JP5685562B2 - らい菌による感染症を予防又は治療するためのワクチン、抗体及び医薬 - Google Patents

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Description

本発明は、ハンセン病の原因菌であるらい菌(Mycobacterium leprae)の感染機構に関する本発明者らの新たな知見を利用した、哺乳動物細胞内に侵入する能力を有するペプチド、及び前記ペプチドをコードする核酸;物質を哺乳動物細胞内に侵入させるための物質移送用剤、及び物質移送方法;並びに、らい菌による感染症、例えばハンセン病を予防又は治療するためのワクチン、抗体及び医薬;に関する。
ハンセン病は、皮膚や末梢神経が侵される慢性の抗酸菌感染症であり、1873年、G.H.A.Hansenにより原因菌であるらい菌(Mycobacterium leprae)が同定された。ハンセン病の新患数は日本においては年々減少しているが、インドやブラジル、ミャンマー等の熱帯及び亜熱帯に位置する発展途上国では今なお広く流行している。
ハンセン病の病型は、大別すると「類結核型」(tuberculoid leprosy、T型)と「らい腫型」(lepromatous leprosy、L型)とに分けられ、らい菌に対する宿主の免疫応答能力を反映している。類結核型は、細胞性免疫優位で小菌型とも呼ばれ、病巣や鼻粘膜からほとんど菌は検出されない。一方、らい腫型は、液性免疫優位で多菌型とも呼ばれ、病巣、特に鼻粘膜から多数のらい菌が検出される。このらい腫型患者の鼻汁が、ハンセン病の感染源であると考えられている。ハンセン病の感染様式については、以前は皮膚濃厚接触感染や創傷感染などが想定されてきたが、近年では、らい腫型患者の鼻汁に由来するエアロゾルに含まれるらい菌が上気道及び鼻粘膜から侵入し、感染すると考えられている(例えば、非特許文献1〜3参照)。
また、らい菌は人工培養不能菌で、その原因として多数の偽遺伝子の存在が考えられている。らい菌では、タンパク質をコードする遺伝子がわずか1,604(結核菌(Mycobacterium tuberculosis)では3,959)である一方、偽遺伝子は1,116(結核菌では6)存在している。種々の酵素をコードする遺伝子が偽遺伝子に置きかわっているため、最低限の代謝活性しか有していない。そのため、らい菌はマクロファージやシュワン細胞に寄生し、それらの細胞内で増殖する。らい菌のシュワン細胞への侵入機構については、Rambukkanaらにより詳細に検討されており、シュワン細胞を覆う基底膜に存在するlaminin−2がレセプターとなり、菌体表面に発現しているヒストン様タンパクHlp/LBPとフェノール性糖脂質PGL−1が結合し、細胞内へ侵入する事が明らかとなっている(例えば、非特許文献4〜7参照)。
しかしながら、哺乳動物のシュワン細胞に感染するためには、その前に上皮細胞を通過しなければならないが、このらい菌の上皮細胞への侵入機構については、未だ解明がなされていないのが現状である。
Noordeen,S.K.(1994)The epidemiology of leprosy.In Leprosy,Hastings,R.C.(ed).second edition.Edinburgh;Churchill−Livingstone,pp.29−48. Rees,R.J.W.,McDougall,A.C.(1977)Airborne infection with Mycobacterium leprae in mice.J Med Microbiol 10;63−68. Chehl,S.,Job,C.K.,Hastings,R.C.(1985)Transmission of leprosy in nude mice.Am J Trop Hyg 34;1161−1166. Rambukkana,A.,Salzer,J.L.,Yurchenco,P.D.,Tuomanen,E.I.(1997)Neural targeting of Mycobacterium leprae mediated by the G domain of laminin−α2 chain.Cell 88;811−821. Rambukkana,A.,Yamada,H.,Zanazzi,G.,Mathus,T.,Salzer,J.L.,Yurchenco,P.D.,Campbell,K.P.,Fischetti,V.A.(1998)Role of α−dystroglycan as a Schwann cell receptor for Mycobacterium leprae.Science 282;2076−2079. Shimoji,Y.,Ng,V.,Matsumura,K.,Fischetti,V.A.,Rambukkana,A.(1999)A 21kDa surface protein of Mycobacterium leprae binds perpheral nerve laminin−2 and mediates Schwann cell invasion.Proc Natl Acad Sci 96;9857−9862. Ng,V.,Zanazzi,G.,Timpl,R.,Talts,J.F.,Salzer,J.L.,Brennan,P.J.,Rambukkana,A.(2000)Role of the cell wall phenolic glycolopid−1 in the peripheral nerve predilection of Mycobacterium leprae.Cell 103;511−524.
本発明は、前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ハンセン病の原因菌であるらい菌(Mycobacterium leprae)の感染機構に関する新たな知見を得ることを目的とし、更に、前記知見を利用して、哺乳動物細胞内に侵入する能力を有する有用なペプチド、及び前記ペプチドをコードする核酸;物質を効率的に哺乳動物細胞内に侵入させるための物質移送用剤、及び物質移送方法;並びに、らい菌による感染症、例えばハンセン病を効果的に予防又は治療するためのワクチン、抗体及び医薬;を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、らい菌(Mycobacterium leprae)のmce1A領域(NCBI−Gene ID:910890;1326bp)中、316〜486bpにコードされるペプチドの全体又は一部が、らい菌の哺乳動物細胞(特に、上皮系細胞)への侵入活性本体であるという知見であり、更に、前記ペプチドが、後述するような様々な用途に好適に利用可能であるという知見である。
従来から、例えば、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)については、哺乳動物細胞の上皮細胞への侵入に関わるとされる遺伝子領域が報告されていた。
しかしながら、らい菌のmce1Aの特定の領域(316〜486bp)にコードされるペプチド部分の全体又は一部が、らい菌の哺乳動物細胞(特に、上皮系細胞)への侵入活性を担う活性本体であることは、従来全く知られておらず、本発明者らによる新たな知見である。また、この、らい菌の哺乳動物細胞への侵入活性を担うペプチドを構成するアミノ酸配列は、従来知られていた結核菌のものとは配列が異なること、また、らい菌については、従来知られていた結核菌の侵入活性領域に対応した領域以外にも侵入活性が認められることなどからも、本発明に係る前記知見は、従来とは異なる、全く新たな知見であるということができる。
また本発明者らは更に、前記知見から、前記ペプチドが以下のような様々な用途に好適に利用可能であることを見出した。
例えば、前記ペプチドは優れた哺乳動物細胞侵入能を有するので、(1)所望の物質を前記ペプチドと直接的又は間接的に結合させて作用させることにより、前記物質を所望の哺乳動物細胞内に効率的に移送することが可能であると考えられる。より具体的には、例えば、(i)薬剤を鼻腔粘膜や皮膚を介して投与する場合において、前記薬剤と前記ペプチドとを直接的又は間接的に結合させて投与することにより、前記薬剤の吸収をより促進させることができると考えられる。また、例えば、(ii)薬剤を標的細胞に移送する薬剤移送方法において、前記薬剤を前記ペプチドと直接的又は間接的に結合させて投与することにより、前記薬剤を所望の標的細胞により効率的に移送することができると考えられる。また、例えば、(iii)哺乳動物に対して免疫を行う方法において、所望の抗原を前記ペプチドと直接的又は間接的に結合させて投与することにより、より効率的に抗原を免疫細胞に移送することができると考えられる。
