以下、添付図面に基づいて、本発明に係る医療用X線撮影装置(以下、単にX線撮影装置という)を説明する。
X線撮影装置は、CT撮影、パノラマ撮影及びセファロ撮影が可能なように構成されている。図1に示すように、X線撮影装置は、支持フレーム7と、床面に設置するベース73と、ベース73から縦方向に立設された支柱74とを備える。X線撮影装置は、CT撮影・パノラマ撮影のための旋回アーム3、X線照射部2、パノラマ・CT用X線検出部1、頭部保持部75等を備える。さらに、X線撮影装置は、セファロ撮影のためのセファロ用ユニット4、セファロ用X線検出部5等を備える。
支持フレーム7は、支柱74に支持されている。支持フレーム7は、被写体Oの背丈に応じて、昇降機構(図示略)によって、支柱74に沿って昇降する。支持フレーム7は、上部に回転駆動ユニット70を支持し、下部に頭部支持ユニット71を支持する。図1(a)に示すように、支持フレーム7、回転駆動ユニット70及び頭部支持ユニット71は、正面から見てコ字状に構成される。
回転駆動ユニット70は、旋回アーム3を水平方向に回転可能に支持する。頭部支持ユニット71は、被写体Oの頭部を保持する頭部保持部75、被写体Oが握るための一対のハンドル71bを備える。頭部支持ユニット71は、先端側に操作部71aを備えており、オペレータが操作部71aで支持フレーム7の昇降位置を操作したり、頭部固定用イヤーロッドの開閉、CT撮影時の対象撮影領域(画像再構成範囲)の設定、パノラマ撮影時の位置付け用レーザービームの調整および、旋回アーム3を原点位置に戻すリセット等の操作ができる。
旋回アーム3は、上部に旋回軸320を備える。旋回軸320は、回転駆動ユニット70を介して支持フレーム7に支持されている。旋回アーム3は、一方側にパノラマ・CT用X線検出部1、他方側にX線照射部2を備える。パノラマ・CT用X線検出部1とX線照射部2とは互いに対向する。パノラマ・CT用X線検出部1は、パノラマ・CT用X線検出器10及び外装カバー類を含む。X線照射部2は、X線管21、コリメータ20及び外装カバー類を含む。
図2に示すように、回転駆動ユニット70は、旋回アーム3を旋回するための旋回軸回転手段32を備える。旋回アーム3は、旋回軸回転手段32によって、略垂直方向に延設された旋回軸320を中心として水平方向に旋回する。回転駆動ユニット70は、旋回軸320を略水平面のXY方向に水平移動するための旋回軸位置設定手段31を備える。そして、旋回軸位置設定手段31は、CT撮影における対象撮影領域(画像再構成範囲)の中心位置に旋回軸320を設定する。
図1に示すように、CT撮影およびパノラマ撮影では、支持フレーム7に設けられた頭部保持部75で保持した被写体Oに対して、X線管21のX線焦点2aからX線100を照射し、被写体Oを透過したX線100をパノラマ・CT用X線検出器10で検出する。
CT撮影時には、対象撮影領域(画像再構成範囲)を中心に旋回アーム3を、旋回軸回転手段32により、180°+αまたは360°+α回転させながら対象撮影領域(画像再構成範囲)の断層撮影を行うので、旋回軸320の中心を対象撮影領域(画像再構成範囲)の中心位置に一致するように移動する。パノラマ撮影時には、パノラマ・CT用X線検出部1とX線照射部2が歯列弓の形状に沿った所定の軌跡を描くように、旋回軸320を介して旋回アーム3を水平移動及び水平旋回させながら断層撮影をする。パノラマ撮影のX線ビームの軌跡は、歯列弓(各歯牙)に対して正放線投影となるようにX線100を入射するため、包絡線状の軌跡をなすが、X線フィルムを用いていたときからの公知技術のため詳述を省く。
セファロ用ユニット4は、水平方向に延設されたユニットアーム41に取り付けられる。ユニットアーム41は、支持フレーム7に取り付けられる。支持フレーム7を昇降することにより、ユニットアーム41を介してセファロ用ユニット4を被写体Oの背丈に応じて昇降する。セファロ用ユニット4は、その上部にユニットホルダー42を備える。ユニットホルダー42は、セファロ撮影時に被写体Oの頭部を固定する頭部固定部43を備える。頭部固定部43は、図2に示すように、一対のイヤーロッド44とナジオンパット45とを含む。セファロ用ユニット4は、頭部固定部43を回転して所定方向に向くように設定するための頭部固定部位置設定手段420をユニットホルダー42内に備える。
さらに、セファロ用ユニット4は、頭部固定部43に近接するセファロ用X線検出部5を備える。セファロ用X線検出部5は、ユニットホルダー42に固定されたセンサーホルダー46に着脱可能に保持される。
旋回アーム3は、X線照射部2を回転するためのX線照射部回転部22を備える。X線照射部2は、垂直方向に延設された回転軸220を中心として、X線照射部回転部22によって回転する。セファロ撮影時において、X線照射部2のX線焦点2aをセファロ用ユニット4の平面センサー50に向けつつ、パノラマ・CT用X線検出部1をX線100の照射野から外すことができる。
そして、セファロ撮影法では、X線照射部2のX線焦点2aと被写体Oの中心との間の距離α(例えば1500mm)と、被写体Oの中心とセファロ用X線検出部5の平面センサー50との間の距離β(例えば150mm)とにおいて、その拡大率((α+β)/α)が1.1倍になるように、X線照射部2およびセファロ用X線検出部5を配置して撮影を行う。そのため、セファロ用ユニット4は、所定長さを有するユニットアーム41を介してX線照射部2から所定距離だけ離れて設けられる。これによって、X線照射部2と被写体Oとの間の距離、被写体Oとセファロ用X線検出部5との間の距離を一定にする。
