JP2020019047A - 鋳造用金型及び鋳鉄の鋳造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】キャビティ内部の空気を円滑に排気でき、厚みが2mm以下の薄板状の部分を有する薄肉球状黒鉛鋳鉄製品であっても高い品質を維持しながら大気鋳造で鋳造することができる金型及び鋳鉄の鋳造方法を提供すること。【解決手段】薄肉鋳鉄製品を大気鋳造するための鋳造用金型であって、溶湯Mを上方から注入する注湯口34と、薄板状の空間を形成するキャビティ面32と、注湯口34とキャビティ面32とを連通する連通路35と、固定側金型3の分割面33と、キャビティ面32の周囲に設けられ溶湯の進入を許容するが通過を規制する隙間である吐かせ面36と、この吐かせ面36から気体の排出をするための分割面33に排気路面37とを設けたため、排気路面37に連通した吐かせ面36から効果的にキャビティ面32内の気体を排出することができる。【選択図】図3
Description
本発明は、鋳鉄製品を鋳造する鋳造用金型に係り、詳しくは厚みが2mm以下の薄板状の部分を有する薄肉球状黒鉛鋳鉄製品を大気鋳造に適した鋳造用金型及び鋳鉄の鋳造方法に関する。
鋳鉄は、鉄に比べ熱の伝導性が良好で熱の拡散性もよいばかりでなく、熱容量も大きいことから温まりやすく冷めにくい。またIH加熱器による加熱効率も良く、特に球状黒鉛鋳鉄では析出した黒鉛(グラファイト)が多く油脂との馴染みもよい。また、黒鉛を加熱することで発生する遠赤外線の量も多いといわれている。
これらの理由から、鋳鉄製の加熱用調理器具が用いられ、ムラのない均一な加熱が可能となることが知られていた。また、油馴染みが良いことから、焦げ付きにくいという特徴もある。さらに、剥がれるようなコーティング自体がなく、長期間にわたって使用できる。このように球状黒鉛鋳鉄は加熱用調理器具としては理想的な素材であり、プロの調理人にも多く使われている。
しかしながら、従来の鋳鉄製の加熱調理器具は、スキレットやダッチオーブン、或いは厚みが10mm以上あるステーキパンのような厚くて重いものが中心であった。鋳鉄製のフライパンもあるにはあったが、通常4.5〜5.0mm程度、薄くても3mm程度の厚みがあり、質量も2〜3kg或いはこれをはるかに超していた。このため、通常は煮込みなど置きっ放しで調理することが多く、フライパンや中華鍋のように揺り動かして調理する料理には適してなかった。特に女性などには、重くて取り扱いにくいという問題があった。
そこで、本発明者は、特許文献1に示すようにポーラス鋳型で薄くても強度のある球状黒鉛鋳鉄製で底部の厚さ1.0mm〜2.0mmの比較的軽量なフライパンを製造する方法を開発し、続いて、0.3〜1.0mmのテストも行い、チル化せずに鋳造できることを確認した。
また、卵焼き器については、プレスした鉄板の外、銅製のものやアルミニウム製のものが知られているが、薄肉の球状黒鉛鋳鉄製の卵焼き器は、熱伝導性がよく、そのムラのない均一な加熱ばかりか、油との馴染みが良く、卵焼きの仕上がりがきれいな理想的なものである。
このように製造した球状黒鉛鋳鉄製の加熱調理器具は理想的であるが、その都度ポーラス鋳型を製作して鋳造するのは手間が掛かり効率が悪いという問題があった。そのため、金型鋳造が考えられた。
しかしながら金型で鋳造するには多くの問題があった。球状黒鉛の生成時に膨張して型に応力が掛かり金型の負担が大きいという固有の問題があることから、キャビティの体積に比較して極めて肉厚のブロック状の金型を用いたりしなければならなかった。また、2mm以下という超薄肉の球状黒鉛鋳鉄では湯周りをよくするために注湯温度を上げなければならないが、高熱の状態が続くとフェーディングを起こして黒鉛が球状化しないという問題があった。さらに逆に金型で急冷されるとチルが生じるなどの特異な問題があった。
そのため、結局従来は、金型が望まれるにもかかわらず、砂型やシェル鋳型等の多孔質のポーラス鋳型で鋳造するのが常識であった。
しかしながら、上述のとおりポーラス鋳型等は使い捨てであり、その都度砂型等を製作する必要があり、さらにサンダーなどによる表面研磨など後処理も大変であった。
しかしながら、上述のとおりポーラス鋳型等は使い捨てであり、その都度砂型等を製作する必要があり、さらにサンダーなどによる表面研磨など後処理も大変であった。
そこでさらに本発明者は、このような課題を解決するため特許文献2に示すように従来金型ではできなかった2mm以下、特に1.0〜1.5mmの薄肉球状黒鉛鋳鉄製のフライパンを金型により好適に製作する方法を発明した。
この発明では、極めて薄型の可撓性のある金型で、固定側と移動側との分割面に隙間ができて溶湯の漏れやバリが生じないように、気密に密着させてしっかり型締めして鋳造する。このような構造のため、注湯時にキャビティ内部にある気体を排出しなければキャビティに溶湯を隅々まで充填できず、製品に欠けやピンホールなどが生じるという問題を生じた。特に2mm以下の超薄肉の球状黒鉛鋳鉄製品の場合は、湯周りや温度変化と同時に空気抜きが重要であることが分かった。
そこで本発明者は、キャビティに設けた微細な隙間を有するベントホールにより、従来の砂型などと同様に溶湯のモレを防ぎつつキャビティから良好な排気をすることでこの問題を解決した。
しかしながら、比較的低温で溶融するアルミニウムの鋳造や、さらに低温の樹脂成型ではキャビティにステンレスなどのベントホールを設けて、ここから空気抜きをすることはよく行われるが、鋳鉄の場合は溶融温度がはるかに高く、ベントホールの素材自体に与える影響も大きい。その結果、最初は良好に排気できるが、狭い隙間では鋳造を繰り返すことでベントホールの詰まりなどが生じるという問題があったり、大きな隙間のベントホールにすれば鋳鉄が入り込んで固化すると処理が大変となったりするという問題があった。
さらに、本発明者は、特許文献3に示すようなキャビティと、溶湯を上方から注入する注湯口と、この注湯口とキャビティ側面とを連通する連通路と、固定側金型と可動側金型を鉛直方向に分割する分割面に沿ってキャビティ内の気体を排出するために形成され、キャビティの周囲と分割面の周端部とを連通するように延びた複数の排気路を備える。そして、この連通路と分割面との境界に設けられ、連通路と分割面とを気密に遮断する気密構造とを備えた発明を提案した。このような構造であるとベントホールの詰まりはなく、分割面に設けられた排気路からキャビティ内の気体を排出することができた。
しかしながら、分割面においてキャビティ内の気体を排出する排気路が詰まりやすく、一旦詰まると気体が排出できない。また、排気路を大きくすれば溶湯が漏れだしてしまうという問題があった。
そこで、本発明は、そのような排気路の詰まりや漏れ出しがなく、金型でありながらキャビティ内部の空気を砂型のように円滑に排気でき、厚みが2mm以下の薄板状の部分を有する薄肉球状黒鉛鋳鉄製品であっても高い品質を維持しながら大気鋳造で鋳造することができる鋳造用金型及び鋳鉄の鋳造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の鋳造用金型では、厚みが2mm以下の薄板状の部分を有する薄肉鋳鉄製品を大気鋳造するための鋳造用金型であって、溶湯を上方から注入する注湯口と、厚みが2mm以下の薄板状の空間を形成するキャビティと、注湯口とキャビティとを連通する連通路と、キャビティに沿って、固定側金型と可動側金型を鉛直方向に分割する分割面と、この分割面の少なくとも一方において、キャビティの周囲に設けられ溶湯の進入を許容するが通過を規制する隙間である吐かせと、この吐かせの外周側端部に設けられた気体の排出をするため分割面の周端部と連通するように延びた複数の排気路と、を備えたことを特徴とする。
いわゆる「吐かせ」自体は、従来より存在するが、キャビティの上方で余った溶湯を溢れ出させる空間であった。本発明の「吐かせ」は、特殊な構成を備えたもので、キャビティの周囲に連続して設け、この「吐かせ」に排気路を連通させた。そして、この吐かせとなる間隙と、十分な幅、濡れ性を、従来とは異なり「溶湯の進入を許容するが通過を規制する」ものに調整することで、キャビティ内の気体は十分に排出することができ、かつ溶湯が漏れ出さない構成とすることができた。