また、前記ペプチドは、(2)ハンセン病等のらい菌による感染症の予防又は治療にも有用であると考えられる。例えば、(i)前記ペプチドは、らい菌の哺乳動物への感染に関与すると考えられるタンパク質を構成するアミノ酸配列の一部からなることから、哺乳動物の体内に接種することにより、前記哺乳動物にらい菌に対する免疫を付与することができると考えられる。即ち、前記ペプチドは、らい菌による感染症を予防するワクチンとして使用できることが考えられる。また、例えば、(ii)前記ペプチドに対する抗体は、前記ペプチドに結合して前記ペプチドの哺乳動物細胞への侵入活性を妨げることにより、らい菌の哺乳動物への感染を抑制することができると考えられる。即ち、前記ペプチドに対する抗体は、らい菌による感染症の効果的な予防又は治療薬となり得ると考えられる。
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 哺乳動物細胞内に侵入する能力を有するペプチドであって、Val−Asn−Ala−Asp−Ile−Lys−Ala−Thr−Thr−Val−Phe−Gly−Gly−Lys−Tyr−Val−Ser−Leu−Thr−Thr−Pro−Glu−His−Pro−Ser−Gln−Lys−Arg−Leu−Thr−Pro−Gln−Thr−Val−Ile−Asp−Ala−Arg−Ser−Val−Thr−Thr−Glu−Ile−Asn−Thr−Leu−Phe−Gln−Thr−Ile−Thr−Leu−Ile−Ala−Glu−Lys(配列番号:1)で表されるアミノ酸配列の全体又は一部からなることを特徴とするペプチドである。
<2> Val−Asn−Ala−Asp−Ile−Lys−Ala−Thr−Thr−Val−Phe−Gly−Gly−Lys−Tyr−Val−Ser−Leu−Thr−Thr−Pro−Glu−His−Pro(配列番号:2)で表されるアミノ酸配列からなる前記<1>に記載のペプチドである。
<3> Ser−Gln−Lys−Arg−Leu−Thr−Pro−Gln−Thr−Val−Ile−Asp−Ala−Arg−Ser−Val−Thr−Thr−Glu−Ile−Asn−Thr(配列番号:3)で表されるアミノ酸配列からなる前記<1>に記載のペプチドである。
<4> Leu−Phe−Gln−Thr−Ile−Thr−Leu−Ile−Ala−Glu−Lys(配列番号:4)で表されるアミノ酸配列からなる前記<1>に記載のペプチドである。
<5> 哺乳動物細胞内に侵入する能力を有するペプチドであって、Val−Asn−Ala−Asp−Ile−Lys−Ala−Thr−Thr−Val−Phe−Gly−Gly−Lys−Tyr−Val−Ser−Leu−Thr−Thr−Pro−Glu−His−Pro−Ser−Gln−Lys−Arg−Leu−Thr−Pro−Gln−Thr−Val−Ile−Asp−Ala−Arg−Ser−Val−Thr−Thr−Glu−Ile−Asn−Thr−Leu−Phe−Gln−Thr−Ile−Thr−Leu−Ile−Ala−Glu−Lys(配列番号:1)で表されるアミノ酸配列の全体又は一部において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなることを特徴とするペプチドである。
<6> ペプチドが合成ペプチドである前記<1>から<5>のいずれかに記載のペプチドである。
<7> ペプチドが組換えペプチドである前記<1>から<5>のいずれかに記載のペプチドである。
<8> 哺乳動物細胞が上皮系細胞である前記<1>から<7>のいずれかに記載のペプチドである。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載のペプチドを構成するアミノ酸配列をコードすることを特徴とする核酸である。
<10> 核酸がらい菌(Mycobacterium leprae)由来である前記<9>に記載の核酸である。
<11> 物質を哺乳動物細胞内に侵入させるための物質移送用剤であって、前記物質と前記<1>から<8>のいずれかに記載のペプチドとを含むことを特徴とする物質移送用剤である。
<12> 物質とペプチドとが直接的に結合した状態で含まれる前記<11>に記載の物質移送用剤である。
<13> 物質とペプチドとが間接的に結合した状態で含まれる前記<11>に記載の物質移送用剤である。
<14> 更に担体を含み、前記担体が物質及びペプチドの少なくともいずれかに直接的に結合した状態で含まれる前記<11>から<13>のいずれかに記載の物質移送用剤である。
<15> 担体がビーズである前記<14>に記載の物質移送用剤である。
<16> 哺乳動物細胞が上皮系細胞である前記<11>から<15>のいずれかに記載の物質移送用剤である。
<17> 物質が抗原である前記<11>から<16>のいずれかに記載の物質移送用剤である。
<18> 物質が抗原であり、哺乳動物細胞が免疫系細胞である前記<17>に記載の物質移送用剤である。
<19> ワクチンとして使用される前記<18>に記載の物質移送用剤である。
<20> 物質が薬剤である前記<11>から<16>のいずれかに記載の物質移送用剤である。
<21> 物質が薬剤であり、哺乳動物細胞が前記薬剤の標的細胞である前記<20>に記載の物質移送用剤である。
<22> 物質を哺乳動物細胞内に侵入させる物質移送方法であって、前記物質と前記<1>から<8>のいずれかに記載のペプチドとを前記哺乳動物細胞に作用させることを特徴とする物質移送方法である。
<23> 物質とペプチドとを直接的に結合させた状態で作用させる前記<22>に記載の物質移送方法である。
<24> 物質とペプチドとを間接的に結合させた状態で作用させる前記<22>に記載の物質移送方法である。
<25> 物質及びペプチドの少なくともいずれかを、担体に直接的に結合させた状態で作用させる前記<23>から<24>のいずれかに記載の物質移送方法である。
<26> 担体がビーズである前記<25>に記載の物質移送方法である。
<27> 哺乳動物細胞が上皮系細胞である前記<22>から<26>のいずれかに記載の物質移送方法である。
<28> 物質が抗原である前記<22>から<27>のいずれかに記載の物質移送方法である。
<29> 物質が抗原であり、哺乳動物細胞が免疫系細胞である前記<28>に記載の物質移送方法である。
<30> 予防接種方法として使用される前記<29>に記載の物質移送方法である。
<31> 物質が薬剤である前記<22>から<27>のいずれかに記載の物質移送方法である。
<32> 物質が薬剤であり、哺乳動物細胞が前記薬剤の標的細胞である前記<31>に記載の物質移送方法である。
<33> らい菌(Mycobacterium leprae)による哺乳動物の感染症を予防するためのワクチンであって、前記<1>から<8>のいずれかに記載のペプチドを含むことを特徴とするワクチンである。
<34> らい菌(Mycobacterium leprae)による哺乳動物の感染症を予防するための予防接種方法であって、前記<33>に記載のワクチンを哺乳動物に投与することを含むことを特徴とする予防接種方法である。
<35> 前記<1>から<8>のいずれかに記載のペプチドに対する抗体である。
<36> らい菌(Mycobacterium leprae)による哺乳動物の感染症を予防又は治療するための医薬であって、前記<35>に記載の抗体を含むことを特徴とする医薬である。
<37> らい菌(Mycobacterium leprae)による哺乳動物の感染症の予防又は治療方法であって、前記<35>に記載の抗体を哺乳動物に投与することを含むことを特徴とする予防又は治療方法である。
本発明によれば、前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、ハンセン病の原因菌であるらい菌(Mycobacterium leprae)の感染機構に関する本発明者らの新たな知見を利用し、哺乳動物細胞内に侵入する能力を有する有用なペプチド、及び前記ペプチドをコードする核酸;物質を効率的に哺乳動物細胞内に侵入させるための物質移送用剤、及び物質移送方法;並びに、らい菌による感染症、例えばハンセン病を効果的に予防又は治療するためのワクチン、抗体及び医薬;を提供することができる。
