以下、実施の形態を図面に基づき説明する。
図1に示すように、本実施形態の蒸気タービン発電プラント1は、給水ポンプ16、給水系統11、ボイラ2、主蒸気管19a、再熱蒸気管19b、主蒸気管19aに設けられた加減弁8及び再熱蒸気管19bに設けられたインターセプト弁9を含む蒸気供給量制御弁17、排気圧センサ15、高圧タービン3及び中・低圧タービン6を有する蒸気タービン18、並びに復水器10を主に備えている。これに加えて、蒸気タービン発電プラント1は、プラント制御装置7、回転数検出器12、発電機5及び電流検出器14をさらに備えている。
図1に示すように、給水ポンプ16は、復水器10で得られる水を、給水系統11を介してボイラ2(の過熱器2a)に供給する。ボイラ2は、図1に示すように、過熱器2a及び再熱器2bを内蔵する。過熱器2aは、給水ポンプ16から送られてきた水を過熱して、高圧タービン3へ主蒸気管19aを介して供給すべき主蒸気を生成する。一方、再熱器2bは、高圧タービン3及び排気圧センサ15を介して送られてきた蒸気を再熱して、中・低圧タービン6へ再熱蒸気管19bを介して供給すべき再熱蒸気を再生成する。
ボイラ2からの蒸気の供給を受けて動作する蒸気タービン18は、発電機5(発電機の回転子)を駆動させる動力(駆動力)を当該発電機5に付与する。蒸気供給量制御弁17は、弁自体の開度が調整されることによって、蒸気タービン18へ供給される蒸気の供給量を制御する。上述した高圧タービン3及び中・低圧タービン6の回転軸は、同軸に配置されて蒸気タービン18を構成している。
具体的には、蒸気供給量制御弁17を構成する一方の加減弁8は、図1に示すように、ボイラ2の過熱器2aから蒸気タービン18の高圧タービン3に過熱された主蒸気を移送する主蒸気管19aに設けられている。つまり、加減弁8は、ボイラ2の過熱器2a側から高圧タービン3へ供給される主蒸気の供給量を制御する。蒸気供給量制御弁17を構成する他方のインターセプト弁9は、図1に示すように、ボイラ2の再熱器2bから蒸気タービン18の中・低圧タービン6に再熱蒸気を移送する再熱蒸気管19bに設けられている。すなわち、インターセプト弁9は、ボイラ2の再熱器2b側から中・低圧タービン6へ供給される再熱蒸気の供給量を制御する。
ここで、本実施形態の蒸気タービン発電プラント1が備える機能上の特徴を明確にするために、まず、蒸気供給量制御弁17のうちの加減弁8の開度の制御を中心に説明する。インターセプト弁9の開度の制御については、その後に説明する。
なお、図1の系統図からわかるように、高い応答性で蒸気タービン18を制御しようとする場合、インターセプト弁9の開度よりも、加減弁8の開度を調整するほうが有効である。つまり例えば、蒸気タービン18への蒸気の供給を迅速に停止させることを考えた場合、図1に示すように、インターセプト弁9の全閉では、直接的には中・低圧タービン6への再熱蒸気の供給だけが停止されるものの、加減弁8を全閉した際には、高圧タービン3への主蒸気及び中・低圧タービン6双方への再熱蒸気の供給が短時間で停止される。このように、蒸気タービン18の駆動力をレスポンス良く調整するには、加減弁8における開度の調整が効果的である。
また、図1に示すように、復水器10は、冷却器10aを備えており、中・低圧タービン6から排気された蒸気を冷却・凝縮させ飽和液(水)に戻す、いわゆるコンデンサである。排気圧センサ15は、蒸気タービン18(の高圧タービン3)から実際に排気される蒸気の排気圧力を検出する。この排気圧センサ15は、発電機5を駆動する機械的な動力(パワー)を検出する動力検出部として機能する。
電流検出器14は、発電機5に流れる電流の値を検出する。発電機5を流れる電流値と発電機5に加わる負荷とは比例関係にあるため、発電機5に流れる電流値を検出することで、電流検出器14を、発電機5に加わる負荷(ロード)を検出する負荷検出部として機能させることができる。一方、回転数検出器12は、蒸気タービン18(高圧タービン3及び中・低圧タービン6)の単位時間あたりの回転数(回転速度)を検出する。
図2は図1におけるプラント制御装置7の詳細を示した構成図である。
図1、図2に示すように、プラント制御装置7は、本実施形態の蒸気タービン発電プラント1の発電機5が接続される電力系統(送電網)において、負荷遮断などが生じた場合に有用な装置である。このプラント制御装置7は、図2に示すように、アンバランス量算出部51及び動力調整部52を備える。動力調整部52は、アンバランス量算出部51に算出されたアンバランス量(上記動力から負荷を減算した偏差)が閾値以上である場合に、当該閾値以上のアンバランス量の値に対応させて、蒸気タービン18の動力を調整する機能を有している。より詳細には、動力調整部52は、アンバランス量の値に対応させて蒸気タービン18の動力を調整するために、アンバランス量の関数として動力調整量(すなわち蒸気供給量制御弁17(加減弁8)の開度の設定値を表す第1の弁開度設定信号N)を発生させる関数発生器であるファンクションジェネレータ33を備え、アンバランス量算出部51に算出されたアンバランス量が閾値以上である場合に、動力調整部52が、前記関数発生器が発生させた第1の弁開度設定信号Nに基づいて前記蒸気タービン18の動力を調整できるように構成されている。
