以下、患者の顎顔面をCT撮影するX線撮影装置(X線CT撮影装置)の実施例を説明する。
図1は、X線撮影装置Mの基本構成を説明するブロック図である。X線撮影装置Mは、X線撮影装置本体M1と、X線画像表示装置M2を備え、通信ケーブルによってデータを送受信する構成になっている。
X線撮影装置本体M1は、X線発生部10とX線検出部20とを対向させて支持した支持手段30と、支持手段30を駆動する駆動部60と、撮影装置本体制御部70とを備えており、撮影装置本体制御部70には操作パネル74が付加されている。この操作パネル74は、後述するように、関心領域rを指定するのに用いてもよい。この場合、図4(c)に示すように、歯列弓DAの形状を示すイラストp#2を表示するイラスト表示部として機能するようにしてもよい。被写体oとされる顎顔面は図示しない被写体保持手段40に保持されている。
X線発生部10は、X線を照射するX線管等からなるX線発生器11と、X線ビームBの広がりを規制するスリット等からなる照射野制御手段12とで構成されており、X線検出部20は、2次元的に広がったCCDセンサ等からなるX線検出器21を設けたカセット22で構成されている。カセット22はX線検出部20に対して着脱自在であるが、X線検出器21をカセット22を介さずにX線検出部20に固定的に設けてもよい。駆動部60は、支持手段30の旋回軸30cを協働して水平移動させるX軸モータ60x、Y軸モータ60yと、支持手段30を昇降させるZ軸モータ60zと、支持手段30を回転させる旋回用モータ60rとを備えている。なお、旋回用モータ60rが支持手段30に固定された旋回軸30cを回転するようにしても、旋回軸30cに対して支持手段30が回動可能な構造において、旋回用モータ60rが支持手段30内部に設けられて旋回軸30cに対して支持手段30を回転するようにしてもよい。同様に、X軸モータ60x、Y軸モータ60yが支持手段30の旋回軸30cを水平移動させるようにしても、旋回軸30cに対して支持手段30が水平方向に変位可能な構造において、X軸モータ60x、Y軸モータ60yが支持手段30内部に設けられて旋回軸30cに対して支持手段30を水平移動させるようにしてもよい。旋回用モータ60r、X軸モータ60x、Y軸モータ60y、Z軸モータ60zは、被写体oに対して支持手段30を相対的に移動させる駆動源となる駆動部60を構成している。撮影装置本体制御部70は、駆動部60を制御する制御プログラムを含んだ各種制御プログラムを実行するCPU71と、X線発生部10を制御するX線発生部制御手段72と、X線検出部20を制御するX線検出部制御手段73とを備えている。操作パネル74は、小型液晶パネルや複数の操作釦で構成されている。図4(a)に示す操作パネル74の入力手段74´としては、操作釦のほか、キーボード、マウス、タッチペン等の入力手段を用いることもできる。後に図4(a)に関して述べるように、操作パネル74が液晶モニタ等のディスプレイからなる表示手段88´を備えるようにしてもよい。
例えば表示手段88´に、X線撮影装置本体M1の操作に必要な文字や画像等の情報を表示するようにしてもよいし、後述するX線画像表示装置M2と接続して、X線画像表示装置M2の表示手段88に表示される表示内容が表示手段88´にも表示されるようにしてもよく、表示手段88に表示される文字や画像の上でマウス等によるポインタ操作などを通してX線撮影装置本体M1に各種の指令ができるようにしてもよい。
なお、X線発生部10、X線検出部20、支持手段30、被写体保持手段40、駆動部60は、X線発生器11、X線検出器21を被写体oに対して相対的に移動させる移動手段65として機能する。
X線撮影装置本体M1は、操作パネル74、あるいはX線画像表示装置M2からの指令に従って、歯列弓DAのパノラマ撮影や、歯列弓DAの全体ではないが、歯列弓DAの一部を含めた被撮影領域(撮影対象領域)rrを撮影する局所的なCT撮影や、歯列弓DAの全体を含めた被撮影領域(撮影対象領域)rrを撮影する広域的なCT撮影を選択的に実行する。また、各種指令や座標データ等をX線画像表示装置M2から受信する一方、撮影した画像データをX線画像表示装置M2に送信する。
図2は、図1に示すX線撮影装置Mとは別のX線撮影装置Mを説明するブロック図である。基本構成は図1に示すX線撮影装置Mと同じなのであるが、図2に示すX線撮影装置本体M1は、被写体oとされる顎顔面が被写体保持手段40に保持されており、支持手段30の旋回軸30cを協働して水平移動させるX軸モータ60x、Y軸モータ60yと、支持手段30を昇降させるZ軸モータ60zと、支持手段30を回転させる旋回用モータ60rのほか、被写体保持手段40を協働して水平移動させるX軸モータ60x、Y軸モータ60yと、被写体保持手段40を昇降させるZ軸モータ60zとを備えている点が異なっている。
図3は、図1に示すX線撮影装置Mとは別のX線撮影装置Mを説明するブロック図である。基本構成は図1に示すX線撮影装置Mと同じなのであるが、図3に
示すX線撮影装置本体M1は、支持手段30を回転させる旋回用モータ60rは備えるが、支持手段30の旋回軸30cを移動させるX軸モータ60x、Y軸
モータ60yと、支持手段30を昇降させるZ軸モータ60zは備えておらず、被写体oとされる顎顔面が被写体保持手段40に保持されており、被写体保持手
段40を協働して水平移動させるX軸モータ60x、Y軸モータ60yと、被写体保持手段40を昇降させるZ軸モータ60zとを備えている点が異なっている。
このように、被写体oに対して支持手段30を相対的に移動させる機構は様々に考えられる。X軸モータ60x、Y軸モータ60y、Z軸モータ60zの一部が支持手段30の駆動側にあり、残りが被写体保持手段40の駆動側にある構成でもよく、さらに、双方にX軸モータ60x、Y軸モータ60y、Z軸モータ60zの少なくとも一部が重複して備えられていてもよい。コストの面からは、図1、図2のように、X軸モータ60x、Y軸モータ60y、Z軸モータ60zの一部が支持手段30の駆動側にあり、残りが被写体保持手段40の駆動側にある構成が望ましい。
より具体的に述べると、上記の構成例を含め、次のような構成例1〜6が考えられる。なお、以下の構成例1〜6は、図4に示すX線撮影装置本体M1のような構造のX線撮影装置に応用できるものとして考えられる。
構成例1は、昇降フレーム91に支持手段30の旋回軸30cを水平移動させるX軸モータ60x、Y軸モータ60y、支持手段30を回転させる旋回用モータ60r、支持手段30を昇降させるZ軸モータ60zを設け、固定フレーム90の底部には被写体保持手段40を移動させる駆動部は設けない。
構成例2は、昇降フレーム91に支持手段30の旋回軸30cを水平移動させるX軸モータ60x、Y軸モータ60y、支持手段30を回転させる旋回用モータ60rを設け、固定フレーム90の底部に被写体保持手段40を昇降させるZ軸モータ60zを設ける。
構成例3は、昇降フレーム91に支持手段30を回転させる旋回用モータ60rを設け、固定フレーム90の底部に被写体保持手段40を水平移動させるX軸モータ60x、Y軸モータ60y、被写体保持手段40を昇降させるZ軸モータ60zを設ける。
構成例4は、昇降フレーム91に支持手段30を回転させる旋回用モータ60r、支持手段30を昇降させるZ軸モータ60zを設け、固定フレーム90の底部に被写体保持手段40を水平移動させるX軸モータ60x、Y軸モータ60yを設ける。
構成例5は、昇降フレーム91に支持手段30を回転させる旋回用モータ60r、支持手段30を昇降させるZ軸モータ60zを設け、X軸モータ60x、Y軸モータ60yのうちの一方を、昇降フレーム91に設けて支持手段30の旋回軸30cを移動させ、他方を固定フレーム90の底部に設けて被写体保持手段40を移動させて、X軸モータ60x、Y軸モータ60yの総合運動で被写体oに対してX線発生器11、X線検出器21を水平移動させる。
構成例6は、昇降フレーム91に支持手段30を回転させる旋回用モータ60rを設け、固定フレーム90の底部に被写体保持手段40を昇降させるZ軸モータ60zを設け、X軸モータ60x、Y軸モータ60yのうちの一方を、昇降フレーム91に設けて支持手段30の旋回軸30cを移動させ、他方を固定フレーム90の底部に設けて被写体保持手段40を移動させて、X軸モータ60x、Y軸モータ60yの総合運動で被写体oに対してX線発生器11、X線検出器21を水平移動させる。
ここで、本願における相対的移動とは、図1〜3、上述の構成例1〜6の被写体oと支持手段30の関係に見られるように、一方αから他方βを観察した場合に、その一方αが実際は静止しようと移動しようと、他方βが移動しているように見える移動を指す。本願実施の形態でいえば、被写体oから見ると、支持手段30が移動して見える移動であり、支持手段30から見ると、被写体oが移動して見える移動である。被写体oと支持手段30のそれぞれの動きから考えると、被写体oは静止していて支持手段30が移動している場合も、被写体o自身が移動して支持手段30が静止している場合も、被写体oと支持手段30の双方が移動している場合もある。
さらに、相対的移動には、以上の他にも様々な構成例が考えられる。X線発生器11、X線検出器21を被写体oに対して相対的に移動させる要素としては、支持手段30側を駆動する要素と被写体保持手段40側を駆動する要素が重複しても構わないし、一方を省略しても構わない。重複する場合は双方の移動量を総合できるので、相対的移動の量を大きくしたり、移動パターンを多様化したりすることが可能という利点があり、一方を省略する場合はコスト面、制御負担の軽減の利点がある。
図4(a)、図4(b)はそれぞれ、X線撮影装置Mのより具体的な正面図と、側面図、図4(c)は、操作パネル74の表示手段88´における表示例である。基本構成は図2に示すX線撮影装置Mによっている。
図4(a)、図4(b)に示したX線撮影装置本体M1は、旋回用モータ60rを内蔵した旋回アームとして構成され、且つその両端にX線発生部10とX線検出部20とを対向させて支持した支持手段30と、被写体oである人体の頭部を固定するホルダを備えた椅子の形状に形成された被写体保持手段40とを備え、この支持手段30、被写体保持手段40は、アーチ状に形成された固定フレーム90に変位可能に取り付けられている。より具体的には、支持手段30は、チェーン駆動部61により昇降可能な昇降フレーム91を介して、固定フレーム90に取り付けられており、その昇降フレーム91には、支持手段30の旋回軸30cを水平移動させるXYテーブル62が内蔵されている。被写体保持手段40は、昇降可能な昇降手段63によって底部を下方から支持されており、固定フレーム90の底部には、その昇降手段63を水平移動させるXYテーブル64が内蔵されている。また、固定フレームの支柱部には、液晶モニタ、小型液晶パネル等で構成された表示手段88´や、複数の操作釦等で構成された入力手段74´を設けた操作パネル74が取り付けられている。なお、旋回用モータ60r、チェーン駆動部61、XYテーブル62のX軸モータ60x、Y軸モータ60y、昇降手段63、XYテーブル64のX軸モータ60x、Y軸モータ60yは、駆動部60を構成している。
図5は、X線撮影装置Mのより具体的な別の実施例である。このX線撮影装置本体M1は、図4(a)、図4(b)に示したX線撮影装置本体M1と同様、旋回用モータ60rを内蔵した旋回アームとして構成され、且つその両端にX線発生部10とX線検出部20とを対向させて支持した支持手段30を備えている。基本構成は図1に示すX線撮影装置Mによっているが、昇降移動に関しては、支持手段30を吊り下げる後述の昇降フレーム91に被写体保持手段が固定されているので、支持手段30が昇降するとその昇降に伴って被写体oも昇降する構造になっている。但し、被写体の身長に合わせて支持手段30が昇降して適宜な位置で被写体oの導入が可能になっている。
基台91´に立設した支柱90´に対し、支持手段30を垂下した、上部フレーム91aと下部フレーム91bを前方に突出した略コの字形状の昇降フレーム91が図示しない昇降機構で昇降可能に設けられ、昇降フレーム91には図4(a)、図4(b)に示したX線撮影装置本体M1と同様、支持手段30の回転軸を水平移動させる図示しないXYテーブル62が内蔵されている。
下部フレーム91bは、被写体oである人間の頭部を左右から固定するイヤロッド、顎を固定するチンレストなどからなる被写体保持手段40を備える。図5に示したX線撮影装置本体M1は、防X線室100内に収容され、防X線室100の壁の外側には、図4(a)、図4(b)に示したX線撮影装置本体M1と同様、小型液晶パネルを設けた操作パネル74が取り付けられている。また、図5に示したX線撮影装置本体Mは、図4(a)に示したX線撮影装置本体Mと同様、X線画像表示装置M2を備え、通信ケーブルによってデータを送受信する構成になっている。
図6は、X線撮影装置本体M1による顎顔面のパノラマ撮影の仕組みを説明する原理図である。X線発生部10において、X線発生器11の前方に設けられた照射野制御手段12は、形状を異ならせた複数のスリットを形成したスリット板12aで構成されており、左右にスライドさせることでスリットのいずれかを選択し、選択したスリットによってX線発生器11から照射されたX線ビームBの広がりを制限する仕組みになっている。パノラマ撮影では、細形スリットが選択され、その形状に対応したX線細隙ビームNBが、X線検出部20のX線検出器21に向かって照射される。そして、その状態で支持手段30を旋回させ、X線細隙ビームNBによって顎顔面を走査しつつ、X線検出器21の検出面の領域Faに投影された透過画像(投影画像)(投影画像)をパノラマ撮影データとして蓄積することにより、パノラマ撮影が実行される。
