし、(特許文献1)では、x軸,y軸,z軸の各軸方向から繰り返し鍛造を行うが、各鍛造毎に試料を90°回転させ、毎回523Kに再加熱を行う必要があるので、工程が複雑で加工に時間を要し、量産性に欠けるという問題点があった。
また、所望の形状を得るためには、切削や研磨などの様々な後加工を施す必要があり、省資源性、省力性に欠けるという問題点があった。
また、各鍛造毎に再加熱を行うことにより、試料の温度が上昇と低下を繰り返し、加熱温度がばらつき易く、結晶粒の均一性に欠けるため、剛性や靭性のばらつきが生じて歩留まりが低下し易く、品質の安定性、量産性に欠けるという問題点があった。
そこで、本願出願人は鋭意研究の結果、(特許文献2)において、「上金型と下金型を加熱する金型加熱工程と、上金型及び/又は下金型の温度を測定監視する金型温度監視工程と、金型温度監視工程で測定される温度に基づいて金型内部の表面温度を金属素材の加工温度に収束させ維持するように金型加熱工程における加熱温度を調整する加熱温度調整工程と、溶体化された金属素材を100℃以上で金属素材の再結晶温度以下に加熱する素材加熱工程と、素材加熱工程で加熱された金属素材を加熱温度調整工程で前記加工温度に温度調整された金型内に投入して鍛造成型する鍛造成型工程と、を備えた恒温鍛造成型方法」を開示した。
(特許文献2)の恒温鍛造成型方法は、金型内の素材温度を簡便かつ確実に所定の温度に維持することができ、鍛造成型時の加工速度を適正に保持して、素材が所定の温度以上に加熱されることを確実に防止することができ、結晶粒を微細化して、高強度、高靭性で高品質な部品を高速加工することができ、加工後の熱処理が不要で、後加工を最小限に抑えることができる量産性に優れるものであった。
しかし、従来の鋼製部品と同等以上の高品質なアルミニウム合金製部品を安定して供給し、実際の自動車部品や航空機部品等に適用するために、さらなる均質化と強度及び靭性の向上並びに加工速度の高速化が強く要望されていた。
しかし、従来の鋼製部品と同等以上の高品質なアルミニウム合金製部品を安定して供給し、実際の自動車部品や航空機部品等に適用するために、さらなる均質化と強度及び靭性の向上並びに加工速度の高速化が強く要望されていた。
本発明は上記要望に応えるもので、少なくとも一部に形成された扁平状結晶粒と微細再結晶粒が点在する複合組織を有することにより、アルミニウム合金製部品でありながら、従来の鋼製部品と同等以上の高強度、高靭性を実現できる高品質な恒温鍛造部品の提供、及び結晶粒を微細化することにより、高い強度と靭性を併せ持つ高品質な部品を高速加工することができる量産性に優れた恒温鍛造部品の製造方法の提供を目的とする。
上記課題を解決するために本発明の恒温鍛造部品及び恒温鍛造部品の製造方法は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の恒温鍛造部品は、Al−Cu系のアルミニウム合金を恒温鍛造して製造される恒温鍛造部品であって、結晶粒の少なくとも一部に鍛造成形により押し潰されて長く伸びた扁平状結晶粒が形成され、(a)前記扁平状結晶粒の変形組織若しくは回復組織の領域又は(b)前記結晶粒の粒界領域の少なくともいずれか一方の領域に平均粒径が10nm〜1000nmの微細再結晶粒が点在する複合組織を有し、引張り強さが500MPa以上で、伸びが10%以上である構成を有している。
この構成により、以下のような作用、効果を有する。
(1)結晶粒の少なくとも一部に鍛造成形により押し潰されて長く伸びた扁平状結晶粒が形成され、(a)扁平状結晶粒の変形組織若しくは回復組織の領域又は(b)結晶粒の粒界領域の少なくともいずれか一方の領域に平均粒径が10nm〜1000nmの微細再結晶粒が点在する複合組織を有することにより、扁平状結晶粒の変形組織若しくは回復組織の領域が主に強度の上昇に寄与し、微細再結晶粒が強度と靭性の向上に寄与すると考えられる。これにより、従来にない高強度かつ高靭性を実現できる高品質な恒温鍛造部品を提供できる。
(2)(a)扁平状結晶粒の変形組織若しくは回復組織の領域又は(b)結晶粒の粒界領域の少なくともいずれか一方の領域に平均粒径が10nm〜1000nmの微細再結晶粒が点在することにより、変形や応力が集中し易い領域で、破壊の起点となる領域に強度と靭性の両方を兼ね備えた組織を形成することができ、特に、結晶粒界や粒界三重点に沿って形成される微細再結晶粒は、塑性変形することにより破壊の起点となる粒界の応力集中を緩和して、製品の靭性を大きく向上させることができ、高靭性で耐久性、長寿命性に優れた恒温鍛造部品を実現できる。
(3)引張り強さが500MPa以上で、伸びが10%以上であることにより、高強度でありながら、高靭性を実現することができ、耐久性、長寿命性に優れる。
(4)引張り強さが500MPa以上で、伸びが10%以上であり、JIS H4040A2014FD−T6の規格値(引張り強さ451MPa以上、伸び8%以上)を大きく上回っているので、自動車用部品や航空機部品等に好適に用いることができ、部品の軽量化、燃費の向上を図ることができる。
本発明の請求項1に記載の恒温鍛造部品は、Al−Cu系のアルミニウム合金を恒温鍛造して製造される恒温鍛造部品であって、結晶粒の少なくとも一部に鍛造成形により押し潰されて長く伸びた扁平状結晶粒が形成され、(a)前記扁平状結晶粒の変形組織若しくは回復組織の領域又は(b)前記結晶粒の粒界領域の少なくともいずれか一方の領域に平均粒径が10nm〜1000nmの微細再結晶粒が点在する複合組織を有し、引張り強さが500MPa以上で、伸びが10%以上である構成を有している。
この構成により、以下のような作用、効果を有する。
(1)結晶粒の少なくとも一部に鍛造成形により押し潰されて長く伸びた扁平状結晶粒が形成され、(a)扁平状結晶粒の変形組織若しくは回復組織の領域又は(b)結晶粒の粒界領域の少なくともいずれか一方の領域に平均粒径が10nm〜1000nmの微細再結晶粒が点在する複合組織を有することにより、扁平状結晶粒の変形組織若しくは回復組織の領域が主に強度の上昇に寄与し、微細再結晶粒が強度と靭性の向上に寄与すると考えられる。これにより、従来にない高強度かつ高靭性を実現できる高品質な恒温鍛造部品を提供できる。
(2)(a)扁平状結晶粒の変形組織若しくは回復組織の領域又は(b)結晶粒の粒界領域の少なくともいずれか一方の領域に平均粒径が10nm〜1000nmの微細再結晶粒が点在することにより、変形や応力が集中し易い領域で、破壊の起点となる領域に強度と靭性の両方を兼ね備えた組織を形成することができ、特に、結晶粒界や粒界三重点に沿って形成される微細再結晶粒は、塑性変形することにより破壊の起点となる粒界の応力集中を緩和して、製品の靭性を大きく向上させることができ、高靭性で耐久性、長寿命性に優れた恒温鍛造部品を実現できる。
