JP5669577B2 - 仮撚加工糸およびその製造方法ならびにそれを用いた芯地用基布の製造方法 - Google Patents
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Description
一方、近年は衣料用素材が徐々に薄地化して透けやすくなってきており、薄くて透明な芯地用基布が要求されてきている。このような薄地化に対応するためには仮撚加工糸のトータル繊度を10dtex未満の細繊度にする等の方法があるが、このような細繊度の仮撚加工糸を製造するのは容易ではない。また薄い芯地用基布を製造するために、仮撚加工糸のトータル繊度を細くしたり、織編物の構成本数を少なくすると、織編物の製造工程や加工工程において糸切れや目よれ(織糸がずれる欠点)が発生しやすく、生産性や品質が低下し、工業的に安定して芯地用基布を製造することが困難である。
(a)金属スルホネート基含有イソフタル酸を3モル%以上共重合した共重合ポリエステル
(b)ポリアルキレングリコールおよび金属スルホネート基含有イソフタル酸を共重合したポリエステル
(c)熱水により溶解する水溶性熱可塑性樹脂
本発明の仮撚加工糸は、ポリエステルからなる第1成分と第1成分より溶解性の大なる熱可塑性樹脂からなる第2成分とからなる複合繊維マルチフィラメントからなる。
上記第2成分は、第1成分より溶解性が大きいものであれば特に限定するものではないが、共重合ポリエステルや水溶性熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。
上記(1)の好適な態様として、ポリエチレングリコールを5〜16%共重合したポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
上記(2)の好適な態様として、5−ソジウムスルホイソフタレートを3モル%以上共重合したポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
上記(3)の好適な態様として、酸成分中に2.0〜3.0モル%の金属スルホネート基含有イソフタル酸成分および、平均分子量が1000〜10000のポリアルキレングリコール9.0〜13.0重量%を共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。この共重合ポリエチレンテレフタレートに含まれるジエチレングリコールは、グリコール成分中4.7〜5.7モル%であることが好ましい。またポリエチレンテレフタレートの極限粘度の最大値[η]maxと最小値[η]minの比は、1.0≦[η]max/[η]min≦1.02であることが好ましい。
なお、上記(3)のポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコールが好ましく、上記(3)の金属スルホネート基含有イソフタル酸としては、5−金属スルホイソフタル酸ジメチル(以下、SIPMと呼ぶことがある)又はSIPMのジメチル基をエチレングリコールでエステル化させた化合物(以下SIPEと呼ぶことがある)が好ましい。
なお、溶解性の大なる第2成分は、繊維表面に露出の大きい方が、後工程で溶解除去しやすく、具体的には第2成分が繊維表面に30%以上露出していることが好ましい。芯地用基布の生産性およびコストの点からは、第2成分の繊維表面の露出の上限は90%程度がより好ましい。
本発明の仮撚加工糸のトータル繊度は、10〜20dtexである。この範囲であれば、後工程で溶解除去して薄くてソフトな芯地用基布を得やすい上、仮撚加工性も製編織性も優れたものとなる。またこの仮撚加工糸の単糸数は、ソフトな風合いを得るという点からは、単糸数が多い方が好ましいが、透明性を高めるには単糸数が少ない方が好ましく、具体的には6〜12本程度が好ましい。また仮撚加工糸の単糸繊度は、0.6〜3.5dtexが好ましく、0.8〜1.8dtexがより好ましい。
上記第1成分と上記第2成分とを高速紡糸法により上記の繊維横断面形状をもつように複合紡糸して、トータル繊度15〜30dtex、フィラメント数6〜12本の半延伸糸を得る。
次いで、得られた半延伸糸に延伸仮撚加工を施して、トータル繊度が10〜20dtexの仮撚加工糸を得る。尚、仮撚加工の条件は、糸速度が、400〜700m/分、延伸倍率が1.3〜1.8倍、ヒーター温度は、150〜240℃が好ましい。
また得られた仮撚加工糸に流体交絡などの交絡処理を適宜施してもよい。交絡処理を施す場合、交絡数は40個/m以上が好ましく、60個/m以上がより好ましい。
上記で得られた仮撚加工糸を少なくとも一部に使用し、製編織して生機を得る。
ここで、本発明の芯地用基布は織物でも編物でも構わないが、芯地に必要なハリ・コシを保ったまま薄地化が容易な点で織物が好ましい。織物の場合、織組織は特に限定するものではないが、平織、綾織、朱子織が好ましく、特に平織が他の織組織に比べ経糸・緯糸の交差点が多いために、薄地でありながら目よれがし難く好ましい。
なお、測定方法は下記に従った。
〔引張強さ・伸び率〕
JISL1013 8.5.1に準拠して、低速伸長形の試験機を用いてつかみ間隔50cm、引張速度300mm/分の条件で測定した。
〔伸縮復元率〕
JISL1013 8.12に準拠して伸縮復元率を算出した。
〔実施例1〕
得られた仮撚加工糸を経糸および緯糸に用い、ウォータージェットルーム織機により、経密度が85本/2.54cm、緯密度が54本/2.54cmの平織組織を機上乾燥して織り上げて生機を得た。得られた生機を解反、ソフサー、乾燥した後、高減量処理(NaOH2%水溶液、30分、95℃以上)を行って、共重合ポリエステル部分である50重量%を除去し、染色、仕上げセットし、芯地用基布を得た。得られた基布は、目付け6g/m2、伸度20%、経密度106本/2.54cm、緯密度66本/2.54cm、CFが480で、経・緯共、トータル繊度が8.5dtexの仮撚加工糸から構成され、透明度が高く、極めて薄くて軽量のものだった。またこの基布は目よれもなく、ソフトで、ドレープ性に優れたものであった。
