JP5688212B2 - 液体墨の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、煤粒子が分散媒中に分散されてなる液体墨の製造方法に関する。
従来、毛筆を用いて書や書画を書く際には、硯の上で固形墨が水を用いて磨りおろされた磨墨液が用いられている。該磨墨液は、固形墨を構成していた煤や膠が水中にコロイド状に分散したものであり、固形墨を磨りおろす際の条件(具体的には、水量、時間、力や速さ、硯の種類等)によってその液質(粘性、固形分の割合、煤粒子の粒度分布)が微妙に異なるものとなる。これにより、書や書画を書く際の筆記感、書かれた書や書画の滲み具合や掠れ具合、墨色が磨墨液毎に異なるものとなるため、書き手の技術と磨墨液の性状によって、書かれた書や書画の表現が多彩なものとなり、芸術的な価値を有する書や書画の制作が可能となっている。特に、煤粒子の粒度分布は、書の滲み具合や墨色に影響を与えるものであり、固形墨を硯の上で磨りおろすことで得られる煤粒子の粒度分布によって、適度な滲み具合や墨色を表現することが可能となっている。
ところで、近年、煤や膠に替わって、カーボンブラックや合成樹脂を水中に分散させて製造された書道用液体墨(以下、書道用液体墨と記す)が知られている。該書道用液体墨は、固形墨を磨る手間がなく、簡便に使用することが可能であると共に、磨墨液よりも長期間保存することが可能であるため、学校教育における書道や書や書画を書く際の練習用として広く用いられている。
一方、上記練習用の書道用液体墨とは別に、芸術的な作品を制作する際に用いられる作品制作用の液体墨も知られている。該作品制作用の液体墨は、煤と膠とを混練してペースト状にしたものを平行した状態で接触するように配置された複数の円筒状のロール間に供給し、ロールの回転による剪断力によって煤粒子を粉砕した後、水中に分散させることで得られるものである。
また、固形墨から作製された液体墨も知られている。該液体墨は、複数の固形墨を容器内で水中に浸漬して撹拌し、固形墨同士の接触や、固形墨と容器内面との接触によって、固形墨が磨りおろされて作製されるものである(特許文献1参照)。
特開2003−238877号公報
しかしながら、上記のような書道用液体墨は、水中にカーボンブラックを分散させて製造されるため、その粒径は、所定の範囲(0.05〜0.5μm程度)となるように構成されており、磨墨液とは異なる粒度分布となっている。また、作品制作用の液体墨は、煤粒子がロール間の剪断力によって粉砕されているため、書道用液体墨と同様に磨墨液とは異なる粒度分布(0.1〜0.7μm程度)となっている。このように、書道用液体墨や作品制作用の液体墨は、磨墨液に比べて、特に、粗大粒子(例えば、3μmを超える粒子)が含まれていないことにより、良好な滲み具合や墨色を表現することができず、芸術的な価値を有する書や書画を制作することが困難となる場合がある。
また、前記作品制作用の液体墨は、液状のまま市場に提供されるため、煤粒子の分散状態を安定して維持させる目的や、低温下における流動性を確保する目的から、塩化カルシウム等の塩類が添加される場合もある。このため、作品制作用の液体墨といえども磨墨液とは異なる性状のものとなるため、磨墨液と同様の筆記感で磨墨液と同様の墨色の書や書画を制作することが困難となる場合がある。
また、上記のように、固形墨を水中に浸漬して撹拌する方法では、固形墨が磨りおろされるに従って、その大きさが小さくなるため、固形墨同士の接触や、容器内面との接触の頻度が減少することとなる。このため、固形墨の全量を磨りおろすことができず、残渣が残ってしまう場合があり、固形墨を無駄なく使用し、歩留まりよく液体墨を作製することが困難となる。また、攪拌だけでは所望する粒度分布を得ることはできない。
そこで、本発明は、固形墨を硯の上で磨りおろした磨墨液と同様に、良好な滲み具合や墨色を表現することが可能な液体墨を製造することができると共に、原料として固形墨を用いて歩留まりよく液体墨を製造することができる液体墨の製造方法を提供することを課題とする。