(3)引張り強さが500MPa以上で、伸びが10%以上であることにより、高強度でありながら、高靭性を実現することができ、耐久性、長寿命性に優れる。
(4)引張り強さが500MPa以上で、伸びが10%以上であり、JIS H4040A2014FD−T6の規格値(引張り強さ451MPa以上、伸び8%以上)を大きく上回っているので、自動車用部品や航空機部品等に好適に用いることができ、部品の軽量化、燃費の向上を図ることができる。
ここで、Al−Cu系のアルミニウム合金としてはJIS規格に規定される2000系アルミニウム合金が好ましく、特にA2014、A2017等が好適に用いられる。
アルミニウムの結晶粒の内、扁平状結晶粒は、変形が容易な結晶方位を有する結晶粒(変形し易い方向に原子が並んだ結晶粒)が鍛造成形により押し潰されて長く伸びて扁平状に変形したものである。また、微細再結晶粒は、恒温鍛造により変形が集中した扁平状結晶粒領域や結晶粒界に、変形の程度や速度に応じて瞬時に形成される。超微細析出物は結晶粒の回復や再結晶化を抑えるが、強変形領域で再結晶した結晶粒の成長を抑制する役割を果たしていると考えられる。
例えば、従来のA2014のアルミニウム合金を冷間鍛造してT6処理したものは、平均粒径が10〜100μmの結晶粒を含む組織であることが知られている。この鍛造品は、まず冷間鍛造により扁平状の変形結晶粒組織を形成し、これをT6処理して一部又は全部を回復結晶粒にすると共に、析出による強度上昇を図っている。
これに対し、本発明の恒温鍛造部品は、変形組織若しくは回復組織を有する扁平状結晶粒と、微細再結晶粒を瞬時にかつ同時に形成することにより、強度と靭性の両方の向上を図っている。これらの組織形成は動的析出によって形成される超微細析出物が扁平状結晶粒(変形結晶粒又は回復結晶粒)の回復あるいは再結晶を起こり難くさせ、本発明のような微細再結晶粒が形成されると考えられる。また、微細再結晶粒は強度上昇にも寄与していると考えられる。
A2014、A2017等の一般的な材料で十分な機械的強度を得ることができるため、機械的強度を増すために特別な金属を添加する必要がなく、リサイクル時にそれらを取り除く必要がないので、リサイクル性に優れる。
アルミニウムの結晶粒の内、扁平状結晶粒は、変形が容易な結晶方位を有する結晶粒(変形し易い方向に原子が並んだ結晶粒)が鍛造成形により押し潰されて長く伸びて扁平状に変形したものである。また、微細再結晶粒は、恒温鍛造により変形が集中した扁平状結晶粒領域や結晶粒界に、変形の程度や速度に応じて瞬時に形成される。超微細析出物は結晶粒の回復や再結晶化を抑えるが、強変形領域で再結晶した結晶粒の成長を抑制する役割を果たしていると考えられる。
例えば、従来のA2014のアルミニウム合金を冷間鍛造してT6処理したものは、平均粒径が10〜100μmの結晶粒を含む組織であることが知られている。この鍛造品は、まず冷間鍛造により扁平状の変形結晶粒組織を形成し、これをT6処理して一部又は全部を回復結晶粒にすると共に、析出による強度上昇を図っている。
これに対し、本発明の恒温鍛造部品は、変形組織若しくは回復組織を有する扁平状結晶粒と、微細再結晶粒を瞬時にかつ同時に形成することにより、強度と靭性の両方の向上を図っている。これらの組織形成は動的析出によって形成される超微細析出物が扁平状結晶粒(変形結晶粒又は回復結晶粒)の回復あるいは再結晶を起こり難くさせ、本発明のような微細再結晶粒が形成されると考えられる。また、微細再結晶粒は強度上昇にも寄与していると考えられる。
A2014、A2017等の一般的な材料で十分な機械的強度を得ることができるため、機械的強度を増すために特別な金属を添加する必要がなく、リサイクル時にそれらを取り除く必要がないので、リサイクル性に優れる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の恒温鍛造部品であって、ビッカース硬さが160以上である構成を有している。
この構成により、請求項1の作用、効果に加え、以下のような作用、効果を有する。
(1)ビッカース硬さが160以上であることにより、従来のA2014のアルミニウム合金の冷間鍛造+T6処理品の限界値であるビッカース硬さHv=131を超える高強度を実現することができ、低中炭素鋼鍛鋼品の代替品として軽量化が可能となり、汎用性に優れる。
(2)炭素鋼S35Cの鍛鋼品の強度仕様はビッカース硬さHv=155レベルにあるが、本発明の恒温鍛造部品はこの鍛鋼品と同等以上の硬さが得られるので、強度を向上させるために設計時に肉増しなどを行う必要がほとんどなく、軽量化を図ることができ、設計自在性、加工性に優れる。
この構成により、請求項1の作用、効果に加え、以下のような作用、効果を有する。
(1)ビッカース硬さが160以上であることにより、従来のA2014のアルミニウム合金の冷間鍛造+T6処理品の限界値であるビッカース硬さHv=131を超える高強度を実現することができ、低中炭素鋼鍛鋼品の代替品として軽量化が可能となり、汎用性に優れる。
(2)炭素鋼S35Cの鍛鋼品の強度仕様はビッカース硬さHv=155レベルにあるが、本発明の恒温鍛造部品はこの鍛鋼品と同等以上の硬さが得られるので、強度を向上させるために設計時に肉増しなどを行う必要がほとんどなく、軽量化を図ることができ、設計自在性、加工性に優れる。
ここで、例えば、従来のA2014のアルミニウム合金を冷間鍛造してT6処理したものは、ビッカース硬さと伸びが負の相関を有するので、硬さを増すと脆くなり易く、耐衝撃性、耐久性に欠ける。
これに対して、本発明の恒温鍛造部品は、従来品と異なり、硬さの増加にも関わらず、伸びを大きくすることができるので、部品の硬さを増しても脆くなることがなく、耐久性、長寿命性に優れる。
これに対して、本発明の恒温鍛造部品は、従来品と異なり、硬さの増加にも関わらず、伸びを大きくすることができるので、部品の硬さを増しても脆くなることがなく、耐久性、長寿命性に優れる。
本発明の請求項3に記載の恒温鍛造部品は、Al−Zn−Mg系のアルミニウム合金を恒温鍛造して製造される恒温鍛造部品であって、結晶粒の少なくとも一部に鍛造成形により押し潰されて長く伸びた扁平状結晶粒が形成され、(a)前記扁平状結晶粒の変形組織若しくは回復組織の領域又は(b)前記結晶粒の粒界領域の少なくともいずれか一方の領域に平均粒径が10nm〜1000nmの微細再結晶粒が点在する複合組織を有し、引張り強さが560MPa以上で、伸びが12%以上である構成を有している。
この構成により、請求項1の(1)及び(2)と同様の作用、効果に加え、以下のような作用、効果を有する。
