ところで、シリンダ室の吐出流路は、ヘッド部に形成又は配置される他の部品と干渉しないように、駆動軸側に寄せて形成されている。しかしこうすると、吐出流路が、駆動軸を支持する軸受部に跨って形成されるため、軸受部の肉厚が部分的に薄くなってしまう。そうなると、軸受部の強度が不充分となる虞が生じる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、シリンダ室と接続する吐出流路とヘッド部に形成又は配置される部品との干渉を回避しつつ、軸受部の軸受強度を維持することである。
第1の発明は、駆動軸(53)を有する駆動機構(50)と、内部にシリンダ空間(S1,S2)を形成する筒状のシリンダ本体部(21c,31c)、及び該シリンダ本体部(21c,31c)の開口部を閉塞するヘッド部(14,17)を有するシリンダ(21,31)と、該シリンダ(21,31)との間に少なくとも1つのシリンダ室(23a,23b,23c,23d,33a,33b,33c,33d)を形成するように前記シリンダ空間(S1,S2)に収容され前記駆動軸(53)によって回転駆動されるピストン(22,32)とを有する圧縮機構(40)と、を備えた回転式圧縮機を対象とし、前記ヘッド部(14,17)は、前記シリンダ本体部(21c,31c)の開口部を覆う閉塞部(15a,18a)を有するシリンダ空間側ヘッド部(15,18)と、前記閉塞部(15a,18a)における前記シリンダ空間(S1,S2)と反対側に積層される積層部(16a,19a)、及び該積層部(16a,19a)から前記シリンダ空間(S1,S2)と反対側へ延出する筒状に形成され内周面で前記駆動軸(53)を回転自在に支持する軸受部(16b,19b)を有し、前記シリンダ空間側ヘッド部(15,18)とは別体に形成される軸受部側ヘッド部(16,19)と、を備え、前記閉塞部(15a,18a)には、少なくとも一部が前記軸受部(16b,19b)と軸方向に重なるように該閉塞部(15a,18a)を軸方向に貫通し流入口が前記シリンダ室(23a,33a)に接続する上流側流路(85)が形成され、前記積層部(16a,19a)には、前記上流側流路(85)の流出口(86a)と前記圧縮機構(40)の外部とを連通する下流側流路(90)が形成されていることを特徴とする。
第1の発明では、シリンダ空間(S1,S2)に収容されたピストン(22,32)が駆動軸(53)によって回転駆動されると、シリンダ室(23a,23b,23c,23d,33a,33b,33c,33d)内の流体が圧縮される。このように圧縮された流体は、該流体を圧縮機構(40)の外部へ吐出するための吐出流路としての上流側流路(85)及び下流側流路(90)を順に流れて、圧縮機構(40)の外部へ吐出される。
第1の発明では、圧縮機構(40)のシリンダ(21,31)は、筒状のシリンダ本体部(21c,31c)と、該シリンダ本体部(21c,31c)の開口部を閉塞するヘッド部(14,17)とを備えている。このヘッド部(14,17)は、別体に形成された2つの部材を備えている。具体的には、ヘッド部(14,17)は、シリンダ本体部(21c,31c)の開口部を覆う閉塞部(15a,18a)を有するシリンダ空間側ヘッド部(15,18)と、閉塞部(15a,18a)におけるシリンダ空間(S1,S2)と反対側に積層される積層部(16a,19a)及び該積層部(16a,19a)から前記シリンダ空間(S1,S2)と反対側へ延出する筒状の軸受部(16b,19b)を有する軸受部側ヘッド部(16,19)と、を備えている。
そして、上記シリンダ空間側ヘッド部(15,18)の閉塞部(15a,18a)には、少なくとも一部が前記軸受部(16b,19b)と軸方向に重なるように軸方向に貫通される上流側流路(85)が形成され、軸受部側ヘッド部(16,19)の積層部(16a,19a)には、該上流側流路(85)からの流体を圧縮機構(40)の外部へ導くための下流側流路(90)が形成される。これにより、軸受部(16b,19b)と干渉することなく上流側流路(85)がシリンダ空間側ヘッド部(15,18)における駆動軸(53)寄りの部分に形成される。上流側流路(85)からの流体は下流側流路(90)を通じて圧縮機構(40)の外部へ導かれる。
第2の発明は、第1の発明において、前記上流側流路(85)の流出口(86a)は、前記軸受部(16b,19b)と軸方向に重なる軸心側流出部(86b)と、該軸心側流出部(86b)と連続するように該軸心側流出部(86b)よりも径方向外方に形成される外周側流出部(86c)と、を含み、前記下流側流路(90)は、流入口が前記上流側流路(85)の外周側流出部(86c)と接続するように、前記積層部(16a,19a)における前記軸受部(16b,19b)よりも径方向外方の部分を軸方向に貫通して形成されることを特徴とする。
第2の発明では、下流側流路(90)は、軸受部側ヘッド部(16,19)の積層部(16a,19a)における軸受部(16b,19b)よりも径方向外方の部分を軸方向に貫通されることにより形成され、上流側流路(85)の流出口(86a)の外周側流出部(86c)と接続する。
第3の発明は、第1の発明において、前記積層部(16a,19a)における前記シリンダ空間側ヘッド部(15,18)の対向面には、前記上流側流路(85)の流出口(86a)に臨むように開口する開口溝(93)が形成され、前記下流側流路(90)は、前記開口溝(93)内に形成され、流路面積が前記上流側流路(85)の流出口(86a)よりも大きい拡張流路(94)と、該拡張流路(94)の下流側に接続し、流入口が該拡張流路(94)の流路面積よりも小さい縮小流路(95)と、を含むことを特徴とする。
第3の発明では、上流側流路(85)を流れた流体は、拡張流路(94)に流れ込む。この拡張流路(94)は、流路面積が上流側流路(85)の流出口(86a)よりも大きいため、流体は拡張流路(94)内で膨張して消音される。その後、この流体は、縮小流路(95)へ流れ込み、該縮小流路(95)を通じて圧縮機構(40)の外部へ吐出される。
第4の発明は、第3の発明において、前記下流側流路(90)の拡張流路(94)は、前記軸受部(16b,19b)と軸方向に重なる軸心側空間(S3)を含み、前記上流側流路(85)は、前記閉塞部(15a,18a)における前記軸受部(16b,19b)と軸方向に重なる部分のみに形成され、前記軸心側空間(S3)に接続していることを特徴とする。
第4の発明では、上流側流路(85)は、閉塞部(15a,18a)における軸受部(16b,19b)と軸方向に重なる部分のみに形成されているため、上流側流路(85)が更に駆動軸(53)側へ寄せられる。
第5の発明は、第3の発明において、前記下流側流路(90)の拡張流路(94)は、前記軸受部(16b,19b)と軸方向に重なる軸心側空間(S3)と、前記軸心側空間(S3)と連続するように該軸心側空間(S3)よりも径方向外方に形成される外周側空間(S4)とを含み、前記上流側流路(85)の流出口(86a)は、前記軸心側空間(S3)と前記外周側空間(S4)との双方に跨っていることを特徴とする。
第5の発明では、上流側流路(85)の流出口(86a)が、下流側流路(90)における軸心側空間(S3)と外周側空間(S4)との双方に跨るように形成されているため、上流側流路(85)における流路断面が比較的大きくなる。
第6の発明は、第1から第5の発明のうちいずれか1つにおいて、前記圧縮機構(40)は、前記シリンダ室(23a,33a)の吐出側を開閉する吐出弁(88)を有し、前記上流側流路(85)は、前記吐出弁(88)を収容する弁収容空間(86)を含むことを特徴とする。
第6の発明では、シリンダ室(23a,33a)の吐出側を開閉する吐出弁(88)が、上流側流路(85)の弁収容空間(86)に収容されているため、例えば吐出弁(88)が下流側流路(90)に配置されている場合と比べて、シリンダ室(23a,33a)から吐出弁(88)までの通路の長さが短くなる。よって、シリンダ室(23a,33a)の死容積が低減される。