ここで、本実施形態の蒸気タービン発電プラント1では、上記した動力調整部52は、後述する変化率算出器22を備えており、この変化率算出器22の算出結果も動力の調整に利用する。つまり、本実施形態の動力調整部52は、変化率算出器22で算出される変化率及び前述したアンバランス量がそれぞれ閾値以上である場合に、閾値以上のアンバランス量の値に対応させて、すなわちファンクションジェネレータ33が発生させた第1の弁開度設定信号Nに基づいて蒸気タービン18の動力を調整できるように構成される。
このような動力調整部52は、図2に示すように、ガバナ制御部53、上記した変化率算出器22、負荷遮断判定部55、セット・リセット回路31、偏差記憶部として機能する偏差ホールド回路32、ファンクションジェネレータ33、及び動力調整処理選択部54に加え、前述した蒸気供給量制御弁17によって実現されている。
ガバナ制御部53は、図2に示すように、蒸気タービン18を一定の回転速度(定格の回転数)に調速するためのガバナ制御量(調速制御量)の値に対応させて発電機5の動力を調整する。このガバナ制御部53は、定格回転数出力器35、減算器36、乗算器37、負荷設定器38及び加算器39を備えている。
減算器36は、回転数検出器12によって実際に検出された蒸気タービン18の単位時間あたりの実回転数(回転速度)を取得する。また一方で、減算器36は、蒸気タービン18における仕様上の定格回転数(蒸気タービン18の100%のフル稼働状態を想定した理論値上の回転速度)を定格回転数出力器35から取得する。さらに、減算器36は、それぞれ取得した回転数を相対的なパーセンテージに置き換えた後、この定格回転数(100)[%]から実回転数[%]を減算して得た回転数偏差信号Q[%]を乗算器37に出力する。
乗算器37は、入力した回転数偏差信号Q[%]に速度調定率Rの逆数を乗算して得た回転速度補正信号S[%]を加算器39に出力する。ここで、速度調定率Rとは、(調速器の設定を変えずに)蒸気タービン18の定常負荷を変えたときに、蒸気タービン18の定常回転数がどれくらい変化するかということを表す比率であり、一般的には5%又は4%といった値が適用される。したがって、乗算器37には、速度調定率Rの逆数1/Rとして、例えば20又は25などの値が設定されており、この値(ゲイン)が回転数偏差信号Qに乗算され、この乗算結果である回転速度補正信号S[%]が加算器39に出力される。
一方、負荷設定器38は、蒸気タービン18に対し所定の負荷を設定するものであり、この負荷設定のための負荷設定値指令信号T[%]を加算器39に出力する。加算器39は、負荷設定器38から入力した負荷設定値指令信号T[%]と乗算器37から入力した回転速度補正信号S[%]とを加算して得たガバナ制御量(調速制御量)としての第2の弁開度設定信号U[%]を、動力調整処理選択部54(の後述する低値選択ゲート34及び切替器41の端子41b)に出力する。
この加算器39は、蒸気供給量制御弁17を構成する一方の加減弁8の開度を(仮)設定するために、加減弁8の開度をパーセンテージで表した上記第2の弁開度設定信号Uを出力する。具体的には、加算器39は、加減弁8の開度を例えば全開に設定する場合、値が100%の第2の弁開度設定信号Uを出力し、これに対して、加減弁8の開度を全閉に設定する場合、値が0%の第2の弁開度設定信号Uを出力する。
ここで、蒸気タービン発電プラント1における通常の運転中においては、回転数検出器12の出力に基づく蒸気タービン18の実回転数[%]は、定格回転数出力器35の出力に基づく定格回転数[%]と同じ100%である。この際、回転数偏差信号Q[%]は零であり、かつ回転速度補正信号S[%]も零である。つまり、この場合、加算器39から出力される第2の弁開度設定信号U[%]は、負荷設定器38から出力される負荷設定値指令信号T[%]と同じ値となる。
したがって、ガバナ制御部53は、蒸気タービン18の実回転数をモニタしつつ、蒸気タービン18の調速制御(フィードバック制御)を行う。また、このようにして構成されるガバナ制御部53は、実質的に、蒸気タービン18の過速(オーバースピード)を抑制する機能をも有していることになる。
一方、アンバランス量算出部51は、動力検出部である排気圧センサ15及び負荷検出部としての電流検出器14による検出結果に基づいて、蒸気タービン18を駆動する動力と負荷との不均衡の程度を表すアンバランス量(動力と負荷との相対的な偏差)を算出する。すなわち、アンバランス量算出部51は、図2に示すように、定格排気圧力値出力器25、除算器26、定格電流値出力器20、除算器21、及び減算器27を備える。
定格排気圧力値出力器25は、図1、図2に示すように、蒸気タービン18の定格運転時において、高圧タービン3から排気されることが想定される蒸気についての仕様(理論値)上の定格排気圧力値K1を予め記憶している。定格排気圧力値出力器25は、この定格排気圧力値K1を除算器26に出力する。除算器26は、この定格排気圧力値K1を取得する一方で、図1、図2に示すように、排気圧センサ15によって検出された高圧タービン3からの実際の蒸気の排気圧(実排気圧力値)を取得する。
