JP5683841B2 - 熱線遮蔽フィルム、これを用いた熱線遮蔽ガラス、及び複層ガラス - Google Patents

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本発明は、ガラスに貼着して用いる熱線遮蔽フィルム、この熱線遮蔽フィルムを用いた熱線遮蔽ガラス、及び複層ガラスに関する。
従来から、オフィスビル等の建築物及びバス、乗用車、電車等の車両・鉄道等の空調負荷を低減するために、これらの窓に、太陽光中の近赤外線(熱線)を遮蔽する機能や、室内から放射される熱線を反射する機能が求められている。熱線を遮蔽又は反射するガラスとして、ガラス自体にFe、Cr、Tiなどのイオンを導入して熱線吸収性を持たせた練り込み型の熱線吸収ガラス、金属酸化物膜を蒸着させた熱線反射ガラス、インジウム錫酸化物(ITO)や酸化錫(ATO)などの透明導電膜の薄膜を乾式成膜したもの、金属酸化物膜/Ag膜等を主成分とする貴金属膜/金属酸化物膜を積層した熱線遮蔽膜(Low−E膜ともいう)が形成された熱線遮蔽ガラス(特許文献1)等が開発され、実用化されている。
このような熱線遮蔽ガラス(特に、Low−E膜が形成されたもの)は、他のガラス板と所定の間隔(空気層)を介して対向するように配置させて、複層ガラスとすることで、更に断熱性を付与されたものも開発されている(特許文献2)。複層ガラスによれば、冷暖房による消費エネルギーを、更に軽減することができる。
また、高い熱線遮蔽性を有し、且つ高い可視光透過率を実現する熱線遮蔽ガラスとして、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物((複合)タングステン酸化物ともいう)の微粒子とUV励起着色防止剤を含むコーティング膜をガラス基板上に形成したものが開発されている(特許文献3)。
一方、窓ガラス等のガラス板に貼着して用いる、熱線遮蔽フィルム(熱線遮蔽層及び粘着剤層を有する)についても開発されている(例えば、特許文献4)。特許文献1に記載された熱線遮蔽ガラスのLow−E膜は、スパッタリング法等の真空成膜方式により形成されるため大型装置が必要となり、製造コストが高いものになるが、特許文献4のようなフィルムを用いれば、低コストで熱線遮蔽ガラスを作製することができる。通常、熱線遮蔽フィルムは、粘着剤層に感圧接着剤(以下、PSAという)を使用してガラスに貼着される。特許文献4の場合はPSAとしてアクリル樹脂系粘着剤(SKダイン(綜研化学社製))が用いた例が開示されている。
特開2001−226148号公報 特開2007−70146号公報 特開2007−269523号公報 特開平08−281860号公報
しかしながら、特許文献4のような熱線遮蔽フィルムをガラスに貼着して用いる場合、太陽光の照射により、熱線遮蔽層が熱線を吸収することで熱線遮蔽フィルムが高温になるため、粘着剤が劣化し、フィルムとガラスとの間に発泡が生じたり、フィルムが浮いて剥がれたりして外観不良が生じる場合がある。特に、特許文献2のような複層ガラスの内側(空気層側)に熱線遮蔽フィルムを貼着すると、熱がこもるため、更にフィルムが高温になり、粘着剤が劣化し易くなる。しかも、複層ガラスの内側ではフィルムの張替えができないため、実用上、熱線遮蔽フィルムは複層ガラスには使用できないものであった。
従って、本発明の目的は、ガラスに貼着して熱線遮蔽ガラスを作製できる熱線遮蔽フィルムであって、太陽光の照射によりフィルムが高温になっても外観不良が生じることのない熱線遮蔽フィルムを提供することにある。
また、本発明の目的は、この熱線遮蔽フィルムを用いた熱線遮蔽ガラスを提供することにある。
また、本発明の目的は、この熱線遮蔽フィルムを用いた熱線遮蔽ガラスの製造方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、この熱線遮蔽ガラスを用いた複層ガラスを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明者らは、熱線遮蔽フィルムの粘着剤層に使用する粘着剤樹脂として、耐熱性の点からガラス転移点(Tg)が40℃以上の樹脂を検討し、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAともいう)を選定した。そして、その粘着剤層によりフィルムをガラス板表面に加熱圧着することで、太陽光照射により熱線遮蔽層が熱線を吸収しフィルムが高温になっても、十分に耐えられる熱線遮蔽フィルムとすることができると考えた。
しかしながら、熱線遮蔽フィルムの基板として使用する透明プラスチックフィルムによっては、ガラスに加熱圧着した際に、フィルム表面に皺が生じ、平滑性が悪化したり、フィルムの加熱収縮によりガラス板に反りが生じたりして、熱線遮蔽ガラスとして実用上問題が生じることが分かった。そこで、本発明者らは、更に透明プラスチックフィルムについて種々の条件を検討し、本発明に至った。
即ち、上記目的は、透明プラスチックフィルムの表面に、熱線遮蔽層及び粘着剤層が形成され、当該粘着剤層によりガラス板に加熱圧着するための熱線遮蔽フィルムであって、前記粘着剤層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む粘着剤組成物からなり、前記透明プラスチックフィルムの厚さが、188〜310μmであり、且つ
前記透明プラスチックフィルムの150℃、30分処理における収縮率が、0.2〜1.2%であり、且つ前記透明プラスチックフィルムが、ポリエチレンテレフタレートからなることを特徴とする熱線遮蔽フィルムによって達成される。
上述のように、EVAを含む粘着剤組成物からなる粘着剤層であれば、熱線遮蔽フィルムをガラス板に貼着して使用する場合に、太陽光照射によりフィルムが高温になっても、粘着剤層が劣化して、外観不良が生じることを防止することができる。また、透明プラスチックフィルムの厚さ、及び150℃、30分処理における収縮率が、上記の範囲であれば、ガラス板の表面に加熱圧着した際に、フィルム表面に皺が生じ、平滑性が悪化することが無く、且つ、フィルムの収縮によりガラス板に反りが生じることがない熱線遮蔽フィルムとすることができる。
本発明の熱線遮蔽フィルムの好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記透明プラスチックフィルムの一方の表面に熱線遮蔽層、及び他方の表面に粘着剤層を有する。これにより、より粘着剤層が劣化し難い熱線遮蔽フィルムとすることができる。
(2)前記熱線遮蔽層が、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を含む。これにより、更に熱線遮蔽性に優れ、高い可視光透過率を有する熱線遮蔽フィルムとすることができる。
(3)タングステン酸化物が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素を表し、そして2.2≦z/y≦2.999である)で表され、複合タングステン酸化物が、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素を表し、そして0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3である)で表される。