第7の発明は、第1から第6の発明のうちいずれか1つにおいて、前記シリンダ(21,31)は、前記駆動軸(53)の回転軸と同心上に配置される複数のシリンダ部(21a,21b,21c,31a,31b,31c)を備え、前記ピストン(22,32)は、前記シリンダ(21,31)との間に複数の前記シリンダ室(23a,23b,23c,23d,33a,33b,33c,33d)を形成する複数のピストン部(22a,22b,22c,32a,32b,32c)を備え、前記上流側流路(85)の流入口は、複数の前記シリンダ室(23a,23b,23c,23d,33a,33b,33c,33d)のうち最も駆動軸(53)寄りのシリンダ室(23a,33a)に接続することを特徴とする。
第7の発明の圧縮機構(40)には、複数のシリンダ室(23a,23b,23c,23d,33a,33b,33c,33d)が形成されるため、これらに対応する複数の吐出流路が設けられる。これら複数の吐出流路を、軸受部(16b,19b)を薄肉化せずに且つ互いに干渉しないようにフロントヘッド(14,17)に形成しようとすると、ヘッド部(14,17)の外径を大型化する必要が生じ、圧縮機構(40)、ひいては回転式圧縮機全体が大型化してしまう。
これに対して、第7の発明では、上流側流路(85)が、軸受部(16b,19b)と干渉することなくシリンダ空間側ヘッド部(15,18)における駆動軸(53)寄りの部分に形成されるため、上流側流路(85)は他の吐出流路と干渉しにくくなる。
前記第1の発明によれば、ヘッド部(14,17)を軸方向に分割し、シリンダ室(23a,23b,23c,23d,33a,33b,33c,33d)寄りに位置する閉塞部(15a,18a)において、軸受部(16b,19b)と軸方向に重なるように上流側流路(85)を形成している。これにより、軸受部(16b,19b)と干渉することなく、上流側流路(85)を駆動軸(53)側へ寄せることができる。こうすると、該上流側流路(85)と、ヘッド部(14,17)に形成又は配置される他の部品(例えば、ボルト孔や油戻し孔等)とが干渉しにくくなるため、これら他の部品を駆動軸(53)側へ寄せやすくなる。その結果、ヘッド部(14,17)の外径、ひいては圧縮機構(40)の外径を小さくできるため、回転式圧縮機を小型化できる。
また、積層部(16a,19a)には、上流側流路(85)と連通する下流側流路(90)を形成している。このため、軸受部(16b,19b)を薄肉化することなく、上流側流路(85)からの流体を下流側流路(90)を通じて圧縮機構(40)の外部へ送ることができる。これにより、軸受部(16b,19b)の強度を確保しつつ、下流側流路(90)を形成できる。
また、前記第2の発明によれば、下流側流路(90)を、積層部(16a,19a)における軸受部(16b,19b)よりも径方向外方の部分を軸方向に貫通することにより形成しているため、軸受部(16b,19b)を薄肉化することなく、下流側流路(90)を容易に形成できる。
また、前記第3の発明によれば、積層部(16a,19a)に形成された開口溝(93)の内部の空間で、上流側流路(85)からの流体を消音するためのマフラー空間を形成できるため、回転式圧縮機の騒音を抑制できる。この開口溝(93)は、積層部(16a,19a)におけるシリンダ空間側ヘッド部(15,18)の対向面を凹状に窪ませることにより、軸受部側ヘッド部(16,19)の内部に容易に形成できる。
また、前記第4の発明によれば、上流側流路(85)を更に駆動軸(53)側へ寄せることができるため、回転式圧縮機をより小型化できる。
また、前記第5の発明によれば、上流側流路(85)の流路断面を比較的大きくできるため、該上流側流路(85)を流れる流体の圧力損失の増大を抑制できる。
また、前記第6の発明によれば、シリンダ室(23a,33a)の吐出側を開閉する吐出弁(88)を、上流側流路(85)の弁収容空間(86)に収容しているため、シリンダ室(23a,33a)の死容積を低減できる。
また、前記第7の発明によれば、複数のシリンダ室(23a,23b,23c,23d,33a,33b,33c,33d)が形成される回転式圧縮機において、該複数のシリンダ室(23a,23b,23c,23d,33a,33b,33c,33d)のうち最も駆動軸(53)寄りに形成されるシリンダ室(23a,33a)に接続される上流側流路(85)を、軸受部(16b,19b)との干渉を回避しつつ駆動軸(53)側に寄せて形成している。こうすると、残りのシリンダ室(23b,23c,23d,33b,33c,33d)に接続する吐出流路を径方向内方へ寄せることができる。その結果、圧縮機構の外径を小さくできるため、回転式圧縮機全体を小型化できる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《発明の実施形態1》
−全体構成−
実施形態1に係る圧縮機(1)は回転式圧縮機であり、図1に示すように、ケーシング(10)内に、2つの圧縮機構部(第1圧縮機構部(20)及び第2圧縮機構部(30))が駆動軸(53)の軸方向に積み重ねられた圧縮機構(40)と、駆動機構としての電動機(50)とが収納され、全密閉型に構成されている。この圧縮機(1)は、例えば、空気調和装置の冷媒回路において、蒸発器から吸入した冷媒(流体)を圧縮して凝縮器へ吐出するために用いられる。
ケーシング(10)は、円筒状の胴部(11)と、該胴部(11)の上端部に固定された上部鏡板(12)と、胴部(11)の下端部に固定された下部鏡板(13)とから構成されている。胴部(11)には、詳細について後述する第1圧縮機構部(20)及び第2圧縮機構部(30)のシリンダ室(23a,…,23d,33a,…,33d)に冷媒を導くための吸入管(60,61,62,63)と、シリンダ室(23b,23c,23d,33b,33c,33d)において圧縮された冷媒を吐出するための吐出管(64,65,66)とが貫通して設けられている。また、上部鏡板(12)にも、シリンダ室(23a,33a)において圧縮された冷媒を吐出するための吐出管(67)が貫通して設けられている。
電動機(50)は、ケーシング(10)内における上部鏡板(12)寄りに配置されている。電動機(50)は、ステータ(51)とロータ(52)と駆動軸(53)とを備えている。ステータ(51)は、ケーシング(10)の胴部(11)の内周面に固定されている。一方、ロータ(52)には駆動軸(53)が一体となって回転するように連結されている。
駆動軸(53)は、ロータ(52)から下方に延伸し、下部には第1偏心部(53a)及び第2偏心部(53b)が形成されている。第1偏心部(53a)は、該第1偏心部(53a)の上下の主軸部分よりも大径に形成され、駆動軸(53)の軸心から所定量だけ偏心している。一方、第2偏心部(53b)は、第1偏心部(53a)と同径に形成され、第1偏心部(53a)と同じ量だけ駆動軸(53)の軸心から偏心している。第1偏心部(53a)と第2偏心部(53b)とは、駆動軸(53)の軸心を中心として互いに180°位相がずれている。
第1圧縮機構部(20)及び第2圧縮機構部(30)は、ケーシング(10)内において電動機(50)よりも下方に配置されている。第1圧縮機構部(20)及び第2圧縮機構部(30)は、上下二段に重ねられて、ケーシング(10)に固定されたフロントヘッド(14)からリアヘッド(17)までの間に構成されている。第1圧縮機構部(20)が電動機(50)側(図1の上側)に配置され、第2圧縮機構部(30)がケーシング(10)の底部側(図1の下側)に配置されている。なお、フロントヘッド(14)の上側には、該フロントヘッド(14)の上面との間に上側マフラー空間(27a)を形成するための上側マフラー部材(27)が取り付けられ、リアヘッド(17)の下側には、該リアヘッド(17)の下面との間に下側マフラー空間(28a)を形成するための下側マフラー部材(28)が取り付けられている。
第1圧縮機構部(20)は、図2から図5に示すように、ケーシング(10)の胴部(11)の内周面に固定された第1シリンダ(21)と、駆動軸(53)の第1偏心部(53a)に取り付けられて第1シリンダ(21)に対して偏心回転をする第1ピストン(22)と、これら第1シリンダ(21)と第1ピストン(22)との間に形成される4つのシリンダ室(23a,23b,23c,23d)を高圧室(23aH,23bH,23cH,23dH)と低圧室(23aL,23bL,23cL,23dL)とに区画する第1ブレード(24)とを備えている。