本発明にかかる液体墨の製造方法は、固形墨を構成する煤粒子が分散媒中に分散されてなる液体墨の製造方法であって、前記分散媒で膨潤させた固形墨を分散媒中で粉砕して煤粒子を分散媒中に分散させる分散工程と、前記分散媒中の煤粒子を粉砕して体積基準で0.3μm未満の粒径の煤粒子が3乃至15%となり3μmを超える粒径の煤粒子が1乃至10%となるように煤粒子の粒度分布を調整して分散媒中に分散させる粒度調整工程とを備えることを特徴とする。
かかる構成の液体墨の製造方法によれば、分散媒で膨潤させた固形墨を分散媒中で粉砕して煤粒子を分散媒中に分散させる分散工程と、前記分散媒中の煤粒子を粉砕し所定の粒度分布に調整して分散媒中に分散させる粒度調整工程を備えることで、固形墨を硯の上で磨りおろした際に得られる磨墨液と同様に良好な滲み具合や墨色を表現することができる液体墨を得ることができる。また、固形墨を原料として用いて歩留まりよく液体墨を製造することができる。
具体的には、一般的に、固形墨は、煤粒子同士が膠を介して固められたものであるため、硯の上で水(分散媒)を用いて磨りおろすことで、水によって膨潤した部分の膠が軟化し、硯に擦れて煤粒子同士が分離することとなる。そして、固形墨と硯との間に挟まれた煤粒子が粉砕されることによってより細かな煤粒子が形成される。これにより、磨墨液における煤粒子は、所定の粒度分布を有することとなる。
一方、本願発明のように、分散媒で膨潤させた固形墨は、膠が軟化した状態、即ち、煤粒子同士が分離しやすい状態となっている。そして、かかる状態の固形墨を分散工程によって分散媒中で粉砕して煤粒子同士を分離させると共に分散媒中に分散させることで、分散媒中に煤粒子を効果的に分散させることができる。そして、粒度調整工程によって分散媒中の煤粒子を更に粉砕して所定の粒度分布に調整することで、磨墨液における煤粒子の粒度分布の態様に近づけることができる。これにより、得られた液体墨は、磨墨液と同等の性状を有することとなり、書や書画を書いた際に磨墨液と同様に良好な滲み具合や墨色を表現することができる。なお、「煤粒子の粒度分布」とは、煤粒子の粒径毎の体積基準の比率のことをいうものである。また、「滲み」とは、液体墨を用いて書道半紙等に書いた文字の輪郭に形成されるものであり、書かれた文字の筆跡部分よりも色合いが薄くなった領域のことをいう。また、「墨色」とは、書かれた書や書画に表されたときの黒さ(主に黒味・青味・赤味)や濃淡のことを言い、煤粒子の粒度分布によって異なるものである。
更に、分散工程において固形墨を粉砕して用いることができるため、固形墨の全量を液体墨の原料として使用することができ、残渣を残すことなく歩留まりよく液体墨を製造することができる。
また、本発明によれば、前記分散工程によって分散媒中に分散された煤粒子の粒度分布は、体積基準で、0.3μm未満の粒径の煤粒子が1乃至10%であると共に、3μmを超える粒径の煤粒子が3乃至15%であることが好ましい。
かかる構成によれば、分散工程によって煤粒子の粒度分布が上記のように調整されることで、粒度調整工程における粒度の調整を効率的に行うことができる。具体的には、粒度調整工程による粒度分布に近い粒度分布となるように分散工程において粒度分布を調整することで、粒度調整工程の粒度の調整が容易になり、効率的に粒度の調整を行うことができる。
また、本発明によれば、膨潤させる前の固形墨を粗粉砕する粗粉砕工程と、粗粉砕された固形墨を分散媒中に浸漬して膨潤させる膨潤工程とを更に備えることが好ましい。
かかる構成によれば、膨潤させる前の固形墨を粗粉砕する粗粉砕工程を備えることで、固形墨の表面積を増加させることができると共に、粗粉砕された固形墨の各片が膨潤工程において膨潤するため、固形墨全体を均一、且つ、迅速に膨潤させることができ、膨潤時間を短縮することができる。
また、本発明によれば、前記固形墨が所定形状の固形墨を製造する際に発生する端材を含むことが好ましい。
かかる構成によれば、所定形状の固形墨を製造する際に発生する端材(例えば、削り滓や不良品)を含むことで、端材を廃棄することなく液体墨の原料として利用することができるため、固形墨を無駄なく使用することができ、液体墨の製造コストを削減することができると共に、環境への影響を低減することができる。
