患者に輸液や輸血を行ったり、手術において体外血液循環を行ったりする場合に、薬液や血液などの液状物を輸送するための経路(輸送ライン)を形成する必要がある。輸送ラインは、一般に、容器や各種器具、チューブなどを接続することによって形成される。異なる部材を接続するためにコネクタが使用される。
このようなコネクタとして、外周面がテーパ面である雄ルアーと、内周面がテーパ面である雌ルアーとからなり、雄ルアーを雌ルアーに挿入して両者のテーパ面を密着させるコネクタが知られている。一般に、このようなコネクタは「スリップ型」コネクタと呼ばれ、その接続方式は「スリップ接続」と呼ばれる。ISO594−1では、スリップ型コネクタを構成する雄ルアー及び雌ルアーの各テーパ面の形状が規定されている。
スリップ型コネクタを構成する雄ルアーと雌ルアーとを更にネジ接続で固定することにより、両者をより強固且つ確実に接続する「ネジロック型」コネクタが知られている。ネジロック型コネクタでは、略円筒形状のロックナットが雄ルアーの回りに回転可能に設けられる。ロックナットの内周面には雌ネジが形成されている。一方、雌ルアーの外周面には雄ネジが形成されている。スリップ型コネクタと同様に雄ルアーを雌ルアーに挿入して両者のテーパ面を密着させ、更に、ロックナットを回転させてロックナットの雌ネジと雌ルアーの雄ネジをと螺合させる。その結果、スリップ型コネクタに比べて、雄ルアーのテーパ面と雌ルアーのテーパ面との密着度が高まり、また、雄ルアーと雌ルアーとが意図せずに分離する可能性が低減する。ネジロック型コネクタによる接続方式は一般に「ネジロック接続」と呼ばれる。ISO594−2では、ロックナットに形成される雌ネジの形状や、雄ルアーの先端と雌ネジとの相対的位置関係の許容範囲、雌ルアーに形成される雄ネジの形状等が規定されている。
一方、特許文献1には、図19A、図19Bに示すように、中央部に直線状のスリット(切り込み)811が形成されたゴム等の弾性部材からなる円板状の隔壁部材(以下、「セプタム」という)810を備えたニードルレスポート800が記載されている。セプタム810は、ポート本体801とキャップ805とに挟持され固定されている。スリット811はキャップ805の中央の開口内に露出している。ポート801の下端には柔軟なチューブ809が接続されている。ニードルレスポート800の外周面は円筒面であり、この外周面には、周方向に延びた突起である一対の係合突起807が形成されている。セプタム810のスリット811に硬質材料からなる管状体(図示せず)を挿入すれば、ニードルレスポート800と管状体とを連通させることができる。ニードルレスポート800から管状体を抜き去るとセプタム810のスリット811は直ちに閉じる。このようにセプタム810はリシール性を有し、管状体を繰り返し抜き差しすることができる。
特許文献1には、更に、セプタム810のスリット811に挿入される管状体の回りに回転可能に設けられた回転ロックナットが記載されている。回転ロックナットには、ニードルレスポート800の一対の係合突起807と係合可能な一対の係合爪が形成されている。管状体をセプタム810のスリット811に挿入した後、回転ロックナットを回転させて一対の係合爪を一対の係合突起807に係合させることにより、管状体とニードルレスポート800とを強固且つ確実に接続することができる。このように回転ロックナットを回転させて、回転ロックナットに形成された一対の係合爪をニードルレスポート800の一対の係合突起807に係合させるコネクタを本発明では「爪ロック型」コネクタと呼び、その接続方式を「爪ロック接続」と呼ぶことにする。
以上のスリップ型、ネジロック型、及び、爪ロック型の各コネクタでは、雄部材及び雌部材は互いに相手方と適合するように設計されている。
その一方で、共通する雄ルアーを、(1)ISO594−1に準拠した雌ルアーにスリップ接続でき、(2)ISO594−2に準拠した雌ルアーにネジロック接続でき、更に、(3)ニードルレスポートに爪ロック接続できることが望まれている。
特許文献2には、ロックナットを雄ルアーに対して、その基端側に移動可能にすることにより、ロックナットを用いないスリップ接続と、ロックナットを用いたネジロック接続との両方を可能にしたコネクタが提案されている。しかしながら、特許文献2には、当該雄ルアーをニードルレスポートに爪ロック接続することは記載されていない。
特許文献3には、上記の3つの接続方式で接続可能なコネクタが記載されている。以下にこれを説明する。
図20Aは従来の雄ルアー組立体910の一例を上方から見た斜視図、図20Bはその下方から見た斜視図である。図21Aは図20Aに示した雄ルアー組立体910の側面図、図21Bは図21Aの21B−21B線を含む面に沿った矢視断面図、図21Cは図21Aの21C−21C線を含む面に沿った矢視断面図である。図22は、図20Aに示した雄ルアー組立体910のロックナット930を雄ルアー920に重ならないように後退させた状態を示した斜視図である。
この雄ルアー組立体910は、貫通孔921が形成された、略円筒形状の雄ルアー920と、この雄ルアー920が内挿されたロックナット930とを備える。
図20B、図22に示されているように、雄ルアー920の先端の外周面にはISO594−1に準拠した6%のテーパ面922が形成され、その基端923には柔軟なチューブ929が接続されている。テーパ面922の最大径箇所には周方向に連続する環状突起924が形成されている。環状突起924よりも基端923側の外周面には、雄ルアー920の長手方向に平行に延びた一対の案内突起926が形成されている。
図21A〜図21Cに示されているように、ロックナット930は、略円筒形状の基部931と、基部931よりも大きな径を有する略円筒形状のロック部940とを有する。
基部931の内周面には、ISO594−2に準拠した雌ネジ932が形成されている。雌ネジ932よりも上側には、周方向に延びた位置規制突起933が形成されている。図21Cに示されているように、位置規制突起933には一対の案内路934が略対称位置に形成されており、この一対の案内路934にて位置規制突起933は周方向に分断されている。
