JP5676889B2 - 感光性樹脂組成物、ソルダーレジスト用組成物及びプリント配線板 - Google Patents

感光性樹脂組成物、ソルダーレジスト用組成物及びプリント配線板 Download PDF

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Description

本発明は、プリント配線板のソルダーレジスト層の形成に好適に用いられる感光性樹脂組成物、この感光性樹脂組成物を含有するソルダーレジスト用組成物、及びこのソルダーレジスト用組成物から形成されたソルダーレジスト層を備えるプリント配線板に関する。
近年、民生用及び産業用の各種プリント回路基板のレジストパターン形成法としては、印刷配線板の高配線密度化に対応するため、スクリーン印刷法に代わって、解像性及び寸法精度等に優れたドライフィルムや液状の現像可能な感光性樹脂組成物を用いる方法が大きな位置を占めてきている。
また、近年、携帯端末、パーソナルコンピュータ、テレビジョン等の液晶ディスプレイのバックライト、照明器具の光源などに用いられる発光ダイオード等の光学素子を、ソルダーレジスト層が被覆形成されたプリント配線板に直接実装することが増えてきている。
このような光学素子が実装されるプリント配線板においては、ソルダーレジスト層が光によって劣化して変色などが生じるという問題がある。特に発光ダイオード等の光をソルダーレジスト層で効率よく反射するためにソルダーレジスト層に酸化チタンを含有させてソルダーレジスト層を白色化させている場合には、酸化チタンの光活性によってソルダーレジスト層が黄変しやすくなり、ソルダーレジスト層の光反射性能が低下するという問題がある。
そこで、特許文献1では芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂を含有する感光性樹脂組成物を用いてソルダーレジスト層を形成することで、ソルダーレジスト層の黄変を抑制することが提案されている。
しかし、上記のように感光性樹脂組成物中の樹脂成分が芳香環を有さない樹脂に制限されてしまうと、樹脂成分の選択の幅が狭くなってしまい、ソルダーレジスト層に要求される耐酸性、耐アルカリ性、現像性、基板との密着性、耐めっき性、はんだ耐熱性、耐電蝕性等の性能を充分に発揮させることが困難となる。
特開2007−322546号公報
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、芳香環を有する樹脂成分を含有しながら、光による硬化物の劣化が抑制され、ソルダーレジスト層の形成に好適に用いられる感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
また本発明は、前記感光性樹脂組成物からなるソルダーレジスト用組成物、及びこのソルダーレジスト用組成物から形成されたソルダーレジスト層を備えるプリント配線板を提供することを目的とする。
本発明に係る感光性樹脂組成物は、下記成分Aを含む樹脂成分を含有し、前記樹脂成分全体に対する芳香環の割合を0.1〜50質量%の範囲であることを特徴とする;
A.1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する感光性樹脂。
前記「樹脂成分」は、感光性樹脂組成物に配合される重合反応性の化合物をいう。また、前記「芳香環」は炭化水素から構成される芳香環をいい、特にベンゼン環(縮合環を構成するベンゼン環を含む)をいう。複素環は芳香環に含まない。
このため、芳香環を有する樹脂成分を使用することで感光性樹脂組成物から形成される硬化物の良好な特性を維持しつつ、樹脂成分芳香環の量を前記特定の範囲とすることで硬化物の光による劣化を抑制し、この硬化物の黄変を抑制することができる。
本発明においては、前記成分Aが、芳香環を有する感光性樹脂成分を含む。
この場合、感光性樹脂組成物に成分Aを配合することにより、この感光性樹脂組成物中の樹脂成分の芳香環量を所定の値にすることができる。
また、本発明においては、前記樹脂成分が、下記成分Bを含む;
B.1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物。
この場合、この成分Bにより感光性樹脂組成物に熱硬化性をも付与することができる。
また、本発明においては、前記樹脂成分が、下記成分Cを含む;
C.光重合性を有するモノマー及びプレポリマーから選択される光重合性化合物。
この場合、成分Cの配合量を調整することで、感光性樹脂組成物の塗布性の向上、酸価の調整、及び光重合性の向上等を図ることができる。
また、本発明においては、感光性樹脂組成物が下記成分Dを含有する;
D.白色の着色剤。
この場合、感光性樹脂組成物から形成される硬化膜の色を白色にすることができ、特に高反射性のソルダーレジスト層の形成のために好適となる。
本発明に係るソルダーレジスト用組成物は、前記感光性樹脂組成物からなることを特徴とする。
このため、芳香環を有する樹脂成分を使用することでソルダーレジスト用組成物から形成されるソルダーレジスト層の良好な特性を維持しつつ、樹脂成分芳香環の量を前記特定の範囲とすることでソルダーレジスト層の光による劣化を抑制し、このソルダーレジスト層の黄変を抑制することができる。
本発明に係るプリント配線板は、前記ソルダーレジスト用組成物から形成されたソルダーレジスト層を備えることを特徴とする。
このため、ソルダーレジスト層の良好な特性を維持しつつ、樹脂成分芳香環の量を前記特定の範囲とすることでソルダーレジスト層の光による劣化を抑制し、このソルダーレジスト層の黄変を抑制することができる。
本発明によれば、芳香環を有する樹脂成分を含有しながら、光による硬化物の劣化が抑制され、ソルダーレジスト層の形成に好適に用いられる感光性樹脂組成物を得ることができる。
また、この感光性樹脂組成物からなるソルダーレジスト用組成物から形成されるソルダーレジスト層の良好な特性を維持すると共に、このソルダーレジスト層の光による劣化を抑制し、黄変を抑制することができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
