以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1に、本発明の一実施形態としての医療用ライン接続具を構成するポート10とコネクタ12の接続状態を示す。ポート10は第一の流体ラインとしての輸液ライン13の末端に設けられている一方、コネクタ12は、第二の流体ラインとしての薬液ライン14の末端に設けられている。
ここにおいて、輸液ライン13は、血液や薬液等の輸液を投与するための経路であり、患者に穿刺された針まで輸液を移送し得るものである。一方、薬液ライン14は、輸液ライン13を用いて輸液を投与するための経路であって、チューブやシリンジ等、内部に流体を連通または収容し得るものである。そして、本実施形態においては、輸液ライン13の末端がポート10に接続される一方、薬液ライン14の末端がコネクタ12に接続され、これらコネクタ12とポート10が接続されることによって輸液ライン13と薬液ライン14が連通されるようになっている。
なお、以下の説明において、ポート10における先端側とは、コネクタ12側(図1中、上方)を言い、基端側とは、コネクタ12と反対側の輸液ライン13側(図1中、下方)を言うものとする。他方、コネクタ12における先端側とはポート10側(図1中、下方)を言い、基端側とは、ポート10と反対側の薬液ライン14側(図1中、上方)を言うものとする。
図2および図3に、ポート10を示す。なお、図3において先端部は図中上方、基端部は図中下方である。ポート10は、筒形状を有するハウジング15と、ハウジング15の先端開口部に嵌着されるカバー16を含んで構成されている。ハウジング15は、中心軸上を貫通する中央孔18を有しており、好ましくはポリカーボネートやABS等の合成樹脂で形成される。また、ハウジング15の軸方向(図3中、上下方向)中間部分から基端部側には、ハウジング15の径方向外方に突出して基端部側を覆うフード20が一体形成されており、フード20の内周面には、雌ねじ22が形成されている。更に、ハウジング15は、フード20内においてその外径寸法が基端部に行くに連れて次第に縮径されていると共に、基端開口部24は、フード20から僅かに突出されている。
また、ハウジング15においてポート10の注入部を構成する先端開口部26には、先端開口部26を液密に封止する弾性シール28が内挿状態で嵌着されている。弾性シール28としては、ポート10とコネクタ12が接続された場合には後述する針管66により刺通されると共に、ポート10とコネクタ12の接続が解除されたときには針管66が抜去された後の孔を再度封止し得る材質が採用され、好適には、シリコーンゴム等の合成ゴム、天然ゴムや熱可塑性エラストマー等が用いられる。
弾性シール28はハウジング15の先端開口部26に挿入可能な径寸法を有する略段付円柱形状を有しており、段差部30から基端部側には、軸方向に僅かに延びる小径の嵌入小径部32が形成されている。なお、弾性シール28の基端面34の外周縁部および段差部30の外周縁部には、ハウジング15への挿入を容易とするためにテーパ形状が付されている。また、弾性シール28には、基端面34の中央部分に開口する凹状部36が形成されおり、凹状部36の周囲が薄肉とされることによって、後述する針管66の貫通が容易とされている。
図4〜図6に、カバー16を示す。カバー16は中央に針挿通孔37が貫通された略円板形状を有する天面部38と、天面部38の外周端縁部から全周に亘って突出する円筒状の周壁部40を有する略キャップ形状とされている。カバー16は、好適には、溶剤等によってハウジング15と接着可能な合成樹脂から形成される。
天面部38の外周縁部には曲面が付されており、周壁部40の外周面41と滑らかに接続されている。また、針挿通孔37の内周面においてポート10の先端部側にはテーパ状の中央案内面42が形成されており、針挿通孔37は、先端部側においてポート10の基端側に向かうに連れて径寸法が次第に小さくされる一方、基端部側において略一定の径寸法とされている。なお、針挿通孔37の基端部側の径寸法は、カバー16のハウジング15への取付状態で、ハウジング15の内周面と弾性シール28の外周面との間に万一隙間が形成されたとしても、その隙間から輸液が漏れ出すことの無いように、該ハウジング15の内周面と弾性シール28の外周面との間の部位を天面部38で封止し得る大きさに設定されることが好ましい。