また、本発明によれば、塩類が含まれていない固形墨と塩類を含まない分散媒とを用いることが好ましい。かかる構成によれば、塩類が含まれていない固形墨と分散媒とを用いることで、得られた液体墨中に塩化カルシウム等の塩類が含まれないため、書や書画を書いた際の筆記感が塩類を含む液体墨よりも良好なものとなる。
以上のように、本発明によれば、固形墨を硯の上で磨りおろした磨墨液と同様に、良好な滲み具合や墨色を表現することが可能な液体墨を製造することができると共に、原料として固形墨を用いて歩留まりよく液体墨を製造することができる。
本実施形態にかかる各工程の流れを示した概略図。 本発明にかかる実施例及び比較例の試験結果を示した図。
以下、本発明の実施形態について図1を参照しながら説明する。
本実施形態にかかる液体墨の製造方法(以下、本製造方法と記す)は、分散媒中に煤粒子aが分散されてなる液体墨Aを製造する方法である。前記煤粒子aは、煤が膠を介して固められた固形墨A1が粉砕されることによって得られるものであり、所定の粒度分布となるように構成されている。
前記固形墨A1としては、特に限定されるものではないが、一般的に硯を用いて磨りおろされて使用されるものを用いることができる。具体的には、所定形状(例えば、一丁型等の大きさや、所定サイズの矩形状)に成形された固形墨や、かかる固形墨が粗粉砕されたもの(具体的には、約5mm角程度の大きさに粗粉砕されたもの)、前記所定形状の固形墨を製造する際に発生する端材(例えば、削り滓や不良品)、又は、これらを混合したもの等を用いることができる。さらに、固形墨A1は、塩化カルシウム等の塩類を含有していないものとする。また、前記分散媒としては、水や水に防腐剤等の添加剤を添加した水溶液等を用いることができる。さらに、分散媒としては、塩化カルシウム等の塩類を含有しないものを用いることができる。
本製造方法は、分散媒で膨潤させた固形墨A1を粉砕し、煤粒子aを分散媒中に分散させる分散工程S3と、分散媒中の煤粒子aの粒度を調整する粒度調整工程S4とを有するものである。本実施形態においては、前記分散工程S3の前に、膨潤させる前の固形墨A1を所定の大きさに粗粉砕する粗粉砕工程S1と、粉砕された固形墨A1を分散煤中で膨潤させる膨潤工程S2とが備えられている。前記粗粉砕工程S1は、所定形状(例えば、一丁型等)の固形墨等を粉砕機を用いて5mm角程度の大きさに粗粉砕することで後の膨潤工程S2が効率的に行われるように構成されている。
前記膨潤工程S2は、固形墨A1を分散媒(具体的には、水)中に浸漬し、その状態で所定時間放置することによって行われる。固形墨A1を浸漬する水の質量としては、特に限定されるものではないが、製造される液体墨Aの濃さ(煤粒子aの濃度)や作成する全質量に応じて適宜選択されるものである。具体的には、固形墨A1を浸漬する際に使用する水の質量としては、固形墨A1に吸収される水の質量に、所望する液体墨Aの質量から固形墨A1の質量と固形墨A1に吸収される水の質量を差し引いた質量を加えた水の質量とすることが好ましい。即ち、固形墨A1を浸漬する際に使用する水の質量は、所望する液体墨Aの質量に相当する水の質量とすることが好ましい。また、固形墨A1の全質量に対して2〜3倍の質量となる水量とすることが好ましい。なお、固形墨A1を水中に浸漬している間や、液体墨Aとして流通される間の腐敗を防止するために、分散媒としての水に防腐剤を添加することが好ましい。さらに、必要に応じて香料を添加してもよい。
また、固形墨A1を浸漬させる時間としては、固形墨A1の内部まで十分に膨潤し、膠が十分に軟化した状態となるまで浸漬することが好ましい。具体的には、粗粉砕した固形墨A1を用いた場合には、室温で10〜20日間程度の浸漬時間とすることが好ましい。
前記分散工程S3は、膨潤した固形墨A1を粉砕すると共に、煤粒子aを水中に分散させる工程である。具体的には、分散工程S3は、膨潤した固形墨A1を水中で粉砕することによって、煤粒子a同士を分離させ、該煤粒子aを膠と共に水中に均一に分散させるように構成されている。なお、水中に分散した煤粒子aは、表面に膠が付着した状態となっている。
