JP5671742B2 - 電極構造要素と振動構造要素を近接して配置する方法およびこれを用いたmemsデバイス - Google Patents
電極構造要素と振動構造要素を近接して配置する方法およびこれを用いたmemsデバイス Download PDFInfo
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Description
(1)機械要素の厚さを大きくして機械的な強度を増大させることが困難である。
多結晶シリコンを形成する際にはプロセス条件を制御して、薄膜多結晶シリコンの内部応力を可能な限り小さくすることが行われる。しかしながら、内部応力は形成プロセスの条件に敏感であり、さらに、薄膜の厚さを大きくすると残留する内部応力も大きくなる傾向がある。このため、振動できるように機械要素の一部(例えばビーム部分)を基板から浮上した構造を実現すると、残留していた内部応力が解放されて、ビームの変形(通常は捩れや曲がりとなって観測される)を誘起する。このため、多結晶シリコンの厚さは最大でも3マイクロメータ程度に制限されている。
(2)多結晶シリコンの形成条件の制御が困難である。
前記したように、多結晶シリコンの形成中に内部応力が残留していると、犠牲層エッチング後にビームの変形などが発生し、所望の動作が困難となる。このため、多結晶シリコンの形成条件(温度、ガス成分比、ガス成分量、雰囲気など)は厳密に制御されることが要求される。このため、半導体製造ライン毎の条件設定、条件の安定性確保など、製造技術面で課題が多い。
(3)犠牲層エッチングのためにフォトマスク数が多くなる。
図28に例示した従来例では、振動する機械要素を基板から浮上させるために、この機械要素と基板との間に挟まれた酸化膜(犠牲層となる)などをエッチングして除去している。また、直流電圧4を印加した時に、この機械要素が一定の距離(同図では500オングストローム)を介して基板から浮上し、かつ、基板との接触を阻止するために、Dimple(ディンプル)6と呼ばれる微小な凸構造を形成している。すなわち、機械要素であるビーム1は一様な厚さを有してはいるが、その表裏面は平坦ではない。このような構造とパターンを作り込むために複数のフォトマスクが使用される。図28での事例では5枚のフォトマスクが必要とされている。さらに、MEMSデバイスと駆動回路などの周辺回路と同一チップ上に集積化する場合には、MEMS部分の加工用フォトマスクと、周辺回路形成用のフォトマスクとが別個に必要となるので、それぞれのフォトマスク数は可能な限り低減することが製造面からは有利となる。この点において、犠牲層エッチングのためのフォトマスク数増大は製造技術面からは大きな課題となっている。
(4)犠牲層エッチング以後のプロセスで破壊される危険が大きい。
犠牲層エッチングが終了すると、前記したビーム1と駆動電極3との間には狭いギャップ(図28では2000オングストローム)が形成される。このため、犠牲層エッチング以後のプロセスでは、衝撃や静電気の帯電などで、前記したビーム1が前記した駆動電極3側に撓み、駆動電極3に固着する危険がある。この固着が発生すると、ビーム1を駆動電極3から引き離して再度浮上させることは不可能である。このため、これらの破壊を防ぐことが課題となっている。
(5)ビームの変形が大きいので物性値が変化する可能性が大きい。
図28の従来例では、2000オングストロームのギャップが、直流電源4により500オングストローム(ギャップ5)まで小さくされている。すなわち、ビーム1(厚さは2マイクロメータ)の変位量は1500オングストローム(0.15マイクロメータ)である。この厚さに対する変位量の比率は10%程度にも達し、大変形領域での振動動作になる。この結果、変位量(比)が小さい場合と比較して、剛性などの機械物性値が変化する。この物性値変動を考慮したRF−MEMSの設計が必要となる課題が発生する。
(1)機械要素の厚さを大きくして機械的な強度を増大させることが容易である。
SOIウェーハを使用すると、機械要素の厚さをデバイス層の厚さと等しくすることが可能である。このため、デバイス層を厚くすることにより、機械的強度が大きい機械要素を容易に実現できる。
(2)単結晶シリコンを使用するので残留応力の影響がない。
SOIウェーハは、デバイス層にも単結晶シリコンを使用しているため、MEMSデバイスの形成プロセスの条件によらず、内部残留応力が少ない特徴がある。このため、微細加工で機械要素を作成しても、変形などが発生しない。
(3)フォトマスク数が少ない。
図29に例示した事例では、フォトマスク2枚で作成することが可能であり、図28の事例での「5枚」と比較すると大幅にマスク数を低減できる。
(4)ビームの変形が小さいので物性値が変化することがない。
ビームと駆動電極を強制的に近接させる手法を採用していないため、ビームの振動は小振幅動作範囲となっている。このため、大振幅動作での物性値の変化などが回避できる。
(1)前記第1の電極構造要素を前記指定された第5の距離(「近接した」状態)に、かつ、前記第2−1の電極構造要素と前記第2−2の電極構造要素を前記指定された第4の距離(「離れた」状態)に配置される場合、
(2)前記第1の電極構造要素を前記指定された第3の距離(「離れた」状態)に、かつ、前記第2−1の電極構造要素と前記第2−2を前記指定された第6の距離(「近接した」状態)に配置される場合、
(3)前記第1の電極構造要素を前記指定された第5の距離(「近接した」状態)に、かつ、前記第2−1の電極構造要素と前記第2−2の電極構造要素を前記指定された第6の距離(「近接した」状態)に配置される場合、
の3通りの組合せがある。前記(1)と(2)では前記振動構造要素はその基本周波数(ビームが共振する場合の一番低い周波数)で振動され、前記(3)では前記振動構造要素の第3次の周波数で振動されることになる。前記(3)では、該振動構造要素の高調波(あるいはオーバートーン)周波数で直接駆動されることになる。上記した構成では、前記第1のスライダと前記第2のスライダの制御により、共振周波数を変化させることができる。一般に共振器の周波数を変化させる場合には、複数の共振周波数を有する共振器を並列に配置して、半導体素子で構成されたスイッチなどで切り替えることが行われている。しかしながら、高周波帯ではこれらのスイッチの特性劣化(特にON時のインピーダンスとOFF時の絶縁性)が課題となっている。上記構成では、スイッチが不要であり、これらスイッチに起因する共振器系の特性劣化を防止できる。さらに、前記第2の電極構造要素の分離では、分離の数は2個に限らず、2個以上の電極構造要素に分離させても良い。また、前記第1の電極構造要素を2個以上の電極構造要素に分離して配置させても良い。前記第1の電極構造要素と前記第2の電極構造要素から成り、かつ、それぞれが分離されている構成では、それぞれの分離された電極構造要素が配置される領域を選択することにより、より高次の周波数で振動させることが可能となる。
(1)前記第1の電極構造要素を前記第1の振動構造要素に対して前記指定された第5の距離(「近接した」状態である)に、かつ、前記第2の電極構造要素を前記第2の振動構造要素に対して前記指定された第4の距離(「離れた」状態である)に配置される場合、