さらに、周壁部40の外周面41には、一対の案内溝44がカバー16の径方向で対向して形成されている。これら案内溝44は互いに同様の構造とされている。案内溝44は、カバー16の軸方向に延びる軸方向案内溝46と、軸方向案内溝46の基端側端部48からカバー16の周方向に延びる周方向案内溝50を有している。
軸方向案内溝46は、周壁部40の外周面41上に開口して一定の幅寸法(カバー16の周方向寸法)でカバー16の軸方向に延びる凹溝とされている。軸方向案内溝46は、溝長さ方向で両端となる先端側端部52および基端側端部48がカバー16の先端側端面54および基端側端面56にそれぞれ開口されている。
一方、周方向案内溝50は、外周面41上に開口してカバー16の周方向に延びる凹溝とされている。周方向案内溝50は、軸方向案内溝46の基端側端部48を延出基端部として、カバー16の周方向の一方向に延び出されており、周方向案内溝50の周方向寸法は、操作性を考慮して、コネクタ12の後述する針保護フード70のカバー16に対する回動角度が5°〜60°となるように設定されることが好ましい。なお、周方向案内溝50は、カバー16の基端側端面56側が周方向の全体に亘ってカバー16の基端側に開口する切欠形状とされている。
さらに、周方向案内溝50において軸方向案内溝46と反対側の延出先端部は、カバー16の先端側に向けて幅寸法(カバー16の軸方向寸法)が広げられている。これにより、周方向案内溝50の延出先端部には、カバー16の基端側に開口する係止凹所57が形成されており、かかる周方向案内溝50におけるカバー16の先端側の面が係止面58とされている。この係止凹所57は、後述するコネクタ12の針保護フード70とカバー16の抜け方向(図4中、上方向)と反対側に向かって開放されている。また、係止凹所57の幅寸法(カバー16の周方向寸法)は、軸方向案内溝46の幅寸法と略等しくされる。また、係止凹所57の周方向において軸方向案内溝46から遠位の端面は、周方向案内溝50の延出端面と共通の平面で形成されており、かかる端面がストッパ面59とされている。
このように、軸方向案内溝46と係止凹所57はカバー16の外周面41に対して周方向で隣り合って形成されており、これら軸方向案内溝46と係止凹所57の間には、カバー16の基端側に突出する解除防止突起60が形成されている。解除防止突起60の突出寸法はカバー16の基端側端面56に至らない程度に設定されており、これにより周方向案内溝50は周方向の全体に亘ってカバー16の基端側端面56側に開口されていると共に、解除防止突起60の突出端面61が周方向案内溝50における先端側の内面の一部を構成している。なお、突出端面61はカバー16の周方向に所定寸法に亘って延びる平坦面とされている。更に、解除防止突起60の高さ寸法(カバー16の径方向寸法)はカバー16の外周面41と等しくされている。
これにより、係止凹所57の周方向一方の開口端にはストッパ面59が形成されており、他方の開口端には解除防止突起60が形成されている。そして、ストッパ面59はカバー16の基端側端面56まで延び出す一方、解除防止突起60の突出寸法は基端側端面56に至らない程度とされている。従って、係止凹所57においてストッパ面59側の開口端は、解除防止突起60側の端部に比して、カバー16の後述する針保護フード70への挿し込み方向(図1中、上方向)と反対側に突出されている。
このような形状とされた案内溝44が、カバー16の径方向で対向する位置に一対形成されている。なお、一対の案内溝44は、周方向案内溝50の軸方向案内溝46からの延び出し方向が互いに同方向とされており、本実施形態においては、図6等に示すように、カバー16の基端側端面56からの軸方向視において右回りに延び出されている。
