JP5670034B2 - 薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法に関し、特に極薄の球状黒鉛鋳鉄の球状黒鉛組織を良好に保つことができる鋳造方法に関する。
鋳鉄は、鉄に比べ熱の伝導性が良好で熱の拡散性もよいばかりでなく、熱容量も大きいことから温まりやすく冷めにくい。また、析出した黒鉛(グラファイト)が多く油脂との馴染みもよい。また、黒鉛を加熱することで発生する遠赤外線の量も多いといわれている。
これらの理由から、鋳鉄製の加熱用調理容器が用いられ、ムラのない均一な加熱が可能となることが知られていた。また、また油馴染みが良いことから、焦げ付きにくいという特徴もある。さらに、長年使っても変形しにくい。そのため、プロ含む調理人にも多く使われている。
しかしながら、従来の鋳鉄製の加熱調理容器は、スキレットやダッチオーブン、或いは厚みが10mm以上あるステーキパンのような厚くて重いものが中心であった。鋳鉄製のフライパンもあるにはあったが、通常4.5〜5.0mm程度の厚みがあり、質量も2〜3kg或いはこれをはるかに超したため、通常は煮込みなど置きっ放しで調理することが多く、揺り動かして調理する料理には適してなかった。特に女性などには、重くて取り扱いにくいという問題があった。
そこで、本発明者は、特許文献1に示すように、球状黒鉛鋳鉄製の底部の厚さ1.2mm〜2.0mmのフライパンを開発し、続いて、0.3〜1.2mmのテストも行い、チル化せずに鋳造できることを確認した。
このような技術により、とりわけ厚さ1.0〜1.2mmの超薄肉のものにより、これまでの鋳鉄製のフライパンでは決して達成しえなかった軽量なフライパンを実現できた。これは、単に薄くしたものではなく、黒鉛を球状化することで薄くても割れにくく変形し難いものとしたものである。もともと鋳鉄は熱伝導率がよく、かつ熱の拡散性・均一性などに優れているので均一な加熱ができるが、従来の厚い鋳造品では、暖まりにくいという問題があった。これに比べ、このフライパンは肉薄のため温度上昇が早く、素早く調理に取り掛かれる。また、超薄肉でありながら熱容量が大きいため、食材を投入しても温度低下が少なく温度が安定している。また薄くても、黒鉛の含有量が多く遠赤外線の発生も大きいため、料理の全体を均一に加熱することができる。そのため、これまでにない画期的なフライパンを提供することができた。
ところで、従来でもこのような球状黒鉛鋳鉄の鋳造に金型を使用することが考えられた。しかしながら、球状黒鉛鋳鉄は凝固するときに膨張する性質があり、型に大きな力がかかるため、分厚い大きなブロック状の金型を用いていた。この場合、特に薄肉の球状黒鉛鋳鉄では、注湯したら金型により急激な温度低下が生じ、薄肉部にセメンタイト組織を形成させチル化を生じて球状黒鉛鋳鉄にはならなかった。チル化は、硬いが極めて脆く、球状の黒鉛も生じないため、上述のような特長はなくなり、フライパンの材質としては不適当なものとなってしまう。
また、金型は通気性がなく、湯まわり・加圧・吸引などにより空気を強制的に排出し、溶湯を金型内に導入する必要があった。特に湯回りのみに依存する大気鋳造での超薄肉の製品では、湯回りを良好にするため、溶湯の温度を上昇させることが考えられるが、溶湯の高温化はさらにチル化を強く促進することになってしまう。
このような理由から、一般にダイキャスト製法が用いられているアルミニウムやマグネシウム、錫、亜鉛の鋳造などと異なり、鋳鉄、とりわけ薄肉の球状黒鉛鋳鉄の鋳造には、砂型やシェル鋳型などが用いられ、金型は使用できないというのが当業者の技術常識であった。
そこで、従来は、特許文献2にも記載されているように、鋳型はレジンなどの熱硬化剤が混合又はコーティングされた砂を焼き固めて形成したシェル鋳型を製作して、ここに1500℃以上の高温に加熱した溶湯を注湯していた。このようなシェル鋳型は多孔質となっている。そのため、断熱効果から急激な温度低下を招かないためチル化も生じにくく、また、キャビティ内の気体の排出も円滑で、さらにある程度変形させることもできるため球状黒鉛鋳鉄の凝固時の膨張に対しても変形により対応できる。
特開2003−190021 特開2005−262243
このようにシェル鋳型を用いることで、薄肉の鋳鉄製品、特に良質な球状黒鉛鋳鉄製品を製造することができた。
ところが、製品完成後は、鋳型を割って製品を取り出すので、製品を1個作るたびに、鋳型を製作し、また鋳型を破壊するので、極めて煩雑な作業となっていた。
そこで本発明の目的は、製品1個ごとにする鋳型の製作、破壊が不要な金型でありながら、高品質の鋳鉄製品、とりわけ高品質の超薄肉の球状黒鉛鋳鉄製品を容易に効率よく鋳造することができる薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1に係る薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法では、厚みが2mm以下の薄板状の部分を有する薄肉球状黒鉛鋳鉄製品を大気鋳造により製造するため、球状黒鉛鋳鉄から形成され、固定側金型と可動側金型は鉛直方向に沿った分割面で分割されるとともに、前記薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の薄板状の部分におけるキャビティの金型の厚みを50mm以内の均一の厚みに形成された加熱部を有する鋳造用金型と、当該金型の加熱部を外部から加熱する加熱手段と、当該金型の温度を測定する温度測定手段と、当該温度測定手段により測定された温度に基づいて金型の温度を制御する制御手段とを備えた薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造装置を用いて、前記鋳造用金型の固定側金型と可動側金型を用いて、分割面をはさんで型締めする型締め工程と、前記制御手段が前記温度測定手段により当該薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の鋳造用金型の温度を測定しつつ、加熱手段により予め設定された設定温度以上で予め加熱する金型予熱工程と、当該加熱した金型に、1400°Cを超えない温度であって、且つ前記金型を予熱する設定温度との差が600°Cより小さくなるように予め設定した温度で溶解した元湯を注湯する注湯工程と、注湯した元湯を硬化させる鋳物凝固工程と、注湯した元湯が硬化後、固定側金型と可動側金型とを前記分割面で分離して鋳造された薄肉鋳鉄製品を取り出す型抜き工程とを備えたことを要旨とする。
ことを要旨とする。
この発明では、金型の厚みを一定にした加熱部を設けたため、外部からの加熱・冷却によりキャビティの内面の温度が均一に管理できるので、キャビティ内の鋳物の表面全体に対して適切な温度管理ができる。
したがって、このような構成の金型を使用することで、初めて、球状黒鉛鋳鉄のような温度管理が厳しい鋳物でも最適な温度条件で鋳込みができる。
なお、本請求項で「薄肉球状黒鉛鋳鉄製品」でいう「薄肉」とは、製品の厚みが2mm以下のものをいう。0.3〜1.5mmのもの、とりわけ、1.0〜1.2mmのものは、フライパンには理想的であり、本願の金型によって初めて量産を達成できたものである。なお、このような薄肉の部分が一部にあれば、他の部分にそれよりも厚みの厚い部分を備えていてもよい。例えば、フライパンの鍋部本体の厚みが2mm以下であれば、たとえ柄の部分が10〜50mmであってもここで言う「薄肉球状黒鉛鋳鉄製品」である。
また、本発明では、「球状黒鉛鋳鉄」とは、このような金型を用いて製造される基本的には「JIS G 5502」で特定されるものに準じるチルのない薄肉の球状黒鉛鋳鉄をいう。
「キャビティ」とは、「薄肉鋳鉄製品」を形成するための空間であって、湯口、湯道などを除いた部分である。
金型の厚みは、基本的にキャビティ内面のその位置における法線の方向に測った厚みをいう。
「均一の厚み」とは、本発明の目的である、キャビティ内の温度管理が可能な範囲で、熱伝導に大きな影響を与えなければ厚みが異なったり、リブや孔、ボス、溝などが形成されたりしていてもよい。
発明では、薄肉鋳鉄製品の鋳造用金型において、前記キャビティの薄板状部分の金型の加熱部の均一の厚みが、50mm以内に形成されていることを要旨とする。
この発明では、厚みが50mm以下であるため、キャビティ内までの加熱が容易であり、且つ厚みが均一であるため、均一な条件で金型を急速に加熱し、冷却することができる。また、厚みが薄いので球状黒鉛鋳鉄固有の凝固時の膨張に応じて型が多少変形するので、型にストレスが掛からない。さらに、金型の厚みが薄ければ、キャビティ内外に連通する通気孔を形成しやすい。
50mmとしたのは、金型の強度から考えれば厚ければ厚いほど好ましいといえるが、本願発明の課題から、外部からキャビティまで熱を伝導させてキャビティ以内の温度を管理するために、加熱する外部の加熱部の位置(ここから全方向に拡散して伝導する)と加熱されるキャビティ内壁の位置関係の対応から、50mmを超えると対応が難しくなることを考慮したものである。
さらに、加熱した熱エネルギーが予め設定されたキャビティ内壁まで伝導する時間と減衰から経験的に求められたものである。なお、望ましくは20mm以内が加熱・放熱の効率が良く、金型の強度も高く歪を抑制できる。なお、強度が確保できれば10mm以内でもよい。さらに、材質を選定し細かく温度管理を行なえば、もっと薄い金型としてもよい。
明の薄肉鋳鉄製品の鋳造用金型において、前記薄肉鋳鉄製品の薄板状の加熱部のキャビティの厚み方向の内寸が2mm以下であることを要旨とする。
この発明では、極めて薄い薄肉鋳鉄製品であれば、鋳造製品の温度変化や凝固時の状態変化における体積の変化の絶対値が小さくなり、金型へのストレスも小さく、型を疲労させることも少なくなる。2mmを越えると、厚み方向への体積変化が大きくなり、金型へのストレスが大きくなる。また、2mmを超える厚みの部分は湯流れもよく、部分的な温度低下も生じ難いため製造も容易であるので、本発明を適用する意義が小さい。つまり、超薄肉の球状黒鉛鋳鉄を薄型の金型で温度管理を厳密に鋳造する点が本願が究極的に目的とするところである。