(2)前記第1の電極構造要素を前記第1の振動構造要素に対して前記指定された第3の距離(「離れた」状態である)に、かつ、前記第2の電極構造要素を前記第2の振動構造要素に対して前記指定された第6の距離(「近接した」状態である)に配置される場合、
の2通りの組合せがある。前記(1)では前記第1の振動構造要素のみが振動され、前記(2)では前記第2の振動構造要素のみが振動される。すなわち、前記第1のスライダと前記第2の制御により、共振周波数を変化させることができる。かかる改良された構成では、前段落に記載したと同様に、スイッチが不要であり、スイッチに起因するに共振器系の特性劣化を防止できる。
図1は、実施例1である、電極構造要素と振動構造要素を近接して配置する方法を説明する図である。同図(a)は当該電極構造要素と当該振動構造要素が未加工の状態(2個の構造要素に分離されておらず、単一の構造要素のままである)を、同図(b)は当該電極構造要素と当該振動構造要素への加工が完了し「離れて」配置された状態を、同図(c)は当該電極構造要素と当該振動構造要素が「近接して」配置された状態をそれぞれ示している。なお、同図では、電極構造要素と振動構造要素の近接配置法を原理的に示しており、必ずしも実際の形態とは一致しているとは限らない。同図(a)において、構造要素10は未加工状態での当該2個の構造要素を示している。構造要素10は未加工であるので、2個に分離していない状態である。スライダ20はスライド機構(明示せず)を備えており、基台部21の上部で、図面で左右方向に移動できる。また、当該スライダ20には突起22が設けられている。構造要素10は、スライダと電気的な絶縁のため、絶縁層11を介してスライダ20と連結されている。ここで「連結」とは、前記スライダ20との一体化を意味しており、同図ではあたかも接着されているように例示されているが、この限りではない。なお、上記した構造要素は基礎母台26の表面に配置されている。同図(a)の状態で、構造要素10と絶縁層11の中央部分をエッチングなどの手法により選択的に除去すると、同図(b)の状態となる。同図において、電極構造要素12と、振動構造要素13とは、距離d1を介して対向配置されている。なお、距離d1は前記した「選択的に除去」する際に「指定された第1の距離」として当該エッチング時のマスクにパターニングされている。電極構造要素12は、絶縁層14を介して、前記スライダ20と連結している。また、振動構造要素13は、絶縁層15を介して、基台部25と連結している場合が示されている。同図(c)は、前記スライダ20を指定された方向(図面では右方向になる)へ移動させ、前記突起22が基台部25に接触した状態を示している。かかる状態では、電極構造要素12と振動構造要素13とは「指定された第2の距離」(図中ではd2として表記)を介して対向配置されている。なお、「指定された第2の距離」は「指定された第1の距離」よりも小さい値である。また、「指定された第2の距離」は、5マイクロメータを超えない距離である。距離d2は前記した突起22の長さで決定され、当該長さを短くすれば、前記電極構造要素12と前記振動構造要素13との間に形成されたギャップの間隔を小さくできる。換言するならば、突起22が前記スライダ20の移動を所望の位置(ギャップ間隔が距離d2となる位置)で停止させる「ストッパ」として機能している。
図2は、本発明を適用した実施例2を説明する図面である。同図では、シリコンを用いたMEMSデバイスへの適用例が例示されている。同図(a)と(c)はMEMSデバイスの平面構造を示している。また、同図(a)と(c)において、線分30、31とで示した部分の断面構造図を、それぞれ、同図(b)と(d)に示す。同図(a)と(b)は電極構造要素32と振動構造要素33とが「離れた」状態(図中においてd1で表記した「指定された第1の距離」である)を、同図(c)と(d)は電極構造要素32と振動構造要素33とが「近接した」状態(図中においてd2で表記した「指定された第2の距離」である)を示している。また、当該電極構造要素32と当該振動構造要素33とは「離れた」状態で加工が完了した(SOIウェーハを用いた加工プロセスの詳細は後述する)状態である。
(1)当該電極構造要素32はスライダ35と「連結」されているが、本実施例では、スライダ35の端部に当該スライダ35と同一構成要素として電極構造要素32が配置されている。すなわち、両者ともに同一のシリコン基板(SOIウェーハの場合にはデバイス層)から構成されている。
(2)当該スライダ35の中央領域(図中では「右下がりのハッチング」で表示)と当該電極構造要素32は、同図(b)と(d)に断面を示すように、空中に浮上している。当該スライダ35の中央領域は、その4つの端部に配置された「折れ線状」のビーム36で支えられ、かつ、当該4個のビームは4個の基台部37で固定されている。すなわち、当該スライダ35は、浮上した領域(「右下がりのハッチング」で表示)と固定された基台部37(「濃い灰色」で表示)とから構成されている。
(3)当該スライダ35の一部は「櫛型電極」を構成している。この櫛型電極は、他の櫛型電極38(全てが「固定」されている)と対向して配置されている。これらの櫛型電極間に直流電圧を印加すると、同図(c)の矢印39で示した方向に、前記スライダ35の浮上した領域が移動する。すなわち、本実施例では、櫛型電極を用いた静電駆動アクチュエータで、当該スライダ35のスライド機構を構成している。かかるスライド機構では、印加された直流電圧の大きさにより、前記スライダ35の移動量が決定される。このため、電極構造要素32と振動構造要素33との間の距離が「指定された第2の距離」と一致するように、当該直流電圧の大きさが制御されている。
(4)前記した4本のビーム36は、前記スライダ35を空中に浮上させるとともに、当該スライダ35の移動に伴い当該浮上を維持するための機能を有している。図中では「4本」を例示したが、当該機能を有するために、ビーム36の本数は4本に限られることはない。また、「折れ線状」として「6か所の曲がりコーナ」を例示したが、このコーナの数、あるいは、ビーム36の形状は同図に示した例に限られることもない。当該スライダ36の移動を妨げないような、ビーム形状とコーナの数などが選択されて良い。
(5)本実施例では、振動構造要素33は絶縁層40を介して、基台部41に固定されている。
(6)基台部37、41はパッケージなどの基礎母台(図示せず)上に配置されている。
図3は、前記した実施例2に記載した静電アクチュエータの動作を説明する図である。同図において、図2と同一番号は同一構成要素を示している。また、説明の便宜上、図2とは上下逆転して図が描かれている。さらに、前記したスライダ35の一部(一つの櫛歯型電極群)と、固定されている一つの櫛歯型電極群38のみが示されている。また、前記ビーム36が前記基台部37に固定されている部分と、前記した浮上している櫛型電極と「固定」されている櫛型電極38の一部とが、図中の丸印で拡大表示されている。拡大表示された図には、A−A’とB−B’が表示されており、それらの構造断面図は同図(b)に示されている。同図(b)のA−A’部断面図ではビーム36と基台部37とが同一のシリコン材料(より詳細にはSOIウェーハのデバイス層)で構成されていること、および、B−B’部断面図では35が浮上しており手前から奥へ、あるいは、奥から手前へと移動できることが示されている。同図(c)では、前記した「固定」された櫛歯型電極38と、浮上しているスライダ35の一部である櫛歯型電極との間に直流電圧45を印加し、矢印46の方向に前記スライダ35が移動することが示されている。当該移動の距離は直流電圧45の大きさに依存しており、その移動量は直流電圧45の大きさで決定される。
