(第1の実施形態)
次に、第1の実施形態に係る通信システムを用いるマクロ基地局100及びそれを備える通信システムを説明する。図1は、第1の実施形態に係る通信システムの構成を示す概略図である。
通信システムは、図1に示すように、マクロ基地局100、小電力基地局200及び移動局300、400で構成されている。説明のため小電力基地局と移動局の数を簡略したが、小電力基地局と移動局は、それぞれ複数存在する。なお、小電力基地局200は、マクロ基地局100に対する周辺基地局である。
セル100a、200aは、1つの基地局が提供する通信サービスエリアを示す。複数のセルによって地表面を効率的にカバーできるように基地局は配置される。マクロ基地局100は、セル100a(マクロセル)の通信サービスエリアを提供し、小電力基地局200は、セル200a(ピコセル)の通信サービスエリアを提供する。セルの半径の大きさは、無線通信接続が可能な距離を表わしている。つまり、マクロ基地局100は、小電力基地局200より大きな電力で送信していることを示している。
移動局300、400は、マクロ基地局100からの受信電力p1と、小電力基地局200からの受信電力p2とをそれぞれ受信している。尚、p1>p2とする。
移動局M(300、400)は、その仕様により分類される。仕様とは、移動局Mが基地局と通信を行うための規則である。移動局Mは、仕様に基づき、基地局と通信を行うことが可能となる受信能力を備える。図2は、移動局Mのカテゴリ分けの一例である。移動局Mは、図2に示すように、MIMO信号の分離機能C(適応アルゴリズム)の相違により分類され(カテゴリ分け)、各カテゴリに基づき異なるバイアスb(b1、b2)が算出され記憶される。レイヤ・インデックスLI(Layer Index)は、MIMO伝送における情報信号(ストリーム数)による区分を表わしている。
なお、移動局Mのカテゴリ分けは、前記分離機能に限るものではなく、移動局が具備する受信アンテナ数によりカテゴリ分けすることもできる。受信アンテナ数は、移動局Mが属する通信システム、その規格に応じて設定される。
以下に本実施形態に係る適応アルゴリズムを説明する。
MMSE(Minimum Mean Square Error:最小平均2乗誤差)は、目標信号と受信信号(目標信号+干渉成分+雑音)の平均2乗誤差を最小にする線形フィルタリングである。雑音成分と干渉成分の大小関係に関わりなく最適な線形フィルタリング処理を実現する。
MLD(Maximum Likelihood Detection 最尤検出)は、複数の通信パスで取り得るすべての送信シンボルの組合せから、受信信号に最も近いと判断される組合せを選択する非線形処理である。“近い/遠い”の判定基準には、信号間の2乗誤差等を用いた尤度(Likelihood)メトリックが使用される。
図2には示さないが、その他のMIMO分離機能として、ZF(Zero Forcing)、MLSE(Maximum Likelihood Sequence Estimation:時間領域最尤系列推定)、MAP(Maximum A Posteriori Probability:最大事後確率)が含むが、これらに限定されない。ZFは、信号対干渉比(SIR: Signal to Interference ratio)を最大にする線形フィルタリングで、雑音成分が干渉成分に比べて小さいときに有効である。MLSEは、複数の通信パスとして時系列を用い、送信信号のすべての時系列の組の中から、受信信号に時系列(最尤系列)を選択する非線形処理である。MAPは、受信信号yのときに送信信号がxである確率(事後確率:P(x/y))を最大にする送信信号xを復調(復号)信号として決定する。ここで、事後確率とは、ある事象yが発生した(例えば、受信信号yを受信した)後に推定できるその原因の事象x(例えば送信信号xが送信された)に関する確率P(x/y)を意味する。この確率P(x/y)を、最大にする候補xを正しい復調出力として判定する方式がMAP判定である。
その他の非線形処理であるV−BLAST(Vertical-Bell Laboratories−Layered Space Time:順序付け逐次復号)、ターボSIC(Successive Interference Canceller:逐次型干渉キャンセラ)、QRM−MLD(準最尤検出)等に基づいて、MIMO分離機能Cのカテゴリ分けを行ってもよい。尚、MIMOによる空間多重された信号には、複数の送信アンテナから同時に異なる信号を送信する場合と、複数の送信アンテナから同時に同一の信号を送信する場合も含まれる。すなわち、アンテナの独立性を確保しやすい基地局の送信アンテナを用いて移動局側が1アンテナであってもダイバーシチ効果が得られるようにした送信ダイバーシチにおいても、同様にカテゴリ分けに含めることができる。
移動局300、400は、図1に示すように、マクロ基地局100及び小電力基地局200の両基地局と接続できる位置にある。移動局300、400は、それぞれ異なったMIMO分離機能を備えている。移動局300は、MIMO分離機能としてMLD(以下、カテゴリAと称す)を具備し、移動局400は、MMSE(以下、カテゴリBと称す)を具備している。
下りリンクにおいて、移動局300、400によりデータが受信される際に、受信電力、受信SNR(Signal to Noise Ratio:信号雑音比)又は受信SINR(Signal to Interference Noise Ratio:信号対干渉雑音比)が最大となる基地局がマクロ基地局100により選択される。以下、受信電力、受信SNR又は受信SINRを受信電力等と称す。
マクロ基地局100は、移動局のMIMO分離機能に基づき定めたバイアスを算出し記憶する。マクロ基地局100が、移動局の接続するべき基地局(マクロ基地局100又は小電力基地局200)を選択する場合、マクロ基地局100は、移動局の受信電力とバイアスを利用し基地局を選択する。バイアスを利用した基地局の選択の詳細は後述する。
次に、マクロ基地局100が、移動局300、400のバイアスb(b1、b2)を算出する方法及び移動局300、400の接続する基地局(マクロ基地局100又は小電力基地局200)を選択する方法について説明する。
