JP5676367B2 - 音響装置 - Google Patents

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本発明は、発生磁力の変化によって音波を発生させる誘導性スピーカ(例えば、電磁式の車両用ホーン等)と、蓄積電荷の変化によって音波を発生させる容量性スピーカ(例えば、圧電スピーカ等)とを用いた音響装置に関するものであり、報知音によって車両の存在を周囲に知らせる車両存在報知装置に用いて好適な技術に関する。
(背景技術)
車両存在報知装置を用いて背景技術を説明する。
静かな車両(電気自動車等)の存在を報知音(擬似エンジン音等)によって周囲に知らせる車両存在報知装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示される車両存在報知装置は、ダイナミックスピーカ(可聴音を直接放出するスピーカ)から報知音を発生させるものである。
ダイナミックスピーカが直接発生する可聴音は、周囲へ広がる性質を備えている。このため、車両の進行方向の遠くまで報知音を発生させようとすると、車両の進行方向とは異なる方向(車室内を含む)へも大きな音圧の報知音が届いてしまい、報知音が車両騒音の要因になってしまう。
この問題点に対し、ダイナミックスピーカに代えて、パラメトリックスピーカを用いる技術が提案されている(例えば、特許文献2)。パラメトリックスピーカは、報知音(可聴音)を超音波変調(原音に超音波の変調をかける)して超音波スピーカから空気中に照射し、超音波(耳に聞こえない音波)に含まれる変調成分が伝播途中の空気中で自己復調されることで、超音波スピーカから離れた場所で報知音を発生させるものである。
このパラメトリックスピーカは、指向性(直進性)の強い超音波を用いる技術であるため、車両の前方のみに報知音を発生させることができ、報知音が騒音の要因になる不具合を回避することができる。
しかしながら、パラメトリックスピーカを用いて報知音を発生させる技術は、車両の前方のみに報知音が発生するものであったため、車両の正面以外では報知音が発生せず、車両の正面以外では車両の存在を報知音で知らせることができない。
そこで、上記の不具合を回避する手段として、ダイナミックスピーカとパラメトリックスピーカの両方から報知音を発生させて、両者の欠点を補完する車両存在報知装置が提案されている(周知の技術ではない)。
(問題点1)
問題点1を、図12、図13を参照して説明する。なお、後述する「発明を実施するための形態」および「実施例」の関連物に同一符号を付したものである。また、以下の問題点にて示す技術は、本発明との差異を説明するために開示する技術であって、周知の技術ではない。
ダイナミックスピーカとして、質量の大きい振動系を駆動することが容易な誘導性スピーカ2が一般的に用いられる。
また、パラメトリックスピーカにおいて超音波を発生させる超音波スピーカとして、振動系を軽く設けることが容易な容量性スピーカ3が一般に用いられる。
図12は、誘導性スピーカ2および容量性スピーカ3の通電制御を行なう制御回路5の一例を示すものであり、
(a)誘導性スピーカ2の駆動信号となる誘導性スピーカ用PWM音声信号A(可聴音用PWM信号)、および容量性スピーカ3の駆動信号となる容量性スピーカ用PWM音声信号E(超音波用PWM信号)を発生する2チャンネルのPWM音源6と、
(b)誘導性スピーカ用PWM音声信号Aによって誘導性スピーカ駆動信号Cを発生する誘導性スピーカ駆動手段7と、
(c)容量性スピーカ用PWM音声信号Eによって容量性スピーカ駆動信号Fを発生する容量性スピーカ駆動手段8と、
を備える。
図13は、制御回路5の作動に伴う各部の波形を示すものであり、図13の上から下へ向けて、
・誘導性スピーカ2の駆動信号となる誘導性スピーカ用PWM音声信号A、
・誘導性スピーカ2に与えられる誘導性スピーカ駆動信号C、
・誘導性スピーカ2の出力波形D、
・容量性スピーカ3の駆動信号となる容量性スピーカ用PWM音声信号E、
・容量性スピーカ3に与えられる容量性スピーカ駆動信号F、
・容量性スピーカ3の出力波形G、
・超音波波形が空気中で自己復調されたパラメトリック再生音の波形信号H、
を示すものである。
なお、図12では、主電源として12Vのバッテリ4を用いるものであるが、図13に示すように、容量性スピーカ3に与えられる容量性スピーカ駆動信号Fの最大振幅が±30Vであることを説明する。
図12の制御回路5に搭載される容量性スピーカ駆動手段8は、後述する「発明を実施するための形態」および「実施例」と同様、容量性スピーカ用PWM音声信号Eによって容量性スピーカ3に正負電圧を切り替えて付与するプッシュプルのD級アンプである。そして、容量性スピーカ駆動手段8(D級アンプ)の出力部には図示しないコイルが設けられており、コイルと容量性スピーカ3による直列共振回路として作動し、コイルのインダクタンスの選択によって、共振周波数を容量性スピーカ3の搬送波周波数(例えば40kHz)に合わせることで、供給電圧(12V)の5倍の電圧幅(±30V)が得られるものである。なお、5倍は説明のための具体例であり、変更可能なものである。
ここで、図12の誘導性スピーカ駆動手段7は、本発明と同様、誘導性スピーカ用PWM音声信号Aによって誘導性スピーカ2の通電状態の断続を行なうスイッチング手段9である。
このように、誘導性スピーカ駆動手段7としてスイッチング手段9を用いることにより、
(i)PWM信号によりスイッチング手段9を短時間で断続制御することで車両用ホーンから報知音を発生させることができるとともに、
(ii)スイッチング手段9のON継続により車両用ホーンから警報音(警笛音)を発生させることができる。
即ち、車両用ホーンから報知音と警報音の両方を発生させることができる。
また、スイッチング手段9は回路構成がシンプルであるため、制御回路5をシンプルにでき、コストを抑えることができる。
しかしながら、スイッチング手段9で誘導性スピーカ2を断続させると、誘導性スピーカ駆動信号Cにピーク状のサージが発生する。
特に、誘導性スピーカ2の一例として電磁式の車両用ホーンを用いる場合、車両用ホーンのコイルはインダクタンスが大きいため、誘導性スピーカ駆動信号Cに盛大なサージエネルギーが発生する。