また、除算器26は、取得した実排気圧力値を定格排気圧力値K1で除算し、さらにこの除算結果をパーセンテージで表した蒸気タービン動力信号D[%]を減算器27に出力する。つまり、除算器26は、定格運転時に高圧タービン3から排気され得る蒸気の定格排気圧力値K1を基準(100%)として、実際にどの程度の割合の排気圧にて高圧タービン3から蒸気が排気されているのか(蒸気タービン18の現状の動力)をパーセンテージで表した信号を出力する。
定格電流値出力器20は、図1、図2に示すように、蒸気タービン18の定格運転時において、発電機5に流れることが想定される定格電流値K2を予め記憶しており、この定格電流値K2を除算器21に出力する。除算器21は、この定格電流値K2を取得する一方で、図1、図2に示すように、電流検出器14によって検出された実際に発電機5に流れる電流値(実電流値)を取得する。
また、除算器21は、取得した実電流値を定格電流値K2で除算し、さらにこの除算結果をパーセンテージで表した発電機負荷信号A[%]を減算器27及び変化率算出器22へ出力する。すなわち、除算器21は、定格運転時に発電機5に流れ得る定格電流値K2を基準(100%)として、どの程度の割合の電流値が実際に発電機5に流れているのか(発電機5に加わる現状の負荷)をパーセンテージで表した信号を出力する。
減算器27は、入力した蒸気タービン動力信号D[%]から発電機負荷信号A[%]を減算することで得られた動力と負荷との相対的な偏差(アンバランス量)である動力負荷偏差信号E[%]を負荷遮断判定部55(の後述する偏差コンパレータ29)及び偏差ホールド回路32へ出力する。
また、図2に示すように、変化率算出器(変化率算出部)22は、負荷検出部としての電流検出器14により検出される電流値の変化率、つまり発電機5に加わる負荷の変化率を算出する。具体的には、変化率算出器22は、除算器21から出力される発電機負荷信号A[%]を時間微分して得た微分値の例えば正負を反転(又は発電機負荷信号Aを微分した微分値における絶対値を取得)して当該発電機負荷信号A[%]の変化率を算出し、算出したこの変化率を表す負荷変化率信号Bを負荷遮断判定部55(の後述する変化率コンパレータ24)へ出力する。
負荷遮断判定部55は、アンバランス量算出部51によりアンバランス量として算出される偏差の値(動力負荷偏差信号E[%])が、後述する閾値記憶部28aに記憶された閾値以上である場合に、発電機5が接続されていた電力系統に負荷遮断が発生したと判定する。ここで、本実施形態では、負荷遮断が発生したか否かの判定精度を高めるために、負荷遮断判定部55は、前述した偏差の値(動力負荷偏差信号E[%])、及び発電機負荷信号A[%]の変化率がそれぞれの閾値以上である場合にはじめて、上記蒸気負荷遮断が発生したと判定する。
つまり、本実施形態において、動力調整部52は、アンバランス量及び負荷の変化率がそれぞれ閾値以上である場合に、閾値以上のアンバランス量の値に対応させて動力を調整する。なお、上述した負荷遮断とは、本実施形態の蒸気タービン発電プラント1を含む複数の発電プラントが所定の電力系統に接続されている状態において、蒸気タービン発電プラント1(発電機5)自体を電力系統から切り離す一般的な負荷遮断と、蒸気タービン発電プラント1以外の他の発電プラントや電力供給先となる負荷側の一部を電力系統から切り離すいわゆる遠方負荷遮断と、の両方の概念を含むものである。
図2に示すように、この負荷遮断判定部55は、変化率閾値設定器23、変化率コンパレータ24、上述した閾値記憶部28aを有する偏差閾値設定器28、偏差コンパレータ29、及びアンド回路30を備えている。変化率閾値設定器23は、発電機負荷信号A[%]の変化率(発電機5に加わる負荷の減少率)として許容できる限界値となる変化率許容閾値K4を変化率コンパレータ24に対して設定する。
変化率コンパレータ24は、発電機負荷信号A[%]の変化率である負荷変化率信号Bが変化率許容閾値K4以上になったこと(負荷が規定値以下に急減したこと)を検出したときに、このタイミングで負荷急減信号Cをアンド回路30へ出力する。すなわち、変化率コンパレータ24は、実質的に、発電機5に流れる電流値の急激な減少を検出した場合に、発電機5に加わる負荷の急激な減少を示す信号を出力する。
閾値記憶部28aは、発電機5を駆動する動力から、発電機5に加わる負荷を相対的に減算して得られる偏差の値を規定し、規定したその値をアンバランス量についての閾値として記憶する。より具体的には、閾値記憶部28aは、図2に示すように、減算器27から出力される動力負荷偏差信号E[%]の値として許容できる限界値となる偏差許容閾値K3を記憶している。
つまり、偏差閾値設定器28は、閾値記憶部28aに記憶された偏差許容閾値K3を偏差コンパレータ29に対して設定する。偏差コンパレータ29は、動力負荷偏差信号E[%]の値が偏差許容閾値K3以上になったことを検出したときに、このタイミングで偏差超過信号Fをアンド回路30へ出力する。詳述すると、偏差コンパレータ29は、発電機5の動力と負荷との不均衡の程度が許容範囲を超えた場合に、この旨を表す信号を出力する。ここで、本実施形態では、閾値記憶部28aは、値「10」%を、偏差許容閾値K3として記憶している。