図1は、本発明の各ペプチド(配列番号:1〜配列番号:4)及び比較対照のペプチド(配列番号:5)に対応する、らい菌のmce1A遺伝子領域を表した図である。 図2Aは、本発明の各ぺプチド(配列番号:2〜配列番号:4)及び比較対照のペプチド(配列番号:5)の細胞侵入能を示した電子顕微鏡写真像である。(矢印:細胞に侵入したペプチド) 図2Bは、各コントロールペプチドの細胞侵入能を示した電子顕微鏡写真像である。(矢印:細胞に侵入したペプチド) 図3は、実施例2で使用した各ペプチドに対応する、らい菌のmce1A遺伝子領域を表した図である。らい菌のmce1Aの全領域からシグナル配列を外した領域(73〜1326bp)にコードされるr−lep45KDaタンパク質を基準とし、そこからC末を922bpまで、N末を315bpまでトランケートしたタンパク質をr−lep27kDaタンパク質とし、実施例2で抗体作製のための抗原として使用した。また、前記r−lep27kDaをコードする316〜921bpの領域を、316〜531bp(本発明のペプチドをコードする領域を含む)、532〜753bp(本発明のペプチドをコードする領域を含まない)、及び754〜921bp(本発明のペプチドをコードする領域を含まない)に3分割し、各領域に対応するポリペプチド鎖をAIDA法にて外膜表示した組み換え大腸菌を作成して、実施例2で抗体による侵入阻害効果の検討に使用した。 図4Aは、実施例2における、各AIDA外膜表示大腸菌のHeLa細胞及びBEAS−2B細胞への侵入の様子を示した電子顕微鏡写真像である。(拡大率:×5000) 図4Bは、実施例2において、UT4400株(対照)がHeLa細胞及びBEAS−2B細胞に侵入しなかったことを示した電子顕微鏡写真像である。(拡大率:×5000) 図5は、実施例2で作製した抗lep27kDa抗体を用いた、各AIDA外膜表示大腸菌に対する蛍光免疫染色像である。 図6は、実施例2における、各AIDA外膜表示大腸菌のBEAS−2B細胞への侵入に対する、抗r−lep27kDa抗体による侵入阻害効果を示したグラフである。
(ペプチド)
本発明のペプチドは、Val−Asn−Ala−Asp−Ile−Lys−Ala−Thr−Thr−Val−Phe−Gly−Gly−Lys−Tyr−Val−Ser−Leu−Thr−Thr−Pro−Glu−His−Pro−Ser−Gln−Lys−Arg−Leu−Thr−Pro−Gln−Thr−Val−Ile−Asp−Ala−Arg−Ser−Val−Thr−Thr−Glu−Ile−Asn−Thr−Leu−Phe−Gln−Thr−Ile−Thr−Leu−Ile−Ala−Glu−Lys(配列番号:1)で表されるアミノ酸配列の全体又は一部からなり、かつ、哺乳動物細胞内に侵入する能力を有するものである。
本発明者らは、らい菌のmce1A領域(NCBI−Gene ID:910890;1326bp)中316〜486bpにコードされる、前記配列番号:1で表されるアミノ酸配列の全体又は一部からなるペプチドが、哺乳動物細胞に対して優れた侵入活性を有することを見出した。
前記ペプチドとしては、前記配列番号:1で表されるアミノ酸配列の全体からなるペプチドであってもよいし、一部からなるペプチドであってもよい。前記ペプチドが、前記配列番号:1で表されるアミノ酸配列の一部からなる場合、その一部のアミノ酸配列としては、前記ペプチドが哺乳動物細胞内に侵入する能力を有する限りは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。中でも、前記一部のアミノ酸配列としては、前記配列番号:1中、8〜24個のアミノ酸配列が選択されることが好ましい。
前記配列番号:1で表されるアミノ酸配列の一部からなるペプチドの具体例としては、例えば、Val−Asn−Ala−Asp−Ile−Lys−Ala−Thr−Thr−Val−Phe−Gly−Gly−Lys−Tyr−Val−Ser−Leu−Thr−Thr−Pro−Glu−His−Pro(配列番号:2)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、Ser−Gln−Lys−Arg−Leu−Thr−Pro−Gln−Thr−Val−Ile−Asp−Ala−Arg−Ser−Val−Thr−Thr−Glu−Ile−Asn−Thr(配列番号:3)で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び、Leu−Phe−Gln−Thr−Ile−Thr−Leu−Ile−Ala−Glu−Lys(配列番号:4)で表されるアミノ酸配列からなるペプチドなどが挙げられる。これらのペプチドは全て、後述する実施例に示されるように、哺乳動物細胞に対して優れた侵入活性を有する。
なお、前記ペプチドとしては、哺乳動物細胞内に侵入する能力を有する限りは、前記配列番号:1で表されるアミノ酸配列の全体又は一部において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるものであってもよい。
−哺乳動物細胞内に侵入する能力−
前記ペプチドは、哺乳動物細胞内に侵入する能力を有する。
ここで、前記「哺乳動物細胞」の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、口腔上皮細胞、鼻腔上皮細胞、消化管上皮細胞、気管支上皮細胞、皮膚上皮細胞等の上皮系細胞;血管内皮細胞、角膜内皮細胞等の内皮系細胞;骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、肝細胞等の間葉系細胞;樹状細胞、マクロファージ、リンパ球等の免疫系細胞;胚性幹細胞、成体幹細胞等の幹細胞;などが挙げられる。中でも、前記哺乳動物細胞としては、上皮系細胞が好ましい。なお、前記哺乳動物細胞は、体内に存在する細胞であってもよいし、体外で培養された細胞であってもよい。
また、前記「哺乳動物」の種類としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、サル、イヌ、ネコなどが挙げられる。
また、前記「哺乳動物細胞内に侵入する能力」とは、前記ペプチドを前記哺乳動物細胞に作用させた場合に、前記ペプチドが前記哺乳動物細胞の中に取り込まれる性質のことをいう。前記ペプチドが前記哺乳動物細胞内に侵入する能力を有していることは、例えば、培養した前記哺乳動物細胞に、前記ペプチドを単独で、或いは、所望の物質と直接的又は間接的に結合させた状態で添加し、インキュベートした後に、電子顕微鏡を用いて直接、或いは、前記ペプチド又は前記ペプチドに結合させた物質に付した標識のシグナルを検出することにより、確認することができる。
−入手方法−
前記ペプチドの入手方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記ペプチドは、合成により得られた合成ペプチドであってもよいし、遺伝子組換え技術により得られた組換えペプチドであってもよい。前記ペプチドを得るための前記合成や前記組換えの手法としても、特に制限はなく、例えば、当該技術分野において公知の手法の中から、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ペプチドは、前記哺乳動物細胞に対して優れた侵入活性を有するので、例えば、後述する本発明の物質移送用剤、物質移送方法などに好適に利用可能である。また、前記ペプチドは、らい菌の哺乳動物への感染に大きく関与する、らい菌の哺乳動物細胞への侵入を担う活性本体であることから、例えば、後述する本発明のワクチン、抗体、医薬等、らい菌による感染症の予防又は治療に、好適に利用可能である。
(核酸)
本発明の核酸は、前記した本発明のペプチドを構成するアミノ酸配列をコードする核酸である。
前記核酸としては、前記した本発明のペプチドを構成するアミノ酸配列をコードするものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも、らい菌(Mycobacterium leprae)由来の核酸であることが好ましい。
なお、前記核酸は、DNAであってもよいし、RNAであってもよい。
−入手方法−
