ところで、特許文献1に記載の方法についても、ロータコアのシャフト孔にロータシャフトを締まり嵌めにより組み付けた後に、ロータコアの各スロットに、ダミー部材から磁石を挿入して組み付けることが考えられる。この場合、ロータコアがロータシャフトの組み付けによって変形することがあり、ロータコアのスロットへダミー部材から磁石を挿入することが難しくなる。すなわち、ロータコアは、そのシャフト孔にロータシャフトを締まり嵌めにより組み付けることで、その締め代等の影響から変形することがある。このとき、ロータコアのスロットが正規の位置からずれた状態となり、ダミー部材のスロットに対して正確に符合しなくなることがある。このため、ダミー部材からロータコアのスロットへ磁石を挿入するときに、磁石がロータコアと干渉してロータコアのスロットへ挿入し難くなったり、磁石が損傷したりするという懸念がある。
これは、例えば、ロータコアが、所定形状にプレスされて積層された複数の鋼板により形成される場合に起こることである。すなわち、このように積層鋼板により構成されたロータコアのシャフト孔にロータシャフトを締まり嵌めにより組み付けることで、シャフト孔の内周面のプレス加工形状やプレス時の歪みによって、ロータコアが軸線方向へ傾いて、その外径やスロットの位置が軸線方向や半径方向へ変位することがある。このようなロータシャフトの締まり嵌めの影響から、ロータコアのスロットが正規の位置からずれて、ロータコアのスロットにダミー部材のスロットから磁石を挿入するときに、ロータコアのスロット内壁と磁石との間の隙間が減少する。最悪の場合、この隙間が無くなり、磁石をスロットに挿入できなくなることがある。更に、ロータシャフトのロータコアに対する締まり嵌めを、焼き嵌めにより行った場合には、ロータコアの温度が高い状態で磁石をスロットに挿入しようとしても、熱歪みにより上記隙間が減少し、磁石をスロットに挿入できなくなるおそれもある。
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ロータコアにロータシャフトを組み付けることでロータコアが変形してもロータコアのスロットに対して磁石を円滑に挿入して組み付けることを可能としたロータの製造方法及び製造装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ロータコアの中心に形成されたシャフト孔にロータシャフトが締まり嵌めされた後に、シャフト孔を中心にしてロータコアの外周近傍に形成された複数のスロットに磁石ホルダから磁石を挿入して組み付けることによりロータを製造するロータの製造方法であって、磁石ホルダは、ロータコアのシャフト孔及び複数のスロットと対応する位置に模擬シャフト孔と複数の模擬スロットが形成され、磁石は磁石ホルダの模擬スロットに仮保持されており、磁石ホルダをロータコアの端面へ向けて押し付けてロータコアへ荷重を付与することによりロータコアを矯正し、ロータコアのスロットと磁石ホルダの模擬スロットを符合させるロータコア矯正工程と、ロータコアのスロットと磁石ホルダの模擬スロットを符合させた状態で、模擬スロットから磁石を押し出してスロットへ挿入する磁石挿入工程とを備えたことを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、ロータコア矯正工程において、磁石ホルダをロータコアの端面へ向けて押し付けてロータコアへ荷重を付与することによりロータコアが矯正され、ロータコアのスロットと磁石ホルダの模擬スロットが符合する。このような符合状態で、磁石挿入工程において、磁石ホルダの模擬スロットから磁石が押し出し出されてロータコアのスロットへ挿入されるので、磁石がロータコアと干渉することなくスロットに挿入される。
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ロータコア矯正工程において、ロータコアの外径を計測しながらロータコアへ付与される荷重を増加し、計測される外径に基づきロータコアの矯正の完了を判断したときにロータコアへ付与される荷重又は磁石ホルダの位置を保持することを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、ロータコアの外径に基づいてロータコアの矯正の完了が判断されてロータコアに付与される荷重又は磁石ホルダの位置が保持されるので、ロータコアに必要以上の荷重が付与されることがない。
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、ロータシャフトが締まり嵌めされた後であって矯正される前のロータコアは、二つの端面のうち一方の端面の外径が縮小しており、ロータコアの外径を計測するための外径計測手段を、外径が縮小した端面の近傍に配置することを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項2に記載の発明の作用に加え、外径が縮小した端面の近傍に外径計測手段が配置されるので、ロータコアの矯正に伴う外径の変化が外径計測手段により適正に計測される。
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ロータコア矯正工程において、ロータコアへ付与される荷重を計測しながらロータコアへ付与される荷重を増加し、計測される荷重に基づきロータコアの矯正の完了を判断したときにロータコアへ付与される荷重又は磁石ホルダの位置を保持することを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、ロータコアへ付与される荷重に基づいてロータコアの矯正の完了が判断されてロータコアに付与される荷重又は磁石ホルダの位置が保持されるので、ロータコアに必要以上の荷重が付与されることがない。