図3は、マクロ基地局100が移動局300、400に信号(MIMO信号)を送信する場合に、MIMO信号数(空間多重によるチャネル数)に応じて必要とされる受信電力P(所要受信電力P:w1、w2、w3、w4、w5、w6)を表している表図である。また、所要受信電力Pは、移動局のカテゴリによって異なる。図3に示すように、MIMO信号の多重数(空間多重によるチャネル数)が増加すると所要受信電力Pが大きくなる。
カテゴリA(MLD)はカテゴリB(MMSE)よりMIMO分離機能が優れている。このため、MIMO信号数(空間多重によるチャネル数)が同じ場合、カテゴリBはカテゴリAよりも大きい所望受信電力Pを必要とする。図3において、各MIMO信号数(空間多重によるチャネル数)に応じた所要受信電力P(w1〜w6)は、w1<w2<w3、w4<w5<w6とし、また、w2<w5、w3<w6、w1=w4と設定する。
尚、マクロ基地局100は、図3に示すように、MIMO信号数(空間多重によるチャネル数)に応じて必要とされる受信電力Pに基づいたテーブルを保持しているが、MIMO信号数に応じて必要とされる受信SNR又は受信SINRに基づいたテーブルとしてもよい。この場合、所要受信電力Pの代わりに又は加えて、所要受信SNR又は所要受信SINRが利用される。
また、マクロ基地局100は、図2及び図3に示すテーブルを備える構成としているが、通信状況や気象環境に応じて異なるテーブルを備える構成としても良い。また通信回数や利用時間帯応じてテーブルをアップデートする構成としても良い。尚、図2において、カテゴリA、Bの両方にバイアスを設定しているが、どちらか一方に設定することも可能である。例えば、バイアスb2=0とすることで、同様の効果が得られる。
次に、マクロ基地局100が、カテゴリAのMIMO分離機能を具備する移動局300にバイアスbを付加する方法及び受信電力に基づいて移動局300の接続する基地局を選択する方法を説明する。
移動局300は、図3に示すように、MIMO信号数4(空間多重によるチャネル数4)(レイヤインデックス3に相当)までの信号を受信可能ある。また、移動局300は、マクロ基地局100から受信電力Pmで信号を受信し、小電力基地局200から受信電力Psで信号を受信しているとした場合、マクロ基地局100は、セルサーチ後の接続要求における移動局の識別番号(ID)の通知によって移動局300の受信可能なMIMO信号数(空間多重によるチャネル数)を知ることができる。尚、セルサーチとは、移動局が電源投入後、接続可能なセル(通信サービスエリア)を識別するための手順である。マクロ基地局と移動局間におけるセルサーチを含めた接続手順の詳細は後述する。
マクロ基地局100は、移動局300のバイアスbを算出するにあたり、MIMO信号数(空間多重によるチャネル数)に基づき基準受信電力wbを選択する。例えば、カテゴリAの移動局300の場合、図3に示すように、w1〜w3の中から選択される。wbは、Pm−wi>0を満たす最大のwi(i=1,2,3)で表される。
カテゴリAの移動局300のバイアスb1は、算出したwbとPm(マクロ基地局100から受信電力)によりバイアスb1を下式により算出する。
マクロ基地局100は、移動局300における小電力基地局200から受信電力Psと、基準受信電力wbから算出したバイアスb1とを合計する。次に、マクロ基地局100は、合計値(Ps+b1)と、自局(マクロ基地局100)からの受信電力Pmとを比較する。Pm>Ps+b1の場合、マクロ基地局100は、移動局300の接続するべき基地局を、自局(マクロ基地局100)と判定し、移動局300に自局(マクロ基地局100)と接続を選択するように信号(接続指示信号)を通知する。一方、Pm<Ps+b1の場合、マクロ基地局100は、移動局300の接続するべき基地局を、小電力基地局200と判定し、移動局300に小電力基地局200と接続するように信号を通知する。尚、Pm=Ps+b1の場合は、どちらを選択してもよい。尚、算出したバイアスをマクロ基地局の受信電力値から減算し、小電力基地局の受信電力値と比較することにより、接続するべき基地局を選択してもよい。
カテゴリBの移動局400も上記に記した方法に従いバイアスb2を算出され、マクロ基地局100は、移動局400の接続する基地局を選択し接続指示を通知する。尚、wiは、i=4,5,6となる。
図1に示すように、カテゴリAの移動局300及びカテゴリBの移動局400は、マクロ基地局100と小電力基地局200からの受信電力p1、p2を受け、空間多重数4(空間多重によるチャネル数4)のMIMO信号まで受信可能である場合、マクロ基地局100は、それぞれの移動局300、400の接続する基地局(マクロ基地局100又は小電力基地局200)を選択する。尚、移動局300及び移動局400は、初回のセルサーチにおいて、受信電力が大きいマクロ基地局100と接続すると仮定する。
例えば、カテゴリAの移動局300の場合、マクロ基地局100は、移動局300に付加するバイアスb1を算出し、移動局300における小電力基地局200からの受信電力p2と、バイアスb1とを合計する。次に、マクロ基地局100は、p1とp2+b1(b1=p1−w3)とを比較する。p1>p2+b1である場合、マクロ基地局100は、移動局300の接続する基地局を自局(マクロ基地局100)であると判定し、接続を指示する信号を移動局300に送信する。指示信号を受信した移動局300は、マクロ基地局100と接続を確立する手順を行う。p1<p2+b1である場合、マクロ基地局100は、移動局300の接続する基地局を小電力基地局200であると判定し、小電力基地局200に接続するよう接続指示信号を移動局300に送信する。接続指示信号を受信した移動局300は、小電力基地局200と接続を確立する手順を行う。
一方、カテゴリBの移動局400の場合、マクロ基地局100は、移動局400に付加するバイアスb2を算出し、移動局400における小電力基地局200からの受信電力p2とバイアスb2とを合計する。次に、マクロ基地局100は、p1とp2+b2(b2=p1−w6)とを比較する。p1>p2+b2である場合、マクロ基地局100は、移動局400の接続する基地局を自局(マクロ基地局100)であると判定し、接続を指示する信号を移動局400に送信する。接続指示信号を受信した移動局400は、マクロ基地局100と接続を確立する手順を行う。p1<p2+b2である場合、マクロ基地局100は、移動局400の接続する基地局を小電力基地局200であると判定し、小電力基地局200に接続するよう接続指示信号を移動局400に送信する。接続指示信号を受信した移動局400は、小電力基地局200と接続を確立する手順を行う。
