JP5678930B2 - ヘッドレスト - Google Patents

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Description

本発明は、ダイナミックダンパーのマス系として機能する質量体が内蔵されたヘッドレストに関する。
車両では、エンジンや車体から伝達された振動により、シートが揺れ動いて、乗員に不快感を与えることがある。そこで従来、特許文献1に見られるように、シートのクッション材の内部に質量体を設けるとともに、その質量体をダイナミックダンパーのマス系として機能させることで、シートの振動を減衰させるようにした車両用シートが提案されている。
図3は、上記文献に記載の車両用シートのシートバック(背もたれ)の断面構造を示している。同図に示すように、シートバックの骨格を構成するシートバックフレーム50と、そのシートバックフレーム50を包むクッション材51と、そのクッション材51を包む表皮材52とを備えている。クッション材51は、ポリウレタンフォームなどの発泡材により構成され、表皮材52は、布やビニール、合成皮革などにより構成されている。
また、シートバックフレーム50のシート後方には、鉛などの金属板からなる質量体53が、クッション材51により包まれた状態で設けられている。なお、質量体53は、インサート成型により、クッション材51と一体化されている。このときのクッション材51との馴染みを良くするため、質量体53の表面は、ソリッドウレタン54で被覆されている。
こうした車両用シートでは、質量体53がダイナミックダンパーのマス系として、クッション材51がダイナミックダンパーのバネ系としてそれぞれ機能して、シート全体の振動減衰効果を発揮する。ちなみに、特許文献2には、ダイナミックダンパーのマス系として機能する質量体を内蔵したヘッドレストが記載されている。
特開2001−161489号公報 特開2010−201848号公報
ここで、ヘッドレストのクッション材の内部に質量体を設けて、ダイナミックダンパーとして機能させる場合を考える。このとき、十分な振動減衰効果を得るには、シートが加振されたときの、クッション材の内部での質量体の可動性を十分に確保する必要がある。ところが、ヘッドレストのクッション材には、衝撃を吸収するため、一定の硬さが必要となる。そのため、クッション材の材質次第では、質量体の可動性を確保できず、振動の減衰効果を十分に得られなくなることがある。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、振動減衰効果をより確実に得ることのできるヘッドレストを提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係るヘッドレストは、ヘッドレストのクッション材の内部に質量体を設けるとともに、その質量体とクッション材との間に、同クッション材よりも軟質な材料からなる軟質層を設け、質量体は、周囲全体が軟質層によって覆われ、軟質層は、周囲全体が前記クッション材によって覆われるようにしている。
上記構成では、質量体の周囲全体が軟質の材料で覆われているため、クッション材が比較的硬い材料で形成されていても、ヘッドレストの内部での質量体の可動性が確保できる。したがって、振動減衰効果をより確実に得ることができる。また、軟質層に覆われた質量体の周囲全体をクッション材が覆うことによって、質量体をヘッドレスト内に配設することができる。
また、質量体が設けられるヘッドレストは、ヘッドレストスティを介してシートバックに取り付けるとよい。上記構成によれば、質量体が設けられるヘッドレストは、シートバックとは別体として構成される。こうしたヘッドレストがシートバックに取り付けられることによって、シートバック全体の共振周波数を低減することができる。
本発明の一実施形態に係るヘッドレストの部分断面構造及び同ヘッドレストが取付けられたシートバックの骨格構造を示す斜視図。 同実施形態におけるヘッドレストの側部断面構造を示す断面図。 従来のダイナミックダンパー機能を有する車両用シートのシートバックの側部断面構造を示す断面図。
以下、本発明のヘッドレストを具体化した一実施の形態を、図1及び図2を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態のヘッドレスト10には、左右2本のヘッドレストスティ11がその下方に突き出すように設けられている。そして、シートバックの骨格をなすシートバックフレーム12にヘッドレストスティ11を固定することで、ヘッドレスト10がシートに取り付けられている。
図2にヘッドレスト10の内部構造を示す。同図に示すように、ヘッドレスト10は、衝撃吸収用のクッション材13の表面を、布やビニール、合成皮革などからなる表皮材14により包むことで形成されている。クッション材13は、半硬質ウレタンフォームにより形成されている。なお、クッション材13には、ヘッドレストスティ11の上部がインサートされている。
また、クッション材13の内部には、鉛などの金属からなる質量体15が設けられている。このヘッドレスト10では、質量体15は、略直方体に形成されている。さらに、質量体15とクッション材13との間には、クッション材13を構成する半硬質ウレタンフォームよりも軟質な軟質ウレタンフォームからなる軟質層16が設けられている。そして、この軟質層16により、質量体15の周囲全体が覆われている。
こうしたヘッドレスト10は、以下の手順で製造されている。まず、中空箱形状に成形した軟質スラブウレタンフォームの内部に質量体15を収める。軟質スラブウレタンフォームの内部に収められた質量体15を、ヘッドレストスティ11の上部と共に、クッション材13の成形用の型に入れる。そして、半硬質ウレタンフォームの原液をその型内に注入して発泡させた後、型から取り出す。こうしてヘッドレストスティ11の上部、質量体15及び軟質層16が埋め込まれたクッション材13の表面を表皮材14で包むことで、ヘッドレスト10が製造されている。
