JP5672961B2 - プラスチック成形品の成形方法 - Google Patents
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Description
さらに、特許文献4には、少なくとも賦形面以外の本体部分が赤外線透過材からなるプラスチック成形加工用スタンパの技術が開示されている。
また、特許文献4のプラスチック成形加工用スタンパは、赤外線照射方式のプラスチック成形加工方法に適しているものの、より微細構造の転写に対応できることが要望されていた。
前記転写面に転写する工程において、前記転写面及び該転写面から所定の深さまでの領域のみを加熱し、前記所定の深さH 1 が、前記賦形面の最も高い凸部から最も深い凹部までの距離H 0 の1.0倍以上10倍以下の深さとする方法としてある。
図1は、本発明の第一実施形態にかかるプラスチック成形品の成形方法を説明する概略断面図を示している。
図1において、本実施形態のプラスチック成形品の成形方法は、プラスチック基板6に対して金型1を用いて圧縮成形を行う成形方法であり、転写工程、固化工程及び離型工程を有している。
なお、本実施形態では、プラスチック基板6の材質をポリエチレンテレフタレートなどの結晶性樹脂としてあるが、これに限定されるものではなく、たとえば、非晶性樹脂としてもよい。また、非晶性樹脂を使用する場合、固化工程は、硬化工程と呼称される。
転写工程は、ガスが含浸され、固化したプラスチック基板6に対して、金型1の賦形面51をプラスチック基板6の転写面61に押圧した状態で、転写面61を加熱し、賦形面51の形状を転写面61に転写する。
また、本実施形態では、後述するように、転写面61を赤外線の輻射加熱によって加熱する方法としてある。なお、赤外線照射手段(図示せず)として、炭酸ガスレーザ装置やハロゲンランプなどが用いられる。
上型2は、上面側にほぼ板状の光透過部材4が埋設され、下面側にほぼ板状のスタンパ5が埋設されている。光透過部材4及びスタンパ5は、Si、ZnSe、サファイアなどの赤外線透過部材であり、上型2の外部から照射された赤外線を透過する。これにより、プラスチック基板6の転写面61は、赤外線の輻射加熱によって加熱される。また、スタンパ5の下面には、複数の凹部52及び凸部53が形成されている。
このようにすると、Siなどの脆性材料に微細なパターンを刻設することは、機械加工的に困難な場合があるといった不具合や、転写成形を繰り返すことにより、Siなどの脆性材料に刻設されたパターンが崩れ易くなるといった不具合を効果的に回避することができる。
また、下型3は、上面に、プラスチック基板6に対応する形状の凹部が形成されており、この凹部にプラスチック基板6が位置決めされた状態で載置される。
また、光透過部材4及びスタンパ5の形状、厚さ、個数などは、特に限定されるものではなく、たとえば、一つの上型2に複数の光透過部材4及びスタンパ5を配設してもよい。
上記の環境にプラスチック基板6が置かれると、プラスチック基板6にガスが含浸され、その後、プラスチック基板6は、図1(a)に示すように、下型3に載置される。
なお、押圧するタイミングと赤外線を照射するタイミングは、通常、ほぼ同時、あるいは、赤外線を照射するタイミングが押圧するタイミングより遅いが、これに限定されるものではなく、たとえば、プラスチック基板6の材質、凹部52及び凸部53の形状、赤外線の出力などに応じて調整される。
また、上記の「転写面を加熱し」とは、「転写面及び該転写面から所定の深さまでの領域のみを加熱し」といった意味である。
一般的なプラスチック材料は、赤外線領域の吸収係数が高く、よって赤外線をよく吸収するので、照射された赤外線の多くはプラスチック基板6の転写面61で吸収され、基板内部には到達せず、結果、転写面61及び転写面61から所定の深さまでの領域のみが局所的に加熱される。
ここで、赤外線は、赤外線透過部材である光透過部材4及びスタンパ5を透過するので、光透過部材4及びスタンパ5は、ほぼ加熱されず、また、鋼製の上型2は、赤外線が照射されないので、加熱されない。
このように加熱される領域が限定的であると、その熱容量も少なくなるため、赤外線の照射を停止すると、熱は熱伝導率の高いスタンパ5及び光透過部材4及び上型2の順に移動し、被加熱領域は短時間で冷却される。したがって、生産性を向上させることが出来る。
このようにすると、プラスチック基板6の全体を加熱する場合と比べると、転写に必要な領域のみを加熱するので、加熱及び冷却に要する時間を短縮でき、生産性を向上させることができる。
上記の数値限定の理由は、1.0倍未満であると、転写に悪影響を及ぼすおそれがあるからであり、また、10倍を超えると、加熱及び冷却に要する時間が長くなり、その分生産性を向上させることができなくなるからである。
