以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。本明細書において、XYZ直交座標系およびxyz直交座標系が用いられる。XYZ直交座標系およびxyz直交座標系については後述する。
また、本明細書において、「撮影領域」、「第1の領域」、「第2の領域」および「第3の領域」との用語は、支柱4等の固定部分上に定義される絶対座標系としてのXYZ直交座標系に基づく領域である。一方、「第1の部分」、「第2の部分」および「第3の部分」との用語は、被写体Aの頭部B内における部分である。たとえば、同じ被写体AがX線撮影装置1を用いて複数回のX線撮影を受けた場合に、現在の撮影対象領域である「第3の領域」に対応する「第3の部分」は、頭部B内において、過去の撮影時の「第1の部分」と等しいか又は略等しい部分であるが、頭部Bの向き又は姿勢が変わっていれば、「第3の部分」を撮影した領域である「第3の領域」と、「第1の部分」を撮影した領域である「第1の領域」とは、絶対座標系としてのXYZ直交座標系において異なる。「第nの領域」(nは自然数である)の位置は、X線発生器とX線検出器からなる撮像系を支える、固定の支持要素(本実施形態では支柱4等からなる固定の支持要素)が存在する空間中の領域の1つの位置(具体的には空間座標の座標系中の領域の位置)を意味する。同様に、「第mの部分」(mは自然数である)の位置は、被写体の体中または体上における部分領域の1つの位置を意味する。
図1~図3を参照して、本実施形態のX線撮影装置1について説明する。図1および図2に示されるように、X線撮影装置1は、被写体Aの頭部BをX線撮影するための装置である。X線撮影装置1は、たとえば、患者である被写体Aの歯科診断または歯科治療に用いられる。X線撮影装置1は、たとえば患者に対してインプラント治療を行おうとする際に用いられ、被写体Aの頭部B内の対象領域R(図3参照)をCT撮影する。
X線撮影装置1は、たとえば防X線室内に設置されてX線撮影を行うX線撮影装置本体2と、X線撮影装置本体2から出力されるX線検出信号に基づいて画像認識処理等を含む所定の情報処理を行う情報処理装置70(図7参照)とを備える。X線撮影装置本体2は、CT撮影等を行うための第1撮影部10と、セファロ(Cephalometric)撮影等を行うための第2撮影部100と、これらの第1撮影部10および第2撮影部100におけるX線撮影を制御する制御装置50(図6参照)と、術者等がX線撮影装置本体2を操作するための操作パネル90とを備える。
操作パネル90は、図1に示されるようにX線撮影装置本体2に組み込まれてもよいが、X線撮影装置本体2とは別に設けられてもよい。操作パネル90は、X線撮影装置本体2から離れた場所に設置されてもよい。X線撮影装置1は、X線撮影装置本体2にX線撮影の実行を命令するためのX線照射操作部92を備える。X線照射操作部92は、X線撮影装置本体2にX線照射を実行させるためのエミッションスイッチ93を備える。エミッションスイッチ93は、1つ又は複数のボタンを有する。エミッションスイッチ93は、ボタンを押すとX線照射を許可し、ボタンを離すとX線照射を中止させるデッドマンスイッチ等からなる。X線照射操作部92は、例えば、防X線室外の壁面等に設けられる。情報処理装置70は、例えばX線撮影装置本体2と接続されるコンピュータ又はワークステーションなどで構成される。X線撮影装置本体2が、X線撮影装置本体2の一部分として、情報処理装置70を装備していてもよい。
本実施形態では、X線撮影装置本体2におけるX線撮影が行われ、X線撮影によって得られたX線検出信号が、情報処理装置70によって画像処理され、X線画像(後述するスカウト画像)が得られる。情報処理装置70は、このX線画像に基づいて、CT撮影の位置決めを行う。この位置決めとは、CT撮影の対象領域(すなわちFOV;Field of View)の中心位置を決定することを意味する。情報処理装置70は、X線撮影装置本体2の制御装置50に対してCT撮影の中心位置を示す情報を出力し、制御装置50が、この情報に基づいて第1撮影部10を制御し、被写体Aの頭部B内の所定の対象領域におけるCT撮影が実行される。
X線撮影装置本体2は、床上に固定(設置)されるベース3と、ベース3上に固定されて鉛直方向に延びる支柱4と、支柱4の一方の側から水平に延びるように支柱4に取り付けられた第1撮影部10と、支柱4の他方の側から水平に延びるように支柱4に取り付けられた第2撮影部100とを備える。被写体Aは、たとえばCT撮影等のX線撮影を受ける場合には、第1撮影部10の中央空間Sに頭部Bを位置させるように立つ。被写体Aは、たとえばセファロ撮影等のX線撮影を受ける場合には、第2撮影部100の中央空間Saに頭部Bを位置させるように立つ。なお、被写体Aの姿勢は、起立状態に限られず、着座状態であってもよい。
第1撮影部10のX線発生部20およびX線検出部30を支持する上フレーム11と、第2撮影部100のX線検出部101を支持する上フレーム104とは、いずれも水平に延びると共に、支柱4の中心線を含む仮想の鉛直面に対して同じ側に突出するように折れ曲がっている。これにより、第1撮影部10と第2撮影部100との間に支柱4が位置せず、(後述する旋回駆動部19により回転させられた)X線発生部20とX線検出部101とが、これらの間に障害物を存在させずに対面できるようになっている。
図1~図3を参照して、第1撮影部10の構成について説明する。第1撮影部10は、支柱4から水平に延びるように支柱4に取り付けられた上フレーム11と、上フレーム11に対して鉛直に延びる中心軸線Lの周りに回転(旋回)可能に取り付けられた旋回アーム12とを備える。上フレーム11および旋回アーム12は、後述する上フレーム昇降駆動部13により、上下方向(Z軸方向)に沿って移動可能である。水平に延びる旋回アーム12の両端に、X線発生部20およびX線検出部30が配置されている。旋回アーム12は、回転軸12dを介して上フレーム11に取り付けられた水平アーム12aと、水平アーム12aの第1端に連結されて水平アーム12aから垂下する第1筐体12bと、水平アーム12aの第2端に連結されて水平アーム12aから垂下する第2筐体12cとを有する。これらの水平アーム12a、第1筐体12bおよび第2筐体12cは、一体に成形されている。旋回アーム12は、全体として、下方に向けて開放されたU字状(又はC字状)をなしている。第1筐体12bおよび第2筐体12cの間に、被写体Aの頭部Bが位置づけられる中央空間Sが形成されている。
図3に示されるように、第1撮影部10は、支柱4に対して上フレーム11および旋回アーム12を上下方向(鉛直方向)に移動させる上フレーム昇降駆動部13を備える。支柱4は、上下方向に延びる一対の平行なレール6を有する。上フレーム11は、支柱4のレール6上に取り付けられたベース部11a(上フレームベース部)と、ベース部11aから水平に延び、上記の旋回アーム12が取り付けられたアーム部11b(上フレームアーム部)とを有する。ベース部11aは、複数のローラ13dを介して支柱4のレール6に嵌まり込むと共に、レール6上を移動可能である。上フレーム昇降駆動部13は、支柱4の下端部に固定されたモータ13aと、上下方向に配置されてモータ13aによって回転させられるボールねじ13bと、ベース部11aの下端部に固定されボールねじ13bが螺合するナット13cとを含む。上フレーム昇降駆動部13は、制御装置50の駆動制御部57によって制御されて、上フレーム11および旋回アーム12を上下方向に移動させる(昇降させる)。
第1撮影部10は、被写体Aの頭部Bが中央空間Sに位置するように被写体Aを保持する被写体ホルダ40を備える。第1撮影部10では被写体Aの頭部BがX線の照射対象となる。被写体ホルダ40は、被写体Aの頭部Bをなるべく動かすことなく保持できるように頭部支持部40Hを備える。頭部支持部40Hは、チンレスト43およびヘッドホルダ44等を有する。中央空間Sにおける被写体Aの頭部Bは、頭部Bの前面(顔)が第2撮影部100(図1および図2に示される第2筐体12c)に対面するように、位置づけられる。
ここで、XYZ直交座標系について説明する。XYZ直交座標系は、X線撮影装置本体2が設置される3次元空間において定義される直交座標系である。Z軸方向は、回転軸12dの軸方向に平行である。本実施形態では、回転軸12dの軸方向と旋回アーム12の昇降方向とが一致しており、Z軸方向に平行である。Y軸方向は、Z軸方向に直交する。X軸方向は、Z軸方向にもY軸方向にも直交する。本明細書において、Y軸方向は、頭部支持部40Hにセットされた頭部Bの前後の方向である。X軸方向は、頭部支持部40Hにセットされた頭部Bの左右の方向である。本明細書において、Z軸方向をZ方向、Y軸方向をY方向、X軸方向をX方向と呼ぶこともある。
本明細書において、頭部Bからベース3に向かう向きすなわち下側が-Z側であり、頭部Bからベース3より遠ざかる向きすなわち上側が+Z側である。頭部Bの前の方は+Y側であり、頭部Bの後の方は-Y側である。頭部Bの右の方は+X側であり、左の方は-X側である。
xyz直交座標系は、X線発生およびX線検出を行う撮像系を構成する旋回アーム12において定義される直交座標系である。xyz直交座標系は、回転軸12dの周りに回転する。z軸方向は、回転軸12dの軸方向であり、XYZ直交座標系におけるZ軸方向に一致する。y軸方向は、z軸方向に直交する。x軸方向は、z軸方向にもy軸方向にも直交する。本明細書において、y軸方向は、X線検出部30とX線発生部20とが対向する方向である。x軸方向は、y軸方向およびz軸方向に直交する方向である。旋回アーム12が回転軸12dの周りに回転することによって、xyz直交座標系がXYZ直交座標系に対してZ軸周りに回転する。本明細書では、z軸方向をz方向、y軸方向をy方向、x軸方向をx方向と呼ぶこともある。
本明細書において、X線検出部30側が+y側であり、X線発生部20側が-yである。-y側から+y側に向かって右側が+x側であり、-y側から+y側に向かって左側が-x側である。鉛直方向上側が+z側であり、下側が-zである。
xyz直交座標系中の座標がXYZ直交座標系中のいずれの座標であるかは演算で特定できる。演算には、三角関数または2次元座標演算が用いられてよい。例えば、旋回アーム12が基準位置にある場合に、xyz直交座標系のゼロ地点の位置(x0、y0、z0)はXYZ直交座標系のゼロ地点の位置(X0、Y0、Z0)に一致すると仮定される。xyz直交座標系中の基準点(x1、y1、z1)が、XYZ直交座標系中の座標(X1、Y1、Z1)と同じ位置に位置すると仮定される。この仮定のもと、旋回アーム12が角度αだけ旋回すると想定される。旋回後の基準点(x1、y1、z1)が、XYZ直交座標系中の座標(X2、Y2、Z2)に位置すると仮定される。座標(X2、Y2、Z2)は、それぞれ次の式で表される。
X2=x1cosα+y1sinα
Y2=-x1sinα+y1cosα
Z2=z1
なお、後述の水平移動駆動部18による回転軸12dのX軸方向の移動または回転軸12dのY軸方向の移動が生じた場合は、その移動成分を加えた演算が行われる。上フレーム昇降駆動部13による旋回アーム12のZ軸方向の移動が生じた場合についても、その移動成分を加えた演算が行われる。
旋回アーム12の各種移動量は、適宜検出できる。例えば、駆動機構7の駆動用モータ類として、ステッピングモータが使用され得る。その駆動量の検出により、旋回、水平移動、または垂直移動の量を検出できる。他の位置検出装置が用いられてもよい。
以上の構成を利用して、過去のX線撮影(第1撮影X線画像データ)、スカウト画像撮影(第2撮影X線画像データ)、今回のX線撮影すなわち本撮影の間で、XYZ直交座標系での位置演算ができる。旋回アーム12が移動して各種X線撮影を行う場合も、X線画像に写り込む像中の各地点の位置情報をXYZ直交座標系での演算に用いることができる。
図1および図3を参照して、第1撮影部10のX線照射およびX線検出に係る構成について説明する。第1撮影部10は、各種の撮影モードでX線撮影を行うことができるように構成されている。これにより、第1撮影部10は、頭部Bの全部または一部をCT撮影することにより、CT画像(断層画像)のためのX線検出信号を出力する。第1撮影部10は、頭部Bの全部または一部をX線撮影することにより、投影画像のためのX線検出信号を出力する。本実施形態では、投影画像は、たとえばスカウト画像である。投影画像は、異なる2つの方向からX線撮影して得られた投影画像である2方向スカウト画像であってもよく、X線形状調整部22でX線を縦長の細隙X線ビームに規制してX線発生部20およびX線検出部30を旋回させて得られた断層画像であるパノラマ画像であってもよい。