図4は、前記したスライダのスライド機構に電磁力(ロレンツ力)を利用した実施例3を示す図である。同図において、図2と同一番号は同一構成要素を示している。同図(a)と(c)はMEMSデバイスの平面構造を示している。また、同図(a)と(c)において、線分50、56とで示した部分の断面構造図を、それぞれ、同図(b)と(d)に示す。同図(a)と(b)は電極構造要素32と振動構造要素33とが「離れた」状態(図中においてd1で表記した「指定された第1の距離」である)を、同図(c)と(d)は電極構造要素32と振動構造要素33とが「近接した」状態(図中においてd2で表記した「指定された第2の距離」である)を示している。同図(a)において、スライダ35の表面には導電路51が配置され、矢印52で示した方向に直流電流(I)が流れるようになっている。同図(a)では2つの導電路が例示されているが、その数および形状には制限されることはない。また、当該導電路は、ビーム36に沿って延長して配置され、基台部37の領域で外部電源(図示せず)に接続される手段を有している。当該直流電流がゼロの時、電極構造要素32と振動構造要素33との距離は前記「指定された第1の距離(距離d1)」となっている(同図(b)の状態)。また、磁界53は、前記スライダ35の表面側(図では手前側)から裏側(図では奥側)へ印加されている。かかる一様な磁界53(その強度はH)が印加されると、スライダ35には、矢印54の方向へ移動するような力(F)が発生する。フレミングの法則によれば、F=H×Iで定義され、力は直流電流Iと磁界の強さHに比例することが周知である。この結果、同図(c)に示すように前記スライダ35は移動することになり、Fとビームの変形に伴う反力とが釣り合った状態で停止する。この状態では、当該電極構造要素32と振動構造要素33との間の距離が前記「指定された第2の距離(距離d2)」になっている(同図(d)の状態)。すなわち、電極構造要素32と振動構造要素33の距離が距離d2となるように、前記直流電流あるいは磁界53の強さが設定されることになる。
図5は、前記したスライダ35のスライド機構に超音波振動を利用した実施例4を示す図である。同図において、図2と同一番号は同一構成要素を示している。同図(a)と(c)はMEMSデバイスの平面構造を示している。また、同図(a)と(c)において、線分60、62の一点鎖線で示した部分の断面構造図を、それぞれ、同図(b)と(d)に示す。同図(a)と(b)は電極構造要素32と振動構造要素33とが「離れた」状態(図中においてd1で表記した「指定された第1の距離」である)を、同図(c)と(d)は電極構造要素32と振動構造要素33とが「近接した」状態(図中においてd2で表記した「指定された第2の距離」である)を示している。同図(a)において、スライダ35の下部には超音波振動機構61が配置されており、図示されていない駆動手段により振動している。かかる振動は、同図(a)の矢印64で示す方向に、スライダ35の移動を誘起する。この結果、同図(c)に示すように、電極構造要素32は振動構造要素33に近づいて、前記「指定された第2の距離(距離d2)」の位置(同図(d)の状態)に移動する。しかしながら、超音波振動による移動は、振動手段(例えば超音波振動機構61)と移動させる対象(例えばスライダ35)とは近接配置されてはいるが、非接触の状態であることが特徴である。このため、もし、ビーム36の変形により発生した反力(スライダ35を元の位置に戻そうとする力となる)が大きいと、超音波振動を停止した瞬間に、スライダは前記「指定された第1の距離(距離d1)」の位置(同図(b)の状態)まで復帰することになる。この復帰を防ぐためには、超音波振動を常時与え続けることが必要となる。あるいは、スライダ35の復帰を阻止するような「ロック機構」(図示せず)をスライダ35に付与することが必要となる。
図6に示した実施例5は、前記したスライダ35のスライド機構に静電アクチュエータを利用した他の実施例である。同図において図2と同一番号は同一構成要素を示している。同図(a)と(c)はMEMSデバイスの平面構造を示している。また、同図(a)と(c)において、線分30、31とで示した部分の断面構造図を、それぞれ、同図(b)と(d)に示す。本実施例においては、スライダ35に付属している櫛型電極に対向して、左右1組の固定された櫛型電極70と71とが配置されている。また、電極構造要素32と振動構造要素33とは対向して配置されているが、その対向面は「平行」ではなく、大略距離d1の距離のギャップ72を介して配置されている。かかる非平行な状態は、当該MEMSデバイスの製造過程で発生したり、あるいは、当該MEMSデバイスが回転する環境に置かれている場合などで発生する。特に、後者の場合では、当該MEMSデバイスの製造過程で非平行が発生しなくても、当該MEMSデバイスが設置される環境(例えば、自動車のタイヤ近傍に設置されるような環境である)によっては、慣性力により当該スライダに回転力が発生する。本実施例においては、かかる非平行な状態になっても、左右に配置され、個別に駆動される静電アクチュエータ(櫛型電極70、71を含む)により、当該非平行が補正される。すなわち、左右1組の静電アクチュエータへ印加する直流電圧を個別に制御することにより、スライダ35の動きに若干の回転を付与することができる。この結果、同図(c)に示すように、電極構造要素32と振動構造要素33とを、距離d2の距離のギャップ73を介して「平行」に配置することができる。なお、本実施例においても、電極構造要素32と振動構造要素33とは「離れた」状態(図中においてd1で表記した「指定された第1の距離」である)で製造され、静電アクチュエータの駆動により、電極構造要素32と振動構造要素33とが「近接した」状態(図中においてd2で表記した「指定された第2の距離」である)に設定されている。
図7はMEMS共振器80に適用した実施例6を示している。本実施例においては、スライダ35の移動が静電アクチュエータで行われる場合が示されているが、前記したような各種の駆動手段で移動させても構わない。同図において図2と同一番号は同一構成要素を示している。同図(a)と(c)はMEMS共振器80の平面構造を示している。また、同図(a)と(c)の線分84、85とで示した部分の断面構造図を、それぞれ、同図(b)と(d)に示す。同図(a)において、MEMS共振器80は、スライダ35に「連結」された電極構造要素32と、振動体(本実施例では「振動ビーム81」である)と、81の両端を固定する基台部82、83とで構成されている。すなわち、本実施例においては、前記振動構造要素は、(1)該振動構造要素の指定された領域である振動ビーム81と、(2)当該振動ビーム81の領域を含まない該振動構造要素の領域である基台部82、83(振動しない)、で構成されている。なお、電極構造要素32は当該振動ビーム81を振動させるための駆動電極として作用する。同図(a)と(b)に示すように、電極構造要素32と振動ビーム81とは「離れた」状態(図中においてd1で表記した「指定された第1の距離」である)で作成されている。また、電極構造要素32と振動ビーム81は、静電アクチュエータなどの駆動手段により、同図(c)と(d)に示すように、「近接した」状態(図中においてd2で表記した「指定された第2の距離」である)に設定される。同図(c)では、静電アクチュエータへ印加される直流電圧と、電極構造要素32と振動ビーム81との間に供給される直流バイアス87が重畳された高周波信号88が併せて記載されている。当該直流バイアス87は、当該電極構造要素32に印加される信号の瞬時値が常にプラスであるように、当該高周波信号88の振幅値に応じて設定されている。この理由としては、静電気力を利用したMEMS共振器80では、当該印加される信号の電圧が正電位であっても負電位であっても、誘起される力は同じであるため、当該高周波信号88の2倍の周波数で振動が起こることを防止するためである。
