JP5665704B2 - 電力変換装置 - Google Patents

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Description

本発明は、変圧器を備えた電力変換装置に関する。
従来、変圧器を備えた電力変換装置として、例えば特許文献1に開示されているDC−DCコンバータがある。
このDC−DCコンバータは、トランスと、インバータ回路と、整流平滑回路と、制御回路とを備えている。トランスは、1次コイルと、2次コイルとを備えている。トランスは、1次コイルに印加された交流電圧を降圧して2次コイルから出力する。インバータ回路は、ハイサイドスイッチと、ローサイドスイッチとを備えている。インバータ回路は、主バッテリと1次コイルの間に接続され、主バッテリの直流電圧を交流電圧に変換して1次コイルに印加する。整流平滑回路は、トランスの2次コイルに接続され、2次コイルから出力される降圧された交流電圧を整流するとともに平滑化し、直流電圧に変換する。そして、変換した直流電圧を補機バッテリに供給し、補機バッテリを充電する。制御回路は、整流平滑回路の出力電圧に基づいてパルス電圧を決定するとともに、決定したパルス電圧が時間に対して正負交互に1次コイルに印加されるように、ハイサイドスイッチとローサイドスイッチをスイッチングする。
特許第3615004号公報
ところで、パルス電圧が正負交互に印加されると、1次コイルにパルス電圧に応じた交流電流が流れる。主バッテリや補機バッテリの電圧が変動すると、制御回路は、1次コイルに印加するパルス電圧を変化させる。このとき、1次コイルに流れる電流に、過渡的に、正又は負の直流成分が含まれるようになることがある。この場合、トランスの磁束が正側又は負側に偏る偏磁が発生するという問題があった。
これに対し、インバータ回路と1次コイルの間に偏磁防止用のコンデンサを設け、1次コイルに流れる電流の直流成分を除去し、偏磁を抑える構成が提案されている。しかし、1次コイルに印加される電圧が高い場合、偏磁防止用のコンデンサとして高耐圧のコンデンサを用いなければならず、装置が大型化するとともに、コストアップするという問題があった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、部品を追加することなく、電圧変動に伴って発生する変圧器の過渡的な偏磁を抑えることができる電力変換装置を提供することを目的とする。
そこで、本発明者らは、この課題を解決すべく鋭意研究し試行錯誤を重ねた結果、パルス電圧が3以上の奇数回連続して印加される毎にパルス電圧を決定するための制御量を更新することで、部品を追加することなく、電圧変動に伴って発生する変圧器の過渡的な偏磁を抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、請求項1に記載の電力変換装置は、1次巻線と2次巻線とを有する変圧器と、1次巻線と電源の間に接続され、電源の電圧を交流電圧に変換して1次巻線に印加する第1変換回路と、2次巻線に接続され、2次巻線の交流電圧を変換して出力する第2変換回路と、第2変換回路の出力に基づいて1次巻線に印加するパルス電圧を決定するための制御量を求め、制御量に基づいて決定したパルス電圧が時間に対して正負交互に1次巻線に印加されるように第1変換回路を制御する制御回路と、を備えた電力変換装置において、制御回路は、パルス電圧が3以上の奇数回連続して印加される毎に1次巻線に印加する電圧の時間積分値を更新し、1次巻線に印加する電圧の時間積分値に基づいてパルス電圧のパルス幅を決定することを特徴とする。
パルス電圧が正負交互に印加されると、1次巻線にパルス電圧に応じた交流電流が流れる。入力電圧が変動すると、制御回路は、1次巻線に印加するパルス電圧を変化させる。このとき、1次巻線に流れる電流に、過渡的に、正又は負の直流成分が含まれるようになることがある。この場合、変圧器の磁束が、正側又は負側に偏る偏磁が発生してしまう。しかし、この構成によれば、制御回路は、パルス電圧が3以上の奇数回連続して印加される毎にパルス電圧を決定するための制御量を更新する。これにより、1次巻線に流れる電流に含まれる直流成分を抑えることができる。そのため、入力電圧が変動しても、変圧器の過渡的な偏磁を抑えることができる。しかも、従来のように、偏磁防止用のコンデンサを設ける必要がない。従って、部品を追加することなく、入出力電圧の変動に伴って発生する変圧器の過渡的な偏磁を抑えることができる。また、制御回路は、1次巻線に印加する電圧の時間積分値に基づいてパルス電圧を決定する。そのため、制御量に基づいてパルス電圧を確実に決定することができる。従って、部品を追加することなく、入出力電圧の変動に伴って発生する変圧器の過渡的な偏磁を確実に抑えることができる。さらに、制御回路は、1次巻線に印加する電圧の時間積分値に基づいてパルス電圧のパルス幅を決定する。そのため、1次巻線に印加する電圧の時間積分値に基づいたパルス電圧を1次巻線に確実に印加することができる。
請求項2に記載の電力変換装置は、制御回路は、第2変換回路の出力と1次巻線に流れる電流に基づいて1次巻線に印加する電圧の時間積分値を決定することを特徴とする。この構成によれば、1次巻線に流れる電流をも考慮して第2変換回路の出力を制御することができる。
請求項3に記載の電力変換装置は、車両に搭載されることを特徴とする。この構成によれば、車両に搭載される電力変換装置において、部品を追加することなく、電圧変動に伴って発生する変圧器の過渡的な偏磁を抑えることができる。車両の小型、軽量化を図ることができる。