セファロ撮影では、頭部固定部43のイヤーロッド44を被写体Oの左右の外耳孔部に挿入して被写体Oの頭部を固定し、さらにナジオンパッド45を被写体Oのナジオン(鼻根点)に当接させて補助的に固定する。そして、X線照射部2のX線焦点2aからX線100を照射して、被写体Oを透過したX線100をセファロ用X線検出部5の平面センサー50で検出する。
セファロ撮影には、顎下部から頭頂部までを含めて被写体Oの正面を撮影するセファロ正面撮影と、後頭部から鼻先部までを含めて被写体Oの側面を撮影するセファロ側面撮影とがある。セファロ正面撮影では、図3(a)に示すように、イヤーロッド44およびナジオンパット45を含む頭部固定部43は、頭部固定部位置設定手段420によって、被写体Oの正面側が平面センサー50の受像面に向くように回転して配置される。そして、X線焦点2aから照射されるX線100の主線100aが一対のイヤーロッド44の中点を通るようにして撮影する。
セファロ側面撮影では、図3(b)に示すように、頭部固定部43は、頭部固定部位置設定手段420によって、被写体Oの側面側が平面センサー50の受像面に向くように回転して配置される。そして、X線焦点2aから照射されるX線100の主線100aが一対のイヤーロッド44の双方に入射するようにして撮影する。
図1および図2に示すように、X線撮影装置は、操作/表示部68とX線撮影装置本体部69とで構成されている。X線撮影装置本体部69は、パノラマ・CT用X線検出部1、セファロ用X線検出部5、X線照射部2、旋回アーム3等を備えた装置本体からなり、本体内部に制御部(CPU)60が搭載されている。制御部60は、X線照射部2の管電流・管電圧(撮影条件)、旋回軸位置設定手段31及び旋回軸回転手段32等の各駆動機構の動作を制御する。
操作/表示部68は、例えば、制御部60に接続されたパーソナルコンピュータ(PC)からなる。操作/表示部68は、キーボード、リモコン、またはマウス等で構成される入力部61を備え、オペレータが撮影モード及び撮影条件、予備撮影の有無等を選択して入力する。また、操作/表示部68は、CPU62を備える。CPU62は、入力部61に接続されており、オペレータによる入力部61からの入力に基づいて、CPU62が、制御部60を介して旋回軸位置設定手段31等を設定された所定の動作を行うよう制御する。
操作/表示部68は、画像メモリ63(RAM,HDD等含む)と、CT画像、パノラマ画像およびセファロ画像を生成する等の各種の画像処理を行う画像処理手段64と、生成した画像を表示する画像表示部65(モニター)とを備える。パノラマ・CT用X線検出部1またはセファロ用X線検出部5から出力される画像信号が、画像メモリ63に入力され、デジタル信号に変換される。その後、画像処理手段64が画像信号を画像処理することにより、CT画像、パノラマ画像またはセファロ画像を生成する。そして、画像処理手段64により生成された画像は、画像表示部65に表示される。例えば、CT撮影では画像処理手段64の画像再構成プログラムによって任意の断層面に沿った断層画像に演算処理され、画像メモリ63に保存され且つ、画像表示部65に表示される。
図4に、上記構成によって被写体Oのセファロ側面撮影を行い、画像処理手段64により生成された側面セファロ画像8を示す。図4から明らかなように、X線透過率の小さい歯牙、頭蓋骨、顎骨などの硬組織HT(硬組織領域)は明確に表示されているが、X線透過率の大きい口唇、鼻骨周辺、皮膚などの軟組織ST(軟組織領域)は明確に表示されず、認識し難い。
そこで、画像処理手段64は、側面セファロ画像8の鼻骨周辺、口唇などの軟組織STが明確に表示されるように画像処理を行う。図5に基づいて、その構成を説明する。まず、X線撮影装置は、画像表示部65に表示された側面セファロ画像8に、所定領域を有するデジタルのフィルタFを設定する。そして、画像処理手段64は、フィルタFで覆われた部分に対して下記する画像処理を行う。なお、図5ではフィルタFが設定され、フィルタFで覆われた部分を概念的に斜線で示す。
フィルタFは、その外縁Qが側面セファロ画像8を上下に横切るように、そしてこの外縁Qを基準に右側(被写体Oの向き方向95側)に設定される。そして、フィルタFは、画像処理を行うにあたり、図4において明確に表示されていない口唇、鼻骨周辺などの軟組織STを覆うように設定される。
そして、画像処理手段64は、フィルタFで覆われた部分における画素の画素値を変換して(大きくして)、フィルタFで覆われた部分の濃淡を強調する階調処理を行う。これによって、フィルタFで覆われた口唇、鼻骨周辺を含む軟組織STの濃淡が強調され、階調処理後の側面セファロ画像8では、軟組織STが明確になり、軟組織STと空気領域AR(側面セファロ画像8の被写体Oを除く部分)との境界B2も明確になる。
図5では、フィルタFの外縁Qは、軟組織STと硬組織HTとの境界B1上に設定されるのではなく、口唇、鼻骨周辺部分の軟組織STを確実に覆うように、境界B1より硬組織HT側(左側)に設定されている。この場合、フィルタFが既に明確に表示されている硬組織HTの一部も覆っているので、硬組織HTも階調処理される。既に明確な硬組織HTが階調処理され、硬組織HTの濃淡までもが軟組織STと同じ様に強調されると、硬組織HTの画像が変化してしまう(硬組織HTは真っ白になり、認識できなくなる)。