その結果、キャビティ内の気体が効果的に排出できるようになり、金型による大気鋳造でありながら従来のポーラス鋳型と同等の通気性を実現することでピンホールの発生も抑制でき、ベントホールのように意匠面に跡もできないため、金型による鋳肌が美しい鋳物とすることができ、後処理も必要をなくしたり、金型の連続使用もできるようになった。
ここで、「排出路」とは、吐かせと分割面の周端部を連通させ、キャビティ内の気体が吐かせを介して円滑に排出できるような機能があれば、形状は明確な溝状のようなものに限定されるものではない。例えば、図8に示すような、多数の凹凸を設けたランダムな粗面のような構成でもよく、要は、実質的に吐かせから大気に円滑に排気が可能な通路が形成されていればよい。
本願発明においては、複数の排気路は、図3に示すような分割面に溝状に形成されているものが採用できるが、ここで、「溝」とは、その形状は問わず、ランダムな粗面なども、単一の排出路ではなく、複数の排出路である。また、分割面の片面に形成されても、両面に形成されてもよい。
本願発明の分割面に形成された複数の溝状の排気路の場合は、相互に連通されていることが望ましい。例えば一方の分割面に形成された複数の鉛直方向の溝と、他方に形成された複数の水平方向の溝のようなものでもよい。さらに、相互に連通されてバイパスを形成できれば、メッシュ状でも、蜘蛛の巣状でも、さらにランダムな形状でもよい。
排気路は、吐かせの周囲を取り囲むように設けられることが望ましい。
また、吐かせは、濡れ性を低下させる表面処理が施されていることが望ましい。本発明は、吐かせの溶湯に対する濡れ性が低い、つまり溶湯を撥きやすいため、隙間を大きくしても排気路に浸入する溶湯を抑制しつつ、気体のみを効率的に排出することができる。なお、表面処理とは広く表面を覆うものをいい、耐久性のあるコーティングなどに限定されず一時的な塗型材などの溶射・塗布を妨げるものではない。「濡れ性」とは、ここでは金型に対する溶湯の接触角により定義され、例えばアルミナのセラミックコーティングなどが金型の地肌よりも濡れ性を低下させる例として挙げられる。
また、吐かせは、濡れ性を低下させる表面処理が施されていることが望ましい。本発明は、吐かせの溶湯に対する濡れ性が低い、つまり溶湯を撥きやすいため、隙間を大きくしても排気路に浸入する溶湯を抑制しつつ、気体のみを効率的に排出することができる。なお、表面処理とは広く表面を覆うものをいい、耐久性のあるコーティングなどに限定されず一時的な塗型材などの溶射・塗布を妨げるものではない。「濡れ性」とは、ここでは金型に対する溶湯の接触角により定義され、例えばアルミナのセラミックコーティングなどが金型の地肌よりも濡れ性を低下させる例として挙げられる。
前提として、本発明の金型は、予熱が可能なように厚みが均一に形成され、補強用のリブを備えたものが望ましい。
なお、本願の金型は超薄型の球状黒鉛鋳鉄を鋳造するのに最適化されたものであるが、十分に黒鉛粒が形成されていないねずみ鋳鉄のような鋳物においても適用できることは言うまでもない。
なお、本願の金型は超薄型の球状黒鉛鋳鉄を鋳造するのに最適化されたものであるが、十分に黒鉛粒が形成されていないねずみ鋳鉄のような鋳物においても適用できることは言うまでもない。
また、鋳造用金型は球状黒鉛鋳鉄など鋳物と同等の材質で製造すれば、金型と鋳物の熱収縮率が同じとなり、熱変化によるストレスが生じにくい。
本発明の鋳造用金型を用いた鋳鉄の鋳造方法であって、金型の型締めするとともに、金型を予熱し、予熱後に溶湯を注湯することで、溶湯の急激な温度低下によるチル化を効果的に抑制することができる。
本発明の鋳造用金型を用いた鋳鉄の鋳造方法であって、金型の型締めするとともに、金型を予熱し、予熱後に溶湯を注湯することで、溶湯の急激な温度低下によるチル化を効果的に抑制することができる。
また、本発明のような金型を用いることで、速やかに鋳造できるため、元湯を再溶解した球状黒鉛鋳鉄を用い、球状黒鉛鋳鉄製の薄肉鋳鉄製品を効率的に製造することが可能となっている。
本発明の金型の方案として、連通路には、異物を除去するとともに、上方の湯口から注湯された溶湯の速度を低下させるためのストレーナを設けることが望ましく、さらにキャビティの幅方向に溶湯を均一にするための堰を設け、この堰の上方に設けられ、押湯を貯留するための湯溜りを設けることも望ましい。このような方案を採用することで、大気鋳造であっても湯溜に貯留された溶湯による十分な圧力によりキャビティ内に均等に圧力を加えて、吐かせを通じて気体を十分に排気して、ピンホールもなく後処理の簡単な美しい鋳物製品が容易に鋳造できる。
本発明の鋳造用金型及び鋳鉄の鋳造方法によれば、金型でありながらキャビティ内部の空気を砂型のように円滑に排気でき、厚みが2mm以下の薄板状の部分を有する薄肉球状黒鉛鋳鉄製品であっても高い品質を維持しながら大気鋳造で鋳造することができる。
以下、本発明を具体化した薄肉鋳鉄製品である球状黒鉛鋳鉄製品の一例として卵焼き器Pの鋳造用金型とこれを用いた鋳造装置、及びこの鋳造装置を用いた鋳造方法の一実施形態を図1〜7を参照して説明する。本実施形態では、特に、薄肉球状黒鉛鋳鉄製品の特性を好適に生かした球状黒鉛鋳鉄製の本体の厚さ1.2mmの卵焼き器Pを例として本発明を説明する。
(金型全体の構成の概要)
図1は、本実施形態の鋳造用の金型2と、この金型2により鋳造した薄肉鋳鉄製品である卵焼き器Pを示す斜視図である。
図1は、本実施形態の鋳造用の金型2と、この金型2により鋳造した薄肉鋳鉄製品である卵焼き器Pを示す斜視図である。
本実施形態では、鋳型として、従来の砂型やシェル鋳型に代えて金型2を採用している点が前提となっている。金型2は、固定側金型3と可動側金型4を備え、型締め、型開放を繰り返し、連続的に鋳込みができる。
(球状黒鉛鋳鉄)
ここで、本発明の金型及びこの金型によって製造される鋳物に好適に適用できる球状黒鉛鋳鉄について特徴的な性質を説明する。球状黒鉛鋳鉄は、基本的には「JISG5502」で特定されるもので、組織中に球状の黒鉛(グラファイト)を含んだ鋳鉄であり、基地が連続しているため強靭な性質を有し、ダクタイル鋳鉄とも言われている。その製造法は、溶解したC、Siを高度に含んだFeに、球状化剤であるMgやCeを加えて元湯を生成し、フェロシリコン(Fe−Si)を接種し、緩慢に冷却して凝固時に析出するグラファイトを球状化させるものである。
ここで、本発明の金型及びこの金型によって製造される鋳物に好適に適用できる球状黒鉛鋳鉄について特徴的な性質を説明する。球状黒鉛鋳鉄は、基本的には「JISG5502」で特定されるもので、組織中に球状の黒鉛(グラファイト)を含んだ鋳鉄であり、基地が連続しているため強靭な性質を有し、ダクタイル鋳鉄とも言われている。その製造法は、溶解したC、Siを高度に含んだFeに、球状化剤であるMgやCeを加えて元湯を生成し、フェロシリコン(Fe−Si)を接種し、緩慢に冷却して凝固時に析出するグラファイトを球状化させるものである。
ここで重要なのは、球状黒鉛鋳鉄は、長時間高温で溶解したままにすると、溶融しているMgが酸化や蒸発により減少してしまうため(「フェーディング」という。)、黒鉛が球状化せず球状黒鉛鋳鉄にならないため、高温のまま長時間経過しないうちに鋳型に注湯しなければならない。一方、鋳込み時に急速に温度が低下すると、球状のグラファイトが析出せず、セメンタイト(Fe3C)となって白化してしまい、硬いが脆くなってしまう(このように球状黒鉛を析出しないでセメンタイトとして凝固することを「チル化」するという。)ことであり、急な温度低下は避けなければならないことである。
さらに、本実施形態のような超薄型の鋳物では、温度が低下して流動性が低下すると、いわゆる「湯回り」が悪化するという問題もある。
また、球状黒鉛鋳鉄では凝固時に球状黒鉛が析出するため体積が増加するという独特な性質があり金型が歪んで分割面に隙間ができたりする。さらに凝固後は温度の低下とともに体積が減少したりするため、「引け」などが生じないよう鋳型はこの体積の変化に対応できなければならないという問題もあった。
また、球状黒鉛鋳鉄では凝固時に球状黒鉛が析出するため体積が増加するという独特な性質があり金型が歪んで分割面に隙間ができたりする。さらに凝固後は温度の低下とともに体積が減少したりするため、「引け」などが生じないよう鋳型はこの体積の変化に対応できなければならないという問題もあった。