図10は実施例6で示したMEMS共振器80の製造プロセスを説明する図である。同図には、前記スライダ35を支えるビーム36の「付け根」部と、静電アクチュエータの浮上した櫛型電極と固定された櫛型電極の一部(共に図中の丸印内に表示)に対して、各製造プロセスでの構造断面図が示されている。すなわち、同図(a−1)から(e−1)が前記「付け根」部分、(a−2)から(e−2)が櫛型電極の部分に対応している。同図(a−1)と(a−2)において、基板層100、デバイス層101、酸化膜層102は、それぞれSIO基板を構成する要素である。ウェーハの直径にも依存するが、通常の厚さとして例示すると、基板層100は250マイクロメータ、デバイス層101は20マイクロメータ、酸化膜層102は1マイクロメータである。第1のマスク層103はデバイス層101の表面にパターニングされたものである。当該第1のマスク層103は必ずしも一様に塗布された有機材料からなる1層のフォトレジストとは限らない。例えば、(1)デバイス層の表面に一様にクローム層を形成し、(2)当該クローム層の表面にフォトレジストを塗布し周知の手法でパターニングし、(3)パターニングされた当該フォトレジスト層をマスクとして、前記クローム層をパターニングし、(4)当該フォトレジスト層を除去しクロームパターンを露出させるといった複数段のプロセスを採用することもできる。同図(b−1)と(b−2)は、当該第1のマスク層103をマスクとしてデバイス層101の一部がエッチングで除去された構造を示している。領域104はデバイス層101がエッチングで除去され、酸化膜層102が露出した領域である。かかるデバイス層101のエッチングには、多くの液体あるいは気体が利用されるが、代表例としては、反応性イオンエッチング(RIE)がある。次に、同図(c−1)と(c−2)に示すように、基板層100の裏面に、第2のマスク層105を形成する。当該第2のマスク層105も、前記した第1のマスク層103と同様に形成される。基板層100の第2のマスク層105が覆われていない領域は前記した手法によりエッチング除去される。同図(d−1)と(d−2)には、当該エッチング除去により、酸化膜層102の下面が露出した領域106が示されている。次に、露出した酸化膜層102をエッチング除去すると、同図(e−1)と(e−2)に示すような構造が得られる。当該酸化膜層102のエッチングには沸酸系の湿式エッチングや乾式エッチングが利用される。同図において、領域107はスライダを支えるビームの領域、領域108は固定されている櫛型電極38の領域、領域109は浮上している櫛型電極の領域である。
図11はMEMS共振器に適用した本発明の実施例8である。「指定された第1の距離」(「離れた」状態である)を介して作成された前記電極構造要素32(例えば駆動電極)と振動構造要素(例えば振動ビーム81)を、静電アクチュエータなどの機構により、「指定された第2の距離」(「近接した」状態である)まで移動させ、当該第2の距離に停止させるための一手法に、ストッパの使用がある。なお、前記した実施例1では突起22として記載されている。同図(a)は図7に示したMEMS共振器80の主要要素を示しており、図7と同一番号は同一構成要素を示している。同図(b)と(c)は、同図(a)の線分111で示した線に沿った断面構造図である。また、同図(a)と(b)は「離れた」状態を、同図(c)は「近接した」状態を示している。同図(a)において、突起110は、電極構造要素(駆動電極)32に配置されたストッパとしての突起である。同図(b)に示すように、突起110の大きさは、前記した「指定された第2の距離」(距離d2)と等しく設定されている。このため、図示していない静電アクチュエータなどにより電極構造要素32が同図(a)の上方向に移動すると、電極構造要素32と振動ビーム81間の距離は、移動前は前記「指定された第1の距離」(距離d1)であり、移動後は前記「指定された第2の距離」(距離d2)となる。当該突起110は振動ビーム81の一部と接触することになるが、その接触は「点接触」であるので、当該振動ビームの振動には影響を及ぼさない。なお、突起110の形状は、半径が距離d2、高さは電極構造要素32の厚さ(デバイス層の厚さ)であるような半円柱形状として表示されているが、これに限らない。例えば、突起110の高さが電極構造要素32の厚さよりも小さく、当該電極構造要素32の厚さ方向の一部に配置されていても良い。また、実施例6で示したように、電極構造要素(駆動電極)32と振動ビーム81の間には、直流バイアス87が重畳された高周波信号88が印加されているので、同図(c)に示した状態であっても、電極構造要素32と振動ビーム81とが電気的に絶縁されていることが必要である。かかる電気絶縁性を確保するための一手法としては、当該突起110を絶縁材で構成したり、当該突起110の表面を絶縁層で被覆することが挙げられる。さらに、当該突起110の数は2個に限らず、1個以上であれば良い。
図12は図7に示したMEMS共振器80に適用した実施例9であり、ストッパとしての突起120の構成を示している。同図において、図11と同一番号は同一構成要素を示している。同図(b)と(c)は、同図(a)の線分121に沿った断面構造図である。また、同図(a)と(b)は「離れた」状態を、同図(c)は「近接した」状態を示している。同図(a)において、突起120は、振動ビーム81(振動構造要素でもある)に配置されたストッパとしての突起である。同図(b)に示すように、突起120の大きさは、前記した「指定された第2の距離」(距離d2)と等しく設定されている。このため、図示していない静電アクチュエータなどにより電極構造要素32が図面の上方向に移動すると、振動ビーム81と電極構造要素32間の距離は、移動前は前記「指定された第1の距離」(距離d1)であり、移動後は前記「指定された第2の距離」(距離d2)となる。当該突起120は電極構造要素32(駆動電極でもある)の一部と接触することになるが、その接触は「点接触」であるので、当該振動ビーム81の振動には影響を及ぼさない。なお、突起120の形状は、半径が距離d2、高さは振動ビーム81の厚さ(デバイス層の厚さ)であるような半円柱形状として表示されているが、これに限らない。例えば、突起120の高さが振動ビーム81の厚さよりも小さく、当該振動ビーム81の厚さ方向の一部に配置されていても良い。また、実施例6(図7)で示したように、振動ビーム81と電極構造要素32(駆動電極)の間には、直流バイアス87が重畳された高周波信号88が印加されているので、同図(c)に示した状態であっても、振動ビーム81と電極構造要素32とが電気的に絶縁されていることが必要である。かかる電気絶縁性を確保するための一手法としては、当該突起120を絶縁材で構成したり、当該突起120の表面を絶縁層で被覆することが挙げられる。