感光性樹脂組成物は、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する感光性樹脂Aを必須成分とする樹脂成分を含有する。この樹脂成分における芳香環量は、樹脂成分全体に対する芳香環の割合が0.1〜50質量%の範囲となるようにする必要がある。特にこの割合が1〜35質量%の範囲であることが好ましい。この芳香環量は樹脂成分全体を基準とする値であり、樹脂成分中に芳香環を有する成分と芳香環を有しない成分とが混在していてもよい。すなわち、例えば感光性樹脂組成物が樹脂成分として下記に示す感光性樹脂A、エポキシ化合物B及び光重合性化合物Cを含有する場合に、感光性樹脂Aのみが芳香環を有する化合物を含んでもよく、また感光性樹脂Aが芳香環を有する化合物を含むと共にエポキシ化合物B及び光重合性化合物Cのうち一方又は双方が芳香環を有する化合物を含んでもよい。
〔感光性樹脂A〕
感光性樹脂Aは、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する樹脂である。
この感光性樹脂Aの重量平均分子量は特に制限されないが、好ましい範囲は3000〜400000である。この範囲において、感光性樹脂組成物に特に優れた感度と解像性とが付与される。
また、感光性樹脂Aの酸価は25〜150mgKOH/gの範囲であることが好ましい。この酸価が25mgKOH/g以上であれば感光性樹脂組成物に良好な現像性が付与される。またこの酸価が150mgKOH/g以下であれば感光性樹脂組成物から形成される硬化膜中のカルボキシル基の残留量が低減し、硬化膜の良好な電気特性、耐電蝕性及び耐水性等が維持される。特に感光性樹脂Aの酸価が40〜100mgKOH/gである場合に最適な効果が得られる。
感光性樹脂組成物への感光性樹脂Aの配合量は特に制限されないが、感光性樹脂組成物の成分全量(有機溶剤Fを含有する場合にはこの有機溶剤Fを除く)中で10〜80質量%の範囲であることが望ましい。この場合、感光性樹脂組成物の良好な感度及び作業特性並びに硬化膜の良好な物性を充分に確保することができる。
この感光性樹脂Aは、一種類の感光性樹脂成分のみを含有してもよく、複数種の感光性樹脂成分を含有してもよい。
また、感光性樹脂Aは、芳香環を有する感光性樹脂成分を含むことが好ましい。この場合、感光性樹脂Aは芳香環を有する感光性樹脂成分のみを含んでもよく、芳香環を有する感光性樹脂成分と芳香環を有さない感光性樹脂成分とを含んでもよい。
感光性樹脂Aには、例えば下記の感光性樹脂成分A1及びA2のうち少なくとも一方が含まれ得る。
(感光性樹脂成分A1)
感光性樹脂成分A1は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物aにカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物bと飽和或いは不飽和の酸無水物cとを反応させることで得られる。特に前記エポキシ化合物a、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物b、及び酸無水物cのうち少なくとも一種が芳香環を有する化合物であれば、芳香環を有する感光性樹脂成分A1が得られる。この感光性樹脂成分A1は酸無水物cに由来するカルボキシル基を有するため、この感光性樹脂成分A1が感光性樹脂組成物に配合されると、この感光性樹脂組成物にアルカリ性溶液による現像性が付与される。
前記エポキシ化合物aが芳香環を有するエポキシ樹脂である場合、感光性樹脂成分A1には、前記エポキシ化合物aに由来する芳香環が付与される。芳香環を有するエポキシ樹脂としては、例えばノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。ノボラック型エポキシ樹脂は、各種フェノール類とホルムアルデヒドとを塩基性触媒の存在下で反応させて得られる各種フェノールノボラック樹脂に、エピハロヒドリンを反応させることで得られる。フェノール類としては例えばフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラブロムビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビフェノール系化合物、ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。特に好ましいノボラック型エポキシ樹脂として、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及びビスフェノールA−ノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。
また、芳香環を有するエポキシ樹脂としては、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等も挙げられる。
また、前記エポキシ化合物aが芳香環を有さないエポキシ樹脂であってもよい。このようなエポキシ樹脂としては、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、エポキシ化合物aが、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物d1と、必要に応じて使用される他のエチレン性不飽和化合物d2とを重合させて得られるエポキシ化合物を含んでもよい。この場合、特に前記エチレン性不飽和化合物d1とエチレン性不飽和化合物d2の少なくとも一方が芳香環を有する化合物であれば、エポキシ化合物が芳香環を有することとなり、このエポキシ化合物から芳香環を有する感光性樹脂成分A1が得られる。また、エチレン性不飽和化合物d1とエチレン性不飽和化合物d2とを併用すると共に、そのうち一方のみ(例えばエチレン性不飽和化合物d2のみ)が芳香環を有する場合には、エチレン性不飽和化合物d1とエチレン性不飽和化合物d2との配合比を調整することで、感光性樹脂成分A1の芳香環量を容易に調整することができ、ひいては感光性樹脂組成物中の樹脂成分の芳香環量を容易に調整することができる。
エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物d1としては、適宜のポリマー又はプレポリマーが挙げられる。このエチレン性不飽和化合物d1の具体例として、アクリル酸又はメタクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類;アクリレート又はメタクリレートの脂環エポキシ誘導体;β−メチルグリシジルアクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレート等が挙げられる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。特に、汎用されて入手が容易なグリシジル(メタ)アクリレートが用いられることが好ましい。
他のエチレン性不飽和化合物d2は、前記エチレン性不飽和化合物d1と共重合可能なエチレン性不飽和単量体であればよい。特に芳香環を有するエチレン性不飽和化合物d2の具体例としては、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n=2〜17)、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO,PO変性フタル酸(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレン、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、3−マレイミド安息香酸N−スクシンイミジル等が挙げられる。
また、芳香環を有さないエチレン性不飽和化合物d2の具体例としては、直鎖又は分岐の脂肪族、或いは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート等;N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類等が挙げられる。またこれらの化合物と共に、必要に応じて、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の、1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を併用してもよい。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。これらの化合物は硬化膜の硬度及び油性の調節が容易である等の点で好ましい。
上記エチレン性不飽和化合物d1と必要に応じて使用されるエチレン性不飽和化合物d2とは、公知の重合方法、例えば溶液重合、エマルション重合等により反応させることができる。溶液重合の方法としては、上記エチレン性不飽和化合物d1とエチレン性不飽和化合物d2からなるエチレン性不飽和化合物の混合物を適当な有機溶剤中で、重合開始剤の存在下、窒素雰囲気下で加熱攪拌する方法や、共沸重合法等が挙げられる。
前記有機溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、及びジアルキルグリコールエーテル類等が挙げられる。これらは一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。
前記重合のための重合開始剤としては、例えばジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド類、イソブチリルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシビバレート等のアルキルパーエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類が挙げられる。これらは一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。また、前記重合開始剤としてレドックス系の開始剤が使用されてもよい。
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物bとしては、適宜のポリマー又はプレポリマーが挙げられる。このエチレン性不飽和化合物bの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2−プロペノイックアシッド,3−(2−カルボキシエトキシ)−3−オキシプロピルエステル、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等の、エチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物が挙げられる。このエチレン性不飽和化合物bとして、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート等のヒドロキシル基を有する多官能アクリレートや多官能メタクリレートに二塩基酸無水物を反応させて得られる化合物などといった、エチレン性不飽和基を複数有する化合物も挙げられる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。特にエチレン性不飽和化合物bがアクリル酸及びメタクリル酸のうちの少なくとも一方を含有することが好ましい。この場合、アクリル酸及びメタクリル酸により感光性樹脂成分A1に導入されるエチレン性不飽和基は特に光反応性に優れるため、感光性樹脂成分A1の光反応性が高くなる。
感光性樹脂成分A1の合成時のエチレン性不飽和化合物bの使用量は、芳香環含有エポキシ樹脂aのエポキシ基1モルに対してエチレン性不飽和化合物bのカルボキシル基が0.7〜1.2モルの範囲となる量であることが好ましく、特に前記カルボキシル基が0.9〜1.1モルの範囲となる量であることが好ましい。この場合、感光性樹脂成分A1中におけるエポキシ基の残存量を特に低減して、感光性樹脂組成物が予備乾燥程度の弱い熱乾燥条件下に置かれた場合での感光性樹脂成分A1の熱硬化反応が抑制され、感光性樹脂組成物の露光後の現像性の低下が抑制される。また、感光性樹脂組成物中における未反応のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物bの残存を抑制することもできる。