仮撚加工に用いる半延伸糸の繊度を、20dtex/12fに変更した以外は実施例1と同様に仮撚加工を施して、繊度:12.8dtex、引張強さ:2.17cN/dtex、伸び率:19.2%、伸縮復元率:28.4%の仮撚加工糸を得た。得られた仮撚加工糸を経糸および緯糸に用い、実施例1と同様に芯地用基布を得た。得られた基布は、経・緯共、トータル繊度が6dtexの仮撚加工糸から構成され、透明度が高く、極めて薄くて軽量のものだった。またこの基布は目よれもなく、ソフトでドレープ性も良好であった。
芯成分として、極限粘度[η]=0.630の酸化チタンを0.4%含むポリエチレンテレフタレート、鞘成分として、極限粘度[η]=0.770で、SIPEを酸成分に対し2.3モル%および平均分子量8000のポリエチレングリコール10重量%を共重合させたジエチレングリコールの含有量が5.5モル%であるポリエチレンテレフタレートとをそれぞれ別々に溶融し、紡糸口金から複合比50重量%:50重量%の27dtex/12fの芯鞘複合型マルチフィラメントを複合糸として高速紡糸法により紡糸して、半延伸糸を得た。得られた半延伸糸を、高速仮撚機にて糸速600m/分、DR1.60、D/Y1.80、ヒーター温度170℃の条件で延伸仮撚し、繊度:17.1dtex、引張強さ:2.05cN/dtex、伸び率:17.4%、伸縮復元率:26.8%の仮撚加工糸を得た。得られた仮撚加工糸を経糸および緯糸に用い、実施例1と同様に芯地用基布を得た。得られた基布は、目付け6g/m2、伸度18%、経密度105本/2.54cm、緯密度62本/2.54cm、CFが463で、経・緯共、トータル繊度が8.5dtexの仮撚加工糸から構成され、透明度が高く、極めて薄くて軽量のものであった。またこの基布は目よれもなく、ソフトでドレープ性も良好であった。
27dtex/12fのポリエチレンテレフタレートの半延伸糸を、高速仮撚機にて糸速680m/分、DR1.60、D/Y1.80、ヒーター温度190℃の条件で延伸仮撚し、繊度:17.4dtex、引張強さ:3.82cN/dtex、伸び率:21.4%、伸縮復元率:35.3%の仮撚加工糸を得た。
得られた仮撚加工糸を経糸および緯糸に用い、ウォータージェットルーム織機により、経密度が85本/2.54cm、緯密度が54本/2.54cmの平織組織を機上乾燥して織り上げて生機を得た。得られた生機を解反、ソフサー、乾燥した後、染色、仕上げセットを行って、芯地用基布を得た。得られた基布は、経密度110本/2.54cm、緯密度68本/2.54cm、CFが704であった。得られた基布は、肉厚なものとなり、軽量の芯地は得られなかった。
17dtex/12fのポリエチレンテレフタレートの半延伸糸を、高速仮撚機にて糸速550m/分、DR1.65、D/Y1.80、ヒーター温度190℃の条件で延伸仮撚し、繊度:10.1dtex、強度:3.51cN/dtex、伸度:16.2%、伸縮復元率:31.3%の仮撚加工糸を得た。
得られた仮撚加工糸を経糸および緯糸に用い、比較例1と同様に芯地用基布を得た。得られた基布は、経密度113本/2.54cm、緯密度70本/2.54cm、CFが552であった。得られた基布は、軽量ではあるが、目よれが生じ、実用に耐え得るものではなかった。
11dtex/12fのポリエチレンテレフタレートの延伸糸を、高速仮撚機にて糸速500m/分、DR1.04、D/Y2.0、ヒーター温度190℃の条件で仮撚加工を試みたが、仮撚加工が困難であり、仮撚加工糸を製造することができなかった。
2 第2成分
Claims (6)
- ホモポリエステルからなる第1成分と下記(a)〜(c)から選択される第2成分とからなる複合繊維マルチフィラメントからなり、トータル繊度が10〜20dtexの仮撚加工糸。
(a)金属スルホネート基含有イソフタル酸を3モル%以上共重合した共重合ポリエステル
(b)ポリアルキレングリコールおよび金属スルホネート基含有イソフタル酸を共重合したポリエステル
(c)熱水により溶解する水溶性熱可塑性樹脂
- 第1成分と第2成分がサイドバイサイドに複合している請求項1記載の仮撚加工糸。
- 第2成分が(b)であって、金属スルホネート基含有イソフタル酸が、5−金属スルホイソフタル酸ジメチル又は5−金属スルホイソフタル酸ジメチルのジメチル基をエチレングリコールでエステル化させた化合物である請求項1または2記載の仮撚加工糸。
- 第1成分と第2成分の重量比が、10:90〜90:10である請求項1または2記載の仮撚加工糸。
- ホモポリエステルからなる第1成分と下記(a)〜(c)から選択される第2成分とからなり、トータル繊度が15〜30dtexの複合繊維マルチフィラメントからなる高速紡糸法により得られた半延伸糸を、延伸仮撚してトータル繊度が10〜20dtexの仮撚加工糸を製造する方法。
(a)金属スルホネート基含有イソフタル酸を3モル%以上共重合した共重合ポリエステル
(b)ポリアルキレングリコールおよび金属スルホネート基含有イソフタル酸を共重合したポリエステル
(c)熱水により溶解する水溶性熱可塑性樹脂
- 請求項1または2記載の仮撚加工糸を製織して織物を得る工程(1)、および前記工程(1)により得られた織物の第2成分を溶解除去して、トータル繊度5〜10dtex、単糸繊度0.2〜1.7dtexの織物を得る工程(2)からなる芯地用基布の製造方法。
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