このように鋳造用金型及び製品のために球状黒鉛鋳鉄を用いるための要求は非常に多様で且つ特異で厳しいものがある。そのため従来においては、金型は通常使用されていなかった。自動車部品など特殊な要求から、どうしても金型を使用したい場合でも、これらの要求に応えるため大きなブロック状の鋳型の中心部に小さなキャビティを形成した、壁が極めて厚いブロック型の金型が一部に使用されているだけであった。それでも金型では表面のチル化を防止することは困難で、事後的に表面処理をしており、そもそも超薄型の球状黒鉛鋳鉄製品は金型では製造されることはなかった。
また、通常は、フェーディングを防止するため一定量の原材料を溶解して鋳込の直前に接種し、鋳込までは極めて短い時間に限定される。このため、超薄型の卵焼き器Pのような体積の少ないものは、多数の鋳型に順番に注湯する間に時間が経過してフェーディングを生じてしまう。また、一旦製造した球状黒鉛鋳鉄を再溶解して再凝固しても、通常は溶解過程でのフェーディングで黒鉛は球状化しない。
本発明者は、このような多面的な問題を同時に解決するため、本実施形態でも示すように前提として少量の球状黒鉛鋳鉄のインゴットを予め製造し、これを図11に示すような超小型の高周波誘導炉からなる溶融炉50を用いて、大電力を用いて原料を極めて短時間に溶解する。そして短時間のうちに再溶解、注湯、凝固を行うことで、フェーディングなしで少量の体積からなる球状黒鉛鋳鉄製の卵焼き器Pを効率的に製造した。
その一方で、薄型の金型を予熱することで急激な温度低下を防止しつつ、速やかに溶湯Mの温度を下げてチル化とフェーディングを同時に抑制しつつ、良好な湯周りで高品質の超薄型の球状黒鉛鋳鉄製の卵焼き器Pを製造している。
(金型2の材質)
この実施形態の金型2は、溶湯Mの温度と、予熱や保温、鋳込みにおける繰り返しの加熱・冷却に対応し、鋳込み時の鋳物の膨張収縮に対して割れを生じないで変化を吸収できるように、卵焼き器Pの材質と同様の熱膨張率を有した、配合の近い球状黒鉛鋳鉄から形成されている。
この実施形態の金型2は、溶湯Mの温度と、予熱や保温、鋳込みにおける繰り返しの加熱・冷却に対応し、鋳込み時の鋳物の膨張収縮に対して割れを生じないで変化を吸収できるように、卵焼き器Pの材質と同様の熱膨張率を有した、配合の近い球状黒鉛鋳鉄から形成されている。
(金型2の形状)
図1、2に示すように金型2は、固定側金型3と可動側金型4を備える。固定側金型3と可動側金型4は、鉛直方向に沿った分割面33/43で分割される。固定側金型3と可動側金型4とは、分割面33/43が相互に当接する状態でキャビティ面32/42(図2)の内面により金型2内に卵焼き器Pの形状のキャビティ5(図7参照)が形成される。
図1、2に示すように金型2は、固定側金型3と可動側金型4を備える。固定側金型3と可動側金型4は、鉛直方向に沿った分割面33/43で分割される。固定側金型3と可動側金型4とは、分割面33/43が相互に当接する状態でキャビティ面32/42(図2)の内面により金型2内に卵焼き器Pの形状のキャビティ5(図7参照)が形成される。
従来は直方体の鋳物ブロックに製品の形状に応じた小さなキャビティを形成していた。しかしながら、本実施形態の薄型の金型2では、図1、図2に示すように、固定側金型3、可動側金型4のリブ31/41を除いた金型本体30/40の厚みを概ね均一の薄型の厚みに形成した。図2に示す金型本体30/40の厚みD1は、例えば卵焼き器Pの薄板状の本体11部分(図1参照)に対応する本体キャビティ面32a/42aの部分において一律に金型の厚さD1=20mmとなっている。その他の柄キャビティ面32b/42bの部分でも概ね厚みD2=25mm程度とした。このように金型2は薄肉の構成であるが、薄型球状黒鉛鋳鉄製品自体の厚みが薄く膨張収縮の絶対寸法変動が小さいことと、さらに金型と鋳物が同様な材質で同じ熱膨張率で膨張収縮するため、このような薄肉の金型2を実現したものである。さらに、薄くすることで従来のブロック型の金型とは異なり、若干の可撓性により応力を逃がすことができるという作用もある。
図2に示すように分割面33/43に沿ってみた本実施形態の金型2は、上述したようにキャビティ5の厚さがわずか1.2mmという極めてうすい薄型の金型である。しかしながら加圧して溶湯Mを押し入れたり、負圧で溶湯Mを吸引するようなことなしに、大気鋳造用(重力鋳造用)に構成され、溶湯Mを圧入したり真空で吸引したりする設備は基本的に不要である。大気鋳造では、比較的キャビティ5内に気体が残りやすいが、気体が残ると製品に欠陥が生じるため、キャビティ5内の排気は極めて重要である。
金型2の固定側金型3と移動側金型4には、金型本体30/40の分割面33/43との反対の面には上端から下端にかけてほぼ一定間隔で水平なリブ31/41が形成されている。リブ31/41は、キャビティ5を形成する金型本体30/40から水平に延びる板状の部分で、その端部は同じ水平位置に揃えられている。このリブ31/41は、薄型の金型本体30/40を補強する機能がある。また、併せて金型2の加熱用のフィンとしての機能を有する。
(連通路7)
図2に示すように本実施形態では、金型2の上部に溶湯Mをキャビティ5内に導く連通路7が設けられる。
図2に示すように本実施形態では、金型2の上部に溶湯Mをキャビティ5内に導く連通路7が設けられる。
図3に示すように、固定側金型3の上端の連通路35には、注湯口34が半割円柱状の凹部として形成されその底部にはレンコン状の穴が開いたセラミック製の円盤状のストレーナ6(不図示)を保持する円環状の溝からなるストレーナ受け部35aが形成される。ストレーナ受け部35aの下には、上端部は注湯口34と同じは内径で、下端部は径が概ね上端部の半分程度の半割ロート状の凹部からなる湯口35bが形成される。湯口35bの下端には湯溜り35cに連通されている。湯溜り35cは、湯口35bの下端の径と同等な幅で、分割面33に沿ったキャビティ面32の水平方向の長さより長く、断面形状が分割面側がやや広い台形形状で、角部は円弧状となっている凹部として形成されている(図6参照)。また、湯溜り35cの下端には、分割面33の水平方向に沿った湯溜り35cの長さより短く、かつ、キャビティ面32よりもやや短い浅い凹部が形成され、その両端部は、溶湯Mが円滑に流れるように、内側に凸の円弧状となっている堰35dが連通するように形成されている。
図4に示すように、移動側金型4の上部の連通路45には、上述した固定側金型3と分割面33/43に対して対称な形状の注湯口44、ストレーナ受け部45a、湯口45b、湯溜り45c、堰45dがそれぞれ形成されている。
このように形成された固定側金型3と移動側金型4とを、ストレーナ6をストレーナ受け部35a/45aに嵌めこみ、分割面33/43を密着させて型締めすると、連通路7(図2参照)が形成される。
このように形成された連通路7の機能について、注湯口34/44を分割面33/43側から見た図5(a)、注湯口34/44を分割面33/43と直交する方向から見た断面図の図5(b)を参照して説明する。連通路7は、鋳込にあたり、注湯口34/44から溶湯Mが注湯されると、溶湯Mは連通路7の内部セットされたストレーナ6に当たる。ストレーナ6は、一例として耐熱性のセラミックから形成され、厚さ8mm程度の直径50mm程度の円盤状に形成され、3mm程度の孔が60個程度いわゆるレンコン状に穿設されている。このため、注湯された溶湯Mの勢いを殺ぎ、かつスラグなどを濾しとる機能を有する。
また、注湯口34/44は、注湯された溶湯Mを一旦貯留して溢れないようにする空間でもある。
ストレーナ6の垂直下の内部は、下部がロート状になった湯口35b/45bが連通する。湯口35c/45cの下端は、キャビティ5の幅方向に延びて溶湯Mを貯留する湯溜り35b/45bに連通する。このため、湯口35b/45bは、湯溜り35c/45cの幅に対して、注湯口34/44の内径を大きく採ることができるようにしているので、広い注湯口34/44から注湯が容易かつ効率的にできる。