このように、マクロ基地局100は、移動局300、400の接続する基地局を小電力基地局200と選択し接続が確立される場合、MIMO信号数(空間多重によるチャネル数)は、マクロ基地局100が選択され接続された場合のMIMO信号数(空間多重によるチャネル数)以上の値となる。すなわち、移動局300、400の接続する基地局が小電力基地局200と選択され接続されてもMIMO信号数(空間多重によるチャネル数)の低下を抑えることができる。また、複数の移動局の接続先を分散することができるため、セルの平均スループットの低下することを防ぐことができる。
第1の実施形態では、LTE(Long Term Evolution)に適用した場合で説明するが、これに限定されない。基地局(マクロ基地局100及び小電力基地局200)は、コアネットワーク部であるMME/SAEGA(Mobility Management Entity/System Architecture Evolution Gateway)とインターフェイスS1(図示せず)を介して直接接続されている。基地局同士はインターフェイスX2(図示せず)を介して必要な情報を交換する構成を成している。
下りリンクには、対マルチパス(遅延波)・フェージング特性に優れ、MIMOとの親和性のよいOFDMをベースとする。各ユーザは、その回線状況に応じて無線リソース(時間、周波数)をリソースブロックRB単位で割り当てる。さらに、割り当てられた無線リソースにおいても、変調方式や符号化率、MIMOレイヤ数(空間多重によるチャネル数)を回線の状況に応じて適応させる。このようなOFDMを採用することで、無線リソースの効率的な利用を実現している。
また、上りリンクには、端末の高出力電力増幅器の電力効率、あるいはカバレッジ確保に有利なシングルキャリア・ベースのSC−FDMA(Single Carrier-Frequency Division Multiple Access:単一の搬送波による周波数分割多元接続)を採用する。SC−FDMAの採用により、セル内の完全直交性(セル内の上りリンク信号間で相互干渉が発生しないこと)が確保されるため、上りリンクの電波の干渉を大きく低減する。
次に、マクロ基地局100及び小電力基地局200(以下、“基地局”と称す)と,移動局300、400(以下、“移動局”と称す)間のプロトコル・スタック(プロトコル構成)を説明する。
基地局と移動局間のプロトコル・スタックは、PDCPレイヤ(Packet Domain Convergence Protocol:パケットデータ収束プロトコル)、RLCレイヤ(Radio Link Control:無線リンク制御)、MACレイヤ(Media Access Control:メディア・アクセス制御)及びPHYレイヤ(Physical Layer :物理レイヤ)によって構成される。RLCレイヤとMACレイヤ間のインターフェイスが論理チャネルである。また、MACレイヤとPHYレイヤ間のインターフェイスがトランスポートチャネルである。基地局と移動局のPHYレイヤ間のインターフェイスが物理チャネルとして定義される。
論理チャネルは、伝送する情報の種類を表わす。論理チャネルとトランスポートチャネルとの対応付けはMACレイヤで行われる。また、トランスポートチャネルは、データの運び方の特性(例えば、個別のチャネルと共通のチャネルとの区別)に分類される。物理チャネルは、基地局と移動局間の通信を行うチャネルである。
LTEのフレーム構造は、図4(a)及び図4(b)に示すように、フレーム、スロット、シンボルを時間領域で定義する。LTEについては、2種類のフレーム構造が定義される。2種類のフレーム構造は、FDD(Frequency Division Duplexing:周波数分割複信)とTDD(Time Division Duplexing:時間分割複信)によって定義される。
FDDのフレーム構造は、図4(a)に示すように、時間長1msの10のサブフレームから成る1つの無線フレームとして表わされる。サブフレーム単位毎に、誤り訂正、CRC(Cyclic Redundancy Check:巡回時間間隔)、HARQ(Hybrid Automatic Repeat Request:ハイブリッド自動再送要求)等が行われて、該サブフレームの1msが伝送時間間隔(TTI:Transmission Time Interval)として定義される。さらに、サブフレームは、連続する2つのスロットに分解される。このサブフレームが変復調の基本伝送単位となる。
下りリンクでは、1スロットは、7つのOFDMシンボルから構成される。さらに、各OFDMシンボルには、情報を有効に伝達しない区間であるガードタイムに相当するCP(Cyclic Prefix)が付加される。CPの付加によって、マルチパスよるシンボル間干渉の発生やサブキャリア間の直行性の崩れを回避することができる。FDDでは、上りリンクと下りリンクは異なる周波数帯を用いて、10サブフレームを同時に伝送に使用することができる。
また、LTEでは、図5に示すように、12サブキャリアを周波数軸上の伝送基本単位と定める。12サブキャリアの14OFDMシンボルをリソースブロックRB(Resource Block)と称する。各ユーザは、回線状況に応じてRB単位(サブフレーム時間長)で時間及び周波数軸上で多重化されて伝送される。
伝送では、OFDMのサブキャリア単位にQPSK,16QAM,64QAMのデータ変調が行われる。この変調が行われる基本単位であるOFDMシンボル長の各サブキャリアを、リソース・エレメントRE(Resource Element)と称す。リソース・エレメントREは、物理レイヤでの最小単位であり、時間領域では1個のOFDMシンボルまたはSC−FDMAシンボルを占有し、周波数領域では1個のサブキャリアを占有する。
リソースブロックRBは、伝送のスケジューリングが可能な最小単位である。RBは、時間領域では0.5ms(1スロット)、周波数領域では180kHzを物理的に占有する。つまり、1リソースブロックRB=12×14=168リソース・エレメントREとなる。