図7は、X線撮影装置本体M1による顎顔面の広域CT撮影の仕組みを説明する原理図である。広域CT撮影では、スリット板12aに形成された複数のスリットから矩形スリットが選択され、その形状に対応した矩形のX線広域ビームCBが、X線検出部20のX線検出器21に向かって照射される。本実施の形態の場合、X線広域ビームCBは四角錐の形状をしたコーンビームに形成される。コーンビームは錐状であればよいので、矩形スリットの形状を、例えば円にして円錐状のコーンビームが照射されるようにしてもよく、その形状は任意である。コーンビームは、薄いファンビームに比べて多回転のCT撮影を要さず、支持手段30の回転回数が少なくCT撮影できる、撮影時間も短時間で済み、被写体oの負担が小さく装置全体の構造も小さくすることができるなどの利点がある。図8(a)、図8(b)に示しているように、X線広域ビームCBによる被撮影領域(撮影対象領域)rrは、全顎を対象とするため、歯列弓DA全体を含む広がりを有している。そして、支持手段30の旋回軸30cの延長線30c1を歯列弓DAの内側の地点に固定し、X線広域ビームCBが照射されている状態で、支持手段30を少なくとも半回転以上旋回させながら、X検出器21の検出面の領域Fcに投影された透過画像(投影画像)(投影画像)を被写体oのCT撮影データとして蓄積することにより、広域CT撮影が実行される。
また、図8(a)は、撮影中の被写体oである頭部を頭頂から見下ろした状態の図であり、図8(b)は、図8(a)の頭部を左側面から見た状態の図である。支持手段30が360°旋回してCT撮影する場合は、図8(b)の側面視で断面が6角形の形状になっている点線で囲まれた領域が常にX線広域ビームCBによって照射されるが、この部分が被撮影領域(撮影対象領域)rrとなる。
広域CT撮影は、歯列弓DAの全体を含めた顎顔面のほぼ全域を撮影するものである。この場合、顎顔面に関心領域rを指定することにより、関心領域rを正視したX線CT画像(以後、正視X線CT画像と呼ぶ)として表示される範囲、すなわち正視表示対象箇所の指定を行い、予め撮影されたCT撮影データを画像処理して、正視表示対象領域の正視X線CT画像を表示する。関心領域rの指定については、各種画像を表示し、その画像上で行う構成や、画像を用いずに、例えばコード等によって特定の歯牙thを指定する構成等が可能である。なお、正視については後に詳述する。
図6に示すスリット板12aに形成された複数のスリットから矩形小型スリットを選択して、その形状に対応した矩形のX線局所ビームCNを、図9に示すようにX線検出部20のX線検出器21に向けて照射することにより、局所CT撮影を行うことができる。X線局所ビームCNの高さを調整するために、スリット板12aには、高さを異ならせた複数の矩形小型スリットを設けてもよい。X線局所ビームCNによる被撮影領域(撮影対象領域)rrは、関心領域rとして歯列弓DAの全部ではないが、その一部を含む広がりを有している。本実施の形態の場合、X線局所ビームCNも、X線広域ビームCBと同様、四角錐の形状をしたコーンビームである。コーンビームは錐状であればよく、その形状が任意である点なども同様である。このように、本願の発明にかかるCT撮影にはコーンビームが好適に用いられる。
そして、図9に示しているように、支持手段30の旋回軸30cの延長線30c1を関心領域rの中心に固定し、X線局所ビームCNが照射されている状態で、支持手段30を少なくとも半回転以上旋回させながら、X検出器21の撮像面の領域Fbに投影された透過画像(投影画像)をCT撮影データとして蓄積することにより、局所CT撮影が実行される。
局所CT撮影は、歯列弓DAの全体ではなく、その一部、例えば歯牙が2〜3本並ぶ領域を含んだ顎顔面を局所的に撮影するものである。この場合、関心領域rの指定を受け付けると、その関心領域rが実際の被撮影領域(撮影対象領域)rrに含まれるように撮影条件を設定して局所的なX線CT撮影を実行する。関心領域rの指定については各種画像を表示し、その画像上で行う構成や、画像を用いずに、例えばコード等によって特定の歯牙thを指定する構成や、位置付用のガイドビームとなる可視光ビーム、あるいは目盛付スケール等を利用して目視で行う構成が可能である。その後、得られたCT撮影データから、関心領域rを頬側から舌側に向かって正視したX線CT画像を生成して表示する。
CT撮影においては、その関心領域rが実際の被撮影領域(撮影対象領域)rrに含まれるように撮影されるという関係があるが、本願の局所CT撮影においては、説明ないし図示の便宜上、関心領域rと被撮影領域(撮影対象領域)rrとが範囲的に一致するものとする。広域CT撮影、局所CT撮影いずれにおいても、CT撮影中、旋回軸30cを関心領域rの中心に固定しない方式も可能である。例えば、上述のX−Yテーブル62を利用して、CT撮影中、旋回軸30cは移動するが、X線発生器11とX線検出器21の旋回中心が旋回軸30cとは別の箇所に生じるように制御して、その旋回中心が関心領域rの中心に来るように設定してもよい。さらに、X線コーンビームの広がりの対称軸上のX線が撮影対象領域の中心を外れた位置を通過するようにオフセットさせ、撮影対象領域の一部のみを撮影しつつ、撮影対象領域全体のX線撮影データを少なくとも180°以上得る周知のオフセットスキャンの方式を採用してもよい。すなわち、CT撮影中、旋回するX線コーンビームの照射野の旋回中心が関心領域rの中心またはほぼ中心に来るように撮影できればよい。
X線画像表示装置M2は、例えばコンピュータやワークステーションで構成されており、表示装置本体80には、例えば液晶モニタ等のディスプレイ装置からなる表示手段88や、キーボード、マウス等で構成された、操作者の指定操作を受ける操作手段86が付加されている。表示手段88に表示された文字や画像の上でのマウスでのポインタ操作等を通じて各種指令を与えることが可能である。表示手段88はタッチパネルで構成することもできるので、この場合、表示手段88は操作手段86を兼ねる。表示装置本体80は、各種プログラムを実行するCPU81と、ハードディスク等で構成され、各種撮影データや画像等を記憶する記憶手段82と、座標計算を行う座標処理手段83と、画像生成手段84とを備えている。ここに、記憶手段82、座標処理手段83、画像生成手段84は画像処理手段85を形成する。記憶手段82には、後述する歯列弓正視情報等も記憶される。操作手段86は関心領域rの指定操作を受け付ける指定手段として機能する。表示手段88の画面上に表示された画像に対して操作手段86の操作を加えることで関心領域rを指定する構成の場合は、操作手段86と表示手段88が関心領域指定手段として機能する。このように、なんらかの形で関心領域の指定に用いられる手段が関心領域指定手段である。関心領域指定手段は、操作者から関心領域rの指定操作を受け付け、X線撮影装置MまたはX線画像表示装置M2の他の関連要素に関心領域rの指定の命令を発する、ないし伝達する手段である。
記憶手段82には、パノラマ撮影から得たパノラマ撮影データ、CT撮影から得たCT撮影データ、スカウト画像として表示できるイラストを生成するイラストイメージデータ、後述のように、X線広域ビームを2方向から照射して得た投影画像、歯列弓正視情報、生成した正視X線CT画像などを記憶することもできる。各撮影データは被写体をX線撮影した透過画像(投影画像)などからなる。画像生成手段84は、撮影データを処理してX線画像を生成する際に、低解像度の第1の解像度でX線画像を再構成する第1の再構成モードと、第1の解像度より高い解像度である第2の解像度でX線画像を再構成する第2の再構成モードの各モードのいずれかで被写体のX線画像を生成することができる。例えば低解像度モード、通常解像度モード、高解像度モードのモード切換ができるなど、解像度の低いモードから解像度の高いモードまで、2以上の複数段階のモードがあっても構わない。
具体的には、後述の図12、図13、図14(a)で示すようなスカウト画像である第1のX線画像を前述の第1の再構成モード、つまり低い解像度で生成し、図15(a)〜(c)で示すような第2のX線画像を前述の第2の再構成モード、つまり高い解像度で生成することができる。
必ず第1のX線画像を第1の再構成モードで、第2のX線画像を第2の再構成モードで生成するように構成してもよいが、第1のX線画像も第2のX線画像も同じ解像度で生成する選択も可能なように構成してもよい。
X線画像表示装置M2の表示手段88とX線撮影装置本体M1の表示手段88´は総合的に表示部88aを構成する。X線画像表示装置M2の操作手段86とX線撮影装置本体M1の操作パネル74は総合的に操作部86aを構成する。X線画像表示装置M2の制御部であるCPU81とX線撮影装置本体M1の制御部70は総合的に制御部70aを構成する。
ここに表示手段88は、関心領域指定手段として、歯列弓DAを表したスカウト画像上で関心領域rの指定操作を受ける一方、CT撮影データから生成された正視X線CT画像(後述する)等を表示する。座標処理手段83は、広域的なCT撮影においては、歯列弓モデルdmの座標、位置に対する関心領域rの座標、位置の計算の実行等を行い、局所的なCT撮影においては、歯列弓モデルdmの座標、位置に対する関心領域rの座標、位置の計算を実行するだけでなく、歯列弓モデルdmに対して特定された関心領域rの位置に基づいて、関心領域rが被撮影領域(撮影対象領域)rrに含まれるように座標計算を実行し、算出した座標データをX線撮影装置本体M1に送信して、被写体oの位置決めを実行させる。
その位置決めは、支持手段30の回転中心(旋回軸30c)と被写体oとを、撮影を行う空間の所定の位置に配置し、座標処理手段83から送信されてきた座標データに基づいて、関心領域rが被撮影領域(撮影対象領域)rrに含まれるように、支持手段30と被写体保持手段40とを移動させることによりなされる。なお、被写体o、支持手段30は、相対的な位置関係が満たされればよいので、被写体保持手段40と支持手段30とのいずれか一方を移動させる構成としてもよい。
X線CT画像撮影装置Mは、前述の構成とすることにより、以下に説明する顎顔面のX線CT画像の表示方法を実行することができる。なお、X線画像表示装置M2は、同様の構成とした複数のX線撮影装置本体M1と多対一に接続してもよい。また、ケーブルで接続されていない他のX線撮影装置本体M1で撮影した撮影データ等を、CDロム等の可搬型記憶媒体を通じて受け入れて、同様の表示方法を実行するように構成してもよい。
以下、X線画像は、X線画像表示装置M2さらに具体的にはX線画像表示装置の表示手段88の表示画面に表示される。X線画像の表示をX線撮影装置本体M1に設けた表示手段の表示画面に表示してもよい。
本願では、スカウト画像とCT画像との関連付けまでの処理が、大きく分けて2とおりあり、その1つが図11のフローのX線画像生成ルーチンNo.1の、関心領域を指定して既に得ている撮影データから指定した関心領域の正視X線CT画像を生成する場合の処理であり、別の1つが図16のフローのX線画像生成ルーチンNo.2を中心とした、スカウト画像を用いて指定した関心領域のCT撮影を行い、そのCT撮影データから、正視X線CT画像を生成し表示する場合の処理である。
以下の説明では、まずX線画像生成ルーチンNo.1とNo.2に共通する構成の説明をする。
次いで、図11のフローのX線画像生成ルーチンNo.1を中心とした、まず関心領域を指定して既に得ている撮影データから指定した関心領域の正視X線CT画像を生成する場合の処理を説明する。この処理では、歯列弓モデルdmの座標情報、位置情報も、関心領域rの座標情報、位置情報も把握されているので、後述する方法で関心領域rを指定すると、歯列弓モデルdmの座標、位置に対して関心領域rの座標、位置が特定できる。歯列弓モデルdmの座標、位置に対する関心領域rの座標、位置が特定されると、次に述べるように、図10に示す正視方向vやスライス位置slが設定できる。正視方向vやスライス位置slが設定されると、被写体oに関するCT撮影データを画像処理して関心領域rを正視した正視X線CT画像に再構成することができる。なお、「スライス」の語は一般的には「薄く切る」の意であるが、本願においてはある断層の画像を生成すること、ないしある3次元のX線CTデータに対し、断層面や断面などを特定の位置に設定することを指すものとする。
次いで、図16のフローのX線画像生成ルーチンNo.2を中心とした、スカウト画像を用いて指定した関心領域のCT撮影を行い、そのCT撮影データから、正視X線CT画像を生成する場合の処理を説明する。この処理では、後述する方法で関心領域rを指定すると、X線撮影装置本体M1の機械的構成により、被写体位置付けが行われ、指定された関心領域rを撮影対象としたCT撮影が行われる。このとき、歯列弓モデルdmの座標情報、位置情報も、関心領域rの座標情報、位置情報も把握されるので、歯列弓モデルdmの座標、位置に対して関心領域rの座標、位置が特定できる。歯列弓モデルdmの座標、位置に対する関心領域rの座標、位置が特定されると、次に述べるように、図10に示す正視方向vやスライス位置slが設定できる。正視方向vやスライス位置slが設定されれば、被写体oに関するCT撮影データを画像処理して関心領域rを正視した正視X線CT画像に再構成することができる。