更にここで、プラスチック基板6は、上述したように、あらかじめガスが含浸されているので、加熱した際、樹脂の粘度が更に低下し、賦形面51の微細なパターン(凹部52及び凸部53による構造)を精度よく転写できる。
また、被加熱部62の樹脂は、図2(b)に示すように、凹部52のほぼ全体に入り込んでおり、賦形面51の構造が転写面61に転写される。
次に、図1(d)に示すように、賦形面51を転写面61に押圧した状態で、赤外線の照射を停止し、プラスチック基板6(溶融又は軟化した被加熱部62)を固化又は硬化させる。
この際、上述したように、転写面61及びこの転写面61から所定の深さH1までの領域のみを加熱しており、上型2、光透過部材4及びスタンパ5は、ほぼ昇温していないので、溶融又は軟化した被加熱部62は、短時間で冷却され、固化又は硬化する。すなわち、冷却時間が短縮でき、生産性を向上させることができる。
また、賦形面51を転写面61に押圧した状態で、プラスチック基板6(溶融又は軟化した被加熱部62)を固化又は硬化させることにより、転写工程において放出された溶解ガスが、圧縮された状態に維持される。すなわち、転写面61に転写された形状が維持された状態で、プラスチック基板6(溶融又は軟化した被加熱部62)を固化又は硬化させることができる。
なお、所定の圧力を1.0MPa〜10MPaとした理由は、1.0MPa未満であると、樹脂の発泡を効果的に防止することができないおそれがあるからであり、また、10MPaを超えて加圧すると、溶出されたガスが臨界点を超えるため、再び樹脂内に溶解してしまう。
次に、図1(e)に示すように、プレス機により上型2及び/又は下型3を移動させ、賦形面51を転写面61に押圧した状態を解除する。これにより、転写工程において、加熱によりプラスチック基板6から放出され、押圧した状態により圧縮されていたガス65を、図2(c)に示すように膨張させ、この膨張するガス66を利用して、プラスチック基板6を離型させる。
すなわち、膨張するガス66によって、プラスチック基板6の転写面61は、賦形面51から離れようとするので、プラスチック基板6を容易に離型させることができる。また、プラスチック基板6に転写された凸部63や凹部64が微細であっても、膨張するガス66のガス圧を利用して離型させるので、凸部63や凹部64にダメージを与えるといった不具合を効果的に防止することができる。
また、本実施形態は、様々な応用例を有している。
次に、本実施形態の応用例について、図面を参照して説明する。
図3は、本発明の応用例にかかるプラスチック成形品の成形方法を説明するための要部の概略拡大断面図を示している。
図3において、本応用例のプラスチック成形品の成形方法は、上述した第一実施形態と比べると、プラスチック基板6aが、含浸ガスバリア層67を有する多層化された基板状又はシート状であり、含浸ガスバリア層67上に、転写面61を有する層(転写部69)が積層された点などが相違する。なお、本応用例の他の方法は、第一実施形態とほぼ同様としてある。
したがって、図3において、図1と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
基部68及び転写部69の材質は、ポリエチレンテレフタレートとしてあるが、これに限定されるものではない。たとえば、基部68の材質を、耐熱性や機械的強度に優れた材質としたり、また、基部68と転写部69の材質が異なっていてもよい。
この含浸ガスバリア層67を基部68と転写部69の間に設けることにより、ガスを含浸する際、転写部69だけに含浸させることができ、転写面61を加熱する際、放出されるガス量が多くなり過ぎないように、容易に制御することができる。また、基部68と転写部69にガスを含浸した場合であっても、転写面61を加熱する際、基部68からのガスは含浸ガスバリア層67によってほぼ遮られ、転写部69だけからガスが放出され、放出されるガス量が多くなり過ぎないように、容易に制御することができる。これにより、放出されるガス量を制御し、たとえば、発泡などの転写精度、製品価値に悪影響を与えるといった不具合を効果的に防止することができる。
このようにすると、放出されるガス量が多くなり過ぎるといった不具合を防止でき、発泡などの転写精度、製品価値の低下などを抑制することができる。
上記の数値限定の理由は、1.1倍未満であると、放出されるガス量が少なすぎて離型性に悪影響を及ぼすおそれがあるからであり、また、5倍を超えると、放出されるガス量が多くなり過ぎるおそれがあるからである。
図4は、本発明の第二実施形態にかかるプラスチック成形品の成形方法を説明する概略断面図を示している。
図4において、本実施形態のプラスチック成形品の成形方法は、上述した第一実施形態と比べると、転写面61を加熱する赤外線照射手段の代わりに、フィルムヒータ7を用いた点などが相違する。なお、本実施形態の他の方法は、第一実施形態とほぼ同様としてある。