アンド回路30は、図2に示すように、変化率コンパレータ24から出力される負荷急減信号C、偏差コンパレータ29から出力される偏差超過信号Fをそれぞれ入力可能である。アンド回路30は、これら負荷急減信号C及び偏差超過信号Fの双方が例えば所定期間内に入力された場合、AND条件を満足したことを示すセット信号Jをセット・リセット回路31(のセット側)へ出力する。
セット・リセット回路31は、アンド回路30からセット信号Jを入力した場合、負荷遮断の発生を検知したことを示すPLU(Power Load Unbalance:パワーロードアンバランス)検知信号Pを、偏差ホールド回路32及び動力調整処理選択部54(の後述する切替器41)へ例えば継続的に出力する。セット・リセット回路31は、リセット(RESET)信号が入力された場合、PLU検知信号Pの出力を停止させる。
このリセット信号を発生(リセット側に入力)させる条件としては、PLU検知信号Pが出力されている状態において、負荷急減信号C及び偏差超過信号Fの双方が、例えば一定の期間、アンド回路30へ入力されなかった場合や、また、少なくとも偏差超過信号Fが、一定の期間、アンド回路30へ入力されなかった場合などに、リセット信号を発生させることなどが例示される。
偏差ホールド回路32は、前記負荷遮断判定部55により負荷遮断が発生したと判定されたタイミングで、アンバランス量算出部51によりアンバランス量として算出された前記閾値以上の偏差の値を記憶する偏差記憶部である。具体的には、偏差ホールド回路32は、図2に示すように、PLU検知信号Pが出力されたときに、このタイミングで減算器27から出力されている動力負荷偏差信号E[%]をホールド(格納)し、これを偏差ホールド信号M[%]としてファンクションジェネレータ33へ出力する。
このように、PLU検知信号Pが出力されたときの動力負荷偏差信号E[%]をホールドし、(後述するように)ホールドした動力負荷偏差信号E[%]の値に基づいて、加減弁8の開度を設定することで、負荷遮断が発生したと判定された瞬間、つまり例えば電気事故直後の状況に応じた適切な制御が可能となる。
図2に示すように、ファンクションジェネレータ33は、偏差ホールド回路32から入力した偏差ホールド信号M[%]の値に応じた第1の弁開度設定信号N[%]を動力調整処理選択部54(の後述する低値選択ゲート34)へ出力する。具体的には、ファンクションジェネレータ33は、関数記憶部33a及び開度設定部33bを備えている。関数記憶部33aは、偏差許容閾値K3[%](本実施形態では10[%])以上の範囲において、動力負荷偏差信号E[%]の値の増加に相反して蒸気供給量制御弁17の加減弁8の開度[%]を減少させるように当該開度の調整内容を定めた図3に示す開度調整関数33cを記憶している。
開度調整関数33cは、図3に示すように、加減弁8の開度の値と動力負荷偏差信号E[%]の値との関係を表している。詳細には、開度調整関数33cは、動力負荷偏差信号E[%]の値が、それぞれ「10[%]以下のとき」、「25[%]のとき」、「40[%]以上のとき」において、加減弁8の開度[%]の値が、各々「100[%]の全開状態」、「50[%]の半閉鎖状態」、「0[%]の全閉状態」となる関数である。
より具体的には、図3に例示する開度調整関数33cでは、横軸に動力負荷偏差信号E[%]の値が表わされ、縦軸に加減弁8の開度[%]の値が表わされている。開度調整関数33cは、動力負荷偏差信号E[%]の値が10%から40%に増加する区間において、加減弁8の開度[%]の値を、100%(全開)から0%(全閉)に連続的に減少させる調整内容が定められている。
すなわち、このような開度調整関数33cは、動力負荷偏差信号E[%]の値が大きいときには、発電機5を流れる電流が大きく低減しかつ発電機5の空回りの程度が大きくなっており、このため、残存するイナーシャがより顕著に蒸気タービン18のオーバースピードを引き起こすので、その際には加減弁8の開度を小さくして、オーバースピードの抑制効果を高めるように設定されている。さらに、開度調整関数33cは、この一方で、動力負荷偏差信号E[%]の値が小さいときには、加減弁8の開度を大きくして、蒸気タービン18のオーバースピード抑制の要素よりも、電力供給の継続を重視するように設定されている。
さらに、図3の例では、説明の便宜上、開度調整関数33cは、横軸をX、縦軸をYとするXY座標上の(10、100)と(40、0)とを通る比較的単純な右下がりの直線で表現されている。ここで、蒸気タービン18が100%で稼働する定格運転中では、回転系においていかなる部分負荷よりも残存するイナーシャが大きく、このため、蒸気タービン18の速度も最大となるものの、エネルギ効率も良いことから、通常の商用運転では定格運転が適用される。