また、分散工程S3は、水中に分散した煤粒子aの粒度分布が所定の粒度分布となるように構成されている。具体的には、固形墨A1が粉砕される際に煤粒子aも粉砕されることによって、水中に分散した煤粒子aの粒度分布が所定の粒度分布となるように構成されている。分散工程S3における粒度分布としては、特に限定されるものではないが、体積基準で、0.3μm未満の粒径の煤粒子aが2乃至10%、3μmを超える粒径の煤粒子aが5乃至15%であることが好ましく、0.3μm未満の粒径の煤粒子aが2乃至5%、0.3μm以上3μm以下の粒径の煤粒子aが80乃至90%、3μmを超える粒径の煤粒子aが5乃至7%であることがより好ましい。なお、煤粒子aの粒度分布とは、煤粒子aの粒径毎の体積基準の粒度分布を意味する。
また、分散工程S3は、所望する粒度分布となるまで、複数回実施されてもよい。例えば、1回目の分散工程S3で所望する粒度分布よりも平均粒径が大きい粒度分布とし、2回目以降の分散工程S3で所望する粒度分布となるように段階的に分散工程S3を行ってもよい。
膨潤した固形墨A1を水中で粉砕して分散させる方法としては、特に限定されるものではないが、コロイドミルを用いる方法を採用することができる。該コロイドミルは、回転可能に構成されたローターと該ローターの周囲を包囲する本体との間の間隙に膨潤した固形墨A1を水と共に供給し、ローターを回転させることによって生じるせん断力で固形墨A1を粉砕して煤粒子a同士を分離させると共に、煤粒子aを粉砕して水中に分散させるように構成されている。
前記粒度調整工程S4は、分散工程S3によって水中に分散された煤粒子a(以下、分散煤粒子aと記す)の粒度分布が所定の粒度分布となるように調整する工程である。具体的には、粒度調整工程S4は、分散煤粒子aを粉砕することによって、微細な粒径(具体的には、0.5μm程度以下の粒径)の割合を増加させ、分散煤粒子aの粒度分布の態様が磨墨液における煤粒子の粒度分布の態様に近似するように構成されている。
粒度調整工程S4によって得られる分散煤粒子aの粒度分布としては、特に限定されるものではないが、体積基準で、0.3μm未満の粒径の分散煤粒子aが5乃至10%、3μmを超える粒径の分散煤粒子aが2乃至10%であることが好ましく、0.3μm未満の粒径の分散煤粒子aが5乃至10%、0.3μm以上3μm以下の粒径の分散煤粒子aが80乃至90%、3μmを超える粒径の分散煤粒子aが2乃至3%であることがより好ましい。また、分散工程S3と同様に、所望する粒度分布となるまで、複数回、粒度調整工程S4を実施してもよい。また、粒度調整工程S4では分散煤粒子aが粉砕されるため、分散媒中への分散煤粒子aの分散を更に均一に行うことが可能となっている。
分散煤粒子aの粒度を調整する方法としては、特に限定されるものではないが、ビーズミルを用いる方法を採用することができる。該ビーズミルは、複数のビーズbが充填された本体内に、分散工程S3において煤粒子aが分散された液(分散液)A2を供給することで、煤粒子aがビーズbの間に挟まれて粉砕され、微細な煤粒子aを形成すると共に、水中に煤粒子aを均一に分散させるように構成されている。
次に、本製造方法によって液体墨Aが製造されるまでの流れについて説明する。まず始めに、前記固形墨A1を粉砕機に供給し、所定の大きさに粉砕する(粉砕工程S1)。次に、粉砕された固形墨A1を容器内で所定量の水中に浸漬し、所定期間放置することによって膨潤させる(膨潤工程S2)。所定期間経過後、膨潤した固形墨A1と残りの水とをコロイドミルに供給し、膨潤した固形墨A1を粉砕しつつ煤粒子aを粉砕すると共に、煤粒子aを水中に分散させる(分散工程S3)。そして、分散液A2をビーズミルに供給し、所定の粒度分布となるように粒度を調整する(粒度調整工程S4)。これにより、得られた液体墨Aは、煤粒子aの粒度分布が所定の粒度分布、即ち、磨墨液における煤粒子aの粒度分布の態様に近似した粒度分布の態様を有するものとなる。
以上のように、本実施形態に係る液体墨Aの製造方法によれば、固形墨A1を硯の上で磨りおろした磨墨液と同様に良好な滲み具合や墨色を表現可能な液体墨Aを製造することができると共に、原料として固形墨A1を用いて歩留まりよく液体墨Aを製造することができる。