明の鋳造用金型は、球状黒鉛鋳鉄から形成されていることを要旨とする。
この発明では、球状黒鉛鋳鉄を鋳造する場合は、鋳物と型が同じ熱収縮率をもつため、溶融した球状黒鉛鋳鉄の加熱・冷却過程で生じる金型との熱膨張の違いから生じるストレスを抑制できる。
また、鋳造により金型ができるので、たとえば鉄のブロックからの削り出しに比べて、同一形状の複雑な金型を低コストで量産することが容易である。
また、鋳鉄の中でも引張り強度が高く、金型の強度を高めることができる。
なお、急冷すると組織が変化しやすいが、焼きなましても球状化した黒鉛粒は維持され変質しにくく、むしろ黒鉛の球状化を促進するため、本願の条件の繰り返しの加熱に対しても耐久力がある。
明の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の鋳造用金型は大気鋳造用に構成され、固定側金型と可動側金型は鉛直方向に沿った分割面で分割されていることを要旨とする。
この発明では、加圧・吸引などの動力なしに、重力を生かして型内の湯流れを良好にすることができる。また固定側金型と可動側金型により型抜きも極めて容易で、鋳造時の鋳ばりも周縁に形成されるため、鋳ばり取り作業が容易になる。そのため、薄肉鋳鉄製品を容易に量産することができる。
本発明の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造装置では、金型の加熱部を加熱する加熱手段を備えたことを要旨とする。
この発明では、加熱手段を設けたため、金型の温度調整が容易にできる
発明では、薄球状黒鉛鋳鉄製品の製造装置において、前記金型の温度を測定する温度測定手段と、当該温度測定手段により測定された金型の温度に基づいて、前記加熱手段を制御して金型を予め設定された温度にする制御手段とを備えたことを要旨とする。
この発明では、温度計を備えるため、金型の温度が測定できるが、本発明の金型は均一の肉厚を備えるため、金型の表面温度を測定することで、キャビティ内の温度を容易に推定することができる。そのため、この表面温度に基づき制御手段によりキャビティ内の温度管理が自動的に適時に適温でできる。
この発明では、温度管理が厳しく、チル化やフェーディングを考慮しなくてはならない特殊な球状黒鉛鋳鉄においても、均一な厚みの加熱部を備えた特殊な形状の金型を使用することで、キャビティ内の均一な加熱・冷却を容易にしつつ、所望の温度管理を容易にすることで、極めて薄い形状の鋳物の部分であっても急激な温度低下による湯回りの悪化や、チル化を有効に抑制でき、かつ速やかに凝固させてフェーディングを有効に抑制して多数の良好な球状黒鉛を生成させ、良好なフェライト組織やパーライト組織を形成した球状黒鉛鋳鉄を形成できる。
そして、1つの金型があれば、鋳造毎の鋳型の製作・破壊をすることなしに連続して効率よく均質なフライパンなどの薄肉鋳鉄製品を量産できる。
明の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法において、前記金型予熱工程において、加熱手段は、前記金型の加熱部を含め、部分に応じて予め設定された温度で加熱を行ってもよい
この発明では、たとえばフライパンの本体部と柄部のような肉厚の違い、湯口からの距離による温度低下の抑制、その他湯回りを起因とする流速の違いなどに応じて、部分により温度条件を変えるようにすることができる。
明の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法において、前記金型予熱工程において、前記予め設定された設定温度は、薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の融点より低くするとともに、注湯時に大きな温度変化により生じ、チル化を生じない温度であるとすることができる。
この発明では、予熱温度を融点より低くすることで、金型へのダメッジを防止するとともに、注湯した溶湯が急激に冷却してチル化を生じない温度とすることで、本願のチル化防止の目的が達成できる。この温度は、実験的に明らかにすることができるが、一旦この温度に設定することで、量産時にも確実に温度管理ができチル化を防止することができる。
明の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法において、前記注湯工程において、前記加熱された金型に注湯する溶湯の温度が、1400°Cを超えないことを要旨とする。
この発明では、特に1400°Cを超える溶湯の高温化により接種物質の急激な減少により生じるため、そのような凝固時のチル化を有効に防止することができる。
発明では、前記注湯工程において、前記金型の予熱温度と、注湯する溶湯の温度との差が、600°Cより小さいことを要旨とする。
この発明では、注湯時の溶湯と予熱した金型の温度差が予熱しないときに比較して小さくなり、溶湯の急冷が有効に防止できるため、注湯時のチル化を抑制できる。
請求項に記載の発明では、請求項に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法において、前記金型予熱工程において、前記予め設定された設定温度は、金型が赤熱を開始する温度以上であることを要旨とする。
この発明では、実験的に赤熱する温度であれば、チル化を有効に防止することができ、かつ目視でタイミングがわかるため、現場での製造時の管理・確認が容易となる。
請求項に記載の発明では、請求項に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法において、前記金型予熱工程において、前記予め設定された設定温度は、700°C以上に設定されることを要旨とする。
この発明では、赤熱温度が概ね700°Cであるため、温度測定手段で設定が容易で、かつ制御装置により自動的に確実にチル化を防止することができる。
請求項に記載の発明では、請求項に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法において、前記金型予熱工程において、前記予め設定された設定温度は、A1変態点を所定温度超える温度に設定されることを要旨とする。
この発明では、金型を変態点を超える温度で予熱することで、確実にセメンタイトの析出を防止する。ここで、A1変態点とは、共析変態温度で、共析変態とは、オーステナイトからフェライトとセメンタイトが同時に析出し、パーライトを形成する変態である。ここで、鋳鉄の変態点はSi、Mnに対して次式で計算される。
変態点T(A1)(°C)=727+Si(w%)−7×Mn(w%)
例えば、球状黒鉛鋳鉄FCD400の場合では、Si:2.4〜3.0%、Mn:0.35〜0.45%以下であるので、727+3.0<T(A1)<727+2.4−7×0.45となり、よって、730>T(A1)>726.35である。「所定温度超える温度」は、生産開始時に初めて金型を加熱して、金型内部がまだ冷え切っているような場合では、加熱部の伝導速度と加熱部の厚み、加熱時間などから計算するか、実験により、想定される表面温度とキャビティ内の温度の差から加算する所定温度を求める。
請求項に記載の発明では、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法において、前記金型予熱工程において、前記予め設定された設定温度は、固相点を超えないように設定することを要旨とする。
この発明では、金型の固体が維持される融点である固相点(成分により変動するが、概ね1150°C)を超えないことで、重大な強度不足による変形や耐久性の低下を防止できる。
請求項に記載の発明では、請求項に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法において、前記金型予熱工程において、前記予め設定された設定温度は、850以上、900°C未満に設定されることを要旨とする。
この発明の温度の850°C以上、900°C未満は、セメンタイトを軟化する温度であり、余裕をもって確実にセメンタイトが形成されないことから、この温度に設定することで、少なくとも注湯時には薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の薄肉部はチル化しない。
請求項に記載の発明では、請求項乃至請求項のいずれか1項に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法において、前記金型予熱工程における前記加熱手段が注湯前の予熱から、注湯後も金型の加熱を行い、金型を予め設定された設定温度に維持する金型保温工程とをさらに備えたことを要旨とする。
この発明では、注湯後の金型が自然冷却によると急激に温度が低下してチル化を生じるような場合には、金型を加熱することで保温し、緩やかな温度低下としてチル化を防止することができる。通常のシェルモールドを含む砂型や、ブロック状の金型では、一般に自然冷却では冷却速度が遅く、強制的に送風など冷媒で冷却するような場合があった。しかしながら、本願に係る発明では、極めて肉薄の金型であるため、自然冷却でも短時間で冷却される。この場合、自然冷却では、鋳物の温度低下速度が大きく、チル化を生じてしまう場合がある。そのような場合には、加熱手段を備えているため、注湯後も加熱を連続して或いは断続的に加熱して金型を保温し、チル化を防止する。
請求項に記載の発明では、請求項に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法において、前記金型保温工程において、注湯後の金型の加熱は、予熱と異なる予め設定された設定温度とすることを要旨とする。
