(第1の実施形態)
第1の実施形態では、無線通信を用いる制御システムの例として、列車制御システムに適用した例について説明する。図1は、第1の実施形態にかかる列車制御システムの構成例を示した図である。図1に示すように、本実施形態にかかる列車制御システムは、第1の通信装置101と、第2の通信装置102と、無線中継装置151〜155、161〜165と、列車181とで構成されている。
列車181の位置は、線路内に設置された地上子が記憶する絶対位置を示す情報と、車輪の回転数と、に基づいて特定可能とする。しかしながら、本実施形態は、列車181の位置の特定手法を制限するものではなく、例えば、GPS(Global Positioning System)等を用いても良い。
列車制御システムのネットワークは、IP(Internet Protocol)ネットワークで構成されている。そして、第1の通信装置101と、第2の通信装置102と、無線中継装置151〜155、161〜165と、列車181とは、それぞれ異なるMACアドレス及びIPアドレスが予め割り当てられているものとする。本実施形態では、UDP(User Datagram Protocol)で通信する例とするが、他のプロトコルを用いても良い。
そして、無線中継装置―無線中継装置間、並びに無線中継装置―通信装置を接続する有線ネットワークは、IEEE802.3準拠のEthernet(登録商標)で構成されている。無線中継装置―列車間をつなぐ無線ネットワークは、IEEE802.11準拠のWLAN(Wireless Local Area Network)で構成されている。
第1の通信装置101は、無線中継装置151〜155と有線ネットワークを介して接続されている。本実施形態では、通信装置と複数の無線中継装置とを接続するネットワーク構成がスター型のネットワークとなる例について説明するが、当該ネットワーク構成に限定するものではない。例えば、リングネットワークで通信装置と複数の無線中継装置とが接続されていても良い。
そして、第1の通信装置101は、無線中継装置151〜155を介して、列車181との間で情報の送受信を行う。
第2の通信装置102は、無線中継装置161〜165と有線ネットワークを介して接続されている。そして、第2の通信装置102は、無線中継装置161〜165を介して、列車181との間で情報の送受信を行う。
無線中継装置151〜155、及び無線中継装置161〜165における、無線中継装置―無線中継装置のネットワーク構成は、無線中継装置―通信装置と同様にネットワーク構成を制限するものではない。
図1に示す列車制御システムでは、無線中継装置151〜155、161〜165は、列車181が走行する線路に従って配置されている。そして、無線中継装置151〜155、161〜165は、少なくとも隣接する無線中継装置と通信可能な間隔毎に配置されている。これにより、隣接している他の無線中継装置からのBeaconフレームを受信可能となる。
Beaconフレームには、当該フレームの送信元である無線中継装置を識別するMACアドレスや、当該無線中継装置の能力、当該無線中継装置が含むBSS(Basic Service Set)名などが含まれている。当該BSS名により、無線中継装置が接続されているネットワークグループを識別できる。
そして、本実施形態にかかる無線中継装置151〜155、161〜165は、同一の周波数チャネルが設定されている。本実施形態では、設定されている周波数チャネルをCh1とする。従って、無線中継装置151〜155、161〜165は、隣接する他の無線中継装置からBeaconフレームを受信可能となる。
本実施形態にかかる無線中継装置151〜155、161〜165は、有線通信及び無線通信のネットワークインタフェースを備え、有線・無線ネットワークをブリッジする機能を有する。例えば、列車181から通信装置(例えば、第1の通信装置101、第2の通信装置102)に対して送信された情報は、無線チャネルを介して無線中継装置により受信される。その後、無線中継装置が、列車181から受信した情報を、有線チャネルを介して通信装置に対して送信する。これにより、通信装置は、列車181からの情報を受信できる。
一方、通信装置(例えば、第1の通信装置101、第2の通信装置102)から列車181に送信された情報は、有線チャネルを介し無線中継装置に送信される。その後、無線中継装置が、無線チャネルを介し列車181に対して送信する。これにより、列車181は、通信装置からの情報を受信できる。
そして、第1の通信装置101及び第2の通信装置102等の通信装置は、無線中継装置151〜155、161〜165を介して、走行中の列車181との間で情報の送受信を行うことができる。さらに、情報の送受信を行うことで、走行中の列車181の制御を行うことができる。
また、無線中継装置151〜155、161〜165は、無線ネットワークの機能としてWLANにおけるAP(Access Point)の機能を有する。当該AP機能に従って、各無線中継装置は、定期的にBeaconフレームを送信する。本実施形態では、各無線中継装置が、隣接する他の無線中継装置からのBeaconフレームを受信可能な位置に配置されている。
そして、無線中継装置151〜155、161〜165は、無線通信可能な範囲(例えば両隣)に位置する無線中継装置から受信し、この受信したBeaconフレームに関する情報を有線接続された通信装置(例えば第1の通信装置)に対して送信する。
列車181は、定期的に位置情報と速度、また列車番号など列車制御に関する情報を、通信装置に対して送信している。この時、列車181が通信装置に対して送信する手法は、全ての通信装置宛にブロードキャスト送信やマルチキャスト送信してもよい。また、列車181が、線路上の位置情報と通信可能な通信装置と対応付けたデータベースを有し、当該データベースを参照して、列車181自身の位置情報に従って送信する通信装置を特定し、特定した通信装置にユニキャスト送信を行う方法でも良い。
本実施形態では列車181から通信装置に対して情報の送信が可能であればよく、情報を送信するための実現方法は問わない。列車181の位置情報の取得する手法も、軌道に敷設される地上子で絶対位置を把握しても良く、速度発電機を用いて相対位置を求めても良く、GPSを利用した位置把握でもよく、これら以外の手法で位置を把握しても良い。
次に通信装置について説明する。図2は、本実施形態にかかる第1の通信装置の構成を示したブロック図である。図2に示すように第1の通信装置101は、中継装置情報記憶部201と、通信制御部202と、判定部203と、を備える。例えば、第1の通信装置101は、該経路上で隣接する他の無線中継装置と無線で通信可能な間隔毎に配置された無線中継装置の各々と有線接続されている。なお、第2の通信装置102は、第1の通信装置101と同様の構成を備えているものとして説明を省略する。なお、通信装置が備える通信制御部や判定部の各機能は、本実施形態ではソフトウェアによって実現されるが、これに限定されず、適宜ハードウェアを用いて構成することも可能である。
中継装置情報記憶部201は、無線中継装置毎に、当該無線中継装置に関する情報を記憶する。図3は、本実施形態にかかる中継装置情報記憶部201のテーブル構造を示した図である。図3に示すように、中継装置情報記憶部201は、MACアドレスと、キロ程と、RSSIと、タイムスタンプと、受信Beacon数と、を対応付けて記憶している。通信装置は、中継装置情報記憶部201を参照することで、無線中継装置の位置や、どの無線中継装置とどの通信装置とが接続しているのか把握できる。