このサージは、数百V発生するため、周辺の車両電子機器にラジオノイズとして影響を与えてしまう。
そこで、車両用ホーンからラジオノイズを発生させないために、サージを数十Vに抑えることが要求される。
サージを除去する手段として、図12に示すようにスナバ回路100を設けることが考えられる。
しかし、スナバ回路100は、発生したサージを熱にして捨ててしまう。この結果、バッテリ4の電力を有効に使用できず、バッテリ4の電力消費が大きくなってしまう。
さらに、スナバ回路100には、サージエネルギーを熱にして捨てるだけの性能が要求されるため、大型で高コストな部品が必要になり、スナバ回路100を搭載することでコストアップになってしまう。
特に、誘導性スピーカ2の一例として電磁式の車両用ホーンを用いる場合、盛大なサージエネルギーをスナバ回路100で熱として捨てるため、スナバ回路100には特に大型で高コストな部品が必要になり、制御回路5の搭載性の悪化やコストアップの要因になる。
上記では、誘導性スピーカ駆動手段7にスイッチング手段9を用いる場合の問題点を説明した。しかるに、誘導性スピーカ駆動手段7にスイッチング手段9とは異なる他の手段を用いても、上記と同様な問題点が生じてしまう。
その具体例を、問題点2、3において説明する。
(問題点2)
図14の誘導性スピーカ駆動手段7は、誘導性スピーカ用PWM音声信号Aをフィルタ101で電圧変化に変換して誘導性スピーカ2を駆動するB級アンプ102である。
誘導性スピーカ2をB級アンプ102で駆動する場合、上述したサージは発生しないものの、サージエネルギーに相当する電気エネルギーが、B級アンプ102を構成する電力増幅素子(トランジスタ等)で消費される。即ち、電力増幅素子が発熱する。このため、その発熱を、ヒートシンク103を用いて捨てる必要が生じる。
このように誘導性スピーカ駆動手段7としてB級アンプ102を使用しても、電力増幅素子の発熱を、ヒートシンク103を用いて捨てるため、電気エネルギーの一部が熱として無駄に消費されてしまう。
また、ヒートシンク103を用いることにより、制御回路5が大型化するとともにコストアップの要因になってしまう。
(問題点3)
図15の誘導性スピーカ駆動手段7は、誘導性スピーカ用PWM音声信号Aによって誘導性スピーカ2に正負電圧を切り替えて付与するプッシュプルのD級アンプ104である。D級アンプ104は、エネルギー効率に優れているためヒートシンク103(問題点2参照)を用いなくても良い。
しかし、D級アンプ104により誘導性スピーカ2を駆動するには、D級アンプ104の出力部にコイルとコンデンサで構成されるフィルタ105を設ける必要がある。
特に、誘導性スピーカ2の一例として電磁式の車両用ホーンを用いる場合、車両用ホーンに搭載されるコイルのインダクタンスが大きいため、大電流に対応した大型で高価なコイルとコンデンサが必要となり、制御回路5が大型化するとともにコストアップの要因になってしまう。
特開2005−289175号公報 特開2011−050184号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、誘導性スピーカの通電状態をスイッチング手段で断続させた際に発生するサージエネルギーを捨てずに容量性スピーカの駆動に用いて消費することで電力消費を抑えるとともに、サージエネルギーを捨てる際に必要となる部品の大型化や高コスト化を回避することのできる音響装置の提供にある。
〔請求項1の手段〕
誘導性スピーカを駆動する誘導性スピーカ駆動手段は、スイッチング手段であり、PWM信号(誘導性スピーカ用PWM音声信号)によって誘導性スピーカの通電状態の断続を行なう。スイッチング手段が誘導性スピーカの通電状態の断続を行なうことで誘導性スピーカの通電回路にサージが発生する。容量性スピーカを駆動する容量性スピーカ駆動手段は、スイッチング手段の断続により生じるサージ電圧を平滑化した直流の2次電圧を用いて容量性スピーカを駆動する。
(発明の効果1)
このように、誘導性スピーカの通電状態をスイッチング手段で断続させた際に発生するサージエネルギーを捨てずに容量性スピーカの駆動に活用する。これによって、容量性スピーカの駆動に用いられる電力消費を抑えることができ、結果的に音響装置の電力消費を抑えることができる。
(発明の効果2)
また、サージエネルギーを捨てずに、容量性スピーカを駆動することで消費するため、サージエネルギーを捨てる際に必要となる部品の大型化や高コスト化を回避することが可能になる。
(発明の効果3)
さらに、2次電圧は、電源電圧にサージ電圧が加算された電圧であるため、容量性スピーカの駆動電圧が高まる。この結果、容量性スピーカの音圧を大きくすることができる。あるいは、容量性スピーカの使用数を減らすことが可能になる。
〔請求項2の手段〕
請求項2のスイッチング手段は、主電源(例えば、バッテリ等)のプラス電位に接続された誘導性スピーカとアース電位との間を断続するローサイドタイプであり{図2(a)参照}、スイッチング手段の断続によるサージ電圧が、容量性スピーカ駆動手段におけるアンプ回路のプラス電位側に生じるものである(図3中の波形信号C参照)。
〔請求項3の手段〕
請求項3のスイッチング手段は、主電源(例えば、バッテリ等)のプラス電位と誘導性スピーカとの間を断続するハイサイドタイプであり(図4参照)、スイッチング手段の断続によるサージ電圧が、容量性スピーカ駆動手段におけるアンプ回路のマイナス電位側に生じる(図5中の波形信号C参照)。
〔請求項4の手段〕
請求項4の音響装置は、誘導性スピーカ用PWM音声信号(誘導性スピーカの駆動信号)の変化に伴って生じる2次電圧の変動に応じて、容量性スピーカ用PWM音声信号(容量性スピーカの駆動信号)を直接または間接的に補正する2次電圧増減補正手段を用いるものである。
これにより、2次電圧の変動(揺らぎ)に伴って容量性スピーカによる再生音に揺らぎが生じる不具合を回避することができる。
〔請求項5の手段〕
請求項5の容量性スピーカは、蓄積電荷の変化により変位する圧電素子を用いた圧電スピーカであり、この圧電スピーカは、パラメトリックスピーカにおいて超音波を発生する超音波スピーカに用いられるものである。
これにより、サージエネルギーを捨てずにパラメトリックスピーカで活用することができ、パラメトリックスピーカの電力消費を抑えることができる。