この発明では、予熱と保温とを同じ温度に設定したときに、鋳物の凝固時間が長くなり過ぎるときには、フェーディングの可能性も生じる。また、チル化をしない範囲では、型抜きは早ければ早いほうが生産性が高まる。そこで、本発明では鋳物の凝固時間に応じて、金型加熱の設定温度を低くすることができる。
請求項に記載の発明では、請求項7又は請求項8に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法において、前記金型保温工程において、前記予め設定された設定温度を、注湯後の時間経過に伴って漸次低下させていくことを要旨とする。
この発明では、予熱により注湯後直後のチル化を防止しつつ、さらに金型を保温することでチル化を防止しつつ早期に凝固をさせるために、注湯直後の急激な温度低下は避けつつ、漸次保温温度を低下させることで、チル化の防止と早期凝固を達成するものである。
請求項10に記載の発明では、請求項乃至請求項のいずれか1項に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法において、前記金型保温工程において、前記予め設定された設定温度を、注湯から薄肉鋳鉄製品の凝固までが1分以上2分以内となるように温度設定することを要旨とする。
ここで、1分以上としたのは、これより短い時間で凝固させると、経験的にチル化の虞が大きいからである。一方、2分以内としたのは、これより長いと品質の差が無いのにもかかわらず生産性が低くなるからである。
請求項11に記載の発明では、請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法において、前記注湯工程において、前記加熱された金型に注湯する溶湯の温度が、1230°C以上1380°C 以下とすることを要旨とする。
請求項12に記載の発明では、請求項乃至請求項10のいずれか1項に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法において、前記注湯工程において、前記加熱された金型に注湯する溶湯の温度が、薄肉鋳鉄製品の融点より50°C高い温度以上、かつ融点より200°C度高い温度未満であることを要旨とする。
この発明では、融点(液相点・およそ1180°C)より50°C高く、粘度が下がり流動性を確保できる温度(およそ1230°C)とし、かつ、チル化しにくい融点より200°高い温度(およそ1380°C)未満とすることで、好ましい流動性と、有効なチル化防止のいずれもが達成できる。
そのため、具体的には、球状黒鉛鋳鉄の場合は加熱された金型に注湯する溶湯の温度が、1230°C以上1380°C 以下が好ましい。
請求項13に記載の発明では、請求項乃至請求項10のいずれか1項に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法において、前記注湯工程において、前記加熱された金型に注湯する溶湯の温度が、融点より50°C高い温度以上、かつ融点より100°C度高い温度未満であることを要旨とする。
この発明では、融点(液相点・およそ1180°C)より50°C高く、十分に粘度が低下して流動性を確保できる温度(およそ1230°C)とし、かつ、チル化しにくい融点より100°高い温度(およそ1280°C)より低い温度とすることで、より好ましい流動性と、より有効なチル化防止のいずれもが高いバランスで達成できる。
請求項14に記載の発明では、請求項乃至請求項10のいずれか1項に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法において、前記注湯工程において、前記金型の予熱温度と、注湯する溶湯の温度との差が、400°Cより小さいことを要旨とする。
この発明では、注湯時の溶湯と予熱した金型の温度差が予熱しないときに比較して極めて小さくなり、溶湯の急冷が有効に防止できるため、注湯時のチル化をさらに抑制できる。
請求項15に記載の発明では、請求項乃至請求項10のいずれか1項に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法において、前記注湯工程において、前記金型の予熱温度と、注湯する溶湯の温度との差が、200°Cより小さいことを要旨とする。
この発明では、例えば、注湯時の溶湯1250°C、予熱した金型の温度を1050°Cとしてその温度差を200°C以内とすれば、溶湯と予熱した金型との温度の差がほとんどなく、溶湯の急冷が有効に防止できるため、注湯時のチル化を防止できる。
本発明の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法によれば、製品1個ごとにする鋳型の製作、破壊が不要な金型でありながら、薄肉で高品質の鋳鉄製品、とりわけフライパンなどの高品質の球状黒鉛鋳鉄製品を容易に効率よく鋳造することができる。
本実施形態の鋳造用の金型と、この金型により鋳造した薄肉鋳鉄製品であるフライパンと、鋳造後の後処理を示す斜視図。 閉じた状態の金型と、加熱手段を示す正面図。 閉じた状態の金型を示す平面図。 可動側金型を分割面側から見た左側面図。 固定側金型を分割面側から見た右側面図。 図4のA−A線から見た可動側金型の断面図。 図5のB−B線から見た固定側金型の断面図。 (a)本実施形態の通気調整部材を示す斜視図。(b)C−C線から見た断面図。 本実施形態の通気孔の構成を示す断面図。 通気孔の第2の実施例の構成を示す断面図。 通気孔の第3の実施例の構成を示す断面図。 通気孔の第4の実施例の構成を示す断面図。 通気孔の第5の実施例の構成を示す断面図。 本実施形態の金型による鋳造の工程図。 本実施形態の薄肉鋳鉄製品の製造装置の平面図。 本実施形態の溶融炉の断面図。 本実施形態の注湯工程を示す斜視図。 本実施形態の金型及び型締め装置の側面図。
(第1の実施形態) 以下、本発明を具体化した薄肉鋳鉄製品である球状黒鉛鋳鉄製のフライパンの鋳造用金型及びこれを用いた製造装置、及び鋳造方法の一実施形態を図1〜図9、図14〜18を参照して説明する。本実施形態では、特に、薄肉鋳鉄製品の特性を好適に生かした球状黒鉛鋳鉄製の厚さ1.2mmのフライパンFを例として本発明を説明する。
(金型の概要) 本実施形態では、鋳型として、金型2を採用している。その理由として、従来は砂型やシェル鋳型などのように製品を1個作るたびに鋳型を製作し、また製品完成後は鋳型を破壊するので、極めて煩雑な作業となっていたからである。そこで、本発明は、固定側金型3と可動側金型4を備え、型締め、型開放を繰り返し、連続的に鋳込みができる特殊な構成の金型2を採用することでこれを実現した。
(球状黒鉛鋳鉄) ここで球状黒鉛鋳鉄について説明する。鋳鉄の中には白鋳鉄、ねずみ鋳鉄、CV鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄などの種類があるが、球状黒鉛鋳鉄は、基本的には「JIS G 5502」で特定されるものである。この球状黒鉛鋳鉄は組織中に球状の黒鉛(グラファイト)を含んだ鋳鉄であり、ねずみ鋳鉄などと比較して基地が連続しているため強靭な性質を有し、ダクタイル鋳鉄とも言われている。その製造法は、溶解したC、Siを高度に含んだFeに、MgやCeを接種して元湯を生成し、フェロシリコン(Fe−Si)を接種し、緩慢に冷却して凝固時に析出するグラファイトを球状化させるものである。球状黒鉛鋳鉄では基地組織のパーライトとフェライトの割合を制御することでFCD800からFCD400までを作り分けている。パーライト量を多くするには、パーライト安定化元素であるCu、Sn、Mg、Cr、Mnなどを適当量添加する手法が一般的である。これに対してフェライト基地にするには、パーライト安定化元素の含有量をできるだけ少なくして、Siなどの黒鉛化元素を多めにする。特にMnを0.45%から0.35%以下に抑えることで、FCD400−10とFCD400−15のように、伸びが変化する。本実施形態では、フライパンの特性として、硬度よりも割れにくい粘りを重視するため、フライパンFの基地は主にフェライトが中心となっている。なお、これらの成分によっても溶湯の流動性や、融点・凝固点が変化する。
なお、球状黒鉛鋳鉄は、鋳込み時に急速に温度が低下すると、球状のグラファイトが析出せず、セメンタイト(Fe3C)となって白化してしまい、硬いが脆くなってしまう(このように球状黒鉛を析出しないでセメンタイトとして凝固することを「チル化」するという。)。また、長時間高温で溶解したままにすると、溶融しているMgが酸化や蒸発により減少してしまうため、黒鉛が球状化しない(「フェーディング」という。)という性質がある。
また、球状黒鉛鋳鉄では凝固時に球状黒鉛が析出するため体積が増加するという特徴があり、さらに凝固後は温度の低下とともに体積が減少する。このため、鋳型はこの体積の変化に対応できなければならない。
このように、鋳造用鋳型、特に球状黒鉛鋳鉄の鋳型には、通常の白鋳鉄や、ねずみ鋳鉄やCV鋳鉄のような鋳物と比較して、さらに極めて厳しい条件が課せられる。
このため、球状黒鉛鋳鉄の鋳造は、原料の選択、時間管理と温度管理に加え、鋳型の構成が極めて重要となってくる。
このような球状黒鉛鋳鉄を金型で鋳造することは困難であったのを、本実施形態では、以下に述べるような種々の技術的な特徴を有する鋳型の構成で可能としたものである。
さて、本実施形態の金型について、図1〜9を参照して、以下詳細に説明する。
(金型外形形状) 図1に示す金型2は、大気鋳造用(重力鋳造用)に構成され、溶湯を圧入したり吸引したりする設備は基本的に不要である。金型2は、固定側金型3と可動側金型4を備える。固定側金型3と可動側金型4は、鉛直方向に沿った分割面33,43で分割される。
図2に示すように固定側金型3と可動側金型4とは、分割面33,43が相互に当接する状態でキャビティ面32,42の内面によりフライパンFの形状のキャビティ25(図2参照)であるが形成される。
また、図2、図3に示すように、鋳込み時には、ロート状の注湯口38,48が上面の湯口34、44に合わせた位置に取り付けられ、湯口34、44への溶湯Mの注湯を容易にしている。