第1撮影部10は、被写体Aの頭部BにX線を照射するためのX線発生部20と、頭部Bを透過したX線を検出するためのX線検出部30とを備える。X線発生部20は、旋回アーム12の第1端に設けられている。X線検出部30は、旋回アーム12の第2端に設けられている。X線発生部20およびX線検出部30の間に中央空間Sが位置するように、X線発生部20およびX線検出部30が略水平に対面している。
X線発生部20は、上記した第1筐体12bと、第1筐体12b内に収容されたX線発生器21と、X線発生器21に隣接する位置に配置されたX線形状調整部22とを有する。X線発生器21は、X線管21aを有しており、中央空間Sに向けて(すなわち頭部Bに)焦点21bからX線を照射する。X線形状調整部22は、X線管21aに対面するように鉛直に設置された複数の遮蔽部材と、これらの遮蔽部材を移動させる移動機構とを含む。複数の遮蔽部材は、互いに部分的に重複するように設置されており、遮蔽部材の間に、ある大きさを有する開口が形成される。移動機構によって遮蔽部材が移動させられることで、開口の大きさが自在に変更(調整)され得る。
ここで、スカウト撮影は、他の撮影たとえばCT撮影を行うために、位置付け用の画像を撮影する予備的なX線撮影である。位置付け用の画像は、スカウト画像と呼ばれる。予備的なスカウト撮影に対し、CT撮影などのX線撮影を本撮影と呼ぶ。本撮影を行うことを目的として、スカウト撮影が行われる。
スカウト撮影の例として、2方向スカウト撮影またはパノラマスカウト撮影がある。2方向スカウト撮影では、第1の方向から第1のスカウト撮影が行われ、第2の方向から第2のスカウト撮影が行われる。パノラマスカウト撮影では、パノラマ撮影が行われる。X線撮影装置本体2で本撮影として行われたパノラマ撮影によって得られたパノラマ画像がもともと記憶されていた場合に、そのパノラマ画像をパノラマスカウト画像として流用してもよい。本撮影であるCT撮影に対し、この場合のパノラマ撮影は、相対的に予備的な撮影になっている。
たとえば、CT画像を取得する際(すなわちCT撮影時)には、X線形状調整部22によって、四角錐台状(たとえば正四角錐台状)に広がるコーンビーム(CB)が形成される。コーンビームを構成するX線の形状は、あらゆる種類の錐台状であってよい。コーンビームの形状は、X線の照射方向に直交する断面が円である円錐台状であってもよく、断面が他の形である他の錐台状であってもよい。コーンビームの大きさも、照射野の大きさに応じて適宜に変更(調整)される。また、2方向スカウト撮影のような投影画像すなわちスカウト画像を取得する際には、X線形状調整部22によって、CT撮影時と同様の錐台状のコーンビームが形成される。
2方向スカウト撮影は、コーンビームを用いた単純投影のワンショット撮影によって行われる。2方向スカウト撮影では、ある方向からワンショット撮影を行い、他の方向からワンショットの撮影を行う。コーンビームの広がりは、CT撮影時より広くてもよい。X線の照射範囲に関しては、X線検出器31の検出面の広さに基づく制約や、撮影目的に応じて被写体Aに余計なX線照射をしないようにする必要があることに基づく制約がある。これらの制約を考慮して、コーンビームの広がりが適宜に調整されてよい。2方向スカウト画像の撮影を行う際、CT撮影時よりも、X線検出器31が頭部Bにより接近するように旋回アーム12を移動制御してもよい。すなわち、X線検出器31が、CT撮影時よりも-y側に移動してもよい。この制御により、頭部画像の拡大率が下がり、より広い範囲が画像に写り込む。この制御は、後述の水平移動駆動部18による旋回アームの水平移動制御によって可能である。ワンショット撮影に代えて、z方向に伸長して縦長の四角錐台状に広がる細隙ビームを形成し、スカウト画像の取得に必要な範囲を一方から他方にスキャンしてもよい。
パノラマ撮影時には、X線形状調整部22によって、z方向に伸長して縦長の四角錐台状に広がる細隙ビームが形成される。y方向への照射については、歯弓列の照射対象箇所に細隙ビームがなるべく直交入射するように、駆動機構7による旋回アーム12の旋回移動が行われる。歯列弓が、左右の一方から他方にスキャンされる。
X線形状調整部22の具体的構成は、上述したような複数の遮蔽部材を備える構成(たとえば特開2019-37393号公報参照)であってもよいが、その他の公知の絞り機構(コリメータ等)であってもよい。X線発生部20において発生させられるX線は、X線形状調整部22でX線ビームに形成される。このX線ビームに、上記のコーンビームおよび細隙ビームが含まれる。
X線検出部30は、上記した第2筐体12cと、第2筐体12cに下方から嵌め込まれた外筐体16と、第2筐体12cおよび外筐体16の内部に収容されたX線検出器31とを有する。X線検出器31は、X線発生部20から出射されて頭部Bに照射され、頭部Bを透過したX線を検出する。X線検出器31は、たとえば平面状に広がる検出面を有するフラットパネルディテクタ(FPD)又はX線蛍光増倍管等により構成される。X線検出器31の検出面に配された複数の検出素子は、入射したX線の強度を電気信号に変換する。その電気信号が、出力信号として制御装置50(または情報処理装置70)に入力され、その信号に基づいてX線画像が生成される。
X線撮影装置本体2の第1撮影部10において、上フレーム11および旋回アーム12は、頭部Bが置かれた中央空間SがX線発生器21とX線検出器31との間に位置するように、X線発生器21およびX線検出器31を支持する支持部である。
X線検出部30は、第2筐体12c(上フレーム11および旋回アーム12)に対してX線検出器31の高さ(Z軸方向の位置)を移動させるように構成された検出器昇降駆動部33を備える。筒状の第2筐体12cは下方に向けて開放されており、一方の筒状の外筐体16は上方に向けて開放されている。外筐体16は、第2筐体12cに対して上下方向(Z軸方向)にスライド可能である。検出器昇降駆動部33は、第2筐体12cの下端部に固定されたモータ33aと、上下方向(Z軸方向)に配置されてモータ33aによって回転させられるボールねじ33bと、X線検出器31の裏面側(検出面とは反対側)に固定されボールねじ33bが螺合するナット33cとを含む。ボールねじ33bは、ナット33cの可動範囲を避けた箇所に取り付けられた何らかの支持部材によって、第2筐体12cに回動可能に支持されてよい。ナット33cおよびX線検出器31には、Z軸周りの回転を防止するための機構(回り止め)が設けられている。上下方向に延びる回転軸線周りにボールねじ33bが回転すると、ナット33cがX線検出器31と一緒に昇降する。
2組のモータ33a及びボールねじ33bが第2筐体12cに取り付けられ、2組のナット33cがX線検出器31の裏面側に取り付けられてもよい。各要素は、同じ高さに配置される。複数のボールねじ33bが平行に設置されて同期回転してもよい。これにより、複数のナット33cが同期昇降する。モータ33a、ボールねじ33b、及びナット33cに関しては、昇降する部分の回り止めが実現されていれば、詳細な構造は特に限定されない。一方のモータ33aを省略し、一方のボールねじ33b及びナット33cの代わりに、案内部材および被案内部材を用いてもよい。例えば、ボールねじ33bの代わりにロッド状の案内部材を第2筐体12cに固定し、ナット33cの代わりにボア等の被案内部を有する被案内部材をX線検出器31に固定してもよい。被案内部材の被案内部が、案内部材に嵌合する。案内部材および被案内部材は、案内部材に対して被案内部材が低抵抗で昇降移動する、駆動機能の無い昇降案内機構を構成する。この場合の昇降駆動は、一方のモータ33a、ボールねじ33b、及びナット33cのみで行われてもよい。検出器昇降駆動部33は、制御装置50の駆動制御部57によって制御されて、上フレーム11および旋回アーム12に対してX線検出器31を上下方向に相対移動させる(昇降させる)。
検出器昇降駆動部33は、さらに、第2筐体12cと外筐体16とに係合するスプリング17を含む。スプリング17は、たとえば引張りコイルばねである。スプリング17の第1端が第2筐体12cの上端部に連結され、スプリング17の第2端が外筐体16の上端部に連結されている。これにより、スプリング17は、外筐体16に対し、外筐体16を上方に引っ張り上げるような付勢力を付与する。X線検出器31の下端は、外筐体16の底面に当接している。検出器昇降駆動部33によってX線検出器31が下方へ移動させられると、外筐体16が、X線検出器31の下端に押され、スプリング17に引かれる力に抗して下降する。検出器昇降駆動部33によってX線検出器31が上方へ移動させられると、スプリング17の復元力によって、外筐体16が上方へ引っ張られる。これにより、X線検出器31の下端に当接する外筐体16が、上昇するX線検出器31に追従するように上昇する。
続いて、図3、図4および図5を参照して、X線発生部20およびX線検出部30を水平移動および旋回させるための駆動機構について説明する。図3、図4および図5に示されるように、第1撮影部10は、上フレーム11のアーム部11b内に搭載されて、回転軸12dをX軸方向及びY軸方向に移動させる水平移動駆動部(2次元移動駆動部)18を備える。水平移動駆動部18は、回転軸12dをX軸方向及びY軸方向に移動させることにより、旋回アーム12をX軸方向及びY軸方向に移動させる。水平移動駆動部18は、テーブル18aと、テーブル18aを水平方向に移動させるための水平移動用モータ18bとを備えている。テーブル18aは、回転軸12dの上端部が固定されたXテーブル18xと、Xテーブル18xの上方に配置されたYテーブル18yとを含む。水平移動用モータ18bは、Xテーブル18xを移動させるX軸移動用モータ18cと、アーム部11b内に固定されてYテーブル18yを移動させるY軸移動用モータ18dとを有する。Xテーブル18xは、案内部材を介してYテーブル18yに取り付けられており、Yテーブル18yに対してX軸方向に一定範囲でスライド可能である。X軸移動用モータ18cは、Yテーブル18yに固定されてXテーブル18xをX軸方向に変位駆動する。Yテーブル18yは、案内部材を介してアーム部11bに取り付けられており、アーム部11bに対してY軸方向に一定範囲でスライド可能である。Y軸移動用モータ18dは、アーム部11bに固定されてYテーブル18yをY軸方向に変位駆動する。
X軸移動用モータ18cおよびY軸移動用モータ18dは、制御装置50の駆動制御部57によって制御されて、Xテーブル18xおよびYテーブル18yをそれぞれ移動させる。Xテーブル18xは、X軸移動用モータ18cによって回転軸12d(旋回アーム12)を横方向(X軸方向)に移動させる。Yテーブル18yは、Y軸移動用モータ18dによってXテーブル18xをY軸方向に移動させることで、回転軸12d(旋回アーム12)を前後方向(Y軸方向)に移動させる。Xテーブル18xは、Yテーブル18yの移動に伴って、Y軸方向に移動する。
第1撮影部10は、旋回アーム12の水平アーム12a内に搭載されて、回転軸12dの中心軸線L周りに旋回アーム12を旋回させる旋回駆動部19を備える。旋回駆動部19は、水平アーム12a内に固定された旋回用モータ19bと、旋回用モータ19bの出力軸および回転軸12dの下端部とに架け渡されたベルト19cとを有する。回転軸12dと水平アーム12aとの間にはベアリング19dが介在している。ベアリング19dは、内輪と外輪とを含む。ベアリング19dは、内輪で回転軸12dを支持し、外輪で水平アーム12aを支持している。回転軸12dに対して、水平アーム12a(旋回アーム12)がスムーズに回転する。旋回用モータ19bは、制御装置50の駆動制御部57によって制御されて、中心軸線Lの周りで水平アーム12a(旋回アーム12)を回転させる。
X線発生器21とX線検出器31とがその軸線周りに旋回する旋回軸線RCTの設定は、以下の手順(i)~(iv)によって行うことができる。この設定の例はZ方向から旋回アーム12を平面視した図18~図20で示す。なお、図18~図20では、X線発生器21やX線検出器31などの内部構造が示されているが、図を見やすくするために実線で表示された部分がある。
(i)回転軸12dの軸線を軸線12dcとする(この軸線12dcの位置は上述の中心軸線Lに一致する)。
(ii)旋回駆動部19によって旋回アーム12が軸線12dc周りの旋回移動を行う。この旋回を第1の旋回とする。
(iii)水平移動駆動部18によって回転軸12dが軸線AX周りの旋回移動を行う。この旋回を第2の旋回とする。
(iii-a)X線発生器21とX線検出器31の間に、Z軸方向に伸びる演算上の軸線AXを仮に設定する。
(iii-b)軸線AXは、図18に例示するように、軸線12dcと同じ箇所にあってもよいし、図19または図20に例示するように、軸線12dcから外れた箇所にあってもよい。