〔請求項6の手段〕
請求項6の誘導性スピーカは、印加電圧の変化により発生磁力が変化するコイルを用いたダイナミックスピーカであり、このダイナミックスピーカは、ホーンスイッチが操作された際に警報音(警笛音)を発生する電磁式の車両用ホーンである。
誘導性スピーカとして車両用ホーンを利用するため、コストを抑えることができるとともに、車両への搭載性が高められる。
〔請求項7の手段〕
請求項7の音響装置は、報知音を車外へ発生させて車両の存在を知らせる車両存在報知装置に用いられるものである。
誘導性スピーカ駆動手段にスイッチング手段を用いた音響装置の電気回路の概略ブロック図(発明の基本構成図)である。 (a)ローサイドタイプの昇圧回路の概略ブロック図、(b)比較に用いた昇圧回路の概略ブロック図である(実施形態1)。 波形信号を用いた作動説明用のタイムチャートである(実施形態1)。 ハイサイドタイプの昇圧回路の概略ブロック図である(実施形態2)。 波形信号を用いた作動説明用のタイムチャートである(実施形態2)。 車両存在報知装置の概略図である(実施例1)。 超音波スピーカと車両用ホーンの車両搭載図である(実施例1)。 (a)車両用ホーンの構造を示す断面図、(b)超音波スピーカが搭載された車両用ホーンの斜視図である(実施例1)。 車両存在報知装置の概略図である(実施例2)。 車両存在報知装置の概略図である(実施例3)。 車両存在報知装置の概略図である(実施例4)。 誘導性スピーカ駆動手段にスイッチング手段を用いた音響装置の電気回路の概略ブロック図である(参考例1)。 波形信号を用いた作動説明用のタイムチャートである(参考例1)。 誘導性スピーカ駆動手段にB級アンプを用いた音響装置の電気回路の概略ブロック図である(参考例2)。 誘導性スピーカ駆動手段にプッシュプルのD級アンプを用いた音響装置の電気回路の概略ブロック図である(参考例3)。
図1〜図5を参照して本発明の実施形態を説明する。
本発明の音響装置1は、
(a)発生磁力の変化によって音波を発生させる誘導性スピーカ2と、
(b)蓄積電荷の変化によって音波を発生させる容量性スピーカ3と、
(c)主電源4から供給される電力を用いて誘導性スピーカ2および容量性スピーカ3を作動制御する制御回路5と、
を具備する。
制御回路5は、
(d)誘導性スピーカ2の駆動信号となる誘導性スピーカ用PWM音声信号A、および容量性スピーカ3の駆動信号となる容量性スピーカ用PWM音声信号Eを発生する2チャンネルのPWM音源6と、
(e)誘導性スピーカ用PWM音声信号Aによって誘導性スピーカ2を駆動する誘導性スピーカ駆動手段7と、
(f)容量性スピーカ用PWM音声信号Eによって容量性スピーカ3を駆動する容量性スピーカ駆動手段8と、
を具備する。
そして、誘導性スピーカ駆動手段7は、可聴音信号をPWM変調してなる誘導性スピーカ用PWM音声信号Aによって誘導性スピーカ2の通電状態の断続を行なうスイッチング手段9である。
また、制御回路5は、スイッチング手段9の断続により生じたサージ電圧を平滑化する平滑回路10を備える。
さらに、容量性スピーカ駆動手段8は、平滑回路10で平滑化された電圧(スイッチング手段9の断続により生じるサージ電圧を平滑化してなる直流の2次電圧C’)を用いて容量性スピーカ3を駆動する。
このように、誘導性スピーカ2の通電状態をスイッチング手段9で断続させた際に発生するサージエネルギーを捨てずに容量性スピーカ3の駆動に活用することにより、容量性スピーカ3の駆動に用いられる電力消費を抑えることができる。
また、サージエネルギーを捨てずに、容量性スピーカ3を駆動することで消費するため、サージエネルギーを捨てる際に必要となる部品の大型化や高コスト化を回避することが可能になり、制御回路5の小型化および低コスト化を実現できる。
さらに、2次電圧C’(平滑回路10で平滑化された電圧)は、電源電圧にサージ電圧が加算された電圧であるため、容量性スピーカ3の駆動電圧が高まる。この結果、容量性スピーカ3の音圧を大きくすることができる。あるいは、容量性スピーカ3を複数用いる場合、使用する容量性スピーカ3の数を減らすことが可能になる。
サージ電圧により容量性スピーカ3の駆動電圧が高まる具体例を、「実施形態1、2」を用いて説明する。なお、実施形態1はローサイドによる昇圧例を示すものであり、実施形態2はハイサイドによる昇圧例を示すものである。
[実施形態1]
図2(a)、図3を参照して実施形態1を説明する。
実施形態1のスイッチング手段9は、バッテリ4(主電源の一例)のプラス電位(具体例として12V)に接続された誘導性スピーカ2とアース電位との間を断続するローサイドタイプであり、スイッチング手段9の断続によるサージ電圧が、容量性スピーカ駆動手段8におけるアンプ回路のプラス電位側に生じるものである。
ここで、図3は、制御回路5の作動に伴う各部の波形の具体例を示すものであり、図3の上から下へ向けて、
・誘導性スピーカ2の駆動信号となる誘導性スピーカ用PWM音声信号A、
・誘導性スピーカ2に与えられる誘導性スピーカ駆動信号C、
・誘導性スピーカ2の出力波形D、
・2次電圧C’(バッテリ電圧+Bにプラス側サージ分の平滑電圧αを加えた電圧)、
・容量性スピーカ3の駆動信号となる容量性スピーカ用PWM音声信号E、
・容量性スピーカ3に与えられる容量性スピーカ駆動信号F(超音波駆動信号)、
・容量性スピーカ3の出力波形G、
・超音波波形が空気中で自己復調されたパラメトリック再生音の波形信号H、
を示すものである。
誘導性スピーカ用PWM音声信号Aにより誘導性スピーカ2の通電状態をスイッチング手段9によって断続することで、プラス電位側において生じたサージ電圧が捨てられずにバッテリ電圧+Bに加算される。その結果、平滑回路10で平滑化された2次電圧C’が昇圧され、容量性スピーカ3の駆動電圧が高まる。
これにより、容量性スピーカ3の音圧を大きくすることができる。あるいは、使用する容量性スピーカ3の数を減らすことが可能になる。
(比較説明)
なお、本発明とは異なり、容量性スピーカ3の駆動電圧を高める手段として昇圧回路を用いることが考えられる。