前記核酸の入手方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、らい菌のDNA或いはRNAを抽出して鋳型とし、らい菌のmce1A遺伝子領域(NCBI−Gene ID:910890;1326bp)中、前記配列番号:1で表されるペプチドをコードする遺伝子領域(316〜486bp)の全体又は一部を、PCR法やRT−PCR法を用いて増幅することにより得ることができる。
前記核酸は前記した本発明のペプチドをコードするので、例えば、前記核酸をタンパク質発現用ベクターに組み込み、前記ベクターを宿主細胞に導入して培養することにより、前記宿主細胞に前記ペプチドを効率的に産生させることができる。
(物質移送用剤、物質移送方法)
本発明の物質移送用剤は、物質を哺乳動物細胞内に侵入させるための物質移送用剤であり、少なくとも、前記物質と前記した本発明のペプチドとを含んでなる。
また、本発明の物質移送方法は、物質を哺乳動物細胞内に侵入させる物質移送方法であり、少なくとも、前記物質と前記した本発明のペプチドとを、前記哺乳動物細胞に作用させることを含む。
−ペプチド、哺乳動物細胞−
前記「ペプチド」、前記「哺乳動物細胞」としては、前記した本発明のペプチドの項目に記載した通りである。
−物質−
前記「物質」としては、特に制限はなく、前記哺乳動物細胞内に侵入させたい任意の物質を、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抗原、薬剤などが挙げられる。
前記抗原としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、体内に抗体を産生させたい病原体の一部等が挙げられる。例えば、前記病原体の一部を前記抗原として使用し、前記抗原と前記ペプチドとを含む物質移送用剤を、免疫系細胞、例えば、樹状細胞に作用させることにより、前記抗原をより効率的に前記樹状細胞に侵入させることができ、前記病原体に対する抗体を、より効率的に産生させることができる。即ち、前記抗原と前記ペプチドとを含む物質移送用剤は、前記哺乳動物に前記病原体に対する免疫をより効率的に付与することができることから、例えば、前記病原体に対するワクチンとして好適に利用可能である。
前記薬剤としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抗がん剤、抗菌剤、抗ウイルス剤などが挙げられる。例えば、前記抗がん剤と前記ペプチドとを含む物質移送用剤を、所望のがん細胞に作用させることにより、前記抗がん剤をより効率的に前記がん細胞に侵入させることができ、したがって、前記抗がん剤をより効果的に作用させることができる。
また、前記ペプチドは、前記したように、中でも上皮系細胞に対して優れた侵入活性を有していると考えられるため、前記物質移送用剤、前記物質移送方法は、前記物質を前記上皮系細胞内に侵入させることに特に好適であると考えられる。具体的には、例えば、薬剤を鼻腔粘膜や皮膚等を介して体内に投与したい場合において、前記薬剤と前記ペプチドとを含む物質移送用剤を投与することにより、前記薬剤の鼻腔上皮細胞や皮膚上皮細胞等への侵入をより促進させることができ、したがって、前記薬剤の体内への吸収をより促進させることができると考えられる。
−態様−
前記物質移送用剤の態様としては、前記物質と前記ペプチドとを含むものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記物質と前記ペプチドとが直接的に結合した状態で含まれるものであってもよいし、前記物質と前記ペプチドとが間接的に結合した状態で含まれるものであってもよい。前記物質と前記ペプチドとが直接的には結合していない状態であっても、例えば、後述する担体等を介して前記物質と前記ペプチドとを間接的に結合した状態とすることにより、前記物質を所望の哺乳動物細胞に侵入させることができる。
−−直接的に結合−−
前記物質と前記ペプチドとを直接的に結合させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記物質全体に前記ペプチドを被覆させてもよいし、前記物質の一部分に前記ペプチドを接着させてもよい。ここで、前記ペプチドは、少なくともその一部が前記物質の表面に露出していることが好ましい。前記ペプチドが前記物質に覆われた状態であると、前記物質を前記哺乳動物細胞内に侵入させる能力を発揮することができない場合があると考えられる。なお、前記結合時の、前記物質と前記ペプチドとの使用量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−−間接的に結合−−
前記物質と前記ペプチドとを間接的に結合させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記物質と前記ペプチド以外に、適宜その他の成分を用い、前記その他の成分を介して、前記物質と前記ペプチドとを間接的に結合させることができる。前記その他の成分の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述するような担体等が挙げられる。なお、ここでも、前記ペプチドは、少なくともその一部が前記その他の成分等の表面に露出していることが好ましい。前記ペプチドが前記その他の成分等に覆われた状態であると、前記物質を前記哺乳動物細胞内に侵入させる能力を発揮することができない場合があると考えられる。なお、前記結合時の、前記その他の成分、前記物質、及び前記ペプチドの各使用量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−−担体−−
中でも、前記物質移送用剤は、前記物質と前記ペプチド以外に、更に担体を含み、かつ、前記担体が前記物質及び前記ペプチドの少なくともいずれかに直接的に結合した状態で含まれていることが好ましい。前記担体の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コロイダル金粒子、ポリスチレン粒子、ラテックス粒子等の各種ビーズなどが挙げられる。前記担体を用いると、例えば、前記ペプチドと結合した前記担体に、前記物質を直接コーティングさせた形態の前記物質移送用剤を作製し易い点で、有利である。なお、前記物質移送用剤が前記担体を含む場合においても、前記物質と前記ペプチドとは、互いに直接的に結合した状態にあってもよいし、間接的に結合した状態にあってもよい。
また、前記担体と、前記物質及び前記ペプチドの少なくともいずれかとを直接的に結合させる方法としては、特に制限はなく、前記した、前記物質と前記ペプチドとを直接的に結合させる方法同様、目的に応じて適宜選択することができる。なお、ここでも、前記ペプチドは、少なくともその一部が前記担体等の表面に露出していることが好ましい。前記ペプチドが前記担体等に覆われた状態であると、前記物質を前記哺乳動物細胞内に侵入させる能力を発揮することができない場合があると考えられる。なお、前記結合時の、前記担体、前記物質、及び前記ペプチドの各使用量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−製造−
前記物質移送用剤の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記物質、前記ペプチド、更に必要に応じて前記担体を、それぞれ前記したような任意の方法で直接的又は間接的に結合させることにより、製造することができる。
−作用−
前記物質と前記ペプチドとを前記哺乳動物細胞に作用させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培養した前記哺乳動物細胞の培養液中に前記物質移送用剤を添加してもよいし、前記物質移送用剤を、前記哺乳動物の体内に所望の方法で投与してもよい。前記方法は、前記物質移送用剤の態様に応じて、適宜選択することができる。
前記ペプチドは哺乳動物細胞に対して優れた侵入活性を有するので、前記ペプチドと直接的又は間接的に結合させた物質についても、哺乳動物細胞内に効率的に侵入させることができる。そのため、前記ペプチドと所望の物質とを含む前記物質移送用剤、及び前記物質移送用剤を作用させる前記物質移送方法は、例えば、物質の種類と侵入対象となる哺乳動物細胞の種類とを様々に組み合わせることにより、様々な用途に好適に利用可能である。