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の発明において、磁石ホルダの温度を調節するための温度調節手段を磁石ホルダに設けたことを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項1乃至4の何れかに記載の発明の作用に加え、必要に応じて磁石ホルダの温度が温度調節手段により調節可能となる。
上記目的を達成するために、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の発明において、磁石ホルダのロータコアと接する部分に断熱材を設けたことを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項1乃至4の何れかに記載の発明の作用に加え、前工程でロータシャフトの焼き嵌めによりロータコアが高温になっている場合は、磁石ホルダをロータコアの端面に押し付けても、ロータコアの熱が断熱材により遮断されて磁石ホルダへ逃げ難くなる。
上記目的を達成するために、請求項7に記載の発明は、ロータコアの中心に形成されたシャフト孔にロータシャフトが締まり嵌めされた後に、シャフト孔を中心にしてロータコアの外周近傍に形成された複数のスロットに磁石を挿入して組み付けることによりロータを製造するロータの製造装置であって、ロータシャフトが締まり嵌めされたロータコアを受けるためのロータコア受け手段と、ロータコアのシャフト孔及び複数のスロットと対応する位置に模擬シャフト孔と複数の模擬スロットが形成され、複数の模擬スロットの中に磁石を仮保持する磁石ホルダと、ロータコアを矯正するために、ロータコア受け手段に受けられたロータコアの端面へ向けて磁石ホルダを押し付けてロータコア受け手段と磁石ホルダとの間でロータコアへ荷重を付与する荷重付与手段と、ロータコアを矯正することによりロータコアのスロットと磁石ホルダの模擬スロットを符合させた状態で、模擬スロットから磁石を押し出してスロットへ挿入するための磁石押出し手段とを備えたことを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、シャフト孔にロータシャフトが締まり嵌めされたロータコアをロータコア受け手段にセットし、そのロータシャフトに対して、模擬スロットに磁石を仮保持した磁石ホルダを模擬シャフト孔を介してセットする。その後、荷重付与手段を動作させて磁石ホルダをロータコア受け手段に受けられたロータコアの端面へ向けて押し付けることにより、ロータコア受け手段と磁石ホルダとの間でロータコアに荷重が付与され、ロータコアが矯正される。そして、この矯正によりロータコアのスロットと磁石ホルダの模擬スロットを符合させた状態で、磁石押出し手段を動作させることにより、磁石ホルダの模擬スロットから磁石が押し出されロータコアのスロットへ挿入される。従って、スロットと模擬スロットが符合した状態で磁石がスロットに挿入されるので、磁石がロータコアと干渉することなくスロットに挿入される。
上記目的を達成するために、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、ロータコアの外径を計測するための外径計測手段と、ロータコアを矯正するときに、外径計測手段により計測される外径を監視しながらロータコアへ付与される荷重を増加し、計測される外径に基づきロータコアの矯正の完了を判断したときロータコアへ付与される荷重又は磁石ホルダの位置を保持するように荷重付与手段を制御するための制御手段とを備えたことを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項7に記載の発明の作用に加え、制御手段が外径計測手段により計測されるロータコアの外径に基づきロータコアの矯正の完了を判断し、ロータコアへ付与される荷重又は磁石ホルダの位置を保持するので、ロータコアに必要以上の荷重が付与されることがない。
上記目的を達成するために、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の発明において、ロータシャフトが締まり嵌めされた後であって矯正される前のロータコアは、二つの端面のうち一方の端面の外径が縮小しており、外径計測手段は、外径が縮小した端面の近傍に配置されることを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項8に記載の発明の作用に加え、外径が縮小した端面の近傍に外径計測手段が配置されるので、ロータコアの矯正に伴う外径の変化が外径計測手段により適正に計測される。
上記目的を達成するために、請求項10に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、ロータコアへ付与される荷重を計測するための荷重計測手段と、ロータコアを矯正するときに、荷重計測手段により計測される荷重を監視しながらロータコアへ付与される荷重を増加し、計測される荷重に基づきロータコアの矯正の完了を判断したときロータコアへ付与される荷重又は磁石ホルダの位置を保持するように荷重付与手段を制御するための制御手段とを備えたことを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項7に記載の発明の作用に加え、制御手段が荷重計測手段により計測されるロータコアへ付与される荷重に基づきロータコアの矯正の完了を判断するので、ロータコアに必要以上の荷重が付与されることがない。