ロック部940の内周面には、周方向に延びた突起である一対の係合爪941が形成されている。
図21Bに示されているように、雄ルアー920の外周面に形成された環状突起924と一対の案内突起926との間に位置規制突起933が位置するように、雄ルアー920をロックナット930に内挿する。このとき、ロックナット930は、雄ルアー920の回りを自由に回転可能である。
一方、環状突起924と位置規制突起933とが衝突するので、ロックナット930は雄ルアー920に対してその先端(テーパ面922)側へ移動するのが制限される。従って、雄ルアー920のテーパ面922はロックナット930の基部931よりも所定長さだけ突き出している。
また、一対の案内突起926と位置規制突起933とが衝突するので、ロックナット930は雄ルアー920に対してその基端923側へ移動するのが制限される。但し、ロックナット930を雄ルアー920に対して回転させて、一対の案内突起926と一対の案内路934との位置が一致したときには、一対の案内突起926は一対の案内路934を通過することができる。従って、図22に示すように、ロックナット930をチューブ929上に移動させることができる。
以上のように構成された雄ルアー組立体910の使用方法を説明する。
雄ルアー組立体910とISO594−1に準拠したテーパ面を有する雌ルアーとのスリップ接続は、図22に示すように、ロックナット930を退避させた状態で、雄ルアー920のテーパ面922を雌ルアー(図示せず)に挿入することにより行うことができる。
雄ルアー組立体910とISO594−2に準拠した雄ネジを有する雌ルアーとのネジロック接続の方法を説明する。
図23はISO594−2に準拠した雌ルアー850の一例の概略斜視図である。この雌ルアー850は、略円筒形形状を有し、中央に貫通孔851(後述する図24B参照)が形成されている。雌ルアー850の先端側の内周面には、ISO594−1に準拠したテーパ面852が形成されており、その外周面には、ISO594−2に準拠した雄ネジ853が形成されている。雄ネジ853と基端855との間の外周面上には、一対の翼状突起856が衝立状に立設されている。雌ルアー850の基端855には柔軟なチューブ859が接続される(後述する図24A,図24B参照)。
図24Aは雄ルアー組立体910と図23に示した雌ルアーとをネジロック接続した状態を上方から見た斜視図、図24Bはこの断面図である。図24A及び図24Bに示されているように、雄ルアー920のテーパ面922が雌ルアー850のテーパ面852に挿入され、ロックナット930の雌ネジ932と雌ルアー850の雄ネジ853とが螺合している。このように、雄ルアー組立体910と雌ルアー850とのISO594−2に準拠したネジロック接続を行うことができる。
雄ルアー組立体910と図19A及び図19Bに示したニードルレスポート800との爪ロック接続の方法を説明する。
図25Aは雄ルアー組立体910とニードルレスポート800とを爪ロック接続した状態を上方から見た斜視図、図25Bはこの断面図である。図25A及び図25Bに示されているように、雄ルアー920のテーパ面922が形成された先端が、ニードルレスポート800のセプタム810のスリットに挿入されている。そして、ロックナット930の一対の係合爪941がニードルレスポート800の一対の係合突起807と係合している。このように、雄ルアー組立体910とニードルレスポート800との爪ロック接続を行うことができる。
本発明の医療用コネクタは、雄ルアー組立体に着脱可能なアダプタを備える。
アダプタは、ロックナットの外周面の少なくとも一部を覆うグリップ部を備える。従って、アダプタが雄ルアー組立体に装着された本発明の医療用コネクタをニードルレスポートに対して爪ロック接続をし、またはその分離を行う場合には、アダプタの外周面を保持して行うことができる。
また、アダプタは、ロックナットに係合する係合構造を備える。これにより、アダプタを雄ルアー組立体に装着した際に、アダプタと雄ルアー組立体とが意図せずに分離する可能性を低減することができる。
前記係合構造が、前記ロックナットの内周面に形成された前記雌ネジに螺合する、前記筒状部の外周面に形成された雄ネジを含むことが好ましい。これにより、ネジロック接続を行うためにロックナットに設けられた雌ネジを利用して、アダプタを雄ルアー組立体にしっかりと装着することができる。上記において、前記雄ネジはISO594−2に準拠することが好ましい。
あるいは、前記係合構造が、前記ロックナットの外周面に係合する部材を含んでいてもよい。これにより、ネジ以外の係合構造を採用することができ、係合構造の設計の自由度が向上する。
前記係合構造が、スナップフィットを構成する部材を含んでいてもよい。これにより、作業者は、アダプタがロックナット(または雄ルアー組立体)に係合されたことを容易に認識することができる。
前記グリップ部は、周方向に連続する環状体を含むことが好ましい。これにより、アダプタの強度が向上する。また、アダプタを雄ルアー組立体に装着した状態において、作業者が誤ってロックナットに触れてアダプタと雄ルアー組立体とが意図せずに分離してしまう可能性が低減する。
前記グリップ部は、弾性的に揺動可能な一対のグリップアームを備えていてもよい。この場合、前記一対のグリップアームのそれぞれの一端に、前記ロックナットに係合する前記係合構造が設けられていることが好ましい。また、前記一対のグリップアームのそれぞれの他端に、前記ニードルレスポートの外周面に形成された係合突起と係合可能な前記係合爪が形成されていることが好ましい。この構成においても、作業者は、アダプタがロックナット(または雄ルアー組立体)に係合されたことを容易に認識することができる。