したがって、開度調整関数33c中に加減弁8の開度を実際に設定する際には、蒸気タービン18及び発電機5を含む回転系のダイナミクス計算に基づき、蒸気タービン18の定格運転中に負荷遮断が発生し得る状況にさらに適切なマージンを付加したうえで、過速度トリップ(蒸気タービンの100%の定格回転数を基準にすると一般に110%以上の回転数になる状況)が発生しない範囲で極力大きな開度を設定することが望ましい。
ここで、上述した閾値記憶部28aは、加減弁8の開度を図3に示す開度調整関数33cにより全開に調整するように定めた動力負荷偏差信号Eの値(0[%]〜10[%])についての最大値(10[%])と同じ値で、負荷遮断判定部55が負荷遮断発生の判定基準とする偏差許容閾値K3を記憶している。逆に言うと、開度調整関数33cは、閾値記憶部28aに記憶された偏差許容閾値K3の入力に対して開度100[%]を出力する関数に設定される。
また、開度設定部33bは、関数記憶部33aに記憶された開度調整関数33cと偏差記憶部である偏差ホールド回路32に記憶された偏差ホールド信号M[%]の値とに基づいて、蒸気供給量制御弁17の加減弁8の開度を設定する。より具体的には、開度設定部33bは、偏差ホールド回路32に記憶された偏差ホールド信号M[%]の値から、これに対応する加減弁8の開度の設定値を開度調整関数33cにより求め、求めた加減弁8の開度の設定値を表す第1の弁開度設定信号N[%]を、動力調整処理選択部54(の低値選択ゲート34)へ出力する。
図2に示すように、動力調整処理選択部54は、接点41a、41b、41cが設けられた切替器41、並びに低値選択ゲート34を備えている。低値選択ゲート34は、ファンクションジェネレータ33の開度設定部33bから入力した第1の弁開度設定信号N[%]の値と、ガバナ制御部53の加算器39から入力した第2の弁開度設定信号U[%]の値と、の大小関係を比較し、加減弁8の開度の(仮)設定値が小さいいずれか一方の信号を切替器41の接点41aに出力する。
切替器41は、図2に示すように、上述した低値選択ゲート34から出力される(第1又は第2の)弁開度設定信号N又はU[%]を接点41aより入力し、一方、ガバナ制御部53の加算器39から出力される第2の弁開度設定信号U[%]を接点41bより入力する。また、切替器41は、図2に示すように、負荷遮断が発生したと判定された場合にセット・リセット回路31から出力されるPLU(パワーロードアンバランス)検知信号Pを入力する。
さらに、切替器41は、セット・リセット回路31からPLU検知信号Pが入力される場合、接点41aと接点41cとを電気的に接続して、低値選択ゲート34から入力した信号を加減弁8に向けて出力する。また、切替器41は、セット・リセット回路31からのPLU検知信号Pの入力がない場合、接点41bと接点41cとを電気的に接続して、ガバナ制御部53の加算器39から出力される第2の弁開度設定信号U[%]を加減弁8に向けて出力する。
すなわち、動力調整処理選択部54のこのような機能により、加減弁8の開度は、PLU検知信号Pが出力されていない場合、ガバナ制御部53から出力される第2の弁開度設定信号U[%]の値に応じて制御(蒸気タービン18への調速制御が適用)される。この際、加減弁8の開度調整は、蒸気タービン18の速度フィードバック制御が適用されるので、蒸気タービン18の実際の回転速度を検出した後に、定格回転速度を基準とした開度調整の制御が開始されることになり、このため時間的には比較的緩やかな制御となる。
一方、PLU検知信号Pが出力されている場合(負荷遮断が発生していると判定されている場合)、当該加減弁8の開度は、ファンクションジェネレータ33の開度設定部33bから出力される第1の弁開度設定信号N(偏差ホールド信号Mの値に応じて開度の設定値を変える信号)よって主に制御される。この場合、PLU検知信号Pの発生直後から、数msec〜数十msecオーダの瞬時に、加減弁8の開度が実際に制御される。これにより、例えば電気事故などが起って負荷遮断が発生したと判定された瞬間に発電機5の動力を迅速に低減することができる。なお、PLU検知信号Pが出力されている場合でも、第1の弁開度設定信号Nよりも第2の弁開度設定信号U[%]のほうが低値であるときには、優先的にこの低値である第2の弁開度設定信号U[%]に基づいて加減弁8の開度が制御される。
詳述すると、開度調整関数33cの調整内容を決める際に用いる上記したダイナミクス計算の誤差などによって、蒸気タービン18について想定した以上のオーバースピードが発生する可能性も否定できない。そこで、本実施形態の蒸気タービン発電プラント1のプラント制御装置7には、動力調整処理選択部54が設けられている。
つまり、負荷遮断(PLU検知信号P)の発生直後に、開度調整関数33cの内容による第1の弁開度設定信号N[%]に基づいて50%の開度まで加減弁8が閉操作され、その状態を保持して蒸気タービン18が運転されているうちにオーバースピードが大きくなったと仮定する。この結果、ガバナ制御部53から出力される第2の弁開度設定信号U[%]の値が50%以下の例えば40%になった場合、動力調整処理選択部54の低値選択ゲート34は、開度の値が小さい40%の第2の弁開度設定信号U[%]を選択し、この開度まで加減弁8を閉操作して過速度トリップを回避することなどを可能とする。
