JP2018015764A - 鋳造用金型 - Google Patents

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【課題】キャビティ内部の空気を円滑に排気でき、厚みが2mm以下の薄板状の部分を有する薄肉球状黒鉛鋳鉄製品であっても高い品質を維持しながら大気鋳造で鋳造することができる金型を提供すること。【解決手段】厚みが2mm以下の薄板状の部分を有する薄肉球状黒鉛鋳鉄製品を大気鋳造するための鋳造用金型であって、厚みが2mm以下の薄板状の空間を有するキャビティと、溶湯を上方から注入する注湯口と、当該注湯口と前記キャビティとを連通する連通路と、前記キャビティと前記連通路とに沿って、固定側金型と可動側金型を鉛直方向に分割する分割面と、キャビティ内の気体を排出するために前記分割面の少なくとも一方に形成され、前記キャビティの周囲と前記分割面の周端部とを連通するように延びた複数の排気路と、前記連通路と前記分割面との境界に設けられ、前記連通路と前記分割面とを気密に遮断する気密構造とを備えた。【選択図】図1

Description

本発明は、鋳鉄製品を鋳造する鋳造用金型に係り、詳しくは厚みが2mm以下の薄板状の部分を有する薄肉球状黒鉛鋳鉄製品を大気鋳造するための鋳造用金型に関する。
鋳鉄は、鉄に比べ熱の伝導性が良好で熱の拡散性もよいばかりでなく、熱容量も大きいことから温まりやすく冷めにくい。またIH加熱器による加熱効率も良く、特に球状黒鉛鋳鉄では析出した黒鉛(グラファイト)が多く油脂との馴染みもよい。また、黒鉛を加熱することで発生する遠赤外線の量も多いといわれている。
これらの理由から、鋳鉄製の加熱用調理器具が用いられ、ムラのない均一な加熱が可能となることが知られていた。また、油馴染みが良いことから、焦げ付きにくいという特徴もある。さらに、剥がれるようなコーティング自体がなく、長期間にわたって使用できる。このように球状黒鉛鋳鉄は加熱用調理器具としては理想的な素材であり、プロの調理人にも多く使われている。
しかしながら、従来の鋳鉄製の加熱調理器具は、スキレットやダッチオーブン、或いは厚みが10mm以上あるステーキパンのような厚くて重いものが中心であった。鋳鉄製のフライパンもあるにはあったが、通常4.5〜5.0mm程度、薄くても3mm程度の厚みがあり、質量も2〜3kg或いはこれをはるかに超していた。このため、通常は煮込みなど置きっ放しで調理することが多く、フライパンや中華鍋のように揺り動かして調理する料理には適してなかった。特に女性などには、重くて取り扱いにくいという問題があった。
そこで、本発明者は、特許文献1に示すようにポーラス鋳型で薄くても強度のある球状黒鉛鋳鉄製で底部の厚さ1.2mm〜2.0mmの比較的軽量なフライパンを製造する方法を開発し、続いて、0.3〜1.2mmのテストも行い、チル化せずに鋳造できることを確認した。
このように製造した球状黒鉛鋳鉄製のフライパンは、加熱調理器具としては理想的であるが、その都度鋳型を製作して鋳造するのは手間が掛かり効率が悪いという問題があった。そのため、金型鋳造が考えられる。
しかしながら金型で鋳造すると球状黒鉛の生成時に膨張して型に応力が掛かり金型の負担が大きいことから、キャビティの体積に比較して極めて肉厚のブロック状の金型を用いたりしなければならなかったという問題があった。また、2mm以下という超薄肉の球状黒鉛鋳鉄では湯周りをよくするために注湯温度を上げなければならないが、高熱の状態が続くとフェーディングを起こして黒鉛が球状化しないという問題があった。さらに金型で急冷されるとチルが生じるなどの特異な問題があった。
そのため、結局従来は、砂型やシェル鋳型等の多孔質の鋳型で鋳造するのが常識であった。
しかしながら、上述のとおり砂型等は使い捨てであり、その都度砂型を製作する必要があり、さらにサンダーなどによる研磨など後処理も大変であった。
そこでさらに本発明者は、このような課題を解決するため特許文献2に示すように従来金型ではできなかった2mm以下、特に1.0〜1.5mmの薄肉球状黒鉛鋳鉄製のフライパンを金型により好適に製作する方法を発明した。
この発明では、極めて薄型の可撓性のある金型で、固定側と移動側との分割面に隙間ができて溶湯の漏れやバリが生じないように、気密に密着させてしっかり型締めして鋳造する。このような構造のため、注湯時にキャビティ内部にある気体を排出しなければキャビティに溶湯を隅々まで充填できず、製品に欠けやピンホールなどが生じるという問題を生じた。特に2mm以下の超薄肉の球状黒鉛鋳鉄製品の場合は、湯周りや温度変化と同時に空気抜きが重要であることが分かった。
そこで本発明者は、キャビティに設けた微細な隙間を有するベントホールにより、従来の砂型などと同様に溶湯のモレを防ぎつつキャビティから良好な排気をすることでこの問題を解決した。
特開2003−190021号公報 特開2010−274327号公報
しかしながら、比較的低温で溶融するアルミニウムの鋳造や、さらに低温の樹脂成型ではキャビティにステンレスなどのベントホールを設けて、ここから空気抜きをすることはよく行われるが、鋳鉄の場合は溶融温度がはるかに高く、ベントホールの素材自体に与える影響も大きい。その結果、最初は良好に排気できるが、狭い隙間では鋳造を繰り返すことでベントホールの詰まりなどが生じるという問題があったり、大きな隙間のベントホールにすれば鋳鉄が入り込んで固化すると処理が大変となったりするという問題があった。
そこで、本発明は、ベントホールに依らず、金型でありながらキャビティ内部の空気を砂型のように円滑に排気でき、厚みが2mm以下の薄板状の部分を有する薄肉球状黒鉛鋳鉄製品であっても高い品質を維持しながら大気鋳造で鋳造することができる金型を提供することにある。