第1実施形態におけるDC−DCコンバータ装置の回路図である。 図1におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。 従来のDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。 第2実施形態におけるDC−DCコンバータ装置の回路図である。 参考形態におけるDC−DCコンバータ装置の回路図である。 図5におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。 図6における1次巻線に流れる電流成分を説明するための波形図である。 従来のDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。 図8における1次巻線に流れる電流成分を説明するための波形図である。 トランスのT型等価回路において、1次巻線に流れる電流、2次巻線に流れる電流及び励磁電流の関係を説明するための回路図である。
次に実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。本実施形態では、本発明に係る電力変換装置を、車両に搭載され、バッテリの電圧を絶縁して降圧し電子装置に供給するDC−DCコンバータ装置に適用した例を示す。
(第1実施形態)
次に、第1実施形態のDC−DCコンバータ装置について説明する。まず、図1を参照して第1実施形態のDC−DCコンバータ装置の構成について説明する。ここで、図1は、第1実施形態におけるDC−DCコンバータ装置の回路図である。なお、トランスの1次巻線、2次巻線に付された・印は、巻線の巻始めを示す。また、トランスの1次巻線に付された矢印は、印加される電圧の極性を示す。
図1に示すDC−DCコンバータ装置1(電力変換装置)は、バッテリB1(電源)の出力する直流電圧を絶縁して降圧し、車両に搭載された電子装置S1に供給するフルブリッジ式コンバータである。DC−DCコンバータ装置は、トランス10(変圧器)と、入力側回路11(第1変換回路)と、出力側回路12(第2変換回路)と、制御回路13とを備えている。
トランス10は、1次側に入力される交流電圧を降圧して2次側から出力する素子である。トランス10は、1次巻線100と、2次巻線101、102とを備えている。2次巻線101、102の巻数は、1次巻線100の巻数より少ない巻数に設定されている。1次巻線100の一端と他端は、入力側回路11に接続されている。2次巻線101、102は、直列接続されている。2次巻線101の巻始め側である一端と、2次巻線102の巻終り側である一端は、出力側回路12にそれぞれ接続されている。
入力側回路11は、バッテリB1と1次巻線100の間に接続され、バッテリB1の出力する直流電圧を交流電圧に変換して1次巻線100に印加する回路である。入力側回路11は、FET110〜113を備えている。FET110〜113は、スイッチングすることで、バッテリB1の直流電圧を交流電圧に変換して1次巻線100に印加するスイッチング素子である。FET110、111及びFET112、113は、それぞれ直列接続されている。具体的には、FET110、112のソースがFET111、113のドレインにそれぞれ接続されている。直列接続されたFET110、111及びFET112、113は、バッテリB1に並列接続されている。具体的には、FET110、112のドレインがバッテリB1の正極端に、FET111、113のソースがバッテリB1の負極端にそれぞれ接続されている。
出力側回路12は、2次巻線101、102に接続され、2次巻線101、102の出力する交流電圧を整流するとともに平滑化し、直流電圧に変換して出力する回路である。出力側回路12は、ダイオード120、121と、コイル122と、コンデンサ123とを備えている。
ダイオード120のアノードは、2次巻線101の巻始め側である一端に接続されている。また、カソードは、コイル122に接続され、コイル122を介して電子装置S1の正極端に接続されている。
ダイオード121のアノードは、2次巻線102の巻終り側である一端に接続されている。また、カソードは、コイル122に接続され、コイル122を介して電子装置S1の正極端に接続されている。
コンデンサ123の一端は、電子装置S1の正極端に接続されるコイル122の他端に接続されている。また、他端は、電子装置S1の負極端に接続される2次巻線101、102の接続点に接続されている。
制御回路13は、出力側回路12の出力電圧が電圧指令と一致するように、入力側回路11を制御する回路である。制御回路13は、出力側回路12の出力電圧に基づいて1次巻線100に印加するパルス電圧を決定するための制御量を求める。そして、制御量に基づいてパルス電圧を決定し、決定したパルス電圧が時間に対して正負交互に印加されるようにFET110〜113のスイッチングを制御する。さらに、パルス電圧が3回連続して印加される毎に制御量を更新する。具体的には、出力側回路12の出力電圧に基づいて1次巻線100に印加する電圧の時間積分値(周期t0/2で除せば、平均電圧の指令値となる。以下同様)を求める。そして、1次巻線100に印加する電圧の時間積分値に基づいてパルス電圧のパルス幅を決定し、決定したパルス幅のパルス電圧が時間に対して正負交互に印加されるようにFET110〜113のスイッチングを制御する。さらに、パルス電圧が3回連続して印加される毎に、出力側回路12の出力電圧に基づいて1次巻線100に印加する電圧の時間積分値を更新する。制御回路13は、電圧指令部130と、電圧検出部131と、誤差増幅部132と、制御部133とを備えている。
電圧指令部130は、電圧指令を出力するブロックである。電圧指令部130は、誤差増幅部132に接続されている。
電圧検出部131は、出力側回路12の出力電圧を検出し出力するブロックである。電圧検出部131は、出力側回路12の出力端に接続されている。また、誤差増幅部132に接続されている。