即ち、前記液体墨Aの製造方法は、膨潤工程S2によって固形墨A1を分散媒で膨潤させることで、膠が軟化し、煤粒子a同士の分離を容易な状態にすることができる。そして、分散工程S3によって煤粒子aを粉砕しつつ分散媒中に分散させ、粒度調整工程S4によって分散媒中の煤粒子aを所定の粒度分布に調整して分散させることができ、磨墨液における煤粒子aの粒度分布の態様に近似した粒度分布の態様の液体墨Aを製造することができる。このため、磨墨液と同様に書や書画を書いた際に良好な滲み具合や墨色を表現することができる。
また、前記液体墨Aの製造方法は、粒度調整工程S4によって煤粒子aの粒度分布が上記のように調整されることで、磨墨液における煤粒子aの粒度分布の態様と近似した態様となり、磨墨液を用いた場合と同様の滲み具合や墨色を得ることができる。
また、前記液体墨Aの製造方法は、分散工程S3によって煤粒子aの粒度分布が上記のように調整されることで、粒度調整工程S4において所望する粒度分布に近い粒度分布となり、分散工程S3において粒度分布を調整することが容易となる。
また、前記液体墨Aの製造方法は、膨潤工程S2の前に固形墨A1を粗粉砕する粗粉砕工程を備えることで、固形墨A1の表面積を増加させることができると共に、粗粉砕された固形墨A1の各片が膨潤工程S2において膨潤するため、固形墨A1全体を均一、且つ、迅速に膨潤させることができ、膨潤時間を短縮することができる。
また、前記液体墨Aの製造方法は、分散工程S3にコロイドミルを用いると共に粒度調整工程S4にビーズミルを用いることができるため、磨墨液と同等の性状を備える液体墨Aを大量に作製することができる。例えば、5〜7kg程度の固形墨A1を用いて10〜20kg程度の液体墨Aを一度に作製することができる。
また、前記液体墨Aの製造方法は、塩類を含有しない固形墨A1と分散媒とを用いることにより、塩類を含有しない液体墨Aを作製することができる。このため、塩類に起因する弊害、例えば、液体墨Aの粘性が低下するため毛筆と紙との間の摩擦が高くなって筆記感が悪くなることや、筆記後に乾きにくくなること等の弊害が生じることがない。
また、前記液体墨Aの製造方法によれば、固形墨A1として、所定形状(一丁型等の大きさや、所定サイズの矩形状)に形成された製品の過剰在庫を用いることができ、過剰在庫品を有効に利用することができる。また、書き手の好みに応じて固形墨A1の種類を選択して使用することができる。
なお、本発明に係る液体墨の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、分散工程S3によって煤粒子aの粒度分布が調整された後、粒度調整工程S4によって所望の粒度分布に調整しているが、これに限定されるものではなく、分散工程S3における粒度の調整を行うことなく、粒度調整工程S4のみよって所望の粒度分布に調整してもよい。
具体的には、固形墨A1が粒度調整工程S4において粉砕可能な形状である場合には、粒度調整工程S4において固形墨A1を粉砕しつつ煤粒子aも粉砕し、所定の粒度分布に調整すると共に分散媒中に分散させるようにしてもよい。固形墨A1の形状としては、例えば、所定形状の固形墨を作製する際に発生する削り滓のように既に細かな形状であるものを用いることができる。
また、上記実施形態では、膨潤工程S2において、固形墨A1を室温で分散媒中に浸漬しているがこれに限定されるものではなく、固形墨A1を分散媒中に浸漬した状態で加温してもよい。これにより、固形墨A1の膨潤を促進させることができ、膨潤時間を短縮することができる。
また、固形墨A1に吸収される水の質量のみで膨潤工程S2を実施してもよい。かかる場合には、分散工程S3において、製造する液体墨Aの全質量に相当する水の質量を新たに加えるようにしてもよい。或いは、製造する液体墨Aの全質量に相当する水の質量を分散工程S3と粒度調整工程S4とに分けて加えてもよい。或いは、製造する液体墨Aの全質量に相当する水の質量の一部を分散工程S3と粒度調整工程S4とにおいて加え、残りの水の質量を粒度調整工程S4後の液体に加えてもよい。