このような構造とされたカバー16が、ハウジング15の先端開口部26に外嵌固定されている。なお、ハウジング15の内径寸法は先端開口部26において僅かに大きくされており、先端開口部26の内周面には、係止段差面62(図3参照)が形成されている。そして、弾性シール28がハウジング15の先端開口部26側から、段差部30が係止段差面62で係止されるまで挿入された後に、先端開口部26にカバー16が外嵌固定される。カバー16の先端開口部26への固着は、カバー16の内周面および先端開口部26の外周面の何れか一方又は両方に接着剤を塗布した上で嵌合させることによって好適に行なわれる。これにより、ハウジング15の先端開口部26と弾性シール28の外周部分がカバー16で覆われて、弾性シール28がハウジング15から抜け出し不能とされると共に、ハウジング15の先端開口部26が弾性シール28で液密に封止される。このような構造とされたポート10は、例えば、図1にモデル的に示したように、輸液ライン13を構成するチューブ63の末端に設けられたコネクタ64に形成された雄ねじが雌ねじ22と螺合することによって、輸液ライン13の末端に設けられる。
一方、コネクタ12は、図7および図8にも示すように、薬液ライン14を構成するチューブ65の末端に設けられ、先端に鋭利な刃先を有する筒状の針管66と、針管66を保持する針ハブ68と、針ハブ68に外挿されて針管66を収容する針保護フード70を含んで構成されている。
針管66は、ポート10の弾性シール28を刺通し得る剛性を有する材料で形成されることが好ましく、具体的にはステンレス鋼、アルミニウム、チタン或いはこれらの合金等の金属や、ポリカーボネート、ABS等の合成樹脂等で形成される。また、針管66は、好適には、直径が0.6〜1.7mm、肉厚が0.09〜0.30mmの間で設定される。更に、針管66の長さ寸法は、弾性シール28を刺通した際に弾性シール28を完全に貫いて輸液ライン13に開口する長さである必要があり、弾性シール28の軸方向寸法や後述する針ハブ68の形状等を考慮して適宜に設定される。
また、針ハブ68は、中心軸上に針収容孔72を有する略円筒形状とされており、該針収容孔72に針管66が挿入されて、刃先の突出状態で離脱不能に固定される。針ハブ68と針管66の固定は、接着剤による接着や高周波溶着等が好適に用いられる。なお、針ハブ68は、塩化ビニルやポリカーボネートなどの合成樹脂材料で形成されることが好ましい。
さらに、針ハブ68の外径寸法は、軸方向中間部分において先端側が基端側よりも大きくされており、針ハブ68の軸方向中間部分には径方向外方に突出する係止面74が形成されている。また、針ハブ68の先端部には、先端に行くに連れて縮径するテーパ部76と、テーパ部76の先端から一定の径寸法をもって更に針ハブ68の先端側に突出する当接部としての筒状の小径突出部78が一体形成されている。テーパ部76における大径側端部の外径寸法は、ポート10の針挿通孔37における中央案内面42の大径側端部の径寸法より小さく、且つ、中央案内面42の小径側端部の径寸法よりも僅かに大きくされている。また、小径突出部78の外径寸法は、針挿通孔37における中央案内面42よりも基端側に挿通可能な大きさで中央案内面42の小径側端部の径寸法と略等しくされている。また、小径突出部78のテーパ部76からの突出寸法は、カバー16の天面部38の厚さ寸法よりも大きくされている。
このような針ハブ68に対して、針保護フード70が外挿されている。針保護フード70は、針ハブ68と同様の材料で形成された略筒形状とされており、好適には、針管66の視認を可能とするために、有色又は無色の透明とされる。針保護フード70において軸方向でやや基端部寄りの部位には、先端部に向けて次第に拡径する拡径部80が形成されており、かかる拡径部80を挟んだ基端側と先端側には、略一定の径寸法をもって延びる小径筒状部82と大径筒状部84がそれぞれ形成されている。なお、大径筒状部84の軸寸法は、ポート10におけるカバー16の軸寸法よりも大きくされている。
また、針保護フード70の内周面85は段付形状とされており、拡径部80と大径筒状部84の接続部分には、内方に突出する規制段差面86が形成されている一方、拡径部80の軸方向中間部分には、内方に突出する係合段差面88が形成されている。これにより、針保護フード70の内周面は、先端部から基端部に行くに連れて、規制段差面86および係合段差面88を経て段階的に小径とされている。そこにおいて、針保護フード70における規制段差面86から先端側の内径寸法、換言すれば、大径筒状部84の内径寸法は、ポート10のカバー16に外挿可能な略一定の大きさとされる一方、係合段差面88から基端側の内径寸法は、針ハブ68に設けられた係止面74の外径寸法よりも小さく、針ハブ68において係止面74よりも基端部側の外径寸法と略等しい略一定の大きさとされている。