図13はMEMS共振器に適用した本発明の実施例10であり、ストッパとしての突起135の構成とその作成方法を示している。本実施例では、当該突起135がスライダ35側に配置されている場合(実施例8)に対応して記載されているが、当該突起135の配置位置はこの限りではない。同図(a)において、突起母体130は、シリコンなどを素材とし、スライダ35に連結した電極構造要素32の端部に配置され、先端部131が尖った突起母体であり、平面図として示されている。当該突起母体130の厚さは電極構造要素32の厚さと等しいが、必ずしもこの限りではない。同図(b)は、同図(a)に示した構造体の表面を酸化した図である。酸化プロセスにより、当該突起母体の上面と側壁面とは、均等な厚さを有する酸化シリコン層132に変化する。しかし、先端部131では、幅が細くなっているため、酸化シリコン層132への変化が早く、その結果、先端部近傍では、酸化せず残存した突起母体は丸く(先端部133で示す)なる。同図(c)は同図(b)に示した構造体の酸化シリコン層をエッチング除去した後の当該突起母体の形状である。かかる形状では、当該突起母体130の表面にシリコン層(デバイス層)が露出している。当該突起母体130の表面に電気絶縁性を付与する場合には、酸化プロセスで、酸化シリコン層134を形成することにより同図(d)に示したような形状にすることができる。同図(d)は作成された突起135であり、その大きさが図中にd2として表示されている。
図14は図7に示したMEMS共振器80に適用した本発明の実施例11であり、ストッパとしての突起140の他の構成を示している。同図において、図12と同一番号は同一構成要素を示している。なお、説明の便宜上、同図では電極構造要素32と振動ビーム81とが「離れた」状態であるかのように示されている。同図において、突起140は電極構造要素(駆動電極)32に設けられた突起である。同図(a)は振動ビーム81が1次の共振モードで振動している場合であり、その振動の「節」の領域に当該突起が接触するように配置されている。一方、同図(b)は振動ビーム81が3次の共振モードで振動している場合であり、その振動の「節」の領域に当該突起が接触するように配置されている。いずれの場合においても、「節」の領域では振動の振幅は小さい(理論的にはゼロであり、あたかも「節」が固定されているかのように見える)ので、当該突起が接触しても振動ビームの動作に影響を与えることはない。MEMS共振器では、いずれの次数の共振モードを利用するかはシステム要件として設定されているため、その次数に相当する「節」の領域に当該突起を接触させることが可能である。すなわち、当該突起140の数は2個とは限らないことになる。
図15は図7に示したMEMS共振器80に適用した本発明の実施例12であり、ストッパとしての突起151の他の構成を示している。図において、図7と同一番号は同一構成要素を示している。同図(a)は、電極構造要素32と振動ビーム81とが「離れて」いる状態に対応している。図において、スライダ150は電極構造要素32と連結したスライダで、突起151が端部に設けられている。ストッパ受け152は突起151が接触して当該スライダ150の移動を停止させるものであり、基台部82、83と同様な構造を有している。同図(a)の線分153、154で示した一点鎖線に沿った構造断面図が、それぞれ、同図(b)と(c)、同図(d)と(e)に示されている。同図(b)と(d)は電極構造要素32と振動ビーム81間の距離が前記「指定された第1の距離」の場合であり、同図(c)と(e)は電極構造要素32と振動ビーム81間の距離が前記「指定された第2の距離」の場合である。図示されていない静電アクチュエータなどの機構により、スライダ150は移動するが、その移動は当該突起151が当該「ストッパ受け」152と接触すると停止する。ここで、当該突起151の大きさを前記「指定された第2の距離」(距離d2)に設定しておくことにより、前記電極構造要素32と振動ビーム81との間の距離は距離d2と等しくなる(図15(b)から(e)に示す)。
図16はMEMS共振器に適用した本発明の実施例13であり、図7と同一番号は同一構成要素を示している。同図(a)はMEMS共振器の平面構造図である。同図(b)と(c)は線分245で示した部分の断面構造図を、同図(d)と(e)は線分246で示した部分での断面構造図をそれぞれ示している。また、同図(b)と(d)は電極構造要素32と振動ビーム81との間の距離が距離d1である場合、同図(c)と(e)は電極構造要素32と振動ビーム81との間の距離が距離d2である場合がそれぞれ示されている。同図(a)において、電極構造要素32と連結したスライダ240は、ビーム241を介して基台部242に接続されている。スライダ240(電極構造要素32を含む)とビーム241は浮上しており、同図(a)の上下方向(紙面上での上下方向)に移動可能な構造となっている。スライダ240を支えるビーム241の形状は、3本の線状で例示されているが、当該形状はこれに限らない。電極243は固定されている電極であり、距離d3離れて、スライダ240と対向して配置されている。当該電極243とスライダ240は、直流電圧247が印加されている。なお、直流電圧247は片側の電極243にのみ印加されている図が示されているが、スライダ240の両側に配置された2つの電極243に同時に印加されていることが好ましい。当該直流電圧247が0ボルトである時には、スライダ240と電極243との間の距離は距離d3であり(同図(d))、振動ビーム81と電極構造要素32との間の距離は距離d1である(同図(b))。一方、当該直流電圧247が数ボルト以上の電圧を発生する場合には、スライダ240は電極243側に吸引され、スライダ240と電極243は「接触」し(同図(e))、振動ビーム81と電極構造要素32との間の距離は(距離d1−距離d3)となる。同図(c)に示すように、距離d1と距離d3との距離の差が「指定された第2の距離」(すなわち距離d2)となる。換言するならば、距離d3の大きさを「指定された第1の距離」と「指定された第2の距離」との差に等しくなるように設計する。なお、同図(e)の境界領域250は、前記「接触」状態での、スライダ240と電極243との境界領域を示している。かかる領域には絶縁体が存在して、スライダ240と電極243との接触による大電流が前記直流電圧247に流れないようになっている。かかる状況は、スライダ240あるいは電極243の対向する側面が共に、酸化膜などで被覆することにより容易に実現される。本段落に記載した実施例では、図7の示した実施例とは異なり櫛型電極(例えば櫛型電極38)を必要としていない。直流電圧247が、スライダ240と電極243に静電界を発生させ、当該静電界がスライダ240を振動ビーム81側へ引き寄せることで、前記「指定された第2の距離」を実現している。なお、かかる静電界による吸引力は距離d3に依存するので、当該距離d3を可能な限り小さく設計することにより、当該直流電圧247の値を小さくすることが可能である。さらに、同図(a)において、振動ビーム81と電極構造要素32との間には、直流バイアス249が重畳された高周波信号248が印加されている。すなわち、高周波信号248が振動ビーム81を振動させ、MEMS共振器が実現されている。
