JP5681031B2 - ヘテロ接合バイポーラトランジスタ - Google Patents

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Description

本発明は、InP基板上に形成され、GaAsSb系材料をベース層に用いるヘテロ接合バイポーラトランジスタに関するものである。
近年、通信のさらなる高速化、大容量化に対する要求が高まっている。このため、40Gbit/s以上の大容量光通信システムや、テラヘルツ帯無線通信システムに用いられる集積回路を構成するヘテロ接合バイポーラトランジスタ(Heterojunction Bipolar Transistor:HBT)の性能向上が求められている。このHBTには、通常、高い遮断周波数(電流利得帯域幅)、最大発振周波数(電力利得帯域幅)のほか、高いオフ耐圧特性が求められる。
このHBTは、通常、基板上に、InGaAs、InAlAs、GaAsSb、InGaAsSb、AlGaAsSb、InP、InAlP、InGaPなどの材料による層により構成されている。これらの各層は、有機金属化学気相成長法(MOVPE)や分子線エピタキシャル成長法(MBE)などの手法により形成する。
この中でも、ベース層材料として、GaAsSb、InGaAsSb、AlGaAsSbなどのGa,As,およびSbから構成された化合物半導体を用いたHBTが注目されている。例えば、GaAsSbは、InP基板に対して、GaAs0.51Sb0.49において格子整合する。
このベース層材料を用いたInP/GaAsSb/InP系HBTは、ヘテロ接合においてtype−II型のバンド構造を利用できるため、次に述べるように優れた高周波特性、高耐圧特性を同時に実現することが可能である(非特許文献1参照)。
例えば、InP/GaAsSb/InP系HBTでは、ベース層材料であるGaAsSb系材料の伝導帯端のエネルギー準位が、コレクタ層材料であるInPの伝導帯端のエネルギー準位よりも高い。このため、コレクタ層に電子を高速に射出するランチャーとして、ベース層を作用させることができるという利点がある。
また、HBTのオフ耐圧は、コレクタ層の逆方向降伏電圧で決まるため、コレクタ層のバンドギャップが大きいHBTほど降伏現象が起こりにくく、高い耐圧特性が得られる。このため、InP系HBTでは、InGaAsよりもバンドギャップの大きいInPをコレクタ層に用いることが本来望ましい。
従来のInP系HBTではInGaAsをベース層に用いることが多いが、この場合、InPをコレクタ層に用いるとベース層とコレクタ層の界面に障壁が形成され、いわゆる電流ブロッキング効果により高速性を損ねてしまう。このため、InGaAsなど、ベース層とコレクタ層に障壁を生じない材料をコレクタ層として用いる必要があり、耐圧が犠牲となっていた。一方、GaAsSbをベース層に用いたHBTでは、上述のようにベース層とコレクタ層界面での電流ブロッキングを解消できるため、高周波特性を妨げることなく、降伏電圧の高いInPをコレクタ層材料として用いて高耐圧特性を得ることが可能となる。
M. W. Dvorak et al. , "300 GHz InP/GaAsSb/InP Double HBTs with High Current Capability and BVCEO>6V",Ieee Electron Device Letters, vol.22, no.8, pp.361-363,2001.