したがって、図4において、図1と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
スタンパ5bは、材質が熱伝導性に優れたCuやCu合金などであり、その他の構造は、スタンパ5とほぼ同様としてある。
また、フィルムヒータ7は、スタンパ5bの上面と上型2bの凹部の底面に挟まれた状態で設けられている。さらに、図示してないが、フィルムヒータ7と上型2bの間に、断熱材が設けられており、フィルムヒータ7のジュール熱によって、上型2bはほぼ加熱されず、スタンパ5b及び転写面61が加熱される。
すなわち、本実施形態は、赤外線照射の代わりに、フィルムヒータ7のジュール加熱によって、転写面61を加熱する方法としてあり、図4(b)及び図4(c)に示す転写工程、図4(d)に示す固化工程、及び図4(e)に示す離型工程は、第一実施形態とほぼ同様である。
図5は、本発明の第三実施形態にかかるプラスチック成形品の成形方法を説明する概略断面図を示している。
図5において、本実施形態のプラスチック成形品の成形方法は、上述した第一実施形態と比べると、転写面61を加熱する赤外線照射手段の代わりに、超音波加熱手段8を用いた点などが相違する。なお、本実施形態の他の方法は、第一実施形態とほぼ同様としてある。
したがって、図5において、図1と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
スタンパ5cは、材質が熱伝導性に優れたアルミニウム合金などであり、その他の構造は、スタンパ5とほぼ同様としてある。また、スタンパ5cは、超音波加熱においては、ホーンとして機能し、上面のほぼ中央超音波加熱手段8の超音波発生装置81が連結されている。
また、超音波加熱手段8は、超音波発生装置81がスタンパ5cを超音波振動させ、賦形面51と転写面61の摩擦熱によって、転写面61が加熱される。なお、図示してないが、スタンパ5cを超音波振動させるとき、上型2cとスタンパ5cはほぼ接触しないので、上型2cはほぼ加熱されず、スタンパ5cは、賦形面51及び賦形面51の近傍が加熱される。
すなわち、本実施形態は、赤外線照射の代わりに、超音波加熱手段8による超音波加熱によって、転写面61を加熱する方法としてあり、図5(b)及び図5(c)に示す転写工程、図5(d)に示す固化工程、及び図5(e)に示す離型工程は、第一実施形態とほぼ同様である。
図6は、本発明の第四実施形態にかかるプラスチック成形品の成形方法を説明する概略断面図を示している。
図6において、本実施形態のプラスチック成形品の成形方法は、上述した第一実施形態と比べると、Siなどの光透過材料で作ったスタンパ5の代わりに、Niなどの金属製板状スタンパ5d及び金属製板状スタンパ5dに塗布された赤外線吸収塗膜54を用いた点などが相違する。なお、本実施形態の他の方法は、第一実施形態とほぼ同様としてある。
したがって、図6において、図1と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
すなわち、金属製板状スタンパ5dは、材料が弾性や熱伝導性に優れたNiなどであり、厚さが1mm以下の薄板(あるいは、薄膜であってもよい。)である。
また、本実施形態では、金属製板状スタンパ5dの上面に、赤外線吸収塗膜54を塗布してある。なお、赤外線吸収塗膜54は、通常、赤外線領域の吸収係数が高い樹脂などを含んでいる。
続いて、金属製板状スタンパ5dの熱伝導により、金属製板状スタンパ5dに接触している転写面61が加熱される。
すなわち、本実施形態は、赤外線照射により転写面61を直接加熱する代わりに、金属製板状スタンパ5dを加熱し、熱伝導によって、転写面61を加熱する方法としてあり、図6(b)及び図6(c)に示す転写工程、図6(d)に示す固化工程、及び図6(e)に示す離型工程は、第一実施形態とほぼ同様である。
本実施形態の実施例1として、上述した成形方法により、プラスチック基板に凹凸形状を成形した。
プラスチック基板6は、材質をポリエチレンテレフタレート(日本ユニペット製 RT543CTHP)とし、形状を矩形状(縦70mm×横30mm×板厚5mm)とした。
また、スタンパ5は、厚さ300μm、材質をNi(ニッケル)とし、賦形面51として、深さ50μm、幅50μm、長さ2mmの凹パターンを、間隙50μmで並設した。
また、光透過部材4の材質をSiとした。
また、含浸ガスとして、二酸化炭素を使用し、ガス含浸圧力を7.5MPa×10分間(ガス温度約35℃)とした。
また、赤外線照射手段として、炭酸ガスレーザ装置を使用し、照射強度を300Wとし、約5秒間照射した。
さらに、プレス機として、低圧プレス機(プレス推力:15kN)を使用した。