そこで、画像処理手段64は、フィルタFの外縁Qから側面セファロ画像8の右端8bの方向(被写体Oの向き方向95)に、徐々に濃淡の強調度合いが大きくなるように傾斜(勾配)を設けて階調処理を行う。具体的には、例えば、フィルタFの外縁Qにおける画素の画素値(例えば256階調で、0〜255)は変換せず(出力画素の画素値は入力画素の画素値と同じにし)、そこから被写体Oの向き方向95に移動するにつれて画素値の変換の度合いを大きくしていき、側面セファロ画像8の右端8bにおける画素の画素値は1.5倍になるように階調処理を行う。
このように、フィルタFの濃淡の強調度合いが被写体Oの向き方向95に次第に大きくなるように傾斜を設けて階調処理を行うことで、X線透過率が小さい硬組織HTを覆っているフィルタFの外縁Q側では、濃淡の強調度合いが小さくなるようにする。そして、X線透過率が大きい軟組織STおよび空気領域ARを覆っている外縁Qから離れた側では濃淡の強調が大きくなるようにしている。これによって、フィルタFで覆われた硬組織HTはあまり濃淡が強調されないようにしながらも、口唇、鼻骨周辺の軟組織STは漏れなく濃淡が強調されるようにして、軟組織STと空気領域ARとの境界B2がくっきりとなるように、軟組織STが明確に表示されるようにしている。こうして、フィルタFが口唇、鼻骨周辺の軟組織STを確実に覆うために、硬組織HTの一部に渡って設定されても、硬組織HTがほとんど階調処理されないようにしながら、軟組織STを明確に表示することができる。
なお、画像処理手段64は、上記のように濃淡の強調度合いが大きくなるように傾斜を設けて階調処理を行っているが、この傾斜が可変であることが好ましい。外縁Qにおける画素の画素値は変換せず、例えば、側面セファロ画像8の右端8bにおける画素の画素値を1.5倍にする設定から、2.0倍に変更して傾斜が大きくなるようにし、または1.2倍に変更して傾斜が小さくなるようにするなど、側面セファロ画像8の右端8bにおける画素の画素値の変換の度合いを自由に設定することで、傾斜の変更を行う。このような傾斜の設定は、オペレータの入力部61による入力により行われる。
オペレータは、このように傾斜を自由に変更することで、軟組織STが認識し易いように調整したり、フィルタFで覆われている軟組織STと空気領域ARとの境界B2がよりくっきりと、明確になるように調整したりして、オペレータにとって診断し易い側面セファロ画像8を得ることができる。
ところで、上記のようにデジタルのフィルタFを用いた画像処理によらず、側面セファロ画像8で軟組織STを明確にする場合、従来においては、図13、図14(a)に示すように、被写体OとX線焦点2aとの間に、X線焦点2aから照射されるX線100の強度を減衰するための機械的なフィルタ、すなわちウェッジフィルタWFを配置する。ウェッジフィルタWFによって強度が減衰したX線100が、被写体Oの口唇、鼻骨周辺などの軟組織STに照射されるようにして、X線透過率の大きい軟組織STが明確になるようにする。このウェッジフィルタWFは、被写体Oの向き方向95に次第に厚さが大きくなるように楔角θの傾斜を有するように構成され、セファロ側面撮影において被写体Oの向き方向95にむかってX線100の強度がより減衰されるようになっている。これによって、得られる側面セファロ画像8において、軟組織STと空気領域ARとの境界B2がくっきりと、明確になるようにして、境界B2を含めて軟組織STがより明確に認識できるようにしている。
すなわち、本発明のX線撮影装置が、上記のように、濃淡の強調度合いが被写体Oの向き方向95に大きくなるように傾斜を設けて階調処理を行うことによって、図13、図14(a)に示すように、楔角θのウェッジフィルタWFを、被写体OとX線焦点2aとの間に設けてセファロ側面撮影を行う場合と同様の側面セファロ画像8が得られる。そして、この傾斜を小さく設定して階調処理を行えば、図14(b)に示すように、図14(a)のウェッジフィルタWFと比較して、楔角がθ1(<θ)と小さいウェッジフィルタWFを用いてセファロ側面撮影を行った場合と同様の側面セファロ画像8が得られる。一方、この傾斜を大きく設定して階調処理を行えば、図14(c)に示すように、図14(a)のウェッジフィルタWFと比較して、楔角がθ2(>θ)と大きいウェッジフィルタWFを用いてセファロ側面撮影を行った場合と同様の側面セファロ画像8が得られる。すなわち、濃淡の強調の度合いに傾斜を設けて階調処理をするにあたり、この傾斜を自由に変更することは、図13、図14(a)のウェッジフィルタWFの楔角θを自由に変更することに等しい。このように、X線撮影装置は、画像処理によって、任意の楔角θを有するウェッジフィルタWFを用いてセファロ側面撮影を行った場合と同様の側面セファロ画像8を得ることが可能となる。
図6に、上記のように階調処理を行うことによって得られた側面セファロ画像8を示す。図4および図6から明らかなように、階調処理前には明確に表示されていなかった口唇、鼻骨周辺の軟組織STが、階調処理後には明確になっていることがわかる。このように、X線撮影装置は、フィルタFを設定し、フィルタFで覆われた部分だけに階調処理を行うことにより、硬組織HTおよび軟組織STの双方が明確に表示された側面セファロ画像8を得る。
図5では、フィルタFを硬組織HTが多少覆われるように設定しているが、硬組織HTを覆いすぎることがないように、そして、より多くの軟組織STを覆って階調処理できるように、フィルタFを設定する必要がある。そのため、フィルタFは、境界B1の形状に近い形状の外縁Qを有することが好ましい。しかしながら、頭部の形状というのは被写体Oごとに異なるため、側面セファロ画像8における軟組織STと硬組織HTとの境界B1の形状は被写体Oごとに異なる。
