JP5671742B2 - 電極構造要素と振動構造要素を近接して配置する方法およびこれを用いたmemsデバイス - Google Patents

電極構造要素と振動構造要素を近接して配置する方法およびこれを用いたmemsデバイス Download PDF

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本発明は、電極構造要素と振動構造要素を近接して配置する方法に関するものである。また、この方法を用いて狭ギャップを有するMEMSデバイスに関するものである。
近年、半導体デバイスの技術進歩は大きく、工業用機器、民生用機器など広範囲に渡って利用されてきている。特に、半導体デバイスの微細化、高集積化などが、該半導体デバイスを搭載した機器、システムの小型化、軽量化、低価格化、高機能化などに大きく寄与するに至っている。しかしながら、半導体デバイスの微細化、高集積化が達成される反面、その製造プロセスの大規模化、複雑化、また、製造装置の大規模化、高価格化が誘起されるに至っている。さらに、微細化の限界が議論され、微細化以外の開発方向も模索されるようになってきている。MEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム)デバイスはその一例であり、機械要素を微細化して半導体技術とマッチさせることにより、新しい機能を実現できることに特徴がある。また、MEMSデバイスの技術開発を通して得られた新技術や新しい知見は、従来の半導体プロセスにも反映され、半導体分野の進歩にも貢献している。
かかるMEMSデバイスの一つに「RF−MEMS」と呼ばれるデバイスがある。これは、高周波(RF)帯で動作するデバイスであり、フィルタや発振器など、通信分野への応用が期待されている。RF−MEMSでは、微小な構造体(ビームやディスク形状が多い)に近接して配置された固定電極と前記構造体間に高周波電気信号を印加し、前記構造体を機械的に振動させている。かかる振動は、静電容量などの変化量として電気的に検出される。RF−MEMSの動作周波数(振動周波数)を高くするためには、振動する前記構造体の大きさを小さくし、かつ、固定電極と前記構造体との間の距離を小さくすることが必要である。このような機械的寸法の微細化には、多くの半導体プロセスが利用でき、RF−MEMSの高周波化に活用できる。
MEMSデバイスを構成する場合、一般的には3つのアプローチがある。一つは単結晶シリコンに微細加工を施す「バルクマイクロマシニング」であり、一つは犠牲層エッチングを利用する「サーフェスマイクロマシニング」であり、他の一つは単結晶シリコンの積層構造(いわゆる「シリコンオンインシュレータウェーハ、SOIウェーハ」)を利用する「バルクサーフェスマイクロマシニング」である。
バルクマイクロマシニングでは、単結晶シリコンのウェーハを裏面側あるいは表面側からエッチングして、単結晶シリコンの3次元構造を作成している。ダイアフラム型圧力センサや加速度センサなどへの応用が実用化されている。しかしながら、より複雑な3次元構造を実現することには限界があることも知られている。
サーフェスマイクロマシニングでは、薄膜堆積、パターニング、薄膜間の層の除去(犠牲層エッチング)などでデバイスが形成されていく。シリコン層の薄膜を堆積させ、この層を振動する構造体にすることが多い。また、このシリコン層は多結晶シリコン(ポリシリコン)であり、層内の残留応力を増大させないために、通常は厚さが0.1〜3マイクロメータ程度に設定されている。サーフェスマイクロマシニングは、一般的な半導体製造ラインの流用が容易である反面、多結晶シリコンの機械的特性が製造条件に依存すること、多結晶シリコンは単結晶シリコンと比較して機械物性が劣ることなどが指摘されている。
図28はサーフェスマイクロマシニングで作成したRF−MEMSの断面構造を示している。同図は、下記引用非特許文献1に記載されている。同図(a)において、ビーム1は多結晶シリコンで形成された振動できるものであり(図中では厚さが2マイクロメータとされている)、単結晶シリコン基板2は基台部である。ビーム1に対向して配置された駆動電極3は単結晶シリコン基板2に固定されている。また、同図(a)は「犠牲層エッチング」が完了した直後の構造断面図であり、ビーム1はあたかも浮上しているかのように図示されている(図中では2000オングストロームとして描かれている)が、図面と垂直な方向の図示されていない場所で、単結晶シリコン基板2に固定されている。同図(b)は、外部から直流電圧4が印加され、ビームが固定電極側へ静電力で引き込まれ、変形すると共に、狭いギャップ5(図中では500オングストロームとして描かれている)が実現することが示されている。この状態で、駆動電極3に印加された高周波信号により、ビーム1は図面の上下方向に振動する。この狭いギャップ5のために、ビーム1の上下方向での振動振幅が大きく、RF−MEMSとしての電気特性も向上するとされている。
多結晶シリコンとサーフェスマイクロマシニングを活用したMEMSデバイスは、従来の半導体製造ラインを利用できる利点がある。しかしながら、図28に示した構造には下記のような課題がある。
(1)機械要素の厚さを大きくして機械的な強度を増大させることが困難である。
多結晶シリコンを形成する際にはプロセス条件を制御して、薄膜多結晶シリコンの内部応力を可能な限り小さくすることが行われる。しかしながら、内部応力は形成プロセスの条件に敏感であり、さらに、薄膜の厚さを大きくすると残留する内部応力も大きくなる傾向がある。このため、振動できるように機械要素の一部(例えばビーム部分)を基板から浮上した構造を実現すると、残留していた内部応力が解放されて、ビームの変形(通常は捩れや曲がりとなって観測される)を誘起する。このため、多結晶シリコンの厚さは最大でも3マイクロメータ程度に制限されている。
(2)多結晶シリコンの形成条件の制御が困難である。
前記したように、多結晶シリコンの形成中に内部応力が残留していると、犠牲層エッチング後にビームの変形などが発生し、所望の動作が困難となる。このため、多結晶シリコンの形成条件(温度、ガス成分比、ガス成分量、雰囲気など)は厳密に制御されることが要求される。このため、半導体製造ライン毎の条件設定、条件の安定性確保など、製造技術面で課題が多い。
(3)犠牲層エッチングのためにフォトマスク数が多くなる。
図28に例示した従来例では、振動する機械要素を基板から浮上させるために、この機械要素と基板との間に挟まれた酸化膜(犠牲層となる)などをエッチングして除去している。また、直流電圧4を印加した時に、この機械要素が一定の距離(同図では500オングストローム)を介して基板から浮上し、かつ、基板との接触を阻止するために、Dimple(ディンプル)6と呼ばれる微小な凸構造を形成している。すなわち、機械要素であるビーム1は一様な厚さを有してはいるが、その表裏面は平坦ではない。このような構造とパターンを作り込むために複数のフォトマスクが使用される。図28での事例では5枚のフォトマスクが必要とされている。さらに、MEMSデバイスと駆動回路などの周辺回路と同一チップ上に集積化する場合には、MEMS部分の加工用フォトマスクと、周辺回路形成用のフォトマスクとが別個に必要となるので、それぞれのフォトマスク数は可能な限り低減することが製造面からは有利となる。この点において、犠牲層エッチングのためのフォトマスク数増大は製造技術面からは大きな課題となっている。
(4)犠牲層エッチング以後のプロセスで破壊される危険が大きい。
犠牲層エッチングが終了すると、前記したビーム1と駆動電極3との間には狭いギャップ(図28では2000オングストローム)が形成される。このため、犠牲層エッチング以後のプロセスでは、衝撃や静電気の帯電などで、前記したビーム1が前記した駆動電極3側に撓み、駆動電極3に固着する危険がある。この固着が発生すると、ビーム1を駆動電極3から引き離して再度浮上させることは不可能である。このため、これらの破壊を防ぐことが課題となっている。
(5)ビームの変形が大きいので物性値が変化する可能性が大きい。
図28の従来例では、2000オングストロームのギャップが、直流電源4により500オングストローム(ギャップ5)まで小さくされている。すなわち、ビーム1(厚さは2マイクロメータ)の変位量は1500オングストローム(0.15マイクロメータ)である。この厚さに対する変位量の比率は10%程度にも達し、大変形領域での振動動作になる。この結果、変位量(比)が小さい場合と比較して、剛性などの機械物性値が変化する。この物性値変動を考慮したRF−MEMSの設計が必要となる課題が発生する。
前段落に記載したように、多結晶シリコンとサーフェスマイクロマシニングを活用したアプローチには、利点があるものの、解決しなくてはならない課題が多い。
MEMSデバイスを構成する第3のアプローチであるバルクサーフェスマイクロマシンニングでは、2つの単結晶シリコン層が酸化膜を介して接合されているSOIウェーハを用い、酸化膜の表面側のシリコン層(デバイス層とも呼ばれる)に機械要素や電子回路を形成し、酸化膜の裏面側のシリコン層(基板層とも呼ばれる)はデバイス層の支持体として利用される。なお、バルクサーフェスマイクロマシニングでは、デバイス層あるいは基板層をエッチングなどで直接微細加工することが多い。デバイス層の加工に犠牲層エッチングを用いることは比較的少ない。デバイス層の厚さは1〜100マイクロメータ程度であり、作成するデバイスにより最適な厚さが選定される。機械要素や電子回路が形成されていない領域のデバイス層はエッチングにより除去されることもある。ここでは、狭い領域を深くエッチングすることが要求されるので、独自な製造装置を利用することになる。しかし、機械要素や電子回路を形成するデバイス層は単結晶シリコンであるので、通常のシリコン半導体デバイスで使用される設計手法、加工方法などがそのまま利用できる利点がある。
図29はバルクサーフェスマイクロマシニングで作成されたRF−MEMSの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。同図(a)は下記引用非特許文献2に、同図(b)と(c)は下記引用非特許文献3に記載されている。同図に示したMEMSは、両端が固定されたビーム(中央の細い棒状形状は浮き上がっている)と、ビームの中央部分に対向して配置された駆動電極から構成されている。これらのビームは、駆動電極との間に印加された高周波電圧信号で励振され、左右方向に振動する。同図(a)のデバイスは、長さ760マイクロメータ、幅10マイクロメータ、厚さ20マイクロメータのビームと、ビームの中央部分に対向して配置された幅100マイクロメータの駆動電極とで構成されている。このビームと駆動電極との間の距離は4マイクロメータである。同図(a)のデバイスは140キロヘルツ近傍に一次の共振周波数が観測される。一方、同図(b)はビームを小型化し、一次の共振周波数がより高くなるように改良されたデバイスである。同図(b)のデバイスは、長さ76マイクロメータ、幅10マイクロメータ、厚さ20マイクロメータのビームと、ビームの長さ方向全体に渡って対向配置された駆動電極とで構成されている。同図(b)のデバイスは11メガヘルツ近傍に一次の共振周波数が観測される。このビームと駆動電極との間の距離は1マイクロメータである。いずれのデバイスも、デバイス層が厚さ20マイクロメータのSOIウェーハを加工して作成されている。
図28に例示した従来例と比較して、単結晶シリコンとバルクサーフェスマイクロマシニングで作成されたMEMSデバイスには下記の利点がある。
(1)機械要素の厚さを大きくして機械的な強度を増大させることが容易である。
SOIウェーハを使用すると、機械要素の厚さをデバイス層の厚さと等しくすることが可能である。このため、デバイス層を厚くすることにより、機械的強度が大きい機械要素を容易に実現できる。
(2)単結晶シリコンを使用するので残留応力の影響がない。
SOIウェーハは、デバイス層にも単結晶シリコンを使用しているため、MEMSデバイスの形成プロセスの条件によらず、内部残留応力が少ない特徴がある。このため、微細加工で機械要素を作成しても、変形などが発生しない。
(3)フォトマスク数が少ない。
図29に例示した事例では、フォトマスク2枚で作成することが可能であり、図28の事例での「5枚」と比較すると大幅にマスク数を低減できる。
(4)ビームの変形が小さいので物性値が変化することがない。
ビームと駆動電極を強制的に近接させる手法を採用していないため、ビームの振動は小振幅動作範囲となっている。このため、大振幅動作での物性値の変化などが回避できる。
図29のRF−MEMSの作成では、反応性ガスを用いたエッチング(RIE;リアクティブイオンエッチング)を用いている。RIEでは、使用するガスの選択、雰囲気条件(ガス濃度、反応温度など)の設定などにより、量産レベルでは、直径2マイクロメータ、深さ4マイクロメータ程度の穴加工が可能となっている。ここに例示した「深さ4マイクロメータ」は、電子回路を集積化した一般の半導体デバイスでは十分な深さである。例えば、ランダムアクセスメモリ(DRAM)では、蓄積容量の増大のため「トレンチ」構造を採用することがあるが、メモリセルの微細化に伴い、トレンチの深さも相対的に浅くなってきている。このため、「深さ4マイクロメータ」は必要十分な加工深さとなっている。勿論、先端的な研究分野では、直径が1.5マイクロメータで深さが30マイクロメータの深穴をRIEで作成することも報告されているが、これは限界値であるとも言える。
しかしながら、前記したように、図29(b)のデバイスはビームと駆動電極との間の距離は1マイクロメータである。この値は、現在の半導体プロセスでの加工技術から見ると比較的大きい値であるが、上記したRIEを用いた加工技術では微小な値となっている。また、ビームと駆動電極との間のギャップを形成する場合には、幅1マイクロメータ、高さ20マイクロメータという大きなアスペクト比(加工深さと加工幅の比)での加工が要求される。この大きなアスペクト比は、RIEを含む現行の半導体プロセスで実現することは困難である。一方、RF−MEMSの高周波化を実現するためには、ビームの長さを小さくすることが必須であり、この結果として、ビームと駆動電極との間の静電容量も小さくなる。RF−MEMSからの電気信号は、ビームの振動が誘起する静電容量の変動量であるので、高周波化に伴い電気信号が微弱になることは免れない。大きな電気信号を得るための一手法としては、(1)ビームと駆動電極間の距離を小さくし(狭ギャップ化)、(2)ビームと駆動電極の対抗する面積を大きくして、電気機械結合係数を大きくすることが挙げられる。すなわち、バルクサーフェスマイクロマシニングで作成するRF−MEMSでは、(1)如何にして深く、かつ、1マイクロメータ以下の狭いギャップを形成するか、(2)如何にしてビームと駆動電極の対抗する面積が大きい構成にするか、が重要な技術開発項目となっている。
狭いギャップを容易に実現することができるならば、RF−MEMSの高周波化が可能となる。かかるデバイスは、携帯型機器、例えば、携帯電話などの高度化に有利である。近年では、利用できる周波数領域が制限されているにも関わらず、携帯型機器によるトラフィック量は増大しており、如何にして「瞬間的に利用されていない周波数帯域を見つけだし、この帯域で通信する」かが注目されている。コグニティブ通信とも称されるこの手法には、多くの周波数帯で機器を動作させるため、多数のフィルタや発振器が必要とされる。現在多用されている水晶振動子や表面弾性波(SAW)デバイスは、構造上、動作周波数の上限が規定されており、さらには、これらのデバイスを複数個使用する場合の占有面積/体積が課題となっている。一方、RF−MEMSで構成された共振器(フィルタや発振器などを含む)は、半導体プロセスで製造されるので、周辺回路との同時作成や集積化が可能であるという特徴がある。このため、RF−MEMSの実用化への期待が大きいが、高周波動作させる時の「狭ギャップ化」と「対抗面積の増大化」の壁の克服が重要な課題となっている。
学会発表論文 K.Wang他、「VHF Free−Free Beam High−Q Micromechanical Resonators」、J.Microelectromechanical Systems、Vol.9、No.3、September 2000 学会発表論文 石野他、「単結晶シリコンMEMS共振器の三次元振動特性」、第25回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム予稿集、551〜557ページ、2008年10月 学会発表論文 橋本他、「狭ギャップ作製プロセスを用いた10MHz帯MEMS共振器の開発」、第26回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム予稿集、116〜119ページ(C1−4)、2009年10月