このように、X線CT画像撮影装置Mの構成により、関心領域を指定して既に得ている撮影データから指定した関心領域の正視X線CT画像を再構成することも、関心領域を指定して指定した関心領域のX線CT撮影を行い、得られたデータから正視X線CT画像を再構成することも可能である。
まず関心領域を指定して既に得ている撮影データから指定した関心領域の正視X線CT画像を生成する場合とスカウト画像を用いて指定した関心領域のCT撮影を行い、そのCT撮影データから、正視X線CT画像を生成する場合のいずれの場合でも、関心領域rを正視する正視方向vやスライス位置slは、解剖学における歯列弓DAの全体または一部の形状を数学的に関数として規定するなどして表現した歯列弓モデルdmを基に演算して求める、あるいは、関心領域rの部位毎に予め正視方向vを登録したデータテーブル(ルックアップテーブル)を参照することによって求めることが可能である。後者のデータテーブルを用いる方法では、特定の位置に関心領域rを指定すると、指定された位置の位置情報に対し、対応する特定の正視方向vやスライス位置slを読み出せるようにデータテーブルに登録しておくことなどが考えられる。ただし、後者のデータテーブルを用いる方法によるとしても、関心領域rの位置指定があってから演算するのではないという点が前者の演算による方法と異なるのみであり、正視方向vやスライス位置slはやはり歯列弓モデルdmを想定して導き出される。
本発明では、上記のような歯列弓モデルdm、歯列弓モデルdmを基にした座標データやデータテーブル、正視方向vやスライス位置slを導くのに必要な情報、正視方向vやスライス位置slそのもの等、正視方向vやスライス位置slに関する情報を歯列弓正視情報と総称する。すなわち、歯列弓正視情報は、所望の対象部位を正視するための情報であって、正視方向vやスライス位置slを導き出すための情報も導き出された正視方向vやスライス位置slも含まれる。正視方向vがスライス位置slを導き出すのに用いられることもある。以下、歯列弓正視情報についてさらに詳述するが、図10を参照すれば容易に理解できるので、以下の記述に出てくる「位置rc1、rc2、正視方向v1、v2、スライス位置sl1、sl2」は図示を省略する。
歯列弓DAは湾曲しているために、対象部位ごとに正視方向vが異なる。図10に示す状態では、歯牙th44を中心に近傍の歯牙を観察する場合の、歯牙th44のほぼ中心の位置rcを正視できる正視方向vが示されている。正視方向vに対しては、この正視方向vに直交する接線TGを設定することができ、その接線TGを正視方向vに直交する面の位置を示すものと捉え、スライス位置slが設定できる。
歯列弓DAのある位置rc1についてはその位置rc1を正視できる正視方向v1、別の位置rc2についてはその位置rc2を正視できる正視方向v2というように、位置ごとに具体的正視方向vを設定できる。位置rc1については、正視方向v1の方に向かい、その位置rc1を観察するのに適切な位置にスライス位置sl1が設定でき、位置rc2については、正視方向v2の方に向かい、その位置rc2を観察するのに適切な位置にスライス位置sl2が設定できる。(スライス位置sl1、sl2はそれぞれ断面を形成し、その断面は歯列弓DAを位置rc1、rc2において歯列弓DAを正視して観察する断面であり、正視断面sl1、sl2と呼んでもよい。)rc1、rc2などの位置ごとに、正視方向v1、v2のような具体的正視方向vや、スライス位置sl1、sl2のような具体的スライス位置slが設定され、図15(a)のX線CT断層面画像dp#12のような断層面画像や図15(c)の3次元CTボリューム画像dp#2のような3次元CTボリューム画像の正視表示を可能にする。歯列弓正視情報は、そのような具体的正視方向vや具体的スライス位置slの情報であるが、広義にはその具体的正視方向vや具体的スライス位置slを導く過程の情報(副次的歯列弓正視情報)を含めて考えてよい。以上より、正視方向vやスライス位置slはむろん歯列弓正視情報であり、正視方向vやスライス位置slを導くための歯列弓モデルdmも歯列弓正視情報である。
正視方向vは、従来のパノラマ画像で示される断層を見る方向、すなわち歯列弓DAに対して直交またはほぼ直交する方向である。歯科医師が見慣れた、解剖学的に認識しやすい方向でもある。同様に、上記のスライス位置slにおける断層面画像は、歯科医師が見慣れた、解剖学的に認識しやすい画像である。このように、ある部位を観察する際の通常見慣れた方向は、歯列弓以外の場合でも様々に考えられる。後に詳述する。歯列弓の正視はこのような歯列弓正視情報を基に行うことができる。歯列弓正視情報は、一般人の標準的歯列弓の形状を想定して予め準備しても、撮影した歯列弓の画像データを画像処理して得ても、歯列弓の形状を実測して得てもよい。なお、歯列弓においては関心領域rを頬側から舌側に向かって正視するのであるが、歯列弓を裏側から観察したい場合も考えうるので、この場合を排斥するものではない。この場合は頬側から舌側にマイナス方向に向かう方向、つまり舌側から頬側に向かう方向ということになる。すなわち、頬側から舌側に向けて正視する方向のベクトルとして、マイナスのベクトルも含まれてよい。
以下の説明における「歯列弓モデル」は、歯列弓の形状のことであり、正視方向vを歯列弓モデルに従って演算するというのは、正視方向vを歯列弓の形状から演算するということと同じである。また、歯列弓モデルは薄い層からなる形状のものである必要はなく、正視方向vを特定できればよく、厚みがあっても不定形でも良い。また、個々の患者の歯列弓形状をもとに歯列弓モデルを用いても良い。
X線撮影装置M、より具体的にはX線撮影装置本体M1の存在する3次元空間において、歯列弓モデルdmが想定又は設定される位置は、座標情報、位置情報として把握でき、同様に、指定される関心領域rの3次元空間中の位置も、座標情報、位置情報として把握できるので、本発明では、それら歯列弓モデルdmの座標情報、位置情報と、関心領域rの座標情報、位置情報に基づいて、関心領域rを正視した正視X線CT画像を生成する。
ここで、図10を用いて歯列弓モデルdmと関心領域rの基本的な関係を詳述する。これらは、関心領域rの指定の方法を、それぞれ異なる例に従って説明する平面図で、理解を容易にするために、下顎における歯列をなす歯牙thを輪切りにしたスライス面を平面視している。そして、歯牙thからなる一般的形状の歯列弓DAが模式的に示され、この歯列弓DAに関する歯列弓モデルdmが設定されている。歯列弓モデルdmは、歯牙thからなる一般的形状の歯列弓DAを想定してこの歯列弓DAに関して設定すればよいが、歯牙thに加えて顎骨jb、顎関節jjからなる一般的形状の歯列弓DAを想定して設定してもよい。
歯列弓モデルdmの形状は、様々なものが考えられるが、歯列弓DAの湾曲形状、または少なくとも歯列弓DAの湾曲形状に沿う形状を有している。図10に示した例では、歯列弓モデルdmは歯列弓DAの各歯牙thの中央を横切る、馬蹄形状、または略馬蹄形状の、例えば歯科のパノラマX線撮影におけるパノラマ断層と同様または類似の形状を有している。歯列弓モデルdmの取得方法も、後述するように、様々なものが考えられる。歯列弓モデルdmは、一般的形状の歯列弓DAを基に形成しても、個別の歯列弓DAを実測した値から得ても、画像解析から得てもよい。
歯列弓DAは、図10(a)に示しているように、列をなす歯牙thの部分では頬側に凸をなして湾曲し、最も奥の歯牙th48の近傍から顎関節jjに向かう部分では、頬側に向かって外側に開く形状となっている。そのため、歯列弓モデルdmは、そのような歯列弓DAの形状に合わせて、例えば図10(a)の例では歯列弓DAの舌側と頬側の間のほぼ中央の地点を結ぶ湾曲形状をなす歯列弓曲線を示す。より具体的には、歯列弓モデルdmは、歯列を形成する複数の歯牙thの中央部分を結び頬側に凸をなす放物線状の曲線と、最も奥の歯牙th48から顎関節jjに向かう近傍で舌側に凸をなし、歯牙th48の中央と顎関節jjの中央を結ぶ線からなる湾曲形状となっている。歯列弓曲線は、歯列弓DAの舌側と頬側の間のほぼ中央の地点を結ぶ曲線に限定されず、歯列弓DAの舌側のみに沿う曲線であっても頬側のみに沿う曲線であってもよく、要は歯列弓DAの湾曲形状に沿う曲線であればよい。無論、個体によって特殊な形状の歯列弓DAが存在することもありうるので、その場合にはその特殊な形状の歯列弓DAをもとに歯列弓モデルdmを形成しても構わない。上述のとおり、本願構成は顎関節jjの部分についても適用できる。顎関節は重要な診断部位であり、特に注目して診断対象とする場合もありうる。
関心領域rは、外縁が平面視で真円の形状であり、3次元的には、その外縁を上下に伸長した円柱の形状をとるものとし、その中心をrcとする。
図10(a)の例では、歯牙th44に注目し、歯牙th44の中央の、歯列弓モデルdmの形成する線上に関心領域rの円の中心rcを一致させて関心領域rを指定しており、この場合には、中心rcにおける歯列弓モデルdmの接線TGを算出あるいは設定し、接線TGに垂直な、歯列弓を頬側から舌側に向けて正視する方向を正視方向vとして算出または設定できる。正視方向vは歯列弓を頬側から舌側に向けて正視する場合に限らず、歯列弓を舌側から頬側に向けて正視する場合であってもよい。このように、正視方向vは、関心領域rの位置での、歯列弓モデルdmの中央曲線に対する法線方向が好適であるが、厳密に法線方向に設定しなくとも、要は術者が通常パノラマ画像で見慣れた方向から関心領域rを観察できればよいので、ほぼ法線方向であればよい。
正視方向vは、基本的には、接線TGの法線方向であるが、必ずしも厳密な法線方向としなくとも、ほぼ法線方向であればよい。しかしながら、関心領域rを正視している感覚が得られるように正視方向vを設定することは必要である。具体的には、正視方向vの接線TGに対してなす角度の許容範囲として、図23に図示の状態の正視方向vに対しプラスマイナス30°の範囲内、好ましくはプラスマイナス10°の範囲内、より厳密にはプラスマイナス5°の範囲内に設定される。つまり、接線TGに対する正視方向vの角度が90°とすれば、60°〜120°の範囲、好ましくは80°〜100°の範囲、より厳密には85°〜95°の範囲である。ここで、そのような正視方向vが算出または設定されれば、つまり正視方向vが決定されれば、CT撮影データを再構成して、正視方向vから見たX線画像として、正視方向vから見た所望のスライス位置slが断層面となった断層面画像を生成したり、正視方向vから見た3次元CTボリューム画像を生成したりすることで生成することが可能である。なお、本願でいう3次元CTボリューム画像はボリュームレンダリング像である。なお、正視X線CT画像を断層面画像で生成する場合、各スライス位置におけるスライス面つまり断層面を、例えば歯列弓DAの湾曲に沿った曲面等の任意の曲面に設定しても、平面に設定してもよい。平面に設定した場合は、目的とする断層が曲折している場合に一目で所望の断層の様子を観察することはできないが、スライス面の位置を操作によって変更して、変更後のスライス面の断層画像を表示させる場合に予め平面のスライスであることを操作者が認識しているので、操作しながら直感的に対象部位の様子が把握しやすいという利点がある。曲面に設定した場合は、目的とする断層が曲折している場合に一目で所望の断層の様子を観察することができるという利点があるが、スライス面の位置を操作によって変更して、変更後のスライス面の断層画像を表示させる場合に、設定した曲面をそのままの形で変更後の位置に移動させるとスライス面の画像として何を表示しているのか把握しにくいという場合が生じうる。
図10(a)における接線TGの位置にスライス位置slを設定すると、歯牙th44の中央またはその付近でスライスすることになるが、歯牙th44の前後、近辺に示す位置にスライス位置slを設定することもできる。但し、スライス位置slは歯牙thを全く外れた位置に設定するより、正視X線CT画像となる断層面画像に複数の歯牙thが示される位置に設定することが好ましい。スライス位置slの設定に、上記正視方向vを必ずも計算する必要はなく、接線TGにそのままスライス位置slを設定してもよい。接線TGに設定したスライス位置slは、結果的に正視方向vの方を向いた断面を形成する。接線TGに平行な図示しない線を接線TGと別の位置に設定して、その線にスライス位置slを設定してもよい。
なお、スライス位置slの設定は任意なので、逐一詳述しないが、前述例の他、様々な設定方法がある。例えば、前述の例では関心領域rの形状として真円、円柱(水平断面が真円)を想定したが、任意の形状として設定してよく、真円、円柱でない形状の場合、例えば円の中心rcに相当する、関心領域rの概ね中央の箇所rc´を任意に関心領域rの中に設定してもよい。また、関心領域rの形状には、点も含まれる。
正視方向vやスライスの位置slを、逐一計算せずに得る方法もある。歯列弓モデルdmを、複数の歯牙thが比較的直線状にならんだ区間に分けて、区間ごとに正視方向またはスライス位置を予め設定しておいてもよい。
正視方向vやスライス位置slは、歯列弓DAの3次元形状に基づく歯列弓モデルdmの形状から関心領域rの指定ごとに演算して求めてもよく、関心領域rの部位ごとに予め正視方向vやスライス位置slを設定したデータテーブル(ルックアップテーブル)を参照して求めてもよい。