そこで、X線撮影装置は、被写体Oごとに適した形状の外縁Qを決定し、この外縁Qを側面セファロ画像8の所定の位置に設定するために、以下の構成を備える。
図7に、フィルタFの外縁Qを決定するための構成を示す。X線撮影装置は、画像表示部65に表示された側面セファロ画像8上の所定のポイントを指定するためのポイント指定手段を備える。オペレータは、このポイント指定手段により、側面セファロ画像8において、下記するように境界線Lを決定して、外縁Qを決定するために必要なポイントを指定する。ポイント指定手段は、例えば、入力部61(マウス、キーボードまたはリモコン)と、入力部61の入力に応じて画像表示部65上を移動するカーソル90とで構成される。入力部61がマウスである場合、オペレータは、マウスを操作し、画像表示部65上のカーソル90を側面セファロ画像8の所定のポイントに合わせて、マウスをクリックすることで、ポイントの指定を行う。
X線撮影装置は、上記構成のポイント指定手段により指定された複数のポイントに基づいて、側面セファロ画像8に表示された異なる領域の境界線Lを決定する境界線決定手段66(図2)を備える。本実施例では、境界線決定手段66は、軟組織STと硬組織HTとの境界線Lを決定する。境界線決定手段66は、境界線Lを決定するために、まず画像表示部65に表示された側面セファロ画像8において、イヤーロッド44の位置を基準にX−Y座標系を設定する。すなわち、側面セファロ画像8上で、イヤーロッド44の中心位置44cを原点として、水平方向にX軸を、垂直方向にY軸を設定する。X−Y座標の原点となるイヤーロッド44の中心位置44cは、セファロ側面撮影時にX線100の主線100aが通る位置であり、セファロ側面撮影の際の頭部固定部43による被写体Oの位置決めによって予め特定できる位置である。そのため、オペレータは、この原点となる中心位置44cをポイント指定手段により指定する必要はない。
境界線決定手段66は、オペレータがポイント指定手段により境界線Lを決定するための所定のポイントを指定するように要求する要求手段を備える。例えば、画像表示部65にメッセージを表示することで、所定のポイントの指定をオペレータに要求する。そして、図7に示す実施例では、要求手段は、外縁Qを決定するため、軟組織STと硬組織HTと境界B1であって、被写体Oの歯牙の中切歯80の先端と、被写体Oの下顎骨81の先端とを指定するように要求する。
オペレータは、要求手段が要求する通り、ポイント指定手段によって側面セファロ画像8上の中切歯80の先端(ポイントP1)と、下顎骨81の先端(ポイントP2)とを指定する。
オペレータが2つのポイントP1、P2を指定すると、境界線決定手段66は、設定したX−Y座標系における、ポイントP1の座標(x1、y1)と、ポイントP2の座標(x2、y2)とを計測する。
境界線決定手段66は、このポイントP1の座標(x1、y1)と、ポイントP2の座標(x2、y2)とから、境界線Lを決定する。境界線決定手段66は、境界線Lを、ポイントP1より上側では、Y軸と平行で側面セファロ画像8の上端8aまでのびる直線(垂直線)L1とし、ポイントP1より下側では、ポイントP1とポイントP2とを通り、側面セファロ画像8の下端8cにまでのびる直線L2とし、この2つ直線L1、L2を結ぶことで形成する。すなわち、境界線Lは、中切歯80の先端を通る垂直線L1と、中切歯80の先端と下顎骨81の先端とを通る直線L2とで形成される。なお、二つの直線L1、L2をポイントP1において直接結んで境界線Lを形成すると、境界線Lの形状が滑らかではない(角ができてしまう)。そこで、図7に示すように、ポイントP1の近傍を円弧などの曲線にして、この曲線を介して2本の直線L1、L2を結んで境界線Lを形成して、境界線Lの形状を滑らか(角がないよう)にすることが好ましい。
さらに、X線撮影装置は、決定された境界線Lから外縁Qを決定し、外縁Qを側面セファロ画像8の所定の位置に設定するためのフィルタ外縁設定手段67(図2)を備える。フィルタ外縁設定手段67は、フィルタFの外縁Qを、上記のように決定された境界線Lと同一形状とする。そして、フィルタ外縁設定手段67は、境界線Lから被写体Oの向き方向95と反対の方向に所定の距離離れた位置に、境界線Lと同一形状の外縁Qを設定する。すなわち、フィルタ外縁設定手段67は、外縁Qを境界線L(境界B1)から左方向にシフトさせて設定する。この外縁Qは、中心位置44cから被写体Oの向き方向95に、約85mm程度離れた位置に設定される。こうして、図5と同じ様に、フィルタFが、口唇、鼻骨周辺など軟組織STを確実に覆うように、硬組織HTの一部に渡って設定される。
フィルタ外縁設定手段67が、外縁Qを所定の位置に設定すると、画像処理手段64は、図5に示したようにフィルタFで覆われた部分に対して階調処理を行う。そして、階調処理後の側面セファロ画像8が画像表示部65に表示される。
なお、フィルタ外縁設定手段67が、被写体Oの頭部の大きさに応じて、フィルタFの外縁Qを異なる位置に設定するように構成してもよい。例えば、オペレータがあらかじめ、入力部61により被写体Oが大人または小児のどちらであるかを入力する。この入力を受けて、被写体Oが大人である場合には、フィルタ外縁設定手段67は、中心位置44cから被写体Oの向き方向95に80mm〜85mm離れた位置に外縁Qを設定する。被写体Oが小児である場合には、フィルタ外縁設定手段67は、中心位置44cから被写体Oの向き方向95に70mm〜75mm離れた位置に外縁Qを設定する。すなわち、頭部が小さい小児のときには、頭部が大きい大人の場合よりも中心位置44cから外縁Qまでの水平距離が小さくなるように外縁Qが設定されるようにする。これによって、被写体Oの頭部の大きさに応じて適切な位置に外縁Qが設定される。