飽和或いは不飽和の酸無水物cの具体例としては、芳香環を有する化合物として、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の二塩基酸無水物、及び無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の三塩基酸以上の酸無水物が挙げられる。また芳香環を有さない化合物として、無水コハク酸、無水メチルコハク酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸等の二塩基酸無水物、及びメチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物等の三塩基酸以上の酸無水物が挙げられる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。
この酸無水物cは、感光性樹脂成分A1に酸価を与え、感光性樹脂組成物に希アルカリ水溶液による再分散、再溶解性を付与することを主たる目的として使用される。酸無水物cの使用量は、感光性樹脂成分A1の酸価が好ましくは25〜150mgKOH/gの範囲、特に好ましくは40〜100mgKOH/gの範囲となるようにする。
芳香環含有エポキシ樹脂aと、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物b及び飽和又は不飽和の酸無水物cとの付加反応を進行させるにあたっては、公知の方法が採用され得る。例えば芳香環含有エポキシ樹脂aとカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物bとの付加反応にあたっては、芳香環含有エポキシ樹脂aの溶剤溶液にカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物bを加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて撹拌混合し、常法により、好ましくは60〜150℃、特に好ましくは80〜120℃の反応温度で反応させることで、付加反応生成物を得ることができる。前記熱重合禁止剤としてはハイドロキノンもしくはハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。また、前記触媒としてベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルスチビンなどが挙げられる。
また、前記付加反応生成物と飽和又は不飽和多塩基酸無水物cとの付加反応を進行させるにあたっては、前記付加反応生成物の溶剤溶液に飽和又は不飽和多塩基酸無水物cを加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて撹拌混合し、常法により反応させることができる。反応条件は上記芳香環含有エポキシ樹脂aとエチレン性不飽和化合物bとの付加反応と同様とすることができ、また前記熱重合禁止剤及び触媒は、上記芳香環含有エポキシ樹脂aとエチレン性不飽和化合物bとの付加反応に使用したものをそのまま使用することができる。
(感光性樹脂成分A2)
感光性樹脂成分A2は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物bと、必要に応じて使用される他のエチレン性不飽和化合物d2とを重合させて得られる化合物に、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物d1を反応させて得られる。この場合、前記エチレン性不飽和化合物b、エチレン性不飽和化合物d2及びエチレン性不飽和化合物d1のうち少なくとも一種が芳香環を有する化合物であれば、芳香環を有する感光性樹脂成分A2が得られる。特にエチレン性不飽和化合物bとエチレン性不飽和化合物d2とを併用すると共に、そのうち一方のみ(例えばエチレン性不飽和化合物d2のみ)が芳香環を有する場合には、エチレン性不飽和化合物bとエチレン性不飽和化合物d2との配合比を調整することで、感光性樹脂成分A2の芳香環量を容易に調整することができ、ひいては感光性樹脂組成物中の樹脂成分の芳香環量を容易に調整することができる。
また、この感光性樹脂成分A2はエチレン性不飽和化合物bに由来する残留カルボキシル基を有するため、感光性樹脂成分A2を感光性樹脂組成物に配合すると、この感光性樹脂組成物にアルカリ性溶液による現像性が付与される。
感光性樹脂成分A2の合成に使用される前記エチレン性不飽和化合物b、エチレン性不飽和化合物d2及びエチレン性不飽和化合物d1の具体例としては、前記感光性樹脂成分A1の合成に使用されるエチレン性不飽和化合物b、エチレン性不飽和化合物d2及びエチレン性不飽和化合物d1と同じものが挙げられる。
エチレン性不飽和化合物b及び必要に応じて使用されるエチレン性不飽和化合物d2とは、公知の重合方法、例えば感光性樹脂成分A1の合成時に適用されるエチレン性不飽和化合物d1とエチレン性不飽和化合物d2との反応の場合と同様な方法で反応(重合反応)させることができる。
また、この反応により得られた化合物とエチレン性不飽和化合物d1とは、公知の方法、例えば感光性樹脂成分A1の合成時に適用されるエチレン性不飽和化合物bや酸無水物cの付加反応と同様の方法により反応させることができる。
エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物d1の使用量は、感光性樹脂成分A2に未反応のカルボキシル基を残存させて、感光性樹脂成分A2が充分な酸価を有するようになる量であることが好ましい。この場合、感光性樹脂成分A2の酸価が好ましくは25〜150mgKOH/gの範囲、特に好ましくは40〜100mgKOH/gの範囲となるようにする。
〔エポキシ化合物B〕
感光性樹脂組成物中の樹脂成分は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物Bを含むことが好ましい。このエポキシ化合物Bは、溶剤難溶性エポキシ化合物であってもよく、汎用の溶剤可溶性エポキシ化合物等であってもよい。エポキシ化合物Bの種類は特に限定されないが、特にトリグリシジルイソシアヌレート、YX4000(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA−ノボラック型エポキシ樹脂等が望ましい。また、このうちトリグリシジルイソシアヌレートを用いる場合には、このトリグリシジルイソシアヌレートが、特にS−トリアジン環骨格面に対し3個のエポキシ基が同一方向に結合した構造をもつβ体、又はこのβ体と、S−トリアジン環骨格面に対し1個のエポキシ基が他の2個のエポキシ基と異なる方向に結合した構造をもつα体との混合物であることが好ましい。