(1)引張り強さが560MPa以上で、伸びが12%以上であることにより、高強度でありながら、高靭性を実現することができ、耐久性、長寿命性に優れる。
(2)引張り強さが560MPa以上で、伸びが12%以上であり、JIS H4040A7075FD−T6の規格値(引張り強さ510MPa以上、伸び10%以上)を大きく上回っているので、自動車用部品や航空機部品等に好適に用いることができ、部品の軽量化、燃費の向上を図ることができる。
この構成により、請求項1の(1)及び(2)と同様の作用、効果に加え、以下のような作用、効果を有する。
(1)引張り強さが560MPa以上で、伸びが12%以上であることにより、高強度でありながら、高靭性を実現することができ、耐久性、長寿命性に優れる。
(2)引張り強さが560MPa以上で、伸びが12%以上であり、JIS H4040A7075FD−T6の規格値(引張り強さ510MPa以上、伸び10%以上)を大きく上回っているので、自動車用部品や航空機部品等に好適に用いることができ、部品の軽量化、燃費の向上を図ることができる。
ここで、Al−Zn−Mg系のアルミニウム合金としてはJIS規格に規定される7000系アルミニウム合金が好ましく、特にA7075等が好適に用いられる。
扁平状結晶粒、微細再結晶粒、超微細析出物については、請求項1で説明した通りであるので、説明を省略する。
例えば、従来のA7075のアルミニウム合金を冷間鍛造してT6処理したものは、平均粒径が10〜100μmの結晶粒を含む組織であることが知られている。この鍛造品は、まず冷間鍛造により扁平状の変形結晶粒組織を形成し、これをT6処理して一部又は全部を回復結晶粒にすると共に、析出による強度上昇を図っている。
これに対し、本発明の恒温鍛造部品は、変形組織若しくは回復組織を有する扁平状結晶粒と、微細再結晶粒を瞬時にかつ同時に形成することにより、強度と靭性の両方の向上を図っている。これらの組織形成は動的析出によって形成される超微細析出物が扁平状結晶粒(変形結晶粒又は回復結晶粒)の回復あるいは再結晶を起こり難くさせ、本発明のような微細再結晶粒が形成されると考えられる。また、微細再結晶粒は強度上昇にも寄与していると考えられる。
A7075等の一般的な材料で十分な機械的強度を得ることができるため、機械的強度を増すために特別な金属を添加する必要がなく、リサイクル時にそれらを取り除く必要がないので、リサイクル性に優れる。
扁平状結晶粒、微細再結晶粒、超微細析出物については、請求項1で説明した通りであるので、説明を省略する。
例えば、従来のA7075のアルミニウム合金を冷間鍛造してT6処理したものは、平均粒径が10〜100μmの結晶粒を含む組織であることが知られている。この鍛造品は、まず冷間鍛造により扁平状の変形結晶粒組織を形成し、これをT6処理して一部又は全部を回復結晶粒にすると共に、析出による強度上昇を図っている。
これに対し、本発明の恒温鍛造部品は、変形組織若しくは回復組織を有する扁平状結晶粒と、微細再結晶粒を瞬時にかつ同時に形成することにより、強度と靭性の両方の向上を図っている。これらの組織形成は動的析出によって形成される超微細析出物が扁平状結晶粒(変形結晶粒又は回復結晶粒)の回復あるいは再結晶を起こり難くさせ、本発明のような微細再結晶粒が形成されると考えられる。また、微細再結晶粒は強度上昇にも寄与していると考えられる。
A7075等の一般的な材料で十分な機械的強度を得ることができるため、機械的強度を増すために特別な金属を添加する必要がなく、リサイクル時にそれらを取り除く必要がないので、リサイクル性に優れる。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の恒温鍛造部品であって、ビッカース硬さが
160以上である構成を有している。
この構成により、請求項3の作用、効果に加え、以下のような作用、効果を有する。
(1)ビッカース硬さが160以上であることにより、従来のA7075のアルミニウム合金の冷間鍛造+T6処理品の限界値であるビッカース硬さHv=142を超える高強度を実現することができ、低中炭素鋼鍛鋼品の代替品として軽量化が可能となり、汎用性に優れる。
(2)炭素鋼S35Cの鍛鋼品の強度仕様はビッカース硬さHv=155レベルにあるが、本発明の恒温鍛造部品はこの鍛鋼品と同等以上の硬さが得られるので、強度を向上させるために設計時に肉増しなどを行う必要がほとんどなく、軽量化を図ることができ、設計自在性、加工性に優れる。
160以上である構成を有している。
この構成により、請求項3の作用、効果に加え、以下のような作用、効果を有する。
(1)ビッカース硬さが160以上であることにより、従来のA7075のアルミニウム合金の冷間鍛造+T6処理品の限界値であるビッカース硬さHv=142を超える高強度を実現することができ、低中炭素鋼鍛鋼品の代替品として軽量化が可能となり、汎用性に優れる。
(2)炭素鋼S35Cの鍛鋼品の強度仕様はビッカース硬さHv=155レベルにあるが、本発明の恒温鍛造部品はこの鍛鋼品と同等以上の硬さが得られるので、強度を向上させるために設計時に肉増しなどを行う必要がほとんどなく、軽量化を図ることができ、設計自在性、加工性に優れる。
ここで、例えば、従来のA7075のアルミニウム合金を冷間鍛造してT6処理したものは、ビッカース硬さと伸びが負の相関を有するので、硬さを増すと脆くなり易く、耐衝撃性、耐久性に欠ける。
これに対して、本発明の恒温鍛造部品は、従来品と異なり、硬さの増加にも関わらず、伸びを大きくすることができるので、部品の硬さを増しても脆くなることがなく、耐久性、長寿命性に優れる。
これに対して、本発明の恒温鍛造部品は、従来品と異なり、硬さの増加にも関わらず、伸びを大きくすることができるので、部品の硬さを増しても脆くなることがなく、耐久性、長寿命性に優れる。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の恒温鍛造部品であって、前記結晶粒が、鍛造成形前の溶体化処理時の外形が鍛造後にも維持された粒状結晶粒を含む構成を有している。
この構成により、請求項1乃至4の内いずれか1項の作用、効果に加え、以下のような作用、効果を有する。
(1)結晶粒が、鍛造成形前の溶体化処理時の外形が維持された粒状結晶粒を含むことにより、鍛造成型により押し潰されて長く伸びた扁平状結晶粒の鍛造比が相対的に高くなる効果を生み出し、強度と靭性を備えた複合組織を形成することができ、従来にない耐久性、長寿命性に優れた恒温鍛造部品を実現できる。
この構成により、請求項1乃至4の内いずれか1項の作用、効果に加え、以下のような作用、効果を有する。