MEMSデバイスを、単結晶シリコンとバルクサーフェスマイクロマシニングで作成する場合には、狭く、かつ、深いギャップを形成することが必要になる。図29はバルクサーフェスマイクロマシニングで作成されたRF−MEMSの従来例である。前記の〔背景技術〕の段落で記したように、同図(b)のデバイスでは、1マイクロメータのギャップが深さ20マイクロメータで形成されている。このギャップの形成には、反応性ガスを用いたエッチング(RIE;リアクティブイオンエッチング)を用いている。現在実用化されている半導体プロセス技術(RIE)を用いると、シリコン基板に直径2マイクロメータ、深さ4マイクロメータ程度の穴を形成することは可能である。しかしながら、図29の事例では、これよりも微細で、かつ、より深い穴を形成している。RIEのような半導体プロセスでは、加工対象の面積が小さく、あるいは、加工深さが大きくなると、加工が困難になったり、加工時間(エッチングスピード)が遅くなることが知られている。この理由としては、(1)反応ガスが穴に入りにくい、(2)反応生成物が穴から排出されにくいといったことが挙げられる。同図(c)はMEMS共振器のギャップ部分(1マイクロメータである)の拡大写真である。RIEプロセスでエッチングされない領域を被覆するマスクはクローム薄膜であり、そのパターニングには集束化イオンビーム(FIB)が用いられている。このマスクパターンを用いて、1マイクロメータ幅でシリコン基板をエッチングしていくが、ビームの厚さ20マイクロメータを形成するためには、通常の5倍の時間が所要された。ここで「通常」とは、ギャップ領域以外のシリコン基板のみ(表面にパターニングされていない)をエッチングする場合や、ギャップが10マイクロメータといった大きな値である構造の場合を示している。この長時間にわたるエッチングのため、マスクパターンが反応ガスに浸食され、均一な幅のギャップが形成されていないことが同図(c)に示されている。
RF−MEMSの高周波化を実現するためには、ビームの長さを小さくすることが必須であり、この結果として、ビームと駆動電極との間の静電容量も小さくなる。RF−MEMSからの電気信号は、ビームの振動が誘起する静電容量の変化量であるので、高周波化に伴い電気信号が微弱になることは免れない。大きな電気信号を得るための一手法としては、電気機械結合係数を大きくすることが挙げられる。電気機械結合係数とは、機械的に振動するビームの振動振幅を電気信号として検出する際の変換係数である。この電気機械結合係数を大きくすれば、小さい振幅でも大きな電気信号が得られるようになる。電気機械結合係数を増大させるためには、(1)ビームと駆動電極間の距離を小さく(狭ギャップ化)する、(2)ビームと駆動電極が対向する面積を大きくするなどの手法がある。このことより、バルクサーフェスマイクロマシニングで作成するRF−MEMSでは、(1)如何にして深く、かつ、1マイクロメータ以下の狭いギャップを形成するか、(2)如何にして対向面積が大きい構造を実現するか、が重要な解決すべき課題となっている。
半導体デバイスの製造方法において、(1)電極構造要素をスライダに連結し、(2)前記電極構造要素とは第1の距離を介して対向する振動構造要素を設け、(3)前記スライダをスライドさせるスライド機構により、前記電極構造要素と前記振動構造要素の距離が、前記第1の距離よりも短い、指定された第2の距離となるまで、前記スライダを指定された方向へ移動させる。
なお、前段落において、「連結」とは、前記電極構造要素と前記スライダとが一体化されていることを指している。かかる一体化の具体例としては、前記スライダと前記電極構造要素とが同一の材料から構成されていて、かつ、前記スライダの一部が前記電極構造要素として機能している場合である。また、他の例としては、前記電極構造要素が絶縁層などを介して前記スライダに搭載されている場合である。すなわち、「連結」には多くの形態があり、その具体的な形態には制限されない。
なお、前々段落において、「対向する」とは、前記電極構造要素と前記振動構造要素とが、互いに向き合って配置されている状態を示している。
なお、前記した「電極構造要素」と「振動構造要素」の構成材料は金属とは限らない。例えば、シリコンなどの半導体、あるいは、樹脂などの絶縁体の表面に導電性を付与した材料などであっても良い。また、前記「第1の距離」は前記「第2の距離」よりも大きい(長い)。さらに、前記「スライド機構」とは、静電力や電磁力などにより発生した力で前記スライダを移動させる機構である。かかる移動は、前記電極構造要素が、前記「第1の距離」を介して対向していた姿勢を保ちながら、前記「第2の距離」の位置まで直線的に移動することが一般的であるが、これに限らない。例えば、移動中における前記電極構造要素の軌跡が、直線、円弧、ジグザグなどであっても構わない。前記「指定された方向」とは、「第1の距離」に前記電極構造要素が位置する状態から、「第2の距離」に前記電極構造要素が位置する状態へ前記電極構造要素が移動した最終的な状態との間の方向を示しているに過ぎない。
なお、前記「指定された第2の距離」は「ゼロ」を含んでいない。「ゼロ」とは、前記電極構造要素と前記振動構造要素とが「接触」(電気スイッチの接点が繋がっていることに相当)していることであるが、本発明では、前記電極構造要素と前記振動構造要素とは「電気的に絶縁された状態」であることが特徴となっている。また、前記「指定された第2の距離」になった状態では、前記電極構造要素と前記振動構造要素とが「部分的に、かつ、機械的に接触」していても構わないが、かかる場合においても「電気的に絶縁された状態」であることが要求される。
なお、前記「指定された第2の距離」は、前記スライド機構に組み込まれた「ストッパ」などにより指定されることが多いがこれに限らない。例えば、前記スライド機構に組み込まれた「スライダの位置検出機構」により、電気的あるいは機械的なフィードバック制御で前記「第2の距離」が指定されても良い。また、前記電極構造要素が前記「指定された第2の距離」まで移動した後は、前記電極構造要素と前記振動構造要素との距離が前記「指定された第2の距離」を維持していることが好ましい。例えば、前記スライダが、外部からの振動や衝撃で微小量移動することが想定される場合である。前記「ストッパ」で前記「指定された第2の距離」が決定されるような場合には、かかる微小量の移動を阻止するため、常に、あるいは周期的に、前記スライダを前記振動構造要素に向かって押し付けるような前記スライド機構が好ましい。このようなスライド機構の一例としては、前段落に記載した静電力や電磁力などが連続的に、あるいは周期的に発生し続けるように前記スライド機構を構成したり、あるいはバネの力を利用することが挙げられる。
なお、本段落では、前記電極構造要素と前記振動構造要素の形成について記載する。前記電極構造要素と前記振動構造要素とは、同一プロセスで形成されても良いが、これに限ることなく、別プロセスで形成されていても良い。ただし、同一プロセスで形成される場合には、それぞれの母材が離れた(前記「指定された第1の距離」)に置かれ、その形成過程において、(1)前記振動構造要素の存在が前記電極構造要素の形成に影響を与えず、かつ、(2)前記電極構造要素の存在が前記振動構造要素の形成に影響を与えないことが必要である。前記電極構造要素と前記振動構造要素とが形成されてから、前記スライダのスライド機構により、両者が近接(前記「指定された第2の距離」)して配置されることに本発明の特徴がある。
前記スライダをシリコンを含む材料で構成する。
前記スライド機構をシリコンを含む材料で構成し、静電気力を含む駆動力で前記スライダを移動させる。
なお、前記スライダと前記スライダのスライド機構を構成する材料としては、金属、樹脂、半導体、あるいは、これらの混合物(ハイブリッド材料)であって良い。微細加工技術のレベルを考慮すると、シリコン半導体が好ましいがこの限りではない。また、前記駆動力を発生させる機構としては、静電力、電磁力、超音波、あるいは、これらを組み合わせた機構であって良い。MEMSデバイス分野では静電力を利用する場合が多いがこれに限らない。
なお、本段落では、前記スライダを移動させる駆動力の一つである静電気力について記載する。MEMS分野においては、静電気力を利用した「アクチュエータ」として「櫛型電極」を用いた機構が周知である。この機構では、一組の櫛型形状の電極(一方は固定されており、他の一方は移動可能である)に直流電圧を印加することにより、櫛の歯の長手方向に、移動可能な電極が移動することが特徴である。一方、櫛型電極を用いずに、対向して配置された2個の電極に直流電圧を印加し、これらの電極間に発生する吸引力を利用した機構も適用可能である。かかる機構では、前記2個の電極(一方は固定されており、他の一方は移動可能である)間に発生した直流電界が前記吸引力を誘起し、移動可能な電極を、固定された電極側へ移動させる。移動に必要な直流電圧は、前記2個の電極間の距離に依存し、距離が大きければ、大きな直流電圧が必要となる。本段落に記載したように、前記スライダを移動させる時に利用する静電気力の利用形態は種々あり、いずれの形態も本発明に適用可能である。
前記指定された第2の距離を、前記電極構造要素、あるいは前記振動構造要素、あるいは前記スライダに配置されたストッパで決定する。
なお、前記「指定された第2の距離」は機械的なストッパを配置することにより実現しても良い。かかるストッパを配置する位置は、(1)前記電極構造要素の表面であって、前記振動構造要素に対向する面、(2)前記振動構造要素の表面であって、前記電極構造要素に対向する面、(3)前記スライダの領域であって、前記電極構造要素が連結されていない領域などである。(1)と(2)の配置例では、前記電極構造要素と前記振動構造要素とが、前記ストッパを挟み込んで接触することになる。このため、もし、前記電極構造要素と前記導電体とが電気的に絶縁されることが望まれる場合には、前記ストッパを絶縁体で構成したり、前記電極構造要素あるいは前記振動構造要素の表面を絶縁体で被覆することが必要となる。また、前記電極構造要素あるいは前記振動構造要素がシリコンなどの半導体で構成されている場合には、前記ストッパもシリコンなどの半導体で構成し、その表面を酸化することにより前記絶縁体を構成することが可能である。
なお、前記したストッパは、前記振動構造要素に対向している前記電極構造要素の表面、あるいは、前記電極構造要素に対向している前記振動構造要素の表面などの厚さ方向の全てにわたって形成されるとは限らない。例えば、前記電極構造要素表面であって前記振動構造要素と対向する表面のうち、前記電極構造要素表面の厚さ方向の指定された領域のみに形成されていても良い。この具体的な一例としては、前記電極構造要素表面であって前記振動構造要素と対向する表面のうち、「浅い」領域に該ストッパが部分的に形成されている場合である。
前記振動構造要素をMEMS共振器の振動体とし、前記電極構造要素を前記振動体を振動させる駆動電極とする。
なお、本発明の適用分野の一つにMEMS共振器がある。かかる共振器の一例を挙げると、両端が固定されたビームと、ビームに対向して配置された駆動電極とから成り、駆動電極とビームとの間に高周波信号を印加することで発生した静電力で前記ビームを振動させている。この構造に本発明を適用すると、前記振動構造要素をビーム(振動体)とし、前記電極構造要素を駆動電極とすることが挙げられる。なお、かかる構成では、前記電極構造要素(駆動電極)に対向する前記振動構造要素は、指定された領域がビームとして振動し、かつ、前記指定された領域を含まない前記振動構造要素の領域が振動しないようにされていることが必要である。また、駆動電極となる前記電極構造要素の個数は1つとは限らず、2つ以上配置されていても良い。
なお、MEMS共振器の他の一例としてディスク(平板)型がある。ディスク型共振器は、中央領域が固定された円板あるいは多角形の振動板と、前記振動板の周囲に沿って配置された駆動電極とから構成されている。この構造に本発明を適用した事例としては、前記振動構造要素を前記振動板とし、前記電極構造要素を駆動電極とすることが挙げられる。また、駆動電極となる前記電極構造要素の個数は1つとは限らず、2つ以上配置されていても良い。
なお、MEMS共振器の他の一例としてリング型がある。リング型共振器は、ドーナッツ状で平板形状の振動板と、前記振動板の周囲に沿って配置された駆動電極とから構成されている。前記ドーナッツ状の振動板は、外周あるいは内周の指定された領域が固定されている。この構造に本発明を適用した事例としては、前記振動構造要素を前記ドーナッツ状で平板形状の振動板とし、前記電極構造要素を駆動電極とすることが挙げられる。また、駆動電極となる前記電極構造要素の個数は1つとは限らず、2つ以上配置されていても良い。
なお、前記したスライダは静電力などを駆動力とする「可動部」を有している。一方、前記したMEMS共振器の振動体(ビームあるいはディスク)も機械的に可動である。このため、MEMS共振器を励振させた時に、該スライダの「可動部」が励振されると、該MEMS共振器の振動が阻害される可能性がある。かかる不都合を排除するためには、前記したスライダの「可動部」の共振周波数f1を低く、一方、前記したMEMS共振器の振動体の共振周波数f2を高く設定すれば良い。例えば、f1を大略100Hz、f2を1MHzを超える値に設定すると、前記した不都合は回避される。f1を低く設定するための設計指針は多々あるが、一例として挙げるならば、前記スライダの質量を大きくすることなどがある。
MEMSデバイスの1形態であるMEMS共振器を、(1)スライダと、(2)前記スライダに連結した電極構造要素と、(3)前記電極構造要素とは第1の距離を介して対向して配置され、機械振動する振動構造要素で構成し、(4)前記スライダに、指定された方向へ前記スライダをスライドさせるスライド機構を持たせ、(5)前記スライド機構による前記スライダの移動量が、前記第1の距離よりも短い、指定された第2の距離で決定されるように構成する。
なお、MEMS共振器は、振動する構造体(前記「振動構造要素」に対応)と、狭いギャップを介して該構造体に近接配置された駆動電極(前記「電極構造要素」に対応)とから構成されている。この構造体の形状には、両端が固定されたビームや、中央が固定されたディスクあるいはリングなどがある。動作周波数が高周波になるに伴い、共振器から得られる電気信号は小さくなる傾向がある。このため、電気信号を大きくするための施策を施すことが必須となる。この例として、電気機械結合係数を大きくすることが挙げられる。電気機械結合係数は、ギャップの大きさの2乗に逆比例し、また、該構造体と該駆動電極との対向面積に比例することが知られている。このため、狭いギャップがMEMS共振器の高性能化に大きく寄与する。しかしながら、従来技術では、高アスペクト比で狭いギャップを形成することは困難であった。このため、前記構造体と前記駆動電極とを、「離れた距離」(前段落での「第1の距離」に対応)で形成し、それぞれの形状加工が完了してから、前記スライド機構で両者を「近接」(前段落での「第2の距離」に対応)配置させるという本発明が考案されるに至った。かかる近接配置の手法により、高アスペクト比の極度に狭いギャップが容易に実現される。例えば、ギャップの幅が1マイクロメータを超えない値(サブミクロン)で、深さが30マイクロメータものギャップを有するMEMS共振器が実現される。
なお、前記「指定された第2の距離」は「ゼロ」を含んでいない。「ゼロ」とは、前記電極構造要素と前記振動構造要素とが「接触」(電気スイッチの接点が繋がっていることに相当)していることであるが、本発明では、前記電極構造要素と前記振動構造要素とは「電気的に絶縁された状態」であることが特徴となっている。また、前記「指定された第2の距離」になった状態では、前記電極構造要素と前記振動構造要素とが「部分的に、かつ、機械的に接触」していても構わないが、かかる場合においても「電気的に絶縁された状態」であることが要求される。
前記スライダと前記電極構造要素と前記振動構造要素を、シリコンを含む材料で構成する。
前記スライド機構をシリコンを含む材料で構成し、静電気力を含む駆動力で前記スライダを移動させる。
なお、前記スライダと前記電極構造要素と前記振動構造要素をシリコン半導体で構成すると、RIEを含む半導体プロセスで、両者が一括して形成できるので、前記MEMS共振器の作成が容易となる。かかる構成においても、前記構造体と前記駆動電極とを、「離れた」状態で形成し、それぞれの形状加工が完了してから、前記したスライド機構で両者を「近接した」状態に配置させるという本発明の特徴が活かされる。また、前記スライダの移動は、半導体プロセスで作成可能なスライド機構によることが好ましいが、この限りではない。静電気力や電磁力を駆動に利用する場合には、半導体プロセスで構成することが可能である。また、超音波を駆動に利用したり、静電気力、電磁力、超音波を組み合わせた構成も可能である。さらに、前記スライダのスライド機構にフィードバック制御などの手法を併用して、前記「近接した」状態に維持させることも可能である。
前記指定された第2の距離を、前記電極構造要素、あるいは前記振動構造要素、あるいは前記スライダに配置されたストッパで決定する。