感光性樹脂組成物へのエポキシ化合物Bの配合量は特に制限されないが、感光性樹脂組成物の成分全量(有機溶剤Fを含有する場合にはこの有機溶剤Fを除く)中で0.1質量%以上であることが好ましく、この場合、硬化膜の耐はんだ性、耐めっき性等を更に向上することができる。またこの配合量を50重量%以下とすることで感光性樹脂組成物の現像性を更に向上することができる。
〔光重合性化合物C〕
感光性樹脂組成物中の樹脂成分は、光重合性化合物及Cを含むことも好ましい。光重合性化合物Cは、光重合性を有するモノマー及びプレポリマーから選択される。この光重合性化合物Cは、例えば感光性樹脂組成物を希釈して塗布し易い状態に調整したり、感光性樹脂組成物全体の酸価を調整したり、感光性樹脂組成物の光重合性を向上したりする目的で使用される。この光重合性化合物Cとしては、光重合性を有する適宜のポリマー或いはプレポリマーが挙げられる。この光重合性化合物Cの具体例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート等の単官能アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。このような化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。
光重合性化合物Cを使用する場合、感光性樹脂組成物中への光重合性化合物Cの配合量は感光性樹脂組成物の成分全量(有機溶剤Fを含有する場合にはこの有機溶剤Fを含む)中で0.05〜40質量%の範囲であることが好ましい。また、感光性樹脂組成物が有機溶剤Fを含有する場合には、前記配合量は特に有機溶剤Fを除外した感光性樹脂組成物の成分全量中で50質量%以下であることが望ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される乾燥膜の表面粘着性が強くなり過ぎることを抑制し、パターンを描いたネガマスクを前記乾燥膜の表面に直接当てがって露光するときのネガマスクの汚損等を防止することができる。
〔白色の着色剤D〕
感光性樹脂組成物は、白色の着色剤Dが含有されることで白色に着色されていてもよい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される硬化膜の色を白色にすることができる。特に感光性樹脂組成物から高反射性のソルダーレジスト層を形成する場合に、感光性樹脂組成物に白色の着色剤を含有させることが好ましい。白色の着色剤Dとしては、例えば酸化チタン、硫酸バリウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。
酸化チタンは、ルチル型、アナターゼ型、ラムスデライト型のいずれの構造の酸化チタンであってもよい。特にラムスデライト型酸化チタンは短波長光の吸収性が低いため、感光性樹脂組成物にラムスデライト型酸化チタンを含有させると、この感光性樹脂組成物からから、紫外光や青色光等の短波長光の反射率が高い高反射性のソルダーレジスト層を形成することができる。このラムスデライト型酸化チタンは、ラムスデライト型Li0.5TiOに化学酸化によるリチウム脱離処理を施すことで得られる。尚、ラムスデライト型酸化チタンが用いられる場合には、樹脂成分の芳香環量が0.1〜50質量%の範囲にあるか否かにかかわらず、感光性樹脂組成物の硬化物の短波長光の反射性が向上し、この感光性樹脂組成物から短波長光の反射性が高いソルダーレジスト層を形成することができる。
感光性樹脂組成物中への白色の着色剤Dの配合量は、感光性樹脂組成物中の成分全量(有機溶剤Fを含有する場合にはこの有機溶剤Fを除く)に対して好ましくは5〜80質量%の範囲、より好ましくは15〜50質量%の範囲とする。この配合量が5質量%以上であれば感光性樹脂組成物から形成される硬化膜が高い隠蔽性、白色性を発揮することができるようになり、またこの使用量が80質量%以下であれば前記硬化膜の耐熱性、鉛筆硬度等のレジストに必要な物性が高い水準で維持されるようになる。
〔光重合開始剤E〕
感光性樹脂組成物は光重合開始剤Eを含有することが好ましい。この光重合開始剤Eとしては、例えば、ベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン類;2,4−ジイソプロピルキサントン等のキサントン類;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシケトン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン等の窒素原子を含む化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。また、光重合開始剤Eと共に、p−ジメチル安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート等の第三級アミン系等の公知の光重合促進剤や増感剤等が併用されてもよい。また、可視光露光用や近赤外線露光用等の光重合開始剤Eも必要に応じて使用される。これらの光重合開始剤Eは一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。また、光重合開始剤Eと共に、レーザ露光法用増感剤として7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等のクマリン誘導体、その他カルボシアニン色素系、キサンテン色素系等が併用されてもよい。
感光性樹脂組成物中における光重合開始剤Eの配合量は、感光性樹脂組成物の光硬化性と、この感光性樹脂組成物から形成される硬化膜の物性とのバランスを考慮して適宜設定されることが好ましく、特に感光性樹脂組成物の成分全量(有機溶剤Fを含有する場合はこの有機溶剤Fを除く)中で0.1〜30質量%の範囲であることが望ましい。
〔有機溶剤F〕