(4)前記粘着剤組成物が、更に有機過酸化物を含む。これにより、加熱圧着の際、EVAを架橋させることができ、より耐熱性が高い粘着剤層とすることができ、更に外観不良が生じることが防止された熱線遮蔽フィルムとすることができる。
(5)前記エチレン−酢酸ビニル共重合体における、酢酸ビニル含有率が、エチレン−酢酸ビニル共重合体に対して、22〜29質量%である。
(6)前記透明プラスチックフィルムが、100〜180℃、1〜30分の加熱処理を施されている。これにより、150℃、30分処理による収縮率が0.2〜1.2%の透明プラスチックフィルムを得ることができる。
また、上記目的は、ガラス板の一方の表面に、本発明の熱線遮蔽フィルムを加熱圧着したことを特徴とする熱線遮蔽ガラスによって達成される。
これにより低コストで製造でき、フィルムの平滑性の悪化や、ガラス板の反りによる不良を生じることが無く、且つ太陽光照射によりフィルムが劣化して外観不良が生じることが防止された熱線遮蔽ガラスとすることができる。
更に、上記目的は、本発明の熱線遮蔽フィルムを、粘着剤層がガラス板の一方の表面に対向するように載置し、60〜150℃の温度で、1〜180分間加熱圧着する工程を含むことを特徴とする熱線遮蔽ガラスの製造方法によって達成される。
本発明の熱線遮蔽ガラスは、本発明の製造方法により得られたものが好ましい。
また、上記目的は、本発明の熱線遮蔽ガラスが、別のガラス板と、間隙をおいて、前記熱線反射フィルムが当該別のガラス板に対向するように配置され、その間隙が中空層を形成していることを特徴とする複層ガラスによって達成される。
本発明の熱線遮蔽フィルムを用いた、本発明の熱線遮蔽ガラスは、太陽光照射によりフィルムが高温になっても、粘着剤層が劣化し難いため、ガラス板とフィルム間に発泡が生じたり、フィルムが剥離したりして外観不良が生じることがないので、フィルムを張り替える必要がなく、複層ガラスにも好適に使用することが出来る。このような複層ガラスとすることで、空気層による断熱性が付与され、且つ熱線遮蔽フィルムを損傷から保護することができる。また、低コストで製造でき、耐候性に優れた複層ガラスを得ることが出来る。
本発明の熱線遮蔽フィルムによれば、粘着剤層が、耐熱性の高いEVAを含む粘着剤組成物からなるので、ガラス板に貼着して使用する場合に、太陽光照射によりフィルムが高温になっても、粘着剤層が劣化して、外観不良が生じることを防止することができる。更に、透明プラスチックフィルムが所定の厚さ、及び所定の150℃、30分処理における収縮率を有するので、ガラス板の表面に加熱圧着した際に、フィルム表面に皺が生じ、平滑性が悪化することが無く、且つ、フィルムの収縮によりガラス板に反りが生じることがない。
従って、本発明の熱線遮蔽フィルムを用いた熱線遮蔽ガラスは、低コストで製造でき、太陽光照射により劣化して外観不良が生じ難い、耐候性に優れた熱線遮蔽ガラスである。
更に、本発明の熱線遮蔽ガラスを用いた複層ガラスは、低コストで製造でき、太陽光照射により劣化して外観不良が生じ難い、耐候性に優れた複層ガラスである。
本発明の熱線遮蔽フィルムの代表的な一例を示す概略断面図である。 本発明の熱線遮蔽ガラスの代表的な一例を示す概略断面図である。 本発明の複層ガラスの代表的な一例を示す概略断面図である。 熱線遮蔽ガラスの最大ガラス反りの測定方法を示す図である。
以下に図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の熱線遮蔽フィルムの代表的な一例を示す概略断面図である。
図1に示した熱線遮蔽フィルム10は、透明プラスチックフィルム13の一方の表面上に熱線遮蔽材料としてタングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物の微粒子をバインダに分散させた樹脂組成物からなる熱線遮蔽層14、他方の表面上にエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を主成分として含む粘着剤組成物からなる粘着剤層12が形成された積層体である。そして、透明プラスチックフィルム13は、厚さD(JIS C 2151に準拠)が、188〜310μm、150℃、30分処理における収縮率(JIS C 2318に準拠)が、0.2〜1.2%のものが用いられている。
EVAは、一般に、ガラス転移温度が40℃以上で、一般にガラス板に貼着する透明フィルム用の粘着剤(アクリル樹脂系のPSA等)に比べ、耐熱性が高い。従って、後述するように熱線遮蔽フィルム10をガラス板に貼着(加熱圧着)して使用する場合に、太陽光の照射により熱線遮蔽層14が熱線を吸収して熱線遮蔽フィルム10が高温になっても、粘着剤層12の劣化による発泡やフィルムの剥離が生じ難い。これにより外観不良の発生を防止することができる。但し、EVAの貼着には加熱圧着が必要であるため、透明プラスチックフィルム13の厚さや収縮率によっては、貼着の際に、皺が生じ、平滑性が悪化したり、フィルムの収縮によりガラス板に反りが生じたりすることがある。透明プラスチックフィルム13の厚さD、及び収縮率が、上記の範囲であれば、平滑性の悪化やガラス板の反りの発生を抑えることができる。ガラス板の反りの程度は、1000mm×1000mmのガラス板を平板と重ね、ガラスの両端が平板と接した状態で、平板とガラスとの間隙の最大幅が、ガラスの一辺の長さの0.5%以内が好ましい。
図1に示す層構成の他、熱線遮蔽材料を分散させるバインダ樹脂をEVAとして粘着剤層の機能を付与することで、熱線遮蔽層14と粘着剤層12とを同一の層とする構成や、透明プラスチックフィルム13の一方の表面に、熱線遮蔽層14及び粘着剤層12をこの順で積層する構成としても良い(図示していない)。更に、ハードコート層や紫外線吸収層等の他の層を積層した構成としても良い(但し、ガラス板に貼着するため、透明プラスチックフィルムの少なくとも一方の表面の最外層に粘着剤層が形成されている)。より粘着剤層12の劣化を防止するために、熱線遮蔽層14と粘着剤層12が別々である図1に示す構成が好ましい。
以下に、本発明の熱線遮蔽フィルムを構成する各層について説明する。
[透明プラスチックフィルム]
本発明において、透明プラスチックフィルム12は、透明(「可視光に対して透明」を意味する。)なプラスチックフィルムで、上記の厚さDの範囲(188〜310μm)、及び150℃、30分処理における収縮率(0.2〜1.2%)を有するものである。プラスチックフィルムの例としては、参考として、一般にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリエチレンブチレートフィルム等を挙げることができる。本発明においては、特に加工時の熱、溶剤、折り曲げ等の負荷に対する耐性が高く、透明性が高い点で、PETフィルムを用いる。上記収縮率は、0.2〜0.9%が更に好ましく、0.2〜0.7%が特に好ましい。