図17はMEMS共振器に適用した本発明の実施例14であり、図16と同一番号は同一構成要素を示している。同図(a)はMEMS共振器の平面構造図である。同図(b)と(c)は線分245で示した部分の断面構造図を、同図(d)と(e)は線分246で示した部分での断面構造図をそれぞれ示している。また、同図(b)と(d)は電極構造要素32と振動ビーム81との間の距離が距離d1である場合、同図(c)と(e)は電極構造要素32と振動ビーム81との間の距離が距離d2である場合がそれぞれ示されている。本実施例では、直流電圧256が、同図に示した直流電圧247と直流バイアス249を兼ねていることが特徴である。すなわち、直流電圧256は、スライダ240と電極243との間に吸引力を誘起すると同時に、振動ビーム81を駆動する高周波信号255に重畳される直流バイアスになっている。かかる構成によれば、MEMS共振器の駆動が簡便となる利点が発生する。
図18はMEMS共振器に適用した本発明の実施例15であり、MEMS共振器の主要部分が示されている。また、図16と同一番号は同一構成要素を示している。同図(a)はMEMS共振器の平面構造図である。電極構造要素32と連結したスライダ260は、ビーム241を介して基台部242に接続されている。スライダ260(電極構造要素32を含む)とビーム241は浮上しており、同図(a)の上下方向(紙面上での上下方向)に移動可能な構造となっている。スライダ260を支えるビーム241の形状は、3本の線状で例示されているが、当該形状はこれに限らない。電極243は固定されている電極であり、スライダ260と対向して配置されている。この領域261を拡大した図が同図(b)である。当該領域に含まれるスライダ260には凹部263が設けられ、対向する電極243には凸部262が設けられている。当該凹部263と凸部262の形状は相補的であり、両者が近接して接触した場合には、「密着」する(同図(c)に示すような状態)ようになっている。同図(a)には明示していないが、外部から供給された直流電圧(図16の直流電圧247に相当)が誘起する吸引力により、スライダ260は電極243および振動ビーム81に向かって移動する。当該移動は、凹部263が凸部262に接触するまで続き、当該接触が発生した時点で、移動は停止する。本実施例では、スライダ260の左右両端に凹部が設けられ、1組みの電極243に凸部が配置されているので、前記移動が左右(図面上)にぶれても、最終的なスライダ260の位置は幾何学的に一定となる利点がある。すなわち、電極構造要素32と振動ビーム81との相互位置関係が一義的に定まる利点がある。
d4=d3×sinθ
の関係が成立している。すなわち、スライダ260が振動ビーム81に向かって移動する距離は距離d3となるので、前記した「指定された第2の距離(距離d2)」は
d2=d1−d4/sinθ
で決定される。すなわち、距離d1、距離d4、θを、上記関係を満たすように設定することが設計要因となる。なお、上式では、距離d3の代替として距離d4を採用しているが、これは製造のための露光マスクを設計する際、および製造プロセスの際に、「パターン間の間隙」がより重要になるからである。
図19はMEMS共振器160に適用した本発明の実施例16であり、前記した電気機械結合係数を増大させるため、電極構造要素162(駆動電極)と振動ビーム163とが対向する領域の面積を大きくしていることに特徴がある。同図において、図7と同一番号は同一構成要素を示している。本実施例においては、スライダ161の移動が静電アクチュエータで行われる場合が示されているが、前記したような各種の駆動手段で移動させても構わない。同図(a)と(c)はMEMS共振器160の平面構造を示している。また、同図(a)と(c)の線分164、165とで示した部分の断面構造図を、それぞれ、同図(b)と(d)に示す。同図(a)において、MEMS共振器160は、スライダ161に「連結」された電極構造要素162(駆動電極)と、振動体(本実施例では「振動ビーム163」である)と、該振動ビーム163の両端を固定する基台部82、83とで構成されている。同図(a)と(b)に示すように、電極構造要素162と振動ビーム163とは「離れた」状態(図中においてd1で表記した「指定された第1の距離」である)で作成されている。また、電極構造要素162と振動ビーム163は、静電アクチュエータなどの駆動により、同図(c)と(d)に示すように、「近接した」状態(図中においてd2で表記した「指定された第2の距離」である)に設定される。同図(c)では、静電アクチュエータへ印加される直流電圧と、電極構造要素162と振動ビーム163との間に供給される直流バイアスが重畳された高周波信号が併せて記載されている。
図21は本発明の実施例17であり、実施例16に示したMEMS共振器160の製造プロセスを説明する図である。同図において、図10と同一番号は同一構成要素を示している。同図には、前記スライダ161を支えるビーム36の「付け根」部と、静電アクチュエータの浮上した櫛型電極と固定された櫛型電極38の一部(共に図中の丸印内に表示)に対して、各製造プロセスでの構造断面図が示されている。すなわち、同図(a−1)から(f−1)が前記「付け根」部分、同図(a−2)から(f−2)が櫛型電極の部分に対応している。同図において、基板層100、デバイス層101、酸化膜層102は、それぞれSIO基板を構成する要素である。ウェーハの直径にも依存するが、通常の厚さとして例示すると、基板層100は250マイクロメータ、デバイス層101は20マイクロメータ、酸化膜層102は1マイクロメータである。なお、図面では、SOI基板の当初の厚さがt0で表示されている。同図(a−1)では、当該基板の裏面(基板層100側)に第1のマスク層181が形成されてから、当該第1のマスク層181で被覆されていない領域の基板層100が全て除去される(同図(b−1))。次に、当該基板の裏面(基板層100側)に第2のマスク層182が形成されてから、当該第2のマスク層182で被覆されていない領域の基板層100の部分が除去され、前記した特定の領域の厚さが形成されるように加工される。この結果、SOI基板の裏面側は凹凸の形状となる(同図(d−2))。
