JP5664450B2 - パラメトリックスピーカ - Google Patents
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Description
可聴音の波形信号(電気信号)を超音波変調して超音波スピーカから空気中に照射し、超音波(耳に聞こえない音波)に含まれる変調成分が伝播途中の空気中で自己復調されることで、超音波スピーカから離れた場所で可聴音(報知音)を発生させるパラメトリックスピーカが知られている。
このため、車両の特定方向(前方など)のみに報知音(擬似エンジン音など)を発生させることができ、車両存在報知装置に用いる提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
パラメトリックスピーカに用いられる超音波スピーカは、空気中に超音波波長の疎密波を発生させる必要がある。
このため、図6(a)に示すように、超音波スピーカは、超音波発生用に設けられた複数の超音波発生素子SS(超音波振動子)を集合配置して、複数の超音波発生素子SSから超音波を発生するように設けられる。なお、図6(a)は、理解補助のために示す参考例であり、周知の技術ではない。
具体的に超音波発生素子SSは、図6(b)に示すように、振動系の1次共振部(1次共振周波数:1次成分)が超音波帯域内(この例では約40kHz)に存在するように設けられる。
このように、振動系が超軽量な超音波発生素子SSは、汎用性が低いためコストが高くなってしまう。このため、パラメトリックスピーカのコストアップの要因になってしまう。
この問題点を解決するために、1次共振部が可聴帯域内に存在する可聴音発生用圧電スピーカ(可聴帯域の音波を発生するために設けられた圧電スピーカ)を用いて超音波を発生させることが考えられる(問題点を示唆するための技術であって周知の技術ではない)。
しかしながら、可聴音発生用圧電スピーカは、超音波を発生させるために設けられたものではなく、振動板等の可動部が可聴音用に設けられている。このため、可聴音発生用圧電スピーカを超音波周波数で発振させて、可聴音発生用圧電スピーカから超音波を発生させようとすると、図3(b)に示すように、可聴帯域において共振音A(1次共振部等による可聴音)が発生してしまう。
このため、超音波スピーカに可聴音発生用圧電スピーカを用いると、超音波スピーカから可聴帯域の共振音A(可聴音)が聞こえてしまう問題がある。
可聴音発生用圧電スピーカは、汎用性が高く量産されるためコストが抑えられる。そのため、パラメトリックスピーカに用いられる超音波スピーカのコストを抑えることができる。
また、可聴音発生用圧電スピーカによって発生させた超音波を「可聴帯域の音波を透過して超音波を反射する超音波反射手段」で反射させて外部に放出する。
このため、超音波反射手段で反射した超音波のみを外部(目的方向)へ向けて放出することができ、圧電スピーカが発生した可聴帯域の共振音は超音波の反射方向とは異なる側へ透過するため、可聴帯域の共振音が超音波スピーカにおいて聞こえる不具合を回避することができる。
即ち、請求項1の手段は、コストを抑えるために可聴音発生用圧電スピーカを用いることによるデメリット(可聴帯域の共振音が超音波スピーカから聞こえるデメリット)を回避することができる。
超音波は、波長が短く反射性に優れるため、張力が付与された目の詰まった薄い布膜に反射する。
一方、可聴帯域の音波は、超音波に比較して波長が長く透過性に優れるため、張力が付与された目の詰まった薄い布膜を透過する。
この性質により、張力が付与された目の詰まった薄い布膜を超音波反射手段として用いることができる。
請求項3の超音波スピーカは、超音波反射手段を透過した音波があたる部位に、音波の吸音または反射の少なくとも一方を行なう透過音コントロール手段を備える。
この透過音コントロール手段により超音波反射手段を透過した音波(可聴帯域の共振音)の発生方向や音圧をコントロールすることができる。
請求項4のパラメトリックスピーカは、報知音を車外へ発生させて車両の存在を知らせる車両存在報知装置に用いられるものである。
車両存在報知装置のコスト(具体的には、車両存在報知装置に搭載されるパラメトリックスピーカにおける超音波スピーカのコスト)を抑えることができるとともに、コストを抑えるために可聴音発生用圧電スピーカを用いることによるデメリット(可聴帯域の共振音が車外に聞こえるデメリット)を回避することができる。
図1を参照して実施形態1を説明する。
実施形態1のパラメトリックスピーカ1は、
・1次共振部(共振周波数の1次成分)が可聴帯域内に存在する可聴音発生用圧電スピーカ2(可聴帯域の音波を発生するために設けられた圧電スピーカ)を用いた超音波スピーカ3と、