MACアドレスは、ネットワーク上で無線中継装置を識別する識別情報となる。“XX.XX.XX.XX.XX.11”は、無線中継装置151を示すMACアドレスとする。“XX.XX.XX.XX.XX.12”は、無線中継装置152を示すMACアドレスとする。“XX.XX.XX.XX.XX.13”は、無線中継装置153を示すMACアドレスとする。“XX.XX.XX.XX.XX.14”は、無線中継装置154を示すMACアドレスとする。“XX.XX.XX.XX.XX.15”は、無線中継装置155を示すMACアドレスとする。
キロ程は、所定の駅からの距離を示しており、線路(経路)上の位置を示す情報である。RSSI(Received Signal Strength Indication)は、他の無線中継装置が、当該無線中継装置から受信したBeaconフレームの信号強度を示している。タイムスタンプは、他の無線中継装置が、当該無線中継装置から最後にBeaconフレームを受信した時刻を示している。受信Beacon数は、当該無線中継装置から他の無線中継装置が受信したBeaconフレームの合計数を示している。
通信制御部202は、送信制御部211と受信制御部212とを備え、ネットワークを介して接続された他の装置との間でデータを送受信する。送受信先となる他の装置は、無線中継装置151〜155の他に、第2の通信装置102などがある。さらには、有線ネットワークを介して、ユーザが使用する通信端末であってもよい。
また、通信制御部202は、列車181から定期的に送信される列車181の位置情報や速度情報を受信するほか、列車181から受信した位置情報や速度情報に基づいて、列車181が走行可能な範囲を通知する。
受信制御部212は、無線中継装置151〜155から、他の無線中継装置から受信したBeaconフレームに関する通信結果情報を受信する。本実施形態では、他の無線中継装置と通信が行われたか否かを示した通信結果情報の例として、Beaconフレームに関する情報を用いた例について説明するが、他の情報を用いても良い。
判定部203は、無線中継装置151〜155から受信した通信結果情報と、中継装置情報記憶部201と、に基づいて、無線中継装置151〜155の各々について故障したか否かを判定する。
本実施形態にかかる判定部203は、1つの無線中継装置のキロ程(位置)と、無線で通信可能な範囲内のキロ程(位置)と中継装置情報記憶部201で対応付けられたIPアドレスで識別される、複数の無線中継装置から受信した通信結果情報に、当該1つの無線中継装置から受信したBeaconフレームの情報が含まれていない場合に、当該1つの無線中継装置が故障していると判定する。本実施形態にかかる判定部203は、当該1つの無線通中継装置が故障しているか否かを判定するために、少なくとも、当該1つの無線中継装置に隣接している2つの無線中継装置の通信結果情報に基づいて判定する。
そして、送信制御部211は、判定部203が故障しているかと判定した場合に、当該判定結果を、ネットワークを介して接続されている(図示しない)ユーザの通信端末に通知する。これにより、ユーザはどの無線中継装置が故障しているのか、すぐに認識することができる。なお、故障しているか否かを示した判定結果は、送信することに制限するものではなく、(図示しない)表示装置等に出力しても良い。判定結果の出力は、ユーザが故障していることを認識できればどのような出力手法を用いても良い。
図1に戻り、本実施形態にかかる列車制御システムにおいて、無線中継装置153が故障した場合に行われる故障検知の手順について説明する。
図1に示す例では、無線中継装置152は、隣接する無線中継装置151及び無線中継装置153の他に、無線中継装置154の送信するBeaconフレームの受信が可能な位置に配置されている。
そして、無線中継装置151〜155、161〜165は、受信したBeaconフレームを保持するためのテーブルを備える。そして、各無線中継装置は、他の無線中継装置から受信したBeaconフレームを復調処理した後、復調処理した情報から送信元アドレスやタイムスタンプ情報などを取得し、受信信号強度と対応付けてテーブルで記憶する。
図4は、無線中継装置152が受信したBeaconフレームを記憶するBeacon情報テーブルの例を示した図である。図4に示すように、Beacon情報テーブルでは、MACアドレスと、RSSIと、タイムスタンプと、受信Beacon数とが対応付けられている。MACアドレスは、Beaconフレームを送信した無線中継装置を識別するアドレスとする。無線中継装置152は、図4に示すBeacon情報テーブルで、受信したBeaconフレームに関する情報(以下、受信Beacon情報とも称す)を記憶する。
無線中継装置が記憶する情報は、上述した情報以外でもよい。例えば、Beacon情報テーブルに、BSS内のロード情報や、接続しているSTA情報やSTA数などが含まれていても良い。また、無線中継装置が保持する情報は、隣接する無線中継装置から受信した情報に限らず、例えば2つ隣の無線中継装置等から受信したBeaconフレームに関する情報を保持しても良い。
無線中継装置153が故障している場合、無線中継装置153からBeaconフレームを送信できないため、無線中継装置152のBeacon情報テーブルは、MACアドレス“XX.XX.XX.XX.XX.11”(無線中継装置151)及び“XX.XX.XX.XX.XX.14”(無線中継装置154)からの受信したBeaconフレームに関するエントリが存在するが、“XX.XX.XX.XX.XX.13”(無線中継装置153)から受信したBeaconフレームに関するエントリは存在しない。
そして、無線中継装置152は、Beacon情報テーブルに格納されているBeacon情報を参照し、受信Beacon数が“100”になったエントリの情報を、第1の通信装置101に送信する。その後、無線中継装置152は、当該エントリの受信Beacon数をリセットする。なお、本実施形態では、第1の通信装置101に送信するための受信Beacon数が100の場合について説明したが、他の数値でも良い。さらには、無線中継装置の各々から受信した受信Beacon数に従って送信することに制限するものではなく、複数の無線中継装置から受信した受信Beacon数の合計が、所定の値(例えば100)になった場合に送信するように制御しても良い。また一つのエントリの受信Beacon数が“100”になった場合に、Beacon情報テーブルに格納されている情報を全て送信するようにしても良い。
なお、本実施形態以外の形態として、第1の通信装置101に送信するためのトリガーは、受信Beacon数以外を条件にしても良い。例えば、無線中継装置がタイマーを有し、タイマーで一定時間経過する毎に受信Beacon情報の送信を行っても良い。他の例としては、接続されている第1の通信装置101が無線中継装置152に対して受信Beacon情報を要求しても良い。第1の通信装置101が各無線中継装置に対し、受信Beacon情報を要求するコマンドはSNMP(Simple Network Management Protocol)といった既存のプロトコルを用いても良い。また独自のソフトウェアによって実現しても良い。