さらに、大径筒状部84における内周面85には、大径筒状部84の内方に突出する一対の係止突部90が、大径筒状部84の径方向で対向する位置に一体形成されている。これら一対の係止突部90は互いに同様の形状とされており、針保護フード70の軸方向に延びる略矩形状を有すると共に、その基端側端部92は大径筒状部84の周方向に延びる直線形状とされている一方、先端側端部94は先細形状とされている。なお、係止突部90の軸寸法は、ポート10における軸方向案内溝46の軸寸法と同じか又はそれよりも大きくされていると共に、係止突部90の幅寸法(大径筒状部84の周方向寸法)は、軸方向案内溝46および係止凹所57の幅寸法(カバー16の周方向寸法)と略等しくされている。また、係止突部90の大径筒状部84の内周面85からの突出寸法は、案内溝44の溝深さ寸法と略等しくされている。
なお、拡径部80の外周面上には、コネクタ12をポート10に接続する際に指で把持し易くするために、リブ96が設けられている。リブ96の形状および数は特に限定されないが、好適には、針保護フード70の基端部寄りの外周面に、等間隔で複数設けられる。更に、針保護フード70の周方向でそれらリブ96の間には、窪み98が設けられており、窪み98を指で押さえることによって針保護フード70をより把持し易くされている。
また、大径筒状部84には、ポート10が接続される輸液ライン13との干渉を回避するために(図11参照)、針保護フード70の先端面に開口する切欠100が径方向で対向して一対形成されている。これにより、本実施形態のように、輸液ライン13の末端に設けられたポート10と、後述する図11に例示するように、輸液ライン13の経路上に設けられたポート10の何れにも接続することが出来る。なお、切欠100の大径筒状部84の周方向での寸法は、輸液ライン13の太さや、ポート10への接続に際する針保護フード70の回転角度等を考慮して適宜に設定される。
さらに、大径筒状部84の外周面には、係止突部90と重なる位置に、係止突部90の位置を示すための指標102が形成されていると共に、大径筒状部84の外周面において指標102の近傍には、ポート10への接続操作に際する針保護フード70の操作方向を示す矢印104が形成されている。本実施形態においては、指標102は大径筒状部84の外周面に開口して大径筒状部84の軸方向に延びる凹溝形状とされている一方、矢印104は、大径筒状部84の外周面上に突出して針保護フード70に一体形成されているが、これら指標102や矢印104をシールや印刷等によって形成する等しても良い。
このような構造とされた針保護フード70の先端部側から、針ハブ68の基端部が挿入される。針ハブ68の針保護フード70への挿入は、針ハブ68の係止面74が針保護フード70の係合段差面88に係止されることによって規制される。これにより、針保護フード70は、係止面74で先端側への移動が規制される。そして、針保護フード70の基端部側から突出された針ハブ68の基端側端部に、薬液ライン14を構成するチューブ65の末端が外挿される。そこにおいて、針保護フード70から突出された針ハブ68の基端部側の外周面には、針保護フード70の基端側への移動を規制するストッパが設けられることが好ましく、特に本実施形態においては、針保護フード70の基端側端縁部の内径寸法が、チューブ65の内径寸法と外径寸法の間に設定されていることによって、チューブ65で基端側への移動が阻止されるようになっており、該チューブ65がストッパとして用いられている。
これにより、針保護フード70は、針ハブ68に非固定的に外挿されて、針ハブ68に対する略同一中心軸回りで相対回転可能に組み付けられている。かかる組み付け状態において、針管66が針保護フード70と略同一中心軸上に延び出されて、針管66の外周が大径筒状部84で覆われる。更に、針保護フード70の先端縁部106は、針管66よりも先端側に位置されており、針保護フード70の内周面に形成された係止突部90の先端側端部94は、針管66よりも先端側に位置されるようになっている。これにより、誤穿刺のおそれも軽減される。