上記目的を達成するために、請求項11に記載の発明は、請求項7乃至10の何れかに記載の発明において、磁石ホルダの温度を調節するための温度調節手段を磁石ホルダに設けたことを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項7乃至10の何れかに記載の発明の作用に加え、必要に応じて磁石ホルダの温度が温度調節手段により調節可能となる。
上記目的を達成するために、請求項12に記載の発明は、請求項7乃至10の何れかに記載の発明において、磁石ホルダのロータコアと接する部分に断熱材を設けたことを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項7乃至10の何れかに記載の発明の作用に加え、前工程でロータシャフトの焼き嵌めによりロータコアが高温になっている場合は、磁石ホルダをロータコアの端面に押し付けても、ロータコアの熱が断熱材により遮断されて磁石ホルダへ逃げ難くなる。
請求項1に記載の発明によれば、ロータコアにロータシャフトを組み付けることでロータコアが変形してもロータコアのスロットに対して磁石ホルダから磁石を円滑に挿入して組み付けることができる。また、磁石の組み付けに際して磁石の損傷を防止することができる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、ロータコアの矯正の完了を精度良く判断することができ、ロータコアの矯正を必要最小限の荷重を付与することで達成することができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の効果に加え、積層された複数枚の鋼板により構成されるロータコアにつきその変形を正確に計測することができる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、ロータコアの矯正の完了を精度良く判断することができ、ロータコアの矯正を必要最小限の荷重を付与することで達成することができる。
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の何れかに記載の発明の効果に加え、磁石の樹脂モールドに際してロータコアに改めて予熱を付与する必要がなく、樹脂モールドの工程時間を短縮することができる。また、ロータコアの各スロットへの磁石の組み付けをより容易かつ円滑に行うことができる。
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至4の何れかに記載の発明の効果に加え、後工程で磁石の樹脂モールドを行う際に、加熱の必要なロータコアについて、温度調整時間を短縮することができる。
請求項7に記載の発明によれば、ロータコアにロータシャフトを組み付けることでロータコアが変形してもロータコアのスロットに対して磁石ホルダから磁石を円滑に挿入して組み付けることができる。また、磁石の組み付けに際して磁石の損傷を防止することができる。
請求項8に記載の発明によれば、請求項7に記載の発明の効果に加え、ロータコアの矯正の完了を精度良く判断することができ、ロータコアの矯正を必要最小限の荷重を付与することで達成することができる。
請求項9に記載の発明によれば、請求項8に記載の発明の効果に加え、積層された複数枚の鋼板により構成されるロータコアにつきその変形を正確に計測することができる。
請求項10に記載の発明によれば、請求項7に記載の発明の効果に加え、ロータコアの矯正の完了を精度良く判断することができ、ロータコアの矯正を必要最小限の荷重を付与することで達成することができる。
請求項11に記載の発明によれば、請求項7乃至10の何れかに記載の発明の効果に加え、磁石の樹脂モールドに際してロータコアに改めて予熱を付与する必要がなく、樹脂モールドの工程時間を短縮することができる。また、ロータコアの各スロットへの磁石の組み付けをより容易かつ円滑に行うことができる。
請求項12に記載の発明によれば、請求項7乃至10の何れかに記載の発明の効果に加え、後工程で磁石の樹脂モールドを行う際に、加熱の必要なロータコアについて、温度調整時間を短縮することができる。
<第1実施形態>
以下、本発明におけるロータの製造方法及び製造装置を具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。特に、この実施形態では、モータを構成するロータに係り、特に、ロータコアに形成された複数のスロットに磁石を組み付けてロータを製造するロータの製造方法及び製造装置について説明する。
図1に、この実施形態におけるロータの製造方法の概要をフローチャートにより示す。先ず、図1(1)に示すように、ロータコアにロータシャフトを組み付ける。図2に、その組み付けの様子を断面図により示す。図2に示すように、予め形成されたロータコア1に対して、ロータシャフト2を組み付ける。ここで、ロータコア1は、所定の厚み(例えば「0.2〜0.3(mm)」)を有する鋼板を所定形状にプレス加工し、そのプレスされた複数枚の鋼板を同じ向きで積層することにより形成される。ロータコア1は、その中心にシャフト孔3が形成され、更に、シャフト孔3を中心にして外周部近傍に複数のスロット4が等角度間隔に形成される。ロータシャフト2は、シャフト孔3に対して締まり嵌めにより組み付けられる。「締まり嵌め」は、ロータコア1を加熱することでシャフト孔3の内径を拡げた状態でロータシャフト2をシャフト孔3に挿入する。そして、ロータコア1が冷却されてシャフト孔3の内径が元に戻ることで、ロータシャフト2を締めて嵌め付ける。
次に、図1(2)に示すように、ロータコアに磁石を組み付ける。すなわち、図2に示す各スロット4に界磁用の磁石を組み付ける。この磁石の組み付けについては後述する。
次に、図1(3)に示すように、磁石の樹脂モールドを行う。すなわち、各スロット4に組み付けられた磁石を樹脂でモールドする。この樹脂モールドに際して、ロータコア1を所定温度に保持する必要がある。