誤差増幅部132は、電圧指令部130の出力する電圧指令と、電圧検出部131の出力する出力側回路12の出力電圧の比較結果を出力するブロックである。具体的には、電圧指令部130の出力する電圧指令と、電圧検出部131の出力する出力側回路12の出力電圧の偏差を増幅して出力する。誤差増幅部132は、電圧指令部130と電圧検出部131にそれぞれ接続されている。また、制御部133に接続されている。
制御部133は、誤差増幅部132の出力に基づいてFET110〜113のスイッチングを制御するブロックである。制御部133は、誤差増幅部132の出力に基づいて1次巻線100に印加する電圧の時間積分値を求める。そして、1次巻線100に印加する電圧の時間積分値に基づいてパルス電圧のパルス幅を決定し、決定したパルス幅のパルス電圧が時間に対して正負交互に印加されるようにFET110〜113のスイッチングを制御する。さらに、パルス電圧が3回連続して印加される毎に、誤差増幅部132の出力に基づいて1次巻線100に印加する電圧の積分値を更新する。制御部133は、誤差増幅部132に接続されている。また、FET110〜113のゲートにそれぞれ接続されている。
次に、図1〜図3を参照してDC−DCコンバータ装置の動作について説明する。ここで、図2は、図1におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。図3は、従来のDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図1に示す制御部133は、誤差演算部132の出力に基づいて1次巻線100に印加する電圧の時間積分値を求める。そして、求めた時間積分値に基づいて1次巻線100に印加するパルス電圧のパルス幅を決定する。バッテリB1の電圧が安定している定常状態においては、制御部133は、図2に示すように、時間積分値VT0を求める。そして、時間積分値VT0に基づいてパルス幅W0を決定する。制御部133は、周期T0、デューティ比50%の基準パルス信号に同期してFET110をスイッチングするとともに、FET111をFET110と相補的にスイッチングする。また、パルス幅W0だけ基準パルス信号の位相をずらし、位相をずらした基準パルス信号に同期してFET112をスイッチングするとともに、FET113をFET112と相補的にスイッチングする。これにより、1次巻線100に、時間積分値VT0のパルス電圧、つまりパルス幅W0のパルス電圧が周期T0/2で時間に対して正負交互に印加される。
図1においてバッテリB1の電圧が低下すると、出力側回路12の出力電圧も低下する。制御部133は、時刻t1において、誤差演算部132の出力に基づいて図2に示すように、時間積分値VT1を求め、時間積分値を更新する。出力側回路12の出力電圧が低下しているため、時間積分値VT1はVT0より大きくなる。そして、時間積分値VT1に基づいてパルス幅W1を決定する。制御部133は、基準パルス信号に同期してFET110をスイッチングするとともに、FET111をFET110と相補的にスイッチングする。また、パルス幅W1だけ基準パルス信号の位相をずらし、位相をずらした基準パルス信号に同期してFET112をスイッチングするとともに、FET113をFET112と相補的にスイッチングする。これにより、1次巻線100に、時間積分値VT1のパルス電圧、つまりパルス幅W1のパルス電圧が周期T0/2で時間に対して正負交互に印加される。
制御部133は、時刻t1から(3/2)×T0経過後の時刻t2、つまり、パルス幅W1のパルス電圧が3回連続して印加された後において、誤差演算部132の出力に基づいて時間積分値VT2を求め、時間積分値を更新する。出力側回路12の出力電圧が低下しているため、時間積分値VT2はVT1より大きくなる。そして、時間積分値VT2に基づいてパルス幅W2を決定する。制御部133は、基準パルス信号に同期してFET110をスイッチングするとともに、FET111をFET110と相補的にスイッチングする。また、パルス幅W2だけ基準パルス信号の位相をずらし、位相をずらした基準パルス信号に同期してFET112をスイッチングするとともに、FET113をFET112と相補的にスイッチングする。これにより、1次巻線100に、時間積分値VT2のパルス電圧、つまりパルス幅W2のパルス電圧が周期T0/2で時間に対して正負交互に印加される。
制御部133は、時刻t2から(3/2)×T0経過後の時刻t3、つまり、パルス幅W2のパルス電圧が3回連続して印加された後において、誤差演算部132の出力に基づいて時間積分値VT3を求め、時間積分値を更新する。出力側回路12の出力電圧が低下しているため、時間積分値VT3はVT2より大きくなる。そして、時間積分値VT3に基づいてパルス幅W3を決定する。制御部133は、基準パルス信号に同期してFET110をスイッチングするとともに、FET111をFET110と相補的にスイッチングする。また、パルス幅W3だけ基準パルス信号の位相をずらし、位相をずらした基準パルス信号に同期してFET112をスイッチングするとともに、FET113をFET112と相補的にスイッチングする。これにより、1次巻線100に、時間積分値VT3のパルス電圧、つまりパルス幅W3のパルス電圧が周期T0/2で時間に対して正負交互に印加される。
以降、制御部133は、(3/2)×T0毎に誤差演算部132の出力に基づいて時間積分値を更新し、同様の動作を繰り返す。
図1において1次巻線100に交流電圧が印加されると、2次巻線101、102から降圧された交流電圧が出力される。出力側回路12は、2次巻線101、102の出力する交流電圧を整流するとともに平滑化し、電子装置S1に供給する。
ところで、従来、パルス電圧が2回連続して印加される毎、つまり、基準パルス信号の周期T0の制御周期毎にパルス幅を更新する構成が一般的であった。