上記において、前記係合構造が前記ロックナットに係合し、且つ、前記係合爪が前記ニードルレスポートの外周面に形成された係合突起と係合したとき、前記一対のグリップアームの揺動が制限されることが好ましい。これにより、爪ロック接続時にはアダプタとロックナット(または雄ルアー組立体)との係合を解除することができないので、作業者が誤操作をする可能性が低減し、安全性が向上する。
上記において、前記ロックナットの内周面に形成された前記雌ネジに螺合する雄ネジが、前記筒状部の外周面に形成されていることが好ましい。これにより、外力等が加わることによってアダプタとロックナット(または雄ルアー組立体)とが意図せずに分離してしまう可能性を低減することができる。また、係合構造がロックナットに係合したことを作業者は容易に認識することができるので、作業者によらず、雌ネジと雄ネジとを適正な締め付けトルクで常に螺合させることができる。
前記雄ルアーの先端の外周面に形成された前記テーパ面はISO594−1に準拠することが好ましい。これにより、ISO594−1に準拠するテーパ面が形成された雌ルアーと、ISO594−1に準拠したスリップ接続をすることができる。
前記アダプタの前記筒状部の内周面には、前記雄ルアーの先端の外周面に形成された前記テーパ面に適合するテーパ面が形成されていることが好ましい。これにより、アダプタを雄ルアー組立体に装着したときに、雄ルアーとアダプタの筒状部との間に液密なシールが形成され、液漏れを防ぐことができる。
前記ロックナットの内周面に形成された前記雌ネジはISO594−2に準拠することが好ましい。これにより、ISO594−2に準拠する雄ネジが形成された雌ルアーと、ISO594−2に準拠したネジロック接続をすることができる。
前記雄ルアー組立体に前記アダプタを装着したとき、前記ロックナットの外周面の一部は半径方向に露出することが好ましい。これにより、前記雄ルアー組立体に対してアダプタを着脱する作業を容易に行うことができる。
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態の構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、以下の各図中の寸法は、実際の寸法および寸法比率等を忠実に表したものではない。
(実施形態1)
図1Aは本発明の実施形態1に係る医療用コネクタ(以下、単に「コネクタ」という)1の上方から見た斜視図、図1Bはその下方から見た斜視図、図2はその断面図である。本実施形態1のコネクタ1は、雄ルアー20及びロックナット30からなる雄ルアー組立体11と、アダプタ50とを備える。図3Aは雄ルアー組立体11とアダプタ50とに分解されたコネクタ1の上方から見た分解斜視図、図3Bはその下方から見た分解斜視図、図4はその分解断面図である。以下の説明の便宜のため、図2の紙面の上側をコネクタ1の「上側」と呼び、図2の紙面の下側をコネクタ1の「下側」と呼ぶ。なお、コネクタ1のこの上下方向は、コネクタ1が実際に使用される状況での姿勢を意味するものではない。
図5は雄ルアー20を示した斜視図である。雄ルアー20は、その長手方向に沿った貫通孔21が形成された、全体として略円筒形状を有する。雄ルアー20の一端(即ち、先端)の外周面には、ISO594−1に準拠した6%のテーパ面22が形成され、その他端(即ち、基端23)には柔軟なチューブ29が接続される(図3A、図3B、図4参照)。テーパ面22の最大径箇所には周方向に連続する環状突起24が形成されている。環状突起24よりも基端23側の部分の外周面は外径が一定の円筒面であり、この円筒面に、長手方向方向に平行に延びた一対の案内突起26が対称位置に形成されている。雄ルアー20は、図20A、図20Bに示した従来の雄ルアー組立体910を構成する雄ルアー920と同じであってもよい。
図6Aはロックナット30の上方から見た斜視図、図6Bはその下方から見た斜視図、図6Cはその平面図、図6Dはその断面図である。ロックナット30は、全体として略円筒形状を有する。ロックナット30の内周面には、その下端から略中央部にわたってISO594−2に準拠した雌ネジ32が形成されている。雌ネジ32よりも上側には、周方向に延びた位置規制突起33が形成されている。位置規制突起33には一対の案内路34が略対称位置に形成されており、この一対の案内路34にて位置規制突起33は周方向に分断されている。ロックナット30の外周面は、その上側の部分は円筒面36であり、これより下側の部分は把持して回転トルクを加えやすくするために正六角柱面37である。正六角柱面37は円筒面36より外径が大きく、その結果、円筒面36と正六角柱面37との境界に、外径が変化する部分であるショルダー部38が形成されている。なお、ロックナット30の外周面の形状は上記の構成に限定されない。
雄ルアー20の基端23をロックナット30の雌ネジ32が形成された側の開口内に挿入する。雄ルアー20の回りにロックナット30を回転させて、雄ルアー20の外周面に形成された一対の案内突起26とロックナット30の内周面の一対の案内路34とを一致させると、一対の案内突起26は一対の案内路34を通過することができる。従って、図4に示されているように、雄ルアー20の外周面に形成された環状突起24と一対の案内突起26との間にロックナット30の位置規制突起33が位置するように、雄ルアー20をロックナット30に内挿することができる。このとき、ロックナット30は、雄ルアー20の回りを自由に回転可能である。
一方、環状突起24と位置規制突起33とが衝突するので、ロックナット30は雄ルアー20に対してその先端(テーパ面22)側へ移動するのが制限される。従って、環状突起24と位置規制突起33とは、ロックナット30が雄ルアー20に対して雄ルアー20の先端側へ移動できる範囲を制限する移動制限機構を構成する。環状突起24と位置規制突起33とが衝突した状態において、雄ルアー20の先端のロックナット30からの突き出し長さを含む、雄ルアー20の先端と雌ネジ32との相対的位置関係はISO594−2に準拠している。