・可聴音信号を超音波変調してなる超音波信号を発生する超音波変調手段4と、
・超音波変調手段4が発生した超音波信号により可聴音発生用圧電スピーカ2を駆動する超音波駆動手段5(アンプ手段)と、
・可聴帯域の音波を透過して超音波を反射する超音波反射手段7と、
を備える。
可聴音発生用圧電スピーカ2で発生した超音波(可聴帯域の共振音を含む)は、超音波反射手段7に照射され、超音波反射手段7で反射した超音波のみが目的方向に放出される。
また、可聴音発生用圧電スピーカ2によって発生させた超音波を、超音波反射手段7で反射させて外部に放出するため、超音波反射手段7で反射した超音波のみを外部(目的方向)へ向けて放出することができ、可聴帯域の共振音が超音波スピーカ3から聞こえる不具合を回避することができる。
具体的な一例を示すと、超音波反射手段7は、張力が付与された状態で張られ、細い糸を用いて目が詰められて織られた表面が平滑な薄い化学繊維よりなる布膜によって設けられる。なお、布膜の表面には、平滑度合を高め、超音波の反射性を高める樹脂や蝋材等がコーティングされたものであっても良い。
このため、超音波反射手段7を透過した可聴帯域の共振音が、超音波の照射方向(超音波の反射方向)とは異なる方向への騒音源になる不具合を回避することができる。
なお、以下の実施例において、上記「発明を実施するための形態」と同一符号は同一機能物を示すものである。
図2〜図5を参照して参考例を説明する。
この参考例は、後述する実施例1の車両存在報知装置の主要構成を示す。
・報知音を成す周波数信号を超音波変調してなる超音波を車外へ向けて放出するパラメトリックスピーカ1と、
・可聴帯域の報知音を直接車外へ向けて放出するダイナミックスピーカとして用いる車両用ホーン11と、
・パラメトリックスピーカ1および車両用ホーン11の作動制御を行なう制御回路12と、
を備えて構成される。
パラメトリックスピーカ1に用いられる超音波スピーカ3は、人間の可聴帯域よりも高い周波数(20kHz以上)の空気振動を発生させるものであり、超音波を車両前方に向けて放出するように車両に搭載されている。
具体的に、この参考例の超音波スピーカ3は、車両用ホーン11の前面(車両搭載時に車両前方へ向かう面:例えば渦巻ホーン)に設けられるものであり、図2に示すように、フロントグリル14と熱交換器15(ラジエータあるいは空調用熱交換器等)との間に車両用ホーン11が取り付けられることで、超音波の放射方向が車両前方へ向けられた状態で超音波スピーカ3が車両に搭載される。
・超音波の発生を行なう複数の圧電スピーカ2と、
・この複数の圧電スピーカ2を内部に収容するハウジング16と、
を備える。
具体的な一例を示すと、この参考例の各圧電スピーカ2は、車両乗員に対して聴覚(音声や警告音等)により車両情報を提供するために設けられたものを流用したものであり、この参考例に用いられる圧電スピーカ2の外径寸法は、可聴周波数の発生に適するように、超音波発生用に製造された超音波発生素子SS{符号、図6(a)参照}に比較して、約2倍ほど大きいものである。
具体的な一例として、この参考例の圧電スピーカ2は、超音波帯域に高次共振部(例えば7次共振部:7次成分)による音圧上昇部X{符号、図3(b)参照}が存在するものである。
具体的にハウジング16は、内部に超音波スピーカ3を収容する容積室が形成されるものであり、各圧電スピーカ2から放射される超音波を車両前方へ向けて放出する超音波放射口(開口部)が設けられている。なお、ハウジング16は、超音波放射口を除いてほぼ密閉容器に設けられている。
この防水手段の一例として、この参考例では、超音波放射口を覆う超音波透過性の防水シート18と、この防水シート18の前面に配置されたルーバー19とを備えている。
ルーバー19は、図2に示すように、車両水平方向に対して略45°傾斜して設けられている。これにより、各圧電スピーカ2から放射された超音波は、ルーバー19の内面で下方に向きを変え、その下方のルーバー19の外面で再び車両前方に向きを変えて、結果的に車両前方へ向けて放射される。
この可聴音吸収フィルタ6は、ヘルムホルツの共鳴作用により可聴帯域の音波のみを吸収し、共鳴周波数に合致しない超音波を透過させる多孔質部材であり、例えば無数の共鳴室を成す通気性を有する多数の連続気泡を有するセラミックや樹脂等によって設けられるものである。
なお、可聴音吸収フィルタ6は、可聴帯域を広く吸音するものであっても良いし、圧電スピーカ2が発生する可聴帯域の共振音のみをピンポイントに吸収するものであっても良い。
また、図2では、可聴音吸収フィルタ6が防水シート18の外側に配置される例を示しているが、可聴音吸収フィルタ6の配置位置は限定されるものではなく、防水シート18の内側に可聴音吸収フィルタ6を配置しても良い。