また、固形墨A1としては、所定形状(一丁型等の大きさや、所定サイズの矩形状)の固形墨を製造する際に発生する端材(具体的には、削り滓や不良品等)を含むものを用いてもよく、該端材のみからなるものをもちいてもよい。かかる構成によれば、端材を廃棄することなく液体墨Aの原料として再利用することができ、液体墨Aの製造コストを削減することができると共に、環境への影響を低減することができる。
また、上記実施形態では、分散工程S3においてコロイドミルを用いているが、これに限定されるものではなく、擂潰機、石臼、ホモジナイザ、ボールミル、サンドミル、ロールミル等を用いることもでき、剪断力によって粉砕を行なうコロイドミル、ロールミル等を用いることが好ましい。
また、上記実施形態の粒度分布は、煤粒子aの粒径毎の体積基準のとした粒度分布を意味するものであるが、これに限定されるものではなく、煤粒子aの粒径毎の個数基準の粒度分布を用いて粒度調整を行なってもよい。
以下、本発明の実施例について説明する。
1.実施例1
(1)液体墨Aの作製
(i)膨潤工程
固形墨(株式会社呉竹製 一丁型固形墨)を粉砕機を用いて5mm角程度に粉砕したものを水道水(分散煤)に浸漬した状態で14日間放置した。この際、防腐剤及香料を所定量添加した。固形墨、防腐剤、水道水の配合割合としては、下記表1に記載の割合で配合した。

Figure 0005688212
(ii)分散工程
コロイドミル(IKA社製 MK2000/05、ローターギャップ:0.1mm)を用い、上記膨潤工程後の材料の全量(約23kg)を50℃以下の温度で循環分散(循環回数:100回)を行った。なお、コロイドミルには膨潤工程後の材料と共に防腐剤を0.115kg添加した。
(iii)粒度調整工程
ビーズミル(ウィリーエーバッコヘン社製 DYNO−MILL、ローターギャップ:0.5mm以下、ビーズ径:2.0mm、ビーズ充填率:85%)を用い、上記分散工程後の材料の全量を55℃以下の温度で循環分散(循環回数:40回)を行い、液体墨を作製した。
(2)評価方法
得られた液体墨の煤粒子の状態を光学顕微鏡によって確認すると共に、光散乱式の粒度分布測定器(堀場製作所製、レーザー回折/散乱式粒子径分布装置 LA−300及び動的光散乱式 LB−550)により煤粒子の粒度分布の測定を行った(粒度分布の測定結果については、図2(a)参照)。また、平均粒径、最大粒径、最小粒径の測定を行なった(粒径の測定結果については、下記表2参照)。なお、煤粒子の粒度分布は、煤粒子の粒径毎の体積基準の粒度分布を測定した。
また、液体墨Aを用いて書道半紙に筆記試験を行い、書道半紙上の液体墨の状態(滲み具合と墨色)を目視にて評価した。また、書道半紙に筆記した際の筆記感(毛筆の運び易さ)について評価した。なお、筆記試験の際には、得られた液体墨をそのまま(希釈せずに)毛筆を用いて書道半紙に筆記した場合と、20〜30倍に希釈した状態で書道半紙に筆記した場合とで評価を行なった。

Figure 0005688212
2.実施例2
固形墨として、一丁型等の固形墨を製造する際に発生する端材(削り滓)を用い、下記表3に記載の割合で配合したこと以外は、実施例1と同様の条件と方法で液体墨を作製し、実施例1と同様の評価を行った。

Figure 0005688212
3.比較例1
粒度調整工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様の条件と方法で液体墨を作製し、実施例1と同様の評価を行った(粒度分布の測定結果については、図2(b)参照)(粒径の測定結果については、下記表4参照)。

Figure 0005688212
4.比較例2
硯を用いて1丁型の固形墨を手磨りで磨りおろした磨墨液を作製し、実施例1と同様の評価を行った(粒度分布の測定結果については、図2(c)参照)(粒径の測定結果については、下記表5参照)。

Figure 0005688212
5.比較例3
作品制作用の液体墨(株式会社呉竹製 製品名:濃墨 墨の香No.15)について、平均粒径、最大粒径、最小粒径を測定し(粒径の測定結果については、下記表6参照)、実施例1と同様に書道半紙に筆記試験を行い、書道半紙上の液体墨の状態(滲み具合と墨色)を目視にて評価した。前記作品制作用の液体墨は、煤と膠とを混練してペースト状にしたものを平行した状態で接触するように配置された複数の円筒状のロール間に供給し、ロールの回転による剪断力によって煤粒子を粉砕した後、水中に分散させることで得られたものである。また、作品制作用の液体墨は、塩化カルシウム(塩類)が含有されたものである。