第1シリンダ(21)は、内部にシリンダ空間(S1)を形成し上下方向に開口する円筒状のシリンダ本体部(21c)と、該シリンダ本体部(21c)の上側の開口部を閉塞するヘッド部としてのフロントヘッド(14)と、環状に形成され駆動軸(53)の回転軸と同心上に配置される複数のシリンダ部(21a,21b,21c)と、前記シリンダ本体部(21c)の下側の開口部に配置されるミドルプレート(25)とを備えている。
フロントヘッド(14)は、シリンダ空間側ヘッド部としてのシリンダ空間側フロントヘッド(15)と、軸受部側ヘッド部としての軸受部側フロントヘッド(16)とを備えている。
シリンダ空間側フロントヘッド(15)は、シリンダ本体部(21c)の上側の開口部を覆う円板状に形成される閉塞部(15a)を備えている。シリンダ空間側フロントヘッド(15)は、シリンダ本体部(21c)と一体に形成されている。閉塞部(15a)の中央部には、駆動軸(53)が挿通される貫通孔(15b)が形成されている。この貫通孔(15b)は、駆動軸(53)よりも僅かに大径となるように形成されている。
軸受部側フロントヘッド(16)は、シリンダ空間側フロントヘッド(15)とは別体に形成され、シリンダ空間側フロントヘッド(15)の上側に配置されている。軸受部側フロントヘッド(16)は、シリンダ空間側フロントヘッド(15)の上面に重ねられる円板状の積層部(16a)と、該積層部(16a)と一体に形成される軸受部(16b)とを備えている。積層部(16a)の中央部には、駆動軸(53)が挿通される貫通孔(16c)が形成されている。軸受部(16b)は、積層部(16a)の貫通孔(16c)の開口端部から上方へ延びる円筒状に形成されている。軸受部(16b)の内周面には、駆動軸(53)を回転自在に支持するための円筒状の軸受メタル(16d)が挿通固定されている。
複数のシリンダ部(21a,21b,21c)は、シリンダ空間側フロントヘッド(15)の下面に、該シリンダ空間側フロントヘッド(15)と一体に形成されている。この複数のシリンダ部は、最内側に形成される環状の内側シリンダ部(21a)と、該内側シリンダ部(21a)よりも径方向外方に形成される環状の外側シリンダ部(21b)と、該外側シリンダ部(21b)の外側に位置し該外側シリンダ部(21b)の外周部から下方に延伸する円筒状の最外側シリンダ部(21c)とで構成されている。内側シリンダ部(21a)は円環の一部分が分断されている(図3(A)参照)。内側シリンダ部(21a)の分断箇所にはスライド溝(21g)が形成されている。最外側シリンダ部(21c)は、前記シリンダ本体部(21c)で構成されている。
ミドルプレート(25)は、駆動軸(53)の軸方向に並ぶ2つの部材によって形成されている。具体的には、ミドルプレート(25)は、シリンダ本体部(21c)の下側の開口部を覆うやや肉厚な円板状の本体部(25a)と、該本体部(25a)の下面に重ねられる円板状の蓋部(25b)とを備えている。ミドルプレート(25)の中心部には、駆動軸(53)が貫通する貫通孔(25c)が形成されている。この貫通孔(25c)は、駆動軸(53)の第1偏心部(53a)及び第2偏心部(53b)の直径よりも内径が少し大きな孔である。なお、ミドルプレート(25)は、第2圧縮機構部(30)の一部も構成している。
第1ピストン(22)は、筒状のシリンダ本体部(21c)の内部に形成されるシリンダ室(S1)に収容されている。第1ピストン(22)は、第1偏心部(53a)に嵌合して該第1偏心部(53a)と同心上に位置する内側ピストン部(22a)と、該内側ピストン部(22a)の外周側に該内側ピストン部(22a)と同心上に位置する外側ピストン部(22b)と、該2つのピストン部(22a,22b)の下端部を連結するとともに外周面が内側ピストン部(22a)及び外側ピストン部(22b)と同心上に位置するピストン側鏡板部(22c)とを備えている。内側ピストン部(22a)は、内側シリンダ部(21a)の内部に配置され、外側ピストン部(22b)は、内側シリンダ部(21a)と外側シリンダ部(21b)との間に配置され、ピストン側鏡板部(22c)は、最外側シリンダ部(21c)の内部に配置されている。内側ピストン部(22a)は、外周面に切欠部(n1)が形成され、外側ピストン部(22b)は円環の一部分が分断されている(図3(A)参照)。また、ピストン側鏡板部(22c)の外周部には切欠部(n2)が形成されている(図3(B)参照)。
上述のようにシリンダ空間(S1)に配置された第1ピストン(22)は、第1シリンダ(21)との間に複数のシリンダ室を形成する。具体的には、内側ピストン部(22a)と内側シリンダ部(21a)との間には最内側シリンダ室(23a)が形成され、外側ピストン部(22b)と内側シリンダ部(21a)との間には内側シリンダ室(23b)が形成され、外側ピストン部(22b)と外側シリンダ部(21b)との間には外側シリンダ室(23c)が形成され、ピストン側鏡板部(22c)と最外側シリンダ部(21c)との間には最外側シリンダ室(23d)が形成されている。つまり、第1圧縮機構部(20)内には、径方向内側から径方向外側に向かって順に、最内側シリンダ室(23a)、内側シリンダ室(23b)、外側シリンダ室(23c)最外側シリンダ室(23d)が形成されている。
このように、第1圧縮機構部(20)は、4つのシリンダ室(23a,23b,23c,23d)を有するように構成されている。
第2圧縮機構部(30)は、第1圧縮機構部(20)の下側に配置されている。第2圧縮機構部(30)は、図2から図5に示すように、ケーシング(10)の胴部(11)の内周面に固定された第2シリンダ(31)と、駆動軸(53)の第2偏心部(53b)に取り付けられて第2シリンダ(31)に対して偏心回転をする第2ピストン(32)と、これら第2シリンダ(31)と第2ピストン(32)との間に形成される4つのシリンダ室(33a,33b,33c,33d)を高圧室(33aH,33bH,33cH,33dH)と低圧室(33aL,33bL,33cL,33dL)とに区画する第2ブレード(34)とを備えている。
第2シリンダ(31)は、内部にシリンダ空間(S2)を形成し上下方向に開口する円筒状のシリンダ本体部(31c)と、該シリンダ本体部(31c)の下側の開口部を閉塞するヘッド部としてのリアヘッド(17)と、環状に形成され駆動軸(53)の回転軸と同心上に配置される複数のシリンダ部(31a,31b,31c)と、前記シリンダ本体部(21c)の上側の開口部に配置されるミドルプレート(25)とを備えている。
リアヘッド(17)は、シリンダ空間側ヘッド部としてのシリンダ空間側リアヘッド(18)と、軸受部側ヘッド部としての軸受部側リアヘッド(19)とを備えている。
シリンダ空間側リアヘッド(18)は、シリンダ本体部(31c)の下側の開口部を覆う円板状に形成される閉塞部(18a)を備えている。シリンダ空間側リアヘッド(18)は、シリンダ本体部(31c)と一体に形成されている。閉塞部(18a)の中央部には、駆動軸(53)が挿通される貫通孔(18b)が形成されている。この貫通孔(18b)は、駆動軸(53)よりも僅かに大径となるように形成されている。
軸受部側リアヘッド(19)は、シリンダ空間側リアヘッド(18)とは別体に形成され、シリンダ空間側リアヘッド(18)の下側に配置されている。軸受部側リアヘッド(19)は、シリンダ空間側リアヘッド(18)の下面に重ねられる円板状の積層部(19a)と、該積層部(19a)と一体に形成される軸受部(19b)とを備えている。積層部(19a)の中央部には、駆動軸(53)が挿通される貫通孔(19c)が形成されている。軸受部(19b)は、積層部(19a)の貫通孔(19c)の開口端部から下方へ延びる円筒状に形成されている。軸受部(19b)の内周面には、駆動軸(53)を回転自在に支持するための円筒状の軸受メタル(19d)が挿通固定されている。