したがって、このような動力調整処理選択部54を備えるプラント制御装置7では、負荷遮断直後は迅速に50%の開度まで加減弁8を閉操作し、それでもなお蒸気タービン18がオーバースピ−ドになっていたら、加減弁8の開度をさらに絞るという洗練された制御を実現する。さらにまた、予め加減弁8の開度を例えば30%の開度にして、蒸気タービン18を運転させる部分負荷運転中において、動力負荷偏差信号E[%]の値が25%となる負荷遮断(PLU検知信号P)が発生した場合に、動力調整処理選択部54の低値選択ゲート34は、加減弁8の開度を50%に増加(図3に示す開度調整関数33c中の偏差が25%のときの開度50%を適用)させない機能、すなわち加減弁8の開度を当該30%に保持しガバナ制御部53に加減弁8の開度の制御を委ねる機能、をも兼ね備えているといえる。
また、前述した閾値記憶部28aは、加減弁8の開度を図3に示す開度調整関数33cにより全開に調整するように定めた動力負荷偏差信号Eの値(0[%]〜10[%])についての最大値(10[%])よりも、負荷遮断判定部55が負荷遮断発生の判定基準とする偏差許容閾値K3を小さい値(例えば9[%])にして記憶するものであってもよい。言い換えれば、開度調整関数33cにより開度を全開とするように定めた動力負荷偏差信号Eの最大値と偏差許容閾値K3とを必ずしも同じ値に設定しなくても、PLU検知信号Pの出力後において、発電機5の動力と負荷との不均衡状態を修正することが可能である。いずれにしても、開度調整関数33cは、閾値記憶部28aに記憶された偏差許容閾値K3の入力に対して開度100[%]を出力する関数に設定されている。
具体的には、閾値記憶部28aが、「9%」の値の偏差許容閾値K3を記憶している場合において、(負荷変化率信号Bの値が変化率許容閾値K4以上となりかつ)動力負荷偏差信号Eの値が「9%」に達したときには、PLU検知信号Pが出力されて、切替器41の接点41aと接点41cとが電気的に接続される。これにより、切替器41は、低値選択ゲート34から入力した信号を加減弁8に出力する。
この際、開度調整関数33cによる調整内容では、動力負荷偏差信号Eの値が「9%」のときには、加減弁8の開度が100%の全開で調整されることになっている。このため、低値選択ゲート34は、ファンクションジェネレータ33の開度設定部33bから開度調整関数33cに基づいて「100%」の値で出力される第1の弁開度設定信号N[%]と、ガバナ制御部53から出力される第2の弁開度設定信号U[%]と、のうちの小さい値を選択する。
すなわち、発電機5の動力から負荷を減算して得られる動力負荷偏差信号Eの値が「9%」の場合、蒸気タービン18の実回転速度は、定格の回転速度よりも速くなっていることが想定される。したがって、第2の弁開度設定信号U[%]のうほうが低値(つまり加減弁8の開度を小さくする設定)となり、これにより、加減弁8は、全開に調整されることなく、蒸気タービン18の調速制御(ガバナ制御)に基づき、全開よりも絞られた開度で調整される。これにより、PLU検知信号Pの出力後において発電機5の動力と負荷との不均衡状態を修正することができる。
詳述すると、蒸気タービン18の調速制御を適用する加減弁8の開度調整は、上述したように速度フィードバック制御であるため、蒸気タービン18が実際に定格の回転速度よりも速く(オーバースピードに)なったことを検出した後で、開度の調整が開始される応答性の比較的低い制御である。但し、上記の場合、動力負荷偏差信号Eの値が「10%」未満の「9%」のときの状況(つまり、緊急度が極端に高くはない状況)を想定しているため、加減弁8の開度の調整に蒸気タービン18の調速制御を適用できるものである。
ここで、本実施形態に係るプラント制御装置7と図4に示す参考例のプラント制御装置70との互いの制御内容について比較を行う。図4に示すように、参考例のプラント制御装置70は、プラント制御装置7が有する動力調整部52に代えて動力調整部72を備えている。この動力調整部72は、動力調整部52が備える負荷遮断判定部55及び動力調整処理選択部54に代えて、負荷遮断判定部75及び動力調整処理選択部74を有している。また、この動力調整部72は、動力調整部52の偏差ホールド回路32及びファンクションジェネレータ33が削除された形態で構成されている。
動力調整処理選択部74は、低値選択ゲート34に代えて、常に「0」%の値の弁開度設定信号Wを切替器41の端子41aに出力する弁全閉指示出力器73を備えている。一方、負荷遮断判定部75は、偏差閾値設定器28に代えて偏差閾値設定器78を備える。偏差閾値設定器78は、慣例的な基準値として閾値記憶部78aに記憶された値「40」%の偏差許容閾値K5を偏差コンパレータ29に対して設定する。
したがって、参考例のプラント制御装置70では、図4に示すように、負荷遮断が発生したと判定されてPLU検知信号Pが出力される条件としては、(発電機5を流れる電流が急減して負荷変化率信号Bが変化率許容閾値K4以上となりかつ)動力負荷偏差信号Eの値が40%以上のときに限られるので、動力負荷偏差信号Eの値が40%未満の例えば39%である場合には、PLU検知信号Pが出力されないことになる。