本実施形態にかかる無線中継装置154も、同様に、通信可能な範囲に位置する無線中継装置の受信Beacon情報を、第1の通信装置101に対して送信する。図1に示す例では、無線中継装置154は、隣接する無線中継装置153及び無線中継装置155の他に、無線中継装置161のBeaconフレームの受信が可能な位置に配置されている。
図5は、無線中継装置154が受信したBeaconフレームを記憶するBeacon情報テーブルの例を示した図である。図5に示すように、Beacon情報テーブルでは、MACアドレスと、RSSIと、タイムスタンプと、受信Beacon数とが対応付けられている。無線中継装置154は、図5に示すBeacon情報テーブルで、受信したBeaconフレームに関する情報(受信Beacon情報)を記憶する。
無線中継装置153が故障している場合、無線中継装置153からBeaconフレームを送信できないため、無線中継装置154のBeacon情報テーブルは、MACアドレス“XX.XX.XX.XX.XX.15”(無線中継装置155)及び“XX.XX.XX.XX.XX.16”(無線中継装置161)からの受信したBeaconフレームに関するエントリが存在するが、“XX.XX.XX.XX.XX.13”(無線中継装置153)から受信したBeaconフレームに関するエントリは存在しない。
そして、無線中継装置154は、Beacon情報テーブルに格納されているBeacon情報を参照し、受信Beacon数が“100”になったエントリの情報を、第1の通信装置101に送信する。その後、無線中継装置154は、当該エントリの受信Beacon数をリセットする。なお、本実施形態では、第1の通信装置101に送信するための受信Beacon数が“100”の場合について説明したが、他の数値でも良い。さらに、送信するためのトリガーは、受信Beacon数に制限するものではなく、上述した無線中継装置152と同様に、他の手法を用いても良い。
このように無線中継装置152、154は、定期的に第1の通信装置101に受信Beacon情報を送信する。そして、第1の通信装置101は、受信したBeacon情報に基づいて、故障している、または故障している可能性の高い(以下、“故障している”は、“故障している可能性の高い”を含むものとする。)無線中継装置があるか否かを判定する。本実施形態で判定を行うタイミングは、無線中継装置から受信Beacon情報を受信した場合、一定時間間隔、営業開始時、営業終了時とする。なお、本実施形態は、判定を行うタイミングを制限するものではなく、実施の態様に応じて、適切なタイミングで行われればよい。
そして、第1の通信装置101は、中継装置情報記憶部201を参照し、無線中継装置の位置を認識した後、無線中継装置から受信した受信Beacon情報に基づいて、無線中継装置が故障しているか否かを判定する。
本実施形態では、線路上の両隣の無線中継装置から通信できるような位置に無線中継装置が配置されている。このため、1つの無線中継装置(例えば無線中継装置153)が正常に動作している場合、両隣の無線中継装置(例えば、無線中継装置152、154)は、当該1つの無線中継装置から送信されるBeaconフレームを受信できる。換言すれば、両隣の無線中継装置(例えば、無線中継装置152、154)は、当該1つの無線中継装置が故障しているときは、当該無線中継装置の両隣に位置する無線中継装置ではBeaconフレームを受信できない。そこで、本実施形態にかかる第1の通信装置101は、この条件に基づいて、無線中継装置が故障しているか否かを判定する。
つまり、本実施形態にかかる第1の通信装置101の判定部203は、無線中継装置152、154から受信した受信Beacon情報に、(無線中継装置152、154の隣に位置する)無線中継装置153から受信したBeaconフレームに関する情報が含まれていない場合に、無線中継装置153が故障していると判定する。
本実施形態では、判定部203が、隣接する無線中継装置の両方から受信Beacon情報が含まれていない無線中継装置を故障と判定している。本実施形態では、線路上に従って通信可能な間隔毎に無線中継装置が配置されているため、線路の両端に配置された無線中継装置を除き、1つの無線中継装置に対して複数の無線中継装置が情報の送受信を可能としている。これにより、判定部203は、複数の無線中継装置からの受信Beacon情報に基づいて、1つの無線中継装置について故障しているか否かを判定できる。これにより、判定精度の向上を図ることができる。
次に、本実施形態にかかる第1の通信装置101における、故障判定処理について説明する。図6は、本実施形態にかかる第1の通信装置101における上述した処理の手順を示すフローチャートである。
まず、受信制御部212は、有線で接続されている無線中継装置151〜155の各々から、受信Beacon情報を受信する(ステップS601)。本実施形態では、無線中継装置151〜155は、100回Beaconフレームを受信する毎に、第1の通信装置101に対して、受信Beacon情報を送信する。
そして、判定部203は、始業時又は前回の判定から所定の時間が経過した、又は営業終了時間になったか判定する(ステップS602)。所定の時間が経過した、又は営業終了時間になっていないと判定した場合(ステップS602:No)、所定の時間が経過した、又は営業終了時間になるまで待機する。なお、本実施形態では、所定の時間経過時又は営業終了時に判定を行うこととしたが、判定するタイミングを制限するものではなく、例えばBeaconフレームの受信時や始業時などであっても良い。
一方、判定部203が、所定の時間が経過した又は営業終了時間になったと判定した場合(ステップS602:Yes)、受信した受信Beacon情報に基づいて、1つの無線中継装置について、両隣を含む複数の無線中継装置のうちいずれか1つ以上がBeaconフレームを複数回又は一定時間連続で受信しているか否かを判定する(ステップS603)。複数回又は一定時間連続で受信していると判定した場合(ステップS603:Yes)、当該無線中継装置は故障していないものとして、ステップS606の処理に移行する。
一方、判定部203が、複数の無線中継装置全てが、一つの無線中継装置から複数回又は一定時間連続で受信していないと判定した場合(ステップS603:No)、Beaconフレームを送信しているはずの、当該1つの無線中継装置が故障しているものと判定する(ステップS604)。
そして、送信制御部211が、当該1つの無線中継装置が故障していることを、ユーザ(が使用している端末)に対して通知する(ステップS605)。
その後、判定部203が、全ての無線中継装置に対して故障判定が終了したか否かを判定する(ステップS606)。故障判定が終了していない場合(ステップS606:No)、ステップS603から処理を開始する。
一方、判定部203が、全ての無線中継装置に対して故障判定を終了したと判定した場合(ステップS606:Yes)、再びステップS601から処理を行う。なお、営業終了時の場合には、全ての処理を終了する。