Figure 0005688212
6.まとめ
実施例1の粒度分布の態様と、比較例1及び2の粒度分布の態様とをそれぞれ比較すると、実施例1は、比較例1よりも比較例2の粒度分布の態様に近似した態様となっていることが認められる。また、実施例1の平均粒径等と比較例3の平均粒径等とを比較すると、比較例3の煤粒子の粒度分布が実施例1の粒度分布よりも微細な領域にあることが認められる。
また、実施例1の筆記試験の結果と、比較例1〜3の筆記試験の結果とを比較すると、実施例1及び比較例2においては、良好な滲み具合と墨色を得ることができたのに対し、比較例1では、粒度調整工程を行なわなかったため、煤粒子の粒度が粗い状態(分散状態が悪い状態)となっており、磨墨液を用いた場合と同様の良好な滲み具合と墨色を得ることができなかった。一方、比較例3では、微細な粒径の煤粒子しか存在しないため、磨墨液を用いた場合と同様の滲み具合と墨色を得ることができなかった。
実施例1の液体墨の筆記感と、比較例3の液体墨の筆記感とを比較すると、比較例3の液体墨は、塩類が含まれているため、液体墨の粘性が低下し、毛筆と紙との間の摩擦が高くなって実施例1の液体墨よりも筆記感が悪くなるのに対し、実施例1の液体墨は、塩類を含んでいないため、良好な筆記感となることが認められる。
以上のことから、本願発明によって作製された液体墨(実施例1)は、磨墨液(比較例2)と近似した煤粒子の粒度分布の態様となるため、作品制作用の液体墨(実施例3)では表現することができない磨墨液と同様の滲み具合や墨色を表現することが可能となると認められる。
一方、実施例2における煤粒子の粒度分布の態様と筆記試験の結果については、実施例1と同様の結果となることが認められた。これにより、本願発明による製造方法によれば、固形墨として端材を用いた場合であっても、磨墨液と近似した煤粒子の粒度分布の態様を有し、磨墨液と同様の滲み具合や墨色を表現することができる液体墨を作製することができると認められる。
また、磨墨液と同様の液体墨を大量に供給できる為、需要者は墨を磨る時間を省略でき作品制作に多くの時間を費やす事ができる。
S1…粉砕工程、S2…膨潤工程、S3…分散工程、S4…粒度調整工程、a…煤粒子、A…液体墨、A1…固形墨、b…ビーズ

Claims (5)

  1. 固形墨を構成する煤粒子が分散媒中に分散されてなる液体墨の製造方法であって、
    前記分散媒で膨潤させた固形墨を分散媒中で粉砕して煤粒子を分散媒中に分散させる分散工程と、前記分散媒中の煤粒子を粉砕して体積基準で0.3μm未満の粒径の煤粒子が3乃至15%となり3μmを超える粒径の煤粒子が1乃至10%となるように煤粒子の粒度分布を調整して分散媒中に分散させる粒度調整工程とを備えることを特徴とする液体墨の製造方法。
  2. 前記分散工程によって分散媒中に分散された煤粒子の粒度分布は、体積基準で、0.3μm未満の粒径の煤粒子が1乃至10%であると共に、3μmを超える粒径の煤粒子が3乃至15%であることを特徴とする請求項1に記載の液体墨の製造方法。
  3. 膨潤させる前の固形墨を粗粉砕する粗粉砕工程と、粗粉砕された固形墨を分散媒中に浸漬して膨潤させる膨潤工程とを更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体墨の製造方法。
  4. 前記固形墨は、所定形状の固形墨を製造する際に発生する端材を含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の液体墨の製造方法。
  5. 塩類が含まれていない固形墨と塩類を含まない分散媒とを用いることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の液体墨の製造方法。
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