LTEのTDDのフレーム構造は、図4(b)に示すように、時間長5msの2のハーフフレームに分割され、各ハーフフレームは、時間長1msのサブフレームから成る1つの無線フレームとして表わされる。
下りリンクから上りリンクへの切り替えが行われるサブフレームでは、図4(b)に示すように、DwPTS(Downlink part)、GP(Guard Period:ガード期間)、UpPTS(Uplink part)の3つのフィールドから構成されている。
受信に際して基準信号となるリファレンス信号RSは時間領域では、各スロットの第0(先頭)シンボルと第4(5番目)シンボルに配置される。周波数領域では、相対的な関係として、第6サブキャリア間隔で、リソースブロック当たり4シンボル配置される。MIMOでは受信側でストリーム間の信号を識別し、正しく復調するために“送信−受信アンテナ”間のチャネル状態を正確に把握する必要がある。このように、異なるセル間のリファレンス信号RSの衝突を避けるため、近接セル間では同一タイミングで、異なるサブキャリア上にリファレンス信号RSをシフトして配置する。移動局は、リファレンス信号RSを受信することによって、無線チャネルの振幅・位相を推定することができる。
次に、マクロ基地局100、小電力基地局200、移動局300、400間での接続方法及び信号のやり取りを説明する。
図6は、マクロ基地局100、小電力基地局200、移動局300(又は移動局400)間の接続及び制御処理フローを示すシーケンス図である。尚、便宜上、図6において1つの移動局300を示すが、カテゴリBの移動局400にも適用される。
マクロ基地局100及び小電力基地局200(以下、両方を表す場合は、単に“基地局”と称す)は、それぞれ自己のセル内に存在する移動局300に対し、移動局300が基地局のセルと時間/周波数領域で同期を確立できるように、パイロット信号(リファレンス信号RS)を含む同期信号SCH(Synchronization Channel)を定期的に送信する(ステップS101、S102)。尚、パイロット信号(リファレンス信号RS)は、既知の基準振幅・位相を与える信号であり、基準信号となるシンボル・パターンである。
同期信号SCHは、プライマリ同期信号P−SCH(Primary-SCH)とセカンダリ同期信号S−SCH(Secondary-SCH)とに分けられる。具体的には、P−SCHとして、長さ62のZadoff−Chu系列がフレーム内(10サブフレームから構成される)の所定のOFDMシンボルのサブキャリアに配置され、その時間領域の信号で相関をとる。S−SCHとしては、長さ62のM系列がフレーム内(10サブフレームから構成される)の所定のOFDMシンボルのサブキャリアに配置される。この場合は、周波数領域で相関をとる。
移動局300又は400(以下、両方を表す場合は、単に“移動局”と称す)は、移動局は電源投入された後、通信のため利用可能なセル(セルID)を検出する処理(セルサーチ)を開始する。移動局は、同期信号SCHに基づき接続可能な基地局をサーチする(ステップS103)。
移動局及び基地局のセルは、固有のIDに基づいて分類される。移動局は、セルIDを参照してセルを識別し、同様に、基地局は、移動局のIDに基づき個々の移動体を識別する。LTEでは、S−SCHに対応するセルグループ番号が168個、P−SCHに対応するグループ内セル番号が3個、合計504個のセル認識番号が定義されている。
このように接続初期段階において、基地局と移動局間において同期信号SCHのみの送信に留めて、この信号が受信された場合に徐々に必要な情報をやり取りしながら移動局の識別を行う。
移動局は、同期信号SCHに基づき、基地局を選択し、選択した基地局に接続要求を行う(ステップS104)。図6では、移動局は、マクロ基地局100を選択している。
移動局は、基地局(この場合、マクロ基地局100)に接続要求する際に、選択した基地局に対し、MIMO信号の分離機能C(適応アルゴリズム)の相違による分類(カテゴリ)を通知する。なお、その他の指標(機能)により移動局が分類されている場合は、その分類に関する通知を行う。
接続要求を受けたマクロ基地局100は、接続の可否(ACK/NACK)を移動局に通知する(ステップS105)。移動局は、接続の許可(ACK)を受信することで初期接続を完了する。図6では、マクロ基地局100は、ACKを移動局に送信している。一方、移動局は、接続の拒否(NACK)を受信した場合、再度、セルサーチを行い、接続可能な基地局をサーチする。
次に、接続の許可(ACK)を与えたマクロ基地局100は、移動局における小電力基地局200からの受信電力p2を送信するように移動局に対して要求する(ステップS106)。
移動局が、小電力基地局200からの受信電力p2の送信要求を受信した場合、移動局は、小電力基地局200から送信されるリファレンス信号RSに基づき、小電力基地局200からの受信電力を測定し(ステップS107)、マクロ基地局100に小電力基地局200からの受信電力p2を通知する。具体的な受信電力として、例えば、RSRP(Reference Signal Received Power:基準信号受信電力)が挙げられる。移動局は、RSRPによって受信電力の強さに関する情報を得ることができる。なお、複数の適応アルゴリズム(MIMO信号の分離機能)を備える場合、受信電力に基づき最適な適応アルゴリズムを選択できる。
次に、マクロ基地局100は、該受信電力p2の通知を移動局から受信した場合、該受信電力p2にバイアスb1を付加した値と、自局が移動局から受信した受信電力p1とを比較し、移動局が接続するべき基地局を選択する(ステップS109)。尚、この選択方法は、図7を参照し後述する。
マクロ基地局100は、選択結果を移動局に通知する(ステップS110)。図6では、小電力基地局200が選択されている。移動局は、選択結果を受信し、選択された基地局(小電力基地局200)に対して接続要求する(ステップS111)。
接続要求を受けた小電力基地局200は、接続の可否(ACK/NACK)を移動局に通知する(ステップS112)。
移動局は接続の許可(ACK)を受信した場合、受信状態を報告するためのCQI(Channel Quality Indicator:チャネル品質インジケータ)や通信品質情報QoS(Quality of Service)等を含む下りリンク制御信号DCI(Downlink Control Indicator:チャネル品質表示)を小電力基地局200に送信する(ステップS113)。