しかし、上記のような特性を有するものの、GaAsSbをベース層に用いたHBTのオフ耐圧は、いくつかの用途に対してはまだ十分なオフ耐圧特性が得られておらず、高い高周波特性を維持したまま、さらなるオフ耐圧の向上が求められている。一般的に、HBTのオフ耐圧をさらに向上させるためには、HBTのコレクタ層をより厚く形成するものとなる。しかし、不用意にHBTのコレクタ層を厚くすると、少数キャリアがコレクタ層を走行する時間が長くなり、この結果、遮断周波数、最大発振周波数ともに低下を招く要因となりうる。
通常、InP基板上に形成されるHBTのオフ耐圧は、ベース層の価電子帯からコレクタ層の伝導帯への電子のツェナー・トンネリング効果によって制限される。従って、電子のツェナー・トンネリング確率(以下、単にトンネリング確率と呼ぶ)を下げ、トンネリング電流を小さくすることで、HBTのオフ耐圧の向上が望める。
電子がトンネリングする層のエネルギー障壁、すなわちベース層とコレクタ層の界面におけるベース層の価電子帯エネルギー準位とコレクタ層の伝導帯エネルギー準位とのエネルギー差が大きいほど電子のトンネリング確率は小さくなる。あるいはトンネリングする層が厚いほど、電子のトンネリング距離が長くなるため、トンネリング確率が小さくなる。またあるいは、トンネリングする層におけるトンネリングするキャリアの有効質量が大きいほど、トンネリング確率は小さくなり、従ってトンネリング電流が小さくなりオフ耐圧の改善が見込める。
例えば、GaAsSbをベース層に用いたHBTのコレクタ層に、InAlGaPやInAlGaAsといった材料を適用することが考えられる。これらの材料を用いることでコレクタ層のバンドギャップエネルギーをInPよりも大きくし、伝導帯エネルギー準位を高くすれば、電子がトンネリングする層のエネルギー障壁が大きくなり、またトンネリング距離も長くなるため、オフ耐圧を向上することができる。このとき、コレクタ層の材料の混晶組成は、GaAsSbとtype−II型のバンドラインナップを構成するように設計する必要がある。
しかし、InAlGaPは、InPよりも格子定数が大きい故に、InP基板上に形成される場合、擬似格子整合の状態にある。従って、InAlGaPは、格子歪み量により制限される臨界膜厚により、設定できるAl組成およびGa組成が制限される。このため、Al組成およびGa組成をむやみに増加させることができず、バンドギャップエネルギーを任意に変化させることができない。
一方、InAlGaAsは、InPに格子整合した状態でバンドギャップエネルギーを大きくすることができるが、上記の効果を得るには、少なくともAl組成を0.25以上に設定することになり、意図しない効果として、ベース・コレクタ間におけるリーク電流を増加させてしまう可能性がある。この場合、所望の特性が得られないばかりか、逆にオフ耐圧特性を劣化させてしまう可能性がある。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、GaAsSb系の化合物半導体のベース層を有するInP系HBTにおいて、高周波特性を犠牲にすることなく、さらにオフ耐圧を向上させることを目的とする。
本発明に係るヘテロ接合バイポーラトランジスタは、InPからなる基板と、基板の上に形成された第1コレクタ層と、第1コレクタ層の上に形成された第2コレクタ層と、第2コレクタ層の上に形成されてInGaAsSb,AlGaAsSb,InAlGaAsSbのなかより選択された化合物半導体からなるベース層と、ベース層の上に形成されてInおよびPから構成された化合物半導体からなるエミッタ層とを少なくとも備え、第2コレクタ層は、ベース層の伝導帯端のエネルギー準位よりも低く、第1コレクタ層の伝導帯端よりも高い伝導帯端のエネルギー準位を有し、ベース層の価電子帯端のエネルギー準位よりも低い価電子帯端のエネルギー準位を有して形成されている。
上記ヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、第1コレクタ層は、InP、InPに擬似格子整合するInAlP,InGaP,InAlGaP,InAlAs,InGaAs,InAlGaAs,InAlAsP,InAlGaAsPの中より選択された化合物半導体から構成されていればよい。
上記ヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、第2コレクタ層は、InPに擬似格子整合するInAlP,InGaP,InAlGaPの中より選択された化合物半導体から構成されていればよい。また、第2コレクタ層は、InPに擬似格子整合するInAlAs,InGaAs,InAlGaAs,InAlAsP,InAlGaAsPの中より選択された化合物半導体から構成されていてもよい。なお、第2コレクタ層は、第2コレクタ層を構成する材料のInPに対する臨界膜厚以下の範囲で厚さが0.25nm以上とされているとよい。