ところで、無線通信では、通信路の見通しが確保されている場合でもフェージングや雑音の影響により常時連続して正しくBeaconフレームを受信することは困難である。そのため、Beaconフレームをたまたま1回受信できなかった場合に、判定部203が、当該Beaconフレームの送信元となる無線中継装置を故障と判定すると、誤った判定を行う可能性がある。そこで、本実施形態にかかる判定部203の故障の判定方法として、複数の無線中継装置が複数回または一定時間連続して受信できなかった場合に限り、故障と判定する。これにより、故障検知の精度をさらに高めることができる。
本実施形態では、判定部203が、各無線中継装置がBeaconフレームを受信したか否かに基づいて、無線中継装置が故障したか否かを検出する例について説明した。しかしながら、受信した回数で故障を検知する例に制限するものではなく、例えば、RSSIといった電波の強さを用いて、無線中継装置の故障検知、及び故障の予兆、また設置環境の変化を検知してもよい。例えば、ある無線中継装置で受信したBeaconフレームのRSSIが、全て小さい場合は当該無線中継装置の受信機能の故障の可能性がある。また、ある特定の無線中継装置から送信されたBeaconフレームのRSSIが所定の値より小さいと複数の無線中継装置で測定された場合、当該特定の無線中継装置の送信機能の故障の可能性がある。なお、所定の値は、実施態様に応じて定められるものとする。また、無線中継装置の位置は固定されているので、定常的にRSSIの平均値は大きく変化しない。そこでRSSIを一定時間間隔で監視し、平均値の変位を観測することで、故障の前兆や、無線中継装置感に何らかの遮蔽物が存在するといった環境の変化も読み取ることもできる。
本実施形態にかかる列車制御システムにおいて、故障検知手法を通常営業時に行うと、故障検知用の情報を取得するためのパケットがネットワーク内を流れるため、ネットワークの負担が増大する。そこで、故障検知を通常営業時には行わず、異常発生時の故障要因の特定、営業開始前のシステム起動直後、営業終了後のシステム停止直前などに行っても良い。このように特定の状況に限定して故障検知を行うことで、ネットワーク帯域を消費してもシステムに大きな影響を与えることを抑止できる。
本実施形態では、故障の判定を通信装置側で行う例について説明したが、故障の判定を通信装置で行うことに制限するものではなく、無線中継装置と有線で接続された装置であればよい。例えば、無線中継装置が有線で他の無線中継装置と接続されている場合に、通信装置のように別途装置を備えるのではなく、1つの無線中継装置に、通信装置の機能を含めても良い。
本実施形態にかかる通信装置では、1つの無線中継装置の故障か否かの判定を、複数の無線中継装置からの受信Beacon情報に基づいて行う。通信装置は、この受信Beacon情報を受信するか否かにより、有線ネットワークが故障しているか否かを判定できる。そして、受信した受信Beacon情報に、一つの無線中継装置からのBeaconフレームに関する情報が含まれているか否かにより、当該一つの無線中継装置が故障しているか否かを判定する。当該手法により、通信装置は、無線ネットワーク、有線ネットワークのどちらが故障しているのか判定することができる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、第1の通信装置101が、有線で接続された無線中継装置151〜155からの受信Beacon情報に基づいて故障判定を行う例について説明した。しかしながら、このような判定手法に制限するものではない。そこで、第2の実施形態では、1つの通信装置が管理している無線中継装置と、他の通信装置が管理している無線中継装置と、が隣接している場合の判定手法について説明する。
なお、列車制御システムのネットワーク構成は、第1の実施形態で示した図1と同様として説明を省略する。第2の実施形態では、第1の通信装置、及び第2の通信装置の処理が、第1の実施形態と異なる。
図7は、第2の実施形態にかかる第1の通信装置の構成を示すブロック図である。本実施形態にかかる第1の通信装置700は、上述した第1の実施形態にかかる第1の通信装置101とは、通信装置情報記憶部701が追加され、通信制御部202とは処理が異なる通信制御部702に変更され、判定部203とは処理が異なる判定部703に変更されている点で異なる。なお、第2の通信装置は、第1の通信装置700と同様の構成を備えているものとして、説明を省略する。
そして本実施形態にかかる第1の通信装置700は、第2の通信装置に接続されている無線中継装置161からの受信Beacon情報をさらに用いて、無線中継装置(例えば無線中継装置155)の故障を検出する。図1に示すように、第2の通信装置に接続されている無線中継装置161は、無線中継装置155と隣接している。このため、第1の通信装置700は、無線中継装置155の故障を検出する際に、無線中継装置161の受信Beacon情報を用いることで、無線中継装置155の故障の検出精度を向上できる。
通信装置情報記憶部701は、第1の通信装置700の受信Beacon情報の要求先となる通信装置の情報を記憶している。図8は、通信装置情報記憶部701のテーブル構造を示した図である。図8に示すように、通信装置情報記憶部701は、装置IDと、IPアドレスと、MACアドレスと、位置と、を対応付けて記憶している。
装置IDは、要求先の通信装置を識別するIDとする。位置は、線路上における第1の通信装置101との相対的な位置関係を示している。例えば、位置が“上”とは、無線中継装置151と隣接する上流側に配置されていることを意味し、位置が“下”とは、無線中継装置155と隣接する下流側に配置されていることを意味する。これにより、通信装置情報記憶部701を参照することで、受信Beacon情報の送信要求先となる通信装置を特定できる。
通信制御部702は、第1の実施形態にかかる通信制御部202とは、送信制御部211と処理が異なる送信制御部711に変更され、受信制御部212と処理が異なる受信制御部712に変更されている点で異なる。
送信制御部711は、第1の実施形態にかかる送信制御部211による送信制御の他に、通信装置情報記憶部701に記憶された通信装置の情報に基づいて、通信装置に対して、当該通信装置が管理する無線中継装置からの受信Beacon情報の送信要求を送信する。
例えば、送信制御部711は、有線ネットワークを介して、第1の通信装置700と接続された1つの無線中継装置(例えば無線中継装置155)と通信可能な範囲に位置し且つ当該第1の通信装置700との間で送受信できない他の無線中継装置(例えば無線中継装置161)と接続された第2の通信装置に対して、受信Beacon情報の送信要求を送信する。
受信制御部712は、第1の実施形態にかかる受信制御部212による送信制御の他に、他の通信装置(例えば、第2の通信装置)から、送信制御部711が送信した送信要求に対応する受信Beacon情報(例えば、無線中継装置161から受信したBeaconフレームに関する情報を含む)を受信する。
判定部703は、第1の通信装置700と有線で接続された複数の無線中継装置151〜155から受信した受信Beacon情報に加えて、他の無線中継装置(例えば第2の通信装置)から受信した受信Beacon情報に基づいて、1つの無線中継装置が故障しているか否かを判定する。