一般的な昇圧回路の具体例を図2(b)に示す。なお、この図2(b)は、電圧供給回路に配置したチョークコイル(インダクタンス)X1をスイッチング手段9で断続するものであり、図中の符号X2は、スイッチング手段9に断続信号(昇圧用PWM信号A’)を与えるスイッチング信号発生部である。
図2(b)に示す既存の昇圧回路を用いて容量性スピーカ3の駆動電圧を高める場合、専用の昇圧回路を別途搭載する必要があり、コストアップの要因になってしまう。
これに対し、本発明は、サージ電圧を捨てずに利用することで容量性スピーカ3の駆動電圧を高めるため、専用の昇圧回路を別途搭載する必要がない。
即ち、本発明は、専用の昇圧回路を別途搭載することなく、容量性スピーカ3の駆動電圧を高めることができる。
なお、2次電圧C’が約18Vであるが、容量性スピーカ3に与えられる容量性スピーカ駆動信号Fの最大振幅が±45Vであることを説明する。
この実施形態における容量性スピーカ駆動手段8は、容量性スピーカ用PWM音声信号Eによって容量性スピーカ3に正負電圧を切り替えて付与するプッシュプルのD級アンプである。そして、容量性スピーカ駆動手段8(D級アンプ)の出力部には図示しないコイルが設けられており、コイルと容量性スピーカ3による直列共振回路として作動し、コイルのインダクタンスの選択によって、共振周波数を容量性スピーカ3の搬送波周波数(例えば40kHz)に合わせることで、2次電圧C’(18V)の5倍の電圧幅(±45V)が得られるものである。なお、5倍は具体例を示すものであり、適宜変更可能なものである。
[実施形態2]
図4、図5を参照して実施形態2を説明する。
実施形態2のスイッチング手段9は、バッテリ4(主電源の一例)のプラス電位(具体例として12V)と誘導性スピーカ2との間を断続するハイサイドタイプであり、スイッチング手段9の断続によるサージ電圧が、容量性スピーカ駆動手段8におけるアンプ回路のマイナス電位側に生じるものである。
ここで、図5は、制御回路5の作動に伴う各部の波形の具体例を示すものであり、図5の上から下へ向けて、
・誘導性スピーカ2の駆動信号となる誘導性スピーカ用PWM音声信号A、
・誘導性スピーカ2に与えられる誘導性スピーカ駆動信号C、
・誘導性スピーカ2の出力波形D、
・2次電圧C’(バッテリ電圧+Bとマイナス側サージ分の平滑電圧−αの差電圧)、
・容量性スピーカ3の駆動信号となる容量性スピーカ用PWM音声信号E、
・容量性スピーカ3に与えられる容量性スピーカ駆動信号F、
・容量性スピーカ3の出力波形G、
・超音波波形が空気中で自己復調されたパラメトリック再生音の波形信号H、
を示すものである。
誘導性スピーカ用PWM音声信号Aにより誘導性スピーカ2の通電状態をスイッチング手段9によって断続することで、マイナス電位側において生じたサージ電圧が捨てられずにバッテリ電圧(12V)のマイナス側に加算される。その結果、平滑回路10で平滑化された2次電圧C’の電圧幅が大きくなり、容量性スピーカ3の駆動電圧が高まる。
これにより、容量性スピーカ3の音圧を大きくすることができる。あるいは、使用する容量性スピーカ3の数を減らすことが可能になる。
以下において本発明を車両存在報知装置1に適用した具体例(実施例)を、図面を参照して説明する。以下の実施例は具体的な一例を示すものであって、本発明が実施例に限定されないことはいうまでもない。
なお、以下の実施例において、上記「発明を実施するための形態」と同一符号は関連物を示すものである。
[実施例1]
図6〜図8を参照して実施例1を説明する。
車両存在報知装置1は、報知音(可聴音:擬似エンジン音など)によって車両の存在を知らせるものであり、例えば、エンジン(内燃機関)を搭載しない車両(電気自動車、燃料電池自動車等)、走行中および停車中にエンジンを停止する可能性のある車両(ハイブリッド車両等)、停車中にエンジンを停止する可能性のある車両(アイドルストップ車両等)、あるいはエンジン車両であっても走行音が静かなコンベ車などに搭載されるものである。
この車両存在報知装置1は、
・可聴帯域の報知音を直接車外へ向けて放出するダイナミックスピーカとして用いる車両用ホーン2(誘導性スピーカの一例)と、
・報知音を成す波形信号を超音波変調してなる超音波を車外へ向けて放出するパラメトリックスピーカ11と、
・車両用ホーン2およびパラメトリックスピーカ11の作動制御を行なう制御回路5と、を備えて構成される。
(車両用ホーン2の説明)
車両用ホーン2は、乗員によってホーンスイッチ12(例えば、ステアリングのホーンボタン)が操作された際に警報音を発生する電磁式警音器であり、図7に示すように、車両前部に設けられるフロントグリル13と、その内部に配置される熱交換器14(ラジエータあるいは空調用熱交換器等)との間に固定配置されるものである。
車両用ホーン2の具体的な例を、図8(a)を参照して説明する。
車両用ホーン2は、
・通電により磁力を発生するコイル21と、
・コイル21の磁力により磁気吸引力を発生する固定鉄心22(磁気吸引コア)と、
・振動板23(ダイヤフラム)の中心部に支持されて固定鉄心22に向かって移動可能に支持される可動鉄心24(可動コア)と、
・この可動鉄心24の移動に連動し、可動鉄心24が固定鉄心22に向かって移動することにより固定接点25から離れてコイル21の通電を遮断する可動接点26と、
を備える。
そして、車両用ホーン2の通電端子(コイル21の両端に接続される端子)に、直流で閾値以上の自励電圧(8V以上の電圧)が与えられることによって、
(i)コイル21の通電により可動鉄心24が固定鉄心22に磁気吸引されて、固定接点25から可動接点26が離れてコイル21の通電が停止する吸引動作と、
(ii)通電停止によって振動板23がリターンスプリングの作用を可動鉄心24に付与して可動鉄心24が初期位置へ戻り、固定接点25と可動接点26が接触してコイル21の通電が再開する復元動作と、
を連続して繰り返す。
即ち、固定接点25と可動接点26によって、コイル21の通電回路を断続する電流断続器27が構成される。
このように、コイル21の通電の断続(固定鉄心22の磁気吸引力発生の断続)が発生することで可動鉄心24とともに振動板23が振動して車両用ホーン2が警報音を発生する。
一方、自励電圧より低い他励電圧(例えば、8V未満の電圧)の駆動信号をコイル21に与えることにより、車両用ホーン2をダイナミックスピーカとして用いることができる。