透明プラスチックフィルムの150℃、30分処理における収縮率を制御する方法は特に制限は無い。例えば、PET等の透明プラスチックフィルムを2軸延伸により製膜した後、100℃以上、好ましくは100〜180℃の温度で、1〜30分間加熱処理することにより行うことができる。また、収縮率は透明プラスチックフィルムを2軸延伸により製膜する際の延伸率を制御すること、又はその延伸率制御と上記加熱処理とを組み合わすことによっても制御できる。
また、透明プラスチックフィルム表面には、粘着剤層12や熱線遮蔽層14との接着性を向上させるために、予めコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー層コート処理などの接着処理を施してもよく、共重合ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂等の易接着層を設けてもよい。
[粘着剤層]
本発明において、粘着剤層12は、EVAを主成分として含む粘着剤組成物から形成されていれば、特に制限は無い。耐熱性の点で、ガラス転移温度は40℃以上であるのが好ましい。
粘着剤組成物に用いられるEVAは、酢酸ビニル含有率が、EVAに対して、22〜38質量%が好ましく、22〜29質量%であることが更に好ましく、24〜26質量%が特に好ましい。EVAにおける酢酸ビニル含有率がこのような範囲であれば、よりガラス板に載置し易く、加熱圧着する際に、流動してフィルムの平滑性を悪化させることが無く、接着性に優れ、且つ透明性に優れる接着剤層を得ることができる。また、メルト・フロー・インデックス(MFR)が、4.0〜30.0g/10分、特に8.0〜18.0g/10分であることが好ましい。予備圧着が容易になる。
また、粘着剤組成物には、更に有機過酸化物を含むのが好ましい。本発明の熱線遮蔽フィルムをガラス板に加熱圧着する際、有機過酸化物によりEVAを架橋硬化させることにより、熱線遮蔽フィルムとガラス板とを、更に接合一体化することができる。これにより、より耐熱性が高い粘着剤層とすることができ、更に外観不良が生じることが防止された熱線遮蔽フィルムとすることができる。
有機過酸化物としては、100℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであれば、どのようなものでも併用することもできる。有機過酸化物は、一般に、成膜温度、組成物の調整条件、硬化(貼り合わせ)温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して選択される。特に、半減期10時間の分解温度が70℃以上のものが好ましい。
この有機過酸化物の例としては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3−ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、クロロヘキサノンパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クミルパーオキシオクトエート、コハク酸パーオキサイド、アセチルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレーオ及び2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドを挙げることができる。
粘着剤組成物における有機過酸化物の含有量は、EVA100質量部に対して、1〜10質量部、特に1〜5質量部であるのが好ましい。
また、粘着剤組成物は、更に架橋助剤や接着向上剤としてシランカップリング剤を含むのが好ましい。
架橋助剤としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等に複数のアクリル酸あるいはメタクリル酸をエステル化したエステル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどの多官能化合物を挙げることができる。
シランカップリング剤の例として、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。これらシランカップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上組み合わせて使用しても良い。また上記化合物の含有量は、EVA100質量部に対して5質量部以下であることが好ましい。
粘着剤層は、種々の物性(機械的強度、接着性、透明性等の光学的特性、耐熱性、耐光性、架橋速度等)の改良あるいは調整、特に機械的強度、耐光性の改良のため、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物、エポキシ基含有化合物、可塑剤、紫外線吸収剤を含んでいることが好ましい。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物及び、ヒンダードアミン系化合物を挙げることができる。黄変を抑制する観点から、ベンゾフェノン系化合物が好ましい。上記紫外線吸収剤は、エチレン系共重合体100質量部に対して0.01〜1.5質量部(特に0.5〜1.0質量部)使用することが好ましい。
なお、粘着剤組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、EVA以外の樹脂成分を配合することができる。このような樹脂としては、例えば、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、金属イオン架橋エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、部分鹸化エチレン−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル化エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリレート共重合体などのエチレン系共重合体(なお、「(メタ)アクリル」は「アクリル又はメタクリル」を示す。)、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ゴム系粘着剤、SEBS及びSBS等の熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
粘着剤層を作製するには、例えば、EVA及び有機過酸化物等を混合した粘着剤組成物を、通常の押出成形、カレンダ成形(カレンダリング)等により成形して層状物を得る方法等を用いることができる。組成物の混合は、40〜90℃、特に60〜80℃の温度で加熱混練することにより行うのが好ましい。また、製膜時の加熱温度は、架橋剤が反応しない或いはほとんど反応しない温度とすることが好ましい。例えば、40〜90℃、特に50〜80℃とするのが好ましい。粘着剤層は透明プラスチックフィルムの表面に直接形成しても良く、別途、フィルム状の粘着剤シートを作製してこれを透明プラスチックフィルムに積層しても良い。