DCIを受信した小電力基地局200では、移動局に送信すべきデータが存在する場合は、小電力基地局200のスケジューラが、CQI、通信品質情報QoS並びに基地局内の送信バッファ内容状態などを考慮して、リソースブロックRB単位で移動局に無線リソースを割り当て(スケジューリング)を行う。さらに、受信したDCIに基づき、MCS(Modulation and Coding Scheme:変調符号化方式)や空間多重数(空間多重によるチャネル数)が設定される(ステップS114)。リソース割り当て情報や設定情報は、制御データとして移動局に送信され、さらに送信すべきデータ信号が送信される(ステップS115)。
尚、セルサーチ(ステップS103)において、移動局が小電力基地局200との接続が完了した場合、移動局は、ステップS113と同様に、小電力基地局200にDCIを通知し、ステップS114及びS115の動作を行い、小電力基地局200において移動局へ送信すべきデータが存在する場合は、小電力基地局200からデータ信号を受信する。
次に、マクロ基地局100が移動局の接続するべき基地局を選択する方法を説明する。
マクロ基地局100は、図7に示すように、移動局の接続するべき基地局を選択する。図7は、ステップS109において基地局が選択される際の処理フローを示すフローチャートである。
マクロ基地局100は、移動局が受信した小電力基地局200からの受信電力p2(又は受信SNR、受信SINR)を知らせる信号を受信した場合、(ステップS201)、マクロ基地局100は、自局が移動局から受信した受信電力p1と、移動局が小電力基地局200から受信した受信電力p2にカテゴリAに対応したバイアスb1を付加した値(合計値)とを比較する(ステップS202)。すなわち、マクロ基地局100は、p1とp2+b1とを比較する。
移動局が小電力基地局200から受信した受信電力p2にカテゴリAに対応したバイアスb1を付加した値(合計値)が、自局が移動局から受信した受信電力p1よりも大きい時、すなわち、p1<p2+b1である場合(ステップS202,Yes)、マクロ基地局100は、小電力基地局200を移動局の接続するべき基地局と判定する。
マクロ基地局100は、移動局が小電力基地局200と接続するように接続指示信号を移動局に送信する(ステップS203)。
一方、移動局が小電力基地局200から受信した受信電力p2にカテゴリAに対応したバイアスb1を付加した値(合計値)が、自局が移動局から受信した受信電力p1よりも大きい時、すなわち、p1>p2+b1である場合(ステップS202,No)、マクロ基地局100は、自局(マクロ基地局100)を移動局の接続するべき基地局と判定する。
マクロ基地局100は、移動局からDCIが通知されるまで待ち状態になる(ステップS204)。
尚、カテゴリBの移動局においては、ステップS202のp1<p2+b1は、p1<p2+b2と置き換わり、同様の処理フローで動作する。
次に、第1の実施形態に係るマクロ基地局100の構成を説明する。
マクロ基地局100は、図8に示すように、上位レイヤ101、複数のデータ信号生成部102(102−1〜N)、送信部103(103−1〜N)、送信アンテナ部104(104−1〜N)、制御信号生成部105、パイロット信号生成部106、基地局選択部107、制御信号検出部108、受信部109、受信アンテナ部110、記憶部(図示せず)を備える。尚、Nは、空間多重数(空間多重によるチャネル数)を示す。
マクロ基地局100から移動局300、400へ送信される信号としては、データ信号、制御信号C、その他同期信号SCH等の制御信号及びパイロット信号(リファレンス信号RS)が挙げられる。
以下に、マクロ基地局100の構成要素を順次説明する。
上位レイヤ101は、PHYレイヤ(物理層)よりも上位に位置し、制御を行う中枢である。例えば、MACレイヤ(Media Access Control:媒体アクセス制御)、ネットワークレイヤなどの上位層に位置する機能を有するレイヤ等が該当する。上位レイヤ101は、移動局へ送信する情報データ(マクロ基地局から各移動局へ送信すべき個別データ)をデータ信号生成部102に出力する。
また、上位レイヤ101は、移動局がセルサーチを行うために、同期信号SCHなどの第1の制御データを制御信号生成部105に出力する。
データ信号生成部102は、上位レイヤ101から送信された情報データを受信し、情報データの符号化等のデータ変調処理を行い、データ信号を生成する。
上位レイヤ101は、データ信号生成部102によって生成されるデータ信号に対応する第2の制御データ(DCI、ACK/NACK等)を制御信号生成部105に出力する。第2の制御データは、無線リソース割当(スケジューリング)、MCS(Modulation and Coding Scheme:変調符号化方式)又は空間多重数(空間多重によるチャネル数)及び周波数割当等の制御情報である。
また、上位レイヤ101は、移動局に接続する隣接基地局(周辺基地局)からの受信電力の通知を要求するための第3の制御データを制御信号生成部105に出力する。また、上位レイヤ101は、移動局が接続する基地局を通知するための第4の制御データを制御信号生成部105に出力する。
制御信号生成部105は、第1〜第4の制御データの変調処理を行い、第1〜第4の制御信号を生成する。第1〜第4の制御信号は、送信部103に出力される。
データ信号と第1〜第4の制御信号は、OFDM等の伝送方式に基づき伝送される。
OFDMの場合、基地局と移動局間で受送信されるデータ信号s(t)は、式(1)及び式(2)によって導かれる。
NfはIFFTポイント数であり、LTEにおいて2048と定義される。IFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)により、離散的に表わされた周波数軸上のサブキャリアの配列を時間軸上の波形に変換する。Ck,nは、データ信号生成部102が出力する第kサブキャリアに割当られたデータ信号の変調シンボルである。Δfはサブキャリア間隔である。TsはOFDMシンボル長を表し、jは虚数単位を表す。