また、一対の案内突起26と位置規制突起33とが衝突するので、ロックナット30は雄ルアー20に対してその基端23側へ移動するのが制限される。但し、ロックナット30を雄ルアー20に対して回転させて、一対の案内突起26と一対の案内路34との位置が一致したときには、一対の案内突起26は一対の案内路34を通過することができる。従って、図7に示すように、ロックナット30をチュー929上に移動させることができる。
図3A、図3B、図4に示されているように、アダプタ50は、いずれもが略円筒形状を有する筒状部51及び挿入部56を有する。筒状部51の内周面にはISO594−1に準拠したテーパ面52が形成されており、筒状部51の外周面にはISO594−2に準拠した雄ネジ53が形成されている。挿入部56は、筒状部51と同軸に設けられ、筒状部51と連通している。
筒状部51と挿入部56とが接続された境界に、略円板形状の底板55が外方向に突出して設けられている。底板55の外周端縁にグリップ部60が設けられている。
グリップ部60は、底板55に対して筒状部51と同じ側に配された外筒部61と、底板55に対して挿入部56と同じ側に配された一対のロック片65とを備える。
外筒部61は、全体として略筒形状を有し、その内周面62は筒状部51と同軸の円筒面であり、その外周面にはアダプタ50を2本の指で把持しやすいように一対の把持面63が形成されている。外筒部61が周方向に連続する環状体であるので、アダプタ50は高い機械的強度を有している。
一対のロック片65の挿入部56に対向する面(内周面)は、挿入部56と同軸の円筒面を構成する。各ロック片65の内周面には、周方向に延びた係合爪67と、係合爪67の周方向の一端から底板55へ延びたストッパ部68とが形成されている。係止爪67及びストッパ部68は、いずれも、ロック片65の内周面において挿入部56に向かって突出している。なお、一対のロック片65を図21A〜図21Cに示したロック部940と同様に周方向に連続させて、その内周面に係止爪67及びストッパ部68を形成してもよい。
アダプタ50は雄ルアー組立体11に対して着脱可能である。
アダプタ50を雄ルアー組立体11に装着する方法を説明する。
図4に示すように、ロックナット30の位置規制突起33が雄ルアー20の環状突起24と一対の案内突起26との間に位置するように、ロックナット30を雄ルアー20に配置する。このとき、ロックナット30は、上述したように、雄ルアー20の回りに回転することはできるが、雄ルアー20の長手方向に沿った移動は制限される。この状態の雄ルアー組立体11とアダプタ50とを、図3A、図3B、図4に示す向きで嵌め合わせる。ロックナット30はアダプタ50の外筒部61内に挿入され、雄ルアー20のテーパ面22はアダプタ50の筒状部51に挿入される。次いで、ロックナット30に対してアダプタ50を回転させると、アダプタ50の筒状部51の外周面に形成された雄ネジ53とロックナット30の内周面に形成された雌ネジ32とが螺合し始める。これにともない、ロックナット30はアダプタ50の外筒部61内にさらに進入する。ロックナット30の位置規制突起33と雄ルアー20の環状突起24とが係合しているので、雄ルアー20はロックナット30とともに移動し、雄ルアー20のテーパ面22もアダプタ50の筒状部51にさらに進入する。そして、雄ルアー20のテーパ面22がアダプタ50の筒状部51の内周面に形成されたテーパ面52に密着すると、雄ルアー20は管状部51内にこれ以上深く進入することはできなくなる。従って、アダプタ50の雄ネジ53とロックナット30の雌ネジ32とをこれ以上深く螺合させることができなくなる。かくして、図1A、図1B、図2に示すように、雄ルアー組立体11にアダプタ50を装着することができる。
アダプタ50を雄ルアー組立体11に装着した状態のとき、雄ネジ53と雌ネジ32とが螺合されているので、外力等が加わることによってアダプタ50と雄ルアー組立体11とが意図せずに分離してしまう可能性を低減することができる。また、アダプタ50の外筒部61がロックナット30の周囲を取り囲むので、作業者が誤ってロックナット30に触れてアダプタ50と雄ルアー組立体11とが意図せずに分離してしまう可能性を低減することができる。
雄ルアー組立体11とアダプタ50との分離は上記と逆の操作を行えばよい。即ち、図1A、図1B、図2に示すように雄ルアー組立体11にアダプタ50が装着された状態において、ロックナット30に対してアダプタ50を上記とは逆に回転させて、アダプタ50の雄ネジ53とロックナット30の雌ネジ32との螺合を解除すればよい。
アダプタ50を雄ルアー組立体11に装着した状態でも、ロックナット30の一部(例えば円筒面36)はアダプタ50に覆われることなく半径方向に露出している。従って、一方の手でロックナット30を把持し、他方の手でアダプタ50を把持して、ロックナット30に対してアダプタ50を回転させることができる。
以上のように、本実施形態では、アダプタ50を図3A、図3B、図4に示す向きに雄ルアー組立体11に嵌め合わせて、ロックナット30に対してアダプタ50を回転させるだけで、アダプタ50を雄ルアー組立体11に容易に装着することができる。ロックナット30に対してアダプタ50を更に回転することができなくなるまで回転させれば、雄ルアー20のテーパ面22とアダプタ50のテーパ面52とが密着する。テーパ面22,52はISO594−1に準拠しているので液密なシールが形成され、雄ルアー20と管状部51と挿入部56とを連通させることができる。雄ルアー組立体11とアダプタ50との分離は、ロックナット30に対してアダプタ50を上記とは逆に回転させるだけで容易に行える。
以上のように構成された本実施形態のコネクタ1をスリップ接続、ネジロック接続、及び、爪ロック接続する方法を以下に説明する。
ISO594−1に準拠したテーパ面を有する雌ルアー(図示せず)とのスリップ接続を説明する。アダプタ50を装着せずに、図7に示すようにロックナット30をチューブ29上に移動させる。この状態で、雄ルアー20の先端のテーパ面22を雌ルアーに挿入すればよい。テーパ面22はISO594−1に準拠しているので、雌ルアーのテーパ面と液密なシールを形成することができる。