このような構造とされたポート10とコネクタ12を接続する際には、先ず、ポート10の先端側端面54とコネクタ12の針管66の針先を同一中心軸上で対向位置させてコネクタ12をポート10に接近させることによって、針保護フード70をカバー16に外挿する。それと共に、図9(a)に示すように、コネクタ12の係止突部90をポート10における軸方向案内溝46の先端側端部52から挿入する。なお、図9(a)〜(d)の上側の図においては、係止突部90と案内溝44との位置関係の把握を容易とするために、コネクタ12側は針保護フード70の大径筒状部84を省略して係止突部90のみを図示する。そこにおいて、係止突部90の先端側端部94が先細形状とされていることから、軸方向案内溝46への挿入が容易とされている。
そして、軸方向案内溝46と係止突部90との案内作用に基づいてコネクタ12を軸方向でポート10の基端側に更に押し込むことによって、針管66の針先が針挿通孔37を通じて弾性シール28に突き刺さる。コネクタ12の軸方向への押し込みは、図9(b)に示すように、係止突部90の基端側端部92が解除防止突起60の突出端面61を越えるまで行なわれる。この状態で針管66の針先は弾性シール28を貫いて、ハウジング15の内部空間に開口されることとなる。また、この状態で、係止突部90の略全体がカバー16の基端側端面56から突出される。それと共に、針ハブ68の小径突出部78が針挿通孔37に挿入されて、弾性シール28に押し当てられる。ここにおいて、針挿通孔37に中央案内面42が形成されていることから、小径突出部78が針挿通孔37に対して軸ずれしていても、針挿通孔37に対する同一中心軸上に案内することが出来る。また、針保護フード70の内周面に形成された規制段差面86がカバー16の先端側端面54で係止されることによって、コネクタ12のポート10に対する軸方向の過大変位が制限されるようになっており、これにより、針管66の弾性シール28への過度の刺し込みによる弾性シール28の過大変形のおそれも軽減される。
次に、図9(c)に示すように、小径突出部78の弾性シール28への押し当て状態を維持しつつ、コネクタ12の針保護フード70をポート10に対して回動操作することによって、係止突部90を周方向案内溝50に沿って移動させる。ここにおいて、針保護フード70が針ハブ68に対して回転可能とされていることから、チューブ65を捻ることなく針保護フード70の回動操作を行なうことが出来る。この回動操作において、係止突部90の基端側端部92が解除防止突起60の突出端面61で係止されることによって、弾性シール28の押付反力に抗しつつ容易に針保護フード70を回転操作することが出来る。更に、係止突部90の基端側端部92と解除防止突起60の突出端面61が互いに平坦面形状とされていることから、解除防止突起60に対する係止突部90の周方向相対変位に際して、係止突部90においては針保護フード70のガタツキも軽減できる。
そして、図9(d)に示すように、係止突部90がストッパ面59に当接することによって、針保護フード70のポート10に対する回動が阻止されると共に、係止突部90が係止凹所57と軸方向で上下に位置される。このように、本実施形態においては、解除防止突起60で係止突部90の周方向の移動を許容する一方、ストッパ面59で係止突部90の係止凹所57との係合位置を超える移動が阻止されるようになっており、これら解除防止突起60およびストッパ面59を含んでストッパ機構が構成されている。
そして、手指の針保護フード70への把持力を緩めると、弾性シール28への押付反力に基づいて針ハブ68が押し込み方向と反対方向(図9中、上方向)に押し戻される。これにより、係止突部90が係止凹所57に嵌め入れられて、係止突部90の基端側端部92が係止凹所57の係止面58で係止されることによって、針保護フード70のカバー16に対する抜け方向の変位が規制され、針管66の弾性シール28からの抜けが防止される。このように、本実施形態においては、係止凹所57と係止面58、および係止突部90を含んで抜止機構が構成されている。そして、ポート10へのコネクタ12の接続が完了し、弾性シール28に貫通された針管66の抜けを防止することが出来、針管66を通じて輸液ライン13と薬液ライン14が互いに連通される。