粘着剤層の厚さは、100〜2000μm、特に400〜1000μmであるのが好ましい。
[熱線遮蔽層]
本発明において、熱線遮蔽層14は、上述の通り、熱線遮蔽材料及びバインダを含む樹脂組成物からなる層である。熱線遮蔽材料は、一般に800〜1200nmの波長に吸収極大を有する無機系材料又は有機系色素である。例えば、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物、インジウム−錫酸化物、錫酸化物、アンチモン−錫酸化物、フタロシアニン系色素、金属錯体系色素、ニッケルジチオレン錯体系色素、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、ポリメチン系色素、アゾメチン系色素、アゾ系色素、ポリアゾ系色素、ジイモニウム系色素、アミニウム系色素、アントラキノン系色素等を挙げることができる。本発明においては、これらの色素を特に制限無く、単独又は組み合わせて使用することができる。中でも、上記タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物((複合)タングステン酸化物)の微粒子は、耐候性が高く、可視光線をほとんど遮断せず、近赤外線(特に、太陽光からの放射量が多い850〜1150nm付近の近赤外線)の遮断機能に優れており、優れた熱線遮蔽性を示すので好ましい。
熱線遮蔽剤として、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を使用する場合、その微粒子をバインダに分散させた樹脂組成物を使用する。熱線遮蔽層における、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物の微粒子の含有量に特に制限は無いが、1m当たり、一般に0.1〜50g、0.1〜20gが好ましく、さらに0.1〜10gが好ましい。このような範囲で複合タングステン酸化物の微粒子を含むことにより、得られる熱線遮蔽ガラスの熱線遮蔽性と可視光透過性の両立が可能となる。
上記タングステン酸化物は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表される酸化物であり、複合タングステン酸化物は、上記タングステン酸化物に、元素M(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素)を添加した組成を有するものである。これにより、z/y=3.0の場合も含めて、WyOz中に自由電子が生成され、近赤外線領域に自由電子由来の吸収特性が発現し、1000nm付近の近赤外線吸収材料(熱線遮蔽材料)として有効となる。本発明では、複合タングステン酸化物が好ましい。
上述した一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子において、タングステンと酸素との好ましい組成範囲は、タングステンに対する酸素の組成比が3よりも少なく、さらには、当該熱線遮蔽材料をWyOzと記載したとき、2.2≦z/y≦2.999である。このz/yの値が、2.2以上であれば、熱線遮蔽材料中に目的以外であるWOの結晶相が現れるのを回避することが出来るとともに、材料としての化学的安定性を得ることが出来るので有効な赤外線遮蔽材料として適用できる。一方、このz/yの値が、2.999以下であれば必要とされる量の自由電子が生成され効率よい熱線遮蔽材料となり得る。
複合タングステン酸化物の微粒子は、安定性の観点から、一般に、MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、(0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3)で表される酸化物であることが好ましい。アルカリ金属は、水素を除く周期表第1族元素、アルカリ土類金属は周期表第2族元素、希土類元素は、Sc、Y及びランタノイド元素である。
特に、熱線遮蔽材料としての光学特性、耐候性を向上させる観点から、M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちの1種類以上であるものが好ましい。また複合タングステン酸化物が、シランカップリング剤で処理されていることが好ましい。優れた分散性が得られ、優れた赤外線カット機能、透明性が得られる。
元素Mの添加量を示すx/yの値が0.001より大きければ、十分な量の自由電子が生成され遮蔽効果を十分に得ることが出来る。元素Mの添加量が多いほど、自由電子の供給量が増加し、熱線遮蔽効果も上昇するが、x/yの値が1程度で飽和する。また、x/yの値が1より小さければ、微粒子含有層中に不純物相が生成されるのを回避できるので好ましい。
酸素量の制御を示すz/yの値については、MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物においても、上述のWyOzで表記される熱線遮蔽材料と同様の機構が働くことに加え、z/y=3.0においても、上述した元素Mの添加量による自由電子の供給があるため、2.2≦z/y≦3.0が好ましく、さらに好ましくは2.45≦z/y≦3.0である。
さらに、複合タングステン酸化物微粒子が六方晶の結晶構造を有する場合、当該微粒子の可視光領域の透過が向上し、近赤外領域の吸収が向上する。
この六角形の空隙に元素Mの陽イオンが添加されて存在するとき、可視光領域の透過が向上し、近赤外領域の吸収が向上する。ここで、一般的には、イオン半径の大きな元素Mを添加したとき当該六方晶が形成され、具体的には、Cs、K、Rb、Tl、In、Ba、Sn、Li、Ca、Sr、Feを添加したとき六方晶が形成されやすい。勿論これら以外の元素でも、WO単位で形成される六角形の空隙に添加元素Mが存在すれば良く、上記元素に限定される訳ではない。
六方晶の結晶構造を有する複合タングステン酸化物微粒子が均一な結晶構造を有するとき、添加元素Mの添加量は、x/yの値で0.2以上0.5以下が好ましく、更に好ましくは0.33である。x/yの値が0.33となることで、添加元素Mが、六角形の空隙の全てに配置されると考えられる。
また、六方晶以外では、正方晶、立方晶のタングステンブロンズも熱線遮蔽効果がある。そして、これらの結晶構造によって、近赤外線領域の吸収位置が変化する傾向があり、立方晶<正方晶<六方晶の順に、吸収位置が長波長側に移動する傾向がある。また、それに付随して可視光線領域の吸収が少ないのは、六方晶<正方晶<立方晶の順である。このため、より可視光領域の光を透過して、より赤外線領域の光を遮蔽する用途には、六方晶のタングステンブロンズを用いることが好ましい。また、本発明の複合タングステン酸化物微粒子の表面が、Si、Ti、Zr、Alの一種類以上を含有する酸化物で被覆されていることが、耐候性の向上の観点から好ましい。