本実施形態にかかる列車制御システムは、図1と同様のネットワーク構成のため、図1を用いて説明する。図1に示すように、接続先の通信装置に拘わらず、無線中継装置は、隣接している無線中継装置からBeaconフレームを受信可能な間隔毎に配置されている。このため、本実施形態にかかる第1の通信装置700は、無線中継装置161の受信Beacon情報を用いて、無線中継装置155の故障検知を行う。以下に、無線中継装置155が故障している場合の手順について説明する。
無線中継装置154は、隣接する無線中継装置の受信Beacon情報を第1の通信装置700に送信する。図1に示すように、無線中継装置154は無線中継装置153と無線中継装置155のBeaconフレームの受信が可能である。
そして、無線中継装置155が故障している場合、無線中継装置154は、無線中継装置155からBeaconフレームを受信できない。このため、無線中継装置154の受信Beacon情報には、無線中継装置155のMACアドレスに関するエントリが含まれなくなる。図9は、無線中継装置154の受信Beacon情報のテーブル構造を示した図である。図9に示すように、無線中継装置154の受信Beacon情報には、無線中継装置153のエントリのみ含まれている。無線中継装置154は、図9に示す受信Beacon情報に基づいて、無線中継装置153の受信Beacon数が“100”となった時に、当該テーブルの情報を、第1の通信装置700に送信し、受信Beacon数をリセットする。無線中継装置154のテーブルの情報を送信するトリガーは、第1の実施形態と同様に、その他の条件であっても構わない。
同様に無線中継装置155に隣接する無線中継装置161も、隣接する無線中継装置の受信Beacon情報を、第2の通信装置に送信する。図1に示す例では、無線中継装置161は無線中継装置155と無線中継装置162からBeaconフレームを受信できる。しかし、無線中継装置155が故障しているため、無線中継装置161は無線中継装置155からBeaconフレームを受信できない。そのため、無線中継装置161の受信Beacon情報のテーブルには、無線中継装置155のMACアドレスのエントリは存在せず、無線中継装置162のエントリのみ含まれることになる。図10は、無線中継装置161の受信Beacon情報のテーブル構造を示した図である。無線中継装置161は、図10に示す受信Beacon情報に基づいて、無線中継装置162の受信Beacon数が“100”となった時に、当該テーブルの情報を第2の通信装置に送信し、受信Beacon数をリセットする。無線中継装置161のテーブルの情報を送信するトリガーは、第1の実施形態と同様に、その他の条件であっても構わない。
このように無線中継装置154は第1の通信装置700に、無線中継装置161は第2の通信装置に、受信Beacon情報を定期的に送信している。また、各通信装置も、定期的に受信した受信Beacon情報を、隣接している通信装置に送信している。隣接している通信装置に送信するために、通信装置は、通信装置情報記憶部を参照する。
図8に示す、第1の通信装置700が記憶する通信装置情報記憶部701の場合、第1の通信装置700の上流に第0の通信装置が、第2の通信装置の下流に第2の通信装置が接続されていることを認識できる。第2の通信装置も、同様の形式の通信装置情報記憶部を保持している。各通信装置は、通信装置情報記憶部に基づいて、通信装置に対して受信Beacon情報を送信する。例えば、第1の通信装置700は、無線中継装置151〜155の受信Beacon情報を、第0の通信装置及び第2の通信装置に送信する。また、第2の通信装置は、無線中継装置161〜165の受信Beacon情報を、第1の通信装置及び第3の通信装置に送信する。
そして、各通信装置は、各無線中継装置から受信した受信Beacon情報の他に、他の通信装置から受信した受信Beacon情報を用いて、故障している無線中継装置があるか否かを判定する。
第1の通信装置700は、無線中継装置がどの位置に設置されているか中継装置情報記憶部201を参照して認識できる。無線中継装置155が故障していない場合、第1の通信装置700は、無線中継装置155からのBeaconが少なくとも無線中継装置154及び無線中継装置161に通知されると認識している。しかしながら、無線中継装置155が故障している場合、第1の通信装置700は、無線中継装置155から受信Beacon情報を受信せず、無線中継装置154及び無線中継装置161から受信Beacon情報を受信するが、受信した受信Beacon情報には、無線中継装置155の情報が欠落している。
そして、第1の通信装置700の判定部703は、隣接する無線中継装置の両方から受信した受信Beacon情報に、無線中継装置から送信されたBeaconフレームに関する情報が含まれていない場合に、故障と判断する。これにより、判定部703は、無線中継装置155を故障していると判定する。
一方、第2の通信装置は、隣接する無線中継装置の両方から受信した受信Beacon情報に、Beaconフレームのエントリのない無線中継装置が存在しないため、故障している無線中継装置はないと判定する。
このように、隣接する無線中継装置で接続されている通信装置が異なる場合でも、通信装置間で無線中継装置からの受信Beacon情報を送受信している。これにより、各通信装置は、無線中継装置の故障検知が可能となる。
本実施形態にかかる通信装置では、故障検出対象の無線中継装置に隣接する無線中継装置の接続先が、自装置と異なる場合でも、受信Beacon情報を取得できるので、検出精度の向上を図ることができる。
このように、第1〜第2の実施形態にかかる通信装置では、上述した判定を行うことで、列車181を用いずに、無線中継装置の故障を検知することができる。
(第3の実施形態)
第1〜第2の実施形態では、列車を用いずに無線中継装置の故障を判定する例について説明した。第3の実施形態では、列車を用いて、無線中継装置の故障を検出する例について説明する。
図11は、第3の実施形態にかかる第1の通信装置の構成を示すブロック図である。本実施形態にかかる第1の通信装置1100は、上述した第2の実施形態にかかる第1の通信装置700とは、通信制御部702とは処理が異なる通信制御部1101に変更され、判定部703とは処理が異なる判定部1102に変更されている点で異なる。なお、第2の通信装置1200は、第1の通信装置1100と同様の構成を備えているものとして、説明を省略する。
通信制御部1101は、第2の実施形態にかかる通信制御部702とは、送信制御部711と処理が異なる送信制御部1111に変更され、受信制御部712と処理が異なる受信制御部1112に変更されている点で異なる。
送信制御部1111は、無線通信インタフェースを有し且つ線路に従って移動する無線通信端末を含む列車181が所定の位置(例えば図12の位置B)に移動する予定の場合、当該所定の位置(位置B)から無線で通信可能な位置に存在する所定の無線中継装置(通信中継装置153)に対する通信要求を、当該所定の無線中継装置以外の無線中継装置(無線中継装置151)を介して、列車181に送信する。
受信制御部1112は、列車181から、所定の無線中継装置(例えば無線中継装置153)以外の無線中継装置(例えば無線中継装置154)を介して、送信制御部1111から送信された通信要求に基づいて、所定の無線中継装置(例えば無線中継装置153)との間で通信が行われたか否かを示した通信結果情報を受信する。