仮に、DC−DCコンバータ装置1がそのような構成であった場合、図3に示すように、バッテリB1の電圧が安定している定常状態においては、時間積分値VT0のパルス電圧、つまりパルス幅W0のパルス電圧が時間に対して正負交互に印加される。1次巻線100に流れる電流の変化は、1次巻線100に印加する電圧の時間積分値によって決まる。パルス幅W0の正のパルス電圧が印加されると、1次巻線100に流れる電流は、時間の経過とともにI0だけ増加する。パルス幅W0の負のパルス電圧が印加されると、1次巻線100に流れる電流は、時間の経過とともにI0だけ減少する。その結果、1次巻線100に流れる電流は、定常状態においては、I0/2〜−I0/2の間で増減を繰り返し、平均値は0である。つまり、直流成分を含まない。
バッテリB1の電圧が低下すると、時間積分値VT1のパルス電圧、つまりパルス幅W1のパルス電圧が時間に対して正負に印加される。パルス幅W1の正のパルス電圧が印加されると、1次巻線100に流れる電流は、時間の経過とともに−I0/2からI1だけ増加し(−I0/2+I1)になる。そして、パルス幅W1の負のパルス電圧が印加されると、1次巻線100に流れる電流は、時間の経過とともに(−I0/2+I1)からI1だけ減少し−I0/2になる。ここで、時間積分値VT1がVT0より大きいため、I1はI0より大きくなる。このとき、平均値、つまり直流成分は(−I0/2+I1/2)になる。
その後、パルス幅W2の正のパルス電圧が印加されると、1次巻線100に流れる電流は、時間の経過とともに−I0/2からI2だけ増加し(−I0/2+I2)になる。そして、パルス幅W2の負のパルス電圧が印加されると、1次巻線100に流れる電流は、時間の経過とともに(−I0/2+I2)からI2だけ減少し−I0/2になる。ここで、時間積分値VT2がVT1より大きいため、I2はI1より大きくなる。このとき、平均値、つまり直流成分は(−I0/2+I2/2)になる。
その後、パルス幅W3の正のパルス電圧が印加されると、1次巻線100に流れる電流は、時間の経過とともに−I0/2からI3だけ増加し(−I0/2+I3)になる。そして、パルス幅W3の負のパルス電圧が印加されると、1次巻線100に流れる電流は、時間の経過とともに(−I0/2+I3)からI3だけ減少し−I0/2になる。ここで、時間積分値VT3がVT2より大きいため、I3はI2より大きくなる。このとき、平均値、つまり直流成分は(−I0/2+I3/2)になる。
つまり、バッテリB1の電圧が低下すると、過渡的に、1次巻線100に流れる電流の直流成分が増加していく。この場合、トランス10の磁束が正側に偏る偏磁が発生してしまう。
しかし、DC−DCコンバータ装置1は、図2に示すように、パルス電圧が3回連続して印加される毎にパルス幅を更新する。
バッテリB1の電圧が安定している定常状態においては、時間積分値VT0のパルス電圧、つまりパルス幅W0のパルス電圧が時間に対して正負交互に印加される。パルス幅W0の正のパルス電圧が印加されると、1次巻線100に流れる電流は、時間の経過とともにI0だけ増加する。パルス幅W0の負のパルス電圧が印加されると、1次巻線100に流れる電流は、時間の経過とともにI0だけ減少する。その結果、1次巻線100に流れる電流は、定常状態においては、I0/2〜−I0/2の間で変化し、平均値は0である。つまり、直流成分を含まない。
バッテリB1の電圧が低下すると、時間積分値VT1のパルス電圧、つまりパルス幅W1のパルス電圧が時間に対して正負交互に印加される。パルス幅W1の正のパルス電圧が印加されると、1次巻線100に流れる電流は、時間の経過とともに−I0/2からI1だけ増加し(−I0/2+I1)になる。そして、パルス幅W1の負のパルス電圧が印加されると、1次巻線100に流れる電流は、時間の経過とともに(−I0/2+I1)からI1だけ減少し−I0/2になる。そして、パルス幅W1の正のパルス電圧が印加されると、1次巻線100に流れる電流は、時間の経過とともに−I0/2からI1だけ増加し(I1−I0/2)になる。このとき、平均値、つまり直流成分は(−I0/2+I1/2)になる。
その後、パルス幅W2の負のパルス電圧が印加されると、1次巻線100に流れる電流は、時間の経過とともに(−I0/2+I1)からI2だけ減少し(−I0/2+I1−I2)になる。そして、パルス幅W2の正のパルス電圧が印加されると、1次巻線100に流れる電流は、時間の経過とともに(−I0/2+I1−I2)からI2だけ増加し(−I0/2+I1)になる。そして、パルス幅W2の負のパルス電圧が印加されると、1次巻線100に流れる電流は、時間の経過とともに(−I0/2+I1)からI2だけ減少し(−I0/2+I1−I2)になる。このとき、平均値、つまり直流成分は(−I0/2+I1−I2/2)になる。
その後、パルス幅W3の正のパルス電圧が印加されると、1次巻線100に流れる電流は、時間の経過とともに(−I0/2+I1−I2)からI3だけ増加し(−I0/2+I1−I2+I3)になる。そして、パルス幅W3の負のパルス電圧が印加されると、1次巻線100に流れる電流は、時間の経過とともに(−I0/2+I1−I2+I3)からI3だけ減少し(−I0/2+I1−I2)になる。そして、パルス幅W3の正のパルス電圧が印加されると、1次巻線100に流れる電流は、時間の経過とともに(−I0/2+I1−I2)からI3だけ増加し(−I0/2+I1−I2+I3)になる。このとき、平均値、つまり直流成分は(−I0/2+I1−I2+I3/2)になる。
つまり、バッテリB1の電圧が低下すると、1次巻線100に流れる電流の直流成分を従来に比べ抑えることができる。その結果、トランス10の過渡的な偏磁を抑えることができる。