(1)結晶粒が、鍛造成形前の溶体化処理時の外形が維持された粒状結晶粒を含むことにより、鍛造成型により押し潰されて長く伸びた扁平状結晶粒の鍛造比が相対的に高くなる効果を生み出し、強度と靭性を備えた複合組織を形成することができ、従来にない耐久性、長寿命性に優れた恒温鍛造部品を実現できる。
ここで、粒状結晶粒は、変形し難い方向に原子が並んだ結晶粒であり、鍛造成形前の溶体化処理時の外形を維持したものである。鍛造成形前の外形を維持した粒状結晶粒が残存することにより、扁平状結晶粒は、より厳しい変形を受けて扁平状結晶粒の鍛造比が相対的に高くなって、強度化が図られる。
本発明の請求項6に記載の恒温鍛造部品の製造方法は、請求項1乃至5の内いずれか1項に記載の恒温鍛造部品の製造方法であって、溶体化された前記アルミニウム合金を温度調整された金型内に投入して150℃〜静的再結晶温度で鍛造成型する鍛造成型工程を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用、効果を有する。
(1)溶体化されたアルミニウム合金を温度調整された金型内に投入して150℃〜静的再結晶温度で鍛造成型する鍛造成型工程を有することにより、金型内部及び金型内の金属素材の温度を所定の温度に保持して製造条件を略一定に保つことができ、ばらつきの少ない高品質な恒温鍛造部品を製造することができ、品質の信頼性、高品質性に優れる。
(2)溶体化されたアルミニウム合金を温度調整された金型内に投入して150℃〜静的再結晶温度で鍛造成型する鍛造成型工程を有することにより、従来の冷間鍛造において、強度上昇のみに着目して加工硬化と析出硬化が別々に行われていたのに対し、本発明は恒温鍛造することにより加工硬化、析出硬化、結晶粒微細化硬化による強度の上昇だけでなく、靭性までも同時に向上させることができ、鍛造成型工程後に、別途、熱処理などを行うことなく、高強度、高靭性で高品質な恒温鍛造部品を製造することができ、しかも製品の最終形状に近い形状に成型することができるので、切削などの後加工が不要で、加工工数を大幅に低減することができると共に、材料歩留まりを向上させることができ、生産性、省資源性に優れる。
この構成により、以下のような作用、効果を有する。
(1)溶体化されたアルミニウム合金を温度調整された金型内に投入して150℃〜静的再結晶温度で鍛造成型する鍛造成型工程を有することにより、金型内部及び金型内の金属素材の温度を所定の温度に保持して製造条件を略一定に保つことができ、ばらつきの少ない高品質な恒温鍛造部品を製造することができ、品質の信頼性、高品質性に優れる。
(2)溶体化されたアルミニウム合金を温度調整された金型内に投入して150℃〜静的再結晶温度で鍛造成型する鍛造成型工程を有することにより、従来の冷間鍛造において、強度上昇のみに着目して加工硬化と析出硬化が別々に行われていたのに対し、本発明は恒温鍛造することにより加工硬化、析出硬化、結晶粒微細化硬化による強度の上昇だけでなく、靭性までも同時に向上させることができ、鍛造成型工程後に、別途、熱処理などを行うことなく、高強度、高靭性で高品質な恒温鍛造部品を製造することができ、しかも製品の最終形状に近い形状に成型することができるので、切削などの後加工が不要で、加工工数を大幅に低減することができると共に、材料歩留まりを向上させることができ、生産性、省資源性に優れる。
ここで、鍛造成型工程中は、金型の任意の位置で温度を測定監視することができるが、設定した測定位置での温度と、金型の内部の表面温度(金型内表面温度)との関係を予め求めておくことにより、金型の内部(内表面)温度を所定の温度に設定することができる。よって、金型の形状や温度などに応じて、適宜、温度の測定位置やその数を選択することができ、必ずしも金型の内部(内表面)温度を直接、測定する必要がなく、金型の外部(外表面)や金型の外表面から穿設した挿通孔の内部で熱電対などを用いて簡便かつ確実に金型の温度を測定することができる。
鍛造成型工程における加圧力は、製造する部品の形状、寸法等に応じて、適宜、選択することができるが、金型が加熱されていることにより、通常よりも加圧力を低く抑えることができ、加工速度を高速化することができる。また、その結果、金型への負担も軽減することができ、金型の長寿命化を図ることができる。
鍛造成型工程における加圧力は、製造する部品の形状、寸法等に応じて、適宜、選択することができるが、金型が加熱されていることにより、通常よりも加圧力を低く抑えることができ、加工速度を高速化することができる。また、その結果、金型への負担も軽減することができ、金型の長寿命化を図ることができる。
鍛造成型工程における金属素材の温度は、適宜、選択できるが、好ましくは120℃〜静的再結晶温度、より好ましくは150℃〜静的再結晶温度、さらに好ましくは150℃〜260℃である。鍛造成型工程における金属素材の温度が、150℃よりも低くなるにつれ、成型性が低下し易くなる傾向があり、260℃よりも高くなるにつれ、結晶粒の粒径が大きくなり、強度が低下し易くなる傾向がある。また、製品の大きさや形状などにもよるが、鍛造成型工程における金属素材の温度が、120℃よりも低くなると、物性の低下が著しくなって、複雑な形状を成型することが困難になり、静的再結晶温度より高くなると、組織が再配列して粒成長を伴い焼き鈍し状態になるため、いずれも好ましくない。尚、アルミニウム合金の静的再結晶温度はアルミニウム合金の種類や加工度などによって変化するが、およそ300℃前後であり、同じ合金でも加工度が高ければ静的再結晶温度が低くなる傾向がある。
尚、金型の温度に基づいて、鍛造成型工程における加工速度を調整するようにすれば、加工速度が速くなり過ぎて金属素材の温度が所定の温度よりも高くなることを防止でき、製造条件の均一性に優れる。
鍛造成型工程における加工速度は、金属素材の温度や製造する部品の形状、寸法等によっても異なるが、例えば成型する部品が300g以下で、金属素材の温度が120℃〜静的再結晶温度のときの加工速度は30mm/s〜150mm/sが好ましい。
鍛造成型工程における加工速度が30mm/sより遅くなるにつれ、量産性が低下する傾向があり、150mm/sより速くなるにつれ、金属素材の温度が上昇し易くなり、所定の温度を維持することが困難になって、品質にばらつきが発生し易くなる傾向があり、いずれも好ましくない。
鍛造成型工程における加工速度は、金属素材の温度や製造する部品の形状、寸法等によっても異なるが、例えば成型する部品が300g以下で、金属素材の温度が120℃〜静的再結晶温度のときの加工速度は30mm/s〜150mm/sが好ましい。