ISO594−2に準拠した雄ネジを有する図23に示した雌ルアー850とのネジロック接続を説明する。この場合もアダプタ50を装着せずに、図3A、図3B、図4に示すように、ロックナット30の位置規制突起33が雄ルアー20の環状突起24と一対の案内突起26との間に位置するように、ロックナット30を雄ルアー20に配置する。この状態で、雄ルアー20のテーパ面22を雌ルアー850のテーパ面852に挿入し、ロックナット30の雌ネジ32と雌ルアー850の雄ネジ853とを螺合させる。図8Aは、雄ルアー組立体11と雌ルアー850とをネジロック接続した状態を示した側面図、図8Bはその断面図である。ロックナット30の雌ネジ32はISO594−2に準拠しているので、雌ルアー850のISO594−2に準拠した雄ネジ853と螺合させることができる。ロックナット30の位置規制突起33と雄ルアー20の環状突起24とが係合しているので、雄ルアー20はロックナット30とともに移動する。雌ルアー850に対してロックナット30を更に回転することができなくなるまで回転させれば、雄ルアー20のテーパ面22と雌ルアー850のテーパ面852とが密着する。テーパ面22,852はISO594−1に準拠しているので液密なシールが形成される。ネジロック接続の解除は、雌ルアー850に対してロックナット30を上記とは逆に回転させればよい。
図19A、図19Bに示したニードルレスポート800との爪ロック接続を説明する。この場合は、図1A、図1B、図2に示すように雄ルアー組立体11にアダプタ50を装着する。そして、アダプタ50の挿入部56をニードルレスポート800のセプタム810のスリット811に挿入する。アダプタ50の底板55がニードルレスポート800の上面に接触するほどにアダプタ50をニードルレスポート800に押し付ける。その状態で、アダプタ50をニードルレスポート800に対して回転させる。これにより、アダプタ50のロック片65の内周面に形成された係合爪67とニードルレスポート800の係合突起807とを係合させることができる。係合爪67の一端に隣接するストッパ部68に係合突起807の一端が当接するまでアダプタ50をニードルレスポート800に対して回転させれば、係合爪67と係合突起807とを十分に深く係合させることができる。図9Aはコネクタ1とニードルレスポート800とを爪ロック接続した状態を上方から見た斜視図、図9Bはこの断面図である。爪ロック接続の解除は、アダプタ50をニードルレスポート800に対して上記とは逆に回転させて係合爪67と係合突起807との係合を解除した後、アダプタ50をニードルレスポート800から引き抜けばよい。
以上のように、本実施形態のコネクタ1は、雄ルアー組立体11と、これに着脱可能なアダプタ50とを備える。雄ルアー組立体11は、雄ルアー20と、雄ルアー20の長手方向に移動可能なロックナット30とを備える。従って、スリップ接続は、アダプタ50を使用せず、且つ、ロックナット30を使用せずに(即ち、ロックナット30を退避させて)行うことができ、ネジロック接続は、アダプタ50を使用せず、且つ、ロックナット30を使用して行うことができ、爪ロック接続は、アダプタ50を使用して行うことができる。
爪ロック接続時(図9A、図9B)には、セプタム810のスリット811には、雄ルアー20ではなく、アダプタ50の挿入部56が挿入される。従って、雄ルアー20のロックナット30からの突き出し長さ(より正確には、雄ルアー20の先端から雌ネジ32までの距離)は、爪ロック接続時のセプタム810との関係を考慮する必要があった図20A、図20B、図21に示した従来の雄ルアー組立体910とは異なり、ISO594−2で許容された範囲内において、望ましいネジロック接続(図8A、図8B)を実現する観点から設計することができる。その結果、ネジロック接続時に、ロックナット30の雌ネジ32と雌ルアー850の雄ネジ853とが螺合する領域を十分に確保することが可能となるので、雌ネジ32と雄ネジ853との螺合が緩む可能性を低減することができる。
また、ネジロック接続時には、図8A、図8Bに示されているようにアダプタ50を使用しないので、図24A、図24Bと比較すれば理解できるように、径方向の局所的な突出がなく、小径である。従って、患者に不快感を感じさせる可能性が低減する。
(実施形態2)
実施形態1では、ロックナット30とアダプタ50との接続は、ネジの螺合を利用した。即ち、ロックナット30の内周面に形成されたISO594−2に準拠した雌ネジ32と、アダプタ50の筒状部51の外周面に形成されたISO594−2に準拠した雄ネジ53とを螺合させた。
これに対して、本実施形態2では、ロックナットとアダプタとをスナップフィット接続する。以下に、本実施形態を、実施形態1と異なる点を中心に説明する。
図10は、本実施形態2に係るコネクタ2の断面図である。実施形態1のコネクタ1と同様に、本実施形態のコネクタ2は、雄ルアー20及びロックナット40からなる雄ルアー組立体12と、アダプタ70とを備える。図11Aは雄ルアー組立体12とアダプタ70とに分解されたコネクタ2の上方から見た分解斜視図、図11Bはその分解断面図である。図12はロックナット40の側面図である。これらの図において、実施形態1のコネクタ1を構成する部材及び部分と同じ部材及び部分には実施形態1と同じ符号を付しており、それらの説明を省略する。
ロックナット40は、図11A、図11B、図12に示されているように、その外周面に、周方向に連続する連続突起41が形成されている点で、実施形態1のロックナット30と異なる。なお、図12では、連続突起41は、ロックナット40の下端に形成されているが、その上下方向の位置はこれに限定されない。
アダプタ70は、以下の点で実施形態1のアダプタ50と異なる。第1に、図11Bに示されているように、アダプタ70の外筒部61の内周面には、一対の係止突起71が対称位置に形成されている。第2に、筒状部51の外周面には、実施形態1のアダプタ50には設けられていた雄ネジ53が形成されていない。