なお、ここでは、バッテリB1の電圧が低下した場合を例に挙げ説明しているが、バッテリB1の電圧が上昇した場合も同様に過渡的な偏磁を抑えることができる。
次に、効果について説明する。
パルス電圧が正負交互に印加されると、1次巻線100にパルス電圧に応じた交流電流が流れる。バッテリB1の電圧が変動すると、制御回路13は、1次巻線100に印加するパルス電圧を変化させる。このとき、1次巻線100に流れる電流に、過渡的に、正又は負の直流成分が含まれるようになることがある。この場合、トランス10の磁束が、正側又は負側に偏る偏磁が発生してしまう。しかし、第1実施形態によれば、制御回路13は、パルス電圧が3回連続して印加される毎にパルス電圧を決定するための制御量を更新する。これにより、前述したように、1次巻線100に流れる電流に含まれる直流成分を抑えることができる。そのため、バッテリB1の電圧が変動しても、トランス10の過渡的な偏磁を抑えることができる。しかも、従来のように、偏磁防止用のコンデンサを設ける必要がない。従って、車両に搭載されるDC−DCコンバータ装置1において、部品を追加することなく、バッテリB1の電圧の変動に伴って発生するトランス10の過渡的な偏磁を抑えることができる。車両の小型、軽量化を図ることができる。
また、第1実施形態によれば、制御回路13は、パルス電圧を決定するための制御量として1次巻線100に印加する電圧の時間積分値を求める。そのため、この制御量に基づいてパルス電圧を確実に決定することができる。従って、部品を追加することなく、バッテリB1の電圧の変動に伴って発生するトランス10の過渡的な偏磁を確実に抑えることができる。
さらに、第1実施形態によれば、制御回路13は、1次巻線100に印加する電圧の時間積分値に基づいてパルス電圧のパルス幅を決定する。そのため、1次巻線100に印加する電圧の時間積分値に基づいたパルス電圧を1次巻線100に確実に印加することができる。
なお、第1実施形態では、パルス電圧が3回連続して印加される毎に制御量を更新する例を挙げているが、これに限られるものではない。パルス電圧が3以上の奇数回連続して印加される毎に更新すれば同様の効果を得ることができる。
また、第1実施形態では、1次巻線100に印加する電圧の時間積分値に基づいてパルス電圧のパルス幅を決定し、決定したパルス電圧が印加されるように入力側回路11を制御する例を挙げているが、これに限られるものではない。時間積分値に基づいてパルス電圧の振幅を決定し、決定したパルス電圧が印加されるように入力側回路を制御してもよい。また、時間積分値に基づいて所定パルス幅及び振幅のパルス電圧の時間に対する密度を決定し、決定したパルス電圧が印加されるように入力側回路を制御してもよい。
また、第1実施形態では、直流電圧を交流電圧に変換して1次巻線100に印加する例を挙げているが、これに限られるものではない。交流電圧を形態の異なる交流電圧、例えば電圧や周波数の異なる交流電圧に変換して1次巻線に印加するようにしてもよい。
さらに、第1実施形態では、電子装置S1に所定の電圧の電力を供給する例を挙げているが、これに限られるものではない。2次電池に所定の電圧電力を供給し、2次電池を充電するようにしてもよい。
加えて、第1実施形態では、出力側回路12の出力電圧に基づいて入力側回路11を制御する例を挙げているが、これに限られるものではない。誘導加熱装置のように、出力側回路の出力に伴って変化する温度に基づいて入力側回路を制御するようにしてもよい。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のDC−DCコンバータ装置について説明する。第2実施形態のDC−DCコンバータ装置は、第1実施形態のDC−DCコンバータ装置が、出力側回路の出力電圧に基づいてパルス電圧を決定するのに対して、出力側回路の出力電圧と1次巻線に流れる電流に基づいてパルス電圧を決定するようにしたものである。
まず、図4を参照してDC−DCコンバータ装置の構成について説明する。ここで、図4は、第2実施形態におけるDC−DCコンバータ装置の回路図である。なお、トランスの1次巻線、2次巻線に付された・印は、巻線の巻始めを示す。また、トランスの1次巻線に付された矢印は、印加される電圧の極性を示す。
図4に示すDC−DCコンバータ装置2は、トランス20(変圧器)と、入力側回路21(第1変換回路)と、出力側回路22(第2変換回路)と、制御回路23とを備えている。
トランス20、入力側回路21及び出力側回路22は、第1実施形態のトランス10、入力側回路11及び出力側回路12と同一構成である。
制御回路23は、出力側回路22の出力電圧が電圧指令と一致するように、入力側回路21を制御する回路である。制御回路23は、出力側回路22の出力電圧とトランス20の1次巻線200に流れる電流に基づいて1次巻線200に印加するパルス電圧を決定するための制御量を求める。そして、制御量に基づいてパルス電圧を決定し、決定したパルス電圧が時間に対して正負交互に印加されるようにFET210〜213のスイッチングを制御する。さらに、パルス電圧が3回連続して印加される毎に制御量を更新する。具体的には、出力側回路22の出力電圧と1次巻線200に流れる電流に基づいて1次巻線200に印加する電圧の時間積分値を求める。そして、1次巻線200に印加する電圧の時間積分値に基づいてパルス電圧のパルス幅を決定し、決定したパルス幅のパルス電圧が時間に対して正負交互に印加されるようにFET210〜213のスイッチングを制御する。さらに、パルス電圧が3回連続して印加される毎に、出力側回路22の出力電圧と1次巻線200に流れる電流に基づいて1次巻線200に印加する電圧の時間積分値を更新する。制御回路23は、電圧指令部230と、電圧検出部231と、誤差偏差部232と、電流検出部233と制御部234とを備えている。