本発明で使用される複合タングステン酸化物微粒子の平均粒径は、透明性を保持する観点から、10〜800nm、特に10〜400nmであるのが好ましい。これは、800nmよりも小さい粒子は、散乱により光を完全に遮蔽することが無く、可視光線領域の視認性を保持し、同時に効率良く透明性を保持することができるからである。特に可視光領域の透明性を重視する場合は、さらに粒子による散乱を考慮することが好ましい。この粒子による散乱の低減を重視するとき、平均粒径は20〜200nm、好ましくは20〜100nmが好ましい。
なお、上記微粒子の平均粒子径は、熱線遮蔽層の断面を透過型電子顕微鏡により倍率100万倍程度で観測し、少なくとも100個の微粒子の投影面積円相当径を求めた数平均値とする。
上記複合タングステン酸化物微粒子は、例えば下記のようにして製造される。
上記一般式WyOzで表記されるタングステン酸化物微粒子、または/及び、MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物微粒子は、タングステン化合物出発原料を不活性ガス雰囲気もしくは還元性ガス雰囲気中で熱処理して得ることができる。
タングステン化合物出発原料には、3酸化タングステン粉末、もしくは酸化タングステンの水和物、もしくは、6塩化タングステン粉末、もしくはタングステン酸アンモニウム粉末、もしくは、6塩化タングステンをアルコール中に溶解させた後乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、もしくは、6塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち水を添加して沈殿させこれを乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、もしくはタングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物粉末、金属タングステン粉末から選ばれたいずれか一種類以上であることが好ましい。
ここで、タングステン酸化物微粒子を製造する場合には製造工程の容易さの観点より、タングステン酸化物の水和物粉末、もしくはタングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物粉末、を用いることがさらに好ましく、複合タングステン酸化物微粒子を製造する場合には、出発原料が溶液であると各元素を容易に均一混合可能となる観点より、タングステン酸アンモニウム水溶液や、6塩化タングステン溶液を用いることがさらに好ましい。これら原料を用い、これを不活性ガス雰囲気もしくは還元性ガス雰囲気中で熱処理して、上述した粒径のタングステン酸化物微粒子、または/及び、複合タングステン酸化物微粒子を得ることができる。
また、上記元素Mを含む一般式MxWyOzで表される複合タングステン酸化物微粒子は、上述した一般式WyOzで表されるタングステン酸化物微粒子のタングステン化合物出発原料と同様であり、さらに元素Mを、元素単体または化合物の形で含有するタングステン化合物を出発原料とする。ここで、各成分が分子レベルで均一混合した出発原料を製造するためには各原料を溶液で混合することが好ましく、元素Mを含むタングステン化合物出発原料が、水や有機溶媒等の溶媒に溶解可能なものであることが好ましい。例えば、元素Mを含有するタングステン酸塩、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、酸化物、等が挙げられるが、これらに限定されず、溶液状になるものであれば好ましい。
ここで、不活性雰囲気中における熱処理条件としては、650℃以上が好ましい。650℃以上で熱処理された出発原料は、十分な着色力を有し熱線遮蔽微粒子として効率が良い。不活性ガスとしてはAr、N等の不活性ガスを用いることが良い。また、還元性雰囲気中の熱処理条件としては、まず出発原料を還元性ガス雰囲気中にて100〜650℃で熱処理し、次いで不活性ガス雰囲気中で650〜1200℃の温度で熱処理することが良い。この時の還元性ガスは、特に限定されないがHが好ましい。また還元性ガスとしてHを用いる場合は、還元雰囲気の組成として、Hが体積比で0.1%以上が好ましく、さらに好ましくは2%以上が良い。0.1%以上であれば効率よく還元を進めることができる。
水素で還元された原料粉末はマグネリ相を含み、良好な熱線遮蔽特性を示し、この状態で熱線遮蔽微粒子として使用可能である。しかし、酸化タングステン中に含まれる水素が不安定であるため、耐候性の面で応用が限定される可能性がある。そこで、この水素を含む酸化タングステン化合物を、不活性雰囲気中、650℃以上で熱処理することで、さらに安定な熱線遮蔽微粒子を得ることができる。この650℃以上の熱処理時の雰囲気は特に限定されないが、工業的観点から、N、Arが好ましい。当該650℃以上の熱処理により、熱線遮蔽微粒子中にマグネリ相が得られ耐候性が向上する。
本発明の複合タングステン酸化物微粒子は、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等のカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。シランカップリング剤が好ましい。これによりバインダ樹脂との親和性が良好となり、透明性、熱線遮蔽性の他、各種物性が向上する。
シランカップリング剤の例として、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシアクリルシランを挙げることができる。ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、トリメトキシアクリルシランが好ましい。これらシランカップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上組み合わせて使用しても良い。また上記化合物の含有量は、微粒子100質量部に対して5〜20質量部で使用することが好ましい。
上記樹脂組成物に含まれるバインダとしては、公知の熱可塑性樹脂、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂を使用することができる。例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂等の透明合成樹脂をあげることができる。耐候性の点でシリコーン樹脂、フッ素樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂、紫外線硬化性樹脂が好ましく、特に紫外線硬化性樹脂が好ましい。紫外線硬化性樹脂は、短時間で硬化させることができ、生産性に優れているので好ましい。樹脂組成物は、硬化方法に応じて熱重合開始剤、光重合開始剤を含む。さらに、ポリイソシアネート化合物などの硬化剤を含んでいてもよい。
また、熱線遮蔽層14と粘着剤層12とを同一の層とする場合は、上述の粘着剤層を構成する粘着剤組成物のEVAをバインダとして用いることができる。
熱線遮蔽材料として、上記(複合)タングステン酸化物を使用する場合、熱線遮蔽層は、バインダ100質量部に対して、(複合)タングステン酸化物を10〜500質量部、さらに20〜500質量部、特に30〜300質量部含有することが好ましい。