あるいは、自励電圧であっても、電流断続器27において断続が発生しない短時間以内でコイル21の通電状態を素早く断続制御(PWM制御等)することにより、車両用ホーン2をダイナミックスピーカとして用いることができる。
この実施例では、後者(自励電圧を用いてコイル21を素早く断続制御する)を採用して、車両用ホーン2をダイナミックスピーカとして用いるものである。
この実施例に示す車両用ホーン2は、振動板23の振動による警報音を増強させて車外へ放出する渦巻ホーン28(渦巻状のラッパ部材:渦巻状の音響管)を備えており、車両用ホーン2から発生させる報知音が車両の周囲に略均等に到達するように、渦巻ホーン28の開口部が下方(路面)に向くように車両に搭載されるものである。
なお、車両用ホーン2は、渦巻ホーン28を備えるものに限定されるものではなく、渦巻ホーン28を用いないディスク型ホーンであっても良い。
(パラメトリックスピーカ11の説明)
パラメトリックスピーカ11に用いられる超音波スピーカ31は、人間の可聴帯域よりも高い周波数(20kHz以上)の空気振動を発生させるものであり、超音波を車両前方に向けて放出するように車両に搭載されている。
具体的に、この実施例の超音波スピーカ31は、車両用ホーン2の前面(車両搭載時に車両前方へ向かう面:例えば渦巻ホーン28)に設けられるものであり、フロントグリル13と熱交換器14との間に車両用ホーン2が取り付けられることで、超音波の放射方向が車両前方へ向けられた状態で超音波スピーカ31が車両に搭載される。
この実施例の超音波スピーカ31は、図7に示すように、超音波の発生を行なう複数の圧電スピーカ3(容量性スピーカの一例)を搭載するものであり、この複数の圧電スピーカ3がハウジング32の内部に収容された状態で車両に搭載される。
複数の圧電スピーカ3は、ハウジング32の内部に固定配置される支持板33上に取り付けられ、スピーカアレイとして集合配置されるものである。なお、各圧電スピーカ3は、印加電圧(蓄積電荷)の変化に応じて伸縮変位するピエゾ素子(圧電素子)と、このピエゾ素子の伸縮によって駆動されて空気に疎密波を生じさせる振動板とを用いて構成されるものである。
ハウジング32は、車両用ホーン2を成す部材と一体に設けられるものであっても良いし、別体に設けて車両用ホーン2に取り付けられるものであっても良い。
ハウジング32の超音波放射口には、雨水が各圧電スピーカ3の搭載部位に浸入するのを阻止する防水手段が設けられている。
この防水手段の一例として、この実施例では、超音波放射口を覆う超音波透過性の防水シート34と、この防水シート34の前面に配置されたルーバー35とが設けられている{図8(a)では防水シート34およびルーバー35が省略された図を示す}。
(制御回路5の説明)
制御回路5は、図7に示すようにマイコン41(マイクロ・コンピュータの略)を用いて構成されるものであり、例えば、図7に示すように制御回路5が車両用ホーン2の内部(具体的には、ホーンハウジングの内部)に配置される(限定されるものではない)。
制御回路5を、図6を参照して具体的に説明する。
マイコン41は、バッテリ電圧から降圧生成された5V(マイコン41の作動に適した電圧)によって作動する。
このマイコン41には、ホーンスイッチ12の操作信号や、ECU42(エンジン・コントロール・ユニットの略)等から車速信号(車速パルス等)が与えられるものであり、車両の運転状態に応じて報知音を発生させるとともに、車速等に応じて報知音の音色(例えば、擬似エンジン音の車速に応じた音色)を変更する制御プログラムが搭載されている。
具体的に、マイコン41の要部構成を説明する。
マイコン41は、上述した2チャンネルのPWM音源6の機能を含むものであり、周期計測部51、タイマカウンタ52、音声メモリ53、誘導性スピーカ用PWM変調部54、容量性スピーカ用PWM変調部55を備えて構成される。
ECU42から付与された車速信号(車速パルス等)を周期計測部51で周期計測して車速を計算する。
音声メモリ53には、予め車速に応じた報知音(具体的には、車速に応じた擬似エンジン音)を成す音声データが保存されている。そして、車速に応じた音声データが選択され、タイマカウンタ52によって順次出力される。具体的に、タイマカウンタ52は、音声メモリ53の音声データを、録音時のサンプリングレートと同じレートで誘導性スピーカ用PWM変調部54および容量性スピーカ用PWM変調部55の両方へ出力する。
即ち、車速に応じた「報知音を成す波形信号」が誘導性スピーカ用PWM変調部54と容量性スピーカ用PWM変調部55へ出力される。
誘導性スピーカ用PWM変調部54は、「報知音を成す波形信号」をPWM変調してなる誘導性スピーカ用PWM音声信号A(車両用ホーン2の駆動信号)を発生するものである。
ここで、誘導性スピーカ用PWM変調部54におけるPWM変調の周波数(パルスの発生周波数)は、20kHz以上の周波数が用いられ、PWM変調に用いる周波数の音が車両用ホーン2から再生されないように設けられている。
容量性スピーカ用PWM変調部55は、「報知音を成すDSB変調している波形信号」を、PWM変調技術を用いてPWM変調してなる容量性スピーカ用PWM音声信号E(超音波スピーカ31の駆動信号)を発生するものである。
ここで、容量性スピーカ用PWM変調部55におけるPWM変調の周波数(パルスの発生周波数)は、圧電スピーカ3の共振周波数を正数倍した周波数が用いられ、PWM信号によって圧電スピーカ3から超音波が発生するように設けられている。
また制御回路5には、上述したマイコン41の他に、
・車両用ホーン2(誘導性スピーカ)を駆動する誘導性スピーカ駆動手段7と、
・超音波スピーカ31における各圧電スピーカ3(容量性スピーカ)を駆動する容量性スピーカ駆動手段8と、
・スイッチング手段9の断続により生じるサージ電圧を平滑化する平滑回路10と、
が設けられている。
誘導性スピーカ駆動手段7は、「発明を実施するための形態」で示したように、可聴音信号をPWM変調してなる誘導性スピーカ用PWM音声信号Aによって車両用ホーン2の通電状態の断続を行なうスイッチング手段9(バイポーラトランジスタやFET等の半導体スイッチング素子)であり、「実施形態1」で示したローサイドタイプであっても良いし、「実施形態2」で示したハイサイドタイプであっても良い。