また、歯牙th毎に正視方向vやスライス位置slを設定しても、歯列弓モデルdmを点に細分して、点ごとに正視方向vやスライス位置slを設定してもよい。また、歯牙th毎に正視方向vやスライス位置slを設定してもよい。また、前述したように、関心領域rの形状には、点も含まれる。すなわち、関心領域rの指定は、必ずしも2次元に広がりのある領域として指定せずに、点としての指定も可能である。そして、スライスされた断層面の画像は、関心領域r内の領域のみの画像を生成してもよく、関心領域r以外の部分も含む画像を生成してもよい。
また、被写体oの歯列弓DAの形状を実測することにより歯列弓モデルdmを得ることもできる。例えば、X線撮影時に被写体oを保持する被写体保持手段40の一部または全部を、被写体oに合わせて可変調整できるようにしておき、その調整値から歯列弓DAの形状を推定するような方法が可能である。具体的には、例えば頭部を挟む2本のイヤロッドまたは側頭部押さえが可動であり、頭部のサイズに合わせて2本のイヤロッドまたは側頭部押さえの幅が拡大縮小でき、この2本のイヤロッドまたは側頭部押さえの開度から調整値を算出し、歯列弓モデルdmの形状を変更するように構成できる。
このとき、調整値と歯列弓モデルdmとの相関関係は、予め調査して準備しておく必要がある。上述の2本のイヤロッドまたは側頭部押さえに加えて被写体である患者等が噛むバイトブロックを装備し、イヤロッドまたは側頭部押さえとバイトブロックの位置関係から歯列弓モデルdmの形状を抽出するようにしても良い。この場合、バイトブロックは患者の骨格に合わせて変移する機構にしても良い。
歯列弓DAの形状の実測は、これ以外の方法も考えられる。例えば頭部を固定した状態で患者に平面状の感圧センサを噛ませ、圧力が高く測定された箇所の2次元座標情報又は3次元座標情報を得て歯列弓DAの湾曲形状を検出してもよい。
また、頭部をX線撮影した撮影データを得ている場合で、歯列弓を体軸に交差する平面でスライスした断面の形状が認識できる条件にあるとき、すなわち図14のp#41のようなX線画像を生成できる撮影データが得られているときなど、その断面形状から歯列弓モデルdmを抽出することもできる。具体的には歯牙の並びや顎骨の形状に沿う湾曲線を作図して歯列弓モデルdmを抽出してもよく、画像認識のソフトウェア等で自動的に形状を認識して歯列弓モデルdmを抽出してもよい。
図14のp#41のようなX線画像の上で、術者が前歯、左の奥歯のいずれか、右の奥歯のいずれか、という最低3点を指定してその3点を結ぶ曲線が自動的に設定されるソフトウェアを用いて歯列弓モデルdmを抽出することもできる。
歯列弓モデルdmの基本的形状は、歯列弓DAの湾曲形状、または少なくとも歯列弓DAの湾曲形状に沿う形状であって、例えば歯列弓DAの周知のパノラマ断層に相当する部分であるので、立体的に考えると、例えば図10(b)に示す形状をとる。図10(b)に示すように、曲面とする替わりに、図10(c)に示すように平面を複数箇所で山折りにした複合面で設定してもよい。むろん、薄層のものでも、厚みがあるものでもよい。歯列弓モデルdmを上記のような面でとらえる場合、正視方向vは、歯列弓モデルdm上のある1点において、周囲の歯列弓モデルdmの面に対して直交する方向として設定することができる。図10(c)の例で説明する。正視方向vは、3次元空間におけるある地点paとある地点pbとを結ぶ線pvに沿うものであると考える。線pvは、歯列弓モデルdmに対してある1点ptで交差する。1点ptは関心領域rの中心またはほぼ中心にある地点である。歯列弓モデルdmの面上で、1点ptに対する頭頂と足を結ぶ体軸方向に沿う方向vdと、体軸方向と直交する方向hdが考えられる。線pvは、歯列弓モデルdm#2の面上、方向vdに対しても方向hdに対しても直交する。正視方向vを、このような線pvに沿う方向として設定できる。ただし、前述したように、正視方向vは、関心領域rを正視している感覚が得られるように設定されればよいので、必ずしも厳密に直交する方向を設定しなくとも、ほぼ直交する方向であればよい。
正視方向vは歯列弓DAの湾曲に対して法線またはほぼ法線の方向でもある。図10(b)のような形状の歯列弓モデルdmについても、図10(c)と同様に正視方向vが考えられる。図10(d)は、図10(b)の歯列弓モデルdmに図10(c)と同様な正視方向vを設定したところを示す。ただし、厳密には図10(d)の歯列弓モデルdmは曲面なので、図10(d)の歯列弓モデルdmと正視方向v(線pv)が交差する1点ptにおいて、歯列弓モデルdmの面と接する接線を想定して、その接線に対して直交する方向を正視方向vとして設定することができる。従来より、パノラマ撮影においては、細隙X線ビームを歯列弓にできるだけ直交するように入射させているが、その入射方向を正視方向vとして設定してもよい。なお、X線撮影装置本体M1が存在する3次元空間において、被写体保持手段40の空間的位置すなわちX線撮影装置本体M1の空間的位置に対し、歯列弓モデルdmが設定されている。歯列弓モデルdmの空間的位置は、X線CT撮影が行われる場所における空間的位置ともいえる。
本願におけるスカウト画像上で指定するある地点の3次元空間における位置、座標は、X線撮影をしたときのX線発生器11、X線検出器21の位置、X線の経路、画像上の指定箇所の位置を考慮すれば、演算で特定できる。例えば、スカウト画像が後述の図12に示すパノラマ画像p#1のような画像である場合を考える。このパノラマ画像p#1の撮影において撮影対象となったパノラマ断層が図10(c)の歯列弓モデルdmのような断層であるとする。パノラマ断層はパノラマ撮影の前提として3次元空間の特定位置に想定ないし設定されている。パノラマ画像p#1上で特定の点rp1を指定するということは、3次元空間におけるパノラマ断層の特定の地点を指定するということであり、すなわち歯列弓モデルdmに対して特定の点を指定するということである。歯列弓モデルdmは3次元空間に観念上存在するので、歯列弓モデルdmに対して特定の点を指定することにより、3次元空間上の特定の地点が指定される。この特定の地点が、例えば図10(c)に示す点ptの位置にあるとすると、点ptについての正視方向vやスライス位置slが決定される。このように、スカウト画像上である地点の指定位置、座標が特定できれば、上記の空間的位置にある歯列弓モデルdmに対してどういう位置に存在するかも特定できるので、正視方向vやスライス位置slも決定できるという関係がある。スカウト画像を用いずに指定した場合も同様である。本願において、スカウト画像上で指定する3次元空間における位置、座標は、指定があってから演算で特定してもよいし、演算によらずとも、予めデータテーブル(ルックアップテーブル)を準備して指定箇所に対して3次元空間における位置、座標を対応させておいて指定により特定するようにしてもよい。
正視方向vは、歯牙thの選択情報や関心領域rの位置情報から直接的に求めることも可能である。例えば、各歯牙thに対する正視方向vとを対応させたルックアップテーブル等を予め準備しておけば、正視すべき歯牙thのコードを選択するだけで、直ちに正視方向vを得ることができる。また、関心領域rとして指定可能な各位置と、その位置における正視方向vまたはスライス位置slとを対応させたルックアップテーブルとしてもよい。ここで、歯牙thに割り当てたコード選択は、操作パネル74または操作手段86で行う構成としてもよい。歯列弓の正視方向vは観察基準方向の一例である。観察基準方向については後述するが、本願においては対象部位の関心領域の状況が最も把握できる切断面を観察基準面と考え、その観察基準面をほぼ正面から見る、すなわち正視する方向を観察基準方向と考える。
ここから、図11のフローのX線画像生成ルーチンNo.1の、関心領域を指定して既に得ている撮影データから指定した関心領域の正視X線CT画像を生成する場合の処理の説明に入る。図11は、まず関心領域を指定して既に得ているCT撮影データから指定した関心領域の正視X線CT画像を生成する場合の基本手順を説明するフロー図である。この基本手順は、CT撮影データを得るステップ(ステップ1035)、スカウト画像を表示するステップ(ステップ1090)、関心領域rを指定するステップ(ステップ1100)、指定された関心領域rに対応した歯列弓正視情報から関心領域rの正視方向vを決定するステップ(ステップ1130)、CT撮影データから、関心領域rを正視した正視X線CT画像を少なくとも含むX線CT画像を生成するステップ(ステップ1140)、生成した正視X線CT画像を少なくとも含むX線CT画像と関心領域rの指定に用いたスカウト画像とを関連付けるステップ(ステップ1150)からなる。典型的な例は、予め図7、図8に関して説明した広域CT撮影を行い、広域CT撮影によるCT撮影データを得ておき(ステップ1035)、関心領域rを指定し(ステップ1110)、広域CT撮影によるCT撮影データを再構成して関心領域rを正視した正視X線CT画像を少なくとも含むX線CT画像を生成する(ステップ1140)場合であるが、撮影対象領域のサイズは任意である。
ここに、関心領域rは、正視した状態で表示させたい範囲、つまり正視表示対象領域であり、顎顔面の一部、具体的には歯列弓DAの一部に関心領域rを指定する。スカウト画像は、X線画像である場合と、X線画像でない画像である場合がある。スカウト画像はX線画像である場合も、イラストや模式図などである場合もある。
CT撮影により得られたCT撮影データからは、X線CT画像が生成され、このX線CT画像には、関心領域rを正視した正視X線CT画像が少なくとも含まれる。スカウト画像がX線画像である場合、このX線画像は第1のX線画像であり、関心領域rの指定に基づいて得られた、関心領域rを正視した正視X線CT画像を少なくとも含むX線CT画像は第2のX線画像である。以下の説明では、関心領域rの指定に基づいて得られた、関心領域rを正視した正視X線CT画像を少なくとも含むX線CT画像を、正視X線CT画像からなるX線画像と呼ぶことにする。
本願においては、スカウト画像がX線画像である場合にそのスカウト用のX線画像を第1のX線画像とし、正視X線CT画像からなるX線画像を第2のX線画像として、後述のように第1のX線画像と第2のX線画像の間で解像度に差をつけ、第2のX線画像の解像度を第1のX線画像の解像度よりも高くして生成する。
関心領域rを指定する方法としては、表示手段88に表示した、歯列弓DAを表したスカウト画像上で関心領域rの指定をする方法等、関心領域rの指定を画像上で行う方法でも、歯列弓DAの各部位に割り当てた部分コード等で関心領域rの指定をする等、表示手段88に表示したスカウト画像を用いない方法でもよい。
前述したように、正視方向vやスライス位置slは、歯列弓DAの3次元形状に基づく歯列弓モデルdmの形状から算出してもよく、関心領域rの部位ごとに予め正視方向vやスライス位置slを設定したデータテーブル(ルックアップテーブル)を参照してもよい。
なお、ルックアップテーブルを用いること、指定された関心領域rに対応した歯列弓正視情報から関心領域rの正視方向vまたはスライス位置slを決定することは、図11のフロー図におけるステップ1130に示している。
以下は、関心領域rの指定に関する詳細な説明である。関心領域rの指定、すなわち表示対象領域の指定では、前述のように、スカウト画像を用いて行う方法と、スカウト画像を用いない方法とがあるが、まず前者について説明する。
関心領域rを指定操作するためのスカウト画像には、図12に示すように予め撮影した被写体oのパノラマ撮影データから生成した顎顔面領域のパノラマ画像p#1をはじめ、図13に示すようなX線透視画像p#3、予め撮影したCT撮影データから生成した、結果的に図12に示す顎顔面領域のパノラマ画像p#1と同様に表示されるパノラマ画像p#1、図14に示すようなX線CT断層面画像p#4、図14に示すような3次元CTボリューム画像p#5を用いることができる。歯列弓全体を低い解像度で再構成したCT断層画像を用いてもよいし、予め準備した歯列弓DAの平面図等のイラストイメージデータからなる歯列のイラスト等を用いるようにしてもよい。被写体の位置情報さえ把握できるのであれば別のX線撮影装置で撮影した撮影データを外部からインポートしてスカウト画像に用いてもよい。
これを図11のフロー図における各ステップと関連して説明すると、次の通りである。パノラマ画像p#1の生成は、図11のフロー図におけるステップ1020に示している。また、イラストの生成は、特にフロー図には表示しないが、パノラマ画像と同様に表示する。透視画像p#3の生成は、ステップ1030に示している。X線CT画像撮影における、ある方向から撮影した透視画像のフレームのデータと、別の方向から撮影した透視画像のフレームのデータを抽出してきて、スカウト画像として用いることは可能である。CT撮影データから透視画像p#3を抽出する手順は、ステップ1040に示している。スカウト画像として図14に示すような歯列弓全体のCT断層画像p#41〜をp#43を低い解像度で表示してもよく、そのステップはステップ1050に示している。図14に示すような3次元CTボリューム画像p#5の生成の例は、ステップ1060に示している。CT撮影データから生成した、結果的に図12に示す顎顔面領域のパノラマ画像p#1と同様に表示されるパノラマ画像p#1の生成は、ステップ1070、1080に示している。