図18に示すように、固定側金型3を所定位置に固定し、注湯のため可動側金型4を固定側金型3に対して当接して型締し、また型抜きのため離間して開放するとともに分割面を下方に反転して鋳上がったフライパンFを下方に離脱させるように支持する金型支持装置60を備えている。詳細は後述する。
(金型の材質) この金型2は、溶湯Mの温度と、凝固時の応力と、予熱や保温における繰り返しの加熱・冷却に対応できれば、材質は問わないが、実施形態では、フライパンFの材質と近い球状黒鉛鋳鉄から形成されている。但し、完全に同一ということではなく、熱膨張率が略同一な材質で、金型として耐久性、特に加熱時の強度が落ちないような材質が好ましい。また、鋳込み時の鋳物の収縮に対して、割れを生じないで変化を吸収できる材質が要求される。また、鋳物であれば、他の種類でも同一の金型を量産するのに適している。一方、銑鉄によれば耐熱性に優れるが、削り出しの必要から量産に難点がある。
(湯口、湯道、堰口) 図4、図5に示すように、固定側金型3、可動側金型4には、湯口34,44が分割面33,43に沿って鉛直方向に刻設されている。湯口34,44は、その最下部にそれぞれ湯口底34a、44aを備え、その若干上部から水平に湯道35,45がそれぞれ設けられ、湯道35,45は、本体キャビティ面32a、42aの側端部に配置された堰口36,46を経て、キャビティ25に連通している。堰口36,46は、湯道35,45からの溶湯Mの速度を制御し、ゆっくりとキャビティ25内にゆっくり流入させる目的で断面積が湯道35,45より小さくなっている。
(キャビティ) 従来は、直方体の鋳物ブロックに製品の形状に応じたキャビティを彫り込んで形成していた。図6、図7に示すように本実施形態の金型2では、固定側金型3、可動側金型4のキャビティ面32,42の厚み方向に金型の厚みD1を均一の厚みに形成した。その厚みD1は、例えばフライパンFの薄板状の本体11部分(図1参照)のキャビティ面32,42部分において一律にD1=20mmとなっている。その他のフレーム31,41部分で概ね厚みD2=30mm程度とした。
(フライパン形状) キャビティ25は、基本的にフライパンFの形状の空間からなる。ここで、フライパンFの形状を説明すると、図1に示すように平らな円盤状の内底部14を備え、周縁部13が立ち上がった皿状の本体11と、この本体11と一体に形成された柄12が斜め上方に向けて突設されている一般的なフライパンである。そして、この本体11は、直径がおよそ26cmで、厚みが内底部14も周縁部13もいずれも鋳鉄フライパンとしては異例に薄い1.2mmで、均一の厚みになっている。
また、図1に示すフライパンFでは見えないが、その外底部15は、同図の固定側金型3のキャビティ面32や、図4に示す固定側金型3のキャビティ面32に示されるように、外底部15の周囲を囲む円形のリブ32cと、この円内を22.5度ごとの扇状に均等に分割するリブ32dとを備えている。
一方、柄12は、概ね断面形状が楕円形をなしている。そして、本体11につながる基部から、先端に向かって幅が2cmから3.5cm程度に次第に広がっている。最大およそ1cmの厚みがあり、そして先端は円周状に丸く形成され、ここには収納用の掛止孔16が開口されている。
(キャビティ形状) 次に、キャビティ25の形状を説明する。上述のとおり、キャビティ25の形状はフライパンFと同形の空間を有している。そして、キャビティ面32,42は、フライパンFの本体11に対応する本体キャビティ面32a,42aと、フライパンFの柄12に対する柄キャビティ面32b、42bとから構成される。従って、本体11に対応するキャビティ25の空間の厚みは、1.2mmとなっている。また、図1に示すように本体キャビティ面32a,42a部分が下部に、柄キャビティ面32b、42bの部分は上部になるように配置されている。
図2、図3に破線で示すように、本体の周縁部13が、固定側金型3と可動側金型4の分割面33、43と一致するように配置されている。そして、フライパンFの外底部15側が固定側金型3側に突き出しており、固定側金型3のキャビティ面32には、本体11の外底部15の形状に沿った凹部が形成されている。
一方、可動側金型4のキャビティ面42には、本体11の内底部14の形状に沿った分割面43から凸部が形成される。
また、図1の固定側金型3に示すように、柄12の形状に沿って、固定側金型3の分割面33の鉛直な一般面から可動側金型4側に突出するように分割面33の凸部33aが形成されている。また、図7に示すように、可動側金型4にはこの分割面の凸部33aに対応する形状で分割面43の鉛直な一般面からへこんだ凹部43aが形成されている。そして、図2に示すように、この分割面の凸部33a、凹部43aに、柄12に対応する柄キャビティ面32b、42bが形成される。
ところで、図4、図5に示すように、湯道35、45と連通する堰口36,46がキャビティ面32,42の側端部に開口されている。このため、溶湯Mは、フライパンFの本体11の側端部から流れ込んで下部から充填され、次いで柄12が充填される。
なお、分割面33,43の凸部33a、凹部43aは0.5mm程度離間して吐かせ湯のための空間が形成されている。
(補強リブ) 図1の可動側金型4の本体キャビティ面42a(不図示)の金型外部には、金型補強リブ49が設けられている。この金型補強リブ49は、本体キャビティ面42a部分の金型の壁の厚みを20mmと一定に保ったままで、補強のために設けたものである。図4、図6に示すように、固定側金型3の本体キャビティ面32aの金型外側にも、鉛直方向と水平方向に延びた突条である金型補強リブ39が形成されている。金型補強リブ39,49は、厚みが、本体キャビティ面32a,42aの金型の壁の厚みと同程度の20mmである。ここでは本体11を十字形に補強しているが、もちろん薄肉鋳鉄製品の形状や求められる強度に合わせて適宜位置・幅・高さ・数などは決定されるものである。特に、加熱部24において、加熱による歪み方向に沿って設けたり、三角トラスとなるように設けることも効果的である。
(通気孔) 図6、図7に示すように、金型2は、注湯時の金型2内部の気体を排気するため、キャビティ25内と、外気を連通する内径3〜10mm、ここでは6mm程度の多数の通気孔5が穿設されている。
この通気孔5は、実施形態では、図4、図5に示すように、キャビティ面32,42には薄肉部である本体11に対応する本体キャビティ面32a,42aのみならず、厚肉部である柄12に対応する柄キャビティ面32b,42bにも設けられている。また、密度は概ね1cm当たり1個/以上の密度で配置されていることが好ましいが、これに限定されるものではない。さらに、実施形態では、本体11に対応する本体キャビティ面32a,42aでは、同心円状に通気孔を所定間隔おきに設けているが、マトリクス状や、三角形を構成するような配置でもよく、配置する密度を変更して気体の溜まりやすい部分に集中して設けてもよい。ここで、気体は、空気に限らず、不活性ガス、水蒸気や溶湯Mから蒸発した金属の気体も含まれる。いずれにしても、気体の存在は湯回りを悪化させたり気泡の原因となったりするため、排気すべきであるからである。
(通気調整部材) ここで、図8に本実施形態の通気調整部材6を示す。この通気調整部材6は、材質は鉄で、通気孔5に挿入されて通気孔5の孔の断面積を調整するための金型本体とは別部材からなる。図8(a)に示すように、通気調整部材6は、外形形状が、その外径が通気孔5の内径と略同じで、一方が開放した概ね円筒形で、打ち込み側端部には、先端に行くに従って断面積が小さくなるような逆円錐台状のテーパ6aが付いている。キャビティ側端面は閉じられるとともに、4つのスリットが平行に設けられている。具体例としては、アルミ合金の低圧鋳造用ガス抜きベントとして開発された、住重フォージング株式会社製の商品名「GHベント」のような鋳造用ベントホールなどが挙げられる。
また、図8(b)に示すように、内部は中空で、キャビティ側端部には、4本のスリット6bから外部と内部を連通するようにテーパ状の空間が形成されている。スリット6bの幅は0.1mm〜0.5mm程度であり、好ましくは0.3mm程度である。0.1mmより小さいと目詰まりしやすくシェル鋳型などと比較して通気性が下がってしまうことがある。0.5mmよりスリット幅が大きいと、通気性はよくても耐圧強度や平面性の点から不利となる。このことから特に、スリット6bは、0.3mm程度が望ましい。
なお、0.3〜0.5mm程度のスリット幅や、さらに大きなスリット幅であっても、このスリット内部に後述するようなセラミックスを充填して、ボンドコートを施すことで、通気性はもちろん、耐圧強度や平面性の点の問題も解決できる。さらに、鋳肌もスリット跡を完全に消失させることができる。
また、耐圧性を確保しつつ、目詰まりしにくく、加工しやすいことからスリットとしているが、通気量と強度が確保できれば、スリットに限定されるものでなく、円形の多数の孔やメッシュ状でもよい。
(通気調整部材の装着方法) 次に、図9に示すように、この通気調整部材6は、この通気調整部材6の外径と概ね同径の内径とされた通気孔5に挿入される。金型2に開口された円形の通気孔5にこの通気調整部材6がスリット6bがキャビティ面32,42側になるように、キャビティ面32,42側から圧入される。このとき、通気調整部材6は下端部にテーパ6aが付けられているため、容易に圧入され、その位置で通気調整部材6の外周と通気孔5の内周とが密着して固定される。そして、スリット6bのある面が、キャビティ面32,42の一般面と面一か、面一より多少(例えば1mm程度)へこむ程度まで押し込む。
また、面一とするときでも、通気調整部材6は、キャビティ面32,42の一般面より0.1〜0.2mm程度突出させて、グラインダなどで研削し、面一としてもよい。