鍛造成型工程における加工速度が30mm/sより遅くなるにつれ、量産性が低下する傾向があり、150mm/sより速くなるにつれ、金属素材の温度が上昇し易くなり、所定の温度を維持することが困難になって、品質にばらつきが発生し易くなる傾向があり、いずれも好ましくない。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における恒温鍛造部品の製造方法について説明する。
まず、金型加熱工程により、下金型と上金型を加熱する。
下金型と上金型の加熱が開始されると、下金型及び上金型の内部の表面近側部の温度を測定監視し、測定される温度に基づいて金型の内部表面温度を所定の温度に収束させ維持するように、金型加熱工程における加熱温度を調整する。
金型は、製造する部品の形状、寸法等に応じて、80℃〜210℃に温度調整した。
下金型及び上金型の金型内部表面温度が所定の温度に収束したら、鍛造成型工程において、金属素材(Al−Cu系のアルミニウム合金)を金型内に投入し、下金型と上金型で挟持した金属素材を加圧して150℃〜静的再結晶温度で鍛造成型した。鍛造成型工程における金属素材の温度が、150℃よりも低くなると、成型性が低下し易くなり、静的再結晶温度よりも高くなると、組織が再配列して粒成長を伴い焼き鈍し状態になることがわかったためである。
尚、鍛造成型工程で金型内に金属素材を投入する前に、素材加熱工程において、予め溶体化された金属素材を120℃〜静的再結晶温度に加熱した。
一度溶体化させた金属素材を120℃〜静的再結晶温度に加熱し、温度調整された金型内に投入して150℃〜静的再結晶温度で恒温鍛造することにより、加工硬化、析出硬化、結晶粒微細化硬化による強度の上昇だけでなく、靭性までも同時に向上させることができ、高強度、高靭性で高品質な恒温鍛造部品を製造することができた。
尚、鍛造成型工程における加工速度は、金属素材の温度や製造する部品の形状、寸法等に応じて、適宜、選択することができる。特に、金属素材の温度に基づいて、鍛造成型工程における加工速度を調整することにより、鍛造成型工程での加工速度が速くなり過ぎて金属素材の温度が所定の温度よりも高くなることを防止でき、製造条件の均一性に優れる。
本発明の実施の形態1における恒温鍛造部品の製造方法について説明する。
まず、金型加熱工程により、下金型と上金型を加熱する。
下金型と上金型の加熱が開始されると、下金型及び上金型の内部の表面近側部の温度を測定監視し、測定される温度に基づいて金型の内部表面温度を所定の温度に収束させ維持するように、金型加熱工程における加熱温度を調整する。
金型は、製造する部品の形状、寸法等に応じて、80℃〜210℃に温度調整した。
下金型及び上金型の金型内部表面温度が所定の温度に収束したら、鍛造成型工程において、金属素材(Al−Cu系のアルミニウム合金)を金型内に投入し、下金型と上金型で挟持した金属素材を加圧して150℃〜静的再結晶温度で鍛造成型した。鍛造成型工程における金属素材の温度が、150℃よりも低くなると、成型性が低下し易くなり、静的再結晶温度よりも高くなると、組織が再配列して粒成長を伴い焼き鈍し状態になることがわかったためである。
尚、鍛造成型工程で金型内に金属素材を投入する前に、素材加熱工程において、予め溶体化された金属素材を120℃〜静的再結晶温度に加熱した。
一度溶体化させた金属素材を120℃〜静的再結晶温度に加熱し、温度調整された金型内に投入して150℃〜静的再結晶温度で恒温鍛造することにより、加工硬化、析出硬化、結晶粒微細化硬化による強度の上昇だけでなく、靭性までも同時に向上させることができ、高強度、高靭性で高品質な恒温鍛造部品を製造することができた。
尚、鍛造成型工程における加工速度は、金属素材の温度や製造する部品の形状、寸法等に応じて、適宜、選択することができる。特に、金属素材の温度に基づいて、鍛造成型工程における加工速度を調整することにより、鍛造成型工程での加工速度が速くなり過ぎて金属素材の温度が所定の温度よりも高くなることを防止でき、製造条件の均一性に優れる。
以上のように構成された実施の形態1における恒温鍛造部品の製造方法によれば、以下の作用が得られる。
(1)溶体化されたアルミニウム合金を温度調整された金型内に投入して150℃〜静的再結晶温度で鍛造成型する鍛造成型工程を有することにより、金型内部及び金型内の金属素材の温度を所定の温度に保持して製造条件を略一定に保つことができ、ばらつきの少ない高品質な恒温鍛造部品を製造することができ、品質の信頼性、高品質性に優れる。
(2)予め素材加熱工程で加熱された金属素材を温度調整された金型内に投入して鍛造成型する鍛造成型工程を有するので、金属素材が冷えることがなく、加工圧力を低減して高速加工することができ、量産性に優れる。
(3)溶体化されたアルミニウム合金を温度調整された金型内に投入して150℃〜静的再結晶温度で鍛造成型する鍛造成型工程を有することにより、従来の冷間鍛造において、強度上昇のみに着目して加工硬化と析出硬化が別々に行われていたのに対し、本発明は恒温鍛造することにより加工硬化、析出硬化、結晶粒微細化硬化による強度の上昇だけでなく、靭性までも同時に向上させることができ、鍛造成型工程後に、別途、熱処理などを行うことなく、高強度、高靭性で高品質な恒温鍛造部品を製造することができ、しかも製品の最終形状に近い形状に成型することができるので、切削などの後加工が不要で、加工工数を大幅に低減することができると共に、材料歩留まりを向上させることができ、生産性、省資源性に優れる。
(1)溶体化されたアルミニウム合金を温度調整された金型内に投入して150℃〜静的再結晶温度で鍛造成型する鍛造成型工程を有することにより、金型内部及び金型内の金属素材の温度を所定の温度に保持して製造条件を略一定に保つことができ、ばらつきの少ない高品質な恒温鍛造部品を製造することができ、品質の信頼性、高品質性に優れる。
(2)予め素材加熱工程で加熱された金属素材を温度調整された金型内に投入して鍛造成型する鍛造成型工程を有するので、金属素材が冷えることがなく、加工圧力を低減して高速加工することができ、量産性に優れる。
(3)溶体化されたアルミニウム合金を温度調整された金型内に投入して150℃〜静的再結晶温度で鍛造成型する鍛造成型工程を有することにより、従来の冷間鍛造において、強度上昇のみに着目して加工硬化と析出硬化が別々に行われていたのに対し、本発明は恒温鍛造することにより加工硬化、析出硬化、結晶粒微細化硬化による強度の上昇だけでなく、靭性までも同時に向上させることができ、鍛造成型工程後に、別途、熱処理などを行うことなく、高強度、高靭性で高品質な恒温鍛造部品を製造することができ、しかも製品の最終形状に近い形状に成型することができるので、切削などの後加工が不要で、加工工数を大幅に低減することができると共に、材料歩留まりを向上させることができ、生産性、省資源性に優れる。