以上説明したように、本発明によれば、ベース層の伝導帯端のエネルギー準位よりも低く、第1コレクタ層の伝導帯端よりも高い伝導帯端のエネルギー準位を有し、ベース層の価電子帯端のエネルギー準位よりも低い価電子帯端のエネルギー準位を有して形成された第2コレクタ層を設けるようにしたので、GaAsSb系の化合物半導体のベース層を有するInP系HBTにおいて、高周波特性を犠牲にすることなく、さらにオフ耐圧を向上させることができるという優れた効果が得られる。
図1は、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの構成を示す構成図である。 図2は、InPからなるコレクタ層201と、GaAsSbからなるベース層202と、InPからなるエミッタ層203を備える通常のHBTの、デバイス動作時のエネルギーバンドの一例を示すバンド図である。 図3は、実施の形態1におけるHBTのデバイス動作時のエネルギーバンドの状態を示すバンド図である。 図4は、より薄い第2コレクタ層103を用いて構成したHBTの、デバイス動作時のエネルギーバンドを示すバンド図である。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)の構成を示す構成図である。図1では、断面を模式的に示している。
このHBTは、InPからなる基板101と、基板101の上に形成された第1コレクタ層102と、第1コレクタ層102の上に形成された第2コレクタ層103と、第2コレクタ層103の上に形成されてGa,As,およびSbから構成された化合物半導体からなるベース層104と、ベース層104の上に形成されてInおよびPから構成された化合物半導体からなるエミッタ層105とを少なくとも備える。
ここで、第2コレクタ層103は、第1コレクタ層102およびベース層104に接した状態で、ベース層104の伝導帯端のエネルギー準位よりも低く、第1コレクタ層102の伝導帯端よりも高い伝導帯端のエネルギー準位を有し、ベース層104の価電子帯端のエネルギー準位よりも低い価電子帯端のエネルギー準位を有したものとなっている。
なお、例えば、基板101は、Feをドープすることで高抵抗とされたInPから構成され、InPの(001)面を主表面としていればよい。また、基板101の上には、InPからなるバッファ層111,n型の不純物が高濃度に導入されたInPからなるサブコレクタ層112、n型の不純物が高濃度に導入されたIn0.53Ga0.47Asからなるサブコレクタ層113,n型の不純物が高濃度に導入されたInPからなるサブコレクタ層114が積層されている。
これらを積層した上に第1コレクタ層102が形成されている。第1コレクタ層102は、例えば、n型の不純物が低濃度に導入されたInPから構成され、層厚150nm程度とされている。また、第2コレクタ層103は、例えば、n型の不純物が低濃度に導入されたIn0.95Al0.05Pから構成され、層厚50nm程度とされている。また、ベース層104は、例えば、p型の不純物が高濃度に導入されたGaAs0.51Sb0.49から構成され、層厚30nm程度とされている。GaAs0.51Sb0.49は、InPに格子整合する組成である。
また、エミッタ層105は、n型の不純物が低濃度に導入されたInPから構成され、層厚70nm程度とされている。
また、エミッタ層105の上には、不純物が高濃度に導入されたInPからなるエミッタキャップ層115,不純物が高濃度に導入されたIn0.53Ga0.47Asからなるエミッタキャップ層116を備えている。
また、サブコレクタ層113の上には、コレクタ電極121が形成されている。コレクタ電極121は、サブコレクタ層114と離間して形成されている。また、ベース層104の上には、ベース電極122が形成されている。ベース電極122は、エミッタ層105から離間して形成されている。また、エミッタキャップ層116の上には、エミッタ電極123が形成されている。