感光性樹脂組成物は必要に応じて有機溶剤Fを含有してもよい。有機溶剤Fは、例えば樹脂成分を溶解させ或いは感光性樹脂組成物を希釈することで、感光性樹脂組成物を液状にすると共にその粘度を調整し、この感光性樹脂組成物の塗布性を向上する目的で使用される。またこの有機溶剤Fは、感光性樹脂組成物の乾燥時の造膜性を向上する目的でも使用される。この有機溶剤Fの具体例としては、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール等の直鎖、分岐、2級或いは多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;プロピレングリコールメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等の酢酸エステル類;ジアルキルグリコールエーテル類などが挙げられる。これらの有機溶剤Fを一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。
感光性樹脂組成物中への有機溶剤Fの配合量は適宜設定される。この配合量は、感光性樹脂組成物から形成される塗膜の仮乾燥時に有機溶剤Fが速やかに揮散するように、すなわち有機溶剤Fが乾燥膜に残存しないように、調整されることが好ましい。この有機溶剤Fの配合量は、特に感光性樹脂組成物の成分全量中で5〜99.5重量%の範囲であることが好ましく、この場合、感光性樹脂組成物の良好な塗布性を維持することができる。尚、有機溶剤Fの好適な配合量は塗布方法により異なるので、塗布方法に応じて配合量を適宜調節することが好ましい。
〔他の成分〕
感光性樹脂組成物中には、上記各成分の他に、例えばカプロラクタム、オキシム、マロン酸エステル等でブロックされたトリレンジイソシアネート、モルホリンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックドイソシアネート、及びメラミン、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、ブチル化尿素樹脂、ブチル化メラミン尿素共縮合樹脂、ベンゾグアナミン系共縮合樹脂等のアミノ樹脂等の熱硬化成分;紫外線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、脂環型エポキシ樹脂等に(メタ)アクリル酸を付加したもの;ジアリルフタレート樹脂、フェノキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の高分子化合物などを、適宜加えてもよい。
また感光性樹脂組成物には、必要に応じて、エポキシ樹脂を硬化させる硬化剤;硬化促進剤;白色以外の着色剤;シリコーン、アクリレート等の共重合体;レベリング剤;シランカップリング剤等の密着性付与剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤界面活性剤;高分子分散剤などを配合してもよい。
〔感光性樹脂組成物の調製〕
感光性樹脂組成物は、上記のような原料成分を配合し、例えば三本ロール、ボールミル、サンドミル等を用いる公知の混練方法によって混練することにより調製することができる。その場合に、上記各成分のうち一部、例えば光重合性化合物C及び有機溶剤Fの一部及びエポキシ化合物Bを予め混合して分散させておき、これとは別に残りの成分を予め混合して分散させておき、使用時に両者を混合して感光性樹脂組成物を調製してもよい。
〔プリント配線板に対するソルダーレジスト層の形成〕
上記感光性樹脂組成物をソルダーレジスト用組成物として使用し、プリント配線板上に前記ソルダーレジスト用組成物でソルダーレジスト層を形成することで、ソルダーレジスト層を有するプリント配線板を作製することができる。ソルダーレジスト層の形成方法は特に限定されない。ソルダーレジスト層の最も一般的な形成方法の一例を下記に示す。
プリント配線板に対して、ソルダーレジスト用組成物を浸漬法、スプレー、スピンコート、ロールコート、カーテンコート、スクリーン印刷等の適宜の手法により塗布した後、ソルダーレジスト用組成物中の有機溶剤Fを揮発させるために例えば60〜120℃で予備乾燥を行ない、乾燥膜を形成する。
この乾燥膜に対し、パターンが描かれたネガマスクを乾燥膜の表面に直接又は間接的に当てがい、活性エネルギー線を照射することにより、ネガマスクを介して乾燥膜を露光する。ネガマスクとしては、ソルダーレジスト層のパターン形状が活性エネルギー線を透過させる露光部として描画されると共に他の部分が活性エネルギー線を遮蔽する非露光部として形成された、マスクフィルムや乾板等のフォトツールなどが用いられる。また活性エネルギー線としては、ソルダーレジスト用組成物の組成に応じ、紫外線、可視光、近赤外線等などの適宜の活性エネルギー線が挙げられる。例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプ等の光源から紫外線等を照射する。
尚、露光の手法は、上記のようなネガマスクを用いる方法に限られるものではなく、適宜の手法を採用することができ、例えばレーザ露光等による直接描画法等を採用することもできる。
露光後のプリント配線板からネガマスクを取り外し、現像処理することにより、乾燥膜の非露光部分を除去し、残存する乾燥膜の露光部分にてソルダーレジスト層を形成する。
現像処理では、感光性樹脂層を形成するソルダーレジスト用組成物の種類に応じた適宜の現像液を使用することができる。現像液の具体例としては例えば炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶、炭酸水素カリウム水溶液、炭酸水素アンモニウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化アンモニウム水溶液、水酸化リチウム水溶液などのアルカリ溶液を例示することができる。また、前記アルカリ溶液以外でもモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の有機アミンを使用することができ、これらは、単独でも組み合わせても用いることができる。このアルカリ溶液の溶媒としては、水単独のみならず、例えば水と低級アルコール類等の親水性のある有機溶媒の混合物を用いることも可能である。
更に、必要に応じてソルダーレジスト層を例えば120〜180℃で30〜90分程度の条件で加熱処理を施すことでエポキシ化合物Bを熱硬化させ、ソルダーレジスト層の膜強度、硬度、耐薬品性等を向上させてもよい。
以下、本発明の具体的な実施例を提示することで、本発明を更に詳述する。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は全て質量基準の値である。