以上のように構成された実施の形態1における恒温鍛造部品の製造方法によって製造される恒温鍛造部品によれば、以下の作用が得られる。
(1)結晶粒の少なくとも一部に鍛造成形により押し潰されて長く伸びた扁平状結晶粒が形成され、(a)前記扁平状結晶粒の変形組織若しくは回復組織の領域又は(b)前記結晶粒の粒界領域の少なくともいずれか一方の領域に平均粒径が10nm〜1000nmの微細再結晶粒が点在する複合組織を有することにより、扁平状結晶粒の変形組織若しくは回復組織の領域が主に強度の上昇に寄与し、微細再結晶粒が強度と靭性の向上に寄与すると考えられる。これにより、従来にない高強度かつ高靭性を実現できる高品質な恒温鍛造部品を提供できる。
(2)(a)扁平状結晶粒の変形組織若しくは回復組織の領域又は(b)結晶粒の粒界領域の少なくともいずれか一方の領域に平均粒径が10nm〜1000nmの微細再結晶粒が点在することにより、変形や応力が集中し易い領域で、破壊の起点となる領域に強度と靭性の両方を兼ね備えた組織を形成することができ、特に、結晶粒界や粒界三重点に沿って形成される微細再結晶粒は、塑性変形することにより破壊の起点となる粒界の応力集中を緩和して、製品の靭性を大きく向上させることができ、高靭性で耐久性、長寿命性に優れた恒温鍛造部品を実現できる。
(3)引張り強さが500MPa以上で、伸びが10%以上であることにより、高強度でありながら、高靭性を実現することができ、耐久性、長寿命性に優れる。
(4)引張り強さが500MPa以上で、伸びが10%以上であり、JIS H4040 A2014FD−T6の規格値(引張り強さ451MPa以上、伸び8%以上)を大きく上回っているので、自動車用部品や航空機部品等に好適に用いることができ、部品の軽量化、燃費の向上を図ることができる。
(5)ビッカース硬さが160以上であることにより、従来のA2014のアルミニウム合金の冷間鍛造+T6処理品の限界値であるビッカース硬さHv=131を超える高強度を実現することができ、低中炭素鋼鍛鋼品の代替品として軽量化が可能となり、汎用性に優れる。
(6)炭素鋼S35Cの鍛鋼品の強度仕様はビッカース硬さHv=155レベルにあるが、本発明の恒温鍛造部品はこの鍛鋼品と同等以上の硬さが得られるので、強度を向上させるために設計時に肉増しなどを行う必要がほとんどなく、軽量化を図ることができ、設計自在性、加工性に優れる。
(7)結晶粒が、鍛造成形前の溶体化処理時の外形が維持された粒状結晶粒を含むことにより、鍛造成型により押し潰されて長く伸びた扁平状結晶粒の鍛造比が相対的に高くなる効果を生み出し、強度と靭性を備えた複合組織を形成することができ、従来にない耐久性、長寿命性に優れた恒温鍛造部品を実現できる。
(1)結晶粒の少なくとも一部に鍛造成形により押し潰されて長く伸びた扁平状結晶粒が形成され、(a)前記扁平状結晶粒の変形組織若しくは回復組織の領域又は(b)前記結晶粒の粒界領域の少なくともいずれか一方の領域に平均粒径が10nm〜1000nmの微細再結晶粒が点在する複合組織を有することにより、扁平状結晶粒の変形組織若しくは回復組織の領域が主に強度の上昇に寄与し、微細再結晶粒が強度と靭性の向上に寄与すると考えられる。これにより、従来にない高強度かつ高靭性を実現できる高品質な恒温鍛造部品を提供できる。
(2)(a)扁平状結晶粒の変形組織若しくは回復組織の領域又は(b)結晶粒の粒界領域の少なくともいずれか一方の領域に平均粒径が10nm〜1000nmの微細再結晶粒が点在することにより、変形や応力が集中し易い領域で、破壊の起点となる領域に強度と靭性の両方を兼ね備えた組織を形成することができ、特に、結晶粒界や粒界三重点に沿って形成される微細再結晶粒は、塑性変形することにより破壊の起点となる粒界の応力集中を緩和して、製品の靭性を大きく向上させることができ、高靭性で耐久性、長寿命性に優れた恒温鍛造部品を実現できる。
(3)引張り強さが500MPa以上で、伸びが10%以上であることにより、高強度でありながら、高靭性を実現することができ、耐久性、長寿命性に優れる。
(4)引張り強さが500MPa以上で、伸びが10%以上であり、JIS H4040 A2014FD−T6の規格値(引張り強さ451MPa以上、伸び8%以上)を大きく上回っているので、自動車用部品や航空機部品等に好適に用いることができ、部品の軽量化、燃費の向上を図ることができる。
(5)ビッカース硬さが160以上であることにより、従来のA2014のアルミニウム合金の冷間鍛造+T6処理品の限界値であるビッカース硬さHv=131を超える高強度を実現することができ、低中炭素鋼鍛鋼品の代替品として軽量化が可能となり、汎用性に優れる。
(6)炭素鋼S35Cの鍛鋼品の強度仕様はビッカース硬さHv=155レベルにあるが、本発明の恒温鍛造部品はこの鍛鋼品と同等以上の硬さが得られるので、強度を向上させるために設計時に肉増しなどを行う必要がほとんどなく、軽量化を図ることができ、設計自在性、加工性に優れる。
(7)結晶粒が、鍛造成形前の溶体化処理時の外形が維持された粒状結晶粒を含むことにより、鍛造成型により押し潰されて長く伸びた扁平状結晶粒の鍛造比が相対的に高くなる効果を生み出し、強度と靭性を備えた複合組織を形成することができ、従来にない耐久性、長寿命性に優れた恒温鍛造部品を実現できる。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における恒温鍛造部品の製造方法について説明する。
実施の形態2における恒温鍛造部品の製造方法が実施の形態1と異なる点は、金属素材をAl−Zn−Mg系のアルミニウム合金にした点である。
以上のように構成された実施の形態2における恒温鍛造部品の製造方法によれば、実施の形態1と同様の作用が得られる。
本発明の実施の形態2における恒温鍛造部品の製造方法について説明する。
実施の形態2における恒温鍛造部品の製造方法が実施の形態1と異なる点は、金属素材をAl−Zn−Mg系のアルミニウム合金にした点である。
以上のように構成された実施の形態2における恒温鍛造部品の製造方法によれば、実施の形態1と同様の作用が得られる。
以上のように構成された実施の形態1における恒温鍛造部品の製造方法によって製造される恒温鍛造部品によれば、実施の形態1の(1)、(2)、(6)、(7)と同様の作用に加え、以下の作用が得られる。
(1)引張り強さが560MPa以上で、伸びが12%以上であることにより、高強度でありながら、高靭性を実現することができ、耐久性、長寿命性に優れる。