上述した化合物半導体による各層は、よく知られた有機金属化学気相成長法(MOVPE)または分子線エピタキシャル成長法(MBE)などの堆積法で、エピタキシャル成長させることで形成できる。また、コレクタメサおよびエミッタメサは、公知のリソグラフィー技術およびエッチング技術によりパターニングすることで形成すればよい。また、各電極は、例えば、公知の蒸着法およびリフトオフ法などにより形成することができる。なお、上述した本実施の形態におけるHBTの詳細については、説明に支障のない範囲で省略している。また、ドーパント、各層の構成材料、各層の組成については上記記述に限定されることなく、所定の素子動作を実現できるものであれば、他の材料を用いてもかまわない。
上述した本実施の形態におけるHBTによれば、ベース層104から第2コレクタ層103にかけての伝導帯端におけるエネルギー準位が、第2コレクタ層103を設けない場合に比較して高くなる。従って、ベース層104の価電子帯に存在する電子に対するエネルギー障壁の高さが、第2コレクタ層103を設けない場合に比較して高くなる。この結果、電子のツェナー・トンネリング確率が低下し、HBTのオフ耐圧の向上が望めるようになる。
以下、より詳細に説明する。まず、第2コレクタ層を設けない通常のHBTの場合について図2を用いて説明する。図2は、InPからなるコレクタ層201と、GaAsSbからなるベース層202と、InPからなるエミッタ層203を備える通常のHBTの、デバイス動作時のエネルギーバンドの一例を示すバンド図である。図2において、HBTのツェナー・トンネリング効果は、図2の矢印231で示すような、ベース層202の価電子帯からコレクタ層201の伝導帯への電子のトンネリングによって引き起こされる。矢印231のトンネリング距離が短いと、トンネリング確率が増大し、オフ耐圧が低下する。
また、価電子帯に存在する電子に対するエネルギー障壁高さ、すなわちベース層とコレクタ層の界面におけるベース層の価電子帯エネルギー準位とコレクタ層の伝導帯エネルギー準位とのエネルギー差が小さいほど、トンネリング確率が増大し、オフ耐圧が低下する。さらに、電子がトンネリングする矢印の領域における電子の有効質量が小さいと、トンネリング確率が増大しオフ耐圧が低下する。
次に、本実施の形態におけるHBTの場合について説明する。図3は、上述した実施の形態1におけるHBTのデバイス動作時のエネルギーバンドの状態を示すバンド図である。第2コレクタ層103は、第1コレクタ層102を構成するInPに比べてバンドギャップエネルギーが大きく、また伝導帯のエネルギー準位も高い。このため、価電子帯に存在する電子に対して、エネルギー障壁の高さが、単純にInPコレクタを用いる場合に比べて高くなり、トンネリング確率が減少する。
また、第2コレクタ層103を、第1コレクタ層102とベース層104との間に挿入することで、ベース層104の価電子帯から伝導帯への電子のトンネリング距離が、矢印131で示されるように長くなる。この効果も加わり、第2コレクタ層103の挿入により、トンネリング確率が減少し、オフ耐圧の改善効果が見込める。
また、InAlPから第2コレクタ層103を構成しているので、ベース層104の価電子帯から伝導帯へ電子がトンネリングする際、通過する第2コレクタ層103における電子の有効質量が、図2の構造と比較して大きくなる。有効質量が大きいほど、電子のトンネリング確率は減少する。この観点からも、本実施の形態におけるHBTは、オフ耐圧の改善効果が見込める。
次に、第2コレクタ層103をより薄くした場合について図4を用いて説明する。図4は、図3を用いて説明した例に比較して、より薄い第2コレクタ層103を用いて構成したHBTの、デバイス動作時のエネルギーバンドを示すバンド図である。第2コレクタ層103が薄くなると、ベース層104の価電子帯の電子がトンネリングした際、矢印141で示すように、第2コレクタ層103を通り越して第1コレクタ層102の伝導帯にトンネリングするようになる。
従ってこの場合、図3を用いて説明したような、第2コレクタ層103の挿入で伝導帯のエネルギー準位が第1コレクタ層102であるInPと比較して高くなったことによる、電子のトンネリング距離の増大の効果は小さくなる。しかしこの場合でも、第2コレクタ層103は、第1コレクタ層102を構成するInPに比べてバンドギャップエネルギーが大きく、また伝導帯のエネルギー準位も高い。このため、価電子帯に存在する電子に対して、エネルギー障壁の高さが、単純にInPコレクタを用いる場合に比べて高くなり、トンネリング確率が減少する。
加えて、第2コレクタ層103を、InAlP,InGaP,InAlGaPなどから構成すれば、電子がトンネリングにより通過する層における電子の有効質量は増大するため、電子のトンネリング確率は低減する。従って、第2コレクタ層103を薄くして図4のようなバンド構造となっても、オフ耐圧の改善効果を得ることができる。