複数のシリンダ部(31a,31b,31c)は、シリンダ空間側リアヘッド(18)の上面に、該シリンダ空間側リアヘッド(18)と一体に形成されている。この複数のシリンダ部は、最内側に形成される環状の内側シリンダ部(31a)と、該内側シリンダ部(31a)よりも径方向外方に形成される環状の外側シリンダ部(31b)と、該外側シリンダ部(31b)の外側に位置し該外側シリンダ部(31b)の外周部から下方に延伸する円筒状の最外側シリンダ部(31c)とで構成されている。内側シリンダ部(31a)は円環の一部分が分断されている(図3(A)参照)。内側シリンダ部(31a)の分断箇所にはスライド溝(31g)が形成されている。最外側シリンダ部(31c)は、前記シリンダ本体部(31c)で構成されている。
第2ピストン(32)は、筒状のシリンダ本体部(31c)の内部に形成されるシリンダ室(S2)に収容されている。第2ピストン(32)は、第2偏心部(53b)に嵌合して該第2偏心部(53b)と同心上に位置する内側ピストン部(32a)と、該内側ピストン部(32a)の外周側に該内側ピストン部(32a)と同心上に位置する外側ピストン部(32b)と、該2つのピストン部(32a,32b)の下端部を連結するとともに外周面が内側ピストン部(32a)及び外側ピストン部(32b)と同心上に位置するピストン側鏡板部(32c)とを備えている。内側ピストン部(32a)は、内側シリンダ部(31a)の内部に配置され、外側ピストン部(32b)は、内側シリンダ部(31a)と外側シリンダ部(31b)との間に配置され、ピストン側鏡板部(32c)は、最外側シリンダ部(31c)の内部に配置されている。内側ピストン部(32a)は、外周面に切欠部(n1)が形成され、外側ピストン部(32b)は円環の一部分が分断されている(図3(A)参照)。また、ピストン側鏡板部(32c)の外周部には切欠部(n2)が形成されている(図3(B)参照)。
上述のようにシリンダ空間(S2)に配置された第2ピストン(32)は、第2シリンダ(31)との間に複数のシリンダ室を形成する。具体的には、内側ピストン部(32a)と内側シリンダ部(31a)との間には最内側シリンダ室(33a)が形成され、外側ピストン部(32b)と内側シリンダ部(31a)との間には内側シリンダ室(33b)が形成され、外側ピストン部(32b)と外側シリンダ部(31b)との間には外側シリンダ室(33c)が形成され、ピストン側鏡板部(32c)と最外側シリンダ部(31c)との間には最外側シリンダ室(33d)が形成されている。つまり、第2圧縮機構部(30)内には、径方向内側から径方向外側に向かって順に、最内側シリンダ室(33a)、内側シリンダ室(33b)、外側シリンダ室(33c)最外側シリンダ室(33d)が形成されている。
このように、第2圧縮機構部(30)は、4つのシリンダ室(33a,33b,33c,33d)を有するように構成されている。
次に、第1、第2圧縮機構部(20,30)の内部構造について詳しく説明するが、第1、第2圧縮機構部(20,30)は、シリンダ容積を変えるために外側ピストン部(22,32)の軸方向長さ寸法とそれに対応するシリンダ(21,31)の軸方向長さ寸法を除いては互いに実質的に同一の構成であるため、第1圧縮機構部(20)を代表例として説明する。
第1ブレード(24)は、図4及び図5に示すように、厚みを有する板状の長尺部(24a)及び短尺部(24b)と、断面形状が略半円形状の一対の揺動ブッシュ部(24c)とを有している。これら3つの部分(24a,24b,24c)は一体に形成されている。
長尺部(24a)は、シリンダ空間側ヘッド部(15)の閉塞部(15a)とピストン側鏡板部(22c)との間において径方向に延びるように配置されている。長尺部(24a)は、該長尺部(24a)における径方向内側の部分を構成する内側ブレード部(B1)と、該内側ブレード部(B1)よりも外側の部分を構成する外側第1ブレード部(B2)とで構成されている。内側ブレード部(B1)は、内側シリンダ部(21a)の分断箇所に形成されているスライド溝(21g)に径方向へ摺動可能に挿入され、外側第1ブレード部(B2)の外端部は、外側シリンダ部(21b)に形成された溝(スライド溝)(21f)に径方向へ摺動自在に収容されている。内側ブレード部(B1)によって、最内側シリンダ室(23a)及び内側シリンダ室(23b)が、それぞれ、吸入側と吐出側とに区画され、外側第1ブレード部(B2)によって、外側シリンダ室(23c)が吸入側と吐出側とに区画される。内側ブレード部(B1)の内端部は、内側ピストン部(22a)の切欠部(n1)にミクロンオーダーの微細隙間を挟んで対向している(図5参照)。
短尺部(24b)は、長尺部(24a)とミドルプレート(25)との間において径方向に延びるように配置されている。短尺部(24b)は、外側第2ブレード部(B3)で構成されている。短尺部(24b)における径方向外側の部分は、最外側シリンダ部(21c)に形成された溝(スライド溝)(21f)に径方向に摺動自在に収容されている。この短尺部(24b)によって、後述する最外側シリンダ室(23d)が吸入側と吐出側とに区画される。短尺部(24b)の内端は、ピストン側鏡板部(22c)の切欠部(n2)にミクロンオーダーの微細隙間を挟んで対向している(図5参照)。
一対の揺動ブッシュ部(24c)は、長尺部(24a)の長手方向の中央部付近において、長尺部(24a)の両側に膨出するように形成されている。一対の揺動ブッシュ部(24c)の外周面は、所定半径の円筒の外周面の一部を構成している。そして、一対の揺動ブッシュ部(24c)は、外側ピストン部(22b)の分断箇所に形成されたブッシュ溝(C1,C2)に揺動自在に収容されている。一対の揺動ブッシュ部(24c)は、外側ピストン部(22b)が第1ブレード(24)に対して揺動するように構成されている。
図5において、切欠部(n1)は、揺動ブッシュ部(24c)を中心とする内側ブレード部(B1)の相対的な揺動動作を許容する第1揺動許容面を構成している。この第1揺動許容面(n1)は、揺動ブッシュ部(24c)を中心とする内側ブレード部(B1)の相対的な揺動動作の軌跡よりもわずかに大きい径寸法の円弧形状を基準にして形成され、内側ブレード部(B1)が揺動動作をする際にその先端が描く軌跡と第1揺動許容面(n1)との間に微細隙間が形成されるようになっている。なお、図5では微細隙間を誇張して表している。
また、切欠部(n2)は、揺動ブッシュ部(24c)を中心とする外側第2ブレード部(B3)の相対的な揺動動作を許容する第2揺動許容面を構成している。この第2揺動許容面(n2)は、揺動ブッシュ部(24c)を中心とする外側第2ブレード部(B3)の相対的な揺動動作の軌跡よりもわずかに小さい径寸法の円弧形状を基準にして形成され、外側第2ブレード部(B3)が揺動動作をする際にその先端が描く軌跡と第2揺動許容面(n2)との間に微細隙間が形成されるようになっている。なお、図5では微細隙間を誇張して表している。
上述のような構成により、第1ピストン(22)は、第1偏心部(53a)の偏心回転に伴って、第1ブレード(24)に対して一対の揺動ブッシュ部(24c)の中心点を揺動中心として揺動すると共に、上記溝(21f)及び上記内側シリンダ部(21a)のスライド溝(21g)に対する第1ブレード(24)の長手方向への摺動に伴って同方向に進退する。
第1圧縮機構部(20)と第2圧縮機構部(30)の内側ピストン部(22a,32a)と内側シリンダ部(21a,31a)は、内側ピストン部(22a,32a)の外周面と内側シリンダ部(21a,31a)の内周面とが1点(第1接点)で実質的に接する状態(厳密にはミクロンオーダーの隙間があるが、その隙間での冷媒の漏れが問題にならない状態)において、その接点と位相が180°異なる位置で、内側シリンダ部(21a,31a)の外周面と外側ピストン部(22b,32b)の内周面とが1点(第2接点)で実質的に接し、その接点と位相が180°異なる位置(第1接点と位相が同じ位置)で、外側ピストン部(22b,32b)の外周面と外側シリンダ部(21b,31b)の内周面とが1点(第3接点)で実質的に接すると共に、ピストン側鏡板部(22c,32c)の外周面と最外側シリンダ部(21c,31c)の内周面とが1点(第4接点)で実質的に接するようになっている。