図22は本発明の実施例18であり、MEMS共振器の他の構成を示している。同図において、図7と同一番号は同一構成要素を示している。同図(a)は振動ビーム192と第1の電極構造要素199及び第2の電極構造要素196が「離れた」状態を、同図(b)は「近接した」状態を示している。本実施例によるMEMS共振器は、駆動系190と検出系191とが別個に配置されており、これらの間に共通の振動ビーム192が配置されている。当該振動ビーム192は両端が基台部193、194で固定されている。当該検出系191は、当該駆動系190と類似の構成である。同図(a)において、第1のスライダ198の端部には第1の電極構造要素199(駆動電極)が配置され、また、当該振動ビーム192とは指定された第3の距離(図中においてd3で示す)だけ離れて作成されている。第2のスライダ195の端部には第2の電極構造要素196(駆動電極)が配置され、また、当該振動ビーム192とは指定された第4の距離(図中においてd4で示す)だけ離れて作成されている。当該第1のスライダ198は、固定された櫛型電極38(第1のスライド機構を構成している)により、図面の上方(第1の方向である)へ移動させられる。この結果、第1の電極構造要素199(第1のスライダ198と連結している)と振動ビーム192との距離は、同図(a)のd3で示した「指定された第3の距離」から、同図(b)のd5で示す「指定された第5の距離」となる。当該第2のスライダ195は、固定された櫛型電極197(第2のスライド機構を構成している)により、図面の下方(第2の方向である)へ移動させられる。この結果、第2の電極構造要素196(第2のスライダ195と連結している)と振動ビーム192との距離は、同図(a)のd4で示した「指定された第4の距離」から、同図(b)のd6で示す「指定された第6の距離」となる。なお、同図では、前記第1のスライド機構と前記第2のスライド機構とが、共に静電アクチュエータで構成されている例が示されているが、他の駆動原理によるアクチュエータであっても構わない。以上により、当該第1のスライダ198と第2のスライダ195とは、1組の前記静電アクチュエータにより、当該振動ビームに共に近接するよう駆動され、同図(b)に示すような「近接した」状態になる。
図23は本発明の実施例19であり、MEMS共振器の他の構成を示している。同図において、図22と同一番号は同一構成要素を示している。同図(a)において、第2のスライダ195には、2個の電極構造要素200、201が連結されており、第2の駆動系205を形成している。すなわち、当該第2のスライダ195に連結した電極構造要素は「1個」ではなく、第2−1の電極構造要素200と第2−2の電極構造要素201とに分離配置されていることが特徴である。一方、第1のスライダ198には、第1の電極構造要素199(分離されておらず「1個」である)が連結されており、第1の駆動系204を形成している。これらの駆動系204、205は、共通の振動ビーム192を挟んで対向するように配置され、かつ、個別に配置された静電アクチュエータなどのスライド機構により可動となっている。同図(a)は当該第1の駆動系204、第2の駆動系205が共に「離れた」状態を示している。同図(b)は当該第1の駆動系204のみが図中の矢印で示す方向に動いて「近接した」状態になった場合を、同図(c)は当該第2の駆動系205のみが図中の矢印で示す方向に動いて「近接した」状態になった場合を、同図(d)は当該第1の駆動系204と第2の駆動系205とが共に図中の矢印で示す方向に動いて「近接した」状態になった場合を、それぞれ示している。また、振動ビーム192と第1の電極構造要素199の間、および、振動ビーム192と前記電極構造要素200と201の間には、前記したような、直流バイアスが重畳された高周波信号が印加されている。しかしながら、振動ビーム192と電極構造要素199、200、201とが「離れた」状態にあるときには、当該高周波信号で振動ビーム192が振動することはない。この理由は、かかる状態においては、振動ビーム192と電極構造要素199、200、201との距離が離れているため、電界強度が小さく振動を励起することができない(前記した電気機械結合係数が小さい状態である)からである。一方、振動ビーム192と電極構造要素199、200、201とが「近接した」状態にあるときには、当該高周波信号で振動ビームが振動する。すなわち、前記第1の駆動系204と前記第2の駆動系205とは、「近接した」状態にある場合にのみ、振動ビーム192が振動することになる。
(1)例えば、第1の電極構造要素199を振動ビーム192の左端から1/3の位置に、第2−1の電極構造要素200を振動ビームの右端から1/3の位置に配置する(かかる構成では電極構造要素201は配置しない)ことにより、振動ビーム192の振動の振幅が最大となるモードを2次の共振モードにすることができる。
(2)例えば、第1の電極構造要素199を分離して2個の電極(便宜上、「第1−1の電極」と「第1−2の電極」とする)とし、前記第2−1の電極構造要素200(駆動電極)と前記第2−2の電極構造要素201(駆動電極)との配置の関係を、振動ビーム192に沿った両側に左側から順に、
「第1−1の電極、第2−1の電極、第1−2の電極、第2−2の電極」
となるようにする。かかる構成では、振動ビーム192の振動の振幅が最大となるモードを4次の共振モードにすることができる。上記した例のように、分離された電極構造要素の個数や、振動ビームとの相対的な配置位置を設定することにより、周波数の変化範囲を大幅に増大させることが可能である。図23には、図示した3個の電極構造要素199、200、201のセットにより、異なる共振モードで当該振動ビーム192を振動させることが示されたが、本実施例は同図の構成に限らず、多くの構成にも適用される。
図24は本発明の実施例20であり、MEMS共振器の他の構成を示している。本実施例においては、前記振動構造要素が単一ではなく、それぞれ長さが異なる2個の振動構造要素(ここでは「第1の振動構造要素」と「第2の振動構造要素」と称する)に分離されていることが特徴である。すなわち、前記振動構造要素は、振動ビームが長さの異なる2本(第1の振動構造要素(第1の振動ビーム212)と、第2の振動構造要素(第2の振動ビーム213)である)で構成され、それぞれが個別に振動する構成になっている。また、当該2個の振動ビーム212、213は共通の基台で固定されているが、この限りではない。同図において、第1の駆動系210は、スライダに連結した第1の電極構造要素215(駆動電極)と静電アクチュエータなどからなるスライド機構を有している。第2の駆動系211は、スライダに連結した第2の電極構造要素216(駆動電極)と静電アクチュエータなどからなるスライド機構を有している。これらのスライド機構は個別に制御されている。同図(a)は当該駆動系210、211が「離れた」状態であり、第1の駆動系210のみが「近接した」状態を同図(b)に、第2の駆動系211のみが「近接した」状態を同図(c)に、それぞれ、示す。また、直流バイアスが重畳された高周波信号などは省略されている。同図(a)では、第1の駆動系210と第2の駆動系211とが共に「離れた」状態にあるため、当該2個の振動ビームは振動しないことになる。同図(b)では「近接した」第1の駆動系210に連結している第1の電極構造要素215が、前記「第1の振動構造要素」である第1の振動ビーム212を振動させる。同図(c)では「近接した」第2の駆動系211に連結している第2の電極構造要素216が、前記「第2の振動構造要素」である第2の振動ビーム213を振動させる。当該振動ビーム212、213を、それぞれ異なった振動特性を有するように設定しておくと、同図(b)と(c)とでは、異なった周波数特性を得ることができる。なお、「異なった振動特性」を実現するために、同図では「長さが異なった振動ビーム」構成を採用しているが、この限りではない。例えば、同じ長さでもビームの厚さや幅を変えることもある。