(iii-c)軸線AXは、Z軸方向から見て、X線発生器21の焦点21bとX線検出器31の検出面の中央を結ぶ直線を仮に線GDとして、図18または図19に例示するように、線GD上にあってもよいし、図20に例示するように、線GDから+x軸方向または-x軸方向に外れてもよい。図18~図20に示す例では、X線コーンビームCBのようなX線ビームXBのx方向の広がりについてのセンタービームと線GDが位置的に一致するようにX線形状調整部22で形成されるX線が通過する開口の開度を設定している。
(iii-d)軸線AXが軸線12dcと同じ箇所にある場合、第2の旋回は行われず、第1の旋回のみが実行される。X線発生器21とX線検出器31とが、軸線12dcを旋回中心として旋回する。すなわち、X線発生器21とX線検出器31とが、軸線12dcに旋回軸線RCTをおいて、旋回軸線RCT周りに旋回する。
(iii-e)軸線AXが軸線12dcから外れた箇所にある場合、第1の旋回と第2の旋回とが実行される。第1の旋回と第2の旋回は、同じ角度の同期旋回移動として実行される。X線発生器21とX線検出器31とは、軸線AXを旋回中心として、すなわち軸線AXに旋回軸線RCTをおいて、旋回軸線RCT周りに旋回する。
(iv)以上の手順を経て、旋回駆動部19と水平移動駆動部18の制御によって、XYZ直交座標系中の機械的制約内・幾何学的制約内における任意の位置に、旋回軸線RCTが設定される。
なお、軸線AXが軸線12dcと同じ箇所にある場合の制御については、第1の旋回を実行すればよいので、軸線AXを設定する演算は必ずしも行われなくてよい。軸線AXを設定する演算は、省略されてよい。また、軸線AXが軸線12dcと同じ箇所にある場合に、第2の旋回が行われると考えることもできる。つまり、第2の旋回が行われるが、その旋回量(運動量)がゼロであると考えることもできる。X線発生器21とX線検出器31を旋回させて行われるX線撮影は、多くの場合、上述したようなX線発生器21とX線検出器31の旋回軸線RCT周りの旋回によって行われる。CT撮影も、このような旋回によって精度よく行うことができる。図18または図19に例示するように、軸線AXが線GD上にある場合は、X線ビームが撮影領域に対してオフセットしないノーマルCTスキャンに適応可能である。図20に例示するように、軸線AXが線GDから+x軸方向または-x軸方向に外れる場合は、X線ビームが撮影領域に対してオフセットするオフセットCTスキャンに適応可能である。
因みに、図18では、対象領域FOV1をCT撮影する途中に、旋回アーム12がFOV1の中心に置いた軸線AX(軸線12dc)周りにおいて角度θ1(平面視右回り90°)の旋回運動を行う様子が示されている。図19では、対象領域FOV2をCT撮影する途中に、旋回アーム12が軸線12dc周りにおいて角度θ2(平面視右回り90°)の旋回運動を行うのと同じ旋回角度で(同期して)、回転軸12dがFOV2の中心に置いた軸線AX周りにおいて角度θ3(平面視右回り90°)の旋回運動を行う様子が示されている。図19では、対象領域FOV3をCT撮影する途中に、旋回アーム12が軸線12dc周りにおいてθ4(平面視右回り90°)の旋回運動を行うのと同じ旋回角度で(同期して)、回転軸12dがFOV3の中心に置いた軸線AX周りにおいて角度θ5(平面視右回り90°)の旋回運動を行う様子が示されている。
図6に示されるように、第1撮影部10は、X線発生器21およびX線検出器31が中央空間Sの周りを旋回して中央空間S内の所定の領域(言い換えれば任意の領域)をX線撮影するように、支持部である上フレーム11および旋回アーム12を駆動することでX線発生器21およびX線検出器31を移動させるように構成された駆動機構7を備える。この駆動機構7は、上記の上フレーム昇降駆動部13、水平移動駆動部18および旋回駆動部19を有する。
図1に示されるように、第1撮影部10は、さらに、下フレーム41と、被写体Aの頭部Bが中央空間Sに位置するように被写体Aを保持する上記の被写体ホルダ40と、上記した上フレーム11に対して被写体ホルダ40を上下方向(鉛直方向)に移動させる被写体ホルダ昇降駆動部46とを備える。下フレーム41は、支柱4のレール6上に取り付けられたベース部41a(下フレームベース部)と、ベース部41aから水平に延びるアーム部42(下フレームアーム部)とを有する。アーム部42には被写体ホルダ40が設けられる。本実施形態では、被写体ホルダ40は頭部支持部40Hを備える。頭部支持部40Hは、被写体Aの顎が載置されるチンレスト43と、被写体Aの頭部Bを側方から保持するヘッドホルダ44とを含む。チンレスト43は、アーム部42の先端から中央空間Sに向けて立ち上がる。ヘッドホルダ44は、一対のロッド部44aと、頭部Bに当接する当接部材44bとからなる。ロッド部44aは、アーム部42から中央空間Sに向けて立ち上がる。ロッド部44aの第1端がアーム部42に接続され、ロッド部44aの第2端に当接部材44bが設けられる。ベース部41aは、複数のローラ46dを介して支柱4のレール6に嵌まり込むと共に、レール6上を移動可能である。
被写体ホルダ昇降駆動部46は、ベース部41aに固定されたモータ46aと、上下方向に配置されてモータ46aによって回転させられるボールねじ46bと、上フレーム11のベース部11a内に固定されボールねじ46bが螺合するナット46cとを含む。被写体ホルダ昇降駆動部46は、制御装置50の駆動制御部57によって制御されて、上フレーム11に対して被写体ホルダ40を上下方向に移動させる(昇降させる)。なお、図1に示されるように、被写体ホルダ40が、被写体Aの手によって握られるグリップ47を有してもよい。X線撮影装置本体2を被写体Aが着座する着座型に構成した場合は、被写体ホルダ40がさらに椅子を備えていてよい。
被写体ホルダ40のチンレスト43の高さが、たとえば自然に立つ被写体Aの顎の高さに略一致するように、上フレーム昇降駆動部13によって、上フレーム11および旋回アーム12が昇降させられる。この際に、被写体ホルダ昇降駆動部46によって被写体ホルダ40を移動させ、チンレスト43の高さを微調整してもよい。その後、被写体Aの頭部Bが頭部支持部40Hに固定された状態で、上フレーム昇降駆動部13によって上フレーム11および旋回アーム12を上昇または下降させ、同時に、被写体ホルダ昇降駆動部46によって被写体ホルダ40を下降または上昇させる。上フレーム11と旋回アーム12の上昇・下降と被写体ホルダ40の下降・上昇の速度、移動量は同期するよう制御がなされる。旋回アーム12が上昇または下降する距離と、被写体ホルダ40が下降または上昇する距離とが等しくなるように、駆動制御部57による制御が行われる。この制御により、チンレスト43の高さ、ヘッドホルダ44の高さ、被写体ホルダ40の高さ、および頭部Bの高さを一定に維持しつつ、頭部Bに対して旋回アーム12を相対的に昇降させる。その結果、頭部Bに対するX線の照射箇所を上下方向(Z軸方向)に変更することができる。このように、旋回アーム12および被写体ホルダ40は、それぞれ独立して、上下方向にスライド可能になっている。
これらの上フレーム昇降駆動部13、水平移動駆動部18、旋回駆動部19、検出器昇降駆動部33および被写体ホルダ昇降駆動部46の具体的構成は、上記に限られない。ボールねじおよびナットを用いる構成に限られず、たとえば回転ローラおよびベルト等を備えた駆動機構であってもよい。水平移動駆動部18および旋回駆動部19の両方が、上フレーム11のアーム部11b内に搭載されてもよい。水平移動駆動部18および旋回駆動部19の両方が、旋回アーム12の水平アーム12a内に搭載されてもよい。水平移動駆動部18および旋回駆動部19のいずれか一方が、上フレーム11のアーム部11b内に搭載され、いずれか他方が旋回アーム12の水平アーム12a内に搭載されてもよい。
図1および図2を参照してセファロ撮影に係る構成について説明する。図1および図2に示されるように、第2撮影部100は、X線検出部101、スリット機構102、および頭部固定具103を備えている。セファロ撮影が行われる際には、X線発生部20とX線検出部101との間にX線検出部30が位置しないように、言い換えれば、X線発生部20とX線検出部30を結ぶ線上にX線検出部101が位置しないように、旋回アーム12が回転させられる。
図1および図2に示される状態では、X線検出部101はX線撮影装置本体2の+Y方向の端に位置する。よって、X線発生部20が-Y方向のできるだけ端にくるよう、かつ、X線発生部20とX線検出部101との間のX線の照射経路からX線検出部30および支柱4の両方が退避した位置にくるよう、旋回アーム12が回動して所望の位置で停止する。仮に、旋回アーム12を平面視し、かつ、12方位を時計の時刻に見立て、+Y方向が12時であり、-Y方向が6時であり、+X方向が3時であり、-X方向が9時であると仮定する。回転軸12dを中心として、X線発生部20が概ね6時の方位に位置し、X線検出部30が概ね12時の方位に位置すると仮定する。X線検出部101が、概ね12時の方位に位置するので、このままではX線発生部20とX線検出部101との間のX線の照射経路をX線検出部30が遮る。そこで、回転軸12dを中心として、X線発生部20が概ね7時または8時の方位に、X線検出部30が概ね1時または2時の方位にくるように位置調整をすると、X線発生部20とX線検出部101との間のX線の照射経路を遮る要素を排除できる。また、このように構成することで、セファロ撮影すなわち頭部X線規格撮影に必要とされる、焦点21bとX線検出部101中のX線検出器101Dの検出面との間の距離(具体例としては165センチメートル)を確保しつつ、アーム部11bの長さを短くすることができる。その結果、X線撮影装置本体2のサイズをコンパクトにすることができる。
第1筐体12bは、Z軸方向に平行な回動軸の周りで、水平アーム12aに対して回動可能に構成されている。セファロ撮影時、第2撮影部100のX線検出部101がスリット機構102を介してX線発生部20のX線発生器21に対面するよう、水平アーム12aに対して第1筐体12bが回転させられる。頭部固定具103に固定された被写体Aの頭部Bに対して、セファロ撮影が実行される。
頭部固定具103は、頭部Bを位置付けする装置であり、たとえば、一対の棒状部材を含む。頭部固定具103は、これらの棒状部材の先端部が頭部Bの両側の耳内に挿入されることにより、両耳部を位置付けするイヤロッドと、頭部Bの額等に当接して頭部を位置付けする額ロッドとを含む。
スリット機構102は、上下方向(鉛直方向)に延びるスリットが形成されたスリット部材と、そのスリット部材を水平方向に移動させる移動機構とを備えている。X線は、X線形状調整部22の遮蔽部材により、縦長の四角錐台状に広がる細隙ビームに形成される。すなわち、X線形状調整部22の遮蔽部材がスリットを形成し、細隙ビームを形成する。セファロ撮影時、X線形状調整部22の遮蔽部材が水平方向に移動することで、スリットが水平方向に移動する。X線発生器21から出射されたX線のうち、さらにスリット機構102のスリットで規制され、スリット部材を通過したX線が、頭部固定具103に固定された頭部Bに照射される。セファロ撮影においては、X線形状調整部22で形成されたスリットが水平方向に移動し、これと同期してスリット機構102のスリット部材(すなわちスリット)が同方向に移動することにより、頭部BがX線によって走査される。なお、X線検出器101Dの検出面を広くし、X線形状調整部22の規制量とスリット機構102の規制量を小さくして、幅広のX線コーンビームでワンショット撮影をする構成が採用されてもよい。
X線検出部101は、X線検出器31と同様の構成を有するX線検出器101Dを含む。このX線検出器は、頭部固定具103によって位置付けされた頭部Bを透過したX線を検出する。X線検出器は、スリット機構102のスリット部材の水平方向における移動に合わせて、その移動方向と平行に検出面を移動させるように構成されている。X線検出器は、スリットを通過して頭部MHを透過したX線を検出する。スリット機構102および検出面の移動方向は、X線発生器21と頭部固定具103の中心とを結ぶ直線に直交し、かつ水平な方向である。
X線検出器101Dの検出面に配された複数の検出素子は、入射したX線の強度を電気信号に変換する。その電気信号が、出力信号として制御装置50(または情報処理装置70)に入力され、その信号に基づいてセファロ画像が生成される。以下の説明では、制御装置50および情報処理装置70と、第2撮影部100との間の制御および情報処理については省略される。