以上の構成において、駆動軸(53)が回転すると、第1ピストン(22)は、揺動ブッシュ部(24c)の中心点を揺動中心として揺動し、第1ブレード(24)と共に該第1ブレード(24)の長手方向へ進退する。また、駆動軸(53)が回転すると、第2ピストン(32)は、揺動ブッシュ部(34c)の中心点を揺動中心として揺動し、第2ブレード(34)と共に該第2ブレード(34)の長手方向へ進退する。
上記動作により、第1ピストン(22)と第1シリンダ(21)の各接点(第1接点〜第4接点)がそれぞれ図6(A)〜(D)、図7(A)〜(D)へ順に移動する。一方、第2ピストン(32)と第2シリンダ(31)の各接点(第1接点〜第4接点)は、第1ピストン(22)と第1シリンダ(21)の対応する接点に対して駆動軸(53)の軸心回りに180°ずれている。つまり、駆動軸(53)の上側から見て、第1圧縮機構部(20)の動作状態が図6(A)及び図7(A)のとき、第2圧縮機構部(30)の動作状態は図6(C)及び図7(C)となる。
また、本実施形態では、圧縮機構(40)は、8つのシリンダ室(23a,…,23d,33a,…,33d)において冷媒を4段階に圧縮する4段圧縮機構に構成されている。
具体的には、第1圧縮機構部(20)及び第2圧縮機構部(30)の最外側シリンダ室(23d,33d)によって第1段圧縮機構のシリンダ室が形成されている。また、第1圧縮機構部(20)の外側シリンダ室(23c)と内側シリンダ室(23b)とによって第2段圧縮機構のシリンダ室が形成され、第2圧縮機構部(30)の外側シリンダ室(33c)と内側シリンダ室(33b)とによって第3段圧縮機構のシリンダ室が形成されている。さらに、第1圧縮機構部(20)及び第2圧縮機構部(30)の最内側シリンダ室(23a,33a)によって第4段圧縮機構のシリンダ室が形成されている。
このように、本実施形態1の圧縮機(1)は、環状のシリンダ空間を有するシリンダ(21,31)と、該シリンダ(21,31)に対して偏心して配置された環状のピストン(22,32)とを有し、該シリンダ(21,31)とピストン(22,32)の間に複数のシリンダ室(23a,…,23d,33a,…,33d)が形成されるとともに、下記のように各シリンダ室(23a,…,23d,33a,…,33d)に連通する吸入ポートと吐出ポートが一つずつ形成された圧縮機構(20,30)を有する回転式圧縮機であって、一組のシリンダ(21,31)とピストン(22,32)の間に4つのシリンダ室(23a,…,23d,33a,…,33d)が形成され、これらのシリンダ室(23a,…,23d,33a,…,33d)により、低圧冷媒を第1段圧縮する第1段圧縮機構のシリンダ室(23d,33d)、第1段圧縮機構の吐出冷媒を第2段圧縮する第2段圧縮機構のシリンダ室(23c,23b)、第2段圧縮機構の吐出冷媒を第3段圧縮する第3段圧縮機構のシリンダ室(33c,33b)、及び第3段圧縮機構の吐出冷媒を第4段圧縮する第4段圧縮機構のシリンダ室(23a,33a)が形成されているものである。なお、冷媒は、第1段圧縮機構と第2段圧縮機構の間、第2段圧縮機構と第3段圧縮機構の間、そして第3段圧縮機構と第4段圧縮機構の間において、それぞれ冷却機構によって冷却される。
圧縮機構(40)には、吸入管(60〜63)からの冷媒を各シリンダ室(23a,…,23d,33a,…,33d)へ案内するための第1から第4の吸入流路(71〜74)が形成されている。第1から第4の吸入流路は、それぞれ、第1段圧縮機構から第4段圧縮機構の吸入流路を構成している。これらの吸入流路(71〜74)は、互いに交わらないように、且つ、圧縮機構(40)内に形成される他の部品(各ブレード(24,34)や、吐出弁(88)等)と干渉しないように、圧縮機構(40)に形成されている。
第1吸入流路(71)は、流入端が吸入管(61)と接続し吸入ポート(P1,P1)で構成される流出端が第1圧縮機構部(20)の最外側シリンダ室(23d)及び第2圧縮機構部(30)の最外側シリンダ室(33d)に接続している。第2吸入流路(72)は、流入端が吸入管(60)と接続し吸入ポート(P2)で構成される流出端が第1圧縮機構部(20)の内側シリンダ室(23b)及び外側シリンダ室(23c)に接続している。第3吸入流路(73)は、流入端が吸入管(63)と接続し吸入ポート(P2)で構成される流出端が第2圧縮機構部(30)の内側シリンダ室(33b)及び外側シリンダ室(33c)に接続している。第4吸入流路(74)は、流入端が吸入管(62)と接続し吸入ポート(P3,P3)で構成される流出端が第1圧縮機構部(20)の最内側シリンダ室(23a)及び第2圧縮機構部(30)の最内側シリンダ室(33a)に接続している。
前記第4吸入流路(74)は、圧縮機構(40)内を上下方向に延びる吐出管側流路(74a)と、圧縮機構(40)内を水平方向に延びる吸入ポート側流路(74b)とで形成されている。この吸入ポート側流路(74b)は、軸受部側フロントヘッド(16)の積層部(16a)におけるシリンダ空間側フロントヘッド(15)の対向面、及び軸受部側リアヘッド(19)の積層部(19a)におけるシリンダ空間側リアヘッド(18)の対向面を溝状に切り欠くことにより、容易に形成できる。
また、圧縮機構(40)には、各シリンダ室(23a,…,23d,33a,…,33d)で圧縮された冷媒を圧縮機構(40)の外部へ案内するための第1から第4の吐出流路(81〜84)が形成されている。第1から第4の吐出流路(81〜84)は、それぞれ、第1段圧縮機構から第4段圧縮機構の吐出流路を構成している。これらの吐出流路(81〜84)は、互いに交わらないように、且つ、圧縮機構(40)内に形成される他の部品(各ブレード(24,34)や、吐出弁(88)等)と干渉しないように、圧縮機構(40)に形成されている。
第1吐出流路(81)は、吐出ポート(P11,P11)で構成される流入端が第1圧縮機構部(20)の最外側シリンダ室(23d)及び第2圧縮機構部(30)の最外側シリンダ室(33d)に接続し流出端が吐出管(65)に接続している。第2吐出流路(82)は、吐出ポート(P12,P13)で構成される流入端が第1圧縮機構部(20)の内側シリンダ室(23b)及び外側シリンダ室(23c)に接続し流出端が吐出管(64)に接続している。第3吐出流路(83)は、吐出ポート(P12,P13)で構成される流入端が第2圧縮機構部(30)の内側シリンダ室(33b)及び外側シリンダ室(33c)に接続し流出端が吐出管(66)に接続している。第4吐出流路(84)は、吐出ポート(P14,P14)で構成される流入端が第1圧縮機構部(20)の最内側シリンダ室(23a)及び第2圧縮機構部(30)の最内側シリンダ室(33a)に接続している。第1圧縮機構部(20)の最内側シリンダ室(23a)に接続される第4吐出流路(84)からの冷媒は、上側マフラー空間(27a)を通じてケーシング(10)内を上方へ流れ、吐出管(67)を通じてケーシング(10)外へ吐出される。第2圧縮機構部(30)の最内側シリンダ室(33a)に接続される第4吐出流路(84)からの冷媒は、下側マフラー空間(28a)、該下側マフラー空間(28a)及び上側マフラー空間(27a)を連通する連通路(29)、及び上側マフラー空間(27a)を順に流れ、吐出管(67)を通じてケーシング(10)外へ吐出される。
圧縮機構(40)は、複数の吐出弁(88,88,…)を備えている。吐出弁は、例えばリード弁で構成されている。この吐出弁(88,88,…)は、各吐出ポート(P11,P11,…P14,P14)を覆っており、各シリンダ室(23a,…,23d,33a,…,33d)内の圧力が所定値よりも低い場合には吐出ポート(P11,P11,…P14,P14)を閉塞する一方、各シリンダ室(23a,…,23d,33a,…,33d)内の圧力が所定値よりも高くなった場合には吐出ポート(P11,P11,…P14,P14)を開放する。
−第4吐出流路の構成−
第4吐出流路(84,84)の構成について、以下に詳しく説明する。なお、第4吐出流路(84,84)は第1圧縮機構部(20)及び第2圧縮機構部(30)の双方に形成されているが、その形状は、ミドルプレート(25)を挟んで上下対称である。よって以下では、第1圧縮機構部(20)の第4吐出流路(84)の構成について説明し、第2圧縮機構部(30)の第4吐出流路(84)の構成については説明を省略する。