上記のようにしてロータを製造する。このロータを別途製造されたステータに組み付け、その他必要な工程を経ることにより、モータを製造することができる。
ここで、本願出願人は、上記したようにロータシャフト2を締まり嵌めした後にロータコア1が変形することを確認した。図3に、締まり嵌め直後のロータコア1とロータシャフト2の組み付け状態を断面図により示す。図4に、締まり嵌め直後のロータコア1とロータシャフト2の組み付け状態を平面図により示す。図4において、各スロット4よりも内側に配置される複数の孔5は、ロータシャフト2の組み付けによりロータコア1に加わる応力を緩和するためのものである。
図3において、ロータコア1は、ロータシャフト2に沿って一方向(図面上方へ)へ倒れるように変形していることが分かる(図3では、便宜上、ロータコア1の変形を誇張して示す。)。この変形は、ロータコア1のシャフト孔3にロータシャフト2を締まり嵌めにより組み付けたときに、シャフト孔3の内周面のプレス加工形状やプレス時の歪みにより、ロータコア1がロータシャフト2の軸線方向へ傾くことによるものである。この変形により、ロータコア1の外径や各スロット4の位置がロータコア1の中心の方向へ変位することになる。このようにスロット4が変位したままでは、所定の位置から各スロット4へ磁石を挿入しようとしても、各スロット4が磁石から若干ずれることになり、磁石がロータコア1と干渉してしまい、磁石を各スロット4へ円滑に挿入できなくなるという問題があった。
そこで、この実施形態では、上記のようにロータシャフト2を締まり嵌めした後のロータコア1が変形することを前提とし、所定の製造装置を使用してロータコア1の各スロット4に磁石を自動組み付けするための製造方法及びその製造方法に使用される製造装置について以下に説明する。
図5に、この実施形態の製造装置を概略的に断面図により示す。図5に示すように、この製造装置は、ロータシャフト2が締まり嵌めされたロータコア1を受けるための本発明のロータコア受け手段に相当するロータコア受け台11と、磁石6を仮保持する磁石ホルダ12と、ロータコア1へ荷重を付与するための本発明の荷重付与手段に相当する荷重付与装置13と、磁石ホルダ12に仮保持された磁石6を押し出してロータコア1の各スロット4へ挿入するための本発明の磁石押出し手段に相当する磁石押出し装置14とを備える。
ロータコア受け台11は、ベースフレーム21、受け部材22及びモールドセットプレート23が積層されて一体的に構成される。ベースフレーム21、受け部材22及びモールドセットプレート23の中心には、それぞれロータシャフト2を嵌め入れる中心孔21a,22a,23aが形成される。モールドセットプレート23の表面には、軸線方向へ突出するコアキー嵌合部23bが形成される。このコアキー嵌合部23bは、図4に示すように、一部の孔5の中に挿入され、その孔5の中に形成されたコアキー5aに嵌合するように構成される。
磁石ホルダ12は、ロータコア1のシャフト孔3及び複数のスロット4と対応する位置に模擬シャフト孔31と複数の模擬スロット32が形成される。複数の模擬スロット32の中に磁石6を仮保持するようになっている。この実施形態で、磁石ホルダ12は、ロータコア1の端面に押し当てられるようになっている。磁石ホルダ12は、金属製のホルダコア33と断熱材34により構成される。断熱材34は、磁石ホルダ12の、ロータコア1及びロータシャフト2と接する部分に設けられる。断熱材34の表面には、軸線方向へ突出するコアキー嵌合部34aが設けられる。このコアキー嵌合部34aは、図4に示す一部の孔5の中に挿入され、その孔5の中に形成されたコアキー5aに嵌合するように構成される。
荷重付与装置13は、変形したロータコア1を矯正するために、ロータコア受け台11に受けられたロータコア1の端面へ向けて磁石ホルダ12を押し付けてロータコア受け台11と磁石ホルダ12との間でロータコア1へ荷重を付与するようになっている。荷重付与装置13は、ロータコア1に荷重を付与するために磁石ホルダ12を押圧する荷重付与部材41と、荷重付与部材41を磁石ホルダ12へ向けて移動させると共に、荷重付与部材41を押圧するアクチュエータ42とを含む。アクチュエータ42は、伸縮可能なピストン42aを含み、そのピストン42aによって荷重付与部材41を押圧するようになっている。荷重付与部材41のピストン42aにより押圧される部分には、荷重センサ43が設けられる。荷重センサ43は、ピストン42aによって荷重付与部材41が押圧されるときの荷重を計測し、その計測値を出力するようになっている。
磁石押出し装置14は、ロータコア1を矯正することによりロータコア1の各スロット4と磁石ホルダ12の各模擬スロット32を符合させた状態で、各模擬スロット32から磁石6を押し出して各スロット4へ挿入するようになっている。磁石押出し装置14は、複数の模擬スロット32のそれぞれから磁石6を押し出すために棒状に形成された複数の押出し部材51と、複数の押出し部材51を一体的に支持する支持フレーム52と、支持フレーム52を介して複数の押出し部材51を移動させるアクチュエータ53とを含む。アクチュエータ53が、磁石ホルダ12へ向けて支持フレーム52を移動させることにより、各押出し部材51が磁石ホルダ12の各模擬スロット32の中の磁石6を押圧して各模擬スロット32から押し出すようになっている。