続いて、図6を参照して、X線撮影装置本体2が備える制御装置50について説明する。制御装置50は、第1撮影部10および第2撮影部100におけるX線撮影を制御する。制御装置50は、X線撮影装置本体2の適宜の場所に設置される。制御装置50は、例えば、下フレーム41のアーム部42の内部に設置されてもよい。制御装置50は、旋回アーム12内のいずれかの場所、例えばX線検出部30の内部に設置されてもよい。制御装置50は、情報処理部51と、表示部50aと、記憶部52と、インタフェース53と、操作部50bとを備える。制御装置50は、プロセッサ(たとえばCPU等)およびメモリ(たとえば、ROMおよびRAM等)等を備えるコンピュータ装置である。情報処理部51は、機能要素として、画像処理部54、モード設定部55、撮影領域設定部56、駆動制御部57、および撮影制御部58を備える。
表示部50aは、画像処理部54が生成した画像を表示する。表示部50aは、例えば操作パネル90にディスプレイとして設けられる。表示部50aをタッチパネルで構成して、表示部50aが操作を受け付けるようにしてもよい。この場合、表示部50aが操作部50bを兼ねることになる。表示部50aにおける表示は、視覚的表示のみならず、聴覚的表示および/または振動などの触覚的表示等を含んでもよい。記憶部52は、制御用プログラム等を記憶する。制御装置50は、第1撮影部10、第2撮影部100、情報処理装置70、および操作パネル90のそれぞれとの間において、インタフェース53を介して、有線または無線で情報通信を行う。操作部50bは、たとえばマウスまたはキーボード等の入力手段を備え、たとえば術者によるX線撮影に係る操作を受け付ける。操作部50bは、その操作内容に応じて、撮影領域設定部56、駆動制御部57、および撮影制御部58等に制御信号を出力する。なお、表示部50aが、情報処理装置70が生成したX線画像を表示できるように構成されてもよい。表示部50aが、X線画像を表示すると共に、そのX線画像(たとえばスカウト画像等)に対する位置指定を行うためのカーソル等を表示することで、ユーザインタフェースの機能を兼ね備えてもよい。
画像処理部54の生成する画像はさまざまに考え得るが、例えば、X線撮影の制御に関する画像を生成する。制御に関する画像の例として、モード設定画面の画像や、管電流や管電圧などの撮影条件設定画像、位置付け用の画像などが挙げられる。位置付け用の画像の例は、歯列弓を模した模式図にCT撮影の撮影領域を円の指標で表示したような図である。歯列弓の模式図に対する円の指標の相対的位置を移動操作することで、旋回アーム12の位置が調整され、円の指標で示された位置が実際のCT撮影領域となるように構成される。他に、例えば、モード設定画面の画像を生成してもよい。
モード設定部55は、術者による操作パネル90の操作入力に基づき、第1撮影部10における撮影モードを設定する。操作パネル90には、撮影モードを選択するためのモード設定画面が表示される。モード設定画面には、たとえば、2方向スカウト撮影、パノラマスカウト撮影、またはCT撮影等の撮影モードが表示される。本実施形態では、モード設定画面には、自動撮影モードが表示される。この自動撮影モードとは、たとえば2方向スカウト撮影等のスカウト撮影を行ってスカウト画像を取得した後に、そのスカウト画像に基づいてCT撮影の対象領域(後述する第3の領域または関心領域)を決定し、その対象領域をCT撮影するモードである。操作パネル90のモード設定画面には各撮影モードに対応するボタンが表示されており、術者によっていずれかのボタンが押下されることで、モード設定部55は、押下されたボタンに対応する撮影モードを設定する。自動撮影モードのボタンが押下された場合に、2方向スカウト撮影およびパノラマスカウト撮影のいずれかが、操作パネル90上で設定できるようになっていてもよい。モード設定部55は、設定された撮影モードを示す信号を、インタフェース53を介して情報処理装置70に送信する。
撮影領域設定部56は、術者による操作入力を受け付け、その操作内容に応じて撮影領域を設定する。たとえば、撮影領域設定部56は、モード設定部55により設定された撮影モードに適合する領域設定画面を表示部50aに表示させ、その画面上で実行される操作入力に基づいて、撮影領域を設定する。自動撮影モードが選択された場合、撮影領域設定部56は、情報処理装置70から出力された撮影対象の領域(具体的には、スカウト撮影における撮影方向と撮影範囲に対応する座標、CT撮影における中心位置の座標等)を入力し、その撮影領域を示す信号を駆動制御部57および撮影制御部58に出力する。なお、操作部50bを介して手動で撮影領域が入力された場合には、撮影領域設定部56は、操作部50bから出力された撮影対象の領域を入力し(位置指定の受付け)、その撮影領域を示す信号を駆動制御部57および撮影制御部58に出力する。
スカウト画像を用いた位置付けを行う場合は、情報処理装置70においてスカウト画像に対する位置設定が行われると、設定された撮影対象の領域の情報が、情報処理装置70から撮影領域設定部56に送られる。撮影領域設定部56は、撮影対象の領域の情報を受けると、その撮影領域を示す信号を駆動制御部57および撮影制御部58に出力する。位置設定が行われたことが表示部50aに表示され、X線照射操作部92を用いた操作の受付によってX線撮影を実行するようにしてもよい(実行の許可)。情報処理装置70側でX線撮影の実行までを指令するようにしてもよい。X線撮影装置本体2側でX線撮影実行の許可をする構成は、現場の安全確認をより確実にできるという利点を有する。
駆動制御部57は、撮影領域設定部56から出力された撮影領域を第1撮影部10がX線撮影するように、第1撮影部10の駆動機構7を制御する。駆動制御部57は、モード設定部55において自動撮影モードが設定された場合には、情報処理装置70からの情報を受けて、たとえば後述するフローに従ってX線撮影を順次行うように、第1撮影部10を制御する。
撮影制御部58は、駆動制御部57と連動して、第1撮影部10のX線発生部20およびX線検出部30を制御し、インタフェース53を介して、X線検出部30からX線検出信号を取得する。撮影制御部58は、取得したX線検出信号を情報処理装置70の画像処理部71iに出力する。
これらの撮影領域設定部56、駆動制御部57および撮影制御部58は、所定の撮影領域をX線撮影するように、駆動機構7を制御してX線発生器21およびX線検出器31を移動させる制御部である。
駆動制御部57および撮影制御部58は、第1撮影部10が2方向スカウト撮影を行う際は、X線コーンビームを水平に照射する(いわゆる水平照射)。水平照射では、X線コーンビームのセンタービームが、-y側から+y側へ、z方向の高さを変更せずに照射される。なお、この際、他の適宜の角度でX線コーンビームが照射されてもよい。その場合には、位置付け(スカウト)の際に、座標計算を調整すればよい。例えば、第1と第2のスカウト撮影のいずれかでX方向からスカウト撮影を行う際、CT撮影時よりも頭部BにX線検出部30を接近させることが考えられる。X線検出部30を接近させる場合に、いわゆる打ち上げ照射の方がX線検出部30の被写体Aの肩への接触や衝突を回避できるのであれば、打ち上げ照射が採用され得る。駆動制御部57および撮影制御部58は、第1撮影部10がパノラマスカウト撮影を行う際は、水平面に対してたとえば5度の傾斜角をもって細隙ビームを照射するように、X線発生部20およびX線検出部30を制御する。このときの細隙ビームは、X線発生器21からX線検出器31に向けて上向きに傾斜するように制御される(いわゆる打ち上げ照射)。打ち上げ照射では、細隙ビームのセンタービームが、-y側から+y側への直進線に対して例えば+z方向に5度傾斜させられる。駆動制御部57および撮影制御部58は、第1撮影部10がCT撮影を行う際は、コーンビームの中心軸が水平に向けられるように、X線発生部20およびX線検出部30を制御する(いわゆる水平照射)。
続いて、図7を参照して、X線撮影装置1が備える情報処理装置70について説明する。情報処理装置70は、X線撮影装置本体2側から出力されたX線検出信号の画像処理を行う。情報処理装置70は、特に、制御装置50から、自動撮影モードが設定された旨の信号を受信した場合に、自動撮影モードに係る各種の演算処理および制御処理を実行する。情報処理装置70は、情報処理部71と、表示部70aと、記憶部72と、インタフェース73と、操作部70bとを備える。情報処理装置70は、プロセッサ(たとえばCPU等)およびメモリ(たとえば、ROMおよびRAM等)等を備えるコンピュータ装置であり、たとえばワークステーション等であってもよい。情報処理部71は、機能要素として、画像処理部71i、撮影領域設定部71r、取得部74、判定用画像生成部75、判定部76、座標演算部77、および制御部78を備える。前述の制御装置50は情報処理装置70中に設けられてもよい。
なお、図7には、判定モデルを用いた判定処理を説明するために、判定モデル記憶部79およびサーバ200が図中に示されている。しかしながら、これらの判定モデル記憶部79およびサーバ200は省略されてもよい。以下の説明では、これらが省略された場合の機能および処理についてまず説明する。それに続いて、判定モデル記憶部79を備えた情報処理装置70と、サーバ200と、上記X線撮影装置本体2とを含むX線撮影システムMについて説明する。
画像処理部71iは、X線撮影装置本体2から出力されたX線検出信号をインタフェース73を通じて取得し、所定の画像処理を行って、X線画像データ及びX線画像を生成する。記憶部72は、画像処理部71iが生成したX線画像データ及びX線画像を記憶する。記憶部72は、X線画像データに紐づけて、被写体AのID情報、X線撮影の条件(撮影モードや日時に関する情報)等を含む属性情報を記憶する。
画像処理部71iは、第1撮影部10および第2撮影部100から出力されたX線検出信号を入力し、そのX線検出信号に基づいて所定の画像処理を行うことにより、X線画像データ及びX線画像を生成する。第1撮影部10および第2撮影部100から出力されたX線検出信号が、一旦制御装置50に集められ、制御装置50を経由して画像処理部71iに入ってくるように構成してもよい。
たとえば、第1撮影部10においてCT撮影が行われた場合、画像処理部71iは、入力した複数の投影画像データ(後述する「生CT画像データ」に相当)に対して所定の前処理、フィルター処理および逆投影処理等を行う。これらの処理により、画像処理部71iは、3次元画像データ、具体的には3次元ボリュームデータ(後述する「可視化型加工CT画像データ」に相当)を生成し、3次元データから関心のある断面をスライスした各断層のCT画像データ(後述する「可視化加工CT画像データ」に相当)を生成する。このような3次元画像データのデータ構造は、たとえば図11に示されるように、多数のボクセルにCT値が格納されたボリュームデータDTである。第1撮影部10においてスカウト画像の撮影が行われた場合、画像処理部71iは、入力したX線検出信号に基づいて、投影画像データ及び投影画像を生成する。画像処理部71iは、第1撮影部10において異なる2つの方向(照射角度)からそれぞれX線撮影が行われた場合、2つのX線画像データ及び2つのX線画像をそれぞれ生成する。この場合の2つのX線画像データは、2方向スカウト画像データC1,C2である(図12参照)。また第1撮影部10においてパノラマ撮影が行われ、X線の細隙ビームが歯列弓に対応する曲面を左右の一端から他端までなぞるように照射された場合、画像処理部71iは、得られた短冊型の画像データを合成等でつなぐことによって、パノラマスカウト画像のためのX線画像データを生成する。画像処理部71iは、生成した1枚のパノラマ画像を表示部70aに表示させる。画像処理部71iで生成された画像データ及び画像は、表示部70aに表示のために送られ、および/または、記憶部72に記憶のために送られる。
表示部70aは、画像処理部71iで生成されたX線画像をディスプレイ等に表示する。表示部70aにおける表示は、視覚的表示のみならず、聴覚的表示および/または振動などの触覚的表示等を含んでもよい。記憶部72は、画像処理部71iで生成されたX線画像を記憶する。記憶部72は、X線画像に紐づけて、被写体AのID情報およびX線撮影の条件(撮影モードや日時に関する情報)等を含む属性情報を記憶してもよい。情報処理装置70は、第1撮影部10、第2撮影部100、制御装置50、および操作パネル90のそれぞれとの間において、インタフェース73を介して、有線または無線で情報通信を行う。操作部70bは、たとえばマウスまたはキーボード等の入力手段を備え、たとえば術者によるX線撮影に係る操作を受け付けてもよい。なお、表示部70aが、X線画像を表示すると共に、そのX線画像(たとえばスカウト画像等)に対する位置指定を行うためのカーソル等を表示することで、ユーザインタフェースの機能を兼ね備えてもよい。