判定部1102は、列車181から受信した通信結果情報に、列車181が所定の位置から通信可能な位置に存在する所定の無線中継装置と通信が行われた結果が含まれていない場合に、所定の無線中継装置が故障していると判定する。
図12は、本実施形態にかかるネットワーク構成による故障検出を示した図である。図12に示すネットワーク構成は、第1〜第2の実施形態で示した構成と同様とする。
図12に示す例では、列車181が移動している場合とする。そして、第1の通信装置1100が、無線中継装置153の故障を検知する例について説明する。列車181は、通信装置に対して定期的に位置や速度情報を送信している。このため、各通信装置は、常に列車181の位置などを把握している。また、列車181の移動に伴い、隣接する通信装置間で、管理下の列車181に関する情報の送受信を定期的に行う。
例えば、列車181は、第1の通信装置1100に対して位置情報を送信する。これにより、第1の通信装置1100は、列車181が地点Aに存在することを認識する。そして、(1)第1の通信装置1100の送信制御部1111は、無線中継装置151を介して、列車181に対して、地点B到達時に無線中継装置153に対して試験接続する要求を送信する。
その後、(2)当該要求を受信した列車181は、地点B到達時に、無線中継装置153に対して試験接続を行う。試験接続の手法は特に制限するものではないが、例えば、IEEE802.11のSTAがAPに対する接続手順に従う。
その後、(3)列車181は、試験接続の結果を、地点Cで無線中継装置153ではない無線中継装置155を介して、第1の通信装置1100に送信する。
そして、第1の通信装置1100の判定部1102は、列車181から受信した試験接続の結果に基づいて、無線中継装置153が故障しているか否かを判定する。
なお、本実施形態では、列車181が試験接続を行い、この試験結果を通信装置に送信する例について説明したが、試験接続ではなく通常の接続を行い、その接続結果を通知しても良い。
なお、本実施形態にかかる列車181を用いた故障の検出を、第1〜第2の実施形態で示した故障の検出手法と組み合わせても良い。例えば、第1〜第2の実施形態で示した故障の検出手法で、故障と検出された無線中継装置に対して、列車181が試験接続する等が考えられる。
第3の実施形態では、通信装置から、列車181に対して試験接続の指示を行い、列車181が試験接続結果を通信装置に送信している。第3の実施形態にかかる通信装置は、列車181の試験接続結果に基づいて無線中継装置が故障しているか否かを判定することで、隣接する無線中継装置に依存せずに、無線中継装置の故障を検出できる。
(第4の実施形態)
第1〜第3の実施形態では、無線中継装置の各々が使用する周波数チャネルが同一である場合について説明した。しかしながら、干渉を避けるために、複数の周波数チャネルを用いる場合もある。そこで、第4の実施形態では、一つおきに無線中継装置の周波数チャネルを異ならせる例について説明する。
図13は、本実施形態にかかる列車制御システムのネットワーク構成を示した図である。通信装置と無線中継装置との接続形態といった基本的なネットワーク構成は、上述した実施形態と同様な部分について説明を省略する。
本実施形態にかかる列車制御システムでは、無線中継装置の周波数チャネルが一つおきに異ならせている。図13に示す例では、通常、無線中継装置151、153、155、162、164の周波数チャネルがch1に設定され、無線中継装置1351、1352、1361、1362、1363の周波数チャネルがch6に設定されている。このネットワーク構成において、例えば、ch1の無線中継装置153の電波は隣接する無線中継装置1351と無線中継装置1352に届くものの、無線中継装置1351と無線中継装置1352の周波数チャネルはch6のため、受信することはできない。
そこで、通信装置は、有線ネットワークで接続されている無線中継装置に対し、一時的に使用する周波数チャネルを隣接する無線中継装置と合わせるように指示する。指示を行う際に、通信装置は、接続されている無線中継装置に対して、元々使用していたチャネル1番又はチャネル6番にするように指示を行っても良いし、Beaconフレーム受信用に別のチャネル11番にするように指示を行っても良い。また指示を出す対象は、通信装置置と接続されている全ての無線中継装置であってもよいし、特定の無線中継装置であってもよい。
図14は、第4の実施形態にかかる第1の通信装置の構成を示すブロック図である。本実施形態にかかる第1の通信装置1301は、上述した第2の実施形態にかかる第1の通信装置700とは、チャネル変更部1401が追加され、通信制御部702とは処理が異なる通信制御部1402に変更されている点で異なる。なお、第2の通信装置1302は、第1の通信装置1301と同様の構成を備えているものとして、説明を省略する。
チャネル変更部1401は、故障か否かを判定するタイミングで、当該判定対象となる無線中継装置に対して、隣接する無線中継装置と同じ周波数チャネルになるように、通信制御部1402を介して指示する。
通信制御部1402は、第2の実施形態にかかる通信制御部702とは、送信制御部711と処理が異なる送信制御部1411に変更されている点で異なる。
送信制御部1411は、送信制御部702が行う送信制御の他に、無線中継装置に対して通信結果情報の要求を送信する際、チャネル変更部1401からの指示に従って、当該無線中継装置から通信可能な位置に存在する無線中継装置の周波数チャネルに合わせるよう、周波数チャネルの変更要求を送信する。
また、通信制御部1402は、受信制御部712が受信Beacon情報を受信した後に、無線中継装置に対して、変更前の周波数チャネルに変更する変更要求を送信する。
そして、第1の通信装置1301から指示を受けた無線中継装置は、使用する周波数チャネルを変更し、隣接する無線中継装置のBeacon情報を受信する。そして、第1の通信装置1301は、周波数チャネル変更を要求してから一定時間後に、周波数チャネルの変更の要求先である無線中継装置に対して、受信Beacon情報を抽出する指示を行う。
当該指示を受け付けた無線中継装置は、有線で接続されている通信装置に対して、受信Beacon情報を送信する。これにより、通信装置は、無線中継装置から受信Beacon情報を受信できる。これにより、上述した実施形態と同様に、無線中継装置の故障検知が可能となる。
本実施形態では、故障検知用に無線中継装置の使用する周波数チャネルを一時的に変更していたため、受信Beacon情報を受信した後に、通信装置の送信制御部1411は、無線中継装置の使用する周波数チャネルを元に戻す必要がある。送信制御部1411が、無線中継装置の使用する周波数チャネルを元に戻すタイミングは様々なタイミングが考えられる。例えば、通信装置の受信制御部712が受信Beacon情報を受信したことトリガーとして、送信制御部1411が、無線中継装置に対して元の周波数チャネルに戻すように指示してもよい。また、無線中継装置が、通信装置に対して受信Beacon情報の送信した後に、元の周波数チャネルに自発的に戻っても良い。