なお、オペレータが入力部61により大人または小児の二つのうちをどちらか選択するのではなく、頭部の大きさを3以上の複数の段階で入力できるように構成し、入力された段階に応じて、異なる位置に外縁Qを設定する構成でもよい。この場合、選択する頭部の大きさに比例して、中心位置44cから外縁Qまで水平距離が大きくなるように外縁Qが設定される。
X線撮影装置は、階調処理を行う範囲を変更するために、フィルタFの外縁Qを移動するフィルタ外縁移動手段を備える。フィルタ外縁移動手段は、画像表示部65に表示されたバー91で構成される。バー91は、境界線決定手段66により決定された境界線Lの上端に表示される。バー91は、オペレータの入力部61から入力によって側面セファロ画像8の上端8aに沿って水平方向に移動する。そして、外縁Qは、バー91の移動に伴い、水平方向に移動するように構成される。
この構成により、オペレータはバー91を操作して、フィルタFの外縁Qを左方向へ移動すると、フィルタFの領域は拡大される。一方、フィルタFの外縁Qを右方向へ移動すると、フィルタFの領域が縮小される。すなわち、オペレータは軟組織STの濃淡を強調するための階調処理を行う範囲を自由に変更することができる。これによって、オペレータは、フィルタFの外縁Qを水平方向に移動して、外縁Qの位置を微調整できる。オペレータが外縁Qを移動してフィルタFの領域を変更すると、画像処理手段64は変更したフィルタFの領域に対して階調処理を行う。これにより、外縁Qの移動に伴い階調処理された側面セファロ画像8がリアルタイムに画像表示部65に表示される。
なお、フィルタFの外縁Qを移動するフィルタ外縁移動手段は、上記のようなバー91によって構成されるものに限定されない。
さらに、図8に他の実施例を示す。図8に示す実施例では、図7と同様の方法でフィルタFの外縁Qが決定され、所定の位置に設定される。この実施例では、フィルタFが、分割線Rによって、第一領域F1と、第二領域F2との二つの領域に分割される。第一領域F1は外縁Qと分割線Rとの間の領域であり、第二領域F2は分割線Rと側面セファロ画像8の右端8bとの間の領域である。分割線Rは、外縁Q(境界線L)と同一形状である。分割線Rは、外縁Qから水平方向に約40mm程度離れた位置に設定される。
画像処理手段64は、第一領域F1では、図7と同様に、外縁Qから分割線Rの方向に濃淡の強調の度合いが大きくなるように傾斜を設けて階調処理を行う。そして、画像処理手段64は、第二領域F2では、傾斜を設けずに階調処理を行う。例えば、外縁Qにおける画素の画素値は変化せず、そこから被写体Oの向き方向95に移動するにつれて画素値の変換の度合いを大きくしていき、分割線Rにおける画素の画素値は1.5倍になるように階調処理を行う。画像処理手段64は、第二領域F2では、傾斜を設けることなく、第二領域F2におけるすべての画素の画素値を、分割線Rにおける画素の画素値と同じく、1.5倍にする階調処理を行う。
このようにフィルタFを、二つの領域F1、F2に分けて、上記のように階調処理を行うことで、図15(a)に示すように、楔角θの楔部51と、一定厚さtの水平部52とで構成されるウェッジフィルタWFを、図13に示すように 被写体OとX線焦点2aとの間に配置してセファロ側面撮影を行った場合と同様の側面セファロ画像8が得られる。
第一領域F1の階調処理において、被写体Oの向き方向95に濃淡の強調の度合いを大きくする傾斜が可変であることが好ましい。例えば、図7と同様に、分割線Rにおける画素の画素値を1.5倍にする設定から、2.0倍に変更して傾斜が大きくなるように設定したり、1.2倍に変更して傾斜が小さくなるように設定したりするなど、オペレータが自由に傾斜の設定を変更する。そして、図8に示す実施例では、分割線Rにおける画素の画素値を1.2倍になるように傾斜を小さく設定した場合、これに伴い、第二領域F2におけるすべての画素の画素値も、1.5倍にする設定から1.2倍にする設定になるように、第二領域F2における濃淡の強調度合いの設定は変更する。傾斜を大きくした場合も同様である。
このように、第一領域F1における傾斜を小さく設定して階調処理を行うことで、図15(b)に示すように、15(a)のウェッジフィルタWFと比較して、楔部51の楔角がθ1(<θ)と小さく、水平部52の厚さがt1(<t)と小さいウェッジフィルタWFを用いて、図13に示すようにセファロ側面撮影を行った場合と同様の側面セファロ画像8が得られる。一方、第一領域F1における傾斜を大きく設定して階調処理を行うことで、図15(c)に示すように、15(a)のウェッジフィルタWFと比較して、楔部51の楔角がθ2(>θ)と大きく、水平部52の厚さがt2(>t)と大きいウェッジフィルタWFを用いてセファロ側面撮影を行った場合と同様の側面セファロ画像8が得られる。すなわち、第一領域F1における傾斜を変更して階調処理を行い、側面セファロ画像8を得ることは、ウェッジフィルタWFの楔部51の楔角θおよび水平部52の厚さtを変更してセファロ側面撮影を行い、側面セファロ画像8を得ることに等しい。