第4吐出流路(84)は、最内側シリンダ室(23a)、すなわち第1圧縮機構部(20)に形成される複数のシリンダ室(23a,23b,23c,23d)のうち最も駆動軸(53)寄りのシリンダ室(23a)に接続している。第4吐出流路(84)は、図2及び図8に示すように、シリンダ空間側フロントヘッド(15)の閉塞部(15a)に形成される上流側流路(85)と、軸受部側フロントヘッド(16)の積層部(16a)に形成される下流側流路(90)とで構成されている。
上流側流路(85)は、前記吐出ポート(P14)と、該吐出ポート(P14)から吐出される冷媒を下流側流路(90)へ導くための流路(86)とで構成されている。この流路(86)の流路断面は、吐出ポート(P14)の流路断面よりも大きくなるように形成されている。また、この流路は、吐出ポート(P14)を開閉する吐出弁(88)を収容する弁収容空間(86)を構成している。なお、図2及び図8は、弁収容空間(86)に収容される吐出弁(88)が吐出ポート(P14)を開放している状態を表している。
上流側流路(85)は、駆動軸(53)の軸方向から視て、一部が軸受部(16b)と重なっている。具体的には、上流側流路(85)の弁収容空間(86)のうち径方向内方の部分が、軸受部(16b)と軸方向に重なっている。
下流側流路(90)は、第1流路(91)及び第2流路(92)で構成されている。第1流路(91)は、流入口全体が上流側流路(85)の流出口(86a)全体と重なっている。第1流路(91)は、軸受部側フロントヘッド(16)の積層部(16a)の下面から、該積層部(16a)の厚み方向における途中部分まで延びている。第2流路(92)は、第1流路(91)の終端から上方へ延び、積層部(16a)の上面を貫通している。
上述のように、圧縮機構(40)には、複数の吸入流路(71〜74)及び吐出流路(71〜74)や、複数の部品(吐出弁(88)やブレード(24,34)など)が形成されている。これらを、互いに干渉しないように圧縮機構(40)内に配置しようとすると、ヘッド部(14,17)等にある程度のスペースが必要となるため、圧縮機構(40)が大型化する。この圧縮機構(40)の大型化を回避するために、圧縮機構(40)のうち最も径方向内方側に位置する部品(本実施形態1では、第4吐出流路(84))を駆動軸(53)側へ寄せ、これに伴って他の部品を径方向内方へ配置することも考えられる。しかしこうすると、第4吐出流路を形成する際に軸受部が薄肉化されてしまい、軸受部の強度の低下が発生する場合がある。
これに対して、本実施形態1では、ヘッド部(14,17)を、シリンダ空間側ヘッド部(15,18)と、軸受部側ヘッド部(16,19)とに分割している。そして、第4吐出流路(84)の上流側流路(85)を、軸受部(16b,19b)が形成されていないシリンダ空間側フロントヘッド(15)における駆動軸(53)寄りの部分に形成している。これにより、軸受部(16b,19b)の肉厚を薄くすることなく、第4吐出流路(84)を径方向内方へ配置できる。その結果、他の吐出流路(81〜83)等を径方向内方へ寄せることができるため、軸受部(16b,19b)の強度を確保しつつ、圧縮機構(40)の大型化を回避できる。
−運転動作−
次に、圧縮機(1)の運転動作について説明する。ここで、第1、第2圧縮機構部(20,30)の動作は、位相が互いに180°異なる状態で行われる。
電動機(50)を起動すると、第1圧縮機構部(20)では、ロータ(52)の回転が駆動軸(53)の第1偏心部(53a)を介して第1ピストン(22)に伝達され、該第1ピストン(22)は、揺動ブッシュ部(24c)の中心点を揺動中心として揺動すると共に、第1ブレード(24)と共に該第1ブレード(24)の長手方向へ進退する。これにより、第1ピストン(22)が第1シリンダ(21)に対して揺動しながら公転し、第1圧縮機構部(20)の4つのシリンダ室(23a,23b,23c,23d)において所定の圧縮動作が行われる。
このとき、内側ブレード部(B1)の先端と内側ピストン部(22a)の切欠部(n1)の表面との間には、ミクロンオーダーの微細隙間が形成される状態となり、両者は非接触となる。また、外側第2ブレード部(B3)の先端とピストン側鏡板部(22c)の切欠部(n2)の表面との間にも、ミクロンオーダーの微細隙間が形成される状態となり、両者は非接触となる。上記の微細隙間には、潤滑油の油膜が形成される。したがって、シリンダ室(C1,C2)の高圧側から低圧側への冷媒の漏れは、実質的に問題にはならない。
最内側シリンダ室(23a)及び外側シリンダ室(23c)では、図6(A)の状態から駆動軸(53)が図の右回りに回転して図6(B)〜図6(D)の状態へ変化するのに伴い、低圧室(23aL,23cL)の容積が増大し、冷媒が吸入ポート(P3,P2)から低圧室(23aL,23cL)にそれぞれ吸入される。また、駆動軸(53)が一回転して再び図6(A)の状態になると、低圧室(23aL,23cL)への冷媒の吸入が完了する。そして、低圧室(23aL,23cL)は冷媒が圧縮される高圧室(23aH,23cH)となり、第1ブレード(24)を隔てて新たな低圧室(23aL,23cL)が形成される。駆動軸(53)がさらに回転すると、低圧室(23aL,23cL)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(23aH,23cH)の容積が減少し、該高圧室(23aH,23cH)で冷媒が圧縮される。高圧室(23aH,23cH)の圧力が所定値となって吐出流路(84,82)との差圧が設定値に達すると、該高圧室(23aH,23cH)の冷媒の圧力によって吐出弁(88,88)が開き、冷媒が第4吐出流路(84)及び第2吐出流路(82)から第1圧縮機構部(20)の外部へ吐出される。
また、最外側シリンダ室(23d)では、図7(A)の状態から駆動軸(53)が図の右回りに回転して図7(B)〜図7(D)の状態へ変化するのに伴い、低圧室(23dL)の容積が増大し、冷媒が吸入ポート(P1)から低圧室(23dL)にそれぞれ吸入される。また、駆動軸(53)が一回転して再び図7(A)の状態になると、低圧室(23dL)への冷媒の吸入が完了する。そして、低圧室(23dL)は冷媒が圧縮される高圧室(23dH)となり、第1ブレード(24)を隔てて新たな低圧室(23dL)が形成される。駆動軸(53)がさらに回転すると、低圧室(23dL)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(23dH)の容積が減少し、該高圧室(23dH)で冷媒が圧縮される。高圧室(23dH)の圧力が所定値となって吐出流路(81)との差圧が設定値に達すると、該高圧室(23dH)の冷媒の圧力によって吐出弁(88)が開き、冷媒が第1吐出流路(81)から第1圧縮機構部(20)の外部へ吐出される。
一方、内側シリンダ室(23b)では、図6(C)の状態から駆動軸(53)が図の右回りに回転して図6(D)〜図6(B)の状態へ変化するのに伴い、低圧室(23bL)の容積が増大し、冷媒が吸入ポート(P2)から低圧室(23bL)にそれぞれ吸入される。また、駆動軸(53)が一回転して再び図6(C)の状態になると、低圧室(23bL)への冷媒の吸入が完了する。そして、低圧室(23bL)は冷媒が圧縮される高圧室(23bH)となり、第1ブレード(24)を隔てて新たな低圧室(23bL)が形成される。駆動軸(53)がさらに回転すると、低圧室(23bL)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(23bH)の容積が減少し、該高圧室(23bH)で冷媒が圧縮される。高圧室(23bH)の圧力が所定値となって吐出流路(82)との差圧が設定値に達すると、該高圧室(23bH)の冷媒の圧力によって吐出弁(88)が開き、冷媒が吐出流路(82)から第1圧縮機構部(20)の外部へ吐出される。