(セラミックスの充填) そして通気調整部材6をへこませた場合には、この凹みに多孔質材料、たとえば多孔質セラミックス7を均すように充填する。この多孔質セラミックスは、キャビティ面32,42の内面に、少なくとも通気孔5のキャビティ面32,42側の開口部を含む部分に充填される。さらに、通気孔5以外の部分にコーティングしてもよい。この多孔質セラミックス7は、たとえばアルミナの粉末を水練りして充填し、自然乾燥で固める。このセラミックスは、気体は通過させるが、溶湯Mとの濡れ性が低く、溶湯Mが微細な気孔や間隙に進入することがない。
(ボンドコート) そしてこの上から、クロムニッケルのボンドコート8aを行なう。ボンドコート8aは耐熱性が高いが、通気性は劣るので、例えば0.05mmを超えない程度とする。
(中間コート) ボンドコート8aの上には中間コート8bが重ねられるが、中間コート8bは、ニッケル60%、アルミナ・ジルコニア40%の配合で、膜厚は0.1mmとする。
(トップコート) トップコート8cは、中間コート8bよりアルミナ・ジルコニアの割合を増やして、ニッケルを減らし通気性を高め、膜厚は0.1mm〜0.15mmとする。
(三層コーティング) これで、ボンドコート8aと、中間コート8bと、トップコート8cの合計三層で0.25mm〜0.3mmの膜厚になる。
キャビティ25内は、できるだけ研磨して平滑にしておくことが望ましい。もし、コーティングが剥がれやすいような場合には、コーティングに先立ち、キャビティ面32,42の内面をサンドブラストやビーズのブラストで表面に微細な凹凸を形成し、コーティングが剥がれ難いようにしてもよいが、湯流れを損なうことがないようにしなければならない。
この発明では、特に金型の素材が、鋳物と同じ球状黒鉛鋳鉄の場合は、例えば耐熱性の高いNi系のボンドコートを行なうことが極めて好ましい。三層のボンドコートにより、通気性を妨げないようにしつつ、キャビティを有効に熱から保護する。
そして、金型内を極めて平滑にすることで、湯回りを良好にし、薄肉鋳鉄製品の鋳肌を極めて平滑にすることができ、後加工なしでも光沢のある製品を簡単に製造することができる。
さらに、ボンドコートは離型性を極めて良好にする。そして、このボンドコートがあれば、次項の塗型剤なしでも、好適に薄肉鋳造製品を鋳造することができる。
さらに本願の発明者は、このNi−アルミナ・ジルコニアのボンドコートを行なうことで、金型の耐久性を著しく高め、寿命を極めて長くすることを見出した。
(塗型剤) キャビティ面32,42内には、鋳肌を美しくし、焼付きを防止するため、塗型剤9を塗布する。塗型剤9は、例えば、黒鉛系塗型剤である金型鋳造用塗型剤(具体例:岡崎鑛産物株式会社製商品名オカガードR−51改)や、アルミナ系塗型剤であるアルミナ(Al2O3)系金型鋳造用塗型剤(具体例:岡崎鑛産物株式会社製商品名オカガードS−71)などが使用できるが、実施形態では、黒鉛塗型剤を使用している。
なお、上述のようなボンドコートを施したような場合は、塗型剤を省略することができる。
塗布に当たっては、三層にコーティングされた上から更に塗型剤を120〜200°Cに予熱した金型にエアースプレーにて塗布する。なお、コーティングなしの金型に塗布する場合は、剥離対策上、出来るだけサンド・ガラスビーズ等にてブラスティング及びワイヤーブラシ処理等を行った後、120〜200°Cに予熱した金型にエアースプレーにて塗布する。膜厚は0.1〜0.2mmとする。塗膜は使用前にガスバーナー等で、軽く焼成して水分を除去する。
なお、図9において、多孔質セラミックス7、ボンドコート8a、中間コート8b、トップコート8c、塗型剤9の厚みは説明のため誇張している。
(金型の加熱装置20) 図2に示すように、加熱装置20,20が、金型2を両側から挟むように近接して配置される。
加熱装置20は、ガスバーナ−を備え、金型2の本体キャビティ面32a,42aの外面に設けられた固定側金型加熱部32e、可動側金型加熱部42c(以下まとめて「加熱部24」という。)の表面を矢印方向に直接炎で加熱する。
ガスバーナーは、主バーナー20aと種火バーナー20bを備える。主バーナー20aは、複数のガスノズルを備え、図示しないバルブがそれぞれ制御手段である制御装置23により開閉されてガス供給装置22から供給される可燃ガスを噴射する。種火バーナー20bは、主バーナー20aの点火のために、金型2の加熱部24に向けて常時点火されている。この種火バーナー20bは、主バーナー20aが消火している場合に、金型2、2の温度が急激に下がらないように、漸次温度が低下する程度に加熱することができる。
金型2,2の近傍には、温度測定手段として、金型2,2の外面の表面温度を測定する放射温度計21が設けられ、金型2から発する赤外線から、遠隔で金型2の加熱部24の表面温度を測定する。
この放射温度計21により測定された金型2,2の表面温度に基づいて、加熱装置20を制御する制御装置23を備える。制御装置23は、周知のコンピュータを備え、予め記憶されたプログラムに従い、所定のタイミングで、金型2,2を所定の温度に予熱し、保温する。
なお、本実施形態の金型2では、加熱部24を備え、固定側金型3、可動側金型4のキャビティ面32,42の厚み方向に測った金型の厚みD1を均一の厚みに形成した。その厚みD1は、例えばフライパンFの薄板状の本体11部分(図1参照)のキャビティ面32,42部分において加熱部24を形成し一律にD1=20mmとなっている。その他のフレーム31,41部分で厚みD2=30mm程度とした。そのため、固定側金型加熱部32e、可動側金型加熱部42cを均一に加熱すれば、金型2の表面から均一かつ速やかに金型2の内部に熱が伝導し、キャビティ面32,42の内壁に同時に熱が到達し、均一に温度上昇する。そのため、キャビティ25内部で実際に温度を測定しなくても、固定側金型加熱部32e、可動側金型加熱部42c、つまり加熱部24の表面温度を測定すれば、容易にキャビティ面32,42の温度管理ができる。
特にこの金型2は、球状黒鉛鋳鉄製であり、熱伝導が良好で固定側金型加熱部32e、可動側金型加熱部42cを加熱すれば速やかにキャビティ面32,42内部の温度を上昇させることができる。また、球状黒鉛鋳鉄は熱容量が大きく、キャビティ25内部の溶湯Mに対して安定した熱環境を与える。さらに、球状黒鉛鋳鉄は加熱・冷却に対して、鋳物と同等の熱膨張・熱収縮をするため、鋳物の冷却時点でのストレスが極めて小さい。そして、球状黒鉛鋳鉄は、砂型は言うまでもなく他の金属鋳物に比べても引張り強度が大きい(JIS G5502参照)。したがって金型2が薄くても、大きな熱変化において、破損しにくい。
このように構成された加熱装置20では、放射温度計21の測定結果に基づき、制御装置23により加熱装置20で金型2を加熱する。このとき、溶湯Mの温度が下がりやすい下流側を強く温めたり、キャビティ25内部の狭くて流動性が悪化しやすい場所を重点的に加熱したりすることも望ましい。
逆に、凝固しにくい、厚みのあるフライパンFの柄12の部分などは、加熱しないような構成としてもよい。
さらに、金型全体の熱変形に応じて、特定部分を加熱し、或いは加熱しないようにして金型のストレスを抑制することも望ましい。
なお、具体的な設定温度については後述する。
(金型支持装置) 図15に示すように、複数の金型支持装置60は、それぞれ金型2を支持している。各金型支持装置60は、支持した金型2の注湯口48を、溶融炉50の近傍の注湯ポイント56に移動できるように、レール61,61上を移動可能に構成されている。
図18に示すように、レール61上を移動できるように、機台62は、両端に車輪63,63を備えた車軸64を有し、モータ65により駆動される。
固定側金型3を支持する固定側金型支持部66は、機台62の一端側に配置され、固定側金型3の背面には加熱装置20が配置される。
また、可動側金型4を支持する可動側金型支持部67は、機台62の他端側に配置され、可動側金型4の背面にも加熱装置20が配置される。
可動側金型支持部67は、移動機構68を介して可動側金型4を支持しており、可動側金型4は、固定側金型3と型締め・型開き可能に移動される。また、可動側金型支持部67は、水平に配置された回動軸69aを備えた回動機構69を備え可動側金型4を90度回転させて、分割面43を鉛直下方に向けることができる。分割面43が鉛直下方に向けられた可動側金型4の鉛直下方には、ベルトコンベア70が配設され、型抜きされ、落下されたフライパンFを載せて、次工程に搬送する。なお、可動側金型4の背面にも加熱装置20が配置されている。
(溶融炉) 本実施形態では、図16に示すような超小型の溶融炉50を用いて原料を溶解する。溶融炉50は、高周波誘導炉で、高周波誘導加熱コイル51、浮揚用コイル52を備え、浮揚用コイル52で原料を浮遊させて、高周波誘導加熱コイル51の渦電流で加熱・溶解する。溶融炉50の側壁50aは、冷却パイプ58が内部に設けられ、冷却液が循環して側壁50aを冷却している。
この溶融炉50は、炉台59上に固着され、炉台59は、回動軸59aを軸に傾動し、注湯ポイント56にある金型2の注湯口48に、溶融炉50内で浮揚している溶湯Mを注湯する。
また、図15に示すように、溶融炉に電力を供給する電源装置53、冷却パイプ58に冷媒を循環させる冷却装置54、溶融炉50の加熱、注湯のための炉台59の傾動制御などを行なう溶融炉制御装置55が、溶融炉50の近傍に配置されている。
(金型による鋳造方法)
図14のフローチャートに沿って、以上のように構成された金型2による薄肉鋳鉄製品であるフライパンFの鋳造方法を説明する。
(製造方法の概略) 図14に示すように、フライパンFの製造方法は、この製造装置を用いて、以下のように行なう。まず、フライパンFの金型2の固定側金型3と可動側金型4を用いて、分割面33,43をはさんで型締めする型締め工程(S1)を行う。次に、制御装置23が放射温度計21により金型2の加熱部の表面温度を測定しつつ、加熱装置20により金型2を予め設定された設定温度に加熱する金型予熱工程(S2)を行う。そして、元湯生成工程(S3)では、予め溶融炉50(図15、16参照)で元湯を溶解しておく。この溶解した元湯を、加熱した金型2に、を注湯(図17参照)する金型注湯工程(S4)を行なう。続いて、注湯した金型を急冷させないための金型保温工程(S5)を行なう。そして、注湯した元湯を硬化させる鋳物凝固工程(S6)を行う。そして、鋳物硬化後に、固定側金型3と可動側金型4とを分割面33,43で分離する金型開放工程(S7)に続き、鋳造されたフライパンFを取り出す型抜き工程(S8)を行う(図18参照)。最後に、抜き出したフライパンFの鋳ばり取りなどを行なう後処理工程(S9)とを行う。