いずれも、スカウト画像を表示するのはステップ1090で、スカウト画像を用いた関心領域rの指定はステップ1100でなされる。なお、スカウト画像の上で関心領域rが指定操作されたときに、その関心領域rの範囲を、スカウト画像の上に枠として表示するようにすれば、その範囲を直感的に把握できて利便性が高くなる。
図12は、スカウト画像とされるパノラマ画像p#1の例で、実際には3次元的に湾曲した歯列弓DAが、平面的に展開表示されている。このパノラマ画像p#1上には、オペレータの移動操作に応じて移動する水平カーソルhcと、垂直カーソルvcとが重ねて表示されており、撮影対象領域、すなわち関心領域rは、それらの交点rp1の位置に指定され、その範囲が四角形の枠fr1によって示されている。両カーソルはボタン操作やマウス操作などにより移動でき、交点rp1は、好ましくは関心領域rの中心またはほぼ中心を指定するように設定される。交点rp1で指定する3次元空間における位置、座標は、演算で特定できる。カーソル操作に代えて、ポインタをマウス操作により移動調整させて指定してもよいし、タッチペンで画面に接触して指定してもよいし、画面自体を感圧の液晶パネルにして接触により指定するようにしてもよく、その方法は任意である。このように、本願において、特定の点を指定して関心領域rを指定する場合は、その特定の点によって好ましくは関心領域rの中心が指定されるように設定される。厳密に中心でなくとも、ほぼ中心が指定されるように設定してもよい。
パノラマ画像p#1は、被写体oを予めパノラマ撮影したパノラマ撮影データから生成してもよいが(ステップ1020)、広域CT撮影のデータがあれば、その一部を利用して生成してもよい(ステップ1070、1080)。すなわち、X線CT撮影においては、支持手段30の旋回の微小角度ごとに被写体oの透過画像を取得していき、CT撮影データとするので、各位置において、それぞれの透過画像を得ることができる。これらの透過画像の中には、従来の軌道によるパノラマ撮影において軌跡が包絡線を描くX線細隙ビームと近似の成分が含まれているので、この成分を抽出して合成すればパノラマ画像p#1が生成できる。なお、パノラマ画像p#1の生成には、例えば、本出願人による先行技術である特開2000−139902におけるオルソX線コーンビームを用いる技術が応用可能である。
これを、図11のフロー図における各ステップと関連して説明すると、次の通りである。成分P1、P2、P3のような、パノラマ画像p#1の成分を抽出して合成し、パノラマ画像p#1を生成することは、図11のフロー図におけるステップ1070、1080に示している。
もちろん、X線撮影装置本体M2において、前述のXYテーブル62またはXYテーブル64の少なくとも一方と支持手段30の総合運動により、従来の軌道によるパノラマ撮影を行っても構わない(ステップ1020)。
より具体的には、被写体保持手段40は固定のまま、支持手段30を旋回させつつ、XYテーブル62により支持手段30の旋回軸30cを移動させ、X線発生器11のX線管のX線発生の焦点とX線検出器21の検出面の中央地点MDの結ぶ直線が包絡線を描くように撮影する、従来の軌道によるパノラマ撮影を行うようにしてもよい(ステップ1020)。
あるいは、支持手段30の旋回軸30cは固定して、支持手段30を旋回させつつ、XYテーブル64により被写体保持手段40を移動させることにより、被写体oから見ると、X線発生器11のX線管のX線発生の焦点とX線検出器21の検出面の中央地点MDの結ぶ直線が包絡線を描くよう、支持手段30が相対的に移動するパノラマ撮影を行ってもよい(ステップ1020)。
また、支持手段30を旋回させつつ、XYテーブル62による旋回軸30cの移動とXYテーブル64による被写体保持手段40の移動を同時に行い、被写体oから見ると、X線発生器11のX線管のX線発生の焦点とX線検出器21の検出面の中央地点MDの結ぶ直線が包絡線を描くよう、支持手段30が相対的に移動するパノラマ撮影を行ってもよい(ステップ1020)。パノラマ画像p#1の代わりに、パノラマ画像p#1をイラスト化した、図示しないイラストを用いてもよい。パノラマ断層の位置情報さえ把握できるのであれば別のX線撮影装置で撮影した撮影データを外部からインポートしてスカウト画像に用いてもよい。
図13は、スカウト画像とされるX線透視画像p#3の例で、正面、側面の2つのX線透視画像p#31、p#32であり、それぞれにオペレータの移動操作に応じて移動する水平カーソルhcと、垂直カーソルvcとが重ねて表示されており、関心領域rは、それらの交点rp2、rp3の位置に指定され、その範囲が四角形の枠fr2、fr3によって示されている。交点rp2、rp3で指定する3次元空間における位置、座標は、演算で特定できる。X線CT撮影においては、支持手段30の旋回の微小角度ごとに被写体oの透視画像p#3を取得してCT撮影データとするので、正面、側面において、それぞれ特定の角度からの透視画像p#3を得ることができる。2つのX線透視画像p#31、p#32は、支持手段30を旋回させて被写体oを予め異なる2方向からX線撮影した透視画像撮影データから生成してもよいが、広域CT撮影のデータがあれば、その一部を利用して生成してもよい。透視画像は支持手段30を旋回して方向Aから撮影した透視画像と、方向Aとは異なる方向Bから撮影した透視画像が表示される。複数方向であれば、方向A、方向Bの2方向以上であってよい。
図14(a)は、スカウト画像とされるX線CT断層面画像p#4の例である。X線CT断層面画像p#4は、CT撮影データを画像処理して得られた被写体oの3次元領域の3次元CTデータを再構成し、その3次元領域について、相互に直交する断層面のX線CT断層面画像p#4として、Z断層面の画像を表示するX線CT断層面画像(Z断層面画像)p#41、Y断層面の画像を表示するX線CT断層面画像(Y断層面画像)p#42、X断層面の画像を表示するX線CT断層面画像(X断層面画像)p#43が組み合わされて表示されている。3つのX線CT断層面画像p#4には、オペレータの移動操作に応じて移動するXカーソルxc、Yカーソルyc、Zカーソルzcが重ねて表示されている。カーソルxc〜zcは、X線CT断層面画像p#4上では、それぞれX断層面、Y断層面、Z断層面の投影線になっている。なお、初期設定では、X線CT断層面画像p#41において前歯が図示の真下を向くように表示される。スカウト画像用に用いることを考慮すれば、画像が高解像度でなくとも良いので、低いX線照射量で行ってもよく、CT撮影または例えばX線をパルス状に照射し、照射を行うタイミングとフレーム画像(透過画像)の取得のタイミングとを合致させ、フレーム画像の数を通常のCT撮影よりも少なくしたCT撮影を行ってもよい。そのようなCT撮影でX線被爆量を低減させることもできる。
ここで図11のフロー図における各ステップと関連して説明すると、次の通りである。Z断層面画像p#41の生成は、図11のフロー図におけるステップ1070に示している。また、Z断層面画像p#41をスカウト画像として表示することはステップ1030に、スカウト画像を用いた関心領域rの指定はステップ1090に示している。
関心領域rは、カーソルxc、yc、zcの交点rp4、rp5、rp6によって指定されるが、カーソルxc、yc、zcのいずれかが移動操作されたときには、操作されたカーソルxc、yc、zcに対応した位置の断層面の画像が表示されるように、操作に従って、X線CT断層面画像p#4を変更表示する。また、このとき関心領域rの指定操作を受け付けるが、その指定操作は、例えばマウスで交点rp4、rp5、rp6のいずれかをダブルクリックする等により実行できる。交点rp4、rp5、rp6で指定する3次元空間における位置、座標は、演算で特定できる。
また、X線CT断層面画像p#4には、別のスカウト画像として、3次元CTボリューム画像p#5が並べて表示されている。この3次元CTボリューム画像p#5は、3次元CTデータを構成する各ピクセルに、濃度値に応じて色情報、透明度情報を付加してから、表示方向に沿って重ね合わるようなレンダリング処理によって得られる。
3次元CTボリューム画像p#5についても、前述の第1の再構成モードによるなど、低い解像度で再構成したCT画像として表示してよい。
また、3次元CTボリューム画像p#5には、上下左右の回転ボタンb3も重ねて表示されており、その操作により画像を自在に回転させることができる。これは、3次元CTデータに対する表示方向を回転操作に応じて変化させ、変化させた後の表示方向に従って3次元CTデータを再レンダした画像によって更新表示することによりなされる。さらに、3次元CTボリューム画像p#5には、カーソルxc、yc、zcも重ねて表示されている。カーソルxc、yc、zcは、それぞれX断層面、Y断層面、Z断層面を示すので、3次元CTボリューム画像p#5においては、面として表示されている。この3次元CTボリューム画像p#5では、回転ボタンb3や、カーソルxc、yc、zcを適宜操作することにより、関心領域rを所望の位置に指定することができる。前述のパノラマ画像p#1、X線透視画像p#3、X線CT断層面画像p#4、3次元CTボリューム画像p#5に代えて、これらの画像をイラスト化した画像をスカウト画像として用いることもできる。本願においては、このように、実際のX線画像の代わりにX線画像をイラスト化した画像をスカウト画像として用いることができる。また、本願においては、これらの画像について、実際に撮影したX線画像から代表的なものを選び、その代表的な画像をスカウト画像として、被写体が異なっても用いるようにしてもよい。図4(c)に示すp#2のような模式図を用いてもよい。
関心領域rの指定では、スカウト画像を用いない方法も可能である。例えば、各歯牙thに前述コードが予め割り当てられ、操作パネル74または操作手段(関心領域指定手段)86で、歯牙thに割り当てたコードを選択して関心領域rを指定する構成としてもよい。この場合、イラストを、装置の任意の場所に表示して、オペレータが必要に応じて参照できるようにしてもよい。
これを、図11のフロー図における各ステップと関連して説明すると、次の通りである。歯牙thに割り当てたコードは、位置指定ツールであり、この位置指定ツールによる位置指定、位置指定による関心領域rの指定はステップ1100でなされる。
任意の形状の歯列弓モデルdmを予め準備できることは、既に述べた通りである。予め準備した歯列弓モデルdmを持つことは、図11のフロー図におけるステップ1120に示している。
また、画像認識することによって歯列弓モデルdmを得るようにしてもよいことは、既に述べた通りである。画像認識で得た歯列弓モデルdmを持つことは、図11のフロー図におけるステップ1110、1120に含まれる。また、被写体oや歯列弓DAの実測によって歯列弓モデルdmを得るようにしてもよいことは、既に述べた通りである。被写体oや歯列弓DAの実測で得た歯列弓モデルdmを得てもよい。
一部繰り返しになるが、歯列弓モデルdmに対して、関心領域rの位置を特定することで、関心領域rの正視方向vを求めることができるのであるが、歯列弓モデルdmに対して、関心領域rの位置を特定するには、スカウト画像における指定位置すなわち座標を、歯列弓モデルdmにおける座標に対応させること又は変換することが必要である。
そのための座標処理は予め規定しておくことができる。例えばスカウト画像がパノラマ画像p#1である場合、パノラマ撮影においては、画像として生成されるパノラマ断層が3次元空間中に設定されている。このパノラマ断層を歯列弓モデルdmとすることができる。
このパノラマ断層を画像化したパノラマ画像p#1は、歯列弓モデルdmの標準曲面を平面に引き伸ばしたものに相当するので、パノラマ画像p#1における指定位置すなわち座標と歯列弓モデルdmにおける座標を対応させ、パノラマ画像p#1における特定の位置(座標)を指定することにより、対応する歯列弓モデルdmにおける特定の座標が指定されるように設定できる。
次いで、本発明によって表示される正視X線CT画像について説明する。ここに、正視の対象となるX線CT画像は、CT撮影データをコンボリューション法等により逆投影して再構成した被写体oの3次元領域の3次元CTデータから生成される画像であり、その3次元CTデータをスライスしたX線CT断層面画像や、3次元CTデータをレンダリングした3次元CTボリューム画像等が含まれるが、それらに限定される訳ではない。CT撮影では、位置決めされた被写体oを撮影しているため、再構成された3次元CTデータにおける歯列弓DAの配置は既知である。従って、正視X線CT画像として、X線CT断層面画像を生成するには、正視方向vに対応した断層面を選択し、選択したスライス面によって3次元CTデータを関心領域rの位置でスライスすればよい。このとき、正視X線CT画像は、図15に示すように、CT撮影データから生成される相互に直交したX断層面、Y断層面、Z断層面の3つのX線CT断層面画像dp#11〜dp#13のいずれかとして生成し、その3つの画像を組み合わせて同時に表示するようにしてもよい。後述するように、図15に示す状態では、X線CT断層面画像dp#11〜dp#13のうち、dp#12が正視X線CT画像dp#4となっている。また、正視X線CT画像となるX線CT断層面画像dp#4は、顎顔面領域の関心領域rを含んだ広域的なものでもよく、関心領域rに限定した局所的なものでもよい。