取得部74は、画像処理部71iで生成された各種のX線画像のX線画像データを取得する。また取得部74は、制御装置50から送信された撮影モードを示す信号を取得する。以下の機能要素は、主に、自動撮影モードが設定された旨の信号が取得された場合に機能する。したがって、以下の機能要素については、自動撮影モードが設定された場合の機能または処理内容について説明する。
以下の説明において、記憶部72(または制御装置50の記憶部52)に格納されたCT画像データは、「過去のCT画像データ」または「レファレンスCT画像データ」と呼ばれることがある。一方、被写体ホルダ40に保持された被写体Aの頭部Bがスカウト撮影された後に実行されるCT撮影は「現在のCT撮影」と呼ばれ、そのCT撮影によって得られるCT画像データは「現在のCT画像データ」と呼ばれることがある。「現在のCT撮影」は、上述した本撮影と同義である。また、X線画像は、制御装置50または情報処理装置70の内部処理においては、実体としてはX線画像データであるが、このようなX線画像データを単に「X線画像」と呼ぶことがある。X線画像データが表示部70aによって人間の視認用に表示された場合であって、観察側の観点で表現する場合は、表示された画像は「X線画像データ」の略称としての「X線画像」ではなく、本来の意味の「X線画像」である。
判定用画像生成部75は、記憶部72(または制御装置50の記憶部52)に格納されたCT画像のX線画像データ(CT画像データ、第1領域X線画像データ)がある場合に、その過去のCT画像データに基づいて、たとえばスカウト画像のX線画像データ(スカウト画像データ、第2のX線画像データ)中におけるCT撮影の位置決めを行うための判定用の画像データ(判定用画像データ、第1のX線画像データ)を生成する。この場合、CT画像データに紐づけられた被写体Aを示すIDは、スカウト画像データのIDと一致する必要がある。本実施形態では、基本的には、第1のX線画像データも第2のX線画像データも、同一のX線撮影装置本体2か、機械的構造関係が同じである同種のX線撮影装置本体2での撮影で得られたX線画像データに基づくものである。これにより、座標の再現性が確保される。ただし、位置情報の変換が可能であれば、異なるX線撮影装置本体2が用いられ得る。判定用画像生成部75は、たとえば、制御装置50によって2方向スカウト画像が取得された場合に、2つのスカウト画像が得られた際のX線の照射角度を参照して、その照射角度に対応する2つの断層画像を、記憶部72に格納されたCT画像から生成してもよい。判定用画像生成部75は、記憶部72に格納されたCT画像から1つ又は複数のレイサム画像を生成してもよい。その場合に、レイサム処理の方向は、スカウト画像(第2のX線画像)が撮影された方向(X線ビームの照射方向)と等しいか又は略等しくなるように設定されてもよい。判定用画像生成部75は、たとえば、制御装置50によって2方向スカウト画像が取得された場合に、2つのスカウト画像が得られた際のX線の照射角度を参照して、その照射角度と等しいか又は略等しい方向でレイサム処理することにより、2つのレイサム画像を生成してもよい。
レイサム処理の対象範囲は、CT画像データ全体でなくてもよい。レイサム処理の対象範囲は、例えば中央部分の前後の一定範囲など、一部の領域でもよい。判定用画像生成部75は、レイサム画像の代わりに、断面像を生成してもよい。判定用画像生成部75は、例えば、スカウト画像が得られた際のX線の照射方向に直交する断面であって、CT画像データ中のX線の照射方向中央の断面の断層面画像データを生成する。
第1のX線画像データとしてMIP(Maximum Intensity Projection)によって得たX線画像データを用いてもよい。MIPは、X線CT画像データなどの3次元的に構築されたX線画像データに対して視点方向を定めて投影処理を行い、投影経路中の最大値を投影面に表示する方法である。その他に、3次元のボリュームレンダリング画像データに対して、例えば金属部分や特徴的硬組織部分を抽出する処理を行い、第2のX線画像データについても金属部分や特徴的硬組織部分を抽出する処理を行って判定をしてもよい。3次元のボリュームレンダリング画像データの透明度を上げて投影面に投影する処理を行ってもよく、このように3次元画像データの2次元処理をした画像データを第1のX線画像データとして用いてもよい。ある方向からレイサム処理するように、またはMIP処理するように、組織の構造を1方向に投影するような画像処理を投影化または投影化処理と呼ぶこととする。投影化処理として、場合によってはMinIPやSSDを行うようにしてもよい。
判定部76は、たとえばスカウト画像データ(第2のX線画像データ)と、記憶部72に格納されたCT画像データすなわちレファレンスCT画像データとに対し画像認識を行うことで、スカウト画像内における、レファレンスCT画像データの撮影領域(第1の領域、頭部Bの一部からなる第1の部分)に対応する第3の領域を判定する。判定部76は、スカウト画像データと、判定用画像生成部75によって生成された判定用画像データとを比較して、たとえばパターンマッチングを行うことにより、これらの画像データの一致度または類似度を算出する。判定部76は、スカウト画像に対して、一定以上の一致度または類似度が得られた領域が過去のCT画像の撮影領域に対応する第3の領域である、と判定する。この第3の領域は、過去のCT画像が撮影された第1の部分に対応する領域であり、歯科診断または歯科治療における関心領域である。比較対象領域は、必ずしも第1の部分に対応する領域の全体でなくてもよい。比較対象領域は、第1の部分に対応する領域の一部の領域でもよく、例えば中央領域のみを比較してもよい。
座標演算部77は、判定部76によって判定された第3の領域に基づいて、CT撮影の中心位置の座標を演算する。より詳細には、座標演算部77は、たとえば、判定により得られた第3の領域の中心位置の座標を演算し、この座標をCT撮影の中心位置としてもよい。座標演算部77は、演算した座標を示す信号を、インタフェース73を介して制御装置50の撮影領域設定部56に送信する。
制御部78は、自動撮影モードが設定された場合におけるX線撮影装置1によるX線撮影を全体的に制御するための情報を生成し、制御装置50に渡す。制御部78は、第1撮影部10がスカウト画像(第2撮影X線画像データ)を撮影する際の条件(たとえばスカウト撮影における撮影方向と撮影範囲に対応する座標)を決定し、その条件で撮影が行われるように、制御装置50に制御支援情報を与え、制御装置50が第1撮影部10を制御する。なお、制御装置50のモード設定部55においてスカウト撮影の種類が設定されていない場合には、制御部78は、典型的な2つの照射角度(たとえばチンレスト43の正面である0度又は180度の第1角度と、この第1角度から中心軸線L方向の上方から見て時計周り又は反時計回りに90度ずれた第2角度)で2方向スカウト撮影が行われるように、制御装置50に制御支援情報を与えるようにしてもよい。制御部78が制御装置50を直接制御するようにしてもよいし、制御部78が第1撮影部10を直接制御するようにしてもよい。
本明細書において、第1の領域(第1領域)をX線撮影して得られた「第1領域X線画像データ」は、CT撮影等のX線撮影により得られたそのままの(何ら加工されない)フレームデータ、すなわち生X線画像データと、生X線画像データが加工された画像データである加工X線画像データとを含む。第1領域X線画像データは記憶部72(または記憶部52)に記憶される。すなわち、記憶部72(または記憶部52)に記憶される第1領域のX線画像データは、生X線画像データであってもよいし、加工X線画像データであってもよい。判定部76による比較処理に用いられる「第1のX線画像データ」は、第1領域X線画像データそのままの加工をしないものであってもよいし、第1領域X線画像データが加工された画像データであってもよい。すなわち、「第1のX線画像データ」は、第1領域X線画像データに基づいたものである。例えば、「第1のX線画像データ」は、記憶部72(または記憶部52)に記憶された生X線画像データと、記憶部72(または記憶部52)に記憶された加工X線画像データと、比較処理時に生X線画像データが加工された加工X線画像データとを含む。「第1のX線画像データ」は、比較処理時に記憶部72に記憶された加工X線画像データをさらに加工した加工X線画像データも含んでよい。第1領域X線画像データに基づく「第1のX線画像データ」は、第1領域X線画像データに由来する画像データであるとも言えるし、また、第1領域X線画像データから構成された画像データであるとも言える。
第2の領域(第2領域)をX線撮影して得られた「第2領域X線画像データ」、および、第2領域X線画像データに基づく「第2のX線画像データ」に関しても、上記と同様の定義が当てはまる。第2の領域をX線撮影して得られた「第2領域X線画像データ」は、2方向スカウト撮影等のX線撮影により得られたそのままの(何ら加工されない)ワンショット撮影データ、すなわち生X線画像データと、生X線画像データが加工された画像データである加工X線画像データとを含む。第2領域X線画像データに基づく「第2のX線画像データ」は、第2領域X線画像データそのままであってもよいし、第2領域X線画像データが加工された画像データであってもよい。すなわち、「第2のX線画像データ」は、第2領域X線画像データに基づいたものである。第2領域X線画像データに基づく「第2のX線画像データ」は、第2領域X線画像データに由来する画像データであるとも言えるし、また、第2領域X線画像データから構成された画像データであるとも言える。
加工X線画像データは、可視化のレベルに近い状態に加工された画像データである「可視化型加工X線画像データ」と、可視化のレベルにまで加工された画像データである「可視化加工X線画像データ」とを含む。「可視化型加工X線画像データ」は、可視化に向けて生X線画像データが多少加工されてはいるが、そのX線画像は、人間の視覚によって、頭部、上顎、下顎、または歯の画像であると認識され得ない。頭部、上顎、下顎、または歯の画像であると認識され得るか否かの点において、「可視化型加工X線画像データ」は、「可視化加工X線画像データ」とは異なる。「可視化型加工X線画像データ」としては、たとえば、フレーム画像データを逆投影して得てはいるが、断層面画像処理もボリュームレンダリング画像処理も未実行の3次元ボリュームデータなどの画像データが挙げられる。たとえばCT撮影に関してこれらの用語を用いた場合、上記各種の画像データは、「生CT画像データ」、「加工CT画像データ」、「可視化型加工CT画像データ」、および「可視化加工CT画像データ」とそれぞれ呼ばれ得る。
ここで、情報処理装置70の判定部76は、上記した判定方法に限られず、たとえば機械学習により学習済みの判定モデルを用いた判定を行ってもよい。たとえば、図7に示されるように、本開示の他の実施形態として、判定モデル記憶部79を備えた情報処理装置70と、機械学習用のサーバ200と、上記X線撮影装置本体2とを含むX線撮影システムMが提供されてもよい。
図7および図10に示されるように、判定部76は、判定モデル記憶部79に記憶された判定モデル210に、過去のCT画像データCT1(第1領域X線画像データ)または判定用画像データD1,D2(第1のX線画像データ)と、2方向スカウト画像のX線画像データである2方向スカウト画像データC1,C2等のスカウト画像データ(第2のX線画像データ)とを入力する。判定部76は、判定モデル210から出力される、スカウト画像データ内における第1の部分(過去のCT画像が撮影された部分)に対応すると推定される領域を、第3の領域として取得する。
なお、過去のCT画像データは1つとは限らず、複数保存されている場合もあり得る。例えば、過去の複数の異なる時間にCT撮影をし、複数のCT画像データが保存されている場合などである。この場合は、判定用画像データとして最新のデータが用いられるなど、優先順位を定めておいてもよい。術者が、判定用画像データとして用いられるCT画像データを選択可能であってもよい。術者が、サムネール等の一覧表示から、判定用画像データとして用いられるCT画像データを選択できてもよい。
サーバ200は、上述した判定モデル210を生成するための機能要素として、判定モデル用教師データ生成部201と、判定モデル用教師データ記憶部202と、判定モデル学習部203と、を備える。サーバ200は、プロセッサ(たとえばCPU等)およびメモリ(たとえば、ROMおよびRAM等)等を備えるコンピュータ装置であり、たとえばワークステーション等であってもよい。サーバ200は、例えばクラウド上に設けられた一以上の装置によって構成され得る。