上記課題を解決するため、本願に係る鋳造用金型では、厚みが2mm以下の薄板状の部分を有する薄肉球状黒鉛鋳鉄製品を大気鋳造するための鋳造用金型であって、厚みが2mm以下の薄板状の空間を有するキャビティと、溶湯を上方から注入する注湯口と、当該注湯口と前記キャビティとを連通する連通路と、前記キャビティと前記連通路とに沿って、固定側金型と可動側金型を鉛直方向に分割する分割面と、キャビティ内の気体を排出するために前記分割面の少なくとも一方に形成され、前記キャビティの周囲と前記分割面の周端部とを連通するように延びた複数の排気路と、前記連通路と前記排気路との境界に設けられ、前記連通路と前記排気路とを気密に遮断する気密構造とを備えたことを要旨とする。
本願の金型は超薄型の球状黒鉛鋳鉄を鋳造するのに最適化されたものであるが、十分に黒鉛粒が形成されていないねずみ鋳鉄のような鋳物においても流用できることは言うまでもない。
この構成によれば、キャビティ内の気体は、分割面に形成された排気路から円滑に排出され、一方では、連通路からは気体が排気路に流入しないため、キャビティからの気体の排出を押し戻して妨げるようなことがない。また、排気路は分割面に形成されるため、ベントホールのようなスリットの詰まりなどもなく、メンテナンスが不要で、高い生産効率を有する。
ここで、「排出路」とは、キャビティと分割面の周端部を連通させ、キャビティ内の気体が円滑に排出できるような機能があれば、形状は明確な溝状のようなものに限定されるものではない。例えば、多数の凹凸を設けた粗面のような構成でもよい。一方「気密構造」とは、連通路からの気体の排出が、キャビティからの気体の排出を妨げない程度に抑制できれば、完璧な気密構造とすることを要件としない。例えば、平面同士を密着させることで、キャビティからの気体の排出を妨げない程度の気密性があれば気密構造である。
本願発明においては、前記複数の排気路は、分割面に溝状に形成されていることが望ましい。ここで、「溝」とは、その形状は問わず、キャビティ内の気体が円滑に排出できるような機能があればよい。また、分割面の片面に形成されても、両面に形成されてもよい。
本願発明は、前記分割面に形成された複数の溝状の排気路は、相互に連通されていることが望ましい。相互に連通されてバイパスを形成できれば、メッシュ状でも、蜘蛛の巣状でも、ランダムな形状でもよい。例えば一方の分割面に形成された複数の運直方向の溝と、他方に形成された複数の水平方向の溝のようなものでもよい。
本願発明は、前記排気路が、濡れ性を低下させるコーティングがされていることが望ましい。この構成によれば、コーティングの溶湯に対する濡れ性が低い、つまり溶湯を撥きやすいため、隙間を大きくしても排気路に浸入する溶湯を抑制しつつ、気体のみを排出することができる。なお、コーティングとは広く表面を覆うものをいい、塗型材などの溶射・塗布を妨げるものではない。「濡れ性」とは、ここでは金型に対する溶湯の接触角により定義され、例えばアルミナのセラミックコーティングなどが金型の地肌よりも濡れ性を低下させる例として挙げられる。
本願発明は、気密構造は凹凸形状で嵌合することが望ましい。この構成によれば金型が熱によりゆがんだ場合でも凹凸形状が効果的に気密性を保つことができる。
本願発明は、前記気密構造は、前記連通路のキャビティ側にのみに形成されてもよい。この構成でも、連通路からの気体の排出が、キャビティから排出される気体を押し戻して排出を妨げることがない程度に抑制できる。
本願発明は、前記連通路は、前記注湯口から鉛直方向に連なる湯口と、当該湯口から水平方向に連なる湯道と、当該湯道とキャビティに連なりキャビティの周縁に設けられた前記湯道より断面積が小さい堰口とを備え、前記連通路の前記堰口より前記注湯口側で一部が、前記排気路に連通されていることが望ましい。
この構成によれば、キャビティに流入する溶湯が、堰口から噴出する勢いを弱めて気泡の発生を抑制するとともに、さらに連通路の堰口に流入する前に一部が排気路に連通することで連通路から気体の排出をして、キャビティ内へ気体の流入を抑制することができる。
本発明の鋳造用金型によれば、キャビティ内部の空気を円滑に排気でき、厚みが2mm以下の薄板状の部分を有する薄肉球状黒鉛鋳鉄製品が、大気鋳造であっても高い品質を維持しながら鋳造することができる。
本実施形態の鋳造用の金型と、この金型により鋳造した薄肉鋳鉄製品であるフライパンと、鋳造後の後処理を示す斜視図。 閉じた状態の金型と、加熱手段を示す正面図。 閉じた状態の金型を示す平面図。 固定側金型を分割面側から見た右側面図。 可動側金型を分割面側から見た左側面図。 (a)図2のA−A線から見た排気路の断面図、(b)第1の実施形態の排気路とは別の実施形態、(c)第1の実施形態の排気路とはさらに別の実施形態。 (a)図4のB−B線から見た連通路の気密構造、(b)第1の実施形態の気密構造とは別の実施形態。 第1の実施形態の連通路とは別の実施形態。 第1の実施形態の排気路とは別の実施形態。 第1の実施形態の排気路とはさらに別の実施形態。 本実施形態の金型による鋳造の工程図。 本実施形態の薄肉鋳鉄製品の製造装置の平面図。 本実施形態の溶融炉の断面図。 本実施形態の注湯工程を示す斜視図。 本実施形態の金型及び型締め装置の側面図。
以下、本発明を具体化した薄肉鋳鉄製品である球状黒鉛鋳鉄製のフライパンの鋳造用金型とこれを用いた鋳造装置、及びこの鋳造装置を用いた鋳造方法の一実施形態を図1〜15を参照して説明する。本実施形態では、特に、薄肉鋳鉄製品の特性を好適に生かした球状黒鉛鋳鉄製の厚さ1.2mmのフライパンFを例として本発明を説明する。
(金型全体の構成の概要)
図1は、本実施形態の鋳造用の金型2と、この金型2により鋳造した薄肉鋳鉄製品であるフライパンFと、鋳造後のレーザ加工機27によりバリ取り加工をする後処理を模式的に示す斜視図である。
本実施形態では、鋳型として、従来の砂型やシェル鋳型に代えて金型2を採用している点が前提となっている。金型2は、固定側金型3と可動側金型4を備え、型締め、型開放を繰り返し、連続的に鋳込みができる。