図15のX線CT断層面画像dp#11〜dp#13のようなX線画像は、X線CT断層面画像dp#4のような正視X線CT画像を少なくとも含む正視X線CT画像からなるX線画像である。スカウト画像において指定される関心領域rの正視方向vまたはスライス位置slは、図10に関して説明した方法で決定でき、正視X線CT画像を生成できる。より具体的には、図12に示す交点rp1、図13に示す交点rp2、rp3、図14に示す交点rp4、rp5、rp6で3次元空間における位置、座標を特定できれば、その位置、座標に対応する正視方向vまたはスライス位置slも決定できる。歯列弓モデルdmを用いる場合、歯列弓モデルdmにおける特定箇所の正視方向vやスライス位置slが決定できる。
図15(a)のdp#12は、その正視X線CT画像とされるX線CT断層面画像dp#4の例である。図15(a)は図14と同様の表示構成であり、相互に直交する断層面のX線CT断層面画像として、Z断層面の画像を表示するX線CT断層面画像(Z断層面画像)dp#11、Y断層面の画像を表示するX線CT断層面画像(Y断層面画像)dp#12、X断層面の画像を表示するX線CT断層面画像(X断層面画像)dp#13が組み合わされて表示されている。3つのX線CT断層面画像には、オペレータの移動操作に応じて移動するXカーソルxc、Yカーソルyc、Zカーソルzcが重ねて表示されている。カーソルxc〜zcは、X線CT断層面画像上では、それぞれX断層面、Y断層面、Z断層面の投影線になっている。3つのX線CT断層面画像dp#11〜dp#13の内、X線CT断層面画像dp#12が正視X線CT画像dp#4になっている。そのためX線CT断層面画像dp#12では、関心領域r内の歯列弓DAの長手方向がX線CT断層面画像dp#11に示されたYカーソルycに概ね沿うような角度で表示されている。このX線CT断層面画像dp#12と、図14でスカウト画像の例として示したX線CT断層面画像p#42とを比較すると、特徴的な差異は、前者のY断層面p#42が、関心領域rで歯列弓DAを正視方向vから正視した断層面画像であるのに対して、後者のY断層面dp#12は、関心領域rで歯列弓DAと斜めに交わる方向に向いている点である。(正視方向vから正視した断層面画像になっていないという点は、図14のX線CT断層面画像p#43も同じである。)そのため、正視X線CT画像であるX線CT断層面画像dp#12では、関心領域rが、歯科医師、術者の通常見慣れているパノラマ画像p#1の対応部位と極めて類似した態様で表示されている。正視方向vを設定する効果は、このように正視X線CT画像を生成して歯科医師、術者の通常見慣れているパノラマ画像p#1の対応部位と極めて類似した態様で表示できることである。
図15(a)では、CT撮影データから生成した、斜め方向から見た顎顔面の3次元CTボリューム画像dp#1も組み合わせて表示している。しかしながら、その代わりに、図15(b)に示しているような、正視X線CT画像として生成した3次元CTボリューム画像(正視3次元CTボリューム画像)dp#2を表示してもよい。このような3次元CTボリューム画像dp#2は、3次元CTデータを構成する各ピクセルに、濃度値に応じて色情報、透明度情報を付加してから、正視方向vで見た画像になるように重ね合わせればよい。3次元CTボリューム画像dp#1の代わりに、図15(c)に示しているような3次元CTボリューム画像dp#3を表示してもよい。3次元CTボリューム画像dp#3は、パノラマ断層に相当する歯列弓のほぼ中央の断層が断面として表示されるようになっている。図15(c)に示す例では3次元CTボリューム画像dp#3は図15(a)に示す3次元CTボリューム画像dp#1のYカーソルycの正視方向手前側がカットされた表示となっている。この断層の位置は歯列弓モデルdmを基に設定することができる。このような表示によれば、X線CT断層面画像dp#12に奥行きの部分が立体的に付された図となり、断層面の状態と、断層面と連なる部分の立体的状態が把握できるというメリットがある。図15(c)のX線CT画像は正視表示の変形例である。
なお、ここでの3次元CTボリューム画像dp#1、dp#2は、顎顔面の全体を含んだ広域的なものでもよく、関心領域rに限定した局所的なものでもよい。これを図11のフロー図におけるステップと関連して説明すると、次の通りである。正視X線CT画像からなるX線画像を生成することは、ステップ1140に示している。ステップ1140で、生成した正視X線CT画像からなるX線画像を表示してもよい。スカウト画像と、正視X線CT画像からなるX線画像とは、画像処理手段85により関連付けられる(ステップ1150)。関連付けられたスカウト画像と、正視X線CT画像からなるX線画像とを記憶手段82に記憶してもよい。以上、関連付けまでがX線画像生成ルーチンNo.1であり、X線画像表示ルーチンへと進む(ステップ1160)。
関連付けの具体的な例としては、例えば各画像に付帯情報を付与する構成が考えられる。付帯情報にはモダリティ識別情報、撮影した機器の情報、患者情報、撮影対象領域の位置情報、撮影日時情報、そのX線画像自体のID情報など様々なものが考えられるが、関連付けをしたときに、関連付けの相手となるX線画像のID情報を付帯情報に加え、呼出指令が出ると相手となるX線画像のID情報から関連付けがなされたX線画像を呼び出してくる構成が考えられる。患者情報と撮影対象領域の位置情報が一致すればその条件に一致する他のX線画像を呼び出してくるようにしてもよい。
なお、CT画像はCT撮影データから生成されるのであるが、上述のX線CT断層面画像p#41〜p#43のような断層面画像や、図15に示したdp#11、dp#12、dp#13のような断層面画像を生成、表示をするにあたって、予め任意の方向に並んだ複数のスライス画像をCT撮影データから切り出して生成しておいて保存してカーソルxc、yc、zcの移動に従って保存したスライス画像の中から順次表示するようにしてもよいし、特に予め複数のスライス画像を準備して保存することなく、カーソルxc、yc、zcの移動に従って指定された箇所のスライス画像をその場で生成して表示するようにしてもよい。
以上、X線画像生成ルーチンNo.1のCT撮影による例を説明したが、前述構成は、歯列弓DAの全体でなく、歯列弓DAの一部を撮影するCT撮影にも応用できる。例えば、歯列弓DAの右半分を撮影するCT撮影、左半分を撮影するCT撮影、前歯寄りの領域を撮影するCT撮影、奥歯寄りの領域を撮影するCT撮影を行った場合でも、その領域に適合する歯列弓モデルdmさえ準備すれば前述と同様に正視X線CT画像を得ることができる。
上述のスカウト画像は第1の画像の例であり、上述のX線CT断層面画像dp#11〜dp#13、dp#1やdp#2は第2の画像の例である。この第2の画像には上述のdp#12やdp#2のように関心領域rを正視したX線CT画像が少なくとも含まれる。すなわち、第2の画像は正視X線CT画像からなる。ステップ1100で関心領域rの指定をしたことでステップ1140で関心領域rを正視方向vすなわち観察基準方向から正視したdp#12やdp#2のようなX線CT画像が生成される。
ステップ1090でスカウト画像を表示し、ステップ1140で正視X線CT画像からなるX線画像を生成する。
CT画像の再構成においては、投影画像データは、3次元の演算上、被撮影領域に逆投影され、3次元吸収係数分布データが再構成される。
投影画像データは、例えばCT撮影であれば、CT撮影時の撮影角度ごとの2次元X線画像データであるので、基本的にはX線検出器の検出面を構成する最小単位ピクセル1つごとのデータである。
MOSセンサやCCDセンサなどでは、この最小単位ピクセルは1つ1つのフォトダイオードで構成される。
ある被撮影領域rrがあって、この被撮影領域rrに対して最も高い解像度で再構成演算する場合、この最小単位ピクセルのデータ全てに対して逆投影演算を行う。
被撮影領域rrについて解像度を低くして再構成演算する場合を、図19を用いて説明する。
図19(a)はある被撮影領域rrについてX線CT撮影を行うときのX線照射の様子を示している。X線広域ビームCBに照射されたX線投影データをX線検出器21の検出面21aで検出している。
図19(b)は図19(a)で示すX線検出器21の検出面21aを正面から見た図である。フォトダイオードが行v1〜v4と列h1〜h4からなる4×4=16のマトリクスで配置されていて、各ピクセルのフォトダイオードで投影画像信号v1h1〜v4h4を検出している。図示の例は原理的説明のために極端に簡略にしたものにしてある。
高い解像度で再構成する場合、投影画像信号v1h1〜v4h4の1つ1つについて逆投影演算を行う。
解像度を低くして再構成演算する場合、例えば間引き的に投影画像信号v1h1、v1h3、v3h1、v3h3のみを逆投影演算の対象とする方法が考えられる。
v1h1を逆投影演算するにあたって、周囲の投影画像信号を全く無視する演算も考えられるが、周囲の投影画像信号の影響をあえて取り入れるようにしてもよい。例えば、v1h1については係数1を乗じ、隣の投影画像信号v1h2やv2h1については係数0.5を乗じてこれらを合計するような例が考えられる。
上記は、高い解像度の再構成の例として、最小単位ピクセルのデータ全てを逆投影演算の対象とする場合の例を示したが、ビニングを行った上で、高い解像度の再構成として、ビニング後の最小単位の投影画像信号の全てに対する逆投影演算を行い、低い解像度の再構成としては、さらにその投影画像信号に対して間引き的な処理を行うようにしてもよい。
解像度の高低は相対的な概念であるので、必ずしも高い解像度の再構成とは全ての最小単位の投影画像信号の1つ1つに対して逆投影演算を行うことであると限定する必要はなく、間引きの程度の大小で解像度の高低をつけてもよい。例えば、図19の例でいうと、高い解像度の再構成としては間引きの程度を小さくしてv1h1、v1h3、v2h1、v2h3、v3h1、v3h3、v4h1、v4h3を逆投影演算の対象とするが、低い解像度の再構成としては間引きの程度を大きくしてv1h1、v1h3、v3h1、v3h3のみしか逆投影演算の対象としない方法などが考えられる。
上記の例は、間引き的処理による低解像度化の例であるが、ボクセルサイズを大きく設定し、投影画像データを粗視化してもよいし、低周波成分を抽出するようにしてもよい。また、CT撮影の場合、撮影中に取得するフレーム画像(透過画像)を少なく取得して演算対象の数を減らして再構成してもよく、または取得したフレーム画像のうちから演算対象とするフレーム画像の数を減らして演算対象の数を減らして再構成してもよい。
フレーム画像が少なくなる場合、フレーム画像が多い場合に比べて再構成で生成される画像が処理対象データが少ない分、低画質となる。逆にいえば、フレーム画像が多い場合はフレーム画像が少ない場合よりも高画質ないし高精細となる。
再構成される領域または処理対象となるデータの領域について、第1のX線画像の場合と第2のX線画像の場合の双方に同じ大きさの領域を想定し、その同じ大きさのある領域を単位と考えた場合に、再構成演算の負担を軽減するために、単位あたりの処理対象データの量を減らした再構成で第1のX線画像を生成し、第2のX線画像の生成にあたっては単位あたりの処理対象データの量が第1のX線画像よりも多くなる。その結果として、第1のX線画像が第2のX線画像よりも低解像度化ないし低画質化する。逆にいえば、第2のX線画像が第1のX線画像よりもよりも高画質化ないし高精細化する。
本件においては、スカウト画像の生成については解像度を低く、関心領域のみ解像度を高く再構成するので負担が軽く、いずれの画像の再構成についても画像処理の時間を短くでき、プロセッサの容量が小さいものでも処理できる。
図14(a)で示すスカウト画像を低い解像度で、図15(a)〜(c)で示すX線画像を高い解像度で表示する例を説明する。図14(c)は被写体oである患者の歯顎顔面領域をCT撮影した投影画像pn1、pn1から、低解像度の3次元吸収係数分布データce1を再構成するための原理図で、被撮影領域51に対して、投影画像pn1、pn1を逆投影するときの様子を表している。ここで、投影画像pn1、pn1には格子が描かれているが、格子の目の大きさでが解像度の高低を示している。格子の目が大きいほど解像度が低いことを示す。pn1、pn1に付された格子の目は、後述の図15(d)のpn2、pn2に付された格子の目より大きい。
次いで、その低解像度3次元吸収係数分布データce1から図14(a)に示したp#4、p#5のようなスカウト画像sc1を生成し、そのスカウト画像上の任意の位置に関心領域rを設定する。
図14(b)は、図14(a)に示したp#4、p#5のようなスカウト画像sc1の被撮影領域rrに特定された関心領域rを示している。
関心領域rは、図14(a)に示すカーソルxc、yc、zcの移動操作によって、スカウト画像sc1の任意の位置に設定される。
図14(a)に示すスカウト画像で指定された関心領域rは図15(a)〜(c)に示すCT画像で高い解像度によって生成される。
ここでは、関心領域rの高解像度3次元吸収係数分布データce2を生成するために、対応領域を高解像度で逆投影する。