このような構造とされたポート10においては、ポート10に設けられた案内溝44とコネクタ12に設けられた係止突部90との案内作用により、針保護フード70をポート10に対して基端側へ軸方向に押し込んだ後に、ポート10の周方向に回動させて、係止突部90を係止凹所57に入り込ませるという簡易な操作で、コネクタ12とポート10との接続を行なうことが出来る。特に係止突部90の係止凹所57への入り込みは、弾性シール28による針保護フード70への押付反力で半ば自動的に行なわれることから、実質的には針保護フード70をポート10の軸方向に押し込んだ後に周方向に回動させるのみで接続を完了することが出来る。
そこにおいて、係止突部90の先端側端部94が針管66の針先よりも先端側に位置されていることから、針管66の針先が弾性シール28に突き刺さる前に、係止突部90がポート10の軸方向案内溝46に挿入されて、コネクタ12においては針管66をポート10に対する同一中心軸上に位置決めすることが出来る。それと共に、これら係止突部90と軸方向案内溝46による針保護フード70のポート10の軸方向への案内作用を、針管66が弾性シール28に突き刺さる前から発揮することが出来て、針管66を軸方向に安定的に案内することが出来る。
そこにおいて、係止突部90が軸方向に所定寸法を有する矩形状とされていると共に、軸方向案内溝46が係止突部90と略等しい一定の幅寸法とされていることから、係止突部90をガタツキ無く軸方向に案内することが出来て、針管66を弾性シール28の軸方向により安定して移動させることが出来る。これにより、針管66のブレを抑えて、弾性シール28内へと押し進められる針管66のゆがみの発生をより有効に防止することが出来ると共に、針管66の弾性シール28からの抜去も安定的に行なうことが出来る。
さらに、周方向案内溝50がポート10の先端部で大径とされたカバー16に形成されて、周方向案内溝50の基端側が切欠形状とされることによってカバー16の基端側に開放されていることから、針保護フード70のポート10に対する回動操作は、係止突部90をカバー16の基端側端面56から基端側に突出させた状態で行なうことが出来る。これにより、周方向案内溝50のカバー16の軸方向における寸法を係止突部90の軸方向寸法より大きくせずとも、軸方向に所定寸法を有する係止突部90の周方向の移動を可能にすることが出来る。これにより、カバー16の軸方向寸法を小さくすることが出来て、ポート10内で滞留する輸液量を軽減することが出来る。
加えて、軸方向案内溝46と係止凹所57の間に設けられた解除防止突起60は、周方向案内溝50の幅方向(図9中、上下方向)でカバー16の先端側(図9中、上側)に部分的に形成されている。従って、周方向案内溝50は周方向(図9中、左右方向)の全長に亘って連続してカバー16の基端側端面56に開口されている。これにより、針保護フード70の回動操作に際して、係止突部90を解除防止突起60の突出端面61よりも基端側を回り込むようにして、係止凹所57との係合位置まで移動させることが出来る。その結果、例えば解除防止突起60が周方向案内溝50の幅方向の全体に亘って形成されている場合に比べて、係止突部90を解除防止突起60に乗り上げて乗り越えさせることも無しに係止凹所57との係合位置まで移動させることが出来る。これにより、係止突部90の乗り越えに伴う擦れ等に起因する解除防止突起60のヘタリも抑えられる。その結果、コネクタ12のポート10への着脱が頻回繰り返して行なわれる場合でも、解除防止突起60による解除防止効果を長期に亘って維持することが出来る。
そして、コネクタ12がポート10に接続された状態においては、弾性シール28による針管66の保持に加え、針ハブ68の小径突出部78が弾性シール28に押し付けられる押付反力を利用して係止突部90の係止凹所57への入り込み状態が維持される。従って、コネクタ12をポート10から離脱する際には、小径突出部78の弾性シール28への押圧反力に抗して、コネクタ12を一旦ポート10の基端方向に押し込んで、係止突部90を係止凹所57から離脱させるという積極的な操作が必要となり、コネクタ12がポート10から不意に外れるおそれを軽減して、より優れた離脱防止機能を発揮することが出来る。
さらに、係止突部90の係止凹所57への入り込み状態では、係止突部90および係止凹所57が何れも矩形とされており、係止凹所57においてカバー16の周方向両側にストッパ面59と解除防止突起60が形成されていることによって、係止突部90の係止凹所57への入り込み状態をがたつき無く維持することが出来ると共に、係止突部90のカバー16の周方向変位を阻止することが出来る。特に、解除防止突起60の高さ寸法がカバー16の外周面41と同じ高さ寸法とされていることによって、係止突部90の離脱方向への変位を有効に阻止することが出来る。