さらに、X線撮影装置は、分割線Rを移動するための分割線移動手段を備える。分割線移動手段は、分割線Rの上端に表示され、オペレータの入力部61からの入力により側面セファロ画像8の上端8aに沿って水平方向に移動するバー92として構成される。分割線Rはバー92の水平移動に伴い、バー92と一体的に水平移動する。なお、分割線移動手段は、このようなバー92によって構成されるものに限定されない。
上記構成により、分割線Rを外縁Qから離間する方向に(右方向に)移動すると、第一領域F1は拡大し、第二領域F2は縮小する。一方、分割線Rを外縁Qに近接する方向に(左方向に)移動すると、第一領域F1は縮小し、第二領域F2は拡大する。すなわち、分割線移動手段(バー92)により、フィルタFの第一領域F1と第二領域F2との割合を変更することが可能となる。分割線移動手段により、外縁Qと分割線Rとの水平距離を約35mm〜70mm程度に変更できることが好ましい。
分割線移動手段により第一領域F1を拡大し、第二領域F2を縮小して上記のような階調処理を行うことで、図16(b)に示すように、図16(a)のウェッジフィルタWFと比較して、楔部51の割合が大きくて水平部52の割合が小さく、楔角がθ1(<θ)と小さいウェッジフィルタWFを用いて、図13に示すようにセファロ側面撮影を行った場合と同様の側面セファロ画像8を得ることができる。一方、分割線移動手段により第一領域F1を縮小し、第二領域F2を拡大して上記のような階調処理を行うことで、図16(c)に示すように、図16(a)のウェッジフィルタWFと比較して、楔部51の割合が小さくて水平部52の割合が大きく、楔角がθ2(>θ)と大きいウェッジフィルタWFを用いてセファロ側面撮影を行った場合と同様の側面セファロ画像8を得ることができる。
このように、X線撮影装置は、上記のような階調処理を行うことで、図14〜図16に示すように様々なタイプのウェッジフィルタWFを用いて、図13に示すようなセファロ側面撮影を行った場合と同様の側面セファロ画像8を得ることができる。図13に示すように、機械的なウェッジフィルタWFを使用して、様々な側面セファロ画像8を得るためには、ウェッジフィルタWFを交換して、何度も被写体Oのセファロ側面撮影をする必要がある。これに対して、本発明では、一度被写体Oのセファロ側面撮影を行えば、後は階調処理を行うだけで様々な側面セファロ画像8を得ることができるため、被写体Oおよびオペレータの双方の負担が軽減される。
さらに、以下において、境界線決定手段66がポイント指定手段により指定されたポイントに基づいて境界線Lを決定し、フィルタ外縁設定手段67が境界線Lと同一形状の外縁Qを所定の位置に設定する他の実施例について説明する。なお、フィルタ外縁移動手段(バー91)、階調処理、要求手段などの同一の構成については、可能な限り説明を省略する。
図9に他の実施例を示す。図7、8の実施例と同様に、オペレータは、境界線決定手段66の要求手段の要求通り、中切歯80の先端にポイントP1を、下顎骨81の先端にポイントP2を指定する。境界線決定手段66は、ポイントP1の座標(x1、y1)と、ポイントP2の座標(x2、y2)とを計測し、これから軟組織STと硬組織HTとの境界線Lを決定する。
境界線決定手段66は、境界線Lを、ポイントP1より上側では、側面セファロ画像8の上端8aにのびる垂直線L1とし、ポイントP1より下側でポイントP2より上側では、ポイントP1とポイントP2とを通る直線L2とする。そして、ポイントP2から下側では、P2から左方向に所定の距離だけのびる水平線L3と、この水平線L3の左端から側面セファロ画像8の下端8cにのびる垂直線L4とする。すなわち、境界線Lは4つの直線L1〜L4をつなぎ合わせることによって形成される。なお、垂直線L1と直線L2とをポイントP1において直接結ぶのではなく、図9に示すように、境界線Lの形状を滑らかにするために曲線を介して結ぶことが好ましい。さらに、直線L2と水平線L3とをポイントP2において曲線を介して結ぶことが好ましい。
こうして境界線Lが決定され、フィル外縁設定手段67が所定の位置に、境界線Lと同一形状の外縁Qを設定する。そして、フィルタFで覆われた部分に対して上記のような階調処理がなされ、階調処理後の側面セファロ画像8が画像表示部65に表示される。図9に示す実施例では、フィルタFを二つの領域F1、F2に分割する分割線Rは、図7、8とは異なり、外縁Q(境界線L)と同一の形状ではない。分割線Rは、側面セファロ画像8の上端8aから外縁Qの下部の垂直線にまでのびる予め設定された曲線で形成される。
図10に他の実施例を示す。この実施例では、図7〜9の実施例と同様に、境界線決定手段66の要求手段は、軟組織STと硬組織HTとの境界線Lを決定するために、中切歯80の先端と、下顎骨81の先端とをポイント指定手段により指定するようにオペレータに要求する。さらに、本実施例では、要求手段は、被写体Oの前頭骨の眉間83を指定するようにオペレータに要求する。オペレータは、前頭骨の眉間83(ポイントP1)、中切歯80の先端(ポイントP2)、下顎骨81の先端(ポイントP3)とを指定する。
境界線決定手段66は、ポイントP1の座標(x1、y1)と、ポイントP2の座標(x2、y2)と、ポイントP3の座標(x3、y3)とを計測する。そして、境界線決定手段66は、眉間83の位置(ポイントP1)から垂線を下ろしX軸と交わる点に、すなわち座標(x1、0)にポイントP0を設定する。
境界線決定手段66は、このポイントP0の座標(x1、0)と、指定したポイントP1の座標(x1、y1)、ポイントP2の座標(x2、y2)およびポイントP3の座標(x3、y3)とから境界線Lを決定する。境界線決定手段66は、境界線Lを、ポイントP0より上側では、ポイントP0およびポイントP1を通る垂直線L1とし、ポイントP0より下側では、ポイントP0、P2、P3を通り、側面セファロ画像8の下端8cにまでのびる円弧Cとし、この直線L1と円弧Cとを結んで境界線Lを形成する。