なお、前記第2の距離へ要求される大きさとしては、5マイクロメータを超えない微小な距離(1マイクロメータを超えない距離であることがより望ましい)であるので、前記第2の距離が小さくなるほど、前記第2の距離で前記スライダを停止させることが困難になる傾向がある。前記ストッパは、前記第2の距離で前記スライダを停止させるための機構であり、このストッパの存在により、前記スライダを高い位置精度で停止させることが容易になる。なお、前記ストッパが配置される位置は、前記電極構造要素、前記振動構造要素、前記スライダのいずれかの領域である。さらに、複数の前記ストッパをこれらの複数の構成要素に配置しても構わない。
なお、本段落では、前記ストッパの配置について記載する。説明の便宜上、前記ストッパが前記電極構造要素に配置されている場合について記載するが、前記振動構造要素などに配置されている場合も同様である。前記導電駆動体は外部から供給された高周波信号で振動するが、この振動モードを解析すると、前記導電駆動体には「節」と「腹」が存在していることが分かる。「節」とは前記振動の空間的な振幅がゼロあるいは微小である領域であり、「腹」とは前記振動の空間的な振幅が大きい(一般には最大振幅)領域である。前記ストッパを該「節」領域に対応して配置すると、前記振動構造要素へのストッパの接触が振動に影響を与えない、あるいは、その影響が少ないことになる。かかる状況は、「ビーム型」、「ディスク型」、「リング型」いずれのMEMS共振器にも該当している。このため、前記振動構造要素の振動が、ストッパがない形態と、ほぼ同一になり、該共振器の設計面では大きな利点となる。
前記振動構造要素を、両端固定のビーム型MEMS共振器の振動ビームとし、前記電極構造要素を前記ビーム型MEMS共振器の駆動電極とする。
前記振動構造要素をリング型あるいはディスク型MEMS共振器の振動体とし、前記電極構造要素を前記リング型あるいはディスク型MEMS共振器の駆動電極とする。
なお、MEMS共振器には、前段落と前々段落に記載した「ビーム型」、「ディスク型」や「リング型」以外にも多くの形態がある。例えば、複数のビームを2次元空間に配置(餅焼き網のイメージである)し、それぞれのビームが交差する領域に該ビーム同士を連結する機構を設け、ビームの捩り振動などを利用する形態もある。いずれの形態においても、狭いギャップが必要で、かつ、ギャップ幅を小さくすることが特性向上に寄与する場合には、本発明を適用することが可能である。
なお、前記MEMS共振器の作成に際して、SOIウェーハを用い、さらに、バルクサーフェスマイクロマシニングを採用する場合には、前記振動ビームあるいはディスクあるいはリングと、前記電極構造要素に、当該ウェーハのデバイス層を利用することができる。さらには、前記振動ビームあるいはディスクあるいはリングと、前記電極構造要素を、(1)該デバイス層と(2)該デバイス層の直下に位置する基板層の特定の領域とで構成し、(3)該デバイス層と該領域とを電気的に接続することも可能である。かかる構成を採用することにより、前記振動ビームあるいはディスクあるいはリングと、前記電極構造要素とが対向する面積を増大させることが可能となり、電気機械結合係数の増大を図ることができる。
なお、前記したMEMS共振器の構成では、前記「指定された第2の距離」の状態で、前記電極構造要素に印加された信号により前記振動構造要素が機械的に振動する。一方、前記「指定された第1の距離」の状態では、前記電極構造要素に信号を印加しても前記振動構造要素は振動しない。これは、前記「指定された第1の距離」では、前記した電気機械結合係数が小さくなるためである。このため、MEMS共振器の動作を、前記スライダの位置(前記スライド機構の駆動力に依存)により、ON(振動している)あるいはOFF(振動していない)に選択することも可能である。すなわち、当該MEMS共振器を動作させたい時には前記スライダを移動させ、動作させたくない時には前記スライダを移動させないといった構成も可能である。
MEMSデバイスを、(1)機械振動する振動構造要素と、(2)前記振動構造要素の第1の側に第3の距離を介して対向して配置され、第1のスライダに連結した第1の電極構造要素と、(3)前記第1のスライダを第1の方向へ移動させる第1のスライド機構と、(4)前記振動構造要素の、前記第1の側とは前記振動構造要素を挟んだ反対側にある第2の側に、第4の距離を介して対向して配置され、第2のスライダに連結した第2の電極構造要素と、(5)前記第2のスライダを第2の方向へ移動させる第2のスライド機構とで構成し、(6)前記第1のスライド機構による前記第1のスライダの移動量を指定された第5の距離で決定し、(7)前記第2のスライド機構による前記第2のスライダの移動量を指定された第6の距離で決定する。
なお、前段落に記載した構成では、単一の振動構造要素の両側に前記第1の電極構造要素と前記第2の電極構造要素とが配置されている。かかる構成においては、前記第1の電極構造要素と前記第2の電極構造要素は、それぞれ、前記第3の距離と前記第4の距離(共に「離れた」状態である)に配置される状態で、前記第1の電極構造要素と前記第2の電極構造要素とが加工される。該加工後に、前記第1のスライド機構と第2のスライド機構により、それぞれ、前記第5の距離と前記第6の距離(共に「近接した」状態である)まで移動することにより、狭いギャップが構成される。なお、前記第3の距離は前記第5の距離よりも大きく、前記第4の距離は前記第6の距離よりも大きい。
なお、前段落に記載した「振動構造要素」は、振動ビーム(ビーム型共振器)、振動リング(リング型共振器)、振動ディスク(ディスク型共振器)などである。また、これら以外のMEMS共振器の振動構造要素であっても構わない。例えば、複数のビームを2次元空間に配置(餅焼き網のイメージである)し、それぞれのビームが交差する領域に該ビーム同士を連結する機構を設け、ビームの捩り振動などを利用する形態である。
前記第1のスライダと、前記第1の電極構造要素と、前記振動構造要素と、前記第2のスライダと、前記第2の電極構造要素とを、シリコンを含む材料で構成し、静電気力を含む駆動力で前記第1のスライダと前記第2のスライダを移動させる。
なお、前記第1の電極構造要素、前記第2の電極構造要素、前記第1のスライダ、前記第2のスライダと前記振動構造要素をシリコン半導体で構成すると、RIEを含む半導体プロセスで全ての構成要素が一括して形成されるので、前記MEMS共振器の製造が容易となる。かかる構成においても、前記振動構造要素と前記第1の電極構造要素と前記第2の電極構造要素とを、「離れた」状態で形成し、それぞれの形状加工が完了してから、前記したスライド機構で両者を「近接」配置させるという本発明の特徴が活かされる。また、前記第1のスライダと前記第2のスライダの移動は、半導体プロセスで作成可能なスライド機構によることが好ましいが、この限りではない。静電気力や電磁力を駆動に利用する場合には、半導体プロセスで構成することが可能である。さらに、超音波を駆動に利用したり、静電気力、電磁力、超音波を組み合わせた構成も可能である。
前記指定された第5の距離を、前記第1の電極構造要素、あるいは前記第1のスライダ、あるいは前記振動構造要素に配置されたストッパで決定し、前記指定された第6の距離を、前記第2の電極構造要素、あるいは前記第2のスライダ、あるいは前記振動構造要素に配置されたストッパで決定する。
なお、前記指定された第5の距離と前記指定された第6の距離へ要求される大きさとしては、1マイクロメータを超えない微小な距離であるので、前記第5の距離と前記第6の距離が小さくなるほど、要求された距離で正確にそれぞれのスライダを停止させることが困難になる傾向がある。前記ストッパは、前記指定された第5の距離と前記指定された第6の距離で、それぞれの前記スライダを停止させるための機構であり、このストッパの存在により、前記第1のスライダと前記第2のスライダを高い位置精度で停止させることが容易になる。なお、これらのストッパが配置される位置は、前記第1の電極構造要素、前記第2の電極構造要素、前記振動構造要素、前記第1のスライダ、あるいは、前記第2のスライダのいずれかの領域である。さらに、複数のこれらのストッパを前記した複数の構成要素に配置しても構わない。
なお、本段落では、前記したMEMS共振器の改良された構成について記載する。より詳細には、前記第1の電極構造要素と前記第2の電極構造要素と前記振動構造要素とで構成される「MEMS共振器」において、前記第1の電極構造要素を「駆動用の電極」とし、前記第2の電極構造要素を「検出用の電極」とする構成の動作について記載する。なお、電気的には、前記振動構造要素は接地電位であり、該「駆動用の電極」に高周波信号(一般には、直流電圧に高周波信号が重畳されている)を印加する。この結果、前記振動構造要素は、該高周波信号の周波数(あるいは、その高調波周波数またはオーバートーン周波数)で振動する。かかる振動は、該振動構造要素と前記第2の電極構造要素との間に形成される静電容量の値を変化(変調)させるので、該変化を電気信号として検出する。かかる構成では、駆動側と検出側とが電気的、空間的に分離しているため、検出側の回路構成が駆動側の回路構成から独立して構成できることに特徴がある。
なお、本段落では、前記したMEMS共振器の改良された他の構成について記載する。かかる改良構成では、前記第2のスライダに連結した前記第2の電極構造要素が、第2−1の電極構造要素と第2−2の電極構造要素とに分離して配置されていることが特徴である。これらの電極構造要素の「近接した」状態では、共に、前記指定された第6の距離に配置されている。一方、前記第1の電極構造要素は、前記第2の電極構造要素とは異なり、分離されていない。また、当該第1の電極構造要素の「近接した」状態では、前記指定された第5の距離に配置されている。かかる構成では、前記振動構造要素の第2の側には2個の電極構造要素(第2−1と第2−2である)が、前記振動構造要素の第1の側には1個の電極構造要素が配置されていることになる。この構成では、
(1)前記第1の電極構造要素を前記指定された第5の距離(「近接した」状態)に、かつ、前記第2−1の電極構造要素と前記第2−2の電極構造要素を前記指定された第4の距離(「離れた」状態)に配置される場合、
(2)前記第1の電極構造要素を前記指定された第3の距離(「離れた」状態)に、かつ、前記第2−1の電極構造要素と前記第2−2を前記指定された第6の距離(「近接した」状態)に配置される場合、
(3)前記第1の電極構造要素を前記指定された第5の距離(「近接した」状態)に、かつ、前記第2−1の電極構造要素と前記第2−2の電極構造要素を前記指定された第6の距離(「近接した」状態)に配置される場合、
の3通りの組合せがある。前記(1)と(2)では前記振動構造要素はその基本周波数(ビームが共振する場合の一番低い周波数)で振動され、前記(3)では前記振動構造要素の第3次の周波数で振動されることになる。前記(3)では、該振動構造要素の高調波(あるいはオーバートーン)周波数で直接駆動されることになる。上記した構成では、前記第1のスライダと前記第2のスライダの制御により、共振周波数を変化させることができる。一般に共振器の周波数を変化させる場合には、複数の共振周波数を有する共振器を並列に配置して、半導体素子で構成されたスイッチなどで切り替えることが行われている。しかしながら、高周波帯ではこれらのスイッチの特性劣化(特にON時のインピーダンスとOFF時の絶縁性)が課題となっている。上記構成では、スイッチが不要であり、これらスイッチに起因する共振器系の特性劣化を防止できる。さらに、前記第2の電極構造要素の分離では、分離の数は2個に限らず、2個以上の電極構造要素に分離させても良い。また、前記第1の電極構造要素を2個以上の電極構造要素に分離して配置させても良い。前記第1の電極構造要素と前記第2の電極構造要素から成り、かつ、それぞれが分離されている構成では、それぞれの分離された電極構造要素が配置される領域を選択することにより、より高次の周波数で振動させることが可能となる。
なお、前段落に記載した構成では、前記電極構造要素の配置により前記(1)から(3)の組合せがあることを記載した。本段落では、さらに、前記第1の電極構造要素を前記指定された第3の距離(「離れた」状態)に、かつ、前記第2−1の電極構造要素と前記第2−2の電極構造要素を前記指定された第4の距離(「離れた」状態)に配置される場合を記載する。かかる配置では、前記振動構造要素が振動することがないため、前記MEMS共振器はOFF(動作していない)状態である。すなわち、本段落の構成を付加すると、前記MEMS共振器は、OFF状態、3通りのON状態(前記(1)から(3)に対応)のいずれかに設定することが可能となる。
なお、本段落では、前記したMEMS共振器の改良された他の構成について記載する。かかる改良構成では、前記振動構造要素が単一ではなく、それぞれの機械特性(例えば、振動ビームの長さ、幅、あるいは厚さ)が異なる2個の振動構造要素(ここでは第1の振動構造要素と第2の振動構造要素と称する)に分離していることが特徴である。前記第1の振動構造要素には前記第1の電極構造要素が対向して配置され、前記第2の振動構造要素には前記第2の電極構造要素が対向して配置されている。この構成において、
(1)前記第1の電極構造要素を前記第1の振動構造要素に対して前記指定された第5の距離(「近接した」状態である)に、かつ、前記第2の電極構造要素を前記第2の振動構造要素に対して前記指定された第4の距離(「離れた」状態である)に配置される場合、
(2)前記第1の電極構造要素を前記第1の振動構造要素に対して前記指定された第3の距離(「離れた」状態である)に、かつ、前記第2の電極構造要素を前記第2の振動構造要素に対して前記指定された第6の距離(「近接した」状態である)に配置される場合、
の2通りの組合せがある。前記(1)では前記第1の振動構造要素のみが振動され、前記(2)では前記第2の振動構造要素のみが振動される。すなわち、前記第1のスライダと前記第2の制御により、共振周波数を変化させることができる。かかる改良された構成では、前段落に記載したと同様に、スイッチが不要であり、スイッチに起因するに共振器系の特性劣化を防止できる。
本発明により、電極構造要素と振動構造要素を近接して配置する方法と、これを用いたMEMSデバイスが提供された。本発明によれば、容易に狭いギャップを構成することが可能であり、MEMSデバイスの高度化への貢献は多大である。
従来の半導体プロセスでは、シリコン基板に直径2マイクロメータ、深さ4マイクロメータの穴を形成することは可能であった。先端的な研究では直径1.5マイクロメータ、深さ30マイクロメータの穴加工も報告されている。しかし、MEMS共振器などでは、より微細な加工が特性向上に要求されてきた。例えば、数10マイクロメータの厚さを有する電極構造要素と振動構造要素を、1マイクロメータ以下の距離で対向させることである。かかる構造を半導体プロセスで実現する時には、反応性イオンエッチング(RIE)プロセスが適しているが、加工面積が微細になるに従い、加工速度(エッチングスピード)が低下することが知られてきた。このため、より長時間の加工時間が必要となり、加工のためのマスク層が浸食され、加工断面の形状が大きく乱されていた。本発明によれば、前記電極構造要素と前記振動構造要素を離れた状態で形状加工を行い、該加工が終了してから、スライド機構により、電極構造要素を振動構造要素へ接近させ、近接配置することができた。この結果、例えば、厚さ20マイクロメータの厚さを有する電極構造要素と振動構造要素を、1マイクロメータ以下に近接させることが可能となった。
MEMSデバイスを作成する際、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)と呼ばれるシリコン基板(SOI基板)を利用することが多い。これは、シリコン単結晶の基板の表面を酸化膜(例えば、厚さ1マイクロメータ)で被覆し、その上に、シリコン単結晶層(例えば、厚さ20マイクロメータ)を貼り付けた構造あるいは堆積させた構造である。一般に、下地となる基板は「基板層」、表面のシリコン層は「デバイス層」と称されている。SOI基板を用いたMEMSデバイスでは、デバイス層に微小機械要素が作り込まれる。前記した電極構造要素と振動構造要素もデバイス層の一部で構成されている。かかる2個の構造要素を作成する際には、デバイス層を貫通するギャップを形成することにより、2個の構造要素を形成している。すなわち、例えば、1マイクロメータのギャップを実現するためには、該デバイス層を幅1マイクロメータ、深さ20マイクロメータで穴加工することになる。RIEプロセスでは、加工領域に反応性ガスを送り込むと同時に、反応生成物を加工領域から除去することが必要であるが、1マイクロメータの加工ではこれらが困難となっている。本発明では、例えば、10マイクロメータ程度の幅で深さ20マイクロメータの穴加工を行い、加工完了後、前記電極構造要素をスライド機構により、前記振動構造要素に接近させ、両者の距離が1マイクロメータになるように近接させることが可能となった。さらに、該距離を1マイクロメータ以下に設定することも可能となった。