OFDMのサブキャリアは、任意の異なるサブキャリア同士の直交性(干渉しない性質)を確保するという条件の下で、論理的限界までコンパクトに配列されていることが特徴である。この限界点では、隣接するサブキャリアの周辺の周波数間隔Δfは、Δf=1/Tsになる。
パイロット信号生成部106は、受信電力測定、伝搬路推定に用いる既知の系列からなるパイロット信号(リファレンス信号RS)を生成する。
送信部103(103−1〜N)は、データ信号生成部102(102−1〜N)が出力したデータ信号、パイロット信号(リファレンス信号RS)、第1〜第4の制御信号をアナログ信号に変換(D/A変換)し、該アナログ信号に対して帯域制限を行うためにフィルタリング処理を行う。さらに、送信部103は、フィルタリング処理された信号を送信可能な周波数帯域にアップコンバート(低い周波数の信号から高い周波数の信号へ変換)し、内蔵する増幅器(図示せず)によって増幅した後、送信アンテナ部104(104−1〜N)から増幅した信号を送信する。
また、マクロ基地局100は、移動局から送信された信号を受信する機能を備える。マクロ基地局100の受信アンテナ部110は、移動局が送信した信号を受信し、受信部109に送る。受信部109は、受信した信号を、ダウンコンバート(高い周波数の信号から低い周波数の信号へ変換)し、信号に含まれる不要な周波数成分(スプリアス)を除去するフィルタリング処理を行う。さらに、受信部109は、フィルタリング処理を施したアナログ信号をデジタル信号に変換(A/D変換)する。
制御信号検出部108は、受信部109から出力されたデジタル信号を復調処理及び復号処理を行い、第5及び第6の制御信号を検出する。制御信号検出部108は、第5及び第6の制御信号に基づき、第5の及び第6の制御データを検出する。第5の制御データは、移動局からマクロ基地局100への接続要求及びCQI(Channel Quality Indicator:チャネル品質インジケータ)等を含む下りリンクコントロール信号(DCI:Downlink Control Indicator)を表す。また、第6の制御データは、移動局が小電力基地局200から受信する受信電力pの強度を表す。
上位レイヤ101は、制御信号検出部108から入力された第5の制御データに基づき、移動局へ送信するデータ信号と制御データ(MCS、空間多重数(空間多重によるチャネル数)及び無線リソース割当等)とを決定する。
基地局選択部107は、第6の制御データに基づき、移動局が接続するべき基地局を選択する。図13は、基地局選択部107の構成である。基地局選択部107は、バイアス算出部121、基準値算出部122、比較部123を備える。バイアス算出部121は、第6の制御データと移動局の受信能力とに基づき、各移動局に応じたバイアス値を算出する。基準値算出部122は、各移動局に応じたバイアスと小電力基地局200の受信電力との合計値(第1の基準値)を算出する。比較部123は、移動局におけるマクロ基地局100からの受信電力(第2の基準値)と、前記第1の基準値と、を比較し、移動局が接続するべき基地局(接続基地局)を選択し、選択した結果を上位レイヤ101に出力する。接続基地局(マクロ基地局100又は小電力基地局200)を選択する方法の詳細は上述の通りである。
選択結果において、マクロ基地局が選択された場合、上位レイヤ101は、移動局に対するデータ信号を生成するために指示信号をデータ信号生成部102、制御信号生成部105及びパイロット信号生成部106に出力する。
選択結果において、小電力基地局200が選択された場合、上位レイヤ101は、制御信号生成部105に対し、移動局が小電力基地局200に接続するよう指示する信号(接続指示信号)を生成するように通知する。制御信号生成部105は、接続指示信号を生成し、送信部103に出力する。送信部103は、送信アンテナ部104から接続指示信号を移動局に送信する。
尚、小電力基地局200の構成は、マクロ基地局100の構成と同じ形態をとる。
次に、第1の実施形態に係る移動局300の構成を説明する。
移動局300は、図9に示すように、受信部B302(302−1〜M、Mは任意の整数)、MIMO分離部303、復号部304(304−1〜N)、伝搬路推定部305、受信電力検出部306、上位レイヤB307、受信アンテナ部B301(301−1〜M、Mは任意の整数)、制御信号生成部B308、送信部B309、送信アンテナ部B310を備える。
受信部B302(302−1〜M)は、受信アンテナ部B301(301−1〜M)を介して、基地局をから送信されたデータ信号、パイロット信号(リファレンス信号RS)、第1〜第4の制御信号を受信する。さらに、受信部B302は、受信した信号を、ダウンコンバート(高い周波数の信号から低い周波数の信号へ変換)し、さらに信号に含まれる不要な周波数成分(スプリアス)を除去するフィルタリング処理を行う。続いて、受信部302は、フィルタリング処理を施したアナログ信号をデジタル信号に変換(A/D変換)する。
デジタル変換されたデータ信号及び第1〜第4の制御信号は、MIMO分離部303に入力される。また、デジタル変換されたパイロット信号(リファレンス信号RS)は、伝搬路推定部305及び受信電力検出部306に入力される。
伝搬路推定部305は、パイロット信号(リファレンス信号RS)に基づき、基地局から移動局300へ信号が送信される際に生じ得るフェージングによる信号の振幅と位相の変動を推定する伝搬路推定を行う。また、伝搬路推定部305は、伝搬路推定の推定結果である伝搬路推定値をMIMO分離部303に出力する。
カテゴリAの移動局300は、MIMO分離機能としてMLDを備える。MIMO分離部303は、MLDに基づく、MIMO分離を行う。尚、MIMO分離部303は、複数のMIMO分離機能を備え、受信電力(又は、受信SNR、受信SINR)に応じてMIMO分離機能を切り換えるとしてもよい。
MIMO分離部303のMIMO分離機能を説明する。
MIMO分離部303において、入力する第kのサブキャリアの1行M列の行列をR
kとする。R
kは以下の式(3)によって表される。
尚、Hkは、第kサブキャリアにおける送信アンテナと受信アンテナ間の伝搬路推定値を要素に持つM行N列の行列である。Skは、第kのサブキャリアの送信アンテナから送信されるデータ信号を要素に持つ1行N列の行列である。