(球状黒鉛鋳鉄)
ここで球状黒鉛鋳鉄について説明する。球状黒鉛鋳鉄は、基本的には「JISG5502」で特定されるもので、組織中に球状の黒鉛(グラファイト)を含んだ鋳鉄であり、基地が連続しているため強靭な性質を有し、ダクタイル鋳鉄とも言われている。その製造法は、溶解したC、Siを高度に含んだFeに、球状化剤であるMgやCeを加えて元湯を生成し、フェロシリコン(Fe−Si)を接種し、緩慢に冷却して凝固時に析出するグラファイトを球状化させるものである。
ここで重要なのは、球状黒鉛鋳鉄は、長時間高温で溶解したままにすると、溶融しているMgが酸化や蒸発により減少してしまうため(「フェーディング」という。)、黒鉛が球状化せず球状黒鉛鋳鉄にならないため、高温のまま長時間経過しないうちに鋳型に注湯しなければならない。一方、鋳込み時に急速に温度が低下すると、球状のグラファイトが析出せず、セメンタイト(Fe3C)となって白化してしまい、硬いが脆くなってしまう(このように球状黒鉛を析出しないでセメンタイトとして凝固することを「チル化」するという。)ことであり、急な温度低下は避けなければならないことである。
さらに、本実施形態のような超薄型の鋳物では、温度が低下して流動性が低下すると、いわゆる「湯回り」が悪化するという問題もある。
また、球状黒鉛鋳鉄では凝固時に球状黒鉛が析出するため体積が増加するという独特な性質があり金型がゆがんで分割面に隙間ができたり、さらに凝固後は温度の低下とともに体積が減少したりする。このため、鋳型はこの体積の変化に対応できなければならないという問題もあった。
このように球状黒鉛鋳鉄の鋳造用金型に対する要求は非常に多様で且つ特異で厳しいものがある。そのため従来は金型は通常使用されていなかった。自動車部品などで金型を使用する場合でも、これらの要求に応えるため大きなブロック状の鋳型の中心部に小さなキャビティを形成した、壁が極めて厚いブロック型の金型が一部に使用されているだけであった。それでも金型では表面のチル化を防止することは困難で、事後的に表面処理をしており、そもそも超薄型の球状黒鉛鋳鉄は製造できなかった。
また、通常は、フェーディングを防止するため一定量の原材料を溶解して鋳込の直前に接種し、鋳込までは極めて短い時間に限定される。このため、超薄型のフライパンFのような体積の少ないものは、多数の鋳型に順番に注湯する間に時間が経過してフェーディングを生じてしまう。また、一旦製造した球状黒鉛鋳鉄を再溶解して再凝固しても、通常はフェーディングで黒鉛は球状化しない。
本発明者は、このような多面的な問題を解決するため、本実施形態に示すように前提として少量の球状黒鉛鋳鉄のインゴットを予め製造し、これを図13に示すような超小型の高周波誘導炉からなる溶融炉50を用いて、大電力を用いて原料を極めて短時間に溶解する。そして短時間のうちに再溶解、注湯、凝固を行うことで、フェーディングなしで少量の体積からなる球状黒鉛鋳鉄製のフライパンFを効率的に製造する。
その一方で、薄型の金型を予熱することで急激な温度低下を防止しつつ、速やかに溶湯の温度を下げてチル化とフェーディングを同時に抑制しつつ、良好な湯周りで高品質の超薄型の球状黒鉛鋳鉄製のフライパンFを製造している。
(金型2の材質)
この実施形態の金型2は、溶湯Mの温度と、予熱や保温、鋳込みにおける繰り返しの加熱・冷却に対応し、鋳込み時の鋳物の膨張収縮に対して割れを生じないで変化を吸収できるように、フライパンFの材質と近い球状黒鉛鋳鉄から形成されている。
(金型2の形状)
図1、2に示すように金型2は、固定側金型3と可動側金型4を備える。固定側金型3と可動側金型4は、鉛直方向に沿った分割面33,43で分割される。固定側金型3と可動側金型4とは、分割面33,43が相互に当接する状態でキャビティ面32,42の内面により金型2内にフライパンFの形状のキャビティ25(図2)が形成される。
従来は、直方体の鋳物ブロックに製品の形状に応じた小さなキャビティを形成していた。しかしながら、本実施形態の薄型の金型2では、図1、図2に示すように、固定側金型3、可動側金型4のキャビティ面32,42に沿って厚み方向に金型の厚みD1を均一の厚みに形成した。その厚みD1は、例えばフライパンFの薄板状の本体11部分(図1参照)のキャビティ面32,42部分において一律にD1=20mmとなっている。その他のフレーム31,41部分で概ね厚みD2=30mm程度とした。このように金型2は薄肉の構成であるが、キャビティ25自体が薄く膨張収縮の寸法変動が小さいことと、同じ熱膨張率で膨張収縮するため、このような薄肉の金型2を実現したものである。
図2に示すように分割面33/43に沿ってみた本実施形態の金型2は、上述したようにキャビティ25の厚さがわずか1.2mm極めてうすい薄型の金型であり、大気鋳造用(重力鋳造用)に構成され、溶湯を圧入したり真空で吸引したりする設備は基本的に不要である。大気鋳造では、比較的キャビティ内に気体が残りやすいが、気体が残ると製品に欠陥が生じるため、キャビティ25内の排気は極めて重要である。
(連通路35/45)
本実施形態では、注湯口34/44、湯口35a/45a、湯道35b/45b、堰口35c/45cとから本願発明の連通路35/45が構成される。
図1〜5に示すように、固定側金型3の上面には注湯口34/44が取り付けられている。注湯口34/44は一体となり漏斗状の湯口カップを構成し、型締めしたときには、注湯口44の部分は可動側金型4の上部に配置される。固定側金型3、可動側金型4の分割面33/43には、金型2の上部の注湯口34/44から分割面33/43に沿って鉛直方向に形成された湯口35a/45aが備えられている。注湯口34/44は、湯口35a/45aへの溶湯Mの注湯を容易にしている。