容量性スピーカ駆動手段8は、容量性スピーカ用PWM音声信号Eによって各圧電スピーカ3に正負電圧を切り替えて付与するプッシュプルのD級アンプ(容量性スピーカ用PWM音声信号Eにより各圧電スピーカ3の一方の極をオンオフするピエゾ充電用スイッチング部と、容量性スピーカ用PWM音声信号Eを反転させた逆信号により各圧電スピーカ3の他方の極をオンオフするピエゾ放電用スイッチング部とを具備するアンプ)である。
平滑回路10は、上述したように、スイッチング手段9の断続により生じるサージ電圧を平滑化するものであり、少なくとも逆流防止用のダイオード56と、電圧変動を抑えるコンデンサ57を備えて構成される(符号、図2、図4参照)。そして、この平滑回路10で平滑化された2次電圧C’が容量性スピーカ駆動手段8(D級アンプ)に与えられる。
そして、容量性スピーカ駆動手段8(D級アンプ)は、平滑回路10で平滑化された2次電圧C’を用いて各圧電スピーカ3を充放電制御するものである。
なお、マイコン41には、ホーンスイッチ12がONされている間、スイッチング手段9を連続的にONさせて、バッテリ電圧を車両用ホーン2へ印加し、車両用ホーン2から警報音を発生させる機能が設けられている。
また、マイコン41には、「報知音の発生条件」より「ホーンスイッチ12のON」を優先させ、ホーンスイッチ12がONされた際には必ず車両用ホーン2から警報音を発生する機能が設けられている。
(車両存在報知装置1の作動)
車両の運転状態が報知音の発生条件に適合すると、車速に応じた「報知音(擬似エンジン音等)を成す波形信号」が音声メモリ53から取り出され、
(i)誘導性スピーカ用PWM変調部54から「報知音を成す波形信号」をPWM変調してなる誘導性スピーカ用PWM音声信号Aがスイッチング手段9に与えられるとともに、
(ii)容量性スピーカ用PWM変調部55から「報知音を成す波形信号」をPWM変調により超音波変調してなる容量性スピーカ用PWM音声信号Eが容量性スピーカ駆動手段8に与えられる。
スイッチング手段9が誘導性スピーカ用PWM音声信号Aによって断続されることで、車両用ホーン2から車両の周囲に可聴音の「報知音」がダイレクトに放出される。
一方、容量性スピーカ用PWM音声信号Eによって容量性スピーカ駆動手段8が超音波スピーカ31の各圧電スピーカ3を駆動することで、報知音をDSB変調してなる超音波が車両前方に放出される。車両前方に放出された超音波は、空気中を伝播するにつれて、空気の粘性等によって波長の短い超音波が歪んで鈍(なま)される。その結果、伝播途中の空気中において超音波に含まれていた変調成分が自己復調され、結果的に車両前方において「報知音」が再生される。
(実施例1の効果1)
この実施例の車両存在報知装置1は、車両用ホーン2から報知音を発生させる際に、車両用ホーン2をスイッチング手段9で断続させた際に発生するサージエネルギーを捨てずに容量性スピーカ駆動手段8(D級アンプ)の電源に用いて、超音波スピーカ31における各圧電スピーカ3の駆動に活用する。これによって、超音波スピーカ31の駆動に用いられる電力消費を抑えることができ、結果的に車両存在報知装置1の作動に伴うバッテリ消費を抑えることができる。
(実施例1の効果2)
この実施例の車両存在報知装置1は、サージエネルギーを捨てずに、超音波スピーカ31を駆動することで消費するため、サージエネルギーを捨てる際に必要となる部品の大型化や高コスト化を回避することが可能になり、制御回路5を小型かつ低コスト化することができ、車両への搭載性を向上することができる。
(実施例1の効果3)
平滑回路10で平滑化した2次電圧C’は、バッテリ電圧に平滑化されたサージ電圧が加算された電圧であるため、超音波スピーカ31の駆動電圧が高まる。
これにより、超音波スピーカ31の発生する音圧(超音波の音圧)を大きくすることができる。あるいは、超音波スピーカ31に使用される圧電スピーカ3の使用数を減らすことが可能になり、超音波スピーカ31のコストを抑えることができる。
なお、サージ電圧を利用して2次電圧C’を昇圧するものであるため、誘導性スピーカ用PWM音声信号Aのパルス幅をオフセット操作して2次電圧C’を調整する機能をマイコン41に設けても良い。
(実施例1の効果4)
この実施例では、ホーンスイッチ12が押された際に警報音(警笛音)を発生する車両用ホーン2を「報知音の発生を行なう誘導性スピーカ」として用いる。
このため、「報知音の発生を行なう誘導性スピーカ」を別途車両に搭載する必要がなく、コストを抑えて、車両搭載性を確保できる。
[実施例2]
図9を参照して実施例2を説明する。
上述したように、容量性スピーカ駆動手段8の電源に用いる2次電圧C’は、誘導性スピーカ用PWM音声信号Aによるスイッチング手段9の断続により生じるサージ電圧を利用している。このため、「報知音(擬似エンジン音等)を成す波形信号」の変化に応じて2次電圧C’に変動(揺らぎ)が生じる。
2次電圧C’に変動(揺らぎ)が生じることにより、超音波スピーカ31の発生音圧に揺らぎが生じ、結果的にパラメトリックスピーカ11によるパラメトリック再生音に揺らぎが生じる。
この不具合を具体的に説明する。
「実施形態2」の図2(b)で示した昇圧回路を用いる場合、昇圧した2次電圧C’をスイッチング信号発生部X2にフィードバックし、スイッチング手段9を断続している昇圧用PWM信号A’のデューティ比を変更することで昇圧電圧を一定に制御することができる。
しかし、車両存在報知装置1では、スイッチング手段9を断続しているPWM信号は、車両用ホーン2から報知音を発生させるための誘導性スピーカ用PWM音声信号Aであるため、2次電圧C’を一定にするために誘導性スピーカ用PWM音声信号Aのデューティ比をフィードバック制御で変更することができないという問題が生じる。
上記の問題点に対し、この実施例2と、後述する実施例3および実施例4の車両存在報知装置1は、2次電圧C’の変動によりパラメトリックスピーカ11によるパラメトリック再生音に揺らぎが生じる不具合を回避するものである。
具体的に、制御回路5には、誘導性スピーカ用PWM音声信号Aの変化に伴って生じる2次電圧C’の変動に応じて、容量性スピーカ用PWM音声信号Eを直接または間接的に補正する2次電圧増減補正手段61が用いられている。