次に、こうした本実施形態のヘッドレスト10の作用を説明する。
こうしたヘッドレスト10のヘッドレストスティ11とシートバックフレーム12との接合は、剛接合と見做すことができる。また、クッション材13は、軟質層16から見れば、剛体と見做せる。
一方、ヘッドレスト10に内蔵された質量体15は、クッション材13よりも柔らかい軟質層16によってその周囲が覆われている。そのため、こうしたヘッドレスト10は、質量体15は、クッション材13に対して、軟質層16を介して弾性支持されている。
したがって、エンジンのアイドル振動等による強制力がシートに入力されると、シートバックフレーム12、ヘッドレストスティ11及びクッション材13からなるシート本体に対して、質量体15が変位して、シート全体の振動を減衰させるダイナミックダンパーとして機能するようになる。また、こうしたダイナミックダンパーの作用により、シート全体の共振周波数が低下されるようになる。
ちなみに、エンジンや車体から入力される振動の周波数と、シートの共振周波数とが一致すると、シートが共振して、乗員に不快感を与える。そのため、軟質層16をバネ系とし、質量体15をマス系とするダイナミックダンパーとして機能させて、シート全体の共振周波数を下げることで、シートに入力される振動の周波数域に入らないようにシート全体の共振周波数を設定することができる。シート全体の共振周波数は、質量体15からなるマス系の質量と、軟質層16からなるバネ系のバネ定数によって決まる。よって、質量体15の質量と、軟質層16の厚さや硬さを調整することで、シート全体の共振周波数を適宜に設定することができる。
なお、シートに伝達される振動の方向毎に、周波数域が異なることがある。すなわち、シートに伝達されるシート前後方向、シート上下方向、シート左右方向の各振動の周波数域がそれぞれ違うことがある。こうした場合、質量体15のシート前後方向、シート上下方向、及びシート左右方向のそれぞれにおける軟質層16の厚さをそれぞれ変えることで、各方向の振動に対するシートの共振周波数を個別に設定することができる。また、質量体15の各方向における軟質層16の硬さを変えることでも、同様の個別設定が可能である。
以上説明した本実施形態のヘッドレストによれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では、ヘッドレスト10のクッション材13の内部に質量体15を設けるとともに、その質量体15とクッション材13との間に、クッション材13よりも軟質な材料からなる軟質層16を設けている。そのため、クッション材13に硬い材料が使用されていても、ヘッドレスト10の内部での質量体15の可動性を確保できる。したがって、本実施形態によれば、振動減衰効果をより確実に得ることができる。
(2)質量体15の弾性支持をバネにより行う場合、バネ及びそのバネが取り付けられるフレームが必要となる。また、シート前後方向、シート上下方向、シート左右方向の振動に対する減衰効果を得るには、バネ及びフレームが各方向にそれぞれ個別に必要となる。その点、上記構成では、質量体15を軟質層16で包むだけでダイナミックダンパーを構成できるため、部品点数を削減して構成の複雑化を避けることができる。また、ダイナミックダンパーの収容スペースを小さくし、ヘッドレスト10の大型化を避けることもできる。
(3)軟質層16の厚さ、硬さを部位毎に異ならせるだけで、各方向の振動に対するシートの共振周波数を個別に設定することができる。
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・上記実施形態では、質量体15の材料として、鉛などの金属を用いていたが、ダイナミックダンパーのマス系とて十分な質量を確保できるのであれば、金属以外の材料で質量体15を形成するようにしても良い。
・上記実施形態では、質量体15を略直方体に形成していたが、それ以外の形状としても良い。
・上記実施形態では、ヘッドレスト10のクッション材13を半硬質ウレタンフォームで、軟質層16を軟質ウレタンフォームでそれぞれ形成していたが、それらを他の材料で形成しても良い。いずれにせよ、ヘッドレスト10のクッション材13よりも軟質な材料で形成された軟質層16により、質量体15を覆うようにすれば、ヘッドレスト10の内部での質量体15の可動性を確保して、振動減衰効果をより確実に得ることが可能となる。
・上記実施形態では、質量体15の周囲全体を軟質層16で覆うようにしていたが、質量体15の周囲を部分的に覆うようにしても良い。例えばシート左右方向の振動については、質量体15及び軟質層16をダイナミックダンパーとして機能させなくても、問題がないのであれば、質量体15のシート左右方向以外の周囲のみを軟質層16で覆うだけでも、シート全体の振動を好適に抑えることができる。
10…ヘッドレスト、11…ヘッドレストスティ、12…シートバックフレーム、13…クッション材、14…表皮材、15…質量体、16…軟質層、50…シートバックフレーム、51…クッション材、52…表皮材、53…質量体、54…ソリッドウレタン。

Claims (2)

  1. ヘッドレストのクッション材の内部に質量体を設けるとともに、その質量体と前記クッション材との間に、同クッション材よりも軟質な材料からなる軟質層を設け
    前記質量体は、周囲全体が前記軟質層によって覆われ、
    前記軟質層は、周囲全体が前記クッション材によって覆われるようにした
    ことを特徴とするヘッドレスト。
  2. ヘッドレストスティを介してシートバックに取り付けられる
    請求項1に記載のヘッドレスト。
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