図15(d)は被写体oである患者の歯顎顔面領域をCT撮影した投影画像pn1、pn1のうち、図示のpn2、pn2の部分から、高解像度の3次元吸収係数分布データce2を再構成するための原理図で、投影画像pn1、pn1のうち、関心領域rのpn2、pn2の部分を逆投影するときの様子を表している。図15(d)は原理説明のための図であるので、関心領域rの位置は厳密に図14(a)の関心領域rの位置と一致した表示となっていない。ここで、投影画像pn2、pn2には格子が描かれているが、格子の目の大きさで解像度の高低を示している。格子の目の大きさは、図14(c)の投影画像pn1、pn1に付されたものよりも図15(d)のpn2、pn2に付されたものの方が小さくなっている。
高い解像度で生成したCT断層面画像でスカウト画像の対応領域を覆う形態で表示してもよい。この場合、図14(a)中のrで示される領域が図14(a)の中でそのまま高解像度で埋め込まれて表示される形態となる。このような表示形態では、関心領域rの位置が一目で理解できるという利点がある。
また、図14(d)に示すように、スカウト画像に埋め込まれた関心領域rの領域を所定の操作に従って拡大縮小でき、その領域が高解像度で再構成されて表示されるようにすると使い勝手が向上する。
関心領域rの指定があった段階で、一旦スカウト画像たるCT画像を正視X線CT画像を少なくとも含むX線CT画像として表示させてもよい。図20はそのように図14(a)のスカウト画像を正視X線CT画像を少なくとも含むX線CT画像として表示させた例である。図20に示すp#42、p#5が正視X線CT画像となって表示されている。
この表示形態の利点は、スカウト画像を術者が通常見慣れた表示によって表示できることである。
この表示形態において、さらに高い解像度で生成したCT断層面画像でスカウト画像の対応領域を覆う形態で表示してもよいことはいうまでもない。この場合、図20中のrで示される領域が図20の中でそのまま高解像度で埋め込まれて表示される形態となる。
ここから、図16のフローのX線画像生成ルーチンNo.2の、スカウト画像を用いて指定した関心領域のCT撮影を行い、そのCT撮影データから、正視X線CT画像を生成する場合の処理の説明に入る。図16のフロー図は、前述のスカウト画像を用いて指定した関心領域rのCT撮影を行い、そのCT撮影データから、正視X線CT画像を生成し表示する場合の基本手順を説明するフロー図である。
基本手順は、関心領域rを指定するステップ(2050)、指定された関心領域の位置に基づいて、関心領域rが被撮影領域(撮影対象領域)rrに含まれるようにCT撮影を実行するステップ(2060)、指定された関心領域rに対応した歯列弓正視情報から関心領域rの正視方向vを決定するステップ(2100)、CT撮影データから、正視X線CT画像からなるX線画像を生成するステップ(2110)、生成した正視X線CT画像からなるX線画像と関心領域rの指定に用いたスカウト画像とを関連付けるステップ(ステップ2120)からなる。ここで、歯列弓正視情報は、前述歯列弓モデルdmや、ルックアップテーブルを含んでいる。実行されるCT撮影は、典型的には局所CT撮影であるが、撮影対象領域のサイズは任意に設定できる。実行されるCT撮影が局所CT撮影であれば、スカウト画像上で狙いとする関心領域rを確実に指定して、関心領域rのみに被照射範囲を限局させてCT撮影することができ、被爆量を減少させる観点から望ましい。
スカウト画像が、X線画像である場合と、X線画像でない画像である場合があることは、図11のフローのX線画像生成ルーチンNo.1の処理と同様である。スカウト画像はX線画像である場合も、イラストや模式図などである場合もある。関心領域rを指定する方法としては、関心領域rの指定をスカウト画像で行う方法でも、歯列弓DAの部分コード等で関心領域rを指定するなど、画像を用いない方法でもよい。スカウト画像がX線画像である場合、このX線画像の撮影は第1のX線撮影であり、このX線画像は第1のX線画像であり、正視X線CT画像からなるX線画像は第2のX線画像である。第2のX線画像の撮影は第2のX線撮影である。本願の局所CT撮影においては、撮影対象領域rrの指定が関心領域rの指定も兼ねるものとする。したがって、スカウト画像上で特定の位置を指定して撮影対象領域rrを指定することと、関心領域rの指定をすることは同義である。
正視方向vまたはスライス位置slは、歯列弓DAの3次元形状に基づく歯列弓モデルdmの形状から算出してもよく、関心領域rの位置情報等によってルックアップテーブルを参照してもよい。
ここで、関心領域rを指定する方法を説明する。まず、歯列弓DAを表したスカウト画像で関心領域rの指定をする方法について述べる。
X線画像生成ルーチンNo.1の処理と同様、スカウト画像には、予め撮影した被写体oのパノラマ撮影データから生成した顎顔面領域のパノラマ画像p#1や、予め準備した歯列弓DAの平面図等のイラストp#2や、2方向のX線透視画像p#3等を用いることができる。また、その表示したスカウト画像で関心領域rが指定操作されたときには、その関心領域rの位置を歯列弓モデルdmに対して特定すると共に、その関心領域rの範囲を、スカウト画像に枠として表示するようにしてもよい。もちろん、歯列弓モデルdmとしては、予め準備した標準的な歯列弓モデルdmや、被写体oの歯列弓DAの形状を実測して得た個別の歯列弓モデルdmを用いることができる。
スカウト画像としてパノラマ画像p#1を用いる例について説明すると、前述のX線細隙ビームBNを照射するパノラマ撮影の方法で、予め記憶させたパノラマ断層撮影軌道に従ってX線発生器11とX線検出器21とを移動させることで、パノラマ撮影データを得ることができる。パノラマ撮影の方式については、ステップ1020、1070、1080で述べたと同様でよい。このパノラマ撮影データから顎顔面領域のパノラマ画像p#1を生成し、図12で説明したように表示手段88に表示させる。スカウト画像として表示するパノラマ画像の例は、図12に示すパノラマ画像p#1と同じパノラマ画像である。このパノラマ画像p#1上でカーソル操作やマウス操作などにより関心領域rを指定するようにできる。具体的な方法は、図12について述べたと同様である。
スカウト画像として表示するパノラマ画像p#1上で特定の位置を指定すると(ステップ2050)、その位置の座標に合わせてX線発生器11とX線検出器21の旋回中心が設定される。そして、特定の位置の指定により、支持手段30または被写体保持手段40の少なくとも一方が、相対的移動により移動調整される。その後、被写体oの周囲でX線発生器11とX線検出器21を旋回させ、局所CT撮影を実行する(ステップ2060)。相対的移動は、指定された関心領域rの位置に基づいて、関心領域rが局所CT撮影の被撮影領域(撮影対象領域)rrに含まれるようになされ、局所CT撮影を実行することで、CT撮影データを得ることができる(ステップ2070)。前述のとおり、本願の局所CT撮影においては、説明ないし図示の便宜上、関心領域rと被撮影領域(撮影対象領域)rrとが範囲的に一致するものとするので、特定の位置の指定により、X線発生器11とX線検出器21の旋回中心が関心領域rの中心に来る。
局所CT撮影では、前述のように、X線発生器11とX線検出器21の旋回中心が関心領域rの中心に来るように、支持手段30または被写体保持手段40の少なくとも一方が、移動調整される。X線発生器11とX線検出器21の旋回中心と支持手段30の旋回中心が一致する場合は、支持手段30の旋回中心を設定すればよい。旋回中心の設定は、具体的には前述のXYテーブル62による支持手段30の移動調整、または前述のXYテーブル64による被写体保持手段40の移動調整、またはXYテーブル62による支持手段30の移動調整と前述のXYテーブル64による被写体保持手段40の移動調整を共に行うことにより、被写体oの歯列弓DAに対する撮影対象領域の位置を相対的に移動調整させることで行う。
本発明では、被写体oが撮影を行うための好適な位置に来るよう被写体o、支持手段30の少なくとも一方を位置付けることを被写体位置付けと呼ぶ。前述のように、支持手段30、被写体保持手段40の少なくとも一方を移動させて調整することも被写体位置付けであるが、被写体oまたは支持手段30、被写体oまたは支持手段30の双方の移動の必要がない場合では、単に被写体oを被写体保持手段40に被写体oを保持させればよく、この場合に単に被写体oを被写体保持手段40に被写体oを保持させることも被写体位置付けに含まれる。
これを図16のフロー図における各ステップと関連して説明すると、次の通りである。 パノラマ画像p#1の生成は、図16のフロー図におけるステップ2020に示しており、このパノラマ画像p#1をスカウト画像として表示するのはステップ2040に示している。
パノラマ画像p#1の代わりに、パノラマ画像p#1をイラスト化したイラストを用いても、別のX線撮影装置で撮影した撮影データを外部からインポートしてスカウト画像に用いてもよいことは、X線画像生成ルーチンNo.1の処理と同様である。
また、スカウト画像として、図13で説明したのと同様に、図13に示すのと同じ透視画像p#3を用いることが可能である。ここで用いられる透視画像p#3は、前述のX線広域ビームを2方向から照射すれば、投影画像として得ることができる(ステップ2030)。そして、2方向の透視画像p#3上で、オペレータは、カーソル操作やマウス操作により関心領域rを指定する(ステップ2050)。その後の局所CT撮影は前述のパノラマ画像p#1をスカウト画像として生成表示する構成において、ステップ2050でスカウト画像上で関心領域rの位置指定をした後と同様、被写体位置付けが行われた後に行われる(ステップ2060)。
スカウト画像として、X線CT画像を用いることも可能である。例えば、図7に示す顎顔面の広域CT撮影で得たX線CT画像を図14(a)のような形態でスカウト画像として表示する(ステップ2035)。この場合のCT撮影としては、画像が高精細でなくとも良いので、低いX線照射量で行ってもよく、CT撮影または例えばX線をパルス状に照射し、照射を行うタイミングとフレーム画像(透過画像)の取得のタイミングとを合致させ、フレーム画像の数を通常のCT撮影よりも少なくしたCT撮影を行ってもよい。そのようなCT撮影でX線被爆量を低減させることもできる。
なお、透視画像p#3は2方向に限らず、複数方向から投影した透視画像であれば、2方向以上であっても構わない。すなわち、透視画像は支持手段30を旋回して方向Aから撮影した透視画像と、方向Aとは異なる方向Bから撮影した透視画像が表示される。複数方向であれば、方向A、方向Bの2方向以上であってよい。
指定された関心領域rの歯列弓モデルdmに対する位置を特定するためには、歯列弓モデルdmの座標を、CT撮影を行う空間の座標の中に設定する必要がある。歯列弓モデルdmとしては、基本的にはまず関心領域を指定して既に得ている撮影データから指定した関心領域の正視X線CT画像を再構成する場合のCT撮影において述べた歯列弓モデルdmと同様なものを用いればよい。
これを図16のフロー図における各ステップと関連して説明すると、次の通りである。2方向の透視画像p#3の生成は、図16のフロー図におけるステップ2030に示している。そして、この2方向の透視画像p#3をスカウト画像として表示することはステップ2040に示している。なお、関心領域rの指定はステップ2050に示しており、局所CT撮影の実行はステップ2060に示している。
局所CT撮影実行のための被写体位置付けに、歯列弓の模式図を用いて位置付けする方法が考えられ、この位置付けにより関心領域rの指定をすることも可能である。図4に示す操作パネル74の表示手段88´に、図4(c)に示すように、歯列弓DAを模式図のイラストp#21で示した位置付け用のイラストp#2を表示する。このイラストp#21には、撮影対象領域を示す円のイラストp#22が重ねて表示されている。撮影対象領域のイラストp#22には、例えば矢印のような、正視方向vを示す方向表示v´を重ねて表示してもよい。
前述のXYテーブル62による支持手段30の移動調整、または前述のXYテーブル64による被写体保持手段40の移動調整により、被写体oの歯列弓DAに対する撮影対象領域の位置が相対的に調整でき、その移動調整の変位量に従って、歯列弓模式図のイラストp#21に対する撮影対象領域のイラストp#22の位置が移動するようになっている。
前述の入力手段74´の操作により、歯列弓模式図のイラストp#21に対する撮影対象領域のイラストp#22の位置を移動操作できるようにして、移動操作に連動して前述のXYテーブル62による支持手段30の移動調整、または前述のXYテーブル64による被写体保持手段40の移動調整ができるように構成してもよい。歯列弓模式図のイラストp#21は、歯列弓モデルdmに対応しているので、関心領域rとして撮影対象領域を指定すると、関心領域rの歯列弓モデルdmに対する位置関係が特定できる。
この構成により、関心領域rの局所CT撮影を行うべく被写体oを位置付けすることにより撮影対象領域を指定することで、正視方向vまたはスライス位置slを特定することができる。このように位置付けした後に局所CT撮影を行い、得られたCT画像データより関心領域rを正視した正視X線CT画像の表示が可能である。