本段落では、本発明をビーム型のMEMS共振器に適用した事例を記載する。ビーム型のMEMS共振器では、前記振動構造要素がビームに、前記電極構造要素が駆動電極に対応している。MEMS共振器では、共振周波数を高くするためにビームを小型化(例えば、長さを短く、断面積を小さくする)するが、構造微細化の結果、検出される電気信号も微弱となる。該電気信号を大きくするためには、電気機械結合係数を大きくすることが重要な設計要項となる。電気機械結合係数は、ギャップの2乗に反比例し、かつ、当該ビームと当該駆動電極の間の対向面積に比例することが知られており、前記した「電極構造要素と振動構造要素を近接配置する」ことが有効であった。また、前記電極構造要素と前記振動構造要素を、デバイス層と特定の領域の基板層とで構成することにより、前記電極構造要素と前記振動構造要素との対向面積の増大を図ることもできた。以上のように、本発明により、電気機械結合係数を大きくし、電気信号も大きくすることが可能となった。
前記したように、本発明では、前記電極構造要素をスライド機構により、前記振動構造要素へ近接させることに特徴がある。かかるスライド機構を「静電気アクチュエータ」により容易に実現することができた。静電気アクチュエータは、対向する固定された櫛型電極(ステータ)と基板から浮上していて可動な電極(ロータ)とを主要な構成要素としている。これらの電極間に直流電圧を印加するとロータが櫛型電極(ステータ)の間に引き込まれるように移動する。該ロータの一部を前記電極構造要素とすることにより、前記電極構造要素の移動が可能となり、前記振動構造要素と近接配置することが可能となった。
前記したスライダは静電力などを駆動力とする「可動部」を有しており、かつ、前記したMEMS共振器の振動体も機械的に可動である。MEMS共振器の励振時に該スライダの「可動部」が励振されることを防止するため、前記したスライダの「可動部」の共振周波数f1を例えば100Hzに、前記したMEMS共振器の振動体の共振周波数f2を1MHzを超える値に設定した。この結果、前記「可動部」の励振を防止し、前記振動体のみを励振することが可能となった。
前記スライド機構にストッパを設けることにより、前記電極構造要素の移動量を制御することが可能となった。例えば、ストッパの大きさ(平面形状では突起の高さに類似)を「指定された距離」と等しくすることにより、前記電極構造要素と前記振動構造要素との距離を所定の値に精度良く設定することが可能となった。
前記振動構造要素の両側に前記第1の電極構造要素と前記第2の電極構造要素を近接して配置する構成により、多くの機能を持たせることが可能となった。例えば、前記第1の電極構造要素を分離して2個の電極構造要素にすることにより、前記振動構造要素を高調波あるいはオーバートーン周波数で直接振動させることが可能となった。かかる振動動作は、前記振動構造要素を小型化することなく、共振周波数を増大させることができ、MEMS共振器の高周波化が可能となった。
さらに、前記振動構造要素を2本並列配置し、それぞれのビームの長さを変化させる構成により、それぞれの前記振動構造要素を独立に振動させることが可能となった。この構成により、2つの共振周波数の間の切換えを、半導体スイッチなどを使用せずに行うことが可能となった。この結果、半導体スイッチに起因する、ON時のインピーダンスやOFF時の絶縁性による特性劣化を避けることも可能となった。
前記振動構造要素の両側に前記第1の電極構造要素と前記第2の電極構造要素を近接して配置する構成により、他の機能を持たせることも可能となった。例えば、前記第1の電極構造要素を駆動側とし、前記第2の電極構造要素を検出側とすることにより、駆動系と検出系を、空間的かつ電気的に分離することが可能となった。
ビーム型のMEMS共振器以外にも、ディスク型あるいはリング型のMEMS共振器に本発明を適用することにより、前記したような多くの利点を得ることができた。
本発明による「電極構造要素と振動構造要素を近接して配置する方法」は、前記したようなRF−MEMSあるいはMEMS共振器などへの適用以外にも、狭いギャップが必要となる加工分野へ広く適用できる。例えば、静電容量型のMEMSセンサ(加速度センサやジャイロセンサなど)に適用すれば、大きな静電容量変化値が出力され、センサの高感度化も実現できる。
電極構造要素を近接して配置する方法を示す図である。 <実施例1> シリコンMEMSデバイスの構成(−1)を示す図である。 <静電力を利用した例> <実施例2> 実施例2に示した静電アクチュエータの動作を説明する図である。 シリコンMEMSデバイスの構成(−2)を示す図である。 <電磁力を利用した例> <実施例3> シリコンMEMSデバイスの構成(−3)を説明する図である。 <超音波振動を利用した例> <実施例4> シリコンMEMSデバイスの構成(−4)を説明する図である。 <静電力を利用した他の例> <実施例5> MEMS共振器の構成(−1)を説明する図である。 <振動ビーム> <実施例6> MEMS共振器での電気機械結合係数を説明する図である。 MEMS共振器の電気機械的動作を説明する図である。 MEMS共振器の製造プロセスを説明する図である。 <実施例7> ストッパの構成(−1)を説明する図である。 <実施例8> ストッパの構成(−2)を説明する図である。 <実施例9> ストッパの構成(−3)とその製造方法を説明する図である。 <実施例10> ストッパの構成(−4)を説明する図である。 <実施例11> ストッパの構成(−5)を説明する図である。 <実施例12> MEMS共振器の構成(−2)を説明する図である。 <振動ビーム> <実施例13> MEMS共振器の構成(−3)を説明する図である。 <振動ビーム> <実施例14> MEMS共振器の構成(−4)を説明する図である。 <振動ビーム> <実施例15> 電気機械結合係数を大きくできるMEMS共振器を説明する図である。 <電極構造要素と振動ビームが対向する面積> <実施例16> 図19の構成を説明する図である。 MEMS共振器の製造プロセスを説明する図である。 <実施例17> MEMS共振器の構成(−2)を説明する図である。 <振動ビーム> <実施例18> MEMS共振器の構成(−3)を説明する図である。 <振動ビーム> <実施例19> MEMS共振器の構成(−4)を説明する図である。 <振動ビーム> <実施例20> MEMS共振器の構成(−5)を説明する図である。 <ディスク> <実施例21> MEMS共振器の構成(−6)を説明する図である。 <ディスク> <実施例22> MEMS共振器の構成(−7)を説明する図である。 <八角形ディスク> <実施例23> サーフェスマイクロマシニングで作成したデバイスの断面を示す図である。 <従来例1> バルクサーフェスマイクロマシニングで作成されたデバイスの写真である。 <従来例2>
以下、図面を用いて、電極構造要素と振動構造要素を近接して配置する方法およびこれを用いたMEMSデバイスを詳細に説明する。
<電極構造要素を近接して配置する方法>
図1は、実施例1である、電極構造要素と振動構造要素を近接して配置する方法を説明する図である。同図(a)は当該電極構造要素と当該振動構造要素が未加工の状態(2個の構造要素に分離されておらず、単一の構造要素のままである)を、同図(b)は当該電極構造要素と当該振動構造要素への加工が完了し「離れて」配置された状態を、同図(c)は当該電極構造要素と当該振動構造要素が「近接して」配置された状態をそれぞれ示している。なお、同図では、電極構造要素と振動構造要素の近接配置法を原理的に示しており、必ずしも実際の形態とは一致しているとは限らない。同図(a)において、構造要素10は未加工状態での当該2個の構造要素を示している。構造要素10は未加工であるので、2個に分離していない状態である。スライダ20はスライド機構(明示せず)を備えており、基台部21の上部で、図面で左右方向に移動できる。また、当該スライダ20には突起22が設けられている。構造要素10は、スライダと電気的な絶縁のため、絶縁層11を介してスライダ20と連結されている。ここで「連結」とは、前記スライダ20との一体化を意味しており、同図ではあたかも接着されているように例示されているが、この限りではない。なお、上記した構造要素は基礎母台26の表面に配置されている。同図(a)の状態で、構造要素10と絶縁層11の中央部分をエッチングなどの手法により選択的に除去すると、同図(b)の状態となる。同図において、電極構造要素12と、振動構造要素13とは、距離d1を介して対向配置されている。なお、距離d1は前記した「選択的に除去」する際に「指定された第1の距離」として当該エッチング時のマスクにパターニングされている。電極構造要素12は、絶縁層14を介して、前記スライダ20と連結している。また、振動構造要素13は、絶縁層15を介して、基台部25と連結している場合が示されている。同図(c)は、前記スライダ20を指定された方向(図面では右方向になる)へ移動させ、前記突起22が基台部25に接触した状態を示している。かかる状態では、電極構造要素12と振動構造要素13とは「指定された第2の距離」(図中ではd2として表記)を介して対向配置されている。なお、「指定された第2の距離」は「指定された第1の距離」よりも小さい値である。また、「指定された第2の距離」は、5マイクロメータを超えない距離である。距離d2は前記した突起22の長さで決定され、当該長さを短くすれば、前記電極構造要素12と前記振動構造要素13との間に形成されたギャップの間隔を小さくできる。換言するならば、突起22が前記スライダ20の移動を所望の位置(ギャップ間隔が距離d2となる位置)で停止させる「ストッパ」として機能している。
図1では、「指定された第2の距離」に前記電極構造要素12を配置するため、突起22を利用している。しかしながら、当該突起22を使用せずに、前記スライダ20の移動に、当該スライダ20の位置を検出して該移動を制御する「フィードバック制御」などの手法を利用することも可能である。
前記した指定された第2の距離(図中ではd2で例示)はゼロを含んでいない有限な値である。すなわち、電極構造要素12と振動構造要素13とは接触せず、それぞれが電気的に絶縁されており、かつ、それぞれの、振動を含む機械的挙動が阻害されることはない。ただし、ストッパとして機能する突起22が、電極構造要素12あるいは振動構造要素13に設けられている場合(図示せず)には、(1)当該突起22を絶縁体で構成することにより電気的な絶縁性が確保され、(2)当該突起22が相手側に接触する面積を小さくすることにより前記機械的挙動が阻害されることを防止できる。かかる構成においても、前記突起22は「絶縁体」であるので、前記指定された第2の距離d2は電極構造要素12と振動構造要素13との間の距離を示すことになる。また、前記突起の大きさを設定することにより、前記指定された第2の距離として、5マイクロメータあるいはそれを超えない値、例えば1マイクロメータ以下に設定でき、狭いギャップ間隔を容易に実現できることになる。
前記した電極構造要素12と振動構造要素13の構成材料は金属とは限らず、シリコンなどの半導体、あるいは、樹脂などの絶縁体の表面に導電性を付与した材料などであっても良い。また、前記したスライダ20は、静電力、電磁力、超音波振動、あるいは、これらの組合せなどにより発生した力で、当該スライダ20をスライドさせる機構により移動する。かかる移動(スライド)は、前記電極構造要素12が、前記振動構造要素13に対向した姿勢を保ちながら、前記指定された第2の距離の位置まで直線的に移動することが一般的であるが、これに限らない。例えば、移動中における前記電極構造要素12の軌跡が、直線、円弧、ジグザグなどであっても構わない。また、前記「指定された方向」(図1では右方向)とは、「第1の距離」に前記電極構造要素が位置する状態から「第2の距離」に前記電極構造要素12が位置する状態へ、前記電極構造要素12が移動した最終的な状態との間の方向を示しているに過ぎない。
上記したように、本実施例では、電極構造要素12と振動構造要素13を「離れた」状態(前記指定された第1の距離)で加工し、当該加工が完了してから、当該電極構造要素12を移動させることにより「近接した」状態(前記指定された第2の距離)に配置することに特徴がある。もし、当該電極構造要素12と当該振動構造要素13とを「近接した」状態で加工せざるを得ない場合には、製造技術面からの制約が大きくなる。例えば、1マイクロメータ以下のギャップを直接形成しようとすると、広いギャップを形成する場合と比較して、加工時間が長くなり、また、その形状維持も困難になる傾向がある。本実施例によれば、かかる製造技術面からの制約を大幅に低減できることになる。
<MEMSデバイスの構成>
図2は、本発明を適用した実施例2を説明する図面である。同図では、シリコンを用いたMEMSデバイスへの適用例が例示されている。同図(a)と(c)はMEMSデバイスの平面構造を示している。また、同図(a)と(c)において、線分30、31とで示した部分の断面構造図を、それぞれ、同図(b)と(d)に示す。同図(a)と(b)は電極構造要素32と振動構造要素33とが「離れた」状態(図中においてd1で表記した「指定された第1の距離」である)を、同図(c)と(d)は電極構造要素32と振動構造要素33とが「近接した」状態(図中においてd2で表記した「指定された第2の距離」である)を示している。また、当該電極構造要素32と当該振動構造要素33とは「離れた」状態で加工が完了した(SOIウェーハを用いた加工プロセスの詳細は後述する)状態である。
(1)当該電極構造要素32はスライダ35と「連結」されているが、本実施例では、スライダ35の端部に当該スライダ35と同一構成要素として電極構造要素32が配置されている。すなわち、両者ともに同一のシリコン基板(SOIウェーハの場合にはデバイス層)から構成されている。
(2)当該スライダ35の中央領域(図中では「右下がりのハッチング」で表示)と当該電極構造要素32は、同図(b)と(d)に断面を示すように、空中に浮上している。当該スライダ35の中央領域は、その4つの端部に配置された「折れ線状」のビーム36で支えられ、かつ、当該4個のビームは4個の基台部37で固定されている。すなわち、当該スライダ35は、浮上した領域(「右下がりのハッチング」で表示)と固定された基台部37(「濃い灰色」で表示)とから構成されている。
(3)当該スライダ35の一部は「櫛型電極」を構成している。この櫛型電極は、他の櫛型電極38(全てが「固定」されている)と対向して配置されている。これらの櫛型電極間に直流電圧を印加すると、同図(c)の矢印39で示した方向に、前記スライダ35の浮上した領域が移動する。すなわち、本実施例では、櫛型電極を用いた静電駆動アクチュエータで、当該スライダ35のスライド機構を構成している。かかるスライド機構では、印加された直流電圧の大きさにより、前記スライダ35の移動量が決定される。このため、電極構造要素32と振動構造要素33との間の距離が「指定された第2の距離」と一致するように、当該直流電圧の大きさが制御されている。
(4)前記した4本のビーム36は、前記スライダ35を空中に浮上させるとともに、当該スライダ35の移動に伴い当該浮上を維持するための機能を有している。図中では「4本」を例示したが、当該機能を有するために、ビーム36の本数は4本に限られることはない。また、「折れ線状」として「6か所の曲がりコーナ」を例示したが、このコーナの数、あるいは、ビーム36の形状は同図に示した例に限られることもない。当該スライダ36の移動を妨げないような、ビーム形状とコーナの数などが選択されて良い。
(5)本実施例では、振動構造要素33は絶縁層40を介して、基台部41に固定されている。
(6)基台部37、41はパッケージなどの基礎母台(図示せず)上に配置されている。
図2に示した実施例2では、「離れた」状態で加工された、電極構造要素32と振動構造要素33とが、スライダ35のスライド機構により、互いに「近接」配置されることが示された。
<静電アクチュエータの動作>
図3は、前記した実施例2に記載した静電アクチュエータの動作を説明する図である。同図において、図2と同一番号は同一構成要素を示している。また、説明の便宜上、図2とは上下逆転して図が描かれている。さらに、前記したスライダ35の一部(一つの櫛歯型電極群)と、固定されている一つの櫛歯型電極群38のみが示されている。また、前記ビーム36が前記基台部37に固定されている部分と、前記した浮上している櫛型電極と「固定」されている櫛型電極38の一部とが、図中の丸印で拡大表示されている。拡大表示された図には、A−A’とB−B’が表示されており、それらの構造断面図は同図(b)に示されている。同図(b)のA−A’部断面図ではビーム36と基台部37とが同一のシリコン材料(より詳細にはSOIウェーハのデバイス層)で構成されていること、および、B−B’部断面図では35が浮上しており手前から奥へ、あるいは、奥から手前へと移動できることが示されている。同図(c)では、前記した「固定」された櫛歯型電極38と、浮上しているスライダ35の一部である櫛歯型電極との間に直流電圧45を印加し、矢印46の方向に前記スライダ35が移動することが示されている。当該移動の距離は直流電圧45の大きさに依存しており、その移動量は直流電圧45の大きさで決定される。