(2)引張り強さが560MPa以上で、伸びが12%以上であり、JIS H4040A7075の規格値(引張り強さ510MPa以上、伸び10%以上)を大きく上回っているので、自動車用部品や航空機部品等に好適に用いることができ、部品の軽量化、燃費の向上を図ることができる。
(3)ビッカース硬さが160以上であることにより、従来のA7075のアルミニウム合金の冷間鍛造+T6処理品の限界値であるビッカース硬さHv=142を超える高強度を実現することができ、低中炭素鋼鍛鋼品の代替品として軽量化が可能となり、汎用性に優れる。
(1)引張り強さが560MPa以上で、伸びが12%以上であることにより、高強度でありながら、高靭性を実現することができ、耐久性、長寿命性に優れる。
(2)引張り強さが560MPa以上で、伸びが12%以上であり、JIS H4040A7075の規格値(引張り強さ510MPa以上、伸び10%以上)を大きく上回っているので、自動車用部品や航空機部品等に好適に用いることができ、部品の軽量化、燃費の向上を図ることができる。
(3)ビッカース硬さが160以上であることにより、従来のA7075のアルミニウム合金の冷間鍛造+T6処理品の限界値であるビッカース硬さHv=142を超える高強度を実現することができ、低中炭素鋼鍛鋼品の代替品として軽量化が可能となり、汎用性に優れる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施の形態1,2で説明した恒温鍛造部品の製造方法により、恒温鍛造部品の製造を行った。
(実施例1)
金属素材としては、アルミニウム合金(A2014−T6材)を溶体化処理(510℃で2時間加熱保持後水冷)したものを温度調整された金型内に投入し、金属素材の温度を200℃として、相当歪み1.0、加工速度(30)mm/sで鍛造成型工程を行った。
実施の形態1,2で説明した恒温鍛造部品の製造方法により、恒温鍛造部品の製造を行った。
(実施例1)
金属素材としては、アルミニウム合金(A2014−T6材)を溶体化処理(510℃で2時間加熱保持後水冷)したものを温度調整された金型内に投入し、金属素材の温度を200℃として、相当歪み1.0、加工速度(30)mm/sで鍛造成型工程を行った。
(実施例2)
金属素材をA7075−T6材とし、溶体化処理の温度を490℃とした以外は、実施例1と同様にして成型した。
金属素材をA7075−T6材とし、溶体化処理の温度を490℃とした以外は、実施例1と同様にして成型した。
以上のようにして得られた実施例1及び2の恒温鍛造部品から試験片を採取した。引張試験の試験片はJIS Z2201の14A号試験片に準拠し、初期平行部はφ10mm×長さ60mm、標点距離は50mmとした。JIS Z 2241「金属材料引張試験方法」に準拠して、引張強さ、伸びを測定した。測定には島津製作所製の万能試験機UH−F500kNXを使用した。また、ミツトヨ製の微小硬さ試験機HM−221を用いて試験力100gfでビッカース硬さを測定した。
その結果を表1に示す。
表1に示した実施例1及び2の引張強さ及び伸びは、それぞれ従来の鍛造加工品におけるJIS H4040 A2014FD−T6の規格値(引張り強さ451MPa以上、伸び8%以上)及びA7075FD−T6の規格値(引張り強さ510MPa以上、伸び10%以上)を上回っている。
これにより、従来の特性を大きく改善することができた。
また、表1に示した実施例1及び2のビッカース硬さは、それぞれ従来のA2014のアルミニウム合金の冷間鍛造+T6処理品の限界値であるビッカース硬さHv=131及びA7075のアルミニウム合金の冷間鍛造+T6処理品の限界値であるビッカース硬さHv=142を上回っている。
実施例1及び2は、従来品(規格値)に比べ、硬さが増加しているにも関わらず、伸びが大きくなっており、部品の硬さを増しても脆くなることがなく、耐久性、長寿命性に優れるものと言える。
これらの結果から、鍛造成型工程における金属素材の温度を150℃〜静的再結晶温度とすることにより、加工硬化、析出硬化、結晶粒微細化硬化による強度の上昇だけでなく、靭性までも同時に向上させることができ、高強度、高靭性で高品質な恒温鍛造部品を製造できることがわかった。
その結果を表1に示す。
これにより、従来の特性を大きく改善することができた。
また、表1に示した実施例1及び2のビッカース硬さは、それぞれ従来のA2014のアルミニウム合金の冷間鍛造+T6処理品の限界値であるビッカース硬さHv=131及びA7075のアルミニウム合金の冷間鍛造+T6処理品の限界値であるビッカース硬さHv=142を上回っている。
実施例1及び2は、従来品(規格値)に比べ、硬さが増加しているにも関わらず、伸びが大きくなっており、部品の硬さを増しても脆くなることがなく、耐久性、長寿命性に優れるものと言える。
これらの結果から、鍛造成型工程における金属素材の温度を150℃〜静的再結晶温度とすることにより、加工硬化、析出硬化、結晶粒微細化硬化による強度の上昇だけでなく、靭性までも同時に向上させることができ、高強度、高靭性で高品質な恒温鍛造部品を製造できることがわかった。
図1は実施例1の恒温鍛造部品の組織を示す模式図であり、図2は実施例2の恒温鍛造部品の組織を示す模式図であり、図3は実施例1の恒温鍛造部品の粒界三重点近傍(図1のA部)の組織を示す要部拡大模式図であり、図4は実施例2の恒温鍛造部品の粒界三重点近傍(図2のB部)の組織を示す要部拡大模式図である。
図1及び図2に示したように、実施例1及び2の恒温鍛造部品の組織中には、鍛造成形により鍛造方向(上下方向)に押し潰されて、鍛造方向と垂直方向(水平方向)に長く伸びた扁平状結晶粒aが存在している。扁平状結晶粒a内には、多くの場合、幅10μm以下の変形帯が形成されたものが存在している。押し潰された扁平状結晶粒a内の白い帯状部分bは見かけ上、再結晶していない変形組織または回復組織であり、それと隣り合わせの変形帯cは再結晶し微細再結晶組織が形成されている。また、鍛造成形前の溶体化処理時の外形が鍛造後にも維持された粒状結晶粒dも見られ、その母相内には、変形帯はほとんど観察されず、所々に微細再結晶粒e1が点在する。
さらに、図3及び図4に示したように、粒界三重点を中心に粒界に沿って10nm〜1000nmの微細再結晶粒e2が連なる組織が存在する。また、扁平状結晶粒a内の変形帯cには10nm〜1000nmの微細再結晶粒e3が連なって存在する。尚、鍛造前の外形を維持した粒状結晶粒d内にも前述のようにわずかであるが、10nm〜1000nmの微細再結晶粒e1が点在する。
このように、実施例1及び2の恒温鍛造部品の組織は、基本的には強変形結晶粒又は回復結晶粒(変形組織若しくは回復組織の領域を有する変形帯b)、変形帯から生成した微細再結晶粒帯c及び粒界三重点や結晶粒界に沿って存在する微細結晶粒e2から構成されている。強変形結晶粒や回復結晶粒は主に強度の向上に寄与し、微細再結晶粒は強度の向上のみならず靭性の向上にも寄与している。