実施形態1の雄ルアー組立体10と同様に、ロックナット40に雄ルアー20を挿入して本実施形態の雄ルアー組立体12が組み立てられる。
実施形態1と同様に、本実施形態においても、アダプタ70は雄ルアー組立体12に対して着脱可能である。
アダプタ70を雄ルアー組立体12に装着する方法を説明する。
図11Bに示すように、ロックナット40の位置規制突起33が雄ルアー20の環状突起24と一対の案内突起26との間に位置するように、ロックナット40を雄ルアー20に配置する。この状態の雄ルアー組立体12とアダプタ70とを、図11A、図11Bに示す向きで嵌め合わせる。ロックナット40はアダプタ70の外筒部61内に挿入され、雄ルアー20のテーパ面22はアダプタ70の筒状部51に挿入される。ロックナット40がアダプタ70の外筒部61内に深く挿入されると、ロックナット40の外周面に形成された連続突起41と、アダプタ70の外筒部61の内周面に形成された一対の係止突起71とが衝突する。このとき、ロックナット40をアダプタ70に対して力を加えて押し込むと、ロックナット40の連続突起41をアダプタ70の一対の係止突起71が乗り越えて、連続突起41と係止突起71とが係合する。ロックナット40の位置規制突起33と雄ルアー20の環状突起24とが係合しているので、雄ルアー20はロックナット40とともに移動し、連続突起41と係止突起71とが係合するのと同時に、雄ルアー20のテーパ面22とアダプタ70の筒状部51の内周面に形成されたテーパ面52とが密着する。かくして、図10に示すように、雄ルアー組立体12にアダプタ70を装着することができる。
雄ルアー組立体12とアダプタ70との分離は上記と逆の操作を行えばよい。即ち、図10に示すように雄ルアー組立体12にアダプタ70が装着された状態において、ロックナット40とアダプタ70とを引き離すように力を加えると、アダプタ70の係止突起71がロックナット40の連続突起41を乗り越えて、連続突起41と係止突起71との係合が解除される。
以上のように、本実施形態では、ロックナット40をアダプタ70に、連続突起41と係止突起71とが係合するまで押し込むだけで、アダプタ70を雄ルアー組立体12に容易に装着することができる。作業者は、連続突起41と係止突起71とが係合したことを、触感で、好ましくは「カチッ」という音とともに、容易に認識することができる。そして、連続突起41と係止突起71とが係合するのと同時に、ISO594−1に準拠したテーパ面22とテーパ面52とが密着し、液密なシールが形成される。
実施形態1では、ロックナット30に対してアダプタ50を回転させることで、アダプタ50の雄ネジ53とロックナット30の雌ネジ32とを螺合させ、テーパ面22とテーパ面52とを密着させた。この構成では、テーパ面22とテーパ面52とが液密なシールを形成するためにどの程度のトルクでロックナット30に対してアダプタ50を締め付ける必要があるのかが作業者に分かりにくい。締め付け力が強すぎると、ロックナット30とアダプタ50との分離が困難になる可能性がある。逆に、締め付け力が弱すぎると、ネジ32,53が緩みやすく、テーパ面22とテーパ面52との間から液漏れを生じる可能性がある。
これに対して、本実施形態では、連続突起41と係止突起71とが係合したことを作業者が容易に認識することができるので、作業者によらず、テーパ面22とテーパ面52とを常に適切に密着させることができる。
本実施形態のコネクタ2は、実施形態1のコネクタ1と同様に、スリップ接続、ネジロック接続、及び、爪ロック接続の3方式の接続を行うことができる。
また、実施形態1と同様に、ネジロック接続時には、ロックナット40の雌ネジ32と雌ルアー850の雄ネジ853とが螺合する領域を十分に確保することができるので、雌ネジ32と雄ネジ853との螺合が緩む可能性を低減することができる。
更に、ネジロック接続時には、アダプタ70を使用しないので、径方向の局所的な突出がなく、小径である。従って、患者に不快感を感じさせる可能性が低減する。
本実施形態2の上記の具体例では、筒状部51の外周面には雄ネジ53が形成されていなかった。しかしながら、本発明はこれに限定されず、アダプタ70の筒状部51の外周面に、実施形態1のアダプタ50に設けられていた雄ネジ53を形成してもよい。アダプタ70を雄ルアー組立体12に装着する際には、実施形態1と同様に、この雄ネジ53はロックナット40の雌ネジ32と螺合される。従って、外力等が加わることによってアダプタ70と雄ルアー組立体12とが意図せずに分離してしまう可能性を低減することができる。
筒状部51の外周面に雄ネジ53を形成した場合、アダプタ70を雄ルアー組立体12に対して着脱する際には、実施形態1と同様に、アダプタ70を雄ルアー組立体12に対して回転させる必要がある。アダプタ70の係止突起71がロックナット40の連続突起41に衝突し、続いて、係止突起71が連続突起41を乗り越える際に、回転トルクが変化する。作業者はこれをクリック感として認識できる。従って、アダプタ70を雄ルアー組立体12に装着する場合には、このクリック感を感じるまでアダプタ70を雄ルアー組立体12に対して回転させれば、作業者によらず、テーパ面22とテーパ面52とを常に適切に密着させることができる。
また、一旦、アダプタ70を雄ルアー組立体12に装着してしまうと、係止突起71と連続突起41とが係合する。従って、振動などが加えられても雄ネジ53と雌ネジ32との螺合は緩みにくい。
本実施形態2の上記の具体例ではロックナット40の連続突起41とアダプタ70の係止突起71とを係合させたが、ロックナット40とアダプタ70とにそれぞれ設けられる係合構造は、スナップフィットを構成することができればよく、上記の実施形態に限定されない。例えば、係止突起71の数は2つに限定されず、これより多くても少なくてもよい。アダプタ70の外筒部61の内周面62に連続突起を形成し、この連続突起と係合可能な1又は複数の突起をロックナット40の外周面に形成してもよい。また、突起と突起とを係合させるのではなく、ロックナット40及びアダプタ70の一方に突起を形成し、他方にこの突起が嵌入する凹部を形成してもよい。ロックナット40及びアダプタ70にそれぞれ設けられる係合構造は、上記の実施形態のようにいずれか一方が周方向に連続し、他方が周方向に離散している必要はなく、両方が周方向に連続していてもよく、あるいは、両方が周方向に離散していてもよい。