比較例1は、上述した実施例1と比べると、ガス含浸圧力を4.0MPa×10分間(ガス温度約35℃)とした点が相違した。なお、比較例1の他の方法は、実施例1とほぼ同様とした。
比較例1の成形されたプラスチック基板6は、離型できるものの吸引して離型させる必要があり、図7に示すように、離型性が十分良好ではなく(△)、凹パターンの転写率は約99%であった。
比較例2は、上述した実施例1と比べると、ガス含浸圧力を0.0MPa(大気圧)×10分間(ガス温度約20℃)とした点が相違した。なお、比較例2の他の方法は、実施例1とほぼ同様とした。
比較例2の成形されたプラスチック基板6は、離型にプラスチック基板6にダメージを与えるほどの外力を必要とし、図7に示すように、離型性が悪く(×)、凹パターンの転写率は、ダメージにより測定不能であった。
例えば、各実施形態のプラスチック成形品の成形方法は、圧縮成形を行う方法としてあるが、これに限定されるものではない。たとえば、図示してないが、射出成形金型に、上述した金型1、1b、1c、1dなどを適用する方法としてもよい。このようにすると、射出成形を行うとともに、微細パターンを転写する圧縮成形を効率よく行うことができる。
2、2b、2c、2d 上型
3 下型
4、4d 光透過部材
5、5b、5c スタンパ
5d 金属製板状スタンパ
6、6a プラスチック基板
7 フィルムヒータ
8 超音波加熱手段
51 賦形面
52 凹部
53 凸部
54 赤外線吸収塗膜
61 転写面
62 被加熱部
63 凸部
64 凹部
65 圧縮されたガス
66 膨張するガス
67 含浸ガスバリア層
68 基部
69 転写部
81 超音波発生装置
Claims (8)
- ガスが含浸され、固化又は硬化したプラスチックに対して、金型の賦形面を前記プラスチックの転写面に押圧した状態で、前記転写面を加熱し、前記賦形面の構造を前記転写面に転写する工程と、前記賦形面を前記転写面に押圧した状態で、前記プラスチックを固化又は硬化させる工程と、前記押圧した状態を解除することによって、前記押圧した状態により圧縮されていた前記加熱により前記プラスチックから放出されたガスを膨張させ、この膨張するガスを利用して、プラスチック成形品を離型させる工程とを有するプラスチック成形品の成形方法であって、
前記転写面に転写する工程において、前記転写面及び該転写面から所定の深さまでの領域のみを加熱し、前記所定の深さH 1 が、前記賦形面の最も高い凸部から最も深い凹部までの距離H 0 の1.0倍以上10倍以下の深さであることを特徴とするプラスチック成形品の成形方法。 - 前記押圧した状態を解除することによって、前記押圧した状態により圧縮されていた前記加熱により前記プラスチックから放出されたガスを膨張させ、この膨張するガスを利用して、プラスチック成形品を離型させる工程において、前記膨張するガスの利用が、膨張するガスの圧力のみを用いるものであることを特徴とする請求項1記載のプラスチック成形品の成形方法。
- 前記金型が、赤外線透過部材および金属製スタンパを有し、前記金型の外部から照射され、前記赤外線透過部材を透過する赤外線の輻射加熱によって、前記金属製スタンパを加熱し、熱伝導により前記転写面を加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチック成形品の成形方法。
- 前記金型が、赤外線透過部材を有し、前記金型の外部から照射され、前記赤外線透過部材を透過する赤外線の輻射加熱によって、前記転写面を加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチック成形品の成形方法。
- 前記金型が、フィルムヒータを有し、前記フィルムヒータのジュール加熱によって、前記転写面を加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチック成形品の成形方法。
- 前記金型が、超音波加熱手段を有し、前記超音波加熱手段の超音波加熱によって、前記転写面を加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチック成形品の成形方法。
- 前記転写面に転写する工程、及び、前記プラスチックを固化又は硬化させる工程において、所定の圧力で前記賦形面を前記転写面に押圧することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のプラスチック成形品の成形方法。
- 前記プラスチックが、含浸ガスバリア層を有する多層化された基板状又はシート状であり、前記含浸ガスバリア層上に、前記転写面を有する層が積層されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のプラスチック成形品の成形方法。
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