本実施形態にかかる通信装置では、無線中継装置の受信Beacon情報を抽出する際に、一時的に無線中継装置の使用する周波数チャネルを変更する。このため、無線中継装置が列車181と通信を行っている状況では、列車181が通信不可能になる可能性がある。各通信装置は、接続している無線中継装置と、列車181とが通信を行っていることは把握できるので、各通信装置が受信Beacon情報を抽出する際、無線中継装置と列車との間で通信を行っていない状況下で、故障検出をするように処理を行うことが好ましい。
本実施形態にかかる列車制御システムでは、通常、周波数チャネルを異ならせることで、隣接する無線中継装置の間で干渉が生じることを抑止できる。そして、故障検出を行う際に、周波数チャネルを合わせることで、上述した実施形態と同様の処理で、故障検出を行うことができる。
(第5の実施形態)
上述した実施形態では、無線中継装置が送信するBeaconフレームの受信状況により、通信装置が、受動的に無線中継装置の故障検知を行っていた。本実施形態では、Beaconフレームを用いず、通信装置が能動的に無線中継装置の故障検知を行う例について説明する。
本実施形態のネットワーク構成は、図1と同様として説明を省略する。本実施形態にかかる無線中継装置は、IEEE802.11準拠のAP機能のみではなくSTA機能も備えている。そして、本実施形態では、STA機能を用いて故障検出を行う。
図15は、第5の実施形態にかかる第1の通信装置の構成を示すブロック図である。本実施形態にかかる第1の通信装置1500は、上述した第2の実施形態にかかる第1の通信装置700とは、通信制御部702とは処理が異なる通信制御部1501に変更され、判定部703と処理が異なる判定部1503に変更されている点で異なる。なお、第2の通信装置は、第1の通信装置1500と同様の構成を備えているものとして、説明を省略する。
通信制御部1501は、第2の実施形態の通信制御部702とは、送信制御部711と処理が異なる送信制御部1511に変更されている点で異なる。
送信制御部1511は、他の無線中継装置(例えば無線中継装置153)とSTA機能を用いて通信リンクを確立させる要求を、当該他の無線中継装置に隣接する無線中継装置(例えば無線中継装置1351、1352)に対して送信する。なお、隣接している無線中継装置(無線中継装置1351、1352)は、中継装置情報記憶部201を参照することで、特定される。
受信制御部712は、当該要求の送信先の無線中継装置(例えば無線中継装置1351、1352)から、他の無線中継装置(例えば無線中継装置153)と通信リンクが確立したか否かを示した接続結果情報を受信する。
判定部1503は、無線中継装置(例えば無線中継装置1351、1352)から受信した接続結果情報に、他の無線中継装置(例えば無線中継装置153)と通信リンクを確立できた旨を示す結果が含まれていなかった場合に、他の無線中継装置(例えば無線中継装置153)が故障していると判定する。本実施形態では、判定部1503が、両隣の無線中継装置(例えば無線中継装置1351、1352)との間で通信リンクを確立しなかった場合に、無線通中継装置(例えば無線中継装置153)を故障と検出する。
次に故障を検出するための本実施形態における処理手順について説明する。第1の通信装置1500の判定部1503は、無線中継装置153の故障検知を行うため、中継装置情報記憶部201から、無線中継装置153に隣接する無線中継装置を検索する。そして、判定部1503は、無線中継装置153の隣接無線中継装置が無線中継装置152と無線中継装置154であることを認識できる。
そこで、送信制御部1511が、無線中継装置152と無線中継装置154に対して、無線中継装置153へ試験接続を行う指示を送信する。その際、送信制御部1511が、無線中継装置152、154に対して、無線中継装置153のIPアドレスやMACアドレスを送信しても良い。
指示を受けた無線中継装置152は、IEEE802.11におけるSTAがAPに接続を行う手順に従い、無線中継装置153に対して接続を試みる。そして、無線中継装置152は、当該接続結果を、第1の通信装置1500に送信する。
同様に、無線中継装置154も無線中継装置153に対し接続を試みる。そして、無線中継装置154は、当該接続結果を、第1の通信装置1500に送信する。
この試験接続の成功、失敗の判断基準は、Authentication手続きの完了まで、Association手続きの完了まで、実際にデータの送受信が可能になるまでのいずれでもよく、本実施形態は制限を設けるものではない。
受信制御部712は、無線中継装置152、154の両方から無線中継装置153に対する接続結果を受信する。
判定部1503は、接続結果が両方とも失敗の場合、無線中継装置153を故障と判定する。本実施形態では、隣接する無線中継装置の両方の接続結果が失敗の場合、該当する無線中継装置を故障と判断しているが、隣接する無線中継装置のうち片方の接続結果が失敗の場合に、該当する無線中継装置を故障と判断しても良い。
なお、本実施形態では、送信制御部1511が、隣接する無線中継装置の両方に対して試験接続の指示を送信しているが、必ずしも両方同時に試験接続の指示を送信する必要はなく、片方ずつ試験接続の指示を送信しても良い。
本実施形態では、故障検知開始のタイミングについて制限するものではないが、例えば、システム起動時に全無線中継装置に対して本実施形態の故障検知方法を実施することで、起動時の自動点検に応用可能である。また、第1〜第2の実施形態と組み合わせ、第1〜第2の実施形態で行った故障検出手法を用いて、無線中継装置に異常を検出した場合に、本実施形態の故障検出手法を用いても良い。これにより、故障検知精度を向上させることができる。
本実施形態においては、無線中継装置がSTA機能を備える。そして、通信装置が、無線中継装置に対して、当該STA機能で他の無線中継装置と接続を指示する。当該指示に従って、無線中継装置が、TA機能により一時的に疑似列車となり、隣接する無線中継装置に対して試験接続を試みる。当該接続を行うことで、故障の検出精度を向上させることができる。
(第6の実施形態)
第1〜第5の実施形態では、通信装置が無線中継装置の故障検知を行っていた。第6の実施形態では、無線中継装置のみで互いの無線中継装置の故障検知を行う方法を説明する。
本実施形態のネットワーク構成は、図1と同様とする。そして、本実施形態にかかる列車制御システムに含まれる無線中継装置について説明する。
図16は、第6の実施形態にかかる無線中継装置1600の構成を示したブロック図である。図16に示す無線中継装置1600は、中継装置情報記憶部1601と、有線通信制御部1602と、判定部1603と、無線通信制御部1604と、を備える。そして、無線中継装置1600は、有線ネットワークを介して接続された無線中継装置の故障検出を行う。
中継装置情報記憶部1601は、有線ネットワークを介して接続された無線中継装置に関する情報を記憶する。図17は、中継装置情報記憶部1601のテーブル構造を示した図である。図17に示すように、中継装置情報記憶部1601は、MACアドレスと、RSSIと、タイムスタンプと、受信Beacon数と、隣接フラグと、他無線中継装置のMACアドレスと、を対応付けて記憶している。無線中継装置は、中継装置情報記憶部1601を参照することで、隣接している他の無線中継装置を把握できる。
隣接フラグは、当該エントリが当該隣接している無線中継装置であるか否かを示している。他無線中継装置は、当該エントリの無線中継装置に隣接する無線中継装置であって、無線中継装置1600と異なる無線中継装置のMACアドレスを示している。