図1及び図2に示したように、実施例1及び2の恒温鍛造部品の組織中には、鍛造成形により鍛造方向(上下方向)に押し潰されて、鍛造方向と垂直方向(水平方向)に長く伸びた扁平状結晶粒aが存在している。扁平状結晶粒a内には、多くの場合、幅10μm以下の変形帯が形成されたものが存在している。押し潰された扁平状結晶粒a内の白い帯状部分bは見かけ上、再結晶していない変形組織または回復組織であり、それと隣り合わせの変形帯cは再結晶し微細再結晶組織が形成されている。また、鍛造成形前の溶体化処理時の外形が鍛造後にも維持された粒状結晶粒dも見られ、その母相内には、変形帯はほとんど観察されず、所々に微細再結晶粒e1が点在する。
さらに、図3及び図4に示したように、粒界三重点を中心に粒界に沿って10nm〜1000nmの微細再結晶粒e2が連なる組織が存在する。また、扁平状結晶粒a内の変形帯cには10nm〜1000nmの微細再結晶粒e3が連なって存在する。尚、鍛造前の外形を維持した粒状結晶粒d内にも前述のようにわずかであるが、10nm〜1000nmの微細再結晶粒e1が点在する。
このように、実施例1及び2の恒温鍛造部品の組織は、基本的には強変形結晶粒又は回復結晶粒(変形組織若しくは回復組織の領域を有する変形帯b)、変形帯から生成した微細再結晶粒帯c及び粒界三重点や結晶粒界に沿って存在する微細結晶粒e2から構成されている。強変形結晶粒や回復結晶粒は主に強度の向上に寄与し、微細再結晶粒は強度の向上のみならず靭性の向上にも寄与している。
以上のように、本実施例によれば、従来のような鍛造加工後の熱処理を行うことなく、それを超える機械的強度が得られることがわかった。また、従来の鍛造成形品では、強さとしなやかさを兼ね備えることは困難であったが、本実施例によれば、極めて優れた強さとしなやかさを有する恒温鍛造部品を実現できることがわかった。
これらの結果は、模式図に示したように、強度を受け持つ変形結晶粒又は回復結晶粒と、強度及び靭性を受け持つ微細結晶粒を形成せしめたことによるものと考えられる。
尚、実施例1及び2では、それぞれJIS規格のA2014及びA7075を用いたが、A2014と同様の2000系のAl−Cu系やA7075と同様の7000系のAl−Zn−Mg系のアルミニウム合金であれば、同様の組織を形成することができ、強度及び靭性を向上させることができるものと思われる。
これらの結果は、模式図に示したように、強度を受け持つ変形結晶粒又は回復結晶粒と、強度及び靭性を受け持つ微細結晶粒を形成せしめたことによるものと考えられる。
尚、実施例1及び2では、それぞれJIS規格のA2014及びA7075を用いたが、A2014と同様の2000系のAl−Cu系やA7075と同様の7000系のAl−Zn−Mg系のアルミニウム合金であれば、同様の組織を形成することができ、強度及び靭性を向上させることができるものと思われる。
本発明は、少なくとも一部に形成された扁平状結晶粒と微細再結晶粒が点在する複合組織を有することにより、アルミニウム合金製部品でありながら、従来の鋼製部品と同等以上の高強度、高靭性を実現できる高品質な恒温鍛造部品の提供、及び結晶粒を微細化することにより、高い強度と靭性を併せ持つ高品質な部品を高速加工することができる量産性に優れた恒温鍛造部品の製造方法の提供を行うことにより、アルミニウム合金製の恒温鍛造部品を高品質で安定供給することができ、自動車、航空機、電力機器、住宅関連設備などの各種金属製部品の高品質化、軽量化に貢献することができる。
Claims (6)
- Al−Cu系のアルミニウム合金を恒温鍛造して製造される恒温鍛造部品であって、
結晶粒の少なくとも一部に鍛造成形により押し潰されて長く伸びた扁平状結晶粒が形成され、(a)前記扁平状結晶粒の変形組織若しくは回復組織の領域又は(b)前記結晶粒の粒界領域の少なくともいずれか一方の領域に平均粒径が10nm〜1000nmの微細再結晶粒が点在する複合組織を有し、
引張り強さが500MPa以上で、伸びが10%以上であることを特徴とする恒温鍛造部品。 - ビッカース硬さが160以上であることを特徴とする請求項1に記載の恒温鍛造部品。
- Al−Zn−Mg系のアルミニウム合金を恒温鍛造して製造される恒温鍛造部品であって、
結晶粒の少なくとも一部に鍛造成形により押し潰されて長く伸びた扁平状結晶粒が形成され、(a)前記扁平状結晶粒の変形組織若しくは回復組織の領域又は(b)前記結晶粒の粒界領域の少なくともいずれか一方の領域に平均粒径が10nm〜1000nmの微細再結晶粒が点在する複合組織を有し、
引張り強さが560MPa以上で、伸びが12%以上であることを特徴とする恒温鍛造部品。 - ビッカース硬さが160以上であることを特徴とする請求項3に記載の恒温鍛造部品。
- 前記結晶粒が、鍛造成形前の溶体化処理時の外形が鍛造後にも維持された粒状結晶粒を含むことを特徴とする請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の恒温鍛造部品。
- 請求項1乃至5の内いずれか1項に記載の恒温鍛造部品の製造方法であって、
溶体化された前記アルミニウム合金を温度調整された金型内に投入して150℃〜静的再結晶温度で鍛造成型する鍛造成型工程を備えたことを特徴とする恒温鍛造部品の製造方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2015094447A JP2016209895A (ja) | 2015-05-01 | 2015-05-01 | 恒温鍛造部品及び恒温鍛造部品の製造方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN107866511A (zh) * | 2017-11-09 | 2018-04-03 | 中车青岛四方机车车辆股份有限公司 | 一种碳纳米管增强铝基复合材料的锻造成型方法 |
CN111398281A (zh) * | 2020-04-20 | 2020-07-10 | 西南大学 | 一种判断铝镁合金热轧厚板最低强度区域的方法 |
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2015
- 2015-05-01 JP JP2015094447A patent/JP2016209895A/ja active Pending
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