図4、5に示すように、湯口35a/45aは、その底部にそれぞれ湯口底34d、44dを備え、その若干上部から水平に湯道35b/45bがそれぞれ設けられ、湯道35b/45bは、本体キャビティ面32a、42aの側端部に配置された堰口35c/45cを経て、キャビティ25に連通している。堰口35c/45cは、湯道35b/45bからの溶湯Mの速度を制御し、キャビティ25内にゆっくり流入させる目的で断面積が湯道35b/45bより小さくなっている。
(フライパンFの形状)
キャビティ25は、基本的にフライパンFの形状の空間からなる。ここで、フライパンFの形状を説明すると、図1に示すように平らな円盤状の内底部14を備え、周縁部13が立ち上がった皿状の本体11と、この本体11と一体に形成された柄12が斜め上方に向けて突設されている一般的なフライパンである。そして、この本体11は、直径がおよそ26cmで、厚みが内底部14も周縁部13もいずれも鋳鉄フライパンとしては異例に薄い1.2mmで、均一の厚みになっている。
(キャビティ25の形状)
次に、図2を参照してキャビティ25の形状を説明する。キャビティ25の形状は上述のフライパンFと同形の空間を有している。図4,5に示すように、キャビティ面32,42は、フライパンFの本体11に対応する本体キャビティ面32a,42aと、フライパンFの柄12に対する柄キャビティ面32b、42bとから構成される。従って、本体11に対応するキャビティ25の空間の厚みは、1.2mmとなっている。また、図4、図5に示すように本体キャビティ面32a,42a部分が下部に、柄キャビティ面32b、42bの部分は上部になるように配置されている。
図2に破線で示すように、本体の周縁部13が、固定側金型3と可動側金型4の分割面33、43と一致するように配置されている。
図1、図2の固定側金型3に示すように、柄12の形状に沿って、固定側金型3の分割面33の鉛直な一般面から可動側金型4側に突出するように分割面33の凸部33aが形成されている。また、可動側金型4には、この分割面の凸部33aに対応する形状で分割面43の鉛直な一般面からへこんだ凹部43aが形成されている。そして、この分割面の凸部33a、凹部43aに、柄12に対応する柄キャビティ面32b、42bが形成される。
ところで、図4、図5に示すように、湯道35b/45bと連通する堰口35c/45cがキャビティ面32,42の側端部に開口されている。このため、溶湯Mは、キャビティ25の側端部から流れ込んで下部から充填されて本体11が形成され、次いで柄12が形成される。
なお、分割面33,43の凸部33a、凹部43aは0.5mm程度離間して吐かせ湯のための空間が形成されている。
(排気路5)
図1、図4に示すように、固定側金型3の分割面33には、5mm間隔で深さ0.3mmm程度の断面円弧状の溝からなる排気路5が形成されている。なお、図示の都合上、図面では実際より粗く図示されている。図4に示すように排気路5は鉛直方向の縦溝5vと、水平方向の横溝5hとからなり、全体に方眼状に形成されている。排気路5は分割面33の凸部33aにも同様に形成されている。排気路5は、固定側金型3の周縁に延びて形成されており、つまり排気路5は大気に開放されている。また、キャビティ面32には、排気路5が形成されていないが、排気路5は、キャビティ25に連通している。したがって、キャビティ25は排気路5を介して大気に開放されている。また、排気路5は、複数の鉛直方向の縦溝5vと、複数の水平方向の横溝5hとが、方眼状に連結されて連通されている。そのため、たとえキャビティ25の周縁部で一部が凝固した溶湯により目詰まりしても、近傍の排気路5を迂回して大気に開放した状態を維持できる。
一方、排気路5は、連通路35とは(湯口底35dを除き)、連通していない。したがって、連通路35はキャビティ25とは(湯口底35dを除き)、堰口35c以外では連通していない。このため、連通路35内の圧力が排気路5を介してキャビティ25からの排気を抑制することはない。この場合、湯口底35dからは、連通路35からの気体が排気路5に排気されるが、キャビティ25からは一定の距離離間しているため、影響はほとんどない。
また、図5に示すように、本実施形態では、可動側金型4には、排気路5は形成されていない。これは、固定側金型3に形成された排気路5により、キャビティ25内の気体の排気が行われるため、これで十分であるからである。
図6(a)は図4のB−B線から見た実施形態の排気路の断面図で、この図6(a)に示すように、本実施形態の排気路5は、固定側金型3の分割面33に、ピッチP=5mm、溝幅W2=2.6mmで、半径R=3mmの円弧状の底面をそなえる。溝の深さD≒0.3mmである。溝以外の部分は幅W1=2.4mmの平坦面で、型締めにより可動側金型4の分割面43と密着する。
(コーティング)
キャビティ25内に注入された溶湯に押出された気体は、キャビティ25に連通した排気路5から排気される。このとき、排気路5に溶湯Mが浸入すると、溶湯Mが凝固して排気路5が目詰まりしてしまう。
そこで、本実施形態では、排気路5内部にセラミックコーティングを施している。このセラミックコーティングは、溶湯に対する濡れ性を低下させる、つまり溶湯を撥きやすくする。ここで、「濡れ性」とは、ここでは、排気路5の内部表面と、溶湯の親和性(付着しやすさ)を表すもので、接触角で表される。この濡れ性が低下すると、より広い間隙でも、溶湯が進入しにくくなる。そうすれば、溶湯の浸入を阻止しながら、キャビティ内の気体をより円滑に排出することができることになる。
このセラミックスは、本実施形態の例では、アルミナの粉末を水練りして溶射してコーティングし、乾燥して固める。このセラミックコーティングは、溶湯Mとの濡れ性が低く、溝の深さD<0.3mmであれば、セラミックコーティングの濡れ性の低さと相俟って、気体は排出するが、溶湯は浸入しない。なお、このセラミックコーティングは、排気路5の内部にのみ選択的に施す必要はなく、分割面33全体に施せばよい。また、キャビティ面32については、作業性と品質管理の観点から適宜コーティングの有無が決定できる。