車両用ホーン11は、上述したように、フロントグリル14と熱交換器15との間に固定配置されるものであり、乗員によってホーンスイッチ(例えば、ステアリングのホーンボタン)が操作された際に警報音を発生する周知構造の電磁式警音器である。
なお、車両用ホーン11は、車両用ホーン11から発生させる報知音が車両の周囲に略均等に到達するように、渦巻ホーンの開口部が下方(路面)に向くように車両に搭載されるものである。
制御回路12は、図2に示すようにマイコンチップ21(マイクロ・コンピュータ・チップの略)を用いて構成されるものであり、例えば、図2に示すように制御回路12が車両用ホーン11の内部(具体的には、ホーンハウジングの内部)に配置される(限定されるものではない)。
制御回路12は、電源(バッテリ)に接続されるとともに、ホーンスイッチ信号や車速信号(例えば、車速パルス信号等)が与えられるものであり、
(a)「車両の運転状態が報知音の発生条件に適合しているか否か」を判定する判定手段22と、
(b)この判定手段22が「車両の運転状態が報知音の発生条件に適合している」と判定した場合に、「報知音を成す周波数信号」を発生させる報知音生成手段23と、
(c)この報知音生成手段23から出力された「報知音を成す周波数信号」を超音波周波数に変調する超音波変調手段4と、
(d)超音波スピーカ3(超音波スピーカ3を成す複数の圧電スピーカ2)を駆動する超音波駆動手段5と、
(e)車両用ホーン11を駆動するホーン駆動手段24と、
を備える。
以下において、制御回路12に搭載される上記(a)〜(e)の各手段を説明する。
判定手段22は、例えば、車速が所定速度(例えば、20km/h)以下の車両走行時に、車両の運転状態が報知音の発生条件に適合していると判断して、報知音生成手段23を作動させるものである(具体的な一例)。
報知音生成手段23は、報知音生成プログラム(音響ソフト)によって設けられ、判定手段22から作動指示が与えられると、デジタル技術によって「報知音を成す周波数信号(可聴周波数の電気信号:例えば擬似エンジン音を成す電気信号)」を作成するものである。
超音波変調手段4は、報知音生成手段23の出力する「報知音を成す周波数信号(可聴音信号の一例)」を超音波変調するものである。
超音波変調手段4の具体的な一例として、この参考例では、報知音生成手段23の出力信号を、「超音波周波数(圧電スピーカ2の再生可能周波数の超音波帯域に存在する高次共振部による音圧上昇部Xの周波数:例えば、約25kHz)における振幅変化(電圧の増減変化)」に変調するAM変調(振幅変調)を用いるものである。即ち、「報知音を成す周波数信号」を「音圧上昇部Xの超音波周波数」に変調するものである。
なお、超音波変調手段4はAM変調に限定されるものではなく、報知音生成手段23の出力信号を所定の「超音波周波数におけるパルス幅変化(パルスの発生時間幅)」に変調するPWM変調(パルス幅変調)など、他の超音波変調技術を用いても良い。
例えば、超音波変調手段4に入力された「報知音を成す周波数信号」が、図5(a)に示す電圧変化であるとする(なお、図中では理解補助のために単一周波数の波形を示す)。
一方、制御回路12の搭載する超音波発振器は、図5(b)に示す超音波周波数(音圧上昇部Xの超音波周波数)で発振するものとする。なお、超音波発振器は、マイコンチップ21が搭載するクロック信号(コンピュータ制御用のクロック信号)から所定の超音波周波数を形成するものであっても良いし、マイコンチップ21とは独立した超音波変調用の発振器を用いるものであっても良い。
(i)「報知音を成す周波数信号」を成す周波数の信号電圧が大きくなるに従い、超音波振動による電圧の振幅を大きくし、
(ii)「報知音を成す周波数信号」を成す周波数の信号電圧が小さくなるに従い、超音波振動による電圧の振幅を小さくする。
このようにして、超音波変調手段4は、報知音生成手段23から出力された「報知音を成す周波数信号」を超音波周波数の「発振電圧の振幅変化」に変調するものである。
超音波駆動手段5は、超音波変調手段4で変調された超音波信号に基づいて、超音波スピーカ3を駆動するもの(例えば、プッシュプルのB級アンプ、あるいはプッシュプルのD級アンプ等)であり、各圧電スピーカ2の印加電圧(充放電状態)を制御することで、各圧電スピーカ2から「報知音を成す周波数信号」を変調した超音波を発生させるものである。
ホーン駆動手段24は、
(i)報知音生成手段23が「報知音を成す周波数信号」を発生している間、車両用ホーン11をダイナミックスピーカとして作動させ、「報知音を成す周波数信号」を増幅して車両用ホーン11から可聴帯域の報知音を発生させるパワーアンプ機能と、