ストレーナ6の垂直下の内部は、下部がロート状になった湯口35b/45bが連通する。湯口35c/45cの下端は、キャビティ5の幅方向に延びて溶湯Mを貯留する湯溜り35b/45bに連通する。このため、湯口35b/45bは、湯溜り35c/45cの幅に対して、注湯口34/44の内径を大きく採ることができるようにしているので、広い注湯口34/44から注湯が容易かつ効率的にできる。
湯溜り35c/45cは、注湯された溶湯Mを、キャビティ5の上方で、キャビティ5のすべての部分に途切れなく注入できるように導く「湯道」としての機能を有する。また、溶湯Mを導くだけでなく、堰35d/45dと相俟って、溶湯Mを一次貯留する機能を有する。そのため、キャビティ5の容量に対して途切れなく溶湯Mを供給することができる十分な溶湯Mの貯留量を有する。また、湯溜り35c/45cにおいて溶湯Mを静かに貯留することで、溶湯M内の気体を排出することができる。
さらに、湯溜り35c/45cと堰35d/45dとキャビティ5を示す図3のA‐A断面図を示す図6を参照すると、湯溜り35c/45cから垂直下方に連通するスリット状の堰35d/45dを備え、堰35d/45dは、キャビティ5の上端に連通している。このため、湯溜り35c/45cに貯留された十分な溶湯Mを、キャビティ5のすべての部分に対して、一定の量で均一に溶湯Mを静かに流入させる。このため、キャビティ5内の溶湯Mの流れが穏やかかつ円滑となり、溶湯Mが泡立ったり途切れたりすることなくキャビティ5内全体に隙間なく充填させることができる。
以上説明したように、本実施形態の連通路7により、薄肉球状黒鉛鋳鉄製品のためのその厚さが1.2mm程度のキャビティ5の空間に溶湯Mを気体の混入が少なく、速やかに隙間なく円滑に充填することができる。
(卵焼き器Pの形状)
図2に示すキャビティ5の形状は、本実施形態では基本的に卵焼き器Pの形状の空間からなる。
図2に示すキャビティ5の形状は、本実施形態では基本的に卵焼き器Pの形状の空間からなる。
ここで、卵焼き器Pの形状を説明すると、図1に示すように長方形の内底部14を備え、周縁部13が立ち上がった皿状の本体11と、この本体11と一体に形成された柄12が斜め上方(キャビティ5では斜め下方)に向けて突設されている一般的な卵焼き器Pである。そして、この本体11は、一例として横幅がおよそ14cmで長さが20cmある。しかしながら、本実施形態では厚みが内底部14も周縁部13もいずれも球状黒鉛鋳鉄製の鋳鉄卵焼き器Pとしては異例に薄い1.2mmで、均一の厚みになっている。
(キャビティ5の形状)
次に、キャビティ5の形状を説明する。図2に示すようにキャビティ5の形状は図1に示す卵焼き器Pと同形の空間を有している。
次に、キャビティ5の形状を説明する。図2に示すようにキャビティ5の形状は図1に示す卵焼き器Pと同形の空間を有している。
図3、4に示すように、キャビティ面32/42は、卵焼き器Pの本体11に対応する本体キャビティ面32a/42aと、卵焼き器Pの柄12に対する柄キャビティ面32b/42bとから構成される。従って、本体11に対応するキャビティ5の空間の厚みは、1.2mmとなっている。また、図3、4に示すように本体キャビティ面32a/42a部分が上部に、柄キャビティ面32b/42bの部分は下部になるように配置されている。これは、柄12の方が、本体11よりも厚みがあるから、溶湯Mの充填が溶湯Mの温度が下がって流動性が低下しても容易に充填できるからである。
図1に示す卵焼き器Pの周縁部13が、図2に示す固定側金型3と可動側金型4の分割面33/43に沿って配置されている。
図1の固定側金型3に示すように、柄12の形状に沿って、固定側金型3の本体11の分割面33の鉛直な一般面33aから可動側金型4側に突出するように凸部33bが形成されている。また、可動側金型4には、この分割面の凸部33aに対応する形状で分割面43の鉛直な一般面からへこんだ凹部43b(図示なし)が形成されている。そして、この分割面の凸部33b、凹部43bに、柄12に対応する柄キャビティ面32b、42bが形成される。
図1の固定側金型3に示すように、柄12の形状に沿って、固定側金型3の本体11の分割面33の鉛直な一般面33aから可動側金型4側に突出するように凸部33bが形成されている。また、可動側金型4には、この分割面の凸部33aに対応する形状で分割面43の鉛直な一般面からへこんだ凹部43b(図示なし)が形成されている。そして、この分割面の凸部33b、凹部43bに、柄12に対応する柄キャビティ面32b、42bが形成される。
ところで、図3、図4に示すように、湯溜り35c/45cと連通する堰35d/45dがキャビティ面32/42の上端部に開口されている。このため、溶湯Mは、キャビティ5の上端部から流れ込んで下部から充填されて柄12が形成され、次いで本体11が形成される。
(吐かせ36/46)
本発明の吐かせ9は、本発明の特徴部分である。本実施形態の「吐かせ9」は、従来の「吐かせ」とは技術的な機能が異なるものである。すなわち、前述したように従来の「吐かせ」は、主にキャビティを隅々まで充填したあと、残余の溶湯Mを上部の空間に溢れ出さ、キャビティ5に溶湯を完全に充填させる空間であった。本発明の「吐かせ」は、キャビティ5の上方のみならず、キャビティ5の周囲に連続して設け、さらに、この「吐かせ」に排気路8を連通させた。そして、この吐かせ9となる間隙と、十分な幅、濡れ性を、従来とは異なり「溶湯Mの進入を許容するが通過を規制する」ものに調整することで、キャビティ内の気体は十分に排出することができ、かつ溶湯Mが漏れ出さない構成とすることができたものである。
本発明の吐かせ9は、本発明の特徴部分である。本実施形態の「吐かせ9」は、従来の「吐かせ」とは技術的な機能が異なるものである。すなわち、前述したように従来の「吐かせ」は、主にキャビティを隅々まで充填したあと、残余の溶湯Mを上部の空間に溢れ出さ、キャビティ5に溶湯を完全に充填させる空間であった。本発明の「吐かせ」は、キャビティ5の上方のみならず、キャビティ5の周囲に連続して設け、さらに、この「吐かせ」に排気路8を連通させた。そして、この吐かせ9となる間隙と、十分な幅、濡れ性を、従来とは異なり「溶湯Mの進入を許容するが通過を規制する」ものに調整することで、キャビティ内の気体は十分に排出することができ、かつ溶湯Mが漏れ出さない構成とすることができたものである。
図3、図4に示すように、キャビティ面32/42の堰35d/45dの部分以外の周縁部に吐かせ面36/46が設けられる。
図7は、金型2において、図3のB−B部分におけるキャビティ5、吐かせ9、排気路8の部分拡大図である。固定側金型3と移動側金型4とを型締めすることで、キャビティ面32/42により空間であるキャビティ5が形成され、吐かせ面36/46により吐かせ9が形成され、分割面43(一般面)と排気路面37により排気路8が形成される。
図7は、金型2において、図3のB−B部分におけるキャビティ5、吐かせ9、排気路8の部分拡大図である。固定側金型3と移動側金型4とを型締めすることで、キャビティ面32/42により空間であるキャビティ5が形成され、吐かせ面36/46により吐かせ9が形成され、分割面43(一般面)と排気路面37により排気路8が形成される。
本体11のキャビティ5の間隙D3は、1.2mmになっている。このキャビティ5の周縁に連続して連通する吐かせ9の間隙D4は0.2mmとなっている。本実施形態の吐かせ9を形成する吐かせ面36/46は、アルミナのセラミックコーティングが施されており、溶湯Mに対して濡れ性が低い。つまり、溶湯Mが毛管現象で吐かせ9に進入することを抑制している。一方、溶湯Mに混入している水蒸気、空気、アルゴン等の不活性ガスなどは、この吐かせ9において溶湯Mから分離されて、排出される。また、本実施形態の吐かせ9の幅Lは、10mmとなっており、溶湯Mは、吐かせ9の途中までは進入することができても、大気鋳造にかかる溶湯Mの質量に由来する圧力ではこの吐かせ9の部分を通過することができない。しかしながら、一定の圧力により溶湯Mはキャビティ5の周縁から一部吐かせ9に進入するため、卵焼き器Pに周縁部13まできれいに溶湯Mが充填される。また、ピンホールや欠けの原因となる気体などは、容易に吐かせ9から排出される。