(型締め工程(S1))
図18に示すように、金型支持装置60に予めセットされた可動側金型4は、固定側金型3に対して、移動機構68により、接離自在に支持されている。図18において可動側金型4は開放した状態である。まず、この状態で、金型2に必要があればキャビティ内に塗型剤を再塗布し、120〜200°Cで乾燥する。
次に、図18に示す状態から、移動機構68により可動側金型4を図上左方向に移動させて分割面33,43を当接させ、さらに移動機構68の図示しない油圧機構で分割面43を分割面33に圧接させ、図2に示すように金型2を型締めする型締め工程(S1)を行なう。
(金型予熱工程(S2))
(金型の予熱) さらに型締めした金型を予め設定された設定温度まで加熱する金型予熱工程(S2)を行なう。この金型予熱工程(S2)では、型締めした金型2を挟むように近接配置した加熱装置20,20により矢印で示した方向に金型2の全体を加熱する。もちろんこのとき、溶湯Mの温度が下がりやすい下流側を強く温めたり、キャビティ25内部の狭くて流動性が悪化しやすい場所を重点的に加熱したりすることも望ましいが、ここでは単一の設定温度とする。
(予熱温度の設定)
金型2の予熱における課題は、第1に急激な冷却により黒鉛が球状化しないセメンタイトの生成を防止することにある。
第2には、金型内での湯回りの改善にある。たとえ、チル化が起きなくても、キャビティの幅が0.5〜1.5mmという超薄肉の球状黒鉛鋳鉄であると、流動性の低下が、そのまま欠けやヒケ、ピンポールなどの原因となる。そのため、湯回りの過程でも高い流動性を維持できるように、溶湯が金型から熱を吸収されないようにすることが必要である。この意味では、金型の予熱は高ければ高いほどよい。
第3には、金型2の予熱により金型自体が変形するが、鋳物の寸法精度を許容範囲より低下させない温度設定とすることである。
第4には、金型2の予熱により、金型2自体の組織構造を変化させて強度を低下させたり、耐久性を低下させないことである。
以上の点を鑑みて、予熱温度の設定をする。
まず、第1の課題を達成するために、第1の方法として、注湯された溶湯Mが金型2に接触しても、セメンタイトが生成されないで、パーライト組織若しくはフェライト組織となる温度であるA1変態点以上に金型2内部の温度を維持することが効果的である。この変態点は成分によっても変化するが、一般に球状黒鉛鋳鉄では、およそ727°C近傍である。
しかしながら、金型2内部の正確な温度は測定が困難であることから、金型2の表面温度をもって、キャビティ内部の温度を推定する。本実施形態では、厚みが薄く均一な加熱部24を備えた金型2を用いたから、外部からの温度管理が可能となっている。
金型内部の温度をA1変態点とするためには、シミュレーションを行い、表面温度と、加えた熱エネルギー、加熱時間等のパラメータから金型2の内部の温度を推定する。
次に、第2の方法として、球状黒鉛鋳鉄がおよそ700°C前後から赤熱する物理的性質を利用することが簡易である。赤熱は、目視或いはCCDカメラなどで撮影して画像解析することで認識可能である。この場合は、放射温度計21での温度検出なしでも管理できる。簡易ではあるが、金型2の内部が十分に温度が上がった状態を把握できる。
第3の方法として、放射温度計21により、700度を検出した段階で、金型2内部の温度が十分に上がったと判断する方法である。この場合は、表面から加熱された熱が内部にまで伝導する時間を確保するため、例えば、1分以上の継続時間など、加熱時間された時間を考慮することが好ましい。
第4の方法として、さらに、エネルギー効率は下がるが、金型2の表面温度が850〜900°Cになるまで加熱する、或いは950°Cまで加熱することが、種々の要因から予想される内部と外部の温度差を考えても安全な十分に高い温度とする。
第5の方法として、温度は高ければ高いほどチル化防止には有効であるので、950°Cを超える温度としてもよい。但し、この場合、少なくとも球状黒鉛鋳鉄の固相点(配合により異なるが概ね1150°C)を超えると急激に強度が低下するため、この温度を超えないものとする。また、固相点に近づくと漸次強度が低下することから、その意味から前記第4の方法で示す850〜900°C程度が好ましい。
なお、上記第1〜4の方法では、いわゆる焼きなましの温度帯であり、黒鉛は球状化する。そのため、加熱による金型の劣化は少ない。また、固相点に近い温度では、炭素の減少も考えられることからも第1〜4の方法が好ましい。
(実験例1)
ここで、実施例1における鋳造を、温度条件を以下のとおりとして予熱した。(単位°C)予熱は、十分な時間をかけ、金型深部まで均一な温度となるようにした。
予熱温度 A:20°C(無加熱・常温)、B:300、C:500、D:700(赤熱)、E:727(A1変態点)、F:850(セメンタイト軟化点)、G:900、H:950、I:1050、J:1150(固溶点)
溶湯温度1500°C
金型保温:なし
判断基準
(チル化) ×:不良、△:一部不良、○:ほぼ良好 ◎:良好
(湯回り) ×:不良(欠け、ピンホール等)、○:形状良好 ◎:鋳肌良好
(耐久性(100回使用))
×:変形大、△:変形が認められる、○:精度上問題なし、◎:変化なし
Figure 0005670034
以上の実験の結果から、(1) 700°C未満はチル化や湯回りに問題がある。好ましい予熱温度は、700°C以上、1050°Cである。
(2)また、チル化防止の点からは、特に727°C(A1変態点)以上が好ましい。
(3)一方、金型の耐久性を考慮すると、1050°C未満が好ましい。特に950°C以下の温度が好ましい。
(4)総合的に判断すると、727°C(A1変態点)が最適である。
(元湯生成工程(S3))
一方、S1、S2と並行して、次の金型注湯工程(S4)のための球状黒鉛鋳鉄の元湯(溶湯M)を準備する。
元湯自体は、どのような方法で生成してもよい。ここでは、前述した溶融炉50を用いて溶湯Mを生成する。
従来の方法では、溶湯Mの温度は、1400°C以上、望ましくは1500〜1600°Cまで加熱して流動性を高めるのが、湯回りの見地から好ましかった。
本実施形態では、フェーディング及びチル化防止の観点から、金型2を加熱することで、溶湯の温度を1280°Cとしても超薄型のフライパンFを製造することができた。
(実験2)
金型予熱を850°Cとして、溶融から注湯温度を以下のようにして一定時間(約30分)後に注湯した。
判断基準
(チル化) ×:不良、△:一部不良、○:ほぼ良好 ◎:良好
(フェーディング) ×:球状化不良、△:球状化劣化、○:球状化やや劣化、◎:球状化良好
(湯回り) ×:不良(欠け、ピンホール等)、△:やや不良(ヒケ)、○:形状良好 ◎:鋳肌良好
Figure 0005670034
以上の結果から
(1)チル化の観点からは、温度が1230°C以上が、金型に注入後の温度低下を防止して好ましい。
(2)一方、温度が1280°Cより高いと、チル化しやすくなる。特に、1400°Cになると、チル化が目立つ。
(3)フェーディングの観点からは、温度が1280°C以下では、球状化が良好であったが、1330°C以上は、やや球状化に劣化が見られる。1380°Cでは、球状化の劣化が見られ、1400°Cになると消失が始まる。
(4)湯回りの観点からは、温度が高ければ流動性がよくなるが、金型を加熱した影響からか、1280°C以上では鋳肌が良好で、1230°Cでも、問題は無かった。1180°Cでは、流動性が悪く湯回りが十分ではなかった。
(5)以上、総合的に判断すると、溶湯は1230°Cから1380°が好ましく、1280°Cが最も好ましい。
(金型注湯工程(S4))
上述のように、元湯を生成したら(S3)、図17に示すように、既に型締めし(S1)、予熱した(S2)金型2を注湯ポイント56に移動し、溶融炉50を炉台59を回動軸59aを軸に傾動させて注湯口38,48により形成された湯口カップに溶融炉50から直接元湯(溶湯M)を注湯する。
(実施例1)このとき、実施例1では、溶湯Mの温度は、1250°Cであり、金型2は、1050°Cに予熱してあり、その温度差は、200°Cとなっている。この場合、溶湯Mの温度は、比較的低温であり、チル化やフェーディングが生じ難いいっぽうで、金型が十分に予熱してあり、湯回りが低下しない。
(実施例2)また、この温度差を400°Cとした場合、例えば、溶湯Mを1300°C、金型2の予熱を900°とすると、溶湯Mを注湯した場合の、溶湯Mと金型の温度差が大きくなるので、溶湯Mが急冷されチル化が生じやすくなる。しかしながら、実施例1と比較して、溶湯Mの流動性は向上して湯回りが良くなり、金型2への熱の負担も小さくできる。
(実施例3) さらに、この温度差を600°Cとした場合、例えば、溶湯Mを1300°C、金型2の予熱を700°とすると、溶湯Mを注湯した場合の、溶湯と金型の温度差が大きくなるので、さらに溶湯Mが急冷されチル化が生じやすくなる。しかしながら、実施例1と比較して、溶湯Mの流動性は向上して湯回りが良くなり、金型2への熱の負担もさらに小さくできる。
(金型保温工程(S5)、鋳物凝固工程(S6))
次に、溶湯Mが冷却されて凝固される鋳物凝固工程(S6)を行なう。予め加熱しておいた金型2により、緩慢に温度が低下する溶湯Mは、球状の黒鉛を析出しながら冷却していく。しかしながら注湯した金型は肉厚が薄いため、従来の砂型やシェル鋳型はもちろん、圧肉のブロック状の金型と比較しても比較的放熱が良好なため、そのままの状態でも、概ね1分以内で凝固する(S5)。このとき、予め加熱された金型2とフライパンFとは、同様の膨張率であるので、温度低下とともに同様に熱収縮していき、金型2に歪が生じにくい。