(実施形態3)
実施形態1,2のアダプタ50,70のグリップ部60は、ロックナット40の周囲を取り囲む環状の外筒部61を有していた。これに対して、本実施形態3のアダプタは、グリップ部として、弾性的に揺動可能な一対のグリップアームを備える。以下に、本実施形態を、実施形態1と異なる点を中心に説明する。
図13Aは本実施形態3に係るコネクタ3の上方から見た斜視図、図13Bはその下方から見た斜視図、図14はその断面図である。実施形態1のコネクタ1と同様に、本実施形態のコネクタ3は、雄ルアー20及びロックナット30からなる雄ルアー組立体11と、アダプタ80とを備える。図15Aは雄ルアー組立体11とアダプタ80とに分解されたコネクタ3の上方から見た分解斜視図、図15Bはその下方から見た分解斜視図、図16はその分解断面図である。これらの図において、実施形態1のコネクタ1を構成する部材及び部分と同じ部材及び部分には実施形態1と同じ符号を付しており、それらの説明を省略する。
図15A、図15B、図16に示されているように、アダプタ80は、底板55の対向する端縁に一対のグリップアーム81を備える。グリップアーム81は、底板55に対して上下方向に延びている。
グリップアーム81の底板55に対して上側(筒状部51側)の部分(係合片82)は互い相手方に近づくように湾曲し、その先端に係合端83が形成されている。係合端83は、筒状部51の中心軸上の点を中心とし、ロックナット30の円筒面36(図6A参照)とほぼ同じ半径を有する円弧である。また、図16に示されているように、各係合端83の面は、相手方に近づくにしたがって底板55に近づくように傾斜している。
グリップアーム81の底板55に対して下側(挿入部56側)の部分(ロック片85)の挿入部56に対向する面(内周面)は、挿入部56と同軸の円筒面を構成する。ロック片85の内周面には、実施形態1のロック片65と同様に、周方向に延びた係合爪67と、係合爪67の周方向の一端から底板55へ延びたストッパ部68とが形成されている。
係合片82及びロック片85を含むグリップアーム81は実質的に剛体とみなすことができる。一方、グリップアーム81を保持する底板55は弾性的に湾曲可能である。従って、底板55が湾曲することにより、一対のグリップアーム81は弾性的に揺動する。即ち、係合片82が互いに接近するように変位すると、ロック片85が互いに離れるように変位し、逆に、係合片82が互いに離れるように変位すると、ロック片85が互いに接近するように変位する。
アダプタ80の筒状部51の外周面には、実施形態1のアダプタ50には設けられていた雄ネジ53が形成されていない。
上記を除いて、本実施形態のアダプタ80は、実施形態1のアダプタ50と同じである。
本実施形態の雄ルアー組立体11は実施形態1のそれと同じである。
実施形態1と同様に、本実施形態においても、アダプタ80は雄ルアー組立体11に対して着脱可能である。
アダプタ80を雄ルアー組立体11に装着する方法を説明する。
図16に示すように、ロックナット30の位置規制突起33が雄ルアー20の環状突起24と一対の案内突起26との間に位置するように、ロックナット30を雄ルアー20に配置する。この状態の雄ルアー組立体11とアダプタ80とを、図15A、図15B、図16に示すように対向させて互いに接近させる。一対のグリップアーム81の上端の係合端83が、ロックナット30の外周面の正六角柱面37の下端に当接する。係合端83には、上述したように傾斜面が形成されている。従って、正六角柱面37の下端が係合端83のこの傾斜面に当接した状態で雄ルアー組立体11をアダプタ80に更に押し込むと、一対の係合端83の間隔が拡がるように一対のグリップアーム81が変位する。その結果、一対の係合端83の間にロックナット30の正六角柱面37が挿入される。あるいは、一対のロック片85を2本の指でつまんで互いに接近するように変位させて一対の係合端83の間隔を拡げ、次いで一対の係合端83の間にロックナット30の正六角柱面37が挿入してもよい。
一対の係合端83の間にロックナット30の正六角柱面37を挟んだ状態で、雄ルアー組立体11をアダプタ80に押し込む。しばらくして、雄ルアー20のテーパ面22はアダプタ80の筒状部51に挿入される。更に雄ルアー組立体11をアダプタ80に押し込むと、ロックナット30の正六角柱面37上を摺動していた一対の係合端83がロックナット30のショルダー部38に到達し、底板55が弾性回復して、一対の係合端83とショルダー部38とが係合する。ロックナット30の位置規制突起33と雄ルアー20の環状突起24とが係合しているので、雄ルアー20はロックナット30とともに移動し、一対の係合端83とショルダー部38とが係合するのと同時に、雄ルアー20のテーパ面22とアダプタ80の筒状部51の内周面に形成されたテーパ面52とが密着する。かくして、図13A、図13B、図14に示すように、雄ルアー組立体11にアダプタ80を装着することができる。
雄ルアー組立体11とアダプタ80との分離は上記と逆の操作を行えばよい。即ち、図13A、図13B、図14に示すように雄ルアー組立体11にアダプタ80が装着された状態において、一対のロック片85を2本の指でつまんで互いに接近するように変位させて一対の係合端83の間隔を拡げ、一対の係合端83とショルダー部38との係合を解除する。その後、雄ルアー組立体11とアダプタ80とを引き離せばよい。
以上のように、本実施形態では、係合端83に傾斜面が形成されているので、雄ルアー組立体11とアダプタ80とを接近させれば、一対の係合端83が拡がるように一対のグリップアーム81が弾性的に揺動して、一対の係合端83の間にロックナット30を挿入することができる。