この実施例2の2次電圧増減補正手段61を説明する。
実施例2の2次電圧増減補正手段61は、音声メモリ53から容量性スピーカ用PWM変調部55に出力される「報知音を成す波形信号」を、2次電圧C’の変動に応じてリアルタイムにフィードバック補正するものである。
具体的に、この実施例2の2次電圧増減補正手段61は、平滑回路10で平滑化した2次電圧C’をマイコン41でモニターし、
(i)モニターされた2次電圧C’が上昇する際に、音声メモリ53から容量性スピーカ用PWM変調部55に付与される「報知音を成す波形信号」の音圧成分(電圧)を小さく補正し、
(ii)逆に、モニターされた2次電圧C’が下降する際に、音声メモリ53から容量性スピーカ用PWM変調部55に付与される「報知音を成す波形信号」の音圧成分(電圧)を大きく補正して、
2次電圧C’の変動に起因するパラメトリック再生音の変動を打ち消すものである。
この補正を行なうために、この実施例2のマイコン41は、
(a)平滑回路10で平滑化した2次電圧C’をマイコン41で読み取るためのADコンバータ62(アナログ・デジタル・コンバータの略)と、
(b)ADコンバータ62で読み込んだ2次電圧C’の揺らぎを打ち消す補正値を算出し、この補正値を音声メモリ53から出力される「報知音を成す波形信号」の音圧成分に加えるミキシング部63と、
を備える。
なお、この実施例2では、2次電圧C’をモニターして容量性スピーカ用PWM変調部55に付与される「報知音を成す波形信号」をリアルタイムに補正する例を示したが、容量性スピーカ駆動手段8の出力信号(超音波スピーカ31に与えられる駆動信号)をモニターして容量性スピーカ用PWM変調部55に付与される「報知音を成す波形信号」をリアルタイムに補正しても良い。
[実施例3]
図10を参照して実施例3を説明する。
上記実施例2の2次電圧増減補正手段61は、2次電圧C’の変動に応じてリアルタイムに補正値を算出する必要がある。このため、マイコン41には高い処理能力が要求される。
これに対し、この実施例3の2次電圧増減補正手段61は、2次電圧C’の変動に応じてリアルタイムに補正値を算出するのではなく、音声メモリ53の「報知音を成す波形信号」を2次電圧C’の増減を見越した「補正済みの報知音を成す波形信号」に上書き処理するものであり、リアルタイムな補正を廃止して処理能力の低い安価なマイコン41を採用可能にしたものである。
「補正済みの報知音を成す波形信号」を音声メモリ53に上書き処理する手順の一例を、図10を参照して説明する。
任意に操作可能なミキシングスイッチ64によってマイコン41に補正開始の指示を与えると、制御回路5は、音声メモリ53に記憶された車速に応じた報知音(擬似エンジン音等)を順次車両用ホーン2および超音波スピーカ31から再生させる。
このとき、実施例2と同様、ADコンバータ62を用いて平滑回路10で平滑化した2次電圧C’をモニターする。
そして、ミキシング部63を用いて音声メモリ53から容量性スピーカ用PWM変調部55に与えた「報知音を成す波形信号(補正前信号)」と「モニターした2次電圧C’の増減変化」とを比較し、
(i)モニターされた2次電圧C’が上昇する際に、音声メモリ53の「報知音を成す波形信号」の音圧成分(電圧)を小さく補正し、
(ii)逆に、モニターされた2次電圧C’が下降する際に、音声メモリ53の「報知音を成す波形信号」の音圧成分(電圧)を大きく補正して、
2次電圧C’の変動に起因するパラメトリック再生音の変動を打ち消す「補正済みの報知音を成す波形信号」を作成する。
そして、この作業により得られた車速に応じた「補正済みの報知音を成す波形信号」を音声メモリ53に上書き保存する。
これにより、車両存在報知装置1の運転時には、車速に応じた「補正済みの報知音を成す波形信号」が音声メモリ53から容量性スピーカ用PWM変調部55に与えられる。このため、マイコン41は、2次電圧C’の変動に応じてリアルタイムに補正値を算出する必要がなく、処理能力の低い安価なマイコン41を採用することができる。
なお、この実施例3では、「補正済みの報知音を成す波形信号」を上書き処理する際に、2次電圧C’を用いる例を示したが、容量性スピーカ駆動手段8の出力信号(超音波スピーカ31の駆動信号)を用いて「補正済みの報知音を成す波形信号」を算出して上書き処理しても良い。
[実施例4]
図11を参照して実施例4を説明する。
上記実施例3は、マイコン41にADコンバータ62やミキシング部63を設け、2次電圧C’の変動に基づいて「報知音を成す波形信号」を「補正済みの報知音を成す波形信号」に上書き処理する例を示した。このため、ADコンバータ62やミキシングスイッチ64を用いることでコストアップの要因になってしまう。
これに対し、この実施例4の2次電圧増減補正手段61は、音声メモリ53に最初から2次電圧C’の増減を見越した「補正済みの報知音を成す波形信号」を記憶させるものであり、ADコンバータ62やミキシングスイッチ64を不要にするものである。
音声メモリ53に記憶させる「補正済みの報知音を成す波形信号」を求める手順を、図11を参照して説明する。
先ず、車速に応じた報知音(擬似エンジン音等)を車両用ホーン2および超音波スピーカ31から順次発生させる。
このとき、超音波スピーカ31によるパラメトリック再生音をマイクロフォン65で電気信号に変換してパソコン66(パーソナル・コンピュータの略)に取り込む。
パソコン66において、「報知音を成す波形信号(補正前信号)」とマイクロフォン65で取り込んだ「パラメトリック再生音の波形信号」とを比較し、
(i)2次電圧C’の上昇によりパラメトリック再生音の音圧が上昇する際に、音声メモリ53の「報知音を成す波形信号」の音圧成分(電圧)を小さく補正し、
(ii)逆に、2次電圧C’の下降によりパラメトリック再生音の音圧が下降する際に、音声メモリ53の「報知音を成す波形信号」の音圧成分(電圧)を大きく補正して、
2次電圧C’の変動に起因するパラメトリック再生音の変動を打ち消す「補正済みの報知音を成す波形信号」を算出する。
このように求めた「補正済みの報知音を成す波形信号」をマスターデータとする。
そして、このマスターデータ(補正済みの報知音を成す波形信号)を、プログラマ67を用いて、各マイコン41の音声メモリ53に書き込みを行なう。