(塗型剤)
なお、キャビティ面32,42内には、溶湯との親和性を向上し、鋳肌を美しくし、焼付きを防止するため、セラミックコーティングを施した上から各種の塗型剤を塗布してもよい。
(気密構造6)
図4、図5に示すように連通路35/45の周囲には、気密構造6が形成されている。気密構造6は、分割面33/43において、連通路35/45と分割面33/43との間の気体の移動を抑止する構成である。
図7(a)は、図2のA‐A線から見た連通路35/45の気密構造を示す図である。図7に示すように、型締めされた固定側金型3と可動側金型4により湯口35a/45aが形成され、このとき、湯口35a/45aの周縁の分割面33/43には、固定側金型3の湯口35aの側壁から連続して分割面33/43の一般面から立ち上がる凸部6aが設けられている。可動側金型4には、この形状に対応する凹部6bが形成されている。ここに隣接して、可動側金型4には、逆に分割面33/43の一般面から立ち上がる凸部6cが設けられている。固定側金型3には、この形状に対応する凹部6dが形成されている。
このように構成された気密構造6は、金型2の厚み方向に嵌合している。従来のように型締めにより一対の平坦な分割面を密着させることで気密を保持できたが、本実施形態のような薄型の金型を加熱するような場合、金型2に反りやうねりが生じるような場合がある。本実施形態ではそのような分割面33/43に垂直な方向の金型2の変形が生じて厚み方向の位置ずれがあっても、気密構造6が気密状態を維持することができる。
なお、湯口底35d/45dには、気密構造6が設けられていないが、これは注湯口34/44から注湯された溶湯Mに気体が混入した場合に、溶湯Mがキャビティ25に進入する前に、排気路5から気体を排出するためである。この位置であれば、キャビティ25と連通している排気路5から排気しても、キャビティ25から排気路5を介して気体を排気することを阻害することはない。
(金型の加熱装置20)
図2に示すように、加熱装置20,20が、金型2を両側から挟むように近接して配置される。
加熱装置20は、多数のガスバーナー20aを備え、金型2の本体キャビティ面32a,42aの外面に設けられた固定側金型加熱部32e、可動側金型加熱部42c(以下まとめて「加熱部24」という。)の表面を矢印方向に直接炎で加熱する。
本実施形態の金型2では、加熱部24の厚みD1を均一の厚みに形成した。その厚みD1は、例えばフライパンFの薄板状の本体11部分(図1参照)のキャビティ面32,42部分において加熱部24を形成し一律にD1=20mmとなっている。その他のフレーム31/41部分で厚みD2=30mm程度とした。そのため、固定側金型加熱部32e、可動側金型加熱部42cを均一に加熱すれば、金型2の表面から均一かつ速やかに金型2の内部に熱が伝導し、キャビティ面32/42の内壁に同時に熱が到達し、均一に温度上昇する。
特にこの金型2は、球状黒鉛鋳鉄製であり、熱伝導が良好で固定側金型加熱部32e、可動側金型加熱部42cを加熱すれば速やかにキャビティ面32/42内部の温度を上昇させることができる。また、球状黒鉛鋳鉄は熱容量が大きく、キャビティ25内部の溶湯Mに対して安定した熱環境を与える。さらに、球状黒鉛鋳鉄は加熱・冷却に対して、鋳物と同等の熱膨張・熱収縮をするため、鋳物の冷却時点でのストレスが極めて小さい。そして、球状黒鉛鋳鉄は、砂型は言うまでもなく他の金属鋳物に比べても引張り強度が大きい(JISG5502参照)。したがって金型2が薄くても、大きな熱変化において、破損しにくい。
(金型支持装置60)
図15に示すように、複数の金型支持装置60は、それぞれ金型2を支持している。各金型支持装置60は、支持した金型2の注湯口34/44を、溶融炉50の近傍の注湯ポイント56に移動できるように、レール61,61上に配置され(図12参照)。レール61上を移動できるように、機台62は、両端に車輪63,63を備えた車軸64を有し、モータ65により駆動される。
固定側金型3を支持する固定側金型支持部66は、機台62の一端側に配置され、固定側金型3の背面には加熱装置20が配置される。
また、可動側金型4を支持する可動側金型支持部67は、機台62の他端側に配置され、可動側金型4の背面にも加熱装置20が配置される。可動側金型支持部67は、移動機構68を介して可動側金型4を支持しており、可動側金型4は、固定側金型3と型締め・型開き可能に移動される。また、可動側金型支持部67は、水平に配置された回動軸69aを備えた回動機構69を備え可動側金型4を90度回転させて、分割面43を鉛直下方に向けることができる。分割面43が鉛直下方に向けられた可動側金型4の鉛直下方には、ベルトコンベア70が配設され、型抜きされ、落下されたフライパンFを載せて、次工程に搬送する。
(溶融炉50)
本実施形態では、図13に示すような超小型の溶融炉50を用いて原料を溶解する。溶融炉50は、高周波誘導炉で、高周波誘導加熱コイル51、浮揚用コイル52を備え、浮揚用コイル52で原料を浮遊させて、高周波誘導加熱コイル51の渦電流で加熱・溶解する。溶融炉50の側壁50aは、冷却パイプ58が内部に設けられ、冷却液が循環して側壁50aを冷却している。
図14に示すように、この溶融炉50は、炉台59上に固着され、炉台59は、回動軸59aを軸に傾動し、注湯ポイント56(図12)にある金型2の注湯口34/44に、溶融炉50内で浮揚している溶湯Mを注湯する。
(金型2の作用)
金型2の作用である薄肉球状黒鉛鋳鉄製品であるフライパンFの鋳造方法について、図11のフローチャートに沿って説明する。
(鋳造方法の概略)