また、熱線遮蔽材料として、(複合)タングステン酸化物以外のフタロシアニン系色素等の色素を単独、又は上記(複合)タングステン酸化物と併用して使用する場合、上記色素は、バインダ100質量部に対して、0.1〜20質量部、さらに1〜20質量部、特に1〜10質量部含有することが好ましい。
また、熱線遮蔽層は、ネオン発光の吸収機能を付与することにより色調の調節機能を持たせても良い。このために、熱線遮蔽層にネオン発光の選択吸収色素を含有させても良い。ネオン発光の選択吸収色素としては、ポルフィリン系色素、アザポルフィリン系色素、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ポリメチン系色素、ポリアゾ系色素、アズレニウム系色素、ジフェニルメタン系色素、トリフェニルメタン系色素を挙げることができる。このような選択吸収色素は、585nm付近のネオン発光の選択吸収性とそれ以外の可視光波長において吸収が小さいことが必要であるため、吸収極大波長が560〜610nmであり、吸収スペクトル半値幅が40nm以下であるものが好ましい。
また、光学特性に大きな影響を与えない限り、熱線反射層には、着色用の色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤等をさらに加えても良い。
熱線遮蔽層を作製する場合、(複合)タンクステン酸化物等及びバインダ等を含む樹脂組成物を、透明プラスチックフィルムの表面上に塗布し、乾燥させた後、必要に応じて加熱、又は紫外線、X線、γ線、電子線などの光照射により硬化させる方法が好ましく用いられる。乾燥は、透明プラスチックフィルム上に塗布した樹脂組成物を60〜150℃、特に70〜110℃で加熱することにより行うのが好ましい。乾燥時間は1〜10分間程度でよい。光照射は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線を照射して行うことができる。
[その他]
本発明の熱線遮蔽フィルムは、使用時まで粘着剤層を保護するために、剥離シートを設けても良い。その場合、剥離シートは一般にプラスチックフィルム上に、シリコーン等の表面張力の低い剥離層を有する。剥離層としては、例えば、ヒドロキシル基を有するポリシロキサンと水素化ポリシロキサンとの縮合反応生成物からなる剥離層、或いは不飽和2重結合基(好ましくはビニル基)を有するポリシロキサン(好ましくはジメチルポリシロキサン)と水素化ポリシロキサン(好ましくはジメチルポリシロキサン)から形成される剥離層等を挙げることができる。
剥離シートのプラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルフォン等のケトン系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等のサルフォン系樹脂の他に、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライド等の有機樹脂を主成分とする透明樹脂フィルムを用いることができる。これら中で、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートのフィルムが好適に用いることができ、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。厚さは10〜200μmが好ましく、特に30〜100μmが好ましい。
また、本発明の熱線遮蔽フィルムは、少なくとも上記の熱線遮蔽層及び粘着剤層の他に、更に、別の層が形成されていても良い。例えば、上述の熱線遮蔽層や粘着剤層の説明に記載した樹脂材料、紫外線吸収剤、及びネオン発光の選択的吸収色素等の材料を別の層に配合した、ハードコート層、紫外線吸層、及びネオンカット層等が挙げられる。
[熱線遮蔽ガラス]
図2は本発明の熱線遮蔽ガラスの代表的な一例を示す概略断面図である。なお、本発明において、熱線遮蔽ガラスにおける「ガラス」とは透明基板全般を意味するもので、ガラス板の他、透明プラスチック製基板であっても良い。従って、熱線遮蔽ガラスとは、熱線遮蔽性が付与された透明基板を意味する。
図2において、熱線遮蔽ガラス20はガラス板21の表面上に、粘着剤層12、透明プラスチックフィルム13、熱線遮蔽層14がこの順で積層され、一体化されている。通常、熱線遮蔽ガラス20は、ガラス板21の一方の表面に本発明の熱線遮蔽フィルム10を、粘着剤層12を介して加熱圧着することにより製造される。これにより、Low−Eガラスのようにスパッタリング法等の真空成膜方式による製造に使用する大型装置の必要が無く、低コストで製造できる熱線遮蔽ガラスとすることができる。ここで、本発明の熱線遮蔽ガラス20は、本発明の熱線遮蔽フィルム10を用いているので、フィルムの平滑性の悪化やガラスの反りによる不良が生じることが無く、太陽光照射によりフィルムが高温になっても、粘着剤層が劣化して、ガラス板とフィルム間に発泡が生じたり、フィルムが剥離したりして外観不良が生じることが防止された熱線遮蔽ガラスである。
本発明において、ガラス板は、例えば、グリーンガラス、珪酸塩ガラス、無機ガラス板、無着色透明ガラス板などのガラス板の他、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンブチレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のプラスチック製の基板を用いてもよい。耐候性、耐衝撃性等の点でガラス板が好ましい。ガラス板の厚さは、1〜20mm程度が一般的である。本発明によれば、特に本発明の熱線遮蔽フィルムにより、ガラスの反りが防止されるので、ガラス板の厚さは薄くても良く、1〜5mmが好ましく、2〜4mmが更に好ましい。これにより、熱線遮蔽ガラスの重量化を防ぐこともできる。
本発明の熱線遮蔽ガラス20を製造するには、例えば、本発明の熱線遮蔽フィルム10及びガラス板21を用意し、熱線遮蔽フィルム10の粘着剤層12がガラス板21の一方の表面に対向するように載置した積層体を脱気した後、加熱下(通常40〜200℃で1〜180分間、好ましくは60〜150℃で1〜180分間、更に好ましくは100〜150℃で1〜60分)に押圧(好ましくは1.0×10Pa〜5.0×10Paの圧力)して接着一体化すれば良い。これらの工程は例えば、真空袋方式、ニップロール方式等で行うことができる。
粘着剤組成物にEVA及び有機過酸化物を使用した場合、一般に100〜150℃(特に130℃付近)で、10分〜1時間架橋させる。これは、積層体を脱気したのち、例えば80〜120℃の温度で予備圧着し、100〜150℃(特に130℃付近)で、10分〜1時間加熱処理することにより行われる。架橋後の冷却は一般に室温で行われるが、特に、冷却は速いほど好ましい。
本発明の熱線遮蔽フィルムを上記の条件で加熱圧着することで、粘着剤層を介してより十分に接着することができ、より外観不良が生じ難い熱線遮蔽ガラスとすることができる。従って、本発明の熱誠遮蔽ガラスは、上記製造方法で製造したものが好ましい。