<MEMSデバイスの構成−2>
図4は、前記したスライダのスライド機構に電磁力(ロレンツ力)を利用した実施例3を示す図である。同図において、図2と同一番号は同一構成要素を示している。同図(a)と(c)はMEMSデバイスの平面構造を示している。また、同図(a)と(c)において、線分50、56とで示した部分の断面構造図を、それぞれ、同図(b)と(d)に示す。同図(a)と(b)は電極構造要素32と振動構造要素33とが「離れた」状態(図中においてd1で表記した「指定された第1の距離」である)を、同図(c)と(d)は電極構造要素32と振動構造要素33とが「近接した」状態(図中においてd2で表記した「指定された第2の距離」である)を示している。同図(a)において、スライダ35の表面には導電路51が配置され、矢印52で示した方向に直流電流(I)が流れるようになっている。同図(a)では2つの導電路が例示されているが、その数および形状には制限されることはない。また、当該導電路は、ビーム36に沿って延長して配置され、基台部37の領域で外部電源(図示せず)に接続される手段を有している。当該直流電流がゼロの時、電極構造要素32と振動構造要素33との距離は前記「指定された第1の距離(距離d1)」となっている(同図(b)の状態)。また、磁界53は、前記スライダ35の表面側(図では手前側)から裏側(図では奥側)へ印加されている。かかる一様な磁界53(その強度はH)が印加されると、スライダ35には、矢印54の方向へ移動するような力(F)が発生する。フレミングの法則によれば、F=H×Iで定義され、力は直流電流Iと磁界の強さHに比例することが周知である。この結果、同図(c)に示すように前記スライダ35は移動することになり、Fとビームの変形に伴う反力とが釣り合った状態で停止する。この状態では、当該電極構造要素32と振動構造要素33との間の距離が前記「指定された第2の距離(距離d2)」になっている(同図(d)の状態)。すなわち、電極構造要素32と振動構造要素33の距離が距離d2となるように、前記直流電流あるいは磁界53の強さが設定されることになる。
図4に示した実施例3では、「離れた」状態で加工された、電極構造要素32と振動構造要素33とが、電磁力を利用した、スライダ35のスライド機構により、互いに「近接」配置されることが示された。
<MEMSデバイスの構成−3>
図5は、前記したスライダ35のスライド機構に超音波振動を利用した実施例4を示す図である。同図において、図2と同一番号は同一構成要素を示している。同図(a)と(c)はMEMSデバイスの平面構造を示している。また、同図(a)と(c)において、線分60、62の一点鎖線で示した部分の断面構造図を、それぞれ、同図(b)と(d)に示す。同図(a)と(b)は電極構造要素32と振動構造要素33とが「離れた」状態(図中においてd1で表記した「指定された第1の距離」である)を、同図(c)と(d)は電極構造要素32と振動構造要素33とが「近接した」状態(図中においてd2で表記した「指定された第2の距離」である)を示している。同図(a)において、スライダ35の下部には超音波振動機構61が配置されており、図示されていない駆動手段により振動している。かかる振動は、同図(a)の矢印64で示す方向に、スライダ35の移動を誘起する。この結果、同図(c)に示すように、電極構造要素32は振動構造要素33に近づいて、前記「指定された第2の距離(距離d2)」の位置(同図(d)の状態)に移動する。しかしながら、超音波振動による移動は、振動手段(例えば超音波振動機構61)と移動させる対象(例えばスライダ35)とは近接配置されてはいるが、非接触の状態であることが特徴である。このため、もし、ビーム36の変形により発生した反力(スライダ35を元の位置に戻そうとする力となる)が大きいと、超音波振動を停止した瞬間に、スライダは前記「指定された第1の距離(距離d1)」の位置(同図(b)の状態)まで復帰することになる。この復帰を防ぐためには、超音波振動を常時与え続けることが必要となる。あるいは、スライダ35の復帰を阻止するような「ロック機構」(図示せず)をスライダ35に付与することが必要となる。
<MEMSデバイスの構成−4>
図6に示した実施例5は、前記したスライダ35のスライド機構に静電アクチュエータを利用した他の実施例である。同図において図2と同一番号は同一構成要素を示している。同図(a)と(c)はMEMSデバイスの平面構造を示している。また、同図(a)と(c)において、線分30、31とで示した部分の断面構造図を、それぞれ、同図(b)と(d)に示す。本実施例においては、スライダ35に付属している櫛型電極に対向して、左右1組の固定された櫛型電極70と71とが配置されている。また、電極構造要素32と振動構造要素33とは対向して配置されているが、その対向面は「平行」ではなく、大略距離d1の距離のギャップ72を介して配置されている。かかる非平行な状態は、当該MEMSデバイスの製造過程で発生したり、あるいは、当該MEMSデバイスが回転する環境に置かれている場合などで発生する。特に、後者の場合では、当該MEMSデバイスの製造過程で非平行が発生しなくても、当該MEMSデバイスが設置される環境(例えば、自動車のタイヤ近傍に設置されるような環境である)によっては、慣性力により当該スライダに回転力が発生する。本実施例においては、かかる非平行な状態になっても、左右に配置され、個別に駆動される静電アクチュエータ(櫛型電極70、71を含む)により、当該非平行が補正される。すなわち、左右1組の静電アクチュエータへ印加する直流電圧を個別に制御することにより、スライダ35の動きに若干の回転を付与することができる。この結果、同図(c)に示すように、電極構造要素32と振動構造要素33とを、距離d2の距離のギャップ73を介して「平行」に配置することができる。なお、本実施例においても、電極構造要素32と振動構造要素33とは「離れた」状態(図中においてd1で表記した「指定された第1の距離」である)で製造され、静電アクチュエータの駆動により、電極構造要素32と振動構造要素33とが「近接した」状態(図中においてd2で表記した「指定された第2の距離」である)に設定されている。
<MEMS共振器の構成−1>
図7はMEMS共振器80に適用した実施例6を示している。本実施例においては、スライダ35の移動が静電アクチュエータで行われる場合が示されているが、前記したような各種の駆動手段で移動させても構わない。同図において図2と同一番号は同一構成要素を示している。同図(a)と(c)はMEMS共振器80の平面構造を示している。また、同図(a)と(c)の線分84、85とで示した部分の断面構造図を、それぞれ、同図(b)と(d)に示す。同図(a)において、MEMS共振器80は、スライダ35に「連結」された電極構造要素32と、振動体(本実施例では「振動ビーム81」である)と、81の両端を固定する基台部82、83とで構成されている。すなわち、本実施例においては、前記振動構造要素は、(1)該振動構造要素の指定された領域である振動ビーム81と、(2)当該振動ビーム81の領域を含まない該振動構造要素の領域である基台部82、83(振動しない)、で構成されている。なお、電極構造要素32は当該振動ビーム81を振動させるための駆動電極として作用する。同図(a)と(b)に示すように、電極構造要素32と振動ビーム81とは「離れた」状態(図中においてd1で表記した「指定された第1の距離」である)で作成されている。また、電極構造要素32と振動ビーム81は、静電アクチュエータなどの駆動手段により、同図(c)と(d)に示すように、「近接した」状態(図中においてd2で表記した「指定された第2の距離」である)に設定される。同図(c)では、静電アクチュエータへ印加される直流電圧と、電極構造要素32と振動ビーム81との間に供給される直流バイアス87が重畳された高周波信号88が併せて記載されている。当該直流バイアス87は、当該電極構造要素32に印加される信号の瞬時値が常にプラスであるように、当該高周波信号88の振幅値に応じて設定されている。この理由としては、静電気力を利用したMEMS共振器80では、当該印加される信号の電圧が正電位であっても負電位であっても、誘起される力は同じであるため、当該高周波信号88の2倍の周波数で振動が起こることを防止するためである。
図7に例示したような振動ビーム型のMEMS共振器80では、機械振動を電気信号(ここでは静電容量の変化)として検出している。機械系と電気系とは「電気機械結合係数」で関連付けられており、該係数は「機械振動と電気信号の変換効率」でもある。本段落では、図8を用いて当該「電気機械結合係数」の説明を行う。図8に関係する式を示したが、「電気機械結合係数」を増大させるためには、対向面積(S)を大きく、対向面間の距離(d)を小さく、印加電圧(V、直流バイアス87に相当)を大きくすることが必要である。特に、「電気機械結合係数」はdの2乗に逆比例しているので、振動ビーム81と駆動電極(電極構造要素32)間の距離を小さくすることが有効である。また、振動ビーム81と駆動電極とが対向する面積を大きくすることも有効な手段である。なお、MEMS共振器80の高周波化を図る場合には、必然的に当該振動ビーム81を小さくする(共振周波数を高くする)ことになり、対向面積(S)も小さくなる。この結果、得られる電気信号も小さくなるので、対向面間の距離(d)を減少させることが必須な課題となっている。
図9は実施例6のMEMS共振器80の電気機械的動作を説明する図である。同図において、図7と同一番号は同一構成要素を示している。同図(a)は図7(c)と同一であり、図中のA−A’とB−B’で示した一点鎖線に沿った構造断面図が同図(b)と(c)に示されている。同図(a)において、直流電圧90、91は静電アクチュエータを駆動するものであり、矢印92は当該直流電圧90、91によってスライダ35が動く方向である。当該直流電圧90、91によって、電極構造要素32(振動ビーム81に対向する配置された駆動電極である)と、振動ビーム81とは「近接した」状態に設定されている。同図(c)に示すように、振動ビーム81には、直流バイアス87が重畳した高周波信号88が供給されており、この高周波信号88によって当該振動ビーム81は同図(a)の上下方向に振動している。矢印93で示した方向で、当該高周波信号88から見た電気等価回路を同図(d)に示す。当該振動ビーム81の振動は、電気的にはC0、R1、C1、L1の4つの回路素子からなる共振回路系に対応している。
図9では、機械的に動く機構が2つ示されている。一つは、スライダ35の動きであり、他の一つは振動ビーム81の振動である。すなわち、MEMS共振器80には、2つの異なる機械的な振動機構が含まれている。このため、当該2つの機械的な機構の周波数特性の設定が重要となる。例えば、スライダ35が高周波信号88に反応して動くと、本来の振動ビーム81へ供給されるべきエネルギが当該スライダ35の動きに消費され、振動ビーム81が効率良く振動することができなくなる。かかる不具合を防止するために、振動ビーム81が振動する周波数と比較して、スライダ35の共振周波数を十分に低くすることが必要となる。一例として挙げるならば、スライダ35の共振周波数を100Hz程度に設定すれば、高周波で振動する振動ビーム81の動きを妨げることがなくなる。このような設定にしても、機械振動系には高次の共振が観測されるが、当該高次の共振の振幅は小さいので、振動ビームの本来の動きを阻害することはない。スライダ35の共振周波数を低くするためには、スライダ35の重量を重くしたり、スライダを支えるビーム36を柔らかく(例えば細く)するなどの手段がある。なお、ビーム36の剛性は、静電アクチュエータの効率(直流電圧90に対するスライダ35の移動量)にも関連しているので、当該MEMS共振器への要求仕様(周波数帯など)に応じて設定される必要がある。
<MEMS共振器の製造プロセス>
図10は実施例6で示したMEMS共振器80の製造プロセスを説明する図である。同図には、前記スライダ35を支えるビーム36の「付け根」部と、静電アクチュエータの浮上した櫛型電極と固定された櫛型電極の一部(共に図中の丸印内に表示)に対して、各製造プロセスでの構造断面図が示されている。すなわち、同図(a−1)から(e−1)が前記「付け根」部分、(a−2)から(e−2)が櫛型電極の部分に対応している。同図(a−1)と(a−2)において、基板層100、デバイス層101、酸化膜層102は、それぞれSIO基板を構成する要素である。ウェーハの直径にも依存するが、通常の厚さとして例示すると、基板層100は250マイクロメータ、デバイス層101は20マイクロメータ、酸化膜層102は1マイクロメータである。第1のマスク層103はデバイス層101の表面にパターニングされたものである。当該第1のマスク層103は必ずしも一様に塗布された有機材料からなる1層のフォトレジストとは限らない。例えば、(1)デバイス層の表面に一様にクローム層を形成し、(2)当該クローム層の表面にフォトレジストを塗布し周知の手法でパターニングし、(3)パターニングされた当該フォトレジスト層をマスクとして、前記クローム層をパターニングし、(4)当該フォトレジスト層を除去しクロームパターンを露出させるといった複数段のプロセスを採用することもできる。同図(b−1)と(b−2)は、当該第1のマスク層103をマスクとしてデバイス層101の一部がエッチングで除去された構造を示している。領域104はデバイス層101がエッチングで除去され、酸化膜層102が露出した領域である。かかるデバイス層101のエッチングには、多くの液体あるいは気体が利用されるが、代表例としては、反応性イオンエッチング(RIE)がある。次に、同図(c−1)と(c−2)に示すように、基板層100の裏面に、第2のマスク層105を形成する。当該第2のマスク層105も、前記した第1のマスク層103と同様に形成される。基板層100の第2のマスク層105が覆われていない領域は前記した手法によりエッチング除去される。同図(d−1)と(d−2)には、当該エッチング除去により、酸化膜層102の下面が露出した領域106が示されている。次に、露出した酸化膜層102をエッチング除去すると、同図(e−1)と(e−2)に示すような構造が得られる。当該酸化膜層102のエッチングには沸酸系の湿式エッチングや乾式エッチングが利用される。同図において、領域107はスライダを支えるビームの領域、領域108は固定されている櫛型電極38の領域、領域109は浮上している櫛型電極の領域である。
図10には明示されていないが、振動体(振動ビーム81)、および、振動ビーム81の両端を固定する基台部82、83は同様な製造プロセスで作成される。すなわち、振動ビーム81は図10(e−2)での領域109と同様に、また、基台部82、83は図10(e−2)での領域108と同様に作成される。以上のプロセスによりMEMS共振器80が作成される。なお、図10は製造プロセスを例示しているが、当該MEMS共振器80の製造プロセスはこれに限らない。例えば、デバイス層101の加工を先に行い、基板層100の加工を後にするといったことも可能である。
図10に例示したプロセスでは、第1のマスク層103と第2のマスク層105が、それぞれ、SOIウェーハの表面と裏面に、別プロセスで形成されることになる。第2のマスク層105のパターニングには、当該第1のマスク層103のパターンと空間的な位置合わせが必要となり、一般的には赤外線を用いた両面露光機が使用される。当該両面露光機では、シリコン層を透過する赤外線により表面側のパターン(第1のマスク層103のパターン)を観察することができ、該パターンに合わせて裏面側のパターン(ガラスマスクに形成されている第2のマスク層105パターン)の位置を決めることができる。かかる位置決めの精度は使用する両面露光機の性能に依存するが、一般的には1マイクロメータ程度の精度を得ることができる。しかしながら、図10に示したプロセスでは、当該MEMS共振器80を構成する各要素(電極構造要素32、振動ビーム81、櫛型電極など)の形状が前記した第1のマスク層103で決定されることが明らかである。このため、上述した両面露光機の精度に制限されずに各要素の形状を作成することができることになる。
<ストッパの構成−1>