図11に示すように、フライパンFの鋳造方法は、この鋳造装置を用いて、以下のように行なう。まず、図15に示すフライパンFの金型2の固定側金型3の分割面33に、可動側金型4の分割面43を当接させて型締めする型締め工程(S1)を行う。次に、図2に示す加熱制御装置23が放射温度計21により金型2の加熱部の表面温度を測定しつつ、加熱装置20により金型2を予め設定された設定温度に加熱する金型予熱工程(S2)を行う。そして、元湯生成工程(S3)では、予め溶融炉50(図13)で元湯を溶解して生成しておく。この溶解した元湯を、予め加熱した金型2に注湯する(図14参照)金型注湯工程(S4)を行なう。続いて、図2に示す加熱装置20を用いて注湯した金型を急冷させないための金型保温工程(S5)を行なう。そして、注湯した元湯を設定した温度変化で硬化させる鋳物凝固工程(S6)を行う。そして、鋳物硬化後に、固定側金型3と可動側金型4とを分割面33,43で分離する金型開放工程(S7)に続き、鋳造されたフライパンFを取り出す型抜き工程(S8)を行う(図15参照)。最後に、抜き出したフライパンFをベルトコンベア70で後加工装置に搬送して、レーザ加工機27で鋳ばり取りをするなどを行なう後処理工程(S9)とを行う。
(型締め工程(S1))
図15に示すように、金型支持装置60に予めセットされた可動側金型4は、固定側金型3に対して、移動機構68により、接離自在に支持されている。図15において可動側金型4は開放した状態である。
次に、図15に示す状態から、移動機構68により可動側金型4を図上左方向に移動させて分割面33/43を当接させ、さらに移動機構68の図示しない油圧機構で分割面43を分割面33に圧接させ、図2に示すように金型2を型締めする型締め工程(S1)を行なう。
(金型予熱工程(S2))
型締めした金型2を予め設定された設定温度まで加熱する金型予熱工程(S2)を行なう。この金型予熱工程(S2)では、型締めした金型2を挟むように近接配置した加熱装置20,20により矢印で示した方向に金型2の全体を加熱する。
(元湯生成工程(S3))
S1、S2と並行して、次の金型注湯工程(S4)のための球状黒鉛鋳鉄の元湯(溶湯M)を準備する。元湯自体は、どのような方法で生成してもよい。ここでは、前述した溶融炉50を用いて予め所定量の球状黒鉛鋳鉄のインゴットを大電力で急速加熱して再溶解し、溶湯Mを生成する。このため、本実施形態では球状黒鉛鋳鉄を生成するための接種は不要である。
(金型注湯工程(S4))
上述のように、元湯が生成されたら(S3)、図12に示すように、既に型締めし(S1)、予熱した(S2)金型2を直ちに注湯ポイント56に移動し、図14に示すように溶融炉50を炉台59を回動軸59aを軸に傾動させて注湯口34/44により形成された湯口カップに溶融炉50から直接元湯(溶湯M)を注湯する。
(金型保温工程(S5))
注湯後は、通常は鋳物凝固工程(S6)に移行するが、本実施形態では、その前に加熱装置20,20が注湯後も金型2の加熱を行い、金型2を予め設定された設定温度に保温する金型保温工程(S5)を行なう。この金型保温工程では、溶湯Mの温度低下をコントロールして、急激な温度低下によるチル化を抑制する。
(鋳物凝固工程(S6))
次に、溶湯Mが冷却されて凝固される鋳物凝固工程(S6)を行なう。予め加熱しておいた金型2により、緩慢に温度が低下する溶湯Mは、球状の黒鉛を析出しながら冷却していく。このとき製品は一旦膨張するが、超薄型のため影響は小さい。注湯した金型は肉厚が薄いため、従来の砂型やシェル鋳型はもちろん、圧肉のブロック状の金型と比較しても比較的放熱が良好なため、そのままの状態でも、概ね1分以内で凝固する。このとき、予め加熱された金型2とフライパンFとは、同様の膨張率であるので、温度低下とともに同様に熱収縮していき、金型2に歪が生じにくい。
(金型開放工程(S7))
鋳物がA1変態点となれば、組織が固定され、硬化する。硬化したら、金型2を開放する金型開放工程(S7)を行う。
(型抜き工程(S8))
続いて、可動側金型4を固定側金型3から離間するとともに、分割面43を下方に向けて回動させフライパンを型抜きする型抜き工程(S8)を行なう。必要に応じて、金型にノックピンを設けて型抜きをしてもよい。
(後処理工程(S9))
型抜きしたら、ベルトコンベア70で製品を搬送し、後処理工程(S9)を行なう。本実施形態では、図1に示すように、可動側金型4の可動方向と平行な方向(つまり、抜き方向)から、薄肉鋳鉄製品に対してレーザ加工機27によりレーザ光線LBによりフライパンFの周縁部にできた鋳ばりを溶断する鋳ばり取り工程を行なう。
本実施形態では、型抜きしたフライパンFには、本体11の周縁や柄12の周縁に、分割面33,43に沿って鋳ばりが生じている。特に、本実施形態では、排気路5に浸入した溶湯Mが凝固したものも、この鋳ばりと同じ場所に生じる。これをNC制御のレーザ加工機27から射出されるレーザ光線LBで溶断する鋳ばり取り工程を行なう。この鋳ばりは、分割面33/43に沿って生じるため、可動側金型4の可動方向と垂直な方向に突出しているので、可動方向と平行な方向、つまりフライパンFの内底部14と垂直な方向からフライパンFの周縁部13や柄12に沿ってレーザ光線LBを平行移動させながら照射すれば、1回の照射で鋳ばりなどが一括して溶断処理できる。この溶断された端部は、エッジが無く手に優しいので、このレーザ加工のみでもグラインダなどによる研削は必要がない。
また、砂型やシェル鋳型の場合は、当然に表面が粗面となるのでサンダーなどで各方向から手作業で削って仕上げ作業をしていた。また、ベントホールの跡も同様にサンダーなどで各方向から手作業で削って仕上げ作業をしていた。しかしながら本実施形態では、鋳ばりや排気路5に浸入した溶湯Mは、すべて1回のレーザ加工のみで処理でき、それ以外の部分は、金型鋳造では鋳肌がきれいであるのでこのため、研磨作業を省略することができる。以上で薄肉球状黒鉛鋳鉄製品であるフライパンFが完成する。
(効果)
上記実施形態の金型2によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、金型による大気鋳造でありながら、従来の砂型やポーラス型のように、厚さ1.2mmの超薄型の球状黒鉛鋳鉄製のフライパンを製造することができる。