[複層ガラス]
本発明の熱線遮蔽ガラスは、本発明の熱線遮蔽フィルムが使用されているので、上述のように太陽光照射によりフィルムが高温になっても、粘着剤層が劣化し難いため、外観不良が生じることが防止されている。従って、熱線遮蔽フィルムを張り替える必要がないため、複層ガラスにも好適に使用することができる。
図3は、本発明の複層ガラスの代表的な一例を表す概略断面図である。図示の通り、本発明の複層ガラス30は、本発明の熱線遮蔽ガラス20と他のガラス板37とを、間隙をおいて対向するように配置することにより得られる。これにより中空層38が形成され、中空層による断熱性を付与することができる。また、複層ガラス30において、熱線遮蔽ガラス30は、熱線遮蔽フィルム10がガラス板37に対向するように配置されている。これにより、熱線遮蔽フィルム10を擦り傷、掻き傷等の損傷から保護することができ、長期間、熱線遮蔽性、可視光透過性等の性能を維持することができる。中空層38は、熱線遮蔽ガラス30とガラス板37とをこれらの外周部にスペーサー39を介在させて、接着剤(図示していない)を用いて接合することにより形成される。
本発明の熱線遮蔽ガラスを複層ガラスに用いることにより、低コストで製造でき、太陽光照射により劣化して外観不良が生じ難い、耐候性が高い複層ガラスとすることができる。
本発明の複層ガラスにおいて、中空層38としては、空気層、不活性ガス層、及び減圧層などが用いられる。これらの中空層によれば、複層ガラスに求められる断熱性を向上するとともに、熱線遮蔽層の経時的劣化を抑制することができる。空気層は、乾燥剤を含むスペーサーを用いることにより乾燥空気を用いてもよい。不活性ガス層は、クリプトンガス、アルゴンガス、及びキセノンガスなどの不活性ガスを含む。減圧層の気圧は、1.0Pa以下、特に0.01〜1.0Paとするのが好ましい。中空層の厚さは、6〜12mmであるのが好ましい。
本発明の複層ガラスは、Low−Eガラスに比べ、腐食され難い熱線遮蔽フィルムを用いた熱線遮蔽ガラスを使用しているので、中空層として空気層を用いても問題が生じ難い。更に、乾燥剤を使用しない又は乾燥剤の使用量を低減することも可能である。従って、不活性ガス層や減圧層を中空層として用いた場合に比較して簡易な構成とすることができる。
ガラス板37としては、フロートガラス、型板ガラス、表面処理により光り拡散機能を備えたすりガラス、網入りガラス、線入板ガラス、強化ガラス、倍強化ガラス、低反射ガラス、高透過板ガラス、セラミック印刷ガラス、熱線や紫外線吸収機能を備えた特殊ガラスなど、種々のガラスを適宜選択して実施することができる。また、ガラス板の組成についても、ソーダ珪酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、ほう珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、各種結晶化ガラスなどを使用することができる。
複層ガラスの形状は、用途に応じて、矩形状、丸状、菱形状など、種々の形状とすることができる。複層ガラスの用途についても、建築物や乗り物(自動車、鉄道車両、船舶)用の窓ガラス、あるいは、プラズマディスプレイなどの機器要素をはじめとして、冷蔵庫や保温装置などのような各種装置の扉や壁部など、種々の用途に使用することができる。
本発明の複層ガラスを、比較的、緯度が低い地域など、温暖な地域において複層ガラスを建築物や車両などに使用する場合には、ガラス板37が室内側、熱線遮蔽ガラス20が室外側に配置されるのが好ましい。太陽光や室外から照射される近赤外線を効果的に遮蔽できるからである。一方、本発明の複層ガラスを比較的、緯度が高い地域など、寒冷地域で使用する場合には、ガラス板37が室外側、熱線遮蔽ガラス20が室内側に配置されるのが好ましい。室内から放射される暖房等の赤外線を反射して逃がさず、暖房効率を高めることができるからである。
以下に、実施例を示し、本発明についてさらに詳述する。
1.熱線遮蔽フィルムの作製
(実施例1)
(1)熱線遮蔽層の形成
下記配合の組成物を、透明プラスチックフィルム(PETフィルム(厚さ(JIS C 2151に準拠);188μm、150℃、30分処理における収縮率(以下、収縮率という)(JIS C 2318に準拠);0.5%))上に、バーコータを用いて塗布し、80℃のオーブン中で2分間乾燥させた後、照射線量500mJ/mで1秒間紫外線を照射することによりPETフィルム上に熱線遮蔽層(厚さ5μm)を作製した。
(配合)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:80質量部
光重合開始剤(イルガキュア(登録商標)184):5質量部
Cs0.33WO(平均粒径80nm):20質量部
メチルイソブチルケトン:300質量部
(2)粘着剤層の作製
下記配合の組成物を、カレンダ成形法によりシート状に圧延し、粘着剤層(厚さ0.4mm)を得た。なお、配合物の混練は80℃で15分行い、またカレンダロールの温度は80℃、加工速度は5m/分であった。
(配合)
EVA(EVAに対する酢酸ビニルの含有量25質量%;ウルトラセン635(東ソー社製)):100質量部、
有機過酸化物(tert−ブチルパ−オキシ2−エチルヘキシルカーボネート;トリゴノックス117(化薬アクゾ社製):2.5質量部、
架橋助剤(トリアリルイソシアヌレート;TAIC(登録商標)(日本化成社製)):2質量部、
シランカップリング剤(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;KBM503(信越化学社製)):0.5質量部
紫外線吸収剤:(ユビナール3049(BASF社製)):0.5質量部
(3)熱線遮蔽フィルムの作製
上記PETフィルムの、熱線遮蔽層を形成した側と反対側の表面に粘着剤層を載置・押圧して貼着し、熱線遮蔽フィルムを作製した(図1)。
(実施例2〜、比較例1〜
PETフィルムを表1に示した厚さ、及び収縮率のものを使用した以外は、実施例1と同様に、熱線遮蔽フィルムを作製した。
(比較例
PETフィルムを、厚さ25μm、収縮率0.5%のものを使用し、粘着剤層を下記配合の組成物を用いて調製した以外は、実施例1と同様に、熱線遮蔽フィルムを作製した。
(配合)
アクリル樹脂系粘着剤(PSA)(SKダイン(綜研化学社製)):100質量部、
シランカップリング剤(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;KBM503(信越化学社製)):0.5質量部
紫外線吸収剤:(ユビナール3049(BASF社製)):0.5質量部
(比較例
熱線遮蔽層の代わりに、下記配合の透明コート層を形成した以外は、比較例と同様に、透明フィルムを作製した。
(配合)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:80質量部
光重合開始剤(イルガキュア(登録商標)184):5質量部
メチルイソブチルケトン:300質量部
2.熱線遮蔽ガラスの作製