その後は、一対の係合端83とショルダー部38とが係合するまで雄ルアー組立体11をアダプタ80に押し込むだけで、アダプタ80を雄ルアー組立体11に容易に装着することができる。作業者は、一対の係合端83とショルダー部38とが係合したことを、触感で、好ましくは「カチッ」という音とともに、容易に認識することができる。そして、一対の係合端83とショルダー部38とが係合するのと同時に、ISO594−1に準拠したテーパ面22とテーパ面52とが密着し、液密なシールが形成される。従って、実施形態2と同様に、作業者によらず、テーパ面22とテーパ面52とを常に適切に密着させることができる。
本実施形態のコネクタ3は、実施形態1のコネクタ1と同様に、スリップ接続、及び、ネジロック接続を行うことができる。
コネクタ3と図19に示したニードルレスポート800との爪ロック接続の方法を説明する。爪ロック接続では、図13A、図13B、図14に示したように雄ルアー組立体11にアダプタ80を装着する。そして、アダプタ80の挿入部56をニードルレスポート800のセプタム810のスリット811に挿入する。アダプタ80の底板55がニードルレスポート800の上面に接触するほどにアダプタ80をニードルレスポート800に押し付ける。その状態で、アダプタ80をニードルレスポート800に対して回転させる。これにより、アダプタ80のロック片85の内周面に形成された係合爪67とニードルレスポート800の係合突起807とを係合させることができる。係合爪67の一端に隣接するストッパ部68に係合突起807の一端が当接するまでアダプタ80をニードルレスポート800に対して回転させれば、係合爪67と係合突起807とを十分に深く係合させることができる。図17Aはコネクタ3とニードルレスポート800とを爪ロック接続した状態を上方から見た斜視図、図17Bはこの断面図である。
図17Bから理解できるように、爪ロック接続時には、ロック片85の内周面はニードルレスポート800の外周面に接触又は近接している。従って、一対のグリップアーム81を揺動させて、係合端83とショルダー部38との係合を解除することは実質的に不可能である。よって、爪ロック接続時に、雄ルアー組立体11とアダプタ80とを分離することは困難である。実施形態1,2では、爪ロック接続時に雄ルアー組立体とアダプタとを作業者が誤って分離してしまう可能性がある。本実施形態では、爪ロック接続を解除しないと、雄ルアー組立体11とアダプタ80とを分離することができないので、作業者の誤操作の可能性が低減し、安全性が向上している。
爪ロック接続の解除は、アダプタ80をニードルレスポート800に対して上記とは逆に回転させて係合爪67と係合突起807との係合を解除した後、アダプタ50をニードルレスポート800から引き抜けばよい。
以上のように本実施形態のコネクタ3は、実施形態1,2のコネクタ1と同様に、スリップ接続、ネジロック接続、及び、爪ロック接続の3方式の接続を行うことができる。
また、実施形態1,2と同様に、ネジロック接続時には、ロックナット30の雌ネジ32と雌ルアー850の雄ネジ853とが螺合する領域を十分に確保することができるので、雌ネジ32と雄ネジ853との螺合が緩む可能性を低減することができる。
更に、ネジロック接続時には、アダプタ80を使用しないので、径方向の局所的な突出がなく、小径である。従って、患者に不快感を感じさせる可能性が低減する。
実施形態2で説明したのと同様に、本実施形態3においても図18に示すようにアダプタ80の筒状部51の外周面に雄ネジ53を形成してもよい。雄ネジ53は、実施形態1のアダプタ50に設けられていた雄ネジ53と同様に、ISO594−2に準拠している。アダプタ80を雄ルアー組立体11に装着する際には、実施形態1と同様に、この雄ネジ53はロックナット30の雌ネジ32と螺合される。従って、外力等が加わることによってアダプタ80と雄ルアー組立体12とが意図せずに分離してしまう可能性を低減することができる。
筒状部51の外周面に雄ネジ53を形成した場合、アダプタ80を雄ルアー組立体11に対して着脱する際には、実施形態1と同様に、アダプタ80を雄ルアー組立体11に対して回転させる必要がある。グリップアーム81の係合端83がショルダー部38に係合する際には、グリップアーム81が変位するとともに、回転トルクが変化する。作業者はこれを視覚及び触覚にて認識できる。従って、アダプタ80を雄ルアー組立体11に装着する場合には、係合端83とショルダー部38とが係合するまでアダプタ80を雄ルアー組立体11に対して回転させれば、作業者によらず、テーパ面22とテーパ面52とを常に適切に密着させることができる。
また、一旦、アダプタ80を雄ルアー組立体11に装着してしまうと、係合端83とショルダー部38とが係合する。従って、振動などが加えられても雄ネジ53と雌ネジ32との螺合は緩みにくい。
本実施形態3の上記の具体例では、ロックナット30のショルダー部38とグリップアーム81の係合端83とを係合させたが、ロックナット30とグリップアーム81とにそれぞれ設けられる係合構造は、上記の実施形態に限定されない。例えば、ロックナット30の外周面が外径が一定の円筒面であり、その一部に周方向に連続する溝を形成し、この溝にグリップアーム81の係合端83を係合させてもよい。あるいは、グリップアーム81の係合端83に周方向に延びた溝を形成し、ロックナット30の外周面にこの溝に嵌入する凸部を形成してもよい。
本実施形態3の上記の具体例では係合端83に傾斜した面が形成されていたが、この面は傾斜していなくてもよい。
本発明のコネクタ1,2,3を構成する雄ルアー20、ロックナット30,40、アダプタ50,70,80は、特に制限はないが、例えば樹脂材料を用いてそれぞれ一体に作成することができる。使用可能な樹脂材料は、特に制限はないが、例えばポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレンを例示することができる。