電圧指令部230、電圧検出部231及び誤差演算部232は、第1実施形態の電圧指令部130、電圧検出部131及び誤差演算部132と同一構成である。
電流検出部233は、トランス20の1次巻線200に流れる電流を検出し出力するブロックである。具体的には、入力側回路21の入力電流に基づいて1次巻線200に流れる電流を検出し出力する。電流検出部233は、電流センサを介して入力側回路21の入力端に接続されている。また、制御部234に接続されている。
制御部234は、誤差増幅部232の出力と電流検出部233の出力に基づいてFET210〜213のスイッチングを制御するブロックである。制御部233は、誤差増幅部232の出力と電流検出部233の出力に基づいて1次巻線200に印加する電圧の時間積分値を求める。そして、1次巻線200に印加する電圧の時間積分値に基づいてパルス電圧のパルス幅を決定し、決定したパルス幅のパルス電圧が時間に対して正負交互に印加されるようにFET210〜213のスイッチングを制御する。さらに、パルス電圧が3回連続して印加される毎に、誤差増幅部232の出力と電流検出部233の出力に基づいて1次巻線200に印加する電圧の積分値を更新する。制御部234は、誤差増幅部232と電流検出部233に接続されている。また、FET210〜213のゲートにそれぞれ接続されている。
DC−DCコンバータ装置2の動作は、1次巻線200に印加する電圧の時間積分値を求める際、1次巻線200に流れる電流を考慮することを除いて第1実施形態のDC−DCコンバータ装置1の動作と同一であるので説明は省略する。
次に、効果について説明する。
第2実施形態によれば、制御回路23は、出力側回路22の出力と1次巻線200に流れる電流に基づいて1次巻線200に印加する電圧の時間積分値を決定する。そのため、1次巻線200に流れる電流をも考慮して出力側回路22の出力を制御することができる。
なお第2実施形態では、パルス電圧が3回連続して印加される毎に制御量を更新する例を挙げているが、これに限られるものではない。パルス電圧が3以上の奇数回連続して印加される毎に更新すれば同様の効果を得ることができる。
参考形態
次に、参考形態のDC−DCコンバータ装置について説明する。参考形態のDC−DCコンバータ装置は、第1実施形態のDC−DCコンバータ装置が、1次巻線に印加する電圧の時間積分値を求め、パルス電圧を決定するのに対して、1次巻線に流れる電流を制限する電流制限閾値を求め、パルス電圧を決定するようにしたものである。
まず、図5を参照してDC−DCコンバータ装置の構成について説明する。ここで、図5は、参考形態におけるDC−DCコンバータ装置の回路図である。なお、トランスの1次巻線、2次巻線に付された・印は、巻線の巻始めを示す。また、トランスの1次巻線に付された矢印は、印加される電圧の極性を示す。
図5に示すDC−DCコンバータ装置3(電力変換装置)は、トランス30(変圧器)と、入力側回路31(第1変換回路)と、出力側回路32(第2変換回路)と、制御回路33とを備えている。
トランス30、入力側回路31及び出力側回路32は、第1実施形態のトランス10、入力側回路11及び出力側回路12と同一構成である。
制御回路33は、出力側回路32の出力電圧が電圧指令と一致するように、入力側回路31を制御する回路である。制御回路33は、出力側回路32の出力電圧に基づいて1次巻線300に印加するパルス電圧を決定するための制御量を求める。そして、制御量に基づいてパルス電圧を決定し、決定したパルス電圧が時間に対して正負交互に印加されるようにFET310〜313のスイッチングを制御する。さらに、パルス電圧が3回連続して印加される毎に制御量を更新する。具体的には、出力側回路32の出力電圧と電圧指令の比較結果に基づいて、電流制限閾値を求める。そして、1次巻線300に流れる電流が決定した電流制限閾値に達するまでの時間をパルス幅とするパルス電圧を決定し、決定したパルス電圧が時間に対して正負交互に印加されるようにFET310〜313のスイッチングを制御する。さらに、パルス電圧が3回連続して印加される毎に、出力側回路32の出力電圧と電圧指令の比較結果に基づいて電流制限閾値を更新する。制御回路33は、電圧指令部330と、電圧検出部331と、誤差増幅部332と、電流検出部333と、制御部334とを備えている。
電圧指令部330、電圧検出部331及び誤差増幅部332は、第1実施形態の電圧指令部130、電圧検出部131及び誤差増幅部132と同一構成である。
電流検出部333は、トランス30の1次巻線300に流れる電流を検出し出力するブロックである。具体的には、入力側回路31の入力電流に基づいて1次巻線300に流れる電流を検出し出力する。電流検出部333は、電流センサを介して入力側回路32の入力端に接続されている。また、制御部334に接続されている。
制御部334は、誤差増幅部332の出力と電流検出部333の出力に基づいてFET310〜313のスイッチングを制御するブロックである。制御部334は、誤差増幅部332の出力に基づいて電流制限閾値を求める。そして、電流検出部333の出力が決定した電流制限閾値に達するまでの時間をパルス幅とするパルス電圧を決定し、決定したパルス電圧が印加されるようにFET310〜313のスイッチングを制御する。さらに、パルス電圧が3回連続して印加される毎に、誤差増幅部332の出力に基づいて電流制限閾値を更新する。制御部334は、誤差増幅部332と電流検出部333に接続されている。また、FET310〜313のゲートにそれぞれ接続されている。