図11はMEMS共振器に適用した本発明の実施例8である。「指定された第1の距離」(「離れた」状態である)を介して作成された前記電極構造要素32(例えば駆動電極)と振動構造要素(例えば振動ビーム81)を、静電アクチュエータなどの機構により、「指定された第2の距離」(「近接した」状態である)まで移動させ、当該第2の距離に停止させるための一手法に、ストッパの使用がある。なお、前記した実施例1では突起22として記載されている。同図(a)は図7に示したMEMS共振器80の主要要素を示しており、図7と同一番号は同一構成要素を示している。同図(b)と(c)は、同図(a)の線分111で示した線に沿った断面構造図である。また、同図(a)と(b)は「離れた」状態を、同図(c)は「近接した」状態を示している。同図(a)において、突起110は、電極構造要素(駆動電極)32に配置されたストッパとしての突起である。同図(b)に示すように、突起110の大きさは、前記した「指定された第2の距離」(距離d2)と等しく設定されている。このため、図示していない静電アクチュエータなどにより電極構造要素32が同図(a)の上方向に移動すると、電極構造要素32と振動ビーム81間の距離は、移動前は前記「指定された第1の距離」(距離d1)であり、移動後は前記「指定された第2の距離」(距離d2)となる。当該突起110は振動ビーム81の一部と接触することになるが、その接触は「点接触」であるので、当該振動ビームの振動には影響を及ぼさない。なお、突起110の形状は、半径が距離d2、高さは電極構造要素32の厚さ(デバイス層の厚さ)であるような半円柱形状として表示されているが、これに限らない。例えば、突起110の高さが電極構造要素32の厚さよりも小さく、当該電極構造要素32の厚さ方向の一部に配置されていても良い。また、実施例6で示したように、電極構造要素(駆動電極)32と振動ビーム81の間には、直流バイアス87が重畳された高周波信号88が印加されているので、同図(c)に示した状態であっても、電極構造要素32と振動ビーム81とが電気的に絶縁されていることが必要である。かかる電気絶縁性を確保するための一手法としては、当該突起110を絶縁材で構成したり、当該突起110の表面を絶縁層で被覆することが挙げられる。さらに、当該突起110の数は2個に限らず、1個以上であれば良い。
なお、図11に例示した構成では、振動ビーム81の長さが見かけ上変化することがある。例えば、振動ビーム81に対して突起110を押しつける力が強い場合には、振動ビーム81の長さが短くなり、共振周波数が高くなる。かかる場合には、振動ビーム81の実効的な長さ(線分111間の距離、図中のLで示す)が所望の長さとなるように、振動ビーム81全体の長さ(振動ビームを支える基台部82、83間の距離)を大きく設定することで、当該突起110の接触の影響を避けることが可能となる。
<ストッパの構成−2>
図12は図7に示したMEMS共振器80に適用した実施例9であり、ストッパとしての突起120の構成を示している。同図において、図11と同一番号は同一構成要素を示している。同図(b)と(c)は、同図(a)の線分121に沿った断面構造図である。また、同図(a)と(b)は「離れた」状態を、同図(c)は「近接した」状態を示している。同図(a)において、突起120は、振動ビーム81(振動構造要素でもある)に配置されたストッパとしての突起である。同図(b)に示すように、突起120の大きさは、前記した「指定された第2の距離」(距離d2)と等しく設定されている。このため、図示していない静電アクチュエータなどにより電極構造要素32が図面の上方向に移動すると、振動ビーム81と電極構造要素32間の距離は、移動前は前記「指定された第1の距離」(距離d1)であり、移動後は前記「指定された第2の距離」(距離d2)となる。当該突起120は電極構造要素32(駆動電極でもある)の一部と接触することになるが、その接触は「点接触」であるので、当該振動ビーム81の振動には影響を及ぼさない。なお、突起120の形状は、半径が距離d2、高さは振動ビーム81の厚さ(デバイス層の厚さ)であるような半円柱形状として表示されているが、これに限らない。例えば、突起120の高さが振動ビーム81の厚さよりも小さく、当該振動ビーム81の厚さ方向の一部に配置されていても良い。また、実施例6(図7)で示したように、振動ビーム81と電極構造要素32(駆動電極)の間には、直流バイアス87が重畳された高周波信号88が印加されているので、同図(c)に示した状態であっても、振動ビーム81と電極構造要素32とが電気的に絶縁されていることが必要である。かかる電気絶縁性を確保するための一手法としては、当該突起120を絶縁材で構成したり、当該突起120の表面を絶縁層で被覆することが挙げられる。
<ストッパの構成−3>
図13はMEMS共振器に適用した本発明の実施例10であり、ストッパとしての突起135の構成とその作成方法を示している。本実施例では、当該突起135がスライダ35側に配置されている場合(実施例8)に対応して記載されているが、当該突起135の配置位置はこの限りではない。同図(a)において、突起母体130は、シリコンなどを素材とし、スライダ35に連結した電極構造要素32の端部に配置され、先端部131が尖った突起母体であり、平面図として示されている。当該突起母体130の厚さは電極構造要素32の厚さと等しいが、必ずしもこの限りではない。同図(b)は、同図(a)に示した構造体の表面を酸化した図である。酸化プロセスにより、当該突起母体の上面と側壁面とは、均等な厚さを有する酸化シリコン層132に変化する。しかし、先端部131では、幅が細くなっているため、酸化シリコン層132への変化が早く、その結果、先端部近傍では、酸化せず残存した突起母体は丸く(先端部133で示す)なる。同図(c)は同図(b)に示した構造体の酸化シリコン層をエッチング除去した後の当該突起母体の形状である。かかる形状では、当該突起母体130の表面にシリコン層(デバイス層)が露出している。当該突起母体130の表面に電気絶縁性を付与する場合には、酸化プロセスで、酸化シリコン層134を形成することにより同図(d)に示したような形状にすることができる。同図(d)は作成された突起135であり、その大きさが図中にd2として表示されている。
なお、ストッパとしての突起135の大きさは、(1)突起母体130の大きさと形状、(2)酸化プロセスの条件(処理温度、雰囲気、時間)、(3)酸化プロセスと形成された酸化シリコン層132のエッチング除去の繰り返し回数などを適宜設定することにより、最終的に突起135の大きさが「指定された第2の距離」と等しい値(距離d2)になるようにされる。すなわち、同図(b)と(c)で示された「酸化シリコンへの変化」と「酸化シリコンのエッチング除去」を複数回繰り返して、所望の距離d2を得ることもある。
<ストッパの構成−4>
図14は図7に示したMEMS共振器80に適用した本発明の実施例11であり、ストッパとしての突起140の他の構成を示している。同図において、図12と同一番号は同一構成要素を示している。なお、説明の便宜上、同図では電極構造要素32と振動ビーム81とが「離れた」状態であるかのように示されている。同図において、突起140は電極構造要素(駆動電極)32に設けられた突起である。同図(a)は振動ビーム81が1次の共振モードで振動している場合であり、その振動の「節」の領域に当該突起が接触するように配置されている。一方、同図(b)は振動ビーム81が3次の共振モードで振動している場合であり、その振動の「節」の領域に当該突起が接触するように配置されている。いずれの場合においても、「節」の領域では振動の振幅は小さい(理論的にはゼロであり、あたかも「節」が固定されているかのように見える)ので、当該突起が接触しても振動ビームの動作に影響を与えることはない。MEMS共振器では、いずれの次数の共振モードを利用するかはシステム要件として設定されているため、その次数に相当する「節」の領域に当該突起を接触させることが可能である。すなわち、当該突起140の数は2個とは限らないことになる。
<ストッパの構成−5>
図15は図7に示したMEMS共振器80に適用した本発明の実施例12であり、ストッパとしての突起151の他の構成を示している。図において、図7と同一番号は同一構成要素を示している。同図(a)は、電極構造要素32と振動ビーム81とが「離れて」いる状態に対応している。図において、スライダ150は電極構造要素32と連結したスライダで、突起151が端部に設けられている。ストッパ受け152は突起151が接触して当該スライダ150の移動を停止させるものであり、基台部82、83と同様な構造を有している。同図(a)の線分153、154で示した一点鎖線に沿った構造断面図が、それぞれ、同図(b)と(c)、同図(d)と(e)に示されている。同図(b)と(d)は電極構造要素32と振動ビーム81間の距離が前記「指定された第1の距離」の場合であり、同図(c)と(e)は電極構造要素32と振動ビーム81間の距離が前記「指定された第2の距離」の場合である。図示されていない静電アクチュエータなどの機構により、スライダ150は移動するが、その移動は当該突起151が当該「ストッパ受け」152と接触すると停止する。ここで、当該突起151の大きさを前記「指定された第2の距離」(距離d2)に設定しておくことにより、前記電極構造要素32と振動ビーム81との間の距離は距離d2と等しくなる(図15(b)から(e)に示す)。
本実施例においては、当該突起151が振動ビーム81に接触することがないため、当該振動ビーム81の振動を阻害する可能性はないという特徴がある。なお、厳密に記すならば、「近接した」状態での電極構造要素32と振動ビーム81の間の距離は、当該突起151の大きさd2とは一致しない。該距離と距離d2との差異は、当該MEMS共振器の作成に使用する半導体プロセスのパターン精度に依存している。しかしながら、近年の半導体プロセスでは、パターニング精度が改良されており、0.1マイクロメータ以下の精度が確保されているので、かかる不一致は大きな問題とはならない。もし、さらに一致の精度を向上させる場合には、半導体プロセスでのパターニング精度を考慮したパターン設計や、突起151の製造方法(例えば実施例10)などにより、精度の一層の向上が可能である。
また、前記突起110、120、135、140、151の配置領域については、前記電極構造要素32、前記振動ビーム81、あるいは、前記スライダ35といった構成要素の領域に限ることがなく、これらの構成要素を組み合わせた複数の領域に配置されていても良い。さらに、当該突起110、120、135、140、151の形状についても、半円柱状とは限らない。
<MEMS共振器の構成−2>
図16はMEMS共振器に適用した本発明の実施例13であり、図7と同一番号は同一構成要素を示している。同図(a)はMEMS共振器の平面構造図である。同図(b)と(c)は線分245で示した部分の断面構造図を、同図(d)と(e)は線分246で示した部分での断面構造図をそれぞれ示している。また、同図(b)と(d)は電極構造要素32と振動ビーム81との間の距離が距離d1である場合、同図(c)と(e)は電極構造要素32と振動ビーム81との間の距離が距離d2である場合がそれぞれ示されている。同図(a)において、電極構造要素32と連結したスライダ240は、ビーム241を介して基台部242に接続されている。スライダ240(電極構造要素32を含む)とビーム241は浮上しており、同図(a)の上下方向(紙面上での上下方向)に移動可能な構造となっている。スライダ240を支えるビーム241の形状は、3本の線状で例示されているが、当該形状はこれに限らない。電極243は固定されている電極であり、距離d3離れて、スライダ240と対向して配置されている。当該電極243とスライダ240は、直流電圧247が印加されている。なお、直流電圧247は片側の電極243にのみ印加されている図が示されているが、スライダ240の両側に配置された2つの電極243に同時に印加されていることが好ましい。当該直流電圧247が0ボルトである時には、スライダ240と電極243との間の距離は距離d3であり(同図(d))、振動ビーム81と電極構造要素32との間の距離は距離d1である(同図(b))。一方、当該直流電圧247が数ボルト以上の電圧を発生する場合には、スライダ240は電極243側に吸引され、スライダ240と電極243は「接触」し(同図(e))、振動ビーム81と電極構造要素32との間の距離は(距離d1−距離d3)となる。同図(c)に示すように、距離d1と距離d3との距離の差が「指定された第2の距離」(すなわち距離d2)となる。換言するならば、距離d3の大きさを「指定された第1の距離」と「指定された第2の距離」との差に等しくなるように設計する。なお、同図(e)の境界領域250は、前記「接触」状態での、スライダ240と電極243との境界領域を示している。かかる領域には絶縁体が存在して、スライダ240と電極243との接触による大電流が前記直流電圧247に流れないようになっている。かかる状況は、スライダ240あるいは電極243の対向する側面が共に、酸化膜などで被覆することにより容易に実現される。本段落に記載した実施例では、図7の示した実施例とは異なり櫛型電極(例えば櫛型電極38)を必要としていない。直流電圧247が、スライダ240と電極243に静電界を発生させ、当該静電界がスライダ240を振動ビーム81側へ引き寄せることで、前記「指定された第2の距離」を実現している。なお、かかる静電界による吸引力は距離d3に依存するので、当該距離d3を可能な限り小さく設計することにより、当該直流電圧247の値を小さくすることが可能である。さらに、同図(a)において、振動ビーム81と電極構造要素32との間には、直流バイアス249が重畳された高周波信号248が印加されている。すなわち、高周波信号248が振動ビーム81を振動させ、MEMS共振器が実現されている。
図16(a)の実施例では、前記した「ストッパ」の機能を、当該「接触」により実現している。かかる「ストッパ」の構成法は、図15に示した実施例12と類似している。しかしながら、スライダ240を移動させるための電極243が、前記したストッパ受け(図15のストッパ受け152)を兼ねていることが異なっている。また、スライダ240が電極243に対向する側面に突起(図15の突起151に相当)を設けても良い。さらに、当該突起を、電極243に対向するスライダ240側面に設けても良い。
<MEMS共振器の構成−3>
図17はMEMS共振器に適用した本発明の実施例14であり、図16と同一番号は同一構成要素を示している。同図(a)はMEMS共振器の平面構造図である。同図(b)と(c)は線分245で示した部分の断面構造図を、同図(d)と(e)は線分246で示した部分での断面構造図をそれぞれ示している。また、同図(b)と(d)は電極構造要素32と振動ビーム81との間の距離が距離d1である場合、同図(c)と(e)は電極構造要素32と振動ビーム81との間の距離が距離d2である場合がそれぞれ示されている。本実施例では、直流電圧256が、同図に示した直流電圧247と直流バイアス249を兼ねていることが特徴である。すなわち、直流電圧256は、スライダ240と電極243との間に吸引力を誘起すると同時に、振動ビーム81を駆動する高周波信号255に重畳される直流バイアスになっている。かかる構成によれば、MEMS共振器の駆動が簡便となる利点が発生する。
<MEMS共振器の構成−4>
図18はMEMS共振器に適用した本発明の実施例15であり、MEMS共振器の主要部分が示されている。また、図16と同一番号は同一構成要素を示している。同図(a)はMEMS共振器の平面構造図である。電極構造要素32と連結したスライダ260は、ビーム241を介して基台部242に接続されている。スライダ260(電極構造要素32を含む)とビーム241は浮上しており、同図(a)の上下方向(紙面上での上下方向)に移動可能な構造となっている。スライダ260を支えるビーム241の形状は、3本の線状で例示されているが、当該形状はこれに限らない。電極243は固定されている電極であり、スライダ260と対向して配置されている。この領域261を拡大した図が同図(b)である。当該領域に含まれるスライダ260には凹部263が設けられ、対向する電極243には凸部262が設けられている。当該凹部263と凸部262の形状は相補的であり、両者が近接して接触した場合には、「密着」する(同図(c)に示すような状態)ようになっている。同図(a)には明示していないが、外部から供給された直流電圧(図16の直流電圧247に相当)が誘起する吸引力により、スライダ260は電極243および振動ビーム81に向かって移動する。当該移動は、凹部263が凸部262に接触するまで続き、当該接触が発生した時点で、移動は停止する。本実施例では、スライダ260の左右両端に凹部が設けられ、1組みの電極243に凸部が配置されているので、前記移動が左右(図面上)にぶれても、最終的なスライダ260の位置は幾何学的に一定となる利点がある。すなわち、電極構造要素32と振動ビーム81との相互位置関係が一義的に定まる利点がある。
図18(b)はスライダ260が移動する前の前記凸部263と凹部262の位置関係を示している。同図(c)はスライダ260が移動した後の前記凸部263と凹部262の位置関係を示している。同図(b)において、前記凹部262がなす角度を2θ、前記凹部262と凸部263との間の距離(前記移動方向に沿った長さ)を距離d3、前記凹部263と凸部262との間の距離(最短距離)を距離d4とすると、