こうして境界線Lが決定され、フィルタ外縁設定手段67が境界線Lと同一形状の外縁Qを所定の位置に設定する。そして、フィルタFで覆われた部分において上記のような階調処理が行われ、階調処理後の側面セファロ画像8が画像表示部65に表示される。なお、図10の実施例では、フィルタFを二つの領域F1、F2に分割する分割線Rは、外縁Q(境界線L)と同一形状である。
図11に他の実施例を示す。この実施例では、境界線決定手段66の要求手段は、外縁Qを決定するために、オペレータに軟組織STと硬組織HTとの境界B1上の任意の位置を複数指定するように要求する。
オペレータは、例えば図11に示すように、ポイント指定手段により、境界B1上に複数のポイントP1〜P5を指定する。境界線決定手段66は、y座標の大きい順にP1〜P5の各座標(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)、(x4、y4)、(x5、y5)を得て、これらによって境界線Lを決定する。境界線決定手段66は、y座標が大きいものから順番に、すなわちポイントP1〜P5の順番に、各ポイントP1〜P5を直線で結ぶことによって境界線Lを形成する。y座標が一番大きいポイントP1より上側は、側面セファロ画像8の上端8aにまでのびる垂直線とし、y座標が一番小さいポイントP5より下側は、側面セファロ画像8の下端8cにまでのびる垂直線とする。
この実施例では、オペレータは、ポイント指定手段により、前頭骨の眉間83(ポイントP2)、ナジオン82(ポイントP3)、中切歯80の先端(ポイントP4)および下顎骨81の先端(ポイントP5)のように、軟組織STと硬組織HTとの境界B1の凹凸をなす部分を指定しておくことが好ましい。これによって、境界線Lを、すなわち境界線Lと同一形状の外縁Qを、実際の軟組織STと硬組織HTの境界B1に近い形状にすることができる。さらに、指定するポイントが多いほど、外縁Qを、境界B1により一層近い形状にすることが可能である。
こうして境界線Lが決定され、フィルタ外縁設定手段67が境界線Lと同一形状の外縁Qを所定の位置に設定する。そして、フィルタFで覆われた部分において上記のような階調処理が行われ、階調処理後の側面セファロ画像8が画像表示部65に表示される。なお、フィルタFを二つの領域F1、F2に分割する分割線Rは、外縁Q(境界線L)と同一形状である。
境界線決定手段66は、図7〜図11に示したように、明確に表示された硬組織HTと、明確に表示されていない軟組織STとの境界B1上において、ポイント指定手段により指定された複数のポイントに基づいて境界線Lを決定する。フィルタ外縁設定手段67は、決定された境界線Lと同一形状の外縁Qを所定の位置に設定する。そして、画像処理手段64が、フィルタFで覆われた部分のみに階調処理を行い、フィルタFで覆われた軟組織STを明確にする。
側面セファロ画像8では、特に、中切歯80の先端の位置および下顎骨81の先端の位置は、被写体Oごとに違いが大きいため、中切歯80の先端から下顎骨81の先端にかけての境界B1の形状は被写体Oごとに大きく異なる。そのため、オペレータは、ポイント指定手段により、少なくとも中切歯80の先端と、下顎骨81の先端との二つのポイントを指定し、境界線決定手段66がこの2つのポイントを通るように境界線Lを決定し、これにより外縁Qを決定することが好ましい。これによって、被写体Oごとに適した外縁Qを有するフィルタFを設定することができ、被写体Oごとの固体差に対応することができる。
さらに、図12でフィルタFの外縁Qを決定し、所定の位置に設定する他の実施例を示す。
画像処理手段64は、側面セファロ画像8全体の明るさを調整する明るさ調整手段を備える。画像表示部65には、オペレータの操作によって明るさを自由に調整できるように、スライドバー93が表示される。オペレータは、入力部61を操作することで、スライドバー93を水平方向に移動し、明るさを−128〜128の段階で設定できる。スライドバー93により設定されている明るさの設定値は、表示部93aに表示される。画像処理手段64は、設定値に対応するように側面セファロ画像8全体の明るさの調整を行う。
さらに、画像処理手段64は、側面セファロ画像8全体のコントラストを調整するコントラスト調整手段を備える。画像表示部65には、スライドバー93と同様の構成のスライドバー94が表示される。オペレータは、入力部61を操作することで、コントラストを0〜500の段階設定できる。スライドバー93により設定されているコントラストの設定値は表示部94aに表示される。画像処理手段64は、設定値に対応するように側面セファロ画像8全体のコントラストの調整を行う。
図12の実施例では、図7〜図11の実施例と異なり、境界線決定手段66は、軟組織STと空気領域ARとの境界線Lを決定する。境界線決定手段66の要求手段は、境界線Lを決定するために、オペレータに軟組織STと空気領域ARとの境界B2上の所定の位置を指定するように要求する。しかしながら、階調処理前の側面セファロ画像8では、軟組織STは明確ではないため、当然ながら境界B2を認識することができない(図4参照)。そこで、オペレータは、まず初めに、上記の明るさ調整手段およびコントラスト調整手段により、軟組織STと空気領域ARとの境界B2が明確に認識できるように、側面セファロ画像8全体の明るさおよびコントラストを調整する。