次に、図5〜図10を参照してDC−DCコンバータ装置の動作について説明する。ここで、図6は、図5におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。図7は、図6における1次巻線に流れる電流成分を説明するための波形図である。図8は、従来のDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。図9は、図8における1次巻線に流れる電流成分を説明するための波形図である。図10は、トランスのT型等価回路において、1次巻線に流れる電流、2次巻線に流れる電流及び励磁電流の関係を説明するための回路図である。
図5に示す制御部334は、誤差増幅器332の出力に基づいて電流制限閾値を求める。そして、電流検出部333の出力が決定した電流制限閾値に達するまでの時間をパルス幅とするパルス電圧を決定する。バッテリB3の電圧が安定している定常状態においては、制御部334は、図6に示すように、電流制限閾値Ith0を求める。そして、電流制限閾値Ith0に達するまでの時間をパルス幅とするパルス電圧を決定し、決定したパルス電圧が印加されるようにFET310〜313のスイッチングを制御する。具体的には、周期T0、デューティ比50%の基準パルス信号に同期してFET310をスイッチングするとともに、FET311をFET310と相補的にスイッチングする。また、所定のタイミングでFET312をスイッチングするとともに、FET313をFET312と相補的にスイッチングする。これにより、1次巻線300に、パルス幅W00〜W05のパルス電圧が周期T0/2で時間に対して正負交互に印加される。その結果、1次巻線には、周期T0/2における平均値がI00、−I00である正負の電流が交互に流れる。
図5においてバッテリB3の電圧が低下すると、出力側回路32の出力電圧も低下する。制御部334は、時刻t4において、誤差演算部332の出力に基づいて図6に示すように、電流制限閾値Ith1を求め、電流制限閾値を更新する。出力側回路32の出力電圧が低下しているため、電流制限閾値Ith1はIth0より大きくなる。そして、電流制限閾値Ith1に達するまでの時間をパルス幅とするパルス電圧を決定し、決定したパルス電圧が印加されるようにFET310〜313のスイッチングを制御する。具体的には、基準パルス信号に同期してFET310をスイッチングするとともに、FET311をFET310と相補的にスイッチングする。また、所定のタイミングでFET312をスイッチングするとともに、FET313をFET312と相補的にスイッチングする。これにより、1次巻線300に、パルス幅W10〜W12のパルス電圧が周期T0/2で時間に対して正負交互に印加される。その結果、1次巻線300には、図5及び図6に示すように、周期T0/2における平均値がI10、−I10である正負の電流が、正、負、正の順で交互に流れる。
制御部334は、図5に示すように、時刻t4から(3/2)×T0経過後の時刻t5、つまり、パルス電圧が3回連続して印加された後において、誤差演算部332の出力に基づいて電流制限閾値Ith2を求め、電流制限閾値を更新する。出力側回路32の出力電圧が低下しているため、電流制限閾値Ith2はIth1より大きくなる。そして、電流制限閾値Ith2に達するまでの時間をパルス幅とするパルス電圧を決定し、決定したパルス電圧が印加されるようにFET310〜313のスイッチングを制御する。具体的には、基準パルス信号に同期してFET310をスイッチングするとともに、FET311をFET310と相補的にスイッチングする。また、所定のタイミングでFET312をスイッチングするとともに、FET313をFET312と相補的にスイッチングする。これにより、1次巻線300に、パルス幅W20〜W22のパルス電圧が周期T0/2で時間に対して正負交互に印加される。その結果、1次巻線300には、図5及び図6に示すように、周期T0/2における平均値がI20、−I20である正負の電流が、負、正、負の順で交互に流れる。
制御部334は、図5に示すように、時刻t5から(3/2)×T0経過後の時刻t6、つまり、パルス電圧が3回連続して印加された後において、誤差演算部332の出力に基づいて電流制限閾値Ith3を求め、電流制限閾値を更新する。出力側回路32の出力電圧が低下しているため、電流制限閾値Ith3はIth2より大きくなる。そして、電流制限閾値Ith3に達するまでの時間をパルス幅とするパルス電圧を決定し、決定したパルス電圧が印加されるようにFET310〜313のスイッチングを制御する。具体的には、基準パルス信号に同期してFET310をスイッチングするとともに、FET311をFET310と相補的にスイッチングする。また、所定のタイミングでFET312をスイッチングするとともに、FET313をFET312と相補的にスイッチングする。これにより、1次巻線300に、パルス幅W30〜W32のパルス電圧が周期T0/2で時間に対して正負交互に印加される。その結果、1次巻線300には、図5及び図6に示すように、周期T0/2における平均値がI30、−I30である正負の電流が、正、負、正の順で交互に流れる。
以降、制御部334は、(3/2)×T0毎に誤差演算部332の出力に基づいて電流制限閾値を更新し、同様の動作を繰り返す。
図5において1次巻線300に交流電圧が印加されると、2次巻線301、302から降圧された交流電圧が出力される。出力側回路32は、2次巻線301、302の出力する交流電圧を整流するとともに平滑化し、電子装置S3に供給する。
ところで、従来、パルス電圧が2回連続して印加される毎、つまり、基準パルス信号の周期T0の制御周期毎に電流制限閾値を更新する構成が一般的であった。