〔合成例1〕
還流冷却器、温度計、窒素置換用ガラス管及び撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに、メタクリル酸42部、メチルメタクリレート43部、スチレン15部、カルビトールアセテート100部、ラウリルメルカプタン0.5部、アゾビスイソブチロニトリル4部を加えた。この四ツ口フラスコ内の液を窒素気流下で75℃で5時間加熱して重合反応を進行させ、50%共重合体溶液を得た。
この50%共重合体溶液に、ハイドロキノン0.05部、グリシジルメタクリレート35部、ジメチルベンジルアミン2.0部を加え、80℃で24時間付加反応を行なった後、カルビトールアセテート35部を加えることで、感光性樹脂の50%溶液(A−1)を得た。
〔合成例2〕
合成例1において、スチレン15部に代えてN−フェニルマレイミド15部を使用した。それ以外は合成例1と同一の条件で、感光性樹脂の50%溶液(A−2)を得た。
〔合成例3〕
合成例1において、スチレン15部に代えてベンジルアクリレート15部を使用した。それ以外は合成例1と同一の条件で、感光性樹脂の50%溶液(A−3)を得た。
〔合成例4〕
合成例1において、スチレン15部に代えてN−ベンジルマレイミド15部を使用した。それ以外は合成例1と同一の条件で、感光性樹脂の50%溶液(A−4)を得た。
〔合成例5〕
合成例1において、スチレン15部に代えてスチレン7.5部及びベンジルアクリレート7.5部を使用した。それ以外は合成例1と同一の条件で、感光性樹脂の50%溶液(A−5)を得た。
〔合成例6〕
合成例1において、スチレン15部に代えてスチレン20部、N−フェニルマレイミド5部及びベンジルアクリレート15部を使用した。それ以外は合成例1と同一の条件で、感光性樹脂の50%溶液(A−6)を得た。
〔合成例7〕
合成例1において、スチレン15部に代えてスチレン25部及びベンジルアクリレート25部を使用すると共に、グリシジルメタクリレートの使用量を29部とした。それ以外は合成例1と同一の条件で、感光性樹脂の50%溶液(A−7)を得た。
〔合成例8〕
合成例1において、スチレン15部に代えてスチレン35部及びベンジルアクリレート35部を使用すると共に、グリシジルメタクリレートの使用量を23部とした。それ以外は合成例1と同一の条件で、感光性樹脂の50%溶液(A−8)を得た。
〔合成例9〕
合成例1において、スチレン15部に代えてブチルメタクリレートを使用した。それ以外は合成例1と同一の条件で、感光性樹脂の50%溶液(B−1)を得た。
各合成例における原料組成を下記表1に示す。併せて、表1中の「芳香環含有率」の欄に、各合成例で得られた感光性樹脂中の芳香環の質量割合を示す。
Figure 0005676889
参考例1、実施例乃至8、参考例9乃至12、及び比較例1,2〕
上記各合成例で生成された感光性樹脂の溶液に、表1に示す各配合組成の配合成分を加え、これを3本ロールで混練し、感光性樹脂組成物を得た。
表1中に示される原料成分の詳細は次の通りである。
・エポキシ化合物1:トリグリシジルイソシアヌレート(S−トリアジン環骨格面に対し3個のエポキシ基が同一方向に結合した構造を有するβ体)
・エポキシ化合物2:水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量230)
・エポキシ化合物3:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量214)
・DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
・酸化チタン:テイカ株式会社、品番CR−58
・硫酸バリウム:堺化学工業株式会社製、品番BM−200
・ルシリンTPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド
・メラミン:日産化学工業株式会社製、微粉メラミン
・微粉シリカ:株式会社トクヤマ製、品名レオロシールMT−10
・シリコーン:信越シリコーン株式会社製の品番KS−66
また、表2の「芳香環量」の欄に、各実施例及び比較例における感光性樹脂組成物中の樹脂成分全量に対する芳香環の質量割合を示す。
〔評価試験〕
各感光性樹脂組成物を、厚み35μmの銅箔のガラスエポキシ基材からなる銅張積層板及びこれを予めエッチングしてパターンを形成しておいたプリント配線基板の全面にスクリーン印刷により塗布し、基板表面に湿潤塗膜を形成した。
この湿潤塗膜を80℃で20分加熱して予備乾燥し、膜厚20μmの乾燥塗膜を得た。
この乾燥塗膜の表面にネガマスクを直接当てがうとともに各感光性樹脂組成物における最適露光量の紫外線を照射し、基板表面上の乾燥塗膜を選択的に露光した。
露光後の乾燥塗膜に炭酸ナトリウム水溶液で現像処理を施して、基板上に乾燥塗膜の露光硬化部分を残存させた
この乾燥塗膜の露光硬化部分を150℃で60分間加熱して熱硬化させることでソルダーレジスト層を形成し、ソルダーレジスト層を備えるテストピースを得た。
(タック性)
露光時においてネガマスクを取り外すときの乾燥塗膜の粘着の状態及び乾燥塗膜の指触粘着性を、下記の評価基準により評価した。
◎:ネガマスクを取り外した際に全く剥離抵抗を感じず、貼付痕もなかった。また、指触によっても全く粘着を感じなかった。
○:ネガマスクを取り外した際には粘着を感じなかったが、乾燥膜上にマスクのかすかな貼付痕が認められた。また、指触によってもかすかに粘着を感じた。
△:ネガマスクを取り外す際にわずかに剥離抵抗を感じると共に、乾燥膜上にマスクの貼付痕が認められた。また、指触によってもわずかな粘着を感じた。
×:ネガマスクを取り外すことが困難で、無理に剥すとマスクパターンが毀損した。指触によっても顕著な粘着を感じた。
(耐酸性)
室温においてテストピースを1時間、10%の塩酸に浸漬した後、ソルダーレジスト層の外観を観察して評価した。評価方法は次の通りである。
◎:異常を生じない。
○:極僅かに変化が見られる。
△:少し変化が見られる。
×:塗膜に剥がれ等の大きな変化が見られる。
(耐アルカリ性・現像性)
露光工程において線幅及び線間が共に40μmの同心円状のソルダーレジスト層が形成されるようなネガマスクを用い、形成されたソルダーレジスト層のパターン形状を観察し、次のように評価した。
◎:シャープな同心円状のパターンが形成された。