MIMO分離部303は、無線リソース割当(スケジューリング)の情報、MCS及び空間多重数(空間多重によるチャネル数)等を含む制御データと伝搬路推定値とに基づき、MIMO分離を行う。
MIMO分離部303は、入力された信号を以下の式(4)を用いて軟判定し、軟判定値λを復号部304に出力する。
尚、b1は第kのサブキャリアに配置されたデータ変調シンボルSkを構成するビットのl番目を表わしている。S^kは、Skの候補を表わしている。またS^+ l(k)はSkの候補のうち第lビットが1のものを表わし、S^− n(k)はS(k)の候補のうち第lビットが−1のものを表わす。MLDから求められる事後対数尤度比(a posteriori Log-Likelihood Ratio:事後LLR)は、第lビットが1である最小メトリックと第lビットが−1である最小メトリックの差で表わされる。
復号部304は、MIMO分離部303から出力された軟判定値λに対して復号処理を行い、情報データ及び制御データを算出し、上位レイヤB307に出力する。
受信電力検出部306は、パイロット信号(リファレンス信号RS)に基づき、基地局から受信した信号の受信電力Pの強度を検出する。また、セルサーチにおいて、同様にパイロット信号に基づき、それぞれの基地局からの受信電力Pを算出する。
上位レイヤB307は、基地局からの受信電力の送信要求を受信した場合、受信電力検出部306において検出した受信信号の強度を第6の制御データとして制御信号生成部B308に出力する。
また、上位レイヤB307は、CQIや通信品質情報QoS等を含む下りリンク制御信号(DCI)を第5の制御データとして制御信号生成部B308に出力する。また、上位レイヤB307は、基地局に接続要求するための第7の制御データを制御信号生成部B308に出力する。
制御信号生成部B308は、第5〜第7の制御データに対し符号化及び変調処理を行う。変調処理後、制御信号生成部B308は、第5及び第7の制御データに対応した第5〜第7の制御信号をそれぞれ生成し、送信部309に出力する。
送信部B309は、第5〜第7の制御信号を送信可能な周波帯域にアップコンバートし、送信アンテナ部B310から選択した基地局に送信する。
移動局400はカテゴリBのMIMO分離機能であるMMSEを備える。移動局400の構成は、移動局300と同じであり、にMIMO分離部303のMIMO分離機能が異なる。以下に、移動局400のMIMO分離部303におけるMMSEによるMIMO分離を説明する。
MIMO分離部303において、入力されるデータ信号R
kは、以下の式(5)によって表される。さらに、式(6)によって重みを乗算して分離が行われる。
尚、式(6)において、Hkは、推定値、“H”は、エルミート転置、σ2 noiseは、雑音電力、IMは、単位行列を表す。
さらに、MIMO分離部303は、Rkに対して復調処理を行い、軟判定を行い、軟判定値を出力する。復調処理を、データ信号がQPSK変調された場合を例として説明する。
送信側で送信されたQPSKのデータ変調シンボルをXとし、R
kの構成要素であり各サブキャリアのMIMO分離五のシンボルをXcとして説明する。Xを構成しているビットをb0、b1(b0、b1=±1)とすると、Xは、下記の式(7)で表わせる。jは虚数単位を表す。そして、Xの受信側における推定値Xcからビットb0、b1の事後対数尤度比(事後LLR)であるλ(b0)、λ(b1)は下記の式(8)により求められる。
尚、Re(Xc)は複素数の実部を表す。μは伝搬路補償後の等価振幅であり、例えば、OFDMシンボルの第kのサブキャリアにおける伝搬路推定値をH1(k)、乗算したMMSE基準の伝搬路補償重みをW1(k)とすると、μはW1(k)・H1(k)となる。
また、λ(b1)は、式(8)、すなわちλ(b0)を求める式において、Xcの実部と虚部を置き換えて求める。尚、16QAMなどの他の変調が施されたデータに対しても同様の原理に基づいて算出可能である。
このように、マクロ基地局100は、MIMO分離機能に基づき移動局のカテゴリ分けを行ってバイアスを設定し、小電力基地局200からの受信電力に付加する。さらにマクロ基地局100は、自己の受信電力の強度と、小電力基地局200からの受信電力にバイアスとの合計値とを比較して、移動局の接続する基地局を選択する。従って、基地局からの受信電力の強度と空間多重数(空間多重によるチャネル数)とを考慮し、移動局の接続する基地局を選択することができるため、移動局が受信するデータ信号の空間多重数は、基地局の受信電力の強度差による影響を受けにくくなる。その結果、基地局の平均セルスループットが低下することを防止しながら、移動局の接続が1つの基地局に偏らないように移動局を分散させることができる。言い換えると、移動局の受信能力を考慮して接続する基地局が選択されることにより、基地局の負荷バランスを保つことができる。
また、通信システムの前記移動局の受信能力は、MIMO分離機能であることで、効率よく高速にデータを送信することができるという優れた効果を奏し得る。
また、通信システムの前記移動局のMIMO分離機能は、線形処理と非線形処理によってカテゴリ分けされ、前記バイアスが付加されることで、適応アルゴリズムの異なる移動局に応じて適切に接続する基地局が選択されるという優れた効果を奏し得る。
尚、第1の実施形態では、マクロ基地局100は、移動局の受信電力に基づきバイアスを設定し、移動局の接続する基地局を選択したが、受信SNR又は/及び受信SINRに基づいて行ってもよい。また、受信した受信電力(又はSNR等)、算出したバイアス、MCS及び空間多重数(空間多重によるチャネル数)等は、記憶部(図示せず)に記憶され、基地局の選択過程において、該当する各構成要素に対して入出力される。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る通信システム用いるマクロ基地局500及びそれを備える通信システムを説明する。マクロ基地局500の構成は、基地局選択部107の機能を除いて、第1の実施形態に係るマクロ基地局100と同じであるため、説明を省略する。
基地局選択部107は、制御信号検出部108から出力される第6の制御データに基づき決定された移動局のカテゴリ情報(MIMO分離機能による分類(カテゴリ)の情報)により、移動局が接続する基地局を選択し、選択結果を上位レイヤ101に出力する。