なお、この吐かせ9の間隙及び幅は一例であり、吐かせ面36/46のコーティングや塗型材などの表面処理の状態、溶湯Mの配合・温度、方案に起因する溶湯Mに掛かる圧力などに応じて、吐かせ9が溶湯Mの進入を許容するが通過を規制する隙間として、間隙及び幅が適宜調整されるものである。本実施形態では、一例として吐かせの間隙D4は0.2mmとなっているが、上記のような機能を達成させるためこの数値に限定されるものではなく、間隙D4も例えば0.1mm〜0.5mm程度に調整される。幅Lも数値は限定されないが、例えば、1mm〜20mm程度に調整される。
なお、従来の吐かせと同様に、本実施形態の吐かせ9においてもその上端部は、堰35d/45d及び湯溜り35c/45cに隣接する部分にも設けられており剰余の溶湯Mからに気体を排出することができる。この部分に関しては、その間隙はキャビティ5に隣接した部分より広い間隙とすることができる。
(排気路8)
図3に示すように、固定側金型3の分割面33の吐かせ面36の外周縁には排気路面37が形成される。
図3に示すように、固定側金型3の分割面33の吐かせ面36の外周縁には排気路面37が形成される。
図7に示すように、排気路8は、深さ0.3mmm、開口部の幅0.6mm程度の断面半割円柱状の溝からなる排気路面37が固定側金型3の分割面33に形成され、移動側金型4の分割面43が型締めにより閉じられることにより形成される。
図3に示すように排気路面37は、吐かせ9の上端部を除くほぼ全周に亘る周端部に隣接して連通するように形成されている接続部面37aと、ここから連通して外気に開放される外気連通部面37bが形成されている。移動側金型4においては、固定側金型3の排気路面37に対応する部分は平面として形成されている。そして固定側金型3と移動側金型4とが型締めされたときに、移動側金型4の分割面43により接続部8a(図7参照)、外気連通部8b(不図示)とからなる排気路8が構成される。
接続部8aは、吐かせ9からの溶湯Mの進入を許容するが、通過を規制する機能を有するため、溶湯Mに含まれた気体のみを排出する。しかしながら、仮に、吐かせ9において溶湯Mから排出された気体の逃げ場所がないとすれば、その吐かせ9内の内圧が高まり、溶湯Mが吐かせ9に進入することができず、また溶湯Mから気体を排出されなくなる。そこで、吐かせ9の外周縁に排気路8を設けることで、溶湯Mのない低圧の空間に気体を容易に排出することができる。なお、仮に溶湯Mが吐かせ9に進入して充填されてしまったとしても、吐かせ9の外周縁に隣接した接続部8aにおいて容易に気体を排出することができる。
また、接続部8aからは、金型の外部に連通して気体を大気に開放することができる外気連通部8bが形成されているため、接続部8aの内圧が高まることもない。
図3に示すように外気連通部8bは、接続部8aから水平に複数、この実施形態では平行に9本設けられている。さらに最下端の外気連通部8bからは、さらに下方に向けて垂直方向の外気連通部8bが接続されている。
図3に示すように外気連通部8bは、接続部8aから水平に複数、この実施形態では平行に9本設けられている。さらに最下端の外気連通部8bからは、さらに下方に向けて垂直方向の外気連通部8bが接続されている。
(コーティング)
キャビティ5内に注入された溶湯Mに押出された気体は、キャビティ5に連通した吐かせ9から排気される。このとき、吐かせ9に溶湯Mが浸入して通過すると、溶湯Mが排気路8に漏れ出したり、吐かせ9が目詰まりしてしまう。
キャビティ5内に注入された溶湯Mに押出された気体は、キャビティ5に連通した吐かせ9から排気される。このとき、吐かせ9に溶湯Mが浸入して通過すると、溶湯Mが排気路8に漏れ出したり、吐かせ9が目詰まりしてしまう。
そこで、本実施形態では、吐かせ8内部にセラミックコーティングを施している。このセラミックコーティングは、溶湯Mに対する濡れ性を低下させる、つまり溶湯Mを撥きやすくする。ここで、「濡れ性」とは、ここでは、吐かせ9の内部表面と、溶湯Mの親和性(付着しやすさ)を表すもので、接触角で表される。この濡れ性が低下すると、より広い間隙でも、溶湯Mが進入しにくくなる。そうすれば、溶湯Mの浸入を阻止しながら、キャビティ5内の気体をより円滑に排出することができることになる。
図7に示すように、本実施形態の例では、このセラミックスはアルミナの粉末を水練りして吐かせ面36/46に溶射してコーティングし、乾燥して固める。このセラミックコーティングは、溶湯Mとの濡れ性が低く、間隙D4<0.3mmであれば、セラミックコーティングの濡れ性の低さと相俟って、気体は排出するが、溶湯Mの進入が抑制される。なお、吐かせ9への溶湯Mの進入の程度に応じてなお、このセラミックコーティングは、吐かせ9の内部にのみ選択的に施す必要はなく、分割面33全体に施してもよい。また、キャビティ面32/42については、作業性と品質管理の観点から適宜コーティングの有無が決定できる。
(塗型剤)
なお、吐かせ面36/46を含むキャビティ面32/42内には、溶湯Mとの親和性を向上し、鋳肌を美しくし、焼付きを防止するため、セラミックコーティングを施した上から各種の塗型剤を塗布してもよい。また、吐かせ面36/46のみに塗布して濡れ性を調整するようにしてもよい。
なお、吐かせ面36/46を含むキャビティ面32/42内には、溶湯Mとの親和性を向上し、鋳肌を美しくし、焼付きを防止するため、セラミックコーティングを施した上から各種の塗型剤を塗布してもよい。また、吐かせ面36/46のみに塗布して濡れ性を調整するようにしてもよい。
(金型の加熱装置20)
図2に示すように、加熱装置20,20が、金型2を両側から挟むように近接して配置される。
図2に示すように、加熱装置20,20が、金型2を両側から挟むように近接して配置される。
加熱装置20は、多数のガスバーナー20aを備える。ガスバーナー20aは、金型2のリブ31/41の高さに合わせて配置されている。
ガスバーナー20aは、リブ31/41の部分を加熱し、その熱が金型2の金型本体30/40に伝導される。そのため、金型本体30/40においては、急激な温度上昇や、加熱ムラがなく均一に加熱される。
ガスバーナー20aは、リブ31/41の部分を加熱し、その熱が金型2の金型本体30/40に伝導される。そのため、金型本体30/40においては、急激な温度上昇や、加熱ムラがなく均一に加熱される。
また、加熱を中止すれば、リブ31/41は、放熱フィンとして金型2の熱を発散することで、キャビティ5内が、過度に高熱の状態が維持されないようにする。
本実施形態の金型2は、球状黒鉛鋳鉄製であり、熱伝導が良好でリブ30/41を加熱すれば速やかに金型本体30/40の温度を上昇させることができ、加熱を停止すれば速やかに放熱する。また、球状黒鉛鋳鉄は熱容量が大きく、キャビティ5内部の溶湯Mに対して安定した熱環境を与える。さらに、球状黒鉛鋳鉄は加熱・冷却に対して、鋳物と同等の熱膨張・熱収縮をするため、鋳物の冷却時点でのストレスが極めて小さい。そして、球状黒鉛鋳鉄は、他の金属製金型に比べても引張り強度が大きい(JISG5502参照)。したがって金型2が薄くても、大きな熱変化において、破損しにくい。
本実施形態の金型2は、球状黒鉛鋳鉄製であり、熱伝導が良好でリブ30/41を加熱すれば速やかに金型本体30/40の温度を上昇させることができ、加熱を停止すれば速やかに放熱する。また、球状黒鉛鋳鉄は熱容量が大きく、キャビティ5内部の溶湯Mに対して安定した熱環境を与える。さらに、球状黒鉛鋳鉄は加熱・冷却に対して、鋳物と同等の熱膨張・熱収縮をするため、鋳物の冷却時点でのストレスが極めて小さい。そして、球状黒鉛鋳鉄は、他の金属製金型に比べても引張り強度が大きい(JISG5502参照)。したがって金型2が薄くても、大きな熱変化において、破損しにくい。
(金型支持装置60)
図13に示すように、複数の金型支持装置60は、それぞれ金型2を支持している。各金型支持装置60は、支持した金型2の注湯口34/44を、溶融炉50の近傍の注湯ポイント56に移動できるように、レール61,61上に配置され(図10参照)。レール61上を移動できるように、機台62は、両端に車輪63,63を備えた車軸64を有し、モータ65により駆動される。
図13に示すように、複数の金型支持装置60は、それぞれ金型2を支持している。各金型支持装置60は、支持した金型2の注湯口34/44を、溶融炉50の近傍の注湯ポイント56に移動できるように、レール61,61上に配置され(図10参照)。レール61上を移動できるように、機台62は、両端に車輪63,63を備えた車軸64を有し、モータ65により駆動される。