(ii)ホーンスイッチがONされている間、バッテリ電圧を車両用ホーン11へ印加して、車両用ホーン11から警報音を発生させる連続ON機能と、
を備える。
なお、「報知音の発生指示」より「ホーンスイッチのON」が優先するものであり、ホーンスイッチがONされた際には必ず車両用ホーン11から警報音を発生するように設けられている。
車両の運転状態が報知音の発生条件に適合すると、報知音生成手段23が「報知音を成す周波数信号」を出力し、圧電スピーカ2から図5(c)に示す「報知音を成す周波数信号」を変調した超音波(聞こえない音波)が前方へ向けて照射される。
圧電スピーカ2で発生した超音波は、防水シート18と可聴音吸収フィルタ6を透過し、ルーバー19を通過して車両前方へ向けて放射される。
その結果、図5(e)に示すように、伝播途中の空気中において超音波に含まれていた振幅成分が自己復調され、結果的に車両前方において「報知音」が再生される。
一方、報知音生成手段23が「報知音を成す周波数信号」を出力することで、車両用ホーン11から車両の周囲に可聴音の「報知音」がダイレクトに放出される。
この参考例の超音波スピーカ3は、上述したように、可聴帯域の音波を発生するために設けられた圧電スピーカ2を用いたものであり、可聴音発生用の圧電スピーカ2から、パラメトリックスピーカ1に用いる超音波を発生させるものである。
可聴音発生用の圧電スピーカ2は、汎用性が高く量産されるためコストが低い。このため、超音波スピーカ3の製造コストを低く抑えることができ、パラメトリックスピーカ1を用いた車両存在通報装置のコストを抑えることができる。
この参考例では、上述したように、可聴帯域の音波を発生するために設けられた圧電スピーカ2から超音波を発生させる。
このように可聴帯域の音波を発生するために設けられた圧電スピーカ2を用いて超音波を発生させると、図3(b)に示すように、可聴帯域に共振音A(1次共振部等による可聴音)が発生してしまう。
このように、圧電スピーカ2が発生した可聴帯域の共振音は、ハウジング16から外部に出ることがない。
このため、車両から圧電スピーカ2の発生した可聴帯域の共振音が聞こえる不具合を回避することができる。
図1を参照して実施例1を説明する。
この実施例1は、本発明を車両存在報知装置に適用したものである。
具体的に、圧電スピーカ2から照射された超音波を「超音波の反射性に優れ、且つ可聴帯域の音波の透過性に優れた超音波反射手段7」で反射させて車両前方へ向ける超音波スピーカ3を車両に搭載するものである。
このため、超音波反射手段7を透過した可聴帯域の共振音が、超音波の照射方向とは異なる方向への騒音源になる不具合を回避することができる。即ち、超音波反射手段7を透過した可聴帯域の共振音が車両乗員の騒音になる不具合を回避することができる。
このように設けることにより、超音波反射手段7を透過した可聴帯域の共振音が、車両乗員の騒音になる不具合を回避して、車両側面方向や斜め後方に対して車両の存在を知らせる効果が得られる。
2 圧電スピーカ(可聴音発生用圧電スピーカ)
3 超音波スピーカ
4 超音波変調手段
5 超音波駆動手段
7 超音波反射手段
Claims (4)
- 可聴音信号を超音波変調してなる超音波を放射するパラメトリックスピーカ(1)において、
このパラメトリックスピーカ(1)において超音波を発生させる超音波スピーカ(3)は、1次共振部が可聴帯域内に存在する可聴音発生用圧電スピーカ(2)と、可聴帯域の音波を透過して超音波を反射する超音波反射手段(7)とを備え、
前記可聴音発生用圧電スピーカ(2)によって発生させた超音波を前記超音波反射手段(7)に照射し、前記超音波反射手段(7)で反射した超音波を空気中に放出することを特徴とするパラメトリックスピーカ。 - 請求項1に記載のパラメトリックスピーカ(1)において、
前記超音波反射手段(7)は、張力が付与された状態で張られ、目が詰められて織られた薄い布膜であることを特徴とするパラメトリックスピーカ。 - 請求項1または請求項2に記載のパラメトリックスピーカ(1)において、
前記超音波スピーカ(3)は、前記超音波反射手段(7)を透過した音波があたる部位に、音波の吸音または反射の少なくとも一方を行なう透過音コントロール手段を備えることを特徴とするパラメトリックスピーカ。 - 請求項1〜請求項3のいずれかに記載のパラメトリックスピーカ(1)において、
このパラメトリックスピーカ(1)は、報知音を車外へ発生させて車両の存在を知らせる車両存在報知装置に用いられることを特徴とするパラメトリックスピーカ。
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