図10を参照して、第2の実施形態に係るマクロ基地局500、小電力基地局200、移動局300、400間での接続方法及び信号のやり取りを説明する。
図10は、マクロ基地局500、小電力基地局200、移動局300(又は移動局400)間の接続及び制御処理フローを示すシーケンス図である。尚、便宜上、図10において1つの移動局300を示すが、カテゴリBの移動局400にも適用される。
マクロ基地局500及び小電力基地局200(以下、両方を表す場合は、単に“基地局”と称す)は、それぞれ自己のセル内に存在する移動局に対し、移動局が基地局のセルと時間/周波数領域で同期を確立できるように、同期信号SCH(Synchronization Channel)を定期的に送信する(ステップS301、S302)。
移動局300又は400(以下、両方を表す場合は、単に“移動局”と称す)は、移動局は電源投入された後、通信のため利用可能なセル(セルID)を検出する処理(セルサーチ)を開始する。移動局は、同期信号SCHに基づき接続可能な基地局をサーチする(ステップS303)。
移動局及び基地局のセルは、固有のIDに基づいて分類される。移動局は、セルIDを参照してセルを識別し、同様に、基地局は、移動局のIDに基づき個々の移動体を識別する。このように始めに、基地局と移動局間において同期信号SCHのみの送信に留めて、この信号が受信された場合に徐々に必要な情報をやり取りしながら移動局の識別を行う。
移動局は、同期信号SCHに基づき、基地局を選択し、選択した基地局に接続要求を行う(ステップS304)。移動局は、図10に示すように、マクロ基地局500を選択している。
移動局は、基地局(この場合、マクロ基地局500)に接続要求する際に、選択した基地局に対し、MIMO信号の分離機能C(適応アルゴリズム)の相違により分類(カテゴリ)を通知する。
次に、接続要求を受けたマクロ基地局500は、接続要求した移動局のカテゴリ基づき、移動局が接続する基地局を選択する(ステップS305)。ステップS305の詳細は、後述する。
マクロ基地局500は、選択結果を移動局に通知する(ステップS306)。図10では、小電力基地局200が選択されている。移動局は、選択結果を受信し、選択された基地局(小電力基地局200)に対して接続要求する(ステップS307)。
接続要求を受けた小電力基地局200は、接続の可否(ACK/NACK)を移動局に通知する(ステップS308)。
移動局は接続の許可(ACK)を受信した場合、受信状態を報告するためのCQIや通信品質情報QoS等を含む下りリンク制御信号DCIを小電力基地局200に送信する(ステップS309)。
DCIを受信した小電力基地局200では、移動局に送信すべきデータが存在する場合は、小電力基地局200のスケジューラが、CQI、通信品質情報QoS並びに基地局内の送信バッファ内容状態などを考慮して、リソースブロックRB単位で移動局に無線リソースを割り当て(スケジューリング)を行う。さらに、受信したDCIに基づき、MCSや空間多重数(空間多重によるチャネル数)が設定される(ステップS310)。無線リソース割当情報や設定情報は、制御データとして移動局に送信され、さらに送信すべきデータ信号が送信される(ステップS311)。
尚、セルサーチ(ステップS303)において、移動局が小電力基地局200との接続が完了した場合、移動局は、ステップS309と同様に、小電力基地局200にDCIを通知し、ステップS310及びS311の動作を行い、小電力基地局200において移動局へ送信すべきデータが存在する場合は、小電力基地局200からデータ信号を受信する。
次に、マクロ基地局500が移動局の接続するべき基地局を選択する方法を説明する。
マクロ基地局500は、図11に示すように、移動局の接続するべき基地局を選択する。図11は、ステップS305において基地局が選択される際の処理フローを示すフローチャートである。
マクロ基地局500は、接続要求した移動局のMIMO分離機能(適応アルゴリズム)の分類(カテゴリ)の情報(以下、カテゴリ情報と称す)を受信した場合(ステップS501)、カテゴリ情報に基づき、移動局が接続する基地局を選択する。
マクロ基地局500は、カテゴリ情報がカテゴリAに属するものであると判断した(ステップS502,Yes)、マクロ基地局500は、小電力基地局200を移動局の接続するべき基地局と判定し、移動局に接続指示信号を送信する(ステップS503)。尚、接続指示信号は、基地局に固有のセルIDであってもよい。マクロ基地局500は、インターフェイスX2を介して小電力基地局200のセルIDを取得できる。また、ステップS503において、マクロ基地局500は、接続の拒否(NACK)を送信する構成としてもよい。
一方、マクロ基地局500は、カテゴリ情報がカテゴリBに属するものであると判断した(ステップS502,No)、マクロ基地局500は、自局(マクロ基地局500)を移動局の接続するべき基地局と判定し、接続の許可(ACK)を送信する(ステップS504)。
このように、マクロ基地局500は、接続要求した移動局のMIMO分離機能(適応アルゴリズム)の分類(カテゴリ)の情報に基づき、移動局の接続する基地局(マクロ基地局500又は小電力基地局200)を選択する。すなわち、基地局からの受信電力の強度の影響を受けやすいMIMO分離機能(適応アルゴリズム)を備える移動局は、受信電力の強度の測定結果に基づいて接続する基地局に接続する指示を受けて、選択された基地局に接続する。一方、基地局からの受信電力の強度の影響を受けにくいMIMO分離機能(適応アルゴリズム)を備える移動局は、小電力基地局200に接続する。この結果、MIMO信号数(空間多重によるチャネル数)の低下を抑えることができ、また、複数の移動局の接続先を分散することができるため、セルの平均スループットの低下することを防ぐことができる。
尚、上記に記載した第1の実施形態及び第2の実施形態における移動局の接続する基地局の選択方法は、送信電力の異なる基地局間におけるハンドオーバーに適用することが可能である。また、本実施の形態で説明した機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。また、マクロ基地局の全部または一部と、移動局の全部または一部との機能を集積回路に集約して実現してもよい。