固定側金型3を支持する固定側金型支持部66は、機台62の一端側に配置され、固定側金型3の背面には加熱装置20が配置される。
また、可動側金型4を支持する可動側金型支持部67は、機台62の他端側に配置され、可動側金型4の背面にも加熱装置20が配置される。可動側金型支持部67は、移動機構68を介して可動側金型4を支持しており、可動側金型4は、固定側金型3と型締め・型開き可能に移動される。また、可動側金型支持部67は、水平に配置された回動軸69aを備えた回動機構69を備え可動側金型4を90度回転させて、分割面43を鉛直下方に向けることができる。分割面43が鉛直下方に向けられた可動側金型4の鉛直下方には、ベルトコンベア70が配設され、型抜きされ、落下された卵焼き器Pを載せて、次工程に搬送する。
また、可動側金型4を支持する可動側金型支持部67は、機台62の他端側に配置され、可動側金型4の背面にも加熱装置20が配置される。可動側金型支持部67は、移動機構68を介して可動側金型4を支持しており、可動側金型4は、固定側金型3と型締め・型開き可能に移動される。また、可動側金型支持部67は、水平に配置された回動軸69aを備えた回動機構69を備え可動側金型4を90度回転させて、分割面43を鉛直下方に向けることができる。分割面43が鉛直下方に向けられた可動側金型4の鉛直下方には、ベルトコンベア70が配設され、型抜きされ、落下された卵焼き器Pを載せて、次工程に搬送する。
(溶融炉50)
図11に示すように、本実施形態では、超小型の溶融炉50を用いて原料を溶解する。溶融炉50は、高周波誘導炉で、高周波誘導加熱コイル51、浮揚用コイル52を備え、浮揚用コイル52で原料を浮遊させて、高周波誘導加熱コイル51の渦電流で加熱・溶解する。溶融炉50の側壁50aは、冷却パイプ58が内部に設けられ、冷却液が循環して側壁50aを冷却している。
図11に示すように、本実施形態では、超小型の溶融炉50を用いて原料を溶解する。溶融炉50は、高周波誘導炉で、高周波誘導加熱コイル51、浮揚用コイル52を備え、浮揚用コイル52で原料を浮遊させて、高周波誘導加熱コイル51の渦電流で加熱・溶解する。溶融炉50の側壁50aは、冷却パイプ58が内部に設けられ、冷却液が循環して側壁50aを冷却している。
図12に示すように、この溶融炉50は、炉台59上に固着され、炉台59は、回動軸59aを軸に傾動し、注湯ポイント56(図10)にある金型2の注湯口34/44に、溶融炉50内で浮揚している溶湯Mを注湯する。
(金型2の作用)
図9のフローチャートに沿って、金型2の作用である、薄肉球状黒鉛鋳鉄製品である卵焼き器Pの鋳造方法について説明する。
図9のフローチャートに沿って、金型2の作用である、薄肉球状黒鉛鋳鉄製品である卵焼き器Pの鋳造方法について説明する。
(鋳造方法の概略)
図9に示すように、卵焼き器Pの鋳造方法は、この鋳造装置を用いて、以下のような手順で行なう。まず、図13、図10両側に示す開いた卵焼き器Pの金型2の固定側金型3の分割面33に、可動側金型4の分割面43を当接させて図10中央のように型締めする型締め工程(S1)を行う。次に、図2に示す加熱制御装置23が放射温度計21により金型2の加熱部の表面温度を測定しつつ、加熱装置20により金型2を予め設定された設定温度に加熱する金型予熱工程(S2)を行う。そして、元湯生成工程(S3)では、予め溶融炉50(図11)で元湯を溶解して生成しておく。この溶解した元湯を、予め加熱した金型2に注湯する(図12参照)金型注湯工程(S4)を行なう。続いて、図2に示す加熱装置20を用いて注湯した金型を急冷させないための金型保温工程(S5)を行なう。そして、注湯した元湯を設定した温度変化で硬化させる鋳物凝固工程(S6)を行う。そして、鋳物硬化後に、図13に示すように固定側金型3と可動側金型4とを分割面33,43で分離する金型開放工程(S7)に続き、鋳造された卵焼き器Pを取り出す型抜き工程(S8)を行う。最後に、抜き出した卵焼き器Pをベルトコンベア70で後加工装置に搬送して、レーザ加工機27で鋳ばり取りをするなどを行なう後処理工程(S9)とを行う。
図9に示すように、卵焼き器Pの鋳造方法は、この鋳造装置を用いて、以下のような手順で行なう。まず、図13、図10両側に示す開いた卵焼き器Pの金型2の固定側金型3の分割面33に、可動側金型4の分割面43を当接させて図10中央のように型締めする型締め工程(S1)を行う。次に、図2に示す加熱制御装置23が放射温度計21により金型2の加熱部の表面温度を測定しつつ、加熱装置20により金型2を予め設定された設定温度に加熱する金型予熱工程(S2)を行う。そして、元湯生成工程(S3)では、予め溶融炉50(図11)で元湯を溶解して生成しておく。この溶解した元湯を、予め加熱した金型2に注湯する(図12参照)金型注湯工程(S4)を行なう。続いて、図2に示す加熱装置20を用いて注湯した金型を急冷させないための金型保温工程(S5)を行なう。そして、注湯した元湯を設定した温度変化で硬化させる鋳物凝固工程(S6)を行う。そして、鋳物硬化後に、図13に示すように固定側金型3と可動側金型4とを分割面33,43で分離する金型開放工程(S7)に続き、鋳造された卵焼き器Pを取り出す型抜き工程(S8)を行う。最後に、抜き出した卵焼き器Pをベルトコンベア70で後加工装置に搬送して、レーザ加工機27で鋳ばり取りをするなどを行なう後処理工程(S9)とを行う。
(型締め工程(S1))
図13に示すように、金型支持装置60に予めセットされた可動側金型4は、固定側金型3に対して、移動機構68により、接離自在に支持されている。図13において可動側金型4は開放した状態である。
図13に示すように、金型支持装置60に予めセットされた可動側金型4は、固定側金型3に対して、移動機構68により、接離自在に支持されている。図13において可動側金型4は開放した状態である。
次に、図13に示す状態から、移動機構68により可動側金型4を図上左方向に移動させて分割面33/43を当接させ、さらに移動機構68の図示しない油圧機構で分割面43を分割面33に圧接させ、図2に示すように金型2を型締めする型締め工程(S1)を行なう。
(金型予熱工程(S2))
型締めした金型2を予め設定された設定温度まで加熱する金型予熱工程(S2)を行なう。この金型予熱工程(S2)では、型締めした金型2を挟むように近接配置した加熱装置20/20により矢印で示した方向に金型2の全体を加熱する。
型締めした金型2を予め設定された設定温度まで加熱する金型予熱工程(S2)を行なう。この金型予熱工程(S2)では、型締めした金型2を挟むように近接配置した加熱装置20/20により矢印で示した方向に金型2の全体を加熱する。
(元湯生成工程(S3))
S1、S2と並行して、次の金型注湯工程(S4)のための球状黒鉛鋳鉄の元湯(溶湯M)を準備する。元湯自体は、どのような方法で生成してもよいが。実施形態では、前述した溶融炉50を用いて予め所定量の球状黒鉛鋳鉄のインゴットを大電力で急速加熱して再溶解し、溶湯Mを生成する。このため、本実施形態では球状黒鉛鋳鉄を生成するための接種は不要である。
S1、S2と並行して、次の金型注湯工程(S4)のための球状黒鉛鋳鉄の元湯(溶湯M)を準備する。元湯自体は、どのような方法で生成してもよいが。実施形態では、前述した溶融炉50を用いて予め所定量の球状黒鉛鋳鉄のインゴットを大電力で急速加熱して再溶解し、溶湯Mを生成する。このため、本実施形態では球状黒鉛鋳鉄を生成するための接種は不要である。
(金型注湯工程(S4))
上述のように、元湯が生成されたら(S3)、図10に示すように、既に型締めし(S1)、予熱した(S2)金型2を直ちに注湯ポイント56に移動し、図12に示すように溶融炉50を炉台59を回動軸59aを軸に傾動させて注湯口34/44により形成された湯口カップに溶融炉50から直接元湯(溶湯M)を注湯する。
上述のように、元湯が生成されたら(S3)、図10に示すように、既に型締めし(S1)、予熱した(S2)金型2を直ちに注湯ポイント56に移動し、図12に示すように溶融炉50を炉台59を回動軸59aを軸に傾動させて注湯口34/44により形成された湯口カップに溶融炉50から直接元湯(溶湯M)を注湯する。