判定モデル用教師データ生成部201は、判定モデル210の学習のための教師データを生成する。判定モデル用教師データ記憶部202は、判定モデル用教師データ生成部201により生成された教師データを記憶する。判定モデル学習部203は、判定モデル用教師データ記憶部202に記憶された教師データを用いた機械学習を実行することにより、学習済みモデルである判定モデル210を生成する。たとえば、判定モデルは、過去のCT画像データ(第1領域X線画像データ)または判定用画像データ(第1のX線画像データ)に示される第1の像のパターンと、スカウト画像のX線画像データ(第2のX線画像データ)に示される第2の像のパターンのうち第1の像のパターンに対応する部分との同一性を機械学習で判定する学習済みモデルからなる。すなわち、判定モデル210は、第1のX線画像データを含む第1情報と、第2のX線画像データ内における第1の部分に対応する第3の領域を含む第2情報とを含む教師データを用いて機械学習された学習済みモデルである。
図10は、判定モデル210の概要を模式的に示す図である。図10に示されるように、まず、判定モデル用教師データ生成部201は、被写体Aから得られた過去の判定結果と、その判定結果に応じたCT画像のX線画像データまたは判定用画像のX線画像データおよびスカウト画像のX線画像データとを含む教師データを複数セット生成する。教師データは、たとえば、過去のCT画像のX線画像データ(第1領域X線画像データ)または判定用画像データ(第1のX線画像データ)に示される第1の像のパターンの情報と、この第1の像のパターンとスカウト画像のX線画像データ(第2のX線画像データ)に示される第2の像のパターンのうち第1の像のパターンに対応する部分の情報とを含む。
続いて、判定モデル学習部203は、判定モデル用教師データ記憶部202に蓄積された教師データを用いた機械学習を実行することにより、学習済みモデルである判定モデル210を生成する。判定モデル学習部203が実行する機械学習の手法は、特定の手法に限られず、例えば、SVM、ニューラルネットワーク、ディープラーニング等の様々な手法を用いることができる。例えば、判定モデル210がニューラルネットワークによって構成される場合には、ニューラルネットワークの中間層のパラメータが教師データによってチューニングされた学習済みモデルが判定モデル210として得られる。
このような機械学習により得られる判定モデル210は、過去のCT画像データCT1(第1領域X線画像データ)または判定用画像データD1,D2(第1のX線画像データ)と、2方向スカウト画像データC1,C2等のスカウト画像のX線画像データ(第2のX線画像データ)とを入力して、スカウト画像内における第1の部分(過去のCT画像が撮影された部分)に対応すると推定される領域を第3の領域として出力するように構成された学習済みモデルである。判定モデル学習部203により生成された判定モデル210は、サーバ200から情報処理装置70へと提供され、情報処理装置70の判定モデル記憶部79に記憶される。
判定部76は、必ずしも、判定用画像生成部75によって生成された判定用画像データD1,D2を用いて第3の領域を判定しなくてもよい。判定部76は、未加工の過去のCT画像データCT1(第1領域X線画像データ)と2方向スカウト画像データC1、C2(第2のX線画像データ)との対応により、第3の領域を判定してもよい(図10参照)。学習に用いられる教師データが、未加工の過去のCT画像のX線画像データを含むことにより、判定モデル学習部203が、未加工の過去のCT画像データCT1と2方向スカウト画像データC1、C2との対応により、第3の領域を判定するように学習してもよい。判定モデル学習部203は、未加工の過去のCT画像データCT1(第1領域X線画像データ)と2方向スカウト画像データC1、C2(第2のX線画像データ)との対応、および、レイサム画像のように過去のCT画像データCT1を加工して得たデータ(第1のX線画像データ)と2方向スカウト画像データC1、C2(第2のX線画像データ)との対応の両方を、混在させて(組み合わせて、又は併せて)学習してもよい。
続いて、図8および図9を参照して、本実施形態のX線撮影装置1(またはX線撮影システムM)によって実行される処理フローについて説明する。まず、過去のいずれかの時点において、被写体Aの頭部Bの一部からなる第1の部分に対応する第1の領域が、CT撮影され、CT画像データ(第1領域X線画像データ)が取得されている(第1取得工程)。CT画像データは、記憶部72(または記憶部52)に記憶されている。情報処理装置70の制御部78は、X線撮影装置1に対して設定された撮影条件を受信する(ステップS01)。ここでの撮影条件とは、たとえば、制御装置50のモード設定部55に設定された撮影モードである。たとえば、制御部78は、撮影条件として、上記の自動撮影モードにてX線撮影が実行される旨の信号を受ける。「第1の部分に対応する第1の領域を撮影する」とは、第1の領域が第1の部分を撮影の対象とすることと解釈される。「第1の部分に対応する第1の領域を撮影する」が、第1の領域が第1の部分を撮影の対象とする撮影領域であることと解釈されてもよい。
以下の説明では、撮影条件が自動撮影モードである旨の情報が入力された場合について説明する。次に、情報処理装置70の制御部78は、頭部Bの上顎および下顎を含む部分(頭部Bの少なくとも一部からなる第2の部分)を異なる2つの方向からX線撮影する2方向スカウト撮影の実行のための情報をX線撮影装置本体2の制御装置50に送る。そして制御装置50が、第1撮影部10を制御して2方向スカウト撮影を実行する(ステップS02)。このステップS02においては、撮影対象の領域(第2の領域)は、たとえば過去のCT撮影の対象領域(第1の領域)よりも広く、かつ、過去のCT撮影の対象領域の少なくとも一部を含む領域である。撮影対象の領域(第2の領域)を、過去のCT撮影の対象領域(第1の領域)を含む領域としてもよく、撮影対象の領域(第2の領域)を、過去のCT撮影の対象領域(第1の領域)よりも広い領域としてもよい。過去のCT撮影の対象領域Rは、たとえば、図11に示されるように、直径40mm×高さ40mmの大きさを有する円柱形状である。スカウト撮影の対象領域は、この円柱形状の領域Rを包含するように設定される。第2の領域は頭部Bの少なくとも一部からなる第2の部分に対応している。第2の領域は第1の領域の少なくとも一部を含む。「第2の部分に対応する第2の領域を撮影する」とは、第2の領域が第2の部分を撮影の対象とすることと解釈される。「第2の部分に対応する第2の領域を撮影する」が、第2の領域が第2の部分を撮影の対象とする撮影領域であることと解釈されてもよい。
次に、情報処理装置70の取得部74は、2方向スカウト撮影で得られた2つのスカウト画像(投影画像)を取得し、表示部70aに表示させる(ステップS03;第2取得工程)。図12は、第2のX線画像としてのスカウト画像の作成要領を示す図である。図13は、2つのスカウト画像の一例を示す図である。2方向スカウト撮影の結果、異なる2つの方向からのX線照射によって2方向スカウト画像データC1(第1スカウト画像データC1)および2方向スカウト画像データC2(第2スカウト画像データC2)が得られ、表示部70aに表示される。コーンビーム照射の単純投影の2方向スカウト撮影を行う場合、旋回アーム12の旋回駆動で、X線発生器21とX線検出器31とが旋回軸線RCT周りに旋回させられる。第1撮影部10が制御され、ある方向からのワンショット撮影で第1スカウト画像データC1が取得され、他の方向からのワンショット撮影で第2スカウト画像データC2が取得される。ある方向と他の方向は、好適には、直交する2方向である。第1スカウト画像データC1および第2スカウト画像データC2は、X線検出器31の検出面で検出される。なお、図12では、理解を促すためにコーンビームCBの上側の表示が省略されている。
次に、情報処理装置70の判定部76は、記憶部72または記憶部52を参照して、過去に撮影したCT画像データがあるか否かを判断する(ステップS04)。判定部76は、スカウト画像のX線画像データに示される被写体AのIDと一致するIDを持つCT画像データが記憶部72または記憶部52に格納されているか否かを判断する。判定部76は、過去に撮影したCT画像データがあると判断すると(ステップS04;YES)、対象領域の判定処理を行う(ステップS05)。判定部76が過去に撮影したCT画像データはないと判断すると(ステップS04;NO)、制御部78は、操作部50bおよび表示部50aを介して、手動で撮影領域を操作入力するよう、表示部50aにメッセージを表示させる。操作部70bおよび表示部70aを介して手動で撮影領域を操作入力するよう、表示部70aにメッセージを表示させてもよい。これにより、制御部78は、撮影対象の領域の入力を受け、位置指定を受け付ける(ステップS10)。制御部78は、その撮影領域を示す信号を、インタフェース73を介して撮影制御部58に送信し、撮影制御部58が駆動制御部57を制御する。制御部78が駆動制御部57を直接制御してもよい。
このように、好適には、判定部76は、記憶部72または記憶部52を参照して、例えば第2領域X線画像データに付与された被写体AのIDと一致するIDを有する第1領域X線画像データが記憶部72または記憶部52に格納されているか否かにより、当該被写体Aを過去に撮影した第1領域X線画像データの保有があるか否かを判断する。判定部76は、過去に撮影した第1領域X線画像データがあると判断すると、対象領域の判定処理を行う。さらに好ましくは、例えば第2領域X線画像データに付与された被写体AのIDと一致するIDを有する第1領域X線画像データが記憶部72または記憶部52に格納されていない場合等において、判定部76が、当該被写体Aを過去に撮影した第1領域X線画像データの保有が無いと判断すると、手動で撮影領域を操作入力するように促す表示を表示部70aに出す。この場合、好ましくは、制御部78が、撮影対象の領域の操作入力を受け、位置指定を受け付ける。このように、判定部76がX線画像データに付与された被写体AのIDを参照して被写体の同一性を判定することにより、被写体の取り違えを防止することができる。
図9に示されるように、対象領域の判定処理では、まず、判定部76が、過去のCT画像データ(第1領域X線画像データ)を記憶部72(または記憶部52)から取得する(ステップS51)。そして、判定用画像生成部75は、過去のCT画像データに基づいて、判定用画像データ(第1のX線画像データ)を生成する(ステップS52)。図14は、第1のX線画像に対する画像認識の一例を示す図である。図14に示されるように、判定用画像生成部75は、たとえば、ステップS02の2方向スカウト撮影における照射角度を参照して、その照射角度に対応する2つの断層画像データD1,D2を過去のCT画像データから生成する。判定用画像生成部75は、たとえば、ステップS02の2方向スカウト撮影における照射角度を参照して、その照射角度と等しいか又は略等しい方向(これら双方を含んだ概念としての方向は、これ以降、「略照射方向」と呼ばれる)に直交または略直交する断面を定めて2つの断層画像データD1,D2を生成する。判定用画像生成部75は、たとえば、制御装置50によって2方向スカウト画像のX線画像データ(第2のX線画像データ)が取得された場合に、ステップS02の2方向スカウト撮影における照射角度を参照して、その照射角度と等しいか又は略等しい方向(略照射方向)でレイサム処理することにより、2つのレイサム画像データを生成してもよい。画像処理としては、略照射方向に直交または略直交する断層であって、略照射方向に厚みのある断層の中にあるピクセルデータを集める処理も考えられる。集め方は、例えば、略照射方向に並ぶピクセルデータを平均化する方法、積分する方法、略照射方向に並ぶ多層の2次元データを生成してから合成する方法、断層内をボリュームレンダリングする方法など、様々に考え得る。
過去のCT画像データがCT画像データPIであるとして、CT画像データPIを得たときの照射角度の情報を参照することなく、多方向から投影化処理して第2のX線画像データ中の領域と一致する画像データを探索するようにしてもよい。被写体ホルダ40に保持される頭部Bの向きはほぼ一定であるので、探索にあたってはy方向(y方向で多方向)の投影化だけを行うようにすると効率的である。なすわち、3次元のCT画像データPIをz軸の軸回りに回してy方向から観察するイメージで、探索が行われてもよい。
なお、この判定用画像データD1,D2の生成処理において、CT画像データに対し、スカウト撮影の拡大率を考慮した補正を加えてもよい。スカウト画像データは、手前と奥で拡大率が異なるが、そのような補正をCT画像データに加えることにより、判定精度が高められる。
図9に戻り、判定部76は、2方向スカウト撮影により得られた第1スカウト画像データC1および第2スカウト画像データC2と、ステップS52で生成された2枚の判定用画像データD1,D2とを比較して、たとえばパターンマッチングを行うことにより、これらの画像データの一致度または類似度を算出する。判定部76は、一定以上の一致度または類似度が得られた領域が過去のCT画像の撮影対象となった第1の部分に対応する第3の領域であると判定する(ステップS53;処理工程)。