磁石ホルダ12には、ロータコア1の外径を計測するための本発明の外径計測手段に相当する外径計測器35が複数個設けられる。図3に示すように、ロータシャフト2が締まり嵌めされた後であって矯正される前のロータコア1は、二つの端面1a,1bのうち一方の端面1aの外径が縮小している。図5に示すように、各外径計測器35は、ロータコア1の外径が縮小した端面1aの近傍になるように配置される。すなわち、図5において、各外径計測器35は、ロータコア受け台11の一端面11a(モールドセットプレート23の表面)と対向する磁石ホルダ12の一端面12aの外周縁(断熱材34の一端面の外周縁)にて複数配置される。図6に、磁石ホルダ12の一端面12aの外周縁(断熱材34の一端面の外周縁)と、ロータコア1の一端面1aの外周縁と、外径計測器35との位置関係を断面図により示す。図7に、磁石ホルダ12の一端面12aの外周縁(断熱材34の一端面の外周縁)外周縁と、ロータコア1の外周縁と、外径計測器35との位置関係を、図6の矢印A視図により示す。図6に示すように、外径計測器35は、ロータコア1の外径を非接触で計測するためのレーザ変位計36と、レーザ変位計36の出力を増幅するためのアンプ37とを含む。図6及び図7に示すように、磁石ホルダ12の一端面12aの外周縁には、複数のレーザ変位計36を配置するための複数の凹部38が形成される。各凹部38は、上段38aと下段38bより段付きに構成され、その下段38bにレーザ変位計36が配置される。上段38aは、磁石ホルダ12の半径方向へ延び、ロータコア1の外周部分と重複するように構成される。図6に示すように、レーザ変位計36から発射されるレーザLAは、ロータコア1の外径が縮小する側の端面1aに隣接する外周面1cに照射されて、その外周面1cとの間の距離を計測するように構成される。この距離に基づいてロータコア1の外径の変化を計測するようになっている。
この他、製造装置は、荷重センサ43及び外径計測器35の計測値に基づきアクチュエータ42,53を制御するためのコントローラ61を備える。荷重センサ43及び外径計測器35は、それぞれコントローラ61に接続される。二つのアクチュエータ42,53は、それぞれコントローラ61に接続される。コントローラ61は、本発明の制御手段に相当し、ロータコア1を矯正するときに、外径計測器35により計測される外径を監視しながらロータコア1へ付与される荷重を増加し、計測される外径に基づきロータコア1の矯正の完了を判断したときロータコア1へ付与される荷重を矯正完了時の荷重に保持するように、又は、磁石ホルダ12の位置を矯正完了時の位置に保持するようにアクチュエータ42を制御するように構成される。また、コントローラ61は、ロータコア1の矯正が完了したと判断したときに、各押し出し部材51を移動させるためにアクチュエータ53を制御するように構成される。
次に、上記した製造装置を使用して行われるロータコア1の製造方法について説明する。図8に、ロータコア1のシャフト孔3にロータシャフト2が締まり嵌めされた後に、ロータコア1の複数のスロット4に磁石ホルダ12から磁石6を挿入して組み付けるための一連の工程をフローチャートにより示す。
先ず、図8(1)に示す「ロータコアセット工程」では、ロータシャフト2が締まり嵌めされた直後のロータコア1をロータコア受け台11にセットする。図9に、この工程における製造装置の状態を概略的に断面図により示す。図9に示すように、この工程では、ロータシャフト2が、ロータコア受け台11の中心孔21a,22a,23aに挿入されてロータコア1がロータコア受け台11に受けられ、支持される。また、モールドセットプレート23のコアキー嵌合部23bが、ロータコア1のコアキー5aに嵌合される。ロータコア1は、ロータシャフト2の外径の一部が中心孔21a,22a,23aに嵌合すると共に、コアキー5aにコアキー嵌合部23bが嵌合することで、ロータコア受け台11に対して位置決めされる。
次に、図8(2)に示す「磁石ホルダセット工程」では、ロータコア1に磁石ホルダ12をセットする。図10に、この工程における製造装置の状態を概略的に断面図により示す。図10に示すように、この工程では、磁石ホルダ12の模擬シャフト孔31を、ロータシャフト2に嵌めることにより、磁石ホルダ12がロータコア1に対してセットされる。磁石ホルダ12は、ロータシャフト2の外径が模擬シャフト孔31に嵌合し、コアキー5aにコアキー嵌合部34aが嵌合することで、ロータコア1に対して位置決めされる。ここで、磁石ホルダ12の複数の模擬スロット32には、予め磁石6が仮保持されている。
次に、図8(3)に示す「ロータコア矯正工程」では、磁石ホルダ12をロータコア1の端面1aへ向けて押し付けてロータコア1へ荷重を付与することにより、ロータコア1を矯正し、ロータコア1のスロット4と磁石ホルダ12の模擬スロット32を符合させる。図11に、この工程における製造装置の状態を概略的に断面図により示す。この工程では、コントローラ61は、アクチュエータ42を制御することにより、図11に示すように、荷重付与部材41により磁石ホルダ12を押圧して磁石ホルダ12をロータコア1に押し付ける。詳しくは、コントローラ61は、ロータコア1を矯正するときに、外径計測器35により計測される外径を監視しながらロータコア1へ付与される荷重を増加し、計測される外径に基づきロータコア1の矯正の完了を判断したときロータコア1へ付与される荷重を保持するように、又は、磁石ホルダ12の位置を保持するようにアクチュエータ42を制御する。コントローラ61は、計測される外径が所定の目標値となったときにロータコア1の矯正の完了を判断する。コントローラ61は、ロータコア1に付与される荷重を保持するとき、又は、磁石ホルダ12の位置を保持するとき、荷重センサ43の出力が所定の目標値となるようにアクチュエータ42を制御する。