注湯後は、自然冷却により、鋳物凝固工程(S6)に移行して金型2内の溶湯Mの温度が低下して溶湯Mが凝固するが、本実施形態では、これに加えて、加熱装置20,20が注湯後も金型2の加熱を行い、金型2を予め設定された設定温度に保温する金型保温工程(S5)を行なう。
この金型保温工程では、溶湯Mの温度低下をコントロールして、急激な温度低下によるチル化を抑制する。そのため、設定温度はこのような観点を考慮して設定される。
予熱と異なる温度、例えば予熱より低い設定温度とする。この場合、黒鉛の球状化が良好に行われるような、溶湯Mの冷却が行なわれるような温度条件とする。
また、設定温度を、注湯後の時間経過に伴って漸次低下させていくことにより、黒鉛の球状化が良好に行われるような温度条件とすることも好ましい。
この条件は、必ずしも厳密な温度管理でなくても、例えば加熱時間を調整するようにしてもよい。
本実施形態では、予熱温度を900°Cとして、注湯後は、500°Cに保温する。保温は、本実施形態では、鋳物が完全に凝固するA1変態点以下に到達する時間を、1分以上2分以内とする。ここで保温を終了しても良いし、そのまま次の注湯まで保温を継続してもよい。このように保温を継続することで、次の鋳込み時の金型2の予熱時間を短縮し、鋳込みのサイクル時間を短縮できるという効果もある。
(金型開放工程(S7))
鋳物がA1変態点となれば、組織が固定され、硬化する。硬化したら、図示しない型締め装置により金型2を開放する金型開放工程(S6)を行う。
(型抜き工程(S8))
続いて、可動側金型4を固定側金型3から離間するとともに、分割面43を下方に向けて回動させフライパンを型抜きする型抜き工程(S7)を行なう。必要に応じて、金型にノックピンを設けて型抜きをしてもよい。
(後処理工程(S9))
続いて、後処理工程(S8)が行なわれる。本実施形態では、鋳造後に、可動側金型4の可動方向と平行な方向(つまり、抜き方向)から、薄肉鋳鉄製品に対してレーザ光により薄肉鋳鉄製品の周縁にできた鋳ばりを溶断する鋳ばり取り工程を行なう。
図1に示すように、型抜きしたフライパンFには、本体11の周縁や柄12の周縁に、分割面33,43に沿って鋳ばりが生じているので、これをNC制御のレーザ加工機27から射出されるレーザ光線LBで溶断する鋳ばり取り工程を行なう。この鋳ばりは、分割面33,43に沿って生じるため、可動側金型4の可動方向と垂直な方向に突出しているので、可動方向と平行な方向、つまりフライパンFの内底部14と垂直な方向からフライパンFの周縁部13や柄12に沿ってレーザ光線LBを平行移動させながら照射すれば、1回の照射で鋳ばりが溶断処理できる。この溶断された鋳ばりは、エッジが無く手に優しいので、このレーザ加工のみでもグラインダなどによる研削は必要がない。また、砂型やシェル鋳型の場合は、グラインダなどで各方向から手作業で削って仕上げ作業をしていたが、金型では鋳肌がきれいであるのでこのため、この作業も省略することができる。以上で薄肉鋳鉄製品であるフライパンFが完成する。
必要に応じて、防錆や装飾を目的とした塗装を行なうことは妨げないが、必須ではない。
上記実施形態の金型2及び、金型2を用いたフライパンFの製造方法によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)金型2によれば、外部からの加熱・冷却によりキャビティ面32,42の温度管理ができるので、キャビティ25内のフライパンFの本体11の全体に対して最適な温度管理ができる。もちろん均一に外側を加熱すれば、均一な金型の壁を介してキャビティ面32,42を均一に加熱する。また特に、強い加熱が必要な場所とそうでない場所との温度差も管理できる。したがって、球状黒鉛鋳鉄のような温度管理が厳しい鋳物のフライパンFでも、製品のすべての部分で最適な条件で鋳込みができる。
(2)特に、金型2の本体キャビティ面32a,42aの厚みが20mmであるため、キャビティ内までの急速な加熱が容易であり、またチル化しない程度に急速に冷却することができる。
(3)また、金型2の厚みが薄いので球状黒鉛鋳鉄固有の凝固時の膨張に応じて型が多少変形するので、型にストレスが掛かりにくい。
(4)さらに、金型の厚みが薄いので、キャビティ25内外に連通する通気孔5を形成しやすい。
(5)一方、金型2の厚みが20mmあれば、鋳込みに必要な強度も確保でき、精度の高いフライパンを制作することができる。
(6)金型補強リブ39,49を設けたことから、金型2の肉薄の部分の強度を上げて金型の歪みを抑制することができる。
(7)特に、フライパンFの本体の厚みが1.0〜1.2mmであるので、温度変化や凝固時の状態変化における体積の変化の絶対値が小さくなり、金型へのストレスも小さく、型を疲労させることも少なくなる。
(8)金型2は、フライパンと1と同様の球状黒鉛鋳鉄となっているので、同じ熱収縮率をもつため、溶融した球状黒鉛鋳鉄の冷却過程で生じる金型との熱膨張の違いから生じるストレスを抑制できる。
(9)金型2は、多数の通気孔5を備えるため、金属製の鋳型でありながら、砂型、シェル鋳型に匹敵する通気性を持ち、型内の気体の排出を容易にして湯流れを良好にする。その結果、製品全体が隅々まで均質な製品とすることができる。
(10)また、通気孔5には、通気調整部材6が挿入されているため、直接金型に微細な通気孔を形成することなく、通気調整部材6に通気孔を形成できるため、製造が容易となる。さらに、この通気調整部材を変更することで1つの金型でも異なる通気性を備えた金型として使用することができ、通気性の調整も容易である。また、目詰まりした場合は交換も可能である。
(11)特に、通気孔5をスリット6bとすることで、目詰まりをしにくくできる。
(12)金型2では、通気孔5とキャビティ面32,42の一般面との面を多孔質セラミックス7により面一にしたため、フライパンFの表面に通気孔の跡が転写されることなく、美しい表面のフライパンFとすることができる。
(13)特に、通気孔5は、1cm当たり1個以上の密度で配置されているので、十分な通気性を得ることができ、従来の多孔質なシェル鋳型と同等の鋳込ができる。
(14)通気孔5に充填された多孔質セラミックス7は、効果的に気体のみをキャビティ25から排出し、溶湯Mの流出を防止し、高い耐熱性を持ち、金属の溶出なども生じない。
(15)ボンドコート8aと、中間コート8bと、トップコート8cは、通気性を保ちながら、耐熱性を高めて、金型2の耐熱性を良好にしている。
(16)そして、さらに塗型剤9を塗布しているので、鋳肌が美しく、焼付きを起こしにくく離型を容易にする。
(17)金型2は、大気鋳造(重力鋳造)を可能としているため、加圧や吸引などの設備無しで、簡易な設備で実施することができる。
(18)固定側金型3と可動側金型4により鋳造するため、フライパンFを鋳型から取り出すのが極めて容易である。
(19)また、型抜きのたび、鋳型を破壊することもないため、作業が極めて簡易となり、作業環境も顕著に良好となる。
(20)また、鋳型も繰り返し使用できるので、作業効率も良好となる。さらに、金型鋳造であれば、生産の機械化・自動化も容易となり、さらに効率的な生産が可能となる。
(21)固定側金型3と可動側金型4により、鋳造することで、鋳造時の鋳ばりが、周縁に形成されるため、鋳バリ取り作業が容易になる。
(22)特に、鋳ばりの除去をレーザ加工で溶断することで、作業が簡易となるだけでなく、生産されたフライパンFの柄12も、握った感触が良好となる。
(23)なお、鋳ばり処理のみならず、この金型を使った鋳造では鋳肌がきれいであるため、砂型やシェル鋳型のようなグラインダによる研削も必要が無く、塗装やコーティングの基本的に不要であるため、後処理が著しく簡単になっている。
(24)また、金型2を、加熱装置20で予熱しているため、注湯した溶湯Mの急冷によるチル化を有効に防止することができる。
(26)さらに、金型2を、加熱装置20で予熱することで、溶湯が金型2内で金型2により冷却され、湯回りの段階での温度低下が少なく、金型2内で均一の鋳物を生成できる。特に、加熱部24により超薄肉の部分での湯周りを良好にすることができる。
(27)その結果、注湯する元湯の温度を下げることが可能となり、元湯の高温化による、球状化物の減少によるチル化やフェーディングを抑制することが可能となる。
(28)また、金型2を注湯後に保温することで、よりチル化を抑制し、球状黒鉛の良好な析出を促進できる。
(29)とくに、加熱装置20は、放射温度計21により、金型2の表面温度を測定して、温度を管理しているが、均一の厚みの薄肉の金型により、表面温度を測定し、加熱装置20を制御して管理することで、キャビティ内面やここにある溶湯Mの温度を正確に管理することができる。
(30)そして、正確な温度管理により、良質かつ均質な球状黒鉛鋳鉄製の超薄型のフライパンを大量に製造することができる。また、品質ばかりでなく、品質を維持できる範囲で最も時間効率的によい温度条件で生産を管理することも可能となる。
(31)これらの効果が相俟って、製品1個ごとにする鋳型の製作、破壊が不要な金型でありながら、高品質の鋳鉄製品、とりわけ高品質の超薄肉の球状黒鉛鋳鉄製品を容易に効率よく鋳造することができる薄肉鋳鉄製品の鋳造用金型及び薄肉鋳鉄製品の製造装置、薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法を提供することができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 上述した本実施形態の(実施例1)では、通気孔5には、通気調整部材6と、多孔質セラミックス7、ボンドコート8aと、中間コート8bと、トップコート8c、塗型剤9を重ねているが、必ずしもすべて揃える必要はない。また、厚さ、その組み合わせ、コーティングの順序、他の種類の膜や下処理など、例えば、以下の実施例2〜5に例示するように適宜組み合わせることができる。