ステップS53の対象領域の判定処理の後に、対象領域の判定に成功したか又は失敗したかを判断する処理が実行されてもよい。たとえば、判定部76は、対象領域の判定に成功したと判断すると、次のステップS06(図8参照)の処理を行う。画像の比較処理の結果、一定以上の一致度または類似度を有する領域が、第1スカウト画像データC1および第2スカウト画像データC2(第2のX線画像データ)の中から見出せない場合もあり得る。そのような場合、判定部76は、対象領域の判定に失敗したと判断する。判定部76が対象領域の判定に失敗したと判断すると、制御部78は、撮影対象の領域の入力を受け、位置指定を受け付ける。この処理は、上記したステップS10の指定位置の受付け処理に相当する。
図8に戻り、判定部76は、第1スカウト画像データC1および第2スカウト画像データC2において第3の領域であると判定された領域を表示部70aにX線画像として表示させる(ステップS06)。このステップS06において第3の領域であると判定された領域は、現在のCT撮影の対象領域である。判定部76は、たとえば、この対象領域を囲む矩形の枠線を、第1スカウト画像データC1のX線画像および第2スカウト画像データC2のX線画像の上に表示させると共に、対象領域の中心点を、第1スカウト画像データC1のX線画像および第2スカウト画像データC2のX線画像の上に表示させる。図15は、2つのスカウト画像上に表示された第3の領域の一例を示す図である。過去のCT画像データは、多くの場合、ボリュームの中心をX線発生器21とX線検出器31の旋回中心にして撮影されたものである。よって、スカウト撮影後も、対象領域の中心点G1、G2が、新たなX線発生器21とX線検出器31の旋回中心となるように設定される。図15に示されるように、ステップS53およびステップS06においては、第1スカウト画像データC1のX線画像および第2スカウト画像データC2のX線画像の上に、それぞれ枠線F1,F2および中心点G1,G2が示されている。2方向スカウト画像を用いる場合、判定部76は、これらの枠線F1,F2および中心点G1,G2の上下方向における位置が一致するように、第3の領域を判定する。第1スカウト画像データC1のX線画像および第2スカウト画像データC2のX線画像における上下方向の位置は、絶対座標系における鉛直方向の位置(すなわち高さ)に相当する。なお、CT撮影(第1の領域のX線撮影)における拡大率と、スカウト撮影(第2の領域のX線撮影)における拡大率とが異なる場合等において、第3の領域であると判定された領域の中心点が、被写体Aの生体組織の外部に位置する場合もあり得る。そのような場合には、判定部76は、少なくとも中心点G1,G2の位置が被写体Aの生体組織上に位置するように、対象領域(具体的には枠線F1,F2の位置)を調整してもよい。
次に、座標演算部77は、第3の領域の中心位置の座標を演算する(ステップS07)。座標演算部77は、たとえば、第1スカウト画像データC1および第2スカウト画像データC2に示される位置情報と、第1スカウト画像データC1および第2スカウト画像データC2内における中心点G1,G2の位置情報とから、第1スカウト画像データC1および第2スカウト画像データC2にそれぞれ対応する2本の直線を演算し、これらの交点を算出する。これらの2本の直線は、たとえば、第1スカウト画像データC1を撮影取得したときの焦点21bと第1スカウト画像データC1のX線画像上に示される中心点G1の位置とを結ぶ直線と、第2スカウト画像データC2を撮影取得したときの焦点21bと第2スカウト画像データC2のX線画像上に示される中心点G2の位置とを結ぶ直線である。座標演算部77は、この交点の座標を、第3の領域の中心位置の座標として演算する。
なお、判定部76の出力がX線画像上の第3の領域の位置情報であり、座標演算部77が、その位置情報に基づいて、XYZ直交座標系における第3の領域の中心位置を算出してもよい。X線画像上の第3の領域の位置情報は、例えばX線画像の2次元のマトリクスの中の第3の領域の位置を数値で示す情報であってよい。
また、判定部76が座標までを出力する構成であってもよい。判定モデル学習部203における判定モデル210の学習に、X線画像データ情報の他に座標情報を加えてもよい。判定モデル210にX線画像データの情報の他に座標情報が入力されたことに応じて第3の領域の座標情報を出力するように、判定モデル学習部203における学習を行わせてもよい。すなわち、判定モデル210に座標演算部77の機能を持たせた構成としてもよい。
第2の領域は、第1の領域の少なくとも一部を含んでいればよい。図16は、図15のX線画像部分を省略して、X線画像の輪郭の配置および/またはサイズを変えた一例を示す図である。図16に示されるように、第1スカウト画像データC1と判定用画像データD1とが一部の領域において重なっている(図中のハッチングされた領域RCを参照)。判定部76が、この重なった領域RCの画像認識で一致または類似を判定できれば、中心点G1で示される位置が特定でき、第3の領域の位置が算出できる。図16に例示される画像データC1,D1のように、第2の領域が、第1の領域よりも大きいが第1の領域の一部のみを含んでもよい。すなわち、第2の領域が第1の領域に部分的に重なってもよい。
図15に例示される画像データC1,D1/C2,D2のように、第2の領域が、第1の領域よりも大きく且つ第1の領域の全部を含んでもよい。すなわち、第2の領域が第1の領域を包含していてもよい。
なお、上記の枠線F1,F2および中心点G1,G2は、X線撮影装置1では自動で生成されるデータであるが、スカウト画像に基づく従来の手動による位置決めでは、枠カーソルおよび位置指定カーソルとして表れていたものに相当する。
次に、制御部78は、インタフェース73を介して、制御装置50の撮影領域設定部56に第3の領域に関する情報(上記中心位置を含む制御支援情報。適切な管電流等の支援情報を含んでもよい。)を送信する。制御装置50の駆動制御部57は、駆動機構7などの駆動制御を実行し、撮影制御部58は、X線発生部20およびX線検出部30を制御する。これにより、第1撮影部10の駆動が行われ(ステップS08;制御工程)、さらにCT撮影が実行される(ステップS09)。これらのステップS08およびS09では、制御部78が制御装置50に情報を与えることで、制御装置50が、駆動機構7を制御し、X線発生器21およびX線検出器31を移動させ、第1撮影部10に、第3の領域をCT撮影(X線撮影)させる。このCT撮影においては、第3の領域の中心位置の座標が旋回中心になる。すなわち、回転軸12dの中心軸線Lが第3の領域の中心位置の座標を通るように、旋回アーム12(回転軸12d、X線発生器21およびX線検出器31)が移動させられる。第3の領域の中心位置の座標は旋回中心を設定する目標となる旋回中心設定目標位置であり、第3の領域の中心位置の座標の情報は旋回中心設定目標位置情報である。X線照射の実行に関しては、X線照射操作部92のエミッションスイッチ93のON操作の間のみ実行の許可がなされるように構成することが好適である。この構成により、エミッションスイッチ93のON操作の間のみ撮影制御が行われ、OFF操作が入ると撮影制御が中止される。ステップS09により得られたX線検出信号が情報処理部71の画像処理部71iによって生成され、表示部50aおよび/または表示部70aに表示される。
以上の一連の処理(ステップS02~S09)は、被写体Aの頭部Bの固定条件が保たれたまま実行される。一連の処理(ステップS02~S09)においては、被写体Aは、頭部Bを被写体ホルダ40に保持させたままであるが、処理が自動的に実行されており、術者による人為的な作業が介在していないため、手間と時間が削減されている。さらには、ステップS05の対象領域の判定処理により、CT撮影の正確な位置決めが可能となっている。
なお、本実施形態では制御装置50がX線撮影の撮影制御を行い、情報処理装置70が画像処理と画像認識の判定を行っているが、これらの分担を適宜変更してもよい。例えば、画像処理や記憶の全部または一部を制御装置50に負担させるようにしてもよい。また、情報処理装置70がX線撮影の撮影制御の全部または一部を負担するようにしてもよい。
本実施形態のX線撮影装置1では、被写体Aの頭部Bが中央空間Sに置かれ、X線発生器21が、その頭部BにX線を照射する。X線検出器31が、頭部Bを透過したX線を検出し、これによってX線画像データが得られる。記憶部52,72は、頭部B内の一部からなる第1の部分に対応する第1の領域をX線撮影して得られたCT画像データ(第1領域X線画像データ)を格納できる。記憶部52,72にCT画像データ(第1領域X線画像データ)が格納されていると、判定部76は、そのCT画像データ(第1領域X線画像データ)に基づく判定用画像データ(第1のX線画像データ)と、第2の領域をX線撮影して得られた1つ又は複数のスカウト画像データ(第2領域X線画像データ且つ第2のX線画像データ)とに対して、画像認識処理を行い、第1の部分に対応する第3の領域を判定する。そして、制御部78が制御支援情報を制御装置50に与え、制御装置50が駆動機構7を制御して、X線発生器21およびX線検出器31に第3の領域をX線撮影させる。よって、被写体ホルダ40に被写体Aを保持した状態で、被写体Aの頭部B内の第2の部分を撮影してスカウト画像データ(第2領域X線画像データ)を得て、その後、その頭部内の第1の部分に対応する第3の領域を自動的にX線撮影することができる。したがって、スカウト画像データ(第2領域X線画像データ又は第2のX線画像データ)に対する、術者等による位置決め作業は不要になっている。過去の画像に由来する判定用画像データ(第1のX線画像データ)と現在の画像に由来するスカウト画像データ(第2のX線画像データ)とにおいて被写体Aの姿勢が変わっている場合でも、画像認識に基づいて第3の領域が判定されるため、位置精度が高められている。X線撮影装置1によれば、簡便かつ正確に、X線撮影の位置決めをすることができる。「第1の部分に対応する第3の領域を撮影する」とは、第3の領域が第1の部分を撮影の対象とすることと解釈される。「第1の部分に対応する第3の領域を撮影する」が、第3の領域が第1の部分を撮影の対象とする撮影領域であることと解釈されてもよい。第3の領域(第3領域)を撮影して得られたデータを第3領域X線画像データと呼んでよく、第3領域X線画像データに基づくデータを第3のX線画像データとしてもよい。第1の領域のX線撮影を第1のX線撮影とし、第2の領域のX線撮影を第2のX線撮影とし、第3の領域のX線撮影を第3のX線撮影としてもよい。
三次元のボリュームデータを有するCT画像データ(3次元画像データ)を用いて、1つ又は複数のスカウト画像データから第3の領域が判定される。よって、より正確に、第3の領域のX線撮影のための位置決めをすることができる。
2つの方向からX線撮影して得られた2つのスカウト画像データ(投影画像データ)を用いて空間の三次元位置が判定されるので、より正確に、第3の領域のX線撮影のための位置決めをすることができる。
判定部76は、2つのスカウト画像データ(投影画像データ)が得られた際のX線の照射角度を参照して、CT画像データ(第1のX線画像データ)に対する画像認識を行う。よって、判定部76は、スカウト画像データ(第2のX線画像データ)の特定部分との一致点を検出しやすいような判定用画像データD1,D2を、CT画像データ(第1のX線画像データ)に基づいて生成することができる。第3の領域の判定処理(すなわち自動的な位置決め)が迅速に行われ得る。
レイサム画像データはCT画像データ(第1のX線画像データ)における所定の方向(厚み方向)の情報を含み得る。よって、レイサム画像データを比較に用いることで、画像認識の精度が高められる。判定部76は、より一層正確に、スカウト画像データ(第2のX線画像データ)の特定部分との一致点を検出することができる。
判定部76が機械学習された学習済みモデルである判定モデル210(図10参照)を用いる場合には、CT画像データ(第1のX線画像データ)とスカウト画像データ(第2のX線画像データ)との対応関係(たとえば同一性など)を学習した判定モデル210を用いることで、判定精度が高められる。すなわち、スカウト画像データと、スカウト画像データに対して位置づけされたCT画像データとが蓄積された情報が、教師データに含まれる。たとえば、投影画像データであるスカウト画像データ(第2のX線画像データ)が右の歯の情報も左の歯の情報も含む場合等であっても、CT画像データ(第1のX線画像データ)として左右いずれか一方の局所画像のデータを用いて学習した判定モデル210を用いることで、簡便かつ正確に、第3の領域のX線撮影のための位置決めをすることができる。例えば、2方向スカウト撮影のうちの1つのスカウト撮影において、頭部Bの側方からX線照射が行われた場合、このスカウト画像には歯列の右側と左側の両方が重なるように写り込み得る。その場合でも、歯列の左右の一方のCT画像データを第1のX線画像データとして用いて精度よく判定できるように、歯列の右側と左側の重なり具合が異なる多くのスカウト画像データを学習時に与えて、第3の領域のX線撮影のための位置決めを正確に行うことができる。