次に、図8(4)に示す「磁石挿入工程」では、ロータコア1の各スロット4と磁石ホルダ12の各模擬スロット32を符合させた状態で、各模擬スロット32から各磁石6を押し出して各スロット4へ挿入する。図12に、この工程における製造装置の状態を概略的に断面図により示す。この工程で、コントローラ61は、ロータコア1の矯正の完了を判断したときに、図12に示すように、各押出し部材51を磁石ホルダ12へ向けて移動させるようにアクチュエータ53を制御する。この場合、コントローラ61は、各スロット4への磁石6の挿入が完了したとき、アクチュエータ53を制御して、各押出し部材51を元の位置へ戻す。ここで、磁石6の押出し荷重や位置をセンサ等で検出しながら、磁石6がスロット4の奥まで到達したことを判断するように構成することもできる。
次に、図8(5)に示す「磁石ホルダ取り外し工程」では、磁石ホルダ12をロータコア1から取り外す。この工程で、コントローラ61は、アクチュエータ42を制御して、荷重付与部材41を元の位置に戻すことにより、磁石ホルダ12をロータコア1から取り外す。ここで、荷重付与部材41を元の位置に戻したときに、磁石ホルダ12が荷重付与部材41と一体となって元の位置に戻るようにするために、荷重付与部材41と磁石ホルダ12の間に所定の連結機構を設けることができる。この連結機構は、荷重付与部材41に対して連結されたアクチュエータやバネ等、あるいは、磁石ホルダ12に対して遊びをもった引っ張り機構(例えば、加重付与部材41が磁石ホルダ12からある距離以上離れると磁石ホルダ12を加重付与部材41の方向へ引っ張るロッド状のもの。)により構成することができる。
その後、図8(6)に示す「ロータコア取り外し工程」では、磁石6の組み付けが完了したロータコア1を、ロータコア受け台11から取り外す。取り外されたロータコア1は、後工程である磁石6の樹脂モールドへと送られる。
ここで、矯正によって変化するロータコア1の外径と、各スロット4の位置修正との関係について説明する。ロータコア1にロータシャフト2を締まり嵌めした後のロータコア1の状態は、図3に示すように、ロータコア1の軸線方向へ倒れるように変形する。ここで、ロータコア1の一方の端面1aは、ロータコア1が倒れる方向へ変形するため、その外径は正規の外径よりも小さくなる。図13に、このロータコア1の変形具合を、「半径方向位置」に対する「軸方向変位」の関係によりグラフで示す。図14に、ロータシャフト2を組み付けたロータコア1を断面図によりしめす。図14において、「半径方向位置」は、ロータシャフト2の軸線を基準としたロータコア2の半径方向における位置を意味する。また、図14において、「軸方向変位DP」は、ロータシャフト組み付け後の倒れによるロータコア1の軸線方向における変位を意味する。図13から、ロータコア1の中心側では、ロータコア1が比較的大きな傾きで変位し、外周側では、傾きがほぼなくなることが分かる。各スロット4は、ロータコア1の端面1a上では、ほとんど外周縁の近傍に位置する。上記のことから、ロータコア1の外周縁とその近傍にあるスロット4との位置関係は、ほとんど変化しないと考えられる。図15に、スロット中心とロータコア外周縁における「半径方向変位」を比較してグラフにより示す。ここで、図16に、ロータコア1の端面の一部を平面図により示す。図17に、図16のロータコア1の鎖線楕円の中を拡大して平面図により示す。図15における「スロット中心」は、図17におけるスロット中の位置P1を意味し、「ロータコア外周縁」は、図17においてロータコア外周縁上の位置P1に最も近い位置P2を意味する。図15から、ロータコア1にロータシャフト2を組み付けた後の、ロータコア外周縁の位置P2とスロット中心の位置P1の変位範囲は、ほぼ同じで、変位後の位置関係も変わらないことが分かる。ここで、ロータコア1に磁石ホルダ12を押し付けてロータコア1を矯正することでスロット4の位置を正規の位置(磁石ホルダ12の模擬スロット32に符合する位置)に戻すときに、ロータコア1の各スロット4は、磁石ホルダ12とロータ受け台11との間で閉ざされた孔となることから、スロット4の位置を直接測定することは難しい。しかしながら、ロータコア1の外径は測定が可能であり、ロータコア外周縁の位置P2とスロット中心の位置P1との間に上記のような関係があることから、ロータコア1の外径の変化からスロット4の位置変化を予測することができる。図18に、ロータコア1に対するロータシャフト2の組み付け前(シャフト組付前)、組み付け後(シャフト組付後)及びロータコア矯正後(矯正後)の間におけるロータコア外径の変化をグラフにより示す。図18に示すように、シャフト組付前に狙いの範囲内にあったロータコア外径は、シャフト組付後に狙いの範囲から外れるが、矯正後には狙いの範囲内に戻ることが分かる。このことから、ロータコア1の各スロット4の位置も、シャフト組付後に狙いの範囲から外れても、矯正後には、狙いの範囲内に戻ると予測することができる。
以上説明したこの実施形態におけるロータの製造方法によれば、ロータコア矯正工程において、磁石ホルダ12をロータコア1の端面1aへ向けて押し付けてロータコア1へ荷重を付与することにより、ロータコア1が矯正され、ロータコア1のスロット4と磁石ホルダ12の模擬スロット32が符合する。このような符合状態で、磁石挿入工程において、磁石ホルダ12の模擬スロット32から磁石6が押し出し出されてロータコア1のスロット4へ挿入されるので、磁石6がロータコア1と干渉することなくスロット4に挿入される。このため、ロータコア1にロータシャフト2を組み付けることでロータコア1が変形してもロータコア1のスロット4に対して磁石ホルダ12から磁石6を円滑に挿入して組み付けることができる。また、磁石6の組み付けに際して磁石6の損傷を防止することができる。
この実施形態におけるロータの製造方法及び製造装置によれば、ロータコア1の外径に基づいてロータコア1の矯正の完了が判断され、ロータコア1に付与される荷重がその矯正完了時の荷重に保持されるので、ロータコア1に必要以上の荷重が付与されることがない。このため、ロータコア1の矯正完了を精度良く判断することができ、ロータコア1の矯正を必要最小限の荷重を付与することで達成することができる。