つまり、動力負荷偏差信号E[%]の値が40%のときと39%のときでは、蒸気タービン18及び発電機5の回転系が保持するイナーシャがほぼ等しく、回転系がオーバースピードを引き起こすトルクもほとんど同じであるにもかかわらず、参考例のプラント制御装置70は、PLU検知信号Pの発生の有無に応じてその後の蒸気タービン18の運転制御が全く異なる。
具体的には、動力負荷偏差信号Eの値が40%の場合、PLU検知信号Pが発生するため、切替器41の接点41aと接点41cとが接続される。この際、加減弁8の開度は、弁全閉指示出力器73から出力される「0」%の値の弁開度設定信号Wに基づいて制御され全閉となる。一方、動力負荷偏差信号Eの値が39%の場合、PLU検知信号Pが発生しないため、切替器41の接点41bと接点41cとが接続される。この際、加減弁8の開度は、ガバナ制御部53(の加算器39)から出力される(第2の)弁開度設定信号U[%]に基づいて制御される。
しかしながら、後者のガバナ制御部53による速度フィードバック制御(調速制御)では、蒸気タービン18のオーバースピードが実際に発生したことを検出してから加減弁8の開度を絞ることになる。したがって、負荷遮断の発生に伴うPLU検知信号Pの発生直後に、瞬間的(回転系のオーバースピードが出現する前)に加減弁8を全閉とする前者の運転制御に較べて、後者のガバナ制御部53による運転制御は、加減弁8の閉操作が遅れることになる。つまり、動力負荷偏差信号Eの値が39%の場合、オーバースピードの抑制が難しくオーバースピードのピーク回転数も高くなるため、過速度トリップのリスクを増大させる。
このように、動力負荷偏差信号Eの値が40%のときと39%のときでは、両者の間で、蒸気タービン18のオーバースピードを引き起こす要素は、ほとんど同じであるにもかかわらず、動力負荷偏差信号Eの値が1%異なるだけで、運転制御が大きく相違し、過速度トリップのリスクも結果的に大きくなっている。
そこで、このような事態を回避するために、PLU検知信号Pの発生のトリガーとなる偏差許容閾値K5の値「40」%を例えば「10%」に低減させて設定することなどが考えられるがこの場合には次の課題が生じる。すなわち、この場合の制御は、動力負荷偏差信号E[%]の値が10%以上でPLU検知信号Pが発生し(負荷遮断の発生が検出され)し、加減弁8が瞬時に全閉となるため、オーバースピード防止の点では万全である。
但しその一方で、加減弁8を全閉にするということは、蒸気タービン18の出力を零に落としてしまうことを意味する。つまり、動力負荷偏差信号E[%]の値が10%のときは、例えば電力系統における電気事故などの程度としては比較的軽微であることが想定されるので、過速度トリップのリスクは比較的小さいものと考えることができる。このような状況では、蒸気タービン18の調速制御(ガバナ制御部53からの出力)によりオーバースピードを抑制しながら、蒸気タービン18の出力を維持することで、電力系統(系統グリッド)への電力の供給を継続する運転が望ましいといえる。
しかしながら、参考例のプラント制御装置70は、上述した背景のトレードオフとして、動力負荷偏差信号Eの値の40%を境界とし、40%未満の場合を”軽微な事故”とみなして、蒸気タービン18の調速制御(ガバナ制御部53からの出力)によりオーバースピードを抑制し、一方、40%以上の場合を”軽微でない事故”とみなして、PLU検知信号Pを発生させることで加減弁8を瞬間的に全閉とする運転制御を適用している。
この結果、参考例のプラント制御装置70では、動力負荷偏差信号Eの値が上記した39%の場合、過速度トリップのリスク増大については実質的に黙認されていることになる。また、プラント制御装置70では、動力負荷偏差信号E[%]の値が25%のときには、無論、蒸気タービン18の調速制御によりオーバースピードを抑制する運転制御が行われる。
これに対して、本実施形態の図2に示すプラント制御装置7では、動力負荷偏差信号Eの値が25%となり、PLU検知信号Pが発生した(負荷遮断が発生したと判定された)直後の瞬時に、50%の開度まで加減弁8の閉操作が行われる。この場合、参考例のプラント制御装置70と比べて、加減弁8の閉操作が格段に早くなり、過速度トリップを効果的に回避することができる(過速度トリップ発生のリスクを低減できる)。さらに、この場合、加減弁8の開度が50%相当の状態で、蒸気タービン18の運転自体は維持されるので、電力供給の継続も実現される。
また、動力負荷偏差信号Eの値が上記した39%の場合、参考例のプラント制御装置70では、加減弁8の開度が100%の全開のままであるが、本実施形態のプラント制御装置7では、図3に示す開度調整関数33cにより加減弁8の開度が約3.3%まで絞りこまれることになり、加減弁8を全閉にしたときとほぼ同様のオーバースピードの抑制効果を期待できる。
つまり、本実施形態のプラント制御装置7は、例えば電気事故の程度を軽微であるか否かの2者択一とするのではなく、その中間の状況もあり得ると考え、さらに、加減弁8の開度も一律に全閉にするのではなく、中間の開度にする設定することなどにも着目し、これにより、負荷遮断時の過速度トリップの回避と電力系統(系統グリッド)への電力供給の継続という本来相反する運転を両立させるものである。