(金型保温工程(S5))
注湯後は、通常は鋳物凝固工程(S6)に移行するが、本実施形態では、その前に加熱装置20/20が注湯後も金型2の加熱を行い、金型2を予め設定された設定温度に保温する金型保温工程(S5)を行なう。この金型保温工程では、溶湯Mの温度低下をコントロールして、急激な温度低下によるチル化を抑制する。この工程は状態により省略可能である。なお、金型保温工程(S5)は、鋳物凝固工程(S6)と前後し、または重複してもよい。
注湯後は、通常は鋳物凝固工程(S6)に移行するが、本実施形態では、その前に加熱装置20/20が注湯後も金型2の加熱を行い、金型2を予め設定された設定温度に保温する金型保温工程(S5)を行なう。この金型保温工程では、溶湯Mの温度低下をコントロールして、急激な温度低下によるチル化を抑制する。この工程は状態により省略可能である。なお、金型保温工程(S5)は、鋳物凝固工程(S6)と前後し、または重複してもよい。
(鋳物凝固工程(S6))
次に、溶湯Mが冷却されて凝固される鋳物凝固工程(S6)を行なう。予め加熱しておいた金型2により、緩慢に温度が低下する溶湯Mは、球状の黒鉛を析出しながら冷却していく。このとき製品は一旦膨張するが、超薄型のため影響は小さい。注湯した金型は肉厚が薄いため、従来の砂型やシェル鋳型はもちろん、圧肉のブロック状の金型と比較しても比較的放熱が良好なため、そのままの状態でも、概ね1分以内で凝固する。このとき、予め加熱された金型2と卵焼き器Pとは、同様の膨張率であるので、温度低下とともに同様に熱収縮していき、金型2に歪が生じにくい。なお、送風などにより冷却を促進してもよい。
次に、溶湯Mが冷却されて凝固される鋳物凝固工程(S6)を行なう。予め加熱しておいた金型2により、緩慢に温度が低下する溶湯Mは、球状の黒鉛を析出しながら冷却していく。このとき製品は一旦膨張するが、超薄型のため影響は小さい。注湯した金型は肉厚が薄いため、従来の砂型やシェル鋳型はもちろん、圧肉のブロック状の金型と比較しても比較的放熱が良好なため、そのままの状態でも、概ね1分以内で凝固する。このとき、予め加熱された金型2と卵焼き器Pとは、同様の膨張率であるので、温度低下とともに同様に熱収縮していき、金型2に歪が生じにくい。なお、送風などにより冷却を促進してもよい。
(金型開放工程(S7))
鋳物がA1変態点となれば、組織が固定され、硬化する。硬化したら、金型2を開放する金型開放工程(S7)を行う。
鋳物がA1変態点となれば、組織が固定され、硬化する。硬化したら、金型2を開放する金型開放工程(S7)を行う。
(型抜き工程(S8))
続いて、可動側金型4を固定側金型3から離間するとともに、分割面43を下方に向けて回動させ卵焼き器Pを型抜きする型抜き工程(S8)を行なう。必要に応じて、金型にノックピンを設けて型抜きをしてもよい。
続いて、可動側金型4を固定側金型3から離間するとともに、分割面43を下方に向けて回動させ卵焼き器Pを型抜きする型抜き工程(S8)を行なう。必要に応じて、金型にノックピンを設けて型抜きをしてもよい。
(後処理工程(S9))
型抜きしたら、ベルトコンベア70で製品を搬送し、後処理工程(S9)を行なう。本実施形態では、例えば可動側金型4の可動方向と平行な方向(つまり、抜き方向)から、薄肉鋳鉄製品に対してレーザ加工機によりレーザ光により卵焼き器Pの周縁部にできた鋳ばりを溶断する鋳ばり取り工程を行なう。
型抜きしたら、ベルトコンベア70で製品を搬送し、後処理工程(S9)を行なう。本実施形態では、例えば可動側金型4の可動方向と平行な方向(つまり、抜き方向)から、薄肉鋳鉄製品に対してレーザ加工機によりレーザ光により卵焼き器Pの周縁部にできた鋳ばりを溶断する鋳ばり取り工程を行なう。
本実施形態では、型抜きした卵焼き器Pには、本体11の周縁や柄12の周縁に、分割面33,43に沿って鋳ばりが生じている。特に、本実施形態では、吐かせ9に浸入した溶湯Mが凝固したものが鋳ばりとして生じる。これをNC制御のレーザ加工機27から射出されるレーザ光線で溶断する鋳ばり取り工程を行なう。この鋳ばりは、分割面33/43に沿って生じるため、可動側金型4の可動方向と垂直な方向に突出しているので、可動方向と平行な方向、つまり卵焼き器Pの内底部14と垂直な方向から卵焼き器Pの周縁部13や柄12に沿ってレーザ光線LBを平行移動させながら照射すれば、1回の照射で鋳ばりなどが一括して溶断処理できる。この溶断された端部は、エッジが無く手に優しいので、このレーザ加工のみでもグラインダなどによる研削は必要がない。
また、従来の砂型やシェル鋳型などのポーラスな型では、当然に表面が粗面となるのでサンダーなどで各方向から手作業で削って仕上げ作業をしていた、本発明の金型鋳造では鋳肌がきれいであるのでこのため、このような研磨作業を省略することができる。以上で薄肉球状黒鉛鋳鉄製品である卵焼き器Pが完成する。
(実施形態の作用・効果)
(1)キャビティに溶湯Mを注湯すると、十分な間隙を有した吐かせ9から、キャビティに残存していた気体や、溶湯Mと共に混入した気体、溶湯Mから蒸発した水蒸気などの気体は、先行して速やかに排出される。
(1)キャビティに溶湯Mを注湯すると、十分な間隙を有した吐かせ9から、キャビティに残存していた気体や、溶湯Mと共に混入した気体、溶湯Mから蒸発した水蒸気などの気体は、先行して速やかに排出される。
(2)上記実施形態の吐かせ9は、キャビティに注湯した場合に、その一部が吐かせ9に溶湯Mが進入することで、キャビティ5内に溶湯Mを隙間なく充填することができ、従来の「吐かせ」としての機能も奏する。
(3)その一方で、本実施形態の吐かせ9では、吐かせ9内に進入した溶湯Mは、吐かせ9を通過することがないので、無用な溶湯Mの漏れ出しが起きることはない。この吐かせ9内に進入した溶湯Mから発生した気体は、吐かせ9内に放出される。
(4)また、吐かせ9の周縁部は、排気路8と連通しており、吐かせ9に排出された気体は、速やかに外気に開放される。
(5)排気路8は、複数の溝からなり、一つの排気路が詰まってもバイパス路により円滑に排気することができる。
(5)排気路8は、複数の溝からなり、一つの排気路が詰まってもバイパス路により円滑に排気することができる。
(6)吐かせ9に進入した溶湯Mは、凝固しても、型開きをしたのちに鋳物製品とともに簡単に除去でき、金型に固着することがない。そのため、型のメンテナンスが簡単である。
(7)このように吐かせ9と排気路8により十分に排気することができるので、キャビティ5に注湯された溶湯Mは、気体を含まないため、ピンホールや、引け、欠けなどが生じないため、鋳肌が美しく、基本的に後処理が不必要である。
(8)このように吐かせ9と排気路8により十分に排気することができる。そのため、金型であっても、本発明の金型の構成による適切な予熱や放熱と相俟って、従来の砂型やレジン鋳型のようなポーラス鋳型と同様に十分な球状黒鉛の粒が形成される。さらにチルのない1.0〜2.0mm程度の薄肉球状黒鉛鋳鉄の卵焼き器Pをはじめとする製品を安定して連続して製造することができる。
(9)また、金型上端に開口された注湯口34/44と、ストレーナ6と、湯口35b/45b、湯溜り35c/45c、堰35d/45dを含む連通路7の構成により、注湯された溶湯Mを、容易に、かつスラグなどが混入せず、静かにかつ速やかに、泡立てず、均一に途切れなく、隅々までキャビティ5に導くことができる。
特に、湯溜り35c/45cの構成は、溶湯Mを導く湯道の機能を有するとともに、ここに溶湯Mを貯留してその質量により押湯として溶湯Mを十分に吐かせ9に押し込むことができるため、大気鋳造でありながら、隅々まで欠けやピンホールなどの欠損のない鋳物とすることができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
(排気路8の断面形状の別例)
排気路8は、図7に示す実施形態のような断面が弧状のものには限定されず、溝の断面形状がどのようなものであっても、目的とする排気が円滑に行われればよい。また、完全な直線状の溝でなくてもよい。さらに、ランダムな隙間で構成されていてもよい。
(排気路8の断面形状の別例)