d4=d3×sinθ
の関係が成立している。すなわち、スライダ260が振動ビーム81に向かって移動する距離は距離d3となるので、前記した「指定された第2の距離(距離d2)」は
d2=d1−d4/sinθ
で決定される。すなわち、距離d1、距離d4、θを、上記関係を満たすように設定することが設計要因となる。なお、上式では、距離d3の代替として距離d4を採用しているが、これは製造のための露光マスクを設計する際、および製造プロセスの際に、「パターン間の間隙」がより重要になるからである。
<電極構造要素と振動ビームが対向する面積>
図19はMEMS共振器160に適用した本発明の実施例16であり、前記した電気機械結合係数を増大させるため、電極構造要素162(駆動電極)と振動ビーム163とが対向する領域の面積を大きくしていることに特徴がある。同図において、図7と同一番号は同一構成要素を示している。本実施例においては、スライダ161の移動が静電アクチュエータで行われる場合が示されているが、前記したような各種の駆動手段で移動させても構わない。同図(a)と(c)はMEMS共振器160の平面構造を示している。また、同図(a)と(c)の線分164、165とで示した部分の断面構造図を、それぞれ、同図(b)と(d)に示す。同図(a)において、MEMS共振器160は、スライダ161に「連結」された電極構造要素162(駆動電極)と、振動体(本実施例では「振動ビーム163」である)と、該振動ビーム163の両端を固定する基台部82、83とで構成されている。同図(a)と(b)に示すように、電極構造要素162と振動ビーム163とは「離れた」状態(図中においてd1で表記した「指定された第1の距離」である)で作成されている。また、電極構造要素162と振動ビーム163は、静電アクチュエータなどの駆動により、同図(c)と(d)に示すように、「近接した」状態(図中においてd2で表記した「指定された第2の距離」である)に設定される。同図(c)では、静電アクチュエータへ印加される直流電圧と、電極構造要素162と振動ビーム163との間に供給される直流バイアスが重畳された高周波信号が併せて記載されている。
実施例16では、同図(b)と(d)に示すように、当該MEMS共振器160の基台領域などは厚さがt0であるが、当該電極構造要素162と振動ビーム163の厚さは、デバイス層の厚さよりも大きく、かつ、t0よりも小さいt1となっている。前記した実施例6(図7)とは異なり、電極構造要素162と振動ビーム163には、SOI基板の基板層の一部が、特定の領域として、除去されずに残されている(同図では、それぞれ、基板層166と基板層167で示されている)。当該特定の領域である残された基板層166と電極構造要素162とは電気的に接続され、かつ、基台部の基板層168とは絶縁されている必要がある。同様に、当該特定の領域である基板層167とデバイス層163とは電気的に接続され、かつ、基台部の基板層168とは絶縁されている必要がある。かかる電気接続と絶縁について次の段落に記載する。
図20は実施例16の振動ビーム163、その基台部83、および電極構造要素162(駆動電極)の部分を拡大して、その構成を示す図である。同図において、図19と同一番号は同一構成要素を示している。同図(a)は平面図である。同図(a)の線分170、171の一点鎖線で示された部分の構造断面図が、それぞれ、同図(b)と(c)に示されている。同図(b)に示すように、基台部83には基板層を分離する溝172が設けられている。当該溝172により、振動ビーム163の領域にある基板層167と、基台部83の領域にある基板層174とは電気的に絶縁されている。また、振動ビーム163と基台部83を構成しているデバイス層175と当該基板層167とは、導電性のプラグ176により電気的に接続されている。当該プラグ176は、基台部83(一般的には、細い振動ビームよりも幅が広い)の領域にある前記デバイス層175に貫通穴を設け、当該貫通穴の内部に金属層などを埋め込むことにより形成される。さらに、同図(c)に示すように、電極構造要素162に対しても、導電性のプラグ177が設けられ、基板層166とデバイス層178とが電気接続されている。また、図示していないが、電極構造要素162は、これを支えるビーム領域(例えば図19でのビーム36)の基板層が全て除去されているので、基板層とは絶縁されている。
実施例16では、同図(b)と(c)に示すように、当該MEMS共振器160の前記基台領域などは厚さがt0であるが、当該電極構造要素162と振動体163の領域の厚さはt0よりも小さいt1となっている。前記した実施例6(図7)とは異なり、電極構造要素162と振動ビーム163には、SOI基板の基板層の一部が、前記特定の領域として、除去されずに残されている。この結果、電極構造要素162(基板層166も含めて)と振動ビーム163(基板層167も含めて)とが対向する面積が大きくなり、前記した電気機械結合係数を大きくすることができる。
<実施例16の製造プロセス>
図21は本発明の実施例17であり、実施例16に示したMEMS共振器160の製造プロセスを説明する図である。同図において、図10と同一番号は同一構成要素を示している。同図には、前記スライダ161を支えるビーム36の「付け根」部と、静電アクチュエータの浮上した櫛型電極と固定された櫛型電極38の一部(共に図中の丸印内に表示)に対して、各製造プロセスでの構造断面図が示されている。すなわち、同図(a−1)から(f−1)が前記「付け根」部分、同図(a−2)から(f−2)が櫛型電極の部分に対応している。同図において、基板層100、デバイス層101、酸化膜層102は、それぞれSIO基板を構成する要素である。ウェーハの直径にも依存するが、通常の厚さとして例示すると、基板層100は250マイクロメータ、デバイス層101は20マイクロメータ、酸化膜層102は1マイクロメータである。なお、図面では、SOI基板の当初の厚さがt0で表示されている。同図(a−1)では、当該基板の裏面(基板層100側)に第1のマスク層181が形成されてから、当該第1のマスク層181で被覆されていない領域の基板層100が全て除去される(同図(b−1))。次に、当該基板の裏面(基板層100側)に第2のマスク層182が形成されてから、当該第2のマスク層182で被覆されていない領域の基板層100の部分が除去され、前記した特定の領域の厚さが形成されるように加工される。この結果、SOI基板の裏面側は凹凸の形状となる(同図(d−2))。
なお、同図(b−1)と(c−1)では、マスク層181、182が異なる要素であるかのように図示されているが、この限りではない。例えば、(1)第1のマスク層181を酸化シリコン薄膜で形成(基板層100側が全面当該酸化シリコン薄膜で覆わる)し、(2)同図(a−1)で作成された当該酸化シリコン薄膜のパターンを第1のマスク層181として基板層100をエッチング除去し(同図(b−1))、(3)残っている当該酸化シリコン薄膜に対して新たに作成されたパターンを第2のマスク層182として基板層100の部分的なエッチングを行う(同図(d−2))ことが挙げられる。すなわち、当該酸化シリコン薄膜を2回に分けてパターニングする手法である。
続いて、図21(e−1)と(e−2)に示すように、SOI基板の表面側(デバイス層101の表面)に第3のマスク層183が形成される。当該第3のマスク層183は、当該SOI基板の裏面に形成された凹凸形状に合わせてパターニングされている。この第3のマスク層183をマスクとして、SOI基板の表面側から、デバイス層101のシリコン、該デバイス層101直下の酸化膜層102、該酸化膜層102直下の基板層100のシリコンがRIEなど周知の手法でエッチング除去され、同図(f−1)と(f−2)に示す形状が得られる。同図において、領域186はスライダ161を支えるビームの領域、領域187は固定されている櫛型電極38の領域(その厚さは当初のt0である)、領域188は浮上している櫛型電極の領域(その厚さはt1で表示されている)である。
なお、図21には明示されていないが、振動体(振動ビーム163)、および、該振動ビーム163の両端を固定する基台部82、83も同様な製造プロセスで作成される。すなわち、振動ビーム163は同図(f−2)での領域188と同様に、また、基台部82、83は同図(f−2)での領域187と同様に作成される。その後に、図20に記載したように、デバイス層101と基板層100との電気接続のためのプラグ176、177が設けられる。
かかる製造プロセスで作成されたMEMS共振器160(図19)では、電極構造要素162(駆動電極)の領域と振動ビーム163の領域の厚さがt1(一般的にはデバイス層101の厚さよりも大きい)になっている。すなわち、電極構造要素162(駆動電極)と振動ビーム163の対向面積は増大されており、前記した電気機械結合係数の増大を図ることができる。当該厚さ(t1)は、第2のマスク層182をマスクとして基板層100を部分的にエッチング除去するプロセスで決定される(図21(d−2))。電気機械結合係数の増大といった視点では、t1は限りなくt0(当初のSOI基板の厚さ)に近いことが望ましい。しかし、振動ビーム163や浮上している櫛型電極の機械的動きが、SOI基板面内だけではなく、SOI基板の厚さ方向にも動き、基台部37が搭載されている基礎母台(図示せず)と接触する場合がある。このため、例えば、大略10マイクロメータだけt0よりも小さく設定されることが望ましい。
なお、図21は製造プロセスを例示しているが、当該MEMS共振器160の製造プロセスはこれに限らない。例えば、基板層100の加工を、部分的なエッチング(同図(d−2))と同時に行い、さらに、残った基板層100を完全にエッチング除去するプロセスとしても良い。他にも、多くの変形があるが、一例として挙げるならば、マスク層形成時の目合わせ容易性やエッチング時のマスク耐性を考慮したプロセス、あるいは、特に前記第1のマスク層181と前記第2のマスク層182を2層構造にして当該マスク耐性を向上させたプロセスなどである。
<MEMS共振器の構成−2>
図22は本発明の実施例18であり、MEMS共振器の他の構成を示している。同図において、図7と同一番号は同一構成要素を示している。同図(a)は振動ビーム192と第1の電極構造要素199及び第2の電極構造要素196が「離れた」状態を、同図(b)は「近接した」状態を示している。本実施例によるMEMS共振器は、駆動系190と検出系191とが別個に配置されており、これらの間に共通の振動ビーム192が配置されている。当該振動ビーム192は両端が基台部193、194で固定されている。当該検出系191は、当該駆動系190と類似の構成である。同図(a)において、第1のスライダ198の端部には第1の電極構造要素199(駆動電極)が配置され、また、当該振動ビーム192とは指定された第3の距離(図中においてd3で示す)だけ離れて作成されている。第2のスライダ195の端部には第2の電極構造要素196(駆動電極)が配置され、また、当該振動ビーム192とは指定された第4の距離(図中においてd4で示す)だけ離れて作成されている。当該第1のスライダ198は、固定された櫛型電極38(第1のスライド機構を構成している)により、図面の上方(第1の方向である)へ移動させられる。この結果、第1の電極構造要素199(第1のスライダ198と連結している)と振動ビーム192との距離は、同図(a)のd3で示した「指定された第3の距離」から、同図(b)のd5で示す「指定された第5の距離」となる。当該第2のスライダ195は、固定された櫛型電極197(第2のスライド機構を構成している)により、図面の下方(第2の方向である)へ移動させられる。この結果、第2の電極構造要素196(第2のスライダ195と連結している)と振動ビーム192との距離は、同図(a)のd4で示した「指定された第4の距離」から、同図(b)のd6で示す「指定された第6の距離」となる。なお、同図では、前記第1のスライド機構と前記第2のスライド機構とが、共に静電アクチュエータで構成されている例が示されているが、他の駆動原理によるアクチュエータであっても構わない。以上により、当該第1のスライダ198と第2のスライダ195とは、1組の前記静電アクチュエータにより、当該振動ビームに共に近接するよう駆動され、同図(b)に示すような「近接した」状態になる。
図22で例示した「指定された第3の距離(距離d3)」、「指定された第4の距離(距離d4)」は、図2(実施例2)で記載した「指定された第1の距離(距離d1)」に対応しており、その設定方法(要素としての作成方法も含む)や距離の大きさなどについては同一である。また、同図で例示した「指定された第5の距離(距離d5)」、「指定された第6の距離(距離d6)」は、図2(実施例2)で記載した「指定された第2の距離(距離d2)」に対応しており、その設定方法(要素としての作成方法も含む)や距離の大きさなどについても同一である。
図7に例示した実施例6は、単一の振動ビーム81と単一の電極構造要素32(駆動電極)とからなるMEMS共振器80であり、外部から接続された高周波信号88で当該振動ビーム81が振動すると共に、当該高周波信号88から当該振動ビーム81に流れ込む高周波電流値を検出していた。すなわち、駆動系と検出系とが共通になっている構成であった。一方、図22に例示した本実施例では、駆動系190と検出系191とが分離している構成になっている。同図での検出系191は、電極構造要素196と振動ビーム192との間に形成された静電容量の変化量を電気信号として検出している。かかる「静電容量の変化量」は、オペアンプ増幅回路やスイッチド・キャパシタ回路などを用いて検出することができる。このように、本実施例では駆動系190と検出系191とが分離しているため、駆動系190の駆動条件(例えば、重畳される直流バイアス値)と、検出系191の検出条件(例えば、検出原理や回路構成)とを、それぞれ別個に最適化することができるという利点がある。
<MEMS共振器の構成−3>
図23は本発明の実施例19であり、MEMS共振器の他の構成を示している。同図において、図22と同一番号は同一構成要素を示している。同図(a)において、第2のスライダ195には、2個の電極構造要素200、201が連結されており、第2の駆動系205を形成している。すなわち、当該第2のスライダ195に連結した電極構造要素は「1個」ではなく、第2−1の電極構造要素200と第2−2の電極構造要素201とに分離配置されていることが特徴である。一方、第1のスライダ198には、第1の電極構造要素199(分離されておらず「1個」である)が連結されており、第1の駆動系204を形成している。これらの駆動系204、205は、共通の振動ビーム192を挟んで対向するように配置され、かつ、個別に配置された静電アクチュエータなどのスライド機構により可動となっている。同図(a)は当該第1の駆動系204、第2の駆動系205が共に「離れた」状態を示している。同図(b)は当該第1の駆動系204のみが図中の矢印で示す方向に動いて「近接した」状態になった場合を、同図(c)は当該第2の駆動系205のみが図中の矢印で示す方向に動いて「近接した」状態になった場合を、同図(d)は当該第1の駆動系204と第2の駆動系205とが共に図中の矢印で示す方向に動いて「近接した」状態になった場合を、それぞれ示している。また、振動ビーム192と第1の電極構造要素199の間、および、振動ビーム192と前記電極構造要素200と201の間には、前記したような、直流バイアスが重畳された高周波信号が印加されている。しかしながら、振動ビーム192と電極構造要素199、200、201とが「離れた」状態にあるときには、当該高周波信号で振動ビーム192が振動することはない。この理由は、かかる状態においては、振動ビーム192と電極構造要素199、200、201との距離が離れているため、電界強度が小さく振動を励起することができない(前記した電気機械結合係数が小さい状態である)からである。一方、振動ビーム192と電極構造要素199、200、201とが「近接した」状態にあるときには、当該高周波信号で振動ビームが振動する。すなわち、前記第1の駆動系204と前記第2の駆動系205とは、「近接した」状態にある場合にのみ、振動ビーム192が振動することになる。
図23(b)では、前記第1の駆動系204のみが「近接した」状態であるため、当該振動ビーム192は第1の電極構造要素199(駆動電極)により振動する。該振動の振幅が最大となるモードは当該振動ビーム192の1次の共振モードである。同図(c)では、前記第2の駆動系205のみが「近接した」状態であるため、当該振動ビーム192は、第2−1の電極構造要素200(駆動電極)と第2−2の電極構造要素201(駆動電極)とにより振動する。該振動の振幅が最大となるモードは当該振動ビーム192の2次の共振モードである。また、同図(d)では、前記第1の駆動系204と前記第2の駆動系205とが共に「近接した」状態であるため、当該振動ビーム192は第1の電極構造要素199(駆動電極)と、第2−1の電極構造要素200(駆動電極)と第2−2の電極構造要素201(駆動電極)とにより振動する。該振動の振幅が最大となるモードは当該振動ビームの3次の共振モードである。すなわち、図23の構成では、駆動系204、205の位置により、振幅が最大となる周波数を電気的に変化させることが可能である。