(実施例1〜、比較例1〜
ガラス板(厚さ3mm)の表面に、上記で作製した各熱線遮蔽フィルムを積層した。得られた積層体を、100℃で30分間加熱することにより仮圧着を行った後、オートクレーブ中で圧力13×10Pa、温度140℃の条件で30分間加熱した。これにより、粘着剤層を硬化させて、ガラス板と熱線遮蔽フィルムが接着一体化された熱線遮蔽ガラス(図2)を得た。
(比較例及び10
ガラス板(厚さ3mm)の表面に、上記で作製した熱線遮蔽フィルム又は透明フィルムを積層した。得られた積層体をゴムローラーにて貼着し、熱線遮蔽ガラス又は合わせガラスを得た。
3.複層ガラスの作製
(実施例
ガラス板(厚さ3mm)と、実施例1の熱線遮蔽ガラスとを、これらの周縁部に配置された額縁状のアルミニウム製スペーサーを介して対向配置し、これらをブチルゴムにより接着した。このとき、熱線遮蔽ガラスの熱線反射フィルムを貼着した面が、スペーサーにより形成された空気層側になるようにした(図3)。空気層の厚さは12mmとした。
(比較例10
比較例の熱線遮蔽ガラスを使用した以外は、実施例と同様に複層ガラスを作製した。
4.評価方法
(1)日射透過率
JISR3106に準拠して測定した。
(2)平滑性
各熱線遮蔽ガラスについて、透過歪みを目視観察した。透過歪みが無いものを◎、透過歪みが僅かに観察されたが、全体として良好な場合を○、フィルム皺による透過歪みが観察され、全体として不良な場合を×とした。
(3)最大ガラス反り
図4に示すように、各熱線遮蔽ガラス(1000mm×1000mm)を平板と重ね、ガラスの両端が平板と接した状態で、平板とガラスとの間隙の最大距離を測定した。5.0mm以下(辺の長さの0.5%以下)を合格とした。
(4)耐候性
各熱線遮蔽ガラス又は複層ガラスに対し、キセノンウェザーメーター(XL75、スガ試験機(株)製)により、キセノンアークを5000h照射後、フィルムの外観を観察した。変化が全く認められなかったものを◎、フィルムの変化(発泡、皺、反りによる外観変化)が僅かに認められたが剥離は生じていないものを○、剥離が観察されたものを×とした。
5.評価結果
各ガラス試料の評価結果を表1に示す。
Figure 0005683841
表1に示す通り、EVAを粘着剤層に用い、透明プラスチックフィルムとして、厚さが188〜310μm、収縮率が0.2〜1.2%のPETフィルムを用いた実施例1〜の熱線遮蔽ガラス、及び実施例の複層ガラスは、平滑性が良好で、最大ガラス反りが5.0mm以下で合格であった。また、キセノンアーク照射試験において、フィルムの剥離等の劣化が認められず、良好な熱線遮蔽ガラス、又は複層ガラスであった。それに対し、PETフィルムの厚さが薄い比較例1〜の場合は、平滑性が悪化した。また、PETフィルムの収縮率が高い比較例、及びPETフィルムの厚さが厚い比較例の場合は、ガラス反りが大きくなった。更に、粘着剤として、アクリル樹脂系粘着剤のPSAを用いた熱線遮蔽ガラスの比較例、及びその複層ガラスの比較例10は、キセノンアーク照射において、フィルムの剥離が生じた。これは、熱線遮蔽層の無い比較ではフィルムの剥離に至っていないことから、熱線遮蔽層が熱線を吸収し、高温になったことが影響したものと考えられた。
以上により、本発明の熱線遮蔽フィルムであれば、ガラス板に貼着して使用する場合に、太陽光照射により劣化し、発泡や剥離等による外観不良が生じ難く、且つ、ガラス板に加熱圧着した際に、平滑性が悪化したり、ガラス板に反りが生じたりすることが無いことが示された。
なお、本発明は上記の実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
オフィスビル等の建築物及びバス、乗用車、電車等の車両・鉄道等の空調負荷を低減でき、太陽光照射により劣化して外観不良が生じ難い、熱線遮蔽ガラス又は複層ガラスを低コストで提供することができる。
10:熱線遮蔽フィルム
12:粘着剤層
13:透明プラスチックフィルム
14:熱線遮蔽層
20:熱線遮蔽ガラス
21、37:ガラス板
30:複層ガラス
38:中空層
39:スペーサー

Claims (10)

  1. 透明プラスチックフィルムの表面に、熱線遮蔽層及び粘着剤層が形成され、当該粘着剤層によりガラス板に加熱圧着するための熱線遮蔽フィルムであって、
    前記粘着剤層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む粘着剤組成物からなり、
    前記透明プラスチックフィルムの厚さが、188〜310μmであり、且つ
    前記透明プラスチックフィルムの150℃、30分処理における収縮率が、0.2〜1.2%であり、且つ
    前記透明プラスチックフィルムが、ポリエチレンテレフタレートからなることを特徴とする熱線遮蔽フィルム。
  2. 前記透明プラスチックフィルムの一方の表面に熱線遮蔽層、及び他方の表面に粘着剤層を有する請求項1に記載の熱線遮蔽フィルム。
  3. 前記熱線遮蔽層が、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を含む請求項1又は2に記載の熱線遮蔽フィルム。
  4. タングステン酸化物が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素を表し、そして2.2≦z/y≦2.999である)で表され、複合タングステン酸化物が、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素を表し、そして0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3である)で表される請求項3に記載の熱線遮蔽フィルム。
  5. 前記粘着剤組成物が、更に有機過酸化物を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱線遮蔽フィルム。
  6. 前記エチレン−酢酸ビニル共重合体における、酢酸ビニル含有率が、エチレン−酢酸ビニル共重合体に対して、22〜29質量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱線遮蔽フィルム。
  7. ガラス板の一方の表面に、請求項1〜のいずれか1項に記載の熱線遮蔽フィルムを加熱圧着したことを特徴とする熱線遮蔽ガラス。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の熱線遮蔽フィルムを、粘着剤層がガラス板の一方の表面に対向するように載置し、60〜150℃の温度で、1〜180分間加熱圧着する工程を含むことを特徴とする熱線遮蔽ガラスの製造方法。
  9. 請求項に記載の製造方法により得られた熱線遮蔽ガラス。
  10. 請求項又はに記載の熱線遮蔽ガラスが、別のガラス板と、間隙をおいて、前記熱線反射フィルムが当該別のガラス板に対向するように配置され、その間隙が中空層を形成していることを特徴とする複層ガラス。
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