この実施形態におけるロータの製造方法及び製造装置によれば、ロータコア1の外径が縮小した端面1aの近傍に外径計測器35が配置されるので、ロータコア1の矯正に伴う外径の変化が適正に計測される。このため、積層された複数枚の鋼板により構成されるロータコア1につき、その変形を正確に計測することができる。
この実施形態のロータの製造方法及び製造装置によれば、ロータコア1に付与される実際の荷重を、荷重センサ43を使用して計測しているので、ロータコア1に付与される実際の荷重を正確に管理することができる。
この実施形態のロータの製造方法及び製造装置によれば、磁石ホルダ12のロータコア1と接する部分に断熱材34を設けたので、磁石ホルダ12をロータコア1の端面1aに押し付けても、ロータコア1の熱が断熱材34により遮断されて磁石ホルダ12へ逃げ難くなる。このため、後工程で磁石6の樹脂モールドを行う際に、加熱の必要なロータコア1について、温度調整時間を短縮することができる。このことは、前工程であるロータコア1へのロータシャフト2の組み付けに際して、焼き嵌めによりロータシャフト2をロータコア1へ組み付けてロータコア1が高温になっている場合にも有効に適用することができる。
ここで、ロータコア1に磁石6を組み付けた後に、磁石6の樹脂モールドを行うために、ロータコア1は、モールドセットプレート23が一体的に組み付いた状態で樹脂モールドの工程へと搬送される。この搬送の際に、ロータシャフト2の向きを水平方向から垂直方向へ変えてモールドセットプレート23が下側に位置するようにロータコア1とモールドセットプレート23を上下に重ねて配置することにより、各スロット4から磁石6を落とすことなくロータコア1を搬送することができる。このため、樹脂モールドの工程において、そのまま各スロット4へ樹脂材料を充填して磁石6を固定することができる。
この実施形態のロータの製造装置によれば、ロータコア1のシャフト孔3にロータシャフト2が締まり嵌めされたロータコア1をロータコア受け台11にセットし、そのロータシャフト2に対して、模擬スロット32に磁石6を仮保持した磁石ホルダ12を模擬シャフト孔31を介してセットする。その後、荷重付与装置13を動作させて磁石ホルダ12をロータコア受け台11に受けられたロータコア1の端面1aへ向けて押し付ける。これにより、ロータコア受け台11と磁石ホルダ12との間でロータコア1に荷重が付与され、ロータコア1が矯正される。そして、この矯正によりロータコア1のスロット4と磁石ホルダ12の模擬スロット32を符合させた状態で、磁石押出し装置14を動作させることにより、磁石ホルダ12の模擬スロット32から磁石6が押し出され、ロータコア1のスロット4へ挿入される。従って、磁石6がロータコア1と干渉することなくスロット4に挿入される。このため、上記したロータの製造方法を有効に実施することができ、ロータコア1にロータシャフト2を組み付けることでロータコア1が変形してもロータコア1のスロット4に対して磁石ホルダ12から磁石6を円滑に挿入して組み付けることができる。また、磁石6の組み付けに際して磁石6の損傷を防止することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明におけるロータの製造方法及び製造装置を具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明において、前記第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
図19に、「ロータコア矯正工程」における製造装置の状態を概略的に断面図により示す。図20に、「磁石挿入工程」における製造装置の状態を概略的に断面図により示す。この実施形態では、第1実施形態における外径計測器35を省略し、コントローラ61が、荷重センサ43により計測される荷重に基づいてアクチュエータ42を制御するように構成した点で異なる。
この実施形態では、コントローラ61は、ロータコア1を矯正するときに、荷重センサ43により計測される荷重を監視しながらロータコア1へ付与される荷重を増加し、計測される荷重に基づきロータコア1の矯正の完了を判断したときロータコア1へ付与される荷重を矯正完了時の荷重に保持するようにアクチュエータ42を制御するように構成される。
また、この実施形態では、「ロータコア矯正工程」において、ロータコア1へ付与される荷重を計測しながらロータコア1へ付与される荷重を増加し、計測される荷重に基づきロータコア1の矯正の完了を判断したときにロータコア1へ付与される荷重を矯正完了時の荷重に保持するようにしている。
以上説明したこの実施形態におけるロータの製造方法及び製造装置によれば、第1実施形態と同様に、磁石6がロータコア1と干渉することなくスロット4に挿入される。このため、ロータコア1にロータシャフト2を組み付けることでロータコア1が変形してもロータコア1のスロット4に対して磁石ホルダ12から磁石6を円滑に挿入して組み付けることができる。また、磁石6の組み付けに際して磁石6の損傷を防止することができる。
また、この実施形態におけるロータの製造方法及び製造装置によれば、ロータコア1へ付与される荷重に基づいてロータコア1の矯正の完了が判断されてロータコア1に付与される荷重が矯正完了時の荷重に保持されるので、ロータコア1に必要以上の荷重が付与されることがない。このため、ロータコア1の矯正完了を精度良く判断することができ、ロータコア1の矯正を必要最小限の荷重を付与することで達成することができる。また、この実施形態では、第1実施形態の構成から外径計測器35を省略したので、その分だけ製造装置を簡略化することができる。