(ワクチン)
本発明のワクチンは、らい菌(Mycobacterium leprae)による哺乳動物の感染症を予防するためのワクチンであり、前記した本発明のペプチドを含み、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
−らい菌による感染症−
前記らい菌による感染症としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハンセン病などが挙げられる。
−ペプチド−
前記ペプチドとしては、前記した本発明のペプチドの項目に記載した通りである。前記ペプチドは、らい菌の哺乳動物への感染に関与すると考えられるタンパク質を構成するアミノ酸配列の一部からなるものであるため、前記ペプチドを哺乳動物に予防的に投与することにより、哺乳動物の体内にらい菌に対する免疫を付与することができ、らい菌による感染症を予防することができると考えられる。即ち、前記ペプチドは、前記ワクチンの有効成分となり得ると考えられる。
前記ワクチン中の、前記ペプチドの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、医薬的に許容され得る担体などが挙げられる。前記医薬的に許容され得る担体としては、特に制限はなく、例えば、後述する本発明の医薬の項目に記載されるような各種担体などが挙げられる。また、前記ワクチンの剤型としても、特に制限はなく、例えば、後述する本発明の医薬の項目に記載されるような各種剤型などが挙げられる。
前記ワクチン中の、前記その他の成分の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−製造−
前記ワクチンの製造方法としては、特に制限はなく、例えば、所望の剤型等に応じて適宜選択することができる。
−投与−
前記ワクチンは、例えば、哺乳動物に投与することにより使用することができる。
前記ワクチンの投与対象となる哺乳動物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、サル、イヌ、ネコなどが挙げられる。
前記ワクチンの投与方法としては、特に制限はなく、前記ワクチンの剤型等に応じて適宜選択することができ、例えば、経口投与、腹腔内投与、血液中への注射、腸内への注入、鼻腔内への投与などが挙げられる。
前記ワクチンの投与量、投与回数としては、特に制限はなく、投与対象である哺乳動物の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができる。
前記したように、前記ワクチンに含まれる前記ペプチドは、らい菌の哺乳動物への感染に関与すると考えられるタンパク質を構成するアミノ酸配列の一部からなるので、前記ワクチンを哺乳動物に投与することにより、前記哺乳動物の体内にらい菌に対する抗体を産生させることができ、その後のらい菌による感染症の発症を防ぐことができると考えられる。即ち、前記ワクチンは、らい菌による哺乳動物の感染症を予防するための哺乳動物への投与(予防接種)に好適に利用可能である。なお、前記ワクチンを哺乳動物に投与することを含む、らい菌による哺乳動物の感染症を予防するための予防接種方法も、本発明の範囲内に含まれる。
(抗体)
本発明の抗体は、前記した本発明のペプチドに対する抗体である。
前記ペプチドとしては、前記した本発明のペプチドの項目に記載した通りである。
前記抗体としては、前記ペプチドを認識可能な抗体であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ペプチドそのもの、又は、前記ペプチドを含むポリペプチド、タンパク質を抗原として用い、公知の手法により、適宜作製することができる。
前記抗体はポリクローナル抗体であってもよいし、モノクローナル抗体であってもよい。また、前記抗体は、標識されていてもよい。
前記抗体は、例えば、らい菌に対して哺乳動物細胞への侵入阻害作用を有する場合、後述する本発明の医薬の有効成分として使用することができる。また、前記抗体は、らい菌による感染症の検査目的で、被検試料中から前記らい菌を検出するための試薬として使用することもできる。
(医薬)
本発明の医薬は、らい菌(Mycobacterium leprae)による哺乳動物の感染症を予防又は治療するための医薬であり、前記した本発明の抗体を含み、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
−らい菌による感染症−
前記らい菌による感染症としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハンセン病などが挙げられる。
−抗体(有効成分)−
前記抗体としては、前記した本発明の抗体の項目に記載した通りである。前記抗体は、らい菌の哺乳動物細胞への侵入を担う活性本体である前記ペプチドに対する抗体であるため、前記抗体をらい菌に作用させることにより、らい菌の哺乳動物細胞に対する侵入活性を阻害することができると考えられる。したがって、前記抗体は、前記医薬の有効成分となり得る。
前記医薬中、前記抗体の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、医薬的に許容され得る担体などが挙げられる。前記担体としても、特に制限はなく、例えば、後述する前記医薬の剤型等に応じて適宜選択することができる。また、前記医薬中の前記その他の成分の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
−剤型−
前記医薬の剤型としては、特に制限はなく、例えば、後述するような所望の投与方法に応じて適宜選択することができ、例えば、経口固形剤(錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等)、経口液剤(内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等)、注射剤(溶液、懸濁液、用事溶解用固形剤等)、軟膏剤、貼付剤、ゲル剤、クリーム剤、外用散剤、スプレー剤、吸入散剤などが挙げられる。
前記経口固形剤としては、例えば、前記有効成分に、賦形剤、更には必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等の添加剤を加え、常法により製造することができる。
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸などが挙げられる。前記結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。前記崩壊剤としては、例えば、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖などが挙げられる。前記滑沢剤としては、例えば、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。前記着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄などが挙げられる。前記矯味・矯臭剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。
前記経口液剤としては、例えば、前記有効成分に、矯味・矯臭剤、緩衝剤、安定化剤等の添加剤を加え、常法により製造することができる。
前記矯味・矯臭剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。前記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。前記安定化剤としては、例えば、トラガント、アラビアゴム、ゼラチンなどが挙げられる。
前記注射剤としては、例えば、前記有効成分に、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下用、筋肉内用、静脈内用等の注射剤を製造することができる。
前記pH調節剤及び前記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。前記安定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸などが挙げられる。前記等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖などが挙げられる。前記局所麻酔剤としては、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカインなどが挙げられる。