なお、外側シリンダ室(23c)と内側シリンダ室(23b)とでは、冷媒の吸入開始のタイミング及び吐出開始のタイミングがほぼ180°異なる。このことにより、吐出脈動が小さくなり、振動や騒音が低減される。
一方、第2圧縮機構部(30)では、ロータ(52)の回転が駆動軸(53)の第2偏心部(53b)を介して第2ピストン(32)に伝達され、該第2ピストン(32)は、揺動ブッシュ部(34c)の中心点を揺動中心として揺動すると共に、第2ブレード(34)と共に該第2ブレード(34)の長手方向へ進退する。これにより、第2ピストン(32)が第2シリンダ(31)に対して揺動しながら公転し、第2圧縮機構部(30)の4つのシリンダ室(33a,33b,33c,33d)において所定の圧縮動作が行われる。
第2圧縮機構部(30)における圧縮動作は、実質的に第1圧縮機構部(20)の圧縮動作と同じであり、冷媒が各シリンダ室(33a,33b,33c,33d)内で圧縮される。各シリンダ室(33a,33b,33c,33d)において、高圧室(33aH,33bH,33cH,33dH)の圧力が所定値となって各吐出流路(84,83,83,81)との差圧が設定値に達すると、該高圧室(33aH,33bH,33cH,33dH)の冷媒の圧力によって吐出弁(88,88,88,88)が開き、冷媒が各吐出流路(84,83,83,81)から第2圧縮機構部(30)の外部へ吐出される。
圧縮機構(40)の動作中に、冷媒は、吸入管(61)から第1段圧縮機構のシリンダ室である第1圧縮機構部(20)の最外側シリンダ室(23d)と第2圧縮機構部(30)の最外側シリンダ室(33d)に吸入されて圧縮され、第1段圧縮機構のシリンダ室から吐出管(65)を通って吐出される。第1段圧縮機構のシリンダ室から吐出された冷媒は、冷却された後、吸入管(60)から第2段圧縮機構のシリンダ室である第1圧縮機構部(20)の外側シリンダ室(23c)と内側シリンダ室(23b)に吸入されてさらに圧縮され、第2段圧縮機構のシリンダ室から吐出管(64)を通って吐出される。第2段圧縮機構のシリンダ室から吐出された冷媒は、冷却された後、吸入管(63)から第3段圧縮機構のシリンダ室である第2圧縮機構部(30)の外側シリンダ室(33c)と内側シリンダ室(33b)に吸入されてさらに圧縮され、第3段圧縮機構のシリンダ室から吐出管(66)を通って吐出される。第3段圧縮機構のシリンダ室から吐出された冷媒は、冷却された後、吸入管(62)から第4段圧縮機構のシリンダ室である第1圧縮機構部(20)の最内側シリンダ室(23a)と第2圧縮機構部(30)の最内側シリンダ室(33a)に吸入されてさらに圧縮され、第4段圧縮機構のシリンダ室から吐出管(67)を通って吐出される。
第4段圧縮機構のシリンダ室から吐出された冷媒は、図示していない冷媒回路の放熱器、膨張機構、蒸発器を順に流れ、再度圧縮機(1)に吸入される。そして、圧縮機(1)における圧縮行程、放熱器における放熱工程、膨張機構における膨張行程、蒸発器における蒸発行程を順に繰り返すことにより、冷凍サイクルが行われる。
−実施形態1の効果−
以上のように、実施形態1に係る圧縮機(1)では、シリンダ本体部(21c,31c)の開口部を閉塞するフロントヘッド(14)を、シリンダ空間側フロントヘッド(15)と軸受部側フロントヘッド(16)とに分割し、上流側流路(85)をシリンダ空間側フロントヘッド(15)に形成する一方、下流側流路(90)を軸受部側フロントヘッド(16)に形成している。こうすると、シリンダ空間側フロントヘッド(15)の閉塞部(15a)を軸方向に貫通することにより形成しても、軸受部(16b)を削ることがない。これにより、軸受部(16b)の肉厚を確保しつつ、第4吐出流路(84)を内側へ寄せることができる。その結果、これに伴って、第1から第3の吐出流路(81,82,83)を内側へ寄せることができ、圧縮機構(40)を小型化できる。従って、軸受部(16b)の強度を確保しつつ、圧縮機全体を小型化できる。なお、リアヘッド(17)も、フロントヘッド(14)と同様に2つの部材(シリンダ空間側リアヘッド(18)及び軸受部側リアヘッド(19))に分割されているため、上述の場合と同様、軸受部(19b)の肉厚を確保しつつ、第4吐出流路(84)を内側へ寄せることができる。その結果、圧縮機全体を小型化できる。
また、実施形態1では、上流側流路(85)に、吐出弁(88)を収容するための弁収容空間(86)を形成し、吐出弁(88)を該弁収容空間(86)に収容している。こうすると、例えば吐出弁(88)を下流側流路(90)に配置する場合と比べて、シリンダ室(23a,33a)から吐出弁(88)までの通路の長さを短くできる。よって、シリンダ室(23a,33a)の死容積を低減できる。
また、実施形態1では、軸受部(16b,19b)が一体に形成される軸受部側ヘッド部(16,19)と、シリンダ部(21a,21b,21c,31a,31b,31c)とが別体に形成されている。こうすると、軸受部側ヘッド部(16,19)とシリンダ部(21a,21b,21c,31a,31b,31c)との相対的な位置を調整しながら両者を組み立てることができる。これにより、軸受部側ヘッド部(16,19)の軸受部(16b,19b)によって位置が概ね決まるピストン(22,32)とシリンダ部(21a,21b,21c,31a,31b,31c)との各々の中心を合わせることができる。その結果、シリンダ(21,31)及びピストン(22,32)の加工精度を低くしても、シリンダ(21,31)とピストン(22,32)との摺動抵抗を低減できる。
また、実施形態1では、積層部(16a)と閉塞部(15a)とが別体に形成されているため、積層部(16a)における閉塞部(15a)との対向面を溝状に切り欠くことによって、圧縮機構(40)における冷媒の流路である第4吸入流路(74)の吸入ポート側流路(74b)を容易に形成することができる。
《発明の実施形態2》
実施形態2に係る圧縮機(1)は、実施形態1に係る圧縮機と比べて、圧縮機構の構成が大きく異なるものの、その他の部分の構成や動作はほとんど同じである。具体的には、実施形態1では、4つの圧縮機構(第1段から第4段の圧縮機構)が設けられているのに対し、実施形態2では、1つの圧縮機構(40)が設けられている。従って以下では、圧縮機構の構成及び動作を説明し、その他の部分の構成や動作については説明を省略する。
圧縮機構(40)は、図9に示すように、ケーシング(10)の胴部の内周面に固定されたシリンダ(21)と、該シリンダ(21)内に収容されるピストン(22)と、これらシリンダ(21)とピストン(22)との間に形成されるシリンダ室(23a)を高圧室と低圧室とに区画するブレード(図示省略)とを備えている。
シリンダ(21)は、内部にシリンダ空間(S1)を形成し上下方向に開口する円筒状のシリンダ本体部(21c)と、該シリンダ本体部(21c)の上側の開口部に配置されるヘッド部としてのフロントヘッド(14)と、該シリンダ本体部(21c)の下側の開口部に配置されるリアヘッド(37)とを備えている。
フロントヘッド(14)は、シリンダ空間側ヘッド部としてのシリンダ空間側フロントヘッド(15)と、軸受部側ヘッド部としての軸受部側フロントヘッド(16)とを備えている。
シリンダ空間側フロントヘッド(15)は、シリンダ本体部(21c)の上側の開口部を覆う円板状に形成される閉塞部(15a)で構成されている。閉塞部(15a)の中央部には、駆動軸(53)が挿通される貫通孔(15b)が形成されている。この貫通孔(15b)は、駆動軸(53)よりも僅かに大径となるように形成されている。
軸受部側フロントヘッド(16)は、シリンダ空間側フロントヘッド(15)とは別体に形成され、シリンダ空間側フロントヘッド(15)の上側に配置されている。軸受部側フロントヘッド(16)は、シリンダ空間側フロントヘッド(15)の上面に重ねられる円板状の積層部(16a)と、軸受部(16b)とを備えている。積層部(16a)の中央部には、駆動軸(53)が挿通される貫通孔(16c)が形成されている。軸受部(16b)は、積層部(16a)の貫通孔(16c)の開口端部から上方へ延びる円筒状に形成されている。軸受部(16b)の内周面には、駆動軸(53)を回転自在に支持するための円筒状の軸受メタル(16d)が挿通固定されている。