○:同心円状のパターンは形成されるが、線間、線幅の一定性にわずかにむらがあった。
△:同心円状のパターンは形成されているが、その一部にわずかに樹脂残り又は欠落があった。
(密着性)
JIS D0202の試験方法に従って、テストピースのソルダーレジスト層に碁盤目状にクロスカットを入れ、次いでセロハン粘着テープによるピーリング試験後の剥がれの状態を目視により次の基準に従い判定した。
◎:100個のクロスカット部分のうちの全てに全く変化が見られない。
○:100個のクロスカット部分のうち1箇所に僅かに浮きを生じた。
△:100個のクロスカット部分のうち2〜10箇所に剥がれを生じた。
×:100個のクロスカット部分のうち11〜100箇所に剥がれを生じた。
(PCT特性)
テストピースを温度121℃の飽和水蒸気中に50時間放置した後、このテストピースのソルダーレジスト層の外観を観察し、その結果を次の基準に従って判定した。
◎:ふくれ、剥がれ、変色等の変化が全く見られない。
○:ふくれ、剥がれ、変色等の変化が極僅かに見られる。
△:ふくれ、剥がれ、変色等の変化が若干認められる。
×:ふくれ、剥がれ、変色等の変化が認められる。
(耐めっき性)
市販品の無電解ニッケルめっき浴及び無電解金めっき浴を用いて、テストピースのめっきを行い、めっきの状態を観察した。またソルダーレジスト層に対してセロハン粘着テープ剥離試験をおこなうことでめっき後のソルダーレジスト層の密着状態を観察した。評価方法は次の通りである。
◎:外観の変化、テープ剥離時の剥離、めっきの潜り込みのいずれについても全くなかった。
○:外観変化はなく、テープ剥離時においても剥離も生じなかったが、レジストの末端部分において、極めてわずかながら、めっきの潜り込みがみられた。
△:外観変化はないが、テープ剥離時に一部剥離が見られるもの。
×:ソルダーレジスト層の浮きが見られ、テープ剥離時に剥離が見られるもの。
(はんだ耐熱性)
フラックスとしてLONCO 3355−11(ロンドンケミカル社製の水溶性フラックス)を用い、まずテストピースにフラックスを塗布し、次いでこれを260℃の溶融はんだ浴に15秒間浸漬し、その後水洗した。このサイクルを3回おこなった後の表面白化の程度を観察した。
表面白化の評価方法は次の通りである。
◎:異常を生じなかった。
○:僅かに白化が認められた。
△:白化が認められた。
×:著しく白化した。
(耐紫外線黄変)
露光工程における露光光量を100J/cmとし、露光前後における乾燥膜の外観を比較して、黄変の程度を確認し、下記のように評価した。
◎:外観の変化無し。
○:殆ど外観の変化無し。
△:若干の黄変が認められる。
×:著しい黄変が認められる。
(耐熱黄変)
ソルダーレジスト用組成物を塗布した直後の基板と、これを150℃、100時間の条件で保存したものとを比較し、塗膜の黄変の程度を下記のように評価した。
◎:外観の変化無し。
○:殆ど外観の変化無し。
△:若干の黄変が認められる。
×:著しい黄変が認められる。
(反射率)
テストピースにおけるソルダーレジスト層の、波長470nmの光の反射率を、コニカミノルタセンシング株式会社製の分光測色計(型番CM−600d)により測定した。
前記測定は、ソルダーレジスト形成後、何らの追加的な処理を施していない場合(初期)、ソルダーレジスト層にアイグラフィックス社製のメタルハライドランプ(120W/cm;一灯)からの照射光を積算光量が50Jになるまで照射した場合(照射後)、及びソルダーレジスト層に追加的に150℃で100時間加熱処理を施した場合(加熱後)の、それぞれについておこなった。
(鉛筆硬度)
ソルダーレジスト層の鉛筆硬度を、三菱ハイユニ(三菱鉛筆社製)を用いて、JIS K5400に準拠して測定して評価した。
(試験結果)
以上の評価試験の結果を下記表2に示す。
Figure 0005676889

Claims (4)

  1. 下記成分A、下記成分B、及び下記成分Cからなる樹脂成分、
    及び下記成分Dを含有し、
    前記樹脂成分に対する芳香環の割合が0.1〜50質量%の範囲であり、
    A.1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する感光性樹脂
    B.1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物
    C.光重合性を有するモノマー及びプレポリマーから選択される光重合性化合物
    D.白色の着色材
    前記成分Aが、芳香環を有する感光性樹脂成分を含み、
    前記成分Aには、
    エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物と、N−フェニルマレイミド、ベンジルアクリレート、及びN−ベンジルマレイミドからなる群から選択される一種以上の化合物を含む他のエチレン性不飽和化合物と、を重合させて得られるエポキシ化合物を含む1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と、飽和或いは不飽和の酸無水物とを反応させることで得られる感光性樹脂成分、及び
    カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と、N−フェニルマレイミド、ベンジルアクリレート、及びN−ベンジルマレイミドからなる群から選択される一種以上の化合物を含む他のエチレン性不飽和化合物と、を重合させて得られる化合物に、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させることで得られる感光性樹脂成分
    のうち少なくとも一方が含まれ
    白色に着色されていることを特徴とする
    感光性樹脂組成物。
  2. 前記D成分の配合量が、感光性樹脂組成物中の有機溶剤を除く成分全量に対して、15〜50質量%であることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物からなることを特徴とするソルダーレジスト用組成物。
  4. 請求項に記載のソルダーレジスト用組成物から形成されたソルダーレジスト層を備えることを特徴とするプリント配線板。
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