前記軟膏剤としては、例えば、前記有効成分に、公知の基剤、安定剤、湿潤剤、保存剤等を配合し、常法により混合し、製造することができる。
前記基剤としては、例えば、流動パラフィン、白色ワセリン、サラシミツロウ、オクチルドデシルアルコール、パラフィンなどが挙げられる。前記保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピルなどが挙げられる。
前記貼付剤としては、例えば、公知の支持体に前記軟膏剤としてのクリーム剤、ゲル剤、ペースト剤等を、常法により塗布し、製造することができる。前記支持体としては、例えば、綿、スフ、化学繊維からなる織布、不織布、軟質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン等のフィルム、発泡体シートなどが挙げられる。
−投与−
前記医薬は、例えば、らい菌による感染症を患う患者、例えば、ハンセン病の患者に投与することにより使用することができる。
前記医薬の投与対象となる哺乳動物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、サル、イヌ、ネコなどが挙げられる。
前記医薬の投与方法としては、特に制限はなく、前記医薬の剤型等に応じて適宜選択することができ、例えば、経口投与、腹腔内投与、血液中への注射、腸内への注入、鼻腔内への投与などが挙げられる。
前記医薬の投与量、投与回数としては、特に制限はなく、投与対象である患者の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができる。
また、前記医薬の投与時期としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、予防的に投与されてもよいし、治療的に投与されてもよい。
前記医薬は、前記した本発明の抗体を含むので、らい菌の哺乳動物細胞への侵入を阻害することができ、したがって、前記医薬は、らい菌による感染症、例えば、ハンセン病の予防又は治療に好適に利用可能である。なお、前記した本発明の抗体を哺乳動物に投与することを含む、らい菌(Mycobacterium leprae)による哺乳動物の感染症の予防又は治療方法も、本発明の範囲内に含まれる。
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1:本発明のペプチドの細胞侵入能の検討)
本発明のペプチドの哺乳動物細胞に対する侵入能を以下のようにして検討した。
<方法>
−細胞培養−
哺乳動物細胞としては、ヒト上皮系細胞である、ヒト子宮頸癌由来のHeLa細胞(ATCC CCL−2)、及び、ヒト正常気管支上皮細胞由来のBEAS−2B細胞(ATCC CRL−9609)を用いた。HeLa細胞は、50μg/ml ゲンタマイシン(GM)、10% ウシ胎児血清(FBS;ICN Biomedicals社)を加えたダルベッコ変法イーグル培地(DME;GIBCO社)を用いて培養した。BEAS−2B細胞はアデノウイルス12−サルウイルス−40ハイブリッドウイルス(adeno virus 12−simian virus−40 hybrid virus)により形質転換させたヒト正常気管支上皮細胞で、10% FBS、13μg/ml ウシ下垂体抽出物(bovine pituitary extract)、0.5ng/ml 組換え型上皮細胞成長因子(recombinant epidermal growth factor)、0.5ng/ml ヒドロコルチゾン、0.5ng/ml エピネフリン、10μg/ml トランスフェリン、5μg/ml インスリン、0.1μg/ml レチノイン酸、6.5ng/ml トリヨードチロニン、50μg/ml GM、50ng/ml アンホテリシン−Bを加えた気管支上皮細胞用基礎培地(Bronchial Epithelial Cell Basal Medium:BEBM;Cambrex Bio Science社)を用いて培養した。両細胞ともAmerican Type Culture Collection(ATCC)より購入した。
−ペプチドの準備−
−−試験用ペプチド−−
本発明のペプチドのうち、らい菌のmce1A領域(1326bp)中、316〜387bp領域にコードされるペプチド(Val−Asn−Ala−Asp−Ile−Lys−Ala−Thr−Thr−Val−Phe−Gly−Gly−Lys−Tyr−Val−Ser−Leu−Thr−Thr−Pro−Glu−His−Pro、配列番号:2)、388〜453bp領域にコードされるペプチド(Ser−Gln−Lys−Arg−Leu−Thr−Pro−Gln−Thr−Val−Ile−Asp−Ala−Arg−Ser−Val−Thr−Thr−Glu−Ile−Asn−Thr、配列番号:3)、及び、454〜486bp領域にコードされるペプチド(Leu−Phe−Gln−Thr−Ile−Thr−Leu−Ile−Ala−Glu−Lys、配列番号:4)を、それぞれ以下のようにして合成した。
また、比較対照として、本発明の範囲外である、らい菌のmce1A領域中487〜531bp領域をコードするペプチド(Val−Asp−Pro−Ile−Lys−Leu−Asn−Leu−Thr−Leu−Ser−Ala−Ala−Ala−Gln、配列番号:5)を、以下のようにして合成した。(各領域については図1を参照。)
前記配列番号:2〜配列番号:5の各ペプチドは、シグマジェノシス社に依頼して合成した。合成は、ABacusペプチドシンセサイザー(シグマ社)を用いて、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)法による固相法にて行い、ペプチドの純度をAUTOFLEX 01型質量分析装置(BRUKER社)及びLC8020高速液体クロマトグラムシステム(TOSOH社)を用いて確認した。
−−コントロールペプチド−−
結核菌(M.tuberculosis)では、InvIIIと称される領域に細胞侵入活性領域が存在する事が報告されている。そこで、結核菌中の198921〜198987bpをこのInvIII領域とし、本領域にコードされるペプチド(Thr−Lys−Arg−Arg−Ile−Thr−Pro−Lys−Asp−Val−Ile−Asp−Val−Arg−Ser−Val−Thr−Thr−Glu−Ile−Asn−Thr、配列番号:9)をポジティブコントロールペプチドとして、オペロン バイオテクノロジー株式会社に依頼して合成した。合成は、433Aペプチドシンセサイザー(Applied Biosystems社)を用いて、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)法による固相法にて行い、ペプチドの純度をVoyager−DE・Pro MALDI−TOF型質量分析装置(Applied Biosystems社)及びModel1050高速液体クロマトグラフシステム(Agilent technologies社)を用いて確認した。
また、侵入活性を持たないネガティブコントロールペプチドとしての、結核菌の199021〜199551bpにコードされるペプチド(Val−Asp−Pro−Val−Lys−Leu−Asn−Leu−Thr−Leu−Ser−Ala−Ala−Ala−Glu、配列番号:10)は、前記配列番号:2〜配列番号:5の各ペプチドと同様に、シグマジェノシス社に依頼して合成した。
−ペプチドによるビーズのコーティング、培養細胞への添加−
4.66×1012/mlのコロイダル金粒子(colloidal gold particles)液(直径10nm;Sigma社)8mlを遠心し、上清を除去した。0.5mg/mlに調整した各ペプチド及びBSA溶液0.5mlで、コロイダル金粒子(colloidal gold particles)を再浮遊させた後、室温で30分反応させ、各ペプチド及びBSAをコロイダル金粒子(colloidal gold particles)にコートした。安定化液(stabilizing solution;0.15M NaCl、0.05M Tris−Hcl pH9、0.5g/ml カーボワックス(Carbowax)20−M)0.9mlを加えて遠心し、PBS(カルシウム・マグネシウム不含PBS)で1回遠心洗浄した後、25μlのPBSに再浮遊させた。ペプチドコートコロイダル金粒子(colloidal gold particles)溶液を、1.05×10cellsに単層培養したHeLa細胞及びBEAS−2S細胞に添加し、COインキュベーターにて37℃で6時間反応させた。培養終了後、細胞表面をPBSで洗浄し、セルスクレーパーを用いてHeLa細胞及びBEAS−2S細胞を回収した。