次に、図10に、本発明の第二の実施形態としてのポート110を示すと共に、図11に、該ポート110とコネクタ12との接続状態を示す。なお、以下の説明において、前記第一の実施形態と実質的に同様とされた部材および部位には、図中に同一の符号を付することにより、その説明を省略する。本実施形態におけるポート110は、輸液ライン13を構成するポートルート112に直接に設けられており、ポートルート112には、前記実施形態のハウジング15と略同様の開口部114が形成されている。そして、開口部114に対して弾性シール28が挿入されてカバー16が外嵌固定されることによって、開口部114が弾性シール28で液密に封止されている。
図11においては、ポートルート112上に3つの開口部114が形成されており、それら開口部114のそれぞれに弾性シール28とカバー16が組み付けられることによって、ポートルート112上に3つのポート110が設けられている。かかるポート110には、前述のコネクタ12が前記実施形態と同様の操作で接続可能であり、図11には、ポートルート112上に複数設けられたポート110の一つに対してコネクタ12が接続された状態を示す。そこにおいて、前述のように、コネクタ12における針保護フード70の大径筒状部84に一対の切欠100が形成されていることから、切欠100でポートルート112との干渉を避けてポート110に接続することが可能とされている。
このように、本発明に従う構造とされた医療用ライン接続具は、輸液ラインの末端のみならず、輸液ラインの経路上に設けることも可能である。特に本発明によれば、案内溝44がカバー16に形成されていることから、ポートルート112に対して特に複雑な加工を要すること無しにポート110をポートルート112上に形成することが出来る。更に、前記実施形態におけるポート10と本実施形態におけるポート110の外径寸法が等しい場合には、カバー16および弾性シール28としてそれぞれ同一部品を共通して用いることも出来て、製造効率の向上や製造コストの低減を図ることが出来る。
また、図12に、本発明の第二の実施形態としてのコネクタ120を示す。コネクタ120は、薬液ライン14を構成するシリンジ122の先端部分に接続可能とされたものであり、針保護フード70および針ハブ68の基端部側にアダプタ124が外挿されている。アダプタ124は中央孔を有する略円筒形状とされており、接着等により針保護フード70および針ハブ68の外周面に対して固定されている。更に、アダプタ124の基端部には雄ねじ部126が形成されている。
そして、雄ねじ部126がシリンジ122先端のルアーチップ128に形成された雌ねじ部130と螺合されることによって、コネクタ120がシリンジ122に接続可能とされている。これにより、針管66の内部空間とシリンジ122の内部空間が接続されるようになっている。このように、本発明に従う構造とされたコネクタは、前記第一の実施形態の如きチューブ65に接続するのみならず、シリンジ122に接続することも可能である。
以上、本発明の幾つかの実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、これらの実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、前記実施形態においては、弾性シール28は略一定の径寸法を有する円形断面とされて、弾性シール28においてポート10の先端側の軸方向端面が針ハブ68の小径突出部78との当接面とされていたが、弾性シール28における小径突出部78の当接部位の形状を突起形状等適宜に設定することによって、針ハブ68への当接反力を調節する等しても良い。
また、係止突部90および係止凹所57の係止面58の形状は、前記実施形態の如き矩形状に限定されるものではなく、例えば係止突部90を円柱形状で針保護フード70から突出形成する一方、係止凹所57をかかる係止突部90に対応する湾曲凹状とするなどしても良い。加えて、例えば、針保護フード70の内周面85に係止凹所57を含む案内溝44を形成する一方、カバー16の外周面41に係止突部90を形成する等しても良い。