・ (実施例2)図10に示すように、通気調整部材6はキャビティ面32,42の一般面と面一となるように配置固定しておけば、キャビティ面32,42内面全体を、例えば、塗型剤9のみを塗布した構成でもよい。
・また、実施例2では、塗型剤9に替えて、多孔質セラミックス7、ボンドコート8aと、中間コート8bと、トップコート8cのいずれか又は、これらの組み合わせでもよい。
・ (実施例3)また、図11に示すように、通気調整部材6を用いず、通気孔5自体の径を例えば、0.3〜3mm程度に細くして、ここに多孔質のセラミックス7を充填することで、通気性を確保しつつ、溶湯Mの流出を防止する。
このように構成することで、構造が簡易になり、金型の製造が容易になる。
・ (実施例4)さらに、図12に示すように、通気孔5自体を0.3mm程度まで径を細くして、キャビティ面32,42全体にセラミックス7のコーティングをすることで、通気性を確保しつつ、通気孔5に充填物なしで溶湯Mの流出を防止するようにしてもよい。このように構成することで構成がさらに簡易になり、金型の製造が容易になる。
・ (実施例5)そして、図13に示すように、通気孔5をセラミックス7で充填するとともに、ボンドコート8aなどを施すようなものでもよい。
・通気調整部材6は、金属に限らず、それ自身をセラミックスで構成してもよい。
・これら実施例2〜5において、液体や固体の塗型剤を使用してもよい。塗型剤には、黒鉛の他、シリコーン、ジルコンフラワーなども使用できる。
・ 薄肉鋳鉄製品は、フライパンFを例に挙げたが、これに限らず、各種の精密機械部品や工具、冶具などにも適用できることは言うまでもない。
・ 金型の方案については、製品により適宜変更される。また、フライパンFであっても、本実施形態に限定されるものではない。
・ その他特許請求の範囲を逸脱しない範囲で、当業者が本発明の構成を付加し省略し、変更して実施できることが言うまでもない。
・ 加熱装置の熱源としては、天然ガス・LPGなどのガスバーナーを例示したが、ガスバーナー換えてオイルバーナーでも良い。
・ また、加熱手段は、高周波、低周波の誘導コイルにより金型を渦電流で加熱するように構成してもよい。
・ また、加熱手段は、セラミックヒーター・ハロゲンヒータ・ニクロム線その他電気発熱体により前記金型を加熱するようにしてもよい。さらに、加熱装置は、金型内部に配置して、直接金型を加熱するようにすることもできる。
・ 温度測定手段は、遠隔の赤外線放射温度計に限らず、熱電対、抵抗温度計などのコンタクト型でもよく、金型内部に配置することも妨げない。
2…金型、3…固定側金型、4…可動側金型、5…通気孔、6…通気調整部材、6b…スリット、7…多孔質セラミックス、8a…ボンドコート、8b…中間コート、8c…トップコート、9…塗型剤、11…本体、12…柄、13…周縁部、14…内底部、15…外底部、20…加熱装置、20a…主バーナー、20b…種火バーナー、21…放射温度計、24…加熱部、25…キャビティ、27…レーザ加工機、32…キャビティ面、32a…本体キャビティ面、32b…柄キャビティ面、32c…リブ、32d…リブ、32e…固定側金型加熱部、33…分割面、35…湯道、38…注湯口、39…金型補強リブ、42…キャビティ面、42a…本体キャビティ面、42b…柄キャビティ面、42c…可動側金型加熱部、43…分割面、45…湯道、48…注湯口、49…金型補強リブ、50…溶融炉、55…溶融炉制御装置、60…金型支持装置、66…固定側金型支持部、67…可動側金型支持部、68…移動機構、69…回動機構、70…ベルトコンベア、LB…レーザ光線、F…フライパン、M…溶湯。

Claims (15)

  1. 厚みが2mm以下の薄板状の部分を有する薄肉球状黒鉛鋳鉄製品を大気鋳造により製造するため、球状黒鉛鋳鉄から形成され、固定側金型と可動側金型は鉛直方向に沿った分割面で分割されるとともに、前記薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の薄板状の部分におけるキャビティの金型の厚みを50mm以内の均一の厚みに形成された加熱部を有する鋳造用金型と、
    当該金型の加熱部を外部から加熱する加熱手段と、
    当該金型の温度を測定する温度測定手段と、
    当該温度測定手段により測定された温度に基づいて金型の温度を制御する制御手段とを備えた薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造装置を用いて、
    前記鋳造用金型の固定側金型と可動側金型を用いて、分割面をはさんで型締めする型締め工程と、
    前記制御手段が前記温度測定手段により当該薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の鋳造用金型の温度を測定しつつ、加熱手段により予め設定された設定温度以上で予め加熱する金型予熱工程と、
    当該加熱した金型に、1400°Cを超えない温度であって、且つ前記金型を予熱する設定温度との差が600°Cより小さくなるように予め設定した温度で溶解した元湯を注湯する注湯工程と、
    注湯した元湯を硬化させる鋳物凝固工程と、
    注湯した元湯が硬化後、固定側金型と可動側金型とを前記分割面で分離して鋳造された薄肉鋳鉄製品を取り出す型抜き工程と
    を備えたことを特徴とする薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法。
  2. 前記金型予熱工程において、
    前記予め設定された設定温度は、金型が赤熱を開始する温度以上に設定されることを特徴とする請求項1に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法。
  3. 前記金型予熱工程において、
    前記予め設定された設定温度は、700°C以上に設定されることを特徴とする請求項1に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法。
  4. 前記金型予熱工程において、
    前記予め設定された設定温度は、A1変態点を所定温度超える温度に設定されることを特徴とする請求項1に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法。
  5. 前記金型予熱工程において、
    前記予め設定された設定温度は、固相点を超えないように設定することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法。
  6. 前記金型予熱工程において、
    前記予め設定された設定温度は、850°C以上、900°C未満に設定されることを特徴とする請求項1に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法。
  7. 前記鋳物凝固工程において
    前記加熱手段が注湯後も金型の加熱を行い、金型を予め設定された設定温度に保温する金型保温工程と
    をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法。
  8. 前記金型保温工程において、
    注湯後の金型の加熱は、予熱と異なる予め設定された設定温度とすることを特徴とする請求項7に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法。
  9. 前記金型保温工程において、
    前記予め設定された設定温度を、注湯後の時間経過に伴って漸次低下させていくことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法。
  10. 前記金型保温工程において、
    前記予め設定された設定温度を、注湯から薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の凝固までが1分以上2分以内となるように温度設定することを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法。
  11. 前記注湯工程において、
    前記加熱された金型に注湯する溶湯の温度が、1230°C以上1380°C以下とすることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法。
  12. 前記注湯工程において、
    前記加熱された金型に注湯する溶湯の温度が、薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の融点より50°C高い温度以上、かつ融点より200°C度高い温度未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法。
  13. 前記注湯工程において、
    前記加熱された金型に注湯する溶湯の温度が、薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の融点より50°C高い温度以上、かつ融点より100°C度高い温度未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法。
  14. 前記注湯工程において、
    前記金型の予熱温度と、注湯する溶湯の温度との差が、400°Cより小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法。
  15. 前記注湯工程において、
    前記金型の予熱温度と、注湯する溶湯の温度との差が、200°Cより小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の製造方法。
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