<第3実施形態>
次に、本発明におけるロータの製造方法及び製造装置を具体化した第3実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
図21に、「ロータコア矯正工程」における製造装置の状態を概略的に断面図により示す。図22に、「磁石挿入工程」における製造装置の状態を概略的に断面図により示す。この実施形態では、第1実施形態の磁石ホルダ12における断熱材34が省略され、磁石ホルダ12の全体がホルダコア33のみで構成される。ホルダコア33は、熱伝達性の高い金属材料により構成される。また、磁石ホルダ12の内部には、磁石ホルダ12の温度を調節するための本発明の温度調節手段に相当する電気ヒータ39が設けられる。更に、磁石ホルダ12には、その温度を測定するための温度センサ40が設けられる。温度センサ40は、磁石ホルダ12において、ロータコア1と接触する端面12aの近傍に設けられる。電気ヒータ39及び温度センサ40は、それぞれコントローラ61に接続される。そして、コントローラ61は、「ロータコア矯正工程」及び「磁石挿入工程」において、温度センサ40により測定される磁石ホルダ12の温度が所定温度(ロータコア1に組み付けられた磁石6を樹脂モールドするのに好適な所定温度に相当する。)になるように電気ヒータ39を制御するようになっている。磁石ホルダ12と同様、ロータコア受け台11のモールドセットプレート23や受け部材22に電気ヒータや温度センサを設けてモールドセットプレート23や受け部材22の温度が所定温度になるように電気ヒータを制御するように構成すると更によい。
この実施形態では、「ロータコア矯正工程」及び「磁石挿入工程」において、磁石ホルダ12の温度を所定温度に保持するようにしている。それ以外、この実施形態では、前記第1実施形態におけると同様のロータの製造方法が実施される。
以上説明したこの実施形態のロータの製造方法及び製造装置によれば、第1実施形態と同様に、磁石6がロータコア1と干渉することなくスロット4に挿入される。このため、ロータコア1にロータシャフト2を組み付けることでロータコア1が変形してもロータコア1のスロット4に対して磁石ホルダ12から磁石6を円滑に挿入して組み付けることができる。また、磁石6の組み付けに際して磁石6の損傷を防止することができる。
また、この実施形態では、上記のように電気ヒータ39により磁石ホルダ12の温度を所定温度に保持するので、ロータコア1へのロータシャフト2の組み付けに際して、焼き嵌めが行われてロータコア1が高温になっている状態からロータコア1の温度が室温に低下することがない。従って、「磁石挿入工程」の後工程で、磁石6を樹脂モールドするに際して、ロータコア1を樹脂モールドに必要な予熱温度としての所定温度に維持することができる。このため、磁石6の樹脂モールドに際してロータコア1に改めて予熱を付与する必要がなく、樹脂モールドの工程時間を短縮することができる。また、ロータコア1及び磁石ホルダ12の温度が均一化されることから、熱歪みの影響がなくなり、ロータコア1の各スロット4の位置及び磁石ホルダ12の各模擬スロット32の位置がそれぞれ安定することになる。つまり、ロータコア1及び磁石ホルダ12の温度が均一化することで、ロータコア1と磁石ホルダ12の温度バラツキによるスロット4及び模擬スロット32の位置関係の誤差を解消することができる。このため、ロータコア1の各スロット4への磁石6の組み付けをより容易かつ円滑に行うことができる。
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することができる。
(1)前記第1実施形態では、外径計測器35を、図6及び図7に示すように構成したが、図23及び図24に示すように構成することもできる。図23に、磁石ホルダ12の一端面12aの外周縁と、ロータコア1の一端面1aの外周縁と、外径計測器35との位置関係を断面図により示す。図24に、磁石ホルダ12の一端面12aの外周縁と、ロータコア1の外周縁と、外径計測器35との位置関係を、図23の矢印B視図により示す。すなわち、図23に示すように、外径計測器35は、ロータコア1の外径を非接触で計測するためのレーザ変位計36と、その変位計36の出力を増幅するためのアンプ37とを含む。図23及び図24に示すように、磁石ホルダ12の外周縁には、複数のレーザ変位計36を配置するための複数の凹部38が形成される。各凹部38の近傍であって、各凹部38よりも内側には、磁石ホルダ12の外周縁に沿った円周状の周段部34bが形成される。そして、図23に示すように、レーザ変位計36から発射されるレーザLAは、ロータコア1の外径が縮小する側の端面1aに隣接する外周面1cに照射されると共に、周段部34bの基準面となる外周面34cにも照射される。この照射によりロータコア1の外周面1cとの間の第1の距離と、周段部34bの外周面34cとの間の第2の距離を計測するように構成される。そして、これら第1の距離と第2の距離が同じとなったときに、コントローラ61は、ロータコア1の外径が所定の規定値となり、ロータコア1の矯正が完了したと判断するように構成される。
(2)前記1実施形態では、製造装置に荷重センサ43と外径計測器35の両方を設けたが、荷重センサ43を省略することもできる。
(3)前記1実施形態及び前記第3実施形態では、外径計測手段として非接触式のレーザ変位計36を含む外径計測器35を使用したが、外径計測手段として、接触式の外径計測器を使用することもできる。
(4)前記1実施形態及び前記第3実施形態では、外径計測手段として外径計測器35を複数個設けたが、一つだけ設けることもできる。すなわち、外径計測器35は、少なくとも1つ設けることができる。