(2)金型による鋳造であるので、従来の砂型などに依っていた製造とは異なり連続した鋳造が可能であるため、砂型の型開きのような作業もなく、極めて効率の良い鋳造が可能となった。
(3)特に、排気路5からの円滑な排気により、従来の砂型などと変わらない大気鋳造ができる。大気鋳造であるので、負圧や加圧する必要がなく、簡易な設備とすることができる。
(4)また、従来のベントホールのように、目詰まりを起こしたり、熱変形することもない。
(5)万一排気路5に溶湯が浸入しても、複数の排気路同士が連通しているため、排気は円滑に行われる。
(6)排気路5に浸入した溶湯が凝固しても、型開きすれば、バリと同様に簡単に型離れするため、ベントホールのように詰まった鋳物を除去するような金型のメンテナンスをする必要がない。
(7)図1に示すように、排気路5に浸入した溶湯が凝固してバリができても、フライパンFの本体の周縁部13や柄12の周縁部は、レーザ加工機27により、同一方向から1回その周縁を一回り処理するだけで、バリが削除され、その加工された先端面も鋭利なものとはならないため、後処理が極めて簡単なものとなる。もちろん、グラインダーなどで処理をすることもできる。そのため、砂型などのポーラスな型のように、ざらついた表面全体を研磨して磨き上げる必要もなく、また、ベントホールの跡なども残らないので、ベントホールの跡を消すような作業も必要がない。
このため研磨工程を大幅に省略できるため、工数の削減が可能となるとともに、大幅な消費電力を削減できるという効果がある。
(8)排気路に濡れ性を低下させるセラミックコーティングを施したため、排気路5から円滑な排気をしつつ、溶湯の漏れを効果的に抑制することができる。
(9)また、セラミックコーティングがないものに比べて、排気路5の開口を大きくすることができるため、より円滑な排気ができる。
(10)連通路35/45の周縁部に気密構造6を設けたため、連通路35/45内の正圧が、キャビティ25内の気体が排気路5を介して排気するときの妨げになることがなく、キャビティ25からの排気が円滑にできる。
(11)気密構造6に、凸部6a・6c、凹部6b・6dを備えた凹凸構造で嵌合させているため、金型2が熱で反りやうねりが生じて、厚み方向に位置がずれても気密構造6の気密性が維持できる。
(12)連通路35/45は、注湯口34/44から鉛直方向に連なる湯口35a/45aと、湯口35a/45aから水平方向に連なる湯道35b/45bと、湯道35b/45bとキャビティ25に連なりキャビティ25の周縁に設けられた湯道35b/45bより断面積が小さい堰口35c/45cとを備える。堰口35c/45cからキャビティ25に流入する溶湯の勢いを弱めるため、気泡などができにくい。
(13)特に、連通路35/45の堰口35c/45cより注湯口34/44側の湯口底35d/45dで一部が、排気路5に連通されているため、溶湯M内の気体のみを連通路35/45から排出することができるため、キャビティ25内に流入する気体を減少させることができる。また、湯口底35d/45dは、十分キャビティ25が離間しているので、連通路35/45からの排気が、キャビティ25からの排気を阻害することもない。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
(排気路5の断面形状の別例)
排気路5は、上記実施形態のような断面が弧状のものには限定されず、図6(b)に示すように、溝の断面形状が、間隙が一定の長方形などでもよい。また、排気路5を形成する面は、固定側金型3のみでなく、固定側金型3と可動側金型4の対応する位置の両面に設けるようなものであってもよい。
また、図6(c)に示すように排気路5は、例えば固定側金型3の分割面33を切削、研削、ショットブラスやエッチングなどで粗面化して、ランダムな通路が形成されるようなものであってもよい。この場合は、分割面33と排気路5は一体化し、明確な区別がされる必要はない。
(気密構造6の別例)
気密構造6は、上記実施形態のように、固定側金型3と可動側金型4の双方に凸部6a・6c、凹部6b・6dを設けて凹凸形状として相互に噛合うように構成したものに限定されず、例えば図7(b)に示すように、一方のみに凸部6eを設け、他方に凹部6fを設けて、これらが嵌合するような構成でもよい。
さらに、図9に示すように、気密構造6は、固定側金型3と可動側金型4の分割面33/43の両面を研磨して小さな隙間以下とした平面の構造としてもよい。要は、連通路35/45内からの分割面33/43への排気を抑制して、キャビティ25から排気路5への排気を妨げないようにできるものが本願における気密構造である。
図9に示す気密構造6では、連通路35/45のキャビティ25と反対側で、凹凸形状の気密構造は形成されていない。しかしながら、排気路5が形成されていない平面となっている。このため、固定側金型3と可動側金型4とを型締めした場合には、分割面33の平面と分割面43の平面が密着して、気密構造6が形成される。
気密構造6は、上記実施形態のように、連通路35/45全体に配置せず、例えば、図8に示すように、連通路35のキャビティ25とは反対側には設けないような構成でもよい。この場合は、連通路35/45から排気路5を介して連通路35/45内と大気が連通するので、連通路35/45内の気体が大気に解放される。しかしながら、連通路35/45のキャビティ25側には気密構造6が設けられていることから連通路35/45内の正圧の気体が、キャビティ25からの気体の排気を妨げることはない。
さらに気密構造6は、キャビティ25の一部、たとえは下向きの部分に形成してもよい。この場合は、キャビティ25の下部からの溶湯Mの漏れを確実に防止するとともに、気体は上方に移動する場合が多いので、キャビティ25内の気体は、上側の排気路5から円滑に排気される。