排気路8は、図7に示す実施形態のような断面が弧状のものには限定されず、溝の断面形状がどのようなものであっても、目的とする排気が円滑に行われればよい。また、完全な直線状の溝でなくてもよい。さらに、ランダムな隙間で構成されていてもよい。
また、排気路8は、図3に示すような吐かせ9の周縁から水平若しくは垂直に延びる溝状ものには限らず、図8に示すように、排気路面37として、多数の凹凸を設けた形状に設けられてもよい。例えば、ランダムな凹凸のある型により鋳造するほか、プレスにより凹凸を形成する加工をしてもよい。また、レーザビームによる加工、ショットブラストによる凹凸、面に沿って回転しながら移動するフライやエンドミルにより多数の微細な溝を切削して形成する方法、粗い砥石により研削して多数の凹凸を形成する方法としてもよい。さらに、エッチングによりランダムに凹凸を形成する方法など、その方法や形状は問わない。要は、分割面33/43の間に、吐かせ9から大気に気体が排気できる通路が形成されればよい。
また、排気路8を形成する面は、固定側金型3のみでなく、固定側金型3と可動側金型4の対応する位置の両面に設けるようなものであってもよい。
なお、本実施形態では、大気鋳造であっても好適な鋳造が可能になっているが、例えば排気路8に負圧を掛けて溶湯Mを導入したり、注湯口34/44から、溶湯Mを加圧するようなものを排除するものではない。
なお、本実施形態では、大気鋳造であっても好適な鋳造が可能になっているが、例えば排気路8に負圧を掛けて溶湯Mを導入したり、注湯口34/44から、溶湯Mを加圧するようなものを排除するものではない。
上記実施形態は、例えば以下のように変更してもよい。
・薄肉鋳鉄製品は、卵焼き器Pを例に挙げたが、これに限らず、フライパン、各種パン、鍋、中華鍋や北京鍋などの加熱調理器具の鋳造にも好適であり、さらに加熱調理器具に限定されるものではなく、薄肉球状黒鉛鋳鉄などの特性を生かした各種の精密機械部品や工具、冶具、自動車部品などにも適用できることは言うまでもない。
・薄肉鋳鉄製品は、卵焼き器Pを例に挙げたが、これに限らず、フライパン、各種パン、鍋、中華鍋や北京鍋などの加熱調理器具の鋳造にも好適であり、さらに加熱調理器具に限定されるものではなく、薄肉球状黒鉛鋳鉄などの特性を生かした各種の精密機械部品や工具、冶具、自動車部品などにも適用できることは言うまでもない。
・金型の方案については、製品により適宜変更される。また、卵焼き器であっても、本実施形態に限定されるものではない。また、連通路7は、適宜製品に応じて方案を選択することができる。
・金型の排気路8のコーティングについては、アルミナのセラミックコーティングの例を挙げたが、カーバイト・ジルコニアなど、他の材質でも濡れ性が低いものであればよい。
・加熱装置の熱源としては、天然ガス・LPGなどのガスバーナーを例示したが、ガスバーナー換えてオイルバーナーでも良い。また、加熱手段は、高周波、低周波の誘導コイルにより金型を渦電流で加熱するように構成してもよい。また、加熱手段は、セラミックヒーター・ハロゲンヒータ・ニクロム線その他電気発熱体により前記金型を加熱するようにしてもよい。さらに、加熱装置は、金型内部に配置して、直接金型を加熱するようにすることもできる。
・また、必ずしも予熱を前提とするものではなく、予熱なしで鋳造してもよく、この場合でも本発明の吐かせ9と排気路8により、速やかにキャビティ5に溶湯Mを充填することができる。
・実施形態では、球状黒鉛鋳鉄について最適化した例を説明したが、必ずしも金型2により鋳造される製品は、球状黒鉛鋳鉄製の製品に限定されず、ネズミ鋳鉄など他の鋳鉄の鋳造にも利用できることは言うまでもない。
・その他特許請求の範囲を逸脱しない範囲で、当業者が本発明の構成を付加し省略し、変更して実施できることが言うまでもない。
M…溶湯、P…卵焼き器、2…金型、3…固定側金型、4…可動側金型、5…キャビティ、6…ストレーナ、7…連通路、8…排気路、8a…接続部、8b…外気連通部、9…吐かせ、11…本体、12…柄、13…周縁部、14…内底部、30…金型本体、31…リブ、32…キャビティ面、32a…本体キャビティ面、32b…柄キャビティ面、33…分割面、33a…凸部、34…注湯口、35…連通路、35a…ストレーナ受け部、35b…湯口、35c…湯溜り、35d…堰、36…吐かせ面、37…排気路面、37a…接続部面、37b…外気連通部面、40…金型本体、41…リブ、42…キャビティ面、42a…本体キャビティ面、42b…柄キャビティ面、43…分割面、43a…凹部、44…注湯口、45…連通路、45a…ストレーナ受け部、45b…湯口、45c…湯溜り、45d…堰、46…吐かせ面
Claims (15)
- 厚みが2mm以下の薄板状の部分を有する薄肉鋳鉄製品を大気鋳造するための鋳造用金型であって、
溶湯を上方から注入する注湯口と、
厚みが2mm以下の薄板状の空間を形成するキャビティと、
前記注湯口と前記キャビティとを連通する連通路と、
前記キャビティに沿って、固定側金型と可動側金型を鉛直方向に分割する分割面と、
当該分割面の少なくとも一方において、前記キャビティの周囲に設けられ溶湯の進入を許容するが通過を規制する隙間である吐かせと、
当該吐かせの外周側端部に設けられた気体の排出をするため前記分割面の周端部と連通するように延びた複数の排気路と、
を備えたことを特徴とする鋳造用金型。 - 前記排気路は、前記吐かせの周囲を取り囲むように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の鋳造用金型。
- 前記複数の排気路は、前記分割面に溝状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鋳造用金型。
- 前記分割面に形成された複数の溝状の排気路は、相互に連通されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の鋳造用金型。
- 前記吐かせが、濡れ性を低下させる表面処理が施されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋳造用金型。
- 前記鋳造用金型は、予熱が可能なように厚みが均一に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の鋳造用金型。
- 前記金型は、補強用のリブを備えたことを特徴とする請求項6に記載の鋳造用金型。
- 前記連通路には、異物を除去するとともに、溶湯の速度を低下させるためのストレーナを設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の鋳造用金型。
- 前記連通路には、キャビティの幅方向に溶湯を均一にするための堰を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の鋳造用金型。
- 前記連通路の前記堰の上方に設けられ、押湯を貯留するための湯溜りを設けたことを特徴とする請求項9に記載の鋳造用金型。
- 前記鋳造用金型は球状黒鉛鋳鉄である請求項1〜10のいずれか一項に記載の鋳造用金型。
- 前記薄肉鋳鉄製品は、球状黒鉛鋳鉄である請求項1〜11のいずれか一項に記載の鋳造用金型。
- 請求項6に記載の鋳造用金型を用いた鋳鉄の鋳造方法であって、
前記金型の型締めするとともに、当該金型を予熱し、
予熱後に溶湯を注湯することを特徴とする鋳鉄の鋳造方法。 - 請求項13に記載の鋳鉄の鋳造方法であって、
元湯を再溶解した球状黒鉛鋳鉄を用い、
球状黒鉛鋳鉄製の薄肉鋳鉄製品を製造することを特徴とする鋳鉄の鋳造方法。 - 請求項13又は14に記載の鋳鉄の製造方法であって、
前記鋳造用金型は、前記連通路に前記キャビティの幅方向に延びる溶湯を均一にするための堰を設けるとともに、当該堰の上方に接するように押湯を貯留するための湯溜りを設け、
前記注湯は、大気鋳造により行うことを特徴とする鋳鉄の鋳造方法。
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- 2018-08-01 JP JP2018145359A patent/JP2020019047A/ja active Pending
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