リアヘッド(37)は、シリンダ本体部(21c)の下側の開口部を覆う円板状に形成される閉塞部(37a)と、軸受部(37b)とを備えている。閉塞部(37a)の中央部には、駆動軸(53)が挿通される貫通孔(37c)が形成されている。軸受部(37b)は、閉塞部(37a)の貫通孔(37c)の開口端部から下方へ延びる円筒状に形成されている。軸受部(37b)の内周面には、駆動軸(53)を回転自在に支持するための円筒状の軸受メタル(37d)が挿通固定されている。
ピストン(22)は、筒状のシリンダ本体部(21c)の内部に形成されるシリンダ室(S1)に収容されている。ピストン(22)は、駆動軸(53)の偏心部(53a)に取り付けられてシリンダ(21)に対して偏心回転する。ピストン(22)とシリンダ(21)との間には、シリンダ室(23a)が形成される。
圧縮機構(40)には、ケーシング(10)の胴部(11)に貫通して設けられた吸入管(62)からの冷媒をシリンダ室(23a)へ案内するための吸入流路(74)と、シリンダ室(23a)で圧縮された冷媒を圧縮機構(40)の外部へ案内するための吐出流路(84)とが形成されている。吸入流路(74)は、流入端が吸入管(62)と接続し流出端がシリンダ室(23a)に接続している。吐出流路(84)は、吐出ポート(P14)で構成される流入端がシリンダ室(23a)に接続するとともに、流出端が上側マフラー空間(27a)に接続している。
圧縮機構(40)は、吐出弁(88)を備えている。この吐出弁(88)は、吐出ポート(P14)を覆っており、シリンダ室(23a)内の圧力に応じて開閉する。
また、圧縮機構(40)には、該圧縮機構(40)における各摺動部を潤滑した潤滑油をケーシング(10)の下部鏡板(13)の油溜め部に戻すための油戻し孔(図示省略)や、上下に重ねられるフロントヘッド(14)、シリンダ本体部(21c)及びリアヘッド(37)をボルトにより互いに締結するためのボルト孔(図示省略)が形成されている。これらの油戻し孔やボルト孔は、吐出流路(84)と干渉しないように、平面視で該吐出流路(84)よりも径方向外方に形成されている。
−吐出流路の構成−
吐出流路(84)は、実施形態1における第4吐出流路と同様の形状である。具体的には、吐出流路(84)は、図8に示すように、シリンダ空間側フロントヘッド(15)の閉塞部(15a)に形成される上流側流路(85)と、軸受部側フロントヘッド(16)の積層部(16a)に形成される下流側流路(90)とで構成されている。
上流側流路(85)は、流入口としての前記吐出ポート(P14)と、該吐出ポート(P14)から吐出される冷媒を下流側流路(90)へ導くための流路(86)とで構成されている。この流路(86)の流路断面は、吐出ポート(P14)の流路断面よりも大きくなるように形成されている。また、この流路は、吐出ポート(P14)を開閉する吐出弁(88)を収容する弁収容空間(86)を構成している。
上流側流路(85)は、駆動軸(53)の軸方向から視て、一部が軸受部(16b)と重なっている。具体的には、上流側流路(85)の弁収容空間(86)のうち径方向内方の部分が、軸受部(16b)と軸方向に重なっている。
下流側流路(90)は、第1流路(91)及び第2流路(92)で構成されている。第1流路(91)は、流入口全体が上流側流路(85)の流出口全体と重なっている。第1流路(91)は、軸受部側フロントヘッド(16)の積層部(16a)の下面から、該積層部(16a)の厚み方向における途中部分まで延びている。第2流路(92)は、第1流路(91)の終端から上方へ延び、積層部(16a)の上面を貫通している。
−運転動作−
電動機(50)を起動すると、圧縮機構(40)では、ロータ(52)の回転が駆動軸(53)のの偏心部(53a)を介してピストン(22)に伝達され、ピストン(22)がシリンダ(21)内で揺動しながら公転する。これにより、吸入管(62)及び吸入流路(74)を順に流れてシリンダ室(23a)に吸入された冷媒がシリンダ室(23a)内で圧縮される。このように圧縮された冷媒は、吐出流路(84)を通じて上側マフラー空間(27a)に流入して消音された後、ケーシング(10)内を上方へ流れて吐出管(67)から吐出される。
−実施形態2の効果−
以上のように、実施形態2に係る圧縮機(1)は、実施形態1に係る圧縮機と同様、フロントヘッド(14)をシリンダ空間側フロントヘッド(15)と軸受部側フロントヘッド(16)とに分割し、上流側流路(85)を、シリンダ空間側フロントヘッド(15)における駆動軸(53)寄りの部分に形成している。これにより、吐出流路(84)を駆動軸(53)側へ寄せることができるため、これに伴って圧縮機構(40)に設けられる他の部品(油戻し孔やボルト孔等)を内側へ寄せることができる。その結果、軸受部(16b)の強度を確保しつつ、圧縮機全体を小型化できる。
−その他の実施形態−
前記各実施形態については、以下のような構成にしてもよい。なお、以下で説明する図10から図12では、吐出弁(88)は吐出ポート(P12)を開放した状態となっている。
前記各実施形態では、下流側流路(90)の流入口全体を、上流側流路(85)の流出口(86a)全体と重なるように形成したが、この限りでなく、例えば図10(変形例1)に示すようにしてもよい。
具体的には、変形例1では、下流側流路(90)を、積層部(16a)における軸受部(16b)よりも径方向外方の部分を軸方向に貫通することにより形成している。これにより、軸受部(16b)を削ることなく、容易に下流側流路(90)を形成できる。
また、図11(変形例2)に示すように、積層部(16a)における閉塞部(15a)の対向面に、上流側流路(85)の流出口(86a)に臨むように開口する開口溝(93)を形成し、下流側流路(90)を、該開口溝(93)の内部に形成される拡張流路(94)と、該拡張流路(94)の下流側に接続する縮小流路(95)とで形成してもよい。変形例2では、拡張流路(94)の流路面積は上流側流路(85)の流出口(86a)よりも大きく、縮小流路(95)の流入口は拡張流路(94)の流路面積よりも小さくなるように形成されている。こうすると、吐出ポート(P14)から吐出された冷媒は、拡張流路(94)に流入する際に膨張して消音された後、縮小流路(95)を通じて外部へ吐出される。これにより、圧縮機の騒音を低減できる。つまり、拡張流路(94)は、冷媒の騒音を抑制するマフラー空間としての機能を果たす。また、この拡張流路(94)を形成する開口溝(93)は、積層部(16a)におけるシリンダ空間側ヘッド部(15)の対向面を凹状に窪ませることにより、軸受部側ヘッド部(16)の内部に容易に形成できる。
また、変形例2に示すように、拡張流路(94)は、軸受部(16b)と軸方向に重なる軸心側空間(S3)と、該軸心側空間(S3)と連続するように該軸心側空間(S3)よりも径方向外方に形成される外周側空間(S4)とで形成され、上流側流路(85)の流出口(86a)を、双方の空間(S3,S4)に跨るように形成しているため、上流側流路(85)の流路面積を比較的大きくすることができる。これにより、上流側流路(85)を流れる冷媒の圧力損失が大きくなるのを抑制できる。
また、変形例2では、上流側流路(85)の流出口(86a)を、軸心側空間(S3)及び外周側空間(S4)の双方に跨るように形成したが、この限りでなく、例えば図12(変形例3)に示すようにしてもよい。
具体的には、変形例3では、上流側流路(85)を、閉塞部(15a)における軸受部(16b)と軸方向に重なる部分のみに形成し、軸心側空間(S3)に接続するようにしている。こうすると、上流側流路(85)を更に駆動軸(53)側に寄せることができるため、その分、圧縮機を小型化できる。
また、実施形態1では、回転式圧縮機として、第1段から第4段の圧縮機構によって冷媒を圧縮する揺動式の圧縮機を対象とし、実施形態2では、1つの圧縮機構によって冷媒を圧縮する揺動式の圧縮機を対象としたが、この限りでなく、例えば2つ又は3つの圧縮機構によって冷媒を圧縮する揺動式の圧縮機、或いはロータリー式の圧縮機を対象にすることもできる。