仮に、DC−DCコンバータ装置3がそのような構成であった場合、図8に示すように、バッテリB3の電圧が安定している定常状態においては、1次巻線300には、周期T0/2における平均値がI00、−I00である正負の電流が交互に流れる。バッテリB3の電圧が低下すると、図8及び図9に示すように、1次巻線300には、周期T0/2における平均値がI10、−I10である正負の電流が正、負の順で交互に流れる。その後、周期T0/2における平均値がI20、−I20である正負の電流が、正、負の順で交互に流れる。その後、周期T0/2における平均値がI30、−I30である正負の電流が、正、負の順で交互に流れる。以降、同様の動作を繰り返す。
図10に示すように、トランスのT型等価回路において、1次巻線に流れる電流は、2次巻線に流れる電流と励磁電流の和として表される。ここで、励磁電流は、トランスの磁束を発生させるための電流である。
図9に示すように、バッテリB3の電圧が低下し、時間の経過に伴って電流制限閾値が大きくなると、1次巻線に流れる電流のうち、斜線でハッチングされた2次巻線に流れる電流も時間の経過とともに大きくなる。その結果、電流制限閾値がIth1の期間において、励磁電流の振幅は、負側に比べ正側の方が大きくなる。電流制限閾値がIth2の期間において、励磁電流の振幅は、負側に比べ正側の方が大きくなる。電流制限閾値がIth3の期間において、励磁電流の振幅は、負側に比べ正側の方が大きくなる。つまり、トランス30の磁束を発生させる励磁電流が正側に偏る。この場合、トランス30の磁束が正側に偏る偏磁が発生してしまう。
しかし、DC−DCコンバータ装置3は、図7に示すように、電流制限閾値がIth1の期間において、励磁電流の振幅は、負側に比べ正側の方が大きくなる。具体的には、最初の正側の振幅が最も大きくなる。電流制限閾値がIth2の期間において、励磁電流の振幅は、正側に比べ負側の方が大きくなる。具体的には、最初の負側の振幅が最も大きくなる。電流制限閾値がIth3の期間において、励磁電流の振幅は、負側に比べ正側の方が大きくなる。具体的には、最初の正側の振幅が最も大きくなる。つまり、励磁電流の偏りを正側と負側に交互に分散させることができる。その結果、トランス30の過渡的な偏磁を抑えることができる。
なお、ここでは、バッテリB3の電圧が低下した場合を例に挙げ説明しているが、バッテリB3の電圧が上昇した場合も同様に過渡的な偏磁を抑えることができる。
次に、効果について説明する。
参考形態によれば、制御回路33は、パルス電圧を決定するための制御量として、電流制限閾値を求める。そのため、この制御量に基づいてパルス電圧を確実に決定することができる。従って、部品を追加することなく、バッテリB3の電圧の変動に伴って発生するトランス30の過渡的な偏磁を確実に抑えることができる。
なお、参考形態では、パルス電圧が3回連続して印加される毎に制御量を更新する例を挙げているが、これに限られるものではない。パルス電圧が3以上の奇数回連続して印加される毎に更新すれば同様の効果を得ることができる。
また、参考形態では、直流電圧を交流電圧に変換して1次巻線300に印加する例を挙げているが、これに限られるものではない。交流電圧を形態の異なる交流電圧、例えば電圧や周波数の異なる交流電圧に変換して1次巻線に印加するようにしてもよい。
さらに、参考形態では、電子装置S3に所定の電圧の電力を供給する例を挙げているが、これに限られるものではない。2次電池に所定の電圧の電力を供給し、2次電池を充電するようにしてもよい。
加えて、参考形態では、出力側回路32の出力電圧に基づいて入力側回路31を制御する例を挙げているが、これに限られるものではない。誘導加熱装置のように、出力側回路の出力に伴って変化する温度に基づいて入力側回路を制御するようにしてもよい。
1〜3・・・DC−DCコンバータ装置(電力変換装置)、10、20、30・・・トランス(変圧器)、100、200、300・・・1次巻線、101、102、201、202、301、302・・・2次巻線、11、21、31・・・入力側回路(第1変換回路)、110〜113、210〜213、310〜313・・・FET、12、22、32・・・出力側回路(第2変換回路)、120、121、220、221、320、321・・・ダイオード、122、222、322・・・コイル、123、223、323・・・コンデンサ、13、23、33・・・制御回路、130、230、330・・・電圧指令部、131、231、331・・・電圧検出部、132、232、332・・・誤差増幅部、133、234、334・・・制御部、233、333・・・電流検出部、B1〜B3・・・バッテリ(電源)、S1〜S3・・・電子装置

Claims (3)

  1. 1次巻線と2次巻線とを有する変圧器と、
    前記1次巻線と電源の間に接続され、前記電源の電圧を交流電圧に変換して前記1次巻線に印加する第1変換回路と、
    前記2次巻線に接続され、前記2次巻線の交流電圧を変換して出力する第2変換回路と、
    前記第2変換回路の出力に基づいて前記1次巻線に印加するパルス電圧を決定するための制御量を求め、前記制御量に基づいて決定したパルス電圧が時間に対して正負交互に前記1次巻線に印加されるように前記第1変換回路を制御する制御回路と、
    を備えた電力変換装置において、
    前記制御回路は、パルス電圧が3以上の奇数回連続して印加される毎に前記1次巻線に印加する電圧の時間積分値を更新し、前記1次巻線に印加する電圧の前記時間積分値に基づいてパルス電圧のパルス幅を決定することを特徴とする電力変換装置。
  2. 前記制御回路は、前記第2変換回路の出力と前記1次巻線に流れる電流に基づいて前記1次巻線に印加する電圧の前記時間積分値を決定することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
  3. 車両に搭載されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
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