−細胞への侵入の有無の観察−
回収した各HeLa細胞及びBEAS−2S細胞を、0.1M カコジル酸バッファー(cacodylic acid buffer)を用いて1回遠心洗浄し、3% グルタールアルデヒドを加えた1M カコジル酸バッファー(cacodylic acid buffer)を加え、4℃にて一晩固定した。固定後、1% 四酸化オスミウムを加えたPBSで処理し、エタノールで脱水した。Spurrの低粘性包埋剤(Spurr’s low−viscosity embedding media)にて包埋し、超薄切標本を酢酸ウラニル及びクエン酸鉛を用いて染色した。JEM−1230電子顕微鏡(日本電子株式会社(JEOL))を用いて、各ペプチドコートビーズのHeLa細胞及びBEAS−2B細胞への侵入の有無を観察した。
<結果>
電子顕微鏡を用いた観察により、ポジティブコントロールである、結核菌のInvIII領域にコードされるペプチド(配列番号:9)については、細胞質内にペプチドコートビーズが侵入している像が認められた(図2B)。また、InvIII領域に相当する、らい菌のmce1A領域中388〜453bp領域にコードされるペプチド(配列番号:3)についても、細胞質内に多数のペプチドコートビーズが侵入している像が認められた(図2A)。また、らい菌については、前記388〜453bp領域の前後の、316〜387bp領域、454〜486bp領域にコードされるペプチド(それぞれ、配列番号:2、配列番号:4)についても、BEAS−2B細胞への侵入が認められた(図2A)。
一方で、比較対照であるらい菌のmce1A領域中487〜531bp領域をコードするペプチド(配列番号:5)については、結核菌のネガティブコントロールペプチド(配列番号:10)同様、細胞への侵入像は認められなかった(図2A、図2B)。
これらの結果から、本発明のペプチド、即ち、らい菌のmce1A領域中316〜486bpの領域にコードされるペプチド(Val−Asn−Ala−Asp−Ile−Lys−Ala−Thr−Thr−Val−Phe−Gly−Gly−Lys−Tyr−Val−Ser−Leu−Thr−Thr−Pro−Glu−His−Pro−Ser−Gln−Lys−Arg−Leu−Thr−Pro−Gln−Thr−Val−Ile−Asp−Ala−Arg−Ser−Val−Thr−Thr−Glu−Ile−Asn−Thr−Leu−Phe−Gln−Thr−Ile−Thr−Leu−Ile−Ala−Glu−Lys、配列番号:1)の、少なくとも前記した各部分のペプチド(配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4)は、それぞれ哺乳動物細胞に対して優れた細胞侵入能を有していることが示された。
(実施例2:抗体によるペプチドの侵入阻害の検討)
哺乳動物細胞に対して侵入能を有するペプチドが前記ペプチドに対する抗体により受ける影響を、以下のようにして検討した。
<方法>
−抗体作製−
らい菌のmce1A領域中、316〜921bp領域(その一部に本発明のペプチドをコードする領域を含む)にコードされるタンパク質(以下、「r−lep27kDa」と称することがある)に対する抗体(抗r−lep27kDa抗体)を、以下のようにして作製した。
−−抗原タンパク質(r−lep27kDa)の準備−−
Chitaleらの方法(Chitale,S.ら(2001)Recombinant Mycobacterium tuberculosis protein associated with mammalian cell entry.Cell.Microbiol 3;247−254.参照)に従い、らい菌のM.leprae Thai53株の全DNAをテンプレートとし、r−lep27kDaをコードする遺伝子領域(3092761〜3093366bp:mce1A領域中316〜921bp領域)をPCR法にて増幅し、pQE30ベクター(QIAGEN社)のSacI、HindIII間に組み込んだ。エレクトロポレーション法(gene pulserII;BioRad社)にて宿主大腸菌であるM15(pRep4)株(QIAGEN社)に導入し、ヒスチジン(HIS)融合タンパク質として発現させた。r−lep27kDaタンパク質を、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)存在下で誘導発現させ、QIAGEN社の精製プロトコルに従い、8M 尿素又は6M グアニジン変性条件下でNi−NTAアガロースカラム(QIAGEN社)を用いて精製した。1mM ジチオスレイトール(Sigma社)、0.1mM フッ化フェニルメチルスルホニル(Sigma社)の存在下で、尿素またはグアニジンの濃度を段階的に下げながら、透析法によりタンパク質の立体構造を再構築し、溶媒をリン酸緩衝食塩水(PBS)に置換した。
−−免疫−−
Ni−NTAカラムを用いて精製したr−lep27kDaタンパク質を、SDS−PAGEにて展開し、クマシーブリリアントブルーR−250で染色後、目的タンパクに相当するバンドを切り出した。切り出したバンド内のタンパク質をモデル422エレクトロエリューター(Model422electroeluter;BioRad社)を用いて回収し、PBSで透析した。透析後のタンパク質溶液とフロイント不完全アジュバント(FIA;DIFCO Laboratories社)を1:1の割合で混合し、BALB/cマウスの皮下に数カ所に分けて合計150μg免疫した。2週間おきに5回接種した後、血清を回収し、これを抗r−lep27kDaHIS(抗r−lep27kDa抗体)とした。
−AIDA法による組換え発現−
Casaliらの方法に従い(Casali,N.ら(2002)Invasion activety of a Mycobacterium tuberculosis peptide presented by the Escherichia coli AIDA autotransporter.Infect Immun 70;6846−6852.参照)、らい菌の以下各遺伝子領域(lep316;3092761〜3092976bp(mce1A領域中316〜531bp)、lep532;3092977〜3093198bp(mce1A領域中532〜753bp)、lep754;3093199〜3093366bp(mce1A領域中754〜921bp))をPCR法にて増幅し、AIDA発現用ベクターであるpMK90ベクターのXmaI、XbaI間に組み込んだ。エレクトロポレーション法にて宿主大腸菌であるUT4400株に導入し、各領域にコードされるポリペプチド鎖を菌体表面に表出させた組換え大腸菌UT4400/lep316、UT4400/lep532、UT4400/lep754をそれぞれ作成した。なお、pMK90ベクター及びUT4400はカルファルニア大学バークレー校のLee W.Riley教授より分与されたものを使用した(例えば、INFECTION AND IMMUNITY,Dec.2002,p.6846−6852参照)。pMK90ベクターに組み込むことによって、各領域にコードされるアミノ酸配列が、ポリペプチド鎖として外膜表示される。なお、各領域のアミノ酸配列は次の通りである。(各領域については図3参照。)
lep316;Val−Asn−Ala−Asp−Ile−Lys−Ala−Thr−Thr−Val−Phe−Gly−Gly−Lys−Tyr−Val−Ser−Leu−Thr−Thr−Pro−Glu−His−Pro−Ser−Gln−Lys−Arg−Leu−Thr−Pro−Gln−Thr−Val−Ile−Asp−Ala−Arg−Ser−Val−Thr−Thr−Glu−Ile−Asn−Thr−Leu−Phe−Gln−Thr−Ile−Thr−Leu−Ile−Ala−Glu−Lys−Val−Asp−Pro−Ile−Lys−Leu−Asn−Leu−Thr−Leu−Ser−Ala−Ala−Ala−Gln(配列番号:6、本発明のペプチドを構成するアミノ酸配列が含まれる。)