なお、図23では、電極構造要素199、200、201(駆動電極)などの配置される位置の一例が示されているに過ぎず、これらの配置位置には限らない。本段落では配置位置の変形例について記載する。
(1)例えば、第1の電極構造要素199を振動ビーム192の左端から1/3の位置に、第2−1の電極構造要素200を振動ビームの右端から1/3の位置に配置する(かかる構成では電極構造要素201は配置しない)ことにより、振動ビーム192の振動の振幅が最大となるモードを2次の共振モードにすることができる。
(2)例えば、第1の電極構造要素199を分離して2個の電極(便宜上、「第1−1の電極」と「第1−2の電極」とする)とし、前記第2−1の電極構造要素200(駆動電極)と前記第2−2の電極構造要素201(駆動電極)との配置の関係を、振動ビーム192に沿った両側に左側から順に、
「第1−1の電極、第2−1の電極、第1−2の電極、第2−2の電極」
となるようにする。かかる構成では、振動ビーム192の振動の振幅が最大となるモードを4次の共振モードにすることができる。上記した例のように、分離された電極構造要素の個数や、振動ビームとの相対的な配置位置を設定することにより、周波数の変化範囲を大幅に増大させることが可能である。図23には、図示した3個の電極構造要素199、200、201のセットにより、異なる共振モードで当該振動ビーム192を振動させることが示されたが、本実施例は同図の構成に限らず、多くの構成にも適用される。
なお、振動ビーム192には1次の共振モード以外にも高次の共振モードが存在し、かつ、高次の共振モードの大きさは前記した電極構造要素の配置により変化する。例えば、図23(b)と(c)では、1次のモードでの振幅に対する高次(例えば2次)のモードでの振幅の比は異なる。一般に高次のモードでの振幅は小さいが、高次のモードでの振幅が比較的大きい場合には、該モードを利用することも可能である。
実施例19では、単一の振動ビーム192に対して、1組の駆動系(第1の駆動系204及び第2の駆動系205)(駆動電極を含む)を配置し、これらの移動を制御することにより、共振周波数を変化できることが示された。
<MEMS共振器の構成−4>
図24は本発明の実施例20であり、MEMS共振器の他の構成を示している。本実施例においては、前記振動構造要素が単一ではなく、それぞれ長さが異なる2個の振動構造要素(ここでは「第1の振動構造要素」と「第2の振動構造要素」と称する)に分離されていることが特徴である。すなわち、前記振動構造要素は、振動ビームが長さの異なる2本(第1の振動構造要素(第1の振動ビーム212)と、第2の振動構造要素(第2の振動ビーム213)である)で構成され、それぞれが個別に振動する構成になっている。また、当該2個の振動ビーム212、213は共通の基台で固定されているが、この限りではない。同図において、第1の駆動系210は、スライダに連結した第1の電極構造要素215(駆動電極)と静電アクチュエータなどからなるスライド機構を有している。第2の駆動系211は、スライダに連結した第2の電極構造要素216(駆動電極)と静電アクチュエータなどからなるスライド機構を有している。これらのスライド機構は個別に制御されている。同図(a)は当該駆動系210、211が「離れた」状態であり、第1の駆動系210のみが「近接した」状態を同図(b)に、第2の駆動系211のみが「近接した」状態を同図(c)に、それぞれ、示す。また、直流バイアスが重畳された高周波信号などは省略されている。同図(a)では、第1の駆動系210と第2の駆動系211とが共に「離れた」状態にあるため、当該2個の振動ビームは振動しないことになる。同図(b)では「近接した」第1の駆動系210に連結している第1の電極構造要素215が、前記「第1の振動構造要素」である第1の振動ビーム212を振動させる。同図(c)では「近接した」第2の駆動系211に連結している第2の電極構造要素216が、前記「第2の振動構造要素」である第2の振動ビーム213を振動させる。当該振動ビーム212、213を、それぞれ異なった振動特性を有するように設定しておくと、同図(b)と(c)とでは、異なった周波数特性を得ることができる。なお、「異なった振動特性」を実現するために、同図では「長さが異なった振動ビーム」構成を採用しているが、この限りではない。例えば、同じ長さでもビームの厚さや幅を変えることもある。
図24(d)、(e)、(f)は、それぞれ、同図のMEMS共振器の電気的な等価回路である。同図(d)は同図(a)と、同図(e)は同図(b)と、また、同図(f)は同図(c)と、それぞれ対応している。2つの異なる電気的な共振回路が切り替えられることが示されている。なお、同図(d)では、当該MEMS共振器が動作しておらず、共振回路系が切り離されている状態である。従来の周波数切換え回路は、2つの異なる周波数特性を有する共振回路系を、半導体スイッチなどの回路素子で切り替えていた。しかしながら、かかる構成では、半導体スイッチのON時の特性(例えば、ON抵抗)やOFF時の特性(例えば、絶縁インピーダンス)が、当該切換え回路の特性を劣化させることが知られている。特に、高周波回路になると、当該半導体スイッチの特性も劣化するため、当該共振回路系の特性も劣化する。しかしながら、同図の構成では、2つの異なる周波数特性を有する振動系を、電極構造要素215、216の「離れた」状態と「近接した」状態とで切り替えているので、前記半導体スイッチに起因する特性劣化を防止できる。
図24では、当該駆動系210、211の移動を個別に制御することにより、2本の振動ビーム212、213のいずれかを振動させて異なる周波数特性を得ると共に、当該共振器系を切り離すこともできることが特徴である。
<MEMS共振器の構成−5>
図25は本発明の実施例21であり、MEMS共振器の他の構成、すなわち、ディスク型(円板形状)の共振器が示されている。同図において、図7と同一番号は同一構成要素を示している。図において、スライダ220は電極構造要素221(駆動電極)と連結されている。当該スライダ220は静電アクチュエータなどにより、図面の上下方向に動くことができる。また、ディスク222は振動することができるものであり、その形状は円形で、かつ、その中央部は基台部223で固定されている。当該ディスク222は、当該基台部223の領域を除き、浮上している。かかる構造は前記した製造プロセスと同様なプロセスで作成することができる。同図(a)は電極構造要素221とディスク222とが「離れた」状態を示しており、当該MEMS共振器を作成した直後の状態である。固定された櫛型電極38などにより、スライダ220は指定された方向(図では上向きの矢印で示す)に移動し、「近接した」状態が同図(b)に示されている。かかる状態では、電極構造要素221に印加された高周波信号により、当該ディスク222が振動する。なお、電極構造要素221の当該ディスク222に対向する面は曲面であり、同図(b)の状態で、当該ディスクとの間の距離が等しくなるような曲率を有していることが好ましいが、この限りではない。
図25では円板形状の「ディスク」型共振器が記載された。当該ディスク222の形状は円板形状に限らず、多角形の平板形状であっても良い。また、ディスク型共振器と類似した「リング型」共振器への適用であっても良い。当該「リング型」は、(1)同心円状のリング(ドーナッツと類似した形状)と、(2)該リングの直径方向に配置された、少なくとも2本から成る支持ビームと、(3)リング中央領域に配置され、該支持ビームが交差する領域を固定する基台部と、(4)該ビームを振動させる駆動電極としての電極構造要素、とから構成されている。かかる構成では、当該リングが振動構造要素の振動する領域となる。
図25に例示したように、本発明によれば、電極構造要素221と振動できるディスク222とを「離れた」状態で作成し、外部からの制御手段により「近接した」状態とし、当該電極構造要素221への高周波信号により当該ディスク222を振動させることができる。
<MEMS共振器の構成−6>
図26は本発明の実施例22であり、MEMS共振器の他の構成、すなわち、ディスク型(円板形状)の共振器が示されている。同図において、図25と同一番号は同一構成要素を示している。本実施例では、第1の駆動系230と第2の駆動系231とが、当該ディスク222の周辺に対向して配置されている。当該第1の駆動系230は、第1のスライダ232、これと連結した第1の電極構造要素233、固定された櫛型電極を有する静電アクチュエータなどから構成されている。当該第2の駆動系231は、第2のスライダ234、これと連結した第2の電極構造要素235、固定された櫛型電極を有する静電アクチュエータなどから構成されている。同図(a)は第1の電極構造要素233と第2の電極構造要素235が、当該ディスク222から「離れた」状態を示しており、当該MEMS共振器を作成した直後の状態である。固定された櫛型電極などにより、当該第1のスライダ232が指定された第1の方向(図では上向きの矢印で示す方向である)へ移動し、かつ、前記第2のスライダ234が指定された第2の方向(図では下向きの矢印で示す方向である)へ移動し、共に「近接した」状態が同図(b)に示されている。かかる状態では、前記第1の電極構造要素233と前記第2の電極構造要素235とに印加された高周波信号により、当該ディスクが振動する。なお、当該第1の電極構造要素233と当該第2の電極構造要素235が当該ディスクに対向する面は共に曲面であり、同図(b)の状態で、当該ディスクとの間の距離が等しくなるような曲率を有していることが好ましいが、この限りではない。
図26の構成では、図25に例示した構成とは異なった振動特性を有している。ディスク型のMEMS共振器の振動モードは多種あることが周知である。例えば、(1)ディスク222の径方向にディスク222全体が伸縮するモード、(2)ディスク222の径の第1の方向に伸び、該第1の方向と直交する第2の方向に縮むモード、(3)ディスク222が歪んで楕円形になるようなモードなどである。図26では、前記ディスク222を挟んで、前記第1の電極構造要素233と前記第2の電極構造要素235とが正対する場合が例示されており、かかる構成では、上記の(2)や(3)などが主要な振動モードとなる。また、当該第2の電極構造要素235を、当該第1の電極構造要素233に正対しない位置に配置(例えば、第1の電極構造要素233を時計の6時方向に、第2の電極構造要素235を時計の3時方向に配置)することにより、ディスク222の振動モードを選択することが可能となる。この結果、電気的な周波数特性を可変にすることが可能となる。さらに、電極構造要素を2個以上配置し、それぞれの配置される位置を設定することにより、多くの振動モードの選択が可能となる。その一例としては、当該ディスクの周辺に4個の電極構造要素を設け、それぞれの当該電極構造要素を、時計の12時、3時、6時、9時方向の位置に配置することが挙げられる。
図26のディスク222の代替として、前記した「リング型」共振器のリングを用いることも可能である。
<MEMS共振器の構成−7>
図27は本発明の実施例23であり、MEMS共振器の他の構成、すなわち、八角形のディスク型共振器が示されている。同図において、ディスク270は八角形のディスクであり、4隅がビーム271を介して基台部272へ接続されている。また、ディスク270とビーム271は浮上しており、ディスク270が振動できるように配置されている。当該ディスク270の端部にはスライダ273に連結された電極構造要素274が対向配置されている。同図では、上下(図面上)2ヶ所に当該電極構造要素274が配置されている例が示されているが、これに限ることはない。すなわち、単一の電極構造要素274が配置された構造、4ヶ所に電極構造要素274が配置された構造などもある。スライダ273は両端がビーム275で支えられ、基台部276へ接続されている。また、電極277は、スライダに対向して配置された1組の電極である。当該電極277とスライダ273との間に、直流電圧(図示せず)を印加することにより、スライダ273はディスク270に向かって移動し、当該電極277に接触することにより、当該移動が停止する。すなわち、前記した「指定された第2の距離」まで、スライダ273がディスク270に近接して配置されることになる。
なお、本明細書では、ビーム型とディスク型(円板形状と八角形)、および、リング型のMEMS共振器を例として挙げているが、当該MEMS共振器にはこれら以外にも多くの形態がある。例えば、「魚の骨型」や、「隣接して配置された複数のMEMS共振器の振動領域を機械的に結合させた連結型共振器」などがある。これらの多くの形態に対しても、本発明を実施することが可能である。
本発明によれば、2つの電極構造要素を近接配置することが容易に可能となり、MEMSデバイスに適用した場合の効果は大きい。特に、MEMS共振器に適用した場合には、高周波化が容易で、かつ、周波数可変機構も備えることが可能となる。さらに、当該MEMS共振器は、シリコン半導体技術を用いて作成されるので、駆動回路や信号処理回路とのワンチップ集積化が可能であり、半導体集積回路の高度化にも有効である。かかる機能は、可搬型機器、特に、携帯型通信機などの高機能化に寄与できる。また、コグニティブ通信に代表される多周波数通信では、機器の小型化、低消費電力化が促進され、ユビキタス環境の構築に利用できる。
1、36、241、271、275 ビーム
2 単結晶シリコン基板
3 駆動電極
4、45、90、91、247、256 直流電圧
5、72、73 ギャップ
6 ディンプル
10 構造要素
11、14、15、40 絶縁層
12、32、162、196、199、200、201、215、216、221、233、235、274 電極構造要素
13、33 振動構造要素
20、35、150、161、195、198、220、232、234、240、260、273 スライダ
21、25、37、41、82、83、193、194、223、242、272、276 基台部
22、110、120、135、140、151 突起
26 基礎母台
30、31、50、56、60、62、84、85、111、121、153、154、164、165、170、171、245、246 線分
38、70、71、197 櫛型電極
39、46、52、54、64、92、93 矢印
51 導電路
53 磁界
61 超音波振動機構
80、160 MEMS共振器
81、163、192、212、213 振動ビーム
87、249 直流バイアス
88、248、255 高周波信号
100、166、167、168、174 基板層
101、175、178 デバイス層
102 酸化膜層
103、105、181、182、183 マスク層
104、106、107、108、109、186、187、188、261 領域
130 突起母体
131、133 先端部
132、134 酸化シリコン層
152 ストッパ受け
172 溝
176、177 プラグ
190、204、205、210、211、230、231 駆動系
191 検出系
222、270 ディスク
243、277 電極
262 凸部
263 凹部

Claims (3)

  1. MEMSデバイスの1形態であるMEMS共振器であって、
    スライダと、
    前記スライダに連結した電極構造要素と、
    前記電極構造要素とは第1の距離を介して対向して配置され、機械振動する振動構造要素とから構成され、
    前記スライダは、指定された方向へ前記スライダをスライドさせるスライド機構を有し、
    前記振動構造要素および前記電極構造要素は、単結晶シリコン層を含む積層構造であり、
    前記スライド機構による前記スライダの移動量が、前記第1の距離よりも短い、指定された第2の距離で決定される共振器において、
    前記スライダと設定距離を介して対向する電極を設け、
    前記設定距離は、前記第1の距離と前記第2の距離との差であり、
    前記スライダと前記電極とには、互いに係合する凹部と凸部とを形成し、この凹部と凸部は先細りとなる略三角形状であり、
    前記凹部と前記凸部とが係合するまで前記スライダを移動させることで、前記電極構造要素と前記振動構造要素との距離が前記第2の距離となる
    ことを特徴とするMEMS共振器。
  2. 前記スライダは、シリコンを含む材料で構成されている
    ことを特徴とする請求項に記載のMEMS共振器。
  3. 前記スライド機構はシリコンを含む材料で構成され、
    静電気力を含む駆動力で前記スライダが移動する
    ことを特徴とする請求項あるいはに記載のMEMS共振器。
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