ここで、第2コレクタ層103は、原理的には第2コレクタ層103が半導体としての特性が十分得られることができる厚さがあれば、本発明におけるオフ耐圧の改善効果は得ることができる。第2コレクタ層103は、最低でもおよそ分子一層分に相当する0.25nm以上あれば、本発明のオフ耐圧改善効果を得ることができる。
ただし、第2コレクタ層103は、InPからなる第1コレクタ層102に接して形成する場合における臨界膜厚以下とすることが重要となる。第2コレクタ層103は、上述したバンド構造とするために、第1コレクタ層102とは異なる材料から構成することになり、InPに擬似格子整合する材料を用いることになる。このため、第2コレクタ層103には格子歪みが伴うことになる。このような格子歪みを伴う材料は、臨界膜厚を超えた厚さとすると、格子歪みの緩和により結晶欠陥が導入され、所望の特性が得られなくなると考えられる。このため、第2コレクタ層103は、第2コレクタ層103を構成する材料のInPに対する臨界膜厚以下の範囲に形成することが重要となる。
ところで、前述したように、トンネリングする層のキャリアの有効質量が大きいほど、キャリアのトンネリング確率は小さくなる。しかし一般に、キャリアの有効質量が大きいほど、コレクタ層の伝導帯を走行するキャリアの輸送特性が損なわれ、高周波特性が阻害されることが考えられる。このため、本発明では、第2コレクタ層をコレクタ層全域とするのではなく、電子のトンネリングが起こりうるごく限られた領域だけに、臨界膜厚以下の厚さにおいて第2コレクタ層を挿入している。従って、コレクタ層全域に第2コレクタ層材料を適用する場合に比べ高周波特性を大きく損なうことはなく、高耐圧特性を有するHBTを提供することができる。
また、第1コレクタ層を構成するInPと比較して、電子の有効質量が高い材料から第2コレクタ層を構成する場合、第2コレクタ層は厚く形成するほど電子のトンネリング確率が減少し、オフ耐圧の改善効果は高くなることが、原理的には予想される。しかし一般に、キャリアの有効質量が大きいほど、コレクタ層の伝導帯を走行するキャリアの輸送特性が損なわれ、高周波特性が阻害されることが考えられる。これに対し、本発明では、第2コレクタ層を、コレクタ層全域ではなく電子のトンネリングが起こりうるごく限られた領域だけに、臨界膜厚以下の厚さとして挿入している。このため、コレクタ層全域に第2コレクタ層材料を適用する場合に比べ高周波特性を大きく損なうことはなく、高耐圧特性を有するHBTを提供することができる。
以上に説明した本発明は、トンネリング電流が制限されるのは、コレクタ層全体の厚さではなく、電子のトンネリングが起こりうる領域のエネルギー障壁高さ、トンネリングする層の厚さ、および電子のトンネリングが起こりうる領域での電子の有効質量であることに注目したことにより、初めて成し得たものである。これらの、発明者らの鋭意検討の結果、ベース層およびコレクタ層における電子がトンネリングする領域にのみ、InPに比べて大きなバンドギャップエネルギーを有する材料から構成した第2コレクタ層を挿入するという、特徴的な構成を発明するに至った。
上述した本発明によれば、ベース層からコレクタ層への電子のトンネリング確率が減少するので、GaAsSb系の化合物半導体のベース層を有するInP系HBTにおいて、高周波特性を大きく損なうことなく、高耐圧特性が得られるようになる。
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
例えば、ベース層としてAlGaAsSbまたはInAlGaAsSbを適用することも可能である。AlGaAsSbまたはInAlGaAsSbをベース層として適用することで、ベース層の伝導帯のエネルギー準位を、GaAsSbをベース層として適用する場合よりも高くすることができる。
例えば、InPに擬似格子整合するInAlPの伝導帯エネルギー準位は、Al組成約0.1においてGaAsSbの伝導帯エネルギー準位と一致する。このため通常、GaAsSbをベース層に適用する場合、HBTの動作帯域を損なわないためには、第2コレクタ層のAl組成は、約0.1以下に設定することになる。
これに対し、AlGaAsSbまたはInAlGaAsSbをベース層に適用すれば、このような問題は解消され、第2コレクタ層として用いるInAlPのAl組成を、約0.1以上に設定することが可能となり、高周波特性と高耐圧特性を両立させたHBTを提供することができる。
同様に、InPに擬似格子整合するInGaPのエネルギー準位は、Ga組成0.3以下においてGaAsSbの伝導帯エネルギー準位と一致するため、通常GaAsSbをベース層に用いた場合、第2コレクタ層のGa組成は、約0.3以下に設定することになる。