図16に示す中継装置情報記憶部1601では、MACアドレスと、他無線中継装置のMACアドレスと、を対応付けているため、無線通中継装置は、受信Beacon情報の受信先の無線中継装置を特定できる。
中継装置情報記憶部1601が、第1の実施形態にかかる中継装置情報記憶部201と異なる点は、常に受信可能であるべき無線中継装置であるか否かが隣接フラグとして含まれている点と、受信可能な無線中継装置に隣接している他の無線中継装置を示すMACアドレスを含んでいる点である。
有線通信制御部1602は、送信制御部1611と、受信制御部1612と、を備え、ネットワークを介して接続された他の無線中継装置との間でデータを送受信する。送受信するデータには、受信Beacon情報も含まれている。
判定部1603は、受信Beacon情報に基づいて、他の無線中継装置が故障しているか否かを判定する。
無線通信制御部1604は、列車181や、通信可能な範囲に位置する無線中継装置と、の間で情報を送受信する。
本実施形態では、第1の無線中継装置1600が、2つ隣に存在する第3の無線中継装置の情報を用いて、これらの間に存在する第2の無線中継装置の故障検知を行う方法について説明する。
無線中継装置1600が、無線通信制御部1604が受信する、他の無線中継装置のBeaconフレームに基づいて、他の無線中継装置の故障検知を行う。故障検知の流れは、基本的に第1の実施形態と同様とする。故障検知を行うトリガーは、どのような条件でも良いが、例えば、始業時、営業終了時、所定の期間毎、Beaconフレームを一定数受信時、又は通信装置から故障検知を行う指示があった場合などが考えられる。
故障検知を行うトリガーが生じた場合に、第1の無線中継装置1600の無線通信制御部1604は、当該装置と隣接する第2の無線中継装置から、Beaconフレームを受信する。また、無線通信制御部1604は、図17を参照すると、自装置の他に、第2の無線中継装置のBeaconフレームを受信している装置が、第3の無線中継装置であることが認識できる。
そこで、第1の無線中継装置1600の送信制御部1611は、有線ネットワークを介して、第3の無線中継装置に対し、第2の無線中継装置から受信した受信Beacon情報の送信要求を送信する。
第3の無線中継装置は、第1の無線中継装置1600に対して、自装置が受信した受信Beacon情報を送信する。この時、第3の無線中継装置は、保持している全ての受信Beacon情報を送信しても良いし、第2の無線中継装置に関わる受信Beacon情報のみ送信しても良い。
これにより、第1の無線中継装置1600が、第3の無線中継装置から、受信Beacon情報を受信できる。その後、第1の無線中継装置1600の判定部1603は、受信した受信Beacon情報と、自装置の無線通信制御部1604で受信された受信Beacon情報と、に基づいて、第2の無線中継装置から送信されたBeaconフレームが正しく受信できたか否かを判定する。
判定部1603は、第1の無線中継装置1600と第3の無線中継装置の双方で第2の無線中継装置が送信したBeaconフレームの受信を確認できなかった場合、第2の無線中継装置が故障であると判定する。第1の無線中継装置1600は、第1の通信装置に対して、故障と判定した無線中継装置に関する情報を送信しても良いし、送信しなくとも良い。
また無線中継装置153は第1の通信装置1500のみではなく、周囲の無線中継装置や通過する列車に対しても、無線中継装置154の故障を通知しても良い。
本実施形態では、第1の無線中継装置が、無線で受信可能な隣接する2つの無線中継装置に対して、故障を検知する手法について説明した。しかしながら、故障の検出対象を、無線で受信可能な隣接する2つの無線中継装置に制限するものではなく、ネットワーク内に存在する他の無線中継装置についても故障検知を行っても良い。この場合は、第1〜第4で示した通信装置の機能や動作をそのまま無線中継装置に搭載して実施することと同様となるため、説明を省略する。
上述した第1〜第2、第4〜第6に実施形態にかかる通信装置及び無線中継装置は、列車181を用いずに無線中継装置の故障検知を行うことを可能とした。
上述した第1〜第2、第4〜第6の実施形態にかかる通信装置では、複数の無線中継装置の受信結果を用いることで故障検知精度を向上できる。さらには、無線ネットワーク、有線ネットワークのどちらが故障しているのか判定可能な故障検知方法を提供することができる。
上述した実施形態では、列車制御システムを例に説明した。しかしながら、列車制御システムに制限するものではなく、他の制御システムに適用しても良い。適用可能な制御システムは、無線中継装置が経路に従って配置されていればよく、例えば、道路(経路)を走行する車両に関する制御システム(例えば、ITS(Intelligent Transport System))や、経路に従って製品が流れる制御システムに適用しても良い。さらには、スマートグリッドにおけるスマートメータなどに用いることが可能である。これら制御システムも、列車保安システム同様、ネットワーク内の機器故障のための検査員などを必要とせずに、リアルタイムで遠隔地から監視可能になることで、ダウンタイムの削減、コストの削減が可能となる。
上述した実施形態にかかる通信装置、及び無線中継装置のハードウェア構成について説明する。図18は、通信装置、及び無線中継装置のハードウェア構成を示した図である。図18に示すように、通信装置、及び無線中継装置は、CPU1701と、通信I/F1702と、HDD1703と、ROM(Read Only Memory)1704と、RAM1705と、を備え、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。通信I/F1702は、通信装置であれば有線I/Fを、無線中継装置であれば有線I/F及び無線I/Fを備えている。
本実施形態の通信装置、及び無線中継装置で実行される通信制御プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
また、本実施形態の通信装置、及び無線中継装置で実行される通信制御プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の通信装置、及び無線中継装置で実行される通信制御プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
また、本実施形態の通信制御プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
本実施形態の通信装置、及び無線中継装置で実行される通信制御プログラムは、上述した各部を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU1701がHDD1703から通信制御プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置(RAM1705)上にロードされ、上記各部が主記憶装置(RAM1705)上に生成されるようになっている。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。