図25は本発明の実施例21であり、MEMS共振器の他の構成、すなわち、ディスク型(円板形状)の共振器が示されている。同図において、図7と同一番号は同一構成要素を示している。図において、スライダ220は電極構造要素221(駆動電極)と連結されている。当該スライダ220は静電アクチュエータなどにより、図面の上下方向に動くことができる。また、ディスク222は振動することができるものであり、その形状は円形で、かつ、その中央部は基台部223で固定されている。当該ディスク222は、当該基台部223の領域を除き、浮上している。かかる構造は前記した製造プロセスと同様なプロセスで作成することができる。同図(a)は電極構造要素221とディスク222とが「離れた」状態を示しており、当該MEMS共振器を作成した直後の状態である。固定された櫛型電極38などにより、スライダ220は指定された方向(図では上向きの矢印で示す)に移動し、「近接した」状態が同図(b)に示されている。かかる状態では、電極構造要素221に印加された高周波信号により、当該ディスク222が振動する。なお、電極構造要素221の当該ディスク222に対向する面は曲面であり、同図(b)の状態で、当該ディスクとの間の距離が等しくなるような曲率を有していることが好ましいが、この限りではない。
図26は本発明の実施例22であり、MEMS共振器の他の構成、すなわち、ディスク型(円板形状)の共振器が示されている。同図において、図25と同一番号は同一構成要素を示している。本実施例では、第1の駆動系230と第2の駆動系231とが、当該ディスク222の周辺に対向して配置されている。当該第1の駆動系230は、第1のスライダ232、これと連結した第1の電極構造要素233、固定された櫛型電極を有する静電アクチュエータなどから構成されている。当該第2の駆動系231は、第2のスライダ234、これと連結した第2の電極構造要素235、固定された櫛型電極を有する静電アクチュエータなどから構成されている。同図(a)は第1の電極構造要素233と第2の電極構造要素235が、当該ディスク222から「離れた」状態を示しており、当該MEMS共振器を作成した直後の状態である。固定された櫛型電極などにより、当該第1のスライダ232が指定された第1の方向(図では上向きの矢印で示す方向である)へ移動し、かつ、前記第2のスライダ234が指定された第2の方向(図では下向きの矢印で示す方向である)へ移動し、共に「近接した」状態が同図(b)に示されている。かかる状態では、前記第1の電極構造要素233と前記第2の電極構造要素235とに印加された高周波信号により、当該ディスクが振動する。なお、当該第1の電極構造要素233と当該第2の電極構造要素235が当該ディスクに対向する面は共に曲面であり、同図(b)の状態で、当該ディスクとの間の距離が等しくなるような曲率を有していることが好ましいが、この限りではない。
図27は本発明の実施例23であり、MEMS共振器の他の構成、すなわち、八角形のディスク型共振器が示されている。同図において、ディスク270は八角形のディスクであり、4隅がビーム271を介して基台部272へ接続されている。また、ディスク270とビーム271は浮上しており、ディスク270が振動できるように配置されている。当該ディスク270の端部にはスライダ273に連結された電極構造要素274が対向配置されている。同図では、上下(図面上)2ヶ所に当該電極構造要素274が配置されている例が示されているが、これに限ることはない。すなわち、単一の電極構造要素274が配置された構造、4ヶ所に電極構造要素274が配置された構造などもある。スライダ273は両端がビーム275で支えられ、基台部276へ接続されている。また、電極277は、スライダに対向して配置された1組の電極である。当該電極277とスライダ273との間に、直流電圧(図示せず)を印加することにより、スライダ273はディスク270に向かって移動し、当該電極277に接触することにより、当該移動が停止する。すなわち、前記した「指定された第2の距離」まで、スライダ273がディスク270に近接して配置されることになる。
2 単結晶シリコン基板
3 駆動電極
4、45、90、91、247、256 直流電圧
5、72、73 ギャップ
6 ディンプル
10 構造要素
11、14、15、40 絶縁層
12、32、162、196、199、200、201、215、216、221、233、235、274 電極構造要素
13、33 振動構造要素
20、35、150、161、195、198、220、232、234、240、260、273 スライダ
21、25、37、41、82、83、193、194、223、242、272、276 基台部
22、110、120、135、140、151 突起
26 基礎母台
30、31、50、56、60、62、84、85、111、121、153、154、164、165、170、171、245、246 線分
38、70、71、197 櫛型電極
39、46、52、54、64、92、93 矢印
51 導電路
53 磁界
61 超音波振動機構
80、160 MEMS共振器
81、163、192、212、213 振動ビーム
87、249 直流バイアス
88、248、255 高周波信号
100、166、167、168、174 基板層
101、175、178 デバイス層
102 酸化膜層
103、105、181、182、183 マスク層
104、106、107、108、109、186、187、188、261 領域
130 突起母体
131、133 先端部
132、134 酸化シリコン層
152 ストッパ受け
172 溝
176、177 プラグ
190、204、205、210、211、230、231 駆動系
191 検出系
222、270 ディスク
243、277 電極
262 凸部
263 凹部
Claims (3)
- MEMSデバイスの1形態であるMEMS共振器であって、
スライダと、
前記スライダに連結した電極構造要素と、
前記電極構造要素とは第1の距離を介して対向して配置され、機械振動する振動構造要素とから構成され、
前記スライダは、指定された方向へ前記スライダをスライドさせるスライド機構を有し、
前記振動構造要素および前記電極構造要素は、単結晶シリコン層を含む積層構造であり、
前記スライド機構による前記スライダの移動量が、前記第1の距離よりも短い、指定された第2の距離で決定される共振器において、
前記スライダと設定距離を介して対向する電極を設け、
前記設定距離は、前記第1の距離と前記第2の距離との差であり、
前記スライダと前記電極とには、互いに係合する凹部と凸部とを形成し、この凹部と凸部は先細りとなる略三角形状であり、
前記凹部と前記凸部とが係合するまで前記スライダを移動させることで、前記電極構造要素と前記振動構造要素との距離が前記第2の距離となる
ことを特徴とするMEMS共振器。 - 前記スライダは、シリコンを含む材料で構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のMEMS共振器。 - 前記スライド機構はシリコンを含む材料で構成され、
静電気力を含む駆動力で前記スライダが移動する
ことを特徴とする請求項1あるいは2に記載のMEMS共振器。
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