オペレータは、側面セファロ画像8全体の明るさおよびコントラストを調整して軟組織STと空気領域ARとの境界B2を明確にし、ポイント指定手段により、明確になった境界B2上で複数のポイント、例えばポイントP1〜P3を指定する。境界線決定手段66が、P1〜P3の座標(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)を計測し、境界線Lを決定する。なお、境界線Lを決定する方法については、図7〜図11の実施例のいずれかと同様の方法で行われる。
境界線決定手段66が境界線Lを決定すると、フィルタ外縁設定手段67は側面セファロ画像8の所定の位置に、決定された境界線Lと同一形状の外縁Qを設定する。そして、画像処理手段64は明るさおよびコントラスト調整前の側面セファロ画像8に対して、フィルタFで覆われた部分に階調処理を行う。そして、画像表示部65に階調処理後の側面セファロ画像8が表示される。これによって、軟組織STと硬組織HTとの双方が明確に表示された側面セファロ画像8が得られる。
図12の実施例のように、軟組織STと空気領域ARとの境界B2上の位置を指定して境界線Lを決定し、これにより外縁Qを決定する場合、少なくとも口唇(ポイントP2)と、下顎骨81の近傍の皮膚(ポイントP3)との二つのポイントを指定することが好ましい。これは、図7〜図11に示した実施例において、少なくとも中切歯80の先端と、下顎骨81の先端とを指定することが好ましいことと同様の理由である。
図7〜図12に示したように、ポイント指定手段、境界線決定手段66およびフィルタ外縁設定手段67によって、被写体Oごとに適したフィルタFの外縁Qが決定されるため、被写体Oごとの個体差に対応することができる。さらに、オペレータは所定のポイントを指定するという単純な操作をするだけで、被写体Oごとに適した外縁Qが決定されるため、フィルタFを設定して階調処理をするにあたり、オペレータの負担が大きく軽減される。
X線撮影装置では、図7〜12に示した、ポイント指定手段、境界線決定手段66およびフィルタ設定手段67によりフィルタFの外縁Qを決定して所定の位置に設定する方法を、オペレータが自由に選択できるように構成してもよい。また、境界線決定手段66が、ポイント指定手段により指定されたポイントに基づいて境界線Lを決定する方法は、図7〜図12の実施例に限定されるものではない。すなわち、境界線Lが指定されたポイントを通らなくても、指定されたポイントの座標から所定の演算式に基づいて境界線Lを決定するようにしてもよい。
また、図7〜図12の実施例では、フィルタ外縁設定手段67は、決定された境界線Lから被写体Oの向き方向95と反対の方向(左方向)にシフトして外縁Qを設定する。そうではなく、フィルタ外縁設定手段67が、外縁Qを境界線Lに重さなるように設定するように構成してもよい。この場合、オペレータがフィルタ外縁移動手段(バー91)により、外縁Qを適した位置に移動させる。
X線撮影装置は、図1に示すような立位型のX線撮影装置に限られない。例えば、図17に示すように、被写体Oが着座するための椅子79を備えた座位型のCT撮影装置であってもよい。CT撮影装置は、頭部固定部75と椅子79とをそれぞれ別々に上下動するための昇降手段790を備え、この昇降手段790によって椅子79に着座した被写体Oの位置決めを行う。そして、旋回アーム3、X線照射部2およびパノラマ・CT用X線検出部1によって被写体OのCT撮影を行う。このCT撮影装置は、図1に示すX線撮影装置のようにセファロ用ユニット4を備えていない。CT撮影装置は、例えば特許文献3に示されるように、CT撮影により得られたCT画像データを、焦点拡大率変更処理をすることによって、拡大率((α+β)/α)が頭部規格撮影の撮影条件である1.1倍であり、被写体Oの側面が表示された二次元レイサムイメージ(疑似セファロ画像)を再構成することができる。再構成された二次元レイサムイメージ(疑似セファロ画像)は、操作/表示部68の画像表示部65に表示される。そして、この二次元レイサムイメージ(疑似セファロ画像)に対して、図7から図12に示したように、フィルタFの外縁Qを決定して、所定の位置に設定し、画像処理手段64がフィルタFで覆われた部分に階調処理を行い、軟組織STを明確にする。
すなわち、本発明でいう「側面セファロ画像8」とは、セファロ側面撮影によって得られるものに限らず、CT撮影によって得られたCT画像データにより再構成され、被写体Oの側面が表示された拡大率1.1倍の2次元レイサムイメージ(疑似セファロ画像)を含むものである。
また、X線撮影装置は、図18に示すような、セファロX線撮影装置でもよい。このセファロ撮影装置は、水平方向に支持されたユニットアーム41を備え、ユニットアーム41の一方側にX線照射部2を、他方側にセファロ用X線検出部5を含むセファロ用ユニット4を備える。ユニットアーム41は支柱74に沿って昇降可能な昇降機構740に取付けられ、セファロ用ユニット4は、ユニットアーム41を介して被写体Oの背丈に応じて昇降する。そして、セファロX線撮影装置は、図3に示したようにセファロ正面撮影およびセファロ側面撮影を行う。そして、側面セファロ画像8は、操作/表示部68の画像表示部65に表示される。すなわち、本発明に係るX線撮影装置は、画像表示部65に側面セファロ画像8を表示し、上記のようにフィルタFの外縁Qを決定し、フィルタFを用いて軟組織STを明確にするための画像処理を行うX線撮影装置であれば、X線撮影装置の構成は問わない。