これにより、車両存在報知装置1の運転時には、車速に応じた「補正済みの報知音を成す波形信号」が音声メモリ53から容量性スピーカ用PWM変調部55に与えられる。このため、上記実施例3と同様、マイコン41は、2次電圧C’の変動に応じてリアルタイムに補正値を算出する必要がなく、処理能力の低い安価なマイコン41を採用することができる。
また、上記実施例2、3とは異なり、ADコンバータ62やミキシングスイッチ64が不要になるため、制御回路5のコストを抑えることが可能になる。
なお、この実施例4では、マイクロフォン65で取り込んだパラメトリック再生音に基づいて「補正済みの報知音を成す波形信号」を求める例を示したが、平滑回路10によって平滑化された2次電圧C’、あるいは容量性スピーカ駆動手段8の出力信号(超音波スピーカ31の駆動信号)をパソコン66に取り込んで「補正済みの報知音を成す波形信号」を求めてマスターデータにしても良い。
上記の実施例では、車両存在報知装置1に本発明を適用する例を示したが、車両存在報知装置1とは異なる他の音響装置に本発明を適用しても良い。
上記の実施例では、誘導性スピーカの一例として電磁式の車両用ホーン2を用いる例を示したが、磁石の発生する磁極内で起磁力を発生させて振動板を駆動する他のダイナミックスピーカ(コーンスピーカ等)を用いても良い。
上記の実施例では、容量性スピーカの一例として圧電スピーカ3を用いる例を示したが、コンデンサ型スピーカなど、他の蓄積電荷の変化によって音波を発生させる他の容量性スピーカを用いても良い。また、容量性スピーカにとらわれずにリボン型スピーカなどの消費電力の少ない誘導性スピーカを用いても良い。
上記の実施例では、容量性スピーカ3から超音波を発生させる例を示したが、容量性スピーカ3はパラメトリックスピーカ11の使用に限定されるものではなく、容量性スピーカ3から可聴帯域の高音を発生させても良い。具体的には、容量性スピーカ3をツイータとして用い、誘導性スピーカ2から中低音を発生させ、容量性スピーカ3によって高音を発生させても良い。即ち、本発明を車両用オーディオ装置など他の用途に適用しても良い。
1 車両存在報知装置(音響装置)
2 車両用ホーン(誘導性スピーカ:ダイナミックスピーカ)
3 圧電スピーカ(容量性スピーカ)
4 バッテリ(主電源)
7 誘導性スピーカ駆動手段
8 容量性スピーカ駆動手段
9 スイッチング手段
10 平滑回路
11 パラメトリックスピーカ
12 ホーンスイッチ
21 誘導性スピーカにおいて磁力を発生するコイル
31 超音波スピーカ
61 2次電圧増減補正手段

Claims (7)

  1. 発生磁力の変化によって音波を発生させる誘導性スピーカ(2)と、
    蓄積電荷の変化によって音波を発生させる容量性スピーカ(3)と、
    前記誘導性スピーカ(2)を駆動する誘導性スピーカ駆動手段(7)と、
    前記容量性スピーカ(3)を駆動する容量性スピーカ駆動手段(8)と、
    を具備し、
    前記誘導性スピーカ駆動手段(7)は、可聴音信号をPWM変調してなる誘導性スピーカ用PWM音声信号(A)によって前記誘導性スピーカ(2)の通電状態の断続を行なうスイッチング手段(9)であり、
    前記容量性スピーカ駆動手段(8)は、前記スイッチング手段(9)の断続により生じるサージ電圧を平滑化してなる直流の2次電圧(C’)を用いて前記容量性スピーカ(3)を駆動することを特徴とする音響装置。
  2. 請求項1に記載の音響装置(1)において、
    前記スイッチング手段(9)は、直流電圧の供給を行なう主電源(4)のプラス電位に接続された前記誘導性スピーカ(2)とアース電位との間を断続するローサイドタイプであり、前記スイッチング手段(9)の断続によるサージ電圧が、前記容量性スピーカ駆動手段(8)におけるアンプ回路のプラス電位側に生じることを特徴とする音響装置。
  3. 請求項1に記載の音響装置(1)において、
    前記スイッチング手段(9)は、直流電圧の供給を行なう主電源(4)のプラス電位と前記誘導性スピーカ(2)との間を断続するハイサイドタイプであり、前記スイッチング手段(9)の断続によるサージ電圧が、前記容量性スピーカ駆動手段(8)におけるアンプ回路のマイナス電位側に生じることを特徴とする音響装置。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の音響装置(1)において、
    前記容量性スピーカ駆動手段(8)は、可聴音信号をPWM変調してなる容量性スピーカ用PWM音声信号(E)を用いて前記容量性スピーカ(3)を駆動するものであり、
    当該音響装置(1)には、前記誘導性スピーカ用PWM音声信号(A)の変化に伴って生じる前記2次電圧(C’)の変動に応じて、前記容量性スピーカ用PWM音声信号(E)を直接または間接的に補正する2次電圧増減補正手段(61)が用いられることを特徴とする音響装置。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の音響装置(1)において、
    前記容量性スピーカ(3)は、蓄積電荷の変化により変位する圧電素子を用いた圧電スピーカであり、
    この圧電スピーカは、パラメトリックスピーカ(11)において超音波を発生する超音波スピーカ(31)に用いられることを特徴とする音響装置。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の音響装置(1)において、
    前記誘導性スピーカ(2)は、印加電圧の変化により発生磁力が変化するコイル(21)を用いたダイナミックスピーカであり、
    このダイナミックスピーカは、乗員によってホーンスイッチ(12)が操作された際に警報音を発生する電磁式の車両用ホーンであることを特徴とする音響装置。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれかに記載の音響装置(1)において、
    この音響装置(1)は、報知音を車外へ発生させて車両の存在を知らせる車両存在報知装置に用いられることを特徴とする音響装置。
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