これに対し、AlGaAsSbまたはInAlGaAsSbをベース層に適用すれば、このような問題は解消され、高周波特性を損なわずに第2コレクタ層として用いるInGaPのGa組成を、約0.3以上に設定することが可能となり、高周波特性と高耐圧特性を両立させたHBTを提供することができる。また、第2コレクタ層の材料として、InAlGaP、InAlAs、InGaAs、InAlGaAs、InAlAsP、またInAlGaAsPを採用した場合においても、同様の効果を得ることができる。
また、AlGaAsSb、InGaAsSb、InAlGaAsSbをベース層として適用することで、ベース層の価電子帯のエネルギー準位を、GaAsSbをベース層として適用する場合よりも低くすることができる。このため、価電子帯の電子に対して、トンネリングするためのエネルギー障壁高さが高くなる。また、電子のトンネリングするための距離も長くなる。これにより、電子のトンネリング確率が減少するため、高周波特性と高耐圧特性を両立させたHBTを提供することができる。
また、第1のコレクタ層の材料は、InPに限るものではなく、InPに擬似格子整合するInAlP、InGaP、InAlGaP、InGaAsP、InAlAsP、InAlGaAsP、InAlAs、InGaAs、InAlGaAsのいずれかを採用することも可能である。
101…基板、102…第1コレクタ層、103…第2コレクタ層、104…ベース層、105…エミッタ層、111…バッファ層、112…サブコレクタ層、113…サブコレクタ層、114…サブコレクタ層、115…エミッタキャップ層、116…エミッタキャップ層、121…コレクタ電極、122…ベース電極、123…エミッタ電極。

Claims (5)

  1. InPからなる基板と、
    前記基板の上に形成された第1コレクタ層と、
    前記第1コレクタ層の上に形成された第2コレクタ層と、
    前記第2コレクタ層の上に形成されてInGaAsSb,AlGaAsSb,InAlGaAsSbのなかより選択された化合物半導体からなるベース層と、
    前記ベース層の上に形成されてInおよびPから構成された化合物半導体からなるエミッタ層と
    を少なくとも備え、
    前記第2コレクタ層は、前記ベース層の伝導帯端のエネルギー準位よりも低く、前記第1コレクタ層の伝導帯端よりも高い伝導帯端のエネルギー準位を有し、前記ベース層の価電子帯端のエネルギー準位よりも低い価電子帯端のエネルギー準位を有して形成されている
    ことを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
  2. 請求項1記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、
    前記第1コレクタ層は、InP、InPに擬似格子整合するInAlP,InGaP,InAlGaP,InAlAs,InGaAs,InAlGaAs,InAlAsP,InAlGaAsPのなかより選択された化合物半導体から構成されていることを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
  3. 請求項1または2記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、
    前記第2コレクタ層は、InPに擬似格子整合するInAlP,InGaP,InAlGaPのなかより選択された化合物半導体から構成されていることを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
  4. 請求項1または2記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、
    前記第2コレクタ層は、InPに擬似格子整合するInAlAs,InGaAs,InAlGaAs,InAlAsP,InAlGaAsPのなかより選択された化合物半導体から構成されていることを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、
    前記第2コレクタ層は、前記第2コレクタ層を構成する材料のInPに対する臨界膜厚以下の範囲で厚さが0.25nm以上とされていることを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
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