次に、このように構成されたプラント制御装置7を含む蒸気タービン発電プラント1の運転方法を図1〜図3に加え、図5に示すフローチャートに基づき説明する。図1、図2及び図5に示すように、まず、排気圧センサ15及び電流検出器14は、蒸気タービン18を駆動する動力(高圧タービン3の実排気圧力値)と発電機5に加わる負荷(発電機5に流れる実電流値)とを検出する(S[ステップ]1)。
次に、図2、図5に示すように、アンバランス量算出部51は、それぞれ検出された動力から負荷を相対的に減算してアンバランス量となる偏差(動力負荷偏差信号E[%])を算出する(S2)。ここで、変化率算出器22は、検出している負荷の変化率(減少率)を算出する(S3)。変化率コンパレータ24は、算出された負荷の変化率(負荷変化率信号B[%])が変化率許容閾値K4以上であるか否かを判定する(S4)。一方、偏差コンパレータ29は、アンバランス量として算出された偏差(動力負荷偏差信号E[%])の値が偏差許容閾値K3以上であるか否かを判定する(S5)。
図2、図5に示すように、負荷の変化率及び偏差の双方がそれぞれの閾値以上であると判定された場合(S4及びS5のYES)、セット・リセット回路31は、PLU(パワーロードアンバランス)検知信号を出力する(S6)。このタイミングで、偏差ホールド回路32は、偏差の値(動力負荷偏差信号E[%])をホールドする(S7)。次いで、ファンクションジェネレータ33の開度設定部33bは、関数記憶部33aに記憶された図3に示す開度調整関数33cを参照しつつ、前記ホールドされた偏差の値に対応させて加減弁8の開度を(仮)設定する(S8)。
ここで、低値選択ゲート34は、図2、図5に示すように、偏差に対応させて(仮)設定された加減弁8の開度(第1の弁開度設定信号N[%])と、ガバナ制御部53で別途(仮)設定された加減弁8の開度(第2の弁開度設定信号U[%])と、を比較する(S9)。比較の結果、偏差に対応させた加減弁8の開度のほうが低値であると判定された場合(S10のYES)、動力調整処理選択部54は、偏差に対応させた開度を適用(第1の弁開度設定信号N[%]を加減弁8に出力)して、実際に加減弁8の開度を調節する(S11)。一方、偏差に対応させた開度のほうが低値ではないと判定された場合(S10のYES)、動力調整処理選択部54は、ガバナ制御部53で(仮)設定された開度を適用(第2の弁開度設定信号U[%]を加減弁8に出力)して、実際に加減弁8の開度を調節する(S12)。
既述したように、本実施形態のプラント制御装置7を含む蒸気タービン発電プラント1によれば、発電機5を駆動する動力と発電機5に加わる負荷との不均衡の程度に応じて、当該発電機5の動力を調整するので、発電機5が接続されていた電力系統で例えば電気事故などが起った場合でも、発電機5を駆動する機構の過速を防止する一方で、発電状態を極力継続することが可能となる。
以上、実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は例示であり、その形態に限定されるものではなく適宜変更を加えてもよい。例えば図2に示したプラント制御装置7では、負荷の変化率(負荷変化率信号B[%])及びアンバランス量としての偏差(動力負荷偏差信号E[%])それぞれが、ともに閾値以上であった場合に、PLU検知信号が出力されるものであったが、これに代えて、少なくとも偏差(動力負荷偏差信号E[%])が、閾値以上になった場合にPLU検知信号を出力させる(負荷遮断が発生したと判定する)ようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、加減弁8並びにインターセプト弁9を蒸気供給量制御弁17として有する動力調整部52は、ガバナ制御量(第2の弁開度設定信号U[%])の値に対応させる発電機5の動力の調整、及びアンバランス量(動力負荷偏差信号E[%])の値に対応させる発電機5の動力の調整を、加減弁8の開度の調整により行う具体例について説明した。これに代えて、発電機5における上述した前者及び後者の動力の調整を、加減弁8とインターセプト弁9との双方の開度の調整によって行うようにしてもよい。
この場合の具体例としては、動力負荷偏差信号E[%]の値の増減に対応させて、加減弁8及びインターセプト弁9双方の開度の調整内容を定めた開度調整関数を、図3に示した開度調整関数33cに代えて、関数記憶部33aに記憶させることなどが挙げられる。
また、上記したプラント制御装置7では、蒸気タービン18の高圧タービン3から排気される蒸気の排気圧力を、発電機5を駆動する動力として検出していたが、これに代えて、高圧タービン3及び中・低圧タービン6のそれぞれから排気される蒸気の総合的な排気圧力を、発電機5を駆動する動力として検出するようにしてもよい。
さらに、前述した実施の形態では、発電プラントとして蒸気タービン発電プラントを例示したが、水力、ガス(ガスタービン)、原子力などを動力源とする発電プラントを実施の形態として適用することも可能である。