(排気路5の配置)
また、図9に示すように、排気路5は、必ずしも相互に連通した構成とする必要はない。少なくともキャビティ25と大気が連通して、キャビティ25内の気体が分割面33/43に沿って排気できればよい。
また図10に示すように、放射状の溝と同心円状の溝を組み合わせた蜘蛛の巣状のようなものも好ましい。
(連通路35/45の別例)
図8に示すように連通路35/45は、上記実施形態のような構成に限定されず、例えば、湯口35a/45aを下端近傍まで延ばし、湯口底35dの少し上からキャビティ25の下方に水平に湯道35bを延ばし、湯道底35eのやや手前で、下方からキャビティ25に堰口35cを介して連通するような構成でもよい。この場合湯口底35dを排気路5に連通させるのではなく、湯道底35eを排気路5に連通させるような構成でもよい。
上記実施形態は、例えば以下のように変更してもよい。
・薄肉鋳鉄製品は、フライパンFを例に挙げたが、これに限らず、中華鍋や北京鍋などの加熱調理器具の鋳造にも好適であり、さらに加熱調理器具に限定されるものではなく、各種の精密機械部品や工具、冶具、自動車部品などにも適用できることは言うまでもない。
・金型の方案については、製品により適宜変更される。また、フライパンFであっても、本実施形態に限定されるものではない。
・金型の排気路5のコーティングについては、アルミナのセラミックコーティングの例を挙げたが、カーバイト・ジルコニアなど、他の材質でも濡れ性が低いものであればよい。
・加熱装置の熱源としては、天然ガス・LPGなどのガスバーナーを例示したが、ガスバーナー換えてオイルバーナーでも良い。また、加熱手段は、高周波、低周波の誘導コイルにより金型を渦電流で加熱するように構成してもよい。また、加熱手段は、セラミックヒーター・ハロゲンヒータ・ニクロム線その他電気発熱体により前記金型を加熱するようにしてもよい。さらに、加熱装置は、金型内部に配置して、直接金型を加熱するようにすることもできる。
・実施形態では、球状黒鉛鋳鉄について最適化した例を説明したが、必ずしも金型2により鋳造される製品は、球状黒鉛鋳鉄製の製品に限定されず、ネズミ鋳鉄など他の鋳鉄の鋳造にも利用できることは言うまでもない。
・その他特許請求の範囲を逸脱しない範囲で、当業者が本発明の構成を付加し省略し、変更して実施できることが言うまでもない。
2…金型、3…固定側金型、4…可動側金型、5…排気路、5v…縦溝、5h…横溝、6…気密構造、11…本体、12…柄、13…周縁部、14…内底部、15…外底部、20…加熱装置、20a…ガスバーナー、21…放射温度計、23…加熱制御装置、24…加熱部、25…キャビティ、27…レーザ加工機、31…フレーム、32…キャビティ面、32a…本体キャビティ面、32b…柄キャビティ面、32e…固定側金型加熱部、33…分割面、33a…凸部、34…注湯口、35…連通路、35a…湯口、35b…湯道、35c…堰口、35d…湯口底、35e…湯道底、41…フレーム、42…キャビティ面、42a…本体キャビティ面、42b…柄キャビティ面、42c…可動側金型加熱部、43…分割面、43a…凹部、44…注湯口、45…連通路、45a…湯口、45b…湯道、45c…堰口、45d…湯口底、50…溶融炉、50a…側壁、51…高周波誘導加熱コイル、52…浮揚用コイル、56…注湯ポイント、58…冷却パイプ、59…炉台、59a…回動軸、60…金型支持装置、61…レール、62…機台、63…車輪、64…車軸、65…モータ、66…固定側金型支持部、67…可動側金型支持部、68…移動機構、69…回動機構、69a…回動軸、70…ベルトコンベア、LB…レーザ光線、F…フライパン、M…溶湯。

Claims (7)

  1. 厚みが2mm以下の薄板状の部分を有する薄肉球状黒鉛鋳鉄製品を大気鋳造するための鋳造用金型であって、
    厚みが2mm以下の薄板状の空間を有するキャビティと、
    溶湯を上方から注入する注湯口と、
    当該注湯口と前記キャビティとを連通する連通路と、
    前記キャビティと前記連通路とに沿って、固定側金型と可動側金型を鉛直方向に分割する分割面と、
    キャビティ内の気体を排出するために前記分割面の少なくとも一方に形成され、前記キャビティの周囲と前記分割面の周端部とを連通するように延びた複数の排気路と、
    前記連通路と前記排気路との境界に設けられ、前記連通路と前記排気路とを気密に遮断する気密構造と
    を備えたことを特徴とする鋳造用金型。
  2. 前記複数の排気路は、分割面に溝状に形成されている請求項1に記載の鋳造用金型。
  3. 前記分割面に形成された複数の溝状の排気路は、相互に連通されていることを特徴とする請求項2に記載の鋳造用金型。
  4. 前記排気路が、濡れ性を低下させるコーティングがされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋳造用金型。
  5. 気密構造は凹凸形状で嵌合することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋳造用金型。
  6. 前記気密構造は、前記連通路のキャビティ側に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋳造用金型。
  7. 前記連通路は、前記注湯口から鉛直方向に連なる湯口と、
    当該湯口から水平方向に連なる湯道と、
    当該湯道とキャビティに連なりキャビティの周縁に設けられた前記湯道より断面積が小さい堰口とを備え、
    前記連通路の前記堰口より前記注湯口側で一部が、前記排気路に連通されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の鋳造用金型。
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