判定用画像データを生成する場合には、第2のX線画像データの個数と、判定用画像データの個数が等しくなっている。上記実施形態では、2つの第2のX線画像データに対し、2つの判定用画像データが用いられる(図15および図16参照)。すなわち、判定部76は、対象領域(第3の領域)を判定する際、第2のX線画像データの個数と等しい個数の判定用画像データ(又は未加工のX線画像データ)を用いて、X線画像データの比較を行ってもよい。比較に用いるX線画像データの個数を等しくすることにより、判定処理が容易になっている。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、ステップS06において、制御部78が、表示されている位置の承認または拒否を、表示部70aを介して術者に問うようにしてもよい。承認する場合は術者が承認の操作を行い、拒否の場合は術者が拒否の操作を行う。拒否の操作が行われた場合、判定部76が、次の候補位置を判定して提示してもよいし、手動操作による位置指定の受け付けを行ってもよい。
第2の画像データに対する一致点を検出するための判定用画像データは、第1の画像データをもとに、どのように生成されてもよい。パノラマスカウト画像データ等の第2の画像データの方向とは関係なく、判定用画像データが生成されてもよい。たとえば、第1の画像データに基づく判定用画像データの生成と判定とを、所定レベルの一致度(または類似度)が検出されるまで、複数回繰り返してもよい。すなわち、トライアンドエラーによって、第3の領域を判定するのに十分な判定用画像データを得てもよい。所定の回数だけ判定用画像データの生成および判定を繰り返して、第3の領域の判定が成功しない場合、または、所定時間が経過しても第3の領域の判定が成功しない場合に、ステップS10のような指定位置の手動による受付けを実行してもよい。
過去に撮影された領域の少なくとも一部を含む第2の領域が、パノラマスカウト撮影され、第2のX線画像データとして、そのパノラマスカウト画像データが用いられてもよい。たとえば、パノラマスカウト画像データと、標準的な歯列弓のXY曲線とを用い、第1のX線画像データ中のパノラマ断層面に該当する面のデータを平面投影したX線画像を再構成するなどにより、第1のX線画像データとの画像認識および比較が可能である。歯列の一部がCT撮影される限り、パノラマ画像が全顎パノラマ画像であるなら、そのいずれかの領域に第1のX線画像データの少なくとも一部が当てはまる。CT画像データをパノラマの断層面に沿うようにスライスするか、またはレイサム処理することにより、一致または類似する箇所を見出せる。また、過去に撮影された領域よりも広く、かつその領域を含む第2の領域が、セファロ撮影され、第2のX線画像データとして、セファロ画像データが用いられてもよい。現実の歯科診療では、初診時にまずパノラマ撮影が行われる場合が多い。よって、第1のX線画像データとしてCT画像データが保存されているとき、既にパノラマ画像データが保存されている場合も多いと考えられる。この場合は、保存されているパノラマ画像データを第2のX線画像データとして呼び出して利用することができる。
第2の領域のX線撮影としてCT撮影が行われ、スカウト画像データ(第2のX線画像データ)として、CT画像のX線画像データが用いられてもよい。この場合、第2の領域のX線撮影としてのCT撮影を低X線量で実施し、受光画素のビニングなどでノイズを低減させることが好ましい。生成されたボリュームデータを任意の断面でスライスしてCTの断層面画像を表示し、この断層面画像に対する位置指定によって、位置付け(スカウト)が行われ得る。第1のX線画像データも過去に得られたCT画像データである場合、位置付け(スカウト)時の断面の角度および/または位置などから、第1の画像データの断層面の設定などを行うことが可能である。また、例えば、既に局所領域のCT画像のX線画像データが保存されていて、別途頭部の広い領域のCT撮影を当該広い領域の観察のために行った場合など、局所領域のCT画像データと、広い領域のCT画像データが得られている。ここで、局所領域のCT画像データと同じ箇所をより高精細にCT撮影したい場合がある。この場合、局所領域のCT画像データを第1のX線画像データとし、広い領域のCT画像データを第2のX線画像データとして利用することが考えられる。判定モデル210に入力するCT画像データのうち、第1のX線画像データおよび第2のX線画像データの両方が、3次元ボリュームデータであってもよい。この場合、第2のX線画像データの3次元ボリュームデータ中の第1のX線画像データの3次元ボリュームデータの場所を見出す処理が実行される。必ずしも、広狭の関係を前提とする必要はない。第1のX線画像データに係る第1の領域の少なくとも一部を第2のX線画像データに係る第2の領域が含んでいればよい。第2の領域が、第1の領域より小さくてもよい。
過去に撮影された第1のX線画像データは、CT画像データに限られない。たとえば、トモシンセシス画像データ等が第1のX線画像データとして用いられてもよい。
ここで、トモシンセシス画像データについて説明する。トモシンセシス画像データは、トモシンセシス撮影によって得られる画像データである。図17は、Z軸方向から見た、トモシンセシス撮影を説明するための概念図である。トモシンセシス撮影では、図17に示されるように、実線で示す撮影開始位置から、点線で示す中間位置を経て2点鎖線で示す撮影終了位置まで、旋回アーム12を旋回させ、被写体A中の観察対象である目的層TLにX線コーンビームCBを照射する。そして、X線コーンビームCBの照射中心軸(X線軸CTB)の旋回軸線RCT周りの振り角SWAが30度以上180度未満となるように、X線発生器21及びX線検出器31を旋回させつつ、被写体AにX線コーンビームCBを照射することで、所定のフレームレートでX線投影画像が収集される。振り角SWAは旋回アーム12の振り角でもある。図示の実施例では旋回軸線RCTは目的層TLの中央に置かれている。
トモシンセシス撮影では、生成するトモシンセシス画像を観察する視線方向に相当する方向が、振り角中心方向として定められる。図17に示す例では、振り角SWAの中心を通る振り角中心方向CTDを、点線で示す中間位置において設定する。撮影開始位置から中間位置までの振り角を振り角HA1とし、中間位置から撮影終了位置までの振り角を振り角HA2とすると、振り角HA1とHA2とはいずれも振り角SWAを二分する角度である。振り角中心方向CTDは中間位置におけるX線軸CTBの軸方向と一致する。
第1の部分を複数の方向からX線撮影して得た画像データが、第1のX線画像データとして用いられ得る。複数の方向は多方向でよい。複数の方向からX線撮影して得た画像データの例として、トモシンセシス画像データやCT画像データが挙げられる。CT画像データは第1の部分を多方向からX線撮影して得たものであってよい。トモシンセシス画像データは第1の部分をいくつかの方向からX線撮影して得たものであってもよいし、多方向からX線撮影して得たものであってよい。
2方向スカウト画像などのスカウト画像データが、第1のX線画像データとして用いられてもよい。この場合のスカウト画像データでは、図15に示される2方向スカウト画像データC1、C2のように、枠線F1,F2またはその位置情報が、関心領域として、ペアとなって保存されている。新たな2方向スカウト撮影が、保存されている2方向スカウト画像データが取得された方向と同じ方向から行われれば、判定部76は、枠線F1,F2内のX線画像データを認識し、新たな2方向スカウト撮影で得られた2方向スカウト画像のX線画像データ(第2のX線画像データ)中のどこに一致または類似する箇所があるか見出す処理を行う。
判定部76は、第1の領域と第3の領域とに基づいて、頭部Bの第1の部分の位置または向きの変化を算出してもよい。これにより、過去の撮影時に対する変化(ずれ等)が算出される。よって、その変化を提示したり、その変化に基づいて第3の領域のX線画像(第3のX線画像)を補正したりすることができる。
判定部76は、第1のX線画像データと第2のX線画像データに基づいて頭部Bの第1の部分の位置または向きの変化を算出してもよい。例えば、第1領域X線画像データがCT撮影で得られた画像データであって、座標情報または方位の情報が付されたものであった場合を想定する。この第1領域X線画像データが処理されて、一旦X線画像データとして表示部50aに特定の断層面でスライスした断層面画像として表示されて記憶部52に格納されていたものとする。さらに、2方向スカウト撮影で得た画像データを用いて第2のX線画像データを得るとき、被写体Aが第1領域X線画像データを取得したときと異なる方向を向いて位置付けされたとする。判定部76は、第2のX線画像データにおける第1の領域の位置判定より、座標情報または方位の情報を参照して第1の部分の向きの変化を検出できる。この上でX線撮影装置1は第3の領域のCT撮影を行い、第3の領域のX線CT画像を生成する。この生成したX線CT画像を表示部50aに表示するに際して、記憶部52に格納されている断層面画像と同じ位置でスライスした画像としてデフォルト表示することができる。すなわち、第1のX線画像データと第2のX線画像データに基づいて、頭部の第1の部分の向きの変化を算出し、第3の領域のX線撮影で得たX線画像データを処理してX線画像として表示部50aに表示する際に、算出した向きの変化に基づいてX線画像を生成することができる。
判定部76が、第1のX線画像データと第2のX線画像データに基づいて頭部Bの第1の部分の位置または向きの変化を算出して、別の利用をすることもできる。例えば、第1領域X線画像データがトモシンセシス撮影で得られた画像データであって、座標情報または方位の情報が付されたものであった場合を想定する。この第1領域X線画像データが記憶部52に格納されていたものとする。さらに、2方向スカウト撮影で得た画像データを用いて第2のX線画像データを得るとき、被写体Aが第1領域X線画像データを取得したときと異なる方向を向いて位置付けがなされたとする。判定部76は、第2のX線画像データにおける第1の領域の位置判定より、座標情報または方位の情報を参照して第1の部分の向きの変化を検出できる。この上でX線撮影装置1が第3の領域のトモシンセシス撮影を行う場合に、そのトモシンセシス撮影に際し、同じ向きの目的層を撮影するように、水平移動駆動部18と旋回駆動部19の駆動制御を行うことができる。こうしてX線発生器21とX線検出器31の移動の軌道を設定することができる。すなわち、第1のX線画像データと第2のX線画像データに基づいて、頭部の第1の部分の向きの変化を算出し、第3の領域のX線撮影におけるX線発生器21とX線検出器31の移動の軌道を設定することができる。
第1のX線撮影と第2のX線撮影がいずれもX線発生器21とX線検出器31の旋回を使って行うものである場合、第1のX線撮影と第2のX線撮影における旋回軸線RCTの軸方向を平行な方向に設定すること(同一の箇所に設定する場合を含む)で、第3の領域の判定の負担を軽減できる場合がある。
第1のX線撮影と第3のX線撮影がいずれもX線発生器21とX線検出器31の旋回を使って行うものである場合(第1のX線撮影と第2のX線撮影がいずれもX線発生器21とX線検出器31の旋回を使って旋回軸線RCTを平行な方向に設定して行うものである場合であってもよい)、第1のX線撮影と第3のX線撮影における旋回軸線RCTの軸方向を平行な方向に設定すること(同一の箇所に設定する場合を含む)で、第3の領域の撮影の設定の負担を軽減できる場合がある。なお、同じ領域を第1の撮影と同じように撮影するという場合は、再現の負担の軽減と考えてもよい。
第2のX線撮影と第3のX線撮影がいずれもX線発生器21とX線検出器31の旋回を使って行うものである場合(第1のX線撮影と第2のX線撮影がいずれもX線発生器21とX線検出器31の旋回を使って旋回軸線RCTを平行な方向に設定して行うものである場合であってもよい)、第2のX線撮影と第3のX線撮影における旋回軸線RCTの軸方向を平行な方向に設定すること(同一の箇所に設定する場合を含む)で、第3の領域の撮影の設定の負担を軽減できる場合がある。
X線撮影装置1において、セファロ撮影を行う第2撮影部100が省略されてもよい。