これを図16のフロー図における各ステップと関連して説明すると、次の通りである。歯列弓模式図のイラストp#21、撮影対象領域のイラストp#22、入力手段74´は位置指定のツールであり、被写体oの位置付けはすなわち位置指定であり、この位置付けにより、関心領域rが被撮影領域(撮影対象領域)rrに含まれ、その後、局所CT撮影が行われるので、位置指定は関心領域rの指定でもあり、ステップ2050に相当する。なお、局所CT撮影の実行は、ステップ2060でなされる。この局所CT撮影は前述と同様である。
正視方向vを求める方法については、既に述べたとおり、基本的には歯列弓モデルdmを用いればよい。
X線画像生成ルーチンNo.1の処理の場合は、関心領域rの指定は、表示対象領域の指定の意味があったが、X線画像生成ルーチンNo.2の処理の場合は、関心領域rの指定は、撮影対象領域の指定の意味を持つ。その差はあるが、局所CT撮影の場合は結局撮影対象領域が表示対象領域になるのであり、局所CT撮影において撮影対象領域を指定することは、すなわち表示対象領域の指定である。歯列弓モデルdmに対して関心領域rの位置を特定するという構成は共通なので、正視方向vやスライス位置slの設定もX線画像生成ルーチンNo.1のCT撮影の場合と基本的に同じである。
それゆえ、正視方向vやスライス位置slの設定に、例えば図10で示した構成を用いることができる。
前述のように、関心領域rの指定があればX線撮影装置本体M1の機械的構成により、被写体位置付けが行われ、指定された関心領域rを撮影対象とした局所CT撮影が行われるのであるが、歯列弓モデルdmの座標情報、位置情報も、関心領域rの座標情報、位置情報も把握されるので、歯列弓モデルdmの座標、位置に対して関心領域rの座標、位置も特定できる。歯列弓モデルdmの座標、位置に対する関心領域rの座標、位置が特定されると、正視方向vやスライス位置slが設定できる。
前述のように、パノラマ画像p#1の代わりに、パノラマ画像p#1をイラスト化した、図示しないイラストを用いて関心領域rすなわち撮影対象領域を指定する構成の場合、イラストは、前述のように標準的な形状の歯列弓モデルdmを平面に引き伸ばしたものとして、イラストにおける特定の位置(座標)を指定することにより、対応する歯列弓モデルdmにおける特定の座標が指定されるように構成できる。
またスカウト画像が歯列弓DAの平面図を模した図4(c)に示すようなイラストp#2を用いて関心領域rすなわち撮影対象領域を指定する構成の場合、その形状は、歯列弓モデルdmの標準曲面を上方から見たときの形状と対応しており、イラストp#2で示される歯列弓DAのほぼ中央の、パノラマ断層に相当する部分に歯列弓モデルdmが重なるように設定されている。イラストp#2における特定の位置(座標)を指定することにより、対応する歯列弓モデルdmにおける特定の座標が指定されるように設定できる。
スカウト画像として、図13で説明したのと同様に、図13に示すのと同じ透視画像p#3を用いて関心領域rすなわち撮影対象領域を指定する構成の場合、2方向の透視画像p#3上で特定の位置(座標)を指定することにより、対応する歯列弓モデルdmにおける特定の座標が指定されるように設定できる。
局所CT撮影実行のための被写体位置付けに、図4(c)に示す位置付け用のイラストp#21に撮影対象領域を示す円のイラストp#22を重ねて表示して関心領域rすなわち撮影対象領域を指定する構成の場合、XYテーブル62による支持手段30の移動調整、または前述のXYテーブル64による被写体保持手段40の移動調整の調整量を検出できる検出手段を設け、被写体位置付けに従って撮影対象領域の位置(座標)が検出できるように構成できる。この構成において、被写体位置付けで特定の位置(座標)を指定することにより、対応する歯列弓モデルdmにおける特定の座標が指定されるように設定できる。
また、イラストp#2付きの操作パネルを用いてボタンbtの操作により関心領域rすなわち撮影対象領域を指定する構成の場合、ボタンbtの操作により特定の位置(座標)を指定することにより、対応する歯列弓モデルdmにおける特定の座標が指定されるように設定できる。
いずれの場合も、歯列弓モデルdmの座標情報、位置情報も、関心領域rの座標情報、位置情報も把握されるので、歯列弓モデルdmの座標、位置に対して関心領域rの座標、位置も特定できる。
歯列弓モデルdmには、例えば図10で示したような、一般的形状の歯列弓DAより予め準備した歯列弓モデルdmを用いることができ、この歯列弓モデルdmに対して関心領域rの座標、位置を特定して正視方向vやスライス位置slを決定することは歯列弓モデルdmと関心領域rの位置的関係を特定して正視方向vやスライス位置slを決定することであり、図16のフロー図におけるステップ2100に相当する。
歯列弓モデルdmの座標、位置に対する関心領域rの座標、位置が特定される、正視方向vやスライス位置slが設定できる点は、図10で述べたのと同じである。
例えば図10で示したような、正視方向vやスライス位置slの設定は、指定された関心領域rに対応した歯列弓正視情報から関心領域の正視方向vやスライス位置slの設定をすることであり、図16のフロー図におけるステップ2100に相当する。
正視方向vやスライス位置slが設定されると、被写体oに関する局所CT撮影によるCT撮影データを画像処理して関心領域rを正視した正視X線CT画像に再構成つまり生成することができる。この関心領域rを正視した正視X線CT画像を少なくとも含んだCT画像が前述の正視X線CT画像からなるX線画像であり、その生成は図16のフロー図におけるステップ2110に相当する。ステップ2110で、生成した正視X線CT画像からなるX線画像を表示してもよい。
CT撮影データを再構成してそのスライス位置slにおける、上下に展開する断層面画像を生成することは、画像処理により可能である。
関心領域rを正視方向vから正視した断層面画像を生成する場合、断層面の位置つまりスライス位置slをどの位置に設定するかについては任意であり、接線TGの位置にスライス位置slを設定してもよいが、関心領域rを正視するかぎり、別の位置に設定してもよい。
スカウト画像と、正視X線CT画像からなるX線画像とは、画像処理手段85により関連付けられる(ステップ2120)。関連付けられたスカウト画像と、正視X線CT画像からなるX線画像とを記憶手段82に記憶してもよい。以上、関連付けまでがX線画像生成ルーチンNo.2であり、X線画像表示ルーチンへと進む(ステップ2130)。
そのような基本手順によって表示される正視X線CT画像の例としては、図15(a)、(b)のX線画像と同じものが挙げられる。詳しくは前述したので説明は省略する。
CT画像を生成、表示するにあたって、予め任意の方向に並んだ複数のスライス画像を切り出して生成しておいて保存してカーソルの移動に従って保存したスライス画像の中から順次表示するようにしても、カーソルの移動に従って指定された箇所のスライス画像をその場で生成するようにしてもよいことはX線画像生成ルーチンNo.1の場合と同様である。
上述の図15(a)、(b)のX線CT断層面画像dp#11〜dp#13、dp#1やdp#2と同様に生成されるX線画像は正視X線CT画像からなるX線画像の例である。この正視X線CT画像からなるX線画像には上述のdp#12やdp#2のように関心領域rを正視したX線CT画像が少なくとも含まれる。ステップ2050で関心領域rの指定をしたことでステップ2110で関心領域rを正視方向vすなわち観察基準方向から正視したdp#12やdp#2のようなX線CT画像が生成される。
第1のX線画像を低解像度で、第2のX線画像を高解像度で生成する原理は、図11のフローのX線画像生成ルーチンNo.1の場合と同様である。
次に、X線画像の関連付けが済んだ後のX線画像を表示する基本手順を説明する。基本手順は図17のX線画像表示ルーチンに示される。
上述のX線画像生成ルーチンNo.1またはNo.2からこのX線画像表示ルーチンに手順が進む(ステップ3010)。
互いに関連付けをしたスカウト画像(第1のX線画像)と正視X線CT画像からなるX線画像(第2のX線画像)については、そのうち一方を先に呼び出して表示させるようにしてもよいが、双方を呼び出すようにしてもよい(ステップ3020で示す選択)。
スカウト画像と正視X線CT画像からなるX線画像の双方に呼出指令を出すと無論双方が同時に呼び出されるが、一方に呼出指令を出せば自動的に他方も同時に呼び出されるようにできる(ステップ3040)。
スカウト画像と正視X線CT画像からなるX線画像の一方に呼出指令を出して、まず呼出にかかる一方のみを呼び出すようにしてもよい(ステップ3030)。
スカウト画像をまず呼び出すようにしてもよく(ステップ3050)、正視X線CT画像からなるX線画像をまず呼び出すようにしてもよい(ステップ3060)。スカウト画像と正視X線CT画像からなるX線画像の双方が同時に呼び出されると、双方ともに表示される(ステップ3070)。
まずスカウト画像のみを呼び出すと、スカウト画像が表示される(ステップ3080)。表示されたスカウト画像に対し、関連付け画像の呼出指令を出すと、正視X線CT画像からなるX線画像が呼び出され(ステップ3100)、表示される(ステップ3120)。まず正視X線CT画像からなるX線画像のみを呼び出すと、正視X線CT画像からなるX線画像が表示される(ステップ3090)。表示された正視X線CT画像からなるX線画像に対し、関連付け画像の呼出指令を出すと、スカウト画像が呼び出され(ステップ3110)、表示される(ステップ3130)。
スカウト画像が表示されていて、スカウト画像と、関心領域rとは別の関心領域r2に対応する別の正視X線CT画像からなるX線画像とが関連付けられている場合、スカウト画像上で別の関心領域r2を指定することもできる。この場合、新たに指定した関心領域r2をX線撮影した別の正視X線CT画像からなるX線画像の呼び出しを行い(ステップ3150)、表示する(ステップ3160)ようにすることもできる。
スカウト画像と正視X線CT画像からなるX線画像の表示形態は様々に考えうる。図18にスカウト画像としてパノラマ画像を表示し、正視X線CT画像からなるX線画像を同じ画面に表示する例を示す。第2の画像を表示する際に、関心領域rの位置情報などの付帯情報が付加されて表示されるようにしてもよい。無論、スカウト画像たる第1のX線画像を前述の第1の再構成モードによって表示してよく、正視X線CT画像からなるX線画像たる第2のX線画像を前述の高解像度の第2の再構成モードで表示してよい。
前述の通り、画像は、X線画像表示装置M2さらに具体的にはX線画像表示装置の表示手段88の表示画面に表示される。画像の表示をX線撮影装置本体M1に設けた表示手段の表示画面に表示してもよい。
図18にては、互いに関連付けをしたパノラマ画像p#1とCT画像dp#11〜13、dp#1とが表示画面に表示され、パノラマ画像には水平カーソルhcと垂直カーソルvcとが重ねて表示され、関心領域rを示す四角形の枠が示されている。CT画像は互いに直交したZ断層面、Y断層面、X断層面のX線CT断層面画像dp#11〜dp#13、斜め方向から見た3次元CTボリューム画像dp#1として表示され、カーソルxc、yc、zcが表示されている。X線CT断層面画像dp#12は、正視X線CT画像で、関心領域r内の歯列弓DAの長手方向がYカーソルycに概ね沿うような角度で表示されている。矢符で示すように、斜め方向から見た3次元CTボリューム画像dp#1の代わりに、正視X線CT画像として生成した3次元CTボリューム画像dp#2を表示してもよい。
パノラマ画像とCT画像、つまり第1のX線画像と第2のX線画像とはほぼ同等の大きさで示されている。パノラマ画像とCT画像は双方を同時に呼び出して表示してもよいが、いずれか一方のみをまず表示して、表示された一方の画像に対して関連付け画像の呼出操作を行うと、この一方の画像と関連付けられた他方の画像を呼び出して表示するように設定できる。例えば、まずパノラマ画像を表示させ、パノラマ画像と関連付けされた関心領域rのCT画像を呼び出し、表示するように設定できる。さらに具体的には、例えば、マウス等の操作でポインタを図示の四角形の枠fr1に合わせ、クリックするとCT画像を呼び出して表示するように設定できる。ポインタを図12においてrp1で示したような水平カーソルhcと垂直カーソルvcの交点に合わせてクリックするようにしてもよい。
実施例1及び実施例2では、歯列弓を正視した関心領域のX線CT画像に関して説明していたが、本発明はこれに限られず、耳鼻科や顔面の整形外科などに広く応用可能である。本願の観察基準方向とは、関心領域の状況が最も把握できる切断面を観察基準面とし、その観察基準面に対してほぼ正面から見る方向を観察基準方向としている。具体的に、図10に示す歯列弓DAで説明すると、スライス位置slが観察基準面であり、このスライス位置slに対してほぼ正面から見る方向が正視方向vである。耳鼻科や顔面の整形外科などに広く応用可能である。
歯列弓に関して付言すると、従来のパノラマ撮影装置で設定していたパノラマ断層面を観察基準面として設定し、パノラマ断層面を視覚化したパノラマ画像を正面から見る方向、例えば平面化したパノラマ画像に対して直交する方向またはほぼ直交する方向を正視方向vとして設定してもよい。
本実施の形態で説明する観察基準方向から正視して得られる画像は、術者が歯列弓を通常観察する場合の画像(歯列弓を正視する画像)である。そのため、本実施の形態では、観察基準方向から正視して得られる画像がまず表示されるため、術者が病理的にどのような状況にあるか直ちに確認でき、直感的に理解し易くなる。