lep532;Ser−Leu−Ala−Gly−Leu−Gly−Glu−Arg−Phe−Gly−Gln−Ser−Ile−Val−Asn−Gly−Asn−Ser−Val−Leu−Asp−Asp−Val−Asn−Ser−Gln−Leu−Pro−Gln−Ala−Arg−His−Asp−Ile−Gln−Gln−Leu−Ala−Ser−Leu−Gly−Asp−Thr−Tyr−Ala−Asn−Ser−Ala−Ser−Asp−Phe−Phe−Asp−Phe−Leu−Asn−Asn−Ser−Ile−Val−Thr−Ser−Arg−Thr−Ile−Asn−Gln−Gln−Gln−Lys−Asp−Leu−Asp−Gln(配列番号:7、本発明のペプチドを構成するアミノ酸配列は含まれない。)
lep754;Val−Leu−Leu−Ala−Ala−Val−Gly−Phe−Gly−Asn−Thr−Gly−Ala−Asp−Ile−Phe−Ser−Arg−Ser−Gly−Pro−Tyr−Leu−Ala−Arg−Gly−Ala−Ala−Asp−Leu−Val−Pro−Thr−Ala−Gln−Leu−Leu−Asp−Thr−Tyr−Ser−Pro−Ala−Ile−Phe−Cys−Thr−Leu−Arg−Asn−Tyr−His−Asp−Ile−Glu−Pro(配列番号:8、本発明のペプチドを構成するアミノ酸配列は含まれない。)
−AIDA外膜表示大腸菌の侵入活性の確認−
各AIDA外膜表示大腸菌を5mlの50μg/ml カルベニシリン(Sigma社)添加Luria−Bertani培地(LB培地;Invitrogen社)にて37℃、16時間振盪培養した前培養菌液を、20mlの新鮮LB培地に1/100量接種し、37℃で3時間振盪培養を行った。培養終了後、4℃、4000×gで10分の遠心により集菌し、PBSに再浮遊させた後、OD600=1.0;1×10CFU/mlを指標にPBSを用いて1×10CFU/mlに調整した。単層培養した1.15×10cellsのHeLa細胞及びBEAS−2B細胞の培地を抗生剤不含培地に交換した後、各AIDA外膜表示大腸菌を2.3×10CFU/ml添加し(細胞:菌=1:100)、COインキュベーターにて37℃で6〜9時間(HeLa細胞は9時間、BEAS−2B細胞は6時間)培養した。培養終了後、細胞表面をPBSで洗浄し、セルスクレーパーを用いて細胞を回収した。
回収した各細胞については、実施例1と同様に、標本を作製し、各AIDA外膜表示大腸菌の各細胞への侵入の有無を、電子顕微鏡を用いて観察した。
−蛍光免疫染色−
前記で作製した前記抗r−lep27kDa抗体が、前記大腸菌表面に発現した各ポリペプチド鎖を認識する事を確認するため、抗r−lep27kDa抗体を一次抗体として蛍光免疫染色を行った。LB培地で培養した各AIDA外膜表示大腸菌、及び対照としてUT4400をPBSで遠心洗浄し、抗r−lep27kDa抗体を1/100量添加し、氷中で30分反応させた。2% FCS、0.1% アジ化ナトリウム添加PBSで2回洗浄後、FITC標識抗マウスIgG抗体(CHEMICON社)を1/70量添加し、氷中で30分反応させた。同様に洗浄し、0.5% パラホルムアルデヒド、2% FCS添加PBSで固定後、ZEISS Axiovert200透過光・蛍光用倒立顕微鏡を用いて観察した。
−AIDA外膜表示大腸菌の侵入活性に対する抗体の阻害効果の検討−
1×10CFU/mlに調整したUT4400株及び各AIDA外膜表示大腸菌液に、抗r−lep27kDa抗体を1/1000量(約28.4μg)添加し、ローテーターを用いて4℃で一晩反応させ、抗体処理菌とした。また、抗r−lep27kDa抗体を添加せず、同様に反応させたUT4400株及び各AIDA外膜表示大腸菌液を抗体非処理菌とした。24ウェルプレートに1×10細胞/ウェルで単層培養したBEAS−2B細胞の培地を抗生剤不含BEBM培地に交換した後、抗体処理菌及び非処理菌を、細胞:菌=1:100の割合で添加した。培養中に増殖した菌に対応するため、抗体処理菌を添加するウェルにのみ抗r−lep27kDa抗体を1/1000量(28.4μg)加えた。COインキュベーターにて37℃で3時間培養後、細胞外の菌を殺菌するため、100μg/ml GM添加BEBM培地に交換し、更に2時間インキュベートした。細胞表面をPBSで洗浄後、0.1%TritonX−100加PBSを1ml/ウェル加え、細胞を破壊し、細胞内の菌を回収した。回収した菌液をPBSで十段階希釈した後、ハートインフュージョン(Heart Infusion)寒天培地(Nissui社)に塗布した。37℃で一晩培養した後、コロニーを算定し細胞内侵入菌数とした。
<結果>
まず、抗体無添加の場合の、各AIDA外膜表示大腸菌のHeLa細胞及びBEAS−2B細胞への侵入能を電子顕微鏡を用いて検討したところ、lep316(本発明のペプチドを構成するアミノ酸配列を含む)を表出させた大腸菌(UT4400/lep316)では、細胞質内に多数の大腸菌が侵入していた。一方で、lep532、lep754(いずれも本発明のペプチドを構成するアミノ酸配列を含まない)を表出させた大腸菌(UT4400/lep532、UT4400/lep754)、及び対照であるUT4400では、細胞周囲に大腸菌の存在は認められるものの、細胞質内への侵入は認められなかった(図4A、図4B)。
また、作製した抗r−lep27kDa抗体が各AIDA外膜表示大腸菌に表出させた各ポリペプチド鎖を認識する事を確認するため、抗r−lep27kDa抗体を一次抗体として蛍光免疫染色を行ったところ、宿主大腸菌であるUT4400以外の、UT4400/lep316、UT4400/lep532、UT4400/lep754は全て抗r−lep27kDa抗体に反応した(図5)。このことから、抗r−lep27kDa抗体が各AIDA外膜表示大腸菌に表出させた各ポリペプチド鎖を認識することが確認された。
更に、この抗r−lep27kDa抗体により前記したUT4400/lep316の細胞への侵入活性が阻害されるか否かを検討する為、BEAS−2B細胞を用いて、細胞内侵入菌数をコロニー形成単位(CFU)として定量し、抗体の侵入阻害効果を検討した。UT4400/lep316の細胞内侵入菌数は、抗体処理によって1.23×10CFU/10cellsから0.16×10CFU/10cellsへと約1/8に顕著に減少した。また、UT4400/lep532の細胞内侵入菌数は、抗体処理によって0.12×10CFU/10cellsから0.03×10CFU/10cellsとなった。また、UT4400/lep754の侵入菌数は、0.05×10から0.04×10CFU/10cellsとなった。UT4400/lep532及びUT4400/lep754の侵入菌数は、抗体処理の有無に関わらず共に低値を示した(図6)。
これらの結果から、大腸菌の菌体表面に発現させた、316〜531bp(本発明のペプチドをコードする領域を含む)にコードされるポリペプチド鎖を抗体で被覆する事により、前記ポリペプチド鎖の細胞への侵入活性が抑制される事が示された。
本実施例2の結果から、本発明の各ペプチドについても、前記各ペプチドに対する抗体を作用させることにより、前記各ペプチドの哺乳動物細胞への侵入活性が抑制されることが推測される。
本発明のペプチド及び核酸、物質移送用剤及び物質移送方法、並びに、ワクチン、抗体及び医薬は、例えば、所望の抗原や薬剤を所望の哺乳動物細胞内に移送する目的や、らい菌による感染症を予防又は治療する目的において、好適に利用可能である。

Claims (3)

  1. らい菌(Mycobacterium leprae)による哺乳動物の感染を予防するためのワクチンであって、
    前記らい菌のmce1A領域中、316bp〜921bp領域にコードされるタンパク質からなることを特徴とするワクチン。
  2. らい菌のmce1A領域中、316bp〜921bp領域にコードされるタンパク質に対するポリクローナル抗体。
  3. らい菌(Mycobacterium leprae)による哺乳動物の感染を予防又は治療するための医薬であって、請求項2に記載のポリクローナル抗体を含むことを特徴とする医薬。
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